説明

多段式凍結装置

【課題】 多段式凍結装置に関するものであって、特に冷気回収効率を損なうことなく、風速を均一化し被凍結物を効率よく均一に凍結させる多段式凍結装置を提供する。
【解決手段】 断熱トンネル内に凍結室と、多段からなる搬送ベルトと、冷気を回収し搬送ベルトの上方に配置される冷気回収口と、冷気回収手段と、冷気回収室と、冷気用熱交換手段と、冷気を噴射ノズルに供給する冷気供給室とを具備して、複数の噴射ノズルは、上段及び中段における搬送ベルトのベルト往動部の下方且つベルト復動部の上方に位置し、且つ、搬送ベルトの搬送方向に対して交差する方向であって、ベルト往動部の下面に冷気を噴射するよう配置され、凍結室の長手方向に沿って間隙を確保して設けられ、噴射ノズルへ冷気が供給される冷気供給室の凍結室連通穴部に、噴射ノズルへ流入する冷気量を調節する冷気調節部材を設けたことを特徴とする多段式凍結装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段式凍結装置に関するものであって、特に冷気回収効率を損なうことなく、風速を均一化し被凍結物を効率よく均一に凍結させる多段式凍結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、連続的に食品等の製品を凍結装置に投入して、凍結終了後に製品を取り出すことが可能な凍結装置において、設置スペースによる問題を解決するものとして多段式凍結装置が採用されている。
また、多段式凍結装置においては、上方及び下方における搬送中の冷風の風速を均一化することが必須とされ、風速が均一化されないことにより冷却効果が減少するといった問題が発生するのを防止する為に、様々な手法が採られている。
【0003】
例えば、主に、冷気噴出手段を備えた断熱トンネル内に被凍結物を搬送するコンベヤを上下複数段に配設し、上段のコンベヤの搬送方向終端部から下段のコンベヤの搬送方向始端部に被凍結物を落下させて最上段のコンベヤから最下段のコンベヤに向けて被凍結物を順次搬送しながら凍結させる多段式凍結装置において、最上段のコンベヤを除く各コンベヤの側方に、開閉扉を有する仕切壁を設け、最下段のコンベヤを除く各コンベヤの下部に、前記被凍結物の落下部が開口し、コンベヤ幅方向が断熱トンネル側壁方向に突出した仕切板を設けるとともに、該仕切板の両側縁部と断熱トンネル側壁との間の隙間を弾性を有する閉塞部材により閉塞した多段式凍結装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これによって、凍結用に使用する冷気の冷熱を有効に利用することができ、凍結処理を効率よく行うことができる。また、断熱トンネルの天井部に、トンネル内の冷気噴出手段から噴出した冷気を上方に吹き上げる方向に流動させる複数の撹拌ファンを長手方向に二列に設けるとともに、隣接する撹拌ファンの間を区画する区画板を設けているので、1段目のコンベヤ部分で被凍結物の下面も十分に凍結させることができ、下段のコンベヤへの落下の衝撃で被凍結物が変形するのを防止することができるものである。
【特許文献1】特許2987590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような構成においては、上下各段のコンベヤ部分がそれぞれ独立したトンネル構造に形成されており、且つ、最上段のコンベヤの搬送方向始端部近傍に排気ダクトが設けられているので、各コンベヤ部分に設けた冷気噴出手段から噴出した冷気の流れは、下段のコンベヤから被凍結物の落下部の開口を介して上段のコンベヤに向かって流れ、各コンベヤによって搬送される被凍結物の搬送方向に対向する向きに流れるものである。
しかし、冷気噴出手段から噴出した冷気が、排気ダクトにより下段から上段へうまく流れない場合には、いわゆるエア溜まりが発生するおそれがあり、当該装置における冷気回収効率が減少するおそれもある。
更に、当該装置においては、上下各段のコンベヤ部分がそれぞれ独立したトンネル構造を具備する為、仕切壁等の部材を別途設置することが必要となるので、設備コストの増加につながる。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するものであって、多段式凍結装置に関するものであって、特に冷気回収効率を損なうことなく、風速を均一化し被凍結物を効率よく均一に凍結させる多段式凍結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明の多段式凍結装置は、冷気噴出手段を備えた断熱トンネル内に被凍結物を搬送する搬送ベルトを上下複数段に配設し、上段の搬送ベルトの搬送方向終端部から下段の搬送ベルトの搬送方向始端部に被凍結物を落下させて上段の搬送ベルトから下段の搬送ベルトに向けて被凍結物を順次搬送しながら凍結させる多段式凍結装置において、断熱トンネル内に凍結室と、被凍結物を搬送する多段からなる搬送ベルトと、凍結室内の冷気を回収し搬送ベルトの上方に配置される冷気回収口と、凍結室内の冷気を吸引して回収する冷気回収手段と、当該冷気を冷気用熱交換手段に送る冷気回収室と、冷気回収室からの冷気を冷却する冷気用熱交換手段と、冷気用熱交換手段からの冷気を噴射ノズルに供給する冷気供給室とを具備して、複数の噴射ノズルは、上段及び中段における搬送ベルトのベルト往動部の下方且つベルト復動部の上方に位置し、且つ、搬送ベルトの搬送方向に対して交差する方向であって、ベルト往動部の下面に冷気を噴射するよう配置され、凍結室の長手方向に沿って間隙を確保して設けられ、噴射ノズルへ冷気が供給される冷気供給室の凍結室連通穴部に、噴射ノズルへ流入する冷気量を調節する冷気調節部材を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の発明の多段式凍結装置は、請求項1に記載の多段式凍結装置において、上段の搬送ベルトにおける噴射ノズル、及び、中段の搬送ベルトにおける噴射ノズルの鉛直方向の相互関係を同一鉛直直線上に配置したことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の発明の多段式凍結装置は、請求項1又は請求項2に記載の多段式凍結装置において、断熱トンネルを被凍結物の搬入口方向へ延設し、凍結室との隔壁を介して予冷凍結室を設け、凍結室における上段の搬送ベルトへと被凍結物を搬送する搬送ベルトを設置し、当該搬送ベルトの上方又は下方に冷却装置を具備したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の多段式凍結装置に係る請求項1に記載の発明によれば、複数の噴射ノズルは、それぞれ間隙を確保して設けられているため、冷気回収手段で吸引すると、冷気は噴射部の間に滞留することなく、噴射部の間隙から冷気回収室に回収される。従って、インピンジメント処理領域において、噴射部から噴射される冷気は、被凍結物と熱交換を行った後の冷気に妨げられず、拡散せずに被凍結物に吹き付けられる。また、いわゆるエア溜まりが発生するおそれもなくなり、当該装置における冷却回収効率が減少するおそれもなくなる。
更に、冷気供給室の凍結室連通穴部に冷気調節部材を設けるので、流入する冷気量を調節することができる。これによって、凍結時における身割れを防止することができるとともに、含有水分量が異なる多種多様な被凍結物に対応できる。
また、当該装置においては、従来からの凍結装置と異なり凍結室内に別個独立したトンネル構造等を設置しない為、設備コストを削減することができる。
また、噴射ノズルを有しない下段搬送ベルトでの搬送中においても、時間をかけて被凍結物のテンパリング処理を行うことができるので、比較的厚みの厚い被凍結物であっても均一に凍結させることができる。
【0011】
本願発明の多段式凍結装置に係る請求項2に記載の発明によれば、上段の搬送ベルトにおける噴射ノズル、及び、中段の搬送ベルトにおける噴射ノズルの鉛直方向の相互関係を同一鉛直直線上に配置するので、上下複数段に配設される搬送ベルトであっても、インピンジメント処理領域及びテンパリング処理領域の境界を明確にすることができる。これによって、テンパリング処理領域においては、インピンジメント処理領域の噴射部から噴射された冷気が被凍結物に吹き付けられることがない。従って、確実にテンパリング処理を行うことができる。
【0012】
本願発明の多段式凍結装置に係る請求項3に記載の発明によれば、断熱トンネルを被凍結物の搬入口方向へ延設し、凍結室との隔壁を介して予冷凍結室を設け、凍結室における上段の搬送ベルトへと被凍結物を搬送する搬送ベルトを設置し、当該搬送ベルトの上方又は下方に冷却装置を具備するので、含有水分量が異なる多種多様な被凍結物を冷凍保存する場合ではなく、例えば、冷凍直前に蒸煮機にかけられ、水分を十分に添加した食品であって、表面上に水分を多く有する被搬送物であっても、予冷凍結室にて予め当該表面上の水分を蒸発させることが可能となるので、凍結室内において、当該表面上の水分が蒸発することで、冷気用熱交換手段等に霜が付着して、熱交換作用が低下するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態における多段式凍結装置1、1Aを図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る多段式凍結装置を長手方向に切断した全体簡略正面図である。図2は、本発明の実施例1に係る多段式凍結装置を図1のP−P線で切断した全体簡略端面図である。図3は、本発明の実施例1に係る多段式凍結装置における噴射ノズルの断面図である。図4は、本発明の実施例1に係る冷気調節部材を設置した多段式凍結装置を図1のP−P線で切断した全体簡略端面図である。図5は、本発明の実施例1に係る多段式凍結装置を(a)図2のQ−Q線で切断した冷気供給室における開口部、(b)図4のR−R線で切断した冷気供給室における開口部の簡略図である。図6は、本発明の実施例2に係る多段式凍結装置を長手方向に切断した全体簡略正面図である。
【実施例1】
【0015】
本発明を具体化した実施形態について図1から図5に従って説明する。本発明の実施例に係る多段式凍結装置1は、断熱トンネル1a内に凍結室6、冷気回収室9、冷気供給室10、上段搬送ベルト11、中段搬送ベルト12、下段搬送ベルト13、冷気用熱交換手段14、及び複数の噴射ノズル15を有する。
【0016】
図1、図2に示すように、断熱トンネル1aの断面形状は略直方形である。多段式凍結装置1の側面には左右複数箇所に手前に開く扉部1bが設けられており、扉部1bを開けて断熱トンネル1a内の点検、清掃等を行えるようになっている。
【0017】
図2に示すように、断熱トンネル1aの内側は、長手方向に沿って設けられた隔壁によって凍結室6、冷気回収室9、冷気供給室10に区分されている。凍結室6は、断熱トンネル1aの内側を隔壁で仕切られて図示左側に設けられる。冷気供給室10は、凍結室6の図示右側に設けられる。
【0018】
冷気回収室9は、凍結室6の上方であって、且つ冷気供給室10の図示左側に設けられる。後述するように、凍結室6、冷気回収室9、冷気供給室10はそれぞれ連通する部分を有しており、冷気は凍結室6、冷気回収室9、冷気供給室10を強制循環するようになっている。
【0019】
凍結室6は、搬送される被凍結物Fを冷気によって凍結させる区画である。図1に示すように、凍結室6は、断熱トンネル1a内において長手方向の一端から他端まで連続している。凍結室6の長手方向の一端側には、被凍結物Fを凍結室6内に供給する搬入口1cが設けられている。凍結室6の長手方向の他端側には、被凍結物Fを凍結室6内から取り出すための搬出口1dが設けられている。このとき、当該装置は多段となる為、搬出口1dは搬入口1cより下方位置に設置される。
【0020】
上段搬送ベルト11は、ベルトは無端状であり、網目の小さいネット状で形成されるベルト往動部11a及びベルト復動部11b、駆動プーリ11c、従動プーリ11d、駆動プーリ11cを稼働するモータ(図示しない)からなる。上段搬送ベルト11は、後述する中段搬送ベルト12、下段搬送ベルト13との関係において、凍結室6内における上段に位置して被凍結物Fを搬送するために設けられている。また、上段搬送ベルト11は、凍結室6の搬入口1cから多段式凍結装置1における他端部にかけて凍結室6内の長手方向に沿って架設されている。更に、駆動プーリ11cと従動プーリ11dの位置関係はいずれを駆動側とすることもできる。
【0021】
中段搬送ベルト12は、上段搬送ベルト11と同様にして構成され、図1に示すように、中段搬送ベルト12は、上段搬送ベルト11、下段搬送ベルト13との関係において、凍結室6内における中段に位置して、上段搬送ベルト11の延長線と平行な位置に配置され、上段搬送ベルト11から落下する被凍結物Fを自動的に受け止めることができる位置で、多段式凍結装置1における搬出口1d側から搬入口1c側にかけて凍結室6内の長手方向に沿って架設されている。
【0022】
下段搬送ベルト13は、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12と同様にして構成され、図1に示すように、下段搬送ベルト13は、上段搬送ベルト11、中段搬送ベルト12との関係において、凍結室6内における下段に位置して、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12の延長線と平行な位置に配置され、中段搬送ベルト12から落下する被凍結物Fを自動的に受け止めることができる位置で、多段式凍結装置1における搬入口1c側から搬出口1dにかけて凍結室6内の長手方向に沿って架設されている。
【0023】
冷気回収室9は、凍結室6内の冷気を回収し、その冷気を冷気用熱交換手段14に送る区画である。図2に示すように、冷気回収室9の図示左側には、冷気供給室10と離隔した位置に冷気回収口7が設けられる。冷気回収口7は冷気回収室9と凍結室6とを連通させて、凍結室6内の冷気を冷気回収室9内に回収するために設けられる。冷気回収口7の内側には冷風回収手段としての送風ファン8が設けられており、送風ファン8によって凍結室6の冷気が冷気回収室9に回収される。冷気回収室9と冷気供給室10との間の供給室隔壁2には冷気回収室9と冷気供給室10とを連通させる回収室連通穴部3が形成される。
【0024】
冷気用熱交換手段14は冷媒によって空気と熱交換を行い、空気を冷却する部分である。図2に示すように、冷気用熱交換手段14は冷気回収室9内であって冷気回収口7と冷気供給室10との間に設けられる。冷風回収口7から送風ファン8によって回収された冷気は冷気用熱交換手段14に接触し、冷媒と熱交換を行って冷却される。送風ファン8によって回収され、冷気用熱交換手段14で冷却された冷気は、冷気回収室9と冷気供給室10とを連通させる回収室連通穴部から冷気供給室10に送られる。
【0025】
冷気供給室10は、冷気用熱交換手段14によって冷却された冷気を取り入れ、噴射ノズル15に供給する部分である。図2に示すように、冷気供給室10は凍結室6の図示右側であって、凍結室6の長手方向に沿って設けられている。冷気供給室10と凍結室6とを仕切る凍結室隔壁4には、噴射ノズル15に連通させる凍結室連通穴部5が設けられている。凍結室連通穴部5は複数設けられており、凍結室6の長手方向に沿って等間隔で設けられている。また、凍結室連通穴部5は、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12におけるベルト往動部11a、ベルト往動部12aの下方、且つ、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12におけるベルト復動部11b、ベルト復動部12bより上方に設けられる。
【0026】
噴射ノズル15は、それぞれ冷気供給室10からの冷気を上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12の幅方向に送り、冷気をベルト往動部11a及びベルト往動部12aに向けて噴射する部分である。図3に示すように、噴射部主体15a、噴射用スリット15e、冷風案内空間部15fを有している。噴射ノズル15は、断面右側部材15bと断面左側部材15c及び蓋部材15dとから構成されており、それぞれステンレス製薄板を屈曲して形成されている。これらを溶接して噴射ノズル15の噴射部主体15a、噴射用スリット15e、冷風案内空間部15fが構成される。噴射部主体15aの一端は開口部15gとなっており、他端は蓋部材15dによって閉塞される。
【0027】
噴射部主体15aは、冷風供給室10に連通させて冷風を上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12まで導く部分である。図3に示すように、噴射部主体15aの内側は冷風を導くための空間になっている。図2に示すように、噴射部主体15aは上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12を幅方向に跨ぐ長さを有する。また、噴射部主体15aの開口部15g側には、凍結室隔壁4に取り付けるためのフランジ部16が形成されている。
【0028】
噴射用スリット15eは、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12のベルト往動部11a、ベルト往動部12aの下面部に向けて冷気を噴射する部分である。噴射部主体15aから離隔して形成される噴射用スリット15eは、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12の搬送方向に対して交差する方向となるように形成され、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12の搬送方向に対して交差する方向に冷気を噴射する。
【0029】
冷風案内空間部15fは、噴射部主体15aから噴射用スリット15eに冷風を案内し、噴射用スリット15eから噴射される冷気を層流に近い状態とする部分である。図3に示すように、冷風案内空間部15fは噴射部主体15aと噴射用スリット15eとの間に設けられる。冷風案内空間部15fの幅は、噴射用スリット15eの幅と略同一の幅である。
【0030】
噴射ノズル15は、図1及び図2に示すように、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12のベルト往動部11a、ベルト往動部12aの下方で、且つ、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12のベルト復動部11b、ベルト復動部12bの上方に位置し、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12の搬送方向に対して交差する方向に設ける。これにより、上段搬送ベルト11のベルト往動部11a、中段搬送ベルト12のベルト往動部12aの下面部に対して、冷気が噴射される。
また、図5(a)に示すように、噴射ノズル15は、噴射部主体15aにおける開口部15g側を凍結室連通穴部5の列に連通させた状態とし、この状態でフランジ部16を凍結室隔壁4にナット17にて固定して、噴射ノズル15を凍結室隔壁4に固定する。噴射部主体15aの他端(蓋部材15dで閉塞された端部側)は、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12の側方で支持させる。
更に、図4及び図5(b)に示すように、冷気供給室10側から凍結室連通穴部5及び開口部15gをステンレス等で略長方形状に形成された冷気調節部材18にて覆設することで、流入する冷気量を調節することができる。冷気調節部材18の大きさにより、凍結室連通穴部5及び開口部15gの全面を覆設することができるのは勿論である。これにより、流入する冷気量を調節して凍結時における身割れを防止することができるとともに、軽量の被凍結物Fが冷気により飛散するのを防止することができる。
また、図1に示すように、上段搬送ベルト11のベルト往動部11aの下方で且つベルト復動部11bの上方に位置する噴射ノズル15と中段搬送ベルト12のベルト往動部12aの下方で且つベルト復動部12bの上方に位置する噴射ノズル15における相互の位置関係は、相互が同一鉛直線上に位置するようにして設ける。
【0031】
次に、本発明の実施例に係る多段式凍結装置1の作動について説明する。多段式凍結装置1の断熱トンネル1a内の冷気は、冷気回収手段としての送風ファン8により、凍結室6、冷気回収室9、冷気用熱交換手段14、冷気供給室10、複数の噴射ノズル15を強制循環する。そして、複数の噴射ノズル15から被凍結物Fを凍結させる。
【0032】
具体的には、多段式凍結装置1におけるインピンジメント処理領域は、噴射ノズル15を有する領域であって、複数の噴射ノズル15から噴射された冷気は、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12で搬送されてその領域を通過する被凍結物Fに対して下面部から冷気が吹き付けられ、被凍結物Fと熱交換が行われ、インピンジメント処理が行われる。
このとき、複数の噴射ノズル15は、それぞれ間隙を確保して設けられているため、冷気回収手段としての送風ファン8で吸引すると、冷気は噴射部の間に滞留することなく、噴射部の間隙から冷気回収室9に回収される。従って、インピンジメント処理領域において噴射部から噴射される冷気は、被凍結物Fと熱交換を行った後の冷気に妨げられず、拡散せずに被凍結物Fに吹き付けられる。
また、噴射ノズル15はそれぞれ、冷気を噴射する噴射用スリット15eと、噴射用スリット15eの幅と略同一の幅であって噴射部主体15aから噴射用スリット15eに冷風を案内する冷風案内空間部15fとを有している。噴射用スリット15eから噴射される冷気はほとんど層流となっているため、インピンジメント処理領域において、冷風は噴射用スリット15eから出ても拡散せずに、被凍結物Fに強く集中して吹き付けられる。
これによって、当該領域では、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12の二段に亘り、被凍結物Fを即座に凍結させることができる。
【0033】
また、多段式凍結装置1におけるテンパリング処理領域は、隣接する噴射ノズル15の間であって、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12で搬送されてその領域を通過する被凍結物Fに対して冷気の吹き付けが一時中断され、テンパリング処理が行われる領域である。
このとき、テンパリング処理領域においては、インピンジメント処理領域において噴射部から噴射された冷気が拡散しないため、冷気が被凍結物Fに吹き付けられることがない。
また、当該領域以外においても、下段搬送ベルト13にて時間をかけてテンパリング処理を行うことができる。
【0034】
以上説明した本発明の実施例に係る多段式凍結装置1によれば、複数の噴射ノズル15は、それぞれ間隙を確保して設けられているため、冷気回収手段としての送風ファン8で吸引すると、冷気は噴射部の間に滞留することなく、噴射部の間隙から冷気回収室9に回収される。従って、インピンジメント処理領域において噴射部から噴射される冷気は、被凍結物Fと熱交換を行った後の冷気に妨げられず、拡散せずに被凍結物Fに吹き付けられる。また、いわゆるエア溜まりが発生するおそれもなくなり、当該装置における冷却回収効率が減少するおそれもなくなる。
また、上段搬送ベルト11及び中段搬送ベルト12の二段に亘り、即座に凍結させた被凍結物Fを、噴射ノズル15を有しない下段搬送ベルト13での搬送中においても、時間をかけてテンパリング処理を行うことができるので、比較的厚みの厚い被凍結物Fであっても均一に凍結させることができる。
更に、冷気供給室10側から凍結室連通穴部5及び開口部15gを冷気調節部材18にて覆設することができるので、流入する冷気量を調節することができる。これによって、凍結時における身割れを防止することができるとともに、含有水分量が異なる多種多様な被凍結物Fに対応できる。
また、当該装置においては、従来からの凍結装置と異なり凍結室6内に別個独立したトンネル構造等を設置しない為、設備コストを削減することができる。
【実施例2】
【0035】
含有水分量が異なる多種多様な被凍結物を冷凍保存する場合には、実施例1における多段式凍結装置1を使用することで冷凍時において問題となることはないが、一方、冷凍直前に蒸煮機にかけられ、水分を十分に添加した食品であって、表面上に水分を多く有する被搬送物F、例えば、餃子、シューマイ、焼酎用のサツマイモ等を実施例1における多段式凍結装置1に投入した際には、表面上における水分が急激に冷却されることにより多量に蒸発して、凍結室6における冷気用熱交換手段14等に霜が付着し熱交換の作用を低下させることがある。
【0036】
係る際には、実施例1における多段式凍結装置1の別仕様として、図6に示すようにして、多段式凍結装置1Aにおいて、断熱トンネル1aを被凍結物Fの搬入口1c方向へ延設して予冷凍結室19を設けることもできる。当該予冷凍結室19は、隔壁22を介して凍結室6と仕切られており、上段搬送ベルト11等と同様の構造の搬送ベルト20が搬入口1cから別途設置され、凍結室6における上段搬送ベルト11へと被凍結物Fを搬送する。また、予冷凍結室19を5度程度の雰囲気温度に設定する冷却装置21が搬送ベルト20の上方又は下方に設置される。
【0037】
これにより、冷凍直前に蒸煮機にかけられ、水分を十分に添加した食品であって、表面上に水分を多く有する被搬送物Fであっても、予冷凍結室19にて予め当該表面上の水分を蒸発させることが可能となるので、凍結室6内における冷気用熱交換手段14等に霜が付着し熱交換の作用が低下することもない。
【0038】
更に、実施例1及び実施例2において、被凍結物Fの厚みが変動する場合に対応するため、噴射ノズル15と各ベルト往動部の下面部との距離を任意に変更できることが好ましい。変更する手段としては、例えば、凍結室隔壁4に対する噴射ノズル15のフランジ部16の固定位置を上下方向に変更できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1に係る多段式凍結装置を長手方向に切断した全体簡略正面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る多段式凍結装置を図1のP−P線で切断した全体簡略端面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る多段式凍結装置における噴射ノズルの断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る冷気調節部材を設置した多段式凍結装置を図1のP−P線で切断した全体簡略端面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る多段式凍結装置を(a)図2のQ−Q線で切断した冷気供給室における開口部、(b)図4のR−R線で切断した冷気供給室における開口部の簡略図である。
【図6】本発明の実施例2に係る多段式凍結装置を長手方向に切断した全体簡略正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1、1A 多段式凍結装置
1a 断熱トンネル
1b 扉部
1c 搬入口
1d 搬出口
2 供給室隔壁
3 回収室連通穴部
4 冷凍室隔壁
5 凍結室連通穴部
6 凍結室
7 冷気回収口
8 送風機
9 冷気回収室
10 冷気供給室
11 上段搬送ベルト
11a ベルト往動部
11b ベルト復動部
11c 駆動プーリ
11d 従動プーリ
12 中段搬送ベルト
12a ベルト往動部
12b ベルト復動部
12c 駆動プーリ
12d 従動プーリ
13 下段搬送ベルト
13a ベルト往動部
13b ベルト復動部
13c 駆動プーリ
13d 従動プーリ
14 冷気用熱交換手段
15 噴射ノズル
15a 噴射部主体
15b 断面右側部材
15c 断面左側部材
15d 蓋部材
15e 噴射用スリット
15f 冷風案内空間部
15g 開口部
16 フランジ
17 ナット
18 冷気調節部材
19 予冷凍結室
20 搬送ベルト
20a ベルト往動部
20b ベルト復動部
20c 駆動プーリ
20d 従動プーリ
21 冷却装置
22 隔壁
F 被凍結物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷気噴出手段を備えた断熱トンネル内に被凍結物を搬送する搬送ベルトを上下複数段に配設し、上段の搬送ベルトの搬送方向終端部から下段の搬送ベルトの搬送方向始端部に被凍結物を落下させて上段の搬送ベルトから下段の搬送ベルトに向けて被凍結物を順次搬送しながら凍結させる多段式凍結装置において、
断熱トンネル内に凍結室と、被凍結物を搬送する多段からなる搬送ベルトと、凍結室内の冷気を回収し搬送ベルトの上方に配置される冷気回収口と、凍結室内の冷気を吸引して回収する冷気回収手段と、当該冷気を冷気用熱交換手段に送る冷気回収室と、冷気回収室からの冷気を冷却する冷気用熱交換手段と、冷気用熱交換手段からの冷気を噴射ノズルに供給する冷気供給室とを具備して、
複数の噴射ノズルは、上段及び中段における搬送ベルトのベルト往動部の下方且つベルト復動部の上方に位置し、且つ、搬送ベルトの搬送方向に対して交差する方向であって、ベルト往動部の下面に冷気を噴射するよう配置され、凍結室の長手方向に沿って間隙を確保して設けられ、
噴射ノズルへ冷気が供給される冷気供給室の凍結室連通穴部に、噴射ノズルへ流入する冷気量を調節する冷気調節部材を設けたことを特徴とする多段式凍結装置。
【請求項2】
上段の搬送ベルトにおける噴射ノズル、及び、中段の搬送ベルトにおける噴射ノズルの鉛直方向の相互関係を同一鉛直直線上に配置したことを特徴とする請求項1に記載の多段式凍結装置。
【請求項3】
断熱トンネルを被凍結物の搬入口方向へ延設し、凍結室との隔壁を介して予冷凍結室を設け、凍結室における上段の搬送ベルトへと被凍結物を搬送する搬送ベルトを設置し、当該搬送ベルトの上方又は下方に冷却装置を具備したことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の多段式凍結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−276040(P2009−276040A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130487(P2008−130487)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(391018547)高橋工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】