説明

多段重合ポリマーエマルジョン及びその製造方法

【課題】造膜助剤を全く含まないか,含んでもごく微量であるにもかかわらず,5℃程度でも成膜し得ると共に、高温ブロッキング性、長期耐候性及び耐水性に優れた塗膜を形成し得るエマルジョンを提供すること
【解決手段】エチレン性不飽和モノマーを含む重合性組成物を水性媒体中で3段階の乳化重合してなるポリマーエマルジョンであって、各段階で得られるポリマー、および全体のポリマーのガラス転移温度がそれぞれ特定の温度範囲にあり、かつ、
シクロアルキル基を有するシランカップリング剤の存在下に、特定の構造を有する重合性紫外線安定剤を必須成分とする重合性組成物を第3工程で重合せしめてなることを特徴とする多段重合ポリマーエマルジョン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段重合ポリマーエマルジョン及びその製造方法に関するものであり、詳しくは低温造膜性に優れると共に、耐候性、ブロッキング耐性にも優れる塗膜を形成し得る多段重合ポリマーエマルジョン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン性不飽和単量体を水性媒体中で乳化重合して得られるエマルジョン樹脂は、各種コーティング剤、接着剤、繊維加工剤、紙加工剤、インキ用等各種工業用途にて実用化されており、幅広く利用されている。中でもエマルジョン型塗料は、溶剤系塗料と比べて安全性、コスト面で優位性が高いことから、広く用いられている。
しかし、エマルジョン型塗料は造膜性が悪いことから、一般的に高沸点有機溶剤が造膜助剤として用いられており、水性塗料でありながら、有機溶剤が塗料中に2〜15重量%程度含まれているのが現状である。かかる状況下、環境保護の観点から有機溶剤を含まないエマルジョン型塗料が望まれている。
【0003】
この要求を満足するための第一段階として、造膜助剤非含有でも造膜するエマルジョン型樹脂の開発が不可欠である。エマルジョン型樹脂を軟質化することにより、造膜助剤を含有しなくとも造膜させることができる。
しかし、エマルジョン型樹脂を軟質化すると形成される塗膜のブロッキング性が悪くなり、汚染性も悪化する。また、屋外で使用する場合では長期耐候性も不足する。
そこで、造膜助剤を含まずに、低温造膜性及びブロッキング耐性および長期耐候性に優れる塗膜を形成し得るエマルジョン型塗料の開発が望まれた。
【0004】
このような課題に対し、種々の方策が提案された(特許文献1〜2)。
例えば、特許文献1(特開平11−343464号公報)には、異なるガラス転移温度(以下、「Tg」と略す)を示す水性エマルジョンと水溶化された樹脂とを混合してなる水性塗料組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2001−11105号公報)には、高酸価、低Tgのエチレン性不飽和単量体を水性媒体中で乳化重合してなる重合体の存在下に、低酸価、高Tgのエチレン性不飽和単量体を重合する重合体水性分散液の製造方法が記載されている。特許文献2に記載されるような方法では、比較的低温で造膜し得るエマルジョン型塗料を得ることができる。
しかし、特許文献2に記載されるような方法では、形成される塗膜のより高温におけるブロッキング性が不十分であると共に、耐水性が悪い。
また、特許文献1、2いずれの場合においても長期耐候性は得られず、屋外で使用した場合は黄変やチョーキングなどの問題がある。
【特許文献1】特開平11−343464号公報
【特許文献2】特開2001−11105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、造膜助剤を全く含まないか,含んでもごく微量であるにもかかわらず,5℃程度でも成膜し得ると共に、高温ブロッキング性、長期耐候性及び耐水性に優れた塗膜を形成し得るエマルジョンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エチレン性不飽和モノマーを含む重合性組成物を水性媒体中で3段階の工程で乳化重合してなる多段重合ポリマーエマルジョンであって、重合に供される全エチレン性不飽和モノマーから求められるポリマー全体のガラス転移温度:[全]Tgが10〜30℃であり、
反応容器中に仕込んだエチレン性不飽和モノマー、乳化剤及び水を含有する第1のモノマーエマルジョンを重合し、第1のポリマーエマルジョン(A)を得、
次いで該第1のポリマーエマルジョン(A)の存在下に、エチレン性不飽和モノマー、
乳化剤及び水を含有する第2工程以降のモノマーエマルジョンを順次重合してなり、
第1のモノマーエマルジョン中のエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃、
第2工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃、
および第3工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが40〜100℃であり、
かつ、シクロアルキル基を有するシランカップリング剤の存在下に、一般式(1)で示される重合性紫外線安定剤を必須成分とする重合性組成物を前記第3工程で重合せしめてなることを特徴とする多段重合ポリマーエマルジョンに関する。
【0008】
【化3】

【0009】
(式中、R1は水素原子又はシアノ基を表し、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R4は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、−CO−C(R5)=CH(R6)を表し、Xはイミノ基又は酸素原子を表す。R5、R6はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を表わす。)
【0010】
また、本発明は、第1〜第3工程の少なくともいずれかの工程において重合に供されるモノマーエマルジョンが、シクロアルキル基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤を含有することを特徴とする上記発明に記載の多段重合ポリマーエマルジョンに関し、
さらに、本発明は、重合開始剤が、熱分解系であることを特徴とする上記発明に記載の多段重合ポリマーエマルジョンに関する。
【0011】
さらに本発明は、一般式(1)で示される重合性紫外線安定剤を必須成分とする重合性組成物を第3工程で重合せしめる際に、下記一般式(2)で示される重合性紫外線吸収剤を併用してなることを特徴とする上記発明に記載の多段重合ポリマーエマルジョンに関する。
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、R7は水素原子又はメチル基を表し、Yは炭素数1〜6のアルキレン基を表す)
【0014】
さらにまた、本発明は、エチレン性不飽和モノマーを含む重合性組成物を水性媒体中で3段階の工程で乳化重合する多段重合ポリマーエマルジョンの製造方法であって、
重合に供される全エチレン性不飽和モノマーから求められるポリマー全体のガラス転移温度:[全]Tgが10〜30℃であり、
反応容器中に仕込んだエチレン性不飽和モノマー、乳化剤及び水を含有する第1のモノマーエマルジョンを重合し、第1のポリマーエマルジョン(A)を得、
次いで該第1のポリマーエマルジョン(A)に、
エチレン性不飽和モノマー、乳化剤及び水を含有する第2工程以降のモノマーエマルジ
ョンを順次添加、重合し、
第1のモノマーエマルジョン中のエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃、
第2工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃、
および第3工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが40〜100℃であり、かつ、シクロアルキル基を有するシランカップリング剤の存在下に、一般式(1)で示される重合性紫外線安定剤を必須成分とする重合性組成物を第3工程で重合することを特徴とする多段重合ポリマーエマルジョンの製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、第1のモノマーエマルジョン中のエチレン性不飽和モノマー量が全エチレン性不飽和モノマー量の3〜15重量%、第2工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマー量が全エチレン性不飽和モノマー量の30〜55重量%、および第3工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマー量が全エチレン性不飽和モノマー量の30〜55重量%であることを特徴とする上記発明に記載の多段重合ポリマーエマルジョンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、造膜助剤を全く含まないか,含んでもごく微量であるにもかかわらず,5℃程度でも成膜し得ると共に、高温ブロッキング性、長期耐候性及び耐水性に優れた塗膜を形成し得るエマルジョンを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の多段重合ポリマーエマルジョンは、エチレン性不飽和モノマーを含む重合性組成物を水性媒体中で3段階の工程で乳化重合してなるものであり、反応容器中に仕込んだエチレン性不飽和モノマー、乳化剤及び水を含有する第1のモノマーエマルジョンを重合し、第1のポリマーエマルジョン(A)を得、次いで該第1のポリマーエマルジョン(A)の存在下に、エチレン性不飽和モノマー、乳化剤及び水を含有する第2工程以降のモノマーエマルジョンを順次重合することが極めて重要である。
即ち、使用するモノマーの組成や量、乳化剤の種類や量等が同じであっても、反応容器中にはエチレン性不飽和モノマーを仕込まず、乳化剤と重合開始剤と水とを仕込んだり、重合開始剤と水とを仕込んだり、乳化剤と水とを仕込んだり、水のみを仕込んだりして、そこにエチレン性不飽和モノマーと乳化剤と重合開始剤と水とを含有するモノマーエマルジョンや、エチレン性不飽和モノマーと乳化剤と水とを含有するモノマーエマルジョンや、エチレン性不飽和モノマーと乳化剤との混合物や、エチレン性不飽和モノマー等を滴下し、モノマーを重合した場合、反応容器中にエチレン性不飽和モノマーを仕込んだ場合に比して、得られるエマルジョンは低温造膜性に劣ると共に、高温ブロッキング性や長期耐候性および耐水性の著しく劣る塗膜しか形成できない。
尚、本発明において、重合開始剤は、エチレン性不飽和モノマー等と一緒に反応容器中に予め仕込んでおいてもよいし、滴下する第2段目に以降のモノマーエマルジョン中に含ませておいても良いし、あるいはエチレン性不飽和モノマーや乳化剤とは別に、反応容器中に滴下して加えてもよい。
【0018】
また、本発明の多段重合ポリマーエマルジョンは、重合に供される全エチレン性不飽和モノマーから求められるガラス転移温度:[全]Tgが10℃〜30℃となるようにすることも重要であり、[全]Tgが15℃〜25℃であることが好ましい。[全]Tgが10℃未満だと、低温造膜性は優れるが高温ブロッキング性が悪くなり、他方[全]Tgが30℃を超えると高温ブロッキング性は優れるが低温造膜性が悪化する。
【0019】
さらに、本発明の多段重合ポリマーエマルジョンは、3段階の重合工程のうち、第1のモノマーエマルジョン中のエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃であり、−30〜−10℃であることが好ましい。
また、第2工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃であり、−30〜−10℃であることが好ましい。
さらにまた、第3工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが40〜100℃であり、60〜90℃であることが好ましい。
また、1〜3段の全工程を通じて重合に供されるモノマー100重量%のうち、
1段目の工程に供され、Tgが−40〜0℃のポリマーを形成し得るモノマーは3〜15重量%、2〜3段目の工程に供されるモノマーは残りの85〜97重量%であることが好ましく、2〜3段目の各工程に供されるモノマーはそれぞれ30〜55重量%であることが好ましい。1段目の工程に供されるモノマーが、3重量%未満であったり15重量%を超えたりするといずれの場合も低温造膜性が悪化する傾向にある。
【0020】
尚、本発明にいうTgとは各モノマーから形成され得る各ホモポリマーのガラス転移温度(Tgn)、重合に供される各モノマーの重量分率から以下の式に基づいて求めることができる。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)
Tg :重合体の計算Tg(絶対温度)
Wn :モノマーnの重量分率
Tgn:モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
【0021】
本発明は多段乳化重合の3段目の工程において、一般式(1)で示される重合性紫外線安定剤を共重合せしめることが重要である。
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、R1は水素原子又はシアノ基を表し、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R4は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、−CO−C(R5)=CH(R6)を表し、Xはイミノ基又は酸素原子を表す。R5、R6はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を表わす。)
【0024】
本発明における重合性紫外線安定剤の具体例としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0025】
本発明においては、前記例示の重合性紫外線安定剤の中でも特に、前記一般式(1)において、R1 が水素原子であり、R2 がメチル基であり、R3 が水素原子であり、R4 が水素原子またはメチル基であり、Xが酸素原子であるような化合物が、特に好ましい。このような化合物としては、具体的には、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等が挙げられる。
【0026】
上記重合性紫外線安定剤の含有量は、重合性紫外線安定剤、後述するシクロアルキル基を有するシランカップリング剤及び後述するエチレン性不飽和モノマーの合計100重量%中に(後述する重合性紫外線吸収剤やエチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤を用いる場合にはこれらも含めて合計100重量%中に)、0.1〜60重量%であるのがよい。重合性紫外線安定剤が0.1重量%未満では耐候性向上の効果を十分に発揮しにくい。また60重量%を越えると重合反応が進行しにくくなり未反応モノマーが多量に残存し、また乳化重合の際に重合安定性も低下し凝集物が発生するので好ましくない。尚、本発明でいうエチレン性不飽和モノマーの中には、重合性紫外線安定剤、後述する重合性紫外線吸収剤やエチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤は含めないものとする。
【0027】
また、本発明においては、後述するようにアクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸を3段目の工程の重合の前までに重合せしめておくことが好ましい。このような場合、上記重合性紫外線安定剤を3段目で乳化重合させる前に、エチレン性不飽和カルボン酸に由来する−COOHをアンモニア水などの中和剤で中和し、予めpHを4.0以上に調整しておくことが好ましい。pHを調整しておかないと重合安定性が悪くなりやすい。
【0028】
また、本発明の多段重合ポリマーエマルジョンは、使用する重合性紫外線安定剤の含有量に応じて様々な使い方ができる。
すなわち、重合性紫外線安定剤の含有量が0.1〜10重量%である場合、多段重合ポリマーエマルジョンそのものをコーティング剤として用い、長期耐候性に優れたコーティング膜が得られる。
【0029】
本発明におけるシクロアルキル基を有するシランカップリング剤の具体例としては、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0030】
本発明においては、前記例示のシクロアルキル基を有するシランカップリング剤の中でも特に好ましい化合物としては、シクロヘキシル基を有し、かつ環状エーテル構造を有しない、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のように環状エーテル構造を有し、この環状エーテル構造が塗膜中で−COOHと反応して水酸基が生成したり、あるいは−COOHと反応することなく開環重合してポリエーテル構造が生成した場合、これらの水酸基やポリエーテル構造が塗膜の耐水性を悪化させることがある。従って、シクロヘキシル基を有し、かつ環状エーテル構造を有しないシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0031】
シクロアルキル基を有するシランカップリング剤の含有量は、シクロアルキル基を有するシランカップリング剤、重合性紫外線安定剤、後述するエチレン性不飽和モノマー、必要に応じて使用し得る重合性紫外線吸収剤及び必要に応じて使用し得るエチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤の合計100重量%中に、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%であるのがよい。シクロアルキル基を有するシランカップリング剤の含有量が0.1重量%未満であると、耐候性および相溶性の向上効果が現れにくく、一方、10重量%を越えると、コーティング膜の耐水性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0032】
本発明は多段乳化重合の3段目の工程において、一般式(2)で示される重合性紫外線吸収剤をさらに共重合せしめること好ましい。
【0033】
【化6】

【0034】
(式中、R7は水素原子又はメチル基を表し、Yは炭素数1〜6のアルキレン基を表す)
【0035】
本発明における重合性紫外線吸収剤の具体例としては、 2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−t−ブチル−3'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
このような化合物としては、特に2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0036】
前記重合性紫外線吸収剤の含有率は、重合性紫外線吸収剤、重合性紫外線安定剤、シクロアルキル基を有するシランカップリング剤、後述するエチレン性不飽和モノマー及び後述するように必要に応じて使用し得るエチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤の合計100重量%中に、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%であるのがよい。重合性紫外線吸収剤の含有率が、0.1重量%未満であると、耐侯性の相乗向上効果が現れにくい。一方、10重量%を越えると、重合安定性が悪く、しかも一般に重合性紫外線吸収剤は高価であり、コスト的に不利となるため、好ましくない。
【0037】
本発明において用いられるエチレン性不飽和モノマーとしては、一般的にラジカル重合反応に用いることができるものであれば特に制限はない。一例を挙げるとすると、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸の各エステル類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;
スチレン、ビニルトルエンの如き芳香族ビニル化合物;
ビニルピロリドンの如き複素環式ビニル化合物;
塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等の如きハロゲン化ビニリデン化合物;
エチレン、プロピレン等の如きα−オレフィン類;
ブタジエンの如きジエン類等がある。
【0038】
又、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、2−メタクリロイルプロピオン酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーも適宜用いることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0039】
さらに本発明の多段重合エマルジョンは、少なくともいずれかの工程においてシクロアルキル基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤を用いることが耐水性の観点から好ましく、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤を用いることがより好ましい。このようなシランカップリング剤としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基を有するシランカップリング剤が挙げられ、低温造膜性の点からビニル基を有するシランカップリング剤が好ましい。このようなシランカップリング剤は、最終段階の重合の際に使用することが好ましい。
尚、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤は、本発明にいうエチレン性不飽和モノマーには含めないものとする。
【0040】
乳化剤は、乳化重合で使用されているものであれば如何なるもので用いることができる。代表的なものをあげると、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩類、ジアルキルスルホサクシネートの塩類等のアニオン乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン乳化剤などが挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、乳化重合時に用いることが出来る乳化剤であれば上記骨格に限定せず、如何なるものでも用いることが出来、また、これらを複数種併用することも可能である。これら乳化剤としては、内分泌攪乱作用物質(環境ホルモン物質)に該当しないものを使用することが好ましい。形成される塗膜の耐水性等の観点より反応性乳化剤が好ましい。
【0041】
反応性乳化剤の具体例としては、ビニルスルホン酸ソーダ、アクリル酸ポリオキシエチレン硫酸アンモニウム、メタクリル酸ポリオキシエチレンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルケニルフェニル硫酸ソーダ、ナトリウムアリルアルキルスルホサクシネート、メタクリル酸ポリオキシプロピレンスルホン酸ソーダ等のアニオン系反応性乳化剤、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメタクリロイルエーテル等のノニオン系反応性乳化剤などが挙げられる。
【0042】
例えば、反応性乳化剤の市販品としては、アクアロンHS−10、KH−10、 ニューフロンティアA−229E〔以上、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープSE−3N、SE−5N、SE−10N、SE−20N、SE−30N〔以上、旭電化工業(株)製〕、AntoxMS−60、MS−2N、RA−1120、RA−2614〔以上、日本乳化剤(株)製〕、エレミノールJS−2、RS−30〔以上、三洋化成工業(株)製〕、ラテムルS−120A、S−180A、S−180〔以上、花王(株)製〕等のアニオン型反応性乳化剤、
アクアロンRN−20、RN−30,RN−50,ニューフロンティアN−177E〔以上、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープNE−10、NE−20,NE−30、NE−40〔以上、旭電化工業(株)製〕、RMA−564,RMA−568,RMA−1114〔以上、日本乳化剤(株)製〕、NKエステルM−20G、M−40G、M−90G、M−230G〔以上、新中村化学工業(株)製〕等のノニオン型反応性乳化剤等が挙げられ、
非反応性乳化剤としては、1118S−70、エマ−ル10〔花王(株)製〕等が挙げる。これらを複数種併用することも可能である。
尚、反応性乳化剤は、本発明にいうエチレン性不飽和モノマーには含めないものとする。
【0043】
本発明において用いることが出来るラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル及びその塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサド,等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。また、これらラジカル開始剤と併用可能な還元剤としては、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸等が挙げられる。尚、詳細な理由は、まだ不明ではあるが、低温造膜性の観点からは、ラジカル開始剤と還元剤とを併用するレドックス系開始剤ではなく、ラジカル開始剤のみを用いる熱分解系の開始剤が好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の部及び%はいずれも重量に基づく値である。
【0045】
実施例1
第1のモノマーエマルジョン
イオン交換水372部、メタクリル酸シクロヘキシル(以後、「CHMA」と略す)7部、メタクリル酸メチル(以後、「MMA」と略す)8部、アクリル酸ブチル(以後、「BA」と略す)53部、アクリル酸(以後、「AA」と略す)1.5部,メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以後「2−HEMA」と略す)1.5部、アクアロンKH−10〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕4部をイオン交換水16部に溶解させた乳化剤水溶液20部、エマルゲン1118−70をイオン交換水17.5部に2.5部を溶解させた乳化剤水溶液20部を混合し、モノマーエマルジョン(a)を作製した。
【0046】
第2のモノマーエマルジョン
また、イオン交換水143部、CHMA43部、MMA48部、BA320部、AA9部,2−HEMA9部、アクアロンKH−10〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕8部をイオン交換水32部に溶解させた乳化剤水溶液40部、エマルゲン1118−70をイオン交換水17.5部に2.5部溶解させた乳化剤水溶液20部を混合し、モノマーエマルジョン(b)を作製した。
【0047】
第3のモノマーエマルジョン
更に、イオン交換水135部、CHMA49.5部、MMA382.6部、BA43部、2−HEMA9.9部、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−
ペンタメチルピペリジン5部、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール5部、アクアロンKH−10〔第一工業製薬(株)製アニオン性反応性乳化剤〕8部をイオン交換水32部に溶解させた乳化剤水溶液40部、エマルゲン1118−70をイオン交換水17.5部に2.5部溶解させた乳化剤水溶液20部,シクロヘキシルトリメトキシシラン10部を混合し、モノマーエマルジョン(c)を作製した。
【0048】
開始剤水溶液
過硫酸カリウム(以後、「KPS」と略す)4部をイオン交換水76部に溶解させることにより、開始剤水溶液を作製した。
【0049】
撹拌機、温度計、冷却装置を取り付けた2.5リットル反応容器にモノマーエマルジョン(a)を仕込み、窒素ガスを送入しつつ撹拌しながら反応容器内を75℃に昇温した。昇温後、上記開始剤水溶液のうち8部を反応容器内に滴下投入してモノマーエマルジョン(a)の乳化重合を開始させた。
モノマーエマルジョン(a)が反応開始して10分後、反応容器内の液温を75℃に保持しながら、モノマーエマルジョン(b)及び上記開始剤水溶液のうち30部をそれぞれ100分間かけて滴下した。
モノマーエマルジョン(b)滴下終了30分後、反応容器内の液温を75℃に保持しながら、14%アンモニア水でpHを調整しpH5にしてからモノマーエマルジョン(c)及び上記開始剤水溶液のうち30部をそれぞれ100分間かけて滴下した。
滴下終了後、さらに75℃で2時間保持した後、室温まで冷却し、14%アンモニア水を用いてpHを調整し、多段重合によるポリマーエマルジョンを得た。得られたポリマーエマルジョンは、不揮発分51.5%、粘度1230mPa・s、pH8.5であった。
表1に、ポリマーエマルジョンの形成に供された各段階のモノマーから形成され得るポリマーのTg及び[全]Tgの計算値、ポリマーエマルジョンの不揮発分濃度、粘度、pH、重合安定性、並びに5℃における造膜性、最低造膜温度(MFT)、形成された塗膜のブロッキング性、耐候性、耐水性を示す。
【0050】
実施例2、3
表1に示すような各段の組成からなる重合性組成物を使用したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーエマルジョンを作製し、多段重合によるポリマーエマルジョンを得た。
【0051】
実施例4
ピロ亜硫酸ソーダ4部(以後、「SMBS」と略す)をイオン交換水76部に溶解させてなる還元剤水溶液を作製し、該還元剤水溶液を実施例4で用いた過硫酸カリウム水溶液と同量並行添加したこと以外は実施例4と同様にして、多段重合によるポリマーエマルジョンを作製した。
【0052】
比較例1
反応容器にはイオン交換水のみ405.5部を仕込み、75℃に昇温してから、表1に示すモノマ−エマルジョン(b)及び過硫酸カリウム水溶液38部をそれぞれ100分間かけて滴下した。次いで、モノマーエマルジョン(b)滴下終了30分後、反応容器内の液温を75℃に保持しながら、モノマーエマルジョン(c)及び過硫酸カリウム水溶液30部をそれぞれ100分間かけて滴下したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーエマルジョンを作製した。
【0053】
比較例2、3
表1に示すような各段の組成からなる重合性組成物を使用したこと以外は比較例1と同様にしてポリマーエマルジョンを作製した。
【0054】
なお、計算Tg値は、以下の計算式で算出した。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)
Tg :重合体の計算Tg(絶対温度)
Wn :モノマーnの重量分率
Tgn:モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
【0055】
上記Tg値の算出に用いたホモポリマーのガラス転移温度(Tgn)は、以下の通りである。
メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)のホモポリマー :66℃
アクリル酸ブチル(BA)のホモポリマー :−45.2℃
メタクリル酸メチル(MMA)のホモポリマー :104.8℃
メタクリル酸(MAA)のホモポリマー :130.0℃
アクリル酸(AA)のホモポリマー : 106.0℃
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(2-HEMA) のホモポリマー: 55.0℃
【0056】
重合安定性の評価:得られた各ポリマーエマルジョンを100メッシュ濾過布でろ過し、濾過布上に残った残滓の乾燥重量を下記の基準で評価した。
○=ポリマーエマルジョン1Kgあたり0.1g未満
△=ポリマーエマルジョン1Kgあたり0.1g以上〜1.0g未満
×=ポリマーエマルジョン1Kgあたり1.0g以上
【0057】
5℃における造膜性:得られた各ポリマーエマルジョンを、ガラス板に6MILの厚さに塗布し、5℃の環境下に16時間静置乾燥し、造膜状態を目視観察した。
○=均一な塗膜が形成できた。
△=塗膜は形成できたが、クラックが生じた。
×=塗膜は形成できず、粉々になった。
【0058】
MFT(最低造膜温度)の測定:JIS−K−6828の試験方法に準じて、得られた各ポリマーエマルジョンをガラス板に0.3mmの厚さに塗布し、これを一方の端を高温に、他の端を低温にした熱板上にのせ、均一な乾燥塗膜を形成し得る最低の温度を求めた。
【0059】
ブロッキング性の評価:得られた各ポリマーエマルジョンをガラス板上に6ミルアプリケータで塗布し、20℃で3日間乾燥させた後、40℃乾燥機中で30分乾燥した。次いで、塗膜表面に新聞紙を乗せ、0.5kg/cm2の荷重をかけ、12時間、50℃の温度環境下で放置した後の新聞紙の付着度を、以下の基準で目視判定した。
○:付着していない
△:少し付着している
×:かなり付着している
【0060】
耐候性の評価:得られた各ポリマーエマルジョンを黒色アクリル板上に6ミルアプリケータで塗布し、20℃で3日間乾燥させた後、40℃乾燥機中で30分乾燥した。 その後下記条件で促進耐候性試験を行い評価した。
試験機:QUV/Spray 耐候試験機(Q-Panel Lab Products社製)
ランプ:UVB-313
試験サイクル;照射65℃ 8時間、シャワー:5分間、結露:50℃ 3時間55分
試験時間:5000時間
上記条件での試験前後での塗膜の光沢保持率で評価した。
◎ :光沢保持率 90%以上
○:光沢保持率 80%以上90%未満
△:光沢保持率 50%以上80%未満
× :光沢保持率 50%未満
【0061】
耐水性の評価:得られた各ポリマーエマルジョンをガラス板に6MILの厚さに塗布し、20℃で6時間乾燥後40℃乾燥幾で30分乾燥し、25℃水に1時間浸漬し、塗膜の状態を目視評価した。
○=白化無し,△=かなり白化,×=全面が著しく白化
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和モノマーを含む重合性組成物を水性媒体中で3段階の工程で乳化重合してなる多段重合ポリマーエマルジョンであって、
重合に供される全エチレン性不飽和モノマーから求められるポリマー全体のガラス転移温度:[全]Tgが10〜30℃であり、
反応容器中に仕込んだエチレン性不飽和モノマー、乳化剤及び水を含有する第1のモノマーエマルジョンを重合し、第1のポリマーエマルジョン(A)を得、
次いで該第1のポリマーエマルジョン(A)の存在下に、エチレン性不飽和モノマー、乳化剤及び水を含有する第2工程以降のモノマーエマルジョンを順次重合してなり、
第1のモノマーエマルジョン中のエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃、
第2工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃、
および第3工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが40〜100℃であり、
かつ、シクロアルキル基を有するシランカップリング剤の存在下に、一般式(1)で示される重合性紫外線安定剤を必須成分とする重合性組成物を前記第3工程で重合せしめてなることを特徴とする多段重合ポリマーエマルジョン。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はシアノ基を表し、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R4は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、−CO−C(R5)=CH(R6)を表し、Xはイミノ基又は酸素原子を表す。R5、R6はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を表わす。)
【請求項2】
第1〜第3工程の少なくともいずれかの工程において重合に供されるモノマーエマルジョンが、シクロアルキル基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1記載の多段重合ポリマーエマルジョン。
【請求項3】
重合開始剤が、熱分解系であることを特徴とする請求項1又は2記載の多段重合ポリマーエマルジョン。
【請求項4】
一般式(1)で示される重合性紫外線安定剤を必須成分とする重合性組成物を第3工程で重合せしめる際に、下記一般式(2)で示される重合性紫外線吸収剤を併用してなることを特徴とする請求項1ないし3記載の多段重合ポリマーエマルジョン。
【化2】

(式中、R7は水素原子又はメチル基を表し、Yは炭素数1〜6のアルキレン基を表す)
【請求項5】
エチレン性不飽和モノマーを含む重合性組成物を水性媒体中で3段階の工程で乳化重合する多段重合ポリマーエマルジョンの製造方法であって、
重合に供される全エチレン性不飽和モノマーから求められるポリマー全体のガラス転移温度:[全]Tgが10〜30℃であり、
反応容器中に仕込んだエチレン性不飽和モノマー、乳化剤及び水を含有する第1のモノマーエマルジョンを重合し、第1のポリマーエマルジョン(A)を得、
次いで該第1のポリマーエマルジョン(A)に、エチレン性不飽和モノマー、乳化剤及び水を含有する第2工程以降のモノマーエマルジョンを順次添加、重合し、
第1のモノマーエマルジョン中のエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃、
第2工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが−40〜0℃、
および第3工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマーから形成され得るポリマーのTgが40〜100℃であり、かつ、シクロアルキル基を有するシランカップリング剤の存在下に、一般式(1)で示される重合性紫外線安定剤を必須成分とする重合性組成物を第3工程で重合することを特徴とする多段重合ポリマーエマルジョンの製造方法。
【請求項6】
第1のモノマーエマルジョン中のエチレン性不飽和モノマー量が全エチレン性不飽和モノマー量の3〜15重量%、第2工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマー量が全エチレン性不飽和モノマー量の30〜55重量%、および第3工程の重合に供されるエチレン性不飽和モノマー量が全エチレン性不飽和モノマー量の30〜55重量%であることを特徴とする請求項5記載の多段重合ポリマーエマルジョンの製造方法。


【公開番号】特開2007−246800(P2007−246800A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74284(P2006−74284)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】