説明

多段階ディスペンスマット

揮発性材料を供給するマット(10)を開示する。本発明のマットは上面において堀状凹部を含み、堀状凹部により第1のマット部分(24)と第2のマット部分(26)とを画成する。第1のマット部分(24)と第2のマット部分(26)は好ましくは、堀状凹部(18)の底部で接続される。両部分とも、同じかまたは異なる揮発性材料を染み込ませる。凹部は、マットの上面に熱成形型を押し付けることによって形成される。上部壁部に押し付けている間、熱成形型は、マット材料を溶融し、材料中の微細孔の閉塞を生じ、その結果、凹部壁に沿ったバリアが形成される。凹部及びバリアは、マットの2つの部分の間の揮発性材料の滲み出し(ブリーディング)を防ぐかまたは低減するように作用する。マットは、揮発性材料の即時の放出と、その後の揮発性材料の持続性気化の両方を実現できる。マットを形成する方法及び使用する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
該当なし
【0002】
(連邦政府がスポンサーの研究開発に関する説明)
該当なし
【0003】
本発明は、殺虫剤、防虫剤、芳香剤及び脱臭剤等の揮発性材料を供給することに関する。本発明は、マットが加熱されたときに、揮発性材料を放出するために、ヒータ上に置かれるようにデザインされたマットを提供する。
【背景技術】
【0004】
プラスチックマットを含む固体多孔性マットに、揮発性材料を染み込ませる、または、マットを揮発性材料で被覆すること、および/または金属鍋状構造内に揮発性材料を配置することが知られている。そして、それらの構造体は、揮発性材料を周囲空気中に気化させるために、ヒータ上に配置される。概括的には、米国特許第6,031,967号及び国際公開第99/66791号を参照。これらの公報の開示、および本明細書で参照する他の全ての公報の開示は、本明細書に全て記載されていると同様に組み入れられる。
【0005】
しかし、マットの加熱の開始時と、室内の反応性物質の濃度が所望のレベルに達するときの間には、タイムラグがある可能性がある。例えば、マットが殺虫剤を含む場合、蚊または他の虫に対する所望のレベルの防御が達せられるまでには、数分かかる可能性がある。これは、当該製品が主として、反応性物質の長時間にわたる放出を実行できるように(例えば、蚊に対する一晩中の防御を実行できるように)デザインされている場合に、特に問題である。
【0006】
上記タイムラグを最小化するために、マット内の反応性物質の濃度を増加させることを試みることもできる。しかし、反応性物質は多くの場合、コストがかかり、また、いずれにしても、高められた濃度は、不必要に高いレベルの殺虫剤をもたらし、または、開始初期時間後に、他の反応性物質が空気中に供給される可能性がある。
【0007】
別のアプローチは、ヒータが、初期段階の間は、ある温度で作動し、その後、残りの全ての時間においては、それより低い温度で作動するように、ヒータを改良することであろう。しかし、一般の人々のほとんどは、現在所有しているヒータを捨てて、この機能を有する新たなヒータのためのコストを払おうとはしないであろう。いずれにしても、将来のヒータにおいてこの機能を含むませることは、そのようなヒータのコストを不必要に増加させることになるであろう。
【0008】
米国特許第5,657,574号は、均一な濃度の昆虫防除剤を、その全域に拡散させた蚊取り線香を提案したが、蚊取り線香は、拡がった着火端部を有している。蚊取り線香が最初に着火されると、蚊取り線香は、そのとき、より多めに燃焼するため、余分な量の殺虫剤が供給された。しかし、このアプローチは、マットの底部全体が、同時に熱源にさらされるようにデザインされているマットには適していない。
【0009】
国際公開第99/66791号は、インデックス式でのヒータへの挿入用の厚板型マットを提供した。マットの個々の領域は、順に加熱される。厚板の主な目的は、先行する部分が使い尽くされたときに、ヒータ上の新たなマット部分を指標付けるためのメカニズムを与えることである。しかし、該公報は、一連の領域が、異なる揮発性成分、または、同じ揮発性成分の異なる濃度を有する可能性があることも説明している。提示されている一つの実施例は、夜間に使用される高濃度部分と、日中に使用される低濃度部分とを形成することである。あいにく、このアプローチは、次の段階の使用を望んだ場合に、ユーザが、厚板を連続的に動かすことを要する。
【0010】
米国特許第6,551,560号は、外側マットと、該マット全体にわたって伸びる垂直方向の溝によって分離された中央下方部分とを備えるマットを開示している。異なる殺虫剤または異なる濃度の揮発性材料を、2つのセルロース部分の各々に設けることができる。(発展途上国で一般に使用されているような低コストのヒータは、多くの場合、ヒータの中心付近を最も熱く加熱するため)中央部分は、典型的には、より素早く加熱された。その結果として、中央部の殺虫剤は、より素早く分散され、一方、外側マットの殺虫剤は、より遅く分散された。
【0011】
これらのマットは、材料を完全に切断しなければならず、その結果、組立てる必要のある多数の部材を生じるため、製造するのが多少困難であった。これは、製造原価を上昇させた。
【0012】
米国特許第4,439,415号は、異なる殺虫剤または他の揮発性材料が含浸された個々の領域を有する、殺虫性の気体を供給する基板について記述している。個々の領域は、材料を非吸収性にする物質によって分離された部分を有する単一の基板上に設けられるか、または、異なる基板から構成されて結合される。この場合も、多数の部材を必要とした。
【0013】
英国特許第2,122,903号は、1つ以上の紙片が上に載せられたアルミ箔底部層を有する基板を教示した。紙片は、液体の浸透を防ぐ、ゴムまたは合成樹脂で形成されたセパレータによって分割されていた。そのため、異なる揮発性材料を、第1の紙片からの揮発性材料を第2の紙片に移動させることなく、紙片上に設けることができた。この方法も、難しい製造工程を必要とした。
【特許文献1】米国特許第6,031,967号
【特許文献2】PCT国際公開第99/66791号
【特許文献3】米国特許第5,657,574号
【特許文献4】米国特許第6,551,560号
【特許文献5】米国特許第4,439,415号
【特許文献6】英国特許第2,122,903号
【0014】
従って、改良された揮発性材料供給マットに対する必要性がいまだにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、加熱されたときに、揮発性気体を供給するマットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
マットは、基板の上部壁内に堀状凹部を有する多孔性基板を備える。堀状凹部を有する多孔性基板は加熱成形型を用いて、基板の上部壁をプレスすることによって形成される。堀状凹部は、好ましくは、基板が単一片の構成要素のままであるように、基板の底部まで及んでいない。堀状凹部は、好ましくは、該堀状凹部の底部で接続された、第1基板部と、第2基板部とを画成する。第1基板部には、第1の揮発性材料が施され、該揮発性材料は、昆虫防除剤、芳香剤、脱臭剤及びこれらの組合せからなる群より選択される反応性物質を含む。第2基板部には、第2の揮発性材料が施されており、該揮発性材料は、昆虫防除剤、芳香剤、脱臭剤及びこれらの組合せからなる群より選択される反応性物質を含む。好ましくは、堀状凹部は、第1基板部の径方向外側に配置されており、第2基板部は、堀状凹部の径方向外側に配置されている。
【0017】
上記「マット」という用語は、本明細書において、形状に関係なく、従来の気体ディスペンサとの使用に適したいかなる構造も含む。厚板状マットが好適である。
【0018】
上記「昆虫防除」という用語は、殺虫、虫除け、あるいは、別の方法で昆虫の挙動または成長を変えることを意味するように定義されている。「昆虫防除剤」は、本明細書において、殺虫剤及び防虫剤だけでなく、成長調節剤または昆虫防除を実現することが可能な他の薬剤も含むように、最も広義に用いている。「昆虫」は、実際の昆虫に加え、蜘蛛、ヤスデ、および昆虫と同じ方法で、または、同じ薬剤で一般に制御される他の小動物を意味するように定義される。
【0019】
本発明のマットを作るのに用いる基板は、揮発性材料を保持するのに適した多孔性材料である。さらに、該材料は、熱成形型が接触したときには溶融するように十分に熱に敏感であるが、従来の電気ヒータ等のヒータからの熱が存在する場合の溶融に対しては本質的に耐性があるように十分に耐熱性である。例えば、市場に出回っているほとんどのヒータは、160℃〜180℃の範囲を超える熱を発生せず、多くは約160℃までであり、あるものは、180℃付近までである。その結果、160℃以下、または180℃以下の温度の溶融に対して本質的に耐性があるが、200℃以上等のより高温での熱成形型によってプレスされた場合には、溶融して堀状凹部を形成する材料が、適当な材料である。一実施形態において、本発明のマットは、プラスチック材料で形成されている。使用できるプラスチック材料の実例は、限定するものではないが、ポリエチレンを含む。
【0020】
マットの第1の部分に施される第1の揮発性材料は、マットの第2の部分に施される第2の揮発性材料と同じとするか、または、異ならせることができる。後者の場合、第1の揮発性材料は、第2の揮発性材料中には存在しない反応性物質を有することができ、または、第2の揮発性材料は、第1の揮発性材料中には存在しない反応性物質を有することができる。別法として、第1の揮発性材料には、第2の揮発性材料中の反応性物質と同じである少なくとも1つの反応性物質を与えることができるが、反応性物質は、第2の揮発性材料中とは異なる濃度(典型的には、第1の揮発性材料中の方がより高い濃度)で第1の揮発性材料中に存在する。また別の代替例として、第1の揮発性材料は、第2の揮発性材料中の反応性物質と同じである少なくとも1つの反応性物質を有することができるが、第1の揮発性材料の残部は、第2の揮発性材料の残部と完全に同じでなくてもよい。
【0021】
昆虫防除用途において、第1の部分を用いて昆虫防除物質を素早く分散させて、急速防除を実現し、第2の部分を用いて、防除持続性のために、昆虫防除物質をよりゆっくりと分散させることが好ましい。一つの方策は、第1の部分に高熱を与えて、第2の部分により低い熱を与えることである。この点においては、中心に配置された第1の部分を有するマットが、中心付近が最も熱くなるほとんどの現存するヒータと共に使用することができるので、好適である。他の(代替的なまたは追加的な)方策は、その全体が記載されていると同様に本明細書に組み込む米国特許第6,551,560号に例示されているように、適切な溶媒、結合剤、反応性物質及び活性濃度の選定によって、放出の速度を遅らせることまたは増加させることを含む。
【0022】
別の形態では、本発明は、昆虫を防除する方法を提供する。本発明のこのようなマットをヒータ上に配置して、マットを加熱し、それによって、第1及び第2の揮発性材料をマットから供給する。
【0023】
本発明のさらに別の形態においては、このようなディスペンスマットを構成する方法が提供される。基板材料からなる厚板を得る。次いで、熱成形型を用いて、厚板の一部を圧迫して堀状凹部を形成する。堀状凹部は、好ましくは、該堀状凹部の底部で接続された第1の厚板部分及び第2の厚板部分を画成する。そして、第1の揮発性材料をマットの第1の部分に配置し、第2の揮発性材料をマットの第2の部分に配置する。堀状凹部は、(例えば、マットが、輸送、棚卸または陳列のために保管されている間)マットの該2つの部分の間の滲み出し(ブリード)を最小化するように作用する。
【0024】
昆虫防除装置として用いる場合、本発明の装置は、ユーザが、長時間の防御を犠牲にすることなく、所望の防御を非常に素早く実現できるようにする。脱臭剤または芳香剤を一定量供給する場合、本発明は、長時間にわたって芳香を供給する機能を犠牲にすることなく、(例えば、トイレ内の)既存の悪臭を迅速に覆い隠すという利点を有する。
【0025】
本発明はさらに、安価なヒータの欠点(加熱面における不均一な加熱)を利点に変えることが可能である。このことは、高速放出部を中央に配置することによって実現される。
【0026】
これらの利点は、該アイテムを生産することができる非常に効率的な製造プロセスを可能にすることと同時に実現される。低コストの熱成形型のプレス成型工程は、堀状凹部を素早く形成することができる。堀状凹部を形成するために、熱成形型を基板の上方壁部に押し付けると、型は基板を溶融させて、基板内の微細孔の閉塞を生じ、それに伴って、堀状凹部の壁部に沿ったバリアの形成をもたらす。該バリアは、第1の基板部分内の揮発性材料と、第2の基板部分内の揮発性材料との間の滲み出し(ブリーディング)を防ぐかまたは低減することができる。そのため、化学的に分離された領域を有するマットが、複数の部材の組立て、および/またはブリーディングを防ぐセパレータとしての堀状凹部の充填材の使用を要することなく、形成される。
【0027】
本発明のこれら及び他の効果は、以下の説明から明らかになるであろう。以下の説明においては、本発明の好適な実施形態が例証として示されている添付図面について言及する。しかし、特許請求の範囲が、本発明の全範囲を判断するのに参照されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
まず、図1について説明すると、マット10が、電気ヒータ14の水平バーナー面12上に配置されて示されている。ヒータ14は、S.C.Johnson&Son,Inc.によりRAID(登録商標)ヒータとして販売されているヒータ等の電気抵抗ヒータとすることができる。しかし、限定するものではないが、水平、垂直または他の方向の加熱面を含む他のヒータも用いることができる。
【0029】
マットの第1の好適な実施形態は、図2A及び図2Bに異なる方向から示されている。マット10は、揮発性材料を保持するのに適した多孔性材料で形成された厚板状ボディ16を含む。さらに、該多孔性厚板材料は、熱成形型が接触した際に溶融するように十分に熱に敏感であるが、ヒータ14からの熱に対しては溶融しないように十分に耐熱性でもある。厚板状ボディ16は、上面20を熱成形型に押し付けることによって形成された円形凹部18を上面20に有する(熱成形型を用いてプラスチック材料をプレスすることの実施例については、米国特許第3,075,862号を参照)。凹部18は、ボディ16の深さ全体を貫通して伸びてはおらず、その結果、ボディ16は、凹部18の底部22で接続された材料からなる単一片のままである。凹部18は、凹部18の底部22でのみ接続された第1の厚板部分24及び第2の厚板部分26を画成する。各部分は、同じかまたは異なる揮発性材料を染み込ませることができる。該揮発性材料または製剤は、明確に異なる気化速度を有してもよい。
【0030】
凹部18を形成するために、熱成形型を厚板状ボディ16の上部壁20に押し付けると、型は、該型に隣接する領域でボディ16を溶融して、それらの領域内の微細孔の閉塞を生じ、それに伴って、凹部18の壁部28に沿ったバリアの形成をもたらす。バリアは、第1の部分24内の揮発性材料と、第2の部分26内の揮発性材料との間の滲み出し(ブリーディング)を防ぐかまたは低減することができる。凹部の底部22を介した部分24、26間のわずかなブリーディングの可能性がわずかにあるが、このブリーディングは、凹部の底部22を非常に薄くプレスすれば、無視できるレベルまで最小化することができる。好ましくは、凹部の底部22は、熱成形型が、底部22の深部の全域で、ある程度の溶融を引き起こして、十分な数の微細孔を閉塞し、底部22を介したブリーディングを完全に阻止するように、十分に薄くプレスされる。
【0031】
第1の部分24及び第2の部分26にはそれぞれ、第1の揮発性材料または製剤30と、第2の揮発性材料または製剤32とを染み込ませてあり、かつ該製剤が被覆されている。ヒータのバーナー面12上に置くと、揮発性材料は、(マット10が加熱されると)マット10から放出される。有利には、第1の部分24は、本質的にボディ16の中心にあり、これは、一般に、低コストのヒータに付随する、バーナー面の中心における高温の利点を活かすものである。
【0032】
好ましくは、第2の部分26には、より遅い放出性反応性成分を有する第2の揮発性材料32を染み込ませてあり、第1の部分24は、より速い放出性反応性成分を有する化学的に異なる第1の揮発性材料30で被覆されている。昆虫防除装置として、好ましくは、第2の揮発性材料32は、40%のd−アレスリン(殺虫剤反応性成分)、40%のピペロニルブトキシド(PBO、相乗性/放出性剤)及び20%のIsopar M(溶剤)からなる化学的組成を有する100mgの液状溶液である。第1の揮発性材料30は、好ましくは、4%のトランスフルスリン(殺虫剤反応性成分)及び96%のIsopar E(溶媒)を有する50mgの液状溶液である。トランスフルスリンは、より高い気化圧力を有するため、d−アレスリンの気化よりもより急速に気化する。
【0033】
マット10は加熱されると、ヒータ14の起動時における第1の揮発性材料30の即座の初期放出を行う。また、該マットは、少なくとも6時間から8時間、および1日以上程度続く長時間にわたる防御のための第2の揮発性材料32の均一かつ有効な持続性放出を実行できる。
【0034】
別法として、揮発性材料30及び32は、公知の適当な他の何らかの殺虫剤、防虫剤、成長調節剤または他の昆虫防除剤とすることができる。例えば、揮発性材料30及び32は、有機リン殺虫剤、脂質アミド殺虫剤、シトロネラ油等の自然の防虫剤、自然の除虫菊及び除虫菊抽出物、および合成ピレスロイドを含むことができる。適当な合成ピレスロイドは、d−アレスリン、アレスリン、ベンフルスリン、ビフェンスリン、S−バイオアレスリン、エスビオスリン、エスビオール、バイオレスメスリン、シクロプロスリン、シフルスリン、β―シフルスリン、シハロスリン、デルタメスリン、エンペンスリン、エスフェンバレレート、フェンプロパスリン、フェンバレレート、フルシスリネート、タウフルバリネート、カデスリン、ペルメスリン、フェノスリン、プラレスリン、レスメスリン、テフルトリン、テトラメトリンまたはトラロメスリン等のアレスリンを含む。米国特許第4,439,415号に記載されているような他の揮発性殺虫剤も用いることができる。
【0035】
また、メトプレンやヒドロプロン等の揮発性昆虫成長制御剤も用いることができる。別法として、または追加的に、リモネン、ユーカリ及びシトロネラ等の芳香剤及び脱臭剤を用いてもよい。
【0036】
一つの形態において、厚板状ボディ16は、幅約22mm、長さ35mm及び厚さ2mmを有することができる。凹部18によって囲まれた第1の部分24は、中央に位置しており、凹部18は、約9mmの内径及び約12mmの外径を有することができる。凹部18の深さは、約1.5〜1.8mmとすることができる。
【0037】
凹部18は、多角形形状、楕円形形状及び星形形状等の他の形状とすることができることに留意されたい。複数の同心状凹部を「牛の目」パターンで有するマットにより、3つ以上の異なるディスペンス部分を形成するように設けることもできることは明白である。異なるマット部分の各々の色は、例えば、含浸材料中に様々な染料を含めることにより、別々にかつ異ならせて着色することができる。染料も揮発性である場合、色の変化または退色は、使い果たしの合図とすることができる。
【0038】
図3A及び図3Bは、本発明の代替実施形態を示し、同様の構成要素は、「a」という添え字を伴っているが、同様の参照数字で表されている。この実施形態において、マット10aは、上面20aに熱成形型を押し付けることによって形成された概して直線状の堀状凹部18aを、ボディ16aの上面20a上を横断して有している厚板状ボディ16aを含む。凹部18aは、ボディ16aの深さ全体を貫通して伸びてはおらず、その結果、ボディ16aは、単一片の構成要素のままである。凹部18aは、凹部18aの底部22aでのみ接続された第1の厚板部分24aと、第2の厚板部分26aとを画成する。各部分には、同じかまたは異なる揮発性材料を染み込ませてある。厚板状ボディ16aのための材料と、染み込ませ部分24a及び26aのための揮発性材料とを含む、マット10aを構成するのに用いられる材料は、好ましくは、上記第1の実施形態に関して説明したものと同じである。また、マット10aは、第1の実施形態と同じように用いられ、ヒータにより十分に加熱された場合に、揮発性材料の複数の気化速度を実現できる。
【0039】
本発明のマットを、また別の実施形態において形成することができることを正しく認識すべきである。それらも本発明の範囲に含まれることが意図されている。
【0040】
また、本発明のマットは、限定するものではないが、公知のグリコール、トリメチレン及びジプロピレンを含む、消毒、芳香、脱臭目的のための様々な反応性物質成分のいずれかを用いて、消毒剤/芳香剤/脱臭剤とすることもできる。さらに、同じ反応性物質及び基板の場合でも、本発明に従って構成したマットは、溶剤、結合剤等が、放出速度を適切に制御するように調節されていれば、多段階放出を実現することができる。従って、特許請求の範囲は、本発明の全範囲を判断するために参照すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、昆虫防除剤、芳香剤、消毒剤および同様の有用な揮発性材料の制御された放出のためのマットを提供し、揮発性材料の放出は、該製品が使用され、その後、同じかまたは別の揮発性材料の長時間にわたる放出が続く場合に生じる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ヒータ上に配置されている本発明のディスペンスマットの斜視図である。
【図2A】本発明の2段階マットの第1の実施形態の平面図である。
【図2B】図2Aの線2B−2Bに沿った断面図である。
【図3A】本発明の第2の実施形態の平面図である。
【図3B】図3Aの線3B−3Bに沿った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性気体を供給するマットであって、
第1基板部分及び第2基板部分を有する基板であって、前記第1基板部分が、第1揮発性材料を有し、前記第1揮発性材料が、昆虫防除剤、芳香剤、脱臭剤及びそれらの組合せからなる群より選択される反応性物質を含み、前記第2基板部分が、第2揮発性材料を有し、前記第2の揮発性材料が、昆虫防除剤、芳香剤、脱臭剤及びそれらの組合せからなる群より選択される反応性物質を含み、前記基板が、熱成形型が接触したときには溶融するように熱に反応するが、ヒータからの熱が存在するときに使用されるのが適当であるように耐熱性でもある多孔性材料で形成されている基板と、
前記基板中に少なくとも部分的に伸び、かつ前記第1基板部分と、前記第2基板部分とを画成する堀状凹部であって、前記基板の上部壁の一部に熱成形型を押し付けることによって形成される堀状凹部と、
を備えるマット。
【請求項2】
前記堀状凹部が、前記第1基板部分の径方向外側に位置しており、前記第2基板部分が、前記堀状凹部の径方向外側に位置している、請求項1に記載のマット。
【請求項3】
前記第1基板部分が、前記基板の中央に位置している、請求項1に記載のマット。
【請求項4】
前記堀状凹部の凹部壁に沿った微細孔は、前記熱成形型によって引き起こされた前記基板の溶融により閉塞され、それにより、凹部壁に沿ったバリアの形成が生じ、これにより、前記第1基板部分から前記第2基板部分への前記第1の揮発性材料の滲み出し(ブリーディング)を阻止する、請求項1に記載のマット。
【請求項5】
前記基板がプラスチック材料で形成されている、請求項1に記載のマット。
【請求項6】
前記プラスチック材料がポリエチレンである、請求項5に記載のマット。
【請求項7】
前記基板が、160℃以下の温度での溶融に対して、本質的に耐性があるように、耐熱性である材料で形成されている、請求項1に記載のマット。
【請求項8】
前記基板が、180℃以下の温度での溶融に対して、本質的に耐性があるように、耐熱性である材料で形成されている、請求項1に記載のマット。
【請求項9】
前記基板が、200℃以上の作用温度で、熱成形型によってプレスされたときに、溶融して、前記凹部を形成するように、熱に反応する材料で形成されている、請求項1に記載のマット。
【請求項10】
前記第1の揮発性材料と前記第2の揮発性材料とが同じである、請求項1に記載のマット。
【請求項11】
前記第1の揮発性材料と、前記第2の揮発性材料とが異なる、請求項1に記載のマット。
【請求項12】
前記第1の揮発性材料が、前記第2の揮発性材料中に存在しない反応性物質を有する、請求項11に記載のマット。
【請求項13】
前記第2の揮発性材料が、前記第1の揮発性材料中に存在しない反応性物質を有する、請求項11に記載のマット。
【請求項14】
前記第1の揮発性材料は、前記第2の揮発性材料中の反応性物質と同じである少なくとも1つの反応性物質を有しているが、その反応性物質は、前記第2の揮発性材料中の反応性物質とは異なる濃度で、前記第1の揮発性材料中に存在する、請求項11に記載のマット。
【請求項15】
前記第1の揮発性材料は、前記第2の揮発性材料中の反応性物質と同じである少なくとも1つの反応性物質を有しているが、前記第1の揮発性材料の残部は、前記第2の揮発性材料の残部と等しくない、請求項11に記載のマット。
【請求項16】
昆虫を制御する方法であって、
第1基板部分及び第2基板部分を有する基板であって、前記第1基板部分が、第1の揮発性材料を有し、前記第1の揮発性材料が、昆虫防除剤、芳香剤、脱臭剤及びそれらの組合せからなる群より選択される反応性物質を含み、前記第2基板部分が、第2の揮発性材料を有し、前記第2の揮発性材料が、昆虫防除剤、芳香剤、脱臭剤及びそれらの組合せからなる群より選択される反応性物質を含み、前記基板が、熱成形型が接触したときには溶融するように熱に反応するが、ヒータからの熱が存在するときに使用されるのが適当であるように耐熱性でもある多孔性材料で形成されている基板と、
前記基板中に少なくとも部分的に伸び、かつ前記第1基板部分と、前記第2基板部分とを画成する堀状凹部であって、前記基板の上部壁の一部に熱成形型を押し付けることによって形成されている堀状凹部と、
を有するマットを得るステップと、
前記マットをヒータの上に置くステップと、
前記マットを加熱し、それによって、前記第1基板部分に施された前記揮発性材料と、前記第2基板部分に施された前記揮発性材料とを供給するステップと、
を備える、方法。
【請求項17】
前記マットが、前記それぞれの揮発性材料を供給するために、約145℃〜約180℃の温度に加熱される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ディスペンスマットを構成する方法であって、
熱成形型が接触した際に溶融するように、熱に反応するが、ヒータからの熱が存在する場合に溶融しないように、耐熱性でもある多孔性基板材料からなる厚板を得るステップと、
前記厚板の一部に熱成形型を押し付けて、堀状凹部を形成するステップであって、前記凹部が、前記厚板内に少なくとも部分的に伸びており、かつ第1厚板部分と第2厚板部分とを画成する、ステップと、
揮発性材料を、前記第1厚板部分上に配置するステップと、
揮発性材料を、前記第2厚板部分上に配置するステップと、
を備える方法。
【請求項19】
前記厚板の一部が、200℃以上の作用温度で熱成形型に押し付けられる、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2007−533322(P2007−533322A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509502(P2007−509502)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/011947
【国際公開番号】WO2005/105162
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(500106743)エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド (168)
【Fターム(参考)】