説明

多段階増幅を利用した検出方法

【課題】電界効果トランジスタの電気特性を利用したセンサの検出感度を向上させること。
【解決手段】電界効果トランジスタに固定された第一次結合分子と、試料に含まれる検出対象物とを反応させるステップ;前記検出対象物と特異的に反応する第二次結合分子を反応させるステップ;前記第二次結合分子を反応させた後に、電界効果トランジスタの電気シグナルを測定するステップを含む、検出対象物を検出する方法。前記第二次結合分子は、電気シグナルを増幅させる物質で標識されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段階増幅を利用した検出方法に関する。より具体的には、検出部である電界効果トランジスタの電気信号を多段階増幅させて試料中の検出対象物を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広義の抗原−抗体反応を利用して検出対象物を検出する方法を「免疫学的検出方法」や「イムノアッセイ」などと称する。「免疫学的検出方法」の一つとして、酵素免疫測定法(ELISA)がある。
【0003】
酵素免疫測定法の一つであるサンドイッチ法は、一般的に、マイクロタイターウエルなどの固相に結合させた抗体(キャプチャー抗体)と、検出対象物とを反応させて結合させ;前記抗体と結合した検出対象物と、酵素で標識された検出抗体とを反応させ;前記検出抗体を標識する酵素の活性を測定することで検出対象物を検出する方法である。一般的にサンドイッチ法は、キャプチャー抗体だけを用いる競合法と比較して、検出感度が高く、特異性も高い。
【0004】
一方、電界効果トランジスタ(以下「FET」とも称する)は、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極の3端子を有し、ソース電極およびドレイン電極に接続されるチャネルに流れる電流がゲート電極に印加される電圧により生じた電界によって制御される半導体素子である。チャネルが超微細繊維体、たとえばカーボンナノチューブ(以下「CNT」とも称する)で構成されたカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(以下「CNT−FET」とも称する)なども知られている。
【0005】
CNT−FETの一例が、図1Aおよび図1Bに示される(例えば、非特許文献1参照)。
図1Aに示されるCNT−FETにおいては、基板2の第一の面に形成された絶縁膜1上に、ソース電極3およびドレイン電極4、ならびにこれらの電極を接続するチャネルが配置され、第二の面上にシリコン基板2と電気的に接続されているゲート電極5が配置されている。このようなFETは、ゲート電極の配置に基づいて、バックゲート型電界効果トランジスタ(以下「バックゲート型FET」とも称する)と称されることがある。
図1Bに示されるFETにおいては、基板2の第一の面に形成された絶縁膜1上に、ソース電極3、ドレイン電極4およびゲート電極5が配置されている。このようなFETは、ゲート電極の配置に基づいて、サイドゲート型電界効果トランジスタ(以下「サイドゲート型FET」とも称する)と称されることがある。
【0006】
また、CNT−FETの電気特性を利用したセンサの開発が進められている(例えば、特許文献1を参照)。これらのセンサは、チャネルとなるCNTの電気特性がCNTに固定された分子認識部位の状態変化に依存して変化することを利用しており、例えば、その分子認識部位と被検出物質の反応を、反応により誘起されるCNTの電気特性の変化を介してCNT−FETのソース電極とドレイン電極との間の電流(以下「ソース−ドレイン電流」という)または電圧(以下「ソース−ドレイン電圧」という)の変化として検出する。
【特許文献1】国際公開第2004/104568号パンフレット
【非特許文献1】松本和彦, 「カーボンナノチューブSET/FETのセンサー応用」, 電気学会電子材料研究会資料, Vol.EFM-03, No.35-44, 2003.12.19, p.47-50.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、FETの電気特性を利用したセンサの感度を向上させることを検討した。その結果、ELISAにおけるサンドイッチ法のように、FETに固定された分子認識部位(例えばキャプチャー抗体)に検出対象物を反応させた後に、さらに検出対象物と特異的に反応する結合分子を反応させることにより、FETの電気特性の変化が増幅されることを見出した。この知見から本発明はなされた。
【0008】
さらにFETを特定の構造とすることにより、検出感度を上げること、およびセンサとしての構造自由度を上げることを検討した。従来のFETでは、ソース−ドレイン電流を制御するため、チャネルの電気特性を制御するゲート電極をチャネルの近傍に配置する必要があった。
【0009】
つまり、従来のバックゲート型FETにおいては、基板をバックゲート電極として作用させることで、ゲート電極を基板上に形成した絶縁膜のみを隔ててチャネルに近接させていた。そのため、ゲート電極を基板と電気的に接触させる必要があると考えられてきた。すなわち、ゲート電極を、電気伝導性を有する基板に電気的に直接接触させて配置させて、できるだけゲート電極の電位変化によるチャネル近傍の電界変化、すなわちソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧への作用を高めることが必要であると考えられていた。
【0010】
また、従来のサイドゲート型FETにおいては、ゲート電極によりソース−ドレイン電流を制御するため、ゲート電極をチャネルに近づけて配置させることが必要であると考えられていた。すなわち、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板面と同一の面に配置されたゲート電極を、ナノメートルレベルにまでチャネルに接近させて、できるだけソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧への作用を高めることが必要であると考えられていた。
【0011】
本発明者は、支持基板に形成された絶縁膜上に、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが形成されたFETにおいて、「支持基板において自由電子の移動による分極が生じるようにゲート電極を配置する」という、新しい原理(ソース−ドレイン電流の制御原理)に基づくFETを開発することを検討した。
【0012】
そして本発明者は、FETの性能の向上、およびFETのバイオセンサへの適用を検討するなかで、FETのゲート電極は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板の裏面に配置された場合に、その基板裏面に絶縁膜が形成されていても、ソース−ドレイン電流を制御することができることを見出した。
さらに本発明者は、FETのゲート電極は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板表面と同一の表面に配置された場合に、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルからある程度離されて配置されても、ソース−ドレイン電流を制御することができることを見出した。
さらに本発明者は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板とは分離されるが、電気的に接続されている別個の基板に配置されたゲート電極が、ソース−ドレイン電流を制御することができることを見出した。
【0013】
そして、これらの新しい制御原理に基づくFETに固定されたキャプチャー用の結合分子と検出対象物とを反応させ、さらに検出対象物と特異的に反応する結合分子を反応させることで、FETの電気的特性の変化を増幅させるという、新しい原理の検出法を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち本発明は、以下に示す検出方法に関する。
[1]電界効果トランジスタに固定された第一次結合分子と、試料に含まれる検出対象物とを反応させるステップ;前記検出対象物と特異的に反応する第二次結合分子を、前記検出対象物と反応させるステップ;および前記第二次結合分子を反応させた後に、電界効果トランジスタの電気シグナルを測定するステップを含む、検出対象物を検出する方法。
[2]電界効果トランジスタに固定された第一次結合分子と、試料に含まれる検出対象物とを反応させるステップ;前記検出対象物と特異的に反応する第二次結合分子を、前記検出対象物と反応させるステップ;第二次結合分子と特異的に結合する第三次結合分子を、前記第二次結合分子と反応させ、さらに必要に応じて、より高次の結合分子を反応させるステップ;ならびに前記結合分子のうち最高次結合分子を反応させた後に、電界効果トランジスタの電気シグナルを測定するステップを含む、検出対象物を検出する方法。
[3]前記第一次結合分子と前記検出対象物とを反応させる前に、前記電界効果トランジスタにおける前記第一次結合分子の固定面をブロッキングするステップをさらに含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記第二次から最高次の結合分子のいずれかは、電界効果トランジスタの電気的シグナルを増幅させる物質で標識されている、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記電界効果トランジスタの電気的シグナルを増幅させる物質が、電気伝導体、電気絶縁体または半導体物質である、[4]に記載の方法。
[6]前記電界効果トランジスタの電気的シグナルを増幅させる物質が、電気伝導体、半導体物質である、[4]に記載の方法。
[7]前記電界効果トランジスタの電気シグナルは、ソース-ドレイン電流とゲート電圧の関係を示すI−Vg特性、またはソース-ドレイン電流とソース-ドレイン電圧の関係を示すI−V特性である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
【0015】
さらに本発明は、以下に示される特定の構造の電界効果トランジスタを用いる検出方法に関する。
[8]前記電界効果トランジスタは、基板、前記基板上に配置されたソース電極とドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、および前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を含み、
前記第一次結合分子は、前記基板、超微細繊維体またはゲート電極に固定されている、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記電界効果トランジスタは、基板、前記基板上に配置されたソース電極とドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、および前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を含み、
前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜、および前記支持基板の第二の面に形成された第二の絶縁膜を有し;前記ソース電極、ドレイン電極およびチャネルは、前記第一の絶縁膜上に配置され;前記ゲート電極は、前記第二の絶縁膜上に配置されており、かつ
前記第一次結合分子は、前記第二の絶縁膜またはゲート電極に固定されている、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[10]前記電界効果トランジスタは、基板、前記基板上に配置されたソース電極とドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、および前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を含み、
前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜を有し;前記ソース電極、ドレイン電極、チャネルおよびゲート電極は、前記第一の絶縁膜上に配置され、前記ゲート電極と前記超微細繊維体との間隔が10μm以上であり、かつ
前記第一次結合分子は、前記第一の絶縁膜またはゲート電極に固定されている、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[11]前記電界効果トランジスタは、基板、前記基板上に配置されたソース電極とドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、および前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極、ならびに前記基板に電気的に接続されている第二の基板を含み、
前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜を有し、前記ソース電極、ドレイン電極およびチャネルは、前記第一の絶縁膜上に配置され、前記ゲート電極は、前記第二の基板の第一の面上に配置されており、かつ
前記第一次結合分子は、前記第二の基板の第一の面またはゲート電極に固定されている、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[12]前記超微細繊維体はカーボンナノチューブである、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の検出方法により、電界効果トランジスタの電気特性を利用したセンサの感度がさらに向上される。さらにダイナミックレンジの拡大や特異性の向上が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の検出方法は、1)電界効果トランジスタに固定された第一次結合分子と、試料に含まれる検出対象物とを反応させるステップ、2)検出対象物と特異的に反応する第二次結合分子を、検出対象物と反応させるステップ、3)第二次結合分子を反応させた後に、電界効果トランジスタの電気シグナルを測定するステップを含む。さらに1)のステップの前に電界効果トランジスタにおける第一次結合分子の結合面をブロッキングするステップを含んでも良い。
【0018】
1.電界効果トランジスタについて
第一次結合分子が固定される電界効果トランジスタは、一般的に、基板;前記基板上に配置されたソース電極とドレイン電極;前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続するチャネル;前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を含む。電界効果トランジスタの例は、前述の特許文献1や非特許文献1にも記載されている。さらに、以下において好ましい態様の電界効果トランジスタについて部材ごとに説明する。
【0019】
1−1.基板について
電界効果トランジスタの基板上にはソース電極およびドレイン電極ならびにチャネルが配置されている。基板の構造および材質は、ゲート電極(後述)に電圧を印可することにより、基板に自由電子の移動による分極(後述)が生じることが好ましい。通常は、基板は、半導体または金属からなる支持基板;および支持基板と、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルとを電気的に絶縁する絶縁膜を有する。図2に基板の例が示される。図2Aは支持基板400、および第一の絶縁膜402を含む基板である。図2Bは支持基板400、第一の絶縁膜402および第二の絶縁膜404を含む基板である。
【0020】
支持基板は、半導体または金属であることが好ましい。半導体は、特に限定されないが、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの14族元素、砒化ガリウム、リン化インジウムなどのIII−V化合物、テルル化亜鉛などのII−VI化合物などである。金属は、特に限定されないが、例えば、アルミニウムやニッケルなどである。支持基板の厚さは、特に限定されないが、0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.3〜0.5mmが特に好ましい。
【0021】
支持基板の第一の面(ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された面)に形成された第一の絶縁膜の材質は、特に限定されないが、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムや酸化チタンなどの無機化合物、およびアクリル樹脂やポリイミドなどの有機化合物が挙げられる。第一の絶縁膜の表面には、水酸基、アミノ基またはカルボキシル基などの官能基が導入されていてもよい。
第一の絶縁膜の厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmが好ましく、20〜500nmが特に好ましい。第一の絶縁膜が薄すぎると、トンネル電流が流れてしまう可能性がある。一方、第一の絶縁膜が厚すぎると、ゲート電極を用いてソース−ドレイン電流を制御することが困難になる可能性がある。
【0022】
支持基板の第二の面(第一の面の裏面)に、第二の絶縁膜が形成されていてもよい。第二の絶縁膜の材質は、第一の絶縁膜の材質の例と同様である。第二の絶縁膜の厚さも、第一の絶縁膜と同様に10nm以上が好ましく、20nm以上が特に好ましいが、特に限定されるわけではない。一方、バックゲート型FET(後述)または分離ゲート型FET(後述)である場合、第二の絶縁膜の厚さは、特に限定されないが、第一の絶縁膜と同様に、1000nm以下が好ましく、500nm以下が特に好ましい。
【0023】
支持基板の絶縁膜に被覆される面(第一の面または第二の面)は、平滑であることが好ましい。すなわち、支持基板と絶縁膜との界面は平滑であることが好ましい。支持基板の表面が平滑であると、その表面を被覆する絶縁膜の信頼性が高まるためである。支持基板の絶縁膜に被覆される面は、特に限定されないが、研磨されている方が好ましい。支持基板の表面の平滑度は、表面粗さ測定機などにより確認することができる。
【0024】
1−2.チャネルについて
前記チャネルは半導体性であればよく、特に限定されないが、好ましくは半導体性を示す超微細繊維体を含むことが好ましい。超微細繊維体とは、電気伝導性を示す、直径が数nmの繊維体である。超微細繊維体の例には、CNT、DNA、導電性高分子、シリコン繊維、シリコンウイスカー、グラフェンなどが含まれる。この中ではCNTが好ましい。
【0025】
チャネルに含まれる超微細繊維体の数は1本でも複数本でもよい。超微細繊維体の数はAFMによって確認されうる。また、超微細繊維体と基板との間には空隙があってもよい。
【0026】
超微細繊維体がカーボンナノチューブである場合は、単層CNTまたは多層CNTのいずれでもよいが、単層CNTが好ましい。また、CNTには欠陥が導入されていてもよい。「欠陥」とは、CNTを構成する炭素五員環または六員環が開環している状態を意味する。欠陥が導入されたCNTは、かろうじて繋がっているような構造をしていると推測されるが、実際の構造は明らかでない。CNTに欠陥を導入する方法は、特に限定されないが、例えば、CNTを焼鈍しすればよい。
【0027】
超微細繊維体は、損傷を防ぐために絶縁性保護膜によって保護されていてもよい。絶縁性保護膜で超微細繊維体を被覆することにより、FET全体を超音波洗浄したり、強酸や強塩基を用いて洗浄したりすることが可能となる。さらに、絶縁性保護膜を設けることによって超微細繊維体の損傷が防止されるので、FETの寿命を著しく延ばすことができる。
【0028】
絶縁性保護膜は、例えば、絶縁性接着剤により形成される膜やパッシベーション膜などである。絶縁性保護膜が酸化シリコン膜の場合、絶縁性保護膜に第一次結合分子を容易に固定することができる。
【0029】
1−3.ソース電極およびドレイン電極について
ソース電極およびドレイン電極は、基板の第一の絶縁膜上に配置される。ソース電極およびドレイン電極の材質は、例えば、金、白金やチタンなどの金属である。ソース電極およびドレイン電極は、二種以上の金属で多層構造にされていてもよい。例えば、チタンの層に金の層を重ねてもよい。ソース電極およびドレイン電極は、これらの金属を第一の絶縁膜上に蒸着することにより形成される。金属を蒸着するときは、リソグラフィを用いてパターンを転写しておくことが好ましい。
【0030】
ソース電極とドレイン電極との間隔は、特に限定されないが、通常は2〜10μm程度である。この間隔は、超微細繊維体による電極間の接続を容易にするために、さらに縮めてもよい。
【0031】
1−4.ゲート電極について
FETに含まれるゲート電極は、電圧を印加されることで、ソース電極およびドレイン電極が配置されている基板に、自由電子の移動による分極を生じさせることが好ましい。「自由電子の移動による分極」とは、自由電子が基板内を移動することにより、プラスの電荷に偏った領域およびマイナスの電荷に偏った領域がそれぞれ、基板内に形成されることをいう。半導体または金属からなる支持基板と絶縁膜とからなる基板の場合、自由電子の移動による分極は、電気伝導性を有する支持基板において生じる。基板が分極しているか否かは、基板両面の電位差の測定などによって確認されうる。
【0032】
ゲート電極の大きさは、特に限定されず、超微細繊維体素子(ソース電極、ドレイン電極およびチャネルとなる超微細繊維体からなる)の大きさに応じて決定すればよい。ゲート電極の大きさが超微細繊維体素子に対して小さすぎると、ゲート電極がソース−ドレイン電流を制御することが困難になる場合がある。例えば、ソース電極とドレイン電極との間の距離が2〜10μmである場合、ゲート電極の大きさは、およそ0.1mm×0.1mm以上であればよい。
【0033】
基板を分極させるように配置されたゲート電極は、(A)バックゲート電極、(B)サイドゲート電極、および(C)分離ゲート電極の態様に分類される。
【0034】
(A)バックゲート電極について
バックゲート電極は、基板の第二の絶縁膜上に配置されている。ソース電極、ドレイン電極およびチャネルに対して基板の裏面に配置されているので、バックゲート電極と称される。バックゲート電極は、第二の絶縁膜に直接接触して配置されていてもよく、第二の絶縁膜から物理的に離されて配置されていてもよい。
【0035】
バックゲート電極は、第二の絶縁膜の一部にだけ配置されていても、第二の絶縁膜の全面に配置されていてもよい。基板の第二の面の全面にゲート電極が設けられていれば、第一次結合分子を第二の絶縁膜の全面に固定することができる。
【0036】
従来のバックゲート型FETでは、バックゲート電極によりソース−ドレイン電流を制御するために、バックゲート電極を支持基板(半導体または金属からなる)に直接接触させて配置することによって、相互作用を得ていた。
一方、本発明者は、バックゲート電極と支持基板とを直接接触させる必要は必ずしもないことを見出した。つまり、バックゲート電極と支持基板との間に絶縁膜を設けても、ソース−ドレイン電流を制御することができることがわかった。ゲート電極に電圧が印加されると支持基板(半導体または金属からなる)において、支持基板内の自由電子の存在に起因する分極が起こり、その分極によってソース−ドレイン電流が制御されるからであると考えられる。自由電子の移動による分極には、容量結合による要因も含まれるが、他の要因も排除しない。
【0037】
バックゲート電極を有するFETの例が、図3に示される。
【0038】
(B)サイドゲート電極について
サイドゲート電極は、基板の第一の絶縁膜上に配置されている。ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された面と同一の面に配置されているので、サイドゲート電極と称される。サイドゲート電極は、第一の絶縁膜に直接接触して配置されていてもよく、第一の絶縁膜から物理的に離されて配置されていてもよい。
【0039】
基板の同一面上に配置されたサイドゲート電極と超微細繊維体との間隔は特に制限されないが、本発明のFETでは10μm以上、さらに100μm以上、さらに1mm以上とすることができる。上限も特に制限されないが、数cm以下である。「ゲート電極と超微細繊維体との間隔」とは、互いの最短間隔を意味する。
【0040】
従来のサイドゲート型FETは、ゲート電極によりソース−ドレイン電流を制御するために、サイドゲート電極とソース電極、ドレイン電極およびチャネルとの間で直接の相互作用を得る必要があると考えられていた。したがって、従来のサイドゲート型FETでは、サイドゲート電極とチャネルとの間隔を、できるだけ短くしていた(長くとも1μm程度)。
【0041】
一方、本発明者は、サイドゲート電極を、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルに接近させる必要が必ずしもないことを見出した。サイドゲート電極ならびにソース電極、ドレイン電極およびチャネルが同一の絶縁膜上に設けられている場合に、サイドゲート電極に電圧が印加されると、その絶縁膜の下の支持基板(半導体または金属からなる)において、支持基板内の自由電子の存在に起因する分極が起こり、その分極によってソース−ドレイン電流が制御されるからであると考えられる。分極には、容量結合による要因も含まれるが、他の要因も排除しない。
【0042】
サイドゲート型FETにおいて、サイドゲート電極には第一次結合分子が固定され、さらに試料溶液を滴下されることがある。ここで説明するサイドゲート型FETでは、サイドゲート電極と、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルとの間隔を広げることができるので、チャネルに含まれる超微細繊維体の試料溶液による汚染が防止されうる。
【0043】
サイドゲート電極を有するFETの例が、図4に示される。
【0044】
(C)分離ゲート電極について
分離ゲート電極は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板とは分離されているが、電気的に接続されている第二の基板上に配置されている。第二の基板は、半導体または金属からなる支持基板と、支持基板の少なくとも一方の面に形成された絶縁膜とを有する基板、または絶縁体からなる基板でありうるが、好ましくは前者の基板である。
【0045】
分離ゲート電極が配置されている第二の基板は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置されている基板とは分離されている。ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置されている基板とゲート電極が配置されている第二の基板との間隔は、特に限定されず、3mm以上、さらには10mm以上、さらには15mm以上とすることができ、それ以上にすることもできる。
【0046】
前記の通り、分離ゲート電極が配置されている第二の基板は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置されている基板と電気的に接続されている。電気的に接続されているとは、例えば、(a)基板および第二の基板が、同一の導電性基板に載置されている、または(b)基板および第二の基板が、それぞれ異なる導電性基板に載置され、かつそれぞれの導電性基板が導電性部材により接続されていることを意味する。(a)の態様の例が図5に示され、(b)の態様の例が図6に示される。
【0047】
導電性基板は、特に限定されないが、金薄膜を蒸着されたガラス基板や真鍮などの材料からなる基板などである。導電性部材は、特に限定されないが、例えば銅線などの導電性ワイヤなどである。
【0048】
分離ゲート型FETでは、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルを配置された基板を、ゲート電極が配置された第二の基板から分離することができるため、構造上の自由度が高い。したがって、分離ゲート型FETを利用する検出装置は、実用性の高い装置となりうる。
【0049】
2.第一次結合分子について
2−1.第一次結合分子の種類について
第一次結合分子は、検出しようとする対象物に特異的に反応する分子であればよい。第一次結合分子の例には、抗原もしくは該抗原に特異的に結合する抗体やアプタマー;糖類もしくは該糖類に結合するレクチン;またはDNAもしくは該DNAに相補的なDNA等が挙げられ、それぞれ一方のものが使用できる。第一次結合分子はFETに固定され、さらに検出対象物と反応して結合する。検出対象物は、例えば溶液中に溶解または分散されて提供されることが好ましい。
【0050】
本発明の検出方法における検出対象物は、本発明の検出方法を可能とするものであれば特に制限はなく、例えば抗原抗体反応を用いて検出される成分、酵素反応を用いて検出される成分、その他の特異的反応により検出される成分等が挙げられるが、抗原抗体反応を用いて検出される成分が好ましい。
【0051】
抗原抗体反応により検出される成分としては例えば、IgG、IgM、IgA、IgE、アポ蛋白AI、アポ蛋白AII、アポ蛋白B、アポ蛋白E、リウマチファクター、D−ダイマー、酸化LDL、糖化LDL、グリコアルブミン、T3、T4、薬剤(抗テンカン剤等)、C−反応性蛋白(CRP)、サイトカイン類、α−フェトプロテイン(AFP)、DUPAN−2、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、CA−125、PIVKA−II(Protein induced by vitamin K absence-II)、副甲状腺ホルモン(PTH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、インスリン、C−ペプタイド、エストロゲン、抗GAD抗体、ペプシノーゲン、インフルエンザA型抗原、インフルエンザB型抗原、コロナウイルス抗原、HBV抗原、抗HBV抗体、HCV抗原、抗HCV抗体、HTLV−I抗原、抗HTLV−I抗体、HIV抗体、結核抗体、マイコプラズマ抗体、グリコアルブミン、ヘモグロビンA1c、アディポネクチン、シスタチンC、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、トロポニンT、トロポニンI、クレアチニンキナーゼ−MB(CK−MB)、ミオグロビン、H−FABP(ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白)、DON、NIV、T2等のカビ毒類、ビスフェノールA、ノニルフェノール、フタル酸ジブチル、ポリ塩素化ビフェニル(PCB)類、ダイオキシン類、p,p’−ジクロロジフェニルトリクロロエタン、トリブチルスズ等の内分泌撹乱物質類、大腸菌等の菌類、卵、乳、小麦、そば、落花生等の食物アレルギー物質やコナヒョウダニやトヤヒョウダニ等のダニ類等のアレルギー物質、抗アレルギー物質抗体等が挙げられる。
【0052】
酵素反応を用いて検出される生体成分としては例えば、グルコース、1,5−アンヒドログルシトール、ヘモグロビンA1c、グリコアルブミン、フコース、尿素、尿酸、アンモニア、クレアチニン、総コレステロール、遊離コレステロール、高密度リポタンパク中のコレステロール(HDL−C)、低密度リポタンパク中のコレステロール(LDL−C)、超低密度リポタンパク中のコレステロール(VLDL−C)、レムナント様リポタンパク中のコレステロール(RLP−C)、トリグリセライド、リン脂質、総蛋白、アルブミン、グロブリン、ビリルビン、胆汁酸、シアル酸、乳酸、ピルビン酸、遊離脂肪酸、セルロプラスミン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)、ホスホキナーゼ(PK)、アミラーゼ、リパーゼ、コリンエステラーゼ、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、L−乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、アルドラーゼ、アルカリフォスファターゼ、酸フォスファターゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、グアナーゼ、モノアミンオキシダーゼ等が挙げられる。
【0053】
その他の特異的結合により検出される成分としては、核酸、レクチン等を用いる方法が挙げられ、例えばras等のガン遺伝子、p53等のガン抑制遺伝子等をコードするDNAまたはRNA、ペプチド核酸、アプタマー、糖蛋白質等が挙げられる。
【0054】
前記検出対象物が含有される試料としては、例えば全血、血漿、血清、髄液、唾液、羊水、尿、汗、膵液、涙、便等の生体試料の他、食品や土壌由来のものも挙げられる。これらの試料は、加工することによって本発明の方法に供することもできる。該加工方法としては、水性媒体や有機溶媒による希釈や抽出、濃縮等が挙げられる。
【0055】
2−2.第一次結合分子が固定される電界効果トランジスタの部位について
第一次結合分子はFETに固定されていればよい。その固定部位は特に制限されないが、基板、ゲート電極、チャネルに含まれる超微細繊維体(超微細繊維体を保護する膜を含む)などが含まれる。以下において、第一次結合分子をFETに固定した例を、図面を参照して説明する。
【0056】
図7〜11には、バックゲート型FETに第一次結合分子を固定した例が示される。
【0057】
図7および8には、チャネルに第一次結合分子を固定した例が示される。図7では第一次結合分子がチャネルに直接固定されている。一方、図8では第一次結合分子が絶縁性保護膜を介してチャネルに固定されているので、試料溶液がチャネルと接触することがなく、ノイズが低減される。
【0058】
図9には、基板の第二の絶縁膜に第一次結合分子を固定した例が示される。第二の絶縁膜は、超微細繊維体を損傷させることなく洗浄することができるので、再利用することもできる。また、第二の絶縁膜全体に第一次結合分子を固定してもよく、そのため比較的多くの第一次結合分子を固定することができる。
【0059】
図9Aでは第一次結合分子を第二の絶縁膜の全面に固定しており、バックゲート電極が第二の絶縁膜に固定されていない場合に有用である。一方、図9BおよびCでは第一次結合分子が第二の絶縁膜の一部に固定されており、バックゲート電極が第二の絶縁膜に固定されている場合に有用である。図9Dでは、第二の絶縁膜に、複数のバックゲート電極が配置され、かつ複数種の第一次結合分子が第二の絶縁膜に固定されている。
【0060】
図10には、基板の第二の面上に凹部を形成し、この凹部の底に位置する第二の絶縁膜に第一次結合分子を固定した例が示される。凹部の側壁の材質は、特に限定されないが、例えば、酸化シリコンである。この例では、凹部の容積を調整することにより、一定量の試料溶液を提供することができる。また、添加された試料溶液が散逸されにくく、第一次結合分子が固定された部位に安定して保持されうる。
図10Aおよび図10Bは、バックゲート電極を凹部の蓋として機能させる例を示す図である。図10Cは、バックゲート電極を凹部の側壁上に配置させた例を示す図である。図10Dは、バックゲート電極を凹部の側壁側面に配置させた例を示す図である。図10Eは、バックゲート電極を凹部外の第二の絶縁膜上に配置させた例を示す図である。
【0061】
図11には、第一次結合分子をゲート電極に固定した例が示される。この例では、超微細繊維体を損傷させることなく基板の第二の面を洗浄することができるので、再利用することが容易である。
図11Aは、バックゲート電極が一つ配置されている場合に、第一次結合分子をバックゲート電極に固定した例を示す図である。図11Bは、バックゲート電極が複数配置されている場合に、複数種の第一次結合分子をそれぞれ異なるバックゲート電極に固定した例を示す図である。
【0062】
図12〜16には、サイドゲート型FETに第一次結合分子を固定した例が示される。
【0063】
図12には、第一次結合分子を超微細繊維体に固定した例が示される。この例では、第一次結合分子がチャネルである超微細繊維体に直接固定されている。図13には、第一次結合分子を、超微細繊維体を保護する絶縁性保護膜に固定した例が示される。この例では、試料溶液が超微細繊維体および電極と直接接触することなく、第一次生体高分子を超微細繊維体に対して物理的に近くに配置でき、かつ保護膜によりノイズが低減されるので、高感度センサを提供しうる。
図13Aには、第一次結合分子を、超微細繊維体素子を保護する絶縁性保護膜に固定した例が示される。図13Bには、第一次結合分子を、超微細繊維体素子およびゲート電極を保護する絶縁性保護膜に固定した例を示す図である。
【0064】
図14には、サイドゲート電極が第一の絶縁膜と接触するように配置されている場合に、第一次結合分子を第一の絶縁膜に固定した例が示される。試料溶液は、サイドゲート電極に接触しても(図14A)しなくても(図14B)よい。
【0065】
図15には、基板の第二の面上に凹部を形成し、この凹部の底に位置する第二の絶縁膜に第一次結合分子を固定した例が示される。凹部の側壁の材質は、特に限定されないが、例えば、酸化シリコンである。この例では、第一次結合分子が固定されている部位(すなわち凹部内)に試料溶液を的確に位置させることができる。
図16には第一次結合分子をゲート電極に固定した例が示される。
【0066】
図17〜22には、分離ゲート型FETに第一次結合分子を固定した例が示される。
【0067】
図17は、分離ゲート電極が絶縁膜と接触せずに配置されている場合に、第一次結合分子を絶縁膜に固定した例を示す図である。
図18は、分離ゲート電極が絶縁膜と接触するように配置されている場合に、第一次結合分子を絶縁膜に固定した例を示す図である。試料溶液は、分離ゲート電極に接触していても(図18A)しなくても(図18B)よい。図18Cは、分離ゲート電極が複数配置されている場合に、複数種の第一次結合分子をそれぞれ絶縁膜に固定した例を示す図である。
【0068】
図19は、第一次結合分子をゲート電極に固定した例を示す図である。図19Aは、分離ゲート電極が一つ配置されている場合に、第一次結合分子を分離ゲート電極に固定した例を示す図である。図19Bは、分離ゲート電極が複数配置されている場合に、複数種の第一次結合分子をそれぞれ異なる分離ゲート電極に固定した例を示す図である。
【0069】
図20は、ゲート素子部(ゲート電極と第二の基板を含む)が複数ある場合に、複数種の第一次結合分子をそれぞれ異なる分離ゲート電極に固定した例を示す図である。
図21は、超微細繊維体素子部およびゲート素子部が、導電性基板を挟むように配置され、かつゲート素子部上に分離ゲート電極が複数配置されている場合に、複数種の第一次結合分子をそれぞれ絶縁膜に固定した例を示す図である。この例では、ゲート素子部を超微細繊維体素子部から取り外すことを容易に行うことができる。したがって、一の超微細繊維体素子部に対して、複数のゲート素子部を付け替えることが可能である。
図22は、超微細繊維体素子部およびゲート素子部が、導電性部材によって電気的に接続され、かつゲート素子部上に分離ゲート電極が複数配置されている場合に、複数種の第一次結合分子をそれぞれ絶縁膜に固定した例を示す図である。
【0070】
前述のように、一つのFETに複数種の第一次結合分子を固定することも可能であるが、検出対象物をインフルエンザウイルスとする場合には、複数種の第一次結合分子を、A型ウイルスに対する抗体およびB型ウイルスに対する抗体の組み合わせとすることができる。
【0071】
2−3.第一次結合分子のFETへの固定方法について
第一次結合分子をFETに固定する方法は特に制限されず、例えば二価性架橋試薬を介して固定する方法がある。二価性架橋試薬とは、二の官能基を有し、一の官能基はFETとの結合に、別の一の官能基が第一次結合分子との結合に用いられる。二価性架橋試薬は、たとえば二つの官能基、およびそれを結ぶ親水性ポリマー鎖(ポリエチレングリコール鎖など)または疎水鎖(アルキル鎖など)などを有する。二つの官能基の例には、アミノ基と反応する官能基と、チオール基と反応する官能基の組み合わせ等が含まれる。
【0072】
たとえば、二価性架橋試薬を介して第一次結合分子を絶縁膜に固定する場合は以下の手順で行えばよい。
第一次結合分子と二価性架橋試薬とを反応させた後、透析などにより未反応の二価性架橋試薬を除去して、第一次結合分子−二価性架橋試薬複合体を得て;シラン化カップリング剤で処理した基板の絶縁膜と、前記第一次結合分子−二価性架橋試薬複合体を反応させて固定する。または、シラン化カップリング剤で処理した基板絶縁膜と二価性架橋試薬とを反応させ、さらに第一次結合分子を反応させて固定する。
【0073】
第一次結合分子の固定方法は、二価性架橋試薬を介する方法に限定される訳ではなく、たとえば、ヒスタグ融合分子をNTA−Ni錯体などを介して固定する方法も用いられうる。
【0074】
3.第二次結合分子、およびより高次の結合分子について
3−1.第二次結合分子について
本発明の検出方法は、第一次結合分子と検出対象物を反応させた後に、さらに第二次結合分子を反応させることを特徴とする。第二次結合分子は、検出対象物と特異的に反応する分子であればよく、その種類は第一次結合分子と同様に、抗原もしくは抗原に特異的に結合する抗体やアプタマー;糖類もしくは該糖類に結合するレクチン;またはDNAもしくは該DNAに相補的なDNA等が挙げられ、それぞれ一方のものが使用できる。また、第二次結合分子は第一次結合分子と異なる種類の分子であることが好ましいが、同じ種類の場合もある。図23には、第二次結合分子が反応した状態の模式図が示される。
【0075】
本発明の検出方法において、溶液中に溶解または分散されている第二次結合分子を、第一次結合分子と結合した検出対象物に提供することが好ましい。溶液の溶媒は特に制限されないが、水またはPBS(Phosphate buffered saline)などの緩衝液であればよい。
【0076】
第二次結合分子を反応させることによって、単に検出対象物だけが第一次結合分子と反応した状態よりも電荷の変化が大きくなり、FETの電気シグナルを増幅することができる。
【0077】
3−2.第三次以上の結合分子について
本発明の検出方法は、第二次結合分子を反応させた後、さらに第三次以上の結合分子を反応させるステップを含みうる。第三次結合分子は第二次結合分子と、第四次結合分子は第三次結合分子と、第(X+1)次結合分子は第X次結合分子と特異的に反応することが好ましい。
【0078】
3−3.結合分子の標識化について
前述の通り、本発明の検出方法は第二次結合分子、および必要に応じて第三次以上の結合分子が用いられるが、これらのいずれかが標識されていてもよいが、最も高次の結合分子が標識されていることが好ましい。図24には、標識された第二次結合分子を反応させた状態の模式図が示される。
【0079】
標識物質は、当該物質で標識された結合分子が反応することにより、FETの電気シグナルを増幅させる物質であることが好ましい。FETの電気シグナルを増幅させる物質の例には、金属などの電気伝導体物質、カーボンナノチューブなどの半導体物質、または絶縁体物質などが含まれ、好ましくは電気伝導体物質、半導体物質が挙げられる。
【0080】
4.電気シグナルの測定について
本発明の検出方法は、第二次結合分子、または必要に応じて第三次結合分子を反応させた後、FETの電気シグナルを測定するステップを含む。電気シグナルの例には、ソース−ドレイン電圧を一定にしたときの「ソース−ドレイン電流とゲート電圧の関係(「I−Vg特性」ともいう)」、またはゲート電圧を一定にしたときの「ソース−ドレイン電流とソース−ドレイン電圧の関係(「I−V特性」ともいう)」が含まれる。
【0081】
FETの電気シグナルは、通常の半導体パラメータアナライザを用いて測定することができる。ダイナミックレンジにおける電気的特性の変化を観察すればよい。変化量と検出対象物の濃度との関係を予め調べて検量線を取得しておけば、観察結果から検出対象物の濃度を測定することもできる。
【0082】
5.電界効果トランジスタにおける第一次結合分子の結合面のブロッキングについて
本発明の検出方法は、電界効果トランジスタにおける第一次結合分子の結合面をブロッキングするステップを含みうる。ブロッキングは、第一次結合分子と、検出対象物を反応させる前に行うことが好ましい。ブロッキングはブロッキング剤を用いて行うことができ、ブロッキング剤の例には、牛血清アルブミン(BSA)、カゼイン等の蛋白質、ポリエチレングリコール等の合成高分子等が挙げられる。ブロッキングにより、試料中の検出対象物以外の物質の電界効果トランジスタにおける第一次結合分子の結合面への結合が、抑制されうる。
【0083】
6.洗浄操作について
本発明の検出方法は、電気シグナルを測定するステップの前に反応物を洗浄操作するステップを含んでいてもよい。電気シグナルを測定するステップの前とは、例えば、第一次結合分子と検出対象物との反応後、検出対象物と第二次結合分子との反応後、または、さらに高次の結合分子を反応させた後を意味する。洗浄操作は洗浄液を用いて行えばよく、洗浄液は、水、PBSまたはGood Bufferのような緩衝液が好ましく、適宜、界面活性剤、合成高分子、防腐剤等が添加される。当該洗浄により検出精度が向上されうる。
【実施例】
【0084】
(1)センサの作製
図9Aに示される電界効果トランジスタを準備した。基板は、シリコンからなる厚さ550μmの支持基板;および酸化シリコンからなる厚さ300nmの、第一および第二の絶縁膜からなる。基板の面積は1cm(1cm×1cm)である。チャネルは超微細繊維体である単層カーボンナノチューブであり、通常は数本の単層カーボンナノチューブで接続され、それはAFMで確認される。ゲート電極は第二の絶縁膜の前面に接触させる。ソース電極とドレイン電極との間隔は5μmである。
【0085】
100mmol/Lのリン酸緩衝液(pH7.5)中に、終濃度1mg/mLとなるように市販の抗インフルエンザウイルスA型核蛋白質抗体(Fitzgerald社製)を添加し、さらに終濃度4.15mmol/Lとなるようにsulfo-EMCS(同仁化学研究所社製)を添加した。得られた溶液を混合して、25℃で30分間反応させた。
反応後、限外ろ過法により、抗体溶液のバッファーを5mmol/L EDTA(関東化学社製)を含有する100mmol/Lのリン酸緩衝液(pH6.0)に置換した。
【0086】
基板の第二の絶縁膜(シリコン酸化膜:1cm)に、2mol/LのNaOH(50μL)を添加して、45℃で2分間処理した。その後、シランカップリング剤であるサイラエースS810(チッソ社製)3μLを添加して、45℃で15分間、続いて200℃で30分間処理した。その後、1mmol/Lのテトラヒドロほう酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製)50μLを添加して15分間処理した。
【0087】
処理された基板の第二の絶縁膜に、先述の抗体溶液を20μL滴下し、4℃で4〜16時間反応させた。反応後の抗体溶液を除去し、1%BSA(シグマ社製)を添加したPBS(pH7.4)100μLを滴下し、25℃で10分間反応させ、目的のセンサを作製した。
【0088】
(2)インフルエンザ抗原の調製
抗原となるインフルエンザA型ウイルスとして、市販の精製ウイルス(Fitzgerald社製)を、希釈液(0.5%Nonidet-P40(非イオン性界面活性剤、フルカ社製)、0.5%BSA、0.1%NaNを含むPBS pH7.4)でウイルス濃度が10μg/mLになるように希釈して調製した。10μg/mLのウイルス溶液は、およそ10pfu/mLであった。
【0089】
(3)第二次結合分子(二次抗体)の調製
二次抗体となる抗インフルエンザA型ウイルスA型核蛋白質抗体は市販の抗体(Fitzgerald社製)を用いた。0.5%BSA、0.1%NaNを含むPBS(pH7.4)で0.1μg/10μL,1μg/10μL,10μg/10μLの4濃度の二次抗体溶液を調製した。
【0090】
(4)検出
作製したセンサを用いて、以下の手順でインフルエンザA型抗原の検出を行った。
以下の各手順に示されたように、各溶液(10μL)を基板面に添加した後、25℃で10分間反応させた。その後、PBS(pH7.4)50μLで3回洗浄を行い。Nガスで溶液を除去した。半導体パラメータアナライザー(装置)で、ゲート電圧−20V〜20VにおけるI-Vg特性(ソース−ドレイン電流とゲート電圧の関係)を計測して、I-Vg曲線を得た。
【0091】
手順1:作製したセンサの電界効果トランジスタの基板の抗体結合面に、10μLの0.5%Nonidet-P40、0.5%BSAを含むPBSを添加した。それにより抗体結合面をブロッキングした。
手順2:10μLのウイルス溶液(10pfu/mL)を添加した。それにより、第一次結合分子である一次抗体と、抗原であるウイルスとを反応させて結合させた。
手順3:10μLの二次抗体溶液(0.1μg/10μL)を添加した。
手順4:10μLの二次抗体溶液(1μg/10μL)を添加した。
手順5:10μLの二次抗体溶液(10μg/10μL)を添加した。
【0092】
各手順後に得たI-Vg曲線が図25および図26に示される。縦軸はソース−ドレイン電流Iを示し、横軸はゲート電圧Vgを示す。図26は、図25に示された縦軸を拡大したグラフである。
【0093】
さらに図27には、各手順後におけるI-Vg曲線の、ゲート電圧−12Vのときのソース−ドレイン電流が示される。示されたように、ウイルス(抗原)を反応させた場合(手順2)には、ソース−ドレイン電流はあまり変化しないが、二次抗体を反応させる(手順3〜5)とソース−ドレイン電流が大きく変化していることがわかる。また二次抗体の濃度を上げると、その変化量が大きくなることがわかる。
【0094】
一方、図28には、各手順後におけるI-Vg曲線の、ソース−ドレイン電流−2.5×10−8Aにおけるゲート電圧が示される。示されたように、ウイルス(抗原)を反応させた場合(手順2)のゲート電圧の変化量に対して、二次抗体を反応させると(手順3〜5)、さらに変化することがわかる。また二次抗体の濃度を上げると、その変化量が大きくなることがわかる。
【0095】
以上の結果から、電界効果トランジスタに固定した第一次結合分子に、検出対象物を反応させただけの場合よりも、さらに検出対象物と特異的に反応する第二次結合分子を反応させた場合の方が、電界効果トランジスタの電気シグナルの変化が大きくなる(増幅される)ことが示唆された。したがって、第二次結合分子を適切な物質で標識すれば、さらに大きな増幅効果が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の検出方法を用いることにより、FETバイオセンサのシグナルが増幅されるので、高感度な検出が可能となる。また、第二次結合分子および必要に応じてより高次の結合分子を用いるので、特異性の向上が期待される。さらにダイナミックレンジの拡大が期待される。本発明の検出方法で、試料中の検出対象物の検出による各種臨床診断が可能となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1Aは従来のバックゲート型FETの概略図である。図1Bは従来のサイドゲート型FETの概略図である。1は絶縁膜、2は基板、3はソース電極、4はドレイン電極、5はゲート電極を示す。
【図2】FETの基板の例を示す図である。400は支持基板、402は第一の絶縁膜、404は第二の絶縁膜を示す。
【図3】バックゲート型FETの一例を示す図である。100はバックゲート型FET、102は支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極を示す。
【図4】サイドゲート型FETの一例を示す図である。150はサイドゲート型FET、102は支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極を示す。
【図5】分離ゲート型FETの一例を示す図である。200は分離ゲート型FET、102は第一の支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、202は第二の支持基板、204は第三の絶縁膜、206は第四の絶縁膜、208はゲート電極、210は導電性基板、212は超微細繊維体素子部、214はゲート素子部を示す。
【図6】分離ゲート型FETの一例を示す図である。300は分離ゲート型FET、102は第一の支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、202は第二の支持基板、204は第三の絶縁膜、206は第四の絶縁膜、208はゲート電極、212は超微細繊維体素子部、214はゲート素子部、302は第一の導電性基板、304は第二の導電性基板、306は導電性部材を示す。
【図7】バックゲート型FETにおいて、第一次結合分子を超微細繊維体に固定した例を示す図である。100はバックゲート型FET、102は支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極、472は第一次結合分子、482は試料溶液を示す。
【図8】バックゲート型FETにおいて、第一次結合分子を絶縁性保護膜に固定した例を示す図である。100はバックゲート型FET、102は支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極、472は第一次結合分子、482は試料溶液、640は絶縁性保護膜を示す。
【図9】バックゲート型FETにおいて、第一次結合分子を第二の絶縁膜に固定した例を示す図である。510、520および520aはバックゲート型FET、102は支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、512、522、522aおよび522bはゲート電極、472、472aおよび472bは第一次結合分子、490、490aおよび490bは試料溶液を示す。
【図10】バックゲート型FETにおいて、第一次結合分子を第二の絶縁膜に固定した他の例を示す図である。102は支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極、116は凹部側壁、472は第一次結合分子、482は試料溶液を示す。
【図11】バックゲート型FETにおいて、第一次結合分子をゲート電極に固定した例を示す図である。530および530aはバックゲート型FET、102は支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、532、532aおよび532bはゲート電極、472、472aおよび472bは第一次結合分子、490、490aおよび490bは試料溶液を示す。
【図12】サイドゲート型FETにおいて、第一次結合分子を超微細繊維体に固定した例を示す図である。102は支持基板、104は第一の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極、472は第一次結合分子、490は試料溶液を示す。
【図13】サイドゲート型FETにおいて、第一次結合分子を絶縁性保護膜に固定した例を示す図である。102は支持基板、104は第一の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極、472は第一次結合分子、490は試料溶液、640は絶縁性保護膜を示す。
【図14】サイドゲート型FETにおいて、第一次結合分子を第一の絶縁膜に固定した例を示す図である。102は支持基板、104は第一の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極、472は第一次結合分子、490は試料溶液を示す。
【図15】サイドゲート型FETにおいて、第一次結合分子を第二の絶縁膜に固定した他の例を示す図である。102は支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極、116は凹部側壁、472は第一次結合分子、482は試料溶液を示す。
【図16】サイドゲート型FETにおいて、第一次結合分子をゲート電極に固定した例を示す図である。102は支持基板、104は第一の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、114はゲート電極、472は第一次結合分子、490は試料溶液を示す。
【図17】分離ゲート型FETにおいて、第一次結合分子をゲート素子部の絶縁膜に固定した例を示す図である。600は分離ゲート型FET、102は第一の支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、202は第二の支持基板、204は第三の絶縁膜、206は第四の絶縁膜、472は第一次結合分子、490は試料溶液、602はゲート電極、210は導電性基板、212は超微細繊維体素子部、214はゲート素子部を示す。
【図18】分離ゲート型FETにおいて、第一次結合分子をゲート素子部の絶縁膜に固定した他の例を示す図である。610および610aはゲート素子部、202は第二の支持基板、204は第三の絶縁膜、206は第四の絶縁膜、472、472aおよび472bは第一次結合分子、490、490aおよび490bは試料溶液、612、612aおよび612bはゲート電極を示す。
【図19】分離ゲート型FETにおいて、第一次結合分子をゲート素子部のゲート電極に固定した例を示す図である。620および620aはゲート素子部、202は第二の支持基板、204は第三の絶縁膜、206は第四の絶縁膜、472、472aおよび472bは第一次結合分子、490、490aおよび490bは試料溶液、622、622aおよび622bはゲート電極を示す。
【図20】分離ゲート型FETにおいて、複数のゲート素子部がある場合に複数種の第一次結合分子を各ゲート電極に固定した例を示す図である。630は分離ゲート型FET、102は第一の支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、202は第二の支持基板、204は第三の絶縁膜、206は第四の絶縁膜、472aおよび472bは第一次結合分子、490aおよび490bは試料溶液、622はゲート電極、210は導電性基板、212は超微細繊維体素子部、214aおよび214bはゲート素子部を示す。
【図21】分離ゲート型FETにおいて、複数種の第一次結合分子をそれぞれゲート素子部の絶縁膜に固定した例を示す図である。800は分離ゲート型FET、102は第一の支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、202は第二の支持基板、204は第三の絶縁膜、206は第四の絶縁膜、472aおよび472bは第一次結合分子、490aおよび490bは試料溶液、612aおよび612bはゲート電極、210は導電性基板、212は超微細繊維体素子部、214はゲート素子部を示す。
【図22】分離ゲート型FETにおいて、複数種の第一次結合分子をそれぞれゲート素子部の絶縁膜に固定した他の例を示す図である。900は分離ゲート型FET、102は第一の支持基板、104は第一の絶縁膜、106は第二の絶縁膜、108はソース電極、110はドレイン電極、112は超微細繊維体、202は第二の支持基板、204は第三の絶縁膜、206は第四の絶縁膜、472aおよび472bは第一次結合分子、490aおよび490bは試料溶液、612aおよび612bはゲート電極、302は第一の導電性基板、304は第二の導電性基板、306は導電性部材、212は超微細繊維体素子部、214はゲート素子部を示す。
【図23】FETの基板20に固定された第一次結合分子10に検出対象物11が反応し、かつ検出対象物11に第二次結合分子12が結合している様子を模式的に示す図である。第一次結合分子10は、例えば、基板におけるチャネルが形成された面20−1の裏面20−2に固定されている。
【図24】図23に示された第二次結合分子12の代わりに、標識物質13−1で標識された第二次結合分子13が結合した状態を示す図である。
【図25】実施例の検出で得られたI−Vg特性を、ソース-ドレイン電流I(縦軸)と、ゲート電圧Vg(横軸)の関係で示したグラフである。
【図26】図25で示されたグラフを、縦軸で拡大したグラフである。
【図27】実施例で得られたI−Vg特性の、ゲート電圧Vgが−12Vのときのソース-ドレイン電流Iを示すグラフである。
【図28】実施例で得られたI−Vg特性の、ソース-ドレイン電流Iが−2.5×10−8のときのゲート電圧Vgを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果トランジスタに固定された第一次結合分子と、試料に含まれる検出対象物とを反応させるステップ、
前記検出対象物と特異的に反応する第二次結合分子を、前記検出対象物と反応させるステップ、および
前記第二次結合分子を反応させた後に、電界効果トランジスタの電気シグナルを測定するステップを含む、検出対象物を検出する方法。
【請求項2】
電界効果トランジスタに固定された第一次結合分子と、試料に含まれる検出対象物とを反応させるステップ、
前記検出対象物と特異的に反応する第二次結合分子を、前記検出対象物と反応させるステップ、
第二次結合分子と特異的に結合する第三次結合分子を、前記第二次結合分子と反応させ、さらに必要に応じて、より高次の結合分子を反応させるステップ、および
前記結合分子のうち最高次結合分子を反応させた後に、電界効果トランジスタの電気シグナルを測定するステップを含む、検出対象物を検出する方法。
【請求項3】
前記第一次結合分子と前記検出対象物とを反応させる前に、前記電界効果トランジスタにおける前記第一次結合分子の結合面をブロッキングするステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二次から最高次の結合分子のいずれかは、電界効果トランジスタの電気的シグナルを増幅させる物質で標識されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電界効果トランジスタの電気的シグナルを増幅させる物質が、電気伝導体、電気絶縁体または半導体物質である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電界効果トランジスタの電気的シグナルを増幅させる物質が、電気伝導体または半導体物質である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記電界効果トランジスタの電気シグナルは、ソース-ドレイン電流とゲート電圧の関係を示すI−Vg特性、またはソース-ドレイン電流とソース-ドレイン電圧の関係を示すI−V特性である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電界効果トランジスタは、基板、前記基板上に配置されたソース電極とドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、および前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を含み、
前記第一次結合分子は、前記基板、超微細繊維体またはゲート電極に固定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電界効果トランジスタは、基板、前記基板上に配置されたソース電極とドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、および前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を含み、
前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜、および前記支持基板の第二の面に形成された第二の絶縁膜を有し、
前記ソース電極、ドレイン電極およびチャネルは、前記第一の絶縁膜上に配置され、
前記ゲート電極は、前記第二の絶縁膜上に配置されており、かつ
前記第一次結合分子は、前記第二の絶縁膜またはゲート電極に固定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電界効果トランジスタは、基板、前記基板上に配置されたソース電極とドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、および前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を含み、
前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜を有し、
前記ソース電極、ドレイン電極、チャネルおよびゲート電極は、前記第一の絶縁膜上に配置され、前記ゲート電極と前記超微細繊維体との間隔が10μm以上であり、かつ
前記第一次結合分子は、前記第一の絶縁膜またはゲート電極に固定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電界効果トランジスタは、基板、前記基板上に配置されたソース電極とドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、および前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極、ならびに前記基板に電気的に接続されている第二の基板を含み、
前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜を有し、
前記ソース電極、ドレイン電極およびチャネルは、前記第一の絶縁膜上に配置され、
前記ゲート電極は、前記第二の基板の第一の面上に配置されており、かつ
前記第一次結合分子は、前記第二の基板の第一の面またはゲート電極に固定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記超微細繊維体はカーボンナノチューブである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−82988(P2008−82988A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266127(P2006−266127)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(000162478)協和メデックス株式会社 (42)