説明

多段階生物活性物質送達を示す多糖ゲル処方物

少なくとも1つの多糖分解阻害剤を含む多糖ゲル処方物およびその製造方法が、本明細書中で記載される。本明細書中に記載される方法は、少なくとも1つの多糖を提供するステップ、および多糖中に少なくとも1つの分解阻害剤を組入れるステップを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許仮出願第60/991,473号(2007年11月30日出願)の利益を主張する出願番号12/276,167(2008年11月21日出願)の一部継続である米国特許出願第12/616,020号(2009年11月10日出願)の利益ならびに優先権を主張する(これらの記載内容はすべて、参照により本明細書中で援用される)。
【背景技術】
【0002】
多糖は、比較的複雑な炭水化物である。それらは、グリコシド結合により共に連結される多数の単糖で構成されるポリマーである。したがって、それらは、大型で、しばしば分枝した高分子物質である。多糖、特にヒアルロン酸(HA)は、化粧品および医療用途において有用である。これらのポリマーは、例えば柔組織増強における充填剤として用いられてきた。
【0003】
多糖、例えばHAは、身体の多数の組織中に、例えば皮膚、軟骨、および硝子体液(これらに限定されない)中に天然に見出される。したがって、HAは、これらの組織を標的にする生物医学的用途に良好に適合される。HAは、眼科手術(すなわち、角膜移植、白内障手術、緑内障手術、ならびに網膜剥離を修復するための手術)に用いられ得る。HAは、膝の骨関節炎を処置するためにも用いられる。粘性補充療法とも呼ばれるこのような処置は、膝関節への注射の一経過として施され、関節液の粘性を補充し、それにより、関節を円滑にし、関節をクッションで支えて、鎮痛作用を生じると考えられる。HAが軟骨細胞に生化学陽性作用を及ぼすことも示唆されている。HAの経口使用が近年示唆されているが、しかしその有効性は実証を要する。今のところ、HAの経口投与が骨関節炎に陽性作用を及ぼすということを示唆するいくつかの予備臨床試験が存在する。
【0004】
HAは、その高い生物適合性を有し組織の細胞外マトリックス中で一般的に存在することから、組織工学研究における生体材料足場として用いられ得る。いくつかの癌において、HAレベルは悪性腫瘍および予後不良とよく相関する。したがってHAは、しばしば、前立腺癌および乳癌に関する腫瘍マーカーとして用いられる。HAはまた、疾患の進行をモニタリングするためにも用いられ得る。HAはまた、組織治癒を誘導するために術後にも、特に白内障手術後に用いられ得る。HAの大型ポリマーは治癒の早期段階に出現して、免疫応答を媒介する白血球のための空間を物理的に作り出すということを創傷治癒の最新モデルは提唱している。
【0005】
細胞外空間に存在する場合、HAは、独特に適応性のある物理的特性および特に優れた生体適合性を有する空間充填、構造安定化および細胞保護分子として機能する。HAマトリックスは、極端に粘弾性である一方で、高レベルの水和を保持する。皮膚の含水量と皮膚組織中のHAレベルとの間には、強い相関が認められる。ヒト皮膚が老化すると、HA含量および代謝が変化することが既に知られている。これらの変化に伴って、皮膚の機械的特性に有意の劣化が存在する。若い皮膚と細胞間マトリックス中の強いHA網様構造の存在との間には関係があると思われる。
【0006】
非架橋ならびに架橋多糖鎖、例えばHAは、異なる経路(例えば、酵素的、フリーラジカル)により分解する傾向があり、したがってインビボでのポリマーの寿命を限定する。したがって、天然分解速度を低減し、インビボでの生成物存続を延長する方法および組成物を開発することが重要である。分解に耐性であることにより寿命増大を示す多糖処方物が依然として必要とされている。
【0007】
さらに、移植後、長期間に亘って周囲組織への生物学的活性物質の制御放出を提供する多糖処方物が、当業界では待望されている。このような生物活性物質は、多糖処方物それ自体の副作用のいくつかを処置するために用いられ得る。
【0008】
分解防止、およびHA処方物の送達方法を含めてHAについての多数の開示が当該技術分野には存在し、例としては、特許文献1(架橋HA組成物、例えばポリエチレングリコール);特許文献2(HA処方物を送達するための無針注射装置);および特許文献3(柔組織増強のための被覆HA粒子)が挙げられるがこれらに限定されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0036403号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0030367号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0022808号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
寿命の延長、分解時間の増大、および/またはインビボでの少なくとも1つの生物学的活性物質の持続放出を示す、一般的に例えば多糖ベースのポリマー系である柔組織増強系が、本明細書で記載される。一般的に、この系は、1つ以上の段階、レベル、時間枠および/またはプロフィールで、1つ以上の生物学的活性物質を送達する能力を包含する。
【0011】
本明細書中に記載される柔組織増強系は、そこに分散される多糖粒子を有する多糖マトリックスを含み、この場合、マトリックスおよび/または粒子はさらに少なくとも1つの生物学的活性物質を含み、そしてマトリックスおよび/または粒子はマトリックスおよび/または粒子から柔組織への少なくとも1つの生物学的活性物質の放出を制御する。この系は一次速度で生物学的活性物質を放出し得るし、当該粒子は二次速度で生物学的活性物質を放出する。一実施形態では、一次速度は二次速度より速い。
【0012】
別の実施形態では、粒子は異なる粒子の集団を含み、この場合、各集団は、他の粒子集団と異なる放出速度を有する。
【0013】
さらに別の実施形態では、マトリックスおよび粒子は、同一の生物学的活性物質を放出するか、あるいは異なる生物学的活性物質を放出する。いくつかの実施形態では、生物学的活性物質は、酵素阻害剤、麻酔剤、医療用神経毒、酸化防止剤、抗感染剤、抗炎症剤、紫外線(UV)遮断剤、染料、ホルモン、免疫抑制剤およびその組合せからなる群から選択される。他の実施形態では、阻害剤はタンニン酸またはコンドロイチン硫酸A(CSA)であり、そして麻酔剤はリドカインである。
【0014】
別の実施形態では、マトリックスは、ヒアルロン酸(HA)、o−硫酸化HA、デキストラン、デキストラン硫酸、セルロース、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、アルギン酸塩、ケラチン硫酸、キトサンおよびセルロースからなる群から選択される多糖を含む。さらに、マトリックスは、化学的に架橋され、物理的に架橋され得るし、あるいは非架橋であり得る。
【0015】
一実施形態では、粒子は、トリポリホスフェートで物理的に架橋されアルギン酸塩で被覆されるキトサンを含む。別の実施形態では、粒子は、カルシウムで物理的に架橋されキトサンで安定化されるアルギン酸塩を含む。他の実施形態では、粒子は、直径約10μm〜約100μmである。
【0016】
架橋HAマトリックス中に分散されるCSA含有アルギン酸被覆キトサン粒子を含む柔組織増強系であって、CSAの最終濃度が約1mg/mL〜約10mg/mLである柔組織増強系が、本明細書中でさらに記載される。
【0017】
さらにまた、架橋HAマトリックス中に分散されるCSA含有アルギン酸被覆キトサン粒子を含む柔組織増強系であって、CSAの最終濃度が約1mg/mL〜約10mg/mLであり、HAマトリックスがさらに、約1mg/mL〜約10mg/mLのタンニン酸を含有する柔組織増強系が、本明細書中で記載される。
【0018】
架橋HAマトリックス中に分散されるタンニン酸含有アルギン酸被覆キトサン粒子を含む柔組織増強系であって、タンニン酸の最終濃度が約0.1mg/mL〜約2mg/mLである柔組織増強系も、本明細書中で記載される。
【0019】
いくつかの実施形態では、柔組織増強系はさらに、HAマトリックス中にリドカインを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】比色検定を用いた、コンドロイチン硫酸A(CSA)を含む多糖ゲルの酵素的分解の程度を示すグラフである。
【図2】比色検定を用いた、タンニン酸(TA)を含む多糖ゲルの酵素的分解の程度を示すグラフである。
【図3】可溶性HA検定を用いた、CSAを含有する場合としない場合の両方の多糖ゲルの酵素的分解の程度を示すグラフである。
【図4】可溶性HA検定を用いた、TAを含有する場合としない場合の両方の多糖ゲルの酵素的分解の程度を示すグラフである。
【図5】多糖ゲルの押出し力に及ぼすCSAの作用を示すグラフである。
【図6】CSA負荷キトサン/アルギン酸塩粒子(左)対非負荷キトサン/アルギン酸塩粒子(右)を示す。
【図7】ジュベダーム(登録商標)30およびジュベダーム(登録商標)24HVの両方からのインビトロCSA放出を示すグラフである。
【図8】ジュベダーム(登録商標)30からのインビトロTA放出を示すグラフである。
【図9】キトサン/アルギン酸塩粒子からのインビトロTA放出を示すグラフである。
【図10】経時的CSAまたはTA粒子補足ジュベダーム(登録商標)30におけるHA分解の抑制を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
用語の定義
本明細書中で用いる場合、「約」は、およそまたはほぼを意味し、そして本明細書中に記述される数値または範囲の場合、列挙または主張される数値または範囲の+/−10%を意味する。
【0022】
本明細書中で用いる場合、「担体」、「不活性担体」および「許容可能な担体」は互換的に用いられ得、また所望の組成物を提供するために本発明の開示された系と組合せられ得る担体を指す。具体的治療のための薬学的および/または化粧用組成物の製造に関して周知である多数の担体を、当業者は理解している。
【0023】
本明細書中で用いる場合、「化粧用の」は、表面または外被欠陥の外観を改善することに言及する形容詞である。典型的には、化粧用組成物は、表面の機能的局面よりむしろ、審美的局面を改善するために用いられ得る。最も一般的には、化粧用組成物は、健康および美的処置としての適用のために、あるいは身体の個人的外観、例えば角質性表面、例えば皮膚、毛髪、爪等に作用するために、処方される。
【0024】
本明細書中で用いる場合、「化粧的に許容可能な担体」は、角質性表面または身体の他の領域への適用に適している材料を指す。適用時に、化粧的に許容可能な担体は、皮膚および他の角質性表面との有害反応が実質的に存在しない。例えば、化粧用担体は、脂肪もしくは非脂肪クリーム、乳状懸濁液、または乳濁液油中型もしくは水中油型、ローション、ゲルもしくはゼリー、コロイドもしくは非コロイド性の水性もしくは油性溶液、ペースト、エーロゾル、可溶性錠剤またはスティックの形態をとり得る。
【0025】
本明細書中で用いる場合、「処方物」および「組成物」は互換的に用いられ得、また所定の目的のために共に提示される構成要素の組合せを指す。このような用語は、当業者に周知である。
【0026】
本明細書中で用いる場合、「分子量(M)」は、分子中の原子の原子量の合計を指す。例えば、メタン(CH)の分子量は、16.043g/molであり、原子量は、炭素=12.011g/mol、水素=1.008g/molである。ダルトン(Da)は、12Oの質量の1/12と等しい質量の単位であり、100万Daは1MDaとして記号で表され得る。
【0027】
詳細な説明
寿命の延長、分解時間増大、および/またはインビボでの少なくとも1つの生物学的活性物質の持続放出を示す柔組織増強系および組成物が、本明細書中で記載される。分解時間におけるこの増大は、分解に対する阻害剤として作用する分子の組入れによりもたらされ得る。系それ自体は、一般的に多糖ベースである。一般的には、系は、1つ以上の段階、レベル、時間枠および/またはプロフィールで1つ以上の生物学的活性物質を送達する能力を包含する。
【0028】
本明細書中に記載される柔組織増強系は、そこに分散される多糖粒子を有する多糖マトリックスを含み、この場合、前記マトリックスおよび/または粒子はさらに、少なくとも1つの生物学的活性物質を含み、そして前記マトリックスおよび/または粒子はマトリックスおよび/または粒子から柔組織への少なくとも1つの生物学的活性物質の放出を制御する。
【0029】
本明細書中に記載される柔組織増強系は、一般的に、柔組織増強を提供し(例えば皺取り手術および皺矯正術等)、種々のインビボ分解経路を阻止し(例えば、酵素的、フリーラジカル分解等)、そして制御された薬剤送達を提供する(例えば、注射痛、挫傷および出血等を低減するため)新規の多作用ポリマー系に関する。本明細書中に記載される系のこれらの特徴は、それらの低分解耐性、リンパ除去に対する感受性増大、および注射中、ならびに注射後の最初の数週間の先進性患者不快により典型的に限定される市場に一般に出ている充填剤とは異なる。
【0030】
本開示の一態様は、少なくとも1つの多糖または多糖マトリックスを含む柔組織増強系に関する。「多糖」は、本明細書中で用いる場合、2つより多い単糖分子(単糖は同一であるかまたは異なり得る)のポリマーを指す。本明細書中に記載されるマトリックスを構成する多糖は、化学的に架橋され、物理的に架橋されるか、または架橋されない。本明細書中で用いられる多糖は、HA、セルロース、キトサン、a−硫酸化HA、デキストラン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸およびアルギン酸塩であり得るが、これらに限定されない。系はさらに、物理的または化学的に架橋され得、またポリマーマトリックス内に分散および/または閉じ込められた多糖粒子を包含する。
【0031】
本明細書中に記載される多糖は、多糖およびその誘導体をそれらのヒドロキシル基により架橋するのに適していることが公知の架橋剤を用いて架橋され得る。適切な架橋剤としては、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(または1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ブタンまたは1,4−ビスグリシジルオキシブタン(これらはすべて、BDDEとして一般に既知である))、1,2−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)エチレンおよび1−(2,3−エポキシプロピル)−2,3−エポキシシクロヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。1つより多い架橋剤または異なる架橋剤の使用は、本開示の範囲から排除されない。一実施形態では、架橋剤はBDDEを含むかまたはそれからなる。
【0032】
ポリマー系は、一般的に、容積矯正、生物学的活性物質または生物活性物質の制御放出を提供し、そしてマトリックス内に多糖粒子を保持することが可能であるよう意図される。多糖粒子は、構造、柔組織のより長い永続的矯正および活性物質の持続的制御放出を提供するよう意図される。このようなものとして、記載される系は、いくつかの場合には、少なくとも2つのレベルの生物学的活性物質放出を提供し得る。第一のレベルの放出は、ポリマー網様構造それ自体からであり得る。この放出は、一般的に、ポリマー網様構造内に閉じ込められる生物学的活性物質(単数または複数)からである。第二レベルの放出は、ポリマー網様構造に関連したポリマー粒子からであり得る。
【0033】
本明細書中に記載されるようなポリマー系からの多重レベルの放出を有することの一利点は、生物活性物質放出時機全体に亘る良好な制御である。例えば、新たに移植される材料は、分解阻害剤および酸化防止剤の迅速放出機序により有効に防衛され得る免疫系による攻撃の初期急増(initial surge)に曝される。しかしながら、時が経つと、移植材料は、より軽度ではあるがしかし持続的な免疫攻撃を受け、これは、持続放出機序により良好に阻止され得る。
【0034】
したがって、本明細書中に記載される系は、ポリマー粒子で迅速初期放出を提供して、より長く継続する持続性二次放出を提供するよう意図されたポリマーマトリックスを包含する。二次放出は、ポリマー粒子の高安定性および緩徐生分解プロフィールにより達成される。一実施形態では、生物学的活性物質、例えば酵素阻害剤または分解阻害剤(例えばコンドロイチン硫酸、タンニン酸等)は、ポリマー網様構造と混合され、さらにまたポリマー粒子中に組入れられるかまたはその上に被覆される。粒子の内側および/または外側の阻害剤の存在は、系に関する長期貯蔵寿命を保証する拡散平衡を確立する。
【0035】
次いで、移植時に、ポリマー網様構造からの生物活性物質の迅速放出は、例えば炎症反応からの初期防御を提供し得る。この迅速放出は、粒子表面に沿って濃度勾配を作ることにより、ポリマー粒子からの第二段階放出を活性化する。放出はさらに、ポリマー粒子がインビボで分解すると、拡大される。第二段階放出が遅いほど、ポリマー網様構造への生物活性物質の供給は長くなる。生物活性物質が分解阻害剤である場合、それにより組成物は持続性分解保護を保証される。別の実施形態では、酵素阻害剤は、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸等)または薬剤分子(例えばリドカイン、エピネフリン等)により補充されるかまたは置換される。
【0036】
別の実施形態では、ポリマー粒子は、キトサンをトリポリホスフェート(TPP)と連結する物理的架橋工程により製造され、さらに、アルギン酸塩で被覆される。さらに別の実施形態では、ポリマー粒子は、アルギン酸塩をカルシウムと連結する物理的架橋工程により製造され、さらに、キトサンで安定化される。その結果生じる粒子は、皮膚充填剤組成物中に含入するのにそれらを理想的にする特性を有する。例えば、粒子は、生体適合性/生分解性、柔軟性(例えば微細針を通した押出しを助長するために)、毒性架橋剤無含有、平滑な肌理(例えば生体適合性増大のため)、サイズ適合可能(例えば、リンパ除去および移動に取り組むため)、小型および大型活性分子の効率的担体(例えば、タンニン酸、リドカイン、コンドロイチン硫酸、エピネフリン等)、優れた保持プロフィールでインビトロで非常に安定で且つ活性分子保持時間で調整可能(例えば、キトサン:TPP:アルギン酸塩比を調整することによる)である。
【0037】
粒子それ自体は、本明細書中に記載されるようなポリマーマトリックス中への組入れのために適切なサイズを有し、本明細書中に記載の系で有用であり得る。例えば、粒子は、直径約1μm〜約1000μmである。他の実施形態では、粒子は約10μm〜約100μm、または約25μm〜約75μmの直径を有する。
【0038】
系に組入れられる生物活性物質は、阻害剤、麻酔剤、医療用神経毒、酸化防止剤、抗感染剤、抗炎症剤、紫外線(UV)遮断剤、染料、ホルモン、免疫抑制剤およびその組合せからなる群から選択され得る。
【0039】
一実施形態では、粒子またはポリマーマトリックスはさらに、少なくとも1つの阻害剤、例えば分解阻害剤を含む。阻害剤は、酵素的およびフリーラジカル分解のような特定の分解機序を標的にし、相殺することにより作用する分子である。抑制活性を示す分子としては、グリコサミノグリカン(GAG)(例えば、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸A(CSA)、a−硫酸化HA、リナマリンおよびアミグダリン)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メラトニン、ビタミンCおよびビタミンE)、タンパク質(例えば、血清ヒアルロニダーゼ阻害剤)および脂肪酸(例えば、飽和C〜C22脂肪酸)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
阻害剤は、典型的には、架橋多糖ポリマーより小さい大きさの分子である。それらの小サイズおよび高拡散係数のため、それらは、インビボで迅速に吸着する傾向があり、これがそれらの性能を潜在的に限定し得る。インビボでのこのような分子の局所的半減期を増大する一方法は、それらを多糖ポリマーに化学的にグラフトし、そしてそれらを同時に送達することである。この方法の欠点の1つは、結合分子が、非結合分子と比較して、有意に低い活性を示し得ることである。
【0041】
一実施形態では、粒子またはポリマーマトリックスは、さらに、少なくとも1つの麻酔剤を含む。少なくとも1つの局所麻酔剤は、アンブカイン、アモラノン、アミロカイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタムベン、ブタニリカイン、ブテサミン、ブトキシカイン、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソクイン、ジメソカイン、ジペロドン、ディシクロニン、エクゴニジン、エクゴニン、塩化エチル、エチドカイン、ベータ・ユーカイン、ユープロシン、フェナルコミン、フォルモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、イソブチルp−アミノベンゾエート、ロイシノカイン、メシラート、レボキサドロル、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、塩化メチル、ミルテカイン、ナエパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサゼイン、パレトキシカイン、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、シュードコカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミンおよびその塩の群から選択され得る。一実施形態では、少なくとも1つの麻酔剤は、塩酸リドカインの形態のようなリドカインである。本明細書中に記載される系および組成物は、組成物の約0.1重量%〜約5重量%、例えば組成物の約0.2重量%〜約1.0重量%のリドカイン濃度を有し得る。一実施形態では、組成物は、組成物の約0.3重量%(w/w%)のリドカイン濃度を有する。本明細書中に記載される組成物中のリドカインの濃度は治療的に有効であり、その濃度は、患者に害を与えることなく治療的利益を提供するのに適切である。
【0042】
生物学的活性物質のさらなる例としては、抗掻痒剤、抗セルライト剤、抗瘢痕剤および抗炎症剤が挙げられるが、これらに限定されない。抗掻痒剤としては、メチルスルホニルメタン、重炭酸ナトリウム、カラミン、アラントイン、カオリン、ペパーミント、チャノキ油およびその組合せが挙げられる。抗セルライト剤としては、フォルスコリン、キサンチン化合物、例えばカフェイン、テオフィリン、テオブロミンおよびアミノフィリン(これらに限定されない)ならびにその組合せが挙げられる。抗瘢痕剤としては、IFN−y、フルオロウラシル、乳酸−グリコール酸共重合体、メチル化ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリエチレングリコールおよびその組合せが挙げられる。抗炎症剤としては、デキサメタゾン、プレドニソロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミンおよびその組合せが挙げられる。
【0043】
一実施形態では、系は、タンニン酸酵素阻害剤またはコンドロイチン硫酸A(CSA)酵素阻害剤およびリドカインを包含する。リドカインまたは代替的麻酔剤は、所定の構成で用いられて、粘着性皮膚充填剤の注射に関連した疼痛のうちの多少を、または実質的にすべてを軽減し得る。麻酔剤の緩徐放出は、注射処方物による残留疼痛軽減を可能にするのに有用である。
【0044】
生物学的活性物質は、粒子もしくはマトリックス中に、またはその両方に、約0.0001重量%〜約99重量%、約0.001重量%〜約75重量%、約0.01重量%〜約60重量%、約1重量%〜約50重量%、約1重量%〜約40重量%、約1重量%〜約30重量%、約1重量%〜約20重量%、約10重量%〜約20重量%、約20重量%〜約30重量%、約0.0001重量%〜約0.01重量%、約0.0001重量%〜約0.1重量%、約0.0001重量%〜約1重量%、約0.001重量%〜約1重量%、約0.01重量%〜約1重量%、または約1重量%〜約10重量%の範囲の濃度で存在し得る。
【0045】
他の実施形態では、粒子もしくはマトリックス中に、またはその両方に存在する生物学的活性物質の濃度は、約0.001mg/mL〜約100mg/mL、約0.01mg/mL〜約10mg/mL、約1mg/mL〜約10mg/mL、約2mg/mL〜約5mg/mLまたは約0.1mg/mL〜約2mg/mLの範囲である。
【0046】
一実施形態では、系は、1つ以上の生物活性物質を異なる速度で放出する。例えば、マトリックスは、生物学的活性物質を一次速度で放出し、粒子は、生物学的活性物質を二次速度で放出する。例示的一実施形態では、一次速度は二次速度より速い。
【0047】
別の実施形態では、粒子は異なる粒子の集団を含み、この場合、各集団は他の粒子集団とは異なる放出速度を有する。例えば、異なるサイズまたは形状を有する粒子は、異なる放出速度を有し得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスおよび関連粒子は、同一の生物学的活性物質を放出する。他の実施形態では、生物学的活性物質は、マトリックスおよび粒子において異なる。
【0049】
本開示の別の態様は、少なくとも1つのレベルの生物活性物質の送達を提供する能力を有する多糖処方物の製造方法に関する。これらの方法は、多糖を提供し、生物活性物質と多糖を会合する。
【0050】
非架橋ならびに架橋多糖鎖は、異なる経路(例えば、酵素的、フリーラジカル)により分解する傾向があり、これが、しばしば、インビボでのポリマーの寿命を限定する。したがって、この天然分解過程の速度を低減し、組織中の生成物存続を増大する方法を開発することは、重要である。
【0051】
ポリマー増大、例えば多糖存続を達成するための一方法は、多糖ポリマーマトリックスそれ自体の内側に、またはマトリックス内に会合された粒子中に阻害剤分子のような生物学的活性物質を封入することであり、これが、阻害剤の局所的(注射部位)、持続性および制御化放出を可能にする。これは、天然分解機序の回避も可能にする。本発明の封入方法は、数週間の期間に亘って、多糖ポリマーマトリックスへの生物学的活性物質、例えば分解阻害剤の一定供給を提供する。
【0052】
他の実施形態では、生物活性物質の一定供給は、数ヶ月の期間に亘って提供される。封入の一方法は、吸着により、または封入工程により、多糖ポリマーマトリックス内に生物活性物質を組入れることである。封入工程の場合、生物活性物質は、高度水和状態で多糖マトリックスと混合され、その後、マトリックスを脱水して、放出動態(例えば、ポリマーの最終膨潤比)を制御する。高度水和状態は、約20mg/mL未満であるHA濃度に対応する。
【0053】
本開示の別の態様は、多糖マトリックスおよびマトリックス内に分散される多糖粒子ならびに少なくとも1つの生物活性物質を含み、さらに、生体適合性または生分解性容器をさらに含む多糖処方物であって、阻害剤が容器の内側または一部に存在する処方物に関する。このような容器は、リポソーム、ミセルおよび重合小胞のような非共有結合または共有結合自己集合性分子で構成され得る。
【0054】
リポソームは、混合脂質鎖を有する天然由来リン脂質(例えば、卵ホスファチジルエタノールアミン)から、あるいはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)のような純界面活性剤構成成分から形成される1つ以上の二重層膜で構成される小胞である。リポソームは、通常は水性溶液のコアを含有する(しかし限定はされない);水性材料を含有しない脂質構造は、ミセルと呼ばれる。ミセルは、液体コロイド中に分散される界面活性剤分子の凝集体である。水性溶液中の典型的ミセルは、周囲溶媒と接触して親水性「頭」領域と凝集体を形成して、ミセル中心に疎水性巣領域を封鎖する。この型のミセルは、順相ミセル(水中油型ミセル)として既知である。逆ミセルは、中心に頭基を有し、尾部は外に伸びる(油中水型ミセル)。ミセルは、しばしば、ほぼ球形であるが、しかしながら他の形態、例えば楕円形、円筒形および二重層も可能である。ミセルの形状およびサイズは、その界面活性剤分子および溶液状態の分子幾何学、例えば界面活性剤濃度、温度、pHおよびイオン強度の一関数である。ミセルの形成工程はミセル化として既知であり、それらの多形性に従って多数の資質の相行動の一部を構成する。
【0055】
本開示の別の態様は、分解低減および生物活性物質放出を示す多糖処方物の製造方法であって、1)多糖を提供するステップ、2)阻害剤および少なくとも1つの生物活性物質を生体適合性または生分解性粒子または容器中に組入れるステップ、そして3)上記多糖および粒子を処方物中で組合せるステップを包含する方法に関する。したがってこの封入方法は、阻害剤および生物活性物質を、多糖と同時に送達され得る生体適合性および生分解性粒子中に組入れる。粒子が容器である場合、それらは、非共有または共有結合自己集合性分子(例えばミセル、リポソームおよび重合小胞)で構成される。自己集合性は、先在する構成成分の障害系が、外部指示なしに構成成分それ自体の間の特定の局所的相互作用の結果として組織化された構造を形成する過程を記載するために本明細書中で用いられる用語である。
【0056】
提唱される処方物の付加的利点は、最終生成物の流動学的特性の可変性が増大することである。架橋多糖処方物は、典型的には高粘性を有し、そして細い針を通して押し出すためにはかなりの力を要する。非架橋多糖は、しばしば、この押出し過程を助長するための滑剤として用いられる。しかしながら、HA皮膚充填剤では特に、非架橋HAはインビボでの最終生成物の持続性に寄与しない。実際、(固定総HA濃度に関する)皮膚充填剤の流動学的特性を調整するための非架橋HAにより置き換えられる架橋HAが多いほど、生成物の分解耐性は低い。このようなものとして、分解に対する阻害剤でもある非架橋GAG(例えば、コンドロイチン硫酸、o−硫酸化ヒアルロン酸)は、最終生成物の寿命を延長するため、ならびに流動学的特性を改良するための両方で用いられ得る。
【0057】
一実施形態では、本明細書中に記載される系は、中等度〜重度の顔面の皺および襞、例えば鼻唇襞(鼻から口の隅まで伸びる線)を処置するために用いられ得る皮膚充填剤である。皮膚充填剤は、皮膚の弾性を支持して平滑な且つ柔軟な外観を提供する天然複合糖であるHAを含むゲルインプラントであり得る。それは生体適合性であり、身体の天然HAを補足し、老化が激減し得る。
【0058】
皮膚充填剤(dermal fillerまたはdermafiller)は、顔面の中〜深部の真皮中に注射器で注射され得る。真皮は、結合組織、神経末端、汗腺および油腺ならびに血管を含有する表面下皮膚層である。皮膚充填剤は、処置領域における皺および襞に対するリフティングおよび容積付加により、皮膚の外観を改善し得る。
【0059】
本開示の別の態様は、本発明の系、化粧用担体および付加的活性成分を含む化粧用組成物に関する。化粧用活性成分としては、酸化防止剤、ビタミンおよび保湿剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明で記載される系は、1つ以上の作用物質、例えば乳化剤、湿潤剤、甘味剤または風味剤、張性調節剤、防腐剤、緩衝剤、酸化防止剤およびフラボノイド(これらに限定されない)を任意に含む薬学的組成物の一部として処方され得る。本開示の薬学的組成物中で有用な張性調節剤としては、塩、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールまたはグリセリン、ならびに他の製薬上許容可能な張性調節剤が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載される薬学的組成物中で有用な防腐剤としては、塩化ベンズアルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀が挙げられるが、これらに限定されない。pHを調節するための種々の緩衝液および手段、例えば酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液およびホウ酸塩緩衝液(これらに限定されない)を用いて、薬学的組成物を調製し得る。同様に、薬学的組成物中で有用な酸化防止剤は当該技術分野で周知であり、例としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルしステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられる。フラボノイドは、多様な有益な生化学的および抗酸化的作用を有することが周知である植物中に見出される化合物である。フラボノイドの下位区分としては、以下のものが挙げられる:フラボン、フラボノール、フラバノンおよびフラバノノール。フラボノイドの例としては、ルテオリン、アピゲニン、タンゲリチン、クエルセチン、ケムフェロール、ミリセチン、フィセチン、イソラムネチン、パキポドール、ラムナジン、ヘスペレチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、ホモエリオジクチオール、タキシフォリン、ジヒドロクエルセチン、ジヒドロケムフェロール、タンニン酸、タンニン、縮合型タンニンおよび加水分解性タンニンが挙げられる。薬理学の技術分野で既知のこれらのおよび他の物質は、本発明の薬学的組成物中に含まれ得る、と理解される。
【実施例】
【0061】
本明細書中に記載される方法に従ったHA皮膚充填剤処方物の調製、従来技術によるHA皮膚充填剤処方物の調製およびそれらの比較を記載する本発明の系の利点のいくつかを以下で例証する。
【0062】
実施例1
本開示によるHA充填ゲルの調製
24mg/mLのHA濃度、約6%の架橋度、および約180のG’を有する1〜5グラムの多糖充填剤(ジュベダーム(登録商標)24HV(Allergan Inc., Irvine, California))を、10〜200mgのコンドロイチン硫酸A(CSA−Mw=5,000〜120,000Da)を補充されたリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)溶液(pH約7)1000μLと混合した。混合物を機械的に均質化した。
【0063】
実施例2
従来技術の方法によるHA充填ゲルの調製
24mg/mLのHA濃度、約6%の架橋度、および約180PaのG’を有する1〜5グラムの多糖充填剤(ジュベダーム(登録商標)24HV)を、最終HA濃度が実施例1と同じであるように、PBS 1000μLと混合した。混合物を機械的に均質化した。
【0064】
実施例3
本開示によるヒアルロン酸充填ゲルの代替的調製
24mg/mLのHA濃度、約6%の架橋度、および約170PaのG’を有する1〜5グラムのHAベースの多糖充填剤(ジュベダーム(登録商標)30)を、1〜20mgのタンニン酸(TA−Mw=800〜4,000Da)を補充されたPBS溶液(pH約7)50μLと混合した。混合物を機械的に均質化した。
【0065】
実施例4
従来技術の方法によるヒアルロン酸充填ゲルの代替的調製
24mg/mLのHA濃度、約6%の架橋度、および約170PaのG’を有する1〜5グラムのHAベースの多糖充填剤(ジュベダーム(登録商標)30)を、最終HA濃度が実施例3と同じであるように、PBS 50μLと混合した。混合物を機械的に均質化した。
【0066】
実施例5
本開示によるヒアルロン酸充填ゲルの調製
1gのヒアルロン酸ナトリウム繊維(NaHA − Mw=0.3〜3 MDa)を、1%水酸化ナトリウム溶液 5〜10gと混合し、混合物を1〜5時間放置して、水和させた。
【0067】
50〜200mgの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)をNaHAゲルに加え、混合物を機械的に均質化した。
【0068】
次に、混合物を40〜70℃のオーブン中に1〜4時間入れた。
【0069】
その結果生じた架橋ヒドロゲルを、等モル量の塩酸(HCl)で中和して、PBS(pH約7)中で膨潤させた。
【0070】
10〜200mgのCSA(Mw=5,000〜120,000 Da)を加え、ヒドロゲルを機械的に均質化した。
【0071】
実施例6
従来技術の方法によるヒアルロン酸(HA)充填ゲルの調製
1gのNaHA(Mw=0.3〜3 MDa)を、1%水酸化ナトリウム溶液 5〜10gと混合し、混合物を1〜5時間放置して、水和させた。
【0072】
50〜200mgのBDDE(実施例5と同一のHA対架橋剤モル比)をNaHAゲルに加え、混合物を機械的に均質化した。
【0073】
次に、混合物を40〜70℃のオーブン中に1〜4時間入れた。
【0074】
その結果生じた架橋ヒドロゲルを、等モル量の塩酸(HCl)で中和して、PBS(pH約7)中で膨潤させて、最終HA濃度が実施例5と同じになるようにした。得られたヒドロゲルを、機械的に均質化した。
【0075】
実施例7
酵素分解試験(比色試験)
実施例1および2で調製したHA充填ゲルを、モーガン・エルソン比色検定を用いて、酵素分解に対する耐性に関して評価した。この検定を適用して、HA鎖の分子量の変化を測定することにより、酵素分解の程度を概算した。
【0076】
ヒアルロニダーゼ(0.1〜10mg)を各HA処方物に加え、37℃で10〜250分間インキュベートした後、0.8M 四ホウ酸カリウム溶液 0.1mLを加え、100℃で10分間、加熱した。酢酸中の10%(重量)p−ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液 3mLを試料に補充し、37℃で10〜120分間、インキュベートした。この工程を各HA処方物に関して反復して、酵素付加物を省いて、対照試料を調製した。酵素分解試料と対照試料との間の585nmでの光学密度(OD)の変化を用いて、各処方物に関する分解の程度を定量した。
【0077】
本開示の方法に従って、ならびに従来技術に従って調製された充填ゲルに関して成された測定結果(図1)は、本開示の方法により調製されたゲルのOD値(実施例1:0.774〜25.184mg/mL CSA)は、従来技術の方法により調製されたゲルの値(実施例2:0mg/ml CSA)より低い、ということを示す。OD値は分解の程度を表すため、結果は、本発明の方法に従って調製されたゲルが、従来技術に従って調製されたゲルより酵素分解に対して3〜75%高い耐性を示す、ということを示唆する。さらに、酵素分解に対する耐性は、CSAの濃度によって決まることが判明した。
【0078】
CSA補足ゲルの場合と同様に、本開示の方法により調製されるTA補足ゲルのOD値は、図2に示されるように(実施例3:0.063〜1.000mg/mL TA)、従来技術の方法により調製されるゲルの値(実施例4:0mg/mL TA)より低い。OD値は分解の程度を表すため、結果は、本記述に従って調製されたゲルが、従来技術に従って調製されたゲルより酵素分解に対して15〜90%高い耐性を示す、ということを示唆する。さらに、酵素分解に対する耐性は、TAの濃度によって決まることが判明した。TAは、一般的に、CSAと同じ抑制を得るために非常に少ないTAを要するため、CSAより高い抑制活性を有する、ということがさらに分かる。
【0079】
実施例8
酵素分解試験(可溶性HA検定)
実施例1および2で調製したHA充填ゲルを、SEC−MALS(サイズ排除多角度光散乱)ベースの可溶性HA検定を用いて、酵素分解に対する耐性に関してさらに評価した。この検定を適用して、各試料中の可溶性HA含量を測定することにより、分解を定量した(0.2〜1.0μmフィルターを通過し得るゲルの部分と定義される)。酵素分解試料と対照試料との間の可溶性HA含量の差を用いて、各HA処方物に関する分解の程度を定量した。
【0080】
ワイアット光散乱および屈折率ユニットを装備したAgilent社サイズ排除クロマトグラフィーシステムを用いて、SEC−MALS試験を実施した。ヒアルロニダーゼ(0.1〜10mg)を各HA処方物に加え、37℃で10〜250分間インキュベートした後、0.8M 四ホウ酸カリウム溶液 0.1mLを加え、100℃で10分間、加熱した。試料をPBS中に希釈し、0.2〜1.0μmフィルターを通して濾過し、SEC−MALS系に注入した。この工程を各HA処方物に関して反復して、酵素付加物を省いて、対照試料を調製した。酵素分解試料、対照試料の可溶性HA含量、ならびに両者間の相違を、図3に要約する。
【0081】
図3に示した結果(酵素分解試験結果(SEC−MALS検定))は、酵素分解後の可溶性HA含量の増大がCSAの非存在下では有意に大きかった、ということを示す。これは、比色的分解検定を用いて得られた結果(図1)と一致し、本開示の方法に従って調製されたゲルが、従来技術に従って調製されたゲルより酵素分解に対して高い耐性を示す、ということを示唆する。
【0082】
CSA補足ゲルの場合と同様に、本記述の方法により調製されるTA補足ゲルの可溶性HA含量の増大(図3:0.063〜1.000mg/mL TA)は、従来技術の方法により調製されるゲルの値(実施例4:0mg/mL TA)より低かった。これらの結果は、比色分解検定を用いて得られた結果と一致する(図4)。さらに、TAの抑制活性はCSAの活性より有意に高い、と再び断言する。
【0083】
実施例9
連続押出力試験
実施例5および6で調製したヒアルロン酸充填ゲルの流動学的特性を、連続押出力試験を用いて評価した。押出し力試験を用いて、HA処方物におけるCSAの添加が、滑剤として作用することにより押出し工程を助長するか否かを確定した。
【0084】
30G針を付けた5mL注射器を用いて、インストロン計測器で押出し力試験を実施した。0.5mLの各試料を、50mm/分の一定速度で押出した。記録されるピーク力は、押出し易さを定量する。2つの試料に関する圧縮性伸長の一関数としての圧縮力を、図5に示す。
【0085】
図5の結果は、本明細書中に記載される方法により調製されるゲルに関して記録された押出し力が、従来技術の方法により調製されるゲルの力より低かった、ということを示唆する。押出し力におけるこの差は、流動下でのゲル高度の差の特徴を示しており、本明細書中に記載される方法により調製されるゲルに含入されるCSAが流動を助長する滑剤として作用する、ということを示唆する。
【0086】
実施例10
本開示によるCSA負荷粒子の調製
以下の方法に従って、均一サイズCSA負荷粒子を調製した:10〜900mgのキトサン、1〜10mLの1N HClおよび1〜800mgのCSAを、20mLのMilliQ HOと混合することにより、キトサン/CSA溶液(溶液A)を調製した。0.1〜10%トリポリホスフェート(TPP)および0.1〜10%アルギン酸塩を混合することにより、滴下溶液(溶液B)を調製した。溶液Aを使い捨て3〜5mL注射器に投入して、0.1〜10mL/分の流量で27G×1/2“針を通して押出した(空気流は1〜50mL/分の速度で針先端を通過)。1〜10mLの溶液Aを、撹拌しながら5〜100mLの溶液B中に噴霧した。その結果生じた粒子を、溶液B中で1〜3日間インキュベートし、MilliQ HOで3回洗浄して、使用するまでPBS(pH=7.4)中に保存した。
【0087】
実施例11
本記述によるCSA粒子負荷HA充填ゲルの調製
メス−メス型ルアーロックを介して連結される2つの注射器を用いて、実施例10に従って作ったCSA負荷粒子およびジュベダーム(登録商標)30を十分に混合して、最終濃度を5mg/mL CSAとした。
【0088】
実施例12
従来技術によるCSA負荷HA充填ゲルの調製
メス−メス型ルアーロックを介して連結される2つの注射器を用いて、CSAおよびジュベダーム(登録商標)24HVを十分に混合して、最終濃度を10mg/mL CSAとした。
【0089】
実施例13
従来技術によるCSA負荷HA充填ゲルの代替的調製
メス−メス型ルアーロックを介して連結される2つの注射器を用いて、CSAおよびジュベダーム(登録商標)30を十分に混合して、最終濃度を10mg/mL CSAとした。
【0090】
実施例14
本開示によるタンニン酸(TA)負荷粒子の調製
以下の方法により、均一サイズCSA負荷粒子を調製した:10〜900mgのキトサン、1〜10mLの1N HClおよび1〜800mgのタンニン酸を、20mLのMilliQ HOと混合することにより、キトサン/TA溶液(溶液C)を調製した。0.1〜10%トリポリホスフェート(TPP)および0.1〜10%アルギン酸塩を混合することにより、滴下溶液(溶液D)を調製した。溶液Cを使い捨て3〜5mL注射器に投入して、0.1〜10mL/分の流量で27G×1/2“針を通して押出した(空気流は1〜50mL/分の速度で針先端を通過)。1〜10mLの溶液Cを、撹拌しながら5〜100mLの溶液D中に噴霧した。その結果生じた粒子を、溶液D中で1〜3日間インキュベートし、MilliQ HOで3回洗浄して、使用するまでPBS(pH=7.4)中に保存した。
【0091】
実施例15
本記述によるTA粒子負荷HA充填ゲルの調製
メス−メス型ルアーロックを介して連結される2つの注射器を用いて、実施例14に従って作ったTA負荷粒子およびジュベダーム(登録商標)30を十分に混合して、最終濃度を1mg/mL TAとした。
【0092】
実施例16
従来技術によるタンニン酸(TA)負荷HA充填ゲルの調製
メス−メス型ルアーロックを介して連結される2つの注射器を用いて、TAおよびジュベダーム(登録商標)30を十分に混合して、最終濃度を10mg/mL TAとした。
【0093】
実施例17
CSAの存在および非存在下での粒子の視覚的比較
実施例10に従って、CSA負荷粒子を製造した。比較のため、CSAを有さない対照粒子も、同一の一般手順に従って製造し、ニコン倒立顕微鏡で画像処理した(図6)。CSAおよびキトサン間の静電相互作用に起因するCSA負荷粒子の高不透明性(図6、左)は、対照粒子に対する視覚的コントラストを提供した(図6、右)。さらに、粒子のサイズ分布は、空気流およびポンプ速度を制御することにより変えられた。この技法を用いて、10〜1000μmの範囲の直径を有する粒子を首尾よく製造した。
【0094】
実施例18
HA充填ゲルからのCSA/TAのインビトロ放出
CSAは、ヒアルロン酸分解の速度を劇的に減少し得る既知のヒアルロニダーゼ阻害剤である。この抑制能力を利用する一アプローチは、CSAをHAと混合することである。この目的のために、実施例12に従って試料を調製し、インビトロCSA放出検定を実施した。
【0095】
CSA/ジュベダーム(登録商標)30およびCSA/ジュベダーム(登録商標)24HV試料を50k透析袋に入れて、各々を撹拌PBS溶液(pH=7.4)中に浸漬した。小試料を時々PBS溶液から採取して、SEC−MALSを用いて分析して、放出CSA量を確定した。結果を図7に要約する。
【0096】
CSA/ジュベダーム(登録商標)30およびCSA/ジュベダーム(登録商標)24HV試料はともに、1週間以内にCSAの約50%を放出した。この迅速放出は、多数の理由:小サイズのCSA(約20kDa)、CSAおよびHA間の静電反発作用、ならびに軽度架橋HA網様構造のためと考えられ、これらはすべて、弱い保持強度を生じる。CSAをHAと単に混合しても、酵素分解に対する持続的保護のために必要とされるCSAの制御放出を提供することはできなかった。
【0097】
タンニン酸(TA)は、代替的な且つ非常に強力なヒアルロニダーゼ阻害剤である。この抑制能力を利用する簡単な一アプローチは、TAをHAと混合することである。この目的のために、実施例16に従ってTAをジュベダーム(登録商標)30と混合し、100k透析袋に入れて、PBS緩衝溶液中に浸漬した。小試料を時々PBS溶液から採取して、吸光度測定を用いてTA含量を定量した。結果を図8に要約する。
【0098】
CSA/ジュベダーム(登録商標)30の場合と同様に、TA/ジュベダーム(登録商標)30混合物からのTAの迅速放出を観察し、小分子とヒアルロン酸充填ゲルとの間の簡単な混合は制御化および持続放出プロフィールを提供し得ないことを再確認した。
【0099】
実施例19
キトサン粒子からのCSA/TAのインビトロ放出
封入CSAの最終濃度が5mg/mLとなるように、実施例10に従ってCSA負荷キトサン/アルギン酸塩粒子を調製した。試験期間中、試料を軌道型振盪機上に載せた。試料を定期的に採取して、0.45μmフィルターを通して濾過し、SEC−MALS系中に注入した。CSAの放出は、2ヵ月後には検出されなかった。その時間の間、粒子はそれらの形状、サイズおよび不透明性を保持し、緩衝溶液はその透明性を保持した。
【0100】
同様に、封入TAの最終濃度が1mg/mLとなるように、実施例14に従ってTA負荷キトサン/アルギン酸塩粒子を調製した。試験期間中、試料を軌道型振盪機上に載せた。試料をPBS溶液から定期的に採取して、吸光度測定で分析した。314nmでの吸光度は、TAの量と比例的に関連することが判明した。結果を図9に要約する。
【0101】
CSA負荷キトサン/アルギン酸塩粒子の場合と同様に、キトサン/アルギン酸塩粒子からのTAの放出は、非常にゆっくりしていた。これは、本明細書中に記載される封入系が、小分子の緩徐および持続放出プロフィールを提供し得ることを再確認する。この系を用いて、優れた貯蔵安定性を保持しながら、インビボで、阻害剤、酸化防止剤およびその他の小型活性分子を送達し得る。
【0102】
実施例20
HA充填ゲルと混合されたキトサン粒子からのCSA/TAのインビトロ放出
実施例11に従って、CSA負荷キトサン/アルギン酸塩粒子をジュベダーム(登録商標)30と混合した。メス−メス型ロイターロックを介して連結される2つの注射器を用いて、毎日、処方物を十分に混合し、そして酵素分解検定を用いて定期的に試験した。要するに、ヒアルロニダーゼ(0.1〜10mg)を処方物に加え、37℃で10〜250分間インキュベートした後、0.8M 四ホウ酸カリウム溶液 0.1mLを加え、100℃で10分間、加熱した。酢酸中の10%(重量)p−ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液 3mLを試料に補充し、37℃で10〜120分間、インキュベートした。この工程を反復して、酵素付加物を省いて、対照試料を調製した。酵素分解試料と対照試料との間の585nmでの光学密度(OD)の変化を用いて、分解の程度を定量した。結果をさらに、阻害剤無含有処方物(ジュベダーム(登録商標)30)の酵素的性能に対して正規化し、図10に要約した。
【0103】
実施例15に従って、TA負荷キトサン/アルギン酸塩粒子をジュベダーム(登録商標)30と混合した。メス−メス型ロイターロックを介して連結される2つの注射器を用いて、毎日、処方物を十分に混合し、そして上記の酵素分解検定を用いて定期的に試験した。結果を図10に要約する。
【0104】
上記の処方物の抑制活性は、ジュベダーム(登録商標)30粒子から放出されるCSA/TAの量と直接的に関連付けられる。これを用いて、処方物の貯蔵寿命を測定し得る。1ヶ月貯蔵後、抑制の無視できる程度の増大が認められたが、これは、キトサン/アルギン酸塩粒子−ジュベダーム(登録商標)30系からのCSA/TAの小放出を示唆する。これは、実施例19の結果と一致し、そしてさらに、提唱された封入系が優れた貯蔵安定性を有する、ということを示す。
【0105】
別記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いられる成分の量、特性、例えば分子量、反応条件等、を表現する数はすべて、「およそ」という用語により、すべての場合に修飾されると理解されるべきである。したがって、そうでないことが示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で記述される数値パラメーターは、本発明により得られることが求められる所望の特性によって変わり得る近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲と等価物の見解の適用を限定することなく、各数値パラメーターは、少なくとも、報告された有意数の数にかんがみて、および通常の丸めの技術を適用することにより、解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を説明する数値範囲およびパラメーターが近似値ではあるが、具体的実施例で記述される数値はできるだけ精確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を固有に含有する。
【0106】
「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」という用語、ならびに本発明を記述するという状況(特に、以下の特許請求の範囲の状況)で用いられる類似の指示物は、本明細書中に別記しない限り、または文脈により明白に否定されない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の詳述は、単に、その範囲内の各々の別個の値に個別に言及する簡略な方法として役立つよう意図される。本明細書中で別記しない限り、個々の値は、各々、それが本明細書中で個別に列挙されたように、本明細書中に組入れられる。本明細書中に記載される方法はすべて、本明細書中に別記しない限り、または文脈により明白に否定されない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書中で提供される任意のおよびすべての例または例示的言語(例えば「〜のような」)の使用は、単に、本発明をより良好に解明するよう意図され、相でないよう主張される本発明の範囲に関する限定を主張しない。本明細書中の言語は、本発明の実行に不可欠な任意の主張されない要素を示すと解釈されるべきでない。
【0107】
本明細書中に開示される本発明の代替的要素または実施形態の群分けは、限定されるものではない。各群成員は、個別に、あるいは群の他の成員または本明細書中に見出される他の要素との任意の組合せで、言及され、主張され得る。便宜性および/または特許可能性という理由のために、群の1つ以上の成員が群に含まれるかまたは群から欠失され得る、と予測される。任意のこのような含入または欠失が起こる場合、本明細書は、添付の特許請求の範囲で用いられるすべてのマーカッシュ群の記述書を満たすよう修飾される場合、その群を含有すると考えられる。
【0108】
本発明を実行するために本発明人等に既知の最良の方式を含めて、本発明のある実施形態が、本明細書中に記載される。もちろん、これらの記載された実施形態に関する変更は、前記の説明を読めば、当業者に明らかになる。本発明人等は、適切な場合、このような変更を用いることを当業者に期待し、そして本発明人等は、本明細書中に具体的に記載される以外の別のやり方で本発明が実行されるよう意図する。したがって、本発明は、適用可能な法により許容される場合、本明細書に添付される特許請求の範囲に記述される対象物質の修正および等価物すべてを包含する。さらに、すべての考え得るその変更における上記の要素の任意の組合せは、本明細書中で別記しない限り、または文脈により明白に否定されない限り、本発明に包含される。
【0109】
さらに、本明細書全体を通して、特許および出版物に対する多数の参照がなされている。上記の参考文献および出版物の各々は、独立して、その記載内容が参照により本明細書中で援用される。
【0110】
最後に、本明細書中に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理を例証するものである、と理解されるべきである。用いられ得る他の修正は、本発明の範囲内である。したがって、例として、本発明の代替的形状(これらに限定されない)が、本明細書中の教示に従って利用され得る。したがって、本発明は、まさに図示され、記載されるようなものに限定されない。
【0111】
本明細書中に開示される特定の実施形態は、言語からなるか、本質的に言語からなる特許請求の範囲でさらに限定され得る。特許請求の範囲中で用いる場合、出願される場合でも、修正のために付加される場合でも、「〜からなる」という移行用語は、特許請求の範囲に明記されない任意の要素、段階または成分を排除する。移行用語「本質的に〜からなる」は、特許請求の範囲の範囲を、特定の物質または段階、ならびに基本的および新規の特質(単数または複数)に本質的に影響を及ぼさないものに限定する。そのように特許請求される本発明の実施形態は、本明細書中で、固有にまたは明白に記載され、可能にされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒアルロン酸、セルロース、キトサン、o−硫酸化HA、デキストラン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸およびアルギン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの多糖;
(b)グリコシアミノグリカン、酸化防止剤、フラボノイド、タンパク質、脂肪酸およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの多糖分解阻害剤;ならびに
(c)マンニトール
を含む多糖ゲル処方物。
【請求項2】
前記多糖が架橋ヒアルロン酸である請求項1記載の処方物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの阻害剤がグリコシアミノグリカンである請求項1記載の処方物。
【請求項4】
前記グリコシアミノグリカンがコンドロイチン硫酸である請求項1記載の処方物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの阻害剤がタンニン酸である請求項1記載の処方物。
【請求項6】
生体適合性または生分解性容器をさらに含む請求項1記載の処方物であって、前記阻害剤が前記容器の内側または一部に存在し、前記容器がリポソーム、ミセルまたは重合小胞である処方物。
【請求項7】
(a)ヒアルロン酸;
(b)グリコシアミノグリカン、酸化防止剤、フラボノイド、タンパク質、脂肪酸およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの多糖分解阻害剤;ならびに
(c)マンニトール
を含む多糖ゲル処方物。
【請求項8】
分解時間の増大を示す多糖ゲル処方物の製造方法であって、
ヒアルロン酸、セルロース、キトサン、o−硫酸化HA、デキストラン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸およびアルギン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの多糖を提供するステップ;および
グリコシアミノグリカン、酸化防止剤、フラボノイド、タンパク質および脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1つの多糖分解阻害剤とマンニトールを前記多糖中に組入れるステップ
を包含する方法。
【請求項9】
前記組入れステップが、1)前記少なくとも1つの阻害剤を前記少なくとも1つの多糖と、高水和状態で混合し、それにより多糖網様構造中に少なくとも1つの阻害剤を封入すること、および2)前記多糖網様構造を脱水し、それにより放出動態または最終膨潤比を制御することを包含する請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記組入れステップが、1)生体適合性または生分解性容器中に前記少なくとも1つの阻害剤を封入すること、および2)前記少なくとも1つの多糖と前記容器とを組み合わせてゲル処方物にすることを包含する請求項8記載の方法。
【請求項11】
分散した多糖粒子をその中に有する多糖マトリックスを含む柔組織増強系であって、前記マトリックスおよび/または粒子がさらに少なくとも1つの生物学的活性物質を含み、そして前記マトリックスおよび/または粒子が前記マトリックスおよび/または粒子から柔組織への前記少なくとも1つの生物学的活性物質の放出を制御する柔組織増強系。
【請求項12】
前記マトリックスが一次速度で生物学的活性物質を放出し、前記粒子が二次速度で生物学的活性物質を放出する請求項11記載の柔組織増強系。
【請求項13】
前記マトリックスおよび前記粒子が異なる生物学的活性物質を放出する請求項11記載の柔組織増強系。
【請求項14】
前記粒子が、トリポリホスフェートで物理的に架橋されアルギン酸塩で被覆されるキトサンを含む請求項11記載の柔組織増強系。
【請求項15】
前記粒子が、カルシウムで物理的に架橋されキトサンで安定化されるアルギン酸塩を含む請求項11記載の柔組織増強系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−510854(P2013−510854A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538870(P2012−538870)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/055801
【国際公開番号】WO2011/059909
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】