多気筒エンジンの排気装置
【課題】簡単な構成で体積効率の向上を図り、エンジン出力を高めることのできる多気筒エンジンの排気装置を提供する。
【解決手段】排気マニホールド5は、複数の独立排気通路52と、各独立排気通路52の下流端に接続されて各独立排気通路52を通過した排気が流入する混合管50とを有する。混合管50は、少なくとも、上流側から下流側に向かって流路面積が小さくなる集合部56を有する。各独立排気通路52の下流端の断面形状が略扇形に形成され、扇形が集合して略円が形成されるように各独立排気通路52が束ねられた状態で各独立排気通路52の下流端が混合管50の集合部56の上流端に接続され、扇形の重心を通る独立排気通路52の下流部の軸芯が下流側ほど混合管50の軸芯に近接するように混合管50の軸芯に対して傾斜している。
【解決手段】排気マニホールド5は、複数の独立排気通路52と、各独立排気通路52の下流端に接続されて各独立排気通路52を通過した排気が流入する混合管50とを有する。混合管50は、少なくとも、上流側から下流側に向かって流路面積が小さくなる集合部56を有する。各独立排気通路52の下流端の断面形状が略扇形に形成され、扇形が集合して略円が形成されるように各独立排気通路52が束ねられた状態で各独立排気通路52の下流端が混合管50の集合部56の上流端に接続され、扇形の重心を通る独立排気通路52の下流部の軸芯が下流側ほど混合管50の軸芯に近接するように混合管50の軸芯に対して傾斜している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に設けられる多気筒エンジンの排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンにおいて、エンジン出力を高めることを目的とした排気装置の開発が行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排気順序が連続しない気筒の排気通路を束ねて、先細の排気管として集合させ、この絞り部分にエゼクタ効果を持たせて、気筒間の排気干渉を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−036023号公報(第4頁、第5頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車等のエンジンにおいて、エンジン出力の向上要求は依然として高く、簡単な構成でエンジン出力をより一層高めることが求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単な構成で体積効率の向上を図り、もってエンジン出力をより一層高めることのできる多気筒エンジンの排気装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、吸気ポートを開閉可能な吸気バルブ及び排気ポートを開閉可能な排気バルブが設けられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの排気装置であって、1つの気筒又は排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ接続される複数の独立排気通路と、前記各独立排気通路の下流端に接続されて各独立排気通路を通過した排気が流入する混合管とを有する排気マニホールドが備えられ、前記混合管は、少なくとも、上流側から下流側に向かって流路面積が小さくなる集合部、換言すれば、下流側ほど流路面積が小さくなる集合部を有し、前記混合管の軸芯と直交する方向における前記各独立排気通路の下流端の断面形状が互いに同じ略扇形に形成され、前記扇形が集合して略円が形成されるように前記各独立排気通路が束ねられた状態で前記各独立排気通路の下流端が前記混合管の集合部の上流端に接続され、前記扇形の重心を通る前記独立排気通路の下流部の軸芯が下流側ほど前記混合管の軸芯に近接するように前記混合管の軸芯に対して傾斜しており、かつ、所定の運転領域において、前記各気筒の排気バルブの開弁期間と吸気バルブの開弁期間とが所定の期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒間において先行する気筒の前記オーバーラップ期間中に後続の気筒の排気バルブが開弁するように、各気筒の吸気バルブ及び排気バルブを駆動するバルブ駆動手段が備えられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置である(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、各独立排気通路を通過した排気が混合管に流入することにより混合管内に負圧が発生し、この負圧により、他の独立排気通路ないしこれと連通する他の気筒の排気ポート内の排気が下流側に吸い出されるエゼクタ効果が得られる。その際、各独立排気通路の下流端から排気が噴出する混合管の集合部は、下流側ほど流路面積が小さくなるので、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管を通過し、混合管内に発生する負圧が大きくなる。加えて、所定の運転領域では、排気順序が連続する気筒間において先行する気筒のオーバーラップ期間中に後続の気筒の排気バルブが開弁するので、前記エゼクタ効果がオーバーラップ期間中の先行気筒の吸気ポートにまで及び、これにより、先行気筒の掃気が促進され、体積効率(ηV)の向上が図られ、エンジン出力がより一層高められる。
【0009】
その上で、本発明によれば、発明の実施形態でより詳しく説明されるように、混合管の軸芯と直交する方向において、混合管の軸芯から、前記扇形の重心、換言すれば、各独立排気通路の下流端から噴出する排気の流れの中心までの距離が相対的に小さくなる。これにより、前記扇形の重心を通る各独立排気通路の下流部の軸芯、換言すれば、各独立排気通路の下流端から噴出する排気の流れの方向が混合管の軸芯に対してなす傾斜が小さくなり、混合管に流入した排気が混合管の内側面に衝突することが抑制される。その結果、排気が混合管の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管内に発生する負圧が小さくなるという不具合が抑制され、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0010】
また、同じく、混合管の軸芯と直交する方向において、混合管の軸芯から前記扇形の重心までの距離が相対的に小さくなることにより、前記扇形の重心から、前記独立排気通路の下流部の軸芯と前記混合管の軸芯との交点までの距離が短くなる。ここで、前記交点は、例えば、混合管の軸芯と直交する方向における混合管内の圧力分布の不均一を回避するため、混合管内に設定される。その結果、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管を通過することとなり、混合管内に発生する負圧が大きくなり、これによっても、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0011】
さらに、各独立排気通路の下流端の断面形状である略扇形が、前記扇形が集合して形成される略円の中心に対して点対称に集合するから、エゼクタ効果の気筒管バラツキが抑制され、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキが抑制される。
【0012】
本発明において、前記各独立排気通路の下流部は、下流側ほど流路面積が小さくなることが好ましい(請求項2)。
【0013】
この構成によれば、各独立排気通路の下流部は、下流側ほど流路面積が小さくなるので、各独立排気通路を通過した排気は相対的に高い速度で混合管に流入し、混合管内に発生する負圧がさらに大きくなる。その結果、エゼクタ効果がより一層十分に発揮されて、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上がより一層確保される。
【0014】
本発明において、前記混合管は、その軸芯上に、前記集合部の下流側に、前記集合部の下流端の流路面積を維持して下流側に延びるストレート部を有することが好ましい(請求項3)。
【0015】
この構成によれば、排気が混合管の最小流路面積を有するストレート部を通過することにより、このストレート部の分だけ、混合管内で負圧が大きくなる領域が増大し、エゼクタ効果が増大する。
【0016】
本発明において、前記扇形が集合して形成される前記円の中心が前記混合管の軸芯に一致していることが好ましい(請求項4)。
【0017】
この構成によれば、各独立排気通路の下流端の断面形状である略扇形が、前記混合管の軸芯に対して点対称に集合するから、エゼクタ効果の気筒管バラツキがより一層抑制され、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキがより一層抑制される。
【0018】
本発明において、当該エンジンは4気筒以上のエンジンであり、前記独立排気通路のうち少なくとも1つは、排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートに接続される独立排気通路であることが好ましい(請求項5)。
【0019】
この構成によれば、例えば、4気筒エンジンの場合に2つ又は3つの独立排気通路が束ねられて混合管に接続され、各独立排気通路の下流端の断面形状は180°又は120°の略扇形に形成される。また、例えば、5気筒エンジンの場合に3つの独立排気通路が束ねられて混合管に接続され、各独立排気通路の下流端の断面形状は120°の略扇形に形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、混合管の軸芯と直交する方向において、混合管の軸芯から、独立排気通路の下流端から噴出する排気の流れの中心までの距離が相対的に小さくなることにより、混合管に流入した排気が混合管の内側面に衝突することが抑制され、また、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管を通過するので、混合管内に発生する負圧が大きくなり、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの排気装置を備えたエンジンシステムの概略構成図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】前記エンジンの排気マニホールド及び触媒装置の概略側面図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図3のV−V線矢視断面図である。
【図6】前記排気マニホールドの斜視図である。
【図7】前記排気マニホールドから混合管を取り外した状態の斜視図である。
【図8】図6と比べて、図面上、上下を反対にして見た前記排気マニホールドの斜視図である。
【図9】図7と比べて、図面上、上下を反対にして見た前記排気マニホールドから混合管を取り外した状態の斜視図である。
【図10】前記エンジンの吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングの説明図である。
【図11】前記吸気バルブ及び排気バルブの開弁時期(開弁開始時期)及び閉弁時期の説明図である。
【図12】複数の独立排気通路を束ねて混合管の集合部の上流端に接続する態様の説明図であって、(a)及び(b)は本発明の範囲外のもの、(c)は本発明の範囲内のものである。
【図13】本発明の実施形態の作用の説明図である。
【図14】本発明の実施形態の別の作用の説明図である。
【図15】前記エンジンの独立排気通路の下流部及び混合管内の圧力分布の説明図である。
【図16】前記エンジンの独立排気通路の下流部及び混合管内の排気の速度分布の説明図である。
【図17】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ本発明の実施形態の変形例の説明図である。
【図18】(a)及び(b)は、図17(a)を実現する構成の具体的一例の説明図である。
【図19】5気筒エンジンの場合の本発明の実施形態に係る排気マニホールドの説明図である。
【図20】5気筒エンジンの場合の本発明の実施形態に係る別の排気マニホールドの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、本発明は、図1〜3に示すエンジンシステムに適用されている。すなわち、図1は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの排気装置を備えたエンジンシステム100の概略構成図、図2は図1の部分拡大図、図3は前記エンジンの排気マニホールド5及び触媒装置6の概略側面図である(なお、図3では独立排気通路52は1つのみ図示されている)。
【0023】
このエンジンシステム100は、シリンダヘッド9及びシリンダブロックを有するエンジン本体1と、エンジン制御用のECU2と、エンジン本体1に接続される複数の吸気管3と、エンジン本体1に接続される排気マニホールド5と、排気マニホールド5に接続される触媒装置6とを備えている。
【0024】
前記シリンダヘッド9及びシリンダブロックの内部にはピストンがそれぞれ嵌挿された複数の気筒12(図2参照)が形成されている。本実施形態では、前記エンジン本体1は、直列4気筒エンジンであって、前記シリンダヘッド9及びシリンダブロックの内部には4つの気筒12が直列に並んだ状態で形成されている。具体的には、図2の右から順に第1気筒12a,第2気筒12b,第3気筒12c,第4気筒12dが形成されている。前記シリンダヘッド9には、ピストンの上方に区画された燃焼室内に臨むようにそれぞれ点火プラグ15が設置されている。
【0025】
前記エンジン本体1は4サイクルエンジンであって、図10に示すように、各気筒12a〜12dにおいて、180°CAずつずれたタイミングで前記点火プラグ15による点火が行われて、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程がそれぞれ180°CAずつずれるように構成されている。本実施形態では、第1気筒12a→第3気筒12c→第4気筒12d→第2気筒12bの順に点火が行われてこの順に排気行程等が実施される。
【0026】
各気筒12の上部には、それぞれ燃焼室に向かって開口する2つの吸気ポート17及び2つの排気ポート18が設けられている。吸気ポート17は、各気筒12内に吸気を導入するためのものである。排気ポート18は、各気筒12内から排気を排出するためのものである。各吸気ポート17には、これら吸気ポート17を開閉して吸気ポート17と気筒12内部とを連通又は遮断するための吸気バルブ19が設けられている。各排気ポート18には、これら排気ポート18を開閉して排気ポート18と気筒12内部とを連通又は遮断するための排気バルブ20が設けられている。前記吸気バルブ19は吸気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)30により駆動されることで、所定のタイミングで吸気ポート17を開閉する。また、前記排気バルブ20は、排気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)40により駆動されることで、所定のタイミングで排気ポート18を開閉する。
【0027】
前記吸気バルブ駆動機構30は、吸気バルブ19に当接された吸気カムシャフト31と吸気VVT(Variable Valve Timing Mechanism(可変バルブタイミング機構))32とを有している。吸気カムシャフト31は、周知のチェーン・スプロケット機構等の動力伝達機構を介してクランクシャフトに連結されており、クランクシャフトの回転に伴い回転して、吸気バルブ19を開閉駆動する。
【0028】
前記吸気VVT32は、吸気バルブ19のバルブタイミングを変更するためのものである。この吸気VVT32は、吸気カムシャフト31と同軸に配置されてクランクシャフトにより直接駆動される所定の被駆動軸と吸気カムシャフト31との間の位相差を変更して、これによりクランクシャフトと前記吸気カムシャフト31との間の位相差を変更することで、吸気バルブ19のバルブタイミングを変更する。吸気VVT32の具体的構成としては、例えば、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に周方向に並ぶ複数の液室を有し、これら液室間に圧力差を設けることで前記位相差を変更する液圧式機構や、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に電磁石を有し、前記電磁石に電力を付与することで前記位相差を変更する電磁式機構等が挙げられる。この吸気VVT32は、ECU2で算出された吸気バルブ19の目標バルブタイミングに基づいて前記位相差を変更する。
【0029】
前記排気バルブ駆動機構40は、前記吸気バルブ駆動機構30と同様の構造を有している。すなわち、排気バルブ駆動機構40は、排気バルブ20に当接され、クランクシャフトに連結された排気カムシャフト41と、この排気カムシャフト41とクランクシャフトとの間の位相差を変更することで、排気バルブ20のバルブタイミングを変更する排気VVT42とを有している。排気VVT42は、ECU2で算出された排気バルブ20の目標バルブタイミングに基づいて前記位相差を変更する。そして、排気カムシャフト41は、この位相差の下でクランクシャフトの回転に伴い回転して、排気バルブ20を前記目標バルブタイミングで開閉駆動する。
【0030】
なお、本実施形態では、前記吸気VVT32及び排気VVT42は、吸気バルブ19及び排気バルブ20の開弁期間及びリフト量つまりバルブ・プロファイルをそれぞれ一定に保ったまま、吸気バルブ19及び排気バルブ20の開弁時期(図11に示す開弁開始時期)と閉弁時期とをそれぞれ変更する。
【0031】
前記各気筒12の吸気ポート17は、その上流側においてそれぞれ前記吸気管3に接続されている。具体的には、前記吸気管3は気筒数に対応して4本設けられており、各気筒12に設けられた2つの吸気ポート17が、1つの吸気管3に接続されている。
【0032】
前記排気マニホールド5は、上流側から順に、3つの独立排気通路52と、前記各独立排気通路52の下流端に接続されて各独立排気通路52を通過した排気が流入する混合管50とを有する。前記混合管50は、その軸芯L1(図3参照)上に、上流側から順に、下流側ほど流路面積が小さくなる集合部56と、前記集合部56の下流端の流路面積(混合管50の最小流路面積)を維持して下流側に延びるストレート部57と、下流側ほど流路面積が大きくなるディフューザー部58とを備えている。
【0033】
前記各独立排気通路52は、前記各気筒12の排気ポート18に接続されている。具体的には、前記気筒12のうち第1気筒12aの排気ポート18及び第4気筒12dの排気ポート18は、それぞれ個別に1つの独立排気通路52a、52dに接続されている。一方、排気行程が隣り合わず排気順序が連続しない第2気筒12bの排気ポート18と第3気筒12cの排気ポート18とは、これら各気筒から同時に排気が排出されることがないため、構造を簡素化する観点から、共通の1つの独立排気通路52bに接続されている。より詳細には、この第2気筒12bの排気ポート18と第3気筒12cの排気ポート18とに接続されている独立排気通路52bは、その上流側において2つの通路に分離しており、その一方に前記第2気筒12bの排気ポート18が接続され、他方に前記第3気筒12cの排気ポート18が接続されている。
【0034】
本実施形態では、図6〜9にも示すように、前記第2気筒12bと前記第3気筒12cとに対応する独立排気通路52bは、これら気筒12b,12cの間すなわちエンジン本体1の略中央部分と対向する位置において前記混合管50の集合部56に向かって直線的に延びており、前記第1気筒12a及び前記第4気筒12dにそれぞれ対応する独立排気通路52a、52dは、各気筒12a、12dと対向する位置から湾曲しつつ前記混合管50の集合部56に向かって延びている。
【0035】
これら独立排気通路52a、52b、52dは、互いに独立しており、第2気筒12b又は第3気筒12cから排出された排気と、第1気筒12aから排出された排気と、第4気筒12dから排出された排気とは、互いに独立して各独立排気通路52a、52b、52d内を通って下流側に排出される。各独立排気通路52a、52b、52dを通過した排気は前記混合管50の集合部56に流入する。
【0036】
前記各独立排気通路52及び前記集合部56は、各独立排気通路52から高速で排気が噴出されてこの排気が高速で前記集合部56内に流入するのに伴い、この高速の排気の周囲に発生した混合管50内の負圧作用すなわちエゼクタ効果によって隣接する他の独立排気通路52及びこの独立排気通路52と連通する排気ポート18内に負圧が生成され、この排気ポート18内の排気が下流側に吸い出されるような形状を有している。
【0037】
具体的には、前記集合部56は、前記各独立排気通路52から排出された排気が高い速度を維持したまま下流側に流れるよう、下流側に向かうほどその流路面積が小さくなる形状を有している。本実施形態では、排気の速度をより高めるべく前記集合部56の下流端の流路面積は、前記各独立排気通路52の下流端の流路面積の合計よりも小さく設定されている。本実施形態では、この集合部56は、下流側に向かうに従って縮径する逆円錐台形状(漏斗形状)を有している。
【0038】
そして、前記各独立排気通路52の下流部は、排気が各独立排気通路52から高速で前記集合部56内に噴出されるよう、下流に向かうほどその流路面積が小さくなる形状を有している。本実施形態では、図4に示すように、各独立排気通路52は、略楕円形断面を有する上流側部分(仮想線)から下流に向かうに従ってその断面積が縮小されており、その下流端では上流側部分の楕円形断面積の略1/3の断面積(流路面積)となる扇形となっている。そして、図5に示すように、これら独立排気通路52は、扇形をなす各下流端が、互いに隣接して全体として略円形断面を形成するように集合して前記集合部56の上流端に接続されている(図7、図9参照)。
【0039】
すなわち、前記混合管50の軸芯L1と直交する方向における各独立排気通路52の下流端の断面形状が互いに同じ略扇形に形成され(図4、図5参照)、前記扇形が集合して略円が形成されるように各独立排気通路52が束ねられた状態で各独立排気通路52の下流端が前記混合管50の集合部56の上流端に接続されている。その際、図12(c)に示すように、前記円の中心が前記混合管50の軸芯L1に一致している。また、前記扇形の重心X(図4、図12(c)参照:なお、図12(c)には「ノズル中心」と記されている)を通る前記独立排気通路52の下流部の軸芯L2が、図3に示すように、下流側ほど前記混合管50の軸芯L1に近接するように前記混合管50の軸芯L1に対して傾斜している。
【0040】
本実施形態において排気マニホールド5をこのような構成にした理由は概ね次のようである。すなわち、エゼクタ効果の向上のために混合管50内の負圧を大きくすることを考える。基本的に、独立排気通路52の流路面積、ノズル(独立排気通路52の下流端の開口をいう。本実施形態では、図4、図5に示すように、扇形に形成されている。)の流路面積、及び混合管50の流路面積は、それぞれエンジンの排気量によっておおよそ定まる。混合管50内に発生する負圧を大きくする方策として、混合管50に流入した高速の排気流が混合管50の内側面に衝突することを抑制すること(方策1)、排気が相対的に高い速度を維持したまま混合管50を通過すること(好ましくは、混合管50の最小流路面積を有するストレート部57を通過すること)(方策2)が提案される。方策1により、排気が混合管50の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管50内に発生する負圧が小さくなるという不具合が抑制されるからである。方策2により、排気が混合管50(好ましくは、ストレート部57)を相対的に高い速度で通過し、混合管50内に発生する負圧が増大するからである。そして、いずれの場合も、混合管50内に発生する負圧が大きくなることによって、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0041】
方策1及び2を達成し得る構成として、混合管50の軸芯L1と直交する方向において、混合管50の中心(軸芯L1)から、ノズル中心(扇形の重心X)までの距離Rを小さくすることが挙げられる(図12(c)参照)。
【0042】
これにより、方策1については、前記ノズル中心(扇形の重心X)を通る各独立排気通路52の下流部の軸芯L2(換言すれば、各独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの方向)が混合管50の軸芯L1に対してなす傾斜が小さくなり、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突することが抑制される。例えば、図13に示すように、混合管50の軸芯L1と直交する方向(図面上、横方向)において、軸芯L1からの距離Rが相対的に小さいノズル中心Xaと、相対的に大きいノズル中心Xbとを比較すると、ノズル中心Xaを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2aが混合管50の軸芯L1に対してなす傾斜が相対的に小さくなり、ノズル中心Xbを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2bが混合管50の軸芯L1に対してなす傾斜が相対的に大きくなる。なお、混合管50の軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布の不均一を回避するため、独立排気通路52の下流部の軸芯L2と混合管50の軸芯L1とはストレート部57内で交差させている(例えば排気がストレート部57に均一に流入せず、混合管50の軸芯L1の近傍を流れない場合は、軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布が不均一となり、圧力が相対的に低い領域で下流側から上流側に向かう排気の逆流が生じ、その結果、混合管50内の負圧が減少して、エゼクタ効果が低下するという問題が起きる)。その結果、軸芯L1からノズル中心Xbまでの距離Rが相対的に大きい場合は、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管50内に発生する負圧が小さくなってしまうのに対し、軸芯L1からノズル中心Xaまでの距離Rが相対的に小さい場合は、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突することなく混合管50を通過するので、排気が混合管50の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管50内に発生する負圧が小さくなるという不具合が抑制されるのである。
【0043】
また、方策2については、軸芯L1からノズル中心Xまでの距離Rを小さくすることにより、前記ノズル中心Xから、独立排気通路52の下流部の軸芯L2と混合管50の軸芯L1との交点までの距離が短くなる。例えば、図14に示すように、混合管50の軸芯L1と直交する方向(図面上、横方向)において、軸芯L1からの距離Rが相対的に小さいノズル中心Xaと、相対的に大きいノズル中心Xcとを比較すると、ノズル中心Xaを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2aが混合管50の軸芯L1と交差する交点Yは、前記ノズル中心Xaから相対的に近くにあり、ノズル中心Xcを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2cが混合管50の軸芯L1と交差する交点Zは、前記ノズル中心Xcから相対的に遠くにある(軸芯L1に対する軸芯L2aの傾斜と軸芯L2cの傾斜とが同じ場合を考える)。交点Yはストレート部57内にあるので、混合管50の軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布の不均一が回避され、前述したような下流側から上流側への排気の逆流は抑制される。一方、交点Zはストレート部57よりも下流側にあるので、混合管50の軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布の不均一が回避されず、前述したような下流側から上流側への排気の逆流が生じてしまう。その結果、軸芯L1からノズル中心Xcまでの距離Rが相対的に大きい場合は、前記ノズル中心Xcから、前記軸芯L2c、L1同士の交点Zまでの距離が相対的に長くなって、排気の逆流が生じ、混合管50内の負圧が減少して、エゼクタ効果が低下してしまうのに対し、軸芯L1からノズル中心Xaまでの距離Rが相対的に小さい場合は、前記ノズル中心Xaから、前記軸芯L2a、L1同士の交点Yまでの距離が相対的に短くなって、排気の逆流が生じず、混合管50内の負圧の減少、エゼクタ効果の低下は抑制されるのである。
【0044】
図12に、複数(図例は3つ)の独立排気通路52を束ねて混合管50の集合部56の上流端に接続する態様のいくつかを示す。
【0045】
図12(a)は、独立排気通路52の下流端のノズル形状が円形の場合である。独立排気通路52の下流端の3つのノズルの配置は、混合管50の軸芯L1に対して点対称性に優れるが、軸芯L1からノズル中心Xまでの距離Rが相対的に大きくなる。そのため、前記方策1及び2が達成され難く、エゼクタ効果の向上のために混合管50内の負圧を大きくすることが困難となる。
【0046】
図12(b)は、独立排気通路52の下流端の3つのノズルを略円が形成されるように並列させた場合である。混合管50の軸芯L1からノズル中心Xまでの距離Rは相対的に小さくなるが、独立排気通路52の下流端の3つのノズルの配置は、軸芯L1に対して点対称性に劣る。そのため、エゼクタ効果の気筒管バラツキが大きくなり、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキが大きくなる。
【0047】
これらに対して、図12(c)に示すように、独立排気通路52の下流端の3つのノズル形状を互いに同じ120°の扇形とし、これらの扇形を集合させて略円が形成されるように3つの独立排気通路52が束ねられた場合は、混合管50の軸芯L1からノズル中心Xまでの距離Rが相対的に小さくなり、かつ、3つのノズルの配置が混合管50の軸芯L1に対して点対称性に優れるため、前記方策1及び2が達成され、エゼクタ効果の向上のために混合管50内の負圧を大きくすることができると共に、エゼクタ効果の気筒管バラツキが抑制され、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキが抑制される。
【0048】
独立排気通路52と混合管50との接続態様が前記図12(c)の場合に、独立排気通路52の下流部及び混合管50内の圧力分布を調べた結果を図15に、排気の速度分布を調べた結果を図16に示す。
【0049】
図15は、所定の気筒12の排気バルブ20の開弁開始後であって所定の気筒12から高圧、高速のガス(いわゆるブローダウンガス)が独立排気通路52を通って混合管50に排出された状態における圧力分布を示している。この図15に示されるように、独立排気通路52の上流側から混合管50の上流端(集合部56)付近に向かって圧力は徐々に低下しており、混合管50内に十分大きな負圧が発生している。その結果、他の独立排気通路52の下流端の圧力は十分に低下し、エゼクタ効果の十分な発揮が期待される。また、混合管50のうち前記集合部56から下流側に向かって圧力は徐々に上昇しており、排気の圧力はストレート部57及びディフューザー部58を通過するのに伴い回復している。
【0050】
図16においては、矢印の長さが各部の排気の速度を表しており、矢印が長い領域は排気の速度が高い領域である。独立排気通路52の下流端から噴出する排気(排気噴流)は、図16において塗りつぶされた部分で表されている。この図16に示されるように、軸芯L2で表される排気噴流の方向はストレート部57において混合管50の軸芯L1周りに相対的に均一に流れ込んでおり、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突することが抑制されて高速で流下していると共に、下流側から上流側への排気の逆流も抑制されている。
【0051】
前記ストレート部57に流入した排気は、前記ディフューザー58部に流入する。
【0052】
前記ディフューザー部58は下流側に向かうほど流路面積が拡大する形状を有しており、前記集合部56から排出された高速の排気は、前記ストレート部57及びこのディフューザー部58を通過することで圧力が回復する。本実施形態では、このディフューザー部58は、下流側に向かうに従って拡径する円錐台形状を有している。
【0053】
前記ディフューザー部58の下流側には触媒装置6が接続されており、前記ディフューザー部58を通過した排気は、触媒装置6のケーシング62に流入する。
【0054】
前記触媒装置6は、エンジン本体1から排出された排気を浄化するための装置である。この触媒装置6は、三元触媒等の触媒本体64とこの触媒本体64を収容するケーシング62とを備えている。ケーシング62は排気の流れ方向と平行に延びる略円筒状を有している。前記触媒本体64は、前記ケーシング62の上下流方向の中央部分に収容されており、このケーシング62の上流端には所定の空間が形成されている。前記ディフューザー部58の下流端はこのケーシング62の上流端に接続されており、ディフューザー部58から排出された排気はこのケーシング62の上流端に流入した後、触媒本体64側へ進行する。
【0055】
前述のように、本実施形態では、前記排気の噴流は前記混合管50の軸線L1周りに流入しており、排気はこのストレート部57さらには前記ディフューザー部58及び触媒本体64に均一に流入し、排気は触媒本体64で効果的に浄化される。
【0056】
ECU2には、運転条件に応じて予め設定された吸気バルブ19、排気バルブ20の目標バルブタイミングの目標開度が記憶されており、ECU2は、各種センサからの信号に基づき現在の運転条件を演算すると共に、この運転条件に対応した目標値を抽出し、吸気バルブ19、排気バルブ20のバルブタイミングがこの目標値になるように、前記吸気VVT32、排気VVT42を駆動する。
【0057】
次に、前記吸気バルブ19及び排気バルブ20の目標バルブタイミングについて説明する。
【0058】
前記吸気バルブ19及び排気バルブ20の目標バルブタイミングは、所定の運転領域(例えば全運転領域又は所定の基準回転数以下等の一部の領域、低速・高負荷域等)において、前記各気筒12の排気バルブ20の開弁期間と吸気バルブ19の開弁期間とが吸気上死点(TDC)を挟んでオーバーラップし、かつ、排気順序が連続する気筒12,12間において、一方の気筒(先行する気筒)12のオーバーラップ期間T_O/L中に、他方の気筒(後続の気筒)12の排気バルブ20が開弁を開始するように設定されている。具体的には、図10に示すように、第1気筒12aの排気バルブ20と吸気バルブ19とがオーバーラップしている期間中に第3気筒12cの排気バルブ20が開弁し、第3気筒12cの排気バルブ20と吸気バルブ19とがオーバーラップしている期間中に第4気筒12dの排気バルブ20が開弁し、第4気筒12dの排気バルブ20と吸気バルブ19とがオーバーラップしている期間中に第2気筒12bの排気バルブ20が開弁し、第2気筒12bの排気バルブ20と吸気バルブ19とがオーバーラップしている期間中に第1気筒12aの排気バルブ20が開弁するように設定されている。
【0059】
なお、本エンジンシステム100において、前記吸気バルブ19及び排気バルブ20の開弁時期(開弁開始時期)及び閉弁時期とは、それぞれ、図11に示すように、各バルブのリフトカーブにおいてバルブのリフトが急峻に立ち上がる又は立ち下がる時期であり、例えば0.4mmリフトの時期をいう。
【0060】
以上のように構成された本エンジンシステム100における吸気性能について次に説明する。
【0061】
所定の気筒12の排気バルブ20が開弁すると、この気筒12から対応する排気ポート18及び前記独立排気通路52には排気が高速で排出される。特に、排気バルブ20の開弁開始直後は前記気筒12から非常に高速で排気(いわゆるブローダウンガス)が排出される。
【0062】
ここで、本エンジンシステム100では、前述のように、前記独立排気通路52及び混合管50の集合部56は、所定の独立排気通路52から集合部56に排気が高速で噴出され、これに伴いエゼクタ効果によって他の独立排気通路52内に負圧が生成されてこの他の独立排気通路52ひいてはこの他の独立排気通路52に連通する排気ポート18内のガスが下流側へ吸い出されるように構成されている。そして、所定の気筒(先行気筒)12のオーバーラップ期間中に、排気順序がこの先行気筒12の1つ後に設定された他の気筒12(後続気筒)の排気バルブ20が開弁するように設定されている。
【0063】
したがって、排気行程気筒12の排気バルブ20が開弁して前記ブローダウンガスがこの排気行程気筒12から独立排気通路52を通って集合部56に高速で噴出されるのに伴い、前記エゼクタ効果によりオーバーラップ期間中の吸気行程気筒12の排気ポート18内に負圧が生成され、これにより、前記エゼクタ効果がオーバーラップ期間中の吸気行程気筒12の吸気ポート17にまで及び、このオーバーラップ期間中の吸気行程気筒12内の掃気が促進される。
【0064】
本実施形態の特徴を以下にまとめる。
【0065】
本実施形態では、吸気ポート17を開閉可能な吸気バルブ19及び排気ポート18を開閉可能な排気バルブ20が設けられた複数の気筒12を有する多気筒エンジンの排気装置が提供される。排気マニホールド5は、1つの気筒12又は排気順序が連続しない複数の気筒12の排気ポート18にそれぞれ接続される複数の独立排気通路52と、前記各独立排気通路52の下流端に接続されて各独立排気通路52を通過した排気が流入する混合管50とを有する。前記混合管50は、少なくとも、上流側から下流側に向かって流路面積が小さくなる集合部56、換言すれば、下流側ほど流路面積が小さくなる集合部56を有する。前記混合管50は、その軸芯L1上に、前記集合部56の下流側に、前記集合部56の下流端の流路面積を維持して下流側に延びるストレート部57をさらに有する。前記混合管50の軸芯L1と直交する方向における前記各独立排気通路52の下流端の断面形状が互いに同じ略扇形に形成され、前記扇形が集合して略円が形成されるように前記各独立排気通路52が束ねられた状態で前記各独立排気通路52の下流端が前記混合管50の集合部56の上流端に接続されている。その際、前記円の中心が前記混合管50の軸芯L1に一致している。また、前記扇形の重心Xを通る前記独立排気通路52の下流部の軸芯L2が下流側ほど前記混合管50の軸芯L1に近接するように前記混合管50の軸芯L1に対して傾斜している。また、所定の運転領域において、前記各気筒12の排気バルブ20の開弁期間と吸気バルブ19の開弁期間とが所定の期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒12,12間において先行する気筒12の前記オーバーラップ期間中に後続の気筒12の排気バルブ20が開弁するように、各気筒12の吸気バルブ19及び排気バルブ20を駆動するバルブ駆動手段30,40が備えられている。
【0066】
本実施形態では、各独立排気通路52を通過した排気が混合管50に流入することにより混合管50内に負圧が発生し、この負圧により、他の独立排気通路52ないしこれと連通する他の気筒12の排気ポート18内の排気が下流側に吸い出されるエゼクタ効果が得られる。その際、各独立排気通路52の下流端から排気が噴出する混合管50の集合部56は、下流側ほど流路面積が小さくなるので、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管50、特に本実施形態では、混合管50の最小流路面積を有するストレート部57を通過し、混合管50内に発生する負圧が大きくなる。加えて、所定の運転領域では、排気順序が連続する気筒12,12間において先行する気筒12のオーバーラップ期間中に後続の気筒12の排気バルブ20が開弁するので、前記エゼクタ効果がオーバーラップ期間中の先行気筒12の吸気ポート17にまで及び、これにより、先行気筒12の掃気が促進され、体積効率(ηV)の向上が図られ、エンジン出力がより一層高められる。
【0067】
その上で、本実施形態では、混合管50の軸芯L1と直交する方向において、混合管50の軸芯L1(特に本実施形態では、各独立排気通路52の下流端の断面形状である略扇形が集合して形成される略円の中心)から、前記扇形の重心X、換言すれば、各独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの中心までの距離Rが相対的に小さくなる。これにより、前記扇形の重心Xを通る各独立排気通路52の下流部の軸芯L2、換言すれば、各独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの方向が混合管50の軸芯L1に対してなす傾斜が小さくなり、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突することが抑制される。その結果、排気が混合管50の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管50内に発生する負圧が小さくなるという不具合が抑制され、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒12の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0068】
また、同じく、混合管50の軸芯L1と直交する方向において、混合管50の軸芯L1から前記扇形の重心Xまでの距離Rが相対的に小さくなることにより、前記扇形の重心Xから、前記独立排気通路52の下流部の軸芯L2と前記混合管50の軸芯L1との交点Yまでの距離が短くなる。ここで、前記交点Yは、例えば、混合管50の軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布(より一般的には、混合管50内の圧力分布)の不均一を回避するため、ストレート部57内(より一般的には、混合管50内)に設定される。その結果、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管50、特に本実施形態では、混合管50の最小流路面積を有するストレート部57を通過することとなり、混合管50内に発生する負圧が大きくなり、これによっても、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒12の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0069】
さらに、各独立排気通路52の下流端の断面形状である略扇形が、前記扇形が集合して形成される略円の中心(特に本実施形態では、混合管50の軸芯L1)に対して点対称に集合するから、エゼクタ効果の気筒管バラツキが抑制され、ひいては、気筒12の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキが抑制される。
【0070】
本実施形態では、前記各独立排気通路52の下流部は、下流側ほど流路面積が小さくなっている。これにより、各独立排気通路52を通過した排気は相対的に高い速度で混合管50に流入し、混合管50内に発生する負圧がさらに大きくなる。その結果、エゼクタ効果がより一層十分に発揮されて、気筒12の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上がより一層確保される。
【0071】
本実施形態では、前記混合管50は、その軸芯L1上に、前記集合部56の下流側に、前記集合部56の下流端の流路面積を維持して下流側に延びるストレート部57を有している。これにより、排気が混合管50の最小流路面積を有するストレート部57を通過することにより、このストレート部57の分だけ、混合管50内で負圧が大きくなる領域が増大し、エゼクタ効果が増大する。
【0072】
本実施形態では、前記扇形が集合して形成される前記円の中心が前記混合管50の軸芯L1に一致している。これにより、各独立排気通路52の下流端の断面形状である略扇形が、前記混合管50の軸芯L1に対して点対称に集合するから、エゼクタ効果の気筒管バラツキがより一層抑制され、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキがより一層抑制される。
【0073】
本実施形態の変形例を以下にまとめる。
【0074】
独立排気通路52の下流端の開口であるノズルの形状は、図17(a)に示すように、180°の扇形であってもよい。また、図17(b)に示すように、90°の扇形であってもよい。180°の扇形の場合は、4気筒エンジンにおいて、2つの独立排気通路52が束ねられて混合管50に接続される。そのため、各独立排気通路52は、それぞれ、排気順序が連続しない2つの気筒12,12の排気ポート18,18に接続される。90°の扇形の場合は、4気筒エンジンにおいて、4つの独立排気通路52が束ねられて混合管50に接続される。そのため、各独立排気通路52は、それぞれ、1つの気筒12の排気ポート18に接続される。
【0075】
ノズル形状の扇形は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、図17(c)に示すように、集合したときに、真円を形成しなくてもよい。図例のように、円弧部分が外方に膨張するもの、又は内方に縮退するものでもよい。したがって、ノズル形状は、例えば公差の範囲内、個体差の範囲内において略扇形でよく、集合したときに形成される円は真円に限らず略円でよい。また、ノズル形状の扇形の角部も鋭角に限らず丸みを帯びていてもよい(図7、図9参照)。
【0076】
ノズル形状が180°の扇形である図17(a)を実現する構成の具体的一例を図18(a)及び(b)に示す(なお、図18(b)は、図18(a)のb−b線矢視断面図である)。4気筒エンジンにおいて、第1気筒12a及び第4気筒12dの排気ポート18,18に接続される独立排気通路52と、第2気筒12b及び第3気筒12cの排気ポート18,18に接続される独立排気通路52とが束ねられて混合管50に接続される。混合管50をエンジン本体1の略中央部分に配置することによって、各独立排気通路52が左右対称形となり、左右で排気通路の容積が同じとなって、エゼクタ効果の点で有利な結果が得られる。
【0077】
図19、図20に、エンジンが5気筒エンジンである場合の本実施形態に係る排気マニホールド5の構成を示す。
【0078】
5気筒エンジンの場合も、独立排気通路52…52のうち少なくとも1つは、排気順序が連続しない複数の気筒12の排気ポート18に接続される独立排気通路52であることが好ましい。図例は、独立排気通路52が3つの場合である。3つの独立排気通路52のうち2つの独立排気通路52が、排気順序が連続しない複数の気筒12の排気ポート18に接続されている。図19では、図面上、右側から、第1気筒及び第4気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第2気筒及び第5気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第3気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52とが束ねられて混合管50に接続されている。図20では、図面上、右側から、第1気筒及び第5気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第3気筒及び第4気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第2気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52とが束ねられて混合管50に接続されている。5気筒エンジンの場合に、3つの独立排気通路52を束ねる態様としては、他に、図19、図20に準じて、図面上、右側から、第2気筒及び第5気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第3気筒及び第4気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第1気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52とを束ねる態様がある。これらのうち、各独立排気通路52が左右対称形となり、左右で排気通路の容積が同じとなって、エゼクタ効果の点で有利な結果が得られるという観点からは、図19の態様がより好ましい。
【0079】
本実施形態では、例えば、4気筒エンジンの場合に2つ又は3つの独立排気通路52が束ねられて混合管50に接続され、各独立排気通路52の下流端の断面形状は180°又は120°の略扇形に形成される。また、例えば、5気筒エンジンの場合に3つの独立排気通路52が束ねられて混合管50に接続され、各独立排気通路52の下流端の断面形状は120°の略扇形に形成される。
【0080】
独立排気通路52の下流端の開口であるノズルの形状(扇形形状)は、独立排気通路52の下流端のみで形成されていてもよく、又は、下流端から所定長さ上流側に亘って形成されていてもよい。また、扇形が集合して形成される円形も、独立排気通路52の下流端のみで形成されていてもよく(各独立排気通路12が混合管50との接続部分のみで集合する場合)、又は、下流端から所定長さ上流側に亘って形成されていてもよい(各独立排気通路12が下流端から所定長さ上流側で集合し、その状態で下流側に延びて混合管50に接続する場合)。
【0081】
ノズルの扇形の重心(ノズル中心)Xは、図12(c)では、扇形の面積重心としたが、扇形の重心Xが、独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの中心を表すものと考えられる限り、また、扇形の重心Xを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2が、独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの方向を表すものと考えられる限り、扇形の重心Xは、扇形の面積重心に限定されない。例えば、扇形の開き角度を2分する線分上で、扇形の半径の2分の1の位置とすることもできる。
【0082】
混合管50は、流路面積が縮小する集合部56だけを含むもの(ストレート部57及びディフューザー部58がないもの)でもよく、集合部56と流路面積が拡大するディフューザー部58とだけを含むもの(ストレート部57がないもの)でもよい。このような構成の混合管を用いてもエゼクタ効果は得られる。例えば、量産設計時にレイアウト上の制約等から混合管50を短くする場合に、集合部56だけを含む混合管や、ストレート部を省略して集合部56とディフューザー部58とを直接滑らかに曲面でつなぐような形状の混合管とすることができる。
【0083】
前記扇形が集合して形成される前記円の中心が、必ずしも、前記混合管50の軸芯L1に一致していなくてもよい。例えば、前記円の中心が、混合管50の軸芯L1と多少ずれていてもよい。これにより、混合管50より上流の独立排気通路52の曲がりの影響を受けて、独立排気通路52の下流端の開口であるノズルでの排気の流速分布が偏った場合等においても、エゼクタ効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 エンジン本体
5 排気マニホールド
12 気筒
17 吸気ポート
18 排気ポート
19 吸気バルブ
20 排気バルブ
30 吸気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)
40 排気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)
50 混合管
52 独立排気通路
56 集合部
57 ストレート部
L1 混合管の軸芯
L2 独立排気通路の下流部の軸芯
X 扇形の重心
Y、Z 交点
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に設けられる多気筒エンジンの排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンにおいて、エンジン出力を高めることを目的とした排気装置の開発が行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排気順序が連続しない気筒の排気通路を束ねて、先細の排気管として集合させ、この絞り部分にエゼクタ効果を持たせて、気筒間の排気干渉を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−036023号公報(第4頁、第5頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車等のエンジンにおいて、エンジン出力の向上要求は依然として高く、簡単な構成でエンジン出力をより一層高めることが求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単な構成で体積効率の向上を図り、もってエンジン出力をより一層高めることのできる多気筒エンジンの排気装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、吸気ポートを開閉可能な吸気バルブ及び排気ポートを開閉可能な排気バルブが設けられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの排気装置であって、1つの気筒又は排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ接続される複数の独立排気通路と、前記各独立排気通路の下流端に接続されて各独立排気通路を通過した排気が流入する混合管とを有する排気マニホールドが備えられ、前記混合管は、少なくとも、上流側から下流側に向かって流路面積が小さくなる集合部、換言すれば、下流側ほど流路面積が小さくなる集合部を有し、前記混合管の軸芯と直交する方向における前記各独立排気通路の下流端の断面形状が互いに同じ略扇形に形成され、前記扇形が集合して略円が形成されるように前記各独立排気通路が束ねられた状態で前記各独立排気通路の下流端が前記混合管の集合部の上流端に接続され、前記扇形の重心を通る前記独立排気通路の下流部の軸芯が下流側ほど前記混合管の軸芯に近接するように前記混合管の軸芯に対して傾斜しており、かつ、所定の運転領域において、前記各気筒の排気バルブの開弁期間と吸気バルブの開弁期間とが所定の期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒間において先行する気筒の前記オーバーラップ期間中に後続の気筒の排気バルブが開弁するように、各気筒の吸気バルブ及び排気バルブを駆動するバルブ駆動手段が備えられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置である(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、各独立排気通路を通過した排気が混合管に流入することにより混合管内に負圧が発生し、この負圧により、他の独立排気通路ないしこれと連通する他の気筒の排気ポート内の排気が下流側に吸い出されるエゼクタ効果が得られる。その際、各独立排気通路の下流端から排気が噴出する混合管の集合部は、下流側ほど流路面積が小さくなるので、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管を通過し、混合管内に発生する負圧が大きくなる。加えて、所定の運転領域では、排気順序が連続する気筒間において先行する気筒のオーバーラップ期間中に後続の気筒の排気バルブが開弁するので、前記エゼクタ効果がオーバーラップ期間中の先行気筒の吸気ポートにまで及び、これにより、先行気筒の掃気が促進され、体積効率(ηV)の向上が図られ、エンジン出力がより一層高められる。
【0009】
その上で、本発明によれば、発明の実施形態でより詳しく説明されるように、混合管の軸芯と直交する方向において、混合管の軸芯から、前記扇形の重心、換言すれば、各独立排気通路の下流端から噴出する排気の流れの中心までの距離が相対的に小さくなる。これにより、前記扇形の重心を通る各独立排気通路の下流部の軸芯、換言すれば、各独立排気通路の下流端から噴出する排気の流れの方向が混合管の軸芯に対してなす傾斜が小さくなり、混合管に流入した排気が混合管の内側面に衝突することが抑制される。その結果、排気が混合管の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管内に発生する負圧が小さくなるという不具合が抑制され、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0010】
また、同じく、混合管の軸芯と直交する方向において、混合管の軸芯から前記扇形の重心までの距離が相対的に小さくなることにより、前記扇形の重心から、前記独立排気通路の下流部の軸芯と前記混合管の軸芯との交点までの距離が短くなる。ここで、前記交点は、例えば、混合管の軸芯と直交する方向における混合管内の圧力分布の不均一を回避するため、混合管内に設定される。その結果、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管を通過することとなり、混合管内に発生する負圧が大きくなり、これによっても、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0011】
さらに、各独立排気通路の下流端の断面形状である略扇形が、前記扇形が集合して形成される略円の中心に対して点対称に集合するから、エゼクタ効果の気筒管バラツキが抑制され、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキが抑制される。
【0012】
本発明において、前記各独立排気通路の下流部は、下流側ほど流路面積が小さくなることが好ましい(請求項2)。
【0013】
この構成によれば、各独立排気通路の下流部は、下流側ほど流路面積が小さくなるので、各独立排気通路を通過した排気は相対的に高い速度で混合管に流入し、混合管内に発生する負圧がさらに大きくなる。その結果、エゼクタ効果がより一層十分に発揮されて、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上がより一層確保される。
【0014】
本発明において、前記混合管は、その軸芯上に、前記集合部の下流側に、前記集合部の下流端の流路面積を維持して下流側に延びるストレート部を有することが好ましい(請求項3)。
【0015】
この構成によれば、排気が混合管の最小流路面積を有するストレート部を通過することにより、このストレート部の分だけ、混合管内で負圧が大きくなる領域が増大し、エゼクタ効果が増大する。
【0016】
本発明において、前記扇形が集合して形成される前記円の中心が前記混合管の軸芯に一致していることが好ましい(請求項4)。
【0017】
この構成によれば、各独立排気通路の下流端の断面形状である略扇形が、前記混合管の軸芯に対して点対称に集合するから、エゼクタ効果の気筒管バラツキがより一層抑制され、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキがより一層抑制される。
【0018】
本発明において、当該エンジンは4気筒以上のエンジンであり、前記独立排気通路のうち少なくとも1つは、排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートに接続される独立排気通路であることが好ましい(請求項5)。
【0019】
この構成によれば、例えば、4気筒エンジンの場合に2つ又は3つの独立排気通路が束ねられて混合管に接続され、各独立排気通路の下流端の断面形状は180°又は120°の略扇形に形成される。また、例えば、5気筒エンジンの場合に3つの独立排気通路が束ねられて混合管に接続され、各独立排気通路の下流端の断面形状は120°の略扇形に形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、混合管の軸芯と直交する方向において、混合管の軸芯から、独立排気通路の下流端から噴出する排気の流れの中心までの距離が相対的に小さくなることにより、混合管に流入した排気が混合管の内側面に衝突することが抑制され、また、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管を通過するので、混合管内に発生する負圧が大きくなり、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの排気装置を備えたエンジンシステムの概略構成図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】前記エンジンの排気マニホールド及び触媒装置の概略側面図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図3のV−V線矢視断面図である。
【図6】前記排気マニホールドの斜視図である。
【図7】前記排気マニホールドから混合管を取り外した状態の斜視図である。
【図8】図6と比べて、図面上、上下を反対にして見た前記排気マニホールドの斜視図である。
【図9】図7と比べて、図面上、上下を反対にして見た前記排気マニホールドから混合管を取り外した状態の斜視図である。
【図10】前記エンジンの吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングの説明図である。
【図11】前記吸気バルブ及び排気バルブの開弁時期(開弁開始時期)及び閉弁時期の説明図である。
【図12】複数の独立排気通路を束ねて混合管の集合部の上流端に接続する態様の説明図であって、(a)及び(b)は本発明の範囲外のもの、(c)は本発明の範囲内のものである。
【図13】本発明の実施形態の作用の説明図である。
【図14】本発明の実施形態の別の作用の説明図である。
【図15】前記エンジンの独立排気通路の下流部及び混合管内の圧力分布の説明図である。
【図16】前記エンジンの独立排気通路の下流部及び混合管内の排気の速度分布の説明図である。
【図17】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ本発明の実施形態の変形例の説明図である。
【図18】(a)及び(b)は、図17(a)を実現する構成の具体的一例の説明図である。
【図19】5気筒エンジンの場合の本発明の実施形態に係る排気マニホールドの説明図である。
【図20】5気筒エンジンの場合の本発明の実施形態に係る別の排気マニホールドの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、本発明は、図1〜3に示すエンジンシステムに適用されている。すなわち、図1は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの排気装置を備えたエンジンシステム100の概略構成図、図2は図1の部分拡大図、図3は前記エンジンの排気マニホールド5及び触媒装置6の概略側面図である(なお、図3では独立排気通路52は1つのみ図示されている)。
【0023】
このエンジンシステム100は、シリンダヘッド9及びシリンダブロックを有するエンジン本体1と、エンジン制御用のECU2と、エンジン本体1に接続される複数の吸気管3と、エンジン本体1に接続される排気マニホールド5と、排気マニホールド5に接続される触媒装置6とを備えている。
【0024】
前記シリンダヘッド9及びシリンダブロックの内部にはピストンがそれぞれ嵌挿された複数の気筒12(図2参照)が形成されている。本実施形態では、前記エンジン本体1は、直列4気筒エンジンであって、前記シリンダヘッド9及びシリンダブロックの内部には4つの気筒12が直列に並んだ状態で形成されている。具体的には、図2の右から順に第1気筒12a,第2気筒12b,第3気筒12c,第4気筒12dが形成されている。前記シリンダヘッド9には、ピストンの上方に区画された燃焼室内に臨むようにそれぞれ点火プラグ15が設置されている。
【0025】
前記エンジン本体1は4サイクルエンジンであって、図10に示すように、各気筒12a〜12dにおいて、180°CAずつずれたタイミングで前記点火プラグ15による点火が行われて、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程がそれぞれ180°CAずつずれるように構成されている。本実施形態では、第1気筒12a→第3気筒12c→第4気筒12d→第2気筒12bの順に点火が行われてこの順に排気行程等が実施される。
【0026】
各気筒12の上部には、それぞれ燃焼室に向かって開口する2つの吸気ポート17及び2つの排気ポート18が設けられている。吸気ポート17は、各気筒12内に吸気を導入するためのものである。排気ポート18は、各気筒12内から排気を排出するためのものである。各吸気ポート17には、これら吸気ポート17を開閉して吸気ポート17と気筒12内部とを連通又は遮断するための吸気バルブ19が設けられている。各排気ポート18には、これら排気ポート18を開閉して排気ポート18と気筒12内部とを連通又は遮断するための排気バルブ20が設けられている。前記吸気バルブ19は吸気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)30により駆動されることで、所定のタイミングで吸気ポート17を開閉する。また、前記排気バルブ20は、排気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)40により駆動されることで、所定のタイミングで排気ポート18を開閉する。
【0027】
前記吸気バルブ駆動機構30は、吸気バルブ19に当接された吸気カムシャフト31と吸気VVT(Variable Valve Timing Mechanism(可変バルブタイミング機構))32とを有している。吸気カムシャフト31は、周知のチェーン・スプロケット機構等の動力伝達機構を介してクランクシャフトに連結されており、クランクシャフトの回転に伴い回転して、吸気バルブ19を開閉駆動する。
【0028】
前記吸気VVT32は、吸気バルブ19のバルブタイミングを変更するためのものである。この吸気VVT32は、吸気カムシャフト31と同軸に配置されてクランクシャフトにより直接駆動される所定の被駆動軸と吸気カムシャフト31との間の位相差を変更して、これによりクランクシャフトと前記吸気カムシャフト31との間の位相差を変更することで、吸気バルブ19のバルブタイミングを変更する。吸気VVT32の具体的構成としては、例えば、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に周方向に並ぶ複数の液室を有し、これら液室間に圧力差を設けることで前記位相差を変更する液圧式機構や、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に電磁石を有し、前記電磁石に電力を付与することで前記位相差を変更する電磁式機構等が挙げられる。この吸気VVT32は、ECU2で算出された吸気バルブ19の目標バルブタイミングに基づいて前記位相差を変更する。
【0029】
前記排気バルブ駆動機構40は、前記吸気バルブ駆動機構30と同様の構造を有している。すなわち、排気バルブ駆動機構40は、排気バルブ20に当接され、クランクシャフトに連結された排気カムシャフト41と、この排気カムシャフト41とクランクシャフトとの間の位相差を変更することで、排気バルブ20のバルブタイミングを変更する排気VVT42とを有している。排気VVT42は、ECU2で算出された排気バルブ20の目標バルブタイミングに基づいて前記位相差を変更する。そして、排気カムシャフト41は、この位相差の下でクランクシャフトの回転に伴い回転して、排気バルブ20を前記目標バルブタイミングで開閉駆動する。
【0030】
なお、本実施形態では、前記吸気VVT32及び排気VVT42は、吸気バルブ19及び排気バルブ20の開弁期間及びリフト量つまりバルブ・プロファイルをそれぞれ一定に保ったまま、吸気バルブ19及び排気バルブ20の開弁時期(図11に示す開弁開始時期)と閉弁時期とをそれぞれ変更する。
【0031】
前記各気筒12の吸気ポート17は、その上流側においてそれぞれ前記吸気管3に接続されている。具体的には、前記吸気管3は気筒数に対応して4本設けられており、各気筒12に設けられた2つの吸気ポート17が、1つの吸気管3に接続されている。
【0032】
前記排気マニホールド5は、上流側から順に、3つの独立排気通路52と、前記各独立排気通路52の下流端に接続されて各独立排気通路52を通過した排気が流入する混合管50とを有する。前記混合管50は、その軸芯L1(図3参照)上に、上流側から順に、下流側ほど流路面積が小さくなる集合部56と、前記集合部56の下流端の流路面積(混合管50の最小流路面積)を維持して下流側に延びるストレート部57と、下流側ほど流路面積が大きくなるディフューザー部58とを備えている。
【0033】
前記各独立排気通路52は、前記各気筒12の排気ポート18に接続されている。具体的には、前記気筒12のうち第1気筒12aの排気ポート18及び第4気筒12dの排気ポート18は、それぞれ個別に1つの独立排気通路52a、52dに接続されている。一方、排気行程が隣り合わず排気順序が連続しない第2気筒12bの排気ポート18と第3気筒12cの排気ポート18とは、これら各気筒から同時に排気が排出されることがないため、構造を簡素化する観点から、共通の1つの独立排気通路52bに接続されている。より詳細には、この第2気筒12bの排気ポート18と第3気筒12cの排気ポート18とに接続されている独立排気通路52bは、その上流側において2つの通路に分離しており、その一方に前記第2気筒12bの排気ポート18が接続され、他方に前記第3気筒12cの排気ポート18が接続されている。
【0034】
本実施形態では、図6〜9にも示すように、前記第2気筒12bと前記第3気筒12cとに対応する独立排気通路52bは、これら気筒12b,12cの間すなわちエンジン本体1の略中央部分と対向する位置において前記混合管50の集合部56に向かって直線的に延びており、前記第1気筒12a及び前記第4気筒12dにそれぞれ対応する独立排気通路52a、52dは、各気筒12a、12dと対向する位置から湾曲しつつ前記混合管50の集合部56に向かって延びている。
【0035】
これら独立排気通路52a、52b、52dは、互いに独立しており、第2気筒12b又は第3気筒12cから排出された排気と、第1気筒12aから排出された排気と、第4気筒12dから排出された排気とは、互いに独立して各独立排気通路52a、52b、52d内を通って下流側に排出される。各独立排気通路52a、52b、52dを通過した排気は前記混合管50の集合部56に流入する。
【0036】
前記各独立排気通路52及び前記集合部56は、各独立排気通路52から高速で排気が噴出されてこの排気が高速で前記集合部56内に流入するのに伴い、この高速の排気の周囲に発生した混合管50内の負圧作用すなわちエゼクタ効果によって隣接する他の独立排気通路52及びこの独立排気通路52と連通する排気ポート18内に負圧が生成され、この排気ポート18内の排気が下流側に吸い出されるような形状を有している。
【0037】
具体的には、前記集合部56は、前記各独立排気通路52から排出された排気が高い速度を維持したまま下流側に流れるよう、下流側に向かうほどその流路面積が小さくなる形状を有している。本実施形態では、排気の速度をより高めるべく前記集合部56の下流端の流路面積は、前記各独立排気通路52の下流端の流路面積の合計よりも小さく設定されている。本実施形態では、この集合部56は、下流側に向かうに従って縮径する逆円錐台形状(漏斗形状)を有している。
【0038】
そして、前記各独立排気通路52の下流部は、排気が各独立排気通路52から高速で前記集合部56内に噴出されるよう、下流に向かうほどその流路面積が小さくなる形状を有している。本実施形態では、図4に示すように、各独立排気通路52は、略楕円形断面を有する上流側部分(仮想線)から下流に向かうに従ってその断面積が縮小されており、その下流端では上流側部分の楕円形断面積の略1/3の断面積(流路面積)となる扇形となっている。そして、図5に示すように、これら独立排気通路52は、扇形をなす各下流端が、互いに隣接して全体として略円形断面を形成するように集合して前記集合部56の上流端に接続されている(図7、図9参照)。
【0039】
すなわち、前記混合管50の軸芯L1と直交する方向における各独立排気通路52の下流端の断面形状が互いに同じ略扇形に形成され(図4、図5参照)、前記扇形が集合して略円が形成されるように各独立排気通路52が束ねられた状態で各独立排気通路52の下流端が前記混合管50の集合部56の上流端に接続されている。その際、図12(c)に示すように、前記円の中心が前記混合管50の軸芯L1に一致している。また、前記扇形の重心X(図4、図12(c)参照:なお、図12(c)には「ノズル中心」と記されている)を通る前記独立排気通路52の下流部の軸芯L2が、図3に示すように、下流側ほど前記混合管50の軸芯L1に近接するように前記混合管50の軸芯L1に対して傾斜している。
【0040】
本実施形態において排気マニホールド5をこのような構成にした理由は概ね次のようである。すなわち、エゼクタ効果の向上のために混合管50内の負圧を大きくすることを考える。基本的に、独立排気通路52の流路面積、ノズル(独立排気通路52の下流端の開口をいう。本実施形態では、図4、図5に示すように、扇形に形成されている。)の流路面積、及び混合管50の流路面積は、それぞれエンジンの排気量によっておおよそ定まる。混合管50内に発生する負圧を大きくする方策として、混合管50に流入した高速の排気流が混合管50の内側面に衝突することを抑制すること(方策1)、排気が相対的に高い速度を維持したまま混合管50を通過すること(好ましくは、混合管50の最小流路面積を有するストレート部57を通過すること)(方策2)が提案される。方策1により、排気が混合管50の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管50内に発生する負圧が小さくなるという不具合が抑制されるからである。方策2により、排気が混合管50(好ましくは、ストレート部57)を相対的に高い速度で通過し、混合管50内に発生する負圧が増大するからである。そして、いずれの場合も、混合管50内に発生する負圧が大きくなることによって、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0041】
方策1及び2を達成し得る構成として、混合管50の軸芯L1と直交する方向において、混合管50の中心(軸芯L1)から、ノズル中心(扇形の重心X)までの距離Rを小さくすることが挙げられる(図12(c)参照)。
【0042】
これにより、方策1については、前記ノズル中心(扇形の重心X)を通る各独立排気通路52の下流部の軸芯L2(換言すれば、各独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの方向)が混合管50の軸芯L1に対してなす傾斜が小さくなり、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突することが抑制される。例えば、図13に示すように、混合管50の軸芯L1と直交する方向(図面上、横方向)において、軸芯L1からの距離Rが相対的に小さいノズル中心Xaと、相対的に大きいノズル中心Xbとを比較すると、ノズル中心Xaを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2aが混合管50の軸芯L1に対してなす傾斜が相対的に小さくなり、ノズル中心Xbを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2bが混合管50の軸芯L1に対してなす傾斜が相対的に大きくなる。なお、混合管50の軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布の不均一を回避するため、独立排気通路52の下流部の軸芯L2と混合管50の軸芯L1とはストレート部57内で交差させている(例えば排気がストレート部57に均一に流入せず、混合管50の軸芯L1の近傍を流れない場合は、軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布が不均一となり、圧力が相対的に低い領域で下流側から上流側に向かう排気の逆流が生じ、その結果、混合管50内の負圧が減少して、エゼクタ効果が低下するという問題が起きる)。その結果、軸芯L1からノズル中心Xbまでの距離Rが相対的に大きい場合は、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管50内に発生する負圧が小さくなってしまうのに対し、軸芯L1からノズル中心Xaまでの距離Rが相対的に小さい場合は、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突することなく混合管50を通過するので、排気が混合管50の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管50内に発生する負圧が小さくなるという不具合が抑制されるのである。
【0043】
また、方策2については、軸芯L1からノズル中心Xまでの距離Rを小さくすることにより、前記ノズル中心Xから、独立排気通路52の下流部の軸芯L2と混合管50の軸芯L1との交点までの距離が短くなる。例えば、図14に示すように、混合管50の軸芯L1と直交する方向(図面上、横方向)において、軸芯L1からの距離Rが相対的に小さいノズル中心Xaと、相対的に大きいノズル中心Xcとを比較すると、ノズル中心Xaを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2aが混合管50の軸芯L1と交差する交点Yは、前記ノズル中心Xaから相対的に近くにあり、ノズル中心Xcを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2cが混合管50の軸芯L1と交差する交点Zは、前記ノズル中心Xcから相対的に遠くにある(軸芯L1に対する軸芯L2aの傾斜と軸芯L2cの傾斜とが同じ場合を考える)。交点Yはストレート部57内にあるので、混合管50の軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布の不均一が回避され、前述したような下流側から上流側への排気の逆流は抑制される。一方、交点Zはストレート部57よりも下流側にあるので、混合管50の軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布の不均一が回避されず、前述したような下流側から上流側への排気の逆流が生じてしまう。その結果、軸芯L1からノズル中心Xcまでの距離Rが相対的に大きい場合は、前記ノズル中心Xcから、前記軸芯L2c、L1同士の交点Zまでの距離が相対的に長くなって、排気の逆流が生じ、混合管50内の負圧が減少して、エゼクタ効果が低下してしまうのに対し、軸芯L1からノズル中心Xaまでの距離Rが相対的に小さい場合は、前記ノズル中心Xaから、前記軸芯L2a、L1同士の交点Yまでの距離が相対的に短くなって、排気の逆流が生じず、混合管50内の負圧の減少、エゼクタ効果の低下は抑制されるのである。
【0044】
図12に、複数(図例は3つ)の独立排気通路52を束ねて混合管50の集合部56の上流端に接続する態様のいくつかを示す。
【0045】
図12(a)は、独立排気通路52の下流端のノズル形状が円形の場合である。独立排気通路52の下流端の3つのノズルの配置は、混合管50の軸芯L1に対して点対称性に優れるが、軸芯L1からノズル中心Xまでの距離Rが相対的に大きくなる。そのため、前記方策1及び2が達成され難く、エゼクタ効果の向上のために混合管50内の負圧を大きくすることが困難となる。
【0046】
図12(b)は、独立排気通路52の下流端の3つのノズルを略円が形成されるように並列させた場合である。混合管50の軸芯L1からノズル中心Xまでの距離Rは相対的に小さくなるが、独立排気通路52の下流端の3つのノズルの配置は、軸芯L1に対して点対称性に劣る。そのため、エゼクタ効果の気筒管バラツキが大きくなり、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキが大きくなる。
【0047】
これらに対して、図12(c)に示すように、独立排気通路52の下流端の3つのノズル形状を互いに同じ120°の扇形とし、これらの扇形を集合させて略円が形成されるように3つの独立排気通路52が束ねられた場合は、混合管50の軸芯L1からノズル中心Xまでの距離Rが相対的に小さくなり、かつ、3つのノズルの配置が混合管50の軸芯L1に対して点対称性に優れるため、前記方策1及び2が達成され、エゼクタ効果の向上のために混合管50内の負圧を大きくすることができると共に、エゼクタ効果の気筒管バラツキが抑制され、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキが抑制される。
【0048】
独立排気通路52と混合管50との接続態様が前記図12(c)の場合に、独立排気通路52の下流部及び混合管50内の圧力分布を調べた結果を図15に、排気の速度分布を調べた結果を図16に示す。
【0049】
図15は、所定の気筒12の排気バルブ20の開弁開始後であって所定の気筒12から高圧、高速のガス(いわゆるブローダウンガス)が独立排気通路52を通って混合管50に排出された状態における圧力分布を示している。この図15に示されるように、独立排気通路52の上流側から混合管50の上流端(集合部56)付近に向かって圧力は徐々に低下しており、混合管50内に十分大きな負圧が発生している。その結果、他の独立排気通路52の下流端の圧力は十分に低下し、エゼクタ効果の十分な発揮が期待される。また、混合管50のうち前記集合部56から下流側に向かって圧力は徐々に上昇しており、排気の圧力はストレート部57及びディフューザー部58を通過するのに伴い回復している。
【0050】
図16においては、矢印の長さが各部の排気の速度を表しており、矢印が長い領域は排気の速度が高い領域である。独立排気通路52の下流端から噴出する排気(排気噴流)は、図16において塗りつぶされた部分で表されている。この図16に示されるように、軸芯L2で表される排気噴流の方向はストレート部57において混合管50の軸芯L1周りに相対的に均一に流れ込んでおり、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突することが抑制されて高速で流下していると共に、下流側から上流側への排気の逆流も抑制されている。
【0051】
前記ストレート部57に流入した排気は、前記ディフューザー58部に流入する。
【0052】
前記ディフューザー部58は下流側に向かうほど流路面積が拡大する形状を有しており、前記集合部56から排出された高速の排気は、前記ストレート部57及びこのディフューザー部58を通過することで圧力が回復する。本実施形態では、このディフューザー部58は、下流側に向かうに従って拡径する円錐台形状を有している。
【0053】
前記ディフューザー部58の下流側には触媒装置6が接続されており、前記ディフューザー部58を通過した排気は、触媒装置6のケーシング62に流入する。
【0054】
前記触媒装置6は、エンジン本体1から排出された排気を浄化するための装置である。この触媒装置6は、三元触媒等の触媒本体64とこの触媒本体64を収容するケーシング62とを備えている。ケーシング62は排気の流れ方向と平行に延びる略円筒状を有している。前記触媒本体64は、前記ケーシング62の上下流方向の中央部分に収容されており、このケーシング62の上流端には所定の空間が形成されている。前記ディフューザー部58の下流端はこのケーシング62の上流端に接続されており、ディフューザー部58から排出された排気はこのケーシング62の上流端に流入した後、触媒本体64側へ進行する。
【0055】
前述のように、本実施形態では、前記排気の噴流は前記混合管50の軸線L1周りに流入しており、排気はこのストレート部57さらには前記ディフューザー部58及び触媒本体64に均一に流入し、排気は触媒本体64で効果的に浄化される。
【0056】
ECU2には、運転条件に応じて予め設定された吸気バルブ19、排気バルブ20の目標バルブタイミングの目標開度が記憶されており、ECU2は、各種センサからの信号に基づき現在の運転条件を演算すると共に、この運転条件に対応した目標値を抽出し、吸気バルブ19、排気バルブ20のバルブタイミングがこの目標値になるように、前記吸気VVT32、排気VVT42を駆動する。
【0057】
次に、前記吸気バルブ19及び排気バルブ20の目標バルブタイミングについて説明する。
【0058】
前記吸気バルブ19及び排気バルブ20の目標バルブタイミングは、所定の運転領域(例えば全運転領域又は所定の基準回転数以下等の一部の領域、低速・高負荷域等)において、前記各気筒12の排気バルブ20の開弁期間と吸気バルブ19の開弁期間とが吸気上死点(TDC)を挟んでオーバーラップし、かつ、排気順序が連続する気筒12,12間において、一方の気筒(先行する気筒)12のオーバーラップ期間T_O/L中に、他方の気筒(後続の気筒)12の排気バルブ20が開弁を開始するように設定されている。具体的には、図10に示すように、第1気筒12aの排気バルブ20と吸気バルブ19とがオーバーラップしている期間中に第3気筒12cの排気バルブ20が開弁し、第3気筒12cの排気バルブ20と吸気バルブ19とがオーバーラップしている期間中に第4気筒12dの排気バルブ20が開弁し、第4気筒12dの排気バルブ20と吸気バルブ19とがオーバーラップしている期間中に第2気筒12bの排気バルブ20が開弁し、第2気筒12bの排気バルブ20と吸気バルブ19とがオーバーラップしている期間中に第1気筒12aの排気バルブ20が開弁するように設定されている。
【0059】
なお、本エンジンシステム100において、前記吸気バルブ19及び排気バルブ20の開弁時期(開弁開始時期)及び閉弁時期とは、それぞれ、図11に示すように、各バルブのリフトカーブにおいてバルブのリフトが急峻に立ち上がる又は立ち下がる時期であり、例えば0.4mmリフトの時期をいう。
【0060】
以上のように構成された本エンジンシステム100における吸気性能について次に説明する。
【0061】
所定の気筒12の排気バルブ20が開弁すると、この気筒12から対応する排気ポート18及び前記独立排気通路52には排気が高速で排出される。特に、排気バルブ20の開弁開始直後は前記気筒12から非常に高速で排気(いわゆるブローダウンガス)が排出される。
【0062】
ここで、本エンジンシステム100では、前述のように、前記独立排気通路52及び混合管50の集合部56は、所定の独立排気通路52から集合部56に排気が高速で噴出され、これに伴いエゼクタ効果によって他の独立排気通路52内に負圧が生成されてこの他の独立排気通路52ひいてはこの他の独立排気通路52に連通する排気ポート18内のガスが下流側へ吸い出されるように構成されている。そして、所定の気筒(先行気筒)12のオーバーラップ期間中に、排気順序がこの先行気筒12の1つ後に設定された他の気筒12(後続気筒)の排気バルブ20が開弁するように設定されている。
【0063】
したがって、排気行程気筒12の排気バルブ20が開弁して前記ブローダウンガスがこの排気行程気筒12から独立排気通路52を通って集合部56に高速で噴出されるのに伴い、前記エゼクタ効果によりオーバーラップ期間中の吸気行程気筒12の排気ポート18内に負圧が生成され、これにより、前記エゼクタ効果がオーバーラップ期間中の吸気行程気筒12の吸気ポート17にまで及び、このオーバーラップ期間中の吸気行程気筒12内の掃気が促進される。
【0064】
本実施形態の特徴を以下にまとめる。
【0065】
本実施形態では、吸気ポート17を開閉可能な吸気バルブ19及び排気ポート18を開閉可能な排気バルブ20が設けられた複数の気筒12を有する多気筒エンジンの排気装置が提供される。排気マニホールド5は、1つの気筒12又は排気順序が連続しない複数の気筒12の排気ポート18にそれぞれ接続される複数の独立排気通路52と、前記各独立排気通路52の下流端に接続されて各独立排気通路52を通過した排気が流入する混合管50とを有する。前記混合管50は、少なくとも、上流側から下流側に向かって流路面積が小さくなる集合部56、換言すれば、下流側ほど流路面積が小さくなる集合部56を有する。前記混合管50は、その軸芯L1上に、前記集合部56の下流側に、前記集合部56の下流端の流路面積を維持して下流側に延びるストレート部57をさらに有する。前記混合管50の軸芯L1と直交する方向における前記各独立排気通路52の下流端の断面形状が互いに同じ略扇形に形成され、前記扇形が集合して略円が形成されるように前記各独立排気通路52が束ねられた状態で前記各独立排気通路52の下流端が前記混合管50の集合部56の上流端に接続されている。その際、前記円の中心が前記混合管50の軸芯L1に一致している。また、前記扇形の重心Xを通る前記独立排気通路52の下流部の軸芯L2が下流側ほど前記混合管50の軸芯L1に近接するように前記混合管50の軸芯L1に対して傾斜している。また、所定の運転領域において、前記各気筒12の排気バルブ20の開弁期間と吸気バルブ19の開弁期間とが所定の期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒12,12間において先行する気筒12の前記オーバーラップ期間中に後続の気筒12の排気バルブ20が開弁するように、各気筒12の吸気バルブ19及び排気バルブ20を駆動するバルブ駆動手段30,40が備えられている。
【0066】
本実施形態では、各独立排気通路52を通過した排気が混合管50に流入することにより混合管50内に負圧が発生し、この負圧により、他の独立排気通路52ないしこれと連通する他の気筒12の排気ポート18内の排気が下流側に吸い出されるエゼクタ効果が得られる。その際、各独立排気通路52の下流端から排気が噴出する混合管50の集合部56は、下流側ほど流路面積が小さくなるので、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管50、特に本実施形態では、混合管50の最小流路面積を有するストレート部57を通過し、混合管50内に発生する負圧が大きくなる。加えて、所定の運転領域では、排気順序が連続する気筒12,12間において先行する気筒12のオーバーラップ期間中に後続の気筒12の排気バルブ20が開弁するので、前記エゼクタ効果がオーバーラップ期間中の先行気筒12の吸気ポート17にまで及び、これにより、先行気筒12の掃気が促進され、体積効率(ηV)の向上が図られ、エンジン出力がより一層高められる。
【0067】
その上で、本実施形態では、混合管50の軸芯L1と直交する方向において、混合管50の軸芯L1(特に本実施形態では、各独立排気通路52の下流端の断面形状である略扇形が集合して形成される略円の中心)から、前記扇形の重心X、換言すれば、各独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの中心までの距離Rが相対的に小さくなる。これにより、前記扇形の重心Xを通る各独立排気通路52の下流部の軸芯L2、換言すれば、各独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの方向が混合管50の軸芯L1に対してなす傾斜が小さくなり、混合管50に流入した排気が混合管50の内側面に衝突することが抑制される。その結果、排気が混合管50の内側面に衝突して排気の速度が低下し、混合管50内に発生する負圧が小さくなるという不具合が抑制され、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒12の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0068】
また、同じく、混合管50の軸芯L1と直交する方向において、混合管50の軸芯L1から前記扇形の重心Xまでの距離Rが相対的に小さくなることにより、前記扇形の重心Xから、前記独立排気通路52の下流部の軸芯L2と前記混合管50の軸芯L1との交点Yまでの距離が短くなる。ここで、前記交点Yは、例えば、混合管50の軸芯L1と直交する方向におけるストレート部57内の圧力分布(より一般的には、混合管50内の圧力分布)の不均一を回避するため、ストレート部57内(より一般的には、混合管50内)に設定される。その結果、排気は相対的に高い速度を維持したまま、混合管50、特に本実施形態では、混合管50の最小流路面積を有するストレート部57を通過することとなり、混合管50内に発生する負圧が大きくなり、これによっても、エゼクタ効果が十分に発揮されて、簡単な構成でありながら、気筒12の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上が確保される。
【0069】
さらに、各独立排気通路52の下流端の断面形状である略扇形が、前記扇形が集合して形成される略円の中心(特に本実施形態では、混合管50の軸芯L1)に対して点対称に集合するから、エゼクタ効果の気筒管バラツキが抑制され、ひいては、気筒12の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキが抑制される。
【0070】
本実施形態では、前記各独立排気通路52の下流部は、下流側ほど流路面積が小さくなっている。これにより、各独立排気通路52を通過した排気は相対的に高い速度で混合管50に流入し、混合管50内に発生する負圧がさらに大きくなる。その結果、エゼクタ効果がより一層十分に発揮されて、気筒12の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上がより一層確保される。
【0071】
本実施形態では、前記混合管50は、その軸芯L1上に、前記集合部56の下流側に、前記集合部56の下流端の流路面積を維持して下流側に延びるストレート部57を有している。これにより、排気が混合管50の最小流路面積を有するストレート部57を通過することにより、このストレート部57の分だけ、混合管50内で負圧が大きくなる領域が増大し、エゼクタ効果が増大する。
【0072】
本実施形態では、前記扇形が集合して形成される前記円の中心が前記混合管50の軸芯L1に一致している。これにより、各独立排気通路52の下流端の断面形状である略扇形が、前記混合管50の軸芯L1に対して点対称に集合するから、エゼクタ効果の気筒管バラツキがより一層抑制され、ひいては、気筒の掃気促進、体積効率の向上、エンジン出力の向上についても気筒管バラツキがより一層抑制される。
【0073】
本実施形態の変形例を以下にまとめる。
【0074】
独立排気通路52の下流端の開口であるノズルの形状は、図17(a)に示すように、180°の扇形であってもよい。また、図17(b)に示すように、90°の扇形であってもよい。180°の扇形の場合は、4気筒エンジンにおいて、2つの独立排気通路52が束ねられて混合管50に接続される。そのため、各独立排気通路52は、それぞれ、排気順序が連続しない2つの気筒12,12の排気ポート18,18に接続される。90°の扇形の場合は、4気筒エンジンにおいて、4つの独立排気通路52が束ねられて混合管50に接続される。そのため、各独立排気通路52は、それぞれ、1つの気筒12の排気ポート18に接続される。
【0075】
ノズル形状の扇形は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、図17(c)に示すように、集合したときに、真円を形成しなくてもよい。図例のように、円弧部分が外方に膨張するもの、又は内方に縮退するものでもよい。したがって、ノズル形状は、例えば公差の範囲内、個体差の範囲内において略扇形でよく、集合したときに形成される円は真円に限らず略円でよい。また、ノズル形状の扇形の角部も鋭角に限らず丸みを帯びていてもよい(図7、図9参照)。
【0076】
ノズル形状が180°の扇形である図17(a)を実現する構成の具体的一例を図18(a)及び(b)に示す(なお、図18(b)は、図18(a)のb−b線矢視断面図である)。4気筒エンジンにおいて、第1気筒12a及び第4気筒12dの排気ポート18,18に接続される独立排気通路52と、第2気筒12b及び第3気筒12cの排気ポート18,18に接続される独立排気通路52とが束ねられて混合管50に接続される。混合管50をエンジン本体1の略中央部分に配置することによって、各独立排気通路52が左右対称形となり、左右で排気通路の容積が同じとなって、エゼクタ効果の点で有利な結果が得られる。
【0077】
図19、図20に、エンジンが5気筒エンジンである場合の本実施形態に係る排気マニホールド5の構成を示す。
【0078】
5気筒エンジンの場合も、独立排気通路52…52のうち少なくとも1つは、排気順序が連続しない複数の気筒12の排気ポート18に接続される独立排気通路52であることが好ましい。図例は、独立排気通路52が3つの場合である。3つの独立排気通路52のうち2つの独立排気通路52が、排気順序が連続しない複数の気筒12の排気ポート18に接続されている。図19では、図面上、右側から、第1気筒及び第4気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第2気筒及び第5気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第3気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52とが束ねられて混合管50に接続されている。図20では、図面上、右側から、第1気筒及び第5気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第3気筒及び第4気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第2気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52とが束ねられて混合管50に接続されている。5気筒エンジンの場合に、3つの独立排気通路52を束ねる態様としては、他に、図19、図20に準じて、図面上、右側から、第2気筒及び第5気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第3気筒及び第4気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52と、第1気筒の排気ポート18に接続された独立排気通路52とを束ねる態様がある。これらのうち、各独立排気通路52が左右対称形となり、左右で排気通路の容積が同じとなって、エゼクタ効果の点で有利な結果が得られるという観点からは、図19の態様がより好ましい。
【0079】
本実施形態では、例えば、4気筒エンジンの場合に2つ又は3つの独立排気通路52が束ねられて混合管50に接続され、各独立排気通路52の下流端の断面形状は180°又は120°の略扇形に形成される。また、例えば、5気筒エンジンの場合に3つの独立排気通路52が束ねられて混合管50に接続され、各独立排気通路52の下流端の断面形状は120°の略扇形に形成される。
【0080】
独立排気通路52の下流端の開口であるノズルの形状(扇形形状)は、独立排気通路52の下流端のみで形成されていてもよく、又は、下流端から所定長さ上流側に亘って形成されていてもよい。また、扇形が集合して形成される円形も、独立排気通路52の下流端のみで形成されていてもよく(各独立排気通路12が混合管50との接続部分のみで集合する場合)、又は、下流端から所定長さ上流側に亘って形成されていてもよい(各独立排気通路12が下流端から所定長さ上流側で集合し、その状態で下流側に延びて混合管50に接続する場合)。
【0081】
ノズルの扇形の重心(ノズル中心)Xは、図12(c)では、扇形の面積重心としたが、扇形の重心Xが、独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの中心を表すものと考えられる限り、また、扇形の重心Xを通る独立排気通路52の下流部の軸芯L2が、独立排気通路52の下流端から噴出する排気の流れの方向を表すものと考えられる限り、扇形の重心Xは、扇形の面積重心に限定されない。例えば、扇形の開き角度を2分する線分上で、扇形の半径の2分の1の位置とすることもできる。
【0082】
混合管50は、流路面積が縮小する集合部56だけを含むもの(ストレート部57及びディフューザー部58がないもの)でもよく、集合部56と流路面積が拡大するディフューザー部58とだけを含むもの(ストレート部57がないもの)でもよい。このような構成の混合管を用いてもエゼクタ効果は得られる。例えば、量産設計時にレイアウト上の制約等から混合管50を短くする場合に、集合部56だけを含む混合管や、ストレート部を省略して集合部56とディフューザー部58とを直接滑らかに曲面でつなぐような形状の混合管とすることができる。
【0083】
前記扇形が集合して形成される前記円の中心が、必ずしも、前記混合管50の軸芯L1に一致していなくてもよい。例えば、前記円の中心が、混合管50の軸芯L1と多少ずれていてもよい。これにより、混合管50より上流の独立排気通路52の曲がりの影響を受けて、独立排気通路52の下流端の開口であるノズルでの排気の流速分布が偏った場合等においても、エゼクタ効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 エンジン本体
5 排気マニホールド
12 気筒
17 吸気ポート
18 排気ポート
19 吸気バルブ
20 排気バルブ
30 吸気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)
40 排気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)
50 混合管
52 独立排気通路
56 集合部
57 ストレート部
L1 混合管の軸芯
L2 独立排気通路の下流部の軸芯
X 扇形の重心
Y、Z 交点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートを開閉可能な吸気バルブ及び排気ポートを開閉可能な排気バルブが設けられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの排気装置であって、
1つの気筒又は排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ接続される複数の独立排気通路と、前記各独立排気通路の下流端に接続されて各独立排気通路を通過した排気が流入する混合管とを有する排気マニホールドが備えられ、
前記混合管は、少なくとも、上流側から下流側に向かって流路面積が小さくなる集合部を有し、
前記混合管の軸芯と直交する方向における前記各独立排気通路の下流端の断面形状が互いに同じ略扇形に形成され、
前記扇形が集合して略円が形成されるように前記各独立排気通路が束ねられた状態で前記各独立排気通路の下流端が前記混合管の集合部の上流端に接続され、
前記扇形の重心を通る前記独立排気通路の下流部の軸芯が下流側ほど前記混合管の軸芯に近接するように前記混合管の軸芯に対して傾斜しており、
かつ、所定の運転領域において、前記各気筒の排気バルブの開弁期間と吸気バルブの開弁期間とが所定の期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒間において先行する気筒の前記オーバーラップ期間中に後続の気筒の排気バルブが開弁するように、各気筒の吸気バルブ及び排気バルブを駆動するバルブ駆動手段が備えられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多気筒エンジンの排気装置において、
前記各独立排気通路の下流部は、下流側ほど流路面積が小さくなることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多気筒エンジンの排気装置において、
前記混合管は、その軸芯上に、前記集合部の下流側に、前記集合部の下流端の流路面積を維持して下流側に延びるストレート部を有することを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の多気筒エンジンの排気装置において、
前記扇形が集合して形成される前記円の中心が前記混合管の軸芯に一致していることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の多気筒エンジンの排気装置において、
当該エンジンは4気筒以上のエンジンであり、
前記独立排気通路のうち少なくとも1つは、排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートに接続される独立排気通路であることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項1】
吸気ポートを開閉可能な吸気バルブ及び排気ポートを開閉可能な排気バルブが設けられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの排気装置であって、
1つの気筒又は排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ接続される複数の独立排気通路と、前記各独立排気通路の下流端に接続されて各独立排気通路を通過した排気が流入する混合管とを有する排気マニホールドが備えられ、
前記混合管は、少なくとも、上流側から下流側に向かって流路面積が小さくなる集合部を有し、
前記混合管の軸芯と直交する方向における前記各独立排気通路の下流端の断面形状が互いに同じ略扇形に形成され、
前記扇形が集合して略円が形成されるように前記各独立排気通路が束ねられた状態で前記各独立排気通路の下流端が前記混合管の集合部の上流端に接続され、
前記扇形の重心を通る前記独立排気通路の下流部の軸芯が下流側ほど前記混合管の軸芯に近接するように前記混合管の軸芯に対して傾斜しており、
かつ、所定の運転領域において、前記各気筒の排気バルブの開弁期間と吸気バルブの開弁期間とが所定の期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒間において先行する気筒の前記オーバーラップ期間中に後続の気筒の排気バルブが開弁するように、各気筒の吸気バルブ及び排気バルブを駆動するバルブ駆動手段が備えられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多気筒エンジンの排気装置において、
前記各独立排気通路の下流部は、下流側ほど流路面積が小さくなることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多気筒エンジンの排気装置において、
前記混合管は、その軸芯上に、前記集合部の下流側に、前記集合部の下流端の流路面積を維持して下流側に延びるストレート部を有することを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の多気筒エンジンの排気装置において、
前記扇形が集合して形成される前記円の中心が前記混合管の軸芯に一致していることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の多気筒エンジンの排気装置において、
当該エンジンは4気筒以上のエンジンであり、
前記独立排気通路のうち少なくとも1つは、排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートに接続される独立排気通路であることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−79609(P2013−79609A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220225(P2011−220225)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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