説明

多液混合装置

【課題】塗装ガンへの塗料の供給が停止している間も、複数の液剤を十分に混合する。
【解決手段】撹拌室16内のロータ41は、回転軸50から径方向外向きに突出するとともに回転方向に対して傾いた複数の撹拌片51を有し、撹拌室16内には、回転時にロータ41が占める円柱状空間52を包囲する筒状空間53が形成されている。複数の流入口20A,20Bから撹拌室16に流入した主剤と硬化剤は、円柱状空間52内を流出口30側へ向かう経路と、反転して筒状空間53内を流入口20A,20B側へ向かう経路とを交互に通ることによって撹拌室16内で対流するので、塗装ガン34への二液混合塗料の供給が停止している間も、撹拌室16内において二液混合塗料の流れが滞ることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多液混合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主剤と硬化剤からなる塗料を塗装ガンに供給する手段として、この2つの液剤を二液混合装置に供給して混合することによって得られた塗料を塗装ガン側へ送り出す方法が開示されている。
上記のように複数種類の液体を混合する混合装置として、スタティックミキサを用いることができる。スタティックミキサは、液体の流路内に、捻れ方向が逆向きであって螺旋状の板からなる2種類のエレメントを交互に配置したものであり、各エレメントを通過するときに液体の流れを分割する作用と、隣り合うエレメント間を移行するときに液体の流れの捻れ方向を反転させる作用を繰り返すことにより、複数の液体を混練するようになっている。
また、塗装ガンに至る流路の途中に設けた混合装置の別の例としては、特許文献2に記載されているように、可動式エレメントを内蔵し、この可動式エレメントを回転させることによって2つの液剤を混合するものが知られている。
【特許文献1】特開2004−141800公報
【特許文献2】特開2003−033714公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のスタティックミキサや可動式エレメントを内蔵した混合装置では、塗装ガンへの塗料の供給が行われている間、即ち混合装置の中を液剤が通過している間は、液剤同士を混合させることができるが、塗装ガンに対する塗料の供給が停止している間は、混合装置内で液剤の流れが滞るため、十分に混合させることができなくなることが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、塗装ガンへの塗料の供給が停止している間も、複数の液剤を十分に混合することのできる多液混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、一方の端部に液剤の供給源に接続された複数の流入口が形成され、他方の端部に塗装ガンに接続された1つの流出口が形成されている撹拌室と、前記撹拌室内に回転可能に収容され、前記流入口と前記流出口を結ぶ線に概ね沿うように配置された回転軸と、前記回転軸から径方向外向きに突出するとともに回転方向に対して傾いた形態の複数の撹拌片とを有するロータと、前記撹拌室内に、回転時に前記ロータが占める円柱状空間を包囲するように形成された筒状空間とを備えているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記複数の流入口が、前記撹拌室の内面のうち前記回転軸の軸線と略直角な端面に開口するように形成され、前記複数の撹拌片のうち前記流入口の最も近くに位置する撹拌片が、前記流入口から前記撹拌室に流れ込む液剤の流れを横切るように回転するように配置されているところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記筒状空間を構成する撹拌室の内周面のうち前記回転軸の軸線方向における両端部が、先細り状に縮径したテーパ状に形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、駆動側磁石を有し、前記回転軸と同心の軸を中心として前記撹拌室の外部において回転駆動する駆動側回転部材と、前記回転軸に一体的に回転するように且つ前記駆動側磁石と対応するように設けられた従動側磁石とを備え、前記駆動側磁石と前記従動側磁石との間の磁気吸引力により、前記ロータが前記回転駆動部材と一体となって回転するようになっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
複数の流入口から撹拌室に流入した複数の液剤は、回転する撹拌片により、撹拌されつつ円柱状空間内を流出口に向かって送られて混合液剤となる。混合液剤の一部は流出口から塗装ガンへ送出され、流出口から流出しなかった混合液剤は、反転して筒状空間内を流入口側へ戻るように流れ、新たに流入口から流入した液剤と合流して再び混合されつつ円柱状空間内を流出口へ向かって流れる。
本発明によれば、複数の液剤を撹拌しつつ対流を生じさせるようになっているので、塗装ガンへの塗料の供給が停止している間も、撹拌室内において複数の液剤の流れが滞ることがなく、複数の液剤を十分に混合した状態に保つことができる。
【0009】
<請求項2の発明>
流入口から撹拌室内に流れ込んだ液剤は、撹拌室内に流入した直後に、直ちに、撹拌片によって剪断されるので、混合効率が高い。
【0010】
<請求項3の発明>
筒状空間を構成する撹拌室の内周面のうち回転軸の軸線方向における両端部が、先細り状に縮径したテーパ状に形成されているので、筒状空間の内周面に沿った液剤の流れが円滑となり、液剤が滞留する虞がない。
【0011】
<請求項4の発明>
撹拌室内に収容されているロータに回転力を伝える手段として、ロータに一体回転するように設けた伝達部材を撹拌室の外部へ突出させ、この伝達部材に回転力を付与する構造が考えられるが、このように回転する伝達部材を撹拌室の外部へ突出させる構造の場合、撹拌室を構成する壁部における伝達部材の貫通部の隙間に浸入した混合液体が、高粘度化して固着し、そのためにロータの回転に支障を来たすことが懸念される。これに対し本発明では、ロータに回転力を付与する手段として、磁力を利用しているので、上記のような混合液体の高粘度化に起因するロータの回転不良を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1及び図2を参照して説明する。本実施形態の多液混合装置Mは、主剤(本発明の構成要件である液体)と硬化剤(本発明の構成要件である液体)を所定の割合で混合するためのものであって、この多液混合装置Mには、主剤と硬化剤が夫々所定の流量ずつ交互に供給されるようになっている。また、混合された主剤と硬化剤は、二液混合塗料として塗装ガン34へ供給されるようになっている。
【0013】
多液混合装置Mは、筒状部材10と駆動ギヤ35(本発明の構成要件である駆動側回転部材)とロータ41とを備えて構成されている。
筒状部材10は、非磁性材料からなり、軸線を上下方向に向けた状態で上下両端部を上部支持体24と下部支持体17とによって支持されている。筒状部材10のうち上下両端部を除いた部分は、径寸法が一定(寸胴状)の寸胴部11となっている。筒状部材10の上端部には、寸胴部11の上端から上方に向かって次第に縮径する(径寸法が小さくなる)形態の上部テーパ部12が形成されているとともに、上部テーパ部12の上端から一定の寸法で上方へ延出する上部縮径部13が形成されている。一方、筒状部材10の下端部には、寸胴部11の下端から下方に向かって次第に縮径する(径寸法が小さくなる)形態の下部テーパ部14が形成されているとともに、下部テーパ部14の下端から一定の寸法で下方へ延出する下部縮径部15が形成されている。かかる筒状部材10の内部空間は撹拌室16となっている。
【0014】
筒状部材10の下部縮径部15は、ブロック状をなす下部支持体17の上面の凹部18に嵌合されている。下部支持体17には、凹部18の底面から下部支持体17の左右両外側面に連通する略L字形をなす左右一対の流入孔19A,19Bが形成されている。凹部18の底面は撹拌室16の下端面を構成し、凹部18の底面には、2つの流入孔19A,19Bの上端が円形の流入口20A,20Bとして左右対称に並んで配置されている。尚、流入孔19A,19Bにおける流入口20A,20Bとは反対側の開口部には、逆止弁23が内蔵された筒状の流入側継手21A,21Bが取り付けられており、この2つの流入側継手21A,21Bには、夫々、主剤の供給源23Aと硬化剤の供給源23Bが接続されている。
【0015】
筒状部材10の上端部は上部支持体24に固定されている。上部支持体24は、筒状支持部材25と板状支持部材31とからなり、筒状支持部材25の下面を凹ませた形態の下部嵌合凹部26には上部縮径部13の上端部が嵌合されている。筒状支持部材25の上面を凹ませた形態の上部嵌合凹部27には、筒状をなす流出側継手28の下端部が取り付けられている。また、筒状支持部材25には、上部嵌合凹部27と下部嵌合凹部26を連通させる連通孔29が上下に貫通して形成されており、この連通孔29の下面側の開口部が、流出口30として下部嵌合凹部26の天井面に開口している。この下部嵌合凹部26の天井面は、撹拌室16の上端面を構成する。さらに、筒状支持部材25は板状支持部材31の下面側に固定され、流出側継手28は、板状支持部材31の貫通孔32を貫いて上方へ突出している。流出側継手28の上端部には供給路33の上流端が接続され、供給路33の下流端には塗装ガン34が接続されている。
【0016】
筒状支持部材25の外周には、筒状部材10と同心の円筒形をなす非磁性材料からなる駆動ギヤ35が、ベアリング36により、上下方向(駆動ギヤ35の軸線方向)への相対移動を規制され、且つ筒状部材10と同軸の回転を許容された状態で支持されている。駆動ギヤ35は、外周に歯車が形成された円筒形のギヤ本体37と、同じく円筒形をなすとともにギヤ本体37の下側に配された磁石保持体38とをボルト39により一体回転可能に組み付けたものであり、磁石保持体38の内周のうち筒状部材10の上部縮径部13と対応する領域には、複数個の駆動側磁石40が、周方向に並ぶように且つ上部縮径部13との対向面にN極とS極とが交互に並ぶように取り付けられている。これらの駆動側磁石40は、上部縮径部13の外周面に対して接近して対向しており、図示しないモータによって駆動ギヤ35が回転されると、これら複数の駆動側磁石40が筒状部材10の外周面に沿って回転移動するようになっている。
【0017】
筒状部材10の撹拌室16内には、ロータ41が収容されている。ロータ41の下端面(後述する回転軸50の下端面)には、ボール42が、その略上半分領域を埋設して下端部のみを僅かに突出させた形態で固着され、このボール42を撹拌室16の下端面における左右両流入口20A,20Bの間の位置に載せるように当接させることにより、ロータ41が、撹拌室16(筒状部材10)内において筒状部材10及び駆動ギヤ35と略同心の姿勢を保ちつつ自由回転し得るように支持されている。
【0018】
ロータ41は、非磁性材料からなり、ロータ41の上端部は磁石保持部43となっており、磁石保持部43以外の部分(磁石保持部43の下端から回転軸50の下端に至る部分)は撹拌機能部49となっている。磁石保持部43は、外径が上部縮径部13の内径よりも僅かに小さい円柱形をなし、磁石保持部43には、その外周を凹ませた形態の保持空間が駆動側磁石40と同じ数だけ形成され、この複数の保持空間には、駆動側磁石40と対応する複数(駆動側磁石40と同数)の従動側磁石44が、外周面側にN極とS極が交互に並ぶように収容されている。
【0019】
かかる磁石保持部43(小径部46を含む)は、上部縮径部13内に収容され、N極を外周側に向けている従動側磁石44は、S極を内周側に向けている駆動側磁石40に対して同じ高さで対応し、S極を外周側に向けている従動側磁石44は、N極を内周側に向けている駆動側磁石40に対して同じ高さで対応している。そして、これらの対応する駆動側磁石40と従動側磁石44との間に生じる径方向の磁気吸引力により、ロータ41が駆動ギヤ35と一体となって回転するようになっている。また、この磁気吸引力は周方向において等角度間隔で作用するので、ロータ41は傾くことなく筒体と同心の姿勢を保つ。
【0020】
また、磁石保持部43内には、磁石保持部43と同心の円形であって磁石保持部43の上端面に開口する導出孔45が形成されている。磁石保持部43の下端部は、外径を同心状に小さくした小径部46となっている。この小径部46には、その外周面から中心に向かって径方向に穿孔した形態の4つの導入孔47が形成されており、各導入孔47は、小径部46の中心において導出孔45の下端と連通している。また、磁石保持部43の上端面には、導出孔45を包囲するように4枚の平板状をなす羽根板48が、上方へ突出するように形成されている。各羽根板48の板面は、概ね径方向に沿っているため、ロータ41が回転すると羽根板48がその板面と略直角に回転移動するようになっている。
【0021】
撹拌機能部49は、筒状部材10(撹拌室16)及び磁石保持部43と同心に配置(即ち、軸線が、流入口20A,20Bと流出口30を結ぶ線に概ね沿うように配置)されていて小径部46よりも外径の小さい回転軸50と、この回転軸50の外周から径方向外向きに突出する複数の撹拌片51とからなる。回転軸50の上端は磁石保持部43の小径部46の下端に連なっており、撹拌機能部49と磁石保持部43とが一体的に回転するようになっている。
【0022】
撹拌片51は、ロータ41(回転軸50)の軸線方向(上下方向)に間隔を空けた複数箇所(本実施形態では8ヶ所であるが、7ヶ所以下、又は9ヶ所以上でもよい)に分けて配置され、各箇所においては周方向に等角度間隔を空けて4片ずつ配置されている。したがって、本実施形態では合計32片の撹拌片51を設けている。各撹拌片51は僅かに捻れた板状をなしており、その板面は、回転軸50の外周上において軸線と平行ではなく、軸線方向に対して螺旋状をなすように斜めを向いている。換言すると、撹拌片51の板面は撹拌片51の回転方向に対して直角ではなく斜めを向き、撹拌片51の上縁51aと下縁51bとが周方向にずれた位置関係となっている。また、撹拌片51の傾きの方向と傾きの角度は、全ての撹拌片51において同じ向きに且つ同じ角度に揃えられている。
【0023】
回転軸50の外周面からの撹拌片51の突出長さは全て同じ寸法である。ロータ41が回転したときに最上端と最下端に位置する撹拌片51の軌跡は、回転軸50の軸心を中心とする円形面となり、この上下2つの円板面の間に形成される空間と、上側の円板面と小径部46との間に形成される空間とを合わせた空間は、円柱状空間52を構成する。ロータ41の回転時には、撹拌片51が円柱状空間52内で回転する。この円柱状空間52は、撹拌室16と同心の円柱状をなしており、上下方向における形成領域は、撹拌室16の上端(上部テーパ部12の上端)から下端に亘っている。
【0024】
円柱状空間52の外径寸法は、下部縮径部15の内径よりも僅かに小さい寸法となっており、円柱状空間52の下端部は下部縮径部15内に位置している。そして、2つの流入口20A,20Bは円柱状空間52の下端面に開口している。また、最下端に位置する撹拌片51は、その下端縁51bが回転軸50の下端面と同じ高さとなるように配置され、流入口20A,20Bの近傍、即ち流入口20A,20Bの開口の真上に位置している。したがって、この最下端の撹拌片51の下縁と撹拌室16の下端面(流入口20A,20Bの開口面)との隙間はごく僅か(即ち、回転軸50の下端面からのボール42の突出寸法と同じ寸法)となっている。
尚、本実施形態では、撹拌室16の下部縮径部15の内径寸法は18.6mmであり、下部縮径部15の深さ(上下方向の)寸法は5mmであり、回転軸50の外径寸法は18mmであり、最下端の撹拌片51と撹拌室16の下端面との隙間は0.3mmであり、撹拌片51の上下寸法は2mmであり、流入口20A,20Bの直径は6mmである。
【0025】
撹拌室16内には、円柱状空間52を全周に亘って包囲する形態であって、撹拌室16及び円柱状空間52と同心の円筒形をなす筒状空間53が確保されている。この筒状空間53の上下方向の形成領域は、上部テーパ部12の上端から下部テーパ部14の下端に亘っている。筒状空間53の上端部には、小径部46の外周面に開口する導入孔47が連通している。また、筒状空間53を構成する筒状部材10の内周面は、その上端部と下端部がテーパ状をなしており、寸胴部11と上部テーパ部12との境界、及び寸胴部11の下部テーパ部14との境界は、鈍角をなしている。
【0026】
次に、本実施形態の作用を説明する。
主剤と硬化剤を混合する際には、まず、駆動ギヤ35を回転させ、筒状部材10内でロータ41を回転させておき、この状態で、2つの流入口20A,20Bから撹拌室16の下端部に主剤と硬化剤を交互に供給する。供給された主剤と硬化剤は、流入口20A,20Bから撹拌室16内に流入した直後に、最下端に位置する撹拌片51によって剪断されるとともに、その撹拌片51の傾斜面によって上方(流出口30側)へ押し上げられる。次いで、その上側に位置する撹拌片51により、更に剪断されるとともに上方へ押し上げられ、これが繰り返されることにより、主剤と硬化剤が、次第に撹拌されつつ上方へ送られ、撹拌室16の上端に至るまでに所定の比率で混合された二液混合塗料となる。
【0027】
そして、二液混合塗料の一部は、導入孔47に流入して導出孔45を通過し、流出口30から連通孔29を通過して流出側継手28に至り、塗装ガン34に供給される。一方、二液混合塗料のうち塗装ガン34側へ流出されなかったものは、撹拌室16の上端部で径方向外向きに反転して筒状空間53内を下降し、撹拌空間の下端部において流入孔19A,19Bから新たに流入した主剤及び硬化剤と合流する。合流した二液混合塗料、主剤及び硬化剤は、撹拌片51の撹拌作用と押し上げ作用により円柱状空間52内を撹拌・混合されながら上昇し、一部が塗装ガン34へ圧送されるとともに、残りが筒状空間53内を下降する。つまり、二液混合塗料は、その一部を塗装ガン34に送り出されるとともに、残りのものが撹拌室16内において対流するように循環しつつ撹拌・混合され続ける。
【0028】
また、塗装を中断している間は、撹拌室16には新たな主剤と硬化剤は流入されず、撹拌室16内の二液混合塗料は、円柱状空間52を上昇する経路と筒状空間53を下降する経路とを順次に通るように循環した流れを形成する。つまり、二液混合塗料は、撹拌室16内で対流するように循環しつつ撹拌された状態に保たれる。したがって、塗装ガン34への塗料の供給が停止している間も、撹拌室16内において二液混合塗料の流れが滞ることがなく、主剤と硬化剤を十分に混合させた状態に保つことができる。
【0029】
また、2つの流入口20A,20Bが、撹拌室16の内面のうち回転軸50の軸線と略直角な下端面に開口するように形成され、複数の撹拌片51のうち流入口20A,20Bの最も近くに位置する最下端の撹拌片51が、流入口20A,20Bから撹拌室16に流れ込む液剤の流れを横切るように回転するように配置されている。これにより、流入口20A,20Bから撹拌室16内に流れ込んだ液剤は、撹拌室16内に流入した直後に、直ちに、撹拌片51によって剪断されるので、混合効率が高い。
【0030】
また、筒状空間53を構成する撹拌室16の内周面のうち回転軸50の軸線方向における両端部(上部テーパ部12及び下部テーパ部14)が、先細り状に縮径したテーパ状に形成されているので、筒状空間53の内周面に沿った液剤(混合液剤や、洗浄剤)の流れが円滑となり、液剤が滞留する虞がない。したがって、筒状部材10の内部を洗浄する際には、洗浄液の流れが滞り難く、線上効率が高い。
【0031】
また、撹拌室16内に収容されているロータ41に回転力を伝える手段としては、ロータ41に一体回転するように設けた伝達部材を撹拌室16の外部へ突出させ、この伝達部材に回転力を付与する構造が考えられるが、このように回転する伝達部材を撹拌室16の外部へ突出させる構造の場合、撹拌室16内の二液混合塗料が、撹拌室16を構成する壁部における伝達部材の貫通部の隙間に浸入し、高粘度化して固着し、その結果、ロータ41の回転に支障を来たすことが懸念される。これに対し本実施形態では、ロータ41に回転力を付与する手段として、磁力を利用しているので、上記のような混合液体の高粘度化に起因するロータ41の回転不良を回避することができる。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では2つの液剤を混合する場合について説明したが、本発明は、3つ以上の液剤を混合する場合にも適用できる。
(2)上記実施形態ではロータを回転駆動する手段として磁石を用いたが、本発明によれば、回転軸の端部を撹拌室の外部へ突出させ、その突出部分に回転駆動力を付与してもよい。
(3)上記実施形態では撹拌片を回転軸の軸線方向(液体の流通方向)に間隔を空けて複数設けたが、本発明によれば、撹拌片は、液体の流通方向における1箇所のみに設けてもよい。
(4)上記実施形態では2種類の液体を所定量ずつ交互に撹拌室内に流入させるようにしたが、本発明によれば、2種類の液体を所定量ずつ同時に撹拌室内に流入させてもよい。
(5)上記実施形態では2種類の液体を混合する場合について説明したが、本発明によれば、混合する液体の種類は3種類以上であってもよい。
(6)上記実施形態では流入口を、撹拌室の内面のうち回転軸の軸線と直角な端面に開口させたが、本発明によれば、流入口を、撹拌室の内周面に開口させてもよい。
(7)上記実施形態では混合によって得られる混合液体が塗料である場合について説明したが、本発明は、塗料以外の混合液体にも適用できる。
(8)上記実施形態では流入口を各液剤毎に別々に撹拌室に開口させたが、本発明によれば、撹拌室に至る手前で複数の液剤を合流させた状態で撹拌室に流入させてもよい。
(9)上記実施形態では筒状空間を構成する撹拌室の内周面のうち回転軸の軸線方向における両端部が、先細り状に縮径したテーパ状に形成されているが、本発明によれば、撹拌室の内周面のうち回転軸の軸線方向における両端部を、内径が一定の寸胴状に形成されていてもよい。
(10)上記実施形態では最も流入口に近い位置に配置されている撹拌片が、流入口の開口部の近傍に位置するが、本発明によれば、最も流入口に近い位置に配置されている撹拌片が、流入口の開口部から少し離間した位置に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1の断面図
【図2】ロータの側面図
【符号の説明】
【0034】
M…多液混合装置
16…撹拌室
20A…流入口
20B…流入口
30…流出口
34…塗装ガン
35…駆動ギヤ(駆動側回転部材)
40…駆動側磁石
41…ロータ
44…従動側磁石
50…回転軸
51…撹拌片
52…円柱状空間
53…筒状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に液剤の供給源に接続された複数の流入口が形成され、他方の端部に塗装ガンに接続された1つの流出口が形成されている撹拌室と、
前記撹拌室内に回転可能に収容され、前記流入口と前記流出口を結ぶ線に概ね沿うように配置された回転軸と、前記回転軸から径方向外向きに突出するとともに回転方向に対して傾いた形態の複数の撹拌片とを有するロータと、
前記撹拌室内に、回転時に前記ロータが占める円柱状空間を包囲するように形成された筒状空間とを備えていることを特徴とする多液混合装置。
【請求項2】
前記複数の流入口が、前記撹拌室の内面のうち前記回転軸の軸線と略直角な端面に開口するように形成され、
前記複数の撹拌片のうち前記流入口の最も近くに位置する撹拌片が、前記流入口から前記撹拌室に流れ込む液剤の流れを横切るように回転するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の多液混合装置。
【請求項3】
前記筒状空間を構成する撹拌室の内周面のうち前記回転軸の軸線方向における両端部が、先細り状に縮径したテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の多液混合装置。
【請求項4】
駆動側磁石を有し、前記回転軸と同心の軸を中心として前記撹拌室の外部において回転駆動する駆動側回転部材と、
前記回転軸に一体的に回転するように且つ前記駆動側磁石と対応するように設けられた従動側磁石とを備え、
前記駆動側磁石と前記従動側磁石との間の磁気吸引力により、前記ロータが前記回転駆動部材と一体となって回転するようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多液混合装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−326081(P2007−326081A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161394(P2006−161394)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】