説明

多環式化合物の製造法およびその中間体

【課題】アルツハイマー病、ダウン症などの神経変性疾患の治療に有用な化合物またはその塩の工業的に十分に有利な製造法およびその製造に用いる中間体の提供。
【解決手段】[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンと、2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニルとをカップリング反応させて下記式(I)


で表される(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環式化合物の製造法およびその中間体に関する。更に詳細には、本発明は、アミロイドベータ(以下Aβという)が原因となるアルツハイマー病、ダウン症などの神経変性疾患の治療に有効なAβ産生抑制剤として有用な化合物である、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造法、およびその製造のための有用な新規中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下記式
【化1】

[式中、Uは窒素原子等を示し、Vは酸素原子等を示し、Gは酸素原子等を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子等を示し、Rは水素原子、アルキル基等を示し、Rはアルキル基等を示し、Rはアルキル基等を示し、Rはハロゲン原子等を示し、Rはアルキル基等を示し、R10はアルキル基等を示す]で表される化合物がγセクレターゼモジュレーターであること、およびそれら化合物の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、下記式
【化2】

[式中、Arは、C1−6アルキル基で置換されてもよいイミダゾリル基等を示し、Arは、C1−6アルコキシ基で置換されてもよいフェニル基等を示し、Xは、二重結合等を示し、Hetは、C1−6アルキル基等で置換されてもよいイミダゾリル基等を示す]で表される化合物がアミロイド前駆体蛋白からアミロイドベータ40および42の産生を抑制すること、およびそれら化合物の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、下記式
【化3】

[式中、RおよびRは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基等を示し、Hetは、5もしくは6員不飽和へテロ環基等を示す]
で表される化合物がAβ産生抑制作用を示すこと、およびそれら化合物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第08/137139号パンフレット
【特許文献2】国際公開第07/102580号パンフレット
【特許文献3】国際公開第08/097538号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1から3に記載された化合物とは化学構造が相違する化合物であって、Aβが原因となるアルツハイマー病、ダウン症などの神経変性疾患の治療に有効な化合物として、本出願人は、下記式(I)
【化4】

で表される化合物またはその塩、並びにそれらの製造法を見出し、それらの発明について特許出願した(PCT/JP08/065365)。しかしながら、該化合物の製造法は、工業的に十分に有利な製造法とはいい難く、その製造法には未だ課題があった。
従って、本発明の課題は、式(I)の化合物またはその塩の工業的に十分に有利な製造法およびその製造に用いる中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決することを目的として鋭意検討の結果、本発明を見出すに至った。
すなわち本発明は、
(1)下記式(II)
【化5】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する]で表される化合物またはその塩と、下記式(III)
【化6】

で表される化合物またはその塩とをカップリング反応させて下記式(I)
【化7】

で表される化合物を製造する工程を含む、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造法、
(2)下記式(IV)
【化8】

で表される化合物またはその塩をサンドマイヤー反応に付すことにより、下記式(II)
【化9】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する]で表される化合物またはその塩を製造し、さらに式(II)で表される化合物またはその塩と、下記式(III)
【化10】

で表される化合物またはその塩とをカップリング反応させて、下記式(I)
【化11】

で表される化合物を製造する工程を含む、上記(1)記載の製造法、
(3)下記式(V)
【化12】

[式中、Lは脱離基を意味する]で表される化合物またはその塩と、グアニジン化剤とを環形成反応に付して、下記式(IV)
【化13】

で表される化合物またはその塩を製造し、さらに式(IV)で表される化合物またはその塩をサンドマイヤー反応に付すことにより、下記式(II)
【化14】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する]で表される化合物またはその塩を製造し、さらに式(II)で表される化合物またはその塩と、下記式(III)
【化15】

で表される化合物またはその塩とをカップリング反応させて下記式(I)
【化16】

で表される化合物を製造する工程を含む、上記(1)記載の製造法、
(4)Xが臭素原子またはヨウ素原子であり、Lが塩素原子または臭素原子である、上記(1)ないし(3)記載の製造法、
(5)Xが臭素原子であり、Lが塩素原子である、上記(1)ないし(3)記載の製造法、
(6)下記式(II)
【化17】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する]で表される化合物またはその塩、
(7)Xが臭素原子である、上記(6)記載の化合物またはその塩、
(8)下記式(III)
【化18】

で表される2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−6−ビニルピリジンまたはその塩、
(9)下記式(IV)
【化19】

で表される(8S)−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン−2−アミンまたはその塩、
(10)下記式(V)
【化20】

[式中、Lは脱離基を意味する]で表される化合物またはその塩、および、
(11)Lが塩素原子である、上記(10)記載の化合物またはその塩
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、Aβ産生抑制剤として有用である、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩を工業的に有利に製造することができる。また、このために有用な新規合成中間体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の製造法およびそのための新規中間体について詳細に説明する。
以下の説明において、式(I)で表される化合物を、化合物(I)と記載することもある。他の化合物についても、同様に記載することもある。
本発明においてハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味し、好ましくは臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
また本発明において脱離基とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等のハロゲン原子を意味し、好ましくは塩素原子または臭素原子を意味する。
【0010】
本発明の製造法およびそのための新規中間体は、以下の反応スキームによって表される。
【化21】

【0011】
本発明におけるカップリング反応(上記反応スキームにおける工程1)は通常、パラジウム触媒、および塩基の存在下に行われる(例えばR.F.Heck、「Org.Reactions」、1982年、27巻、p.345を参照)。ここでは通常、化合物(II)に対して、化合物(III)は通常0.7ないし1.5当量用いられ、好ましくは0.8ないし1.2当量用いられる。パラジウム触媒は0価または二価のパラジウム化合物が用いられ、0価のパラジウム化合物としては、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)が、二価のパラジウム化合物としては酢酸パラジウム(II)が好ましく用いられる。また好ましくは三価のホスフィン化合物が配位子として併せて用いられる。もっとも好ましくはパラジウム化合物としてトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)が、配位子としてトリ(オルト−トリル)ホスフィンが用いられる。パラジウム触媒の使用量は、化合物(II)に対して、パラジウムとして0.001ないし0.5当量、好ましくは0.005ないし0.2当量が用いられる。使用する塩基としてはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基、炭酸カリウム等の無機塩基が通常用いられ、好ましくはジイソプロピルエチルアミンが用いられる。塩基の使用量は、化合物(II)に対して、1ないし10当量が用いられ、好ましくは1ないし5当量が用いられる。反応溶媒は使用してもしなくてもいいが、使用する場合は反応を阻害しない限り特別の制限はなく、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドが用いられる。反応温度は室温ないし溶媒の沸点で行われ、好ましくは50ないし150℃、より好ましくは80ないし120℃で行われる。また本反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下でも好ましく行うことができる。好ましい反応条件においては、本反応は1ないし24時間で完結する。
【0012】
本発明におけるサンドマイヤー反応(上記反応スキームにおける工程2)は、式(IV)の化合物に、通常、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩と酸とを用いてジアゾニウム化合物とした後、該ジアゾニウム化合物とハロゲン化銅とを反応させることによって行うことができる。あるいは、式(IV)の化合物に、ハロゲン化銅の存在下、ハロゲン化メチレンの存在下あるいは非存在下、亜硝酸エステルを反応させて行われる。
式(IV)の化合物に、通常水溶媒中、酸の存在下亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩を反応させてジアゾニウム化合物とした後、通常単離することなく、得られたジアゾニウム化合物とハロゲン化銅とを反応させることによって行うことができる。使用する酸としては、ハロゲン化水素酸が式(IV)の化合物に対して通常1.5ないし3当量用いられ、好ましくは1.8ないし2.2当量用いられる。使用する亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウムまたは亜硝酸カリウムが、式(IV)の化合物に対して、通常0.8ないし1.2当量用いられ、好ましくは0.9ないし1.1当量用いられる。使用するハロゲン化銅としては、二臭化銅またはヨウ化第一銅が、1ないし10当量が用いられ、好ましくは2ないし5当量が用いられる。通常、上記ハロゲン化反応が臭素化の場合、酸として臭化水素酸が二臭化銅とともに用いられ、ヨウ素化の場合、酸としてヨウ化水素酸がヨウ化第一銅とともに用いられる。また反応は、通常、無溶媒または水もしくは式(IV)の化合物に対して1ないし10当量のハロゲン化水素を含む水溶媒中、ハロゲン化銅を攪拌しながらジアゾニウム化合物を加えて反応させる。ジアゾニウム化合物を得る反応は通常−10ないし0℃で行われ、ハロゲン化の反応は通常20ないし100℃で行われる。好ましい条件においては、本反応は通常0.5ないし12時間で完結する。
式(IV)の化合物に、ハロゲン化銅の存在下、ハロゲン化メチレンの存在下あるいは非存在下、亜硝酸エステルを反応させる場合には、ハロゲン化銅は一価または二価で、式(IV)の化合物に対して、0.5ないし10当量が用いられる。ハロゲン化メチレンは必要に応じて、式(IV)の化合物に対して、1ないし10当量が用いられる。使用するハロゲン化メチレンとしては、ジブロモメタンまたはジヨードメタンが好ましい。亜硝酸エステルは、式(IV)の化合物に対して、1ないし5当量が用いられる。好ましくはテトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等の有機溶媒中、上記ハロゲン化反応が臭素化の場合は、式(IV)の化合物に対して、2ないし10当量の二臭化銅の存在下、上記ハロゲン化反応がヨウ素化の場合は、式(IV)の化合物に対して、0.1ないし2当量のヨウ化第一銅および1ないし5当量のジヨードメタンの存在下、式(IV)の化合物に対して、1.5ないし3当量の亜硝酸イソアミルを反応させて行われる。反応温度は0ないし150℃、好ましくは50ないし100℃で行われる。好ましい条件においては、本反応は0.5ないし12時間で完結する。
【0013】
本発明における環形成反応(上記反応スキームにおける工程3)は、通常カルボン酸ヒドラジド化合物(V)と、シアナミド(NHCN)、重炭酸アミノグアニジンまたはS−エチルイソチオウレア臭化水素酸塩等のグアニジン化剤とを、酸の存在下反応させ、次いで塩基の存在下、反応させることにより行われる。使用するグアニジン化剤としてはシアナミドが好ましく用いられる。グアニジン化剤の使用量は、式(V)の化合物に対して、1ないし20当量、好ましくは2ないし10当量を用いる。使用する酸としてはp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸、塩酸、硫酸等の無機酸が用いられるが、好ましくはp−トルエンスルホン酸が用いられる。酸の使用量は、式(V)の化合物に対して、0.5ないし3当量、好ましくは1ないし2当量が用いられる。使用する塩基としてはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基、炭酸カリウム等の無機塩基が用いられるが、好ましくはトリエチルアミンが用いられる。塩基の使用量は、式(V)の化合物に対して、2ないし20当量、好ましくは5ないし15当量が用いられる。反応溶媒はエタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリルまたは水、あるいはこれらの混合溶媒が用いられるが、好ましくはエタノールが用いられる。反応温度は、30ないし120℃で行われるが、好ましくは50ないし100℃で行われる。好ましい条件においては、本反応は酸処理段階が1ないし24時間、塩基処理段階が5ないし120時間で完結する。
【0014】
本発明の製造法において用いる化合物(II)、(III)、(IV)および(V)は新規化合物である。化合物(III)は、後述する実施例4の1)および2)において記載の方法によって製造することができる。また、脱離基であるLが塩素原子である化合物(V)は、後述する実施例1の1)から3)において記載の方法によって製造することができる。脱離基であるLが他のハロゲン原子である化合物(V)は、実施例1の2)において用いられている1−クロロ−3−ヨードプロパンを、対応する1−ハロ−3−ヨードプロパンもしくは1,3−ジブロモプロパンに替えて同様の反応を行うことによって製造することができる。
【0015】
本発明において製造される式(I)の化合物、およびその製造に使用される中間体は塩であってもよく、通常の塩形成工程を加えることによって塩とすることができる。塩としては具体的には、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩酸塩もしくは臭化水素酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩もしくはクエン酸塩などの有機カルボン酸塩、またはメタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩もしくはカンファースルホン酸塩などの有機スルホン酸塩などが挙げられる。
【0016】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明にかかる製造方法は以下の具体例に制限されるものではない。
なお、下記実施例中で示される略号は以下のとおりである。
THF:テトラヒドロフラン
MTBE:メチル ターシャリーブチル エーテル
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
【実施例1】
【0017】
(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン酸ヒドラジドの合成
1)(4S)−4−フェニル−3−{[2−(トリフルオロメチル)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリン−2−オンの合成
【化22】

2−(トリフルオロメチル)フェニル酢酸(37.6g,184mmol)、(s)−(+)−4−フェニル−2−オキサゾリジノン(15g,92mmol)のトルエン(450mL)懸濁液にトリエチルアミン(51.5mL,368mmol)を室温で加えた。この懸濁液にピバロイルクロライド(22.7mL,184mmol)を室温で攪拌下に滴下した。得られた懸濁液を18時間攪拌下加熱還流した。室温に冷却後、2N塩酸(150mL)を加え、抽出した。有機層を飽和NaHCO水溶液(150mL)で2回、5%NaCl水溶液(150mL)、水(150mL)で順次洗い、減圧濃縮した。得られた固体に酢酸エチル(45mL)を加え、50℃に加温して完全に溶かした。この溶液に、ヘプタン(180mL)を加え、室温まで徐冷した。得られた懸濁液をさらに氷冷まで冷却した後、ろ過し、ヘプタン(150mL)で洗い、減圧乾燥して標記化合物の一番晶を27.7g(含量93%)得た。ろ液から二番晶を1.43g(含量87%)得た。合わせて表記化合物を白色結晶として収率84%で得た。
NMR (varian 400MHz)
H−NMR (CDCl)δ(ppm):4.34(dd,J=4.0,8.8Hz,1H),4.4(s,2H),4.76(dd,J=8.8,9.2Hz,1H),5.44(dd,J=3.6,8.8Hz,1H),7.21(d,J=7.6Hz,1H),7.26−7.40(m,6H),7.46(dd,J=7.6,7.6Hz,1H),7.62(d,J=8.0Hz,1H)
【0018】
2)(4S)−3−{(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタノイル}−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−2−オンの合成
【化23】

(4S)−4−フェニル−3−{[2−(トリフルオロメチル)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリン−2−オン(27.5g,78.7mmol)のTHF(275mL)溶液にLHMDS(リチウム ヘキサメチルジシラジド,1M THF溶液,94.3mL,94.3mmol)を−15℃で滴下した。ここに1−クロロ−3−ヨードプロパン(33mL,315mmol)とDMPU(1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン)(94.8mL,787mmol)を−15℃で滴下した。−15℃で23時間、0℃で15時間攪拌した後、5%NaCl水溶液(275mL)およびMTBE(275mL)で添加した。有機層を5%NaCl水溶液(275mL)で洗い、減圧濃縮した。残渣をMTBE(140mL)とヘプタン(140mL)の混液と水(275mL)で抽出し、有機層を減圧濃縮した後、MTBE(55mL)で2回共沸した。残渣にエタノール(83mL)を加え、50℃に加温して均一溶液であることを確認後、少量の種結晶を加えた。室温1時間後ろ過し、冷エタノール(15mL)で結晶を洗い、減圧乾燥して粗結晶を17.5g(content92%,94.6%de)、収率51.3%で得た。
得られた粗結晶16g(34.6mmol)にエタノール(48mL)を加え、50℃に加温して完全に溶かした。室温まで徐冷し、生じた結晶をろ過、冷エタノール(15mL)で洗い、減圧乾燥して標記化合物を14.9g(含量96.3%,100%de)、収率97.8%で得た。
NMR(varian 400MHz)
H−NMR(CDCL3)δ(ppm):1.64−1.72(m,1H),1.74−1.84(m,1H),1.98−2.09(m,1H),2.12−2.23(m,1H),3.44−3.53(m,2H),4.31(dd,J=3.2,8.8Hz,1H),4.68(dd,J=8.8,8.8Hz,1H),5.36(dd,J=3.2,8.8Hz,1H),5.54(dd,J=4.8,9.2Hz,1H),7.28−7.34(m,2H),7.35−7.46(m,4H),7.52−7.59(m,1H),7.60−7.68(m,2H).
【0019】
3)(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン酸ヒドラジドの合成
【化24】

(4S)−3−{(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタノイル}−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−2−オン20.0g、(47mmol)をMTBE(200mL)に溶かしてからEtOH(100mL)を加えた。氷冷下、ヒドラジン1水和物(6.84mL、141mmol)を加え、2時間攪拌後、さらにヒドラジン1水和物(4.56mL、94mmol)を氷冷下で加えた。30分攪拌後、5%NaCl水溶液(200mL)で希釈し、分層した。有機層を水(200mL)で洗い、40℃以下で減圧濃縮した。残渣にMTBEとヘプタン1:3の混合液(100mL)を加え室温で攪拌すると固体が析出してくる。ここに、さらにヘプタン(50mL)を加え、氷冷後ろ過した。結晶を冷却したMTBEとヘプタン1:3の混合液(100mL)で洗った。さらにMTBEとヘプタン1:1の混合液(100mL)で洗い、減圧乾燥して標記化合物を6.4g(含量100%、100%ee)、収率41.3%で得た。
NMR(varian 400MHz)
H−NMR(CDCL3)δ(ppm):1.54−1.68(m、1H),1.75−1.89(m,1H),1.92−2.04(m,1H),2.20−2.36(m,1H),3.45−3.59(m,2H),3.72(t,J=7.6Hz,1H),6.82(brs,1H),7.38(t,J=7.6Hz,1H),7.56(t,J=7.6Hz,1H),7.66(d,J=8.0Hz,1H),7.52(d,J=7.6Hz,1H).
【実施例2】
【0020】
(8S)−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン−2−アミンの合成
【化25】

(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン酸ヒドラジド(300mg)のエタノール(5mL)溶液に室温でシアナミド(257mg)とp−トルエンスルホン酸1水和物(292mg)加え、その反応液を80度に昇温し4時間攪拌した。その反応液を室温に戻した後、トリエチルアミン(1.42mL)を加え、再び80℃に昇温し60時間攪拌した。反応液を室温まで戻した後、減圧下濃縮した。得られた残渣に水と酢酸エチルを加え、有機層を分配した。得られた有機層を水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、塩を濾去後、減圧下濃縮し、残渣をNH−シリカゲル(クロマトレックス(登録商標)、富士シリシア化学株式会社製:NH修飾)カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘプタン:酢酸エチル系)続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル:メタノール系)で精製することにより、標題化合物22を144.2mg(>97%ee)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.65−1.91(m,1H),2.03−2.14(m,1H),2.15−2.24(m,1H),2.34−2.41(m,1H),4.06(s,2H),4.08−4.13(m,2H),4.51(dd,J=9.2,6.4Hz,1H),7.08(d,J=8.0Hz,1H),7.36(dd,J=8.0,7.6Hz,1H),7.48(dd,J=7.6,7.2Hz,1H),7.69(d,J=7.2Hz,1H).
【実施例3】
【0021】
(8S)−2−ブロモ−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンの合成
【化26】

(8S)−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン−2−アミン(130mg,>97%ee)と2臭化銅(515mg)のアセトニトリル(5mL)懸濁液に亜硝酸イソアミル(0.186mL)を室温で滴下した。反応液を70度で1.5時間攪拌した後、室温に冷却した。その反応液を減圧下濃縮し、酢酸エチルを加えた。得られた懸濁液をセライトろ過し、ろ過液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘプタン:酢酸エチル系)で精製することにより、標題化合物23を103.4mg(>97%ee)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.87−1.97(m,1H),2.09−2.20(m,1H),2.21−2.30(m,1H),2.39−2.50(m,1H),4.21−4.38(m,2H),4.61(dd,J=9.2,6.0Hz,1H),6.99(d,J=8.0Hz,1H),7.38(dd,J=8.0,7.2Hz,1H),7.49(dd,J=8.0,7.2Hz,1H),7.69(d,J=8.0Hz,1H)
【実施例4】
【0022】
2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−6−ビニルピリジンの合成
1)2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−6−[(トリメチルシリル)エチニル]ピリジンの合成
【化27】

6−ブロモ−2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン(200mg)、トリメチルシリルアセチレン(211μl)、トリエチルアミン(312μl)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリド(52.4mg)、ヨウ化銅(28.4mg)、DMF(7.5ml)の混合物を室温で30分撹拌した。酢酸エチルでの希釈後、水により分配し有機相を飽和食塩水により洗浄した。硫酸マグネシウムでの乾燥、塩を濾去後、減圧濃縮することにより得た濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH−シリカゲル、移動相 酢酸エチル:ヘプタン=0:1〜1:1)により精製し、標記化合物(48mg)を得た。
ESI−MS;m/z 286[M+H].
H−NMR(CDCl)δ(ppm):0.19(s,3H),0.20(s,3H),2.29(s,3H),4.04(s,3H),6.97(s,1H),7.16(d,J=8.0Hz,1H),7.46(d,J=8.0Hz,1H),7.79(s,1H)
【0023】
2)6−エチニル−2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジンの合成
【化28】

2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−6−[(トリメチルシリル)エチニル]ピリジン(209mg)をメタノール(3.5ml)に溶解し、炭酸カリウム(304mg)を加え室温で30分撹拌した。酢酸エチルでの希釈後、水により分配し有機相を飽和食塩水により洗浄した。硫酸マグネシウムでの乾燥、塩を濾去後、減圧濃縮することにより標記化合物を(142mg)を得た。
ESI−MS;m/z 214[M+H].
H−NMR(CDCl)δ(ppm):2.30(s,3H),3.19(s,3H),4.05(s,3H),6.97(s,1H),7.20(d,J=8.0Hz,1H),7.50(d,J=8.0Hz,1H),7.80(s,1H)
【0024】
3)2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−6−ビニルピリジンの合成
【化29】

6−エチニル−2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン(142mg)を酢酸エチル(6.6ml)に溶解し、リンドラー(Lindlar)触媒(7.1mg)を加え、水素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。NH−シリカゲル(移動相、酢酸エチル:ヘプタン=1:1)でのろ過、減圧濃縮により表題化合物26(137mg)を得た。
ESI−MS;m/z 216[M+H].
H−NMR(CDCl)δ(ppm):2.30(s,3H),4.04(s,3H),5.48(dd,J=10.5,1.6Hz,1H),6.31(dd,J=17.2,1.6Hz,1H),6.71(dd,J=17.2,10.5Hz,1H),6.92(d,J=7.9Hz,1H),6.96(s,1H),7.48(d,J=7.9Hz,1H),7.76(s,1H)
【実施例5】
【0025】
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンの合成
【化30】

2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−6−ビニルピリジン(50mg)と(8S)−2−ブロモ−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(80.3mg;97%ee)とトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(21.2mg)とトリ−オルト−トリルホスフィン(14.1mg)のDMF(2.5mL)溶液に窒素雰囲気下室温でジイソプロピルエチルアミン(0.121mL)を加えた。その反応液を110度で4時間攪拌した後、室温まで放冷した。反応液に酢酸エチルおよび水を加え、有機層を分配した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、塩を濾去後、減圧下濃縮し、残渣をNH−シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘプタン:酢酸エチル系)で精製することにより、標題化合物を45.8mg(>95%ee)を得た。
ESI−MS;m/z 481[M+H].
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.90−2.01(m,1H),2.12−2.23(m,1H),2.23−2.30(m,1H),2.29(s,3H),2.43−2.53(m,1H),4.03(s,3H),4.32−4.37(m,2H),4.61(dd,J=8.4,5.6Hz,1H),6.93(d,J=8.0Hz,1H),6.95(s,1H),7.02(d,J=7.6Hz,1H),7.39(dd,J=8.4,7.6Hz,1H),7.43(d,J=15.6Hz,1H),7.46(d,J=8.0Hz,1H),7.49(dd,J=8.4,8.0Hz,1H),7.64(d,J=15.6Hz,1H),7.73(d,J=8.0Hz,1H),7.77(s,1H).
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、Aβ産生抑制剤として有用である(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造方法を提供する。またこの製造のために有用な新規合成中間体を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)
【化1】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する]で表される化合物またはその塩と、下記式(III)
【化2】

で表される化合物またはその塩とをカップリング反応させて下記式(I)
【化3】

で表される化合物を製造する工程を含む、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造法。
【請求項2】
下記式(IV)
【化4】

で表される化合物またはその塩をサンドマイヤー反応に付すことにより下記式(II)
【化5】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する]で表される化合物またはその塩を製造し、さらに式(II)で表される化合物またはその塩と、下記式(III)
【化6】

で表される化合物またはその塩とをカップリング反応させて下記式(I)
【化7】

で表される化合物を製造する工程を含む、請求項1記載の製造法。
【請求項3】
下記式(V)
【化8】

[式中、Lは脱離基を意味する]で表される化合物またはその塩と、グアニジン化剤とを環形成反応に付して、下記式(IV)
【化9】

で表される化合物またはその塩を製造し、さらに式(IV)で表される化合物またはその塩をサンドマイヤー反応に付すことにより下記式(II)
【化10】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する]で表される化合物またはその塩を製造し、さらに式(II)で表される化合物またはその塩と、下記式(III)
【化11】

で表される化合物またはその塩とをカップリング反応させて下記式(I)
【化12】

で表される化合物を製造する工程を含む、請求項1記載の製造法。
【請求項4】
Xが臭素原子またはヨウ素原子であり、Lが塩素原子または臭素原子である、請求項1ないし3記載の製造法。
【請求項5】
Xが臭素原子であり、Lが塩素原子である、請求項1ないし3記載の製造法。
【請求項6】
下記式(II)
【化13】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する]で表される化合物またはその塩。
【請求項7】
Xが臭素原子である、請求項6記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
下記式(III)
【化14】

で表される2−メトキシ−3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−6−ビニルピリジンまたはその塩。
【請求項9】
下記式(IV)
【化15】

で表される(8S)−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン−2−アミンまたはその塩。
【請求項10】
下記式(V)
【化16】

[式中、Lは脱離基を意味する]で表される化合物またはその塩。
【請求項11】
Lが塩素原子である、請求項10記載の化合物またはその塩。

【公開番号】特開2012−121809(P2012−121809A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43266(P2009−43266)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】