説明

多環状ラクトン化合物およびその使用方法

本発明は、インプラントまたは一時デバイスと、マイオリマス化合物、またはその誘導体の少なくとも1つの源とを含む、体内使用のためのデバイスを提供する。本発明は、治療上有効量のマイオリマス化合物、またはその誘導体を局所投与することによって、細胞増殖を阻害するための方法も提供する。さらに、本発明には、治療上有効量のマイオリマス化合物、またはその誘導体を投与することによって、眼の疾患または疾病を治療する方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2008年10月10日に出願された米国仮特許出願第61/104,571号、2008年10月3日に出願された第61/102,701号に対する優先権を主張し、すべての目的のために、それら全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、治療用途で使用するための多環状ラクトン、マイオリマス(myolimus)、およびその誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ラパマイシン(シロリムス)は、31員の天然多環状ラクトン[C51H79N1O13、MWt=914.2]であり、ストレプトミセスヒグロスコピカスによって生成され、1970年代に発見された(特許文献1、特許文献2)。ラパマイシン(以下に示される構造)は、1999年、腎臓移植の拒絶反応の予防のために、食品医薬品局(FDA)により承認された。
【0004】
【化1】

ラパマイシンは、タクロリムスに相似する(同一の細胞内結合タンパク質またはFKBP−12として知られているイムノフィリンに結合する)が、その作用機序が異なる。一方タクロリムスおよびシクロスポリンは、リンホカイン(例えば、IL2)遺伝子転写を遮断することによってT細胞活性を阻害するが、シロリムスは、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)に結合することによって、T細胞活性およびTリンホサイトの増殖を阻害する。ラパマイシンは、免疫系を抑制することにおいて、シクロスポリンまたはタクロリムスと相乗して作用することができる。
【0005】
ラパマイシンは、全身性エリテマトーデス[特許文献3]、肺炎症[特許文献4]、インスリン依存性糖尿病[特許文献5]、乾癬等の皮膚疾患[特許文献6]、腹部疾患[特許文献7]、平滑筋細胞増殖および血管損傷後の内膜肥厚[特許文献8および特許文献9]、成人T細胞白血病/リンパ腫[特許文献10]、眼性炎症[特許文献11]、悪性癌腫[特許文献12]、心臓炎症疾患[特許文献13]、貧血[特許文献14]および神経突起伸長の増加[非特許文献1]を予防または治療する際にも有用である。
【0006】
ラパマイシンを使用して、様々な疾患状態を治療することができるが、医薬品としての化合物の利用性は、その極めて低くいかつ可変のバイオアベイラビリティ、ならびにその高い免疫抑制能力および潜在的な高い毒性によって制限されている。また、ラパマイシンは、極めてわずかしか水に溶解しない。これらの問題を克服するために、当該化合物のプロドラッグおよび類似体が合成された。ラパマイシン構造のラパマイシン位置31および42(以前の位置28および40)を誘導体化することによって、水溶性プロドラッグを調製し、グリシン酸、プロピオン酸、およびピロリジノブチレートプロドラッグを形成することが説明されている(特許文献15)。当該技術分野において説明されるラパマイシンの類似体の一部には、モノアシルおよびジアシル類似体(特許文献16)、アセタル類似体(特許文献17)、シリルエーテル(特許文献18)、ヒドロキシエステル(特許文献19)、ならびにアルキル、アリール、アルケニル、およびアルキニル類似体(特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23)が挙げられる。
【0007】
ラパマイシンのプロドラッグおよび類似体は、化学合成によって合成され、所定の位置を保護および脱保護するために追加の合成ステップが必要とされる。類似体は、生物学的に合成することもでき、ストレプトミセス株を遺伝子工学的に修飾して、これらのラパマイシンの類似体を生成する。これらの類似体は、タンパク質結合または他の細胞相互作用に必要な位置を維持する必要があるが、その活性を保存するために立体障害を生成する必要はない。これらの類似体の安全性は、一連の前臨床および臨床実験によって、広範に試験する必要がある。
【0008】
本発明は、部位特異的適用において使用するための少なくとも一部の免疫抑制、抗増殖、抗菌および抗腫瘍特性を有する、多環状ラクトンの新規使用を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,929,992号明細書
【特許文献2】米国特許第3,993,749号明細書
【特許文献3】米国特許第5,078,999号明細書
【特許文献4】米国特許第5,080,899号明細書
【特許文献5】米国特許第5,321,009号明細書
【特許文献6】米国特許第5,286,730号明細書
【特許文献7】米国特許第5,286,731号明細書
【特許文献8】米国特許第5,288,711号明細書
【特許文献9】米国特許第5,516,781号明細書
【特許文献10】欧州特許出願第525,960号明細書
【特許文献11】米国特許第5,387,589号明細書
【特許文献12】米国特許第5,206,018号明細書
【特許文献13】米国特許第5,496,832号明細書
【特許文献14】米国特許第5,561,138号明細書
【特許文献15】米国特許第4,650,803号明細書
【特許文献16】米国特許第4,316,885号明細書
【特許文献17】米国特許第5,151,413号明細書
【特許文献18】米国特許第5,120,842号明細書
【特許文献19】米国特許第5,362,718号明細書
【特許文献20】米国特許第5,665,772号明細書
【特許文献21】米国特許第5,258,389号明細書
【特許文献22】米国特許第6,384,046号明細書
【特許文献23】国際公開第97/35575号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Parker,E.M.et al,Neuropharmacology 39,1913−1919,2000
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態において、本発明は、体内使用のためのデバイスを提供し、本デバイスは、インプラントまたは一時デバイスを有し、少なくとも1つの源は、化合物を含み、その化合物は、マイオリマスまたはその誘導体であり、本デバイス上のその化合物の量は、約10μg/cm〜約400μg/cmである。
【0012】
第2の実施形態において、本発明は、治療上有効量の化合物マイオリマスまたはその誘導体を被験体に局所投与し、それによって細胞増殖を阻害することによって、阻害を必要とする被験体の細胞増殖を阻害する方法を提供する。
【0013】
第3の実施形態において、本発明は、治療上有効量の化合物マイオリマスまたはその誘導体を被験体に局所投与し、それによって眼疾患または疾病を治療することによって、治療を必要とする被験体の眼疾患または疾病を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】8時間の曝露後の異なる濃度における、ラパマイシンと比較したマイオリマスの能力を示す。
【図2】耐久性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントのステントベースおよび組織ベースの動態を示す。
【図3】生体吸収性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントのステントベースおよび組織ベースの動態を示す。
【図4】MMP−9の生成を増加させたラパマイシンと比較した、MMP−9の生成を阻害するマイオリマスを示す。
【図5】MCP−1の生成に影響を及ぼさなかったラパマイシンと比較した、抗炎症性サイトカインMCP−1の生成を阻害するマイオリマスを示す。
【図6】拡張型構造を有するステント構成の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
I.定義
本明細書で使用される「酸」という用語は、任意の化学化合物を意味し、水に溶解されると、7.0未満のpHを有する溶液をもたらす。酸は、一般に、水素イオン(H+)(Bronsted−Lowry)を提供する化合物として、または電子対アクセプタ(Lewis酸)として説明される。本発明に有用な酸には、HC1、HSO、HNO、および酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、他の酸が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0016】
本明細書で使用される「投与する」とは、全身および局所投与またはそれらの組み合わせ、例えば、経口投与、坐薬としての投与、局所接触、非経口、血管内、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、鼻腔内、肺、粘膜、経皮、皮下投与、髄腔内、眼内、硝子体内投与、カテーテル、バルーン、多孔バルーン等の一時デバイスを通じた送達、ポリマーインプラント、薬物溶出ステント、ラップ、浸透圧ポンプ等のポンプ等を通じた被験体への送達を有する。当業者であれば、本発明の化合物を投与する他のモードおよび方法が、本発明において有用であることを理解するであろう。
【0017】
本明細書に使用される「アルコキシ」という用語は、酸素原子を包含するアルキルを意味し、例えば、メトキシ、エトキシ等である。「ハロ置換アルコキシ」は、水素原子の一部またはすべてがハロゲン原子と置換されるアルコキシの定義と同様である。例えば、ハロ置換アルコキシは、トリフルロメトキシ等を含む。当業者であれば、他のアルコキシ基が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0018】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、表示される炭素原子数を有する、直鎖または分岐、飽和、脂肪族ラジカルを意味する。例えば、C−Cアルキルには、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、他のアルキル基が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0019】
本明細書で使用される「ヒドロキシアルキル」という用語は、上で定義されるようなアルキルを意味し、水素原子の少なくとも1つは、ヒドロキシ基と置換される。例えば、ヒドロキシアルキルには、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−エチル(1−または2−)、ヒドロキシ−プロピル(1−、2−、または3−)、ヒドロキシ−ブチル(1−、2−、3−または4−)、ヒドロキシ−ペンチル(1−、2−、3−、4−、または5−)、ヒドロキシ−ヘキシル(1−、2−、3−、4−、5−、または6−)、1,2−ジヒドロキシエチル等が挙げられる。当業者であれば、他のヒドロキシアルキル基が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0020】
本明細書で使用される「体管腔」という用語は、動脈、静脈、毛細血管、または臓器の表面または内壁または空洞を意味する。
【0021】
本明細書で使用される「接触させる」という用語は、少なくとも2つの個別の種が、反応できるように、接触させるプロセスを意味する。しかしながら、得られる反応性生物は、添加試薬間の反応、または反応混合物において生成され得る、添加試薬の1つまたは複数の中間体から直接生成できることを理解されたい。
【0022】
本明細書で使用される「水和する」という用語は、少なくとも1つの水分子に複合される化合物を意味する。本発明の化合物は、1〜100個の水分子と複合体を形成することができる。
【0023】
本明細書で使用される「インプラント」という用語は、疾患を治療するために体内に挿入される非分解性または分解性の医療デバイスを意味する。インプラントには、薬物溶出デバイスが挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
本明細書で使用される「阻害」、「阻害する」および「阻害剤」という用語は、特定の活性または機能を防止、減少、排除、または軽減する化合物、または防止、減少、排除、または軽減する方法を意味する。
【0025】
本明細書で使用される「体内」という用語は、哺乳類の体を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「異性体」という用語は、非対称の炭素原子(光学中心)または二重結合を有する本発明の化合物、ラセミ化合物、ジアステレオマー、エナンチオマー、幾何異性体、構造異性体を意味し、個別の異性体は、すべて本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0027】
本明細書で使用される「臓器」という用語は、哺乳類の任意の臓器、例えば、心臓、肺、脳、眼、胃、脾臓、骨、膵臓、腎臓、肝臓、象徴、子宮、結腸、卵巣、血液、皮膚、筋肉、組織、前立腺、血管(動脈、静脈、および毛細血管を含む)、脊髄、リンパ系、心膜、神経系、蝸牛、副鼻腔、乳腺および膀胱を意味するが、これらに限定されない。当業者であれば、他の臓器が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0028】
本明細書で使用される「過酸」という用語は、酸性−OH基が−OOH基と置換された酸を意味する。過酸は、式R−C(O)−OOHのペルオキシカルボン酸であり得、式中、R基は、H、アルキル、アルキレン、またはアリール等の基であり得る。過酸には、ペルオキシ酢酸およびメタクロロペルオキシ安息香酸(MCPBA)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、他の過酸が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0029】
本明細書で使用される「ペルオキシド」という用語は、酸素−酸素単一結合を含有する化合物を意味する。ペルオキシドの実施例には、過酸化水素が挙げられるが、これに限定されない。当業者であれば、他のペルオキシド(過酸物)が本発明において有用であることを理解されたい。
【0030】
本明細書で使用される「医薬的に許容される賦形剤」という用語は、被験体への活性成分の投与を支援する物質を意味する。本発明において有用な医薬賦形剤には、ポリマー、溶媒、抗酸化薬、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、安定剤、着色剤、金属、セラミクス、および半金属が挙げられるが、これらに限定されない。医薬的に許容される賦形剤の追加の論考については以下を参照されたい。当業者であれば、他の医薬賦形剤が本発明において有用であることを認識するであろう。
【0031】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、化学結合によって接続される、反復構造単位、またはモノマーで構成される分子を意味する。本発明において有用なポリマーは、以下に説明される。当業者であれば、他のポリマーが本発明において有用であることを理解するであろう。
【0032】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、プロドラッグが哺乳類の被験体に投与される場合、本発明の方法の活性成分を放出できる化合物を意味する。活性成分の放出は、生体内で起こる。プロドラッグは、当業者に知られている手技によって調製することができる。これらの手技は、一般に、所定の化合物における適切な官能基を修飾する。しかしながら、これらの修飾官能基は、ルーチン処理または生体内で元の官能基を再生成する。本発明の活性成分のプロドラッグは、ヒドロキシ基、アミジノ基、グアニジノ基、アミノ基、カルボキシル基または類似基が修飾される、活性薬剤を含む。
【0033】
本明細書で使用される「塩」という用語は、本発明の方法において使用される化合物の酸性または塩基性の塩を意味する。医薬的に許容される塩の例示的実施例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸等)塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸等)塩、第4級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等)塩である。適切な医薬的に許容される塩に関する追加情報は、Remington′s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985において見出すことができ、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0034】
本発明の酸性化合物の医薬的に許容される塩は、塩基とともに形成される塩、つまり、アルカリ等のカチオン性塩、およびナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、ならびにアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリス−(ヒドロキシメチル)−メチル−アンモニウム塩等のアンモニウム塩である。
【0035】
もしピリジル等の塩基性基が、構造の一部を構成するならば、同様に酸付加塩、例えば、鉱酸、有機カルボン酸および有機硫酸、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸も使用可能である。
【0036】
本化合物(本発明の化合物)の中性形態は、塩を塩基または酸と接触させ、親化合物を従来の様式で分離することによって再生成することができる。本化合物の親形態は、極性溶媒における溶解性等の所定の物理特性において、様々な塩形態とは異なるが、それ以外は、塩は、本発明の目的において、本化合物の親形態と等しい。
【0037】
本明細書で使用される「源」という用語は、本発明の化合物、治療薬剤、または医薬的に許容される賦形剤の少なくとも1つを含む組成物を意味する。本発明のデバイスは、少なくとも1つの源を有することができる。源は、本発明の化合物を含み得るが、別の源は、治療薬剤を含むことができる。源は、化合物および治療薬剤を有してもよく、同一または異なる症例を治療するために使用することができる。本発明のデバイスは、デバイスの少なくとも一部分上に少なくとも1つの源を有することができる。デバイス上の源は、デバイスの少なくとも一部分を被覆し、ポリマー等のコーティング内に含有され、貯蔵庫内に収容され、律速バリア内に含まれ、マイクロカプセル内または上記の1つもしくは複数に含有される。
【0038】
本明細書で使用される「被験体」という用語は、以下の動物に限定されないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等を含む、哺乳類等の動物を意味する。所定の実施形態において、被験体はヒトである。
【0039】
本明細書で使用される「治療薬剤」という用語は、治療薬剤が投与される患者に対して治療効果を有する、任意の薬剤、化合物、または生物学的分子を意味する。
【0040】
本明細書で使用される「治療上有効量または用量」あるいは「治療上十分な量または用量」もしくは「有効または十分な量または用量」という用語は、治療効果のためにそれが投与される治療効果をもたらす用量を意味する。正確な用量は、治療の目的に依存し、知られている手技を使用して、当業者によって解明可能である。
【0041】
本明細書で使用される「血管プロテーゼ」という用語は、哺乳類の循環系のためのインプラントを意味する。
【0042】
II.本発明の化合物
本発明は、以下に記載され、国際公開第03/057218号(その全体が本明細書に組み込まれる)において説明されるような多環状ラクトン、マイオリマス(32−デオキソラパマイシンおよびSAR943としても知られる)およびマイオリマスの誘導体を含む。多環状ラクトン、それらの塩、プロドラッグ、互変異性体、類似体、誘導体、代謝物、および異性体は、本明細書において、集約的に「多環状ラクトン」として示される。
【0043】
本発明の化合物は、以下の構造によって説明されるようなマイオリマスおよびその誘導体を含み、
【0044】
【化2】

式中、四角は、ジメチル化またはアルキルヒドロキシとの置換を経る可能性のある位置を表す。丸は、ヒドロキシ基との置換、ジメチル化、およびヒドロキシル化を経て、ヒドロキシメチル基を調製することができる位置を表す。三角は、エポキシ化を経ることができる位置を表す。曲線は、N酸化の位置を表す。点線は、リングの開放位置を表す。R10は、H、−OH、−OP(O)Me
【0045】
【化3】

、−O−(CH−OHおよび−O−(CH−O−(CH−CHから成る群から選択されるメンバーであり、式中、下付き文字nおよびmは、それぞれ独立して、2〜8であり、下付き文字oは、1〜6である。
【0046】
一部の実施形態において、R10は、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキレン、テトラゾリル、ホスフィネート、ホスフェート、エーテル、およびジメチロイルプロピオン酸等のプロピオン酸誘導体であり得る。
【0047】
一部の他の実施形態において、本発明の化合物は、以下の構造を有する。
【0048】
【化4】

本発明は、塩の組成物、水和物、異性体、互変異性体、代謝物、N−オキシド、および本発明の化合物のプロドラッグも網羅する。本発明は、異なる多形相を有する化合物を網羅する。
【0049】
多環状ラクトンに対して異なる付番のスキームが提案されている。混乱を避けるため、特定の多環状ラクトンが本明細書において命名される場合、その名前は、上記化学式の付番スキームを使用する多環状ラクトンを参照して付与される。本発明は、同一の官能基が、化学構造内の同一の位置に存在する場合、異なる付番スキームに起因して、異なる名前を有するすべての多環状ラクトンも網羅する。例えば、39−O−デメチル多環状ラクトンは、41−O−デメチル多環状ラクトンと同一の化合物であり、16−O−デメチル多環状ラクトンは、7−O−デメチル多環状ラクトンと同一の化合物である。
【0050】
本発明の化合物は、多様な方法によって調製することができる。一部の実施形態において、本発明の化合物は、有機体株を遺伝子工学的に修飾して本発明の化合物を生成することによるか、または他の手段によって、生物学的に合成される。
【0051】
別の実施形態において、本発明の化合物は、化学合成を使用して調製される。
【0052】
本発明の化合物は、任意で重水素化される。
【0053】
III.本発明の化合物の送達
本発明の化合物は、任意の適切な様式で投与することができる。一部の実施形態において、これらの化合物は、筋肉内、腹腔内、皮下、肺、粘膜、経皮、血管内、眼内、または眼を通して硝子体内等で投与される。他の実施形態において、これらの化合物は、カテーテルまたはインプラント等の一時または永久薬物送達手段、あるいは全身および部位特異的手段の組み合わせを通じて、部位特異的に投与される。実施例には、カテーテル、ステント、ラップ、ポンプ、シャント、または他の一時あるいは永久薬物送達手段が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
A.デバイス
一部の実施形態において、本発明は、体内使用のためのデバイスを提供し、本デバイスは、インプラントまたは一時デバイス、および化合物を含む少なくとも1つの源を含み、その化合物は、マイオリマスまたはその誘導体であり、デバイス上の化合物の量は、約10μg/cm〜約400μg/cmである。
【0055】
他の実施形態において、本発明は、体内で体管腔または臓器に化合物を放出して、細胞増殖を阻害するように構成されるデバイスを提供する。さらなる実施形態において、本デバイスは、体内で体管腔または臓器に化合物を放出して、平滑筋細胞の増殖または炎症を阻害するように構成される。
【0056】
本発明のデバイスは、体管腔、体管腔の外側、体管腔に隣接して、または体管腔の近位または遠位、ならびに臓器、血管、導管、筋肉、神経、組織塊または骨に送達することができる。
【0057】
本発明の別の実施形態において、薬物送達手段は、グラフトインプラント、血管インプラント、非血管インプラント、インプラント可能な管腔プロテーゼ、創傷閉合インプラント、薬物送達インプラント、縫合、生物学的送達インプラント、尿管インプラント、子宮内インプラント、臓器インプラント、眼性インプラント、骨板を含む骨インプラント、骨ネジ、歯科インプラント、脊椎ディスク、ラップ、例えば血管ラップ等を含むインプラントのようなデバイスである。
【0058】
デバイスが眼疾患または疾病の治療のために構成される場合、本発明のインプラントは、介入手順によって眼内または硝子体内に移植することができる。そのようなインプラントは、非生分解性、生分解性、除去可能、または永久的であり得る。他の実施形態において、インプラントは、涙管等の管に配置することができる。さらに他の実施形態において、インプラントは、眼球に隣接して、または眼内、硝子体に隣接して、または硝子体内に配置することができる。当業者であれば、他の位置が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0059】
インプラントは、通常、以下、例えば、増殖性疾患、再狭窄、新血管疾患、炎症、線維症、創傷治癒、癌、新血管形成、動脈瘤、糖尿病、腹部大動脈瘤、高カルシウム血症、眼疾患等の疾患状態の予防または治療のための薬剤または生物製剤の支持、含有、ともに保持、固定、プラグ、開放、閉合、維持、送達のうちの1つもしくは複数を可能にする。
【0060】
本発明のインプラントは、金属、金属合金、セラミック、半金、ナノ合成物またはそれらの組み合わせで形成することができる。例えば、インプラントは、タンタラム、鉄、マグネシウム、モリブデン等の金属、316Lステンレス鋼等の分解性または非分解性金属合金から、炭素鋼、マグネシウム合金、NI―Ti、Co―Cr、例えばL605、MP35等、分解性または非分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミド、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマー(PHEMA)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリアミノ酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリペプチド、多糖、またはコポリマー等、あるいはポリマーの混合物、金属と金属の組み合わせまたは金属合金、例えば、ステンレス鋼とタンタラムの層の組み合わせから形成されるインプラント、ナノ炭素繊維またはナノ炭素小管等のナノ合成物から形成することができる。
【0061】
本発明のインプラントは、コイル、ディスク、管、棒、蛇管、シート、鎖、ネジ、足場、微小球等の様々な形状および形態を取ることができる。
【0062】
別の実施形態において、本発明は、血管または他の体内経路、例えば、尿管、尿道、結腸、気管、気管支等の管腔に移植される、インプラントが人工血管または他の管腔プロテーゼを備える、デバイスを提供する。本発明のデバイスは、体管腔の外側、または隣接して移植することもできる。そのような人工血管および他の管腔プロテーゼは、通常、拡張型管または他の空洞構造を備え、足場と称されることも多く、足場は、血管の管腔または他の標的体管腔内でin situで拡張され、管腔の開存性の維持を助ける。特定の実施形態において、血管プロテーゼは、ステントまたはグラフトを含み、それぞれ通常、足場または他の開放格子構造を含む。例えば、ステントは、裸の足場または被覆された足場を備えてもよく、一方、グラフトは、被覆された足場を含み得、カバーは、線維または膜であり、足場の開放部分を通じて、血液経路または組織貫通を阻害または防止する。例示的な実施形態において、血管プロテーゼは、患者の血管内の標的位置への管腔内送達およびその位置での展開のためのステント、通常は血管ステントを含む。
【0063】
別の実施形態において、本発明は、インプラントが管腔プロテーゼであるデバイスを提供する。一部の実施形態において、管腔プロテーゼは、拡張型足場を備える。他の実施形態において、血管プロテーゼは、ステントまたは移植片を備える。さらに他の実施形態において、管腔プロテーゼは、血管ステントである。
【0064】
別の実施形態において、本発明の化合物は、インプラントの少なくとも一部を被覆する。例えば、本発明の化合物は、インプラント内に統合することができ、コーティング等の中に含有され得る。
【0065】
一部の実施形態において、本発明は、血管プロテーゼを備えるデバイスを提供し、この血管プロテーゼは、管腔接面および組織接面を有し、化合物は、管腔接面および組織接面のうちの少なくとも1つと結合する。
【0066】
さらなる実施形態において、本発明の化合物は、すべてのインプラント表面上に塗布される。別の実施形態において、本発明の化合物は、管腔外面または管腔表面にのみ塗布される。さらに別の実施形態において、本発明の化合物は、インプラント上の高応力領域または低応力領域にのみ塗布される。
【0067】
別の実施形態において、本発明の化合物は、インプラントに隣接する1つまたは複数の浸食性または非浸食性フィラメント内に含有される。
【0068】
本発明の化合物を運ぶためのステント構成の実施例は、図6において収縮状態で示される。ステント本体は、複数のリング110で形成される。これらのリングは、ジグザグ、鋸歯、正弦波等の一般に拡張可能な波状構成のクラウン120および支柱130で形成される。本体は、リンクまたはコネクタ140によって結合される。コネクタは、任意の長さまたは形状であり得るか、あるいはクラウンが相互に直接取り付けられる場合は不要であり得ることを理解されたい。ステントは、通常収縮状態で、0.25〜4mm、またはより好ましくは0.7〜1.5mmの間の直径、および5〜600mmの長さを有する。その拡張状態において、ステント直径は、通常、その収縮状態にあるステントの直径の少なくとも2倍から最大10倍以上である。例えば、0.7〜1.5の収縮直径を有するステントは、2〜10mm以上まで放射状に拡張し得る。
【0069】
ラパマイシン(Cypher(登録商標))等の強力な大環状ラクトン化合物を有する薬剤溶出ステントは、約4〜12ヶ月の血管造影フォローアップにおいて、約0.01mm〜0.2mmの範囲の遅発性内腔喪失をもたらした。同一期間の地金ステントの遅発性内腔喪失は、約0.70mm〜1.2mmの範囲であった。低い遅発性内腔喪失は、通常、狭窄パーセントを減少させた。しかしながら、薬物溶出ステントを有する有意に低い遅発性内腔喪失は、地金ステントと比較して、一部の例において、ステント表面の不適切な組織被覆をもたらし、潜在的に、遅発性ステント塞栓症の症例を増加させ得る。
【0070】
一部の実施形態において、本発明は、インプラント上の本発明の化合物の量が、約1g/cm未満であるデバイスを提供する。他の実施形態において、インプラント上の化合物の量は、約1ng/cm〜約1000μg/cm、好ましくは、約1μg/cm〜約500μg/cm、より好ましくは、約10μg/cm〜約400μg/cmの範囲であり得る。さらに他の実施形態において、インプラント上の化合物の量は、約1mg未満である。さらに他の実施形態において、インプラント上の化合物の量は、約1μg〜約50mg、好ましくは、約100μg〜約10mg、より好ましくは、約200μg〜約500μgである。
【0071】
さらなる実施形態において、本発明は、インプラントに隣接する組織における本発明の化合物の濃度が、約0.001ng/gm組織〜約1000μg/gm組織、好ましくは、約1ng/gm組織〜約500μg/gm組織、より好ましくは、約100ng/gm組織〜約100μg/gm組織である、デバイスを提供する。
【0072】
別の実施形態において、隣接組織は、本デバイスから25cm未満の組織を含む。他の実施形態において、隣接組織は、本デバイスから約10、9、8、7、6、5、4、3、2または1cm未満の組織を含む。一部の他の実施形態において、隣接組織は、本デバイスから約9、8、7、6、5、4、3、2または1mm未満の組織を含む。さらに他の実施形態において、隣接組織は、本デバイスから約5cm未満の組織を含む。さらに他の実施形態において、隣接組織は、本デバイスから約1cm未満の組織を含む。なおもさらに他の実施形態において、隣接組織は、本デバイスから約5mm未満の組織を含む。
【0073】
別の実施形態において、本発明の化合物は、5分未満〜2年、好ましくは、3日〜6ヶ月、より好ましくは、1週間〜3ヶ月の範囲の期間をかけて、インプラントから放出することができる。他の実施形態において、本発明の化合物は、1日より長い期間、好ましくは、2週間より長い期間、より好ましくは、1ヶ月より長い期間をかけて、インプラントから放出することができる。別の実施形態において、本発明の化合物は、ステントから完全に放出されるために2年より長い期間を要し得る。一部の実施形態において、上述した期間をかけて放出される化合物の量は、少なくとも25%である。他の実施形態において、放出される化合物の量は、少なくとも50%である。さらに他の実施形態において、放出される化合物の量は、少なくとも75%である。さらに他の実施形態において、放出される化合物の量は、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%であり得る。
【0074】
さらなる実施形態において、本発明は、化合物の少なくとも75%が、約1日〜約2年の期間でデバイスから放出されるデバイスを提供する。別の実施形態において、化合物の少なくとも90%が、約3日〜約6ヶ月の期間でデバイスから放出される。さらに別の実施形態において、化合物の少なくとも90%は、約1週間〜約3ヶ月の期間でデバイスから放出される。
【0075】
本発明の化合物が、または眼内または硝子体内を通じて、部位特異的インプラントを介して投与される場合、化合物の用量は、1μg〜5mg、好ましくは、100μg〜1mgの間で異なり得る。投与後、隣接する眼内または硝子体内における本発明の化合物の濃度は、約0.1nM〜500mM、好ましくは、約1nM〜1000μM、より好ましくは、約10nM〜100μMであり得る。当業者は、本発明の化合物の他の濃度が有用であることを理解するであろう。
【0076】
本発明の化合物は、当該技術分野において知られている任意の手段によって、インプラントから放出することができる。一部の実施形態において、インプラントは、受動的または能動的手段によって、本化合物を放出する。他の実施形態において、インプラントは、浸透圧または拡散を通じて、本化合物を放出する。当業者は、本化合物をインプラントから放出する他の手段が、本発明において有用であることを理解するであろう。
【0077】
一部の実施形態において、本発明は、以下で説明される治療薬剤等の治療薬剤をさらに含むデバイスを提供する。一部の他の実施形態において、治療薬剤は、本化合物の放出前、同時、または後に放出される。他の実施形態において、本化合物は、第1の源から放出され、治療薬剤は、第2の源から放出される。さらに他の実施形態において、本化合物および治療薬剤は、単一の源から放出される。さらに他の実施形態において、本化合物および治療薬剤は、同一源から放出される。
【0078】
一部の実施形態において、本化合物は、ほぼ一次放出動態に従って、インプラントから放出される。他の実施形態において、本化合物は、ほぼ二次放出動態に従って、インプラントから放出される。さらに他の実施形態において、本化合物は、バスト放出、続いてほぼ一次または二次放出動態後にインプラントから放出される。
【0079】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、一時デバイスを通じて放出することができる。一実施形態において、一時デバイスは、カテーテルである。本発明の化合物は、カテーテルによって、体管腔または臓器に送達される。別の実施形態において、一時デバイスは、多孔バルーンカテーテル/多孔拡張型部材である。その多孔バルーンカテーテルは、体管腔または臓器に送達されると、カテーテルが膨張し、本化合物が多孔バルーンを通じて、体管腔または臓器に送達される。さらに別の実施形態において、一時デバイスは、被覆されたバルーンカテーテルである。本化合物は、ポリマーコーティングとともに、またはなしにバルーン上に被覆され、被覆バルーンカテーテルは、体管腔または臓器に送達され、カテーテルは膨張し、本化合物は、被覆バルーンカテーテルに接触する体管腔または臓器に送達される。
【0080】
B.投与
本発明の化合物は、約1ng/cm/日〜約1000μg/cm/日、好ましくは、約1μg/cm/日〜約200μg/cm/日、より好ましくは、約5μg/cm/日〜約100μg/cm/日の範囲の速度で、インプラントから放出することができる。
【0081】
一部の実施形態において、本発明は、インプラントがステントであり、源は、約10μgマイオリマス/mmステント未満で、ステントをマイオリマスで被覆し、源は、ポリ(n−ブチルメタクリレート)を含み、ポリ(n−ブチルメタクリレート)は、マイオリマスに対して約1:5〜約5:1(w/w)の比率で存在するようになっているデバイスを提供する。他の実施形態において、インプラントはステントであり、源は、約10μgマイオリマス/mmステント未満で、ステントをマイオリマスで被覆し、源は、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコール酸)を含み、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコール酸)が、マイオリマスに対して、約1:5〜約5:1(w/w)の比率で存在するようにする。一部の他の実施形態において、インプラントはステントであり、源は、約10μgマイオリマス/mmステント未満で、ステントをマイオリマスで被覆し、源は、ポリ(エチレンカーボネート)を含み、ポリ(エチレンカーボネート)が、マイオリマスに対して、約1:5〜約5:1(w/w)の比率で存在するようにする。さらに他の実施形態において、インプラントはステントであり、源は、約10μgマイオリマス/mmステント未満で、ステントをマイオリマスで被覆する。
【0082】
さらに他の実施形態において、一時デバイスはバルーンであり、源は、約20μgマイオリマス/mmバルーン未満で、バルーンをマイオリマスで被覆し、源は、ポリ(エチレンカーボネート)を含み、ポリ(エチレンカーボネート)が、マイオリマスに対して、約1:5〜約5:1(w/w)の比率で存在するようにする。マイオリマスの他の比率および量は、本発明のデバイスにおいて有用である。さらに他の実施形態において、一時デバイスはバルーンであり、源は、約20μgマイオリマス/mmバルーン未満で、バルーンをマイオリマスで被覆する。さらに他の実施形態において、一時デバイスは多孔バルーンカテーテル/多孔拡張型部材であり、マイオリマスは、多孔バルーンを通じて、1mg/ml未満の濃度で送達され、源は、マイオリマスおよびエタノール、DMSO等の溶媒、またはPEO、加水ゲル等の他の薬剤を含む。
【0083】
他の実施形態において、本発明の化合物は、毎日、断続的、または1回投与ベースで投与することができる。1日用量は、0.1mg〜20mg、好ましくは、0.5mg〜10mg、最も好ましくは、1mg〜5mg/日の範囲であり得る。当業者であれば、他の用量も本発明において有用であることを理解するだろう。
【0084】
本発明のデバイスが、眼疾患または疾病の治療のために構成される場合、本発明の化合物は、毎日、断続的、または1回投与ベースで点眼薬または注射として、眼を通じて投与することができる。その用量は、0.1μg〜30mg、好ましくは、10μg〜10mg、最も好ましくは、100μg〜1mg/日の範囲であり得る。投与後、隣接する眼内または硝子体内における本発明の化合物の濃度は、約0.1nM〜500mM、好ましくは、約1nM〜1000μM、より好ましくは、約10nM〜100μMであり得る。当業者であれば、他の用量も本発明において有用であることを理解するだろう。
【0085】
C.医薬製剤
一部の実施形態において、本発明は、医薬的に許容される賦形剤が、ポリマー、溶媒、抗酸化剤、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香味料、安定剤、着色剤、金属、セラミック、および半金属から成る群から選択されるメンバーである、医薬組成物を提供する。他の実施形態において、その医薬的に許容される賦形剤はポリマーである。一部の他の実施形態において、その医薬的に許容される賦形剤は、ポリマー以外である。
【0086】
本発明の活性成分は、投与モードおよび剤形の性質に応じて、医薬的に許容される担体、希釈剤、アジュバント、賦形剤または媒体、例えば保存剤、充填剤、ポリマー、崩壊剤、流動促進剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、香料、潤滑剤、酸化剤、および調剤と混合さてもよい。医薬的に許容される担体および賦形剤を含むそのような成分は、Handbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association(1986)において説明されており、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。医薬的に許容される担体の実施例には、水、エタノール、ポリオール、植物油、脂肪、ロウ、ゲル形成および非ゲル形成ポリマーを含むポリマー、およびそれらの適切な混合物が挙げられる。賦形剤の実施例には、スターチ、事前ゼラチン化スターチ、Avicel、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、およびレーキブレンドが挙げられる。崩壊剤の実施例には、スターチ、アルギニン酸、および所定のケイ酸複合体が挙げられる。潤滑剤の実施例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、ならびに高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。当業者であれば、本発明に従って、他の異なる賦形剤を製剤に使用できること、本明細書において提供される一覧は包括的でないことを理解するであろう。
【0087】
適切な非分解性または低速分解ポリマーコーティングには、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸のポリマーおよびコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、エチレンビニルアルコールコポリマー、シリコーン、C−フレックス、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パリレン、パリラスト、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)コポリマーまたはポリ(エチレン酢酸ビニル)との混合、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコールメタクリレート)、ポリスチレン−b−イソブチレン−b−スチレン、ビニリデンフルオリドおよびヘキサフロオルプロピレンのコポリマー、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリカーボネート、ポリアクリルアミドゲルおよび他の合成または天然ポリマー物質を含むもの、それらの混合物、コポリマー、または組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
適切な生分解性ポリマーコーティングには、ポリ(乳酸)、ポリ(L−ラクチド酸)、ポリ(G−ラクチド酸)、ポリ(LG−ラクチド)酸ポリ乳酸、ポリ(グリコール酸)、ポリグリコレートおよびコポリマー、ポリジオキサノン、ポリ(エチルグルタメート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリヒドロキシ吉草酸およびコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、サリチル酸ベースポリ無水物エステル、サリチル酸−コ−アジピン酸−コ−サリチル酸、サリチル酸−コ−ポリラクチド無水物−サリチル酸、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(トリメチルカーボネート)、ポリエチレンカーボネート、ポリ(エチレンカーボネート)およびポリ(トリメチルカーボネート)のコポリマー、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、スターチベースポリマー、酢酸酪酸セルロース、ポリエステルアミド、ポリエステルアミン、ポリシアノアクリレート、ポリホスファゼン、ポリN−ビニル−2−ピロリドン、ポリマレイン無水物、ヒアルロン酸(ヒアルロネート)、ホスホリルコリン、硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタン、カルボキシメチルセルロース、硫酸ヘパリン、硫酸ケラタン、カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、カルボキシメチルグアー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアー、カルボキシメチルヒドロキシエチレングアー、キサンタンガム、カラギーナン、アニオン性多糖、アニオン性タンパク質およびポリペプチド、ステアリル塩化アンモニウムおよびベンジル塩化アンモニウムを含む第4級アンモニウム化合物、コポリマーおよび他の脂肪族ポリエステル、またはポリ(乳酸)およびポリ(カプロラクトン)のコポリマーを含む適切なコポリマー、それらの混合物、コポリマー、イオンポリマー、または組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
適切な天然コーティングには、フィブリン、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、グリコソアミノグリカン、オリゴ糖および多糖、コンドロイチン、硫酸コンドロイチン、ヒポキシアパタイト、リン脂質、ホスホリルコリン、糖脂質、脂肪酸、タンパク質、セルロース、およびそれらの混合物、コポリマー、または組み合わせが挙げられる。
【0090】
適切な非ポリマーコーティングには、タングステン、マグネシウム、コバルト、亜鉛、鉄、ビスマス、タンタラム、金、プラチナ、316L、304、チタン合金等のステンレス鋼等の金属コーティング、酸化シリコーン等のセラミクスコーティング、炭素等の半金属、ナノポーラスコーティング、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
一部の実施形態において、医薬的に許容される賦形剤は、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、エチレンビニルアルコールコポリマー、シリコーン、C−フレックス、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パリレン、パリラスト、ポリ(メタクリレート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリカーボネート、ポリアクリルアミドゲル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)コポリマーまたはポリ(エチレン酢酸ビニル)との混合、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコールメタクリレート)、ポリスチレン−b−イソブチレン−b−スチレン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフロオルプロピレンのコポリマー、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリLラクチド−グリコリドコポリマー、ポリLラクチド−トリメチレンカーボネートコポリマーおよびポリL−ラクチド、サリチル酸ベースポリ無水物エステル、サリチル酸−コ−アジピン酸−コ−サリチル酸、サリチル酸−コ−ポリラクチド無水物−サリチル酸、およびホスホリルコリンから成る群から選択されるポリマーである。さらなる実施形態において、ポリマーは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレンカーボネート)、またはポリLラクチド−グリコリドコポリマーであり得る。
【0092】
他の実施形態において、ポリマーは耐久性ポリマーである。耐久性ポリマーは、生理条件下で安定性であり、ポリ(n−ブチルメタクリレート)等のポリマーを含む。一部の他の実施形態において、ポリマーは、生体吸収性、生体浸食性、または分解性ポリマーである。生体吸収性、生体浸食性、または生分解性という用語は、同義的に使用することができ、生理条件下、例えば、加水分解または酵素的生分解によって、ポリマーが生分解することを意味する。生体吸収性ポリマーには、ポリ(エチレンカーボネート)、またはポリLラクチド−グリコリドコポリマー等のポリマーが挙げられる。生体吸収性ポリマーの生分解速度は、2週間〜5年であり得る。一実施形態において、生体浸食性または分解性ポリマーの生分解は、3ヶ月〜2年であり得る。その他では、6ヶ月〜12ヶ月である。
【0093】
ポリマーの分解は、1日当たりの平均質量損失で測定することもできる。例えば、ポリマーは、0.05%〜3%/日の平均質量損失で分解し得る。代替として、平均質量損失は、0.1%〜0.75%/日であり得る。さらに、平均質量損失は、0.25%〜0.5%/日であり得る。ポリマーの分解は、1日当たりの平均容積損失によって測定することもでき、例えば、0.05%〜3%/日である。場合によって、平均容積損失は、0.1%〜0.75%/日であり得る。代替として、平均容積損失は、0.25%〜0.5%/日であり得る。
【0094】
さらなる実施形態において、本発明は、化合物が、化合物およびポリマーの混合物等において、コーティングの少なくとも10%(w/w)の量で存在するようになっている組成物を提供する。別の実施形態において、化合物は、少なくとも20、25、30、40、50、55、60、70、75、80および90%(w/w)の量で存在するようになっている。他の実施形態において、化合物は、少なくとも25%(w/w)の量で存在するようになっている。一部の他の実施形態において、化合物は、少なくとも50%(w/w)の量で存在するようになっている。さらに他の実施形態において、化合物は、少なくとも75%(w/w)の量で存在するようになっている。当業者であれば、他の組成物が本発明に有用であることを理解するであろう。
【0095】
別の実施形態において、本発明の化合物は、ポリマーなしでステントの上に適用することができる。別の実施形態において、本発明の化合物は、化合物およびポリマーのマトリクスを含有するコーティングとして、ステントの上に適用することができる。別の実施形態において、本発明の化合物は、律速バリア内のステント上に適用することができる。コーティング中の本発明の化合物は、非晶形であり得る。他の実施形態において、コーティング中の化合物は、完全または部分的に結晶形であり得る。ポリマーは、非分解性、部分的に分解性、または完全に分解性であり得る。コーティングは、金属コーティング等の非ポリマーであってもよい。別の実施形態において、ステントは、ステント表面と本発明の化合物または本発明の化合物−ポリマーマトリクスとの間に配置される下層コーティングを含む。適切な下層コーティングは、パリレンC、パリレンN、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリカプロラクトン、水酸化酢酸エチルビニル(EVA)等のポリマー、またはそれらの組み合わせ、あるいは金属またはセラミック等の非ポリマーであり得る。
【0096】
コーティングは、以下の方法に限定されないが、スプレー、超音波蒸着、ディッピング、インクジェット分注、プラズマ蒸着、イオン注入、スパッタリング、蒸発、蒸着、熱分解、電気めっき、グロー放電コーティング等、またはそれらの組み合わせを含む、異なる方法のうちのいずれかの方法によって適用することができる。
【0097】
コーティング厚は、1nm〜100μm、好ましくは、100nm〜50μm、より好ましくは、1μm〜20μmの範囲であり得る。
【0098】
本発明の化合物は、抗酸化剤または安定剤と混合させて、酸化または他の手段に起因する分解を防止することができる。抗酸化剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、硫酸鉄、エチレンジアミン−テトラ−酢酸(EDTA)等が挙げられるが、これらに限定されない。安定剤には、アミレン、ヒドロキノン、キニン、メタ重亜硫酸ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。抗酸化剤および安定剤は、直接本化合物と混合させるか、または本化合物−ポリマーマトリクス等の化合物製剤と混合させて、製造プロセス中の構造変化または分解を低減し、本化合物またはインプラントを含有する本化合物の保存期間または貯蔵期間を増加させることができる。本化合物中のBHT等の抗酸化剤の量は、0.01%〜10%、好ましくは、0.05%〜5%、および最も好ましくは、0.1%〜3%の範囲であり得る。本化合物中のアミレン等の安定剤の量は、0.01%〜10%、好ましくは、0.05%〜5%、最も好ましくは、0.1%〜1%の範囲であり得る。当業者であれば、他の抗酸化剤および安定剤が、本発明において有用であることを理解するであろう。
【0099】
本発明の化合物は、抗血小板薬、抗血栓薬、抗炎症薬、抗血管新生薬、抗増殖薬、免疫抑制剤、および抗癌剤等の治療薬剤、または他の薬剤、あるいはそれらの組み合わせと併せて投与することができる。当業者であれば、他の治療薬剤が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0100】
これらの治療薬剤は、本発明の化合物とともに、および/または本発明の化合物とは個別にステント上に組み込むことができる。一実施形態において、本発明の化合物および治療薬剤は、ポリマーとともにマトリクス化され、インプラント上に被覆される。他の実施形態において、本発明の化合物および治療薬剤は、インプラントの少なくとも一部分上に被覆することができる。
【0101】
治療薬剤の少なくとも一部分は、インプラントからの本発明の化合物の放出前、同時、または後に、ステントから放出され得る。治療薬剤は、本発明の化合物の送達前、中、または後の全身的または部位特異的投与を通じて、個別に投与することもできる。
【0102】
例えば、本発明の化合物は、抗血小板薬または抗血栓薬、例えば、ヘパリン、クロピドグレル、クマディン、アスピリン、チクリド等とともに投与される。別の実施例において、本発明の化合物は、アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、テノキシカム、トルメチン、ケトロラク、オキサプロシン、メフェナミン酸、フェノプロフェン、ナンブメトン(レラフェン)、アセトアミノフェン等の抗炎症薬、およびそれらの混合物、ニメスリド、NS−398、フロスリド、L−745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC−57666、DuP−697、パレコキシブナトリウム、JTE−522、バルデコキシブ、SC−58125、エトリコキシブ、RS−57067、L−748780、L−761066、APHS、エトドラク、メロキシカム、S−2474等のCOX−2阻害剤、およびそれらの混合物、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、フルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、デソキシコルチコステロン、バルデコキシブ、ジクロフェナク、6−MNA、L−743、L−337、NS−398、SC58125、ケトロラク、クロベタゾール等のグルココルチコイド、またはこれらの類似体あるいはこれらの組み合わせとともに付与される。別の実施例において、本発明の化合物は、シクロスポリンA、タクロリムス等の免疫抑制剤またはこれらの類似体あるいはこれらの組み合わせとともに投与される。
【0103】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、眼の疾患または障害の治療のために、単独で投与されるか、または少なくとも1つの治療薬剤と併せて投与される。当業者に知られている任意の適切な治療薬剤は、眼の疾患または疾病の治療において使用するために、本発明の化合物と併用することができる。本発明の化合物と併用することができる治療薬剤には、ルセンティス、アバスチン、マクガン、ボロシキシマブ、オロパタジン、散瞳薬、デキサメタゾン、ピロカルピン、トロピカミド、キノロン、ガレンタミン、フルオシノロンアセトニド、トリアンシノロンアセトニド、アトロピン、硫酸アトロピン、塩酸アトロピン、臭化メチルアトロピン、硝酸メチルアトロピン、高尿酸アトロピン、N−オキシドアトロピン、フェニレフリン、塩酸フェニレフリン、ヒドロキシアンフェタミン、水素酸ヒドロキシアンフェタミン、塩酸ヒドロキシアンフェタミン、ヨウ化ヒドロキシアンフェタミン、シクロペントレート、塩酸シクロペントレート、ホマトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、塩酸ホマトロピン、臭化メチルホマトロピン、スコポラミン、臭化水素酸スコポラミン、塩酸スコポラミン、臭化メチルスコポラミン、硝酸メチルスコポラミン、N−オキシドスコポラミン、トロピカミド、臭化水素酸トロピカミド、塩酸トロピカミド、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、メロキシカム、ニメスルフィド、6−MNA、L−743、L−337、NS−398、SC58125、ケトロラク、クロベタゾール、ピロカルピン、イソピロカルピン、フィゾスチグミン、および塩酸アンモニウムステアリルおよび塩酸アンモニウムベンジルを含む第4級アンモニウム化合物、それらの混合物、イオン塩、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
眼内使用のための本発明の化合物の製剤は、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマー(PHEMA)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリアミノ酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリペプチド、多糖または上述した任意のポリマーを含み得る。そのような製剤において有用なこれらのポリマーは、任意のサイズであり得る。一部の実施形態において、これらのポリマーは、約5キロダルトン(kD)〜8,000kDの間の分子量を有し得る。当業者であれば、他のサイズのポリマーが本発明において有用であることを理解するであろう。
【0105】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、単独で投与することができるか、または化合物−ポリマー製剤、化合物−溶媒製剤、または化合物−担体製剤の一部として投与することができる。本発明のすべての製剤は、活性および不活性成分を含み得る。他の活性成分には、抗炎症薬、免疫修飾剤、および抗感染薬、抗酸化薬、抗体、抗生物質、抗血管新生薬、抗血管内皮成長因子薬、抗ヒスタミンおよび潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されない。不活性成分には、担体、溶媒、無機物質、pH調節剤、放射線不透過性物質、放射性物質、蛍光性物質、NMR造影剤、または他の「レポータまたはインジケータ」物質が挙げられるが、これらに限定されない。化合物−溶媒製剤中の溶媒の実施例には、水、生理食塩水、アルコール、およびジメチルスルホキシドが挙げられるが、これらに限定されない。化合物−担体製剤中の担体の実施例は、グリセリン、パラフィン、ビーワックス、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびマクロゲルである。無機物質の実施例には、ホウ酸、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ホウ酸ナトリウム、ポビドン、およびリン酸水素二ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。pH調整剤の実施例には、水酸化ナトリウム、塩化水素、緩衝剤、および他の無機および有機酸/塩基が挙げられるが、これらに限定されない。保存剤の実施例には、塩化ベンザルコニウム、およびポリクオタニウムが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤の実施例には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、他の活性および不活性成分、ならびに溶媒および担体が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0106】
他の実施形態において、本発明は、約0.1mg〜約20mgの1日全身用量の化合物を有する、組成物を剤形で提供する。一部の他の実施形態において、本化合物の1日全身用量は、約0.5mg〜約10mgである。別の実施形態において、本化合物の1日全身用量は、約1mg〜約5mgである。
【0107】
IV.治療
本発明の化合物は、哺乳類における疾病を治療するために、単独または他の薬剤と併用して使用することができ、以下のような疾患を含む。
a)急性または慢性臓器または組織移植の拒絶反応の治療および予防、例えば、心臓、肺、複合心臓−肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜移植の受容者の治療。例えば、本発明の化合物は、骨髄移植後の移植片対宿主病の予防に使用することもできる。
b)移植血管障害、例えば、アテローム性動脈硬化の治療および予防。
c)血管内膜の厚化、血管閉塞、閉塞性血管アテローム性動脈硬化、再狭窄をもたらす、細胞増殖および転移の治療および予防。
d)自己免疫疾患および炎症疾患、例えば、関節炎(例えば、リウマチ関節炎、関節炎クロニカプログレディエンテ、および変形性関節炎)およびリウマチ性疾患の治療および予防。
e)喘息の治療および予防。
f)多剤耐性疾患、例えば、多剤耐性癌または多罪耐性AIDSの治療。
g)増殖性疾患、例えば、腫瘍、癌、乾癬等の高増殖性皮膚疾患の治療。
h)真菌、細菌、およびウイルス等の感染の治療。
i)血管シャント内の細胞増殖の治療または予防。
j)湿式または乾式加齢性黄斑変性症、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、レーザーまたは白内障手術後の合併症等の眼の疾患および疾病の治療または予防。
k)新血管形成の予防
l)臓器の線維症の治療または予防
m)癒着の治療または予防
一部の実施形態において、本発明は、被験体に治療上有効量の化合物マイオリマスまたはその誘導体を部位特異的に投与することによって、阻害を必要とする被験体において、細胞増殖を阻害する方法を提供する。
【0108】
一部の他の実施形態において、本発明の化合物の投与は、経口投与、坐薬としての投与、局所接触、非経口、血管内、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、鼻腔内、肺、粘膜、経皮、眼内、皮下投与または髄腔内投与による。
【0109】
さらに他の実施形態において、本発明の化合物の投与は、カテーテル等の一時デバイスまたはインプラント等の永久デバイスを通じた送達による。インプラントは、永久であり得るか、または時間とともに生理環境において生物分解し得る。別の実施形態において、一時デバイスは、カテーテル、多孔バルーン、非多孔バルーン、および拡張型膜から成る群から選択される。さらに別の実施形態において、このインプラントは、管腔プロテーゼである。さらに他の実施形態において、管腔プロテーゼは、拡張型足場を備える。別の実施形態において、管腔プロテーゼは、ステントまたは移植片を備える。さらに他の実施形態において、管腔プロテーゼは、血管ステントである。
【0110】
他の実施形態において、インプラントはラップである。別の実施形態において、ラップは、血管の少なくとも一部分を被覆する血管ラップである。さらに別の実施形態において、ラップは、臓器の少なくとも一部分を被覆する臓器ラップである。
【0111】
本発明の化合物の有効性を測定する一手段は、有効濃度(EC50)を測定することを含む。
【0112】
一部の実施形態において、本発明は、本化合物の有効用量が約0.1mg〜約20mgである方法を提供する。一部の他の実施形態において、本化合物の有効用量は、約0.5mg〜約10mgである。さらに他の実施形態において、本化合物の有効用量は、約1mg〜約5mgである。
【0113】
マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP−9)は、ステント移植後の新生内膜成長および血管リモデリング等の状態を含む、細胞転移および増殖において主要な役割を果たす。MMPの放出は、プロテオグリカンを豊富に含む細胞外マトリクスの増加をもたらし、血管損傷後の平滑筋細胞移行を増加させる。血漿活性MMP−9レベルは、ステント再狭窄における地金ステントの有用な独立予測因子であり得る(Elevated Plasma Active Matrix Metalloproteinase−9 Level Is Associated With Coronary Artery In−Stent Restenosis,Arterioscler Thromb Vasc Biol.2006;26:e121−e125)。MMP−9の化合物阻害生成は、炎症、増殖および上述した他の病状の治療および予防に治療的影響を及ぼし得る。本発明の化合物は、実施例10に示されるように、MMP−9生成を阻害する。
【0114】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、ラパマイシンと比較して、より優れたMMP−9の阻害を提供する。
【0115】
モノサイト化学誘引物質タンパク質1(MCP−1)は、血管平滑筋および内皮細胞を含む、生体外の多くの細胞によって分泌される強力なモノサイト化学誘引物質である。MCP−1遺伝子の排除またはMCP−1信号のブロックは、高コレステロール血症のマウスにおけるアテローム形成を減少させることを示した。MCP−1は、サルにおける新生内膜過形成の病因に役割を果たすことが示された(Importance of Monocyte Chemoattractant Protein−1 Pathway in Neointimal Hyperplasia After Periarterial Injury in Mice and Monkeys,Circ Res.2002;90:1167−1172)。MCP−1は、ヒトおよびウサギの動脈硬化病変のマクロファージを豊富に含む領域における細胞の小サブセットにおいても強力に発現する(Expression of Monocyte Chemoattractant Protein 1 in Macrophage−Rich Areas of Human and Rabbit Atherosclerotic Lesions,PNAS,Vol.88,5252−5256)。MCP−1の化合物阻害生成は、炎症、増殖、および上述した他の病状の治療および予防に対して治療上の影響を及ぼし得る。本発明の化合物は、実施例10に示されるように、MCP−1生成を阻害する。
【0116】
一部の他の実施形態において、本発明の化合物は、ラパマイシンと比較して、より優れたMCP−1の阻害を提供する。
【0117】
A.眼の疾患および疾病
一部の実施形態において、本発明の化合物、医薬組成物、およびデバイスは、眼の疾患および疾病の治療に有用である。本発明の化合物、医薬組成物、およびデバイスは、多くの眼の疾患または疾病の治療に有用である。本発明の化合物およびデバイスによって治療することができる眼の疾患および疾病には、瞼の疾病、涙器系および眼窩の疾病、涙管閉塞、結膜の疾病、強膜、角膜、虹彩および毛様体の疾病、レンズの疾病、脈絡膜および網膜の疾病、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、緑内障、硝子体および眼球の疾病、視神経および視覚経路の疾病、眼筋の疾病、両眼運動、調節、および屈折、視力障害および盲目等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物およびデバイスによって治療することができる追加の癌疾患および疾病には、細胞増殖の阻害、炎症の防止、新生血管形成の防止、神経血管系の保護、および移植後の免疫反応の防止が挙げられる。当業者であれば、他の眼の疾患および疾病は、本発明の化合物およびデバイスを使用して治療できることを理解するであろう。
【0118】
現在の治療方法は、手術および投薬を含む。外科的治療方法には、角膜移植、高速レーザー眼手術、内皮角膜形成術、白内障手術、緑内障手術、屈折矯正手術、角膜手術、硝子体網膜手術、眼筋手術、眼整形手術、眼に移植することができる角膜または角膜の一部を形成するための幹細胞の使用が挙げられる。本発明の化合物は、上記手順の前、同時、または後に、単独または他の治療薬剤と併せて投与することができる。
【0119】
眼の疾患および疾病は、上述されるように、本発明の化合物、医薬組成物、およびデバイスを使用して治療することができる。本発明の化合物および医薬組成物は、当業者に知られている任意の方法によって投与することができる。一部の実施形態において、本発明の化合物は、インプラント、注射、または点眼薬によって投与される。一部の他の実施形態において、投与は、眼の眼内または硝子体を通じて行われる。一実施形態において、投与はインプラントを介する。他の実施形態において、本化合物は、インプラントを介して投与され、本化合物は、金属、セラミック、またはポリマーコーティングを介して放出される。
【0120】
投与がインプラントを介する場合、本化合物は、本発明において説明される任意の手段によって放出され得る。一部の実施形態において、インプラントからの本化合物の放出は、浸透圧または拡散を介することができる。
【0121】
一部の実施形態において、本発明の化合物は、眼の疾患または障害の治療のために少なくとも1つの他の治療薬剤と併用される。当業者に知られている任意の適切な治療薬剤は、眼の疾患または疾病の治療に使用するために、本発明の化合物と併用することができる。一部の実施形態において、治療薬剤には、抗炎症薬、免疫修飾剤、および抗感染薬、抗酸化薬、抗体、抗生物質、抗血管新生薬、抗血管内皮成長因子薬、抗ヒスタミンおよび潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物と併用することができる治療薬剤には、ルセンティス、アバスチン、マクガン、ボロシキシマブ、オロパタジン、散瞳薬、デキサメタゾン、ピロカルピン、トロピカミド、キノロン、ガレンタミン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、アトロピン、硫酸アトロピン、塩酸アトロピン、臭化メチルアトロピン、硝酸メチルアトロピン、N−オキシドアトロピン、フェニレフリン、塩酸フェニレフリン、ヒドロキシアンフェタミン、臭化水素酸ヒドロキシアンフェタミン、塩酸ヒドロキシアンフェタミン、ヨウ化ヒドロキシアンフェタミン、シクロペントレート、塩酸シクロペントレート、ホマトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、塩酸ホマトロピン、臭化メチルホマトロピン、スコポラミン、臭化水素酸スコポラミン、塩酸スコポラミン、臭化メチルスコポラミン、硝酸メチルスコポラミン、N−オキシドスコポラミン、トロピカミド、臭化水素酸トロピカミド、塩酸トロピカミド、ピロカルピン、イソピロカルピン、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、メロキシカム、ニメスルフィド、6−MNA、L−743、L−337、NS−398、SC58125、ケトロラク、クロベタゾール、フィゾスチグミン、ステアリル塩化アンモニウムおよびベンジル塩化アンモニウムを含む四級アンモニウム化合物、それらの混合物、イオン塩、および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
本発明において開示されるすべての実施形態は、単独または本発明における他の実施形態または実施例と併せて利用できることを理解されたい。
【実施例】
【0123】
V.実施例
実施例1:マイオリマスの生物活性
マイオリマスの能力は、生体外ヒト平滑筋細胞培養試験によって実証された。8時間の曝露後に、異なる濃度(0.0001、0.001、0.01、0.1、および1μM)のマイオリマス試料および異なる濃度(0.0001、0.001、0.01、0.1、および1μM)のラパマイシン試料に取り込まれたチミジンの量を測定した(図1に示されるとおり)。マイオリマスおよびラパマイシンのIC50は、いずれも0.1nMであり、強力な抗増殖特性を示している。
【0124】
実施例2:耐久性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの調製
15mgポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)を、3mLジクロロメタンに室温で溶解した。10mgのマイオリマスをバイアルに入れ、2mLジクロロメタンに0.1%(w/w)BHTとともに、またはなしで溶解した。これらの溶液を統合し、10mLジクロロメタンでさらに希釈した。
【0125】
ステントをワイヤマンドレル上に載置し、200rpmで回転させ、0.020インチ(0.5mn)直径のノズルを有するマイクロブラスタを回転させて、20μm直径の媒体を用いるマイクロブラストを提供する。このノズルは、ステントに沿って軸方向に1インチ当たり2秒の速度で前後に計5サイクル横断する。ステント方向は反転し、マイクロブラストは反復される。次に、このステントは、0.036インチ(0.91mn)等のより小さい内径に事前クリンプする。表面テクスチャリングに使用されるパラメータは異なり得ることを理解されたい。
【0126】
マイクロプロセッサ制御の超音波スプレーを使用して、約100μg(2.2μgマイオリマス/mmステント)の薬物含有PBMA溶液を18mm金属ステント(Elixir Medical Corp,Sunnyvale,Calif.から入手可能)の全体表面に塗布した。コーティング後、このステントを真空室に入れた。次に、このステントを3.0x20mmPTCA送達カテーテルのバルーン上に載置した。次に、そのカテーテルをコイルに挿入し、Tyvek(登録商標)パウチで包装した。このパウチは、酸化エチレンで滅菌した。Tyvek(登録商標)パウチを、脱酸素剤とともにホイルパウチにさらに包装し、窒素でパージして真空密閉した。
【0127】
実施例3:生体吸収性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの調製
5mgポリ(エチレンカーボネート)を1mLジクロロメタンに室温で溶解した。10mgのマイオリマスをバイアルに入れ、0.1%(w/w)BHTとともに、またはなしに2mLジクロロメタンに溶解した。これらの溶液を統合し、さらに6mLジクロロメタンで希釈した。
【0128】
マイクロプロセッサ制御の超音波スプレーを使用して、約125μg(2.7μgマイオリマス/mmステント)の薬物含有PET溶液を18mm金属ステント(Elixir Medical Corp,Sunnyvale,Calif.から入手可能)の全体表面に塗布した。コーティング後、このステントを真空室に入れた。次に、このステントを3.0x20mmPTCA送達カテーテルのバルーン上に載置した。次に、そのカテーテルをコイルに挿入し、Tyvek(登録商標)パウチで包装した。このパウチは、酸化エチレンで滅菌した。Tyvek(登録商標)パウチを、脱酸素剤とともにホイルパウチにさらに包装し、窒素でパージして真空密閉した。
【0129】
実施例4:耐久性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの生体内試験
耐久性ポリマー(実施例2から上で調製されるような)を用いるマイオリマス溶出ステントシステムの40μg薬物負荷(2.2μg/mmステント)および120μg薬物負荷(6.7μg/mmステント)に対する有効性を、非疾患ブタ冠動脈モデルのブタ冠動脈において、それぞれ28±2日および90±2日の血管造影結果で評価した。対照ステントは、Cypher(登録商標)Sirolimus(ラパマイシン)溶出冠動脈ステント(Cordis Corporation)であった。
【0130】
非アテローム性動脈硬化ブタモデルは、ステントおよび血管形成研究に広く使用されており、血管反応特性およびそのヒト血管反応との相関に関する大量のデータをもたらしているため、このモデルを選択した(Schwartz et al,Circulation.2002;106:1867−1873)。米国学術研究会議によって確立されたGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って、動物を収容しケアした。
【0131】
すべての動物は、アスピリン(325mg)およびクロピドゲル(75mg)を経口投与することによって処置し、投与は介入の少なくとも3日前から開始し、研究期間中は継続した。麻酔導入後、標準技術を使用して、左右の大腿動脈にアクセスし、動脈シースを動脈に導入し前進させた。
【0132】
血管造影術を蛍光透視鏡ガイド下で行い、シースを通じて7フレンチのガイドカテーテルを挿入し、適切な位置に前進させて、冠動脈内ニトログリセリンを投与した。2.25〜4.0mm平均内径の冠動脈のセグメントを選択し、0.014インチのガイドワイヤを挿入した。定量的冠動脈造影(QCA)を行って、基準血管直径を記録した。
【0133】
適切なサイズのステントを展開部位に前進させた。それぞれ1.30:1.0のバルーン対動脈比を28日間、1.1:1(低損傷)を90日間達成するために十分な圧力にバルーンを一定速度で膨張させた。圧力は、約10秒維持した。血管造影を行って、手順後の血管開通および直径を記録した。
【0134】
各動物の指定エンドポイントにおいて、フォローアップ血管造影を行った。ステント移動、管腔狭小、ステント圧着(stent apposition)、解離または動脈瘤の存在、およびフロー特性に関して、各血管造影図を定性的に評価した。フォローアップ血管造影の完了時に、これらの動物を安楽死させた。
【0135】
各動物から心臓を採取し、10%緩衝ホルマリンを用いて、冠動脈を100〜120mmHgでかん流させた。これらの心臓を10%緩衝ホルマリンに浸漬させた。任意の心筋病変または異常な所見を報告した。
【0136】
測定または計算した血管造影パラメータは以下を含む。
・辺縁血管(近位および遠位)平均管腔直径(ステント後および最終のみ)
・標的領域の平均管腔直径(すべての血管造影)
・標的領域の最小管腔直径(MLD)(ステント後および最終のみ)
・直径狭窄[1−(MLD/RVD)]x100% RVDは、閉塞位置における基準直径の計算値である(病巣のない予想血管の内挿を生成するように、ソフトウェアベースの反復線形回帰技術によって得られる測定値)(最終血管造影図のみ)
・バルーン対動脈比[バルーン/ステント前平均管腔直径]
・ステント対動脈比[ステント後/ステント前平均管腔直径]
・後期損失比[MLD最終−MLDステント後]
すべての動物は、指定エンドポイントまで生存した。ステント移動、ステント圧着不良、持続的解離の兆候または動脈瘤の証拠は記録されなかった。Cypherステントの3つの異常データ点(閉塞の合計または閉塞の略合計)は除外した。40μg用量(約2.2μg/mm長薬物用量)の耐久性ポリマーを有するマイオリマスステントの場合、28日における平均狭窄パーセントは、同様のプロトコルを用いる本研究および以前の研究からプールされたデータであるCypherステント170μg用量(約9.5μg/mm長薬物用量)と比較して、38±11(n=15)であり、Cypherステントの場合、平均狭窄パーセントは36±14(n=37)であった。
【0137】
120μg用量(約6.7μg/mm長薬物用量)の耐久性ポリマーを有するマイオリマスステントの場合、90日における平均狭窄パーセントは、同様のプロトコルを用いる本研究および以前の研究からプールされたデータであるCypherステントと比較して、40±21(n=7)であり、Cypherステントの場合、平均狭窄パーセントは53±21(n=16)であった。
【0138】
本実施例において、薬物用量約2.2μg/mm長薬物用量の耐久性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントは、ブタモデルに移植されると、28日目に、有意に高い用量である約9.5μg/mm長薬物用量を有するCypherステントのそれと比較して、同様の狭窄パーセンテージをもたらした。本実施例において、約6.7μg/mm長薬物用量の耐久性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントは、ブタモデルに移植されると、90日目に、Cypherステントのそれと比較して、低い狭窄パーセンテージをもたらした。
【0139】
実施例5:生体吸収性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの生体内試験
ブタ冠動脈における28±2日および90±2の血管造影結果を、非疾患ブタ冠動脈モデルにおけるラパマイシン溶出ステントシステム、Cypher(登録商標)冠動脈ステント(Cordis Corporation)と比較することによって、約2.5μg/mm長薬物用量の(上の実施例3から調製されたような)耐久性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの有効性を評価した。
【0140】
非アテローム性動脈硬化ブタモデルは、ステントおよび血管形成研究に広く使用されており、血管反応特性およびそのヒト血管反応との相関に関する大量のデータをもたらしているため、このモデルを選択した(Schwartz et al,Circulation.2002;106:1867−1873)。米国学術研究会議によって確立されたGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って、動物を収容しケアした。
【0141】
すべての動物は、アスピリン(325mg)およびクロピドゲル(75mg)を経口投与することによって処置し、投与は介入の少なくとも3日前から開始し、研究期間中は継続した。麻酔導入後、標準技術を使用して、左右の大腿動脈にアクセスし、動脈シースを動脈に導入し前進させた。
【0142】
血管造影術を蛍光透視鏡ガイド下で行い、シースを通じて7フレンチのガイドカテーテルを挿入し、適切な位置に前進させて、冠動脈内ニトログリセリンを投与した。2.25〜4.0mm平均内径の冠動脈のセグメントを選択し、0.014インチのガイドワイヤを挿入した。定量的冠動脈造影(QCA)を行って、基準血管直径を記録した。
【0143】
適切なサイズのステントを展開部位に前進させた。それぞれ1.30:1.0のバルーン対動脈比を28日間、1.1:1(低損傷)を90日間達成するために十分な圧力にバルーンを一定速度で膨張させた。圧力は、約10秒維持した。血管造影を行って、手順後の血管開通および直径を記録した。
【0144】
各動物の指定エンドポイントにおいて、フォローアップ血管造影を行った。ステント移動、管腔狭小、ステント圧着、解離または動脈瘤の存在、およびフロー特性に関して、各血管造影図を定性的に評価した。フォローアップ血管造影の完了時に、これらの動物を安楽死させた。
【0145】
各動物から心臓を採取し、10%緩衝ホルマリンを用いて、冠動脈を100〜120mmHgでかん流させた。これらの心臓を10%緩衝ホルマリンに浸漬させた。任意の心筋病変または異常な所見を報告した。
【0146】
測定または計算した血管造影パラメータは以下を含む。
・辺縁血管(近位および遠位)平均管腔直径(ステント後および最終のみ)
・標的領域の平均管腔直径(すべての血管造影)
・標的領域の最小管腔直径(MLD)(ステント後および最終のみ)
・直径狭窄[1−(MLD/RVD)]x100% RVDは、閉塞位置における基準直径の計算値である(病巣のない予想血管の内挿を生成するように、ソフトウェアベースの反復線形回帰技術によって得られる測定値)(最終血管造影図のみ)
・バルーン対動脈比[バルーン/ステント前平均管腔直径]
・ステント対動脈比[ステント後/ステント前平均管腔直径]
後期損失比[MLD最終−MLDステント後]
すべての動物は、指定エンドポイントまで生存した。ステント移動、ステント圧着不良、持続的解離の兆候または動脈瘤の証拠は記録されなかった。Cypherステントの3つの異常データ点(閉塞の合計または閉塞の略合計)は除外した。40μg用量(約2.5μg/mm長薬物用量)の耐久性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの場合、28日における平均狭窄パーセントは、同様のプロトコルを用いる本研究および以前の研究からプールされたデータであるCypherステント170μg用量(約9.5μg/mm長薬物用量)と比較して、35±17(n=15)であり、Cypherステントの場合、平均狭窄パーセントは36±14(n=37)であった。生体吸収性ポリマー(約2.5μg/mm長薬物用量)を有するマイオリマス溶出ステントの場合、90日目の平均狭窄パーセンテージは、同様のプロトコルを有する本研究および以前の研究からのCypherステントプールデータと比較して、33±9(n=6)であり、Sypher Stentの場合、平均狭窄パーセントは53±21(n=16)であった。
【0147】
本実施例において、約2.5μg/mm長薬物用量の生体吸収性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントは、ブタモデルに移植されると、28日目に、約9.5μg/mm長薬物用量という有意に高い用量を有するCypherステントのそれと比較して、同様の狭窄パーセンテージをもたらした。本実施例において、約2.8μg/mm長薬物用量の生体吸収性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントは、ブタモデルに移植されると、90日目に、約9.5μg/mm長薬物用量という有意に高い用量を有するCypherステントのそれと比較して、低い狭窄パーセンテージをもたらした。
【0148】
実施例6:耐久性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの生体内薬物動態
ブタ冠動脈モデルにおいて、6時間、3日、7日、28日、90日および180日目に、実施例3からの耐久性ポリマーシステムを有するマイオリマスステントの薬物動態評価を行った。使用した介入手順は、実施例4で説明されている生体内血管造影研究のステント移植まで同様であった。
【0149】
適切なサイズのステントを展開部位に前進させた。1:1のバルーン対動脈比を達成するために十分な圧力にバルーンを一定速度で膨張させた。圧力は、約10秒維持した。血管造影を行って、手順後の血管開通および直径を記録した。合計9ステント(3/時点)を移植した。
【0150】
適切な時点において、これらの動物を安楽死させ、心臓を切除した。約10mmの血管近位およびステント部分の10mm遠位を含むステントセグメントを切除した。その近位および遠位部分を分離し、個別のバイアルに保管した。そのステントを取り囲む組織をステントから慎重に除去し、それぞれ個別のバイアルに入れた。次に、液体クロマトグラフィ質量分光法(LCMS)を使用して分析する前に、すべてを−70℃に凍結させた。
【0151】
すべての動物は、指定エンドポイントまで生存した。本実施例において、マイオリマス溶出ステントは、28日目に薬物の80%より多く、ステントからマイオリマスを放出し、90日目に薬物の95%超を放出し、180日目にはほぼ完全に放出したことを実証する(図2a)。
【0152】
本実施例において、マイオリマス溶出ステントは、28日目の平均マイオリマス組織濃度が、約2ng薬物/mg組織であり、90日目には1ng/mg組織に近づき、180日目には、0.5ng薬物/mg組織未満であることを実証する(図2b)。
【0153】
実施例7:生体吸収性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの生体内薬物動態
ブタ冠動脈モデルにおいて、6時間、3日、7日、28日、90日および180日目に、実施例4からの生体吸収性ポリマーシステムを有するマイオリマス溶出ステントの薬物動態評価を行った。使用した介入手順は、実施例4で説明されている生体内血管造影研究のステント移植まで同様であった。
【0154】
適切なサイズのステントを展開部位に前進させた。1:1のバルーン対動脈比を達成するために十分な圧力にバルーンを一定速度で膨張させた。圧力は、約10秒維持した。血管造影を行って、手順後の血管開通および直径を記録した。合計9ステント(3/時点)を移植した。
【0155】
適切な時点において、これらの動物を安楽死させ、心臓を切除した。約10mmの血管近位およびステント部分の10mm遠位を含むステントセグメントを切除した。その近位および遠位部分を分離し、個別のバイアルに保管した。そのステントを取り囲む組織をステントから慎重に除去し、それぞれ個別のバイアルに入れた。次に、液体クロマトグラフィ質量分光法(LCMS)を使用して分析する前に、すべてを−70℃に凍結させた。
【0156】
すべての動物は、指定エンドポイントまで生存した。本実施例において、マイオリマス溶出ステントは、28日目に薬物の95%より多く、ステントからマイオリマスを放出したことを実証する(図3a)。
【0157】
本実施例において、マイオリマス溶出ステントは、28日目の平均マイオリマス組織濃度が、約0.1ng薬物/mg組織であることを実証する(図3b)。
【0158】
実施例8:ポリマーコーティングのないマイオリマス溶出ステントの調製および生体内試験
10mgのマイオリマスをバイアルに入れ、0.1%(w/w)BHTとともに、またはなしに6mLジクロロメタンに溶解した。マイクロプロセッサ制御の超音波スプレーを使用して、約20μg(1.1μgマイオリマス/mmステント)の薬物を18mm金属ステント(Elixir Medical Corp,Sunnyvale,Calif.から入手可能)の全体表面に塗布した。コーティング後、該ステントを真空室に入れた。次に、該ステントを3.0x20mmPTCA送達カテーテルのバルーン上に載置した。次に、このカテーテルをコイルに挿入し、Tyvek(登録商標)パウチで包装した。このパウチは、酸化エチレンで滅菌した。Tyvek(登録商標)パウチを、脱酸素剤とともにホイルパウチにさらに包装し、窒素でパージして真空密閉した。
【0159】
ブタ冠動脈における28±2日目の組織学的結果を、バルーン対動脈比1.30:1.0を達成するために十分な圧力に一定速度でバルーンを膨張させた非疾患ブタ冠動脈モデルにおける実施例4の2.2μg/mm長薬物用量(40μg薬物負荷)を有するマイオリマス溶出ステントと比較することによって、1.1μg/mm長薬物用量(20μg薬物負荷)の場合のポリマーコーティングまたはBHTのないマイオリマス溶出ステントシステムの有効性を評価した。狭窄領域%は、耐久性コーティングを有するマイオリマス溶出ステントおよびポリマーコーティング群を有しないマイオリマス溶出ステントシステムの両方において、28日後に41%であることがわかった。
【0160】
本動物研究において、1.1μg/mm長薬物用量という有意に低い用量のポリマーコーティングのないマイオリマス溶出ステントは、同様のプロトコルを有する以前の研究から得られたCypherステント(約9.5μg/mm長薬物用量)プールデータと比較して、有効性は同様であり、Cypherステントの場合、平均狭窄パーセントは36±14(n=37)であった。
【0161】
実施例9:生体吸収性ポリマーを有するか、または有しないマイオリマス溶出バルーンの調製
5mgポリ(エチレンカーボネート)(PEA)を1mLジクロロメタンに室温で溶解した。10mgのマイオリマスをバイアルに入れ、0.1%(w/w)BHTとともに、またはなしに2mLジクロロメタンに溶解した。これら溶液を統合し、6mLジクロロメタンでさらに希釈した。
【0162】
マイクロプロセッサ制御の超音波スプレーを使用して、約150μg(5.6μgマイオリマス/mmバルーン)の薬物含有PEA溶液を、バルーンを回転させながら、ゴールドマーカーの間にある3.0x20mm PTCAカテーテルの折り畳まれたバルーンに塗布した。コーティング後、このカテーテルを真空室に入れた。次に、このカテーテルをコイルに挿入し、Tyvek(登録商標)パウチで包装した。このパウチは、酸化エチレンで滅菌した。Tyvek(登録商標)パウチを、脱酸素剤とともにホイルパウチにさらに包装し、窒素でパージして真空密閉した。
【0163】
バルーンはコイルから除去し、37℃の生理温度で血液とともに動脈中に運ばれた。PEAの低いガラス転移温度(Tg)(約20℃)に起因して、ポリマーは軟化し、粘着性になった。そのバルーンが拡張すると、薬物ポリマーマトリクスは、動脈の表面に粘着し標的組織に薬物を送達する。
【0164】
別の実施例において、次に、PEAを含まないジクロロメタン溶液中のマイオリマスをバルーン上に噴霧する。
【0165】
任意で、抗炎症治療薬剤のデキサメタゾン(5mg)を10mgマイオリマスと混合し、バイアルに入れて、2mLジクロロメタンに溶解し、バルーン上に噴霧した。
【0166】
実施例10:多環状ラクトンによるサイトカイン阻害
細胞培養研究において、マクロファージを活性化させ、E.Coliリポ多糖類(LPS)に対して細胞を処置することによって、MMP−9およびMCP−1等のサイトカインを分泌させる。10nM濃度のマイオリマスおよびラパマイシンを用いる活性マクロファージの処置時における、これらのサイトカインの阻害を、ELISA検定を使用して試験した。
【0167】
ステント移植後1日、3日、および7日目のMMP−9レベルは、ステント移植後6ヶ月の後期損失指数と正に相関した(ステント移植後の上昇したマトリクスメタロプロテイナーゼ発現が再狭窄と関連する。Int J Cardiol.2006;112(1):85−90)。
【0168】
マイオリマスは、ラパマイシンと比較して、サイトカインMMP−9の生成を減少させた。本研究におけるラパマイシンは、MMP−9の生成を増加させた(図4)。
【0169】
マイオリマスは、MCP−1の生成に影響を及ぼさなかったラパマイシンと比較して、サイトカインMCP−1の生成を減少させた(図5)。
【0170】
本発明における薬物送達システムで使用される化合物、例えば、マイオリマスは、MCP−1およびMMP−9等の増殖誘発サイトカインおよび転移促進サイトカインのより優れた阻害を提供することによって、より良好な治療反応、抗細胞増殖レベル、および抗細胞転移効果をもたらすことができる。
【0171】
実施例11:ヒト臨床試験における耐久性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの試験
耐久性ポリマーを有するマイオリマス被覆ステントの臨床試験を15名のヒト被験者において行った。耐久性ポリマーを有するマイオリマス被覆ステントの安全性は、死、心筋梗塞(Q波および非Q波の両方)および標的病変血管再生として定義される主要な心臓有害事象の評価を通じて臨床的に評価した。有効性は、6ヶ月における血管造影および血管内超音波(IVUS)の結果から評価した。研究の一次エンドポイントは、血管造影ステント内遅発性内腔喪失であった。二次エンドポイントは、主要な心臓有害事象(MACE)および追加の血管造影およびIVUS評価であった。臨床研究は、地域の倫理委員会によって承認され、すべての患者は、臨床研究に登録する前に、倫理承認された同意書に署名した。
【0172】
すべての患者は、アスピリンおよびクロピドグレル(300mg)を経口投与することによって事前処置し、投与は、インデックス手順の少なくとも1日前または当日に開始した。アスピリン(100mg/日より大)およびクロピドグレル(75mg/日)は、12ヶ月間継続した。病院の標準経皮的実践に従い、標準技術を使用して左右の大腿動脈にアクセスし、動脈シースを動脈に導入し、前進させた。
【0173】
インデックス手順血管造影を蛍光透視鏡ガイド下で行い、シースを通じて6または7フレンチのガイドカテーテルを挿入し、適切な位置に前進させて、冠動脈内ニトログリセリンをプロトコルにつき投与した。3.0mm〜3.5mm平均管腔直径の範囲の冠動脈のセグメントを選択し、0.014インチのガイドワイヤを挿入した。定量的冠動脈血管造影(QCA)を行い、基準血管直径を記録した。病巣の前拡張は、標準技術を使用して、ステント移植前に行った。
【0174】
前拡張後、適切なサイズのステント(3.0x18mmまたは3.5x18mm)を標的病巣に前進させた。ステントを完全に展開するために十分な圧力までバルーンを一定速度で膨張させた。圧力は、約30秒間維持した。必要に応じてステントの後拡張を行い、血管壁に対する良好なステント圧着を保証することができる。血管造影および血管内超音波撮像(IVUS)を行い記録した。
【0175】
フォローアップ血管造影およびIVUSは、6ヶ月の指定エンドポイントにおいて行った。管腔狭小の証拠、ステント圧着、およびフロー特性に関して、各血管造影およびIVUS画像を定性的に評価した。
【0176】
測定または計算した血管造影およびIVUSパラメータは以下を含む。
・辺縁血管(近位および遠位)平均管腔直径(ステント後および最終のみ)
・標的領域の平均管腔直径(すべての血管造影)
・標的領域の最小管腔直径(MLD)(ステント後および最終のみ)
・直径狭窄[1−(MLD/RVD)]x100% RVDは、閉塞位置における基準直径の計算値である(病巣のない予想血管の内挿を生成するように、ソフトウェアベースの反復線形回帰技術によって得られる測定値)(最終血管造影図のみ)
・ステント内遅発性内腔喪失[MLD最終−MLDステント後]
・IVUSによって評価されるステント内新生内膜容積パーセント
患者は、6ヶ月の臨床的および血管造影フォローアップを受けた。このフォローアップ期間中に任意の主要な心臓有害事象を経験した患者はいない。血管造影の結果は、血管造影ステント内遅発性内腔喪失の一次エンドポイントが0.15±0.11mmであったことを実証した。15名の患者うち14名にIVUS分析を行ったところ、結果は、ステント内新生内膜パーセント1.4±1.2%を示した。
【0177】
比較として、以前のパイロット研究において試験されたCypherステントは、臨床事象のない同様の臨床安全性を実証し、および6ヶ月における、徐放群(現在市販されている製剤)のステント内遅発性内腔喪失が0.09±0.3mmであり、IVUSによるステント内新生内膜容積パーセントが0.3±0.6%である(Sousa,JE,Circulation 2001;103;192−195)血管造影結果を実証した。
【0178】
実施例12:ヒト臨床試験における生体吸収性ポリマーを有するマイオリマス溶出ステントの試験
生体浸食性ポリマーを有するマイオリマス被覆ステントの臨床試験を30名のヒト被験者に行った。生体浸食性ポリマーを有するマイオリマス被覆ステントの安全性は、死、心筋梗塞(Q波および非Q波の両方)、および標的病変血管再生として定義される、主要な心臓有害事象の評価を通じて臨床的に評価した。有効性は、血管造影および血管内超音波(IVUS)の結果によって、第1群の15名の患者は6ヶ月目に、第2群の15名の患者は9ヶ月目に評価した。研究の一次エンドポイントは、血管造影ステント内遅発性内腔喪失であった。二次エンドポイントは、主要な心臓有害事象(MACE)および追加の血管造影およびIVUS評価であった。この臨床研究は、地域の倫理委員会によって承認され、すべての患者は、臨床研究に登録する前に、倫理承認された同意書に署名した。
【0179】
すべての患者は、アスピリンおよびクロピドグレル(300mg)を経口投与することによって事前処置し、投与は、インデックス手順の少なくとも1日前または当日に開始した。アスピリン(100mg/日より大)およびクロピドグレル(75mg/日)は、少なくとも12ヶ月間継続した。病院の標準経皮的実践に従い、標準技術を使用して左右の大腿動脈にアクセスし、動脈シースを動脈に導入し、前進させた。
【0180】
インデックス手順血管造影を蛍光透視鏡ガイド下で行い、シースを通じて6または7フレンチのガイドカテーテルを挿入し、適切な位置に前進させて、冠動脈内ニトログリセリンを投与した。3.0mm〜3.5mm平均管腔直径の範囲の冠動脈のセグメントを選択し、0.014インチのガイドワイヤを挿入した。定量的冠動脈血管造影(QCA)を行い、基準血管直径を記録した。病巣の前拡張は、標準技術を使用して、ステント移植前に行った。
【0181】
前拡張後、適切なサイズのステント(3.0x18mmまたは3.5x18mm)を標的病巣に前進させた。ステントを完全に展開するために十分な圧力までバルーンを一定速度で膨張させた。圧力は、約30秒間維持した。必要に応じてステントの後拡張を行い、血管壁に対する良好なステント圧着を保証することができる。血管造影および血管内超音波撮像(IVUS)を行い記録した。
【0182】
フォローアップ血管造影およびIVUSは、第1群の15名の患者のうち14名に対して、6ヶ月の指定エンドポイントにおいて行った。各血管造影図は、管腔狭小の証拠、ステント圧着、およびフロー特性について、定性的に評価した。
【0183】
測定または計算した血管造影およびIVUSパラメータは以下を含む。
・辺縁血管(近位および遠位)平均管腔直径(ステント後および最終のみ)
・標的領域の平均管腔直径(すべての血管造影)
・標的領域の最小管腔直径(MLD)(ステント後および最終のみ)
・直径狭窄[1−(MLD/RVD)]x100% RVDは、閉塞位置における基準直径の計算値である(病巣のない予想血管の内挿を生成するように、ソフトウェアベースの反復線形回帰技術によって得られる測定値)(最終血管造影図のみ)
・ステント内遅発性内腔喪失[MLD最終−MLDステント後]
・IVUSによって評価されるステント内新生内膜溶液パーセント
1名の患者が本研究から離脱し、15名の患者のうち14名が6ヶ月の臨床的および血管造影フォローアップを受けた。このフォローアップ期間中に、任意の主要な心臓有害事象を経験する患者はいない。血管造影結果は、一次エンドポイントの血管造影ステント内遅発性内腔喪失が0.37±0.44(n=14)mmであったことを示した。15名の患者のうち14名に対してIVUS分析を行ったところ、結果は、ステント内新生内膜容積14.2±7.7%を示した。
【0184】
比較として、パイロット研究で試験したCypherステントは、臨床兆候がなく、同様の臨床安全を実証し、6ヶ月における徐放群(現在市販されている製剤)のステント内遅発性内腔喪失が、0.09±0.3mmであり、IVUSによるステント内新生内膜容積パーセントが0.3±0.6%である(Sousa,JE,Circulation 2001;103;192−195)血管造影結果を実証した。
【0185】
前述の発明は、理解を明確にする目的で、例証および実施例によってある程度詳細に説明されたが、当業者であれば、所定の変更および修正修飾が、添付の請求項の範囲内で実践され得ることを理解するであろう。さらに、本明細書において提供される各参照文献は、各参照文献を参照することによって個別に組み込まれる同じ程度、参照することによってその全体が組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内使用のためのデバイスであって、
インプラントまたは一時デバイスと、
化合物を含む少なくとも1つの源と、を含み、前記化合物は、マイオリマス(Myolimus)またはその誘導体であり、前記デバイス上の化合物の量は、約10μg/cm〜約400μg/cmである、デバイス。
【請求項2】
前記デバイスは、前記化合物を体内の体管腔または臓器に放出して、細胞増殖を阻害するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスは、前記化合物を体内の体管腔または臓器に放出して、平滑筋細胞の増殖および炎症を阻害するように構成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記インプラントは、管腔プロテーゼである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記管腔プロテーゼは、拡張型足場を備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記管腔プロテーゼは、ステントまたは移植片を含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記管腔プロテーゼは、血管ステントである、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ステントは、実質的に完全に分解可能である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ステントは、バルーン拡張型である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記管腔プロテーゼは、管腔接面および組織接面を有し、前記化合物は、前記管腔および組織接面のうちの少なくとも1つと関連する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項11】
前記化合物の少なくとも75%は、約1日〜約2年の期間で前記デバイスから放出される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項12】
前記化合物の少なくとも90%は、約1日〜約6ヶ月の期間で前記デバイスから放出される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記化合物の少なくとも90%は、約1週間〜約3ヶ月の期間で前記デバイスから放出される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
少なくとも1つの源は、治療薬剤をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記治療薬剤は、抗血小板薬、抗血栓薬、抗炎症薬、抗血管新生薬、抗増殖薬、免疫抑制剤、および抗癌剤から成る群から選択されるメンバーである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記治療薬剤は、前記化合物の放出前、同時、または後に放出される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記化合物は、第1の源から放出され、前記治療薬剤は、第2の源から放出される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
前記化合物および前記治療薬剤は、単一の源から放出される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項19】
前記源は、ポリマー中に含有される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記ポリマーは、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、エチレンビニルアルコールコポリマー、シリコーン、C−フレックス、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パリレン、パリラスト、ポリ(メタクリレート)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリカーボネート、ポリアクリルアミドゲル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)コポリマー、またはポリ(エチレン酢酸ビニル)との混合、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコールメタクリレート)、ポリスチレン−b−イソブチレン−b−スチレン、フッ化ビニンリデンおよびヘキサフロオルプロピレンのコポリマー、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリLラクチド−グリコリドコポリマー、ポリLラクチド−トリメチレンカーボネートコポリマーおよびポリL−ラクチド、サリチレートベースのポリ無水物エステル、サリチル酸−共アジピン酸−共サリチル酸、サリチル酸−共ポリラクチド無水物−サリチル酸、およびホスホリルコリンから成る群から選択される、請求項19に記載のデバイス。さらなる実施形態において、前記ポリマーは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレンカーボネート)、またはポリLラクチド−グリコリドコポリマーであり得る。
【請求項21】
前記ポリマーは、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリLラクチド−グリコリドコポリマー、およびポリ(n−ブチルメタクリレート)から成る群から選択される、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ポリマーは、耐久性ポリマーである、請求項19に記載のデバイス。
【請求項23】
前記ポリマーは、生体浸食性ポリマーである、請求項19に記載のデバイス。
【請求項24】
前記化合物は、前記一時デバイスを通じて投与される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記一時デバイスは、化合物で被覆された拡張型部材である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
前記インプラントは、隣接組織に約0.001ng/gm組織〜約1000μg/gm組織の濃度で前記化合物を提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
前記インプラントは、隣接組織に約1ng/gm組織〜約500μg/gm組織の濃度で前記化合物を提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項28】
前記インプラントは、隣接組織に約100ng/gm組織〜約100μg/gm組織の濃度で前記化合物を提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項29】
前記インプラントは、ステントであり、
前記源は、約10μgマイオリマス/mmステント未満でマイオリマスを含み、前記マイオリマスは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)内に含有され、前記ポリ(n−ブチルメタクリレート)が、マイオリマスに対して約1:5〜約5:1(w/w)の比率で存在するようになっている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項30】
前記インプラントは、ステントであり、
前記源は、約10μgマイオリマス/mmステント未満でマイオリマスを含み、前記マイオリマスは、ポリ(エチレンカーボネート)内に含有され、前記ポリ(エチレンカーボネート)が、マイオリマスに対して約1:5〜約5:1(w/w)の比率で存在するようになっている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項31】
前記インプラントは、ステントであり、
前記源は、マイオリマスを含み、前記源が前記ステントを被覆し、前記マイオリマスが約10μgマイオリマス/mmステント未満で存在するようになっている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項32】
前記一時デバイスは、バルーンであり、
前記源は、約20μgマイオリマス/mmバルーン未満でマイオリマスを含み、前記マイオリマスは、ポリ(エチレンカーボネート)内に含有され、前記ポリ(エチレンカーボネート)は、マイオリマスに対して約1:5〜約5:1(w/w)の比率で存在するようになっている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項33】
前記一時デバイスは、バルーンであり、
前記源は、約20μgマイオリマス/mmバルーン未満でマイオリマスを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項34】
細胞増殖の阻害を必要とする被験体における細胞増殖を阻害する方法であって、細胞増殖を阻害するために、治療上有効量の化合物マイオリマス、またはその誘導体を前記被験体に局所投与することを含む、方法。
【請求項35】
前記化合物の前記投与は、坐薬としての投与、局所接触、非経口、血管内、静脈内、腹腔内、心膜内、筋肉内、病巣内、鼻腔内、肺、粘膜、経皮、眼球、皮下投与、または髄腔内投与による、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物の前記投与は、一時デバイスまたはインプラントを通じた送達による、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記一時デバイスは、カテーテル、バルーン、および多孔バルーンから成る群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記インプラントは、管腔プロテーゼである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記管腔プロテーゼは、拡張型足場を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
管腔プロテーゼは、ステントまたは移植片を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記インプラントは、隣接組織に約0.001ng/gm組織〜約1000μg/gm組織の濃度で前記化合物を提供する、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記インプラントは、隣接組織に約1ng/gm組織〜約500μg/gm組織の濃度で前記化合物を提供する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記インプラントは、隣接組織に約100ng/gm組織〜約100μg/gm組織の濃度で前記化合物を提供する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物のIC50は、約0.01nM〜約1μMである、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物のIC50は、約0.1nM〜約0.5μMである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物のIC50は、約1nM〜約100nMである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記化合物の有効用量は、約0.1μg〜約20mgである、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記化合物の有効用量は、約0.5μg〜約10mgである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記化合物の有効用量は、約1μg〜約5mgである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
眼の疾患の治療を必要とする被験体における眼の疾患または疾病を治療する方法であって、前記被験体に治療上有効量のマイオリマス化合物、またはその誘導体を投与して、眼の疾患または疾病を治療することを含む、方法。
【請求項51】
前記眼の疾患または疾病は、瞼の疾病、涙器系および眼窩の疾病、涙管閉塞、結膜の疾病、強膜、角膜、虹彩および毛様体の疾病、レンズの疾病、脈絡膜の疾病、網膜の疾病、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、緑内障、硝子体および眼球の疾病、視神経および視覚経路の疾病、眼筋の疾病、両眼運動の疾病、調節の疾病、および屈折の疾病、視力障害および盲目から成る群から選択されるメンバーである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記治療の方法は、細胞増殖、炎症、新血管新生、および免疫反応の阻害から成る群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記化合物は、インプラント、注射、または点眼薬により投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
投与は、眼の眼球、眼の眼球内、眼の硝子体内、または眼の脈略膜に投与する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
投与は、前記インプラントを介する、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記化合物は、浸透圧または拡散によって、前記インプラントから放出される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記化合物は、少なくとも1つの治療薬剤とともに投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記治療薬剤は、血小板薬、抗血栓薬、抗炎症薬、抗血管新生薬、抗増殖薬、免疫抑制剤、および抗癌剤から成る群から選択されるメンバーである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記治療薬剤は、ルセンティス、アバスチン、マクガン、ボロシキシマブ、オロパタジン、散瞳薬、デキサメタゾン、ピロカルピン、トロピカミド、キノロン、ガレンタミン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、アトロピン、硫酸アトロピン、塩酸アトロピン、臭化メチルアトロピン、硝酸メチルアトロピン、N−オキシドアトロピン、フェニレフリン、塩酸フェニレフリン、ヒドロキシアンフェタミン、臭化水素酸ヒドロキシアンフェタミン、塩酸ヒドロキシアンフェタミン、ヨウ化ヒドロキシアンフェタミン、シクロペントレート、塩酸シクロペントレート、ホマトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、塩酸ホマトロピン、臭化メチルホマトロピン、スコポラミン、臭化水素酸スコポラミン、塩酸スコポラミン、臭化メチルスコポラミン、硝酸メチルスコポラミン、N−オキシドスコポラミン、トロピカミド、臭化水素酸トロピカミド、塩酸トロピカミド、ピロカルピン、イソピロカルピン、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、メロキシカム、ニメスルフィド、6−MNA、L−743、L−337、NS−398、SC58125、ケトロラク、クロベタゾール、フィゾスチグミン、ステアリル塩化アンモニウム、およびベンジル塩化アンモニウムから成る群から選択されるメンバーである、請求項57に記載の方法。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−504654(P2012−504654A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530271(P2011−530271)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059396
【国際公開番号】WO2010/040064
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(507331221)エリクシアー メディカル コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】