説明

多用途車用の運転室

本発明は、2つの中空断面支持体(4、5)を有する多用途車用の運転室に関し、前端側(2)に力(F)が印加されると、中空断面支持体(4、5)が支持構造体に前記力を伝達するように、該中空断面支持体は支持構造体に接続され、支持される。本発明の目的は、多用途車用の運転室において乗員の保護を改善することである。このために、2つの中空断面支持体(4、5)間に延在する衝突要素が、少なくとも部分的に、前記中空断面支持体(4、5)の前方に配置される。このようにして、衝撃力が車両の横方向と長手方向とに有利に分配される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による多用途車用の運転室に関する。
【背景技術】
【0002】
多用途車は、一般的に独立した車体として形成される運転室を装備する。運転室の場合には、乗用車とは対照的に前方の構造が全く無い。その結果、運転室に対して真正面から、又は真正面からずれた、又は斜め方向からの前面衝突の場合に、嵌入を防ぐための他の手段が必要である。
【0003】
特許文献1には、多用途車用の運転室の基本的な支持構造体が示される。床組立体に属する床板の下方に配置された、及び運転室を側面から見て、長手方向部材が角度をなした設計となるように床板を越えて延在する2つの中空断面支持体が設けられる。前面衝突の場合には、外向きに突出する中空断面支持体によって、床組立体の支持構造体まで力を逃がすことができる。
【0004】
それゆえ特に、中空断面支持体が適切な寸法である場合、端壁への嵌入を避けることができる。
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第101 24 271 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、既存の力の経路が維持され、運転室による乗員への保護が改良されるような、多用途車用の運転室をさらに開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、前端部に力が作用する場合、中空断面支持体が支持構造体まで力を逃がすように、支持構造体に接続され、支持構造体に支持された2つの中空断面支持体を有する運転室が提供される。さらに、2つの中空断面支持体の前方に、少なくとも部分的に、衝突要素が配置される。衝突要素は2つの中空断面支持体間に延在し、その結果として、前端部に力が作用する場合、衝突要素は力を吸収し、エネルギーを吸収しながら、力を中空断面支持体まで伝達する。衝撃が車両の長手方向と車両の横方向の両方に分配され消失することによってエネルギーが吸収されるように、衝突要素は設計される。衝突の場合には衝突要素が最初に作用を受けるので、衝突要素を部分的に前方へと位置をずらすことは効果的である。
【0008】
衝突要素は、2つの中空断面支持体を互いに接続するために車両の横方向に延在するのが有利である。
【0009】
衝突要素が湾曲した断面であり、衝突要素の自由端が中空断面支持体に接続される場合には、前方に位置をずらした配置を達成することができる。
【0010】
衝撃時にエネルギーを吸収するために、湾曲した衝突要素の自由端は、変形可能な端部として設計されるのが好ましい。端部の一面及び支持部の一面の両方が湾曲した断面であるので、支持部によって2つの変形可能な端部を互いに接続することができる。
【0011】
好ましい実施形態では、運転室のフロントゲートに支持構造体を接続することができる。その結果、フロントゲートを開放するのと同時に、衝突要素を動かすことができる。
【0012】
このために、対応する中空断面支持体に、衝突要素の各端部を取り外し可能に固定することができる。この取り外し可能な固定は、たとえばロックとして製造されても良い。
【0013】
特に好ましい実施形態では、衝突要素は管状又は棒状であるだけでなく、フロントゲートの高さほぼ全てにも延在する。これは、遭遇した障害物の高さに関係なく衝突要素が作用され、それゆえエネルギーを吸収しながら力を常に支持構造体に導くことができるので有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、好ましい実施形態が示される。図1は、多用途車(特に図示せず)の運転室1を通る断面を示す。運転室1は、車両の垂直方向を通る端壁3及び2つの中空断面支持体4及び5を有するその前端部2によって示される。中空断面支持体4と5との間には、2つの中空断面支持体4及び5を互いに接続する衝突要素6が配置される。前端部2の前終端は、それぞれコーナーパネル8及び9によって側方向が囲まれるフロントゲート7によって形成される。
【0015】
2つの中空断面支持体4及び5は、本質的に五角形の断面を有する。内部の方向に面する側端4a又は5aは、端壁3と平坦に当接し、端壁3に固定される。中空断面支持体4又は5の境界壁4b又は5bが、側端4a又は5aに対してある角度をなして配置される。境界壁4b又は5bは衝突要素6の接続面を形成する。
【0016】
衝突要素6は、中央支持部10、及び支持部10の両側に配置された端部11及び12を有する。端部11及び12は変形可能に設計されるので、その変形によってエネルギーを吸収することができる。衝突要素6の断面は湾曲しているので、衝突要素6は少なくとも部分的に、2つの中空断面支持体4及び5の前方に配置される。支持部10は、接続片13を介してフロントゲート7に接続される。またフロントゲート7を開放した後で衝突要素6の後ろ側の領域に達することができるためにも、各端部11又は12と、2つの中空断面体4、5の境界壁4b及び5bとの間の接続が、取り外し可能に設計される。フロントゲート7の締結が作動されるときに開放されるロックとして、この接続を設計することが可能である。これは、衝撃時に衝突要素6が損傷を受けても、衝突要素6を簡単に取り替えることができるという利点も有する。
【0017】
本発明の運用方法は以下の通りである。
静止した又は動いている障害物14と、運転室1の前端部2との間に接触があるとき、衝突要素6に直接、作用力Fが伝わる。衝突要素6の構造が湾曲していることによって、力Fは、端部11及び12に作用する2つの力の経路F’に分かれ、端部11及び12の変形によって境界壁4b及び5bまで逃がされる。境界壁4b又は5bの傾斜した支え面によって、力の経路は、車両の横方向と車両の長手方向とにさらに分けられる。
【0018】
前面衝突の場合には、車両の横方向と車両の長手方向へのこの衝撃力の分配によって、運転室の前端部領域におけるエネルギーを多く吸収することができる。同時に、衝撃力が小さい場合には、修理及び費用の点で都合が良いように衝突要素6を交換することができるので、ボディシェル構造への損傷を避けることができる。
【0019】
本発明は、例示された実施形態で説明されている衝突要素のみに限定されるものではなく、異なる変形形態も有する。しかしながら、衝突要素は、少なくとも部分的に、中空断面支持体の前方に配置され、衝撃力を分配するためにこの2つの間に延在することが、ここでは重要である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】多用途車の運転室を通る断面を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体に接続され、該支持構造体に支持される2つの中空断面支持体を有し、前端部に力が作用する場合、前記中空断面支持体が前記支持構造体まで力を逃がす多用途車用の運転室であって、
前記2つの中空断面支持体(4、5)間に延在する衝突要素(6)が、少なくとも部分的に、前記2つの中空断面支持体(4、5)の前方に配置されることを特徴とする多用途車用の運転室。
【請求項2】
前記衝突要素(6)が車両の横方向に延在することを特徴とする請求項1に記載の運転室。
【請求項3】
前記衝突要素(6)が湾曲した断面を有し、その自由端(11、12)が前記中空断面支持体(4、5)に接続されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の運転室。
【請求項4】
前記湾曲した衝突要素(6)の前記自由端(11、12)が、支持部(10)によって互いに接続される変形可能な端部(11、12)として設計されることを特徴とする請求項3に記載の運転室。
【請求項5】
前記支持部(10)が、運転室のフロントゲート(7)に接続されることを特徴とする請求項4に記載の運転室。
【請求項6】
前記衝突要素(6)の各端部(11、12)が、対応する前記中空断面支持体(4、5)に取り外し可能に固定されることを特徴とする請求項5に記載の運転室。
【請求項7】
前記衝突要素(6)が、車両の垂直方向において、前記フロントゲート(7)の高さほぼ全てに延在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の運転室。

【公表番号】特表2007−501727(P2007−501727A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522310(P2006−522310)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008679
【国際公開番号】WO2005/016725
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】