説明

多発性硬化症についての処置

【課題】多発性硬化症についての処置を提供すること。
【解決手段】炎症性障害を有しており、第1の薬剤に対して不適切な反応を示す被験体を処置する方法であって、VLA−4結合タンパク質を、該障害を処置するために十分な量で十分な時間にわたって該被験体に投与する工程を包含し、ここで、該第1の薬剤が被験体において治療的レベルでは存在しない場合に、該VLA−4結合タンパク質が少なくとも1回投与される、方法。一つの実施形態において、前記不適切な反応は、予め決定されたレベルに満たない反応を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2004年11月19日に提出された米国仮特許出願番号60/629,700の権利を主張する。その内容全体は引用により本明細書中に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
(背景)
多発性硬化症(MS)は、最も一般的な中枢神経系の疾患の1つである。今日では、2,500,000人を上回る人が、世界中でMSに罹患している。インターフェロンβとコパキソン(copaxone)が、現在市販されているMSを処置するための有力な疾患改善治療である。インターフェロンβ治療によっては、MS患者において32〜33%、再発率を低下させることができる(非特許文献1;非特許文献2もまた参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Jacobs et al.,Ann Neurol.39:285−94,1996
【非特許文献2】Neurology 43:641−643,1993
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、VLA−4遮断療法(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ(natalizumab))は安全であり、炎症性障害(例えば、多発性硬化症)が以前に処置された患者の処置での使用に有効であるとの知見に少なくとも一部基づく。具体的には、ナタリズマブの投与によって、以前の処置(例えば、以前の生物学的治療(具体的には、以前のインターフェロンβ治療))に対して不適切な反応を以前に示したMS患者の症状に劇的な改善が生じた。したがって、1つの態様においては、本開示は、炎症性障害を有しており、そして第1の治療(例えば、第1の薬剤(例えば、本明細書中に記載される薬剤(例えば、インターフェロンβ)))に対して不適切な反応を示す被験体(例えば、ヒト被験体)を処置する方法を特徴とする。炎症性障害は、例えば、MS、関節リウマチ、炎症性腸疾患、または全身性エリテマトーデスであり得る。この方法には、被験体にVLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))を、障害を処置するために十分な量で十分な時間の間投与する工程が含まれる。VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)が被験体の中に治療的レベルでは存在しない場合には、少なくとも1回、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与することができる。(特に断りがない限りは、VLA−4結合抗体(好ましくは、ナタリズマブ)が本明細書中に記載される全ての実施形態において好ましいVLA−4結合タンパク質である。同様に、特に断りがない限りは、好ましい障害は多発性硬化症である。)
1つの実施形態においては、VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))の投与は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)の投与がない状態で、少なくとも2ヶ月間(例えば、少なくとも4ヶ月間、8ヶ月間、12ヶ月間、24ヶ月間、または48ヶ月間)継続される。
1つの実施形態においては、第1の治療(例えば、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ))は、VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))の最初の投与後は、被験体には投与されない。別の実施形態においては、VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))の投与で、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)の投与を置き換えることができる。
【0005】
不適切な反応は、例えば、本明細書中に記載されるような、予め決定されたレベルの反応に満たない反応であり得る。不適切な反応にはまた、第1の治療(例えば、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ))に対する有害な反応、または容認できないもしくは耐え難い毒性反応でもあり得る。
【0006】
1つの実施形態においては、被験体は、第1の治療(例えば、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ))が少なくとも3ヶ月間(例えば、少なくとも6ヶ月間、12ヶ月間、18ヶ月間、または24ヶ月間)にわたって以前に投与された被験体である。
【0007】
1つの実施形態においては、被験体には、障害(例えば、MS)と診断されてから、VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))がこれまでに投与されていない。
【0008】
いくつかの実施形態においては、被験体には、VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))の最初の投与の前の少なくとも1ヶ月間(例えば、少なくとも2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間、または24ヶ月間は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)は投与されていない。
【0009】
他の実施形態においては、被験体には、VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))の最初の投与の前の6週間(例えば、4週間、2週間、または1週間、あるいは、6日、5日、4日、3日、2日、または1日)以内に、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)が投与されている。
【0010】
1つの実施形態においては、被験体には、VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))の最初の投与の3ヶ月間(例えば、6ヶ月間、12ヶ月間、18ヶ月間、24ヶ月間、30ヶ月間、または36ヶ月間)以内には、ミトキサントロン、シクロホスファミド、シクロスポリン、アザチオプリン、またはメトトレキセートは投与されていない。
【0011】
1つの実施形態においては、被験体は成人(例えば、16歳、18歳、19歳、20歳、24歳、または30歳以上の年齢の被験体)である。通常、被験体は、19歳から55歳の間である。被験体は女性であっても、また、男性であってもよい。
【0012】
1つの実施形態においては、被験体は、再発寛解型多発性硬化症を有している。別の実施形態においては、被験体は、慢性進行性多発性硬化症(例えば、一次進行性(PP)多発性硬化症、二次性進行性多発性硬化症、または進行性再発性多発性硬化症)を有している。
【0013】
1つの実施形態においては、被験体は、炎症性障害(例えば、第1の治療(例えば、第1の薬剤(例えば、インターフェロン))に対しては難治性であるMS)を有している。
【0014】
1つの実施形態においては、VLA−4結合タンパク質は、VLA−4結合抗体であり、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のような全長の抗体である。通常、抗体は、有効にヒトの、ヒトの、またはヒト化された、抗体である。VLA−4結合抗体はVLA−4の同種リガンド(例えば、VCAM−1)とのVLA−4の相互作用を阻害することができる。VLA−4結合抗体は、少なくともVLA−4のα鎖に(例えば、α4サブユニットの細胞外ドメインに)結合する。例えば、VLA−4結合抗体は、VLA−4のα鎖上のエピトープB(例えば、B1またはB2)を認識する。VLA−4結合抗体は、VLA−4への結合について、ナタリズマブ、HP1/2、または本明細書中に記載される別のVLA−4結合抗体と競合する可能性があるか、またはそれらと重複するエピトープを有し得る。好ましい実施形態においては、VLA−4結合抗体はナタリズマブであるか、またはこれにはナタリズマブの重鎖および軽鎖の可変ドメインが含まれる。
【0015】
第1の治療(例えば、第1の薬剤)は、生物製剤(例えば、インターフェロンのような定義された配列のタンパク質)であり得る。1つの実施形態においては、第1の薬剤として、インターフェロンβ(例えば、インターフェロンβ−1a(例えば、AVONEX(登録商標)(インターフェロンβ−1a)またはRebif(登録商標)(インターフェロンβ−1a))またはBETASERON(登録商標)(インターフェロンβ−1b)が挙げられる。第1の薬剤はまた、定義されていない配列のタンパク質(例えば、選択されたアミノ酸のランダムな共重合体(例えば、酢酸グラチラマー(glatiramer
acetate)))でもあり得る。
【0016】
1つの実施形態においては、VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))は、1ヶ月おき(例えば、4週間に1回)の、約50から600mgの間(例えば、約200から400mgの間、例えば、静脈内(IV)経路による約300mg)の用量で達成される生体利用性の少なくとも80%(好ましくは、90%、95%、100%、110%、またはそれ以上)を達成するために十分な用量で投与される。例えば、VLA−4結合抗体は、約50から600mgの間(例えば、約200から400mgの間、例えば、約300mg)の、1ヶ月に1回のIV注射として投与される。別の例では、VLA−4結合抗体は、約25から300mgの間(例えば、50から150mgの間、例えば、約75mg)の皮下(SC)注射として、例えば、1週間に1回、1週間に2回、または2週間に1回投与される。
【0017】
いくつかの実施形態においては、VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))は、以下の1つ以上を生じるために有効な量で投与することができる:a)再発の重篤度を下げる、b)EDSSスコアの上昇を予防する、c)EDSSスコアを下げる(例えば、少なくとも6ヶ月間、1年間、またはそれ以上にわたって1点、1.5点、2点、2.5点、または3点より多く下げる)、d)新しいGd+病変の数を減少させる、e)新しいGd+病変の出現率を低下させる、およびf)Gd+病変面積の拡大を小さくする。VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)は、複数回投与で、そして少なくとも3ヶ月間、6ヶ月間、または9ヶ月間、あるいは、1年間、2年間、または3年間、再燃しないかまたは再発しない期間を維持するために有効な量で投与することができる。
【0018】
いくつかの実施形態においては、被験体は、被験体は、例えば、VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)を投与した後の反応性の兆候について評価される。当業者は、処置の有効性についての1つ以上の種々の臨床的な兆候または他の兆候(例えば、EDSSスコア;MRIスキャン;再発回数、率、または重篤度;多発性硬化症の機能的要素(multiple sclerosis functional composite(MSFC));多発性硬化症の生活の質についての質問表(multiple sclerosis quality of life inventory(MSQLI))を使用することができる。被験体を、レジメンの間の様々な時点でモニターすることができる。1つの実施形態では、被験体はインターフェロンの生体利用性については試験されない(例えば、投与前または投与後)。
【0019】
別の態様においては、本開示は、炎症性障害(例えば、多発性硬化症)を有している被験体(例えば、ヒト被験体)の処置方法を特徴とする。この方法には、多発性硬化症についての第1の薬剤での処置に対して不適切な反応を有している(例えば、MSが第1の薬剤に対して難治性である)ことを基準として被験体を選択する工程;および被験体にVLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))を障害を処置するために十分な量で十分な時間の間投与する工程が含まれる。VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)が被験体において治療的なレベルでは存在しない場合には、少なくとも1回、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与することができる。
【0020】
1つの実施形態においては、この方法には、被験体が第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)での処置について難治性である障害(例えば、多発性硬化症)を有しているかどうかを決定する工程もまた含まれる。1つの実施形態においては、障害が難治性であるかどうかを決定する工程には、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)での処置に対する反応のレベルを評価する工程(例えば、本明細書中に記載される反応を評価する工程)、および、被験体が処置に対して予め決定されたレベルの反応を満たさない場合には、被験体が第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)での処置について難治性である障害(例えば、MS)を有していることを決定する工程が含まれる。
【0021】
この方法にはまた、本明細書中に記載される他の実施形態の任意のものが含まれ得る。
【0022】
別の態様においては、本開示は、炎症性障害(例えば、多発性硬化症)を有している被験体(例えば、ヒト被験体)の処置方法を特徴とする。この方法には、被験体が第1の薬剤(例えば、本明細書中に記載される薬剤(VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)ではない))での処置に対して予め決定されたレベルの反応(例えば、本明細書中に記載される反応)を満たさないかどうか、あるいは、被験体が有害な反応、または容認できないもしくは耐え難い毒性を示すかどうかを決定する工程が含まれる。この方法には、被験体が処置に対して予め決定されたレベルの反応を満たさないか、または被験体が有害な反応、または容認できないもしくは耐え難い毒性を示す場合には、被験体にVLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)を、障害を処置するために十分な量で十分な時間の間投与する工程が含まれる。VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)が被験体において治療的なレベルでは存在しない場合には、少なくとも1回、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与することができる。
【0023】
この方法には、本明細書中に記載される他の実施態様もまた含まれ得る。
【0024】
別の態様においては、本開示は、炎症性障害(例えば、多発性硬化症)を有している被験体(例えば、ヒト被験体)の処置方法を特徴とする。この方法には、第1の薬剤(例えば、本明細書中に記載される薬剤(VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)ではない))での処置に予め決定されたレベルの反応(例えば、本明細書中に記載される反応)を満たさないか、あるいは、有害な反応、または容認できないもしくは耐え難い毒性を示す被験体を選択する工程が含まれる。この方法には、被験体が処置に対して予め決定されたレベルの反応を満たさないか、または被験体が有害な反応、または容認できないもしくは耐え難い毒性を示す場合には、被験体にVLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)を、障害を処置するために十分な量で十分な時間の間投与する工程が含まれる。VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)が被験体において治療的なレベルでは存在しない場合には、少なくとも1回、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与することができる。
【0025】
この方法には、本明細書中に記載される他の実施態様もまた含まれ得る。
【0026】
別の態様においては、本開示は、炎症性障害(例えば、多発性硬化症)を有している被験体(例えば、ヒト被験体)の処置方法を特徴とする。この方法には、被験体に、VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)を、障害を処置するために十分な量で十分な時間の間投与する工程が含まれる。被験体は、第1の薬剤(例えば、本明細書中に記載される薬剤(VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)ではない))での処置に対して予め決定されたレベルの反応(例えば、本明細書中に記載される反応)を満たさない被験体、あるいは、有害な反応、または容認できないもしくは耐え難い毒性を示す被験体であり得る。VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)が被験体において治療的なレベルでは存在しない場合には、少なくとも1回、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与することができる。
【0027】
この方法には、本明細書中に記載される他の実施態様もまた含まれ得る。
【0028】
別の態様においては、本開示は、炎症性障害(例えば、多発性硬化症)を有している被験体(例えば、ヒト被験体)の処置方法を特徴とする。この方法には、被験体に、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)を投与する工程、および第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)での処置に対する反応(例えば、本明細書中に記載される反応)について被験体を評価する工程が含まれる。この方法にはまた、被験体が、上記処置に対して予め決定されたレベルの反応を満たさないか、あるいは、有害な反応、または容認できないもしくは耐え難い毒性を示す場合には、被験体にVLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)を、障害を処置するために十分な量で十分な時間の間投与する工程が含まれる。VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)が被験体において治療的なレベルでは存在しない場合には、少なくとも1回、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与することができる。
【0029】
この方法には、本明細書中に記載される他の実施態様もまた含まれ得る。
【0030】
別の態様においては、本開示は、炎症性障害(例えば、多発性硬化症)を有している被験体(例えば、ヒト被験体)の、上記障害(例えば、多発性硬化症)の処置の有効性についての評価方法を特徴とする。この方法には、第1の薬剤(例えば、本明細書中に記載される薬剤(VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)ではない))での処置に対して予め決定されたレベルの反応(例えば、本明細書中に記載される反応)をこれまでは満たさなかった被験体、または、有害な反応、または容認できないもしくは耐え難い毒性をこれまでは示していた被験体を選択する工程が含まれる。被験体は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)が被験体において治療的なレベルでは存在しない場合には、続いてVLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)を少なくとも1回、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与される被験体である。この方法にはまた、VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)での処置に対する反応(例えば、本明細書中に記載される反応(例えば、障害に伴うパラメーター))のレベルまたは副作用を決定する工程も含まれる。
【0031】
この方法には、本明細書中に記載される他の実施態様もまた含まれ得る。
【0032】
別の態様においては、本開示は、特定の期間(例えば、少なくとも3ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、または少なくとも1年間)インターフェロンβで処置されたにもかかわらず、(a)少なくとも1回の再発、(b)新しいMRI増強病変の出現、および(c)障害(EDSS)の進行の1つ以上を有している多発性硬化症の被験体を処置する方法を特徴とする。この方法には、被験体にVLA−4結合タンパク質(例えば、VLA4−結合抗体(例えば、ナタリズマブ))を、障害を処置するために十分な量で十分な時間の間投与する工程が含まれる。VLA−4結合タンパク質(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))は、第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)が被験体において治療的なレベルでは存在しない場合には、少なくとも1回、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与することができる。
【0033】
この方法には、本明細書中に記載される他の実施態様もまた含まれ得る。
【0034】
別の態様においては、本発明は、意思(例えば、医学的または経済的意思)決定の方法を特徴とする。この方法には、以下の工程が含まれる:
炎症性障害(例えば、多発性硬化症)を有している被験体の第1の薬剤(例えば、インターフェロンβ)での処置に対する反応(例えば、本明細書中に記載される反応)についてのデータを作製または入手する(例えば、本明細書中に記載される方法によって作製された反応データを入手する)工程;ならびに
意思決定のためにデータを使用する(例えば、初回の手順と第2の手順の間での選択を行う)工程。
【0035】
好ましい実施形態においては、決定には、標準物に対してデータを比較する工程と、標準物に対するデータの関係性に基づいて決定を行う工程が含まれる。例えば、データは、反応の可能性についての値または他の項目であり得、この値または他の項目が標準物に対して予め決定された関係性を有している、例えば、データにおけるこの値または期間が参照標準物よりも大きい場合には、初回の手順が選択され、そしてデータが参照標準物よりも小さい場合には第2の手順が選択される。手順は、例えば、サービスまたは処置(例えば、VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ))を提供することまたは提供しないこと、あるいは、サービスまたは処置(例えば、ナタリズマブ)の全てまたは一部について支払うことまたは支払わないことであり得る。
【0036】
好ましい実施形態においては、最初の手順は、医学的な処置の最初の手順(例えば、VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)での処置)を示唆または提供することであり、そして第2の手順は、処置が行われないかまたは処置が提供されないことを示唆または決定することである。
【0037】
好ましい実施形態においては、最初の作用手順には、被験体に対して提供されたサービスまたは処置(例えば、VLA−4結合タンパク質(例えば、ナタリズマブ)での処置)についての支払いをするための、財源(fund)の許可または振替が含まれるか、またはそれが生じる。そして第2の手順には、被験体に提供されたサービスまたは処置についての支払いの拒絶が含まれるか、またはそれが生じる。例えば、医療費を支払うまたは補償する存在(entity)(例えば、病院、介護提供者、政府機関、または保険会社、あるいは他の存在)は、本明細書中に記載される方法の結果を、相手(例えば、被験体である患者以外の相手)が患者に対して提供されたサービスまたは処置について支払うかどうかを決定するために使用することができる。例えば、第1の機関(例えば、保険会社)は、本明細書中に記載される方法の結果を、患者に金銭を支払うかどうか、または患者の代わりに支払うかどうか、(例えば、患者に提供されたサービスまたは処置についての第三者(例えば、物品またはサービスの供給元、病院、医師、または他の介護提供者に対して補償するかどうか)が支払うかどうか)を決定するために使用することができる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
炎症性障害を有しており、第1の薬剤に対して不適切な反応を示す被験体を処置する方法であって、VLA−4結合タンパク質を、該障害を処置するために十分な量で十分な時間にわたって該被験体に投与する工程を包含し、ここで、該第1の薬剤が被験体において治療的レベルでは存在しない場合に、該VLA−4結合タンパク質が少なくとも1回投与される、方法。
(項目2)
前記不適切な反応が、予め決定されたレベルに満たない反応を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記不適切な反応が、前記第1の薬剤に対する有害な反応または容認できない毒性反応を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記炎症性障害が、前記被験体における前記第1の薬剤での処置に対して難治性である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記第1の薬剤が、インターフェロン、酢酸グラチラマー、フマレート、ミトキサントロン、化学療法剤、コルチコステロイド、免疫グロブリン、スタチン、アザチオプリン、およびTNFアンタゴニストからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記被験体に前記第1の薬剤が少なくとも6ヶ月間にわたって投与されている、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記VLA−4結合タンパク質の投与が、前記第1の薬剤の投与が存在せずに、少なくとも2ヶ月間続けられる、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記被験体には、前記VLA−4結合タンパク質の初回の投与前の少なくとも3ヶ月の間、前記第1の薬剤は投与されていない、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記被験体に、前記VLA−4結合タンパク質の初回の投与前の2週間以内に前記第1の薬剤が投与されている、項目1に記載の方法。
(項目10)
EDSSスコアの改善について前記被験体をモニターする工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記被験体には、多発性硬化症と診断されて以来、VLA−4結合タンパク質が投与されていない、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記VLA−4結合タンパク質がVLA−4結合抗体である、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記VLA−4結合抗体がVCAM−1とVLA−4との相互作用を阻害する、項目12に記載の方法。
(項目14)
VLA−4結合抗体がVLA−4の少なくともα鎖に結合する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記VLA−4結合抗体がナタリズマブである、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記VLA−4結合抗体がVLA−4に対する結合についてHP1/2またはナタリズマブと競合する、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記VLA−4結合抗体がヒト抗体であるかまたはヒト化抗体である、項目12に記載の方法。
(項目18)
前記被験体が、慢性進行性多発性硬化症、一次進行性(PP)多発性硬化症、二次性進行性多発性硬化症、または進行性再発性多発性硬化症を有している、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記被験体に複数用量のVLA−4結合タンパク質が静脈内投与され、個々の用量が200〜400mgである、項目1に記載の方法。
(項目20)
MSを有しており、少なくとも3ヶ月の間インターフェロンβで処置されたが、(a)少なくとも1回の再発、(b)新しいMRI増強病変の出現、および(c)障害(EDSS)の進行のうちの1つ以上を有している被験体を処置する方法であって、VLA−4ブロッキング抗体またはそのVLA−4結合断片を、MSを処置するために十分な量で十分な時間にわたって該被験体に投与する工程を包含し、ここで、該インターフェロンβが該被験体において治療的なレベルでは存在しない場合に、該VLA−4ブロッキング抗体が少なくとも1回投与される、方法。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(定義)
本明細書中で使用される場合は、「不適切な反応」は、患者または当業者である医師によって評価される、不十分な効果、または容認できないもしくは耐え難い毒性を示す反応を意味する。不十分な効果は、第1の薬剤での処置に対する予め決定されたレベルの反応を満たすことができないことによって定義することができる。MSの場合には、例えば、不十分な効果は、以下の1つ以上において少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上の低下を示すことができないこととして定義することができる:経時的な再発率(例えば、標準(例えば、処置前の経時的な再発率)と比較);再発の重篤度;EDDSスコア、およびMRI増強病変の量、容積、または新規の病変;あるいは、本明細書中に開示される他のパラメーター。容認できない毒性は、第1の薬剤に対する有害な反応であり得、これによっては、第1の薬剤の使用を中止することの医学的必要性、またはその推奨が生じる。容認できないもしくは耐え難い毒性の例としては、肝損傷または肝機能不全、重度のアレルギー反応、重度の憂鬱症もしくは自殺念慮、アナフィラキシー、または注射部位の壊死を挙げることができる。本明細書中に記載される方法によって、このような毒性作用の発生および/または重篤度を低下させることができる。
【0039】
1つの実施形態においては、被験体は、第1の治療に対して難治性であるMSを有している。例えば、被験体は、特定の障害についての標準的な臨床的測定によって評価した場合に、第1の治療に反応して臨床的に許容されるまたは有意な改善を示さないか、あるいは、第1の治療に反応して最初は改善を示したが、それ以上の改善を示さない。
【0040】
例えば、MSに関して、第1の薬剤での処置に対する予め決定された反応レベルは、以下の1つ以上であり得る:a)例えば、参照値と比較した経時的な(例えば、3ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、またはそれ以上)再発率の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%の低下;b)再発の重篤度の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%の低下;c)EDSSスコアの上昇の予防;d)EDSSスコアの低下(例えば、例えば少なくとも6ヶ月間、1年間、またはそれ以上にわたって0.5点、1点、1.5点、2点、2.5点、または3点超の低下)、e)新しい病変(例えば、Gd+病変)の数の減少、例えば、新しい病変の参照数と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%の減少。新しい病変の参照数は、例えば、以前の治療下で被験体において同程度の期間で現れる新しい病変の数、または処置しない条件もしくは以前の処置下での、同程度の段階または重篤度の障害を有している被験体について予想される平均数であり得る;f)新しい病変(例えば、Gd+病変)の出現率の低下、例えば、新しい病変の参照出現率と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%低下した出現率。新しい病変の参照出現率は、例えば、以前の治療下での被験体における出現率、または処置しない条件もしくは以前の処置下での、同程度の段階または重篤度の障害を有している被験体について予想される平均出現率であり得る;ならびに、g)例えば、病変面積の拡大についての参照値と比較した、病変面積(例えば、Gd+病変面積)の拡大の減少。病変面積の拡大についての参照値は、例えば、以前の治療下での被験体におけるGd+病変面積の拡大、または処置しない条件もしくは以前の処置下での、同程度の段階または重篤度の障害を有している被験体について予想される平均の拡大であり得る。
【0041】
1つの実施形態においては、被験体は、ブレイクスルー患者であり、すなわち、特定の期間(例えば、少なくとも3ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、または少なくとも1年間)第1の治療で処置されたが、(a)少なくとも1回の再発;(b)新しいMRI増強病変の出現;および(c)障害(EDSS)の進行の1つ以上を有していた患者である。
【0042】
1つの実施形態においては、被験体は、第1の治療の間に、経時的な(例えば、6ヶ月間、9ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、またはそれ以上)再発率において、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%未満の低下を有していた。いくつかの実施形態においては、被験体は、VLA−4結合剤での治療(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)の投与)の開始後に、経時的に(例えば、6ヶ月間、9ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、またはそれ以上)、少なくとも40%、45%、50%、60%、65%、70%、またはそれ以上の再発率の低下を得ることができる。
【0043】
1つの実施形態においては、被験体は、第1の治療の間に、経時的に(例えば、6ヶ月間、9ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、またはそれ以上)新規の病変(例えば、Gd+またはT2高密度(hypertense)病変)または病変の容積において、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%未満の減少を有していた。いくつかの実施形態においては、被験体は、VLA−4結合剤での治療(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)の投与)の開始後に、経時的に(例えば、6ヶ月間、9ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、またはそれ以上)新しい病変(例えば、Gd+またはT2高密度病変)または病変の容積の少なくとも50%、60%、65%、70%、80%、またはそれ以上の減少を得ることができる。
【0044】
用語「処置する」は、本明細書中で使用される場合は、障害もしくはその症状を改善する、あるいは障害もしくはその症状の進行を妨げるまたは遅らせるために有効な量、様式(例えば、投与スケジュール)、および/または態様(例えば、投与経路)で治療を投与することを意味する。これは、例えば、統計学的に有意な程度、または当業者が検出できる程度の、例えば、障害またはその症状に関係しているパラメーターの改善によって証明することができる。有効量、様式、または態様は被験体に応じて様々であり得、被験体にあわせることができる。障害またはその症状の進行を妨げるかまたは遅らせることにより、処置は、罹患したかまたは診断された被験体における障害またはその症状によって生じる悪化を防ぐまたは遅らせることができる。
【0045】
用語「生物製剤」は、タンパク質をベースとする治療薬を意味する。好ましい実施形態においては、生物製剤は、少なくとも10、20、30、40、50、または100アミノ酸残基の長さである。
【0046】
「VLA−4結合剤」は、10−6M未満のKでVLA−4インテグリンに結合する任意の化合物を意味する。VLA−4結合剤の例はVLA−4結合タンパク質であり、例えば、ナタリズマブのようなVLA−4結合抗体である。
【0047】
「VLA−4アンタゴニスト」は、VLA−4インテグリンの活性(具体的には、VLA−4インテグリンの結合活性またはシグナル伝達活性(例えば、VLA−4によって媒介されるシグナルを伝達する能力))を少なくとも部分的に阻害する任意の化合物を意味する。例えば、VLA−4アンタゴニストは、VLA−4の同種リガンド(例えば、VCAM−1のような細胞表面タンパク質)または細胞外マトリックス成分(例えば、フィブロネクチンまたはオステオポンチン))に対するVLA−4の結合を阻害することができる。典型的なVLA−4アンタゴニストは、VLA−4に、またはVLA−4リガンド(例えば、VCAM−1または細胞外マトリックス成分(例えば、フィブロネクチンまたはオステオポンチン))に結合することができる。VLA−4に結合するVLA−4アンタゴニストは、α4サブユニットまたはβ1サブユニットのいずれかに、あるいはそれらの両方に結合することができる。VLA−4アンタゴニストはまた、他のα4サブユニットを含むインテグリン(例えば、α4β7)と、または他のβ1を含むインテグリンと相互作用することもできる。VLA−4アンタゴニストは、10−6、10−7、10−8、10−9、または10−10M未満のKで、VLA−4またはVLA−4リガンドに結合することができる。
【0048】
本明細書中で使用される場合は、用語「抗体」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域(例えば、免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を提供するアミノ酸配列)を含むタンパク質を意味する。例えば、抗体には重(H)鎖可変領域(本明細書中ではVHと略される)と軽(L)鎖可変領域(本明細書中ではVLと略される)が含まれ得る。別の例では、抗体には、2つの重(H)鎖可変領域と2つの軽(L)鎖可変領域が含まれる。用語「抗体」には、抗体の抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、およびdAb断片)、さらには、完全な抗体(例えば、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM型(さらには、それらのサブタイプ)の完全な免疫グロブリン)が含まれる。免疫グロブリンの軽鎖は、κ型またはλ型であり得る。1つの実施形態においては、抗体はグリコシル化される。抗体は、抗体依存性細胞傷害性および/または補体媒介性細胞傷害性について機能的であり得る場合も、また、これらの活性の一方または両方について機能的でない場合もある。
【0049】
VHおよびVL領域は、さらに、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変性の領域、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる、より保存されている、ちりばめられている領域に分けることができる。FRとCDRの程度は正確に定義されている(Kabat、E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242;およびChothia,C.et
al.,(1987)J.Mol.Biol.196:901−917を参照のこと)。Kabatの定義が本明細書中で使用される。VHおよびVLはそれぞれ、通常は、以下の順序でアミノ末端−カルボキシル末端に向かって並べられた3個のCDRと4個のFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0050】
「免疫グロブリンドメイン」は、免疫グロブリン分子の可変ドメインまたは定常ドメインに由来するドメインを意味する。免疫グロブリンドメインには、通常、約7個のβ鎖から形成された2つのβ−シートと、保存されているジスルフィド結合が含まれる(例えば、A.F.Williams and A.N.Barclay 1988 Ann.Rev.Immunol.6:381−405を参照のこと)。
【0051】
本明細書中で使用される場合は、「免疫グロブリン可変ドメインの配列」は、免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成することができるアミノ酸配列を意味する。例えば、この配列には、自然界に存在している可変ドメインのアミノ酸配列全体またはその一部が含まれ得る。例えば、この配列には、1つ、2つ、またはそれ以上のN−またはC末端アミノ酸、内部アミノ酸が省かれている場合も、1つ以上の挿入またはさらなる末端アミノ酸が含まれている場合も、また、他の変更が含まれている場合もある。1つの実施形態においては、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドは、目的の結合構造(または「抗原結合部位」)(例えば、VLA−4と相互作用する構造)を形成するように別の免疫グロブリン可変ドメインの配列と会合させることができる。
【0052】
抗体のVHまたはVL鎖にはさらに、重鎖または軽鎖の定常領域全体またはその一部を含めることができ、それによって、重鎖または軽鎖免疫グロブリン鎖をそれぞれ形成させることができる。1つの実施形態においては、抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖と2つの免疫グロブリン軽鎖の四量体である。免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖は、ジスルフィド結合によって結合させることができる。重鎖定常領域には、通常、3つの定常ドメインCH1、CH2、およびCH3が含まれる。軽鎖定常領域には、通常、CLドメインが含まれる。重鎖および軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれる。抗体の定常領域は、通常、宿主組織または因子(免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)、および古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む)に対する抗体の結合を媒介する。
【0053】
抗体の1つ以上の領域は、ヒトのものであり得、有効にヒト領域であり得るか、またはヒト化することができる。例えば、1つ以上の可変領域は、ヒトのものであり得るか、有効にヒトの可変領域であり得る。例えば、1つ以上のCDR(例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3)はヒトのものであり得る。軽鎖CDRのそれぞれはヒトのものであり得る。HC CDR3はヒトのものであり得る。HCまたはLCの1つ以上のフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3、およびFR4)はヒトのものであり得る。1つの実施形態においては、全てのフレームワーク領域がヒトのものであり、例えば、ヒトの体細胞(例えば、免疫グロブリンを生産する造血細胞または非造血細胞)に由来する。1つの実施形態においては、ヒト配列は、生殖系の配列であり、例えば、生殖系の核酸によってコードされる配列である。1つ以上の定常領域はヒトのものであり得るか、有効にヒト定常領域であり得るか、またはヒト化させることができる。別の実施形態においては、複数のフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、およびFR3をまとめて、またはFR1、FR2、FR3、およびFR4をまとめて)または抗体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、または98%、または抗体全体がヒトのものであり得るか、有効にヒトのものであり得るか、またはヒト化させることができる。例えば、FR1、FR2、およびFR3は全体で、ヒトの生殖系のセグメントによってコードされるヒト配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、または99%同一であり得る。
【0054】
「有効にヒトの」免疫グロブリン可変領域は、その免疫グロブリン可変領域によっては正常なヒトにおいては免疫応答を誘発しないに十分な数の、ヒトのフレームワークアミノ酸の位置が含まれている免疫グロブリン可変領域である。「有効にヒトの」抗体は、その抗体が正常なヒトにおいては免疫応答を誘発しないに充分な数の、ヒトのアミノ酸位置が含まれている抗体である。
【0055】
「ヒト化」免疫グロブリン可変領域は、改変された形態が改変されていない形態よりもヒトにおいて免疫応答を少なく誘発するように改変された免疫グロブリン可変領域であり、例えば、免疫グロブリン可変領域によっては正常なヒトにおいては免疫応答を誘発しないに充分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置が含まれるように改変された免疫グロブリン改変領域である。「ヒト化」免疫グロブリンの記載には、例えば、米国特許第6,407,213号、および米国特許第5,693,762号が含まれる。いくつかの場合には、ヒト化免疫グロブリンには、1つ以上のフレームワークアミノ酸位置でヒトではないアミノ酸が含まれる場合がある。
【0056】
抗体全体または抗体の一部は、免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントによってコードされ得る。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α(IgA1およびIgA2)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子、さらには、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。全長の免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kd、または214個のアミノ酸)は、NH2末端の可変領域遺伝子(約110個のアミノ酸)と、COOH末端のκまたはλ定常領域遺伝子によってコードされる。全長の免疫グロブリン「重鎖」(約50Kd、または446アミノ酸)は、同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)と、他の上記の定常領域遺伝子(例えば、γ(約330アミノ酸をコードする))の1つによってコードされる。
【0057】
用語全長の抗体の「抗原結合断片」は、目的の標的(例えば、VLA−4)に特異的に結合する能力を保持している全長の抗体の1つ以上の断片を意味する。用語全長の抗体の「抗原結合断片」に含まれる結合断片の例としては、(i)Fab断片(VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる1価の断片);(ii)F(ab’)断片(ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含む2価の断片);(iii)VHドメインとCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の1つのアームのVLドメインとVHドメインからなるFv断片、(v)dAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544−546)、これはVHドメインからなる;ならびに、(vi)機能性を保持している単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインVLとVHは別の遺伝子によってコードされるが、これらは合成のリンカーによって組み換え方法を使用して連結させることができ、リンカーによってこれらを、VL領域とVH領域が対合して単鎖Fv(scFv)として知られている1価の分子を形成する1つのタンパク質鎖とすることができる(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423−426;およびHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879−5883を参照のこと)。
【0058】
(詳細な説明)
多発性硬化症(MS)は髄鞘の炎症および欠失を特徴とする中枢神経系の疾患である。これまでの研究によって、末梢血リンパ球上でのVLA−4の発現がインターフェロンβでの多発性硬化症の処置の後にダウンレギュレートされることが示されており、このことは、抗VLA−4抗体とインターフェロンβが同じ経路で作用することを示唆している(Calabresi et al.,Neurology 49:1111−1116,1997)。VLA−4結合タンパク質(例えば、ブロッキング抗体)は、MSについてこれまでに治療(好ましくは、インターフェロン治療)を受けた患者、および治療に対して不適切な反応を示した患者、あるいは、治療に対して最初は適切な反応を示したが、後に不適切となった患者の症状を改善することについて、劇的に有効であることがわかっている。
【0059】
(前処置)
本明細書中に記載される方法には、炎症性障害(例えば、MS)についての治療または処置(例えば、薬剤)を以前に投与された被験体が含まれる。好ましい前処置薬は、生物製剤であり、例えば、組み換え体インターフェロンβである。このような前処置の限定ではない例としては、以下の例が挙げられる:
・インターフェロン、例えば、ヒトインターフェロンβ−1a(例えば、AVONEX(登録商標)またはRebif(登録商標))およびインターフェロンβ−1b(BETASERON(商標);17位が置換されたヒトインターフェロンβ;Berlex/Chiron);
・酢酸グラチラマー(Copolymer1、Cop−1とも呼ばれる;COPAXONE(商標);Teva Pharmaceutical Industries,Inc.);
・フマレート、例えば、フマル酸ジメチル(例えば、Fumaderm(登録商標));
・Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)または別の抗CD20抗体、例えば、リツキシマブと競合するか、またはリツキシマブと重複するエピトープに結合するもの;
・ミトキサントロン(NOVANTRONE(登録商標)、Lederle);
・化学療法薬、例えば、クラブリビン(LEUSTATIN(登録商標))、アザチオプリン(IMURAN(登録商標))、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、シクロスポリン−A、メトトレキセート、4−アミノピリジン、およびチザニジン;
・コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニソロン(MEDRONE(登録商標)、Pfizer)、プレドニソン;
・免疫グロブリン、例えば、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ);CTLA4 Ig;アレンツズマブ(alemtuzumab)(MabCAMPATH(登録商標))またはダクリズマブ(daclizumab)(CD25に結合する抗体);
・スタチン;
・免疫グロブリンG i.v.(IgGIV);
・アザチオプリン;
・TNFアンタゴニスト。
【0060】
酢酸グラチラマーは、ランダムな鎖のアミノ酸−グルタミン酸、リジン、アラニン、およびチロシン(したがって、GLATiramer)から形成されるタンパク質である。これは、3部のリジン、1.5部のグルタミン酸、および1部のチロシンに対しておよそ5部のアラニンの割合のこれらのアミノ酸から、N−カルボキシアミノ酸無水物を使用して溶液中で合成することができる。
【0061】
さらに別の前処置用の薬剤としては、他のヒトサイトカインもしくは成長因子(例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−15、IL−16、IL−18,EMAP−11、GM−CSF、FGF、およびPDGF)の抗体またはアンタゴニストが挙げられる。なお他の例示的な第2の薬剤としては、細胞表面分子(例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90、またはそれらのリガンド)に対する抗体が挙げられる。例えば、ダクリズブマブ(daclizubmab)は抗CD25抗体であり、これは多発性硬化症を緩和することができる。
【0062】
なお他の例示的な抗体には、本明細書中に記載される薬剤の活性を提供する抗体、例えば、インターフェロン受容体(例えば、インターフェロンβ受容体)に関係している抗体が含まれる。
【0063】
なお他のさらなる例示的な前処置用の薬剤としては:FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド(leflunomide)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作動薬、本明細書中に記載されるようなプロ炎症性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する薬剤、IL−Iβ転換酵素阻害剤(例えば、Vx740)、抗−P7、PSGL、TACE阻害剤、T細胞シグナル伝達阻害剤、例えば、キナーゼ阻害剤、金属ロプロテイナーゼ(loproteinase)阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン(azathloprine)、6−メルカプトプリン、アンギオテンシン転換酵素阻害剤、本明細書中に記載される可溶性サイトカインレセプターとその誘導体、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−13、およびTGF)が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態においては、前処置用の薬剤は、MSの1つ以上の症状または副作用を処置するために使用されていてもよい。このような薬剤としては、例えば、アマンタジン、バクロフェン、パパベリン、メクリジン、ヒドロキシジン、スルファメトキサゾール、シプロフロキサシン、ドキュセート、ペモリン、ダントロレン、デスモプレッシン、デキサメタゾン、トルテロジン、フェニトイン、オキシブチニン、ビサコジル、ベンラファキシン、アミトリプチリン、メテナミン、クロナゼパム、イソナイアジド、バルデナフィル、ニトロフラントイン、車前子親水性粘漿薬(psyllium hydrophilic mucilloid)、アルプロスタジル、ガバペンチン、ノルトリプチリン、パロキセチン、臭化プロパンテリン、モダフィニル、フルオキセチン、フェナゾピリジン、メチルプレドニソロン、カルバマゼピン、イミプラミン、ジアゼパム、シルデナフィル、ブプロピオン、およびセルトラリンが挙げられる。低分子である多くの前処置用の薬剤は、150から5000ダルトンの間の分子量を有している。
【0065】
TNFアンタゴニストの例としては、TNF(例えば、ヒトTNFα)に対するキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはインビトロで作製された抗体(もしくはその抗原結合断片)、例えば、D2E7(ヒトTNFα抗体、米国特許第6,258,562号;BASF)、CDP−571/CDP−870/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Pharmacia)、cA2(キメラ抗TNFα抗体;REMICADE(商標)、Centocor);抗TNF抗体断片(例えば、CPD870);TNF受容体の可溶性断片(例えば、p55またはp75 ヒトTNF受容体またはその誘導体(例えば、75kdTNFR−IgG(75kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質、ENBREL(商標));Immunex;例えば、Arthritis
& Rheumatism(1994)第37巻、S295;J Invest.Med.(1996)第44巻,235Aを参照のこと)、p55 kdTNFR−IgG(55kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質(LENERCEPT(商標));酵素アンタゴニスト、例えば、TNFα転換酵素(TACE)阻害剤(例えば、α−スルホニルヒドロキサム酸誘導体、WO01/55112、およびN−ヒドロキシホルムアミドTACE阻害剤GW3333,−005,または−022);ならびに、TNF−bp/s−TNFR(可溶性TNF結合タンパク質;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)第39巻、No.9(補遣)、S284;Amer.J.Physiol.−Heart and Circulatory Physiology(1995)第268巻,pp.37−42を参照のこと)が挙げられる。
【0066】
インターフェロンβ治療に対する不適切な反応を有している患者におけるVLA−4ブロッキング治療(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)の投与)の安全性および効力プロフィールは、VLA−4ブロッキング治療が他の治療(例えば、他の生物学的治療)に対して不適切な反応を有している患者の処置にも同様に有用であろうことを示している。
【0067】
(ナタリズマブおよび他のVLA−4結合抗体)
ナタリズマブ(α4インテグリン結合抗体)は、血液から中枢神経系への白血球の移動を阻害する。ナタリズマブは、活性化させられたT細胞および他の単核白血球の表面上のVLA−4に結合する。これによって、T細胞と内皮細胞との間の接着を破壊することができ、したがって、内皮細胞を超えて実質への単核白血球の移動を妨げることができる。結果として、プロ炎症性サイトカインのレベルもまた低下させることができる。
【0068】
ナタリズマブは、再発寛解型多発性硬化症の患者および再発二次性進行性多発性硬化症の患者において、脳の病変と臨床的再発の数を減少させることができる。本明細書中に記載される結果は、ナタリズマブが、これまでにインターフェロン(例えば、インターフェロンβ(例えば、IFN−β−1a)治療を受けた多発性硬化症の患者に対して安全に投与できることを示している。ナタリズマブは、インターフェロンβ治療に対して不適切な反応を有している患者において予想以上の効力を示す。
【0069】
ナタリズマブおよび関連するVLA−4結合抗体は、例えば、米国特許第5,840,299号に記載されている。モノクローナル抗体21.6およびHP1/2は例示的なマウスモノクローナル抗体であり、これはVLA−4に結合する。ナタリズマブは、マウスモノクローナル抗体21.6のヒト化バージョンである(例えば、米国特許第5,840,299号を参照のこと)。HP1/2のヒト化バージョンもまた記載されている(例えば、米国特許第6,602,503号を参照のこと)。いくつかの別のVLA−4結合モノクローナル抗体(例えば、HP2/1、HP2/4、L25およびP4C2)は、例えば、米国特許第6,602,503号;Sanchez−Madrid et al.,1986 Eur.J.Immunol.,16:1343−1349;Hemler et al.,1987 J.Biol.Chem.2:11478−11485;Issekutz and Wykretowicz,1991,J.Immunol.,147:109(TA−2 mab);Pulido et al.,1991 J.Biol.Chem.,266(16):10241−10245;および米国特許第5,888,507号に記載されている。
【0070】
いくつかのVLA−4結合抗体は、同種リガンド(例えば、VCAM−1またはフィブロネクチン)への結合に関与しているα4サブユニットのエピトープを認識する。多くのこのような抗体は、同種リガンド(例えば、VCAM−1およびフィブロネクチン)へのVLA−4の結合を阻害する。
【0071】
いくつかの有用なVLA−4結合抗体は、細胞(例えば、リンパ球)上のVLA−4と相互作用することができるが、細胞の凝集を引き起こさない。しかし、他のVLA−4結合抗体は、このような凝集を引き起こすことが観察されている。HP1/2は細胞の凝集は引き起こさない。HP1/2モノクローナル抗体(Sanchez−Madrid et al.,1986)は極めて高力価であり、VCAM1とフィブロネクチンの両方とのVLA−4の相互作用をブロックし、そしてVLA−4上のエピトープBに対して特異性を有している。この抗体と他のBエピトープ特異的抗体(例えば、B1またはB2エピトープ結合抗体;Pulido et al.,1991,前出)は、VLA−4結合抗体の1つのクラスを示し、これは、本明細書中に記載される方法で使用することができる。VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)との結合について競合する抗体もまた、本明細書中に記載される方法で使用することができる。
【0072】
例示的なVLA−4結合抗体は1つ以上のCDR(例えば、本明細書中に開示される特定の抗体の3つのHC CDRの全ておよび/または3つのLC CDRの全て、あるいは、そのような抗体(例えば、ナタリズマブ)に対して合計で少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるCDR)を有している。1つの実施形態においては、H1およびH2超可変ループは本明細書中に記載される抗体と同じ標準的な構造を有している。1つの実施形態においては、L1およびL2超可変ループは、本明細書中に記載される抗体と同じ標準的な構造を有している。
【0073】
1つの実施形態においては、HCおよび/またはLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書中に記載される抗体(例えば、ナタリズマブ)のHCおよび/またはLC可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である。HCおよび/またはLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書中に記載される抗体(例えば、ナタリズマブ)の対応する配列とは、少なくとも1つのアミノ酸が異なり得るが、わずかに10個、8個、6個、5個、4個、3個、または2個のアミノ酸しか異ならない。例えば、この相違は主にフレームワーク領域の中である場合も、また、全てがフレームワーク領域の中である場合もある。
【0074】
HCおよびLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書中に記載される核酸配列に対して高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする核酸配列、または本明細書中に記載される可変ドメインもしくはアミノ酸配列をコードする核酸配列によってコードされ得る。1つの実施形態においては、HCおよび/またはLC可変ドメインの1つ以上のフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3、および/またはFR4)のアミノ酸配列は、本明細書中に開示される抗体のHCおよびLC可変ドメインの対応するフレームワーク領域と少なくとも70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である。1つの実施形態においては、1つ以上の重鎖または軽鎖フレームワーク領域(例えば、HC FR1、FR2、およびFR3)は、ヒトの生殖系の抗体に由来する対応するフレームワーク領域の配列と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または100%同一である。
【0075】
2つの配列の間での「相同性」または「配列同一性」(これらの用語は本明細書中ではほぼ同じ意味で使用される)の計算は以下のように行われる。配列は、最適比較の目的のためにアラインメントされる(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸の配列の一方または両方にギャップを導入することができ、そして相同ではない配列は比較の目的のためには無視することができる)。最適なアラインメントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して、12のギャップペナルティー、4のギャップ伸張ペナルティーと、5のフレームシフトギャップペナルティーを含むBlossum 62スコアリングマトリックスを用いて最良のスコアとして決定される。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列の中の1つの位置が第2の配列の中の対応する位置で同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合には、分子はその位置で同一である(本明細書中で使用される場合は、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と等価である)。2つの配列の間での同一性のパーセントは、配列が共有している同一である位置の数の関数である。
【0076】
本明細書中で使用される場合は、用語「高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションと洗浄についての条件を記載している。ハイブリダイゼーション反応を行うための指針は、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に見ることができる。これは引用により本明細書中に組み入れられる。水による方法および水によらない方法が参考文献に記載されており、いずれを使用することもできる。高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件には、約45℃で6×SSC中でのハイブリダイゼーション、その後の、65℃で0.2×SSC、0.1%のSDS中での1回以上の洗浄、あるいは実質的に同様の条件が含まれる。
【0077】
(抗体の作製)
VLA−4に結合する抗体は、例えば、動物を使用する免疫によって、またはファージディスプレイのようなインビトロでの方法によって、作製することができる。VLA−4全体またはその一部を免疫原として使用することができる。例えば、α4サブユニットの細胞外領域を免疫原として使用することができる。1つの実施形態においては、免疫された動物には、自然界に存在しているか、ヒトのものであるか、または一部がヒトである免疫グロブリン遺伝子座を有している免疫グロブリン生産細胞が含まれる。1つの実施形態においては、ヒト以外の動物には、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部が含まれる。例えば、ヒトIg遺伝子座の大きな断片を用いて、マウスの抗体生産が欠損するようにマウス系統を操作することができる。ハイブリドーマ技術を使用して、所望される特異性を有している遺伝子から誘導された抗原特異的モノクローナル抗体を生産させ、選択することができる。例えば、XenoMouse(商標)、Green et al.,Nature Genetics 7:13−21(1994)、US 2003−0070185、米国特許第5,789,650号、およびWO96/34096を参照のこと。
【0078】
VLA−4に対するヒト以外の抗体もまた、例えば、齧歯類の中で生産させることができる。ヒト以外の抗体は、例えば、米国特許第6,602,503号、EP 239 400、米国特許第5,693,761号、および米国特許第6,407,213号に記載されているように、ヒト化することができる。
【0079】
EP 239 400(Winter et al.)には、1つの種のそれらの相補性決定領域(CDR)の別の種に由来する相補性決定領域での置換(所定の可変領域の中で)による抗体の変更が記載されている。CDRが置換された抗体は、真のキメラ抗体と比較すると、おそらくヒトにおいて免疫応答の誘発を少なくできる。なぜなら、CDRが置換された抗体に含まれているヒト以外の成分は相当に少ないからである(Riechmann et al.,1988、Nature 332,323−327;Verhoeyen et al.,1988、Science 239,1534−1536)。通常、マウス抗体のCDRは、組み換え核酸技術を使用することによってヒト抗体の中の対応する領域へと置換されて、所望される置換抗体をコードする配列が生じる。所望されるアイソタイプのヒト定常領域遺伝子のセグメント(通常は、CHについてはγI、そしてCLについてはκ)を付加することができ、そしてヒト化された重鎖および軽鎖遺伝子は哺乳動物細胞の中で同時に発現させることができ、可溶性のヒト化抗体が生産され得る。
【0080】
Queen et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,86:10029−33,1989)およびWO90/07861には、もともとのマウス抗体のV領域フレームワークに対する最適なタンパク質配列相同性についてのコンピューター分析によりヒトVフレームワーク領域を選択する工程と、マウスCDRとおそらくは相互作用するフレームワークアミノ酸残基を視覚化するためにマウスV領域の三次構造をモデル化する工程を含むプロセスが記載されている。次いで、これらのマウスのアミノ酸残基が、相同なヒトフレームワークに対して重ね合わされる。米国特許第5,693,762号;同第5,693,761号;同第5,585,089号;および同第5,530,101号もまた参照のこと。Tempest et al.,1991、Biotechnology 9:266−271では、マウスの残基のラジカル導入を伴わないCDR移植のために、標準物として、それぞれ、NEWMおよびREI重鎖および軽鎖に由来するV領域フレームワークが利用される。NEWMおよびREIをベースとするヒト化抗体を構築するためにTempest et al.のアプローチを使用することの利点は、NEWMおよびREIの可変領域の三次元構造が、X線結晶解析によって明らかになっており、したがって、CDRとV領域フレームワーク残基との間での特異的相互作用をモデル化できることである。
【0081】
ヒト以外の抗体は、特定の位置(例えば、以下の位置の1つ以上(好ましくは、少なくとも5個、10個、12個、または全て))にヒト免疫グロブリン配列(例えば、コンセンサスヒトアミノ酸残基)を挿入する置換を含むように改変することができる:(軽鎖の可変ドメインのFRの中の)4L、35L、36L、38L、43L、44L、58L、46L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、73L、85L、87L、98L、および/または(重鎖の可変ドメインのFRの中の)2H、4H、24H、36H、37H、39H、43H、45H、49H、58H、60H、67H、68H、69H、70H、73H、74H、75H、78H、91H、92H、93H、および/または103H(Kabatナンバリングにしたがう)。例えば、米国特許第6,407,213号を参照のこと。
【0082】
VLA−4に結合する完全にヒトのモノクローナル抗体は、例えば、Boerner et al.,1991、J.Immunol.,147,86−95に記載されているように、インビトロで感作させられたヒト脾臓細胞を使用して生産させることができる。これらは、Persson et al.,1991,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,88:2432−2436またはHuang and Stollar,1991,J.Immunol.Methods 141,227−236;また、米国特許第5,798,230号に記載されているように、レパートリークローニングによって調製することができる。大きな免疫されていないヒトファージディスプレイライブラリーもまた、標準的なファージ技術を使用してヒト治療薬として開発することができる高親和性抗体を単離するために使用することができる(例えば、Vaughan et al.,1996;Hoogenboom et al.,(1998)Immunotechnology 4:1−20;およびHoogenboom et al.,(2000)Immunol Today 2:371−8;US 2003−0232333を参照のこと)。
【0083】
(抗体の生産)
抗体は、原核生物細胞および真核生物細胞の中で生産させることができる。1つの実施形態においては、抗体(例えば、scFv)は、酵母細胞(例えば、ピキア属(Pichia)(例えば、Powers et al.,(2001)J Immunol Methods.251:123−35を参照のこと)、ハンゼヌラ属(Hanseula)、またはサッカロマイセス属(Saccharomyces))の中で発現させられる。
【0084】
1つの実施形態においては、抗体(特に、全長の抗体(例えば、IgG))は、哺乳動物細胞の中で生産させられる。組み換え発現のための例示的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(DHFR選択マーカー(例えば、Kaufman and Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されているもの)と共に使用される、Urlaub and Chasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216−4220に記載されているdhfr−CHO細胞を含む)、リンパ球細胞株(例えば、NS0骨髄腫細胞およびSP2細胞)、COS細胞、K562、ならびにトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニック哺乳動物)に由来する細胞が挙げられる。例えば、細胞は、哺乳動物の上皮細胞である。
【0085】
免疫グロブリンドメインをコードする核酸配列に加えて、組み換え発現ベクターは、さらに別の核酸配列(例えば、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子)を有することができる。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、および同第5,179,017号を参照のこと)。例示的な選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅とともにdhfr細胞中で使用される)およびneo遺伝子(G418選択のため)が挙げられる。
【0086】
抗体(例えば、全長の抗体またはその抗原結合部分)の組み換え発現のための例示的なシステムにおいては、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターがdhfr−CHO細胞に、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによって導入される。組み換え発現ベクターの中では、抗体重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子はそれぞれ、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来するもの、例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント、またはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント)に動作可能であるように連結されており、遺伝子の高レベルの転写を駆動する。組み換え発現ベクターはDHFR遺伝子も有しており、これにより、メトトレキセート選択/増幅を使用してベクターでトランスフェクトされたCHO細胞を選択することができる。選択された形質転換された宿主細胞は培養されて抗体重鎖および軽鎖が発現させられ、完全な抗体が培養培地から回収される。標準的な分子生物学的技術が、組み換え発現ベクターを調製するため、宿主細胞をトランスフェクトするため、形質転換体を選択するため、宿主細胞を培養するため、そして培養培地から抗体を回収するために使用される。例えば、いくつかの抗体は、プロテインAまたはプロテインGを用いてアフィニティークロマトグラフィーによって単離することができる。
【0087】
抗体には改変(例えば、Fc機能を変化させる(例えば、Fc受容体もしはC1qと、または両方との相互作用を減少させるか排除する)改変)も含まれる場合がある。例えば、ヒトIgG1定常領域は1つ以上の残基(例えば、234位および237位の残基(米国特許第5,648,260号のナンバリングにしたがう)の1つ以上)で変異させることができる。他の例示的な改変としては、米国特許第5,648,260号に記載されているものが挙げられる。
【0088】
Fcドメインを含むいくつかの抗体については、抗体生産システムは、Fc領域がグリコシル化される抗体を合成するように設計することができる。例えば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメインの297位のアスパラギンでグリコシル化される。このアスパラギンは2分岐型のオリゴ糖で修飾される部位である。このグリコシル化は、Fcγ受容体と補体C1qによって媒介されるエフェクター機能に関与している(Burton and Woof(1992)Adv.Immunol.51:1−84;Jefferis et al.,(1998)Immunol.Rev.163:59−76)。Fcドメインは、297位のアスパラギンに対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳動物発現システムにおいて生産させることができる。Fcドメインにはまた、他の真核生物による翻訳後修飾も含まれ得る。
【0089】
抗体はトランスジェニック動物によって生産させることもできる。例えば、米国特許第5,849,992号には、トランスジェニック動物の乳腺で抗体を発現させるための方法が記載されている。乳汁特異的プロモーターと目的の抗体(例えば、本明細書中に記載される抗体)と、分泌のためのシグナル配列をコードする核酸配列を含むトランス遺伝子が構築される。このようなトランスジェニック哺乳動物の雌によって生産された乳汁には、その中に分泌された目的の抗体(例えば、本明細書中に記載される抗体)が含まれる。抗体は乳汁から精製することができ、また、一部の用途については直接使用することもできる。
【0090】
抗体は、例えば、循環の中(例えば、血液、血清、リンパ、気管支肺胞洗浄、または他の組織の中)でのその安定性および/または保持率を、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、または50倍改善する部分を用いて改変することができる。
【0091】
例えば、VLA−4結合抗体は、ポリマー(例えば、実質的に非抗原性であるポリマー(例えば、ポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシド))と結合させることができる。適切なポリマーは重量が相当に様々である。約200から約35,000ダルトン(または、約1,000から約15,000、および2,000から約12,500)の範囲の数平均分子量(molecular number average weight)を有しているポリマーを使用することができる。
【0092】
例えば、VLA−4結合抗体は、水溶性ポリマー(例えば、親水性ポリビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン))に結合させることができる。このようなポリマーの限定ではないリストとしては、ポリアルキレンオキシドホモポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール)、ポリオキシエチレン化ポリオール、そのコポリマーおよびそのブロックコポリマー(ブロックコポリマーの水溶性が維持されるという条件で)が挙げられる。別の有用なポリマーとしては、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(Pluronics);ポリメタクリレート;カルボマー;糖単量体であるD−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、フルクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸(例えば、ポリマンヌロン酸またはアルギン酸)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルコース、およびノイラミン酸の分岐したまたは未分岐の多糖類(ホモ多糖およびヘテロ多糖(例えば、ラクトース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、デキストラン硫酸、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸性ムコ多糖(例えば、ヒアルロン酸)の多糖サブユニット)を含む);糖アルコールのポリマー(例えば、ポリソルビトールおよびポリマンニトール);ヘパリンまたはヘパロンが挙げられる。
【0093】
(薬学的組成物)
VLA−4結合剤(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))は、薬学的組成物として処方することができる。通常、薬学的組成物には薬学的に許容される担体が含まれる。本明細書中で使用される場合は、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性である、溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などの任意のもの、および全てが含まれる。
【0094】
「薬学的に許容される塩」は、もとの化合物の所望される生物学的活性を保持しており、そしていずれの望ましくない毒性効果をも与えることのない塩を意味する(例えば、Berge,S.M.,et al.,(1997)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照のこと)。このような塩の例としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、非毒性の無機酸(例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)に由来するもの、ならびに、非毒性の有機酸(例えば、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸など)に由来するものが挙げられる。塩基付加塩としては、アルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)に由来するもの、ならびに、非毒性の有機アミン(例えば、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなど)に由来するものが挙げられる。
【0095】
ナタリズマブおよび本明細書中に記載される他の薬剤は、標準的な方法にしたがって処方することができる。薬学的処方は十分に確立されている分野であり、Gennaro(編),Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,Lippincott,Williams & Wilkins(2000)(ISBN:0683306472);Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,第7版,Lippincott Williams &
Wilkins Publishers(1999)(ISBN:0683305727);およびKibbe(編),Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,第3版,(2000)(ISBN:091733096X)にさらに記載されている。
【0096】
1つの実施形態においては、ナタリズマブまたは別の薬剤(例えば、別の抗体)は、賦形剤(例えば、塩化ナトリウム、第二リン酸ナトリウム7水和物、第一リン酸ナトリウム、およびポリソルベート80)と共に処方することができる。例えば、これは、約20mg/mlの濃度で緩衝化された溶液の中に提供することができ、2〜8℃で保存することができる。ナタリズマブは、製造業者のラベルに記載されているように処方することができる。
【0097】
薬学的組成物はまた、種々の他の形態であってもよい。これらには、例えば、液体、半固体、および固体の投与形態が含まれ、例えば、液体溶液(例えば、注射可能な、および注入可能な溶液)、分散液、または懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、ならびに坐剤が含まれる。好ましい形態は、意図される投与形式および治療用途に応じて様々であり得る。通常、本明細書中に記載される薬剤の典型的な組成物は、注射可能なまたは注入可能な溶液の形態である。
【0098】
このような組成物は、非経口形式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)によって投与することができる。表現「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、本明細書中で使用される場合は、腸および局所投与以外の、通常は、注射による投与形式を意味し、そしてこれには、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、硬膜外、および胸骨内の注射および注入が含まれるが、これらに限定はされない。
【0099】
薬学的組成物は、通常は滅菌でなければならず、そして製造および保存条件下で安定なければならない。薬学的組成物はまた、それが投与のための規制基準と業界基準を満たすことを確実にするために試験することができる。
【0100】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高い薬物濃度に適している他の秩序のある構造として処方することができる。滅菌の注射可能な溶液は、必要量の本明細書中に記載される薬剤を、適切な溶媒の中に、必要に応じて上記の成分の1つまたは上記の成分の組み合わせと共に取り込ませ、その後、濾過滅菌することによって調製することができる。通常、分散液は、本明細書中に記載される薬剤を、基本分散媒体と上記のものから必要な他の成分を含む滅菌の媒体に取り込ませることによって調製される。滅菌の注射可能な溶液の調製のための滅菌の粉末の場合には、好ましい調製方法は減圧乾燥および凍結乾燥であり、これによって、本明細書中に記載される薬剤と、任意の別の所望される成分の粉末が、先の滅菌濾過されたその溶液から得られる。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒子の大きさの維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせる物質(例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチン)を組成物に含めることによっても得ることができる。
【0101】
(投与)
VLA−4結合抗体は、種々の方法によって被験体(例えば、ヒト被験体)に投与することができる。多くの適用については、投与経路は以下の1つである:静脈内注射もしくは注入、皮下注射、または筋肉内注射。VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)は、固定用量として、またはmg/kgの用量で投与することができるが、固定用量として投与されることが好ましい。抗体は、静脈内(IV)または皮下(SC)に投与することができる。
【0102】
抗体(例えば、ナタリズマブ)は、通常、50〜1000mgのIV(例えば、100〜600mgのIV、例えば、約300mgのIV)の固定された単位用量で投与される。単位用量は、4週間おきに、またはそれよりも少ない頻度で、またはそれよりも多い頻度で(例えば、2週間おきに、または毎週)投与することができる。皮下に投与される場合は、抗体は通常、50〜100mgのSC(例えば、75mg)の用量で、例えば、少なくとも1週間に1回(例えば、1週間に2回)投与される。これはまた、1から10mg/kg(例えば、約6.0mg/kg、約4.0mg/kg、約3.0mg/kg、約2.0mg/kg、約1.0mg/kg)の用量でボーラスとして投与することもできる。いくつかの場合には、(例えば、皮下ポンプからの)連続投与が、必要であり得る。
【0103】
用量はまた、VLA−4結合抗体に対する抗体の生産を減少させるまたは回避するように、α4サブユニットの40%、50%、70%、75%、または80%超の飽和を達成するように、α4サブユニットの80%、70%、60%、50%、または40%未満の飽和を達成するように、あるいは、白血球の循環レベルの増加を予防するように選択することもできる。
【0104】
特定の実施形態においては、有効薬剤は、迅速な放出から化合物を防御する担体とともに調製されてもよく、例えば、徐放処方物(インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む)である。生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができ、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸である。このような処方物の調製のための多くの方法は特許がとられているか、または一般的に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,編,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこと。
【0105】
薬学的組成物は、医療用器具を用いて投与することができる。例えば、薬学的組成物は、針のない皮下注射用器具(例えば、米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、または同第4,596,556号に開示されている器具)を用いて投与することができる。周知のインプラントおよびモジュールの例としては、以下が挙げられる:米国特許第4,487,603号、これには、制御された速度で薬剤を分散させるための埋め込み型のマイクロ注入ポンプが開示されている;米国特許第4,486,194号、これには、皮膚を介して薬剤を投与するための治療用器具が開示されている;米国特許第4,447,233号、これには、正確な注入速度で薬剤を投与する医療用注入ポンプが開示されている;米国特許第4,447,224号、これには、持続的な薬剤の送達のために流量を変えることができる埋め込み型注入装置が開示されている;米国特許第4,439,196号、これには、多チャンバー区画を有している浸透圧型薬剤投与システムが開示されている;ならびに、米国特許第4,475,196号、これには、浸透圧型薬剤送達システムが開示されている。もちろん、多くの他のこのようなインプラント、投与システム、およびモジュールもまた公知である。
【0106】
単位投与量形態または「固定用量」は、本明細書中で使用される場合は、処置される被験体について1単位の投与量として適している物理的に分離されている単位を意味する;個々の単位には、必要な薬学的担体と組み合わせて、そして状況によっては他の薬剤と組み合わせて、所望される治療効果を生じるように計算された予め決定された量の活性のある化合物が含まれる。
【0107】
薬学的組成物には、「治療有効量」の本明細書中に記載される薬剤が含まれ得る。薬剤の治療有効量はまた、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重などの要素、および個体において所望される反応(少なくとも1つの障害についてのパラメーター(例えば、多発性硬化症のパラメーター)の緩和、または、障害(例えば、多発性硬化症)の少なくとも1つの症状の緩和)を誘発する化合物の能力に応じても様々であり得る。治療有効量はまた、治療上有効な効果が組成物の任意の毒性または有害な影響を上回る量でもあり得る。
【0108】
(多発性硬化症)
多発性硬化症(MS)は、髄鞘の炎症および欠失を特徴とする中枢神経系の疾患である。
【0109】
MSを有している患者は、MSの診断についての研究会によって定義された(Poser et al.,Ann.Neurol.13:227,1983)とおりの臨床上明確なMSの診断を確立する基準によって認定することができる。簡単に説明すると、臨床上明確なMSを有している個体は2回の発作と、いずれの2つの病変の臨床的な証拠、または1つの病変の臨床的証拠、ならびに、別の離れた病変の前臨床的証拠を有している。明確なMSはまた、2回の発作の証拠と脳脊髄液中のIgGのオリゴクローナルなバンドによって、または、発作、2つの病変の臨床的証拠と、脳脊髄液中のIgGのオリゴクローナルナバンドの組み合わせによっても診断することができる。McDonald基準もまた、MSを診断するために使用することができる。(McDonald et al.,2001,Recommended diagnostic criteria for multiple sclerosis:guidelines from the International Panel on the Diagnosis of Multiple Sclerosis,Ann Neurol 50:121−127)。McDonald基準には、多発性硬化症の発作が起こっていない場合の、MSの診断に使用される経時的なCNS機能障害のMRIによる証拠の使用が含まれる。多発性硬化症の有効な処置は、いくつかの様々な方法で評価することができる。以下のパラメーターを処置の有効性を評価するために使用することができる。2つの例示的な基準としては、EDSS(拡大障害尺度)、およびMRI(核磁気共鳴画像診断法)上での症状再燃の出現が挙げられる。EDSSは、MSが原因である臨床的機能障害を分類する手段である(Kurtzke,Neurology 33:1444,1983)。8種類の機能システムが、神経学的機能障害のタイプと重篤度について評価される。簡単に説明すると、処置の前に、患者は以下の系の機能障害について評価される:運動野、小脳、脳幹、感覚、腸および膀胱、視覚、脳など。追跡調査は定義された間隔で行われる。目盛は0(正常)から10(MSにより死亡)までの範囲である。1段階の完全な低下は有効な処置を示す(Kurtzke,Ann.Neurol.36:573−79,1994)。
【0110】
悪化は、MSが原因であり、適切な新しい神経学的異常を伴う新しい症状の出現として定義される(IFNB MS Study Group,前出)。加えて、悪化は、少なくとも24時間持続しなければならず、そして少なくとも30日間の安定または改善がそれに先行していなければならない。簡単に説明すると、患者には、医師によって標準的な神経学的試験が行われる。悪化は、神経学的評価尺度(Neurological Rating Scale)における変化にしたがって、軽度、中度、または重度のいずれかである(Sipe et al.,Neurology 34:1368,1984)。1年間での悪化率、および悪化しないまま維持している患者の割合が決定される。
【0111】
治療は、これらの測定値のいずれかについて、処置されたグループとプラセボのグループの間に、悪化しないまま維持している患者または再発なしを維持している患者の比率または割合における統計学的に有意な差が存在する場合には、有効と考えることができる。加えて、最初の悪化までの時間、ならびに悪化期間と重篤度もまた測定され得る。これに関する治療の有効性の尺度は、対照グループと比較した処置されたグループにおける最初の悪化までの時間、または期間および重篤度の統計学的に有意な差である。1年間、18ヶ月間、または20ヶ月間よりも長い、悪化しないまま維持している期間、または再発なしを維持している期間は特に注目に値する。
【0112】
臨床的な尺度には、1年および2年の間隔での再発率、EDSSにおける変化(6ヶ月間持続するEDSSについてベースラインから1.0単位上回るまでに進行するまでの時間を含む)が含まれる。カプラン・マイヤー曲線については、障害の持続的な進行の遅延が効力を示す。他の基準としては、MRI上のT2画像の面積および容積、ならびに、ガドリニウム増強画像によって決定される病変の数および容積の変化が挙げられる。
【0113】
MRIは、ガドリニウム−DTPA増強画像を使用して活動性病変を(McDonald et al.,Ann.Neurol.36:14,1994)、またはT重み付け技術を使用して病変の位置および程度を測定するために使用することができる。簡単に説明すると、ベースラインMRIが得られる。同じ画像平面と患者の位置が、それぞれのその後の実験のために使用される。位置決定および画像化の順序は、病変の検出が最大限となり、そして病変の追跡が容易になるように選択することができる。同じ位置と画像化順序を、その後の実験で使用することができる。MS病変の存在、位置、および程度は、放射線科の医師によって決定され得る。病変の領域の輪郭を描くことができ、そして病変面積全体をスライス毎に積算することができる。3種類の分析が行われ得る:新しい病変の証拠、活動性病変の出現率、病変面積の変化率(%)(Paty et al.,Neurology 43:665,1993)。治療が原因である改善は、ベースラインと比較した、またはプラセボのグループに対して処置されたグループにおける、個々の患者における統計学的に有意な改善によって確立することができる。
【0114】
本明細書中に記載される方法で処置することができる多発性硬化症に伴う例示的な症状としては、以下が挙げられる:視神経炎、複視、眼振、眼のディスメトリア、核間性眼筋麻痺、運動および音の眼内閃光、求心性の瞳孔反応消失、不全麻痺、単不全麻痺、不全対麻痺、片側不全麻痺、四肢不全麻痺(quadraparesis)、麻痺状態、対麻痺、片麻痺、四肢麻痺(tetraplegia)、四肢麻痺(quadraplegia)、痙性、構音障害、筋萎縮、攣縮、痙攣(cramps)、低血圧、間代性痙攣、間代性筋痙攣、ミオキミア、下肢静止不能症候群、下垂足、反射神経機能不全、感覚異常、麻酔、神経痛、神経因性疼痛および神経原性疼痛、レールミット徴候、固有受容機能不全(proprioceptive dysfunction)、三叉神経痛、運動失調、企図振せん、ディスメトリア、前庭性運動失調、眩暈、発語運動失調(speech ataxia)、ジストニー、拮抗運動反復不全、頻尿、膀胱痙攣、弛緩性膀胱、排尿筋・括約筋筋失調、勃起障害、性感異常症、不感症、便秘、排泄の切迫(fecal urgency)、便失禁、鬱病、認知機能障害、認知症、感情起伏、情緒不安定、陶酔感、双極性障害、不安神経症、失語症、不全失語症、疲労、ウートホフ症候群、胃食道逆流、ならびに、睡眠障害。
【0115】
MSの個々の症例は、症状およびその後の経過についてのいくつかのパターンのうちの1つを示す。最も一般的には、MSは最初、一連の発作としてそれ自体が発症し、その後、原因不明の症状の緩和としての完全寛解または部分寛解が続き、結局は安定期の後にもとに戻る。これは再発寛解型(RR)MSと呼ばれる。一次進行性(PP)MSは、明確な寛解のない段階的な臨床的低下を特徴とするが、症状の一時的な停滞または症状の少しの軽減が存在し得る。二次性進行性(SP)MSは、再発寛解型の経過で始まり、後に一次進行性の経過が続く。まれに、患者は、疾患が急な発作によって中断させられた進行性の経過をたどる、進行性再発性(PR)の経過を有し得る。PP、SP、およびPRは、しばしば一緒にされ、そして慢性進行性MSと呼ばれる。
【0116】
少数の患者は、有意な障害、またはさらには、疾患の発症後間もなくの死亡を生じる、素早く、そして容赦のない悪化(decline)として定義される悪性のMSを経験する。この悪化(decline)は、本明細書中に記載される併用療法の投与によって停止させる、または減速させることができる。
【0117】
ヒトでの実験に加えて、またはヒトでの実験の前に、動物モデルを使用して処置の効力を評価することができる。多発性硬化症の例示的な動物モデルは、例えば、Tuohy et al.,(J.Immunol.(1988)141:1126−1130)、Sobel et al.,(J.Immunol.(1984)132:2393−2401)、およびTraugott(Cell Immunol.(1989)119:114−129)に記載されているような、実験用の自己免疫性脳炎(EAE)マウスモデルである。マウスには、EAEの誘導の前に本明細書中に記載される薬剤を投与することができる。その後、マウスは、モデルにおける薬剤の使用の効力を決定するための特徴的な基準について評価される。
【0118】
(他の障害)
本明細書中に記載される方法はまた、インターフェロン治療に対して不適切な反応を示した患者の他の炎症性障害、免疫障害、または自己免疫障害を処置するために使用することができる。このような障害としては、中枢神経系の炎症(例えば、多発性硬化症に加えて、髄膜炎、視神経脊髄炎、神経サルコイドーシス、CNS脈管炎、脳炎、および横断性脊髄炎);組織もしくは臓器移植片拒絶、または移植片対宿主病;急性CNS損傷(たとえば、脳卒中または脊髄損傷);慢性腎疾患;アレルギー(例えば、アレルギー性喘息);1型糖尿病;炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎);重症筋無力症;線維筋痛;関節障害(例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎);炎症性/免疫性皮膚障害(例えば、乾癬、白斑、皮膚炎、扁平苔癬);全身性エリテマトーデス;シェーグレン症候群;血液ガン(例えば、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫);固形ガン(例えば、(例えば、肺、乳房、前立腺、脳の)肉腫またはガン腫);ならびに、繊維性障害(例えば、肺線維症、骨髄線維症、肝硬変、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性ネフロパシー、および腎間質線維症)が挙げられる。
【0119】
例えば、VLA−4結合剤(例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ))は、これらの、および他の炎症性障害、免疫障害、または自己免疫性障害(例えば、別の薬剤(単数または複数)(例えば、本明細書中に記載される薬剤(単数または複数))での処置に対して不適切な反応を示す障害)を処置するために投与することができる。
【0120】
(キット)
VLA−4結合剤(例えば、ナタリズマブ)は、キットにおいて提供することができる。1つの実施形態においては、キットには、(a)両方のVLA−4結合剤(例えば、ナタリズマブ)を含む組成物を含む容器と、状況に応じて(b)情報が記載された資料が含まれる。情報が記載された資料は、本明細書中に記載される方法、および/または治療的有用性についての薬剤の使用に関する説明、教示、販売、または他の資料であり得る。
【0121】
キットの情報が記載された資料はその形態に限定されない。1つの実施形態では、情報が記載された資料には、化合物の生産、化合物の分子量、濃度、耐用期限、バッチ、または製造地についての情報などについての情報が含まれ得る。1つの実施形態においては、情報が記載された資料は、VLA−4結合剤の投与方法(例えば、適切な投与の量、方法、または形式(例えば、本明細書中に記載される投与の用量、投与形態、または形式))に関する。この方法はまた、例えば、これまでにインターフェロンβ治療を受けた患者において、多発性硬化症を処置する方法であり得る。
【0122】
キットの情報が記載された資料はその形態に限定されない。多くの場合、情報が記載された資料(例えば、説明書)が、印刷されたもの(例えば、印刷されたテキスト、図面、および/または写真(例えば、ラベル、または印刷されたシート))として提供される。しかし、情報が記載された資料は、他の形態(例えば、点字、コンピューターで読み取ることができる資料、ビデオ記録、または録音記録)として提供される場合もある。別の実施形態においては、キットの情報が記載された資料は連絡先、例えば、実際の住所、メールアドレス、ウェブサイト、または電話番号であり、この場合、キットの使用者はそこで薬剤および/または本明細書中に記載される方法でのその使用についての実質的な情報を得ることができる。もちろん、情報が記載された資料はまた、任意の形態の組み合わせとして提供される場合もある。
【0123】
VLA−4結合剤に加えて、キットの組成物には、溶媒もしくは緩衝液、安定剤、または保存剤のような他の成分も含まれ得る。キットにはまた、他の薬剤(例えば、第2または第3の薬剤(例えば、他の治療薬))も含まれる場合がある。
【0124】
薬剤は任意の形態(例えば、液体、乾燥させられた形態、または凍結乾燥させられた形態)で提供され得る。薬剤は実質的に純粋であり(しかし、これらには一緒に混合することができ、また互いに別々に投与することもできる)、そして/あるいは、滅菌であることが好ましい。薬剤が液体の溶液として提供される場合には、液体の溶液は好ましくは水溶液であり、滅菌の水溶液が好ましい。薬剤が乾燥させられた形態として提供される場合には、通常、適切な溶媒の添加によって再構成が行われる。溶媒(例えば、滅菌水または緩衝液)は、状況に応じてキットの中に提供され得る。
【0125】
キットには、複数の薬剤を含む組成物(単数または複数)のための1つ以上の容器が含まれ得る。いくつかの実施形態においては、キットには、組成物と情報が記載されている資料のための別々の複数の容器、仕切り、または区画が含まれる。例えば、組成物は、ビン、バイアル、または注射器に含めることができ、そして情報が記載された資料は、プラスチック製のスリーブまたはパケットに含めることができる。他の実施形態においては、キットの別のエレメントが、1つの分けられていない容器に含まれる。例えば、組成物は、ラベルの形態で情報が記載された資料が貼り付けられている、ビン、バイアル、または注射器に含まれる。いくつかの実施形態においては、キットには、複数の個別の容器(例えば、パック)が含まれ、それぞれに、薬剤の1つ以上の単位投与量形態(例えば、本明細書中に記載される投与量形態)が含まれる。容器には、単位投与量が含まれ得、例えば、1単位には、VLA−4結合剤が含まれる。例えば、キットには、複数の注射器、アンプル、ホイルパケット、ブリスターパック、または医療用器具(例えば、それぞれに1単位の用量が含まれる)が含まれる。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、水分または蒸気の変化に対して不浸透性)、および/または光不透過性(light−tight)であり得る。
【0126】
キットには、状況に応じて、組成物の投与に適している器具(例えば、注射器または他の適切な投与のための器具)が含まれる。器具は、VLA−4結合剤(例えば、単位用量の)が予め充填された状態で提供されている場合も、また、空で、しかし、充填に適している状態で提供される場合もある。
【0127】
本明細書中に含まれる全ての参考文献および刊行物は、引用により本明細書中に組み入れられる。以下の実施例は限定とは意図されない。
【実施例】
【0128】
(実施例1:AFFIRM実験およびSENTINEL実験)
AFFIRM実験とSENTINEL実験(Rudick et al.,2003、Neurology 60 補遣.1:A479)の13ヶ月の臨床的終点をそれぞれ、表1と2に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

他の実施形態は特許請求の範囲の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2012−233009(P2012−233009A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−188532(P2012−188532)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2007−543322(P2007−543322)の分割
【原出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】