説明

多発性硬化症の長期処置

【課題】多発性硬化症(MS)を有する被験体を処置する方法であって、当該方法は、
当該被験体に対して、治療上有効な量のVLA−4結合抗体を少なくとも24時間投与する工程;
を包含する、方法の提供。
【解決手段】多発性硬化症(MS)を有する被験体を処置する方法であって、当該方法は、
当該被験体に対して、治療上有効な量のVLA−4結合抗体を少なくとも24時間投与する工程;
を包含する、方法。多発性硬化症(MS)を有する被験体を処置する方法であって、当該方法は、
24ヶ月間にわたって少なくとも22回分の用量のVLA−4結合抗体を受けた患者を選択する工程;および
当該患者に対して、VLA−4結合抗体治療の開始前と比較して改善された治療効果を提供するために十分なVLA−4結合抗体治療を少なくとも1クール投与する工程;
を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2004年8月20日に出願された米国特許仮出願第60/603,468号;2004年8月20日出願された米国特許仮出願第60/603,495号;2004年8月20日に出願された米国特許仮出願第60/603,470号;および2004年10月5日に出願された米国特許仮出願第60/616,023号の恩恵を主張する。これらの仮出願すべての内容全体が、本明細書において参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
多発性硬化症(MS)は、最も一般的な中枢神経系の疾患の一つである。今日、全世界で2,500,000人を超える人々がMSを有している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(概要)
本発明は、少なくとも部分的に、抗VLA−4治療(例えばナタリズマブ(natalizumab)等の抗VLA−4治療)が、多発性硬化症(MS)に対する治療効果を提供する長期投与に関して、安全かつ効果的であるという発見に基づく。従って、一局面において本明細書は、例えばヒト被験体等の被験体の多発性硬化症を処置する方法を取りあげる。この方法には、治療上有効な量のVLA−4結合抗体を長期間被験体に投与することが含まれる。
【0004】
一実施形態では、治療上有効な量のVLA−4結合抗体が、例えば少なくとも18ヶ月、例えば少なくとも30、36、42、48ヶ月あるいはそれ以上等好ましくは少なくとも24ヶ月等、少なくとも12ヶ月間投与される。一実施形態では、例えば24ヶ月間等(例えば過去2年間に、月1回の投与を24回受けた等)、以前に少なくとも21回のVLA−4結合抗体の投与を受けたことに基づいて被験体を選択する。続いて、例えばVLA−4結合抗体治療開始前と比較して、あるいは例えば追加治療クールの開始前と比較して、治療結果の改善を得るための追加となるVLA−4結合抗体治療クールをこの被験体に処置する。追加クールには、例えば少なくとも4回、5回、6回、8回、12回、16回、24回、30回あるいはそれ以上等少なくとも3回の、治療上有効な量のVLA−4結合抗体の投与が含まれる。
【0005】
一実施形態では、1週間に1回、1ヶ月に1回、6週間に1回、あるいは2、3、4、もしくは6ヶ月に1回、治療上有効な量のVLA−4結合抗体を被験体に投与し得る。
【0006】
一実施形態では、VLA−4結合抗体は、少なくとも12ヶ月間投与されて以下の1つ以上の結果を得る効果がある。:
a)前回の再発後3〜24ヶ月の間(例えば12ヶ月等6〜18ヶ月の間)に確認された、長期治療薬投与の前(例えば12ヶ月間あるいは、例えば10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等12ヶ月未満の投与後の再発率と比較)、あるいは治療を開始する前の再発率と比較した再発率の減少(例えば、再発率の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%あるいはそれ以上の減少)。
【0007】
b)EDSSスコア上昇の予防。
【0008】
c)12ヶ月間あるいは、例えば10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等12ヶ月未満の投与後、もしくは治療開始前のEDSSスコアと比較したEDSSスコアの減少(例えば、3ヶ月、6ヶ月、1年以上、あるいはそれ以上にわたる、1、1.5、2、2.5、3ポイントあるいはこれ以上の減少)。
【0009】
d)12ヶ月間あるいは、例えば10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等12ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0010】
e)12ヶ月間あるいは、例えば10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等12ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0011】
f)12ヶ月間あるいは、例えば10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等12ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変の出現率と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の出現率の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した率)。
【0012】
g)12ヶ月間あるいは、例えば10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等12ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変面積の増加度と比較した、全体あるいは任意の種類の病変面積増加度の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した増加度)。ならびに、
h)12ヶ月間あるいは、例えば10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等12ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の視神経炎の発病率あるいは症状と比較した、視神経炎の発病率あるいは症状の減少(例えば視力の改善)。
【0013】
一実施形態では、VLA−4結合抗体は、少なくとも18ヶ月間投与されて以下の1つ以上の結果を得る効果がある。:
a)前回の再発後3〜24ヶ月の間(例えば12ヶ月等6〜18ヶ月)に確認された、長期治療薬投与の前(例えば18ヶ月間あるいは、例えば16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等18ヶ月未満の投与後の再発率と比較)、あるいは治療を開始する前の再発率と比較した再発率の減少(例えば、再発率の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%あるいはそれ以上の減少)。
【0014】
b)EDSSスコア上昇の予防。
【0015】
c)18ヶ月間あるいは、例えば16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等18ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前のEDSSスコアと比較したEDSSスコアの減少(例えば3ヶ月、6ヶ月、1年以上、あるいはそれ以上にわたる、例えば1、1.5、2、2.5、3ポイントあるいはこれ以上の減少)。
【0016】
d)18ヶ月間あるいは、例えば16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等18ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0017】
e)18ヶ月間あるいは、例えば16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等18ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0018】
f)18ヶ月間あるいは、例えば16、12、10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等18ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変の出現率と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の出現率の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した率)。
【0019】
g)18ヶ月間あるいは、例えば16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等18ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変面積の増加度と比較した、全体あるいは任意の種類の病変面積増加度の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した増加度)。ならびに、
h)18ヶ月間あるいは、例えば16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等18ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の視神経炎の発病率あるいは症状と比較した、視神経炎の発病率あるいは症状の減少(例えば視力の改善)。
【0020】
一実施形態では、VLA−4結合抗体は、少なくとも24ヶ月間投与されて以下の1つ以上の結果を得る効果がある。:
a)前回の再発後3〜24ヶ月の間(例えば12ヶ月等6〜18ヶ月の間、)に確認された、長期治療薬投与の前(例えば24ヶ月間あるいは、例えば20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等24ヶ月未満の投与後の再発率と比較)、あるいは治療を開始する前の再発率と比較した再発率の減少(例えば、再発率の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%あるいはそれ以上の減少)。
【0021】
b)EDSSスコア上昇の予防。
【0022】
c)24ヶ月間あるいは、例えば20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等24ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前のEDSSスコアと比較したEDSSスコアの減少(例えば3ヶ月、6ヶ月、1年以上、あるいはそれ以上にわたる、例えば1、1.5、2、2.5、3ポイントあるいはこれ以上の減少)。
【0023】
d)24ヶ月間あるいは、例えば20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等24ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0024】
e)24ヶ月間あるいは、例えば20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等24ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0025】
f)24ヶ月間あるいは、例えば20、16、12、10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等24ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変の出現率と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の出現率の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した率)。
【0026】
g)24ヶ月間あるいは、例えば20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等24ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変面積の増加度と比較した、全体あるいは任意の種類の病変面積増加度の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した増加度)。ならびに、
h)24ヶ月間あるいは、例えば20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等24ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の視神経炎の発病率あるいは症状と比較した、視神経炎の発病率あるいは症状の減少(例えば視力の改善)。
【0027】
一実施形態では、VLA−4結合抗体は、少なくとも36ヶ月間投与されて以下の1つ以上の結果を得る効果がある。:
a)前回の再発後3〜24ヶ月(例えば、12ヶ月等6〜18ヶ月)の間に確認された、長期治療薬投与の前(例えば36ヶ月間あるいは、例えば30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等36ヶ月未満の投与後の再発率と比較)、あるいは治療を開始する前の再発率と比較した再発率の減少(例えば、再発率の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%あるいはそれ以上の減少)。
【0028】
b)EDSSスコア上昇の予防。
【0029】
c)36ヶ月間あるいは、例えば30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等36ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前のEDSSスコアと比較したEDSSスコアの減少(例えば3ヶ月、6ヶ月、1年以上、あるいはそれ以上にわたる、例えば1、1.5、2、2.5、3ポイントあるいはこれ以上の減少)。
【0030】
d)36ヶ月間あるいは、例えば30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等36ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0031】
e)36ヶ月間あるいは、例えば30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等36ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0032】
f)36ヶ月間あるいは、例えば30、24、20、16、12、10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等36ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変の出現率と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の出現率の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した率)。
【0033】
g)36ヶ月間あるいは、例えば30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等36ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変面積の増加度と比較した、全体あるいは任意の種類の病変面積増加度の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した増加度)。ならびに、
h)36ヶ月間あるいは、例えば30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等36ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の視神経炎の発病率あるいは症状と比較した、視神経炎の発病率あるいは症状の減少(例えば視力の改善)。
【0034】
一実施形態では、VLA−4結合抗体は、少なくとも48ヶ月間投与されて以下の1つ以上の結果を得る効果がある。:
a)前回の再発後3〜24ヶ月(例えば、12ヶ月等6〜18ヶ月)の間に確認された、長期治療薬投与の前(例えば48ヶ月間あるいは、例えば42、36、30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等48ヶ月未満の投与後の再発率と比較)、あるいは治療を開始する前の再発率と比較した再発率の減少(例えば、再発率の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%あるいはそれ以上の減少)。
【0035】
b)EDSSスコア上昇の予防。
【0036】
c)48ヶ月間あるいは、例えば42、36、30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等48ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前のEDSSスコアと比較したEDSSスコアの減少(例えば3ヶ月、6ヶ月、1年以上、あるいはそれ以上にわたる、例えば1、1.5、2、2.5、3ポイントあるいはこれ以上の減少)。
【0037】
d)48ヶ月間あるいは、例えば42、36、30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等48ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0038】
e)48ヶ月間あるいは、例えば42、36、30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等48ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変数と比較した、全体あるいは任意の種類の病変の数の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%の減少)。
【0039】
f)48ヶ月間あるいは、例えば42、36、30、24、20、16、12、10、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等48ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の新規病変の出現率と比較した、全体あるいは任意の種類の新規病変の出現率の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した率)。
【0040】
g)48ヶ月間あるいは、例えば42、36、30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等48ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の病変面積の増加度と比較した、全体あるいは任意の種類の病変面積増加度の減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%減少した増加度)。ならびに、
h)48ヶ月間あるいは、例えば42、36、30、24、20、16、12、8、4ヶ月未満あるいはこれ以下等48ヶ月未満投与後、もしくは治療開始前の視神経炎の発病率あるいは症状と比較した、視神経炎の発病率あるいは症状の減少(例えば視力の改善)。
【0041】
一般に、VLA−4結合抗体の投与は、例えば本明細書に記載されている任意のもの等、疾患の任意の症状の減少、改善、あるいは進行の遅延に影響する長期間投与であり得る。
【0042】
一実施形態において、被験体は再発性弛張性多発性硬化症を有している。他の実施形態では、被験体は、例えば、一次進行性(PP)多発性硬化症、二次進行性多発性硬化症、あるいは進行性再発性多発性硬化症等、慢性進行性多発性硬化症を有している。
【0043】
一実施形態において、VLA−4結合抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、あるいはIgG4等の完全長抗体である。典型的には、この抗体は、ヒトのもの、効果的にヒトであるもの、あるいはヒト化されたものでる。VLA−4結合抗体は、例えばVCAM−1等、VLA−4と同族のリガンドと、VLA−4との相互作用を抑制する。VLA−4結合抗体は、VLA−4の、例えばα4サブユニットの細胞外領域等少なくともα鎖に結合する。例えば、VLA−4結合抗体は、VLA−4α鎖のエピトープB(例えばB1あるいはB2)を認識する。VLA−4結合抗体は、VLA−4の結合に関して、ナタリズマブ(natalizumab)、HP1/2、あるいは本明細書で記載される他のVLA−4結合抗体と競合する、あるいはナタリズマブ(natalizumab)、HP1/2、あるいは本明細書内で記載される他のVLA−4結合抗体と部分的に重複するエピトープを持つ。好ましい一実施形態おいて、VLA−4結合抗体には、ナタリズマブ(natalizumab)、あるいは少なくともナタリズマブ(natalizumab)の重鎖および軽鎖の可変領域が含まれる。
【0044】
一実施形態において、VLA−4結合抗体は、他の生物学的免疫調節性治療と組み合わせて投与されない(例えば、インターフェロン治療と組み合わせて投与されない)。
【0045】
一般に、被験体は、VLA−4結合抗体を多数回投与される。多数回の投与は、「長期」レジメン計画の一部であり得る。例えば、少なくとも18ヶ月などの少なくとも12ヶ月間、VLA−4結合抗体を被験体に投与し得、少なくとも30ヶ月、36ヶ月、42ヶ月、48ヶ月、あるいはそれ以上など、少なくとも24ヶ月であることが好ましい。
【0046】
一実施形態において、VLA−4結合抗体は、月1回(例えば4週間に1回等)の、約50mgと600mgの間(例えば、静脈内投与によって約300mg等約200mgと400mgの間)の投与量で達成される生物学的利用能の少なくとも80%(好ましくは、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、180%、200%あるいはそれ以上)を達成するために十分な投与量で投与される。一実施形態において、VLA−4結合抗体は、被験体内で50%以上(60、65、70、75、80、85、90%以上)のα4インテグリン受容体飽和を提供するのに有効な濃度で投与される。例えば、VLA−4結合抗体は、約50mgと600mgの間(例えば、約300mg 等約200mgと400mgの間)の月1回の静脈内投与による輸液として投与される。他の例では、VLA−4結合抗体は、25〜300mg(例えば、約75mg等50mgと150mgの間)の週1度の皮下(SC)注射として投与される。
【0047】
VLA−4結合抗体は、以下の1つ以上の結果を得るのに有効な量で、投与し得る。:
a)再発重篤度あるいは再発頻度の減少、b)EDSSスコア上昇の予防、c)EDSSスコアの減少(例えば少なくとも3ヶ月、6ヶ月、1年、あるいはそれ以上にわたる、例えば1、1.5、2、2.5、3ポイントあるいはそれ以上の減少)、d)新規病変の全体数あるいは任意の1種類の数の減少、e)新規病変の全体あるいは任意の1種類の出現率の減少、ならびにf)新規病変の全体の面積あるいは任意の1種類の面積の増加度の減少。一般に、VLA−4結合抗体は、例えば本明細書にて記載されている任意のもの等、疾患の任意の症状の減少、改善、あるいは進行の遅延に効果的な量で投与し得る。
【0048】
例えばVLA−4結合抗体を投与される前、投与の間、あるいは投与後に、例えば反応性の兆候に関して、被験体を評価し得る。当業者は、例えばEDSSスコア;MRIスキャン;再発数、頻度、あるいは重篤度;多発性硬化症機能複合測定(MSFC);多発性硬化症クオリティオブライフ項目(MSQLI)等、様々な臨床的手段、あるいは他の、治療効果の兆候を利用し得る。レジメンの間の様々なタイミングで被験体を継続検査(モニター)し得る。一実施形態において、被験体は、インターフェロンの生物学的有用性に関しては検査されない(例えば投与の前、あるいは後で)。
【0049】
一実施形態では、VLA−4結合抗体を最初に投与する前の5、10、30、あるいは60日内に、例えば全身コルチコステロイド等、副腎皮質ホルモンで被験体を治療し得る。別の実施形態では、VLA−4結合抗体を最初に投与する前の3ヶ月内に、免疫抑制剤あるいは免疫調節剤(例えばインターフェロンβ)で、被験体を治療し得る。別の実施形態では、VLA−4結合抗体を最初に投与する前の3ヶ月内に、酢酸グラチラマーで被験体を治療し得る。
【0050】
一部の実施形態では、例えば治療性生物学的薬剤等、第2の薬剤と併用してVLA−4結合抗体を投与して、併用治療効果を取得し得る。本明細書で使用する「併用して投与する」とは、2つ以上の薬剤が、同時に、あるいは各薬剤の被験体への効果が部分的に重なるよう一定の間隔で被験体に投与されることを意味する。第1薬剤と第2薬剤の投与の間隔は、併用効果が達成されるよう十分に短いことが好ましい。この間隔は、数時間、数日間、あるいは数週間であり得る。一般に、これらの薬剤は、被験体体内にて同時的な生物学的利用能(例えば検出可能なもの)がある。好ましい一実施形態では、例えば第1薬剤等、薬剤の1つの少なくとも1回の投与は、例えば第2薬剤等他方の薬剤がまだ被験体体内に治療的な量で存在している間に行われる。一実施形態では、第2薬剤は、第1薬剤の投与よりも早いタイミングから遅いタイミングの間で投与される。他の実施形態では、第1薬剤は、第2薬剤の投与よりも早いタイミングから遅いタイミングの間で投与される。一実施形態では、例えば第1薬剤等、薬剤の1つの少なくとも1回の投与は、第2薬剤投与の1、7、14、30、あるいは60日内に行われる。
【0051】
「併用治療効果」は、例えば改善等、いずれかの薬剤単独によって生じる効果よりも大きな効果である。併用治療効果と各薬剤単独の効果との差異は、統計的有意な差であり得る。一実施形態において、第2薬剤は、例えば、インターフェロンβ−1a(例えばAVONEX(登録商標)あるいはRebif(登録商標))あるいはインターフェロンβ−1b(例えばBetaseron(登録商標))等のインターフェロンβ等、生物性免疫調節薬剤を包含する。例えばVLA−4結合抗体は、MSを有する被験体にAVONEX(登録商標)と併用して投与される。また、第2薬剤は、例えば、酢酸グラチラマー等選択したアミノ酸のランダム共重合体等、未決定配列のタンパク質であり得る。
・本発明はまた、以下を提供し得る:
・(項目1)
多発性硬化症(MS)を有する被験体を処置する方法であって、当該方法は、
当該被験体に対して、治療上有効な量のVLA−4結合抗体を少なくとも24ヶ月間投与する工程;
を包含する、方法。
・(項目2)
多発性硬化症(MS)を有する被験体を処置する方法であって、当該方法は、
24ヶ月間にわたって少なくとも22回分の用量のVLA−4結合抗体を受けた患者を選択する工程;および
当該患者に対して、VLA−4結合抗体治療の開始前と比較して改善された治療効果を提供するために十分なVLA−4結合抗体治療を少なくとも1クール投与する工程;
を包含する、方法。
・(項目3)
上記クールが、治療上有効な量のVLA−4結合抗体の少なくとも3回の投与を包含する、項目2に記載の方法。
・(項目4)
上記投与が、1ヶ月に1回の投与である、項目3に記載の方法。
・(項目5)
上記投与が、1ヶ月に1回の静脈内投与である、項目3に記載の方法。
・(項目6)
上記VLA−4結合抗体が、少なくとも30ヶ月間投与される、項目1に記載の方法。
・(項目7)
上記VLA−4結合抗体が、少なくとも36ヶ月間投与される、項目1に記載の方法。
・(項目8)
上記VLA−4結合抗体が、少なくとも48ヶ月間投与される、項目1に記載の方法。
・(項目9)
項目1に記載の方法であって、上記被験体は、当該被験体において少なくとも50%のα4インテグリンレセプター飽和を達成するために有効なレジメンに従って上記VLA−4結合抗体が投与される、方法。
・(項目10)
項目1に記載の方法であって、上記被験体は、複数用量の上記VLA−4結合抗体を静脈内投与され、各用量は、200mg〜400mgである、方法。
・(項目11)
項目2に記載の方法であって、上記クールは、複数用量の上記VLA−4結合抗体の静脈内投与を包含し、各用量は、200mg〜400mgである、方法。
・(項目12)
上記VLA−4結合抗体が、第二治療剤と併用して投与される、項目1の方法。
・(項目13)
上記被験体が、慢性進行性多発性硬化症、一次進行性(PP)多発性硬化症、二次進行性多発性硬化症、ならびに進行性再発性多発性硬化症からなる群より選択される型の多発性硬化症を有する、項目1に記載の方法。
・(項目14)
上記VLA−4結合抗体が、VCAM−1とのVLA−4の相互作用を抑制する、項目1に記載の方法。
・(項目15)
上記VLA−4結合抗体が、ナタリズマブ(natalizumab)である、項目1に記載の方法。
・(項目16)
上記VLA−4結合抗体が、ヒトVLA−4結合抗体またはヒト化VLA−4結合抗体である、項目1に記載の方法。
・(項目17)
上記VLA−4結合抗体が、VLA−4への結合に関してHP1/2またはナタリズマブ(natalizumab)と競合する、項目1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(定義)
「処置(治療)する」という語は、治療上有効な量の一治療法を投与することを指す。「治療上有効な量」は、統計的有意な程度、もしくは当分野の技術者が検出し得る程度の、疾患に伴う状態、症状、あるいはパラメータの改善、あるいは疾患進行の予防に効果的な量、様式、あるいは(かつ)方法での治療を指す。有効量、有効様式、あるいは有効方法は、被験体に応じて変更されることが可能であり、被験体に適合させる場合もある。
【0053】
投与期間の継続性、あるいは長さに関係する「長期」あるいは「長期間」は、少なくとも12ヶ月の投与を意味する。例えば、長期間投与あるいは長期投与は、少なくとも18ヶ月であり得、例えば少なくとも30、36、42、48ヶ月あるいはそれ以上等、少なくとも24ヶ月であることが好ましい。
【0054】
治療の「クール(course)」は、ある所定時間、ある所定回数の投与での治療を指す。治療には、複数クールの治療を含め得る。例えば、治療には、例えば少なくとも18ヶ月等、少なくとも12ヶ月の第1クールの治療が含まれ、これは例えば30、36、42、48時間あるいはそれ以上など、少なくとも24時間であることが好ましく、その後1クール以上のさらなる投与が続く。
【0055】
「生物剤(biologic)」という語は、タンパク質ベースの治療薬剤を指す。好ましい一実施形態において、生物学的なものは、アミノ酸残基が10、20、30、40、50、あるいは100個の長さである。
【0056】
「VLA−4結合剤」は10−6M未満のKでVLA−4インテグリンと結合する任意の化合物を指す。VLA−4結合剤の例は、例えばナタリズマブ(natalizumab)等の抗体等、VLA−4結合タンパク質である。
【0057】
「VLA−4アンタゴニスト」は、VLA−4インテグリンの活性の少なくとも一部を、特にVLA−4インテグリンの結合活性、あるいは、例えばVLA−4仲介シグナルの伝達能等のシグナル活性を抑制する任意の化合物を指す。例えばVLA−4アンタゴニストは、例えばVCAM−1等の細胞表面タンパク質等VLA−4の同族リガンドへの、あるいはフィブロネクチンあるいはオステオポンチン等細胞外マトリックス成分へのVLA−4の結合を抑制する場合がある。典型的なVLA−4アンタゴニストは、VLA−4、あるいは、例えばVCAM−1もしくは、フィブロネクチンあるいはオステオポンチン等の細胞外マトリックス成分等のVLA−4リガンドに結合し得る。VLA−4に結合するVLA−4アンタゴニストは、α4サブユニットかβ1サブユニットのいずれか、あるいはその両方に結合する場合がある。またVLA−4アンタゴニストは、他の含α4サブユニットインテグリン(例えばα4β7)、あるいは他の含β1インテグリンと相互作用する場合がある。VLA−4アンタゴニストは、10−6、10−7、10−8、10−9、あるいは10−10 M未満のKで、VLA−4あるいはVLA−4リガンドと結合する場合がある。
【0058】
VLA−4アンタゴニストは、あるタンパク質部分を含有する化合物、あるいはタンパク質部分を含有しない化合物であり得る。VLA−4タンパク質アンタゴニストの例には、ナタリズマブ(natalizumab)等の拮抗作用性抗体、ならびにペプチドアンタゴニストが含まれる、非タンパク質アンタゴニストの例には、低分子量アンタゴニストが含まれる。「低分子」は、分子量が1000ダルトン未満の有機分子である。
【0059】
本明細書で使用する「抗体」という語は、例えば免疫グロブリン可変領域あるいは免疫グロブリン可変領域配列を提供するアミノ酸配列等、1つ以上の免疫グロブリン可変領域を含有するタンパク質を指す。例えば、抗体は、重鎖(H鎖)可変領域(本明細書ではVHと略す)、ならびに軽鎖(L鎖)可変領域(本明細書ではVLと略す)を含有し得る。他の例では、抗体は、2つの重鎖(H鎖)可変領域および2つの軽鎖(L鎖)可変領域を含有する。「抗体」という語は、例えば、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM種のインタクト免疫グロブリン(およびこれらの亜型)等の完全抗体に加えて、抗体の抗原結合断片(例えば、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、ならびにdAbフラグメント等)を包含する。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ型あるいはラムダ型である場合がある。一実施形態において、抗体はグリコシル化されている。抗体は、抗体依存的細胞毒性、あるいは(かつ)補体仲介細胞毒性に関して機能的であることが可能である、あるいはこれらの活性の一方あるいは両方に関して機能的ではない場合がある。
【0060】
VH領域ならびにVL領域は、さらに、「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれるより保存された領域が点在する「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる高変異領域に分け得る。FRならびにCDRの範囲は、正確に定義されている(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242;ならびにChothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901−917を参照する)。本明細書では、Kabatの定義を使用する。各VHならびにVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシル末端へ向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に位置する、3つのCDRと4つのFRを包含する。
【0061】
「免疫グロブリンドメイン」は、免疫グロブリン分子の可変領域あるいは定常領域由来のドメインを指す。免疫グロブリンドメインは、典型的にはおよそ7つのβ鎖から形成される2つのβシートおよび、保存されたS−S結合を含有する(例えばA.F.Williams and A.N.Barclay 1988 Ann.Rev Immunol.6:381−405を参照する)。
【0062】
本明細書で使用する「免疫グロブリン可変ドメイン配列」は、免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成し得るアミノ酸配列を指す。例えば、この配列は、天然の可変領域のアミノ酸配列の全部あるいは一部分を包含する場合がある。例えば、この配列は、1つ、2つ、あるいはそれ以上の、アミノ末端もしくはカルボキシル末端アミノ酸、あるいは内部アミノ酸がない場合がある、あるいは、1つ以上の挿入あるいは追加となる末端アミノ酸を含有する場合がある、あるいは他の改変を含有する場合がある。一実施形態において、免疫グロブリン可変領域配列を包含するポリペプチドは、他の免疫グロブリン可変領域配列と会合して、例えばVLA−4と相互作用する組成物等、標的結合組成物(あるいは「抗原結合部位」)を形成し得る。
【0063】
抗体のVHあるいはVLはさらに、重鎖あるいは軽鎖定常領域の全部あるいは一部を包含して、それぞれ免疫グロブリン重鎖あるいは免疫グロブリン軽鎖を形成し得る。一実施形態において、抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖と2つの免疫グロブリン軽鎖を包含する4量体である。この免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖は、S−S結合で連結することが可能である。重鎖定常領域には、典型的にはCH1、CH2、ならびにCH3という3つの定常領域が含まれる。軽鎖定常領域には、典型的にはCL領域が含まれる。重鎖ならびに軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含有する。抗体の定常領域は、典型的には、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)、ならびに古典補体経路の第1成分(Clq)等、宿主組織あるいは因子への抗体の結合を仲介する。
【0064】
抗体の1つ以上の領域は、ヒトのもの、効果的にヒトであるもの、あるいはヒト化したものであることが可能である。例えば、1つ以上の可変領域は、ヒトのもの、効果的にヒトであるもの、あるいはヒト化したものであることが可能である。例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、ならびにLC CDR3等1つ以上のCDRは、ヒトのものであることが可能である。軽鎖CDRの各々は、ヒトのものであることが可能である。HC CDR3はヒトのものであることが可能である。例えばHCあるいはLCのFR1、FR2、FR3、ならびにFR4等、1つ以上のフレームワーク領域はヒトのものであることが可能である。一実施形態では、フレームワーク領域の全てが、例えば免疫グロブリンを産生する造血細胞あるいは非造血細胞等のヒト体細胞に由来するヒトのものである。一実施形態において、ヒト配列は、例えば生殖細胞系核酸によってコードされているもの等の生殖細胞系配列である。1つ以上の定常領域は、ヒトのもの、効果的にヒトであるもの、あるいはヒト化したものであることが可能である。別の実施形態では、少なくとも70、75、80、85、90、92、95、あるいは98%のフレームワーク領域(例えば集合的にFR1、FR2、ならびにFR3、もしくは集合的にFR1、FR2、FR3、ならびにFR4)、あるいは抗体全体が、ヒトのもの、効果的にヒトであるもの、あるいはヒト化したものであることが可能である。例えば、集合的にFR1、FR2、ならびにFR3は、少なくとも70、75、80、85、90、92、95、98、あるいは99%、ヒト生殖細胞系セグメントがコードするヒト配列と同一であることが可能である。
【0065】
「効果的にヒトである」免疫グロブリン可変領域は、その免疫グロブリン可変領域が健常なヒト体内で免疫原生反応を引き起こさないように、十分多数のヒトフレームワークアミノ酸位置を包含する免疫グロブリン可変領域である。「効果的にヒトである」抗体は、抗体が健常なヒト体内で免疫原生反応を引き起こさないように、十分多数のヒトアミノ酸位置を包含する抗体である。
【0066】
「ヒト化」免疫グロブリン可変領域は、例えばその免疫グロブリン可変領域が健常なヒト体内で免疫原生反応を引き起こさないように、十分多数のヒトフレームワークアミノ酸位置を包含するよう改変する等、改変した形態物が引き起こす免疫反応が改変しない形態物よりも小さくなるよう改変された免疫グロブリン可変領域である。「ヒト化」免疫グロブリンを記載したものには、例えば、米国特許第6,407,213号ならびに米国特許第5,693,762号が含まれる。場合によっては、ヒト化免疫グロブリンは、1つ以上のフレームワークアミノ酸位置に非ヒトアミノ酸を含有し得る。
【0067】
抗体全体あるいはその一部分は、免疫グロブリン遺伝子あるいはこれの一部分によってコードされることが可能である。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、α(IgA1ならびにIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)デルタ、イプシロン、ならびにミュー定常領域、および、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kdあるいは214アミノ酸)は、アミノ末端(約110アミノ酸)で、可変領域遺伝子によってコードされておりで、カッパあるいはラムダ定常領域遺伝子はカルボキシル末端でコードされている。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50 Kdあるいは446アミノ酸)は、同様に可変領域遺伝子(約116アミノ酸)ならびに、例えばガンマ(約330アミノ酸をコードする)等他の前記定常領域遺伝子の1つによってコードされている。
【0068】
完全長抗体の「抗原結合フラグメント」という語は、例えばVLA−4等、対象とする標的に特異的に結合する能力を保持している完全長の抗体の1つ以上の断片を指す。完全長抗体の「抗原結合フラグメント」という語に包含される結合フラグメントの例には、(i)VL、VH、CL、ならびにCH1領域から構成される1価フラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域にてS−S結合によって連結された2つのFabフラグメントを包含する2価フラグメントであるF(ab’)、(iii)VHおよびCH1領域から構成されるFdフラグメント、(iv)抗体の1本のアーム部分のVLおよびVH領域から構成されるFvフラグメント、(v)VH領域から構成されるdAbフラグメント(Wardら,(1989)Nature 341:544−546)、ならびに(vi)機能性を保持した、単離した相補性決定領域(CDR)、が含まれる。さらに、VLおよびVHである、Fvフラグメントの2つの領域は別個の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用いて、これらが1つのタンパク質鎖として形成し得るようにする合成リンカーによって、これらを連結させることができ、この1つのタンパク質鎖では、VL領域とVH領域とが対になって、一本鎖Fv(scFv)として知られている1価分子を形成する。例えばBirdら(1988)Science 242:423−426;ならびにHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照する。
【0069】
(詳細な説明)
多発性硬化症(MS)は、ミエリン鞘の炎症および欠損によって特徴づけられる中枢神経系疾患である。本発明は、一部、抗VLA−4治療(例えば、ナタリズマブ(natalizumab)等の抗VLA−4抗体治療)が安全かつMSに対する治療効果を得るための長期投与に効果的であるという発見に基づく。
【0070】
例えば、治療上有効な量のVLA−4結合抗体は、例えば18ヶ月以上等12ヶ月以上、好ましくは、例えば少なくとも30、36、42、48ヶ月あるいはそれ以上等24ヶ月投与され、改善された治療結果を提供する効果があり、これは例えばMS関連パラメータ等によって測定される。例示的なMS関連パラメータには、MRI検出可能画像の数(例えばGd+病変数、T1病変数、あるいはT2病変数等)、EDSSスコア、例えば再発等のMS関連事項の数ならびに(あるいは)頻度が含まれる。
【0071】
1.MRI検出可能画像:MRIガドリニウム増強病変像は、炎症性細胞の中枢神経系への移行の指標である。この移行は、MSの鍵となる発病機構である。従って、MRIガドリニウム増強病変像に関して、被験体を評価し得る。また、MRIを利用し、T強調法を用いて病変の位置および範囲を検出し得る。例えばMcDonaldらAnn.Neurol.36:14,1994を参照する。
【0072】
2.EDSSスコア法:EDSSはMSに起因する臨床的障害を等級づけする(Kurtzke,Neurology 33:1444,1983)。神経学的障害の種類ならびに重篤度に関して8つの機能系統が評価される。概略を述べると、錐体系、小脳系、脳幹系、感覚系、腸膀胱系、視覚系、大脳系、その他における障害に関して被験体を評価する。尺度は0(正常)から10(MSに起因する死)までの範囲となる。他の等級づけ方法の例には、多発性硬化症機能複合測定(MSFC)ならびに多発性硬化症クオリティオブライフ項目(MSQLI)が含まれる。加えて、他のMS関連パラメータは、特定の神経学的検査に基づくものであることが可能である。
【0073】
3.MS関連事項:例示的なMS関連事項には、発作、再発、ならびに再燃が含まれる。発作は、1つ以上の症状の急性発症によって特徴づけられる症状の発現である。再発は、30日以上の安定期の後に、24時間以上続く、多発性硬化症の新規症状あるいは悪化した症状を包含する急性症状の発生であり、これは1ポイント以上のEDSSスコアの上昇、2つの機能系統スコアの1ポイント以上の上昇、あるいは1つの機能系統スコアの2ポイント以上の上昇を伴う。再燃は、MSに起因する新規症状の出現として定義され、相当する新規神経学的異常を伴う(IFNB MS Study Group,上記)。典型的には、再燃は24時間以上続き、その前に30日間以上の安定あるいは改善状態がある。再燃は、神経症状評価尺度(Neurological Rating Scale)の変化によって、軽症、中程度、あるいは重症のいずれかとなる(Sipeら,Neurology 34:1368,1984)。
【0074】
(治療の評価)
例えばVLA−4結合抗体治療の有効性を判定するため等、本明細書で記載する方法に従って治療を受けた被験体を、治療の期間中に継続検査し得る。
【0075】
例をあげると、MRIを使用して、例えばVLA−4結合抗体を使用する治療等の治療を評価し得る。一実施形態において、基準MRIは治療の前に得る。連続する各検査のためには、同一の画像平面と被験体ポジションを用いる。ポジショニングならびにイメージング配列は、病変の検出を最大にし、かつ病変の追跡が容易になるように選択し得る。連続した検査では、同一のポジショニングとイメージング配列を使用し得る。MS病変の有無、位置、ならびに範囲は、放射線専門医によって判定されることが可能である。病変部域の輪郭を得ることができ、合計病変面積に関しては、断面ごとに足し合わせ得る。新規病変の証明、活性的な病変が出現する頻度、病変面積の変化割合という分析が行われる場合がある(Patyら,Neurology 43:665,1993)。基準値と比較した、あるいは治療グループ対偽薬グループと比較した、個々の被験体における統計学的に有意な改善度によって、治療に起因する改善度を設定し得る。
【0076】
これらの測定のいずれかに関して、治療グループと偽薬グループとの間に、再燃あるいは再発が起こらなかった被験体の割合あるいは比率に統計的に有意な差がある場合、治療は有効と見なし得る。加えて、最初の再燃までの時間ならびに再燃の期間、ならびに重篤度が、測定される場合もある。この点に関して治療としての有効性の尺度は、コントロールグループと比較した、治療グループの最初の再燃までの時間ならびに再燃の期間、ならびに重篤度の統計的に有意な差異である。再燃あるいは再発が起こらない期間が、1年、18ヶ月、あるいは20ヶ月を超える場合、特に注目に値する。
【0077】
また、1つ以上の以下の判断基準に基づいて、VLA−4結合治療の効力を評価し得る。:限界稀釈法によって測定するMBP反応性T細胞の頻度、MBP反応性T細胞株ならびにクローンの増殖反応、患者から樹立したMBPに対するT細胞株あるいはクローンのサイトカインプロフィール。効力は、反応性細胞の頻度、天然ペプチドと比較した改変ペプチドのチミジン取り込み量の減少、ならびにTNFならびにIFN−αの減少の差異によって示される。
【0078】
臨床測定には、1、2年の期間における再発頻度、ならびに、EDSSの1.0ユニットという基準からの進行が6ヶ月続くまでの時間等、EDSSの変化が含まれる。カプランマイヤー曲線上にて、疾病の持続的な進行の遅延は、効力を表す。他の判断基準にはMRIにおけるT2像の面積および体積の変化、ならびに、ガドリウム増強像によって測定される病変部の数および体積が含まれる。
【0079】
本明細書にて記載される方法で処置することが可能な多発性硬化症に伴う例示的な症状には、視神経炎、複眼、眼振、眼ディスメトリア、核間性眼筋麻痺、運動眼閃ならびに音誘発眼閃、求心性瞳孔障害、不全麻痺、単不全麻痺、不全対麻痺、半側不全麻痺、四肢不全麻痺、麻痺、対麻痺、半側麻痺、四肢麻痺(tetraplegia)、四肢麻痺(quadraplegia)、痙性、構音障害、筋萎縮、痙攣、筋痙攣、低血圧、間代、ミオクローヌス、ミオキミア、不穏下肢症候群、懸垂足、機能不全性反射、知覚異常、感覚脱出、神経痛、神経障害痛ならびに神経原性痛、レルミット、固有受容不全、三叉神経痛、運動失調、企図震顫、測定障害、前庭性運動失調、眩暈、言語失調、ジストニー、拮抗運動反復不全、頻尿、膀胱痙攣、弛緩膀胱、排尿筋括約筋失調、勃起不全、無オルガスム症、冷感症、便秘、大便失禁、抑鬱、認知不全、痴呆、気分変動、情動不安定、多幸症、躁鬱症候群、不安感、失語症、言語障害、倦怠感、ウートホフ症候群、胃食道反射、ならびに睡眠異常が含まれる。VLA−4結合抗体治療によって、被験体におけるこれらの症状の1つ以上の緩和あるいは回復を達成し得る。
【0080】
最も一般的には、MSは最初に一連の発作として発現し、その後不思議と症状が軽減するにつれて完全にあるいは部分的に緩解し、安定期の後に再発するのみである。これは再発寛解(RR)MSと呼ばれる。一次進行性(PP)MSは、一時的に変化のない状態となる、あるいは症状が僅かに軽減することはあるが、明確な症状の軽減なしに徐々に臨床状態が悪化することによって特徴づけられる。二次進行(SP)性MSは再発−寛解クールで始まり、その後、後期一次進行性クールとなる。稀に、被験体が進行性再発クールを有する場合があり、この場合、疾患は急性発作をはさみながら進行性クールをとる。
【0081】
少数の被験体は、重大な障害あるいは疾病発症後まもなく死にさえ至る、急速かつ過酷な悪化として定義される悪性のMSを経験する。本明細書で記載されるVLA−4結合抗体(例えばナタリズマブ(natalizumab))の投与によって、この悪化が抑止あるいは減速される場合がある。
【0082】
(ナタリズマブならびに他のVLA−4結合抗体)
α4インテグリン結合抗体であるナタリズマブは、血中の白血球が中枢神経系へ移動するのを抑制する。ナタリズマブは、活性化T細胞ならびに他の単核白血球の表面上でVLA−4と結合する。これはT細胞と内皮細胞との間の接着を阻害し、よって単核白血球が内皮を通過して柔組織へ移動するのを分断し得る。また、結果として、炎症誘発性サイトカインの量を減少させ得る。
【0083】
ナタリズマブは、再発寛解型多発性硬化症ならびに再発性二次進行性多発性硬化症を有する被験体において、脳病変部位の数、ならびに臨床的再発数を減少させ得る。ナタリズマブは、インターフェロンβ−1a(IFNβ−1a)治療と併用して、多発性硬化症を有する被験体に安全に投与し得る。他のVLA−4結合抗体はこれらの特性ならびに同様の特性を有することが可能である。
【0084】
ナタリズマブならびに関連するVLA−4結合抗体は、例えば米国特許第5,840,299号に記載されている。モノクローナル抗体21.6ならびにHP1/2は、例示的なVLA−4に結合するマウスモノクローナル抗体である。ナタリズマブは、マウスモノクローナル抗体21.6をヒト化したものである(例えば米国特許第5,840,299号を参照する)。HP1/2のヒト化物も記載されている(例えば米国特許第6,602,503号を参照する)。HP2/1、HP2/4、L25ならびにP4C2等、いくつかのさらに別のVLA−4結合モノクローナル抗体が、例えば米国特許第6,602,503号;Sanchez−Madridら,1986 Eur.J.Immunol.,16:1343−1349;Hemlerら,1987 J.Biol.Chem.2:11478−11485;Issekutz and Wykretowicz,1991,J.Immunol.,147:109(TA−2 mab);Pulidoら,1991 J.Biol.Chem.,266(16):10241−10245;ならびに米国特許第5,888,507号に記載されている。
【0085】
一部のVLA−4結合抗体は、例えばVCAM−1あるいはフィブロネクチン等同族のリガンドへの結合に関係するα4サブユニットのエピトープを認識する。当該抗体のうち多数のものがVLA−4の同族リガンド(例えばVCAM−1ならびにフィブロネクチン)への結合を抑制する。
【0086】
多数の有用なVLA−4結合抗体が、例えばリンパ球等の細胞上でVLA−4と相互作用するが、細胞凝集を引き起こさない。しかし、それ以外の抗VLA−4結合抗体は、当該凝集を引き起こすことが認められている。HP1/2は細胞凝集を引き起こさない。HP1/2モノクローナル抗体(Sanchez−Madridら,1986)は非常に高い効力を有しており、VLA−4のVACM1とフィブロネクチンの双方との相互作用を遮断する。またHP1/2モノクローナル抗体はVLA−4上のエピトープBに対する特異性を持つ。この抗体ならびに他のBエピトープ特異的抗体(B1あるいはB2エピトープ結合抗体;Pulidoら,1991上記、等)は、本明細書で記載する方法にて使用し得るVLA−4結合抗体の1種である。
【0087】
例示的なVLA−4結合抗体は、例えば本明細書で開示される特定の抗体の3つのHC CDR全て、あるいは(かつ)3つのLC CDRの全て等、1つ以上のCDRを有する、もしくは例えばナタリズマブ等の当該抗体と、総計で少なくとも80、85、90、92、94、95、96、97、98、99%同一のCDRを有する。一実施形態では、H1ならびにH2高頻度突然変異ループは、本明細書で記載する抗体と同じ限界構造を有する。一実施形態では、L1ならびにL2高頻度突然変異ループは、本明細書で記載する抗体と同じ限界構造を有する。
【0088】
一実施形態では、HCならびに(あるいは)LCの可変領域配列のアミノ酸配列は、例えばナタリズマブ等本明細書で記載する抗体のHCならびに(あるいは)LCの可変領域配列のアミノ酸配列と、少なくとも70、80、85、90、92、95、97、98、99、あるいは100%同一である。HCならびに(あるいは)LCの可変領域配列のアミノ酸配列は、例えばナタリズマブ等本明細書で記載する抗体の相応する配列と、1つ以上異なることが可能であるが、10、8、6、5、4、3、あるいは2つを超えるアミノ酸が異なることはない。例えば、この差異は、主に、あるいは全体が、フレームワーク領域にある場合がある。
【0089】
高ストリンジェンシー条件下で本明細書で記載される核酸配列にハイブリダイズする核酸配列、あるいは可変領域もしくは本明細書で記載される核酸配列をコードする核酸配列は、HCならびにLC可変領域配列のアミノ酸配列をコードし得る。一実施形態では、HCならびに(あるいは)LCの可変領域の、1つ以上のフレームワーク領域(例えばFR1、FR2、FR3、および(あるいは)FR4)のアミノ酸配列は、本明細書で記載する抗体のHCならびにLC可変領域の相応するフレームワーク領域と、少なくとも70、80、85、90、92、95、97、98、99、あるいは100%同一である。一実施形態では、1つ以上の重鎖あるいは軽鎖フレームワーク領域(例えばHC FR1、FR2、ならびにFR3)は、ヒト生殖細胞系抗体の相応するフレームワーク領域の配列と、少なくとも70、80、85、90、95、97、98、99、あるいは100%同一である。
【0090】
2つの配列の間の「相同性」あるいは「配列同一性」(これらの語は本明細書では交換可能なものとして使用される)の計算は、以下のように行われる。配列を最適な比較目的のためにアラインする(例えば、最適配列比較のため、第1ならびに第2アミノ酸あるいは核酸配列の一方あるいは両方にギャップを挿入し、比較目的のために非相同配列を無視し得る)。最適配列比較は、GCGソフトウエアパッケージのGAPプログラムを使用して、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5で、Blossum 62スコア作成マトリックスを用い、最良スコアであるものを判定する。続いて、相応するアミノ酸位置あるいは核酸ポジションにて、アミノ酸残基あるいは核酸を比較する。第1配列のあるポジションを、第2配列の相応するポジションとして同一のアミノ酸残基あるいは核酸が占めている場合、その分子はそのポジションにおいて同一である(本明細書で使用するアミノ酸あるいは核酸の「同一性」とは、アミノ酸あるいは核酸の「相同性」と等価である)。2つの配列の同一性パーセントは、これらの配列が共有する一致するポジションの数の関数である。
【0091】
本明細書で使用する、「高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションと洗浄のための状態を記述する。ハイブリダイゼーション反応を達成するための指針は、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1.−6.3.6にて確認することができ、参考のためこれを添付する。この参考文献には水性法と非水性法とが記載されているが、どちらも用い得る。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件には、約45℃で6X SSC中でハイブリダイゼーションを行い、次いで65℃で0.2X SSC、0.1% SDS中での1回以上の洗浄、もしくは実質的に同様となる条件が含まれる。
【0092】
例えば米国特許第6,602,503に記載されているように、例えばVLA−4結合等の機能特性に関して、抗体を試験し得る。
【0093】
(抗体作製)
VLA−4に結合する抗体は、例えば動物を用いる等免疫化によって作製し得る。VLA−4全体あるいはその一部を免疫原として使用し得る。例えば、α4サブユニットの細胞外領域を免疫原として使用し得る。一実施形態では、免疫化した動物は、天然、ヒト、あるいは部分的にヒトの免疫グロブリン遺伝子座を有する免疫グロブリン産生細胞を含有する。一実施形態では、この非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部分を含有する。例えば、マウス抗体の産生能が欠損する系統のマウスを、ヒトIg遺伝子座の大きなフラグメントで遺伝子加工することが可能である。ハイブリドーマ法を用いて、所望する特異性を有する遺伝子に由来する特異的なモノクローナル抗体を作製して選択する場合がある。例えばXenoMouseTM,Greenら、Nature Genetics 7:13−21 (1994)、US 2003−0070185,米国特許第5,789,650ならびにWO 96/34096を参照する。
【0094】
また、VLA−4に対する非ヒト抗体を、例えば齧歯類にて、作製し得る。この非ヒト抗体は、例えば米国特許第6,602,503、EP 239 400、米国特許第5,693,761、ならびに米国特許第6,407,213に記載されているように、ヒト化し得る。
【0095】
EP 239 400(Winterら)は、ある生物種について、相補性決定領域(CDR)を他に由来するものに置換すること(一定の可変領域内で)による抗体の改変を記載している。CDR置換抗体は、含有する非ヒト成分が著しく少ないため、真性キメラ抗体と比較して、免疫反応を誘発する可能性がより小さくなることが可能である。(Riechmannら,1988,Nature 332,323−327;Verhoeyenら,1988,Science 239,1534−1536)。典型的には、マウス抗体のCDRは、組換え核酸法によってヒト抗体の相応する領域内に置換されて所望する置換抗体をコードする配列を産生する。所望するアイソタイプのヒト定常領域遺伝子セグメント(通常、CHについてはガンマI、CLについてはカッパ)を加え、ヒト化重鎖および軽鎖遺伝子を哺乳類細胞内で共発現させて可溶性ヒト化抗体を産生し得る。
【0096】
Queenら,1989ならびにWO 90/07861は、元のマウス抗体のV領域フレームワークに対する最適なタンパク質配列相同性に関する、コンピュータ分析によるヒトVフレームワーク領域の選択、および、マウスCDRと相互作用する可能性のあるフレームワークアミノ酸残基を目で確認し得るようにするための、マウスV領域の3次構造モデルの形成を包含する手順を記載している。これらのマウスアミノ酸残基は、次に、相同的なヒトフレームワークに重ね合わされる。米国特許第5,693,762号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,530,101号も参照する。Tempestら,1991,Biotechnology 9,266−271は、CDR移植のために、マウス残基を全導入することなく、標準としてNEWM由来のV領域フレームワークならびに、REI重鎖ならびに軽鎖をそれぞれ利用している。Tempestらの手法を用いてNEWMおよびREIベースヒト化抗体を構築する利点は、NWEMおよびREI可変領域の3次元構造が、X線結晶学から判明しており、CDRとV領域フレームワーク残基との間の特異的な相互作用をモデル化し得る点である。
【0097】
非ヒト抗体を改変して、例えば、以下のポジションの1つ以上(好ましくは5、10、12以上あるいは全部)等特定のポジションの共通ヒトアミノ酸残基等、ヒト免疫グロブリン配列を挿入する置換を包含させ得る。:(軽鎖可変領域のFR内)4L、35L、36L、38L、43L、44L、58L、46L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、73L、85L、87L、98L、ならびに(あるいは)、(重鎖可変領域のFR内)2H、4H、24H、36H、37H、39H、43H、45H、49H、58H、60H、67H、68H、69H、70H、73H、74H、75H、78H、91H、92H、93H、ならびに(あるいは)103H(Kabatの番号付けに従う)。例えば米国特許第6,407,213を参照する。
【0098】
例えばBoernerら,1991 J.Immunol.,147,86−95によって記載されているように、インビトロであらかじめ刺激されたヒト脾細胞を用いる等して、VLA−4に結合する完全ヒトモノクローナル抗体を作製し得る。Perssonら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:2432−2436あるいはHuang and Stollar,1991,J.Immunol.Methods 141,227−236、また米国特許第5,798,230によって記載されているように、レパトリークローニングによってこれらが調製される場合がある。また、大規模な非免疫化ヒトファージディスプレイを利用して、標準的なファージ技術を利用するヒト治療法として開発することが可能な、高親和性抗体が単離される場合がある(例えばVaughanら,1996;Hoogenboomら(1998)Immunotechnology 4:1−20;ならびにHoogenboomら,(2000)Immunol Today 2:371−8;US 2003−0232333を参照する)。
【0099】
(抗体産生)
抗体は、原核細胞ならびに真核細胞にて産生し得る。一実施形態では、抗体(例えばscFv’s)は、Pichia(例えばPowersら,(2001)J Immunol Methods.251:123−35を参照する)、Hanseula、あるいはSaccharomyces等の酵母細胞内で発現される
一実施形態では、例えばIgGのもの等、抗体、特に完全長抗体は、哺乳類細胞にて産生される。組換え発現のための例示的な哺乳類宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin (1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されているdhfr−CHO細胞を含む。例えばKaufman and Sharp (1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されているように、DHFR選択マーカーと共に使用される)、例えばNS0骨髄腫細胞ならびにSP2細胞等のリンパ球性細胞株、COS細胞、K562、ならびに例えば形質転換哺乳類等の形質転換動物由来の細胞が含まれる。例えば、この細胞は哺乳類上皮細胞である。
【0100】
免疫グロブリン領域をコードする核酸配列に加えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞内でのベクターの複製を調節する配列ならびに選択マーカー遺伝子等、さらに別の核酸を保有する場合がある。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を助ける(例えば米国特許4,399,216、No.4,634,655、ならびにNo.5,179,017を参照する)。例示的な選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(dhfr宿主細胞において、メトトレキサート選択・増幅と共に使用するためのもの)ならびにneo遺伝子(G418選択用)が含まれる。
【0101】
抗体(例えば完全長抗体あるいはこれの抗原結合部分)の組換え発現のための例示的な系において、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを、リン酸カルシウム媒介遺伝子移入によってdhfr−CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内で、抗体重鎖および軽鎖遺伝子はそれぞれ機能発現的にエンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント、あるいはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント等、SV40、CMV、アデノウイルスに由来するもの等)に連結されて、これらの遺伝子の高レベルの転写を駆動する。また、組換え発現ベクターはDHFR遺伝子を保有しており、これによって、メトトレキサート選択・増幅を利用した、ベクターが感染したCHO細胞の選択が可能となる。選択された形質転換宿主細胞を培養して抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にし、インタクト抗体を培養液中から回収する。分子生物学標準法を用いて組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞に感染させ、形質転換体に対して選択を行い、宿主細胞を培養し、さらに培養液中から抗体を回収する。例えば、プロテインAあるいはプロテインGを用いるアフィニティクロマトグラフィーによって、一部の抗体を単離し得る。また、米国特許第6,602,503は、VLA−4結合抗体の発現および精製のため例示的な方法を記述している。
【0102】
また、抗体は、例えばFc受容体あるいはC1q、もしくはその両方との相互作用を減少あるいは除去するために、例えばFcの機能を改変する修飾等の修飾を包含する場合がある。例えば、米国特許第5,648,260にある番号付けに従う等して、ヒトIgG1定常領域を、例えば234番残基ならびに237番残基のうちの1つ以上等1つ以上のアミノ酸残基で変異させ得る。他の例示的な修飾には、米国特許第5,648,260にて記載されているものが含まれる。
【0103】
Fc領域を含有する抗体の一部に関して、Fc領域がグリコシル化されている抗体を合成するように抗体産生系が設計される場合がある。例えば、IgG分子のFc領域は、CH2領域内297番アスパラギンにてグリコシル化されている。このアスパラギンは、2分岐型オリゴサッカライドで修飾される部位である。このグリコシル化は、Fcγ受容体および補体C1qが仲介するエフェクター機能に関与する(Burton and Woof (1992)Adv.Immunol.51:1−84;Jefferisら,(1998)Immunol.Rev.163:59−76)。適切に297番アスパラギンに対応する残基をグリコシル化する哺乳類発現系にて、このFc領域を産生し得る。また、このFc領域は他の真核生物性翻訳後修飾を包含し得る。
【0104】
また、抗体は、遺伝子導入動物によって産生し得る。例えば、米国特許第5,849,992は、遺伝子導入動物の乳腺にて抗体を発現させるための方法を記載している。乳特異的プロモーター、および、例えば本明細書にて記載される抗体等対象とする抗体をコードする核酸、および分泌のためのシグナル配列を包含する導入遺伝子を構築する。当該遺伝子導入動物のメスが産生する乳は、ここに分泌された、例えば本明細書にて記載される抗体等対象とする抗体を含有する。この抗体を乳から精製する、あるいはいくつかの用途のために直接使用し得る。
【0105】
抗体は、例えば血中、血清中、リンパ液中、気管支肺胞洗浄中、あるいは他の組織中で循環される際に、その抗体の安定性あるいは(かつ)滞留性を、例えば少なくとも1.5、2、5、10、あるいは50倍改善する部分で修飾し得る。
【0106】
例えば、VLA−4結合抗体を、例えば、ポリアルキレン酸化物あるいはポリエチレン酸化物等実質的に非抗原性の高分子等の高分子と結合させ得る。適切な高分子は、実質的にその重量によって様々であることとなる。約200から約35,000ダルトン(あるいは約1,000から約15,000、ならびに2,000から約12,500)の範囲の平均分子量を持つ高分子を使用し得る。
【0107】
例えば、VLA−4結合抗体を、例えば、ポリビニルアルコールあるいはポリビニルピロリドン等の親水性ポリビニル高分子等、水溶性高分子に結合させ得る。当該高分子を、制限を設けることなく列挙すると、これには、ポリエチレングリコール(PEG)あるいはポリプロピレングリコール等のポリアルキレン酸化物同種重合体、これらの共重合体、ならびにこれらのブロック共重合体(但しブロック共重合体の水溶解度が維持されている限り)が含まれる。さらに別の有用な高分子には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ならびにポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック共重合体(プルロニック)等のポリオキシアルキレン;ポリメタクリレート;カルボマー;乳酸、アミロペクチン、澱粉、ヒドロキシメチルスターチ、アミロース、デキストラン硫酸、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、あるいは、例えばヒアルロン酸等酸性ムコ多糖類を包含する多糖類サブユニット等の同種多糖類ならびに異種多糖類を含む、単糖類であるD−マンノース、D−並びL−ガラクトース、フコース、フルクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクチュロン酸、D−マンヌロン酸(例えばポリマンヌロン酸あるいはアルギン酸)、D−グルコースアミン、D−ガラクトースアミン、D−グルコース、ならびにノイラミン酸を包含する分枝あるいは非分枝多糖類;ポリソルビトールならびにポリマンニトール等の糖アルコールの重合体;ヘパリンあるいはヘパロンが含まれる。
【0108】
(薬学的組成物)
VLA−4結合抗体等のVLA−4結合剤(例えばナタリズマブ)は、薬学的組成物として組成し得る。典型的には、薬学的組成物は薬学的に受容可能なキャリアを包含する。本明細書で使用する「薬学的に受容可能なキャリア」には、生理学的に適合する任意かつ全ての溶媒、ならびに分散剤、コーティング剤、抗細菌剤ならびに抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤、その他が含まれる。
【0109】
「薬学的に受容可能な塩」は、親化合物の所望される生物学的活性を保持し、かつ任意の有害な毒素学的効果をもたらすことのない塩を指す(例えばBerge,S.M.,et al.,(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照する)当該塩の例には、酸付加塩ならびに塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、ヨウ化水素塩等の非毒性無機酸から誘導されたもの、および、脂肪族モノカルボン酸ならびにジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族ならびに芳香族スルホン酸等の非毒性有機酸から誘導されたものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属から誘導されるもの、およびN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、塩化プロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等の非毒性有機アミンから誘導されるものが含まれる。
【0110】
ナタリズマブならびに本明細書で記載する他の薬剤は、標準法に従って組成し得る。薬剤製剤はよく確立された技術であり、Gennnaro(ed.),Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,Lippincott,Williams & Wilkins(2000)(ISBN:0683305727);Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Ed.,Lippincott Williams & Wilkins Publishers(1999)(ISBN:0683305727);ならびにKibbe (ed.),Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,3rd ed.(2000)(ISBN:091733096X)にてさらに記載されている。
【0111】
一実施形態では、ナタリズマブあるいは他の薬剤(例えば他の抗体等)は、塩化ナトリウム、リン酸2ナトリウム7水和物、リン酸1ナトリウム、ならびにポリソルベート80等の医薬品添加物と共に組成し得る。例えば、約20mg/mlの濃度で緩衝溶液中にて利用することができ、2〜8℃で保存し得る。ナタリズマブ(ANTEGREN(登録商標))は、製造者による表示に記載されているように組成し得る。
【0112】
また、薬学的組成物は様々な他の形態内にある場合がある。これらには、例えば、液体溶液(例えば注射用ならびに輸液用溶液)、分散液あるいは懸濁液、錠剤、丸薬、粉体、リポソーム、ならびに座薬等、液体、半固形、ならびに固形製剤が含まれる。好ましい形態は、意図する投与様式ならびに治療用途に応じて変わることが可能である。典型的には、本明細書で記載される薬剤のための組成物は、注射用あるいは輸液用溶液の形態にある。
【0113】
当該組成物は、非経口様式(例えば静脈内、皮下、腹膜内、筋肉内注入等)によって投与し得る。本明細書で使用する「非経口投与」ならびに「非経口的に投与された」という句は、経腸ならびに局所投与以外の、通常注入による投与様式を意味し、これには、静脈内、ならびに筋肉内、動脈内、クモ膜下、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、髄腔内、腹膜内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、硬膜外、胸骨内注射ならびに輸液が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
典型的には、薬学的組成物は滅菌され、製造および保存条件下で安定していなければならない。また、薬学的組成物を、これが投与に関する法規制ならびに業界基準を満たすものであることを確保するために試験し得る。
【0115】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、あるいは高濃度薬剤に適する他の規則構造物として組成し得る。必要に応じて上記に列挙した成分のうちの1つ、あるいは組み合わせと共に、必要量の本明細書で記載する薬剤を、適切な溶媒に混合し、続いて濾過滅菌することによって、滅菌注入用溶液を調製し得る。一般に、分散液は、本明細書で記載する薬剤を、基本分散溶媒および上記に列挙したものの内から必要とする他の成分を含有する滅菌キャリア中に混合することによって調製される。滅菌注入用溶液を調製するための滅菌粉体の場合は、本明細書で記載する薬剤および、前もって滅菌濾過したこれの溶液に由来する任意のさらに別の所望される成分の粉体を作る、真空乾燥法ならびに凍結乾燥法が好ましい調製法である。溶液の適切な流動性は、例えばレシチン等のコーティングを利用することによって、分散液の場合は必要とされる粒子サイズを維持することによって、ならびに界面活性剤を使用することによって維持し得る。例えばモノステアリン酸塩ならびにゼラチン等、吸収を遅らせる薬剤を組成物に包含させることによって、注入用組成物の吸収延長がもたらされることが可能である。
【0116】
(投与)
VLA−4結合抗体は、様々な手法によって、例えばヒト被験体等の被験体に投与し得る。多数の用途に関して、投与経路は、以下の内の1つである。:静脈内注射あるいは輸液、皮下注射、あるいは筋肉内注射。ナタリズマブ等のVLA−4結合抗体は、一定の製剤として、あるいはmg/kgという投与形態として投与し得るが、一定の製剤として投与されることが好ましい。この抗体は、静脈内(IV)あるいは皮下(SC)に投与し得る。ナタリズマブは、典型的には、IV用に例えば4週間に1度、50〜600mgの間、あるいはSC用に例えば少なくとも1週間に1度(例えば1週間に2回等)、50〜100mgの間(例えば75mg)という一定の単位投与量で投与される。また、これは、例えば約6.0、4.0、3.0、2.0、1.0mg/kg等、1から10mg/kgの間の投与量でボーラスとして投与し得る。改変投与量範囲には、典型的には4週間に1度、あるいは1ヶ月に1度の投与のために、被験体1人当たり600、400、300、250、200、あるいは150mg未満の1回投与量が含まれる。VLA−4結合抗体は、例えば、4週間に1度あるいは月に1度等、3週間から5週間ごとに投与し得る。
【0117】
また、VLA−4結合抗体に対する抗体の産生が減少あるいは回避されるよう投与量を選択し、α4サブユニットの40、50、70、75、あるいは80%を超える飽和を達成する、α4サブユニットの80、70、60、50、あるいは40%を下回る飽和を達成する、あるいは循環白血球の量の上昇を妨げ得る。
【0118】
一部の実施形態において、この活性薬剤は、埋め込み型、ならびにマイクロカプセル化送達系を含む放出調節組成等、この化合物が迅速に放出されるのを防ぐこととなるキャリアと共に調製される場合がある。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ならびにポリ乳酸等の生物分解性生体適合高分子を使用し得る。当該組成物を調製するための多数の方法に特許権が与えられている、あるいは当該組成物を調製するための多数の方法は一般に周知されている。例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照する。
【0119】
薬学的組成物は医療機器を用いて投与し得る。例えば、薬学的組成物は、米国特許第5,399,163、No.5,383,851、No.5,312,335、No.5,064,413、No.4,941,880、No.4,790,824、あるいはNo.4,596,556にて記載されている機器等、無針皮下注射器で投与し得る。よく周知されている埋め込み式ならびにモジュールの例には、調節された速度で医薬品を投与するための埋め込み式マイクロ輸液ポンプを開示する米国特許第4,487,603、皮膚を通過して医薬品を投与するための治療機器を開示する米国特許第4,486,194号、正確な輸液速度で医薬品を送達するための医薬品輸液ポンプを開示する米国特許第4,447,233号、連続的に薬剤を送達するための変流量埋め込み式輸液装置を開示する米国特許第4,447,224号、マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬剤送達システムを開示する米国特許第4,439,196号、ならびに浸透圧薬剤送達システムを開示する米国特許第4,475,196号が含まれる。当然ながら、多数の他の当該埋め込み式機器、送達システム、ならびにモジュールも周知されている。
【0120】
また、本明細書は、第1薬剤および第2薬剤を投与するための装置を取り上げる。この装置は、例えば、製薬調剤物を入れておく1つ以上の容器を含有することができ、単位投与量の第1薬剤ならびに第2薬剤を送達するように、この装置を形成し得る。第1薬剤ならびに第2薬剤は、同一の区画に、あるいは別個の区画に入れ得る。例えば、投与の前に、この装置を薬剤と組み合わせ得る。また、別個の機器を使用して第1薬剤ならびに第2薬剤を投与することも可能である。
【0121】
投与レジメンは、例えば治療反応あるいは併用治療の影響等、所望する反応が得られるように調整する。一般に、生物学的に利用可能な量の双方の薬剤を被験体に与えるために、任意の投与量のVLA−4結合抗体ならびに第2の薬剤の組み合わせ(別個に、あるいは共に組成されたもの)を利用し得る。
【0122】
本明細書で使用する単位投与形態物あるいは「固定用量」は、治療を受ける被験体のための統一された投与量として適切な物理的に別個の単位物を指し、各単位物は、必要とされる製薬キャリアおよび随意で他の薬剤と合わせて、所望する治療効果が生じるよう計算されて前もって決定された量の活性化合物を含有する。
【0123】
薬学的組成物は「治療上有効な量」の本明細書で記載する薬剤を含有する場合がある。当該有効量は、投与した第1薬剤および第2薬剤の併用効果に基づいて決定し得る。薬剤の治療上有効な量は、その個人の疾患の状態、年齢、性別、ならびに体重、ならびに、例えば多発性硬化症のパラメータ等1つ以上の疾患のパラメータの改善、あるいは例えば多発性硬化症等の疾患の1つ以上の症状の改善等、その個人において所望する反応を誘発する化合物の能力等の要因によっても変わる場合がある。また、治療上有効な量は、治療的に有益な効果が、その組成物の任意の毒性効果あるいは有害的影響を上回る量である。
【0124】
(例示的な第2薬剤)
一部の実施形態では、重篤な多発性硬化症を有する被験体に、VLA−4結合抗体と併用して第2薬剤を投与し得る。VLA−4結合抗体と共に投与し得る多発性硬化症を治療あるいは予防するための薬剤の、制限を与えない例には、以下の例示的な第2薬剤が含まれる。:
・例えば、ヒトインターフェロン−β−1a(例えばAVONEX(登録商標)あるいはRebif(登録商標))ならびにインターフェロン−1β(BETASERONTM;17番部位置換ヒトインターフェロンβ;Berlex/Chiron)等のインターフェロンβ等、インターフェロン。
・酢酸グラチラマー(Cop−1、Copolymer 1とも呼ばれる。COPAXONETM;Teva Pharmaceutical Industries,Inc.)。
・例えばジメチルフマル酸(例えばFumaderm(登録商標))等のフマル酸塩。
・Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、あるいは、リツキシマブと競合する、もしくはリツキシマブと重なるエピトープに結合するもの等他の抗CD20抗体。
・ミトザントロン(mitoxantrone)(NOVANTRONE(登録商標)、Lederle)。
・例えばクラブリビン(clabribine,LEUSTATIN(登録商標))、アザチオプリン(IMURAN(登録商標))、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、シクロスポリンA、メトトレキセート、4−アミノピリジン、ならびにチザニジン等の化学治療薬剤。
・例えばメチルプレドニゾロン(MEDRONE(登録商標)、Pfizer)、プレドニゾン等のコルチコステロイド。
・例えばRituxan(登録商標)(リツキシマブ)、CTLA4Ig、アレムツズマブ(MabCAMPATH(登録商標))、あるいはダクリズマブ(CD25に結合する抗体)等の免疫グロブリン。
・スタチン。
・アザチオプリン。ならびに
・TNFアンタゴニスト。
【0125】
他の例示的な第2薬剤ならびにVLA−4結合抗体と併用してこれらを投与する方法は、米国特許出願第60/603,468号にて記載されている。
【0126】
本明細書に含まれる全ての特許出願書、特許、参考文献、ならびに出版物は、参考として本明細書中に援用される。
【0127】
他の実施形態は、特許請求の範囲の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【公開番号】特開2012−67139(P2012−67139A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−1065(P2012−1065)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2011−253859(P2011−253859)の分割
【原出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】