説明

多発性硬化症を治療する方法

本明細書において多発性硬化症の被験者を治療する方法を開示する。一つの態様において、βインターフェロンによる治療に反応することができない被験者に、治療的有効量のIL-2受容体アンタゴニストを投与することによって、被験者を治療することを含む、多発性硬化症を有する被験者を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権に関する主張
その双方の全文が参照として本明細書に組み入れられる、2002年11月27日に出願されたPCT/US02/38290号および2002年6月28日に出願された米国仮特許出願第60/393,021号に対して優先権を主張する。
【0002】
分野
本開示は、IL-2受容体(IL-2R)に結合する抗体のような、IL-2受容体のアンタゴニストを用いる自己免疫疾患の治療、特に多発性硬化症の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
多発性硬化症(MS)は、慢性の神経性自己免疫性脱髄性疾患である。MSは、視力障害、単側性の失明(視神経炎)、平衡感覚の喪失、協調運動不良、不明瞭言語、振せん、しびれ、極度の疲労、知的機能(記憶および集中のような)の変化、筋虚弱、知覚異常、および失明を引き起こしうる。多くの被験者は慢性の進行性の無能となるが、増悪期間と次の増悪期間のあいだに臨床的に安定した長い期間が存在することもある。神経学的欠損は永続的または一過性である可能性がある。米国において、MS患者は約250,000〜400,000人であり、新規症例約200例が毎週診断されている。世界全体ではMSは、250万人に罹患している可能性がある。本疾患は、米国の医師が新規症例を報告する必要がある接触感染性ではないこと、そして症状の検出が困難となりうることから、疾患の発生率は推定に過ぎず、MS患者の実数はさらに多くなりうるであろう。
【0004】
MSの病態は、中枢神経系に対する異常な免疫応答を特徴とする。特に、T-リンパ球は、中枢神経系のニューロンのミエリン鞘に対して活性化されて、脱髄を引き起こす。脱髄工程において、ミエリンは破壊されて、プラークとして知られる硬い「硬化」組織の瘢痕に置き換わる。これらの病変は、脳、視神経、および脊髄全体に散在して存在するように思われる。脱髄は、神経パルスの伝導を妨害して、それによって多発性硬化症の症状を生じる。ほとんどの患者は、個々の脱髄による発作から臨床的に回復して、再発-寛解性多発性硬化症として知られる疾患の最も一般的な型の古典的な寛解および増悪の経過をたどる。
【0005】
MSは、遺伝的素因を有する個体に発症するが、ウイルスのような環境物質によって誘発される可能性が最も高い(Martinら、Ann. Rev. Immunol. 10:153〜187、1992)。現在の仮説によれば、活性化された自己反応性のCD4+ Tヘルパー細胞(Th1細胞)は、選択的にインターフェロン-γ(IFN-γ)および腫瘍壊死因子α/β(TNF-α/β)を分泌し、MSにおいて炎症および脱髄を引き起こす(Martinら、上記)。利用できるデータから、異なる多くの抗原に対してTh1-様反応を引き起こす素因が、MS疾患発病の重要な局面であることが示唆されている。Th1細胞によって分泌される前炎症性サイトカイン(IFN-γ、TNFα/βのような)およびケモカインは、血液-脳関門の開口、他の炎症細胞の動員、定住神経膠細胞(小膠および大膠細胞)の活性化、ならびに活性化マクロファージによって分泌される窒素および酸素ラジカルによるミエリン損傷のエフェクター相を含む、病変発症の多くの局面に関与する(Wekerleら、Trends Neuro Sci. 9:271〜277、1986)(Martinら、上記)。
【0006】
分子類似性による自己反応性リンパ球の末梢での活性化(WucherpfennigおよびStrominger、Cell 80:695〜705、1995;Granら、Ann. Neurol. 45:559〜567、1999)は、CNS分画へT細胞が遊走する(Calabresiら、Ann. Neurol. 41:669〜674、1998)ために極めて必須である。必要な接着分子を発現する活性化T細胞のみが、血液-脳関門を超えて遊走することができる。MS患者のみならず実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE;特にSJLマウスにおけるEAE、Encinasら、Nature Genet. 21:158〜160、1999を参照されたい)のようなMSのモデルにおけるTリンパ球は、細胞が細胞周期により容易に入って、増殖相により長く留まり、アポトーシス経路の欠損を示す可能性があり(Zippら、Ann. Neurol. 43:116〜120、1998)、またはミエリン特異的T細胞におけるヒポキサンチン-ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Allegrettaら、Science 247:718〜721、1990)のより高い変異率によって示されるようにインビボで活性化されることから、異なる活性化状態(Calabresiら、上記)に存在するという点が、非感受性個体とは異なるという仮説が立てられている。
【0007】
MS患者の状態は、MS患者の脳における核磁気共鳴(MRI)活性を長期的に毎月追跡調査することによって評価することができる。MRIは、小さいコホートの患者における相I/II臨床試験にとって一連の独自の転帰測定手段を提供し、このように、新規治療戦略の原理を証明するデータを確立するために十分に適している(例えば、Harrisら、Ann. Neurol. 29:548〜555、1991;MacFarlandら、Ann. Neurol. 32:758〜766、1992;Stoneら、Ann. Neurol. 37:611〜619、1995)。現在のところ、再発-寛解性MSに関して承認された治療は四つ、すなわち三つのタイプのIFN-β(the Interferon-B multiple sclerosis Study Group、Neurology 43:655〜661、1993;IFNB Multipe Sclerosis Study Group and the University of British Columbia MS/MRI Analysis Group、Neurology 45:1277〜1285、1995;Jacobsら、Ann. Neurol. 39:285〜294、1996)、およびコポリマー-1(Johnson KP、Group.tCMST、J. Neurol. 242:S38、1995)が存在する。治療の失敗は、中和抗IFN-β抗体の産生に関連しているが、その役割は現在のところ、完全には理解されていない(FNB Multiple Sclerosis Study Group and the University of British Columbia MS/MRI Analysis Group、Neurology 47:889〜894、1996)。IFN-βに対して反応しないことはまれな事象ではなく、したがって、標準的なIFN-β治療と他の治療様相との適した併用、および新規治療プロトコールを特定することが重要である。
【発明の開示】
【0008】
概要
本明細書において、多発性硬化症を有するヒト被験者のような被験者を治療する方法を開示する。
【0009】
一つの態様において、本方法には、βインターフェロンによる治療を行わずに治療的有効量のIL-2受容体(IL-2R)アンタゴニストを被験者に投与して、それによって多発性硬化症の症状または複数の症状を改善して、被験者を治療することが含まれる。一つの例において、被験者は、βインターフェロンによるこれまでの治療に反応することができなかった。もう一つの例において、IL-2Rアンタゴニストは、IL-2受容体のαまたはp55(Tac)鎖に特異的に結合するキメラ、ヒト化、またはヒト抗体のようなモノクローナル抗体である。
【0010】
もう一つの態様において、インターロイキン-2受容体に特異的に結合するキメラ、ヒト化、または完全なヒトモノクローナル抗体のような抗体の治療的有効量を投与することを含む、多発性硬化症被験者を治療する方法を提供する。モノクローナル抗体は、少なくとも2ヶ月間少なくとも2週間に1回投与される。被験者は、モノクローナル抗体の投与期間中、インターフェロン-βによって治療されない。一つの例において、モノクローナル抗体はp55に結合する。もう一つの特定の非制限的な実施例において、被験者は、これまでにインターフェロン-βによる治療に反応しなかった。
【0011】
さらなる態様において、インターフェロン-βの投与を、IL-2Rのアンタゴニストの投与と併用して、MSの個体において有意な臨床改善を生じる治療法が開示される。特定の例において、IL-2Rアンタゴニストは、モノクローナル抗体のような抗体、例えばダクリズマブのような抗p55抗体である。
【0012】
前述および他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら説明するいくつかの態様の以下の詳細な説明からより明らかとなると思われる。
【0013】
詳細な説明
I.略語
CDR:相補性決定領域
CBC:全血球数計算
CNP:サイクリックヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ
EDSS:総合障害度(expanded disability status scale)
FR:フレームワーク領域
Gd:ガドリニウム
HIV:ヒト免疫不全ウイルス
HV:高度可変領域
IFN:インターフェロン
Ig:免疫グロブリン
IL-2:インターロイキン-2
IL-2R:インターロイキン2受容体
kg:キログラム
KLH:キーホールリンペットヘモシアニン
LPS:リポ多糖類
MBP:ミエリン塩基性タンパク質
mg:ミリグラム
mm:ミリメートル
MOG:ミエリン/乏突起膠細胞糖タンパク質
MRI:核磁気共鳴画像
MS:多発性硬化症
NK:ナチュラルキラー細胞
NO-:酸化窒素
PBMC:末梢血単核球
PLP:ミエリンプロテオリピッドタンパク質
SRS:スクリプス神経評定度(Scripps Neurological Rating Scale)
TGF:トランスフォーミング増殖因子
TNF:腫瘍壊死因子
VH:可変重鎖
VL:可変軽鎖
【0014】
II.用語
特に明記していなければ、技術用語は、通常の用途に従って使用する。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin、「Genes V」、オックスフォード大学出版からの出版、1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編)、「The Encyclopedia of Molecular Biology」、ブラックウェルサイエンス社からの出版、1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編)、「Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference」、VCH出版からの出版、1995(ISBN 1-56081-569-8)において認められるであろう。免疫学の当業者に既知である定義およびさらなる情報は、例えば、「Fundamental Immunology」、W.E. Paul編、第4版、リッピンコット-レイブン出版、1999に認めることができる。
【0015】
本開示の様々な態様の再検討を容易にするために、特定の用語に関する以下の説明を提供する。
【0016】
有害事象:異常な検査結果の臨床発現、医療従事者によって記された医学診断、または悪化した被験者によって報告された症状を含む任意の望ましくない兆候。有害事象には、生命を脅かす事象、入院を延長させる事象、望ましくない転帰を防止するために内科または外科的介入を必要とする事象が含まれるがこれらに限定されない。
【0017】
IL-2受容体(IL-2R)のアンタゴニスト:IL-2Rまたはその成分に対して特異的に結合して、IL-2受容体またはその成分の生物機能を阻害する物質。阻害することができる機能の例は、IL-2Rに対するIL-2の結合、IL-2の結合によるシグナルの細胞内伝達、ならびにIL-2に反応したT細胞のようなリンパ球の増殖および/または活性化である。一つの態様において、本明細書に開示の方法において用いられるIL-2Rアンタゴニストは、これらの機能の少なくとも一つを阻害する。または、本明細書に開示の方法において用いられるIL-2Rアンタゴニストは、これらの機能の一つより多いまたは全ての機能を阻害することができる。
【0018】
一つの例において、IL-2受容体アンタゴニストは、Zenapax(登録商標)のようなTac(p55)に特異的に結合する抗体である(下記を参照されたい)。他の抗p55物質には、キメラ抗体であるバシリキシマブ(Simulect(登録商標))、BT563(Baanら、Transplant. Proc. 33:224〜2246、2001)、および7G8が含まれる。バシリキシマブは、同種異系移植片拒絶の予防において(Kahanら、Transplantation 67:276〜84、1999)、および乾癬の治療において(Owen & Harrison、Clin. Exp. Dermatol. 25:195〜7、2000)有用であることが報告されている。本発明の方法において用いられる例としてのヒト抗p55抗体は、ゲンマブとして開発されているHuMax-TACである。もう一つの例において、IL-2受容体アンタゴニストは、p75またはIL-2Rのβサブユニットに特異的に結合する抗体である。
【0019】
IL-2受容体に特異的に結合するさらなる抗体は、当技術分野で既知である。例えば、米国特許第5,011,684号;米国特許第5,152,980号;米国特許第5,336,489号;米国特許第5,510,105号;米国特許第5,571,507号;米国特許第5,587,162号;米国特許第5,607,675号;米国特許第5,674,494号;米国特許第5,916,559号を参照されたい。mik-β1抗体は、ヒトIL-2Rのβ鎖に特異的に結合するアンタゴニストである。
【0020】
もう一つの例において、IL-2受容体アンタゴニストは、抗体ではないペプチドアンタゴニストである。Tac(p55)およびp75(IL-2Rβ)のアンタゴニストを含むIL-2受容体のペプチドアンタゴニストも同様に既知である。例えば、p55およびp75のペプチドアンタゴニストは、米国特許第5,635,597号に開示される。これらのペプチドもまた、本明細書に開示の方法において有用である。
【0021】
さらなる例において、IL-2受容体アンタゴニストは、IL-2受容体に特異的に結合して、受容体の生物機能を阻害する化学化合物または低分子である。
【0022】
抗体断片(特異的抗原結合を有する断片):Fab、(Fab')2、Fv、および一本鎖Fv(scFv)を含む抗体の様々な断片が同定されている。これらの抗体断片は、以下のように定義される:(1)Fab、抗体全体の酵素パパインによる消化によって産生され、無傷の軽鎖と一つの重鎖の一部とを生じる、または遺伝子操作によって同等に産生された、抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片;(2)Fab'、抗体全体のペプシンによる処置後に還元を行い、無傷の軽鎖と重鎖の一部を生じることよって得られた抗体分子の断片;抗体1分子あたり2個のFab'断片が得られる;(3)(Fab')2、抗体全体を酵素ペプシンによって処理してその後還元を行わなずに得られた、または遺伝子操作によって同等に作製された抗体断片;(4)F(Ab')2、ジスルフィド結合によって互いに結合された二つのFab'断片の二量体;(5)Fv、2本の鎖として発現された、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含む遺伝子操作された断片;および(6)一本鎖抗体(「SCA」)、遺伝子融合された一本鎖分子として、適したポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む遺伝子操作された分子。これらの断片を作成する方法は当技術分野において日常的である。
【0023】
自己免疫障害:免疫系が、体内の抗原に対して免疫応答(例えば、B細胞またはT細胞反応)を生じ、それによって組織が損傷を受ける障害。
【0024】
βインターフェロン:インターフェロン-β1aおよびインターフェロンβ1bを含む任意のβインターフェロン。
【0025】
インターフェロンβ1aは、予想分子量が約22,500ダルトンである、アミノ酸166個の糖タンパク質である。Avonex(登録商標)として知られるインターフェロン-β1aは、その中にヒトインターフェロン-β遺伝子が導入されている哺乳類細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)を利用した組換えDNA技術によって産生される。Avonex(登録商標)のアミノ酸配列は、天然のヒトインターフェロン-βのアミノ酸配列と同一である。2',5'-オリゴアデニレートシンテターゼ、β2-ミクログロブリン、およびネオプテリンを含む、インターフェロン誘導遺伝子産物およびマーカーが、Avonex(登録商標)によって治療した患者から採取した血液の血清および細胞分画において測定されている。Avonex(登録商標)は、1996年に承認され、バイオジェンインク(Biogen, Inc)によって販売されている。Avonex(登録商標)は、薬剤を投与した被験者において2年のあいだにガドリニウム(Gd)-増強病変の数を13%まで減少させること、および被験者の総合障害度(EDSS)のスコアを約22%改善することが証明されている。
【0026】
もう一つのインターフェロン-β1aが2002年に承認されており、Rebif(登録商標)として知られ、セロノインク(Serono, Inc)から販売されている。Rebif(登録商標)として知られるインターフェロン-β1aは、最近、再発-寛解性MSの治療に承認された。Avonex(登録商標)とRebif(登録商標)の主な違いは、承認された投与法であり、前者は筋肉内注射であり、後者は皮下注射である。Samkoff、Hosp. Phys. p21〜7(2002)によれば、Rebif(登録商標)は薬剤を投与した被験者において再発率を33%減少させることができる。
【0027】
インターフェロン-β1bは、アミノ酸165個を有する高度精製タンパク質であり、おおよその分子量は18,500ダルトンである。Betaseron(登録商標)として知られるインターフェロン-β1bは、1993年にMSの治療として承認され、ベルラックスラボラトリーズインク(Berlax Laboratories, Inc)から販売されている。Betaseron(登録商標)は、ヒトインターフェロン-βの遺伝子を含む遺伝子操作プラスミドを有する大腸菌株の細菌発酵によって製造される。本来の遺伝子をヒト線維芽細胞から得て、17位に認められるシステイン残基の代わりにセリン残基を用いるように改変した。医師用添付文書集(Physician's Desk Reference)(1996)によれば、Betaseron(登録商標)は、薬剤を投与した被験者において悪化率を約31%減少させることが示されている。インターフェロン-β1bが多発性硬化症においてその作用を発揮するメカニズムは明確に理解されていない。しかし、インターフェロン-β1bの生体反応修飾特性は、特異的細胞受容体とのその相互作用を通して媒介されることが知られている。これらの受容体にインターフェロン-β1bが結合すると、インターフェロン-β1bの生物作用のメディエータであると考えられる多くのインターフェロン誘導遺伝子産物(例えば、2',5'-オリゴアデニレートシンテターゼ、タンパク質キナーゼ、およびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)の発現が誘導される。
【0028】
相補性決定領域(CDR):CDRは、結合した抗原の三次構造に対して相補的である抗原結合表面を形成する、抗体分子の可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)領域のそれぞれにおける三つの高度可変領域である。重鎖または軽鎖のN末端から順に、これらの相補性決定領域はそれぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と呼ばれる。CDRは、抗原-抗体結合に関係して、CDR3は、抗原-抗体結合に特異的な独自の領域を含む。したがって、抗原結合部位には、重鎖および軽鎖V領域のそれぞれからのCDR領域を含む、CDR 6個が含まれる可能性がある。CDR領域内のアミノ酸が1個変化すれば、特異的抗原に対する抗体の親和性が破壊されうる(Abbasら、「Cellular and Molecular Immunology」、第4版、143〜5頁、2000を参照されたい)。CDRの位置は、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunologic Interest.」米国保健社会福祉省、1983によって正確に定義されている。
【0029】
エピトープ:アミノ酸配列の特異性によって決定される、抗体によって認識される抗原上の部位。二つの抗体は、競合的結合アッセイにおいて測定した場合にその抗原に対してそれぞれが互いの結合を競合的に阻害する(遮断する)場合、同じエピトープに結合すると言われる(例えば、Junghansら、Cancer Res. 50:1495〜1502、1990を参照されたい)。または、二つの抗体は、抗原において一つの抗体の結合を減少または消失させるほとんどのアミノ酸変異が、他の結合を減少または消失させれば、同じエピトープを有する。二つの抗体は、それぞれが抗原に対する他の抗体の結合を部分的に阻害すれば、および/または一つの抗体の結合を減少または消失させるいくつかのアミノ酸変異が、他の結合を減少または消失させれば、重なり合うエピトープを有すると言われる。
【0030】
フレームワーク領域(FR):抗体の重鎖および軽鎖の可変領域内の三つの高度に多様な相補性決定領域(CDR)に隣接する比較的保存された配列。したがって、抗体重鎖または軽鎖の可変領域は、FRと三つのCDRとからなる。いくつかのFR残基は、結合した抗原に接触してもよい;しかし、FR、特にCDRに直接隣接するFR残基は、抗原結合部位への可変領域の折りたたみに主に関与する。理論に拘束されたくはないが、抗体のフレームワーク領域は、CDRを配置して整列させるために役立つ。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種間で比較的保存されている。「ヒト」フレームワーク領域は、天然に存在するヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に同一である(約85%またはそれ以上、通常90〜95%またはそれ以上)フレームワーク領域である。
【0031】
免疫グロブリン:免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる一つまたはそれ以上のポリペプチドを含むタンパク質。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α(IgA)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ(IgD)、ε(IgE)、およびμ(IgM)定常領域遺伝子が含まれると共に、多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。完全長の免疫グロブリン軽鎖は、一般的に約25 kDまたは長さがアミノ酸214個である。完全長の免疫グロブリン重鎖は、一般的に約50 Kdまたは長さがアミノ酸446個である。軽鎖は、NH2末端で可変領域遺伝子(長さがアミノ酸約110個)およびCOOH末端でκまたはλ定常領域遺伝子によってコードされる。重鎖は同様に、可変領域遺伝子(長さがアミノ酸約116個)および他の定常領域遺伝子の一つによってコードされる。
【0032】
抗体の基本構造単位は、一般的に、それぞれの対が一つの軽鎖と一つの重鎖とを有する免疫グロブリン鎖の二つの同一の対からなる四量体である。それぞれの対において、軽鎖および重鎖可変領域は抗原に結合して、定常領域がエフェクター機能を媒介する。免疫グロブリンはまた、例えば、Fv、Fab、および(Fab')2のみならず、双機能ハイブリッド抗体および一本鎖(例えば、Lanzavecchiaら、Eur. J. Immunol. 17:105、1987;Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879〜5883、1988;Birdら、Science 242:423〜426、1988;Hoodら、Immunology、ベンジャミン、ニューヨーク、第2版、1984;HunkapillerおよびHood、Nature 323:15〜16、1986)を含む多様な他の型で存在する。
【0033】
免疫グロブリン軽鎖または重鎖可変領域には、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる三つの高度可変領域が介在するフレームワーク領域が含まれる(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、E. Kabatら、米国保健社会福祉省、1983を参照されたい)。先に述べたように、CDRは、抗原のエピトープに対する結合に主に関与する。
【0034】
キメラ抗体は、典型的に遺伝子操作によって、異なる種に属する免疫グロブリン可変領域および定常領域からその軽鎖および重鎖遺伝子が構築されている抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変領域セグメントを、κおよびγ1またはγ3のようなヒト定常領域セグメントに結合させることができる。一つの例において、このように治療的キメラ抗体は、マウス抗体からの可変または抗原結合ドメインおよびヒト抗体からの定常またはエフェクタードメインとで構成される(例えば、ATCCアクセッション番号CRL 9688は、抗Tacキメラ抗体を分泌する)が、他の哺乳類種も用いることができ、または可変領域は分子技術によって産生することができる。キメラ抗体を作製する方法は、当技術分野において周知であり、例えば参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,807,715号を参照されたい。
【0035】
「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域とヒト以外の(マウス、ラット、または合成)免疫グロブリンからの一つまたはそれ以上のCDRとを含む免疫グロブリンである。CDRを提供するヒト以外の免疫グロブリンは、「ドナー」と呼ばれ、フレームワーク領域を提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。一つの態様において、ヒト化免疫グロブリンにおける全てのCDRは、ドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域が存在する必要はないが、存在すれば、それらは、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一でなければならない、すなわち約95%またはそれ以上のような、少なくとも約85〜90%同一でなければならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、おそらくCDRを除いて、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖とヒト化重鎖免疫グロブリンとを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリンまたは抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから得られるアミノ酸による限定数の置換を有してもよい。ヒト化または他のモノクローナル抗体は、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を及ぼさないさらなる保存的アミノ酸置換を有することができる。例としての保存的置換は、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;およびphe、tyr(参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,585,089号を参照されたい)のような置換である。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作によって構築することができ、例えば参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,225,539号および米国特許第5,585,089号を参照されたい。
【0036】
ヒト化抗体は、軽鎖および重鎖遺伝子がヒト起源である抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で既知の方法によって作成することができる。ヒト抗体は、対象となる抗体を分泌するヒトB細胞を不死化することによって作製することができる。不死化は、例えばEBV感染によって、またはヒトB細胞を骨髄腫もしくはハイブリドーマ細胞に融合させて、トリオーマ細胞を産生することによって行うことができる。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイ法によっても産生することができる(例えば、参照として本明細書に組み入れられるDowerら、国際公開公報第91/17271号;McCaffertyら、国際公開公報第92/001047号;およびWinter、国際公開公報第92/20791号を参照されたい)、またはヒトの組み合わせモノクローナル抗体ライブラリから選択することができる(Morphosysのウェブサイトを参照されたい)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニック動物を用いても調製することができる(参照として本明細書に組み入れられるLonbergら、国際公開公報第93/12227号;およびKucherlapati、国際公開公報第91/10741号を参照されたい)。
【0037】
インターロイキン2(IL-2):他の如何なる因子とも配列の相同性を示さない、わずかに塩基性のpIを有するアミノ酸133個(15.4 kD)のタンパク質。マウスおよびヒトIL-2は、約65%の相同性を示す。IL-2は、疎水性分泌シグナル配列として機能する最初のアミノ末端アミノ酸20個を有するアミノ酸153個の前駆体タンパク質として合成される。タンパク質は、生物活性にとって必須のジスルフィド結合1個(位置Cys58/105)を含む。ヒトIL-2遺伝子はエキソン4個を含み、ヒト染色体4q26-28(マウス第3染色体)にマッピングされる。
【0038】
IL-2の生物活性は、活性化T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞において発現されるが、休止期細胞には発現されない膜受容体によって媒介される。活性化B細胞および休止期単核球白血球も同様に、まれにこの受容体を発現する。
【0039】
IL-2受容体:IL-2に結合してその生物作用を媒介する細胞受容体。異なるようにそして独立して発現される異なる三つのタイプのIL-2受容体が区別される。高親和性IL-2受容体(Kd〜10 pM)は、細胞が発現する全てのIL-2受容体の約10%を占める。この受容体は、二つのサブユニット:IL-2R-α(T細胞活性化(TAC)抗原またはp55としても知られる)およびIL-2R-β(p75またはCD122としても知られる)からなる膜受容体複合体である。中間の親和性のIL-2受容体(Kd=100 pM)は、p75サブユニットとγ鎖とからなるが、低親和性受容体(Kd=10 nM)は、p55のみによって形成される。
【0040】
p75は、長さがアミノ酸525個である。これはアミノ酸214個の細胞外ドメインとアミノ酸286個の細胞質ドメインとを有する。p75遺伝子は、ヒト染色体22q11.2-q12にマッピングされ、エキソン10個を含み、長さは約24 kbである。p55は、長さがアミノ酸251個で、細胞外ドメインはアミノ酸219個であり、細胞質ドメインは非常に短く、アミノ酸13個である。p55をコードする遺伝子は、ヒト染色体10p14-p15にマッピングされる。
【0041】
p75は、休止期Tリンパ球、NK細胞、および他の多数の細胞タイプにおいて構成的に発現されるが、p55の発現は通常、活性化後に限って認められる。活性化リンパ球はp55(TAC抗原)の42 kDa断片を絶えず分泌する。この断片は、血清および血漿中を循環して、可溶性のIL2受容体として機能する(Smith、Ann. Rev. Cell Biol. 5:397〜425、1989;TaniguchiおよびMinami、Cell 73:5〜8、1993を参照されたい)。
【0042】
p55は、長さがアミノ酸251個で、細胞外ドメインはアミノ酸219個であり、細胞質ドメインは非常に短く、アミノ酸13個である。p55遺伝子は、ヒト染色体10p14-p15にマッピングされる。p55の発現は、RPT-1と呼ばれる核タンパク質によって調節される。
【0043】
γと呼ばれるIL2受容体の第三の64 kDaサブユニットが記述されている。このサブユニットは、高いおよび中間の親和性のIL-2受容体を形成するために必要であるが、それ自身はIL-2に結合しない。IL-2受容体のγサブユニットをコードする遺伝子は、ヒト染色体Xq13にマッピングされ、約4.2 kbに及び、エキソン8個を含む。
【0044】
核磁気共鳴画像:体内の組織のコンピューター画像を作製し、電波を適用することによって誘導された体内の原子の核磁気共鳴に基づく非侵襲的診断的技法。
【0045】
脳のMRIは、多発性硬化症の動的な病態を理解するための重要なツールである。T2強調脳MRIは、多発性硬化症における高感受性の病変を明確にし、疾患の負荷の測定値として用いられる。しかし、T2信号の変化は、浮腫、脱髄、神経膠症、および軸索の喪失を反映しうることから、そのような高感受性は、特異性を犠牲にした場合に得られる。T1強調脳MRI上で示されるガドリニウム(Gd)増強領域は、活動性の血管周囲炎症によるその下の血液-脳関門の破壊を反映すると考えられる。そのような増強領域は一過性であり、典型的に持続は1ヶ月未満である。したがって、疾患の活動度を評価するために、ガドリニウム増強T1強調脳MRIが用いられる。多発性硬化症の被験者の中心白質におけるほとんどのT2強調(T2)病変は、T1強調(T1)ガドリニウム(Gd)増強が多様な期間にわたって起こることから始まり、T1 Gd増強およびT2病変は一つの病理工程の段階を表す。T1およびT2 Gd増強病変を評価するための脳MRI技術は標準的である(例えば、Leeら、Brain 122(Pt 7):1211〜2、1999を参照されたい)。
【0046】
モノクローナル抗体:Bリンパ球の単一のクローンによって産生された、または一つの抗体の軽鎖および重鎖がトランスフェクトされている細胞によって産生された抗体。モノクローナル抗体は、当業者に既知の方法によって、例えば骨髄腫細胞と免疫脾細胞との融合からハイブリッド抗体産生細胞を作製することによって産生される。
【0047】
多発性硬化症:患者の80〜85%において再発-寛解性疾患として現れる時間的および空間的に多発性の中枢神経系白質障害として典型的に記述される自己免疫疾患。診断は、脳および脊髄の核磁気共鳴画像(MRI)、体性感覚誘発電位の分析、および免疫グロブリンまたはオリゴクローナルバンドの増加量を検出するための脳脊髄液の分析によって行うことができる。MRIは、特に感度のよい診断ツールである。MSの有無または進行を示すMRI異常には、T2強調画像および液体弱毒化反転回復(fluid attenuated inversion recovery)画像上での高信号白質、活動型病変のガドリニウム増強、低信号の「ブラックホール」(神経膠症および軸索病態を表す)、およびT1強調試験での脳萎縮が含まれる。連続的なMRI試験を用いて、疾患の進行を示すことができる。
【0048】
再発-寛解性多発性硬化症は、完全または部分的に回復する明確に定義された急性発作と、発作と次の発作とのあいだに疾患が進行しないことを特徴とするMSの臨床経過である。
【0049】
二次進行性多発性硬化症は、当初再発-寛解性であるが、その後おそらく時折の再発と軽度の寛解を伴って多様な速度で進行性となるMSの臨床経過である。
【0050】
原発性進行性多発性硬化症は当初から進行性の疾患を呈する。
【0051】
ポリペプチド:単量体がアミド結合によって互いに結合しているアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がαアミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれかを用いることができるが、L-異性体が好ましい。本明細書において用いられるように「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、任意のアミノ酸配列を含み、糖タンパク質のような改変配列が含まれると意図される。「ポリペプチド」という用語は特に、天然に存在するタンパク質と共に、組換えまたは合成によって産生されたタンパク質を含むと意図される。
【0052】
「断片」という用語は、長さがアミノ酸少なくとも8、10、15、20、または25個であるポリペプチドの一部を指す。「ポリペプチドの機能的断片」という用語は、ポリペプチドの活性(例えば抗原の結合)を保持するポリペプチドの全ての断片を指す。例えば、生物学的に機能的な断片は、抗体分子に結合することができるエピトープと同程度に小さいポリペプチド断片から、細胞内での表現型の変化の特徴的な誘導またはプログラミングに関与することができる大きいポリペプチドに至るまで大きさが多様となりうる。「可溶性」という用語は、細胞膜に挿入されないポリペプチドの型を指す。
【0053】
薬剤または薬物:被験者に適切に投与された場合に所望の治療または予防効果を誘導することができる化学化合物または組成物。
【0054】
薬学的に許容される担体:本明細書に開示される方法において有用な薬学的に許容される担体は、通常通りである。「Remington's Pharmaceutical Sciences」、E.W. Martin、マック出版社、イーストン、ペンシルバニア州、第15版(1975)は、本明細書に開示のIL-2受容体アンタゴニストの薬学的送達に適した組成物および処方を記述している。
【0055】
一般的に、担体の特性は、用いる特定の投与様式に依存すると考えられる。例えば、非経口処方は通常、溶媒として水、生理食塩液、緩衝塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロール等のような薬学的および生理的に許容される液体を含む注射用液を含む。固体組成物(例えば、粉剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤)の場合、通常の非毒性固体担体には、例えば、薬学等級のマンニトール、乳糖、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれる。生物学的に中性の担体の他に、投与される薬学的組成物は、湿潤または乳化剤、保存剤、塩、アミノ酸、およびpH緩衝剤等のような非毒性の補助物質、例えば塩化もしくは燐酸ナトリウムもしくはカリウム、ツイーン、酢酸ナトリウム、またはモノラウリン酸ソルビタンを含みうる。
【0056】
精製された:精製されたという用語は、絶対的な純度または単離を必要とせず、むしろ相対的な用語であると意図される。このように、例えば、精製または単離されたタンパク質調製物は、タンパク質がその生成環境、例えば細胞内または生化学反応チャンバーに存在する場合より濃縮されている調製物である。好ましくは、タンパク質調製物は、タンパク質が、調製物の総タンパク質含有量の少なくとも50%を占めるように精製される。製剤の場合、90%、95%、98%、または99%もしくはそれ以上の「実質的な」純度の活性物質を利用することができる。
【0057】
配列の同一性:二つの核酸配列または二つのアミノ酸配列間の類似性は、配列間の類似性という用語で表現され、そうでなければ配列同一性と呼ばれる。配列同一性は、しばしば、%同一性(または類似性もしくは相同性)という用語で測定される。百分率がより高ければ、二つの配列はより類似する。IL-2R抗体または抗原結合断片の相同体またはオルソログ、およびその対応するcDNA配列を標準的な方法を用いて整列させると、比較的高い程度の配列同一性を有するであろう。この相同性は、オルソログタンパク質またはcDNAが、より遠縁の種(例えば、ヒトとマウス配列)と比較してより近縁である種に由来する場合にはより有意となる。
【0058】
比較のために配列を整列させる方法は、当技術分野で周知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math. 2:482、1981;NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48:443、1970;PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444、1988;HigginsおよびSharp、Gene 73:237〜244、9 1988);HigginsおよびSharp、CABIOS 5:151〜153、1989;Corpetら、Nuc. Acids Res. 16:10881〜90、1988;Huangら、Computer Appls. in Biosciences 8:155〜65、1992;およびPearsonら、Meth. Mol. Biol. 24:307〜31、1994に記述されている。Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403〜410、1990は、配列アラインメント法および相同性計算に関する詳細な検討を紹介している。
【0059】
特異的結合物質:既定の標的に限って実質的に結合する物質。このように、IL-2受容体特異的結合物質は、実質的にIL-2受容体またはその成分に限って結合する。本明細書において用いられるように、「IL-2受容体特異的結合物質」という用語には、抗IL-2受容体抗体および実質的にIL-2受容体またはその成分(例えば、p55、p75)に限って結合する他の物質が含まれる。
【0060】
抗IL-2受容体抗体は、HarlowおよびLane(「Using Antibodies, A Laboratory Manual」、CSHL、ニューヨーク州、1999、ISBN 0-87969-544-7)を含む多くの文献に記述される標準的な技法を用いて産生してもよい。さらに、特定の技術は、中和抗体の産生を増強する可能性がある(米国特許第5,843,454号;米国特許第5,695,927号;米国特許第5,643,756号;および米国特許第5,013,548号)。特定の物質が実質的にIL-2受容体成分に限って結合するという決定は、日常的な技法を用いてまたはそれらを改変して容易に行われるであろう。一つの適したインビトロアッセイは、ウェスタンブロッティング技法を利用する(HarlowおよびLane、1999を含む多くの標準的な文献に記述)。ウェスタンブロッティングを用いて、抗IL-2受容体モノクローナル抗体のような所定のタンパク質結合物質が、実質的にIL-2受容体に限って結合することを決定してもよい。IL-2受容体に対する抗体は、当技術分野で周知である。
【0061】
より短い抗体断片も同様に、特異的結合物質として役立ちうる。例えば、IL-2受容体に結合するFabs、Fvs、および一本鎖Fvs(SCFvs)は、IL-2受容体特異的結合物質であろう。
【0062】
被験者:ヒトまたはヒト以外の動物。一つの態様において、被験者は多発性硬化症を有する。
【0063】
治療プロトコール(インターフェロン-βの投与のような)が失敗した多発性硬化症の被験者は、その病態が治療的有効量の薬物による治療に反応して十分に改善しなかった、変化しなかった、または悪化したように、治療に対して適切に反応しないまたは反応することができない被験者である。治療プロトコールが失敗した被験者は、所望の効果を得るため薬物の増加量を必要としうる。
【0064】
一例において、MS被験者がインターフェロン-βのような治療物質に反応できないことは、6ヶ月間の毎月の基準値対比病変の平均値の少なくとも半分に、Gd対比MRI病変が再発したこととして測定することができる。他の例において、インターフェロン-β治療のような治療物質に反応することができないMS被験者は、18ヶ月間のインターフェロン-β治療において1回もしくはそれ以上の増悪を経験した、18ヶ月の治療期間においてEDSSに対して1ポイントもしくはそれ以上の増加を示す、またはインターフェロン-β治療の開始前に測定した6ヶ月の基準値期間にわたって確立された毎月の基準値対比増強病変の平均値の少なくとも半分に、脳のMRIスキャン上で対比増強病変が持続または再発した被験者であると同定される。
【0065】
理論に拘束されたくはないが、被験者は、中和抗体の発生によりIFN治療に反応できないことがありうるが、IFN治療に反応しないことはまた、中和抗体が存在しない場合でも検出されうる(一時的無効)。一つの例において、インターフェロン-βによる治療が失敗した被験者は、インターフェロン-βに特異的に結合する中和抗体を産生する被験者であり、効果を認めるため、またはMSの兆候もしくは症状を変化させるためには、用量の増加が必要である。
【0066】
症状および兆候:疾患または被験者の病態に関する任意の主観的証拠、すなわち、被験者によって認められるような証拠;何らかの身体または精神状態を示す被験者の病態における認識可能な変化。「兆候」は、被験者の検査または評価によって発見可能な、疾患であることを示す任意の異常である。兆候は一般的に、疾患の客観的指標である。「兆候」には、多発性硬化症被験者における免疫状態または病変の存在に関する試験のような任意の測定可能なパラメータが含まれるがこれらに限定されない。
【0067】
治療的有効量:多発性硬化症のような、疾患の進行を防止するもしくは寛解を引き起こすために十分な、または疾患によって引き起こされる症状を減少させることができる用量。
【0068】
Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ):Tac(p55)に特異的に結合するヒトIgG1アイソタイプの特定の組換え型ヒト化モノクローナル抗体。Zenapax(登録商標)をコードする組換え遺伝子は、ヒト(約90%)およびマウス(約10%)の抗体配列の複合体である。ドナーマウス抗Tac抗体は、IL-2R Tacタンパク質に特異的に結合して、リンパ様細胞のIL-2媒介生物反応を阻害するIgG2aモノクローナル抗体である。マウス抗-Tac抗体は、相補性決定領域およびマウス抗-TAC抗体の他の選択された残基を、ヒトIgG1抗体のフレームワークおよび定常領域と組み合わせることによって「ヒト化」した。ヒト化された抗Tac抗体であるダクリズマブは、米国特許第5,530,101号に記述され、その配列が記載されており、重鎖および軽鎖可変領域に関してそれぞれ、配列番号:5および配列番号:7を参照されたい。米国特許第5,530,101号およびQueenら、Proc. Natl. Acad. Sci. 86:1029〜1033、1989はいずれもその全文が参照として本明細書に組み入れられる。ダクリズマブは、本明細書に開示の方法において用いられる他の抗体と同様に、IL-2依存的抗原誘導T細胞増殖および混合リンパ球反応(MLR)を阻害する(Junghansら、Cancer Research 50:1495〜1502、1990)。
【0069】
Zenapax(登録商標)は、シクロスポリンおよびコルチコステロイドが含まれる免疫抑制剤療法の一部として、腎移植を受けた被験者における急性の臓器拒絶を予防するために、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。Zenapax(登録商標)は、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型関連ミエロパシー/局所痙性麻痺(HAM/TSP、Lehkyら、Ann. Neuro. 44:942〜947、1998)の治療において活性であることが示されている。後方ブドウ膜炎を治療するためにZenapax(登録商標)を用いることも同様に記述されている(Nussenblattら、Proc. Natl. Acad. Sci. 96:7462〜7466、1999を参照されたい)。
【0070】
特に説明していなければ、本明細書において用いた全ての科学技術用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。単数形、「一つ(a)」、「一つ(an)」、および「その(the)」には、本文がそうでないことを明記している場合を除き、複数形が含まれると意図される。同様に、「または(or)」という用語には、本文がそうでないことを明らかに明記している場合を除き、「および(and)」が含まれると意図される。さらに、核酸またはポリペプチドに関して与えられる全ての塩基の大きさまたはアミノ酸の大きさ、および全ての分子量または分子質量の値は、近似値であり、説明するために提供される。本明細書に開示の方法および材料と類似または同等の方法および材料を、本明細書に開示の実践または試験において用いることができるが、適した方法および材料を下記に記述する。「含む(comprise)」という用語は、「含まれる(include)」を意味する。本明細書において言及した全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、全ての目的に関してその全文が参照として本明細書に組み入れられる。矛盾する場合は、用語の説明を含めて本明細書が優先すると考えられる。さらに、材料、方法、および実施例は説明目的に限られ、制限的に解釈してはならない。
【0071】
多発性硬化症の被験者を治療する方法
本明細書において、多発性硬化症を有する被験者の治療法を提供する。一つの態様において、被験者は再発-寛解性の多発性硬化症を有する。しかし、本明細書に開示の方法はまた、二次または原発性進行性多発性硬化症のような他の型の多発性硬化症を有する被験者の治療にも用いることができる。
【0072】
特定の態様において、本方法は、インターフェロン-β単剤治療に対して適切に反応できなかった被験者を治療するために用いられる。インターフェロン-β単剤治療に反応できないことは、いくつかの例において、18ヶ月間のインターフェロン-β治療期間において1回もしくはそれ以上の増悪を経験した、18ヶ月の治療期間のあいだにEDSSの1ポイントもしくはそれ以上の増加を示した、またはインターフェロン-β治療の開始前に測定した6ヶ月間の基準値期間のあいだに確立された毎月の基準値対比増強病変の平均値の少なくとも半分に、脳MRIスキャン上で対比増強病変が持続もしくは再出現した被験者として示される。当業者に既知の疾患の進行または活動度に関する他の指標も同様に用いて、被験者がインターフェロン-β治療に反応できなかったか否かを決定することができる。インターフェロン-β治療は、インターフェロン-β1b、インターフェロン-β1a、または双方のタイプのインターフェロン治療となりうる。
【0073】
特定の態様において、治療的有効量のIL-2受容体(IL-2R)アンタゴニストを、インターフェロン-βの同時投与を行わずに被験者に投与する。多発性硬化症の治療に、IL-2Rアンタゴニスト単独を利用することができ、またはIL-2Rアンタゴニストの併用を利用することができる。IL-2Rアンタゴニストは、活性化T-リンパ球上でのIL-2Rに結合して受容体の活性を阻害する任意の物質である。
【0074】
一つの特定の非制限的な実施例において、IL-2受容体アンタゴニストは、モノクローナル抗体、例えば、キメラ、ヒト化、またはヒトモノクローナル抗体のような抗体である。p55に特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体の特定の例は、ダクリズマブであり、これは参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,530,101号およびQueenら、Proc. Natl. Acad. Sci. 86:1029〜1033、1989に記述され、その配列が記載されている。このように、抗体は、ドナー免疫グロブリンからの相補性決定領域(CDR)と、アクセプター免疫グロブリン重鎖および軽鎖フレームワークからの重鎖および軽鎖可変領域フレームワークとを有し、親和性定数が少なくとも108 M-1でヒトインターロイキン-2受容体に特異的に結合する、ヒト化免疫グロブリンとなりうる。ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列は、ドナー免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列と少なくとも65%同一となりうる。抗Tac抗体の可変領域の特定の例を、米国特許第5,520,101号(それぞれ、軽鎖および重鎖)の配列番号:1および配列番号:3に示し、ヒト化抗Tac抗体ダクリズマブの可変領域を、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,530,101号の配列番号:5および配列番号:7(それぞれ、重鎖および軽鎖)に記載する。
【0075】
抗体には、二つの軽鎖/重鎖二量体が含まれ、p55(抗Tac抗体のような)またはp75のいずれかに特異的に結合する。有用なIL-2Rアンタゴニストには、ヒトIL-2Rのp55(α鎖またはTacサブユニットとしても知られる)に特異的に結合する物質が含まれる。一つの例において、物質は、ダクリズマブ、バシリキシマブ、BT563、および7G8のようなモノクローナル抗体、またはそのキメラもしくはヒト化型である。物質はヒト抗体となりうる、またはp55に特異的に結合する合成CDRを有するヒト化抗体となりうる。ダクリズマブまたはバシリキシマブと同じ(または重なり合う)エピトープに結合する抗体も同様に、本明細書に開示の方法において用いることができる。他の態様において、抗体は、ダクリズマブまたはバシリキシマブと高い配列同一性、少なくとも98%または99%の配列同一性のような少なくとも90%または95%の配列同一性を有するが、抗体の機能的特性、すなわちIL-2Rに対するそのアンタゴニスト特性を保持している。抗体は、任意のタイプであってもよいが、いくつかの態様において、抗体はIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むがこれらに限定されないIgGである。
【0076】
他の態様において、抗体は、ノバルティスファーマAG(Novartis Pharma AG)によってSimulect(登録商標)として販売されるバシリマブである。Simulect(登録商標)は、組換えDNA技術によって産生され、免疫抑制物質として機能して、活性化Tリンパ球の表面上のIL-2Rのα鎖に特異的に結合して遮断するキメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体(IgG1κ)である。Simulect(登録商標)は、ヒト重鎖および軽鎖定常領域遺伝子と、IL-2R(α)に選択的に結合するRFT5抗体をコードするマウス重鎖および軽鎖可変領域遺伝子とを含むプラスミドを発現するように遺伝子操作された確立されたマウス骨髄腫細胞株の発酵から得られた糖タンパク質である。アミノ酸配列に基づいて、タンパク質の計算分子量は、144 kDである。
【0077】
または、IL-2Rアンタゴニストは、Mik-β1もしくはMikβ2またはそのキメラもしくはヒト化型のようなIL-2受容体の他のサブユニットに結合する分子、ヒトIL-2Rのβ鎖に結合する分子、またはp75に特異的に結合するもう一つの分子(参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,530,101号を参照されたい)である。IL-2Rアンタゴニストは、Fab、(Fab')2、Fv、またはscFvのような抗体(例えば、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体)の断片であってもよい。さらに、断片は、その半減期を増加させるためにPEG化してもよい。
【0078】
いくつかの例において、IL-2Rアンタゴニストは、抗IL-2R物質の併用である。例えば、Zenapax(登録商標)とSimulect(登録商標)とをカクテルとして同時に投与する、または物質を投与スケジュールにおいて交互に投与する。
【0079】
IL-2Rに特異的に結合するヒト化抗体のようなIL-2Rアンタゴニストは、他の抗体、特に、疾患に関与する細胞上の他のマーカーに反応するヒトモノクローナル抗体と併用して用いることができる。例えば、適したT細胞マーカーは、いわゆる「CD分類(Clusters of Differentiation)」(CD抗原、「第一回国際白血球分類ワークショップ、白血球のタイピング(the First International Leukocyte Differentiation Workshop, Leukocyte Typing)」、Bernaedら編、Springer-Verlag、ニューヨーク州、1984を参照されたい)に分類されるマーカーが含まれる。もう一つの例において、他の抗体は、IFN-γまたはリンフォカイン受容体のようなリンフォカインに結合してこれを阻害する。一つの例において、他の抗体は、α5β1インテグリン(VLA-5)に結合し、その中で特に好ましい例としての抗体はAntegren(登録商標)(エランファーマシューティカルズ(Elan Pharmaceuticals)およびバイオジェン(Biogen, Inc.))である。
【0080】
IL-2Rアンタゴニストは非経口投与、すなわち皮下、筋肉内、もしくは静脈内投与、または注射針なしの注射装置によって投与することができる。非経口投与の組成物には、一般的に、上記のような薬学的に許容される担体中でのIL-2Rアンタゴニスト(例えば、抗体)の溶液が含まれるであろう。処方中の抗体濃度は、広く変化しうる、すなわち約0.5%未満、通常少なくとも約1%から重量で15または20%または1 mg/ml〜100 mg/mlとなりうる。濃度は、選択される特定の投与様式に従って、主に液体容積、粘度等に基づいて選択される。
【0081】
薬学的組成物を調製する方法は、当業者に既知である(「Remington's Pharmaceutical Sciences」、E.W. Martin、マック出版社、イーストン、ペンシルバニア州、第15版(1980)を参照されたい)。
【0082】
本明細書に開示の方法において用いられる抗体は、保存のために凍結または凍結乾燥して、使用前に適した担体に溶解することができる。当業者は、適当な凍結乾燥および溶解技術を容易に設計することができる。
【0083】
IL-2Rアンタゴニストは、多発性硬化症被験者の治療的治療のために投与することができる。このように、障害の兆候または症状を改善するために十分な量の組成物の治療的有効量を、既にMSを有する被験者に投与する。一般的に、Zenapax(登録商標、ダクリズマブ)の適した用量は、約1 mg/kg、約1.5 mg/kg、約2 mg/kg、または約2.5 mg/kgの用量のような約0.5 mg/kg〜約3 mg/kgであり、静脈内または皮下投与される。例えば、50 mg、100 mg、150 mg、もしくは200 mg、または400 mg/用量までの単位投与剤形も同様に可能である。しかし、約0.5〜約8 mg/kgのような他のより高いまたはより低い用量も同様に用いることができる。活性化Tリンパ球の反応を遮断するためにIL-2受容体のTacサブユニットを飽和するためには、5〜10 μg/mlの血清レベルが必要であると示唆されている。当業者は、その範囲内で血清レベルを維持するように投与レジメを作製することができるであろうが、これより高いまたはより低い血清レベルが得られる投与を用いることができる。Simulect(登録商標)の用量は、これより低い可能性があり、例えば0.25 mg/kg〜1 mg/kg、例えば0.5 mg/kg、または10、20、40、50、もしくは100 mgの単位用量である。IL-2R飽和を維持するための一般的な原理も同様に用いて、他のモノクローナル抗体のような他のIL-2Rアンタゴニストの用量レベルの選択の手引きとすることができるであろう。
【0084】
IL-2Rアンタゴニストの組成物の単一または多数の投与は、治療する医師によって選択される用量レベルおよびパターンによって行うことができる。一般的に、多数の用量が投与される。いくつかの例において、Zenapax(登録商標、ダクリズマブ)または他のIL-2R抗体の、毎月、2ヶ月に1回、6週間毎、2週間毎、毎週、または週2回投与のような多数回投与が利用される。同様に他のIL-2R抗体に応用可能であるZenapax(登録商標、ダクリズマブ)を投与するための例としてのプロトコールを、下記の章の実施例に記述する。抗体ではないIL-2Rアンタゴニストの場合、より頻繁な投与、例えば1日1回、2回、3回、4回もしくはそれ以上の投与、または週に2回の投与が必要であるかも知れない。そのようなIL-2Rアンタゴニストは、経口投与することができるが、皮下または静脈内投与も同様に利用することができる。治療は典型的に、少なくとも1ヶ月間、よりしばしば2または3ヶ月間、時に6ヶ月、または1年継続してもよく、そして無限に、すなわち慢性的に継続してもよい。治療コースの反復も同様に可能である。
【0085】
一つの態様において、IL-2Rアンタゴニストは、インターフェロン-β1aまたはインターフェロン-β1bのようなインターフェロン-βの同時投与を行わずに投与される。一つの特定の非制限的な例において、Zenapax(登録商標、ダクリズマブ)は、インターフェロン-β1aまたはインターフェロン-β1bのようなインターフェロン-βの同時投与を行わずに投与される。もう一つの特異的で非制限的な例において、Zenapax(登録商標、ダクリズマブ)は、他の免疫抑制剤のような多発性硬化症を治療するための他のさらなる薬剤の同時投与を行わずに投与される。
【0086】
もう一つの例において、治療的有効量のIL-2受容体アンタゴニストは、インターフェロン-β1a、またはインターフェロン-β1bのようなインターフェロン-βと併用して投与される。
【0087】
インターフェロン-βがインターフェロン-β1b(例えば、Betaseron(登録商標))である場合、例としての用量は、0.25 mgを1日おきに皮下注射することである。しかし、これより高いまたは低い用量、例えば0.006〜2 mgの毎日、2週間に1回、毎週、2ヶ月に1回、または毎月投与を用いることができる。インターフェロン-βがインターフェロン-β1aであって、Anovex(登録商標)である場合、例としての用量は、30 μgの週1回の筋肉内注射である。しかし、これより高いまたは低い用量、例えば15〜75 μgの毎日、2週間に1回、毎週、2ヶ月に1回、または毎月投与を用いることができるであろう。インターフェロン-β1aがRebif(登録商標)である場合、例としての用量は、44 μgの皮下注射による週に3回の投与である。しかし、毎日、2週間に1回、毎週、2ヶ月に1回、または毎月投与による治療を含む、これより高いまたは低い用量を用いることができるであろう。さらに、用量は、治療経過のあいだに変更してもよい。例えば、Rebif(登録商標)は、最初の2週間のあいだに初回用量8.8 μg、次の2週間に22μg、そして残りの治療期間のあいだ44μgを投与することができる。特定の態様において、Avonex(登録商標)は、30 μgの用量を毎週投与することができ、またはBetaseron(登録商標)を0.25 mgの用量で1日おきに投与することができる。
【0088】
インターフェロン-βの投与はまた、厳密または調節可能なスケジュールで行うことができる。例えば、インターフェロン-βは、週に1回、1日おきに投与され、または調節可能なスケジュールで、例えば被験者における濃度に基づいて投与される。当業者は、特定の投与スケジュールが、被験者および用いる用量に依存するであろうことを認識するであろう。投与スケジュールはまた、個々の被験者に関して異なりえて、被験者の反応に応じて治療の過程において変更することができる。特定の例において、インターフェロン-β1aは、2週間に1回、または毎月投与される。
【0089】
IL-2Rアンタゴニストとインターフェロン-βの併用投与には、IL-2Rアンタゴニストと連続的に、すなわち一つの物質を最初に投与してから第二の物質による治療、または双方の物質を実質的に同時に、すなわち重なり合って投与を行うことが含まれる。連続投与の場合、他の物質が投与される際に第一の物質の何らかの量が被験者に残っている限り(または治療効果を有する限り)、異なる時間で被験者に物質を投与する。双方の物質による同時治療は、同じ用量、すなわち物理的に混合して、または異なる用量で同時に投与することができる。
【0090】
特定の態様において、インターフェロン-β1a(例えば、Avonex(登録商標))は、筋肉内注射によって毎週投与される。治療の1週目では、被験者はモノクローナル抗体(例えば、Zenapax(登録商標))の静脈内注入を、インターフェロン-β1a注射と同時に受け、第二のヒト化抗Tacモノクローナル抗体(例えば、Zenapax(登録商標))の注入は、2週間後にインターフェロン-β1a(例えば、Avonex(登録商標))注射と同時に投与される。その後、ヒト化抗Tacモノクローナル抗体(例えば、Zenapax(登録商標))を毎週のインターフェロン-β1a注射と同時に毎月投与する。もう一つの態様において、インターフェロン-β1b(例えば、Betaseron(登録商標))は、皮下注射によって1日おきに投与されるが、ヒト化抗Tacモノクローナル抗体(例えば、Zenapax(登録商標))は、2週間に1回を1ヶ月間投与された後、毎月投与され、ヒト化抗Tacモノクローナル抗体(例えば、Zenapax(登録商標))注入は、必ずしもインターフェロン-β1b(例えば、Betaseron(登録商標))と同じ日である必要はない。
【0091】
IL-2Rアンタゴニストはまた、多発性硬化症を治療するために活性である可能性がある一つまたはそれ以上の他の物質と併用して用いてもよい。これらには、Copaxone(登録商標)、プレドニゾンまたはメチルプレドニゾロンのようなコルチコステロイド;シクロスポリン(またはPrograf(登録商標)のような他のカルシニューリン阻害剤)、アザチオプリン、Rapamune(登録商標)およびCellcept(登録商標)のような免疫抑制剤;メソトレキセートのような抗代謝剤;およびミトキサントロンのような抗新生物剤が含まれるがこれらに限定されない。
【0092】
IL-2Rアンタゴニストの単独または他の物質との併用による治療は、ガドリニウム増強MRI病変数(number of gadolinium enhanced MRI lesion)の平均値を少なくとも30%減少させるであろう。一つの態様において、ガドリニウム増強MRI病変は、同じ被験者の基準値測定または対照被験者(例えば、IL-2Rアンタゴニストを投与されていない被験者)の測定値と比較して、少なくとも約50%、または約80%、約90%もしくは95%より大きいような少なくとも約70%減少する。同様に、IL-2Rアンタゴニストによる治療は、単独または他の物質と併用して、所定の期間(例えば、6、12、18、または24ヶ月間)における被験者あたりのMS増悪数の平均値を、少なくとも約40%または少なくとも約50%のような、少なくとも約25%減少させるであろう。一つの態様において、MS悪化数は、対照被験者と比較して少なくとも約90%のような、少なくとも約80%減少する。対照被験者は、無処置被験者またはIL-2Rアンタゴニストを投与されていない被験者(例えば、他の物質を投与されている被験者)となりうる。IL-2Rアンタゴニストの単独または他の物質との併用による治療は、同様に、EDSSスコアによって測定した所定の期間(例えば、6、12、18、または24ヶ月間)における被験者の無能スコアの平均増加率を、少なくとも約30%、40%、または50%のような、少なくとも約10%または約20%減少させることができる。一つの態様において、ESSスコアの平均増加率の減少は、無処置被験者またはIL-2Rアンタゴニストを投与されていないが、他の物質をおそらく投与されている被験者のような対照被験者と比較して、少なくとも約60%、少なくとも約75%、もしくは少なくとも約90%であり、または無能スコアの実際の改善に至ることもありうる。これらの恩典は、一つまたはそれ以上の無作為プラセボ対照二重盲検相IIまたはIII臨床試験において証明することができ、統計学的に有意となるであろう(例えば、p<0.05)。
【0093】
本開示は、以下の非制限的な実施例によって説明される。
【0094】
実施例
実施例1
多発性硬化症を治療するためのヒト化IL-2R抗体(Zenapax(登録商標))使用のプロトコール
A.目的
標準的なIFN-β治療が失敗した多発性硬化症被験者におけるZenapax(登録商標)治療の有効性を決定するために、治療前の期間のGd-増強病変数の平均値と治療期間の平均値とを比較することによって、試験を行った。本試験はまた、臨床、MRI、および免疫学的測定を用いて多発性硬化症被験者におけるZenapax(登録商標)の安全性および認容性を証明した。
【0095】
標準的なIFN-β治療が失敗した多発性硬化症被験者におけるZenapax(登録商標)治療の有効性を決定するために、以下の手段を用いた:
1.MRI測定
T2病変の負荷、
Gd増強病変の容積
T1低信号域の容積(任意)
2.臨床測定、特に
EDSSの変化、SRS(スクリプス神経評定度)の変化
再発率;9穴ペグ試験
3.免疫学的測定、特に
Th1およびTh2 T細胞系列のマーカーと共に様々なT細胞マーカーのFACS分析、
インビトロでのT細胞によるサイトカイン産生
T細胞の増殖。
【0096】
試験の目的に関して、標準的なIFN-β治療の失敗は、IFN治療の開始前6ヶ月間の毎月の基準値Gd-対比病変の平均値の少なくとも半分にGd対比MRI病変が再発したこと、IFN治療に対する一次無反応性、または最近の12ヶ月間に臨床的再発を認めたこととして定義された。調べる被験者は、一次IFN-β無反応者、すなわちIFN-βに対する中和抗体が存在しない被験者、または二次非反応者、すなわち中和抗体が存在する被験者であった。
【0097】
B.試験の概要
標準的なIFN-β治療の失敗が報告された場合に、被験者を全てのプレスクリーニング(-8週)技法の終了後登録した。登録後、試験薬の初回投与の前にGd増強MRIを被験者に4週間間隔で3回行った。3回の治療前MRIスキャンにおいてGd増強病変を2個またはそれ以上(1スキャンあたりGd増強病変の平均値が少なくとも0.67個)有する被験者を、試験の治療相に進行するために適格とした。治療相において、被験者に、1 mg/kg体重のインターロイキン-2受容体αサブユニット(IL-2Rα;Zenapax(登録商標))のIV注入を0日、2週目、6週目、10週目、14週目、18週目、および22週目(全7回)に5.5ヶ月間=22週間7回投与して、4週間間隔でのGd増強MRI実施を継続した。試験薬の最後の投与後、被験者を12週間モニターした。何人かの被験者は、試験期間中標準的なIFN-β治療を受け続けたが、IFN-β治療を中止した被験者もあった。
【0098】
B.1 治療前スクリーニングに関する参加および除外基準
試験の候補者は、登録時に以下の基準を満たした(表1)。
【0099】
(表1)参加基準
1)年齢18〜65歳まで
2)試験登録前の18ヶ月間に1回より多い再発を経験した再発-寛解性または二次進行性MSを有する被験者。治療前の3回のMRIスキャンにおいてGd増強病変少なくとも2個またはそれ以上を有する被験者(1スキャンあたりGd増強病変が平均で少なくとも0.67個)。
3)EDSSスコアが1〜6.5まで。
標準的なIFN-β治療が失敗した被験者。IFN-β治療の失敗は以下のように明記された:少なくとも6〜12ヶ月間のIFN治療を受け、昨年にステロイドの静脈内注射による治療を必要とした悪化を1回より多く経験した被験者。Zenapax(登録商標)とIFN-βの双方の投与プロトコールに現在登録している被験者は、治療5.5ヶ月後に用量増加相またはZenapax(登録商標)単剤治療相のいずれかに引き続き登録するために適格であった。病変の活動度が75%またはそれ以上減少した被験者は、Zenapax(登録商標)の単剤投与相に適格であったが、病変活動度の少なくとも75%の減少が得られなかった被験者は、用量増加相に適格であった。
【0100】
候補者は、登録時に除外基準のいずれかが存在すれば、試験登録から除外した(表2)。
【0101】
(表2)疾患の既往
1)発病から無能が徐々に進行して再発がないとして定義される、原発性進行性MSの診断。
2)下記の限度のいずれかを超える異常なスクリーニング/治療前血液検査
・アラニントランスアミナーゼ(ALT)、またはアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)>正常上限の2倍(すなわち、>2×ULN)
・総白血球数<3,000個/mm3
・CD4+細胞数<320個/mm3
・血小板数<80,000個/mm3
・クレアチニン>2.0 mg/dL
3)同時に存在する、臨床的に有意な(治験者が決定した)心臓、免疫、呼吸器、神経、腎臓、および/または他の主要な疾患。
4)モノクローナル抗体治療に対する任意の禁忌。
5)HIV+である被験者
治療の既往
5)これまでに治療を受けていた場合には、被験者は登録前に必要な期間、投薬を受けなかった(挿入表を参照されたい)。

6)治療前の他の任意の治験薬またはMS技法。
7)登録前5年以内のアルコールまたは薬物乱用の既往。
8)適切な避妊を実践していない男女被験者。
9)容認される避妊法を用いていない、閉経後でない、または手術による不妊でない女性被験者。様々な避妊法の許容性は治験担当者の裁量にゆだねられる。被験者が閉経後であるまたは手術により不妊であるという書面での報告書は試験開始前に入手できなければならない。
10)スケジュール通りの追跡調査のための被験者の受診に影響を及ぼす可能性がある何らかの条件(物理的、精神的、または社会的)の存在を含む、このプロトコールの必要条件を遵守する意志がないまたは遵守できない場合。
11)本試験への以前の参加。
12)授乳期の被験者。
【0102】
インターフェロンによって病変発生率の少なくとも75%の減少を示すことができなかったコホートの被験者を、記述のプロトコールに登録して、Zenapax(登録商標)の用量を2 mg/kgまで増加して、この用量のZenapax(登録商標)が安全で認容性が良好であるか否かを評価した。
【0103】
B.2 治療物質と注入
試験に登録した被験者に、指定の時点でZenapax(登録商標)を投与した。抗Tac製剤は、5 mg/ml Zenapax(登録商標)と0.2 mg/mlポリソルベート-80とを、pH 6.9に調節した67 mM燐酸緩衝液中に含む。製剤は、フリントガラスバイアルに適当な大きさの5 ml容量で充填した。物質は遮光して2〜8℃で保存した。5 mg/mlの抗体溶液の適当な量を、ミニバッグ中で通常の生理食塩液50 mlによって希釈した。希釈した抗体は投与するまで2〜8℃で24時間保存した。治療は、15分間の静脈内注入としてZenapax(登録商標)1 mg/kgの用量を静脈内投与した。注入終了時、チューブに生理食塩液10 mlを流した。投与時間およびバイタルサインを注入シートに記録した。バイタルサインを得て、注入前、注入直後、および注入終了後15分に記録した。試験薬の最高用量は20 mlであり、これは抗体200 mgに相当する。
【0104】
Zenapax(登録商標)のバイアルに、内容物を採取する前に排出穴を開けた。場合によっては、シリンジ(ピストンなし)を取り付けた排出針または20〜22 Gの注射針をバイアルに挿入した。バイアルの上の空間または溶液内に空気を注入しなかった。通気後、内容物をそれぞれのバイアルから、Zenapax(登録商標)の総計算用量を保持するために十分に大きいシリンジ(20〜22 G針をつけた)に採取した。
【0105】
シリンジおよび針を用いて、滅菌水の150 ml容器からZenapax(登録商標)(プラス溢れた量)の計算量と同等の容積の生理食塩液を採取したが、または正常生理食塩液(0.9%NaCl USP)を用いることができる。Zenapax(登録商標)を含むシリンジの内容物を容器に注入した。溶解した産物を注入の準備ができるように、容器を約20秒間軽く振とうして内容物を混合した。希釈したZenapax(登録商標)溶液は室温で保存した。希釈溶液は希釈後4時間以内に完全に注入した。
【0106】
注入材料の無菌性を確保するために、標準的な臨床での実践に従った。Zenapax(登録商標)は、一定速度で15分間かけて静脈内注射によって投与して、その後正常生理食塩液を流した。速度を制御するために注入ポンプを用いた。生理食塩液によって押し出す量は、IVチューブに残っている溶液の残留量を同程度であった。各注入時に新しいチューブを使用した。
【0107】
被験者は、予定される受診日の7日以内にその注入を受ける必要があった。被験者は、注入開始前毎回の診察時に検査を受けた。被験者は全員、容認された避妊法を治療終了後6ヶ月間使用し、女性被験者は妊娠しなかった。
【0108】
各診察時に他の必要な技法を全て行った後、0、2週目、6週目、10週目、14週目、18週目、および22週目(全7回投与)に5.5ヶ月間=22週間、1 mg/kg(理想体重に基づいて)のZenapax(登録商標)を15分間のIV注入として投与した。MRIは、試験薬の投与前7日以内に行った。少数の被験者において、6週間の間隔でさらに2回の注入を28週および34週に行った。
【0109】
C.試験および評価を含む治療スケジュール
本明細書に開示の初回試験の母集団の大きさは、治療被験者10人であり、これはMSの自然経過に関する試験、IFNβ1b MRI試験、およびこれらの統計学的評価の際に、十分な経験に従って選択した。
【0110】
試験は表3に示すスケジュールに従って実施した。
【0111】
(表3)試験および評価スケジュール
1.-8週(スクリーニング診察)
特に明記していなければ、試験および評価は、被験者の適格性を決定するために被験者の最初のMRIの前7日以内に行った。
・完全な疾患の既往。
・ワクチン接種状態。
・バイタルサインと体重の測定を含む、完全な聴打診。
・胸部X線検査。
・ECG。
・血液化学。
・血液学:分別血球数および血小板数を含むCBC。
・CD4+数。
・免疫学的測定。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI(他の全てのスクリーニング技法の終了後に実施した)。
・多数のリコール抗原による皮膚試験;または-4週目に実施。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
・HIV-I状態。
2.-4週目
・バイタルサイン。
・免疫学的測定。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・麻疹力価、EBNA力価(標準)。
3.-4週から0週まで
・選択的腰椎穿刺。
・リンファサイトフェレーシス。
4.0週目
・バイタルサイン。
・総リンパ球数(結果は投与前に得られた)。
・血液化学。
・血液学:分別血球数および血小板数を含むCBC。
・CD4+数。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・免疫学的測定。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
被験者に試験薬の最初の投与を行った。
5. 2週目
・バイタルサイン。
・総リンパ球数(結果は投与前に得られた)。
・血液化学。
・血液学:分別血球数および血小板数を含むCBC。
・CD4+数。
・免疫学的測定。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・Zenapax(登録商標)の注入。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
6.4週目
・バイタルサイン。
・EDSS。
・MRI。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
7.6週目
・バイタルサイン。
・総リンパ球数(結果は投与前に得られた)。
・血液化学。
・血液学:分別血球数および血小板数を含むCBC。
・CD4+数。
・免疫学的測定。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・Zenapax(登録商標)の注入。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
8.10週目
・バイタルサイン。
・総リンパ球数(結果は投与前に得られた)。
・血液化学。
・血液学:分別血球数および血小板数を含むCBC。
・CD4+数。
・免疫学的測定。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・Zenapax(登録商標)の注入。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
9.14週目
・バイタルサイン。
・総リンパ球数(結果が投与前に得られるように採取する)。
・血液化学。
・血液学:分別血球数および血小板数を含むCBC。
・CD4+数。
・免疫学的測定。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・Zenapax(登録商標)の注入。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
10.18週目
・バイタルサイン。
・総リンパ球数(結果は投与前に得られた)。
・血液化学。
・血液学:分別血球数および血小板数を含むCBC。
・CD4+数。
・免疫学的測定。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・Zenapax(登録商標)の注入。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
11.22週目
・バイタルサイン。
・総リンパ球数(結果は投与前に得られた)。
・血液化学。
・血液学:分別血球数および血小板数を含むCBC。
・CD4+数。
・免疫学的測定。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・Zenapax(登録商標)の注入。
・多数の抗原による皮膚試験(別紙Iを参照されたい)。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
12.26週目
・バイタルサイン。
・血液化学。
・血液学:分別血球数および血小板数を含むCBC。
・CD4+数。
・妊娠可能年齢の女性に関する尿妊娠検査。
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・免疫学的測定。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
・選択的腰椎穿刺。
・リンフォサイトフェレーシス。
13.30〜34週
・免疫学的測定。
・その他(胸部X線、EKG)
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験。
・MRI。
・麻疹力価/EBNA力価(標準)。
・Zenapax(登録商標)に対する抗体の検査(血清は分析まで保存した)。
・抗IL-2Rα血清レベルを決定するための血清(分析まで保存)。
【0112】
上記のように、少数の被験者に28および34週目に2回またはそれ以上のZenapax(登録商標)注入を行い、その後同じ治療後追跡調査を行った(表3、#12および#13を参照されたい)。
【0113】
実施例2
転帰の測定:データ分析
表3に記載した試験および評価の他に、以下の臨床有効性評価を試験のあいだに実施した:
1.EDSS/SRS/9-穴ペグ試験−無能の測定
2.再発数。再発は、新規または再発性の神経症状として定義され、発熱または感染症に関連せず、少なくとも48時間持続し、検査時に客観的神経学的所見を伴う。
臨床上の安全性は、神経状態、全身身体検査、バイタルサインの測定(温度、心拍数、および血圧)によって評価した。有害事象は、全ての試験期間中収集した。
【0114】
以下の臨床有効性評価についても試験の際に実施した:
1.ガドリニウム増強を行うまたは行わない脳MRI;さらなるMRIパラメータ。
2.免疫学的測定。
【0115】
本試験において評価した特異的実験パラメータは以下の通りであった:
1.医師がモニターしたMRI活性
2.血液化学:クレアチニン、総ビリルビン、ALT、AST、アルカリホスファターゼ、およびアルブミン。麻疹および抗EBV-EBNA抗体。
3.血液学:分別血球数および血小板数を含む完全な血球計算。
【0116】
安全性評価は以下の通りであった:
1.末梢のCD4+サブセットの分析は、Tリンパ球の十分に定義されたサブセットマーカーによってフローサイトメトリーを用いて行った。
2.Zenapax(登録商標)に対する抗体産生を決定するために全血4 ml(血清2 mlを得るため)を採取する。
3.CNS炎症疾患の活動度に及ぼすZenapax(登録商標)の影響に関する安全性が報告され、MRIによって追跡した。MRI活性の予想外のおそらく明瞭な増加とは、治療前のGd病変の負荷の平均値が<病変10個/月である被験者において、3倍より大きい増加であると定義された。治療前の平均値のGd病変の負荷が<病変3個/月である被験者では、>10倍の増加は安全性の懸念を生じた。任意の直径が>5 cmである単一の新規病変が発生する場合、これは、毒性の兆候であると見なされた。
【0117】
Zenapax(登録商標)関連有害事象に関する懸念は、これらの試験の過程において生じなかった。
【0118】
本明細書に開示の試験は、治療前期間のGd増強病変数の平均値を治療期間の平均値と比較することによって、多発性硬化症被験者におけるZenapax(登録商標)治療の有効性を証明した。第一義的有効性エンドポイントは、Gd増強病変数である。
【0119】
第一義的エンドポイントに関する分析には以下が含まれた:
・治療前の期間(-8、-4、0週)での病変数の平均値と、治療期間(0週〜22週)の病変数の平均値との比較。
・治療前の期間(-8、-4、0週)での病変数の平均値と、治療期間の最後の12週(10〜22週)での病変数の平均値との比較。
【0120】
これらの比較は、データの分布に応じて、対応のあるt-検定またはウィルコクスンの符号付順位検定を用いて行った。平均値は、非欠測評価に基づいた。
【0121】
本試験はまた、以下の手段を用いて多発性硬化症の被験者におけるZenapax(登録商標)治療の有効性を証明する:
1.MRI測定
・T2病変の負荷、
・Gd増強病変の容積、
・T1低信号域の容積(任意);
2.臨床測定、特に、
・EDSS/SRS/9-穴ペグ試験の変化、
・再発率;
3.免疫学的測定、特に
・Th1およびTh2 T細胞系列のマーカーと共に様々なT細胞、B細胞および単球サブセットマーカーのFACS分析。
・インビトロでのT細胞によるサイトカイン産生。
【0122】
T2病変の負荷
T2病変の負荷に関する分析には以下が含まれた:
・治療前期間(-8、-4、0週)でのT2病変の平均容積と、治療期間(0〜22週)でのT2病変の平均容積との比較。
・治療前の期間(-8、-4、0週)でのT2病変の平均容積と、治療期間の最後の12週(10〜22週)でのT2病変の平均容積との比較。
【0123】
これらの比較は、データの分布に応じて、対応のあるt-検定またはウィルコクスンの符号付順位検定を用いて行った。平均値は、非欠測評価に基づいた。
【0124】
Gd増強病変病変の容積
Gd増強病変の容積に関する分析には以下が含まれた:
・治療前期間(-8、-4、0週)でのGd増強病変の平均容積と、治療期間(0〜22週)でのGd増強病変の平均容積との比較。
・治療前の期間(-8、-4、0週)でのGd増強病変の平均容積と、治療期間の最後の12週(10〜22週)でのGd増強病変の平均容積との比較。
【0125】
これらの比較は、データの分布に応じて、対応のあるt-検定またはウィルコクスンの符号付順位検定を用いて行った。平均値は、非欠測評価に基づいた。
【0126】
T1低信号域の容積
T1低信号域の容積に関する分析には、以下が含まれた:
・治療前期間(-8、-4、0週)でのT1低信号域の平均容積と、治療期間(0〜22週)でのT1低信号域の平均容積との比較。
・治療前の期間(-8、-4、0週)でのT1低信号域の平均容積と、治療期間の最後の12週(10〜22週)でのT1低信号域の平均容積との比較。
【0127】
これらの比較は、データの分布に応じて、対応のあるt-検定またはウィルコクスンの符号付順位検定を用いて行った。平均値は、非欠測評価に基づいた。
【0128】
EDSS
22週から26週までのEDSSの基準値(0週)からの変化を決定した。同様に、SRSおよび9-穴ペグ試験に関すて、基準値から22週および26週までの変化を決定した。
【0129】
再発
試験薬の投与前の2年間の再発頻度を、試験薬の投与時(0〜22週)の再発頻度と比較した。
【0130】
実施例3
転帰の測定;免疫学的パラメータ
1.PBMC細胞表面発現分析
免疫学的パラメータに関する分析は標準的な方法を用いて行った。例えば、Th1/Th2 T細胞発達、MS T細胞のエフェクター機能、および特にT細胞活性化に焦点を当てた抗Tac抗体の生物活性のマーカーに関する重要なマーカーの同時定量的分析(すなわち、IL-2発現の測定、IL-2R/CD25を発現するCD4+およびCD3+ T細胞数の測定;インビトロ(破傷風トキソイド;Flu-HAペプチド306-318に対する増殖)および標準的なリコール抗原に対するインビボ(皮膚試験)リコール反応)を治療被験者において行った。
【0131】
特殊な試験には以下が含まれた:
1.ダクリズマブによるインビボ治療の際の白血球亜集団(多形核細胞、単球、NK細胞、LAK(リンパ球活性化キラー細胞)、B細胞、T細胞のCD4+およびCD8+サブセット、NK-T細胞、CD4+/CD25+調節T細胞を含むリンパ球)における変化の分析。
2.多数の活性化マーカー、接着分子、共刺激分子、サイトカイン、およびケモカイン受容体等:CD95、CTLA-4、CD25(IL-2Rα鎖)、CD122(IL-2Rβ鎖)、CD132(IL-2Rγ鎖)、CD45RA、CD45RO、CD71、OX-40、CCR5、CXCR4、CD80、MHC-クラスII(HLA-DR、DQ、DP)、TCRα/β、TCRγ/δ、CD2、CD56、CD161の表面発現の変化をフローサイトメトリーによって評価する。
3.異なるポリクローナルおよび抗体特異的刺激(プレート結合抗CD3、プレート結合抗CD3+抗CD28、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、破傷風トキソイド(TT))に対する末梢血単核球(PBMC)の増殖を、5-(および6-)カルボキシフルオレセイン二酢酸、スクシニミジルエステル(5(6)-CFDA、SE)を用いるフローサイトメトリーに基づく増殖アッセイによって評価する。これらの様々な刺激によって刺激したサイトカイン産生(すなわち、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IFN-γ、腫瘍壊死因子(TNF)-α、LT-α、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β)はサンドイッチELISAによって評価した。
4.抗体のサブタイプ、ミエリン特異的抗体、補体および補体関連マーカー、酸化的ストレスマーカー、ならびに再髄鞘形成および修復を示すマーカーの変化を調べるために、試験において被験者から長期的に血清試料を採取した。
【0132】
得られたデータは、ダクリズマブのインビボでの長期投与によって、いくつかの免疫調節変化が起こることを示した。理論に拘束されたくはないが、これらの変化は、MSにおけるこの薬剤の陽性の治療効果に関与する可能性がある。認められた変化には以下が含まれる:
・総リンパ球数(CD4+およびCD8+ T細胞およびB細胞)の軽度(〜10%)の減少。
・NK細胞およびNK-T細胞の比率の同時の増加−そのいずれも自己免疫の様々な動物モデル、ならびにMS、インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)および全身性紅斑性狼瘡(SLE)を含むヒトの自己免疫障害において高い免疫調節活性を有することが示された。
・IL-2(中間の親和性のIL-2Rによって、すなわちCD122+CD132)およびIL-15(IL-2Rと二つのシグナル伝達鎖、すなわちCD122およびCD132を共有する)に対するこれらの細胞の増殖能の増加のおそらく基礎となる、NK細胞、NK T細胞、およびCD8+リンパ球亜集団の細胞表面上でのCD122(IL-2Rβ鎖)のアップレギュレーション。
・強いポリクローナル刺激およびリコール抗原様TTに対するT細胞(CD4+とCD8+サブセットの双方)の増殖に有意な減少を認めない。
・IL-15に対するNK細胞、γ/δ-T細胞、NK-T細胞およびCD8+ T細胞亜集団の増殖の増加。
【0133】
2.cDNAマイクロアレイ発現分析
MS被験者における長期のインビボ投与によるダクリズマブ誘導免疫調節を、臨床試験の基準値、治療相および治療後の相からの凍結保存PBMC試料について実施したcDNAマイクロアレイによって評価した。得られたデータは、ダクリズマブ治療によって、サイトカインシグナル伝達抑制物質5(SOCS5)、jun-D-癌原遺伝子、タンパク質チロシンホスファターゼ-受容体型、CD209-抗原様、細胞分裂サイクル14(CDC14)、CDC28-タンパク質キナーゼ調節サブユニット2等を含む対象となるいくつかの遺伝子のアップレギュレーションが起こることを示した。ダクリズマブ治療によってまた、IFN-γおよび線維芽細胞増殖因子12(FGF-12)のような、前炎症性免疫に密接に関連したいくつかの遺伝子のダウンモジュレーションが起こる。
【0134】
3.インビトロ機能的実験
長期的なプロスペクティブ試料において認められた変化をより詳細に証明するために、臨床試験の被験者からの凍結保存PBMC試料の試験を実施した:
a.さらなる刺激に対するPBMCの増殖は、5-(および-6-)カルボキシフルオレセイン二酢酸、スクシニミジルエステル(5(6)-CFDA、SE)を用いてフローサイトメトリーに基づく増殖アッセイによって評価した:
b.強力なポリクローナルT細胞活性化刺激としてのプレートに結合した抗CD3+抗CD28。
c.天然のT細胞プライミングに及ぼすダクリズマブの影響を調べるために、ヒトが通常曝露されていないCD4+ T細胞のための抗原としてのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)。
d.自己反応性T細胞上に及ぼすダクリズマブの影響を調べるために、ミエリン抗原ミエリン塩基性タンパク質(MBP)(146〜170)、PLP(139〜154)、MOG(35〜55)およびCNP(343〜373)の混合物。
e.単球および同様にCD4+/CD25+調節T細胞の強力な活性化剤としてのLPS。さらに、ダクリズマブ治療の急性のインビトロ作用と持続的なインビボ作用との差を証明するために、ダクリズマブを外から加えておよび加えずにPBMCを播種した。次に、これらの様々な刺激によって活性化されたPBMCを、72時間後にIL-2、IL-15、またはIL-4に富む培地に移して、これらの細胞の細胞表面上でCD122およびCD132について認められたアップレギュレーションによって、これらのシグナル伝達分子によってシグナルを伝達するサイトカインに対して機能的反応の増加が起こるか否かを観察した。増殖および細胞の増殖は、6日目に測定し、これらの増殖した細胞の機能的表現型を、10日目での細胞内サイトカイン染色(IL-2、IL-4、IL-6、およびIFN-γの産生を測定する)によって評価した。さらに、IL-1β、IL-6、IL-10、TFN-α、およびNOのような単球産生サイトカインおよびマーカーを評価するために上清を採取した。
f.ダクリズマブ治療時のNK細胞、例えばNK T細胞およびCD4+/CD25+ T調節細胞の免疫調節特性をより詳細に評価した。
g.cDNAマイクロアレイからの遺伝子発現プロフィールは、リアルタイムPCRおよび機能的試験によって確認した。
【0135】
これらの実験の結果は以下を示す:
・インビトロダクリズマブ投与の「急性の」効果は、インビボ投与の持続的な効果とは異なった。様々な刺激に対するT細胞増殖のより強い阻害は急性に認められた。
・ダクリズマブの標準量(すなわち、1 mg/kg/4週間IV)は、T細胞上でのCD25 Tacエピトープを阻害するために十分であったが、活性化単球上でのCD25を十分に遮断できるほど十分ではなかった。理論に拘束されたくはないが、この用量ではCD25の遮断が不十分であることから、多くの臨床状況(例えば、移植)ではより高用量のダクリズマブが必要であった。したがって、自己免疫疾患の疾患活動度が非常に高い被験者においては、より高用量が有用であろう。
・CD25エピトープは、インビトロ投与時にダクリズマブによって遮断されたが、分子は同じ数で細胞の細胞表面上に存在し続ける。しかし、ダクリズマブの持続的なインビボ投与により、この分子は、CD4+およびCD8+ T細胞の双方の細胞表面からダウンモジュレートされる。
・ダクリズマブの投与は、T細胞のプライミングに影響を及ぼした:KLHのような天然の抗原に反応するCD4+ T細胞は、ダクリズマブ治療後により大量のIL-4およびより少量のIFN-γを産生する。理論に拘束されたくはないが、T細胞プライミングに及ぼす作用が、MSおよび他の自己免疫疾患における前炎症性対抗炎症性のバランスを制御すると考えられる。
・T細胞の増殖、およびIL-2Rとシグナル伝達鎖を共有する相補性サイトカイン(すなわち、IL-15、IL-4、IL-7等)に対するその機能的反応は、ダクリズマブ治療によって増強された。
・結果はまた、単球が少量のサイトカインを産生し、IL-4に対してより大きい反応を示したことから、単球の活性化がダクリズマブ治療によって調節されることを示している。
・CD4+/CD25+ T調節細胞の増殖は、ダクリズマブ治療によって増強された(Toll-4受容体によってこのT細胞サブタイプを刺激するLPSによって示される)。
【0136】
実施例4
被験者の評価
併用治療での10〜22週(3ヶ月、MRIスキャン4回)の対比増強病変数の平均値を、単剤療法での42〜62週(5ヶ月、MRIスキャン6回)に対して分析した。併用治療を行った10〜22週(3ヶ月、MRIスキャン4回)を、単剤療法での全期間(24〜62週;9月でMRIスキャン10回)と比較した。
【0137】
Zenapax(登録商標)単剤療法に対する治療反応は、基準値、すなわち被験者をIFN-β単独で治療した場合からの対比増強病変の減少が>60%に達しなかった場合、部分的であると見なされた。基準値からの対比増強病変の減少が>0であるが、<60%に達した場合、Zenapax(登録商標)単剤療法は部分的に活性であると見なされた。疾患の活動度が基準値レベルに戻った場合、Zenapax(登録商標)単剤療法は、失敗したと見なされた。しかし、これらの転帰のいずれも検出されなかった。
【0138】
単剤治療相に入る被験者の病変の活動度を毎月評価した。新規病変数は、毎月の試験後に評価した。1ヶ月間の平均病変数、5、6、7または8個が、単剤治療に入る前3ヶ月間の50%またはそれ未満である場合、単剤治療で10ヶ月(62週)まで(さらに1年間)、被験者にZenapax(登録商標)治療を継続する努力を行った。
【0139】
被験者2人の結果を図1および2に示す。新規病変数は、これまで同定されていない脳の病変数を1回のスキャンで同定することによって評価した。さらに、病変の総数を評価した。これらの病変には、1〜2ヶ月間持続する対比増強病変が含まれた。さらに、病変の累積総数を評価した。これらには、被験者の脳の1回より多いスキャンにおいて出現した病変が含まれ、すなわち多数のMRI断面に一つの病変が出現することによって、病変容積の間接的な測定を提供する(病変の累積総数)。
【0140】
図1および図2に示されるように、Zenapax(登録商標)単剤による治療(IFN-βの非存在下)によって、病変総数の劇的な減少を認めた。Zenapax(登録商標)単剤療法(IFN-βの非存在下で)によって治療した如何なる被験者にも、5.5ヶ月間に新規病変は検出されなかった。
【0141】
治療の最後の4ヶ月間に得られたデータを、基準値治療の4ヶ月間と比較した。このように、それぞれの被験者に関して、Zenapax(登録商標)単剤療法(IFN-βの非存在下で)による治療期間中に得られた結果を、Zenapax(登録商標)およびIFN-βによる治療期間に得られた結果と比較した。新規Gd病変数は85.95%(p=0.016)減少した。対比増強病変の総数は85.75%(p=0.004)減少した。Gd病変の容積は、87%減少した(p=0.014)。Gd増強病変の累積総数は、87.4%(p=0.008)減少した。9-穴ペグ試験は5.36%(p=0.004)減少した。年間再発率(1年間の被験者1人あたりの再発数)は、88.9%(p=0.047)減少した。SRSも同様に10.61%(p=0.035)減少した。他の測定値も全て改善したが、統計学的有意水準に達しなかった。このように、被験者をZenapax(登録商標)単剤療法で治療した場合、第一義的転帰は有意に改善された。
【0142】
実施例5
用量増加試験
IFN-βとZenapax(登録商標)との併用療法を受けている被験者の疾患活動度の減少が、IFN-β単剤での基準値と比較して75%未満であった場合、被験者のZenapax(登録商標)用量を2 mg/kg(毎月)に増加した。
【0143】
用量増加試験に入る被験者を、用量を増加させた治療の3ヶ月後に評価した。8.5ヶ月間の試験期間において毒性を認めなかった。被験者は2週間に1回2 mg/kg Zenapax(登録商標)(上記の用量の4倍)によって治療した。被験者は、Zenapax(登録商標)治療に反応して、対比増強病変は>60%減少した。
【0144】
実施例6
IFN-βとZenapax(登録商標)の併用投与
本実施例は、再発-寛解性または二次進行性多発性硬化症の被験者におけるインターフェロン-βとIL-2Rアンタゴニストの併用投与の影響を示す。プロトコールは全般的に実施例1に示されており、下記に概要する。
【0145】
参加基準
試験に参加した被験者は、再発-寛解性または二次進行性多発性硬化症のいずれかであると診断された;年齢は16〜65歳であった;EDSSスコアは1〜6.5であった;登録前18ヶ月間に1回またはそれ以上の悪化を示したことによって示されるように、インターフェロン-β単剤治療に反応しなかった;18ヶ月間の治療においてEDSSの1ポイントまたはそれ以上の増加を示した;インターフェロン-β治療の開始前に測定した6ヶ月間の基準値期間での毎月の基準値対比増強病変の平均値の少なくとも半分に、脳MRIでの対比増強病変が持続または再出現した;および併用療法前の最初の3回のMRIスキャンにおいてガドリニウム増強病変少なくとも3個を有しなければならなかった。
【0146】
除外基準
被験者は、原発性進行性MSであると診断された場合;治療前血液検査が異常であった場合;同時に臨床的に重要な主要な疾患が存在すると診断された場合;モノクローナル抗体治療に対する禁忌が認められた場合;HIV陽性であることが決定された場合;試験前26週間に酢酸グラチラマーもしくはシクロホスファミドによる治療を受けていた場合、治療前の12週間に免疫グロブリン静脈内投与(IVIg)、アザチオプリン(AZA)、メソトレキセート(MTX)、シクロスポリン、シクロホスファミド(CTC)、クラドリビン、もしくはミトックスによる治療を受けていた場合、治療前の8週間にコルチコステロイドもしくは副腎皮質ホルモン(ACTH)による治療を受けていた場合、または他の任意の治験薬もしくはMS技法による治療を受けていた場合;適切な避妊を行っていない場合;または授乳期である場合、試験から除外した。
【0147】
治療経過
被験者10人(1人追加され、高用量を免除された上記の被験者1人が除外された)が併用療法の治験に参加した。各被験者に関して、インターフェロン-β(Avonex(登録商標)またはBetaseron(登録商標))による3ヶ月間の基準値治療期間を確立した。Avonex(登録商標)は、製造元の提供した処方情報に示されている通りに、用量30 μgの週1回筋肉内注射によって投与した。Betaseron(登録商標)は、製造元の提供した処方情報に示されている通りに、用量0.25 mgの2日に1回の皮下注射によって投与した。基準値での対比増強病変数を決定するために基準値期間でMRIスキャン4回を行い、1回は、期間の開始時に行い、その後基準値期間の月末毎に行い、4回目は、併用治療の開始直前に行った。被験者はまた、EDSS、スクリプス神経評定度(NRS)、ならびに様々な歩行および他の運動能力試験によって評価した。
【0148】
併用療法は、3ヶ月間の基準値を確立した後に開始した。インターフェロン-β治療を継続して、さらに抗Tac(Zenapax(登録商標))を5.5ヶ月間投与した。併用投与の最初の1ヶ月間、Zenapax(登録商標)を2週間に1回投与して、その後Zenapax(登録商標)を1ヶ月に1回投与した。Zenapax(登録商標)は、製造元の処方情報に記述されているとおりに、1 mg/kg体重の用量で静脈内投与した。被験者1人は1 mg/kg用量に対して反応を示さなかったことから、用量2 mg/kgの2週間に1回投与をこの被験者に行った。MRIスキャンは、対比増強病変数の変化を決定するために併用治療期間のあいだ実施し、治療の最初の6週間のあいだは2週間毎に1回、その後毎月1回行い、MRIスキャン計8回を行った。同じスケジュールにおいて、被験者を、EDSS、スクリプスNRS、ならびに様々な歩行および他の運動能力試験によっても評価した。
【0149】
結果
インターフェロン-βとZenapax(登録商標)との併用投与によって、被験者8人中7人において疾患活動度のほぼ完全な停止および臨床改善が得られた。図3に認められうるように、被験者8人中7人は、基準値期間と比較して併用療法の際の新規および総対比増強病変の双方においてより少ない増加を示したか、または少なくとも増加を示さなかった。図4Aに示されるように、被験者8人中4人は、基準値期間と比較して併用治療によってEDSSに改善を示した。図4Bに示すように、被験者8人中7人は、スクリプスNRSに改善を示した。図4Aを参照すると、被験者8人中5人が歩行指数において歩行の改善を示した。図5Bに示すように、被験者8人中5人は、20 m歩行時間に改善を示したかまたは変化を示さなかった。図6Aに示すように、被験者は全員、ペグ穴試験においてその利き手による時間の改善を示した。図6Bに示されるように、被験者8人中5人は、ペグ穴試験において非利き手でも改善を示した。
【0150】
実施例7
併用療法のT細胞に及ぼす影響
本実施例は、併用療法後にTacエピトープが飽和したこと、そして基準値期間と比較してT細胞増殖が同時に減少したことを証明する。
【0151】
Tacエピトープの飽和はフローサイトメトリーによって調べた。インターフェロン-βと1 mg/kg Zenapax(登録商標)との併用投与によって、CD4+/CD25+およびCD8+/CD25+ T細胞上のTacエピトープの完全な飽和が得られた(図7)。
【0152】
活性化T細胞の増殖は、カルボキシフルオレセインスクシニミジルエステル(CFSE)蛍光細胞標識によって測定し、CFSE標識細胞における分裂数をフローサイトメトリーによって評価した。図8Aに示すように、被験者8人中6人は、CD4 T細胞の増殖の減少を示した。図8Bを参照すると、被験者は全員、基準値期間と比較してCD8 T細胞の増殖の減少を示した。
【0153】
実施例8
CTLA-4のアップレギュレーション
本実施例は、インターフェロン-βとIL-2Rアンタゴニストの併用投与によって引き起こされた予想外のCTLA-4アップレギュレーションを示す。
【0154】
CTLA-4表面発現は、CTLA-4に対する抗体およびフローサイトメトリーを用いて測定した。CTLA-4表面発現に関する各測定に関して、第一にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む5 ml試験管に各被験者から全血を採取した。次に、1×溶解溶液(4.2 ml 10倍溶解溶液+37.8 ml H2O)42 mlを、蒸留水1 Lに溶解することによって、10×保存液:NH4Cl 89.9 g、KHCO3 10.0 g、EDTA四ナトリウム370.0 mgから調製して、溶液のpHを7.3に調節した。血液3 mlをピペットによって1×溶解溶液42 ml(50 mlファルコンチューブ)に移した。混合物を室温で3〜5分間放置した。次に、300×gで室温で5分間遠心した。上清を吸引して、沈殿物を冷X-vivo培地30 mlに再懸濁させた。再懸濁させた混合物を300×gで2〜8℃で5分間遠心して、上清を吸引し、沈殿物をタンパク質濃縮燐酸緩衝生理食塩液(PBS)(1×PBS 500 ml中に仔ウシ胎児血清(FCS)10 ml)2.5 mlに再懸濁させた。この細胞懸濁液を、96ウェルマイクロプレートにおいて200 μlの少量に分けた後、300×gで5分間遠心した。上清を捨てた。染色は、調製した抗CTLA-4抗体混合物を10 μl/ウェル加えることによって行った。次に、プレートを暗い容器の中で氷中で30分間インキュベートした。各ウェルを冷洗浄緩衝液200 μlによって洗浄し、軽く混合して、1000 rmで遠心した。上清を除去して、各ウェルを水-緩衝液200 μlによってさらに2回洗浄した。最後の洗浄後、沈殿物を染色緩衝液200 μlに再懸濁させて、蛍光活性化セルソーター(FACS)-キャリバーによって分析した。リンパ球が得られるようにゲートを設定した事象少なくとも10000個および単球が得られるようにゲートを設定した事象5000個を獲得した。
【0155】
図9に示すように、被験者8人中7人は、基準値期間と比較して併用療法時にCTLA-4の有意なアップレギュレーションを示した。
【0156】
記述の方法または組成物の正確な詳細は変更または改変してもよく、それらも、記述の発明の趣旨に含まれることは明らかであろう。本発明者らは、請求の範囲の範囲および趣旨に含まれるそのような全ての改変および変更を主張する。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】Zenapax(登録商標)単独によって治療した被験者における経時的な新規、総数、累積総数およびT2LL病変の数を示すグラフである。被験者は、垂直な実線の右側の領域に示されるように、Zenapax(登録商標)とインターフェロン(IFN)βによるこれまでの併用治療に反応しなかった。Zenapax(登録商標)の単剤治療の開始(インターフェロン-βによる治療を行わない)を矢印で示す。Zenapax(登録商標)単剤治療の開始後、新規病変は検出されなかった。
【図2】Zenapax(登録商標)単独によって治療した第二の被験者における経時的な新規、総数、累積総数およびT2LL病変の数を示すグラフである。被験者は、垂直な破線の右側の領域に示されるように、Zenapax(登録商標)とインターフェロン(IFN)βによるこれまでの併用治療に反応しなかった。Zenapax(登録商標)の単剤治療の開始(インターフェロン-βによる治療を行わない)を矢印で示す。Zenapax(登録商標)単剤治療の開始後、新規病変は検出されなかった。
【図3】ダクリズマブとインターフェロン-βの併用によって治療した被験者における核磁気共鳴画像(MRI)スキャンによって測定した新規、総数、および累積総数の対比増強病変の変化を示す一連のグラフであり、被験者8人においてインターフェロン-β単剤による3ヶ月の基準値治療期間と併用治療後のあいだに差があることを示している。
【図4A−B】図3に示す同じ被験者の基準値期間と併用治療後の、総合障害度(Expanded Disability Status Scale)(EDSS)(図4A)およびスクリプス神経評定度(Scripps Neurologic Rating Scale)(NRS)(図4B)での行為能力によって測定した神経学的行為能力の変化を示すグラフである。
【図5A−B】図3と同じ被験者の基準値期間と併用治療後の歩行指数(図5A)および20 m歩行時間(図5B)に関する行為能力によって測定した神経学的行為能力の変化を示すグラフである。
【図6A−B】図1と同じ被験者の基準値期間と併用治療後の利き手(図6A)と非利き手(図6B)に関する9-ペグ穴試験によって測定した神経学的行為能力の変化を示すグラフである。
【図7】図3の被験者7人の基準値期間と併用治療後のTacエピトープを発現するCD4+/CD25+細胞およびCD8+/CD25+細胞の百分率の変化を示す一連のグラフである。
【図8A−B】図3と同じ被験者の基準値期間と併用治療後の細胞100個あたりのCD4 T細胞分裂数および細胞100個あたりのCD8 T細胞分裂数の変化を示すグラフである。
【図9】図3と同じ被験者の基準値期間と併用治療後の血液試料の蛍光活性化セルソーティングによって測定した、その表面上に細胞障害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)を発現するCD4 T細胞数の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、多発性硬化症の被験者を治療する方法:
βインターフェロンによるこれまでの治療に反応しなかった被験者に、βインターフェロンによる治療を行わずに治療的有効量のIL-2受容体アンタゴニストを投与することによって、多発性硬化症の兆候または症状を改善し、被験者を治療する段階。
【請求項2】
IL-2受容体アンタゴニストが静脈内投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
IL-2アンタゴニストが、IL-21受容体に特異的に結合する抗体を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
抗体がp55に特異的に結合する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
抗体がダクリズマブである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
抗体が約1〜約3 mg/kgの用量で静脈内投与される、請求項4記載の方法。
【請求項8】
抗体が約1〜約2 mg/kgの用量で静脈内投与される、請求項4記載の方法。
【請求項9】
抗体が2週間に1回投与される、請求項6記載の方法。
【請求項10】
被験者の治療によって、核磁気共鳴画像によって評価した対比増強病変数が減少する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
βインターフェロンによる治療が、インターフェロン-β1aによる治療を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
βインターフェロンによる治療が、インターフェロン-β1bによる治療を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
被験者が、再発-寛解性の多発性硬化症を有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
被験者が、進行性多発性硬化症を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
インターロイキン-2受容体に特異的に結合する治療的有効量のヒト化モノクローナル抗体を被験者に静脈内投与する段階を含む、多発性硬化症の被験者を治療する方法であって、該ヒト化モノクローナル抗体を少なくとも2ヶ月間少なくとも2週間に1回投与することによって、被験者を治療する方法。
【請求項16】
被験者がインターフェロン-βによって治療されない、請求項15記載の方法。
【請求項17】
抗体が約1〜約3 mg/kgの用量で投与される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
抗体が約1〜約2 mg/kgの用量で投与される、請求項15記載の方法。
【請求項19】
ヒト化モノクローナル抗体がp55に特異的に結合する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
被験者が再発-寛解性多発性硬化症を有する、請求項15記載の方法。
【請求項21】
抗体がダクリズマブである、請求項15記載の方法。
【請求項22】
インターフェロン-βによる治療に反応しなかった多発性硬化症を有する被験者を選択することによって、IL-2受容体アンタゴニストによる治療に反応する被験者を同定する段階を含む、IL-2受容体アンタゴニストによる治療に反応する被験者を同定する方法。
【請求項23】
被験者が再発-寛解性多発性硬化症を有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
IL-2受容体アンタゴニストがp55に特異的に結合する抗体を含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項22記載の方法。
【請求項26】
モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項22記載の方法。
【請求項27】
インターフェロン-βがインターフェロン-β1aを含む、請求項22記載の方法。
【請求項28】
インターフェロン-βがインターフェロン-β1bを含む、請求項22記載の方法。
【請求項29】
以下の段階を含む、多発性硬化症の被験者を治療する方法:
インターフェロン-βによって治療したがインターフェロン-β治療に反応しなかった被験者を選択する段階;
インターフェロン-βによって治療されない被験者に、インターロイキン-2受容体に特異的に結合する治療的有効量のヒト化モノクローナル抗体を静脈内投与することによって、被験者を治療する段階。
【請求項30】
ヒト化モノクローナル抗体が少なくとも2ヶ月間少なくとも2週間に1回投与される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
抗体がダクリズマブである、請求項29記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−508039(P2006−508039A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−518039(P2004−518039)
【出願日】平成15年6月27日(2003.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/020428
【国際公開番号】WO2004/002421
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(505004983)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシス (4)
【Fターム(参考)】