多目標追尾装置
【課題】従来の多目標追尾装置は、レーダから得た目標の位置情報のみに基づいて目標航跡の相関仮説を生成して行うために、複数の目標の航跡が接近する等複雑な航跡を有する場合には、誤った相関結果を導く可能性が高く、誤追尾が生じやすいという課題があった。本発明は、より信頼度が高い目標追尾が可能な多目標追尾装置を得ることを目的とする。
【解決手段】仮説照合部18は、位置情報追尾処理部4が目標の位置情報から生成した目標航跡を含む仮説群と、目標識別追尾処理部13が目標の位置情報と目標の識別情報から生成した角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う。これにより、誤った相関結果を導く可能性を低くし、より信頼度が高く、正確な相関決定ができる。
【解決手段】仮説照合部18は、位置情報追尾処理部4が目標の位置情報から生成した目標航跡を含む仮説群と、目標識別追尾処理部13が目標の位置情報と目標の識別情報から生成した角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う。これにより、誤った相関結果を導く可能性を低くし、より信頼度が高く、正確な相関決定ができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レーダ等のセンサによる観測で得られた飛翔体等の目標の位置情報に基づいて、目標の追尾を行う技術であって、特に、複数種類のセンサの観測値に基づいて目標の追尾を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダにより得られた観測値を使って目標の追尾を行う技術についてはすでに多くの論文、特許等の文献で取り挙げられており、追尾装置および追尾方法については様々な提案がなされている。また、近接した複数の目標を追尾する場合、目標航跡と観測値の相関を誤る事により生ずる誤追尾の可能性を低減するために、目標航跡と観測値の相関について複数の仮説を生成し、その信頼度を計算しながら最終的な相関決定を行う手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開3145893号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような追尾手法は、レーダから得た目標の位置情報のみに基づいて目標航跡の相関仮説を生成して行うために、複数の目標の航跡が接近する等複雑な航跡を有する場合には、依然として誤った相関結果を導く可能性が高く、誤追尾が生じやすいという課題があった。本発明はこの課題を解決するためになされたもので、より信頼度が高い目標追尾が可能な多目標追尾装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る多目標追尾装置は、位置情報追尾処理部が目標の位置情報から生成した目標航跡を含む仮説群と、目標識別追尾処理部が方位角と仰角から成る目標の位置情報と目標の識別情報から生成した角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、目標の識別情報及び位置情報の観測値に基づいて生成した角度航跡を活用して、目標の位置情報の観測値のみに基づいて生成した目標航跡の仮説を取捨選択するようにしたので、誤った相関結果を導く可能性が低くなり、より信頼度が高く、正確な相関決定ができ、誤追尾の可能性を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
実施の形態1.
図1は実施の形態1による多目標追尾装置の構成を示したものである。多目標追尾装置1は外部に設置したレーダ装置2及び目標識別センサ装置3と接続され、レーダ装置2及び目標識別センサ装置3が観測した目標についての観測値を入力し、これらの観測値に基づいた目標の追尾処理を行う。
【0007】
レーダ装置2は、自ら電波を発射し、この電波が目標(例えば飛翔体)で反射した反射波を測定することにより目標の位置を検出し、検出した目標位置を空間座標(仰角、方位角、距離)で表した位置情報を観測値として時系列的に出力する。
【0008】
また、目標識別センサ装置3は、自ら電波を発射せずに、目標から放射される電磁波を専ら測定することにより目標位置の検出と目標の識別を行い、検出した目標位置を空間座標(仰角、方位角)で表した位置情報と、検出した目標に関する識別情報を観測値として時系列的に出力する。なお、目標識別センサ装置3が出力する位置情報は距離を含んでいない点で、レーダ装置2が出力する位置情報と相違する。また、目標の識別情報とは、目標が発する電磁波パルスのパルス形状等の観測データと、予め収集したライブラリィデータとを照合することにより決定した、目標の識別に関する情報(例えば飛翔体の機種)のことである。
【0009】
図2は多目標追尾装置1の動作フローを示したものである。以下、図に基づいて多目標追尾装置1の動作を説明する。多目標追尾装置1は、レーダ装置2、若しくは目標識別センサ装置3から観測値を入力する(ステップA1)。次に、入力した観測値を出力した装置がレーダ装置2、又は目標識別センサ装置3のいずれであるかを判断する(ステップA2)。
【0010】
最初に、観測値の出力装置がレーダ装置2であった場合の処理を説明する。出力装置がレーダ装置2であった場合は、まず位置情報追尾処理部4が処理を行う。位置情報追尾処理部4は観測値選別部5、航跡生成部6、相関仮説生成部7、及びこれら各部が使用する航跡データベース8、仮説データベース9から構成される。
【0011】
位置情報追尾処理部4にレーダ装置2の観測値が入力されると、観測値選別部5は航跡データベース8から既存航跡のデータを読み出し、既存航跡が持つ運動諸元を使用して観測時刻における予測位置範囲(この予測位置範囲をゲートという。)を計算し、この予測位置と運動諸元の誤差共分散の推定値とから、観測値が得られる可能性のある空間領域であるゲートを算出する。そして、算出したゲートと観測値を比較することにより、入力した観測値が各既存航跡のゲート内に入っている否かを調べ、観測値がどの航跡と相関可能であるかを決定する(ステップA3)。
【0012】
図3は既存航跡と観測値の関係を示す一例である。レーダ装置2が出力する観測値は目標位置を空間座標(仰角、方位角、距離)で表したものであるが、図3では分かりやすくするために、距離成分を無視して、仰角と方位角からなる座標空間上に示してある。この例では、既存航跡としてT1とT2があり、観測値としてO1、O2、O3の3つが得られている。そして、既存航跡T1とT2の各々のゲート内に観測値O1、O2が共に含まれていることが分かる。なお、観測値O3はいずれのゲートにも含まれていない。この例の場合、観測値O1は既存航跡T1、T2に相関可能であり、観測値O2は既存航跡T1、T2に相関可能である。また、観測値O3は既存航跡T1、T2のいずれにも相関可能ではない。観測値選別部5は、相関可能な既存航跡と観測値のペア(例えば(T1,O2)など)の全てを航跡生成部6に出力する。
【0013】
次に、航跡生成部6はステップA3で得た相関可能な既存航跡と観測値のペアに基づいて、航跡を作成する(ステップA4)。ここで作成される航跡には以下の3つの種類がある。
(1)更新航跡:既存航跡に、ゲート内に入った観測値を追加して生成される航跡。図3の例では観測値O1を使って既存航跡T1を更新した航跡、観測値O2を使って既存航跡T1を更新した航跡、観測値O1を使って既存航跡T2を更新した航跡、観測値O2を使って既存航跡T2を更新した航跡の計4つの更新航跡が生成される。
(2)新航跡:その時刻に入った観測値を起点とする航跡。図3の例では観測値O1を起点とする新航跡、観測値O2を起点とする新航跡、観測値O3を起点とする新航跡の計3つの航跡が生成される。
(3)メモリトラック航跡:既存航跡に対し、「該当する時刻には相関する観測値がなかった」とする航跡であり、探知抜けを起こした航跡ともいう。図3の例では観測値O1、O2が存在しなかったとすると、既存航跡T1、T2と相関可能な観測値は無くなり、既存航跡T1、T2に基づいた計2つのメモリトラック航跡が生成される。
【0014】
これらの生成した航跡の観測時刻における運動諸元を計算し、さらに相関結果に対応する航跡の尤度を計算する。生成した航跡が更新航跡の場合、航跡の尤度の具体的な計算方法としては、観測値の確率分布が予測位置を中心としたガウス分布となることを仮定して、次式により計算する手法が知られている。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、Lkは時刻kで観測値zkが相関する場合の航跡の尤度、zkは観測値、zkpは予測観測位置、Skは残差共分散行列、nは観測値の次元である。
【0017】
また、生成した航跡が新航跡、若しくはメモリトラック航跡の場合は、航跡の尤度として、観測値の観測誤差等のパラメータに基づいて定めた規定値を使用する。以上のようにして得た生成航跡と各航跡の尤度のペアを相関仮説生成部7に出力する。
【0018】
相関仮説生成部7は、まず仮説データベース9から既存仮説のデータを読み出す。この既存仮説のデータは、仮説を構成する航跡と、仮説の信頼度を含むデータである。例えば、既存仮説H1が既存航跡T1、T2を含み、信頼度がR1であることを示すデータである。
【0019】
次に、航跡生成部6が出力した生成航跡と各航跡の尤度のペア、及び仮説データベース9から読み出した既存仮説に基づいて、新たな仮説を生成する(ステップA5)。この新たに生成する仮説(ここでは相関仮説という)は以下の条件を満たしていなければならない。
【0020】
(a1)相関仮説は1つ前の観測時刻に生成された既存仮説の何れかを発展させたものでなければならない。図4に相関仮説の例を2つ示す。相関仮説1は既存航跡T1を観測値O2で更新した更新航跡と、既存航跡T2を観測値O1で更新した更新航跡の2つの航跡を採択し、観測値O3は不要信号とみなすものである。この相関仮説1は既存航跡としてT1とT2が存在していることが前提となるため、図5(a)の既存仮説1の発展により生成される。従って既存仮説群の中にこの既存仮説1が含まれていない場合にはこの相関仮説1は生成できない。また、相関仮説2は既存航跡T1を観測値O1で更新した更新航跡と、観測値O3を起点とする新航跡T3の2つの航跡を採択し、観測値O2を不要信号とみなすものである。この相関仮説2は既存航跡としてT1のみが存在していることが前提となるため、図5(b)の既存仮説2の発展により生成される。
【0021】
(a2)選択された観測値と航跡の組合せについては、観測値が航跡のゲート内に入っていなければならない。例えば、既存航跡T1を観測値O3で更新した航跡を採択する仮説は生成されない。
【0022】
(a3)観測は何れか1つの航跡に対応付けられるか、不要信号とみなされる。例えば、一つの仮説の中で観測値O1が既存航跡T1と既存航跡T2の両方に対応付けられたり、観測値O2がいずれの航跡にも対応せず、または不要信号でもないとみなされたりすることはない。
【0023】
(a4)一つの既存航跡に対して相関可能な観測値は高々一つである。例えば、一つの仮説の中で既存航跡T1に観測値O1と観測値O2の両方が対応付けられることはない。
【0024】
次に、生成した各相関仮説について、その評価値として信頼度が計算される。信頼度は、仮説生成時に使用した各既存仮説の信頼度と、使用した航跡(更新航跡、新航跡、メモリトラック航跡)の尤度と、仮説に不要信号とみなした観測値があればその尤度の積演算によって計算する。このように計算した各仮説の信頼度は、全ての相関仮説の信頼度の総和が1.0となる様に正規化する。
【0025】
生成した仮説とその信頼度を、共通処理部10の仮説選択統合部11に出力する。以上のステップA3〜A5の処理が位置情報追尾処理部4での処理である。
【0026】
次に、仮説選択統合部11は、ステップA5で生成した仮説の中から、信頼度の低い仮説の削除と、類似した仮説の統合を行うことにより、仮説群を縮小する(ステップA6)。この仮説群の縮小には以下の手法がよく知られている。
【0027】
(b1)信頼度に閾値を設け、それに満たない信頼度を持つ仮説を全て削除する。
(b2)仮説数の上限を設け、信頼度が高い順に、設定した個数の仮説のみを残し、その他の仮説を削除する。
(b3)最新の観測時点から遡って過去数回の観測時刻分における観測値の相関内容が同一の仮説を統合する。
【0028】
このようにして選択統合して得た仮説群を航跡表示部12、及び仮説データベース9に出力する。仮説データベース9はこの仮説群を既存仮説と連携させて蓄積する。また、仮説群のいずれにも含まれていない既存航跡は以後の処理に不要なため、航跡データベース8から削除する処理を行う。
【0029】
航跡表示部12は、仮説選択統合部11が出力した仮説群の中からもっとも信頼度の値が大きい仮説について、その仮説に含まれる航跡をスクリーン等に表示させる(ステップA7)。
【0030】
以上説明したステップA1〜A7が、レーダ装置2から1つの観測値を入力した際の一連の動作フローである。この後、次の観測値が入力されるまで待機し、次の観測値が入力されるとステップA1から次のサイクルの処理が実行される。
【0031】
以上、レーダ装置2からの観測値を入力した場合の動作を説明したが、次に、目標識別センサ装置3からの観測値を入力した場合の動作を説明する。
【0032】
ステップA2での判断で、観測値の出力装置が目標識別センサ装置3であった場合、目標識別センサ装置3が出力する観測値の内、位置情報の部分が位置情報追尾処理部4と目標識別追尾処理部13の両方に出力され、観測値の内、識別情報の部分は目標識別追尾処理部13にのみ出力される。以下、まず目標識別追尾処理部13の処理から説明する。目標識別追尾処理部13は観測値選別部14、相関決定部15、角度航跡生成部16、及びこれら各部が使用する角度航跡データベース17から構成される。
【0033】
目標識別追尾処理部13に目標識別センサ装置3の観測値が入力されると、観測値選別部14が、既存の角度航跡から観測時刻における目標の予測位置範囲(ゲート)を算出し、このゲートに基づいて観測値と既存の角度航跡との相関可能性を調べる。具体的な手順はレーダ情報処理部4内の観測値選別部5の動作と同様なものである。即ち、角度航跡データベース17から読み出した既存角度航跡から算出したゲートと観測値を比較することにより、入力した観測値が各既存角度航跡のゲート内に入っている否かを調べ、観測値がどの角度航跡と相関可能であるかを決定し、相関可能な既存角度航跡と観測値のペアの全てを相関決定部15に出力する。(ステップA8)。
【0034】
次に、相関決定部15は、既存角度航跡と観測値を一意に対応付ける(ステップA9)。このとき、その対応付けの決定方針は以下とする。
(c1)ゲート内に入った観測値のみを既存角度航跡と対応付ける。
(c2)ゲート内に複数の観測値が入った場合は、既存角度航跡の最新の更新で使用した観測値が有する識別情報と一致する識別情報を有する観測値を最優先に対応付ける。
【0035】
図6に既存角度航跡と観測値の対応付けの例を示す。この例では、既存角度航跡T1_PASSのゲートに観測値O1_PASSとO2_PASSが入り、既存角度航跡T2_PASSのゲートに観測値O1_PASSとO2_PASSが入っている。そして、既存角度航跡T1_PASSの最新の更新に使われた観測値OT1_PASSと今回の観測値O1_PASSの識別情報が一致し、既存角度航跡T2_PASSの最新の更新に使われた観測値OT2_PASSと今回の観測値O2_PASSの識別情報が一致している。よって、観測値O1_PASSは既存角度航跡T1_PASSに、観測値O2_PASSは既存角度航跡T2_PASSにそれぞれ対応付けられる。
【0036】
次に、角度航跡生成部16は、対応付けられた観測値を使って角度航跡の更新を行う(ステップA10)。更新した角度航跡は角度航跡データベース17に保存すると共に、共通処理部の仮説照合部18に出力する。このように、角度航跡の更新は、相関仮説を作らずに行う。
【0037】
一方、位置情報追尾処理部4は、目標識別センサ装置3から入力した観測値の位置情報、及び航跡データベース8と仮説データベース9の情報を用いて、相関仮説の生成を行う(ステップA11〜A13)。この相関仮説の生成は、先に説明したレーダ装置2から入力した観測値に基づいた位置情報追尾処理部4の動作(ステップA3〜A5)と同様の動作であるので詳細な動作説明は省略する。なお、目標識別センサ装置3から入力した観測値の位置情報は、仰角と方位角からなる空間座標で表されているのに対して、航跡データベース8の既存航跡、及び仮説データベース9の既存仮説に含まれる位置情報は仰角と方位角と距離の空間座標で表されている。この為、観測値と既存航跡や既存仮説との対応関係を調べる際には、距離成分の観測値の代替として距離成分の予測値を使用して対応付けを行うようにする。位置情報追尾処理部4は生成した仮説とその信頼度を、共通処理部10の仮説照合部18に出力する。
【0038】
次に、仮説照合部18は、目標識別追尾処理部13が生成した角度航跡と位置情報追尾処理部4が生成した仮説の照合を行い、角度航跡に類似した仮説のみを残す(ステップA14)。この照合は、位置情報追尾処理部4で生成した全ての仮説について目標識別追尾処理部13が生成した角度航跡との照合度を計算し、照合度が高い仮説のみを選択し残すことにより行う。図7はステップA14の仮説照合をさらに詳細化した手順で示したものである。以下、例を使って仮説照合の方法を説明する。
【0039】
まず、生成した仮説に含まれる航跡と角度航跡に含まれる航跡の全ての組み合わせについて類似度を計算する(ステップB1)。ここで類似度は「角度航跡中の航跡に含まれている観測値の個数に対する、仮説中の航跡と角度航跡中の航跡の両方に含まれている観測値の個数の割合」と定義する。類似度の計算について、図8の仮説と図9の角度航跡を例にして説明する。図8の仮説には航跡T1_FUSと航跡T2_FUSの2つの航跡が含まれており、一方、図9の角度航跡には航跡T1_PASS、航跡T2_PASS、航跡T3_PASSの3つの角度航跡が含まれているので、3×2=6通りの組合せについて類似度を計算する。例えば、航跡T1_PASSと航跡T1_FUSの組合せでの類似度は、航跡T1_PASS中の観測値が5個で、そのうち航跡T1_FUSにも含まれている観測値が4個なので類似度は0.8(=4/5)と計算する。以下、各々の組合せについて類似度を計算すると表1の様になる。
【0040】
【表1】
【0041】
次に、計算した類似度を基に、角度航跡中の各航跡に対して、最も大きい類似度を実現する仮説側の航跡を対応付ける(ステップB2)。表1の類似度の場合、その対応は以下となる。
対応1:T1_PASS ⇔ T1_FUS
対応2:T2_PASS ⇔ T2_FUS
対応3:T3_PASS ⇔ T1_FUS
【0042】
次に、仮説の照合度を、この仮説に対応する類似度の積として計算する(ステップB3)。ここでの例では、対応1の類似度が0.8、対応2及び対応3の類似度がいずれも1.0なので、0.8×1.0×1.0=0.8がこの仮説の照合度となる。仮説照合部18は、以上の手順を繰り返すことにより、各仮説の照合度を計算する。
【0043】
次に、仮説の照合度に閾値を設け、その閾値以上の照合度を有する仮説を残し、閾値を下回る照合度を有する仮説を削除する(ステップB4)。例として図10の様な観測値が得られたとする。この例では、目標識別センサ装置3の観測値である識別情報から判断すると、2つの目標が存在して接近交差となる軌跡を描いている可能性が高いと考えられる。一方、これらの観測値に対応する仮説照合前の仮説群として図11の上段に示す3つの仮設があるとする。但し、交差する軌跡を描く第1仮説の信頼度が最も高く、第2仮説、第3仮説の順に信頼度が低下するものとする。また、図9の中段には、この仮説群の各仮説と目標識別センサ装置単体による角度航跡との照合度を示す。各仮説と照合度を比較すると、最も信頼度が高い仮説(仮説照合前の第1仮説)の照合度は0.25、仮説照合前の第2仮説、及びの第3仮説照合度はいずれも1.0となる。ここで照合度の閾値を0.5とすると図9の下段に示すように、接近離反の軌跡を描く仮説(仮説照合前の第2仮説)が最上位(仮説照合後の第1仮説)となり、仮説照合前の第3仮説が仮説照合後の第2仮説となる。
【0044】
このようにして、仮説の照合度を考慮することにより、仮説照合前の3つの仮説から、閾値以上の照合度を有する2つの仮説を選択することができる。こうして選択した仮説は、仮説選択統合部11へ出力される。
【0045】
なお、ステップB1「航跡の類似度計算」において、航跡に含まれる観測値の全てを類似度計算の対象としたが、ある一定時間以上前の過去の観測値は無視して、一定時間以内の最新の観測値のみを対象にして類似度を計算してもよい。また、最新の数観測時刻分の観測値のみを対象にして類似度を計算するようにしてもよい。
【0046】
また上記の説明では航跡に含まれている観測値の一致具合によって類似度を計算したが、平滑値の一致具合に基づいて類似度を計算してもよい。例えば、仮説に含まれる航跡の運動諸元推定値の角度成分をxhypo、その誤差共分散行列をPhypoとし、角度航跡の運動諸元推定値をxpass、その誤差共分散行列をPpassとして、類似度Λangを以下の様に計算する。
【0047】
【数2】
【0048】
また、仮説と角度航跡との類似度を、観測値を基に計算した類似度と平滑値を基に計算した類似度の積として計算してもよい。
【0049】
次に、仮説選択統合部11は、信頼度の低い仮説の削除と、類似する仮説の統合によって仮説群を縮小する(ステップA15)。仮説群を縮小する手法はステップA6で説明したものと同一であるので詳細な説明を省略する。このようにして選択統合して得た仮説群を航跡表示部12、及び仮説データベース9に出力する。仮説データベース9は選択、統合済みの仮説群を既存仮説と連携させて蓄積する。また、仮説群のいずれにも含まれていない既存航跡は以後の処理に不要なため、航跡データベース8から削除する処理を行う。
【0050】
最後に、航跡表示部12は、仮説選択統合部11が出力した仮説群の中からもっとも信頼度の値が大きい仮説について、その仮説に含まれる航跡をスクリーン等に表示させる(ステップA16)。
【0051】
以上説明したステップA8〜A16が、目標識別センサ装置3から1つの観測値を入力した際の一連の動作フローである。この後、次の観測値が入力されるまで待機し、次の観測値が入力されるとステップA1から次のサイクルの処理が実行される。
【0052】
なお、以上の説明では、目標識別追尾処理部13での処理(ステップA8〜A10)の後に、位置情報追尾処理部の処理(ステップA11〜A13)を実行するようにしたが、位置情報追尾処理部の処理(ステップA11〜A13)の後に目標識別追尾処理部13での処理(ステップA8〜A10)を実行するようにしてもよいし、目標識別追尾処理部13での処理(ステップA8〜A10)と位置情報追尾処理部の処理(ステップA11〜A13)を同時平行して処理するようにしてもよい。
【0053】
以上のように実施の形態1による多目標追尾装置は、目標の識別情報及び位置情報の観測値に基づいて生成した角度航跡を活用して、目標の位置情報の観測値のみに基づいて生成した目標航跡の仮説を取捨選択するようにしたので、誤った相関結果を導く可能性が低くなり、より信頼度が高く、正確な相関決定が可能な多目標追尾を実行することができる。
【0054】
実施の形態2.
飛翔体等の目標が自ら発する放射電波の形態を変更しながら、飛行する場合が考えられる。このような目標から得られる観測値の識別情報は、航跡の途中で遷移する場合があるが、識別情報の遷移に拘らず同一目標であると認識できることが望ましい。実施の形態2による多目標追尾装置は、相関仮説の選択統合処理において、識別情報の遷移が過去に観測された遷移と同一のものである場合、そのような遷移を含む仮説の信頼度は高いものとして処理することにより、1つの目標から得られる観測値の識別情報が変化する場合でも正しい相関結果を得ることができ、より正確な追尾処理を行うものである。
【0055】
図12は実施の形態1による多目標追尾装置の構成を示したものである。また、図13は、実施の形態2による多目標追尾装置1の動作フローを示したものである。図12及び図13において、図1及び図2と同一若しくは対応する部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。以下、図に基づいて多目標追尾装置1の動作を説明する
【0056】
動作フローにおける実施の形態1の多目標追尾装置との相違点は、目標識別センサ装置3から観測値を入力した場合の共通処理部10の動作であるのであるので、仮説照合(ステップA14)以降からの処理を説明する。仮説照合部18は、実施の形態1の場合と同様に、位置情報追尾処理部4が生成した相関仮説と目標識別追尾処理部13が生成した角度航跡とを照合する。そして、照合済みの選択された仮説を識別情報推移判定部19に出力する(ステップA14)。
【0057】
識別情報推移判定部19は、仮説照合部18が出力する仮説群のうちもっとも信頼度が高い仮説について、その仮説を構成する航跡の何れかにおいて相関した観測値の識別情報の変化が生じていないかを調べる。そして観測値の識別情報の変化を検出した場合は、識別情報遷移履歴データベース20にその遷移前と遷移後の識別情報を格納する。例えば図8に示した仮説が最も信頼度が高い仮説である場合、航跡T1_FUSで相関した目標識別センサ装置3の観測値の識別情報が途中で変化(四角形から五角形)しているため、識別情報推移判定部19はその変化を識別情報遷移履歴データベース20に格納する。次回以降の観測時刻の処理では、他の仮説にこの遷移と同様の遷移が起きた航跡を含む仮説が存在する場合、その仮説の信頼度を定数倍して他よりも優位となる方向に増加修正する。これにより、識別情報の遷移状態を加味して仮説の信頼度の修正を行うことができる。識別情報推移判定部19は、信頼度の修正済みの仮説を仮説選択統合部11へ出力する(ステップA17)。
【0058】
仮説選択統合部11は、実施の形態1の場合と同様に信頼度の低い仮説の削除と、類似する仮説の統合によって仮説群を縮小する(ステップA15)。この際、統合済みの仮説群のいずれにも含まれていない既存航跡に生じている識別情報の遷移は以後の処理に不要なため、識別情報遷移履歴データベース20から該当する遷移情報を削除する処理を行う。
【0059】
最後に、航跡表示部12が、仮説選択統合部11が出力した仮説群の中からもっとも信頼度の値が大きい仮説について、その仮説に含まれる航跡をスクリーン等に表示させる(ステップA16)。
【0060】
以上のように実施の形態2による多目標追尾装置は、相関仮説中の識別情報の遷移を記録し、過去と同様の遷移を起こした仮説を優先するように仮説の信頼度を修正するため、一つの目標から得られる観測値の識別情報が変化する場合でも正しい相関結果を得る確率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1による多目標追尾装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による多目標追尾装置の動作フローを示す図である。
【図3】既存航跡とゲート、観測値の説明図である。
【図4】相関仮説の例である。
【図5】既存仮説の例である。
【図6】目標識別センサ装置での追尾における既存航跡と観測値の例である。
【図7】仮説照合の手順を示す図である。
【図8】仮説における既存航跡と観測値の例である。
【図9】角度航跡における既存航跡と観測値の例である。
【図10】レーダ装置の観測値と目標識別センサ装置の観測値の例である。
【図11】仮説照合前後の仮説群の例である。
【図12】本発明の実施の形態2による多目標追尾装置の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態2による多目標追尾装置の動作フローを示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1:多目標追尾装置、2:レーダ装置、3:目標識別センサ装置、4:位置情報追尾処理部、5:観測値選別部、6:航跡生成、7:相関仮説生成部、8:航跡データベース、9:仮説データベース、10:共通処理部、11:仮説選択統合部、12:航跡表示部12、13:目標識別追尾処理部、14:観測値選別部、15:相関決定部、16:角度航跡生成部、17:角度航跡データベース、18:仮説照合部
【技術分野】
【0001】
レーダ等のセンサによる観測で得られた飛翔体等の目標の位置情報に基づいて、目標の追尾を行う技術であって、特に、複数種類のセンサの観測値に基づいて目標の追尾を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダにより得られた観測値を使って目標の追尾を行う技術についてはすでに多くの論文、特許等の文献で取り挙げられており、追尾装置および追尾方法については様々な提案がなされている。また、近接した複数の目標を追尾する場合、目標航跡と観測値の相関を誤る事により生ずる誤追尾の可能性を低減するために、目標航跡と観測値の相関について複数の仮説を生成し、その信頼度を計算しながら最終的な相関決定を行う手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開3145893号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような追尾手法は、レーダから得た目標の位置情報のみに基づいて目標航跡の相関仮説を生成して行うために、複数の目標の航跡が接近する等複雑な航跡を有する場合には、依然として誤った相関結果を導く可能性が高く、誤追尾が生じやすいという課題があった。本発明はこの課題を解決するためになされたもので、より信頼度が高い目標追尾が可能な多目標追尾装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る多目標追尾装置は、位置情報追尾処理部が目標の位置情報から生成した目標航跡を含む仮説群と、目標識別追尾処理部が方位角と仰角から成る目標の位置情報と目標の識別情報から生成した角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、目標の識別情報及び位置情報の観測値に基づいて生成した角度航跡を活用して、目標の位置情報の観測値のみに基づいて生成した目標航跡の仮説を取捨選択するようにしたので、誤った相関結果を導く可能性が低くなり、より信頼度が高く、正確な相関決定ができ、誤追尾の可能性を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
実施の形態1.
図1は実施の形態1による多目標追尾装置の構成を示したものである。多目標追尾装置1は外部に設置したレーダ装置2及び目標識別センサ装置3と接続され、レーダ装置2及び目標識別センサ装置3が観測した目標についての観測値を入力し、これらの観測値に基づいた目標の追尾処理を行う。
【0007】
レーダ装置2は、自ら電波を発射し、この電波が目標(例えば飛翔体)で反射した反射波を測定することにより目標の位置を検出し、検出した目標位置を空間座標(仰角、方位角、距離)で表した位置情報を観測値として時系列的に出力する。
【0008】
また、目標識別センサ装置3は、自ら電波を発射せずに、目標から放射される電磁波を専ら測定することにより目標位置の検出と目標の識別を行い、検出した目標位置を空間座標(仰角、方位角)で表した位置情報と、検出した目標に関する識別情報を観測値として時系列的に出力する。なお、目標識別センサ装置3が出力する位置情報は距離を含んでいない点で、レーダ装置2が出力する位置情報と相違する。また、目標の識別情報とは、目標が発する電磁波パルスのパルス形状等の観測データと、予め収集したライブラリィデータとを照合することにより決定した、目標の識別に関する情報(例えば飛翔体の機種)のことである。
【0009】
図2は多目標追尾装置1の動作フローを示したものである。以下、図に基づいて多目標追尾装置1の動作を説明する。多目標追尾装置1は、レーダ装置2、若しくは目標識別センサ装置3から観測値を入力する(ステップA1)。次に、入力した観測値を出力した装置がレーダ装置2、又は目標識別センサ装置3のいずれであるかを判断する(ステップA2)。
【0010】
最初に、観測値の出力装置がレーダ装置2であった場合の処理を説明する。出力装置がレーダ装置2であった場合は、まず位置情報追尾処理部4が処理を行う。位置情報追尾処理部4は観測値選別部5、航跡生成部6、相関仮説生成部7、及びこれら各部が使用する航跡データベース8、仮説データベース9から構成される。
【0011】
位置情報追尾処理部4にレーダ装置2の観測値が入力されると、観測値選別部5は航跡データベース8から既存航跡のデータを読み出し、既存航跡が持つ運動諸元を使用して観測時刻における予測位置範囲(この予測位置範囲をゲートという。)を計算し、この予測位置と運動諸元の誤差共分散の推定値とから、観測値が得られる可能性のある空間領域であるゲートを算出する。そして、算出したゲートと観測値を比較することにより、入力した観測値が各既存航跡のゲート内に入っている否かを調べ、観測値がどの航跡と相関可能であるかを決定する(ステップA3)。
【0012】
図3は既存航跡と観測値の関係を示す一例である。レーダ装置2が出力する観測値は目標位置を空間座標(仰角、方位角、距離)で表したものであるが、図3では分かりやすくするために、距離成分を無視して、仰角と方位角からなる座標空間上に示してある。この例では、既存航跡としてT1とT2があり、観測値としてO1、O2、O3の3つが得られている。そして、既存航跡T1とT2の各々のゲート内に観測値O1、O2が共に含まれていることが分かる。なお、観測値O3はいずれのゲートにも含まれていない。この例の場合、観測値O1は既存航跡T1、T2に相関可能であり、観測値O2は既存航跡T1、T2に相関可能である。また、観測値O3は既存航跡T1、T2のいずれにも相関可能ではない。観測値選別部5は、相関可能な既存航跡と観測値のペア(例えば(T1,O2)など)の全てを航跡生成部6に出力する。
【0013】
次に、航跡生成部6はステップA3で得た相関可能な既存航跡と観測値のペアに基づいて、航跡を作成する(ステップA4)。ここで作成される航跡には以下の3つの種類がある。
(1)更新航跡:既存航跡に、ゲート内に入った観測値を追加して生成される航跡。図3の例では観測値O1を使って既存航跡T1を更新した航跡、観測値O2を使って既存航跡T1を更新した航跡、観測値O1を使って既存航跡T2を更新した航跡、観測値O2を使って既存航跡T2を更新した航跡の計4つの更新航跡が生成される。
(2)新航跡:その時刻に入った観測値を起点とする航跡。図3の例では観測値O1を起点とする新航跡、観測値O2を起点とする新航跡、観測値O3を起点とする新航跡の計3つの航跡が生成される。
(3)メモリトラック航跡:既存航跡に対し、「該当する時刻には相関する観測値がなかった」とする航跡であり、探知抜けを起こした航跡ともいう。図3の例では観測値O1、O2が存在しなかったとすると、既存航跡T1、T2と相関可能な観測値は無くなり、既存航跡T1、T2に基づいた計2つのメモリトラック航跡が生成される。
【0014】
これらの生成した航跡の観測時刻における運動諸元を計算し、さらに相関結果に対応する航跡の尤度を計算する。生成した航跡が更新航跡の場合、航跡の尤度の具体的な計算方法としては、観測値の確率分布が予測位置を中心としたガウス分布となることを仮定して、次式により計算する手法が知られている。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、Lkは時刻kで観測値zkが相関する場合の航跡の尤度、zkは観測値、zkpは予測観測位置、Skは残差共分散行列、nは観測値の次元である。
【0017】
また、生成した航跡が新航跡、若しくはメモリトラック航跡の場合は、航跡の尤度として、観測値の観測誤差等のパラメータに基づいて定めた規定値を使用する。以上のようにして得た生成航跡と各航跡の尤度のペアを相関仮説生成部7に出力する。
【0018】
相関仮説生成部7は、まず仮説データベース9から既存仮説のデータを読み出す。この既存仮説のデータは、仮説を構成する航跡と、仮説の信頼度を含むデータである。例えば、既存仮説H1が既存航跡T1、T2を含み、信頼度がR1であることを示すデータである。
【0019】
次に、航跡生成部6が出力した生成航跡と各航跡の尤度のペア、及び仮説データベース9から読み出した既存仮説に基づいて、新たな仮説を生成する(ステップA5)。この新たに生成する仮説(ここでは相関仮説という)は以下の条件を満たしていなければならない。
【0020】
(a1)相関仮説は1つ前の観測時刻に生成された既存仮説の何れかを発展させたものでなければならない。図4に相関仮説の例を2つ示す。相関仮説1は既存航跡T1を観測値O2で更新した更新航跡と、既存航跡T2を観測値O1で更新した更新航跡の2つの航跡を採択し、観測値O3は不要信号とみなすものである。この相関仮説1は既存航跡としてT1とT2が存在していることが前提となるため、図5(a)の既存仮説1の発展により生成される。従って既存仮説群の中にこの既存仮説1が含まれていない場合にはこの相関仮説1は生成できない。また、相関仮説2は既存航跡T1を観測値O1で更新した更新航跡と、観測値O3を起点とする新航跡T3の2つの航跡を採択し、観測値O2を不要信号とみなすものである。この相関仮説2は既存航跡としてT1のみが存在していることが前提となるため、図5(b)の既存仮説2の発展により生成される。
【0021】
(a2)選択された観測値と航跡の組合せについては、観測値が航跡のゲート内に入っていなければならない。例えば、既存航跡T1を観測値O3で更新した航跡を採択する仮説は生成されない。
【0022】
(a3)観測は何れか1つの航跡に対応付けられるか、不要信号とみなされる。例えば、一つの仮説の中で観測値O1が既存航跡T1と既存航跡T2の両方に対応付けられたり、観測値O2がいずれの航跡にも対応せず、または不要信号でもないとみなされたりすることはない。
【0023】
(a4)一つの既存航跡に対して相関可能な観測値は高々一つである。例えば、一つの仮説の中で既存航跡T1に観測値O1と観測値O2の両方が対応付けられることはない。
【0024】
次に、生成した各相関仮説について、その評価値として信頼度が計算される。信頼度は、仮説生成時に使用した各既存仮説の信頼度と、使用した航跡(更新航跡、新航跡、メモリトラック航跡)の尤度と、仮説に不要信号とみなした観測値があればその尤度の積演算によって計算する。このように計算した各仮説の信頼度は、全ての相関仮説の信頼度の総和が1.0となる様に正規化する。
【0025】
生成した仮説とその信頼度を、共通処理部10の仮説選択統合部11に出力する。以上のステップA3〜A5の処理が位置情報追尾処理部4での処理である。
【0026】
次に、仮説選択統合部11は、ステップA5で生成した仮説の中から、信頼度の低い仮説の削除と、類似した仮説の統合を行うことにより、仮説群を縮小する(ステップA6)。この仮説群の縮小には以下の手法がよく知られている。
【0027】
(b1)信頼度に閾値を設け、それに満たない信頼度を持つ仮説を全て削除する。
(b2)仮説数の上限を設け、信頼度が高い順に、設定した個数の仮説のみを残し、その他の仮説を削除する。
(b3)最新の観測時点から遡って過去数回の観測時刻分における観測値の相関内容が同一の仮説を統合する。
【0028】
このようにして選択統合して得た仮説群を航跡表示部12、及び仮説データベース9に出力する。仮説データベース9はこの仮説群を既存仮説と連携させて蓄積する。また、仮説群のいずれにも含まれていない既存航跡は以後の処理に不要なため、航跡データベース8から削除する処理を行う。
【0029】
航跡表示部12は、仮説選択統合部11が出力した仮説群の中からもっとも信頼度の値が大きい仮説について、その仮説に含まれる航跡をスクリーン等に表示させる(ステップA7)。
【0030】
以上説明したステップA1〜A7が、レーダ装置2から1つの観測値を入力した際の一連の動作フローである。この後、次の観測値が入力されるまで待機し、次の観測値が入力されるとステップA1から次のサイクルの処理が実行される。
【0031】
以上、レーダ装置2からの観測値を入力した場合の動作を説明したが、次に、目標識別センサ装置3からの観測値を入力した場合の動作を説明する。
【0032】
ステップA2での判断で、観測値の出力装置が目標識別センサ装置3であった場合、目標識別センサ装置3が出力する観測値の内、位置情報の部分が位置情報追尾処理部4と目標識別追尾処理部13の両方に出力され、観測値の内、識別情報の部分は目標識別追尾処理部13にのみ出力される。以下、まず目標識別追尾処理部13の処理から説明する。目標識別追尾処理部13は観測値選別部14、相関決定部15、角度航跡生成部16、及びこれら各部が使用する角度航跡データベース17から構成される。
【0033】
目標識別追尾処理部13に目標識別センサ装置3の観測値が入力されると、観測値選別部14が、既存の角度航跡から観測時刻における目標の予測位置範囲(ゲート)を算出し、このゲートに基づいて観測値と既存の角度航跡との相関可能性を調べる。具体的な手順はレーダ情報処理部4内の観測値選別部5の動作と同様なものである。即ち、角度航跡データベース17から読み出した既存角度航跡から算出したゲートと観測値を比較することにより、入力した観測値が各既存角度航跡のゲート内に入っている否かを調べ、観測値がどの角度航跡と相関可能であるかを決定し、相関可能な既存角度航跡と観測値のペアの全てを相関決定部15に出力する。(ステップA8)。
【0034】
次に、相関決定部15は、既存角度航跡と観測値を一意に対応付ける(ステップA9)。このとき、その対応付けの決定方針は以下とする。
(c1)ゲート内に入った観測値のみを既存角度航跡と対応付ける。
(c2)ゲート内に複数の観測値が入った場合は、既存角度航跡の最新の更新で使用した観測値が有する識別情報と一致する識別情報を有する観測値を最優先に対応付ける。
【0035】
図6に既存角度航跡と観測値の対応付けの例を示す。この例では、既存角度航跡T1_PASSのゲートに観測値O1_PASSとO2_PASSが入り、既存角度航跡T2_PASSのゲートに観測値O1_PASSとO2_PASSが入っている。そして、既存角度航跡T1_PASSの最新の更新に使われた観測値OT1_PASSと今回の観測値O1_PASSの識別情報が一致し、既存角度航跡T2_PASSの最新の更新に使われた観測値OT2_PASSと今回の観測値O2_PASSの識別情報が一致している。よって、観測値O1_PASSは既存角度航跡T1_PASSに、観測値O2_PASSは既存角度航跡T2_PASSにそれぞれ対応付けられる。
【0036】
次に、角度航跡生成部16は、対応付けられた観測値を使って角度航跡の更新を行う(ステップA10)。更新した角度航跡は角度航跡データベース17に保存すると共に、共通処理部の仮説照合部18に出力する。このように、角度航跡の更新は、相関仮説を作らずに行う。
【0037】
一方、位置情報追尾処理部4は、目標識別センサ装置3から入力した観測値の位置情報、及び航跡データベース8と仮説データベース9の情報を用いて、相関仮説の生成を行う(ステップA11〜A13)。この相関仮説の生成は、先に説明したレーダ装置2から入力した観測値に基づいた位置情報追尾処理部4の動作(ステップA3〜A5)と同様の動作であるので詳細な動作説明は省略する。なお、目標識別センサ装置3から入力した観測値の位置情報は、仰角と方位角からなる空間座標で表されているのに対して、航跡データベース8の既存航跡、及び仮説データベース9の既存仮説に含まれる位置情報は仰角と方位角と距離の空間座標で表されている。この為、観測値と既存航跡や既存仮説との対応関係を調べる際には、距離成分の観測値の代替として距離成分の予測値を使用して対応付けを行うようにする。位置情報追尾処理部4は生成した仮説とその信頼度を、共通処理部10の仮説照合部18に出力する。
【0038】
次に、仮説照合部18は、目標識別追尾処理部13が生成した角度航跡と位置情報追尾処理部4が生成した仮説の照合を行い、角度航跡に類似した仮説のみを残す(ステップA14)。この照合は、位置情報追尾処理部4で生成した全ての仮説について目標識別追尾処理部13が生成した角度航跡との照合度を計算し、照合度が高い仮説のみを選択し残すことにより行う。図7はステップA14の仮説照合をさらに詳細化した手順で示したものである。以下、例を使って仮説照合の方法を説明する。
【0039】
まず、生成した仮説に含まれる航跡と角度航跡に含まれる航跡の全ての組み合わせについて類似度を計算する(ステップB1)。ここで類似度は「角度航跡中の航跡に含まれている観測値の個数に対する、仮説中の航跡と角度航跡中の航跡の両方に含まれている観測値の個数の割合」と定義する。類似度の計算について、図8の仮説と図9の角度航跡を例にして説明する。図8の仮説には航跡T1_FUSと航跡T2_FUSの2つの航跡が含まれており、一方、図9の角度航跡には航跡T1_PASS、航跡T2_PASS、航跡T3_PASSの3つの角度航跡が含まれているので、3×2=6通りの組合せについて類似度を計算する。例えば、航跡T1_PASSと航跡T1_FUSの組合せでの類似度は、航跡T1_PASS中の観測値が5個で、そのうち航跡T1_FUSにも含まれている観測値が4個なので類似度は0.8(=4/5)と計算する。以下、各々の組合せについて類似度を計算すると表1の様になる。
【0040】
【表1】
【0041】
次に、計算した類似度を基に、角度航跡中の各航跡に対して、最も大きい類似度を実現する仮説側の航跡を対応付ける(ステップB2)。表1の類似度の場合、その対応は以下となる。
対応1:T1_PASS ⇔ T1_FUS
対応2:T2_PASS ⇔ T2_FUS
対応3:T3_PASS ⇔ T1_FUS
【0042】
次に、仮説の照合度を、この仮説に対応する類似度の積として計算する(ステップB3)。ここでの例では、対応1の類似度が0.8、対応2及び対応3の類似度がいずれも1.0なので、0.8×1.0×1.0=0.8がこの仮説の照合度となる。仮説照合部18は、以上の手順を繰り返すことにより、各仮説の照合度を計算する。
【0043】
次に、仮説の照合度に閾値を設け、その閾値以上の照合度を有する仮説を残し、閾値を下回る照合度を有する仮説を削除する(ステップB4)。例として図10の様な観測値が得られたとする。この例では、目標識別センサ装置3の観測値である識別情報から判断すると、2つの目標が存在して接近交差となる軌跡を描いている可能性が高いと考えられる。一方、これらの観測値に対応する仮説照合前の仮説群として図11の上段に示す3つの仮設があるとする。但し、交差する軌跡を描く第1仮説の信頼度が最も高く、第2仮説、第3仮説の順に信頼度が低下するものとする。また、図9の中段には、この仮説群の各仮説と目標識別センサ装置単体による角度航跡との照合度を示す。各仮説と照合度を比較すると、最も信頼度が高い仮説(仮説照合前の第1仮説)の照合度は0.25、仮説照合前の第2仮説、及びの第3仮説照合度はいずれも1.0となる。ここで照合度の閾値を0.5とすると図9の下段に示すように、接近離反の軌跡を描く仮説(仮説照合前の第2仮説)が最上位(仮説照合後の第1仮説)となり、仮説照合前の第3仮説が仮説照合後の第2仮説となる。
【0044】
このようにして、仮説の照合度を考慮することにより、仮説照合前の3つの仮説から、閾値以上の照合度を有する2つの仮説を選択することができる。こうして選択した仮説は、仮説選択統合部11へ出力される。
【0045】
なお、ステップB1「航跡の類似度計算」において、航跡に含まれる観測値の全てを類似度計算の対象としたが、ある一定時間以上前の過去の観測値は無視して、一定時間以内の最新の観測値のみを対象にして類似度を計算してもよい。また、最新の数観測時刻分の観測値のみを対象にして類似度を計算するようにしてもよい。
【0046】
また上記の説明では航跡に含まれている観測値の一致具合によって類似度を計算したが、平滑値の一致具合に基づいて類似度を計算してもよい。例えば、仮説に含まれる航跡の運動諸元推定値の角度成分をxhypo、その誤差共分散行列をPhypoとし、角度航跡の運動諸元推定値をxpass、その誤差共分散行列をPpassとして、類似度Λangを以下の様に計算する。
【0047】
【数2】
【0048】
また、仮説と角度航跡との類似度を、観測値を基に計算した類似度と平滑値を基に計算した類似度の積として計算してもよい。
【0049】
次に、仮説選択統合部11は、信頼度の低い仮説の削除と、類似する仮説の統合によって仮説群を縮小する(ステップA15)。仮説群を縮小する手法はステップA6で説明したものと同一であるので詳細な説明を省略する。このようにして選択統合して得た仮説群を航跡表示部12、及び仮説データベース9に出力する。仮説データベース9は選択、統合済みの仮説群を既存仮説と連携させて蓄積する。また、仮説群のいずれにも含まれていない既存航跡は以後の処理に不要なため、航跡データベース8から削除する処理を行う。
【0050】
最後に、航跡表示部12は、仮説選択統合部11が出力した仮説群の中からもっとも信頼度の値が大きい仮説について、その仮説に含まれる航跡をスクリーン等に表示させる(ステップA16)。
【0051】
以上説明したステップA8〜A16が、目標識別センサ装置3から1つの観測値を入力した際の一連の動作フローである。この後、次の観測値が入力されるまで待機し、次の観測値が入力されるとステップA1から次のサイクルの処理が実行される。
【0052】
なお、以上の説明では、目標識別追尾処理部13での処理(ステップA8〜A10)の後に、位置情報追尾処理部の処理(ステップA11〜A13)を実行するようにしたが、位置情報追尾処理部の処理(ステップA11〜A13)の後に目標識別追尾処理部13での処理(ステップA8〜A10)を実行するようにしてもよいし、目標識別追尾処理部13での処理(ステップA8〜A10)と位置情報追尾処理部の処理(ステップA11〜A13)を同時平行して処理するようにしてもよい。
【0053】
以上のように実施の形態1による多目標追尾装置は、目標の識別情報及び位置情報の観測値に基づいて生成した角度航跡を活用して、目標の位置情報の観測値のみに基づいて生成した目標航跡の仮説を取捨選択するようにしたので、誤った相関結果を導く可能性が低くなり、より信頼度が高く、正確な相関決定が可能な多目標追尾を実行することができる。
【0054】
実施の形態2.
飛翔体等の目標が自ら発する放射電波の形態を変更しながら、飛行する場合が考えられる。このような目標から得られる観測値の識別情報は、航跡の途中で遷移する場合があるが、識別情報の遷移に拘らず同一目標であると認識できることが望ましい。実施の形態2による多目標追尾装置は、相関仮説の選択統合処理において、識別情報の遷移が過去に観測された遷移と同一のものである場合、そのような遷移を含む仮説の信頼度は高いものとして処理することにより、1つの目標から得られる観測値の識別情報が変化する場合でも正しい相関結果を得ることができ、より正確な追尾処理を行うものである。
【0055】
図12は実施の形態1による多目標追尾装置の構成を示したものである。また、図13は、実施の形態2による多目標追尾装置1の動作フローを示したものである。図12及び図13において、図1及び図2と同一若しくは対応する部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。以下、図に基づいて多目標追尾装置1の動作を説明する
【0056】
動作フローにおける実施の形態1の多目標追尾装置との相違点は、目標識別センサ装置3から観測値を入力した場合の共通処理部10の動作であるのであるので、仮説照合(ステップA14)以降からの処理を説明する。仮説照合部18は、実施の形態1の場合と同様に、位置情報追尾処理部4が生成した相関仮説と目標識別追尾処理部13が生成した角度航跡とを照合する。そして、照合済みの選択された仮説を識別情報推移判定部19に出力する(ステップA14)。
【0057】
識別情報推移判定部19は、仮説照合部18が出力する仮説群のうちもっとも信頼度が高い仮説について、その仮説を構成する航跡の何れかにおいて相関した観測値の識別情報の変化が生じていないかを調べる。そして観測値の識別情報の変化を検出した場合は、識別情報遷移履歴データベース20にその遷移前と遷移後の識別情報を格納する。例えば図8に示した仮説が最も信頼度が高い仮説である場合、航跡T1_FUSで相関した目標識別センサ装置3の観測値の識別情報が途中で変化(四角形から五角形)しているため、識別情報推移判定部19はその変化を識別情報遷移履歴データベース20に格納する。次回以降の観測時刻の処理では、他の仮説にこの遷移と同様の遷移が起きた航跡を含む仮説が存在する場合、その仮説の信頼度を定数倍して他よりも優位となる方向に増加修正する。これにより、識別情報の遷移状態を加味して仮説の信頼度の修正を行うことができる。識別情報推移判定部19は、信頼度の修正済みの仮説を仮説選択統合部11へ出力する(ステップA17)。
【0058】
仮説選択統合部11は、実施の形態1の場合と同様に信頼度の低い仮説の削除と、類似する仮説の統合によって仮説群を縮小する(ステップA15)。この際、統合済みの仮説群のいずれにも含まれていない既存航跡に生じている識別情報の遷移は以後の処理に不要なため、識別情報遷移履歴データベース20から該当する遷移情報を削除する処理を行う。
【0059】
最後に、航跡表示部12が、仮説選択統合部11が出力した仮説群の中からもっとも信頼度の値が大きい仮説について、その仮説に含まれる航跡をスクリーン等に表示させる(ステップA16)。
【0060】
以上のように実施の形態2による多目標追尾装置は、相関仮説中の識別情報の遷移を記録し、過去と同様の遷移を起こした仮説を優先するように仮説の信頼度を修正するため、一つの目標から得られる観測値の識別情報が変化する場合でも正しい相関結果を得る確率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1による多目標追尾装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による多目標追尾装置の動作フローを示す図である。
【図3】既存航跡とゲート、観測値の説明図である。
【図4】相関仮説の例である。
【図5】既存仮説の例である。
【図6】目標識別センサ装置での追尾における既存航跡と観測値の例である。
【図7】仮説照合の手順を示す図である。
【図8】仮説における既存航跡と観測値の例である。
【図9】角度航跡における既存航跡と観測値の例である。
【図10】レーダ装置の観測値と目標識別センサ装置の観測値の例である。
【図11】仮説照合前後の仮説群の例である。
【図12】本発明の実施の形態2による多目標追尾装置の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態2による多目標追尾装置の動作フローを示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1:多目標追尾装置、2:レーダ装置、3:目標識別センサ装置、4:位置情報追尾処理部、5:観測値選別部、6:航跡生成、7:相関仮説生成部、8:航跡データベース、9:仮説データベース、10:共通処理部、11:仮説選択統合部、12:航跡表示部12、13:目標識別追尾処理部、14:観測値選別部、15:相関決定部、16:角度航跡生成部、17:角度航跡データベース、18:仮説照合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標の位置情報からなる観測値を用いて目標航跡を含む仮説群を生成する位置情報追尾処理部と、目標の位置情報と目標の識別情報を用いて目標の角度航跡を生成する目標識別追尾処理部と、前記仮説群に含まれる仮説と前記角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う仮説照合部と、信頼度の低い仮説の削除、及び類似する仮説の統合によって前記仮説群を縮小する仮説選択統合部とを備えたことを特徴とする多目標追尾装置。
【請求項2】
仮説照合部は、仮説に相関する観測値と角度航跡に相関する観測値とを比較することにより前記仮説と前記角度航跡との類似度を計算することを特徴とする請求項1記載の多目標追尾装置。
【請求項3】
仮説照合部は、最新の数観測時刻分の観測値のみを対象にして類似度を計算することを特徴とする請求項2記載の多目標追尾装置。
【請求項4】
仮説照合部は、仮説と角度航跡の平滑値を基に類似度を計算することを特徴とする請求項1記載の多目標追尾装置。
【請求項5】
仮説照合部は、観測値を基に計算した類似度と平滑値を基に計算した類似度の積を、仮説と角度航跡との類似度とすることを特徴とする請求項1記載の多目標追尾装置。
【請求項6】
目標の位置情報からなる観測値を用いて目標航跡を含む仮説群を生成する位置情報追尾処理部と、目標の位置情報と目標の識別情報を用いて目標の角度航跡を生成する目標識別追尾処理部と、前記仮説群に含まれる仮説と前記角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う仮説照合部と、仮説に含まれる航跡に相関する観測値の識別情報の変化が、過去に検出した識別情報の変化と同一の場合には、前記仮説の信頼度を増加させる識別情報推移判定部と、信頼度の低い仮説の削除、及び類似する仮説の統合によって前記仮説群を縮小する仮説選択統合部とを備えたことを特徴とする多目標追尾装置。
【請求項7】
目標の位置情報からなる観測値を用いて目標航跡を含む仮説群を生成する位置情報追尾処理手段と、目標の位置情報と目標の識別情報を用いて目標の角度航跡を生成する目標識別追尾処理手段と、前記仮説群に含まれる仮説と前記角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う仮説照合手段と、信頼度の低い仮説の削除、及び類似する仮説の統合によって前記仮説群を縮小する仮説選択統合手段とを備えたことを特徴とする多目標追尾方法。
【請求項8】
目標の位置情報からなる観測値を用いて目標航跡を含む仮説群を生成する位置情報追尾処理手段と、目標の位置情報と目標の識別情報を用いて目標の角度航跡を生成する目標識別追尾処理手段と、前記仮説群に含まれる仮説と前記角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う仮説照合手段と、仮説に含まれる航跡に相関する観測値の識別情報の変化が、過去に検出した識別情報の変化と同一の場合には、前記仮説の信頼度を増加させる識別情報推移判定手段と、信頼度の低い仮説の削除、及び類似する仮説の統合によって前記仮説群を縮小する仮説選択統合手段とを備えたことを特徴とする多目標追尾方法。
【請求項1】
目標の位置情報からなる観測値を用いて目標航跡を含む仮説群を生成する位置情報追尾処理部と、目標の位置情報と目標の識別情報を用いて目標の角度航跡を生成する目標識別追尾処理部と、前記仮説群に含まれる仮説と前記角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う仮説照合部と、信頼度の低い仮説の削除、及び類似する仮説の統合によって前記仮説群を縮小する仮説選択統合部とを備えたことを特徴とする多目標追尾装置。
【請求項2】
仮説照合部は、仮説に相関する観測値と角度航跡に相関する観測値とを比較することにより前記仮説と前記角度航跡との類似度を計算することを特徴とする請求項1記載の多目標追尾装置。
【請求項3】
仮説照合部は、最新の数観測時刻分の観測値のみを対象にして類似度を計算することを特徴とする請求項2記載の多目標追尾装置。
【請求項4】
仮説照合部は、仮説と角度航跡の平滑値を基に類似度を計算することを特徴とする請求項1記載の多目標追尾装置。
【請求項5】
仮説照合部は、観測値を基に計算した類似度と平滑値を基に計算した類似度の積を、仮説と角度航跡との類似度とすることを特徴とする請求項1記載の多目標追尾装置。
【請求項6】
目標の位置情報からなる観測値を用いて目標航跡を含む仮説群を生成する位置情報追尾処理部と、目標の位置情報と目標の識別情報を用いて目標の角度航跡を生成する目標識別追尾処理部と、前記仮説群に含まれる仮説と前記角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う仮説照合部と、仮説に含まれる航跡に相関する観測値の識別情報の変化が、過去に検出した識別情報の変化と同一の場合には、前記仮説の信頼度を増加させる識別情報推移判定部と、信頼度の低い仮説の削除、及び類似する仮説の統合によって前記仮説群を縮小する仮説選択統合部とを備えたことを特徴とする多目標追尾装置。
【請求項7】
目標の位置情報からなる観測値を用いて目標航跡を含む仮説群を生成する位置情報追尾処理手段と、目標の位置情報と目標の識別情報を用いて目標の角度航跡を生成する目標識別追尾処理手段と、前記仮説群に含まれる仮説と前記角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う仮説照合手段と、信頼度の低い仮説の削除、及び類似する仮説の統合によって前記仮説群を縮小する仮説選択統合手段とを備えたことを特徴とする多目標追尾方法。
【請求項8】
目標の位置情報からなる観測値を用いて目標航跡を含む仮説群を生成する位置情報追尾処理手段と、目標の位置情報と目標の識別情報を用いて目標の角度航跡を生成する目標識別追尾処理手段と、前記仮説群に含まれる仮説と前記角度航跡との類似度を計算することにより、前記仮説群に含まれる仮説の取捨選択を行う仮説照合手段と、仮説に含まれる航跡に相関する観測値の識別情報の変化が、過去に検出した識別情報の変化と同一の場合には、前記仮説の信頼度を増加させる識別情報推移判定手段と、信頼度の低い仮説の削除、及び類似する仮説の統合によって前記仮説群を縮小する仮説選択統合手段とを備えたことを特徴とする多目標追尾方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−122093(P2008−122093A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302926(P2006−302926)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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