多目的トイレユニット
【課題】車椅子使用者やオストメイトなどにとっても使い勝手のよい多目的トイレユニットを提供する。
【解決手段】トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた第1のライニングと、第2のライニングと、前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、前記便器の着座部分と、前記第1のライニングの上面との高さの差が、300mm以上、400mm以下であること、を特徴とする多目的トイレユニットが提供される。
【解決手段】トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた第1のライニングと、第2のライニングと、前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、前記便器の着座部分と、前記第1のライニングの上面との高さの差が、300mm以上、400mm以下であること、を特徴とする多目的トイレユニットが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車椅子使用者などが利用するのに適した多目的トイレユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
下肢に麻痺などを有する人が利用する多目的トイレユニットは、車椅子で出入りすることができ、また、車椅子が多目的トイレユニットの内部で旋回できる必要がある。そして、配設された便器、手洗い器、手すり、洗面器などへのアプローチを容易に行い得るように構成する必要がある。
【0003】
そのため、車椅子使用者などが利用するのに際して、使い勝手に優れたトイレユニットが提案されている(特許文献1を参照)。
また、人工肛門や人工膀胱などの保持者であるオストメイトと呼ばれる人々は、身体の腹部に排泄物(以下、汚物という)を溜めておくための袋、いわゆるパウチを装着しており、時折、トイレにおいて溜まった汚物を廃棄したり、パウチの内面、ストーマ(腹部に造設された排泄口)、ストーマ付近の腹部などに付着した汚物を洗い流すなどの作業を行う必要がある。
【0004】
近年、オストメイトが外出先で気兼ねをすることなくこれらの作業を行うことのできる施設が、車椅子使用者などが利用をする多目的トイレにも備えられるようになってきている。
そのため、多目的トイレにも、便器とは別に専用の汚物流しユニットが設けられるようになってきており、この汚物流しユニットには、ボウルを設置するためのキャビネット、ボウルの上方に設けられたシャワーユニットを有する水栓、ボウルに投入された汚物を排出させるためのフラッシュバルブ、液体石鹸供給器などが備えられている(特許文献2を参照)。
【0005】
ここで、特許文献1に開示された技術においては、便器の背後に背の高い配管ユニットケースが配設されており、この配管ユニットケースが邪魔になって、便器へのアプローチなどが容易に行えないおそれがあった。また、手洗い器、手すり、操作ボタン、洗面器なども背の高い配管ユニットケースに配設されており、これらへのアプローチも容易に行えないおそれがあった。
また、特許文献2に開示された技術においても、背の高いキャビネットが配設されており、これの上面を物の置き場に利用するものとすれば、オストメイトが廃棄・洗浄作業をする位置から手が届かなくなるおそれがあった。
【0006】
また、ボウルの上方に水栓などを設けるようにすれば、目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓などが介在することになる。そのため、水栓などにより視線が遮られて作業の視認性が損なわれる場合もあった。
【特許文献1】特開平6−108677号公報
【特許文献2】特開2004−283394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車椅子使用者やオストメイトなどにとっても使い勝手のよい多目的トイレユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面とが遮蔽された第1のライニングと、前記トイレブースの前記第1の壁面と略直行する第2の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面と底面とが遮蔽された第2のライニングと、前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、前記第1のライニングの前面の前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、前記第2のライニングと前記便器との間に設けられ、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、前記便器の側方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、前記便器の前方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、前記便器の着座部分と、前記第1のライニングの上面との高さの差が、300mm以上、400mm以下であること、を特徴とする多目的トイレユニットが提供される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面とが遮蔽された第1のライニングと、前記トイレブースの前記第1の壁面と略直行する第2の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面と底面とが遮蔽された第2のライニングと、前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、前記第1のライニングの前面であって、前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、前記第2のライニングと前記便器との間に設けられ、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、前記便器の側方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、前記便器の前方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、前記便器に着座した人が前記第1のライニングの方向に向けてのけぞった場合には、前記第1のライニングの上面の上方であって、前記第1のライニングの前面と前記第1の壁面との間に形成された空間に、前記着座した人の少なくとも肩甲骨より上の部位が侵入可能とされていること、を特徴とする多目的トイレユニットが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車椅子使用者やオストメイトなどにとっても使い勝手のよい多目的トイレユニットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をする。
図1は、本発明の実施の形態に係る多目的トイレユニットを例示するための模式斜視図である。
図1に示すように、多目的トイレユニット1には、多目的トイレユニット1が備えられるトイレブースなどの壁面から突出するようにして設けられた第1のライニング6、第1のライニング6の前面に設置された便器2、便器2の上方であって第1のライニング6の上端部付近に設けられた背もたれ3、便器2の右側上方であって第1のライニング6の前面に設けられた跳ね上げ手すり4、第1のライニング6が設けられたトイレブースの壁面と略直行する壁面から突出するようにして設けられたライニング5、便器2の左側上方であって第2のライニング5の上面に設けられた手洗い器7、一端が第2のライニング5の前面に設けられ他端がトイレブースなどの壁面に設けられた固定手すり8、固定手すり8の水平部8aの下方であって第2のライニング5の前面に設けられたトイレットペーパーホルダー9、固定手すり8の水平部8aの上方であって第2のライニング5の前面の上端近傍に設けられた操作手段10、便器2の前方であって第2のライニング5の上面に設けられた洗面器11、洗面器11の上方であってトイレブースなどの壁面に設けられた鏡13、跳ね上げ手すり4の右側であって第1のライニング6の前面に設けられた汚物流しユニット14のボウル30、ボウル30の上方であってライニング6の上面に設けられるキャビネット34、キャビネット34の前面に設けられた鏡35などが備えられている。
また、便器2の対角位置(便器2から最も遠い位置)には、多目的トイレユニット1の出入り口1aが設けられている。
【0012】
図2は、便器2を例示するための模式断面図である。
便器2は、いわゆる「壁掛け式」の水洗便器であり、第1のライニング6の前面に設けられている。
【0013】
便器2は、例えば、陶器、合成樹脂、合成樹脂にセラミック材、陶器粉を混入させたものなどからなるものとすることができる。
図2に示すように、便器2の給水口20には、ライニング6の内部に隠蔽される導水部21が接続されている。また、導水部21の上方にはフラッシュバルブ22が設けられ、フラッシュバルブ22を介して図示しない給水源と導水部21とが接続されている。
【0014】
便器2の開口縁部にはリム23が設けられ、リム23の内部にはリム通水路23bが設けられている。また、リム23は便器2の内部に向けて張り出すようにして設けられ、リム23の下面にはリム通水路23bに連通する複数の吐水口23aが設けられている。
【0015】
そのため、フラッシュバルブ22を操作することにより、水タンクなどの給水源から水道水などの水がリム通水路23bに供給され、吐水口23aから便器2の内部に向けて吐水されるようになっている。
【0016】
便器2の排水口2aには、排水管24が接続されており、便器2の内部に吐水された水を汚物とともに外部(例えば、下水管など)に排出できるようになっている。また、便器2の下部には封水部25が設けられている。そのため、便器2の内部と排水管24とを封水部25を介して連通させることで、悪臭の発生を抑制しつつ汚物の排出ができるようになっている。
【0017】
また、便器2には、開閉自在の便座2bが設けられている。そして、これらの他にも、いわゆる「衛生洗浄装置」などを適宜設けるようにすることができる。尚、便器2の開口部分を覆うような位置に便座2bがあるとき(便座2bが閉じているとき)には、便座2bの上面が便器2の着座部分となる。
【0018】
尚、説明の便宜上、便器2を「壁掛け式」の水洗便器としたが、トイレブースの床面などに設けられる「床置き式」の水洗便器とすることもできる。そのため、便器2は、ライニング6の「前方」に設けるようにすればよい。この場合、「前方」には、図1に示したようなライニング6の前面に当接させるようにして設けたもののみならず、スペースを有して便器2とライニング6とを近接させて設けるようにしたものをも含む。
【0019】
ライニング6の下方に設けられた固定部材26は、下端面側を図示しない固定ボルトなどでトイレブースなどの床面に固着されている。そして、トイレブースなどの床面と略垂直となる面には、第1のライニング6の前面板を介して、便器2が図示しない固定ボルトなどで固着されている。
便器2の上方であって第1のライニング6の上端部付近には、背もたれ3が設けられている。そのため、使用者が便器2に座ったときには、背もたれ3に背中をもたせることができるので、楽な状態で便器2を使用することができる。また、背もたれ3は、クッション性を持たせるために軟質材料などからなるものとすることができる。尚、背もたれ3は必ずしも必要ではなく省くこともできる。ただし、背もたれ3を設けるものとすれば、着座時に背中をもたせるのみならず、後述する「馬乗り」動作の際にも利用することができる。
【0020】
図3は、跳ね上げ手すり4を例示するための一部切欠模式断面図である。
跳ね上げ手すり4は、第1のライニング6の前面板に跳ね上げ手すり4を固着するための取付板4a、ステンレス製のU字管を樹脂で被覆した樹脂被覆管4b、取付板4aに設けられ樹脂被覆管4bを回動自在に保持する跳ね上げユニット4c、跳ね上げユニット4cに内蔵され樹脂被覆管4bを上方に向かって付勢する図示しない付勢手段、樹脂被覆管4bを回動させる場合に回動端における衝撃を吸収するための緩衝部材4d、4eなどを備えている。尚、樹脂被覆管4bは樹脂で被覆がされていないステンレス製のU字管とすることもできる。
【0021】
跳ね上げ手すり4を図中上方に持ち上げるようにして跳ね上げれば、樹脂被覆管4bは跳ね上げユニット4cを回転中心として上方に回動する。このとき、樹脂被覆管4bの一端は緩衝部材4eから離隔する。
【0022】
また、所望の位置で跳ね上げ手すり4を離した場合には、跳ね上げユニット4cに内蔵されている図示しない付勢手段により、跳ね上げ手すり4は所望の位置で保持されるようになっている。そして、回動の上方の回動端においては、U字管部分が緩衝部材4dと当接する。また、跳ね上げ手すり4を図中下方に回動させれば、下方の回動端において樹脂被覆管4bの一端が緩衝部材4eと当接する。また、回動端においては、樹脂被覆管4bと緩衝部材4d、4eとが当接することで回動による衝撃が吸収されるようになっている。
尚、手すりは便器2の側面側であって、着座部分より上方に設けられていればよい。ただし、樹脂被覆管4bの上側パイプの高さを後述する固定手すり8の水平部8aと同じ高さ(中心位置が床面から650mm程度)とすることが好ましい。そのようにすれば、固定手すり8の水平部8aとともに、さらに容易に体を支えることができる。
【0023】
また、跳ね上げ手すり4をスイング式(水平方向に回動するタイプ)、固定式の手すりとすることもできる。ただし、多目的トイレユニット1の内部スペースの有効活用の観点からは、跳ね上げ式とすることが好ましい。また、便器の両側面に手すりが設けられているようにすれば(例えば、跳ね上げ手すり4と固定手すり8)、車椅子から便器への移動の際の姿勢の安定性を大幅に向上させることができる。この場合、少なくともいずれか一方は跳ね上げ手すりとすることが好ましい。
【0024】
図4は、手洗い器7を例示するための模式斜視図である。
手洗い器7は、第2のライニング5の上面に埋め込むようにして設けられている。手洗い器7は、平面視が矩形をなし、下部に設けられているボウル部7aは漏斗状を呈している。そして、ボウル部7aの最も低い部分に排水口7bが設けられ、排水口7bには図示しない排水トラップを介して、これも図示しない排水管が接続されている。
【0025】
また、ボウル部7aの開口縁部にはリム部7cが形成され、手洗い器7の背面側の面、および左右の側の面は、上方に延長されて垂直な起立壁としての壁部7d、壁部7eを一体に形成している。そして、この壁部7d、壁部7eが手洗い器7の水跳ね防止壁を形成する。そのため、ライニング5の上面方向および前面方向に大きな開口を有することになる。
【0026】
壁部7dの上部には、水栓7fが手洗い器7の内部方向に向かって突出するようにして設けられている。尚、水栓7fは、手洗い器7の内壁面に設けられていればよく、壁部7eから手洗い器7の内部方向に向かって突出するようにして設けられていてもよい。
【0027】
水栓7fの先端部には、下方に向かって吐水をすることができる吐水口7gが設けられている。また、水栓7fは、第2のライニング5の内部に隠蔽されている図示しない給水源と接続されている。
【0028】
水栓7fは、いわゆるスイッチ水栓とすることができる。そのため、水栓7fのヘッド部(先端部)を押すことで吐水をさせることができ、再度ヘッド部を押すことで吐水を停止させることができる。そして、手洗い器7の内側に吐水された水道水などの水は、ボウル部7aに設けられた排水口7bより外部に向けて排出される。
尚、吐水の形態は、例えば、シャワー状の吐水などとすることができるが、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。また、水石鹸を吐出させる液体石鹸供給器などを設けるようにすることもできる。
【0029】
本実施の形態における手洗い器7は、手洗い器7の上面側のみならず、前面側にも大きな開口を有している。そのため、便座2bに着座しているときのような低い姿勢からでも、手洗い器7の内部に容易に手先を挿入することができる。また、手先を挿入する前面と上面以外は、高い起立壁としての壁部7d、壁部7eで囲まれており、水栓7fも手洗い器7の内側に設けられているので、例えば、荷物を置くのに利用をするライニング5の上面が濡れることを抑制することができる。
【0030】
また、手洗い器7は、ライニング5の上面に埋め込むようにして設けられている。そして、後述するように、ライニング5の上面の高さも便器2に着座しているときの低い姿勢が考慮されている。そのため、設置位置が高くなることを抑制することができ、手洗い器7の内部に容易に手先などを挿入することができる。また、ライニング5の上面との一体感を増して煩雑感を低減させることもできる。
【0031】
図1に示すように、固定手すり8は、断面が円形のパイプ状部材とすることができる。固定手すり8には、便器2の左側の上方に略水平に設けられた水平部8aと、水平部8aと連接し便器2の前方で略垂直方向に立ち上がる垂直部8bと、垂直部8bと連接しトイレブースなどの壁面に向かって延在する固定部8cと、が設けられている。そして、水平部8aの一端が第2のライニング5の前面に固着され、固定部8cの一端がトイレブースなどの壁面に固着されている。
【0032】
また、水平部8aは、その中心位置が床面から650mm程度の高さに設置され、便座2bに着座した姿勢で体を支えるのに適した高さとなっている。そのため、水平部8aを握ったり、水平部8aの上に手や腕を載置したりすることで、容易に体を支えることができる。そして、便器2から離反する場合においては、垂直部8bを握ることで容易に体を起こし立ち上がることができるようになっている。
尚、固定手すり8を可動式(例えば、跳ね上げ式)のものに置き換えることもできる。ただし、スペース効率、生産コストなどの観点からは、壁面側(ライニング5側)の手すりは固定式とすることが好ましい。
【0033】
トイレットペーパーホルダー9は、便器2の前方であって、水平部8aの下方に設けられている。そのため、便座2bに着座した状態でトイレットペーパーを取り出すことができ、かつ、水平部8aを握るなどする場合に邪魔にならないようになっている。
【0034】
図5は、操作手段10、非常呼び出し手段10aを例示するための模式図である。
また、図5(a)は操作手段10、非常呼び出し手段10aの配設を例示するための模式図であり、図5(b)は、操作手段10、非常呼び出し手段10aを例示するための模式図、図5(c)は、図5(a)におけるA−A矢視断面図である。尚、前述のものと同様の部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0035】
図5(a)に示すように、操作手段10は、便器2の側方であって、ライニング5の上端近傍に設けられている。また、操作手段10の下方には固定手すり8の水平部8aが配設されている。
【0036】
図5(b)に示すように、操作手段10には各種の操作を行うための操作部を設けるようにすることができる。
具体的には、いわゆる「衛生洗浄装置」の各動作の指令(例えば、局部洗浄の開始またはその停止、温風の送風またはその停止、洗浄位置の調整、吐水強さの調整)をするためのスイッチや、局所照明のON/OFFをするためのスイッチ、暖房のON/OFFをするためのスイッチなどを例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく、多目的トイレユニット1に備えられる各種の装置、器具などの操作や調整を行うためのスイッチを適宜設けるようにすることができる。
【0037】
尚、操作手段10は必ずしも必要ではなく、例えば、「衛生洗浄装置」などが設けられていないような場合には省くこともできる。
【0038】
また、操作手段10とともに、または、操作手段10に代えて、非常呼び出し手段(スイッチ)10aを設けるようにすることもできる。尚、操作手段10と非常呼び出し手段10aとを一体化させることもできる。
【0039】
また、各種の操作を行うための操作部は、水平方向(横方向)に並ぶようにして連設されており、非常呼び出し手段10aも操作手段10と水平方向(横方向)に並ぶようにして設けられている。尚、図5に示したものでは、操作手段10の右側に非常呼び出し手段10aを設けるようにしているが、操作手段10の左側に設けるようにすることもできる。
【0040】
本実施の形態においては、固定手すり8の水平部8aの上方に操作手段10や非常呼び出し手段10aを設けるようにしているので、例えば、使用者がリウマチなどにより、指による操作が困難な場合であっても、水平部8aの上面に手や腕を置くことで不随意運動を抑えて、拳、指の関節部分、手の甲などによる操作が可能となる。
また、操作手段10や非常呼び出し手段10aは、ライニング5の上端近傍に設けられているので、例えば、使用者が手に麻痺を有する者であっても、カウンタ5の上面に手や腕を置くことでこれらを支え不随意運動を抑えて、手首を回転させることで操作をすることが可能となる。
また、各種の操作を行うための操作部は、横方向(水平方向)に並べられ、非常呼び出し手段10aも操作手段10の横に設けられているので、水平部8aやライニング5の上面に置いた手や腕をこれらに沿わせるようにして横方向に移動するだけで各種の操作を容易にすることができる。
【0041】
ここで、操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作性を向上させるためには、ライニング5の上面や水平部8aから操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作面までの鉛直方向(高さ方向)寸法、水平部8aから操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作面までの水平方向の寸法が重要となる。
【0042】
本発明者は検討の結果、図5(c)に示すように、ライニング5の上面から水平部8aの中心までの寸法Hを150mm以下とし、この範囲以内に操作手段10や非常呼び出し手段10aを設けるようにすれば、これらの操作性を向上させることができるとの知見を得た。
【0043】
また、水平部8aから操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作面までの水平方向の寸法Lを40mm以上、150mm以下とすれば、水平部8a側からの操作性を向上させることができるとの知見をも得た。この場合、寸法Lを40mm以上、70mm以下とすれば、水平部8aを握りながら指などで操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作をするのに好適である。また、寸法Lを70mm以上、150mm以下とすれば、水平部8aの上面に手や腕を置いて、拳、指の関節部分、手の甲などで操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作をするのに好適である。
洗面器11は、便器2の前方であって第2のライニング5の上面に埋め込むようにして設けられている。洗面器11は、平面視が矩形をなし、下部に設けられているボウル部11aは漏斗状を呈している。そして、ボウル部11aの最も低い部分には図示しない排水口が設けられ、図示しない排水口にはこれも図示しない排水トラップを介して排水管が接続されている。
【0044】
また、ボウル部11aの開口縁部にはリム部11cが形成され、洗面器11の背面側の面は、上方に延長されて垂直な起立壁としての壁部11dを一体に形成している。
【0045】
壁部11dの上部には、水栓12が洗面器11の内部方向に向かって突出するようにして設けられている。
【0046】
水栓12の先端部には、下方に向かって吐水をすることができる図示しない吐水口が設けられている。また、水栓12は、第2のライニング5の内部に隠蔽されている図示しない給水源と接続されている。
【0047】
水栓12は、いわゆるスイッチ水栓とすることができる。そのため、水栓12のヘッド部(先端部)を押すことで吐水をさせることができ、再度ヘッド部を押すことで吐水を停止させることができる。そして、洗面器11の内側に吐水された水道水などの水は、ボウル部11aに設けられた図示しない排水口より外部に向けて排出される。
【0048】
また、水栓12を複数設けて、一部を温水用の水栓とすることもできるし、水栓12を湯水混合水栓とすることもできる。
また、吐水の形態は、例えば、シャワー状の吐水などとすることができるが、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。また、水石鹸を吐出させる液体石鹸供給器などを設けるようにすることもできる。
【0049】
本実施の形態における洗面器11は、ライニング5の上面に埋め込むようにして設けられている。また、後述するように、ライニング5の上面の高さも便器2に着座しているときの低い姿勢が考慮されている。そのため、設置位置が高くなることを抑制することができ、車椅子に乗車しているときのような低い姿勢からでも、洗面器11の内部に容易に手などを挿入することができる。また、ライニング5の上面との一体感を増して煩雑感を低減させることもできる。
【0050】
洗面器11の上方であってトイレブースなどの壁面には鏡13も設けられている。尚、鏡13は必ずしも必要ではなく、必要に応じて適宜設けるようにすることができる。
【0051】
跳ね上げ手すり4の右側には、主にオストメイトが使用する汚物流しユニット14が備えられている。
汚物流しユニット14には、ライニング6の前面に設置されたボウル30、ボウル30の上部開口付近の内壁に設けられた水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33、ボウル30の上方であってライニング6の上面に設けられたキャビネット34、キャビネット34の前面に設けられた鏡35などが備えられている。
図6は、ボウル30を例示するための模式図であり、図6(a)は模式平面図、図6(b)は模式正面図である。
また、図7は、ボウルの設置を例示するための模式断面図である。
ボウル30は、例えば、陶器、合成樹脂、合成樹脂にセラミック材、陶器粉を混入させたものなどからなるものとすることができる。
【0052】
図6、図7に示すように、ボウル30は、汚物の洗浄や投入がしやすいように上面が大きく開口され、前面110にはリップ部108が設けられている。リップ部108は、背の高いオストメイトであってもこのリップ部108に腹部を押し当てて容易に汚物の処理ができるような形状となっている。すなわち、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態で汚物を処理している最中に汚物が漏出しても汚物がボウル30の中に自然に入っていくように、ボウル30の外側に向けて凸状に湾曲した形状となっている。
【0053】
また、リップ部108は、ボウル30の溢れ面を形成している。ここでいう溢れ面とは、ボウル30の排水部109が詰まった時などに、ボウル30の外に汚水が流れ出す面のことである。このような溢れ面が形成されていると、排水部109が詰まるという異常事態が起きても、汚水は溢れ面から外に流れ出すので、他の部分が汚れることを抑制することができる。本実施の形態においては、図7に示すように、ボウル30の上面形状が前面110の方向(オストメイトが作業する側)に向けて下方傾斜をしているため前面110の側にあるリップ部108の高さが上面では一番低くなり、リップ部108が溢れ面となる。そのため、排水部109が詰まるという異常事態が起きても、汚水がライニング6の側に流れ出ることがなく、ライニング6やトイレブースの壁面などが汚れるのを抑制することができる。
【0054】
また、ボウル30の前面110(オストメイトが作業する側の面)は、下方になるに従いボウル30の背面側(前面110と対向する側の面)に近づくような方向に傾斜をしている。そのため、図7に示すように、ボウル30の下部に空間111が形成されるようになる。そして、この空間111に膝などを入れることで、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態で汚物の廃棄や洗浄などの作業をすることが容易となる。
また、ボウル30の側面112a、側面112bはボウル30の軸線に略平行な平面となっている。そのため、側面112a、側面112bを膝などで抱きかかえるようにして挟むこともできる。そして、側面112a、側面112bを膝などで挟むことができれば、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態で汚物の廃棄や洗浄などの作業をする際の作業の安定性を向上させることができる。
【0055】
図7に示すように、ボウル30の下部には封水部113が設けられている。そして、ボウル30の内部と排水部109とを封水部113を介して連通させることで、悪臭の発生を抑制しつつ汚物の排出ができるようになっている。尚、排水部109は図示しない排水管と接続されており、汚物が外部(例えば、下水管など)に排出できるようになっている。
ボウル30の前面110と対向する側の面には、開口縁部に連接する傾斜面115が設けられている。また、傾斜面115には、水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などを取り付けるための孔114が設けられている。そして、孔114に取り付けられた水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などの上端部分が、オストメイトが作業する側(前面10の側)の上方に向けて突出するようになっている。そのため、水栓31などを操作する際の作業性を向上させることができる。また、水栓31、液体石鹸供給器32などの吐水口をボウル30の内部に位置するようにすることができるので、オストメイトが汚物の廃棄や洗浄などの作業を行う際に汚物がボウル30の外部に飛び散ることを抑制することができる。
【0056】
尚、傾斜面115は必ずしも必要ではなく、水栓31などをボウルの上部開口付近の内壁(例えば、略垂直な内壁)に備えるようにすることもできる。ただし、傾斜面115を設けて、そこに水栓31などを備えるものとすれば、前述したように水栓31などを操作する際の作業性を向上させることができる。
【0057】
また、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33は、必ずしも傾斜面115に備えられている必要はない。例えば、ボウル30の上方のキャビネット34やライニング6などに備えるようにすることもできる。ただし、これらを傾斜面115に備えるようにすれば、移動を伴わずともこれらのものに手が届くので、オストメイトにとって使い易いシステムとすることができる。
【0058】
本実施の形態においては、このようにボウル30の背面側の上部開口付近の内壁に水栓31などの装置を備えるようにしているため、オストメイトが行う汚物の廃棄や洗浄などの作業の高さ方向位置と水栓31などの装置の高さ方向位置とを近接させることができる。すなわち、作業位置と作業に用いられる水栓31などの位置とを同一平面に近い状態とすることができる。そのため、オストメイトの目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓31などが介在することを極力抑制することができる。その結果、オストメイトの視線が遮られないので作業の視認性を大幅に向上させることができる。また、作業位置と作業に用いられる水栓31などの位置とが同一平面に近い状態にあるので、水栓31などの装置同士の間の隙間(例えば、水栓31と液体石鹸供給器32との間の隙間、水栓31とフラッシュバルブの操作部33との間の隙間)を通して作業を視認することも容易となる。
【0059】
また、水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などの装置をボウル30に直接設けるようにしているため、汚物流しユニット14の設置スペースを少なくすることもできる。オストメイトが使用をする汚物流しユニット14が備えられる多目的トイレは、駅のトイレや街の公衆トイレなどのパブリックスペースに設置されることが多い。このような、パブリックスペースなどでは、比較的狭いスペースしか確保できない場合もあるが、本実施の形態に係る汚物流しユニット14はそのような場所にも設置が可能となる。
【0060】
また、図7に示すように、ボウル30の上部の開口縁部にはリム部116が設けられている。そして、このリム部116の内壁面は、ボウル30の内壁面となだらかに連接するようになっている。また、リム部116の内壁面には、ボウル30内に噴出された水の旋回流を形成させるための案内部116aが設けられている。尚、案内部116aはその断面を凹状として、旋回流を形成させやすくすることもできる。
ボウル30には、案内部116aに向けて水道水などの水を噴出する噴出口116bが設けられ、噴出口116bには図示しない水タンクなどの給水源が接続されている。また、フラッシュバルブの操作部33を操作することにより、水タンクなどの給水源から水道水などの水が噴出口116bを介して案内部116aに噴出されるようになっている。そして、水道水などの水は、噴出口116bから水平方向に噴出され、噴出された水は案内部116aに沿ってボウル30の上縁部分をほぼ一周旋回しながら、ボウル30の壁面などに付着した汚物を封水113の内へ流し込む。すなわち、ボウル30内に噴出された水は案内部116aに沿うようにして旋回流を形成し、ボウル30の壁面などに付着した汚物を除去しつつ封水113の内へ流れ込む。封水113の中に流れ込んだ汚物はボウル30内に噴出された水とともに排水部109から外部に排出される。
【0061】
本実施の形態におけるリム部116の内壁面は、ボウル30の内壁面となだらかに連接するようになっている。そのため、内面壁に突出部や張り出し部がなく、突出部や張り出し部により水流が遮られるために汚物が付着しやすかったり、また、除去と清掃がし難いような部分が存在しない。また、汚物が付着、残留しやすいボウル30の上部には、洗浄と排出のための旋回流を形成させるようにしているので、ボウル30内に付着、残留する汚物を大幅に低減させることができる。その結果、清掃の手間を削減することができ、また、衛生面にも優れた汚物流しユニット14とすることができる。
本実施の形態においては、ボウル30の背面側の上面高さ(ボウル30の最も高い部分の高さ)と、ライニング6の上面高さとを近接させたものとしている。すなわち、ボウル30の上面と、ライニング6の上面とが近接する高さの位置となるようにしている。例えば、図7に例示をしたものでは、ボウル30の背面側の上面と、ライニング6の上面とが略同一の高さの位置となるようにしている。ただし、必ずしも同一高さとする必要はなく、両者の高さ方向の位置関係が近接していればよい。尚、後述する鏡35による視認性、扉34aの前方に形成されるスペースの有効利用などを考慮すれば、両者の高さが略同一か、ボウル30の背面側上面の高さの方が若干低くなるようにすることが好ましい。このように両者の高さを近接させたものとすれば、オストメイトが廃棄・洗浄作業をする高さ方向の位置と、ライニング6の上面の高さ位置とを極力近接させることができる。
【0062】
そのため、ライニング6の上面を、オストメイトが行う一連の作業に必要となるもの(例えば、タオルや着替えなど)を一時的に置く場所として利用するのに適した高さ、すなわち、オストメイトが行う作業姿勢のままでもこれらのものに手が届く高さとすることができる。その結果、オストメイトにとって使い易いシステムとすることができる。
【0063】
ここで、ライニング6の上面の高さ寸法を後述するもののようにすれば、オストメイトが廃棄・洗浄作業をする姿勢のままで物を置いたり、取ったりすることが容易となる。そして、ライニング6の上面の高さ寸法をこのようにすれば、ボウル30の背面側の上面高さ寸法もこれと近接したものとなるので、ボウル30のリップ部108の高さ寸法も低くすることができる。そのため、オストメイトがリップ部108に腹部を押し当て行う立ち作業のみならず、例えば、車椅子使用者がカテーテル内の尿を廃棄するような座り作業にも適した高さとすることができる。
【0064】
例えば、ライニング6の上面の高さ寸法を床から700mm以上、800mm以下とすれば、ボウル30のリップ部108の高さ寸法を650mm程度とすることができる。
【0065】
この場合、作業に必要となる水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などや、ライニング6の上面もすべて近接した高さにあるので、車椅子使用者などが行う座り作業においても作業性を向上させることができる。
【0066】
そして、ボウル30の背面側の上面高さと、ライニング6の上面高さとを近接させたものとしても、水栓31や液体石鹸供給器32などがボウル30内に設けられているので、作業にともなう水などでライニング6の上面が濡れることを抑制することができる。すなわち、ライニング6の上面は、いわゆるドライカウンターとして利用することができる。
【0067】
図1に示すように、ボウル30の背面側のライニング6の上部にはキャビネット34が設けられている。キャビネット34は、その内部に空間を有し、例えば、フラッシュバルブ37、電気温水器36、図示しない液体石鹸供給器のタンクなどを設置したり、メンテナンス用の部品、洗剤、トイレットペーパーなどの消耗品を収納させたりすることができる。キャビネット34の前面には開閉式の扉34aを設けることができ、内部に設置された装置などのメンテナンスや消耗品などの出し入れが容易となっている。扉34aは、いたずら行為を防止するため施錠可能、または、取っ手などを設けずに開けにくい構造とすることが好ましい。尚、キャビネット34の前面に扉を設けずに、例えば、側面などに扉を設けるようにすることもできる。
【0068】
また、キャビネット34の奥行き寸法を小さく(薄く)するものとすれば、扉34a前方のライニング6上面にスペースができるので、ここを一時的に物を置く場所として利用することが可能となる。また、キャビネット34の幅寸法を小さくすれば、キャビネット34側方のライニング6上面のスペースが拡がるので、物が置きやすくなる。
【0069】
キャビネット34の前面(図7に例示をしたように、扉34aが備えられたものの場合は扉34aの前面)には、鏡35が設けられている。鏡35は、オストメイトがストーマやストーマの周辺を視認することなどに用いる。オストメイトの体格によっては、腹などに隠れてストーマやその周辺が視認しづらい場合がある。そのような場合、鏡35を設けるものとすれば、ストーマやその周辺の洗浄状況やストーマの装着状況を視認することが容易となる。
【0070】
本実施の形態においては、鏡35をキャビネット34の扉34aに設けるものとしている。そのため、オストメイトが作業を行う場所の正面に鏡35が設けられていることになり、移動や体の向きを変えることなくストーマやストーマの周辺を視認することができる。
【0071】
この場合、鏡35の下端とライニング6の上面とが近接するようにすることが好ましい。鏡35の下端とライニング6の上面とが近接していれば、映し出すことができる範囲を拡げることができ、前述の視認が容易となる。例えば、図1や図7に例示をしたものでは、鏡35の下端とライニング6の上面とが当接する程度に近接させるものとしている。ただし、鏡35の下端とライニング6の上面とを当接させる必要はなく、隙間を設けるようにすることもできる。
【0072】
また、鏡35の前面位置とライニング6の前面位置とが近接するようにすることが好ましい。鏡35がライニング6の前面側にあるほど映し出すことができる範囲を拡げることができ、前述の視認が容易となる。この場合、鏡35をライニング6の前面側に出せば、扉34aの前面に形成されるスペースは少なくなる。そのため、キャビネット34内部に設けることが必要な空間の大きさ、扉34aの前面に形成されるスペースの必要性、ストーマやストーマの周辺に対する視認性などを考慮して、キャビネット34などの奥行き寸法を決めるようにすることが好ましい。
【0073】
本実施の形態に係るボウル30は、ボウル30の背面側の上面高さとライニング6の上面高さとを近接したものとしている。また、上面形状が前面110の方向(オストメイトが作業する側)に向けて下方傾斜をしている。そして、水栓31などはボウル30の背面側の上部開口付近の内壁に設けられている。そのため、鏡35の下端より上方に設けられるものが極めて少なく、鏡35に映し出すことができる範囲を拡げることができる。また、オストメイトの視線が水栓31などに遮られることもない。
【0074】
図8は、水栓31を例示するための模式斜視図である。
水栓31には、水道水などの水を吐水させるための吐水ヘッド119と、吐水ヘッド119に接続された可撓性のホース117と、ホース117の収納と引き出しが可能な水栓取り付け部118と、が設けられている。吐水ヘッド119は、水栓取り付け部118からホース117とともに引き出して使用することができ、水道水などの水を所望の位置や向きで吐水させることができる。吐水ヘッド119が水栓取り付け部118に装着されている状態では、水がボウル30内に落下しやすいように、吐水ヘッド119は若干前向きに傾斜して設置されている。
【0075】
そして、吐水ヘッド119を引き出さない状態での吐水方向が、ボウル30の内壁部に向かうようになっている。そのため、吐水ヘッド119が引き出されていない状態で吐水をすれば、ボウル30の内壁が常に洗い流され衛生面に優れた汚物流しユニット14となっている。また、吐水ヘッド119が水栓取り付け部118に装着されているままでもパウチ内などの洗浄がしやすいようにもなっている。また、吐水ヘッド119を引き出すことで、オストメイトが服を脱いでストーマやストーマ周辺を洗浄したり、ボウル30内部を局所的に洗浄したりすることがしやすいようにもなっている。
【0076】
また、水栓31は、いわゆるスイッチ水栓とすることができる。そのため、水栓31のヘッド部120を押すことで吐水をさせることができ、再度ヘッド部120を押すことで吐水を停止させることができる。吐水ヘッド119は、シャワー状の吐水をさせるものとすることができるが、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0077】
ホース117が吐水ヘッド119とともに水栓取り付け部118から引き出され、ボウル30の上部開口付近で吐水ヘッド119から吐水をさせる場合において、ホース117の撓んだ部分が封水部113の封水に触れないようなホース117の長さとすることが好ましい。
また、水栓取り付け部118にホース117を収納させやすいようにするため、ホース117の収納(水栓取り付け部118への引き込み)を助長する図示しない付勢手段を設けるようにすることもできる。
【0078】
本実施の形態においては、ボウル30の背面側の上部開口付近に水栓31を設けるようにしているため、オストメイトが行う洗浄作業の位置と水栓取り付け部118の位置とを近接させることができる。そのため、水栓取り付け部118からの吐水ヘッド119の引き出し量を少なくすることができ、その分、引き出されるホース117の長さを短くすることができる。その結果、ホース117のたわみ量をも少なくすることができ、撓んだホース117が封水部113に触れることを防止することができる。
【0079】
また、キャビネット34の内部に設けられた電気温水器36により、水栓31から温水を吐水させることもできる。また、温水と水道水などの水との混合割合を調整するための調整手段を設けて水栓31から吐水させる水の温度を調整するようにすることもできる。
【0080】
また、水栓31の配管には図示しないバキュームブレーカを設けるようにすることができる。バキュームブレーカは、ボウル30のリップ部108よりも上方に位置するようにして設けられる。そのようにすれば、汚水がバキュームブレーカの空気取り入れ口から侵入したり、吐水ヘッド119を汚物などで汚してしまったような場合でも上流側(水道水側)が汚されるのを抑制することができる。バキュームブレーカとしては、スイング弁を用いたものやダックビルを用いたものなどを採用することができる。尚、図示しないバキュームブレーカは、例えば、キャビネット34の内部に設けるようにすることができる。
【0081】
図9は、フラッシュバルブを例示するための模式図である。
フラッシュバルブ37は、ボウル30の内壁に付着した汚物などを水圧を利用して一気に洗い流すためのものであり、前述したように、操作部33を操作することにより、水タンクなどの給水源からの水が汚物流し用水配管124を介して噴出口116bから案内部116aに噴出されるようになっている。
【0082】
また、フラッシュバルブ37の下部(下流側)には、バキュームブレーカ122が設けられており、フラッシュバルブ37の左側部は上流側の水配管123と接続されている。そして、水配管123は図示しない水タンクなどの給水源と接続されている。
【0083】
また、バキュームブレーカ122は、ボウル30のリップ部108よりも上方に位置するようにして設けられている。そのようにすれば、汚水がバキュームブレーカの空気取り入れ口から侵入したり、上流側(水道水側)が汚物などにより汚されたりすることを抑制することができる。バキュームブレーカとしては、スイング弁を用いたものやダックビルを用いたものなどを採用することができる。尚、図1に示したように、フラッシュバルブ37はキャビネット34の内部に設けられている。
液体石鹸供給器32は、少量の液体石鹸を吐出可能とするものであり、図示しない液体石鹸を収容するためのタンクや吐出手段などを備えている。尚、液体石鹸供給器32は、必ずしも必要ではなく省くこともできるが、公衆衛生の観点からは設けられていた方が好ましい。また、液体石鹸供給器32の変わりに、あるいは液体石鹸供給器32とともに、消毒液供給器などを設けるようにすることもできる。尚、図示しない液体石鹸を収容するためのタンクは、例えば、キャビネット34の内部に設けるようにすることができる。
【0084】
図10は、電気温水器36を例示するための模式斜視図である。
図10に示すように、電気温水器36は、箱形状の本体51を備え、本体51の左側面には電源スイッチ52と湯温調節ダイヤル53が、前面には膨張弁操作レバー54、電源コード59、水抜栓67及び排水栓69が、上面には給水口55、出水口56、出湯口57、膨張水排水口58、吸気栓68がそれぞれ設けられている。また、本体51の内部には、図示しない貯湯タンク、貯湯タンク内の水を加熱するためのシーズヒータなどが設けられている。尚、電気温水器36は先止式であって、出水口56及び出湯口57よりも下流側の管路での開閉が可能となっている。
【0085】
第1のライニング6は、トイレブースなどの壁面から突出するようにして設けられ、その前面には、便器2、背もたれ3、跳ね上げ手すり4、汚物流しユニット14などが設けられている。また、上面には、キャビネット34が設けられている。
【0086】
ライニング6は、少なくとも前面と上面とが遮蔽された奥行方向に薄い箱形状を呈しており、図示しない堅牢なフレーム部材と複数枚の板状部材とから形成されている。尚、ライニング6の側面がトイレブースなどの空間に露出する場合には、これを側面板で覆うようにすることが好ましい。また、背面側(トイレブースなどの壁面側)、底面側(床面側)にも板状部材を設けるようにすることもできる。また、ライニング6の内部には、便器2の配管、便器2に設けられる図示しない衛生洗浄装置やフラッシュバルブなどの配管、図示しない衛生洗浄装置などの配線、ボウル30やボウル30に設けられる水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などの配管を設けるようにすることができる。
【0087】
第2のライニング5は、第1のライニング6が設けられたトイレブースの壁面と略直行する壁面から突出するようにして設けられている。そして、その前方には、ライニング6の前面と略平行な固定手すり8の水平部8a、その前面には、トイレットペーパーホルダー9、操作手段10、非常呼び出し手段10aなどが設けられている。また、上面には、手洗い器7、洗面器11が埋め込むようにして設けられている。
ライニング5は、少なくとも前面、上面、底面が遮蔽された奥行方向に薄い箱形状を呈しており、図示しない堅牢なフレーム部材と複数枚の板状部材とから形成されている。尚、ライニング6の側面がトイレブースなどの空間に露出する場合には、これを側面板で覆うようにすることが好ましい。また、背面側(トイレブースなどの壁面側)にも板状部材を設けるようにすることもできる。
また、ライニング6の上面と、ライニング5の上面とが略同一高さとなるように連設して設けられている。
【0088】
ライニング5の底面は、床面から所定の寸法だけ離間するようになっている。すなわち、ライニング5の底面と床面との間に空間5aが形成されるようになっている。ここで、ライニング5の底面から床面までの寸法は、車椅子のフットレスト部分が入る寸法とされている。そのため、車椅子のフットレスト部分が空間5aの中に侵入可能とされており、例えば、車椅子使用者がライニング5の上面に荷物などを置く場合などに、ライニング5に近づきやすいようになっている。この場合、空間5aの高さを300mm以上とすることが好ましい。尚、空間5aは必ずしも必要ではないが、設けられているものとすれば、前述したように車椅子によるライニング5への接近が容易となる。空間5aが設けられない場合は、必ずしも底面が遮蔽されている必要はなく、少なくとも前面と上面とが遮蔽されていればよい。ただし、そのような場合であっても、底面が遮蔽されているようにすることができる。
【0089】
ライニング5の内部には、手洗い器7や洗面器11などの配管や操作手段10、非常呼び出し手段10aなどの配線を設けるようにすることができる。
ここで、立ち座り行為が困難な障害者(例えば、下肢に麻痺などを持つ人)にとっては、靴やタオル、生理用品などが便座2bに着座した姿勢でも手が届く位置に置けることが好ましい。また、下肢に麻痺などを持つ人が自己導尿器具を使い排泄行為を行う際には、車椅子に乗ったままカテーテルやそのケース、消毒液、タオルなど様々な器具を身近に置いて作業をする必要がある。
【0090】
そのため、第1のライニング6や第2のライニング5の上面に、これらの荷物や用具などが置けるようにする必要がある。この場合、例えば、車椅子使用者が多目的トイレユニット1を使用する場合を考慮すると、第1のライニング6や第2のライニング5の高さ寸法が重要となる。
【0091】
また、便器2への着座や着座後の動作などを考慮すると、第1のライニング6や第2のライニング5がこれらの動作の障害とならないようにする必要がある。その場合においても、第1のライニング6や第2のライニング5の高さ寸法が重要となる。
【0092】
また、前述したように、第1のライニング6の前面には汚物流しユニット14のボウル30も設けられている。そのため、ライニング6の高さ寸法は、オストメイトが行う一連の作業に必要となるもの(例えば、タオルや着替えなど)を一時的に置く場所として利用するのに適した高さ、すなわち、オストメイトが行う作業姿勢のままでもこれらのものに手が届く高さとする必要がある。
【0093】
図11は、便器の高さとライニングの高さとの関係を比較例を用いて説明をするための模式図である。
図11に示すように、トイレブースなどの壁面から突出するようにしてライニング106が設けられ、その前面には便器100が設けられている。また、ライニング106の上方には、背もたれ103が設けられている。そして、便器100の側面側には、ライニング106とその上面を連接するようにしてライニング105が設けられている。
【0094】
図11に示す比較例においては、便器100に着座したときに使用者の首の下部付近にライニング106の上面付近が来るような高さ関係となっている。
【0095】
ここで、下肢に麻痺を有する人が車椅子から便器100に乗り移る際には、跳ね上げ手すり4と固定手すり8の水平部8aを手でつかみ、便器100の前方からライニング106の方向に向けて移動を行ういわゆる「馬乗り」動作を行う。このような場合、便器100の後方に高い壁(ライニング106)があると、頭がぶつかり移動が行いにくくなる。
【0096】
また、便座に着座した後にズボンなどを脱ぐ場合には、上体を後方にそらしながら腰を浮かせるいわゆる「のけぞり」動作を行う。このような場合も、便器100の後方に高い壁(ライニング106)があると、上体を後方にそらすことができず、腰を浮かせることができないのでズボンなどが脱ぎにくい。
【0097】
また、便座に着座した状態で、手洗い器7を使ったり、操作手段10を操作したり、跳ね上げ手すり4を操作したりする場合には、上体を回転させるようにするいわゆる「ひねり」動作を行う。このような場合、便器100の後方に高い壁(ライニング106)があったり、便器100の側方に高い壁(ライニング105)があったりすると、手、腕、肘などが当たるので「ひねり」動作を行いにくい。
【0098】
また、前述のように、車椅子に着座した状態においても、ライニングの上面に楽に荷物が置けたり、手が届いたりすることができるようにすることが好ましい。この場合、例えば、特許文献1に開示をされているような技術においては、ライニングの上面に車椅子使用者が荷物を置く場合についての考慮がされておらず、荷物を置く場合などの使い勝手に関して改良の余地を残していた。
【0099】
本発明者は検討の結果、便座2bに着座した人がライニング6の方向に向けてのけぞった場合(「のけぞり」動作を行った場合)に、ライニング6の上面の上方であって、ライニング6の前面とトイレブースなどの壁面との間に形成された空間に、着座した人の少なくとも肩甲骨より上の部位が侵入可能となるようなライニング6の上面の高さとすれば、「馬乗り」動作、「のけぞり」動作、「ひねり」動作を容易に行うことができ、かつ、車椅子に着座した状態においてもライニングの上面に楽に荷物が置けたり、手が届いたりすることができるとの知見を得た。
【0100】
この場合、便座2bに着座した人の肩甲骨の位置よりも低い位置にライニング6の上面を設けるようにすればよい。このような位置にライニング6の上面を設けるようにすれば、肩甲骨付近を上面の縁に押し当てるようにして「のけぞり」動作をすることができる。また、その際、前述の空間の中に着座した人の少なくとも肩甲骨より上の部位が侵入可能となる。
【0101】
また、本発明者はさらなる検討の結果、便器2の着座部分(便座2bの上面)からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とすれば「馬乗り」動作、「のけぞり」動作、「ひねり」動作をも容易に行うことができるとの知見を得た。そして、便器2の着座部分(便座2bの上面)の高さとライニング6の高さとの関係をこのようにすれば、車椅子に着座した状態においてもライニング6の上面に楽に荷物が置けたり、手が届いたりすることができるとの知見を得た。尚、ライニング5の上面もこれに合わせるようにすれば、手洗い器7を使ったり、操作手段10などを操作したりする場合の「ひねり」動作をも容易に行うことができ、また、車椅子に着座した状態においてもライニング5の上面に楽に荷物が置けたり、手が届いたりすることができる。
【0102】
そしてさらに、ライニング6の上面の高さを前述のようにすれば、オストメイトが行う一連の作業に必要となるもの(例えば、タオルや着替えなど)を一時的に置く場所として利用するのに適した高さ、すなわち、オストメイトが行う作業姿勢のままでもこれらのものに手が届く高さとすることができるとの知見をも得た。
【0103】
また、便器2への着座や着座後の動作、車椅子に着座した状態で荷物を置くことなどを考慮すれば、ライニング5、6上面の奥行き方向寸法は200mm以上とすることが好ましい。
【0104】
尚、例えば、床面から便器2の着座部分(便座2bの上面)までの高さを400mm程度とすれば、床面からライニング6の上面までの寸法(高さ)は700mm以上、800mm以下とすることができる。また、ライニング6の上面と、ライニング5の上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられているので、床面からライニング5の上面までの寸法(高さ)は700mm以上、800mm以下とすることができることになる。
【0105】
図12は、本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「馬乗り」動作を説明するための模式図である。
下肢に麻痺を有する人が車椅子から便器2に乗り移る際には、跳ね上げ手すり4と固定手すり8の水平部8aを手でつかみ、便器2の前方からライニング6の方向に向けて移動を行う(馬乗り動作)。
【0106】
この際、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、頭がライニング6に当たることがない。また、頭をライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることもできる。そのため、馬乗り動作を円滑に行うことができる。また、ライニング6の上端部付近には背もたれ3が設けられているので、これに手をかけて馬乗り動作を行えば円滑な動作を行うことができるし、また、前のめりになった場合でも背もたれ3がクッションとなる。
尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0107】
図13は、本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「のけぞり」動作を説明するための模式図である。
下肢に麻痺を有する人が便座に着座した後にズボンなどを脱ぐ場合には、上体を後方にそらしながら腰を浮かせるようにする(のけぞり動作)。
【0108】
このような場合においても、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、頭や肩などをライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易に後方にそらせて腰を浮かせることができる。その結果、ズボンなどの着脱を円滑に行うことができるようになる。
尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0109】
図14、図15は、本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「ひねり」動作を説明するための模式図である。
図14に示すように、便座に着座した状態で跳ね上げ手すり4を操作する場合には、上体を回転させて上体を跳ね上げ手すり4の方向に向かせるようにする(ひねり動作)。
【0110】
このような場合においても、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、肘や腕などをライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易にひねることができ、また、跳ね上げ手すり4を回動(上下)させるための操作も円滑に行うことができるようになる。
尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0111】
また、図15に示すように、便座に着座した状態で手洗い器7を使ったり、操作手段10などを操作したりする場合には、上体を回転させて上体を手洗い器7や操作手段10などの方向に向かせるようにする(ひねり動作)。
【0112】
このような場合においても、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、肘や腕などをライニング5、6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易にひねることができ、また、手洗い器7の操作や使用、操作手段10などの操作も円滑に行うことができるようになる。
尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0113】
次に、多目的トイレユニット1の作用について説明をする。
まず、車椅子使用者が便器2を使用する場合を説明する。
車椅子使用者は、必要に応じて荷物などをライニング5やライニング6の上面に置く。本実施の形態においては、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、ライニング5、6の上面の位置が低い。そのため、荷物などを楽に置くことができる。尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0114】
次に、車椅子で便器2の前方に近づき、「馬乗り」動作を行うことにより車椅子から便器2に移動する。この場合も、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、頭がライニング6に当たることがない。また、頭をライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることもできる。そのため、馬乗り動作を円滑に行うことができる。また、ライニング6の上端部付近には背もたれ3が設けられているので、これに手をかけて馬乗り動作を行えば円滑な動作を行うことができるし、また、前のめりになった場合でも背もたれ3がクッションとなる。尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
次に、便座2bに着座し、ズボンなどを脱ぐために「のけぞり」動作を行う。
このような場合においても、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、頭や肩などをライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易に後方にそらせて腰を浮かせることができ、ズボンなどの着脱を円滑に行うことができる。尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0115】
次に、便座2bに着座した状態で操作手段10などを操作するために「ひねり」動作を行う。この場合においても、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、肘や腕などをライニング5、6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易にひねることができ、また、操作手段10の操作も円滑に行うことができる。尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
また、固定手すり8の水平部8aの上方に操作手段10や非常呼び出し手段10aを設けるようにしているので、例えば、使用者がリウマチなどにより、指による操作が困難な場合であっても、水平部8aの上面に手や腕を置くことで不随意運動を抑えて、拳、指の関節部分、手の甲などによる操作が可能となる。
また、操作手段10や非常呼び出し手段10aは、ライニング5の上端近傍に設けられているので、例えば、使用者が手に麻痺を有する者であっても、カウンタ5の上面に手や腕を置くことでこれらを支え不随意運動を抑えて、手首を回転させることで操作をすることが可能となる。
また、各種の操作を行うための操作部は、横方向(水平方向)に並べられ、非常呼び出し手段10aも操作手段10の横に設けられているので、水平部8aやライニング5の上面に置いた手や腕をこれらに沿わせるようにして横方向に移動するだけで各種の操作を容易にすることができる。
【0116】
次に、図示しない操作手段によりフラッシュバルブ22を操作して、汚物を排出する。その後、便座2bに着座した状態で手洗い器7を使うために「ひねり」動作を行う。この場合においても、前述したように、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、上体を容易にひねることができ、また、手洗い器7の操作や使用も円滑に行うことができる。尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0117】
次に、必要があれば、便座2bに着座した状態で跳ね上げ手すり4を操作するために先程とは逆向きの「ひねり」動作を行う。この場合においても、前述したように、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、肘や腕などをライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易にひねることができ、また、跳ね上げ手すり4を回動(上下)させるための操作も円滑に行うことができる。尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0118】
次に、前述したものとは逆の手順で便器2から車椅子に移動し、車椅子で便器2から離れる。そして、ライニング5やライニング6の上面に置いた荷物を取る。この場合においても、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、荷物などを楽に取ることができる。尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0119】
次に、オストメイトが汚物流しユニット14を使用する場合について説明をする。
オストメイトは、汚物の廃棄・洗浄作業を行うに先立ち、一連の作業に必要となるもの、例えば、タオル、新しいパウチ、着替えなどをボウル30の近傍のライニング6の上面に置く。
【0120】
次に、身体に装着していたパウチを外して、水栓31から吐水される水でこのパウチの内部を洗浄したり、ストーマ及びその周辺を洗浄したりする。この際、図8に示したように、吐水ヘッド119を水栓取り付け部118から引き出して吐水をさせるようにすることができる。また、冬場などにおいては、水栓31から所望の温度の温水を吐水させることもできるし、液体石鹸供給器32から液体石鹸を出して、手やパウチなどの洗浄を行うこともできる。 本実施の形態に係る汚物流しユニット14においては、前述したように、ホース117の撓み量を少なくすることができるので、撓んだホース117が封水部113に触れることを防止することができる。そのため、洗浄作業の作業性を向上させることができるのみならず、衛生的でもある。
【0121】
また、前述したように、吐水ヘッド119を引き出さない状態での吐水方向が、ボウル30の内壁部に向かうようになっている。そのため、吐水ヘッド119が引き出されていない状態で吐水をすれば、ボウル30の内壁が常に洗い流され衛生的である。
【0122】
こうした汚物の廃棄・洗浄作業を行っている最中に、例えば、汚物がストーマから勢い良く飛び出したり、パウチ内やストーマ廻りの汚物の量、状態、洗い方などによって汚物が周囲に飛び散ったりして、不本意にも周辺を汚してしまうことがある。このような場合であっても、本実施の形態に係る汚物流しユニット14は、ボウル30のリム部116の内壁面がボウル30の内壁面となだらかに連接するようになっているため、汚物が付着しやすく、また、除去と清掃がし難い部分が存在しない。また、汚物が付着、残留しやすいボウル30の上部には、洗浄と排出のための旋回流を形成させるようにしているので、ボウル30内に付着、残留する汚物を大幅に低減させることができる。その結果、清掃の手間を削減することができるのみならず、衛生的でもある。
【0123】
次に、ストーマ及びその周辺を洗った後、タオルやトイレットペーパーなどでストーマやその周辺に付いた水を拭き取り、新しいパウチをストーマに装着する。
次に、操作部33を押し、フラッシュバルブ37を作動させてボウル30の内壁面を洗い流すとともに、排水部109を介して汚物をボウル30の外部に一気に排出させる。この際、吐水ヘッド119からも吐水をさせてボウル30の内壁を洗い流すようにすることもできるし、吐水ヘッド119を水栓取り付け部118から引き出して吐水をさせることで、ボウル30の各所などを洗浄することもできる。
【0124】
本実施の形態に係る汚物流しユニット14においては、洗浄などの作業位置と作業に用いられる水栓31などの位置とを同一平面に近い状態とすることができる。そのため、オストメイトの目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓31などが介在することを極力抑制することができる。その結果、オストメイトの視線が遮られないので作業の視認性を大幅に向上させることができる。また、作業位置と作業に用いられる水栓31などの位置とが同一平面に近い状態にあるので、水栓31などの装置同士の間の隙間(例えば、水栓31と液体石鹸供給器32との間の隙間、水栓31とフラッシュバルブの操作部33との間の隙間)を通して作業を視認することも容易となる。
【0125】
また、前述したように、オストメイトが作業を行う場所の正面には鏡35が設けられているので、移動や体の向きを変えることなくストーマやストーマの周辺を視認することができる。
また、鏡35の下端とライニング6の上面とが近接するようにしてあるので、映し出すことができる範囲が広く、かつ、オストメイトの視線が水栓31などに遮られることもないので前述の視認が容易となる。
【0126】
また、これら一連の作業において必要となる装置、例えば、水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブ37の操作部33が廃棄・洗浄作業をする位置の近くに設けられている。そして、ライニング6の上面高さが低く、かつ、廃棄・洗浄作業をする位置とライニング6の上面の位置とが同一平面に近い状態となっている。そのため、オストメイトが行う作業姿勢のままでも、これらの装置やライニング6の上面に一時的に置いた物に容易に手が届くため、オストメイトにとって使い易いシステムとなっている。
【0127】
また、水栓31などをボウル30に直接設け、電気温水器36などもキャビネット34の内部に設けるようにしているので、汚物流しユニット1の設置スペースを少なくすることができる。そのため、設置スペースの狭いパブリックスペースなどにも設置が可能となりオストメイトにとって便利なシステムとなっている。
また、本実施の形態に係るボウル30は、そのリップ部108がボウル30の外側に向けて凸状に湾曲した形状をしている。そのため、背の高いオストメイトであってもリップ部108に腹部を押し当てやすく、容易に汚物の廃棄や洗浄をすることができる。
【0128】
また、ボウル30の前面110(オストメイトが作業する側の面)は、下方になるに従いボウル30の背面側(前面110対向する側の面)に近づくような方向に傾斜をしている。この傾斜により形成される空間111に膝などを入れることで、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態での汚物の廃棄や洗浄が容易となる。
【0129】
また、ボウル30の側面112a、側面112bはボウル30の軸線に略平行な平面となっている。そのため、側面112a、側面112bを膝などで挟むことができ、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態での汚物の廃棄や洗浄作業の安定性を図ることができる。
【0130】
尚、説明の便宜上、多目的トイレユニット1に汚物流しユニット14が設けられている場合を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、例えば、図16に示すように、汚物流しユニット14が設けられておらず、便器2、跳ね上げ手すり4、カウンタ5、カウンタ6、手洗い器7、固定手すり8、洗面器11などが設けられているようなものとすることもできる。この場合、前述したものと同様の部分には、同じ符号を付しその説明は省略する。
【0131】
以上、本発明の実施の形態について説明をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
【0132】
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0133】
例えば、多目的トイレユニット1に設けられる各装置や各要素などの形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0134】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の実施の形態に係る多目的トイレユニットを例示するための模式斜視図である。
【図2】便器を例示するための模式断面図である。
【図3】跳ね上げ手すりを例示するための一部切欠模式断面図である。
【図4】手洗い器を例示するための模式斜視図である。
【図5】操作手段、非常呼び出し手段を例示するための模式図である。
【図6】ボウルを例示するための模式図である。
【図7】ボウルの設置を例示するための模式断面図である。
【図8】水栓を例示するための模式斜視図である。
【図9】フラッシュバルブを例示するための模式図である。
【図10】電気温水器を例示するための模式斜視図である。
【図11】便器の高さとライニングの高さとの関係を比較例を用いて説明をするための模式図である。
【図12】本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「馬乗り」動作を説明するための模式図である。
【図13】本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「のけぞり」動作を説明するための模式図である。
【図14】本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「ひねり」動作を説明するための模式図である。
【図15】本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「ひねり」動作を説明するための模式図である。
【図16】本発明の他の実施の形態に係る多目的トイレユニットを例示するための模式斜視図である。
【符号の説明】
【0136】
1 多目的トイレユニット、2 便器、2b 便座、3 背もたれ、4 跳ね上げ手すり、5 ライニング、5a 空間、6 ライニング、7 手洗い器、8 固定手すり、9 トイレットペーパーホルダー、10 操作手段、10a 非常呼び出し手段、11 洗面器、12 水栓、13 鏡、14 汚物流しユニット、30 ボウル、34 キャビネット、35 鏡
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車椅子使用者などが利用するのに適した多目的トイレユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
下肢に麻痺などを有する人が利用する多目的トイレユニットは、車椅子で出入りすることができ、また、車椅子が多目的トイレユニットの内部で旋回できる必要がある。そして、配設された便器、手洗い器、手すり、洗面器などへのアプローチを容易に行い得るように構成する必要がある。
【0003】
そのため、車椅子使用者などが利用するのに際して、使い勝手に優れたトイレユニットが提案されている(特許文献1を参照)。
また、人工肛門や人工膀胱などの保持者であるオストメイトと呼ばれる人々は、身体の腹部に排泄物(以下、汚物という)を溜めておくための袋、いわゆるパウチを装着しており、時折、トイレにおいて溜まった汚物を廃棄したり、パウチの内面、ストーマ(腹部に造設された排泄口)、ストーマ付近の腹部などに付着した汚物を洗い流すなどの作業を行う必要がある。
【0004】
近年、オストメイトが外出先で気兼ねをすることなくこれらの作業を行うことのできる施設が、車椅子使用者などが利用をする多目的トイレにも備えられるようになってきている。
そのため、多目的トイレにも、便器とは別に専用の汚物流しユニットが設けられるようになってきており、この汚物流しユニットには、ボウルを設置するためのキャビネット、ボウルの上方に設けられたシャワーユニットを有する水栓、ボウルに投入された汚物を排出させるためのフラッシュバルブ、液体石鹸供給器などが備えられている(特許文献2を参照)。
【0005】
ここで、特許文献1に開示された技術においては、便器の背後に背の高い配管ユニットケースが配設されており、この配管ユニットケースが邪魔になって、便器へのアプローチなどが容易に行えないおそれがあった。また、手洗い器、手すり、操作ボタン、洗面器なども背の高い配管ユニットケースに配設されており、これらへのアプローチも容易に行えないおそれがあった。
また、特許文献2に開示された技術においても、背の高いキャビネットが配設されており、これの上面を物の置き場に利用するものとすれば、オストメイトが廃棄・洗浄作業をする位置から手が届かなくなるおそれがあった。
【0006】
また、ボウルの上方に水栓などを設けるようにすれば、目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓などが介在することになる。そのため、水栓などにより視線が遮られて作業の視認性が損なわれる場合もあった。
【特許文献1】特開平6−108677号公報
【特許文献2】特開2004−283394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車椅子使用者やオストメイトなどにとっても使い勝手のよい多目的トイレユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面とが遮蔽された第1のライニングと、前記トイレブースの前記第1の壁面と略直行する第2の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面と底面とが遮蔽された第2のライニングと、前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、前記第1のライニングの前面の前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、前記第2のライニングと前記便器との間に設けられ、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、前記便器の側方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、前記便器の前方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、前記便器の着座部分と、前記第1のライニングの上面との高さの差が、300mm以上、400mm以下であること、を特徴とする多目的トイレユニットが提供される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面とが遮蔽された第1のライニングと、前記トイレブースの前記第1の壁面と略直行する第2の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面と底面とが遮蔽された第2のライニングと、前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、前記第1のライニングの前面であって、前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、前記第2のライニングと前記便器との間に設けられ、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、前記便器の側方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、前記便器の前方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、前記便器に着座した人が前記第1のライニングの方向に向けてのけぞった場合には、前記第1のライニングの上面の上方であって、前記第1のライニングの前面と前記第1の壁面との間に形成された空間に、前記着座した人の少なくとも肩甲骨より上の部位が侵入可能とされていること、を特徴とする多目的トイレユニットが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車椅子使用者やオストメイトなどにとっても使い勝手のよい多目的トイレユニットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をする。
図1は、本発明の実施の形態に係る多目的トイレユニットを例示するための模式斜視図である。
図1に示すように、多目的トイレユニット1には、多目的トイレユニット1が備えられるトイレブースなどの壁面から突出するようにして設けられた第1のライニング6、第1のライニング6の前面に設置された便器2、便器2の上方であって第1のライニング6の上端部付近に設けられた背もたれ3、便器2の右側上方であって第1のライニング6の前面に設けられた跳ね上げ手すり4、第1のライニング6が設けられたトイレブースの壁面と略直行する壁面から突出するようにして設けられたライニング5、便器2の左側上方であって第2のライニング5の上面に設けられた手洗い器7、一端が第2のライニング5の前面に設けられ他端がトイレブースなどの壁面に設けられた固定手すり8、固定手すり8の水平部8aの下方であって第2のライニング5の前面に設けられたトイレットペーパーホルダー9、固定手すり8の水平部8aの上方であって第2のライニング5の前面の上端近傍に設けられた操作手段10、便器2の前方であって第2のライニング5の上面に設けられた洗面器11、洗面器11の上方であってトイレブースなどの壁面に設けられた鏡13、跳ね上げ手すり4の右側であって第1のライニング6の前面に設けられた汚物流しユニット14のボウル30、ボウル30の上方であってライニング6の上面に設けられるキャビネット34、キャビネット34の前面に設けられた鏡35などが備えられている。
また、便器2の対角位置(便器2から最も遠い位置)には、多目的トイレユニット1の出入り口1aが設けられている。
【0012】
図2は、便器2を例示するための模式断面図である。
便器2は、いわゆる「壁掛け式」の水洗便器であり、第1のライニング6の前面に設けられている。
【0013】
便器2は、例えば、陶器、合成樹脂、合成樹脂にセラミック材、陶器粉を混入させたものなどからなるものとすることができる。
図2に示すように、便器2の給水口20には、ライニング6の内部に隠蔽される導水部21が接続されている。また、導水部21の上方にはフラッシュバルブ22が設けられ、フラッシュバルブ22を介して図示しない給水源と導水部21とが接続されている。
【0014】
便器2の開口縁部にはリム23が設けられ、リム23の内部にはリム通水路23bが設けられている。また、リム23は便器2の内部に向けて張り出すようにして設けられ、リム23の下面にはリム通水路23bに連通する複数の吐水口23aが設けられている。
【0015】
そのため、フラッシュバルブ22を操作することにより、水タンクなどの給水源から水道水などの水がリム通水路23bに供給され、吐水口23aから便器2の内部に向けて吐水されるようになっている。
【0016】
便器2の排水口2aには、排水管24が接続されており、便器2の内部に吐水された水を汚物とともに外部(例えば、下水管など)に排出できるようになっている。また、便器2の下部には封水部25が設けられている。そのため、便器2の内部と排水管24とを封水部25を介して連通させることで、悪臭の発生を抑制しつつ汚物の排出ができるようになっている。
【0017】
また、便器2には、開閉自在の便座2bが設けられている。そして、これらの他にも、いわゆる「衛生洗浄装置」などを適宜設けるようにすることができる。尚、便器2の開口部分を覆うような位置に便座2bがあるとき(便座2bが閉じているとき)には、便座2bの上面が便器2の着座部分となる。
【0018】
尚、説明の便宜上、便器2を「壁掛け式」の水洗便器としたが、トイレブースの床面などに設けられる「床置き式」の水洗便器とすることもできる。そのため、便器2は、ライニング6の「前方」に設けるようにすればよい。この場合、「前方」には、図1に示したようなライニング6の前面に当接させるようにして設けたもののみならず、スペースを有して便器2とライニング6とを近接させて設けるようにしたものをも含む。
【0019】
ライニング6の下方に設けられた固定部材26は、下端面側を図示しない固定ボルトなどでトイレブースなどの床面に固着されている。そして、トイレブースなどの床面と略垂直となる面には、第1のライニング6の前面板を介して、便器2が図示しない固定ボルトなどで固着されている。
便器2の上方であって第1のライニング6の上端部付近には、背もたれ3が設けられている。そのため、使用者が便器2に座ったときには、背もたれ3に背中をもたせることができるので、楽な状態で便器2を使用することができる。また、背もたれ3は、クッション性を持たせるために軟質材料などからなるものとすることができる。尚、背もたれ3は必ずしも必要ではなく省くこともできる。ただし、背もたれ3を設けるものとすれば、着座時に背中をもたせるのみならず、後述する「馬乗り」動作の際にも利用することができる。
【0020】
図3は、跳ね上げ手すり4を例示するための一部切欠模式断面図である。
跳ね上げ手すり4は、第1のライニング6の前面板に跳ね上げ手すり4を固着するための取付板4a、ステンレス製のU字管を樹脂で被覆した樹脂被覆管4b、取付板4aに設けられ樹脂被覆管4bを回動自在に保持する跳ね上げユニット4c、跳ね上げユニット4cに内蔵され樹脂被覆管4bを上方に向かって付勢する図示しない付勢手段、樹脂被覆管4bを回動させる場合に回動端における衝撃を吸収するための緩衝部材4d、4eなどを備えている。尚、樹脂被覆管4bは樹脂で被覆がされていないステンレス製のU字管とすることもできる。
【0021】
跳ね上げ手すり4を図中上方に持ち上げるようにして跳ね上げれば、樹脂被覆管4bは跳ね上げユニット4cを回転中心として上方に回動する。このとき、樹脂被覆管4bの一端は緩衝部材4eから離隔する。
【0022】
また、所望の位置で跳ね上げ手すり4を離した場合には、跳ね上げユニット4cに内蔵されている図示しない付勢手段により、跳ね上げ手すり4は所望の位置で保持されるようになっている。そして、回動の上方の回動端においては、U字管部分が緩衝部材4dと当接する。また、跳ね上げ手すり4を図中下方に回動させれば、下方の回動端において樹脂被覆管4bの一端が緩衝部材4eと当接する。また、回動端においては、樹脂被覆管4bと緩衝部材4d、4eとが当接することで回動による衝撃が吸収されるようになっている。
尚、手すりは便器2の側面側であって、着座部分より上方に設けられていればよい。ただし、樹脂被覆管4bの上側パイプの高さを後述する固定手すり8の水平部8aと同じ高さ(中心位置が床面から650mm程度)とすることが好ましい。そのようにすれば、固定手すり8の水平部8aとともに、さらに容易に体を支えることができる。
【0023】
また、跳ね上げ手すり4をスイング式(水平方向に回動するタイプ)、固定式の手すりとすることもできる。ただし、多目的トイレユニット1の内部スペースの有効活用の観点からは、跳ね上げ式とすることが好ましい。また、便器の両側面に手すりが設けられているようにすれば(例えば、跳ね上げ手すり4と固定手すり8)、車椅子から便器への移動の際の姿勢の安定性を大幅に向上させることができる。この場合、少なくともいずれか一方は跳ね上げ手すりとすることが好ましい。
【0024】
図4は、手洗い器7を例示するための模式斜視図である。
手洗い器7は、第2のライニング5の上面に埋め込むようにして設けられている。手洗い器7は、平面視が矩形をなし、下部に設けられているボウル部7aは漏斗状を呈している。そして、ボウル部7aの最も低い部分に排水口7bが設けられ、排水口7bには図示しない排水トラップを介して、これも図示しない排水管が接続されている。
【0025】
また、ボウル部7aの開口縁部にはリム部7cが形成され、手洗い器7の背面側の面、および左右の側の面は、上方に延長されて垂直な起立壁としての壁部7d、壁部7eを一体に形成している。そして、この壁部7d、壁部7eが手洗い器7の水跳ね防止壁を形成する。そのため、ライニング5の上面方向および前面方向に大きな開口を有することになる。
【0026】
壁部7dの上部には、水栓7fが手洗い器7の内部方向に向かって突出するようにして設けられている。尚、水栓7fは、手洗い器7の内壁面に設けられていればよく、壁部7eから手洗い器7の内部方向に向かって突出するようにして設けられていてもよい。
【0027】
水栓7fの先端部には、下方に向かって吐水をすることができる吐水口7gが設けられている。また、水栓7fは、第2のライニング5の内部に隠蔽されている図示しない給水源と接続されている。
【0028】
水栓7fは、いわゆるスイッチ水栓とすることができる。そのため、水栓7fのヘッド部(先端部)を押すことで吐水をさせることができ、再度ヘッド部を押すことで吐水を停止させることができる。そして、手洗い器7の内側に吐水された水道水などの水は、ボウル部7aに設けられた排水口7bより外部に向けて排出される。
尚、吐水の形態は、例えば、シャワー状の吐水などとすることができるが、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。また、水石鹸を吐出させる液体石鹸供給器などを設けるようにすることもできる。
【0029】
本実施の形態における手洗い器7は、手洗い器7の上面側のみならず、前面側にも大きな開口を有している。そのため、便座2bに着座しているときのような低い姿勢からでも、手洗い器7の内部に容易に手先を挿入することができる。また、手先を挿入する前面と上面以外は、高い起立壁としての壁部7d、壁部7eで囲まれており、水栓7fも手洗い器7の内側に設けられているので、例えば、荷物を置くのに利用をするライニング5の上面が濡れることを抑制することができる。
【0030】
また、手洗い器7は、ライニング5の上面に埋め込むようにして設けられている。そして、後述するように、ライニング5の上面の高さも便器2に着座しているときの低い姿勢が考慮されている。そのため、設置位置が高くなることを抑制することができ、手洗い器7の内部に容易に手先などを挿入することができる。また、ライニング5の上面との一体感を増して煩雑感を低減させることもできる。
【0031】
図1に示すように、固定手すり8は、断面が円形のパイプ状部材とすることができる。固定手すり8には、便器2の左側の上方に略水平に設けられた水平部8aと、水平部8aと連接し便器2の前方で略垂直方向に立ち上がる垂直部8bと、垂直部8bと連接しトイレブースなどの壁面に向かって延在する固定部8cと、が設けられている。そして、水平部8aの一端が第2のライニング5の前面に固着され、固定部8cの一端がトイレブースなどの壁面に固着されている。
【0032】
また、水平部8aは、その中心位置が床面から650mm程度の高さに設置され、便座2bに着座した姿勢で体を支えるのに適した高さとなっている。そのため、水平部8aを握ったり、水平部8aの上に手や腕を載置したりすることで、容易に体を支えることができる。そして、便器2から離反する場合においては、垂直部8bを握ることで容易に体を起こし立ち上がることができるようになっている。
尚、固定手すり8を可動式(例えば、跳ね上げ式)のものに置き換えることもできる。ただし、スペース効率、生産コストなどの観点からは、壁面側(ライニング5側)の手すりは固定式とすることが好ましい。
【0033】
トイレットペーパーホルダー9は、便器2の前方であって、水平部8aの下方に設けられている。そのため、便座2bに着座した状態でトイレットペーパーを取り出すことができ、かつ、水平部8aを握るなどする場合に邪魔にならないようになっている。
【0034】
図5は、操作手段10、非常呼び出し手段10aを例示するための模式図である。
また、図5(a)は操作手段10、非常呼び出し手段10aの配設を例示するための模式図であり、図5(b)は、操作手段10、非常呼び出し手段10aを例示するための模式図、図5(c)は、図5(a)におけるA−A矢視断面図である。尚、前述のものと同様の部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0035】
図5(a)に示すように、操作手段10は、便器2の側方であって、ライニング5の上端近傍に設けられている。また、操作手段10の下方には固定手すり8の水平部8aが配設されている。
【0036】
図5(b)に示すように、操作手段10には各種の操作を行うための操作部を設けるようにすることができる。
具体的には、いわゆる「衛生洗浄装置」の各動作の指令(例えば、局部洗浄の開始またはその停止、温風の送風またはその停止、洗浄位置の調整、吐水強さの調整)をするためのスイッチや、局所照明のON/OFFをするためのスイッチ、暖房のON/OFFをするためのスイッチなどを例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく、多目的トイレユニット1に備えられる各種の装置、器具などの操作や調整を行うためのスイッチを適宜設けるようにすることができる。
【0037】
尚、操作手段10は必ずしも必要ではなく、例えば、「衛生洗浄装置」などが設けられていないような場合には省くこともできる。
【0038】
また、操作手段10とともに、または、操作手段10に代えて、非常呼び出し手段(スイッチ)10aを設けるようにすることもできる。尚、操作手段10と非常呼び出し手段10aとを一体化させることもできる。
【0039】
また、各種の操作を行うための操作部は、水平方向(横方向)に並ぶようにして連設されており、非常呼び出し手段10aも操作手段10と水平方向(横方向)に並ぶようにして設けられている。尚、図5に示したものでは、操作手段10の右側に非常呼び出し手段10aを設けるようにしているが、操作手段10の左側に設けるようにすることもできる。
【0040】
本実施の形態においては、固定手すり8の水平部8aの上方に操作手段10や非常呼び出し手段10aを設けるようにしているので、例えば、使用者がリウマチなどにより、指による操作が困難な場合であっても、水平部8aの上面に手や腕を置くことで不随意運動を抑えて、拳、指の関節部分、手の甲などによる操作が可能となる。
また、操作手段10や非常呼び出し手段10aは、ライニング5の上端近傍に設けられているので、例えば、使用者が手に麻痺を有する者であっても、カウンタ5の上面に手や腕を置くことでこれらを支え不随意運動を抑えて、手首を回転させることで操作をすることが可能となる。
また、各種の操作を行うための操作部は、横方向(水平方向)に並べられ、非常呼び出し手段10aも操作手段10の横に設けられているので、水平部8aやライニング5の上面に置いた手や腕をこれらに沿わせるようにして横方向に移動するだけで各種の操作を容易にすることができる。
【0041】
ここで、操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作性を向上させるためには、ライニング5の上面や水平部8aから操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作面までの鉛直方向(高さ方向)寸法、水平部8aから操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作面までの水平方向の寸法が重要となる。
【0042】
本発明者は検討の結果、図5(c)に示すように、ライニング5の上面から水平部8aの中心までの寸法Hを150mm以下とし、この範囲以内に操作手段10や非常呼び出し手段10aを設けるようにすれば、これらの操作性を向上させることができるとの知見を得た。
【0043】
また、水平部8aから操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作面までの水平方向の寸法Lを40mm以上、150mm以下とすれば、水平部8a側からの操作性を向上させることができるとの知見をも得た。この場合、寸法Lを40mm以上、70mm以下とすれば、水平部8aを握りながら指などで操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作をするのに好適である。また、寸法Lを70mm以上、150mm以下とすれば、水平部8aの上面に手や腕を置いて、拳、指の関節部分、手の甲などで操作手段10や非常呼び出し手段10aの操作をするのに好適である。
洗面器11は、便器2の前方であって第2のライニング5の上面に埋め込むようにして設けられている。洗面器11は、平面視が矩形をなし、下部に設けられているボウル部11aは漏斗状を呈している。そして、ボウル部11aの最も低い部分には図示しない排水口が設けられ、図示しない排水口にはこれも図示しない排水トラップを介して排水管が接続されている。
【0044】
また、ボウル部11aの開口縁部にはリム部11cが形成され、洗面器11の背面側の面は、上方に延長されて垂直な起立壁としての壁部11dを一体に形成している。
【0045】
壁部11dの上部には、水栓12が洗面器11の内部方向に向かって突出するようにして設けられている。
【0046】
水栓12の先端部には、下方に向かって吐水をすることができる図示しない吐水口が設けられている。また、水栓12は、第2のライニング5の内部に隠蔽されている図示しない給水源と接続されている。
【0047】
水栓12は、いわゆるスイッチ水栓とすることができる。そのため、水栓12のヘッド部(先端部)を押すことで吐水をさせることができ、再度ヘッド部を押すことで吐水を停止させることができる。そして、洗面器11の内側に吐水された水道水などの水は、ボウル部11aに設けられた図示しない排水口より外部に向けて排出される。
【0048】
また、水栓12を複数設けて、一部を温水用の水栓とすることもできるし、水栓12を湯水混合水栓とすることもできる。
また、吐水の形態は、例えば、シャワー状の吐水などとすることができるが、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。また、水石鹸を吐出させる液体石鹸供給器などを設けるようにすることもできる。
【0049】
本実施の形態における洗面器11は、ライニング5の上面に埋め込むようにして設けられている。また、後述するように、ライニング5の上面の高さも便器2に着座しているときの低い姿勢が考慮されている。そのため、設置位置が高くなることを抑制することができ、車椅子に乗車しているときのような低い姿勢からでも、洗面器11の内部に容易に手などを挿入することができる。また、ライニング5の上面との一体感を増して煩雑感を低減させることもできる。
【0050】
洗面器11の上方であってトイレブースなどの壁面には鏡13も設けられている。尚、鏡13は必ずしも必要ではなく、必要に応じて適宜設けるようにすることができる。
【0051】
跳ね上げ手すり4の右側には、主にオストメイトが使用する汚物流しユニット14が備えられている。
汚物流しユニット14には、ライニング6の前面に設置されたボウル30、ボウル30の上部開口付近の内壁に設けられた水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33、ボウル30の上方であってライニング6の上面に設けられたキャビネット34、キャビネット34の前面に設けられた鏡35などが備えられている。
図6は、ボウル30を例示するための模式図であり、図6(a)は模式平面図、図6(b)は模式正面図である。
また、図7は、ボウルの設置を例示するための模式断面図である。
ボウル30は、例えば、陶器、合成樹脂、合成樹脂にセラミック材、陶器粉を混入させたものなどからなるものとすることができる。
【0052】
図6、図7に示すように、ボウル30は、汚物の洗浄や投入がしやすいように上面が大きく開口され、前面110にはリップ部108が設けられている。リップ部108は、背の高いオストメイトであってもこのリップ部108に腹部を押し当てて容易に汚物の処理ができるような形状となっている。すなわち、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態で汚物を処理している最中に汚物が漏出しても汚物がボウル30の中に自然に入っていくように、ボウル30の外側に向けて凸状に湾曲した形状となっている。
【0053】
また、リップ部108は、ボウル30の溢れ面を形成している。ここでいう溢れ面とは、ボウル30の排水部109が詰まった時などに、ボウル30の外に汚水が流れ出す面のことである。このような溢れ面が形成されていると、排水部109が詰まるという異常事態が起きても、汚水は溢れ面から外に流れ出すので、他の部分が汚れることを抑制することができる。本実施の形態においては、図7に示すように、ボウル30の上面形状が前面110の方向(オストメイトが作業する側)に向けて下方傾斜をしているため前面110の側にあるリップ部108の高さが上面では一番低くなり、リップ部108が溢れ面となる。そのため、排水部109が詰まるという異常事態が起きても、汚水がライニング6の側に流れ出ることがなく、ライニング6やトイレブースの壁面などが汚れるのを抑制することができる。
【0054】
また、ボウル30の前面110(オストメイトが作業する側の面)は、下方になるに従いボウル30の背面側(前面110と対向する側の面)に近づくような方向に傾斜をしている。そのため、図7に示すように、ボウル30の下部に空間111が形成されるようになる。そして、この空間111に膝などを入れることで、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態で汚物の廃棄や洗浄などの作業をすることが容易となる。
また、ボウル30の側面112a、側面112bはボウル30の軸線に略平行な平面となっている。そのため、側面112a、側面112bを膝などで抱きかかえるようにして挟むこともできる。そして、側面112a、側面112bを膝などで挟むことができれば、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態で汚物の廃棄や洗浄などの作業をする際の作業の安定性を向上させることができる。
【0055】
図7に示すように、ボウル30の下部には封水部113が設けられている。そして、ボウル30の内部と排水部109とを封水部113を介して連通させることで、悪臭の発生を抑制しつつ汚物の排出ができるようになっている。尚、排水部109は図示しない排水管と接続されており、汚物が外部(例えば、下水管など)に排出できるようになっている。
ボウル30の前面110と対向する側の面には、開口縁部に連接する傾斜面115が設けられている。また、傾斜面115には、水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などを取り付けるための孔114が設けられている。そして、孔114に取り付けられた水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などの上端部分が、オストメイトが作業する側(前面10の側)の上方に向けて突出するようになっている。そのため、水栓31などを操作する際の作業性を向上させることができる。また、水栓31、液体石鹸供給器32などの吐水口をボウル30の内部に位置するようにすることができるので、オストメイトが汚物の廃棄や洗浄などの作業を行う際に汚物がボウル30の外部に飛び散ることを抑制することができる。
【0056】
尚、傾斜面115は必ずしも必要ではなく、水栓31などをボウルの上部開口付近の内壁(例えば、略垂直な内壁)に備えるようにすることもできる。ただし、傾斜面115を設けて、そこに水栓31などを備えるものとすれば、前述したように水栓31などを操作する際の作業性を向上させることができる。
【0057】
また、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33は、必ずしも傾斜面115に備えられている必要はない。例えば、ボウル30の上方のキャビネット34やライニング6などに備えるようにすることもできる。ただし、これらを傾斜面115に備えるようにすれば、移動を伴わずともこれらのものに手が届くので、オストメイトにとって使い易いシステムとすることができる。
【0058】
本実施の形態においては、このようにボウル30の背面側の上部開口付近の内壁に水栓31などの装置を備えるようにしているため、オストメイトが行う汚物の廃棄や洗浄などの作業の高さ方向位置と水栓31などの装置の高さ方向位置とを近接させることができる。すなわち、作業位置と作業に用いられる水栓31などの位置とを同一平面に近い状態とすることができる。そのため、オストメイトの目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓31などが介在することを極力抑制することができる。その結果、オストメイトの視線が遮られないので作業の視認性を大幅に向上させることができる。また、作業位置と作業に用いられる水栓31などの位置とが同一平面に近い状態にあるので、水栓31などの装置同士の間の隙間(例えば、水栓31と液体石鹸供給器32との間の隙間、水栓31とフラッシュバルブの操作部33との間の隙間)を通して作業を視認することも容易となる。
【0059】
また、水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などの装置をボウル30に直接設けるようにしているため、汚物流しユニット14の設置スペースを少なくすることもできる。オストメイトが使用をする汚物流しユニット14が備えられる多目的トイレは、駅のトイレや街の公衆トイレなどのパブリックスペースに設置されることが多い。このような、パブリックスペースなどでは、比較的狭いスペースしか確保できない場合もあるが、本実施の形態に係る汚物流しユニット14はそのような場所にも設置が可能となる。
【0060】
また、図7に示すように、ボウル30の上部の開口縁部にはリム部116が設けられている。そして、このリム部116の内壁面は、ボウル30の内壁面となだらかに連接するようになっている。また、リム部116の内壁面には、ボウル30内に噴出された水の旋回流を形成させるための案内部116aが設けられている。尚、案内部116aはその断面を凹状として、旋回流を形成させやすくすることもできる。
ボウル30には、案内部116aに向けて水道水などの水を噴出する噴出口116bが設けられ、噴出口116bには図示しない水タンクなどの給水源が接続されている。また、フラッシュバルブの操作部33を操作することにより、水タンクなどの給水源から水道水などの水が噴出口116bを介して案内部116aに噴出されるようになっている。そして、水道水などの水は、噴出口116bから水平方向に噴出され、噴出された水は案内部116aに沿ってボウル30の上縁部分をほぼ一周旋回しながら、ボウル30の壁面などに付着した汚物を封水113の内へ流し込む。すなわち、ボウル30内に噴出された水は案内部116aに沿うようにして旋回流を形成し、ボウル30の壁面などに付着した汚物を除去しつつ封水113の内へ流れ込む。封水113の中に流れ込んだ汚物はボウル30内に噴出された水とともに排水部109から外部に排出される。
【0061】
本実施の形態におけるリム部116の内壁面は、ボウル30の内壁面となだらかに連接するようになっている。そのため、内面壁に突出部や張り出し部がなく、突出部や張り出し部により水流が遮られるために汚物が付着しやすかったり、また、除去と清掃がし難いような部分が存在しない。また、汚物が付着、残留しやすいボウル30の上部には、洗浄と排出のための旋回流を形成させるようにしているので、ボウル30内に付着、残留する汚物を大幅に低減させることができる。その結果、清掃の手間を削減することができ、また、衛生面にも優れた汚物流しユニット14とすることができる。
本実施の形態においては、ボウル30の背面側の上面高さ(ボウル30の最も高い部分の高さ)と、ライニング6の上面高さとを近接させたものとしている。すなわち、ボウル30の上面と、ライニング6の上面とが近接する高さの位置となるようにしている。例えば、図7に例示をしたものでは、ボウル30の背面側の上面と、ライニング6の上面とが略同一の高さの位置となるようにしている。ただし、必ずしも同一高さとする必要はなく、両者の高さ方向の位置関係が近接していればよい。尚、後述する鏡35による視認性、扉34aの前方に形成されるスペースの有効利用などを考慮すれば、両者の高さが略同一か、ボウル30の背面側上面の高さの方が若干低くなるようにすることが好ましい。このように両者の高さを近接させたものとすれば、オストメイトが廃棄・洗浄作業をする高さ方向の位置と、ライニング6の上面の高さ位置とを極力近接させることができる。
【0062】
そのため、ライニング6の上面を、オストメイトが行う一連の作業に必要となるもの(例えば、タオルや着替えなど)を一時的に置く場所として利用するのに適した高さ、すなわち、オストメイトが行う作業姿勢のままでもこれらのものに手が届く高さとすることができる。その結果、オストメイトにとって使い易いシステムとすることができる。
【0063】
ここで、ライニング6の上面の高さ寸法を後述するもののようにすれば、オストメイトが廃棄・洗浄作業をする姿勢のままで物を置いたり、取ったりすることが容易となる。そして、ライニング6の上面の高さ寸法をこのようにすれば、ボウル30の背面側の上面高さ寸法もこれと近接したものとなるので、ボウル30のリップ部108の高さ寸法も低くすることができる。そのため、オストメイトがリップ部108に腹部を押し当て行う立ち作業のみならず、例えば、車椅子使用者がカテーテル内の尿を廃棄するような座り作業にも適した高さとすることができる。
【0064】
例えば、ライニング6の上面の高さ寸法を床から700mm以上、800mm以下とすれば、ボウル30のリップ部108の高さ寸法を650mm程度とすることができる。
【0065】
この場合、作業に必要となる水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などや、ライニング6の上面もすべて近接した高さにあるので、車椅子使用者などが行う座り作業においても作業性を向上させることができる。
【0066】
そして、ボウル30の背面側の上面高さと、ライニング6の上面高さとを近接させたものとしても、水栓31や液体石鹸供給器32などがボウル30内に設けられているので、作業にともなう水などでライニング6の上面が濡れることを抑制することができる。すなわち、ライニング6の上面は、いわゆるドライカウンターとして利用することができる。
【0067】
図1に示すように、ボウル30の背面側のライニング6の上部にはキャビネット34が設けられている。キャビネット34は、その内部に空間を有し、例えば、フラッシュバルブ37、電気温水器36、図示しない液体石鹸供給器のタンクなどを設置したり、メンテナンス用の部品、洗剤、トイレットペーパーなどの消耗品を収納させたりすることができる。キャビネット34の前面には開閉式の扉34aを設けることができ、内部に設置された装置などのメンテナンスや消耗品などの出し入れが容易となっている。扉34aは、いたずら行為を防止するため施錠可能、または、取っ手などを設けずに開けにくい構造とすることが好ましい。尚、キャビネット34の前面に扉を設けずに、例えば、側面などに扉を設けるようにすることもできる。
【0068】
また、キャビネット34の奥行き寸法を小さく(薄く)するものとすれば、扉34a前方のライニング6上面にスペースができるので、ここを一時的に物を置く場所として利用することが可能となる。また、キャビネット34の幅寸法を小さくすれば、キャビネット34側方のライニング6上面のスペースが拡がるので、物が置きやすくなる。
【0069】
キャビネット34の前面(図7に例示をしたように、扉34aが備えられたものの場合は扉34aの前面)には、鏡35が設けられている。鏡35は、オストメイトがストーマやストーマの周辺を視認することなどに用いる。オストメイトの体格によっては、腹などに隠れてストーマやその周辺が視認しづらい場合がある。そのような場合、鏡35を設けるものとすれば、ストーマやその周辺の洗浄状況やストーマの装着状況を視認することが容易となる。
【0070】
本実施の形態においては、鏡35をキャビネット34の扉34aに設けるものとしている。そのため、オストメイトが作業を行う場所の正面に鏡35が設けられていることになり、移動や体の向きを変えることなくストーマやストーマの周辺を視認することができる。
【0071】
この場合、鏡35の下端とライニング6の上面とが近接するようにすることが好ましい。鏡35の下端とライニング6の上面とが近接していれば、映し出すことができる範囲を拡げることができ、前述の視認が容易となる。例えば、図1や図7に例示をしたものでは、鏡35の下端とライニング6の上面とが当接する程度に近接させるものとしている。ただし、鏡35の下端とライニング6の上面とを当接させる必要はなく、隙間を設けるようにすることもできる。
【0072】
また、鏡35の前面位置とライニング6の前面位置とが近接するようにすることが好ましい。鏡35がライニング6の前面側にあるほど映し出すことができる範囲を拡げることができ、前述の視認が容易となる。この場合、鏡35をライニング6の前面側に出せば、扉34aの前面に形成されるスペースは少なくなる。そのため、キャビネット34内部に設けることが必要な空間の大きさ、扉34aの前面に形成されるスペースの必要性、ストーマやストーマの周辺に対する視認性などを考慮して、キャビネット34などの奥行き寸法を決めるようにすることが好ましい。
【0073】
本実施の形態に係るボウル30は、ボウル30の背面側の上面高さとライニング6の上面高さとを近接したものとしている。また、上面形状が前面110の方向(オストメイトが作業する側)に向けて下方傾斜をしている。そして、水栓31などはボウル30の背面側の上部開口付近の内壁に設けられている。そのため、鏡35の下端より上方に設けられるものが極めて少なく、鏡35に映し出すことができる範囲を拡げることができる。また、オストメイトの視線が水栓31などに遮られることもない。
【0074】
図8は、水栓31を例示するための模式斜視図である。
水栓31には、水道水などの水を吐水させるための吐水ヘッド119と、吐水ヘッド119に接続された可撓性のホース117と、ホース117の収納と引き出しが可能な水栓取り付け部118と、が設けられている。吐水ヘッド119は、水栓取り付け部118からホース117とともに引き出して使用することができ、水道水などの水を所望の位置や向きで吐水させることができる。吐水ヘッド119が水栓取り付け部118に装着されている状態では、水がボウル30内に落下しやすいように、吐水ヘッド119は若干前向きに傾斜して設置されている。
【0075】
そして、吐水ヘッド119を引き出さない状態での吐水方向が、ボウル30の内壁部に向かうようになっている。そのため、吐水ヘッド119が引き出されていない状態で吐水をすれば、ボウル30の内壁が常に洗い流され衛生面に優れた汚物流しユニット14となっている。また、吐水ヘッド119が水栓取り付け部118に装着されているままでもパウチ内などの洗浄がしやすいようにもなっている。また、吐水ヘッド119を引き出すことで、オストメイトが服を脱いでストーマやストーマ周辺を洗浄したり、ボウル30内部を局所的に洗浄したりすることがしやすいようにもなっている。
【0076】
また、水栓31は、いわゆるスイッチ水栓とすることができる。そのため、水栓31のヘッド部120を押すことで吐水をさせることができ、再度ヘッド部120を押すことで吐水を停止させることができる。吐水ヘッド119は、シャワー状の吐水をさせるものとすることができるが、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0077】
ホース117が吐水ヘッド119とともに水栓取り付け部118から引き出され、ボウル30の上部開口付近で吐水ヘッド119から吐水をさせる場合において、ホース117の撓んだ部分が封水部113の封水に触れないようなホース117の長さとすることが好ましい。
また、水栓取り付け部118にホース117を収納させやすいようにするため、ホース117の収納(水栓取り付け部118への引き込み)を助長する図示しない付勢手段を設けるようにすることもできる。
【0078】
本実施の形態においては、ボウル30の背面側の上部開口付近に水栓31を設けるようにしているため、オストメイトが行う洗浄作業の位置と水栓取り付け部118の位置とを近接させることができる。そのため、水栓取り付け部118からの吐水ヘッド119の引き出し量を少なくすることができ、その分、引き出されるホース117の長さを短くすることができる。その結果、ホース117のたわみ量をも少なくすることができ、撓んだホース117が封水部113に触れることを防止することができる。
【0079】
また、キャビネット34の内部に設けられた電気温水器36により、水栓31から温水を吐水させることもできる。また、温水と水道水などの水との混合割合を調整するための調整手段を設けて水栓31から吐水させる水の温度を調整するようにすることもできる。
【0080】
また、水栓31の配管には図示しないバキュームブレーカを設けるようにすることができる。バキュームブレーカは、ボウル30のリップ部108よりも上方に位置するようにして設けられる。そのようにすれば、汚水がバキュームブレーカの空気取り入れ口から侵入したり、吐水ヘッド119を汚物などで汚してしまったような場合でも上流側(水道水側)が汚されるのを抑制することができる。バキュームブレーカとしては、スイング弁を用いたものやダックビルを用いたものなどを採用することができる。尚、図示しないバキュームブレーカは、例えば、キャビネット34の内部に設けるようにすることができる。
【0081】
図9は、フラッシュバルブを例示するための模式図である。
フラッシュバルブ37は、ボウル30の内壁に付着した汚物などを水圧を利用して一気に洗い流すためのものであり、前述したように、操作部33を操作することにより、水タンクなどの給水源からの水が汚物流し用水配管124を介して噴出口116bから案内部116aに噴出されるようになっている。
【0082】
また、フラッシュバルブ37の下部(下流側)には、バキュームブレーカ122が設けられており、フラッシュバルブ37の左側部は上流側の水配管123と接続されている。そして、水配管123は図示しない水タンクなどの給水源と接続されている。
【0083】
また、バキュームブレーカ122は、ボウル30のリップ部108よりも上方に位置するようにして設けられている。そのようにすれば、汚水がバキュームブレーカの空気取り入れ口から侵入したり、上流側(水道水側)が汚物などにより汚されたりすることを抑制することができる。バキュームブレーカとしては、スイング弁を用いたものやダックビルを用いたものなどを採用することができる。尚、図1に示したように、フラッシュバルブ37はキャビネット34の内部に設けられている。
液体石鹸供給器32は、少量の液体石鹸を吐出可能とするものであり、図示しない液体石鹸を収容するためのタンクや吐出手段などを備えている。尚、液体石鹸供給器32は、必ずしも必要ではなく省くこともできるが、公衆衛生の観点からは設けられていた方が好ましい。また、液体石鹸供給器32の変わりに、あるいは液体石鹸供給器32とともに、消毒液供給器などを設けるようにすることもできる。尚、図示しない液体石鹸を収容するためのタンクは、例えば、キャビネット34の内部に設けるようにすることができる。
【0084】
図10は、電気温水器36を例示するための模式斜視図である。
図10に示すように、電気温水器36は、箱形状の本体51を備え、本体51の左側面には電源スイッチ52と湯温調節ダイヤル53が、前面には膨張弁操作レバー54、電源コード59、水抜栓67及び排水栓69が、上面には給水口55、出水口56、出湯口57、膨張水排水口58、吸気栓68がそれぞれ設けられている。また、本体51の内部には、図示しない貯湯タンク、貯湯タンク内の水を加熱するためのシーズヒータなどが設けられている。尚、電気温水器36は先止式であって、出水口56及び出湯口57よりも下流側の管路での開閉が可能となっている。
【0085】
第1のライニング6は、トイレブースなどの壁面から突出するようにして設けられ、その前面には、便器2、背もたれ3、跳ね上げ手すり4、汚物流しユニット14などが設けられている。また、上面には、キャビネット34が設けられている。
【0086】
ライニング6は、少なくとも前面と上面とが遮蔽された奥行方向に薄い箱形状を呈しており、図示しない堅牢なフレーム部材と複数枚の板状部材とから形成されている。尚、ライニング6の側面がトイレブースなどの空間に露出する場合には、これを側面板で覆うようにすることが好ましい。また、背面側(トイレブースなどの壁面側)、底面側(床面側)にも板状部材を設けるようにすることもできる。また、ライニング6の内部には、便器2の配管、便器2に設けられる図示しない衛生洗浄装置やフラッシュバルブなどの配管、図示しない衛生洗浄装置などの配線、ボウル30やボウル30に設けられる水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブの操作部33などの配管を設けるようにすることができる。
【0087】
第2のライニング5は、第1のライニング6が設けられたトイレブースの壁面と略直行する壁面から突出するようにして設けられている。そして、その前方には、ライニング6の前面と略平行な固定手すり8の水平部8a、その前面には、トイレットペーパーホルダー9、操作手段10、非常呼び出し手段10aなどが設けられている。また、上面には、手洗い器7、洗面器11が埋め込むようにして設けられている。
ライニング5は、少なくとも前面、上面、底面が遮蔽された奥行方向に薄い箱形状を呈しており、図示しない堅牢なフレーム部材と複数枚の板状部材とから形成されている。尚、ライニング6の側面がトイレブースなどの空間に露出する場合には、これを側面板で覆うようにすることが好ましい。また、背面側(トイレブースなどの壁面側)にも板状部材を設けるようにすることもできる。
また、ライニング6の上面と、ライニング5の上面とが略同一高さとなるように連設して設けられている。
【0088】
ライニング5の底面は、床面から所定の寸法だけ離間するようになっている。すなわち、ライニング5の底面と床面との間に空間5aが形成されるようになっている。ここで、ライニング5の底面から床面までの寸法は、車椅子のフットレスト部分が入る寸法とされている。そのため、車椅子のフットレスト部分が空間5aの中に侵入可能とされており、例えば、車椅子使用者がライニング5の上面に荷物などを置く場合などに、ライニング5に近づきやすいようになっている。この場合、空間5aの高さを300mm以上とすることが好ましい。尚、空間5aは必ずしも必要ではないが、設けられているものとすれば、前述したように車椅子によるライニング5への接近が容易となる。空間5aが設けられない場合は、必ずしも底面が遮蔽されている必要はなく、少なくとも前面と上面とが遮蔽されていればよい。ただし、そのような場合であっても、底面が遮蔽されているようにすることができる。
【0089】
ライニング5の内部には、手洗い器7や洗面器11などの配管や操作手段10、非常呼び出し手段10aなどの配線を設けるようにすることができる。
ここで、立ち座り行為が困難な障害者(例えば、下肢に麻痺などを持つ人)にとっては、靴やタオル、生理用品などが便座2bに着座した姿勢でも手が届く位置に置けることが好ましい。また、下肢に麻痺などを持つ人が自己導尿器具を使い排泄行為を行う際には、車椅子に乗ったままカテーテルやそのケース、消毒液、タオルなど様々な器具を身近に置いて作業をする必要がある。
【0090】
そのため、第1のライニング6や第2のライニング5の上面に、これらの荷物や用具などが置けるようにする必要がある。この場合、例えば、車椅子使用者が多目的トイレユニット1を使用する場合を考慮すると、第1のライニング6や第2のライニング5の高さ寸法が重要となる。
【0091】
また、便器2への着座や着座後の動作などを考慮すると、第1のライニング6や第2のライニング5がこれらの動作の障害とならないようにする必要がある。その場合においても、第1のライニング6や第2のライニング5の高さ寸法が重要となる。
【0092】
また、前述したように、第1のライニング6の前面には汚物流しユニット14のボウル30も設けられている。そのため、ライニング6の高さ寸法は、オストメイトが行う一連の作業に必要となるもの(例えば、タオルや着替えなど)を一時的に置く場所として利用するのに適した高さ、すなわち、オストメイトが行う作業姿勢のままでもこれらのものに手が届く高さとする必要がある。
【0093】
図11は、便器の高さとライニングの高さとの関係を比較例を用いて説明をするための模式図である。
図11に示すように、トイレブースなどの壁面から突出するようにしてライニング106が設けられ、その前面には便器100が設けられている。また、ライニング106の上方には、背もたれ103が設けられている。そして、便器100の側面側には、ライニング106とその上面を連接するようにしてライニング105が設けられている。
【0094】
図11に示す比較例においては、便器100に着座したときに使用者の首の下部付近にライニング106の上面付近が来るような高さ関係となっている。
【0095】
ここで、下肢に麻痺を有する人が車椅子から便器100に乗り移る際には、跳ね上げ手すり4と固定手すり8の水平部8aを手でつかみ、便器100の前方からライニング106の方向に向けて移動を行ういわゆる「馬乗り」動作を行う。このような場合、便器100の後方に高い壁(ライニング106)があると、頭がぶつかり移動が行いにくくなる。
【0096】
また、便座に着座した後にズボンなどを脱ぐ場合には、上体を後方にそらしながら腰を浮かせるいわゆる「のけぞり」動作を行う。このような場合も、便器100の後方に高い壁(ライニング106)があると、上体を後方にそらすことができず、腰を浮かせることができないのでズボンなどが脱ぎにくい。
【0097】
また、便座に着座した状態で、手洗い器7を使ったり、操作手段10を操作したり、跳ね上げ手すり4を操作したりする場合には、上体を回転させるようにするいわゆる「ひねり」動作を行う。このような場合、便器100の後方に高い壁(ライニング106)があったり、便器100の側方に高い壁(ライニング105)があったりすると、手、腕、肘などが当たるので「ひねり」動作を行いにくい。
【0098】
また、前述のように、車椅子に着座した状態においても、ライニングの上面に楽に荷物が置けたり、手が届いたりすることができるようにすることが好ましい。この場合、例えば、特許文献1に開示をされているような技術においては、ライニングの上面に車椅子使用者が荷物を置く場合についての考慮がされておらず、荷物を置く場合などの使い勝手に関して改良の余地を残していた。
【0099】
本発明者は検討の結果、便座2bに着座した人がライニング6の方向に向けてのけぞった場合(「のけぞり」動作を行った場合)に、ライニング6の上面の上方であって、ライニング6の前面とトイレブースなどの壁面との間に形成された空間に、着座した人の少なくとも肩甲骨より上の部位が侵入可能となるようなライニング6の上面の高さとすれば、「馬乗り」動作、「のけぞり」動作、「ひねり」動作を容易に行うことができ、かつ、車椅子に着座した状態においてもライニングの上面に楽に荷物が置けたり、手が届いたりすることができるとの知見を得た。
【0100】
この場合、便座2bに着座した人の肩甲骨の位置よりも低い位置にライニング6の上面を設けるようにすればよい。このような位置にライニング6の上面を設けるようにすれば、肩甲骨付近を上面の縁に押し当てるようにして「のけぞり」動作をすることができる。また、その際、前述の空間の中に着座した人の少なくとも肩甲骨より上の部位が侵入可能となる。
【0101】
また、本発明者はさらなる検討の結果、便器2の着座部分(便座2bの上面)からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とすれば「馬乗り」動作、「のけぞり」動作、「ひねり」動作をも容易に行うことができるとの知見を得た。そして、便器2の着座部分(便座2bの上面)の高さとライニング6の高さとの関係をこのようにすれば、車椅子に着座した状態においてもライニング6の上面に楽に荷物が置けたり、手が届いたりすることができるとの知見を得た。尚、ライニング5の上面もこれに合わせるようにすれば、手洗い器7を使ったり、操作手段10などを操作したりする場合の「ひねり」動作をも容易に行うことができ、また、車椅子に着座した状態においてもライニング5の上面に楽に荷物が置けたり、手が届いたりすることができる。
【0102】
そしてさらに、ライニング6の上面の高さを前述のようにすれば、オストメイトが行う一連の作業に必要となるもの(例えば、タオルや着替えなど)を一時的に置く場所として利用するのに適した高さ、すなわち、オストメイトが行う作業姿勢のままでもこれらのものに手が届く高さとすることができるとの知見をも得た。
【0103】
また、便器2への着座や着座後の動作、車椅子に着座した状態で荷物を置くことなどを考慮すれば、ライニング5、6上面の奥行き方向寸法は200mm以上とすることが好ましい。
【0104】
尚、例えば、床面から便器2の着座部分(便座2bの上面)までの高さを400mm程度とすれば、床面からライニング6の上面までの寸法(高さ)は700mm以上、800mm以下とすることができる。また、ライニング6の上面と、ライニング5の上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられているので、床面からライニング5の上面までの寸法(高さ)は700mm以上、800mm以下とすることができることになる。
【0105】
図12は、本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「馬乗り」動作を説明するための模式図である。
下肢に麻痺を有する人が車椅子から便器2に乗り移る際には、跳ね上げ手すり4と固定手すり8の水平部8aを手でつかみ、便器2の前方からライニング6の方向に向けて移動を行う(馬乗り動作)。
【0106】
この際、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、頭がライニング6に当たることがない。また、頭をライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることもできる。そのため、馬乗り動作を円滑に行うことができる。また、ライニング6の上端部付近には背もたれ3が設けられているので、これに手をかけて馬乗り動作を行えば円滑な動作を行うことができるし、また、前のめりになった場合でも背もたれ3がクッションとなる。
尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0107】
図13は、本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「のけぞり」動作を説明するための模式図である。
下肢に麻痺を有する人が便座に着座した後にズボンなどを脱ぐ場合には、上体を後方にそらしながら腰を浮かせるようにする(のけぞり動作)。
【0108】
このような場合においても、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、頭や肩などをライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易に後方にそらせて腰を浮かせることができる。その結果、ズボンなどの着脱を円滑に行うことができるようになる。
尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0109】
図14、図15は、本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「ひねり」動作を説明するための模式図である。
図14に示すように、便座に着座した状態で跳ね上げ手すり4を操作する場合には、上体を回転させて上体を跳ね上げ手すり4の方向に向かせるようにする(ひねり動作)。
【0110】
このような場合においても、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、肘や腕などをライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易にひねることができ、また、跳ね上げ手すり4を回動(上下)させるための操作も円滑に行うことができるようになる。
尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0111】
また、図15に示すように、便座に着座した状態で手洗い器7を使ったり、操作手段10などを操作したりする場合には、上体を回転させて上体を手洗い器7や操作手段10などの方向に向かせるようにする(ひねり動作)。
【0112】
このような場合においても、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、肘や腕などをライニング5、6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易にひねることができ、また、手洗い器7の操作や使用、操作手段10などの操作も円滑に行うことができるようになる。
尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0113】
次に、多目的トイレユニット1の作用について説明をする。
まず、車椅子使用者が便器2を使用する場合を説明する。
車椅子使用者は、必要に応じて荷物などをライニング5やライニング6の上面に置く。本実施の形態においては、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、ライニング5、6の上面の位置が低い。そのため、荷物などを楽に置くことができる。尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0114】
次に、車椅子で便器2の前方に近づき、「馬乗り」動作を行うことにより車椅子から便器2に移動する。この場合も、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、頭がライニング6に当たることがない。また、頭をライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることもできる。そのため、馬乗り動作を円滑に行うことができる。また、ライニング6の上端部付近には背もたれ3が設けられているので、これに手をかけて馬乗り動作を行えば円滑な動作を行うことができるし、また、前のめりになった場合でも背もたれ3がクッションとなる。尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
次に、便座2bに着座し、ズボンなどを脱ぐために「のけぞり」動作を行う。
このような場合においても、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、頭や肩などをライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易に後方にそらせて腰を浮かせることができ、ズボンなどの着脱を円滑に行うことができる。尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0115】
次に、便座2bに着座した状態で操作手段10などを操作するために「ひねり」動作を行う。この場合においても、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、肘や腕などをライニング5、6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易にひねることができ、また、操作手段10の操作も円滑に行うことができる。尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
また、固定手すり8の水平部8aの上方に操作手段10や非常呼び出し手段10aを設けるようにしているので、例えば、使用者がリウマチなどにより、指による操作が困難な場合であっても、水平部8aの上面に手や腕を置くことで不随意運動を抑えて、拳、指の関節部分、手の甲などによる操作が可能となる。
また、操作手段10や非常呼び出し手段10aは、ライニング5の上端近傍に設けられているので、例えば、使用者が手に麻痺を有する者であっても、カウンタ5の上面に手や腕を置くことでこれらを支え不随意運動を抑えて、手首を回転させることで操作をすることが可能となる。
また、各種の操作を行うための操作部は、横方向(水平方向)に並べられ、非常呼び出し手段10aも操作手段10の横に設けられているので、水平部8aやライニング5の上面に置いた手や腕をこれらに沿わせるようにして横方向に移動するだけで各種の操作を容易にすることができる。
【0116】
次に、図示しない操作手段によりフラッシュバルブ22を操作して、汚物を排出する。その後、便座2bに着座した状態で手洗い器7を使うために「ひねり」動作を行う。この場合においても、前述したように、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、上体を容易にひねることができ、また、手洗い器7の操作や使用も円滑に行うことができる。尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0117】
次に、必要があれば、便座2bに着座した状態で跳ね上げ手すり4を操作するために先程とは逆向きの「ひねり」動作を行う。この場合においても、前述したように、ライニング6の上面の位置が着座した人の肩甲骨よりも低い位置にあるので、肘や腕などをライニング6の上面の上方に形成される空間に入れることができる。そのため、上体を容易にひねることができ、また、跳ね上げ手すり4を回動(上下)させるための操作も円滑に行うことができる。尚、便器2の着座部分からライニング6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0118】
次に、前述したものとは逆の手順で便器2から車椅子に移動し、車椅子で便器2から離れる。そして、ライニング5やライニング6の上面に置いた荷物を取る。この場合においても、ライニング5、6の上面の位置が肩甲骨よりも低い位置にあるので、荷物などを楽に取ることができる。尚、便器2の着座部分からライニング5、6の上面までの寸法(高さの差)を300mm以上、400mm以下とした場合も同様である。
【0119】
次に、オストメイトが汚物流しユニット14を使用する場合について説明をする。
オストメイトは、汚物の廃棄・洗浄作業を行うに先立ち、一連の作業に必要となるもの、例えば、タオル、新しいパウチ、着替えなどをボウル30の近傍のライニング6の上面に置く。
【0120】
次に、身体に装着していたパウチを外して、水栓31から吐水される水でこのパウチの内部を洗浄したり、ストーマ及びその周辺を洗浄したりする。この際、図8に示したように、吐水ヘッド119を水栓取り付け部118から引き出して吐水をさせるようにすることができる。また、冬場などにおいては、水栓31から所望の温度の温水を吐水させることもできるし、液体石鹸供給器32から液体石鹸を出して、手やパウチなどの洗浄を行うこともできる。 本実施の形態に係る汚物流しユニット14においては、前述したように、ホース117の撓み量を少なくすることができるので、撓んだホース117が封水部113に触れることを防止することができる。そのため、洗浄作業の作業性を向上させることができるのみならず、衛生的でもある。
【0121】
また、前述したように、吐水ヘッド119を引き出さない状態での吐水方向が、ボウル30の内壁部に向かうようになっている。そのため、吐水ヘッド119が引き出されていない状態で吐水をすれば、ボウル30の内壁が常に洗い流され衛生的である。
【0122】
こうした汚物の廃棄・洗浄作業を行っている最中に、例えば、汚物がストーマから勢い良く飛び出したり、パウチ内やストーマ廻りの汚物の量、状態、洗い方などによって汚物が周囲に飛び散ったりして、不本意にも周辺を汚してしまうことがある。このような場合であっても、本実施の形態に係る汚物流しユニット14は、ボウル30のリム部116の内壁面がボウル30の内壁面となだらかに連接するようになっているため、汚物が付着しやすく、また、除去と清掃がし難い部分が存在しない。また、汚物が付着、残留しやすいボウル30の上部には、洗浄と排出のための旋回流を形成させるようにしているので、ボウル30内に付着、残留する汚物を大幅に低減させることができる。その結果、清掃の手間を削減することができるのみならず、衛生的でもある。
【0123】
次に、ストーマ及びその周辺を洗った後、タオルやトイレットペーパーなどでストーマやその周辺に付いた水を拭き取り、新しいパウチをストーマに装着する。
次に、操作部33を押し、フラッシュバルブ37を作動させてボウル30の内壁面を洗い流すとともに、排水部109を介して汚物をボウル30の外部に一気に排出させる。この際、吐水ヘッド119からも吐水をさせてボウル30の内壁を洗い流すようにすることもできるし、吐水ヘッド119を水栓取り付け部118から引き出して吐水をさせることで、ボウル30の各所などを洗浄することもできる。
【0124】
本実施の形態に係る汚物流しユニット14においては、洗浄などの作業位置と作業に用いられる水栓31などの位置とを同一平面に近い状態とすることができる。そのため、オストメイトの目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓31などが介在することを極力抑制することができる。その結果、オストメイトの視線が遮られないので作業の視認性を大幅に向上させることができる。また、作業位置と作業に用いられる水栓31などの位置とが同一平面に近い状態にあるので、水栓31などの装置同士の間の隙間(例えば、水栓31と液体石鹸供給器32との間の隙間、水栓31とフラッシュバルブの操作部33との間の隙間)を通して作業を視認することも容易となる。
【0125】
また、前述したように、オストメイトが作業を行う場所の正面には鏡35が設けられているので、移動や体の向きを変えることなくストーマやストーマの周辺を視認することができる。
また、鏡35の下端とライニング6の上面とが近接するようにしてあるので、映し出すことができる範囲が広く、かつ、オストメイトの視線が水栓31などに遮られることもないので前述の視認が容易となる。
【0126】
また、これら一連の作業において必要となる装置、例えば、水栓31、液体石鹸供給器32、フラッシュバルブ37の操作部33が廃棄・洗浄作業をする位置の近くに設けられている。そして、ライニング6の上面高さが低く、かつ、廃棄・洗浄作業をする位置とライニング6の上面の位置とが同一平面に近い状態となっている。そのため、オストメイトが行う作業姿勢のままでも、これらの装置やライニング6の上面に一時的に置いた物に容易に手が届くため、オストメイトにとって使い易いシステムとなっている。
【0127】
また、水栓31などをボウル30に直接設け、電気温水器36などもキャビネット34の内部に設けるようにしているので、汚物流しユニット1の設置スペースを少なくすることができる。そのため、設置スペースの狭いパブリックスペースなどにも設置が可能となりオストメイトにとって便利なシステムとなっている。
また、本実施の形態に係るボウル30は、そのリップ部108がボウル30の外側に向けて凸状に湾曲した形状をしている。そのため、背の高いオストメイトであってもリップ部108に腹部を押し当てやすく、容易に汚物の廃棄や洗浄をすることができる。
【0128】
また、ボウル30の前面110(オストメイトが作業する側の面)は、下方になるに従いボウル30の背面側(前面110対向する側の面)に近づくような方向に傾斜をしている。この傾斜により形成される空間111に膝などを入れることで、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態での汚物の廃棄や洗浄が容易となる。
【0129】
また、ボウル30の側面112a、側面112bはボウル30の軸線に略平行な平面となっている。そのため、側面112a、側面112bを膝などで挟むことができ、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部108に押し当てた状態での汚物の廃棄や洗浄作業の安定性を図ることができる。
【0130】
尚、説明の便宜上、多目的トイレユニット1に汚物流しユニット14が設けられている場合を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、例えば、図16に示すように、汚物流しユニット14が設けられておらず、便器2、跳ね上げ手すり4、カウンタ5、カウンタ6、手洗い器7、固定手すり8、洗面器11などが設けられているようなものとすることもできる。この場合、前述したものと同様の部分には、同じ符号を付しその説明は省略する。
【0131】
以上、本発明の実施の形態について説明をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
【0132】
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0133】
例えば、多目的トイレユニット1に設けられる各装置や各要素などの形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0134】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の実施の形態に係る多目的トイレユニットを例示するための模式斜視図である。
【図2】便器を例示するための模式断面図である。
【図3】跳ね上げ手すりを例示するための一部切欠模式断面図である。
【図4】手洗い器を例示するための模式斜視図である。
【図5】操作手段、非常呼び出し手段を例示するための模式図である。
【図6】ボウルを例示するための模式図である。
【図7】ボウルの設置を例示するための模式断面図である。
【図8】水栓を例示するための模式斜視図である。
【図9】フラッシュバルブを例示するための模式図である。
【図10】電気温水器を例示するための模式斜視図である。
【図11】便器の高さとライニングの高さとの関係を比較例を用いて説明をするための模式図である。
【図12】本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「馬乗り」動作を説明するための模式図である。
【図13】本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「のけぞり」動作を説明するための模式図である。
【図14】本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「ひねり」動作を説明するための模式図である。
【図15】本実施の形態に係る多目的トイレユニットにおける「ひねり」動作を説明するための模式図である。
【図16】本発明の他の実施の形態に係る多目的トイレユニットを例示するための模式斜視図である。
【符号の説明】
【0136】
1 多目的トイレユニット、2 便器、2b 便座、3 背もたれ、4 跳ね上げ手すり、5 ライニング、5a 空間、6 ライニング、7 手洗い器、8 固定手すり、9 トイレットペーパーホルダー、10 操作手段、10a 非常呼び出し手段、11 洗面器、12 水栓、13 鏡、14 汚物流しユニット、30 ボウル、34 キャビネット、35 鏡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面とが遮蔽された第1のライニングと、
前記トイレブースの前記第1の壁面と略直行する第2の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面と底面とが遮蔽された第2のライニングと、
前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、
前記第1のライニングの前面の前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、
前記第2のライニングと前記便器との間に設けられ、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、
前記便器の側方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、
前記便器の前方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、
前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、
前記便器の着座部分と、前記第1のライニングの上面との高さの差が、300mm以上、400mm以下であること、を特徴とする多目的トイレユニット。
【請求項2】
トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面とが遮蔽された第1のライニングと、
前記トイレブースの前記第1の壁面と略直行する第2の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面と底面とが遮蔽された第2のライニングと、
前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、
前記第1のライニングの前面であって、前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、
前記第2のライニングと前記便器との間に設けられ、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、
前記便器の側方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、
前記便器の前方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、
前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、
前記便器に着座した人が前記第1のライニングの方向に向けてのけぞった場合には、前記第1のライニングの上面の上方であって、前記第1のライニングの前面と前記第1の壁面との間に形成された空間に、前記着座した人の少なくとも肩甲骨より上の部位が侵入可能とされていること、を特徴とする多目的トイレユニット。
【請求項3】
前記第1のライニングの前記上面の高さは、床から700mm以上、800mm以下であること、を特徴とする請求項1または2に記載の多目的トイレユニット。
【請求項4】
前記第2のライニングの底面が床から離間するようにして設けられ、
前記底面と床面との間に形成された空間に、車椅子のフットレスト部分が侵入可能とされていること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項5】
前記空間の高さ寸法は、300mm以上であること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項6】
前記手すりの前記水平部の中心は、前記第2のライニングの前記上面から下方に150mmの範囲以内に設けられていること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項7】
前記手洗い器は、前記第2のライニングの前記上面方向および前記前面方向に開口を有すること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項8】
前記手洗い器は水栓を備え、
前記水栓は、前記手洗い器の内壁面に設けられていること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項9】
汚物流しユニットをさらに備え、
前記汚物流しユニットのボウルが、前記第1のライニングの前面であって前記跳ね上げ手すりを挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられていること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項10】
前記ボウルの上面と、前記第1のライニングの前記上面とが近接する高さの位置にあること、を特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項1】
トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面とが遮蔽された第1のライニングと、
前記トイレブースの前記第1の壁面と略直行する第2の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面と底面とが遮蔽された第2のライニングと、
前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、
前記第1のライニングの前面の前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、
前記第2のライニングと前記便器との間に設けられ、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、
前記便器の側方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、
前記便器の前方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、
前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、
前記便器の着座部分と、前記第1のライニングの上面との高さの差が、300mm以上、400mm以下であること、を特徴とする多目的トイレユニット。
【請求項2】
トイレブースの第1の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面とが遮蔽された第1のライニングと、
前記トイレブースの前記第1の壁面と略直行する第2の壁面から突出するようにして設けられた少なくとも前面と上面と底面とが遮蔽された第2のライニングと、
前記第1のライニングの前方に設けられた便器と、
前記第1のライニングの前面であって、前記便器を挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられた跳ね上げ手すりと、
前記第2のライニングと前記便器との間に設けられ、前記第2のライニングの前面と略平行な水平部を有する手すりと、
前記便器の側方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた手洗い器と、
前記便器の前方であって、前記第2のライニングの前記上面に埋め込むようにして設けられた洗面器と、を備え、
前記第1のライニングの前記上面と、前記第2のライニングの前記上面と、が略同一高さとなるように連設して設けられ、
前記便器に着座した人が前記第1のライニングの方向に向けてのけぞった場合には、前記第1のライニングの上面の上方であって、前記第1のライニングの前面と前記第1の壁面との間に形成された空間に、前記着座した人の少なくとも肩甲骨より上の部位が侵入可能とされていること、を特徴とする多目的トイレユニット。
【請求項3】
前記第1のライニングの前記上面の高さは、床から700mm以上、800mm以下であること、を特徴とする請求項1または2に記載の多目的トイレユニット。
【請求項4】
前記第2のライニングの底面が床から離間するようにして設けられ、
前記底面と床面との間に形成された空間に、車椅子のフットレスト部分が侵入可能とされていること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項5】
前記空間の高さ寸法は、300mm以上であること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項6】
前記手すりの前記水平部の中心は、前記第2のライニングの前記上面から下方に150mmの範囲以内に設けられていること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項7】
前記手洗い器は、前記第2のライニングの前記上面方向および前記前面方向に開口を有すること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項8】
前記手洗い器は水栓を備え、
前記水栓は、前記手洗い器の内壁面に設けられていること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項9】
汚物流しユニットをさらに備え、
前記汚物流しユニットのボウルが、前記第1のライニングの前面であって前記跳ね上げ手すりを挟んで前記第2のライニングと対向する側に設けられていること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【請求項10】
前記ボウルの上面と、前記第1のライニングの前記上面とが近接する高さの位置にあること、を特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の多目的トイレユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−284042(P2008−284042A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129903(P2007−129903)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(506369748)有限会社安田アトリエ (2)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(506369748)有限会社安田アトリエ (2)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]