多目的機
【課題】 本発明の課題は、苗移植機と播種機を含む複数種の作業機を選択的に装着できる多目的機の汎用性を高めることである。
【解決手段】 走行車体の後端部に昇降リンクを設け、苗移植機と播種機を含む複数種の作業機を選択的に装着するべく、前記作業機を着脱可能な着脱ヒッチを昇降リンクの先端部に設けた多目的機において、ロータ部(120)を着脱ヒッチよりも走行車体側に設けた多目的機とした。
また、排水溝を形成する排水用の作溝器を、上下方向に回動するアームの回動先端部に設け、アームを回動付勢する作溝器押圧スプリングを設け、作溝器押圧スプリングを操作して排水用の作溝器の圃場への押し付け荷重を変更する排水用作溝器上下用モータを設け、昇降制御における制御感度又は圃場の硬軟の検知結果に連動して、排水用作溝器上下用モータの作動を制御する制御部を設け、アームと一体のスタンドを設けた多目的機とした。
【解決手段】 走行車体の後端部に昇降リンクを設け、苗移植機と播種機を含む複数種の作業機を選択的に装着するべく、前記作業機を着脱可能な着脱ヒッチを昇降リンクの先端部に設けた多目的機において、ロータ部(120)を着脱ヒッチよりも走行車体側に設けた多目的機とした。
また、排水溝を形成する排水用の作溝器を、上下方向に回動するアームの回動先端部に設け、アームを回動付勢する作溝器押圧スプリングを設け、作溝器押圧スプリングを操作して排水用の作溝器の圃場への押し付け荷重を変更する排水用作溝器上下用モータを設け、昇降制御における制御感度又は圃場の硬軟の検知結果に連動して、排水用作溝器上下用モータの作動を制御する制御部を設け、アームと一体のスタンドを設けた多目的機とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗移植機や種などを圃場に直接播く播種機の複数の作業機を選択的に装着できる多目的機に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート付きの直播装置を備えた直播機が知られている。
なお、本明細書では直播機の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向いて左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−174794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された直播機は、フロートで圃場を均平化した直後にフロートに支持された直播装置で種を植え付けるが、直播の条間を変更することはできなかった。
しかし、ユーザーの用途、目的によっては直播の条間を変更したいことがある。
【0005】
本発明の課題は、苗移植機と播種機を含む複数種の作業機を選択的に装着できる多目的機の汎用性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、走行車体(2)の後端部に昇降リンク(14)を設け、苗移植機と播種機(3)を含む複数種の作業機を選択的に装着するべく、前記作業機を着脱可能な着脱ヒッチ(16)を昇降リンク(14)の先端部に設けた多目的機において、ロータ部(120)を着脱ヒッチ(16)よりも走行車体(2)側に設けた多目的機とした。
【0007】
請求項2記載の発明は、播種機(3)は、圃場を均平化するための複数のフロート(19)を各々のフロート取付構造体(100,101,102)に取り付け、各々のフロート(19)に播種用の作溝器(7)を取り付けた構成とし、フロート(19)の前後傾斜角を検出するフロートセンサ(84)を設け、フロートセンサ(84)の検出値が所定値となるよう播種機(3)を昇降制御する構成とし、播種機(3)の昇降制御における制御感度を変更する感度調節ダイヤル(85)を設け、土壌に突入して圃場の硬軟を検出する硬軟センサ(86)を設け、播種条の側方に排水溝を形成する排水用の作溝器(33)を、複数のフロート(19)の間で且つ上下方向に回動するアーム(35)の回動先端部に設け、アーム(35)を回動付勢する作溝器押圧スプリング(87)を設け、作溝器押圧スプリング(87)を操作して排水用の作溝器(33)の圃場への押し付け荷重を変更する排水用作溝器上下用モータ(105)を設け、感度調節ダイヤル(85)による播種部(3)の昇降制御における制御感度又は硬軟センサ(86)による圃場の硬軟の検知結果に連動して、排水用作溝器上下用モータ(105)の作動を制御する制御部(65a)を設け、アーム(35)と一体のスタンド(106)を設けた請求項1に記載の多目的機とした。
【0008】
請求項3記載の発明は、複数種の播種条間に対応する複数種のフロート取付構造体(100,101,102)を互いに左右方向の位置を異ならせて設け、フロート(19)を取り付けるフロート取付構造体(100,101,102)を選択することによりフロート(19)の左右方向の位置を変更可能な構成とし、複数個設けたフロート取付構造体(100,101,102)のうち、一部のフロート取付構造体(100、101)を、異なる播種条間のときの別種のフロート取付構造体として共用し得る位置に配置した請求項2に記載の多目的機とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、苗移植機を着脱ヒッチ(16)に装着すれば田植機となり、播種機(3)を着脱ヒッチ(16)に装着すれば直播機となり、多目的機を構成でき、しかも、田植機としたときも直播機としたときも共通のロータ部(120)をそのまま用いることができ、汎用性が高まる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、圃場の土壌の硬軟に連動して排水用の作溝器(33)の押し付け力を変更でき、土壌の硬軟に拘らず排水用の作溝器(33)により所定深さに作溝することができる。また、スタンド(106)を収納しない限り排水用の作溝器(33)が下がらないので、排水用の作溝器(33)の下げ忘れを防止することができる。さらに、スタンド(106)に溝切りの深さ調節のレバーの役割をさせることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、播種機(3)を装着したとき、複数のフロート(19)の左右方向の配置位置を複数種のフロート取付構造体(100〜102)により変更可能であるので、一つの播種機(3)で複数の条間で播種をすることができ、簡単な構造で作物の品種や地域ごとの栽培形態に応じて条間を変更することができ、また、一部のフロート取付構造体(100、101)を、異なる播種条間のときの別種のフロート取付構造体として共用できるので、汎用性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例の湛水直播機を示す側面図である。
【図2】本発明の実施例の湛水直播機を示す平面図である。
【図3】図3(a)は図1の湛水直播機の作業機の取り付け部のスチールボール及び規制溝を示す断面図、図3(b)は上下の規制溝を示す図、図3(c)は取付枠の一部を示す斜視図、図3(d)はヒッチと取付枠とが連結された状態を示す側面図である。
【図4】図1の湛水直播機の播種機の一部を示す背面図である。
【図5】図4の播種機の種子タンク及び繰出装置を示す断面側面図である。
【図6】図4の播種機の繰出装置を示す断面背面図である。
【図7】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の8条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図8】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の8条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図9】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の8条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図10】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の6条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図11】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の6条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図12】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の6条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図13】図1の湛水直播機のフロートへの施肥ガイドの肥料出口部の詰まり検出部の構成を示す側面図である。
【図14】図14は図1の湛水直播機のフロートへの排水用作溝器の取り付け部を示す側面図である。
【図15】図1の湛水直播機のフロートへの排水用作溝器の取り付け部を示す側面図である。
【図16】図1の湛水直播機における制御ブロック図である。
【図17】図17(a)、(b)は図1の湛水直播機にけるカルパーコーティングを利用する種植付構造図、図17(c)は円錐状カルパーコーティングの例を示す図である。
【図18】図1の湛水直播機におけるローラを用いてカルパーコーティングを圃場に打ち込む構成図である。
【図19】田植機の作業機部分を直播機の播種機と置換可能な作業装置の要部側面図である。
【図20】図20(a)は肥料繰出装置の平面断面図、図20(b)は図20(a)のA−A線断面図、図20(c)は2つの繰出装置から1種類の繰出物に対応して単一のホースを取り付ける場合のホース取り付け部の平面図である。
【図21】図1の湛水直播機の走行車両本体に作業機を連結する場合の各作業機のドッキング最適位置にきたら音声出力装置により報知するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は湛水直播機1を示すものであり、この湛水直播機1は走行車体2の後部に播種機3を装着して構成されている。前記播種機3は、種子タンク4、繰出装置5、移送管6、播種用作溝器7、その他、起風翼車8やエアチャンバ9等の付属装置から構成され、圃場に筋状に同時に8条分の播種を行うようになっている。
【0014】
そして、走行車体2は、操舵用の前輪10と推進用の後輪11とを設け、中央のエンジンルーム12上に操縦座席13、該操縦座席13の前側に前輪10を操舵するためのステアリングハンドル55を設けている。前記エンジンルーム12内の略中央に配置されたエンジン56の動力がエンジン出力ベルト57を介して中継軸58へ伝動され、該中継軸58の回転により油圧ポンプ59が駆動する。そして、中継軸58からベルト式の変速装置である主変速装置60を介してミッションケース61内へ伝動され、該ミッションケース61内の伝動ギヤの切替により路上走行速、作業速、中立及び後進速の4段階に走行速度を切り替えできる副変速装置(図示せず)を介して前輪10及び後輪11へ伝動され、水田の耕盤上を走行できる構成としている。
【0015】
また、ミッションケース61からの動力が後方へ延びる第一伝動軸63を介して後述する播種機3の繰出装置5の駆動を入切する繰出クラッチを内蔵する繰出クラッチケース62内へ伝動され、該繰出クラッチケース62のPTO軸から着脱可能な連結伝動軸64を介して播種機3へ伝動される構成となっている。なお、エンジン56の回転数を検出するエンジン回転数センサ56a(図16)の信号が操縦座席13の右側に設けた制御ボックス65内の制御部65aへ入力される。また、ステアリングハンドル55の右側の側方には前記主変速装置60を操作するための主変速レバー66、ステアリングハンドル55の左側の側方には前記副変速装置を操作するための副変速レバー67を設けており、該副変速レバー67の操作位置を検出する副変速レバーセンサ67a(図16)の信号が制御ボックス65内の制御部65aへ入力される。また、ミッションケース61の後方となる走行車体2の前後左右略中央位置には走行車体2の前後及び左右方向の傾斜を検出する傾斜センサ68を設け、該傾斜センサ68の信号が前記制御部65aへ入力される。
【0016】
昇降リンク14は、左右一対の上側リンク14aと下側リンク14bとからなり、前部が前記走行車体2の後部機枠15に枢着連結し、後部に連結用のヒッチ16を取り付け、車体2側の油圧シリンダ17によって昇降する構成としている。前記油圧シリンダ17は、単動式の油圧シリンダであり、前記油圧ポンプ59からの油圧が車体2側に設けた電磁油圧バルブ69による油路の切替で供給されて昇降リンク14を上方に回動させる。また、電磁油圧バルブ69による油路の切替で油圧シリンダ17内の油圧が油圧タンクを兼用する前記ミッションケース61へ戻されると、昇降リンク14が下方に回動する。
【0017】
図3にヒッチ16部分の拡大側面図を示すように、前記ヒッチ16には上方へ開放する上係止溝70及び前方へ開放する下係止溝71を上下に設けており、前記上係止溝70に播種機3側の取付枠72の上部に設けた上部軸73を係合させ、そのまま昇降リンク14を上方に回動させることにより播種機3の自重で取付枠72を前記上部軸73回りに前側へ回動させて前記下係止溝71に取付枠72の下部に設けた下部軸74を係合させ、ヒッチ16に播種機3を取り付けて支持する構成となっている。
【0018】
なお、前記下係止溝71に前記下部軸74が係合すると、該下部軸74が下係止溝71から外れないように固定する固定具75を設けている。固定具75は、ロック入切シリンダ75aのシリンダロッド部分でもあり、ロック入切シリンダ75aにより固定具75が作動する構成である。また、この固定具75は、ヒッチ16に設けた左右方向の軸回りに回動自在なボス76に挿通され、ボス76に対して摺動するのを規制する規制溝77を上下に備えている。
【0019】
ボス76に設けたスプリング78に付勢されたスチールボール79が前記規制溝77に係合し、下側の規制溝77がスチールボール79に係合して固定具75が上側に大きく突出するとき下部軸74が下係止溝71に対して係脱可能な固定解除状態となり、下側の規制溝77がスチールボール79に係合して固定具75が下側に押し込まれるとき下部軸74が下係止溝71に固定される固定状態となる。
【0020】
また、ヒッチ16に取付枠72を取り付けて固定した状態のとき、ロック入切シリンダ75aの作動によりヒッチ16の下端部に設けた穴80に固定具75の下端部が挿入され、ボス76が回動せず固定具75がヒッチ16に対して回動しないようになる。
【0021】
なお、固定具75の上端部はロック入切シリンダ75aのケース部分が昇降リンク14より右側にまで突出する把持部を形成しており、該把持部により昇降リンク14の右側で固定具75の操作が行える。また、ヒッチ16の下部には下係止溝71に係合された下部軸74を検出する下部軸センサ(昇降リンクセンサ)82、ヒッチ16の下端部には前記穴80に挿入された固定具75を検出する固定具スイッチ(ドッキングスイッチ)81を設け、該下部軸センサ82及び固定具スイッチ81が共にオンのとき、制御部65aはヒッチ16に取付枠72さらには播種機3が装着されたと判断してブザーなどの音声出力装置96を鳴らすようになっている。
【0022】
従って、下部軸センサ82及び固定具スイッチ81により、作業機の着脱を検出する作業機着脱センサが構成されている。この作業機着脱センサの信号が制御ボックス65内の制御部65aへ入力される。なお、このヒッチ16により、苗移植機や除草機や薬剤散布機等、播種機3を、それ以外の他の作業機に交換して走行車体2に装着することもできる。
【0023】
ところで、操縦座席13の右側に設けた播種昇降レバー18を操作すると、播種昇降レバーセンサ18a(図16)からの入力により制御ボックス65内の制御部65aを介して電磁油圧バルブ69へ出力され、油圧シリンダ17の作動により昇降リンク14を回動させて走行車体2に対して播種機3を昇降させるようになっている。また、前記播種昇降レバー18により播種機3を下降させると、播種機3の下部に設けたフロート19が圃場面に接地したことを該フロート19の前後傾斜角を検出するフロートセンサ84で検出し、該フロートセンサ84の検出値が所定値となるよう電磁油圧バルブ69が制御されて播種機3の対地高さが維持される構成となっている。
【0024】
なお、操縦座席13の左側に設けた感度設定ダイヤル85の操作により、前記フロートセンサ84の制御目標を変更して圃場の硬軟に応じて播種機3の昇降制御における制御感度を変更できる構成となっている。そして、圃場の畦際での旋回時には、前記播種昇降レバー18の操作により播種機3を上昇させて機体を旋回させるようになっている。また、播種昇降レバー18の操作により、繰出クラッチケース62内の繰出クラッチを操作して後述する播種機3の繰出装置5の駆動を入切できる構成となっている。
【0025】
次に播種機の構成を、図面に基づいて具体的に述べる。
まず、繰出装置5は、図5の縦断面図及び図6の図5のA−A線断面図に示すように、外周に多数の種子溝21を形成した繰り出しロール22を種子タンク4の下側に臨ませて伝動可能に軸架して設け、その下方には種子を搬送する移送管6の始端部を臨ませて設けた構成としている。なお、種子溝21は、図6に示すように、側部の調節具23を回転調節輪24の回転調節操作によって軸に沿わせて左右に摺動し、種子の貯留容積を大小調節できる構成としている。種子の繰出は入力ギヤ25により行う。
【0026】
そして、ブラシ26は、前記した繰り出しロール22の表面に接触して均す働きをして、種子溝21の種子量を均一にするために設けている。
種子タンク4は、走行車体2の後部に連結した取付枠72に設けられ、播種機3の構成部材の一つとして搭載している。なお、前記種子タンク4の前側には籾を入れた籾袋を載置するための載置台27(図1)を設けており、作業者が該載置台27に前記籾袋を載せた状態で籾袋内の籾を種子タンク4内へ供給することができ、種子タンク4ヘの種子(籾)の供給作業を容易に行える。なお、前記載置台27は、エアチャンバ9から支持フレーム28を介して支持されている。また、前記載置台27は、種子タンク4の上端よりも上側に設けられているので、上側から種子タンク4へ種子を容易に供給できる。
【0027】
図5に示すブラシ26の前後又は繰り出しロール22の回転方向後ろ側のブラシ26の側面に鉄板26aを追加する構成にすることで、長時間使用してもブラシ26の摩耗と変形が抑制される。
【0028】
つぎに、エアチャンバ9は、図4〜図6に示すように、円筒形状で前記繰出装置5の下側の後に横向きに配置して設け、一端に電動の起風翼車8を連結し、他端を蓋で密封して起風された空気を貯留できる構成としている。そして、移送管6は、その搬送始端部を開口して前記エアチャンバ9に連通して設け、高圧状態で貯留した空気(送風)が送り込まれ、前述のように上方から供給されてくる所定量の種子を空気搬送するように構成している。
【0029】
このようにして、移送管6は、その始端部をエアチャンバ9に連通し、その終端部側を圃場面に近い側に向けて延長し、播種位置に設けている播種用作溝器7の上部の種子供給口に向けて設けられている。そして、播種用作溝器7は、接地面に設けて表土を均しながら滑走する接地体であるフロート19に取り付け、前進に伴って整地された圃場面に噴出、播種する構成としている。なお、前記移送管6は中途部で2経路に分岐した構成となっており、1個の繰出装置5から2条分の播種を行うようになっている。
【0030】
そして、覆土板29は、図7のフロート19の設置部分の平面図に示すように、前述した播種用作溝器7を設けている播種条の後方にそれぞれ配置して設け、圃場面の硬軟を検出する硬軟センサ86(図1)から図7に示す連動ワイヤー31及び連杆30を介して角度を変更できる構成となっており、圃場の硬軟に拘らず圃場の播種位置において適正量の覆土が行える構成となっている。なお、前記硬軟センサ86は、土壌に突入する回転部86aが上下することにより圃場の硬軟を検出する構成となっている。
【0031】
また、複数個設けたフロート19の間には排水用の作溝器33を設けており、この排水用の作溝器33は前上方の左右方向の機枠34に取り付けるアーム35の回動軸35aの回りに回動自在に設けたアーム35の回動先端部に固着して設けている。前記排水用の作溝器33は、走行車体2の前進に伴って圃場面に排水溝を形成するように構成している。この排水用の作溝器33により、播種作業と同時に播種条の側方に沿わせて排水溝を形成することができ、播種後の圃場において迅速に排水(落水)や湛水を行うことができる。
【0032】
従来、湛水直播による水稲の栽培は、播種後そのまま水を溜めて発芽、育苗するのが慣行であり、湛水の保温効果によって寒さに弱い幼苗を寒さから護り、健苗として育苗することができると知られていたが、近年、播種後、落水して土壌を酸化状態におく方が出芽、育苗により効果的であることが発表されている。試験結果によると、播種後の土壌は、亀裂が入るくらい強く乾かした方が、成育後の倒伏防止や、鳥害を少なくすることに役立つと発表されている。
【0033】
なお、前記排水用作溝器33は、図7、図14に示すように、後輪11の通過した車輪跡を追うように進行して排水溝を形成する関係位置に構成している。なお、前記排水用作溝器33と前記後輪11との間には、幾分か後輪11の車輪跡を均すレーキ36を設けている。
【0034】
前記排水用作溝器33は、背面視V字型に折り曲げられたプレートにより構成され、該排水用作溝器33や前記アーム35の自重及び後述する作溝器押圧スプリング87(図14)により該アーム35が下側に回動して下端が圃場の土壌内に沈下して突入し、その状態で機体を進行させることにより、土壌を左右に押しのけながら作溝していく構成となっている。なお、排水用作溝器33は、下端部が後側へいくほど圃場面に対して下位となるように取り付けられている。
【0035】
また、本実施例では、図7の平面図に示すように播種機3の機枠34にはフロート19の取付箇所を複数設けておき、圃場への播種の条間を各種変更することができる。図7には播種の条間を30cm、26cm、20cmと三種類にそれぞれ設定するためのフロート19の各取付アーム100,101,102を複数個設けている。
【0036】
実線白抜き線で示す各一対のアーム100は播種の条間が30cmの場合に使用するフロート19の取り付け用のアームであり、黒太線で示す各一対のアーム101は播種の条間が26cmの場合に使用するフロート19の取り付け用のアームであり、点線で示す各一対のアーム102は播種の条間が20cmの場合に使用するフロート19の取り付け用のアームである。なおスペーサ103が適宜のアームに設けられフロート19への一対のアーム100〜102の取り付け間隔を調整可能になっている。
【0037】
図7には播種の条間を30cmにした場合の一対のアーム100を用いるフロート19の取り付け位置を示し、図8には播種の条間を26cmにした場合の一対のアーム101を用いるフロート19の取り付け位置を示し、図9には播種の条間を20cmにした場合の一対のアーム102などを用いるフロート19の取り付け位置を示す。なお、図9に示す播種の条間を20cmにした場合には両端の2つのサイドフロート19,19には一対のアーム102を用いてフロート19を取り付けるが、中央の2つのセンターフロート19,19では点線で示す取り付け用のアーム102がそれぞれ1個しかなく、もう一方の取り付け用のアームとして条間30cmの取り付け用の一対のアーム100の一方を用いる。
【0038】
また図10には播種の条間を30cmにした場合の6条用に使用する場合の実線白抜き線で示す各一対のアーム100をフロート19に取り付けた場合を示し、図11には播種の条間を26cmにした場合の6条用に使用する場合の黒太線で示す各一対のアーム101をフロート19に取り付けた場合を示し、図12には播種の条間を20cmにした場合の6条用に使用する場合の点線で示す一対のアーム102の一方と各一対のアーム101の一方をフロート19に取り付けた場合を示す。
【0039】
本実施例では図14に示すように、左右の前記排水用作溝器33のアーム35とワイヤ38及び作溝器押圧スプリング87を連繋させ、アーム35を介しての作溝器33の圃場押し付け力(荷重)が変化するように制御部65aが排水用作溝器上下用モータ105を作動制御する。また、感度設定ダイヤル85の設定値に応じて左右の前記排水用作溝器33の土壌への押し付け力が変化するように制御部65aが排水用作溝器上下用モータ105を作動制御する構成になっている。
【0040】
そしてオペレータが圃場の状態を観察して感度設定ダイヤル85により上下用モータ105の制御感度を、例えば1〜7までの7段階に変更できるように構成している。
従って、感度設定ダイヤル85による播種部3の昇降制御における制御感度に連動して、圃場内の土壌が硬いときには、前記作溝器押圧スプリング87の付勢力が強くなって排水用作溝器33の土壌への押し付け力が強くなるように制御部65aが排水用作溝器上下用モータ105を作動制御する。逆に、圃場内の土壌が軟かいことが検知されたときには、前記作溝器押圧スプリング87の付勢力が弱くなって排水用作溝器33の土壌への押し付け力が弱くなるように制御部65aが排水用作溝器上下用モータ105を作動制御する。
【0041】
これにより、圃場内の土壌の硬軟に連動して排水用作溝器33の土壌への押し付け力を変更する機構を備えているので、圃場内の土壌の硬軟に拘らず排水用作溝器33により所定深さに作溝することができる。
【0042】
なお、上述では感度設定ダイヤル85の操作に連動して排水用作溝器33の押し付け力を変更する構成としたが、前記硬軟センサ86の圃場の硬軟の程度を検知して、この検知結果に連動して排水用作溝器上下用モータ105の排水用作溝器33の押し付け力を変更する構成としてもよい。
【0043】
また、排水用作溝器33の押し付け力(荷重)の調整に代えて、図14に示す作溝器33の圃場面に対する傾斜角度(θ)と感度設定ダイヤル85による制御感度を連動させる構成とすることもできる。前記傾斜角度(θ)は排水用作溝器上下用モータ105によるアーム35の押し付け力の調整で行う。
【0044】
こうして、排水用作溝器33の傾斜角度を変えることで圃場の硬さに違いがあっても、圃場の硬さに拘わらず圃場の溝の深さを一定とすることで、溝からの排水性を維持できるようにする。
【0045】
従来は、排水用作溝器33の押し付け力が一定であったので、土壌が硬い圃場では排水用作溝器33の作溝深さが浅くなり、土壌が軟かい圃場では排水用作溝器33が土壌内に深く入り過ぎて溝が崩れてしまうおそれがあった。
【0046】
さらに排水用作溝器33の圃場面に対する傾斜角度(θ)の変更と圃場の硬軟センサ86(回転部86a)の検知結果を連動させることで、圃場の硬さに拘わらず圃場の溝の深さを一定とする構成にしても良く、この場合も溝からの排水性を良好に維持できる。
【0047】
図15にフロート19への排水用作溝器33の設置部分の側面図に示すように機枠34に設けた回動軸35aにアーム35と一体のスタンド106を回動自在に取り付け、該スタンド106を一点鎖線位置から実線位置に収納しない限り、排水用作溝器33が下がらない構成にすると、作溝器33の下げ忘れを防止することができる。
【0048】
さらに、スタンド106と排水用作溝器33を兼用にした際に、スタンド106が溝切りの深さ調節のレバーの役割をすることができる。
また、アーム35を上側へ起立するように回動させること(図14の一点鎖線位置)により、排水用作溝器33を対地浮上させると共にフロート19の後端より前側に収納することができる。これにより、路上走行時に機体をトラック等へ積載しての運搬時あるいは機体の格納等、排水用作溝器33が機体の後側に突出しないため、機体のコンパクト化が図れると共に、衝突による排水用作溝器33、さらにはアーム35の回動軸35a等を含めた各部の破損を抑えることができる。
【0049】
なお、排水性の良い水田で播種作業を行うときや畦際で機体を旋回させるときには、排水用作溝器33が対地浮上するようアーム35を上側へ回動させて排水溝を作らないようにし、排水溝の作溝により押しのけられた土壌や発生する水流が栽培に悪影響を与えるのを防止するようにしてもよい。特に、畦際での機体の旋回時に連動して排水用作溝器33を収納する構成とすれば、排水用作溝器33を畦に衝突させるようなことを防止できる。
【0050】
なお、図1及び図2に示すように、走行車体2の前端の取付軸88にアーム35が起立姿勢となるように該アーム35と共に排水用作溝器33を取り付けて収納することもできる。これにより、アーム35及び排水用作溝器33がウエイト代わりになって、後部に播種機3が装着される機体の前後重量バランスが向上する。
【0051】
また、図14に示すように左右方向の機枠34から後側に延びるステー39の後端部には、排水用作溝器33の下側への移動を規制するストッパ40を設けている。これにより、排水用作溝器33が必要以上に下動しないため、該排水用作溝器33、アーム35の回動軸35a等を含めた各部の破損を抑えることができる。そして、前記ストッパ40で規制される排水用作溝器33の下限位置で、該排水用作溝器33の前端(前下端)がフロート19の後部の上面より上側に位置するので、フロート19の上面を流れる泥流が排水用作溝器33の上側を通過しないようにして排水用作溝器33で作った溝を前記泥流で埋め戻さないようにできる。なお、排水用作溝器33と播種用作溝器7とは、前記播種用作溝器7が通過した後に、播種条の側方に沿わせて略平行に排水溝を形成する関係位置に配置して構成すればよい。
【0052】
また、この湛水直播機1には施肥機45を設けており、該施肥機45は走行車体2の後部に設けた肥料タンク46並びに繰出装置47と施肥ホース48とフロート19に取り付けた施肥用作溝器49と電動の起風翼車50とエアチャンバ51とを播種機3と同様に備えている。前記施肥機45は、圃場への播種の側方に施肥する構成となっており、播種機3と同様に圃場に筋状に同時に8条分の施肥を行うようになっている。
【0053】
従って、図7に示すように、フロート19には播種用作溝器7と施肥用作溝器49とが互いに近い位置に設けられ、播種用作溝器7より前側に施肥用作溝器49が配置されている。そして、これらの作溝器7,49は、下方から後方にかけて種子又は肥料の吐出口が設けられている。
【0054】
このように種子の移送管6と播種用作溝器7との間に隙間があるため、前側にある施肥用作溝器49から後方に噴き出る圧力風さらには該圧力風で吹き飛ばされる泥水が前記隙間に作用し、種子の移送管6から播種用作溝器7へ適正に種子が供給されなかったり、場合によっては播種用作溝器7に前記泥水が入って種子が播種用作溝器7内で詰まりやすくなったりして、播種精度が低下するおそれがある。特に、施肥用作溝器49からの粉粒体の吐出量が播種用作溝器7からの粉粒体の吐出量より多い上、施肥ホース48の方が種子の移送管6より前後に長いため、施肥ホース48へ強い圧力風が供給されるように設定しているので、施肥用作溝器49から噴き出る圧力風は極めて強く、上記の播種精度の低下を誘引しやすい。
【0055】
また、図13にフロート19の施肥用作溝器49の周辺部の側面図に示すように、フロート19の底面に固定された左右方向断面がV字形状の施肥用作溝器49の後部には施肥ホース48に接続した施肥ガイド108が設けられている。施肥ガイド108は、通電可能な金属板により平面視断面形状が後方に開いたU字状形状に成形され、各フロート19に各1体づつ固定されている。
【0056】
更に、施肥ガイド108の後側の傾斜状の開放部を塞ぐように絶縁材、例えばプラスチックで成型されたカバー109が取り付けられている。そのカバー109は上端部を施肥ガイド108に回動自在に係止され、下端部が係脱自在に施肥ガイド108に取り付けられている。カバー109の内壁面にはマイナス電極板110が取り付けられている。施肥ガイド108にはプラス側のリード線(図示せず)がネジ止めされており、施肥ガイド108自体がプラス側の電極となる。このプラス側の電極となる施肥ガイド108自体とマイナス側の電極となる前記電極板110とが施肥ガイド108内の肥料詰まりを検出する肥料詰まりセンサー機能を有する。
【0057】
カバー109の下端部を後方に移動するよう回動させると施肥ガイド108の後方側を開放状態とすることができるので、施肥ガイド108内に泥などが詰まったときに、それを取り除くのが容易にでき、また、カバー109があることにより、接地状態で後進したときに施肥ガイド108内に泥が侵入しにくくなっている。
【0058】
このとき図13に示すようにカバー109を設けた施肥ガイド108の上面は地面に対して斜め前方に傾斜状に配置されているので、カバー109の開閉と施肥ガイド108内部の点検が容易に行える。
【0059】
このように構成した播種機3を、整地作業が終わって湛水状態にした圃場に入れて肥料タンク46に肥料を充填し、種子タンク4には種子を充填して前進させて播種作業を開始する。すると、種子タンク4内の種子は、図5に示すように下方の回転している繰り出しロール22に達し、繰り出しロール22の外周の種子溝21にそれぞれ供給されて溜り回転方向に送られる。
【0060】
そのとき、種子溝21内の種子は、回転下手側にあるブラシ26に達して表面が均平に均されて定量となり、繰り出しロール22の回転に伴って下方の移送管6の搬送始端部に落下する。そのとき、エアチャンバ9は、起風翼車8によって起風された圧縮空気が貯留されており、連通している各移送管6に流入することになる。
【0061】
このようにして、種子は、エアチャンバ9から吹き込まれてくる圧風によって移送管6内を空気搬送されて先端側の播種用作溝器7に達し、フロート19によって整地された後の圃場に噴出、播種される。そして、覆土板29は、表土を掻き寄せ、種子が播かれている播種溝の上に覆土を行い、播種作業を完了する。
【0062】
一方、直播機で種籾などを圃場に播く場合に図17(a)に示すようにカルパーコーティング111を利用することができる。カルパーコーティング111は例えば円筒形状の筒内に種籾を多数充填しておき、これを圃場に順次植え付けるための物である。
【0063】
従って、圃場にカルパーコーティング111を植え付けた後に全体を見渡すことで、種籾の播き忘れのある箇所を容易に確認することができ、また、カルパーコーティング111は播種位置の目印となり、点播をより正確に行うことができる。
【0064】
カルパーコーティング111の形状を円筒状にする際、図17(b)に示すように種籾は下端に寄せてコーティングするので、圃場中への播種深さを均一化できる。カルパーコーティング111の下端が土中に埋まれば、覆土の必要がなくなるため、コストダウンができる。
【0065】
カルパーコーティング111を用いて種籾をする際、図17(c)に示すようにコーティングの形状を円錐状にして、円錐状の先端部を下向きにして圃場にカルパーコーティング111を植え付けると、カルパーコーティング111が播種位置の目印となり、点播をより正確に行うことができる。またカルパーコーティング111は、先端が下向きに尖った円錐状であるので、圃場面に刺さりやすく、倒れにくい長所がある。また、カルパーコーティング111の形状を円錐形状にする際に、種籾は頂点に寄せてコーティングする事が望ましい。
【0066】
こうして圃場への播種深さを均一化でき、また円錐形のカルパーコーティング111の頂点が土中に埋まれば、覆土の必要がなくなるためコストダウンができる。
カルパーコーティング111を直播する装置として、図18に示すような一対の水平方向に回転軸を設けたローラ112を隣接配置し、一対のローラ112を互いに内側に高速回転させて、そのローラ112間にカルパーコーティング111を上方から供給して、該一対のローラ112に接するカルパーコーティング111がローラ112の回転力で加速されて圃場に打ち込める構成を採用することができる。
【0067】
たとえ、コーティング種子が片荷重になっていても、また重い側(種子の入っている側)が上にあっても、回転するローラ112による摩擦力で、一対のローラ112に挟み込まれたカルパーコーティング111が高速移動する間に重い種子の入っている側を下にして播種でき、さらに覆土が必要なくなるのでコストダウンが可能となる。
【0068】
上述のように播種機3は走行車体2の前進に伴って湛水した圃場面に播種作業を行なうが、同時に、機枠34に取り付けられている排水用作溝器33が播種用作溝器7によって播種される播種条の側方に沿って略平行状に排水溝を作溝しながら前進している。この場合、排水用作溝器33は、後輪11の通過した跡上を前進しながら排水溝を作溝していくから比較的土壌抵抗が小さく、少ない消費馬力によって作溝することができる。
【0069】
この排水用作溝器33によって作溝した排水溝は、一端部を圃場における水の取入れ口に、他端部を圃場の排水口にそれぞれ鍬等で溝切りをして水が流れ易いように接続し、入水、排水が容易にできるように事後処理を行なうことが肝要である。一般的に、水田は土壌表面を充分均平に均すことが最低の必要条件であるが、これにより水田へ排水、入水を迅速に行うことができる。
【0070】
施肥機45の肥料タンク46の左右方向の側端部(右後端部)には、昇降リンク14を上方へ回動させるための上昇スイッチ90と前記昇降リンク14を下方へ回動させるための下降スイッチ91とを備えるスイッチボックス92(図1)を設けている。この上昇スイッチ90及び下降スイッチ91は、押しボタン式のスイッチであり、機体の右側に向けて設けられ、昇降リンク14さらにはヒッチ16が配置される走行車体2の端部(後端部)近傍に配置される。上昇スイッチ90を押し操作すると、該上昇スイッチ90からの信号が制御ボックス65内の制御部65aに入力され、該制御部65aから昇降リンク14を上方へ回動させるべく電磁油圧バルブ69へ出力される。
【0071】
同様に、下降スイッチ91を押し操作すると、該下降スイッチ91からの信号が前記制御部65aに入力され、該制御部65aから昇降リンク14を下方へ回動させるべく電磁油圧バルブ69へ出力される。なお、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91の押し操作が所定時間(1秒)以内であれば、その押し操作時間に拘らず昇降リンク14を所定の若干量だけ回動させる構成となっている。また、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91の押し操作が所定時間(1秒)を超過すれば、その押し操作している間だけ電磁油圧バルブ69を切り替えて昇降リンク14を連続的に回動させる構成となっている。
【0072】
以上により、走行車体2は、後端部に昇降アクチュエータとなる油圧シリンダ17により上下に回動する昇降リンク14を設け、該昇降リンク14の先端部(後端部)に播種機3を着脱可能な着脱ヒッチ16を設け、昇降リンク14が配置される後端部近傍に昇降リンク14を上方へ回動させるための上昇スイッチ90と前記昇降リンク14を下方へ回動させるための下降スイッチ91とを設け、該上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作する毎に昇降リンク14を所定量づつ回動させる制御手段と、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作している間だけ昇降リンク14を連続的に回動させる制御手段とを備える制御装置を設けている。
【0073】
従って、昇降リンク14の先端部に設けた着脱ヒッチ16を介して播種機3を装着し、必要に応じて油圧シリンダ17の駆動で昇降リンク14を上下に回動させて播種機3を昇降させることにより、走行しながら作業を行うことができ、着脱ヒッチ16を介して装着される作業機の種類を換えることにより、各種作業を行うことができる。そして、播種機3の着脱時には、作業者が昇降リンク14さらには着脱ヒッチ16の近傍で上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を操作することにより、昇降リンク14さらにはヒッチ16と播種機3さらには取付枠72との位置関係を機体の側方(右側)から容易に視認できるため、昇降リンク14を所望の高さに容易に回動させることができると共に、播種機3の着脱状態を確実に判断できて安全に播種機3の着脱作業が行える。更に、前記着脱作業において昇降リンク14を微小量だけ回動させたいときは、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作する毎に昇降リンク14を所定量づつ回動させることにより、昇降リンク14を所望の高さに容易に回動させることができる。
【0074】
しかも、昇降リンク14と播種機3との位置関係が大きく異なり、前記着脱作業において昇降リンク14を大きく回動させる必要があるときは、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91の操作により昇降リンク14を連続的に回動させることもできるため、すみやかに昇降リンク14を播種機3の高さに回動させることができて着脱作業の作業性が向上し、このときヒッチ16と取付枠72との連結が不完全で走行車体2や播種機3等が移動する等の不慮により、危険を回避するべく作業者が上昇スイッチ90又は下降スイッチ91から離れても、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91が操作されない限り昇降リンク14が回動しないので安全である。
【0075】
また、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91のように単純な押しボタン式の操作具により昇降リンク14を回動させる構成としたため、着脱作業における昇降リンク14の回動中、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を見ないで回動する昇降リンク14、着脱ヒッチ16、取付枠72並びに播種機3を集中的に見ながら作業することができ、播種機3を脱落させてしまう等の不慮の事故を未然に防止できて安全に作業が行える。
【0076】
さらに、昇降リンク14の右側には、播種機3側の電装品(電動の起風翼車8等)への電気配線のコネクタ94(図2)、連結伝動軸64(図2)及び固定具75(図3)のシリンダ(把持部)75aを配置している。従って、前記電気配線のコネクタ94、連結伝動軸64及び固定具75の把持部75aが図1に示す上昇スイッチ90及び下降スイッチ91と機体の左右方向で同じ側(右側)に配置されているので、播種機3を着脱する際に作業者が機体の左右一方(右側)から図2に示す電気配線のコネクタ94並びに連結伝動軸64の着脱並びに固定具75の固定/解除操作及び昇降リンク14の回動操作が行え、播種機3の着脱作業が容易になる。
【0077】
なお、走行車体2から播種機3側へ接続される操作ワイヤがあるときは、該操作ワイヤを昇降リンク14近くで分割可能に設けると共に上述と同様に昇降リンク14の右側に配索すれば、播種機3の着脱作業が容易になる。更に、昇降リンク14の左側すなわち上昇スイッチ90及び下降スイッチ91と機体の左右方向で反対側(左側)にエンジン56の排気を行うマフラー95(図1)を配置しており、前記機体の左右一方(右側)で作業を行う作業者がマフラー95からの排気を吸ったり該作業者にマフラー95からの熱が伝わったりすることが抑えられ、安全に且つ快適に着脱作業が行える。
【0078】
なお、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作したときは、電磁油圧バルブ69がパルス制御されるようにすることなどで播種昇降レバー18を操作したときよりも遅い速度で昇降リンク14が回動あるいは播種機3が昇降作動するように構成できる。これにより、播種機3の着脱作業を容易に行えると共に、不慮の事故を未然に防止できて安全に作業が行える。また、前記電気配線のコネクタ94(図2)を外した状態で上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作したときに播種機3の着脱作業中と判断して、遅い速度で昇降リンク14が回動あるいは播種機3が昇降作動するようにしてもよい。また、作業機着脱センサ(固定具ドッキングスイッチ81と昇降リンクセンサ82)により播種機3が完全に装着されたことを検出すると、制御部65aを介して音声出力装置96(図16)を作動させる構成とすることができる。これにより、作業者が播種機3の装着状態を容易に認識でき、着脱作業の安全性が向上する。
【0079】
また、走行車体2の制御部65aには、傾斜センサ68(図1)により機体が傾斜していることを検出するか、副変速レバーセンサ67aにより副変速レバー67を中立以外の走行可能な位置に操作していることを検出するか、前記電気配線のコネクタ94が接続されていることを制御部65aが判断するか、エンジン回転数センサ56aによりエンジン56(原動機)が駆動していることを検出するか、又は播種昇降レバーセンサ18aにより播種昇降レバー18(図2)を播種機3を駆動する位置あるいは播種機3を昇降作動させる位置に操作していることを検出すると、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を操作しても電磁油圧バルブ69(図16)への出力を禁止し、昇降リンク14が回動するのを牽制する牽制手段を備えている。
【0080】
これにより、走行車体2が移動したり着脱する連結伝動軸64が駆動したり播種機3が不意に昇降したりするおそれのあるとき、播種機3の着脱作業を牽制でき、作業者が播種機3を含む機体や駆動する連結伝動軸64に巻き込まれるようなことを防止でき、危険を回避できる。また、電気配線のコネクタ94が接続されたままで播種機3の着脱作業をすることによる電気配線の損傷を防止できる。
【0081】
また、ヒッチ16(図1,図2)側に識別用センサ、取付枠72(図1)側にバーコード等の識別要素を設け、該識別要素を前記識別用センサが検出することにより作業機の種類を判別できるように構成している。これにより、各種作業機に対応して作業機側のセンサからの情報を自動的に補正して制御に利用でき、作業機の着脱でわざわざ各センサの初期設定値を作業者が設定し直す必要がない。
【0082】
なお、前記センサの例としては、播種機3の昇降制御に使用するフロートセンサ84の他、ローリングシリンダ98(図1)による播種機3の左右ローリング制御に使用するために作業機の左右傾斜角度を検出する作業機左右傾斜角センサ99(図1)等が考えられる。
【0083】
また、異なる作業機で同種のセンサを使用している場合でも、各々の作業機が備えるセンサ自体の個体差があるため、上述の構成は有用である。なお、装着された作業機においてセンサの初期設定がなされていない場合は、音声出力装置96(図16)を作動させて作業者に告知する構成とすればよい。なお、識別要素としてバーコードを使用すれば多数の作業機に対応させることができ、走行車体2の汎用性が高まる。
【0084】
ところで、この発明の実施の形態における直播機1は走行車体2の後側に着脱可能な播種機3を設け、該播種機3の前側で走行車体2の後部に施肥機45を設けた構成としたが、施肥機45を走行車体2の後側に着脱可能に設け該施肥機45の前側で走行車体2の後部に播種機3を設けた構成とし、播種機3と施肥機45との配置を入れ替えた構成としてもよい。
【0085】
このとき、粉粒体の吐出量(繰出量)の多い施肥機45の施肥ホース48の方が播種機3の種子移送管6より前後方向で短くなって鉛直方向に近くなるため、施肥ホース48内で吐出量(繰出量)の多い肥料が詰まりにくくなり、作業性を向上させることができる。
【0086】
図19の作業機付きの多目的田植機においてフロート取り付け部の要部側面図に示すように作業機付きの多目的田植機においてロータ部120とフロート部121を走行車両の本機側に付属させておく構成とすることもできる。
【0087】
図19に示す構成とすることで、苗植付装置からなる作業機部分を本体側に対して着脱自在とすることができ、作業機である苗植付装置122に代えて播種機3として直播装置を取り付けると田植機でなく直播機になる。また、直播装置からなる播種機3を用いる直播機としたときにも、ロータ部120とフロート部121をそのまま用いることができる。
【0088】
図1等で示す直播機における肥料繰出装置47の構成として図20(a)の平面断面図に及び図20(b)の図20(a)のA−A線断面図に示すように、2種類の肥料などを繰り出す構成とすることができる。また繰出装置47の出口に設ける施肥ホース48として肥料繰出装置47から繰り出す物の種類により、繰り出し場所が異なるため、種類により肥料繰出装置47の出口部に取り付けるホース48を変更させる。
【0089】
肥料繰出装置47は2種類の繰出物を収納可能にした2室タイプの繰出装置47a,47bとし、各繰出装置47a,47bからの繰出物の出口部は、そこに取り付けるホース48の変更を容易にさせるロート先端部を先細としている。図20(b)には2種類の繰出物に対応した別々のホース48a、48bを取り付ける場合のホース形状を示し、図20(c)には2つの繰出装置47a,47bから1種類の繰出物に対応して単一のホース48を取り付ける場合のホース取付部平面図を示す。
【0090】
図21に示すように、作業機を走行車両本体に連結する場合のリンク部のドッキング時のリンク部の高さは連結する作業機のタイプにより異なる。そこで、昇降リンクセンサ82により設定された各作業機のドッキングの最適位置に作業機がきたことを検出すると作業機判定スイッチ93を押すことにより音声出力装置96が鳴る構成にした。
【0091】
例えば、マット田植機では「ピッ」と鳴り、点播機では「ピッピッ」と鳴り、また条播機では「ピッピッピッ」と鳴るように、ブザー音の形態を変えることで、多数の作業機の中の適切なものをドッキングする作業が容易となり、また安全確実に行える。
【0092】
さらに作業機のドッキング時に手順、注意事項を音声で流す構成にしてもよい。このとき作業機判定スイッチ93を押すと音声が流れると同時にリンク部のロックが解除される構成とする。
【0093】
本実施例の走行機体には左右線引きマーカー115が装着され、走行機体に基部が固着されたマーカー支持フレーム116の先端部にマーカー115が上下回動自在に枢着されている。そして、この左右線引きマーカー115は、圃場内で往復走行して播種作業するときに、作業走行中に未播種側の泥土面に線引きマーカー115を滑走させて、次行程作業走行路のセンターラインを線引き作用するものである。
【0094】
また走行機体の前端部左右中央位置に設けられたセンターマスコット117は、このセンターマスコット117を前行程で線引きマーカー115にて線引きされたセンターラインに合わせて播種作業走行すれば、前行程作業走行時に播種された播種条に対して所定の条間隔で播種作業走行することができる。
【0095】
なお、この発明の実施の形態は圃場に筋状に施肥及び播種を行う条播機について記述したが、圃場の所定間隔おきに粉粒体を吐出して間歇的に施肥又は播種を行う点播機であってもよい。
【0096】
本発明によれば、一つの播種機3で複数の条間で播種をすることができ、低コストで農作業が可能となり、利用可能性が高い。
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗移植機や種などを圃場に直接播く播種機の複数の作業機を選択的に装着できる多目的機に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート付きの直播装置を備えた直播機が知られている。
なお、本明細書では直播機の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向いて左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−174794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された直播機は、フロートで圃場を均平化した直後にフロートに支持された直播装置で種を植え付けるが、直播の条間を変更することはできなかった。
しかし、ユーザーの用途、目的によっては直播の条間を変更したいことがある。
【0005】
本発明の課題は、苗移植機と播種機を含む複数種の作業機を選択的に装着できる多目的機の汎用性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、走行車体(2)の後端部に昇降リンク(14)を設け、苗移植機と播種機(3)を含む複数種の作業機を選択的に装着するべく、前記作業機を着脱可能な着脱ヒッチ(16)を昇降リンク(14)の先端部に設けた多目的機において、ロータ部(120)を着脱ヒッチ(16)よりも走行車体(2)側に設けた多目的機とした。
【0007】
請求項2記載の発明は、播種機(3)は、圃場を均平化するための複数のフロート(19)を各々のフロート取付構造体(100,101,102)に取り付け、各々のフロート(19)に播種用の作溝器(7)を取り付けた構成とし、フロート(19)の前後傾斜角を検出するフロートセンサ(84)を設け、フロートセンサ(84)の検出値が所定値となるよう播種機(3)を昇降制御する構成とし、播種機(3)の昇降制御における制御感度を変更する感度調節ダイヤル(85)を設け、土壌に突入して圃場の硬軟を検出する硬軟センサ(86)を設け、播種条の側方に排水溝を形成する排水用の作溝器(33)を、複数のフロート(19)の間で且つ上下方向に回動するアーム(35)の回動先端部に設け、アーム(35)を回動付勢する作溝器押圧スプリング(87)を設け、作溝器押圧スプリング(87)を操作して排水用の作溝器(33)の圃場への押し付け荷重を変更する排水用作溝器上下用モータ(105)を設け、感度調節ダイヤル(85)による播種部(3)の昇降制御における制御感度又は硬軟センサ(86)による圃場の硬軟の検知結果に連動して、排水用作溝器上下用モータ(105)の作動を制御する制御部(65a)を設け、アーム(35)と一体のスタンド(106)を設けた請求項1に記載の多目的機とした。
【0008】
請求項3記載の発明は、複数種の播種条間に対応する複数種のフロート取付構造体(100,101,102)を互いに左右方向の位置を異ならせて設け、フロート(19)を取り付けるフロート取付構造体(100,101,102)を選択することによりフロート(19)の左右方向の位置を変更可能な構成とし、複数個設けたフロート取付構造体(100,101,102)のうち、一部のフロート取付構造体(100、101)を、異なる播種条間のときの別種のフロート取付構造体として共用し得る位置に配置した請求項2に記載の多目的機とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、苗移植機を着脱ヒッチ(16)に装着すれば田植機となり、播種機(3)を着脱ヒッチ(16)に装着すれば直播機となり、多目的機を構成でき、しかも、田植機としたときも直播機としたときも共通のロータ部(120)をそのまま用いることができ、汎用性が高まる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、圃場の土壌の硬軟に連動して排水用の作溝器(33)の押し付け力を変更でき、土壌の硬軟に拘らず排水用の作溝器(33)により所定深さに作溝することができる。また、スタンド(106)を収納しない限り排水用の作溝器(33)が下がらないので、排水用の作溝器(33)の下げ忘れを防止することができる。さらに、スタンド(106)に溝切りの深さ調節のレバーの役割をさせることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、播種機(3)を装着したとき、複数のフロート(19)の左右方向の配置位置を複数種のフロート取付構造体(100〜102)により変更可能であるので、一つの播種機(3)で複数の条間で播種をすることができ、簡単な構造で作物の品種や地域ごとの栽培形態に応じて条間を変更することができ、また、一部のフロート取付構造体(100、101)を、異なる播種条間のときの別種のフロート取付構造体として共用できるので、汎用性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例の湛水直播機を示す側面図である。
【図2】本発明の実施例の湛水直播機を示す平面図である。
【図3】図3(a)は図1の湛水直播機の作業機の取り付け部のスチールボール及び規制溝を示す断面図、図3(b)は上下の規制溝を示す図、図3(c)は取付枠の一部を示す斜視図、図3(d)はヒッチと取付枠とが連結された状態を示す側面図である。
【図4】図1の湛水直播機の播種機の一部を示す背面図である。
【図5】図4の播種機の種子タンク及び繰出装置を示す断面側面図である。
【図6】図4の播種機の繰出装置を示す断面背面図である。
【図7】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の8条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図8】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の8条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図9】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の8条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図10】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の6条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図11】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の6条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図12】図1の湛水直播機のフロートへの播種部の6条用条間変更可能な取り付け構造を説明する平面図である。
【図13】図1の湛水直播機のフロートへの施肥ガイドの肥料出口部の詰まり検出部の構成を示す側面図である。
【図14】図14は図1の湛水直播機のフロートへの排水用作溝器の取り付け部を示す側面図である。
【図15】図1の湛水直播機のフロートへの排水用作溝器の取り付け部を示す側面図である。
【図16】図1の湛水直播機における制御ブロック図である。
【図17】図17(a)、(b)は図1の湛水直播機にけるカルパーコーティングを利用する種植付構造図、図17(c)は円錐状カルパーコーティングの例を示す図である。
【図18】図1の湛水直播機におけるローラを用いてカルパーコーティングを圃場に打ち込む構成図である。
【図19】田植機の作業機部分を直播機の播種機と置換可能な作業装置の要部側面図である。
【図20】図20(a)は肥料繰出装置の平面断面図、図20(b)は図20(a)のA−A線断面図、図20(c)は2つの繰出装置から1種類の繰出物に対応して単一のホースを取り付ける場合のホース取り付け部の平面図である。
【図21】図1の湛水直播機の走行車両本体に作業機を連結する場合の各作業機のドッキング最適位置にきたら音声出力装置により報知するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は湛水直播機1を示すものであり、この湛水直播機1は走行車体2の後部に播種機3を装着して構成されている。前記播種機3は、種子タンク4、繰出装置5、移送管6、播種用作溝器7、その他、起風翼車8やエアチャンバ9等の付属装置から構成され、圃場に筋状に同時に8条分の播種を行うようになっている。
【0014】
そして、走行車体2は、操舵用の前輪10と推進用の後輪11とを設け、中央のエンジンルーム12上に操縦座席13、該操縦座席13の前側に前輪10を操舵するためのステアリングハンドル55を設けている。前記エンジンルーム12内の略中央に配置されたエンジン56の動力がエンジン出力ベルト57を介して中継軸58へ伝動され、該中継軸58の回転により油圧ポンプ59が駆動する。そして、中継軸58からベルト式の変速装置である主変速装置60を介してミッションケース61内へ伝動され、該ミッションケース61内の伝動ギヤの切替により路上走行速、作業速、中立及び後進速の4段階に走行速度を切り替えできる副変速装置(図示せず)を介して前輪10及び後輪11へ伝動され、水田の耕盤上を走行できる構成としている。
【0015】
また、ミッションケース61からの動力が後方へ延びる第一伝動軸63を介して後述する播種機3の繰出装置5の駆動を入切する繰出クラッチを内蔵する繰出クラッチケース62内へ伝動され、該繰出クラッチケース62のPTO軸から着脱可能な連結伝動軸64を介して播種機3へ伝動される構成となっている。なお、エンジン56の回転数を検出するエンジン回転数センサ56a(図16)の信号が操縦座席13の右側に設けた制御ボックス65内の制御部65aへ入力される。また、ステアリングハンドル55の右側の側方には前記主変速装置60を操作するための主変速レバー66、ステアリングハンドル55の左側の側方には前記副変速装置を操作するための副変速レバー67を設けており、該副変速レバー67の操作位置を検出する副変速レバーセンサ67a(図16)の信号が制御ボックス65内の制御部65aへ入力される。また、ミッションケース61の後方となる走行車体2の前後左右略中央位置には走行車体2の前後及び左右方向の傾斜を検出する傾斜センサ68を設け、該傾斜センサ68の信号が前記制御部65aへ入力される。
【0016】
昇降リンク14は、左右一対の上側リンク14aと下側リンク14bとからなり、前部が前記走行車体2の後部機枠15に枢着連結し、後部に連結用のヒッチ16を取り付け、車体2側の油圧シリンダ17によって昇降する構成としている。前記油圧シリンダ17は、単動式の油圧シリンダであり、前記油圧ポンプ59からの油圧が車体2側に設けた電磁油圧バルブ69による油路の切替で供給されて昇降リンク14を上方に回動させる。また、電磁油圧バルブ69による油路の切替で油圧シリンダ17内の油圧が油圧タンクを兼用する前記ミッションケース61へ戻されると、昇降リンク14が下方に回動する。
【0017】
図3にヒッチ16部分の拡大側面図を示すように、前記ヒッチ16には上方へ開放する上係止溝70及び前方へ開放する下係止溝71を上下に設けており、前記上係止溝70に播種機3側の取付枠72の上部に設けた上部軸73を係合させ、そのまま昇降リンク14を上方に回動させることにより播種機3の自重で取付枠72を前記上部軸73回りに前側へ回動させて前記下係止溝71に取付枠72の下部に設けた下部軸74を係合させ、ヒッチ16に播種機3を取り付けて支持する構成となっている。
【0018】
なお、前記下係止溝71に前記下部軸74が係合すると、該下部軸74が下係止溝71から外れないように固定する固定具75を設けている。固定具75は、ロック入切シリンダ75aのシリンダロッド部分でもあり、ロック入切シリンダ75aにより固定具75が作動する構成である。また、この固定具75は、ヒッチ16に設けた左右方向の軸回りに回動自在なボス76に挿通され、ボス76に対して摺動するのを規制する規制溝77を上下に備えている。
【0019】
ボス76に設けたスプリング78に付勢されたスチールボール79が前記規制溝77に係合し、下側の規制溝77がスチールボール79に係合して固定具75が上側に大きく突出するとき下部軸74が下係止溝71に対して係脱可能な固定解除状態となり、下側の規制溝77がスチールボール79に係合して固定具75が下側に押し込まれるとき下部軸74が下係止溝71に固定される固定状態となる。
【0020】
また、ヒッチ16に取付枠72を取り付けて固定した状態のとき、ロック入切シリンダ75aの作動によりヒッチ16の下端部に設けた穴80に固定具75の下端部が挿入され、ボス76が回動せず固定具75がヒッチ16に対して回動しないようになる。
【0021】
なお、固定具75の上端部はロック入切シリンダ75aのケース部分が昇降リンク14より右側にまで突出する把持部を形成しており、該把持部により昇降リンク14の右側で固定具75の操作が行える。また、ヒッチ16の下部には下係止溝71に係合された下部軸74を検出する下部軸センサ(昇降リンクセンサ)82、ヒッチ16の下端部には前記穴80に挿入された固定具75を検出する固定具スイッチ(ドッキングスイッチ)81を設け、該下部軸センサ82及び固定具スイッチ81が共にオンのとき、制御部65aはヒッチ16に取付枠72さらには播種機3が装着されたと判断してブザーなどの音声出力装置96を鳴らすようになっている。
【0022】
従って、下部軸センサ82及び固定具スイッチ81により、作業機の着脱を検出する作業機着脱センサが構成されている。この作業機着脱センサの信号が制御ボックス65内の制御部65aへ入力される。なお、このヒッチ16により、苗移植機や除草機や薬剤散布機等、播種機3を、それ以外の他の作業機に交換して走行車体2に装着することもできる。
【0023】
ところで、操縦座席13の右側に設けた播種昇降レバー18を操作すると、播種昇降レバーセンサ18a(図16)からの入力により制御ボックス65内の制御部65aを介して電磁油圧バルブ69へ出力され、油圧シリンダ17の作動により昇降リンク14を回動させて走行車体2に対して播種機3を昇降させるようになっている。また、前記播種昇降レバー18により播種機3を下降させると、播種機3の下部に設けたフロート19が圃場面に接地したことを該フロート19の前後傾斜角を検出するフロートセンサ84で検出し、該フロートセンサ84の検出値が所定値となるよう電磁油圧バルブ69が制御されて播種機3の対地高さが維持される構成となっている。
【0024】
なお、操縦座席13の左側に設けた感度設定ダイヤル85の操作により、前記フロートセンサ84の制御目標を変更して圃場の硬軟に応じて播種機3の昇降制御における制御感度を変更できる構成となっている。そして、圃場の畦際での旋回時には、前記播種昇降レバー18の操作により播種機3を上昇させて機体を旋回させるようになっている。また、播種昇降レバー18の操作により、繰出クラッチケース62内の繰出クラッチを操作して後述する播種機3の繰出装置5の駆動を入切できる構成となっている。
【0025】
次に播種機の構成を、図面に基づいて具体的に述べる。
まず、繰出装置5は、図5の縦断面図及び図6の図5のA−A線断面図に示すように、外周に多数の種子溝21を形成した繰り出しロール22を種子タンク4の下側に臨ませて伝動可能に軸架して設け、その下方には種子を搬送する移送管6の始端部を臨ませて設けた構成としている。なお、種子溝21は、図6に示すように、側部の調節具23を回転調節輪24の回転調節操作によって軸に沿わせて左右に摺動し、種子の貯留容積を大小調節できる構成としている。種子の繰出は入力ギヤ25により行う。
【0026】
そして、ブラシ26は、前記した繰り出しロール22の表面に接触して均す働きをして、種子溝21の種子量を均一にするために設けている。
種子タンク4は、走行車体2の後部に連結した取付枠72に設けられ、播種機3の構成部材の一つとして搭載している。なお、前記種子タンク4の前側には籾を入れた籾袋を載置するための載置台27(図1)を設けており、作業者が該載置台27に前記籾袋を載せた状態で籾袋内の籾を種子タンク4内へ供給することができ、種子タンク4ヘの種子(籾)の供給作業を容易に行える。なお、前記載置台27は、エアチャンバ9から支持フレーム28を介して支持されている。また、前記載置台27は、種子タンク4の上端よりも上側に設けられているので、上側から種子タンク4へ種子を容易に供給できる。
【0027】
図5に示すブラシ26の前後又は繰り出しロール22の回転方向後ろ側のブラシ26の側面に鉄板26aを追加する構成にすることで、長時間使用してもブラシ26の摩耗と変形が抑制される。
【0028】
つぎに、エアチャンバ9は、図4〜図6に示すように、円筒形状で前記繰出装置5の下側の後に横向きに配置して設け、一端に電動の起風翼車8を連結し、他端を蓋で密封して起風された空気を貯留できる構成としている。そして、移送管6は、その搬送始端部を開口して前記エアチャンバ9に連通して設け、高圧状態で貯留した空気(送風)が送り込まれ、前述のように上方から供給されてくる所定量の種子を空気搬送するように構成している。
【0029】
このようにして、移送管6は、その始端部をエアチャンバ9に連通し、その終端部側を圃場面に近い側に向けて延長し、播種位置に設けている播種用作溝器7の上部の種子供給口に向けて設けられている。そして、播種用作溝器7は、接地面に設けて表土を均しながら滑走する接地体であるフロート19に取り付け、前進に伴って整地された圃場面に噴出、播種する構成としている。なお、前記移送管6は中途部で2経路に分岐した構成となっており、1個の繰出装置5から2条分の播種を行うようになっている。
【0030】
そして、覆土板29は、図7のフロート19の設置部分の平面図に示すように、前述した播種用作溝器7を設けている播種条の後方にそれぞれ配置して設け、圃場面の硬軟を検出する硬軟センサ86(図1)から図7に示す連動ワイヤー31及び連杆30を介して角度を変更できる構成となっており、圃場の硬軟に拘らず圃場の播種位置において適正量の覆土が行える構成となっている。なお、前記硬軟センサ86は、土壌に突入する回転部86aが上下することにより圃場の硬軟を検出する構成となっている。
【0031】
また、複数個設けたフロート19の間には排水用の作溝器33を設けており、この排水用の作溝器33は前上方の左右方向の機枠34に取り付けるアーム35の回動軸35aの回りに回動自在に設けたアーム35の回動先端部に固着して設けている。前記排水用の作溝器33は、走行車体2の前進に伴って圃場面に排水溝を形成するように構成している。この排水用の作溝器33により、播種作業と同時に播種条の側方に沿わせて排水溝を形成することができ、播種後の圃場において迅速に排水(落水)や湛水を行うことができる。
【0032】
従来、湛水直播による水稲の栽培は、播種後そのまま水を溜めて発芽、育苗するのが慣行であり、湛水の保温効果によって寒さに弱い幼苗を寒さから護り、健苗として育苗することができると知られていたが、近年、播種後、落水して土壌を酸化状態におく方が出芽、育苗により効果的であることが発表されている。試験結果によると、播種後の土壌は、亀裂が入るくらい強く乾かした方が、成育後の倒伏防止や、鳥害を少なくすることに役立つと発表されている。
【0033】
なお、前記排水用作溝器33は、図7、図14に示すように、後輪11の通過した車輪跡を追うように進行して排水溝を形成する関係位置に構成している。なお、前記排水用作溝器33と前記後輪11との間には、幾分か後輪11の車輪跡を均すレーキ36を設けている。
【0034】
前記排水用作溝器33は、背面視V字型に折り曲げられたプレートにより構成され、該排水用作溝器33や前記アーム35の自重及び後述する作溝器押圧スプリング87(図14)により該アーム35が下側に回動して下端が圃場の土壌内に沈下して突入し、その状態で機体を進行させることにより、土壌を左右に押しのけながら作溝していく構成となっている。なお、排水用作溝器33は、下端部が後側へいくほど圃場面に対して下位となるように取り付けられている。
【0035】
また、本実施例では、図7の平面図に示すように播種機3の機枠34にはフロート19の取付箇所を複数設けておき、圃場への播種の条間を各種変更することができる。図7には播種の条間を30cm、26cm、20cmと三種類にそれぞれ設定するためのフロート19の各取付アーム100,101,102を複数個設けている。
【0036】
実線白抜き線で示す各一対のアーム100は播種の条間が30cmの場合に使用するフロート19の取り付け用のアームであり、黒太線で示す各一対のアーム101は播種の条間が26cmの場合に使用するフロート19の取り付け用のアームであり、点線で示す各一対のアーム102は播種の条間が20cmの場合に使用するフロート19の取り付け用のアームである。なおスペーサ103が適宜のアームに設けられフロート19への一対のアーム100〜102の取り付け間隔を調整可能になっている。
【0037】
図7には播種の条間を30cmにした場合の一対のアーム100を用いるフロート19の取り付け位置を示し、図8には播種の条間を26cmにした場合の一対のアーム101を用いるフロート19の取り付け位置を示し、図9には播種の条間を20cmにした場合の一対のアーム102などを用いるフロート19の取り付け位置を示す。なお、図9に示す播種の条間を20cmにした場合には両端の2つのサイドフロート19,19には一対のアーム102を用いてフロート19を取り付けるが、中央の2つのセンターフロート19,19では点線で示す取り付け用のアーム102がそれぞれ1個しかなく、もう一方の取り付け用のアームとして条間30cmの取り付け用の一対のアーム100の一方を用いる。
【0038】
また図10には播種の条間を30cmにした場合の6条用に使用する場合の実線白抜き線で示す各一対のアーム100をフロート19に取り付けた場合を示し、図11には播種の条間を26cmにした場合の6条用に使用する場合の黒太線で示す各一対のアーム101をフロート19に取り付けた場合を示し、図12には播種の条間を20cmにした場合の6条用に使用する場合の点線で示す一対のアーム102の一方と各一対のアーム101の一方をフロート19に取り付けた場合を示す。
【0039】
本実施例では図14に示すように、左右の前記排水用作溝器33のアーム35とワイヤ38及び作溝器押圧スプリング87を連繋させ、アーム35を介しての作溝器33の圃場押し付け力(荷重)が変化するように制御部65aが排水用作溝器上下用モータ105を作動制御する。また、感度設定ダイヤル85の設定値に応じて左右の前記排水用作溝器33の土壌への押し付け力が変化するように制御部65aが排水用作溝器上下用モータ105を作動制御する構成になっている。
【0040】
そしてオペレータが圃場の状態を観察して感度設定ダイヤル85により上下用モータ105の制御感度を、例えば1〜7までの7段階に変更できるように構成している。
従って、感度設定ダイヤル85による播種部3の昇降制御における制御感度に連動して、圃場内の土壌が硬いときには、前記作溝器押圧スプリング87の付勢力が強くなって排水用作溝器33の土壌への押し付け力が強くなるように制御部65aが排水用作溝器上下用モータ105を作動制御する。逆に、圃場内の土壌が軟かいことが検知されたときには、前記作溝器押圧スプリング87の付勢力が弱くなって排水用作溝器33の土壌への押し付け力が弱くなるように制御部65aが排水用作溝器上下用モータ105を作動制御する。
【0041】
これにより、圃場内の土壌の硬軟に連動して排水用作溝器33の土壌への押し付け力を変更する機構を備えているので、圃場内の土壌の硬軟に拘らず排水用作溝器33により所定深さに作溝することができる。
【0042】
なお、上述では感度設定ダイヤル85の操作に連動して排水用作溝器33の押し付け力を変更する構成としたが、前記硬軟センサ86の圃場の硬軟の程度を検知して、この検知結果に連動して排水用作溝器上下用モータ105の排水用作溝器33の押し付け力を変更する構成としてもよい。
【0043】
また、排水用作溝器33の押し付け力(荷重)の調整に代えて、図14に示す作溝器33の圃場面に対する傾斜角度(θ)と感度設定ダイヤル85による制御感度を連動させる構成とすることもできる。前記傾斜角度(θ)は排水用作溝器上下用モータ105によるアーム35の押し付け力の調整で行う。
【0044】
こうして、排水用作溝器33の傾斜角度を変えることで圃場の硬さに違いがあっても、圃場の硬さに拘わらず圃場の溝の深さを一定とすることで、溝からの排水性を維持できるようにする。
【0045】
従来は、排水用作溝器33の押し付け力が一定であったので、土壌が硬い圃場では排水用作溝器33の作溝深さが浅くなり、土壌が軟かい圃場では排水用作溝器33が土壌内に深く入り過ぎて溝が崩れてしまうおそれがあった。
【0046】
さらに排水用作溝器33の圃場面に対する傾斜角度(θ)の変更と圃場の硬軟センサ86(回転部86a)の検知結果を連動させることで、圃場の硬さに拘わらず圃場の溝の深さを一定とする構成にしても良く、この場合も溝からの排水性を良好に維持できる。
【0047】
図15にフロート19への排水用作溝器33の設置部分の側面図に示すように機枠34に設けた回動軸35aにアーム35と一体のスタンド106を回動自在に取り付け、該スタンド106を一点鎖線位置から実線位置に収納しない限り、排水用作溝器33が下がらない構成にすると、作溝器33の下げ忘れを防止することができる。
【0048】
さらに、スタンド106と排水用作溝器33を兼用にした際に、スタンド106が溝切りの深さ調節のレバーの役割をすることができる。
また、アーム35を上側へ起立するように回動させること(図14の一点鎖線位置)により、排水用作溝器33を対地浮上させると共にフロート19の後端より前側に収納することができる。これにより、路上走行時に機体をトラック等へ積載しての運搬時あるいは機体の格納等、排水用作溝器33が機体の後側に突出しないため、機体のコンパクト化が図れると共に、衝突による排水用作溝器33、さらにはアーム35の回動軸35a等を含めた各部の破損を抑えることができる。
【0049】
なお、排水性の良い水田で播種作業を行うときや畦際で機体を旋回させるときには、排水用作溝器33が対地浮上するようアーム35を上側へ回動させて排水溝を作らないようにし、排水溝の作溝により押しのけられた土壌や発生する水流が栽培に悪影響を与えるのを防止するようにしてもよい。特に、畦際での機体の旋回時に連動して排水用作溝器33を収納する構成とすれば、排水用作溝器33を畦に衝突させるようなことを防止できる。
【0050】
なお、図1及び図2に示すように、走行車体2の前端の取付軸88にアーム35が起立姿勢となるように該アーム35と共に排水用作溝器33を取り付けて収納することもできる。これにより、アーム35及び排水用作溝器33がウエイト代わりになって、後部に播種機3が装着される機体の前後重量バランスが向上する。
【0051】
また、図14に示すように左右方向の機枠34から後側に延びるステー39の後端部には、排水用作溝器33の下側への移動を規制するストッパ40を設けている。これにより、排水用作溝器33が必要以上に下動しないため、該排水用作溝器33、アーム35の回動軸35a等を含めた各部の破損を抑えることができる。そして、前記ストッパ40で規制される排水用作溝器33の下限位置で、該排水用作溝器33の前端(前下端)がフロート19の後部の上面より上側に位置するので、フロート19の上面を流れる泥流が排水用作溝器33の上側を通過しないようにして排水用作溝器33で作った溝を前記泥流で埋め戻さないようにできる。なお、排水用作溝器33と播種用作溝器7とは、前記播種用作溝器7が通過した後に、播種条の側方に沿わせて略平行に排水溝を形成する関係位置に配置して構成すればよい。
【0052】
また、この湛水直播機1には施肥機45を設けており、該施肥機45は走行車体2の後部に設けた肥料タンク46並びに繰出装置47と施肥ホース48とフロート19に取り付けた施肥用作溝器49と電動の起風翼車50とエアチャンバ51とを播種機3と同様に備えている。前記施肥機45は、圃場への播種の側方に施肥する構成となっており、播種機3と同様に圃場に筋状に同時に8条分の施肥を行うようになっている。
【0053】
従って、図7に示すように、フロート19には播種用作溝器7と施肥用作溝器49とが互いに近い位置に設けられ、播種用作溝器7より前側に施肥用作溝器49が配置されている。そして、これらの作溝器7,49は、下方から後方にかけて種子又は肥料の吐出口が設けられている。
【0054】
このように種子の移送管6と播種用作溝器7との間に隙間があるため、前側にある施肥用作溝器49から後方に噴き出る圧力風さらには該圧力風で吹き飛ばされる泥水が前記隙間に作用し、種子の移送管6から播種用作溝器7へ適正に種子が供給されなかったり、場合によっては播種用作溝器7に前記泥水が入って種子が播種用作溝器7内で詰まりやすくなったりして、播種精度が低下するおそれがある。特に、施肥用作溝器49からの粉粒体の吐出量が播種用作溝器7からの粉粒体の吐出量より多い上、施肥ホース48の方が種子の移送管6より前後に長いため、施肥ホース48へ強い圧力風が供給されるように設定しているので、施肥用作溝器49から噴き出る圧力風は極めて強く、上記の播種精度の低下を誘引しやすい。
【0055】
また、図13にフロート19の施肥用作溝器49の周辺部の側面図に示すように、フロート19の底面に固定された左右方向断面がV字形状の施肥用作溝器49の後部には施肥ホース48に接続した施肥ガイド108が設けられている。施肥ガイド108は、通電可能な金属板により平面視断面形状が後方に開いたU字状形状に成形され、各フロート19に各1体づつ固定されている。
【0056】
更に、施肥ガイド108の後側の傾斜状の開放部を塞ぐように絶縁材、例えばプラスチックで成型されたカバー109が取り付けられている。そのカバー109は上端部を施肥ガイド108に回動自在に係止され、下端部が係脱自在に施肥ガイド108に取り付けられている。カバー109の内壁面にはマイナス電極板110が取り付けられている。施肥ガイド108にはプラス側のリード線(図示せず)がネジ止めされており、施肥ガイド108自体がプラス側の電極となる。このプラス側の電極となる施肥ガイド108自体とマイナス側の電極となる前記電極板110とが施肥ガイド108内の肥料詰まりを検出する肥料詰まりセンサー機能を有する。
【0057】
カバー109の下端部を後方に移動するよう回動させると施肥ガイド108の後方側を開放状態とすることができるので、施肥ガイド108内に泥などが詰まったときに、それを取り除くのが容易にでき、また、カバー109があることにより、接地状態で後進したときに施肥ガイド108内に泥が侵入しにくくなっている。
【0058】
このとき図13に示すようにカバー109を設けた施肥ガイド108の上面は地面に対して斜め前方に傾斜状に配置されているので、カバー109の開閉と施肥ガイド108内部の点検が容易に行える。
【0059】
このように構成した播種機3を、整地作業が終わって湛水状態にした圃場に入れて肥料タンク46に肥料を充填し、種子タンク4には種子を充填して前進させて播種作業を開始する。すると、種子タンク4内の種子は、図5に示すように下方の回転している繰り出しロール22に達し、繰り出しロール22の外周の種子溝21にそれぞれ供給されて溜り回転方向に送られる。
【0060】
そのとき、種子溝21内の種子は、回転下手側にあるブラシ26に達して表面が均平に均されて定量となり、繰り出しロール22の回転に伴って下方の移送管6の搬送始端部に落下する。そのとき、エアチャンバ9は、起風翼車8によって起風された圧縮空気が貯留されており、連通している各移送管6に流入することになる。
【0061】
このようにして、種子は、エアチャンバ9から吹き込まれてくる圧風によって移送管6内を空気搬送されて先端側の播種用作溝器7に達し、フロート19によって整地された後の圃場に噴出、播種される。そして、覆土板29は、表土を掻き寄せ、種子が播かれている播種溝の上に覆土を行い、播種作業を完了する。
【0062】
一方、直播機で種籾などを圃場に播く場合に図17(a)に示すようにカルパーコーティング111を利用することができる。カルパーコーティング111は例えば円筒形状の筒内に種籾を多数充填しておき、これを圃場に順次植え付けるための物である。
【0063】
従って、圃場にカルパーコーティング111を植え付けた後に全体を見渡すことで、種籾の播き忘れのある箇所を容易に確認することができ、また、カルパーコーティング111は播種位置の目印となり、点播をより正確に行うことができる。
【0064】
カルパーコーティング111の形状を円筒状にする際、図17(b)に示すように種籾は下端に寄せてコーティングするので、圃場中への播種深さを均一化できる。カルパーコーティング111の下端が土中に埋まれば、覆土の必要がなくなるため、コストダウンができる。
【0065】
カルパーコーティング111を用いて種籾をする際、図17(c)に示すようにコーティングの形状を円錐状にして、円錐状の先端部を下向きにして圃場にカルパーコーティング111を植え付けると、カルパーコーティング111が播種位置の目印となり、点播をより正確に行うことができる。またカルパーコーティング111は、先端が下向きに尖った円錐状であるので、圃場面に刺さりやすく、倒れにくい長所がある。また、カルパーコーティング111の形状を円錐形状にする際に、種籾は頂点に寄せてコーティングする事が望ましい。
【0066】
こうして圃場への播種深さを均一化でき、また円錐形のカルパーコーティング111の頂点が土中に埋まれば、覆土の必要がなくなるためコストダウンができる。
カルパーコーティング111を直播する装置として、図18に示すような一対の水平方向に回転軸を設けたローラ112を隣接配置し、一対のローラ112を互いに内側に高速回転させて、そのローラ112間にカルパーコーティング111を上方から供給して、該一対のローラ112に接するカルパーコーティング111がローラ112の回転力で加速されて圃場に打ち込める構成を採用することができる。
【0067】
たとえ、コーティング種子が片荷重になっていても、また重い側(種子の入っている側)が上にあっても、回転するローラ112による摩擦力で、一対のローラ112に挟み込まれたカルパーコーティング111が高速移動する間に重い種子の入っている側を下にして播種でき、さらに覆土が必要なくなるのでコストダウンが可能となる。
【0068】
上述のように播種機3は走行車体2の前進に伴って湛水した圃場面に播種作業を行なうが、同時に、機枠34に取り付けられている排水用作溝器33が播種用作溝器7によって播種される播種条の側方に沿って略平行状に排水溝を作溝しながら前進している。この場合、排水用作溝器33は、後輪11の通過した跡上を前進しながら排水溝を作溝していくから比較的土壌抵抗が小さく、少ない消費馬力によって作溝することができる。
【0069】
この排水用作溝器33によって作溝した排水溝は、一端部を圃場における水の取入れ口に、他端部を圃場の排水口にそれぞれ鍬等で溝切りをして水が流れ易いように接続し、入水、排水が容易にできるように事後処理を行なうことが肝要である。一般的に、水田は土壌表面を充分均平に均すことが最低の必要条件であるが、これにより水田へ排水、入水を迅速に行うことができる。
【0070】
施肥機45の肥料タンク46の左右方向の側端部(右後端部)には、昇降リンク14を上方へ回動させるための上昇スイッチ90と前記昇降リンク14を下方へ回動させるための下降スイッチ91とを備えるスイッチボックス92(図1)を設けている。この上昇スイッチ90及び下降スイッチ91は、押しボタン式のスイッチであり、機体の右側に向けて設けられ、昇降リンク14さらにはヒッチ16が配置される走行車体2の端部(後端部)近傍に配置される。上昇スイッチ90を押し操作すると、該上昇スイッチ90からの信号が制御ボックス65内の制御部65aに入力され、該制御部65aから昇降リンク14を上方へ回動させるべく電磁油圧バルブ69へ出力される。
【0071】
同様に、下降スイッチ91を押し操作すると、該下降スイッチ91からの信号が前記制御部65aに入力され、該制御部65aから昇降リンク14を下方へ回動させるべく電磁油圧バルブ69へ出力される。なお、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91の押し操作が所定時間(1秒)以内であれば、その押し操作時間に拘らず昇降リンク14を所定の若干量だけ回動させる構成となっている。また、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91の押し操作が所定時間(1秒)を超過すれば、その押し操作している間だけ電磁油圧バルブ69を切り替えて昇降リンク14を連続的に回動させる構成となっている。
【0072】
以上により、走行車体2は、後端部に昇降アクチュエータとなる油圧シリンダ17により上下に回動する昇降リンク14を設け、該昇降リンク14の先端部(後端部)に播種機3を着脱可能な着脱ヒッチ16を設け、昇降リンク14が配置される後端部近傍に昇降リンク14を上方へ回動させるための上昇スイッチ90と前記昇降リンク14を下方へ回動させるための下降スイッチ91とを設け、該上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作する毎に昇降リンク14を所定量づつ回動させる制御手段と、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作している間だけ昇降リンク14を連続的に回動させる制御手段とを備える制御装置を設けている。
【0073】
従って、昇降リンク14の先端部に設けた着脱ヒッチ16を介して播種機3を装着し、必要に応じて油圧シリンダ17の駆動で昇降リンク14を上下に回動させて播種機3を昇降させることにより、走行しながら作業を行うことができ、着脱ヒッチ16を介して装着される作業機の種類を換えることにより、各種作業を行うことができる。そして、播種機3の着脱時には、作業者が昇降リンク14さらには着脱ヒッチ16の近傍で上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を操作することにより、昇降リンク14さらにはヒッチ16と播種機3さらには取付枠72との位置関係を機体の側方(右側)から容易に視認できるため、昇降リンク14を所望の高さに容易に回動させることができると共に、播種機3の着脱状態を確実に判断できて安全に播種機3の着脱作業が行える。更に、前記着脱作業において昇降リンク14を微小量だけ回動させたいときは、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作する毎に昇降リンク14を所定量づつ回動させることにより、昇降リンク14を所望の高さに容易に回動させることができる。
【0074】
しかも、昇降リンク14と播種機3との位置関係が大きく異なり、前記着脱作業において昇降リンク14を大きく回動させる必要があるときは、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91の操作により昇降リンク14を連続的に回動させることもできるため、すみやかに昇降リンク14を播種機3の高さに回動させることができて着脱作業の作業性が向上し、このときヒッチ16と取付枠72との連結が不完全で走行車体2や播種機3等が移動する等の不慮により、危険を回避するべく作業者が上昇スイッチ90又は下降スイッチ91から離れても、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91が操作されない限り昇降リンク14が回動しないので安全である。
【0075】
また、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91のように単純な押しボタン式の操作具により昇降リンク14を回動させる構成としたため、着脱作業における昇降リンク14の回動中、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を見ないで回動する昇降リンク14、着脱ヒッチ16、取付枠72並びに播種機3を集中的に見ながら作業することができ、播種機3を脱落させてしまう等の不慮の事故を未然に防止できて安全に作業が行える。
【0076】
さらに、昇降リンク14の右側には、播種機3側の電装品(電動の起風翼車8等)への電気配線のコネクタ94(図2)、連結伝動軸64(図2)及び固定具75(図3)のシリンダ(把持部)75aを配置している。従って、前記電気配線のコネクタ94、連結伝動軸64及び固定具75の把持部75aが図1に示す上昇スイッチ90及び下降スイッチ91と機体の左右方向で同じ側(右側)に配置されているので、播種機3を着脱する際に作業者が機体の左右一方(右側)から図2に示す電気配線のコネクタ94並びに連結伝動軸64の着脱並びに固定具75の固定/解除操作及び昇降リンク14の回動操作が行え、播種機3の着脱作業が容易になる。
【0077】
なお、走行車体2から播種機3側へ接続される操作ワイヤがあるときは、該操作ワイヤを昇降リンク14近くで分割可能に設けると共に上述と同様に昇降リンク14の右側に配索すれば、播種機3の着脱作業が容易になる。更に、昇降リンク14の左側すなわち上昇スイッチ90及び下降スイッチ91と機体の左右方向で反対側(左側)にエンジン56の排気を行うマフラー95(図1)を配置しており、前記機体の左右一方(右側)で作業を行う作業者がマフラー95からの排気を吸ったり該作業者にマフラー95からの熱が伝わったりすることが抑えられ、安全に且つ快適に着脱作業が行える。
【0078】
なお、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作したときは、電磁油圧バルブ69がパルス制御されるようにすることなどで播種昇降レバー18を操作したときよりも遅い速度で昇降リンク14が回動あるいは播種機3が昇降作動するように構成できる。これにより、播種機3の着脱作業を容易に行えると共に、不慮の事故を未然に防止できて安全に作業が行える。また、前記電気配線のコネクタ94(図2)を外した状態で上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作したときに播種機3の着脱作業中と判断して、遅い速度で昇降リンク14が回動あるいは播種機3が昇降作動するようにしてもよい。また、作業機着脱センサ(固定具ドッキングスイッチ81と昇降リンクセンサ82)により播種機3が完全に装着されたことを検出すると、制御部65aを介して音声出力装置96(図16)を作動させる構成とすることができる。これにより、作業者が播種機3の装着状態を容易に認識でき、着脱作業の安全性が向上する。
【0079】
また、走行車体2の制御部65aには、傾斜センサ68(図1)により機体が傾斜していることを検出するか、副変速レバーセンサ67aにより副変速レバー67を中立以外の走行可能な位置に操作していることを検出するか、前記電気配線のコネクタ94が接続されていることを制御部65aが判断するか、エンジン回転数センサ56aによりエンジン56(原動機)が駆動していることを検出するか、又は播種昇降レバーセンサ18aにより播種昇降レバー18(図2)を播種機3を駆動する位置あるいは播種機3を昇降作動させる位置に操作していることを検出すると、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を操作しても電磁油圧バルブ69(図16)への出力を禁止し、昇降リンク14が回動するのを牽制する牽制手段を備えている。
【0080】
これにより、走行車体2が移動したり着脱する連結伝動軸64が駆動したり播種機3が不意に昇降したりするおそれのあるとき、播種機3の着脱作業を牽制でき、作業者が播種機3を含む機体や駆動する連結伝動軸64に巻き込まれるようなことを防止でき、危険を回避できる。また、電気配線のコネクタ94が接続されたままで播種機3の着脱作業をすることによる電気配線の損傷を防止できる。
【0081】
また、ヒッチ16(図1,図2)側に識別用センサ、取付枠72(図1)側にバーコード等の識別要素を設け、該識別要素を前記識別用センサが検出することにより作業機の種類を判別できるように構成している。これにより、各種作業機に対応して作業機側のセンサからの情報を自動的に補正して制御に利用でき、作業機の着脱でわざわざ各センサの初期設定値を作業者が設定し直す必要がない。
【0082】
なお、前記センサの例としては、播種機3の昇降制御に使用するフロートセンサ84の他、ローリングシリンダ98(図1)による播種機3の左右ローリング制御に使用するために作業機の左右傾斜角度を検出する作業機左右傾斜角センサ99(図1)等が考えられる。
【0083】
また、異なる作業機で同種のセンサを使用している場合でも、各々の作業機が備えるセンサ自体の個体差があるため、上述の構成は有用である。なお、装着された作業機においてセンサの初期設定がなされていない場合は、音声出力装置96(図16)を作動させて作業者に告知する構成とすればよい。なお、識別要素としてバーコードを使用すれば多数の作業機に対応させることができ、走行車体2の汎用性が高まる。
【0084】
ところで、この発明の実施の形態における直播機1は走行車体2の後側に着脱可能な播種機3を設け、該播種機3の前側で走行車体2の後部に施肥機45を設けた構成としたが、施肥機45を走行車体2の後側に着脱可能に設け該施肥機45の前側で走行車体2の後部に播種機3を設けた構成とし、播種機3と施肥機45との配置を入れ替えた構成としてもよい。
【0085】
このとき、粉粒体の吐出量(繰出量)の多い施肥機45の施肥ホース48の方が播種機3の種子移送管6より前後方向で短くなって鉛直方向に近くなるため、施肥ホース48内で吐出量(繰出量)の多い肥料が詰まりにくくなり、作業性を向上させることができる。
【0086】
図19の作業機付きの多目的田植機においてフロート取り付け部の要部側面図に示すように作業機付きの多目的田植機においてロータ部120とフロート部121を走行車両の本機側に付属させておく構成とすることもできる。
【0087】
図19に示す構成とすることで、苗植付装置からなる作業機部分を本体側に対して着脱自在とすることができ、作業機である苗植付装置122に代えて播種機3として直播装置を取り付けると田植機でなく直播機になる。また、直播装置からなる播種機3を用いる直播機としたときにも、ロータ部120とフロート部121をそのまま用いることができる。
【0088】
図1等で示す直播機における肥料繰出装置47の構成として図20(a)の平面断面図に及び図20(b)の図20(a)のA−A線断面図に示すように、2種類の肥料などを繰り出す構成とすることができる。また繰出装置47の出口に設ける施肥ホース48として肥料繰出装置47から繰り出す物の種類により、繰り出し場所が異なるため、種類により肥料繰出装置47の出口部に取り付けるホース48を変更させる。
【0089】
肥料繰出装置47は2種類の繰出物を収納可能にした2室タイプの繰出装置47a,47bとし、各繰出装置47a,47bからの繰出物の出口部は、そこに取り付けるホース48の変更を容易にさせるロート先端部を先細としている。図20(b)には2種類の繰出物に対応した別々のホース48a、48bを取り付ける場合のホース形状を示し、図20(c)には2つの繰出装置47a,47bから1種類の繰出物に対応して単一のホース48を取り付ける場合のホース取付部平面図を示す。
【0090】
図21に示すように、作業機を走行車両本体に連結する場合のリンク部のドッキング時のリンク部の高さは連結する作業機のタイプにより異なる。そこで、昇降リンクセンサ82により設定された各作業機のドッキングの最適位置に作業機がきたことを検出すると作業機判定スイッチ93を押すことにより音声出力装置96が鳴る構成にした。
【0091】
例えば、マット田植機では「ピッ」と鳴り、点播機では「ピッピッ」と鳴り、また条播機では「ピッピッピッ」と鳴るように、ブザー音の形態を変えることで、多数の作業機の中の適切なものをドッキングする作業が容易となり、また安全確実に行える。
【0092】
さらに作業機のドッキング時に手順、注意事項を音声で流す構成にしてもよい。このとき作業機判定スイッチ93を押すと音声が流れると同時にリンク部のロックが解除される構成とする。
【0093】
本実施例の走行機体には左右線引きマーカー115が装着され、走行機体に基部が固着されたマーカー支持フレーム116の先端部にマーカー115が上下回動自在に枢着されている。そして、この左右線引きマーカー115は、圃場内で往復走行して播種作業するときに、作業走行中に未播種側の泥土面に線引きマーカー115を滑走させて、次行程作業走行路のセンターラインを線引き作用するものである。
【0094】
また走行機体の前端部左右中央位置に設けられたセンターマスコット117は、このセンターマスコット117を前行程で線引きマーカー115にて線引きされたセンターラインに合わせて播種作業走行すれば、前行程作業走行時に播種された播種条に対して所定の条間隔で播種作業走行することができる。
【0095】
なお、この発明の実施の形態は圃場に筋状に施肥及び播種を行う条播機について記述したが、圃場の所定間隔おきに粉粒体を吐出して間歇的に施肥又は播種を行う点播機であってもよい。
【0096】
本発明によれば、一つの播種機3で複数の条間で播種をすることができ、低コストで農作業が可能となり、利用可能性が高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後端部に昇降リンク(14)を設け、苗移植機と播種機(3)を含む複数種の作業機を選択的に装着するべく、前記作業機を着脱可能な着脱ヒッチ(16)を昇降リンク(14)の先端部に設けた多目的機において、ロータ部(120)を着脱ヒッチ(16)よりも走行車体(2)側に設けた多目的機。
【請求項2】
播種機(3)は、圃場を均平化するための複数のフロート(19)を各々のフロート取付構造体(100,101,102)に取り付け、各々のフロート(19)に播種用の作溝器(7)を取り付けた構成とし、フロート(19)の前後傾斜角を検出するフロートセンサ(84)を設け、フロートセンサ(84)の検出値が所定値となるよう播種機(3)を昇降制御する構成とし、播種機(3)の昇降制御における制御感度を変更する感度調節ダイヤル(85)を設け、土壌に突入して圃場の硬軟を検出する硬軟センサ(86)を設け、播種条の側方に排水溝を形成する排水用の作溝器(33)を、複数のフロート(19)の間で且つ上下方向に回動するアーム(35)の回動先端部に設け、アーム(35)を回動付勢する作溝器押圧スプリング(87)を設け、作溝器押圧スプリング(87)を操作して排水用の作溝器(33)の圃場への押し付け荷重を変更する排水用作溝器上下用モータ(105)を設け、感度調節ダイヤル(85)による播種部(3)の昇降制御における制御感度又は硬軟センサ(86)による圃場の硬軟の検知結果に連動して、排水用作溝器上下用モータ(105)の作動を制御する制御部(65a)を設け、アーム(35)と一体のスタンド(106)を設けた請求項1に記載の多目的機。
【請求項3】
複数種の播種条間に対応する複数種のフロート取付構造体(100,101,102)を互いに左右方向の位置を異ならせて設け、フロート(19)を取り付けるフロート取付構造体(100,101,102)を選択することによりフロート(19)の左右方向の位置を変更可能な構成とし、複数個設けたフロート取付構造体(100,101,102)のうち、一部のフロート取付構造体(100、101)を、異なる播種条間のときの別種のフロート取付構造体として共用し得る位置に配置した請求項2に記載の多目的機。
【請求項1】
走行車体(2)の後端部に昇降リンク(14)を設け、苗移植機と播種機(3)を含む複数種の作業機を選択的に装着するべく、前記作業機を着脱可能な着脱ヒッチ(16)を昇降リンク(14)の先端部に設けた多目的機において、ロータ部(120)を着脱ヒッチ(16)よりも走行車体(2)側に設けた多目的機。
【請求項2】
播種機(3)は、圃場を均平化するための複数のフロート(19)を各々のフロート取付構造体(100,101,102)に取り付け、各々のフロート(19)に播種用の作溝器(7)を取り付けた構成とし、フロート(19)の前後傾斜角を検出するフロートセンサ(84)を設け、フロートセンサ(84)の検出値が所定値となるよう播種機(3)を昇降制御する構成とし、播種機(3)の昇降制御における制御感度を変更する感度調節ダイヤル(85)を設け、土壌に突入して圃場の硬軟を検出する硬軟センサ(86)を設け、播種条の側方に排水溝を形成する排水用の作溝器(33)を、複数のフロート(19)の間で且つ上下方向に回動するアーム(35)の回動先端部に設け、アーム(35)を回動付勢する作溝器押圧スプリング(87)を設け、作溝器押圧スプリング(87)を操作して排水用の作溝器(33)の圃場への押し付け荷重を変更する排水用作溝器上下用モータ(105)を設け、感度調節ダイヤル(85)による播種部(3)の昇降制御における制御感度又は硬軟センサ(86)による圃場の硬軟の検知結果に連動して、排水用作溝器上下用モータ(105)の作動を制御する制御部(65a)を設け、アーム(35)と一体のスタンド(106)を設けた請求項1に記載の多目的機。
【請求項3】
複数種の播種条間に対応する複数種のフロート取付構造体(100,101,102)を互いに左右方向の位置を異ならせて設け、フロート(19)を取り付けるフロート取付構造体(100,101,102)を選択することによりフロート(19)の左右方向の位置を変更可能な構成とし、複数個設けたフロート取付構造体(100,101,102)のうち、一部のフロート取付構造体(100、101)を、異なる播種条間のときの別種のフロート取付構造体として共用し得る位置に配置した請求項2に記載の多目的機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−17485(P2013−17485A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209587(P2012−209587)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2007−310274(P2007−310274)の分割
【原出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2007−310274(P2007−310274)の分割
【原出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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