説明

多目的芯入り線条材

【課題】 手指で自由に曲げることで所望の形を容易に創作しうるようにされた、造花、生け花等の創作用材料、アクセサリー等装飾物の創作材料、進物品等の化粧材料などとして使用する多目的合成樹脂性芯入り線条材を提供する。
【解決手段】 器械力塑性を備えた合成樹脂材料からなる芯材と、当該芯材の外面に被着した糸条の織編による筒状被体とにより構成されたことを特徴とし、上記合成樹脂材料は、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択したものであり、織編により被着した糸条は、隣接する糸条同士若しくは芯材の外面に止着されたものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造花、生け花等の創作用材料、アクセサリー等装飾物の創作材料、進物品等の化粧材料、衣服仕立用の芯材料などとして使用する多目的芯入り線条材に関する。具体的には、手指で自由に曲げることで所望の形を容易に創作しうるようにされた、地球環境にやさしい多目的芯入り線条材に関する。
【0002】
本文中、「器械力塑性」とは、人力(じんりき)や、単純で小規模な道具を介して受けた外力を取り去っても歪(ひずみ)が残って変形する性質をいい、例えばある種の合成樹脂材料が有している、手指の力で90度曲げてから手放したときの戻り角が30度以下であるというような性質をいう。
【背景技術】
【0003】
従来、多目的芯入り線条材としては、手指で容易に折り曲げたり捻じったりすることができ、その上折り曲げたり捻じったりした後は外力が作用しなくなっても元の形状に戻らないというような器械力塑性を備えた軟銅やアルミなどの金属線材を芯材として用いた構造のものが提供され、使用されている。
【0004】
しかしながら、上記金属線材を用いた多目的芯入り線条材は、軽量化に向いていないという問題や、錆の発生が起り易いという問題、金属探知器による検査で反応するという問題がある上、廃棄時の焼却処理において金属線材が残ってしまうという問題がある。又、近年は、これらが用済み後に廃棄されるときには、分別処理が難しいという問題があった。
【0005】
【特許文献1】なお、本願出願人は、「器械力塑性を備えた非金属芯材を用いた多目的芯入り線条材」について先行技術を調査したが、関連する先行技術文献を見出すことができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような諸問題点を解消するために案出したものであって、軟銅やアルミなどの金属線材を芯材として用いていない、新規の多目的芯入り線条材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る多目的芯入り線条材にあっては、器械力塑性を備えた合成樹脂材料からなる芯材と、当該芯材の外面に被着した糸条の織編による筒状被体とにより構成されたことを特徴とする。
【0008】
したがって、請求項1に係る多目的芯入り線条材は、芯材が合成樹脂材料製であるので、軽量化ができ、発錆の危惧がないのみならず、分別せずに焼却することができる。また、金属探知器による検査では検知されない。
【0009】
請求項2に係る多目的芯入り線条材にあっては、請求項1記載の多目的芯入り線条材に関し、上記糸条が、器械力塑性を備えた合成樹脂材料製の繊維からなることを特徴とする。
【0010】
したがって、請求項2に係る多目的芯入り線条材は、曲げてから手放した場合には、筒状被体自身も芯材と同じように曲げたままの状態を維持するので、当該筒状被体が芯材に対して戻り力を与えることがなく、芯材、筒状被体の各々が器械力塑性により共に独自に曲げたままの状態を保持する。
【0011】
請求項3に係る多目的芯入り線条材にあっては、請求項1又は2記載の多目的芯入り線条材に関し、上記芯材が、2本以上であることを特徴とする。
【0012】
したがって、請求項3に係る多目的芯入り線条材は、曲げ易く、細かい曲げ部分の創作が施し易い。
【0013】
請求項4に係る多目的芯入り線条材にあっては、請求項1、2又は3記載の多目的芯入り線条材に関し、上記合成樹脂材料が、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択したものであることを特徴とする。
【0014】
したがって、請求項4に係る多目的芯入り線条材によれば、効率よく良品を提供できる。
【0015】
請求項5に係る多目的芯入り線条材にあっては、請求項1〜4のいずれか一つの請求項記載の多目的芯入り線条材に関し、上記器械力塑性が、90度曲げによる戻り角が30度以下であることを特徴とする。
【0016】
したがって、請求項5に係る多目的芯入り線条材によれば、効率よく良品を提供できる。
【0017】
請求項6に係る多目的芯入り線条材にあっては、請求項1〜5のいずれか一つの請求項記載の多目的芯入り線条材に関し、上記織編により被着した糸条が、隣接する糸条同士若しくは芯材の外面に止着されたことを特徴とする。
【0018】
したがって、請求項6に係る多目的芯入り線条材によれば、必要とする分を切り離したときに糸条が切り端から解れを起したりするようなことがなくなり、結果として細工し易くなり創作が容易にでき、仕上がりが良好で綺麗な二次製品を作成できる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る多目的芯入り線条材は、器械力塑性を備えた合成樹脂材料からなる芯材と、当該芯材の外面に被着した糸条の織編による筒状被体とにより構成されているので、軽量化ができ、発錆の問題を解消できる。その上、金属探知器による検査で反応するという問題、焼却廃棄処理時の残灰に金属も残るという問題が解消できるのみならず用済み後には分別処理をせずとも廃棄できる。
【0020】
請求項2に係る多目的芯入り線条材は、上記糸条が、器械力塑性を備えた合成樹脂材料製の繊維からなることを特徴とするので、曲げてから手放し場合には、芯材、筒状被体の各々が共に独自に曲げたままの状態を保持でき、仕上がりが良好な創作品を容易に作ることができる。
【0021】
請求項3に係る多目的芯入り線条材は、上記芯材が2本以上であることを特徴とするので、曲げ易く、細かい曲げ部が創作し易い利点がある。
【0022】
請求項4に係る多目的芯入り線条材は、上記合成樹脂材料が、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択した材料製のものであるので、器械力塑性に優れた完成品の提供が効率よく比較的容易にできる。
【0023】
請求項5に係る多目的芯入り線条材は、上記器械力塑性が、90度曲げによる戻り角が30度以下であることを特徴とするので、適度な剛性を有し、形態保持性に優れた完成品を比較的容易に効率よく提供できる。
【0024】
請求項6に係る多目的芯入り線条材は、上記したように織編により被着した糸条が、隣接する糸条同士若しくは芯材の外面に止着されているので、例えば必要とする長さ分を切り取った場合には、糸条が切り端から解れを起すようなことがなく極めて使い易いのみならず仕上がりがよい製品の提供に極めて好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る多目的芯入り線条材の一つを示す。
【0026】
この実施の形態に係る多目的芯入り線条材1は、器械力塑性を有する合成樹脂材からなる一本の芯材2と、当該芯材2の外面に被着した糸条3の織編による筒状被体3とにより構成されたものである。
【0027】
本発明は、器械力塑性を有する合成樹脂材からなる糸条を用いて筒状被体を構成すること(請求項2対応)、また2本以上の芯材を縒り合わせた状態若しくは引き揃えた状態に入れても実施すること(請求項3対応)ができ、また、90度曲げによる戻り角が30度以下である芯材を用いて実施すること(請求項5対応)ができる。さらに本発明は、上記合成樹脂材料として生分解性樹脂材料を用いて実施し、分別廃棄をしなくとも良いようにすることができる。
【0028】
因に、用いる芯材2の本数は、多目的芯入り線条材の使用目的、使用部位、芯材太さや、用いる芯材の材質の種類等によって異なる。そして、当該芯材は、剛性の大きいほどその使用割合は少なくてもよいという傾向にある。
【0029】
そして、上記芯材及び筒状被体には、次のような、器械力塑性を有する合成樹脂材料を用いることが可能である。
【0030】
すなわち、90度曲げによる戻り角が30度以下であるようにされた、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択したもの(請求項4対応)であればよい。なお、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、汎用ポリエチレンのどちらでもよい。
【0031】
上記芯材及び筒状被体は、90度曲げによる戻り角が30度以下であるが、好ましくは当該戻り角が20度以下であり、より好ましくは15度以下である。
【0032】
たとえば、上記ポリエチレンは、延伸されると引張応力に比例して弾性変形し、それに応じて伸びが増大し降伏点を越えると、引張応力は一旦低下したのち、当該ポリエチレンは、塑性変形性を発現し始める。降伏点以降は、延びが一旦低下したのち、内部歪みの極限に達してポリエチレンは徐々に延び、遂には白化して破断する。
【0033】
このポリエチレンの白化は、下記のような各種無機充填材を添加することにより誘発され、これによって剪断破壊を誘発し、塑性変形を容易にする。
【0034】
切断寸前まで延伸した糸は、完全に白化され、極めて優れた器械力塑性を示す。従って、同じ太さの延伸糸でも、太い原糸から作ったものの方が細い原糸から作ったものよりも器械力塑性は優れている。あまり細い原糸を最大限の延伸比で延伸、白化させても延伸糸が細過ぎる場合には、腰が弱く、金属ワイヤーのような物性は発現できない。
【0035】
上記無機充填材としては、ガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシュウム、水酸化マグネシュウム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシュウム、水酸化アルミニウム、シリカアルミナ、酸化チタン、酸化カルシュウム、珪酸カルシュウム、塩基性炭酸マグネシュウム、炭素繊維、カーボンブラック等を用いることができる。
【0036】
また、芯材は、その断面形状が円形、長円形、楕円、矩形、星形、その他の形状若しくは表面に突起が点在して設けられたもであってもよく、これらを複数並べたものであってもよい。また、太さは用途により適宜選択できるが、通常は断面積が0.5〜5mmであることが望ましい。勿論、それ以上であってもよい。
【0037】
糸条2からなる筒状被体3は、上記芯材1を中心にしてその周りで組み紐を編む形式の組紐編機、筒編機等編機を用いて編成する。また、細幅織機等織機を用いて織製された細幅織地を筒状にしたものであってもよい。
【0038】
上記糸条2には、天然繊維、合成繊維、半合成繊維及び再生繊維などの有機高分子化合物の繊維などから選ばれた繊維を用いることができる。
【0039】
また、本発明に係る多目的芯入り線条材は、仕上げた後に各種色彩による後染め処理をしたり、異なる色彩の糸条で筒状被体を織編したりすることにより色が異なる完成品を得ることができる。したがって、多色の多目的芯入り線条材の提供が容易に可能である。このようにして得た多色の多目的芯入り線条材は、造花、生け花等の創作、アクセサリー等装飾物の創作等を行う上で好ましく、幅広い色使いを可能にするものである。さらに、上記筒状被体3は、繊維製であるので、上記各創作において例えば交差する部分等を互いに接着材等で固定したい等の場合には、これが容易にできて好都合である。
【0040】
上記天然繊維としては、綿、絹、麻、羊毛などを例示することができる。また上記半合成繊維は、有機天然高分子化合物の誘導体よりなる繊維であって、アセテート人絹を挙げることができる。
【0041】
上記合成繊維としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセタール(ビニロン)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリエステルエラストマーなどの繊維を例示することができる。
【0042】
上記ポリエステルの繊維として具体的には、強度、剛性等が優れた芳香族ポリエステルや生分解性に優れた脂肪族ポリエステルの繊維を例示することができる。芳香族ポリエステルとして、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートなどを挙げることができる。また、脂肪族ポリエステルとしては、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸、りんご酸、酒石酸、クエン酸などの多価カルボン酸などとエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールとの重縮合物、ラクチドやカプロラクトンなどの開環重合物、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸などのヒドロキシ酸の重縮合物などを例示することができる。これらの中では、乳酸の単独重合体あるいは乳酸を主成分とする共重合ポリエステルから選ばれるポリ乳酸を挙げることができる。
【0043】
上記ポリオレフィンの繊維としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなど炭素数2〜14程度のオレフィンの単独重合体、又はこれらオレフィン同士の共重合体、オレフィンと少割合の極性モノマーの共重合体などの繊維を挙げることができる。これらの中では、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと10重量%以下のエチレンとのランダム共重合体であるポリプロピレンの使用が、軽量で耐薬品性に優れているところから好ましい。
【0044】
上記ポリアミドの繊維としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66などの繊維を例示することができる。
【0045】
上記ポリアクリロニトリル繊維としては、アクリロニトリルの単独重合体あるいはアクリロニトリルと他の極性ビニルモノマー、例えばアクリル酸メチル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、ビニルピリジンなどとの共重合体の繊維を例示することができる。
【0046】
さらに、上記再生繊維としては、ビスコースレーヨンや銅アンモニアレーヨンなどのレーヨンを例示することができる。
【0047】
本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の精神を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施することが可能であり、そして本発明はこれ等実施されたものにも及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態を示す概念図である。
【図2】図1A−A線に沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 実施の形態に係る多目的芯入り線条材
2 器械力塑性を有する合成樹脂材製芯材
3 糸条
4 筒状被体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器械力塑性を備えた合成樹脂材料からなる芯材と、当該芯材の外面に被着した糸条の織編による筒状被体とにより構成されたことを特徴とする多目的芯入り線条材。
【請求項2】
上記糸条は、器械力塑性を備えた合成樹脂材料製の繊維からなることを特徴とする請求項1記載の多目的芯入り線条材。
【請求項3】
上記芯材は、2本以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の多目的芯入り線条材。
【請求項4】
上記合成樹脂材料は、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択したものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の多目的芯入り線条材。
【請求項5】
上記器械力塑性は、90度曲げによる戻り角が30度以下であることを特徴とする請求項1〜4のうちの一つの請求項記載の多目的芯入り線条材。
【請求項6】
上記織編により被着した糸条は、隣接する糸条同士若しくは芯材の外面に止着されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つの請求項記載の多目的芯入り線条材。

【図1】
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【図2】
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