説明

多目的運搬車

【課題】前輪2及び後輪3と,走行駆動用のエンジン5と,操縦ハンドル11及び座席10を有する運転キャビン7と,被運搬物を載せるための荷台6とを備えて成る多目的運搬車1において,その小型・軽量化を図る。
【解決手段】 前記前輪と後輪との間に,金属板にて上面を開口した横長のボックス型に構成したメインフレーム4を配設し,このメインフレームにて,その後部に配設した前記エンジン,荷台及び後輪を支持する一方,前記運転キャビンは,前記ボックス型メインフレームの左右両側に立設した一対の枠型キャビンフレーム7a,7bにて構成して,このキャビンフレームにて,前記前輪を支持し,更に,前記メインフレームの上面に前記運転キャビンにおける座席を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,飼料の運搬とか,或いは各種の農作業等の多目的に使用される運搬車に係り,より詳しくは,前輪及び後輪と,走行駆動用のエンジンと,操縦ハンドル及び座席を有する運転キャビンと,被運搬物を載せるための荷台とを備えて成る運搬車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このように,前輪及び後輪と,走行駆動用のエンジンと,操縦ハンドル及び座席を有する運転キャビンと,被運搬物を載せるための荷台とを備えて成る運搬車は,先行技術としての特許文献1等に記載されている。
【0003】
そして,この先行技術の運搬車においては,そのメインフレームを,左右の両車輪の間を全長にわたって延びる構成にして,このメインフレームに,前記前輪及び後輪を支持させるとともに,前記エンジン,前記運転キャビン及び前記荷台を支持させるという構成にしている。
【特許文献1】特開2008−094179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,前後車輪,エンジン,運転キャビン及び荷台を支持するメインフレームが,左右の両車輪の間を全長にわたって延びる構成である場合,前記運転キャビンの横幅をワイドにするには,前記全長方向に延びるメインフレームの左右両側に,外向きへの張出フレームを設けるという構成にしているから,構造が複雑になるばかりか,重量が大幅に増大するのであり,しかも,前記運転キャビンにおける床面の地上高さが高くなって,運転キャビンへの乗り降りが困難になるという問題があった。
【0005】
また,この種の多目的運搬車には,スコップ,鍬,斧のような各種の作業道具又は工具等を積み込んでおくことが必要であるが,そのためには,これらの作業道具又は工具入れ用のボックスを別に設けなければならないのであった。
【0006】
本発明は,これらの問題を解消した多目的運搬車を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「前輪及び後輪と,走行駆動用のエンジンと,操縦ハンドル及び座席を有する運転キャビンと,被運搬物を載せるための荷台とを備えて成る多目的運搬車において,
前記前輪と後輪との間に,金属板にて上面を開口した横長のボックス型に構成したメインフレームが配設され,
前記エンジン,前記荷台及び前記後輪は,前記ボックス型メインフレームの後部に,前記エンジン及び後輪が前記荷台の下方に位置し,且つ,これらエンジン,荷台及び後輪を前記ボックス型メインフレームにて支持するようにして配設され,
前記運転キャビンは,前記ボックス型メインフレームの左右両側に立設した一対の枠型キャビンフレームにて形成され,
前記前輪は,前記キャビンフレームの前部に,当該キャビンフレームにて支持するように配設され,
更に,前記運転キャビンにおける座席は,前記ボックス型メインフレームの上面に配設されている。」
ことを特徴としている。
【0008】
また,請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記運転キャビンにおける座席は,前記ボックス型メインフレームの上面における開口を自在に開閉できる構成である。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の記載によると,荷台,エンジン及び運転キャビン等を支持するメインフレームを,横長のボックス型に構成したことにより,高い剛性にできるから,運搬車の大幅な軽量化,低価格化を達成できる。
【0010】
一方,運転キャビンは,前記ボックス型メインフレームの左右両側に立設した一対の枠型キャビンフレームにて形成されていることにより,その横幅寸法をワイドに構成でき,その上,運転キャビンにおける床面の地上高さを,エンジンの地上高さとは無関係に低くできるから,運転キャビンへの乗り降りが容易になるとともに,運搬車の重心を低くできて,走行の安定性を向上できる。
【0011】
しかも,メインフレームの上面における座席とボックス型メインフレームとは,走行方向に対してオーバーラップしていることにより,前記座席及びメインフレームが走行方向に沿って占める長さ寸法を,これらをオーバーラップした分だけ短縮できるから,運搬車の全長が予め決まっているときには,前記荷台の長さを増大でき,前記荷台の長さが予め決まっているとには,運搬車の全長を短くできる。
【0012】
また,請求項2の記載によると,ボックス型メインフレームを,各種の道具又は荷物入れに使用できるから,これらの作業道具又は工具入れ用のボックスを別に設けることを必要しないから,前記メインフレームの剛性が高いことと相俟って,運搬車の一層の軽量化及び低価格化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図3の図面について説明する。
【0014】
この実施の形態における多目的運搬車1は,左右一対の前輪2a,2bと,同じく左右一対の後輪3a,3bと,これら前輪2a,2b及び後輪3a,3bの間に配設したメインフレーム4と,このメインフレーム4の後部に配設した多気筒のエンジン5及び箱型の荷台6と,前記メインフレーム4の前部に配設した運転キャビン7とを備えている。
【0015】
前記メインフレーム4は,金属板にて上面を開口した横長のボックス型に構成されており,そのボックスの内部には,当該メインフレーム4の補強を兼ねた仕切り板4aが設けられている。
【0016】
前記メインフレーム4の後部に配設したエンジン5は,同じく前記メインフレーム4の後部に配設した前記荷台6の下部に位置しており,そして,これらエンジン5及び荷台6に加えて,前記両後輪3a,3bは,前記メインフレーム4に,当該メインフレーム4から後方に突出するリアフレーム8を介して支持されている。
【0017】
また,前記リアフレーム8には,前記エンジン5の出力を適宜変速して両後輪3a,3bに伝達するための走行ミッションケース9が設けられており,前記運搬車1は,前記両後輪3a,3bを前記エンジン5にて回転駆動することにより,前進又は後退走行するように構成されている。
【0018】
一方,前記メインフレーム4の前部における前記運転キャビン7は,側面視で四方囲枠に構成して前記ボックス型メインフレーム4の左右両側面に立設した枠型キャビンフレーム7a,7bと,この両枠型キャビンフレーム7a,7bの下面における相互間に装架した床板7cと,前記両枠型キャビンフレーム7a,7bの上面における相互間に装架した天井板7dと,前記両枠型キャビンフレーム7a,7bの前面における相互間に装架したフロントガラス7eとによって構成されている。
【0019】
前記運転キャビン7の内部には,少なくとも三つの座席10が横方向に並べて設けられているほか,丸型の操縦ハンドル11が設けられ,更には,ブレーキペタル12,前記エンジン5に対するアクセルペタル13,及び前記走行ミッションケース9に対する変速レバー(図示せず)等が設けられている。
【0020】
この場合,前記座席10は,前記ボックス型メインフレーム4の上面に,当該メインフレーム4におけるボックスの上面を塞ぐように配設され,更に,その前端をボックス型メインフレーム4にピン10aにて枢着することにより,前方に回動可能にして,この前方への回動により前記メインフレーム4におけるボックスの上面を開口するように構成している。
【0021】
また,前記両枠型キャビンフレーム7a,7bの後面における相互間は,前記荷台6の側から前記座席10の前方への回動を行うことができるように開放されている。
【0022】
前記両前輪2a,2bは,前記運転キャビン7における両枠型キャビンフレーム7a,7bに,当該両枠型キャビンフレーム7a,7bから前方に突出するフロントフレーム14を介して支持されており,しかも,この両前輪2a,2bは,前記操縦ハンドル11の回動操作により,前記フロントフレーム14に取付けたステアリング機構15を介して左右に同時に回動旋回するように構成されており,これにより,前記運搬車1は,左右に旋回操縦される。
【0023】
また,前記フロントフレーム14には,前記エンジン5に対する燃料タンク16が取付けられているほか,前記ステアリング機構15及び燃料タンク16を覆うフロントカバー17が取付けられ,更には,前記両前輪2a,2bに対するフェンダーカバー18a,18bも取付けられている。
【0024】
この構成において,後部の荷台6及びエンジン5を支持し前部の運転キャビン7を支持するメインフレーム4は,両前輪2a,2bと両後輪3a,3bとの間に位置する横長のボックス型であることにより,これを高い剛性を有するものに構成できる。
【0025】
前記メインフレーム4におけるボックスは,運転キャビン7における座席10を回動 することにより,その上面が開放されるから,このボックスを,スコップ,鍬,斧のような各種の作業道具又は工具等を入れることに使用できる。
【0026】
一方,前記運転キャビン7は,前記ボックス型メインフレーム4の左右両側に立設した一対の枠型キャビンフレーム7a,7bにて形成したことにより,その横幅寸法をワイドに構成できることに加えて,この運転キャビン7における床面の地上高さを,前記エンジン5の地上高さとは無関係に低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態による運搬車の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態による運搬車の概略を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 運搬車
2a,2b 前輪
3a,3b 後輪
4 ボックス型メインフレーム
4a 仕切り板
5 エンジン
6 荷台
7 運転キャビン
7a,7b キャビンフレーム
8 リアフレーム
9 走行ミッションケース
10 座席
11 操縦ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪と,走行駆動用のエンジンと,操縦ハンドル及び座席を有する運転キャビンと,被運搬物を載せるための荷台とを備えて成る多目的運搬車において,
前記前輪と後輪との間に,金属板にて上面を開口した横長のボックス型に構成したメインフレームが配設され,
前記エンジン,前記荷台及び前記後輪は,前記ボックス型メインフレームの後部に,前記エンジン及び後輪が前記荷台の下方に位置し,且つ,これらエンジン,荷台及び後輪を前記ボックス型メインフレームにて支持するようにして配設され,
前記運転キャビンは,前記ボックス型メインフレームの左右両側に立設した一対の枠型キャビンフレームにて形成され,
前記前輪は,前記キャビンフレームの前部に,当該キャビンフレームにて支持するように配設され,
更に,前記運転キャビンにおける座席は,前記ボックス型メインフレームの上面に配設されている,
ことを特徴とする多目的運搬車。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記運転キャビンにおける座席は,前記ボックス型メインフレームの上面における開口を自在に開閉できる構成である,
ことを特徴とする多目的運搬車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−132225(P2010−132225A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312232(P2008−312232)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】