説明

多相マイクロチャネル反応

【課題】多相反応を実施するための新規の方法及び装置を提供すること。
【解決手段】マイクロチャネル内に薄い不混和性ストリーム(流れ)を閉じ込めること及びマイクロチャネル内における層流を有効に制御することによって、改善された反応性及び/又は流体分離のために不混和性相間の大きい接触面積が提供され、2つの相を機械的に混合することについての通常の要求が回避される。追加的に又は一方で、生成物反応混合物の相分離を素早く引き起こすための手段が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチャネル中で実施される多相反応及びかかる反応を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの化学反応は、溶媒なしで又は単一の溶媒相中で実施されるが、複数の溶媒(通常は2種の溶媒)であって互いに混和性ではないか又は少なくとも相互溶解性が低いものの中で実施される化学反応もある。これらのプロセスは、多相反応と称される。これらの多相反応の内のいくつかは、次のような利点を提供する:極性が異なる反応成分同士の反応(例えば非極性材料と極性材料との反応、イオンと中性化合物との反応、イオンと正味の双極子を持たない化合物との反応等)が可能になる;反応速度が速い;選択性が高い;収率が良好である;望まれない副生成物が少ない;化学廃棄物が少ない;プロセス温度が低い;安全性が高い;生成物分離が容易である;エネルギー使用が少ない;原料費用が低い;固形生成物が回避される;プロセスが環境に優しい。
【0003】
潜在的な利益と共に、多相プロセスについては多くの潜在的難点がある。1つの反応成分が1つの相にあって第2の反応成分が第2の相にある多相反応については、界面相移動が遅いせい又は主反応が行なわれる第2相中における1種若しくはそれより多くの反応成分の溶解性が非常に低いせいで、反応速度が非常に遅いことがある。反応成分(群)が相の間を移動する速度を高め且つ/又はこれらの1種若しくはそれより多くの試薬の別の相中における見掛け溶解度を高め、かくして多相反応の速度を高めるために、相間移動触媒(「PTC」と略記されることがある)を用いることができる(化学反応速度は通常、反応成分群の同一相中における活性に比例する)。PTCの例には、オルガノアンモニウム化合物(RR'R''R'''N+-)、カルボン酸(RR'COOH)並びにそれらの金属イオン(M+)との塩及び錯体、オルガノホスホニウム化合物(RR'R''P+R'''X-)、モノ、ジ及びポリアルコール(RR'R''COH)、モノ、ジ及びポリケトン(RCOR')、リン酸(O=P(O−R)(O-R')(O−H))(モノ及びジエステル)及びホスフェートエステル(O=P(O−R)(O−R')(O−R))、リン酸エステル(O=P(R)(O−R')(O−H))及びホスホネートエステル(O=P(R)(O−R')(O−R))、ホスフィン酸エステル(O=P(R)(R')(O−H))及びホスフィネートエステル(O=P(R)(R')(O−R'')、並びにエーテル(ROR')が包含される。ここで、X-は任意のアニオンであり、M+は任意の金属イオンである。R、R'、R''及びR'''は同一であっても異なっていてもよく、H又は任意のアルキル及び/若しくはアリール基であることができ、これらは、純粋な炭化水素(炭素数>4)、炭化水素(炭素数>4)の混合物、単独のもの並びに/又はCl-、Br-、I、NO2-、−OH-、OR、−COOR及びそれらの混合物のような置換基をも含有するものであることができ、R''''は任意のアルキル及び/又はアリール基であり、これらは、純粋な炭化水素、炭化水素の混合物並びに/又はCl-、Br-、I-、NO2-、−OH-、OR、−COOR、−CN、−NRR'、アルキル、アリール等及びそれらの混合物のような置換基をも含有するものであることができる。上記リスト中、すべての「R」基は、分子全体については炭素数>4であり、また、任意の特定置換基については炭素数が少なくとも1である有機物である。その分子の残りの部分の炭素数が少なくとも4である場合には、RはHであることができる。全体としての分子が存在する液相の内の少なくとも2つのものの中で少なくとも多少(10-8M超)の溶解性を有することが必要なだけである。
【0004】
長年にわたり、多相反応を改善するために多くの試みが為されてきた。二相反応の速度を高めるために小さい内寸を有する装置を用いることにかなりの努力が払われてきた。例えば、Matsonらは米国特許第4754089号明細書(1988年)に、相間移動触媒が透過可能な膜によって複数の相が隔てられた多相反応系における相間移動触媒反応を報告している。深さ0.05cm、幅10cm、長さ20cmの複数のフローチャネル(流路)の間に疎水性膜が挟まれた例が記載されている。この特許明細書には、相間移動触媒及び触媒される反応の記載があるので、それらを本明細書に参照用に取り入れる。
【0005】
Schubertらはカナダ国特許第2236460A1号明細書に、化学反応のための微細分散液を形成させるためにマイクロチャネルミキサーを使用することを報告している。米国特許第6225497号及び同第6264900号の両明細書にも類似の装置が記載されている。
【0006】
中嶋氏らは米国特許第6155710号及び同第6258858号の両明細書に、一定径の液滴状の分散相を有するエマルションを形成させるために狭い隙間に分散相を強制的に通すことを報告している。後者の特許明細書において、発明者は、分散相から連続相を一部分離するためにマイクロチャネルを用いることができると示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4754089号明細書
【特許文献2】カナダ国特許第2236460A1号明細書
【特許文献3】米国特許第6225497号明細書
【特許文献4】米国特許第6264900号明細書
【特許文献5】米国特許第6155710号明細書
【特許文献6】米国特許第6258858号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの努力及びその他の多くの努力にも拘らず、かかる技術には、内部拡散経路が長いせいで反応速度が遅いことや、素早い相分離を果たすのが難しいこと、内部流体力学及び内容物のチャネル内混合の制御の欠如のせいで性能が定まらないこと、フロー剪断下において相の境界面が不安定なこと、一方の相がもう一方の相の一部を吸収するせいによる体積膨張及び付随する相同士の入れ替わり等の問題がある。従って、多相反応を実施するための新規の方法及び装置に対する要望が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
マイクロチャネル内に薄い不混和性ストリーム(流れ)を閉じ込めること及びマイクロチャネル内における層流を有効に制御することによって、改善された反応性及び/又は流体分離のために不混和性相間の大きい接触面積が提供され、2つの相を機械的に混合することについての通常の要求が回避される。追加的に又は一方で、生成物反応混合物の相分離を素早く引き起こすための手段が提供される。
【0010】
1つの局面において、本発明は、化学反応を実施する方法を提供する。この方法は、1mm又はそれ未満の厚さを有する第1のストリームを用意し;この第1ストリームに隣接した1mm又はそれ未満の厚さを有する第2のストリームを用意し;この第1ストリーム及び第2ストリームが2mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する一緒にされた多相ストリームを形成することを含む。この第1ストリームは第1の反応成分を含み、第2ストリームは第2の反応成分を含む。生成物を得るための第1の反応成分及び第2の反応成分の反応を、相間移動触媒が触媒する。相の厚さが変化する場合、「厚さ」とは、マイクロチャネル反応帯域中(即ちPTCが行なわれるマイクロチャネル中)の最大厚さを言う。
【0011】
第1ストリーム及び第2ストリームのいずれか又は両方が3mmを超える長さを有するのが有利である。
【0012】
別の局面において、本発明は、相間移動触媒反応系を提供する。この相間移動触媒反応系は、2mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する反応チャネル中に配置された1mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する第1ストリームを含む。この系において、第2ストリームは、第1ストリームに隣接され、反応チャネル中において1mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する。第1ストリーム及び第2ストリームは、2mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する一緒にされた多相ストリームを形成する。第1ストリームは第1の反応成分を含み、第2ストリームは第2の反応成分を含む。生成物を得るための第1の反応成分及び第2の反応成分の反応を、相間移動触媒が触媒する(「生成物」とは、少なくとも1種の生成物を意味する)。
【0013】
別の局面において、本発明は、マイクロチャネル装置を提供する。このマイクロチャネル装置は、2mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する反応チャネルに連結された第1のチャネル入口を含み;前記反応チャネルは天井及び床を含み、この床及び天井がそれぞれオープンエリアの境界を画定し、前記反応チャネルの厚さが前記天井と床との距離(間隔)となる。前記反応チャネルに、第2のチャネル入口が連結される。前記の第1のチャネル入口と第2のチャネル入口とは、セパレータプレートによって隔てられる。このセパレータプレートの端部が、オープンエリアの少なくとも1つの境界を構成する。オープンエリアは、少なくとも3mmの長さを有する。オープンエリア中に膜はない。第1のチャネル出口が反応チャネルに連結され、第2のチャネル出口が反応チャネルに連結される。第2のチャネル出口は第1のチャネル出口から隔てられる。
【0014】
本発明はまた、マイクロチャネル装置を作る方法をも提供する。この方法は、第1のシート、第2のシート、第3のシート、第4のシート及び第5のシートを、第1のシートが第2のシートの上に重なり、第2のシートが第3のシートの上に重なり、第3のシートが第4のシートの上に重なり、第4のシートが第5のシートの上に重なるような順で積み重ね;第1、第2、第3、第4及び第5のシートを互いに結合させることを含む。これらのシートは、結合されたデバイスにおいて第1のシートがオープンエリアのための天井を構成し、第5のシートがオープンエリアのための床を構成し、第2のシートがオープンチャネルに連結された第1ストリーム入口及びオープンチャネルに連結された第1ストリーム出口を含み、第4のシートがオープンチャネルに連結された第2ストリーム入口及びオープンチャネルに連結された第2ストリーム出口を含み、第3のシートが第1ストリーム入口と第2ストリーム入口とを隔てるセパレータプレートを含むような設計を有する。「結合」とは、シート同士を一緒に保持する任意の方法を言う。
【0015】
さらに別の局面において、本発明は、マイクロチャネル装置を提供する。このマイクロチャネル装置は分離ゾーンを含み、この分離ゾーンは、内側面の少なくとも1つの部分が親水性であり;内側面の少なくとも1つの部分が疎水性であり;少なくとも1つの分離補助特徴を含む。この分離補助特徴は、反応チャネルに連結されて反応チャネルより大きい内側横断面積を有する分離ゾーン中の拡張ゾーン、相合体剤及びセパレータプレートより成る群から選択される。前記分離ゾーンの少なくとも1つの内寸は、2mm又はそれ未満である。
【0016】
さらなる局面において、本発明は、少なくとも1つの単位操作を実施する方法を提供する。この方法は、多相流体ストリームを分離ゾーン中に通すことを含み;ここで、この多相ストリームは第1の非固体相及び第2の非固体相を含み;前記分離ゾーンは、内側面の少なくとも1つの部分が親水性であり;内側面の少なくとも1つの部分が疎水性であり;少なくとも1つの分離補助特徴を含む。この分離補助特徴は、反応チャネルに連結されて反応チャネルより大きい内側横断面積を有する分離ゾーン中の拡張ゾーン、相合体剤及びセパレータプレートより成る群から選択される。分離ゾーンに通される前記多相流体ストリームは、その少なくとも1つの寸法が2mm又はそれ未満である。分離ゾーンから少なくとも2つの別個のストリームが通る。これらのストリームは、第1の分離したストリーム及び第2の分離したストリームと称される。第1の分離したストリームは、第1の非固体相及び第2の非固体相を、分離ゾーンに入る多相流体ストリームと比較して高い第1の非固体相対第2の非固体相の比で含有する。第2の分離したストリームは、第1の非固体相及び第2の非固体相を、分離ゾーンに入る多相流体ストリームと比較して低い第1の非固体相対第2の非固体相の比で含有する。
【0017】
別の局面において、本発明は、マイクロチャネルから相を分離するための装置及び方法を提供する。これは、ストリームスプリッター(好ましくは、一方の主要面が第1相を引きつけるために選択されたものであり且つもう一方の主要面が第2相を引きつけるために選択されたものであるプレート)によって達成することができた。好ましくは、2相「重ね」ストリームは、プレートによって分割されて別個の相になる。特に好ましい具体例において、プレートは、鋭いブレードチップ(刃先)を有し(2相重ねストリームが該チップに流れ込む)、より厚いプレート本体又はくさび形に拡大する。2つの相は、チャネルの分離領域(又はセパレーターチャネル)の「屋根」と「床」とが反対の表面極性及び/又はぬれ性を有するものとする。例えば、油相が水相より密度が低い油/水混合物については、チャネルの「屋根」は疎水性表面を有し、「床」は親水性表面を有する。特定的な具体例において、第1のストリーム及び第2のストリームはエマルションの形にはない。
【0018】
本発明はまた、ここに記載された装置を相間移動触媒反応用に使用すること及び操作の際の装置も包含する。例えば、ある局面において、本発明は、ここに記載された不混和性の2つの相を含有する装置として記載することができる。本発明はまた、個々の反応、個々の類の反応及び選択された反応タイプを包含するものと理解すべきである。
【0019】
本発明についての用途には、大量生産化学品、特殊化学品及び精製化学品の生産、並びに汚染防止用途、例えば廃流や生成物ストリーム中の不純物を除去又は破壊するための用途が包含される。本発明は、これらの用途に限定されず、多相反応の用途の全域に及ぶものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の様々な具体例の利点には、以下のものの内の1つ又はそれより多くが包含され得る:より小さい反応器寸法、単位操作数の減少、より低い費用、簡単な装置及び方法工程、高められた反応速度、改善された収率、高められた選択性、望ましくない副生成物がより少ないこと、より低いエネルギー要求、温度及び滞留時間の優れた制御、材料(特に高反応性及び/又は毒性材料)のより少ない在庫量、より低い費用の原料、プラスチックを含めたより多くの反応器材料選択肢、大容量反応器と比較して同じ又は高い生産性でより小さい反応器を使用できること、汚れ付着傾向が低いプロセス、連続撹拌槽反応器(CSTR)(化学物質の連続的な工業生産及び分離のための標準的なもの)の代わりの栓流濃度プロファイル、並びにより高い安全性、毒性又は反応性の中間体の取扱いにおけるより低い危険性。
【0021】
本発明の主題事項は、本明細書の結びの部分において特に指摘されて明確に特許請求される。しかしながら、機構及び操作方法の両方並びにさらなる利点及び目的は、以下の説明を参照することによって、もっとよく理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】相間移動触媒を有する隣り合ったストリームの概略図である。
【図2】A〜Eは、相間移動触媒反応のための積層デバイスを形成させるために積み重ねて結合させることができるシートの平面図であり、Fは、A〜Eのシートを積層することによって形成されるデバイスの概略断面図である。
【図3】別のシートデザインC’の平面図及びこの別デザインを使用したデバイスの概略断面図である。
【図4】チャネル中における相間移動触媒反応のための積層デバイス中に含ませることができるシートの平面図であり、これらのシート(A”、B”及びC”)は図2のシートA〜Cの代わり用いられる。
【図5】相間移動触媒反応用のマイクロ反応器の概略断面図であり、流体の流れも示す。
【図6a】多孔質イオン交換材料を有する3相系の概略図である。
【図6b】図6aにおける循環域の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
用語集
「隣接(した)」とは、ストリームを隔てる膜なしで直接接触していることを意味する。
「多相」とは、少なくとも2つの非固体相を意味する。
「反応チャネル」とは、操作の間、少なくとも2つの連続相及びPTCがあるチャネルを意味する。
【0024】
「疎水性」及び「親水性」材料は、当技術分野において一般的に知られている。しかしながら、密接に関連したぬれ性材料については、自動測角計の前進接触角度の測定に頼らなければならないことがあった。疎水性材料は蒸留水について少なくとも90°の前進接触角度を有し、親水性材料は90°又はそれ未満の前進接触角度を有する。好適な接触角度測定試験は、ASTM法D5725−99である。本発明においては、親水性及び疎水性は材料の固有の特性であり、シート又は平坦物品について規定されるべきものであり、接触角度に影響を及ぼす毛管効果を避けるために、マイクロチャネルについて規定されるべきものではない。
【0025】
相間移動触媒(PTC)は以下のいずれかを一緒にするのを促進する:
(1)化学反応触媒(CRC又は単に「C」)と試薬(例えば種「A」)とを互いに接触させること(即ちA+C→P+C、ここで、Pは生成物)、又は
(2)CはAを第1の流体とは不混和性の第2の流体中に存在する少なくとももう1種の反応成分(例えばB)と一緒にしてこれら2種の反応成分が反応できるようにする(即ちA+B+C→P+C)。
【0026】
「促進する」とは、PTCが、触媒若しくは試薬に結合(イオン結合、共有結合若しくは配位共有結合)することができ(例えばPTC+C→C−PTC)、又は反応性種(A若しくはB)の化学的に非反応性の(「不活性な」)対イオンに結合することによって間接的にCが液液界面を横切って移動できるようにすることを意味する。
【0027】
典型的には、可溶性PTCについては、反対側の相中におけるレベルが低い(例えば1×10-6〜0.01M)場合にPTCの効力が達成されることができる。それより高い濃度でも機能するが、通常必要なわけではなく、PTCを消費させるだけである。PTCの分配係数は低くてもよいが、しかし懸案の反応の速度を速めなくなるほどは低くないのが好ましい。PTCは典型的には両方の相のバルク溶液中に存在すると考えられるが、しかし通常は同じ濃度ではなく、境界面の活性及び表面積に制限されない。PTCは1接触当たりに多数回、例えば1接触当たりに数千〜数百万回用いられる。
【0028】
殆どの具体例において、PTCは少なくとも1つの相(典型的には2つの相)中に可溶のものである。しかしながら、ある具体例においては、本発明は、不溶性のPTCを第3の液相又は(粒状担体上に固定化された相間移動触媒のような)固体相とした3相系を採用することもできる。
【0029】
他方、抽出剤(E)は典型的にははるかに高いレベル、通常は希釈溶媒中に2〜25%のレベル(又は場合によっては生、即ち本質的に100%のレベル)で、しばしば溶解度調整剤と共に用いられ、これらは第1相中の少なくとも1つの溶質に結合(2つの液体の間の界面において起こると考えられる)して、その溶質を第2相中に可溶にして、その中に分配できるようにする。溶質はマイクロチャネル中の第2相中では反応せず、典型的には輸送されて、第2の同様のしかし反対の反応において抽出剤から分離される。抽出剤は1接触当たりに一度だけ用いられる。抽出剤、調製剤及び希釈剤の分配係数はすべて、できるだけ高くなるように、1より高く、しばしば1000〜10000となるように選択すべきである。
【0030】
相間移動触媒
相間移動触媒は、反応性種を不混和性相間の相境界間を行き来させる。典型例においては、水相に第四級アンモニウム塩(「quat」)を添加し、そこで溶解した反応成分(例えば水酸化物イオン(OH-)とイオン対を形成する。例えば水相は水酸化ナトリウム反応成分を含有していてよく、quat塩は入手が容易な塩化物塩であり、即ち次の通りである。
【化1】

ここで、カンマはいずれかの相(この場合には水相(aq))内のイオン対を表わす。イオン対RR'R''R''''N+,OH-(aq)は有機相中に可溶であり、このイオンの熱力学的(平衡)分配係数(PR4NOH)に従って溶解した反応成分を有機相中に移動(分配)させて、RR'R''R''''N+,OH-(org)を形成する。即ち次の通りである。
【化2】

ここで、これは有機相中に溶解した試薬との反応、例えば油溶性メチルエステルR1COOCH3(例えばR1の炭素数は5より大きい)の鹸化(加水分解)を次のように触媒する。
【化3】

次いで
【化4】

従って、RR'R''R''''N+,OH-(org)種は再生され、その触媒としての性状を示す。生成物のアルコール及び酸は、それらの炭素数に応じて別々に水相中に分配されることも分配されないこともある。従って、反応の後に相間移動触媒は開放されて、サイクルを繰り返すために水層に再分配されて戻され、従ってPTCは以下のように全体の反応速度を高める。

ここで、kcat≫kucatであり、括弧は溶質活性を示す。何桁もの強化が通常であり、PTCを化学物質製造の強力で頻繁に用いられるツールにする。
【0031】
好ましい相間移動触媒は、同一分子中に疎水性部分及び親水性部分を有し、水溶液中に可溶であり、さらに高い油/水分配係数を有するものである。相間移動触媒は、界面活性剤、洗剤若しくは石鹸又は乳化剤(例えばセロソルブ(登録商標)類のようなブトキシエタノール)と称される関連タイプの分子のように気泡形成剤又は乳化剤界面活性剤ではないものであるのが好ましいが、これらの試薬も好ましいわけではないけれどもPTCとして機能でき、そのままで本発明に包含される。大量生産化学プロセス用に従来周知のPTCは、本発明において用いるのに好適である。
【0032】
過マンガン酸塩、過塩素酸塩、クロム酸塩/二クロム酸塩、ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)、シアン化物、チオシアン酸塩、三ヨウ化物、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、ポリオキソメタル酸塩、水酸化物、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、その他の擬ハロゲン化物等のような水溶性のアニオン性反応成分を伴う試薬及び触媒反応については、PTCは第四級アンモニウムイオン、より一層好ましくはテトラオルガノアンモニウム化合物、好ましくは4又はそれより大きい総炭素数を有するものである。好ましいquatの例は、SACHEM社から入手できるもの(http://chem.com/Sachem/catalog.html)がある。オルガノ基は、直鎖状アルキル(例えば4つのn−ブチル又は1つのn−オクチル〜n−テトラデシル及び残り3つのメチル)であることができるが、分枝鎖であることもでき且つ/又はフェニル及びベンジル基のような芳香族基を包含することもできる。上記Sachem社のC1〜C4R基(4〜16の総炭素数、直鎖及び分枝鎖の両方を包含する)もまた有効である。また、最終的な化合物が正の正味の分子電荷(quatの場合には正)を有することを条件とし且つ油/水分配係数が依然として溶解度の触媒作用による所望の反応速度強化に作用を及ぼすのに充分大きいままである限り、ハロゲン、ニトロ基、擬ハロゲン等のような追加の基をPTC中に存在させることもできる。テトラオルガノアンモニウムPTCの例には、次のカチオン:
【化6】

のBr-、I、CH3COO-、フタル酸塩、過塩素酸塩、クロム酸塩、過マンガン酸塩、フッ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、メタンスルホン酸塩、亜硝酸塩、フルオロ硼酸塩、フルオロリン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、又はCl-塩が包含される。アニオン性反応成分についてのその他の好適なPTCには、次のものが包含される:第四級アルソニウム塩(例えばAsPh4+)、第四級ホスホニウム塩、好ましくはテトラオルガノホスホニウム塩、例えば
【化7】

(ここで、Rはメチル、エチル、プロピル又はブチルのようなアルキルである)
【化8】

及びオルガノカルボキシル化合物(例えばオルガノ第二コバルト錯体、例えばCo(ナフテネート)2)。分配係数が低いために好ましさの低いアニオン対イオン含有PTCには、リグノスルホン酸塩及び硫酸塩、二塩基性リン酸塩が包含される。助触媒を存在させることもでき、これはアルコール(好ましくはジオール)及びタングステン酸塩イオンのような種を包含することができる。PTCは当技術分野において周知であり、「Phase Transfer Catalysis: Fundamentals, Applications, and Industrial Perspectives」、C.M. Starks、C. L. Liotta及びM. Halpern著(Chapman and Hall社、1994年)のように、様々な考察が入手可能である。
【0033】
Cu、Mn、Fe、Ag、Ce、Co、Ti、Zr等のようなカチオン性反応成分を伴う触媒反応については、油溶性の単座錯化及びキレート化錯化リガンドが好ましい。これらのPTCは、カチオン周辺の水の全部又は一部と置き換わって要求される疎水性及び電荷中和を付与して、カチオンを油溶性(好ましくは分配係数>1)にし、さらに金属イオンを依然として反応性の形態にとどめる。かかる錯化及びキレート化用化合物(総炭素数が8又はそれより多い)の例は、カルボン酸、オルガノホスフェート、オルガノホスホネート、オルガノホスフィン酸類、オルガノホスフィンオキシド、ヘテロ環式アミン、オルガノアミン類(ポリアミンを含む)、オルガノアミドオキシム、ケト−オキシム、クラウンエーテル、アルキルフェノール、及びジケトン(例えばオルガノアセチルアセトナト)から選択することができる。
【0034】
また、ポリエチレングリコール、クリプタンド、クラウンエーテル(例えばジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、18−クラウン−6及び15−クラウン−6)並びにシクロデキストリンのような中性錯化用分子もPTCとして用いることができ、ある具体例においては好ましいPTCとなる。
【0035】
過酸化水素、酸及び水素ガスのような中性だがしかし水溶性の反応成分を伴うPTC促進触媒反応については、有機可溶性付加物を形成させることによって、溶媒和によって又は中間体化合物を形成させることによって、試薬を有機相中に行き来させることができる。過酸化水素の場合、ヒドロペルオキシドを生成させるのに充分な油溶性原料を用いて、挿入中間体が形成される。例えば、オルガノボロン酸をPTCとして用いてヒドロペルオキシドを形成させ、これが非極性シクロヘキサン中に分配して、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンとのブレンドを製造することができる。Ti(III)、Mn、Fe(II)及びCo(II)錯体は、ペルオキシド部分を有することができる。
【0036】
PTCの例には特に、第四級アンモニウム化合物、例えばAliquat 336、メチルトリ(n−オクチル)アンモニウムイオン、第四級アルソニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物、クラウンエーテル化合物(例えばジベンゾジベンゾ−18−クラウン−6等)、プロトン化オルガノアミン化合物(例えばプロトン化トリ(n−オクチル)アンモニウムイオン)、オルガノスルホネート化合物(例えばリグノスルホネート、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート等)、オルガノコバルト化合物、油溶性カルボキシレート(例えばイソステアレート、versatic acid、ナフテン酸)、オルガノホスフェート、オルガノホスホネート及びホスフィン酸類(例えばジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、Cyanex 272、PC-88A、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート等)、カリクスアレーン、アルキルフェノール(例えばノニルフェノール、ドデシルフェノール等)等がある。
【0037】
水素ガス/油は、本発明の下では気体/液体2相系を示す。水素については、H2付加物と共に油溶性水素化物を形成する有機金属錯体を用いることができる。かかる有機金属錯体は、Co、Fe、Mn、Mo、Pd、Ni、Ti等の錯体から調製することができる。
【0038】
HClのような酸、又は中性金属塩、例えば塩化アルミニウムや塩化鉄(III)、塩化亜鉛、塩化銅((I)若しくは(II))及びそれらとヨウ化物若しくは臭化物との塩(単独で又は任意の組合せで用いられるもの)を移動するためには、エーテル及びケトンを用いることができる。
【0039】
ある具体例においては、水性−水性(Aq−Aq)及び二重エマルション液液抽出(Double Emulsion Liquid-Liquid Extraction)(DE−LLX)系を本発明において用いることができる。通常の液液抽出(LLX)では通常は水不混和性を達成するために非水性流体が用いられ、これらの溶媒は酵素触媒を含めたタンパク質を変性(分解)してしまうが、上記具体例においてはそれぞれの流体が通常の液液抽出(LLX)と同じ態様で挙動しながら、LLX系においてタンパク質ベースの(即ち酵素系)触媒を用いることが可能になるという利点がある。
【0040】
殆どの具体例において、PTCは少なくとも1つの相(典型的には2つの相)中に可溶のものである。しかしながら、ある具体例においては、本発明は、不溶性のPTCを第3の液相又は粒状担体上に固定化された相間移動触媒とした3相系を採用することもできる。反応によっては、不溶性PTCアプローチは、ある程度改善された反応条件をもたらすことができる。例えば、PTCとしてテトラブチルアンモニウム塩を用いた塩化ベンジルと塩化ナトリウムとの塩化物−臭化物交換。この系は、有機相(トルエン)、PTC相及び水相の3相反応系を形成する。この反応の反応速度は、第3のPTC相を形成させるのに充分なPTCを添加すると、有意に高められる。理論上は、有機試薬及び無機試薬の両方がこの第3の相に移動して、そこで固有の反応が行われる。第3相の形成はまた、油水エマルションシステム中でも行うことができ、そこでPTC相を有機相と接触させることができる。
【0041】
装置
2つの相についての装置の概略図を図に示す。図1は、相1及び相2の不混和性の2つの相が互いに隣接して流れる反応形態の断面図である。これらの相の内の少なくとも1つは、厚さtが1000μm又はそれ未満、好ましくは100μm未満、特に好ましくは10μm未満となるように厚さを調節される。これらのストリームの内の少なくとも1つの中に、PTC4を存在させる。好ましい具体例において、ストリームの厚さは、100μm又はそれ未満、ある具体例においては0.1μm〜10μmの範囲とする。厚さは、フローに対して垂直に測定される。ある好ましい具体例においては、両方のストリームを厚さがこれらの範囲になるように調節する。好ましくは、一方又は両方の相のストリームが少なくとも10cm-1、より一層好ましくは少なくとも100cm-1の面積対容積比を有する。例えば、4cm×4cm×0.01cmの寸法のストリームは、100cm-1の面積対容積比を有する。典型的な操作態様においては、明白な理由で、密度が低いストリームは重力場に対して上になる。相の密度差が少なくとも0.05g/ccであるのが好ましいが、もっと差の小さい系も有効である。
【0042】
図2A〜Eは、相間移動触媒反応用のマイクロ反応器を形成させるために積み重ねて結合させることができる薄いプレートの平面図である。カバープレートAは第1相入口12及び第1相出口22を有する。薄いプレートは、「シム」とも称される。シムBは第1相通路14及び16を有する。組み立てデバイスの操作の際に、第1相が通路/プレート入口14を通ってシムBに入り、平面反応帯域15(これは単純にシムB中の開口である)を通ってこのプレートを横切り、第1相通路/プレート出口16から出て行く。境界材料17は、第2相が第2相通路18から流れ出るのを防止する。随意としてのシムCは、組み立てデバイスにおいてプレート入口付近での相混合(及び不連続相の形成)を防止する手助けをする境界材料21を提供することができる。シムDは、組み立てデバイスにおいて平面反応帯域23中への第2相ストリームの流入を提供することを除いて、シムBと類似である。図2Eに示したカバープレート25は、第2相入口13及び第2相出口26を含む。
【0043】
数多くの形態の変更が可能であることを認識すべきである。例えば、第1相入口及び第1相出口が図中に示したようにデバイスの同じ側にあるのではなくて反対側にあるようにデバイスを垂直にすることも可能である。また、複数のシム、例えばシムB及びD(及び随意としてのシムC)を所望の回数繰り返して単一のデバイス内で複数の平行反応帯域を形成させることができるということも理解すべきである。
【0044】
図2Fは、シムA〜Eを積み重ねて結合させることによって形成されたデバイスの断面図である。ストリーム31及び33中に描かれた矢印は、デバイスを通る第1相及び第2相の流れ(の方向)を示す。操作の際に、PTCは反応成分をフローストリームの間で行き来させ、かくして第1相ストリーム31中の反応成分と第2相ストリーム33中の反応成分との反応速度を高める。フローストリーム中の生成物は、分離することもでき、別のデバイス中又は一体化デバイスの別の区画中に通すこともできる。ある好ましい具体例においては、出て行く相のストリームの一部又は全部を、同じデバイス又は別の反応器の入口に再循環させる。本発明においては、随意としてのシムCは膜ではなくてオープンエリアを提供する。膜は経費や複雑性を増し、ストリーム間の反応成分の迅速な行き来に対する防壁を形成するので、望ましくない。
【0045】
また、図2F中の21はセパレータプレートであり、このセパレータプレート21の表面32、34は、望まれる相を引きつけ且つ望まれない相を追い払ってストリーム分離をより良好にするのを補助するために異なる親水性度を有するように変性させたものであることができる。セパレータプレートの端部42が、オープンエリア44の1つの境界を画定する。第1相チャネル入口46及び第2相チャネル入口48も示す。末端プレート9及び25は、反応チャネル天井及び反応チャネル床を形成する。
【0046】
本発明のある好ましい具体例においては、フローストリームは連続的なものであり、言い換えれば、これらフローストリームは反応帯域中を連続的に移動する。ある好ましい具体例においては、隣り合った相は平面的であり、少なくとも1mmの長さ(流れの方向において測定)、ある具体例においては10〜1000mmの長さにわたって接触する。系は、レイノルズ数の式(NRe、ここで、NRe=DVρ/μである)に従ってその密度、粘度及び流量に応じて層流で存在することが知られている。この式を用いた計算は、特定の設計寸法、流量及び流体粘度が層流をもたらすのか乱流をもたらすのかを決定するための手段を提供する。1800又はそれ未満のレイノルズ数は本質的に完全に層流であり、特に好ましい。この式により、設計が層流型にあることを使用者が確認することが可能になる。また、乱流が流れている流体中で広がってレイノルズ数が1800超から約25000までに及ぶためには多少の間隔が必要であるということは、当技術分野においてよく知られている。従って、これらの流量条件の多くは、短い接触間隔を用い且つレイノルズ数を1800〜25000の範囲に高めることによって、本発明に適応させることができる。25000以上では、乱流が完全なものとなり、従って本発明の非乳化局面にとって特に好ましくない。このNReの計算は、本発明のデバイスにおける層流のための流速範囲を画定する。これらの計算は、用いるマイクロチャネルの寸法を必要とするので、デバイスの内側チャネルの目標設計寸法を予測することに留意されたい。
【0047】
ある好ましい具体例においては、MTPデバイスの少なくとも2つの内側面が所望の相を引きつけたり追い払ったりするように選択される異なる疎水性度を有するように該MTPデバイスを構築することによって、相間混合及び/又はエマルションが壊れてそれぞれの不混和性相になることが促進される。例えば、セパレータ21が親水性表面32{例えばシリカ、親水性シリコーン、親水性シラン、アルミナ、次のものによる表面処理:アルコール、アミン、高エネルギー処理(例えば電子ビームやプラズマ):によって親水性にされたプラスチック、及びその他の非極性プラスチック、例えばポリメタクリレート等}及び疎水性表面34{例えば疎水性シリコーン、疎水性シラン、ペルフッ素化、疎水性プラスチック(例えばポリオレフィン、ポリスチレン、ABS、SAN、ポリスルホン等)}を有するようにすることによって、流体エマルション液滴及び連続相並びにそれらと生成物とが合体した流体が同様の極性の好適な表面を濡らして該表面に付着できるようになり、それによってビーズ化並びに液滴及び/又は分散エマルションの形成又は再形成を起こさなくなる。ある好ましい具体例においては、乱流及び混合を避けるためにセパレータを非常に薄くする。好ましくは、セパレータは、上記のNRe値を用いて層流に設定される厚さ(t)を有する。
【0048】
図3上は、随意としてのシムC’の別デザインを示し、リブ102が分散した相の形成を防ぐ補助をする。図3下は、組み立てデバイスの断面図を示す。
【0049】
図4は、整列したチャネル106、108を有する別デザインを示す。入口、出口及び流体通路は、図2におけるのと同じである。この組み立てデバイスにおいては、106、108によって構成されるチャネルが、隣り合った第1相ストリーム及び第2相ストリームを含有する。
【0050】
別の本発明の具体例を図5に示す。この具体例においては、不混和性ストリームのフローが入口500及び503中を通る。これらのストリームは地点502で合流し、そこである場合にはこれらのストリームは一緒になってエマルションを形成する。典型的な相間移動反応においては、これらのストリームの内の一方又は両方にPTCを含有させる。一緒にされたストリーム504は、一連の鋭角な(80〜100°、好ましくは85〜95°)曲がり角を有するマイクロチャネルを通って流れ、これらの曲がり角が微細分散液を維持する助けをすることができる。
【0051】
このストリームは次いで分離ゾーン510中に流れ込む。この分離ゾーンは、親水性である少なくとも1つの壁(又は壁部)509及び疎水性である少なくとも1つの壁(又は壁部)505を含む。親水性表面及び疎水性表面はよく知られており、親水性シリカ又はプラズマ処理ポリマーのようなコーティング及びテトラフルオロポリエチレンのような疎水性ポリマーコーティングを包含する。別法として、かかる表面は、デバイスを構築するために選択した材料の固有の特徴であってもよい。本発明においては、分離(及び物質拡散)時間を短縮するために、分離ゾーンの少なくとも1つの寸法が2mm未満であるべきである。親水性表面と疎水性表面との間の分離が2mm未満であるのが好ましく、1mm未満であるのがより一層好ましい。
【0052】
ある好ましい具体例においては、分離ゾーンへの開口がフローを遅くするために徐々に広がるようにする。随意として、分離ゾーンに合体要素508を含ませることができ、これは例えば繊維、フォーム(泡)又はスラット(細長い薄板)であることができる。好ましくは、分離ゾーンはセパレータプレート515を含み、これは相分離を補助するために親水性面及び疎水性面を有するのが好ましい(この場合、親水性面は出口511に向けられた水相の側にある)。セパレータプレートは、中実であっても多孔質であってもよい。好ましくは、部分的に分離されたストリームの間で多少の流体交換を可能にする多孔質プレート又はスクリーン506を存在させる。プレート又はスクリーン506もまた、親水性面及び疎水性面を有していてよい(ストリームの親水性に対応するか又はその逆のいずれかの方向性)。1つの好ましい具体例においては、プレートにおいてランド(陸)部501の周囲に流路を(例えばエッチングによって)形成させることによって、物品が構成される。別態様においては、シート群にデザインを打ち抜き、これらのシートを積み重ね、結合させて、図示された反応器を作ることができる。
【0053】
図6a及び6bは、ビーズ、スクリーン、スラット、フィルム等としての多孔質イオン性膜(固体状PTC)604を充填されたマイクロチャネル602{好ましくは1μm又はそれ未満の高さ(フローに対して垂直の寸法であり、そのページの平面におけるもの)を有するもの}の断面図を示す。非水溶性反応成分を含有する水不混和性相606が、境界面610において、水溶性反応成分を含有する水相608と接触する。PTCを介して反応(例えば図6bに示したようなH3CC(O)ORの加水分解)が起こり生成物ストリーム612、614が得られる。
【0054】
好ましいマイクロチャネル反応器は、2.0mm(好ましくは1.0mm)又はそれ未満の寸法(触媒を数に入れない壁から壁までの寸法)、ある具体例においては50〜500μmの寸法を有する少なくとも1つの反応チャネルが存在することを特徴とする。高さ及び幅の両方とも、フローの方向に対して垂直のものである。反応用マイクロチャネルの高さ及び/又は幅は、約2mm又はそれ未満であるのが好ましく、1mm又はそれ未満であるのがより一層好ましい(その場合、反応チャンバーはマイクロチャネルの古典的定義内に入る)。反応チャネルの長さは典型的にはもっと長い。好ましくは、反応チャンバーの長さは1cmより長く、ある具体例においては1〜20cmの範囲である。典型的には、反応チャネルの側部は反応チャネル壁によって画定される。これらの壁は、セラミック、鉄鋼のような鉄ベースの合金、ニッケル、チタン若しくはその他の金属合金、又はシリコンのような任意の所望の材料から作られたものであることができる。ある好ましい具体例において、反応チャネルの壁は良好な耐溶剤性を有することができ且つ比較的安価であることができるプラスチック材料であり、これは充填されていないものであってもよいが充填されているものであるのが好ましく、熱硬化性プラスチック及び熱可塑性プラスチックが許容できる。充填プラスチックは、収縮する傾向が制限されているため、厳しい精度に加工することができ、工学的樹脂として用いることが可能になるので、多くの場合特に好ましい。ある好ましい具体例においては、マイクロチャネル壁を、上に定義したような所望の度合いの疎水性又は親水性を得るために、処理又はコーティングする。疎水性及び親水性の度合いは、接触角度を用いて量化することができる。反応器は、既知の方法で作ることができ、ある好ましい具体例においては、平坦な原材料から細断若しくは打ち抜きされたシム又は成形されたシムを積層することによってことに作られる。
【0055】
前記反応器には、マイクロプロセッシング技術(「MPT」)設計の充分な恩恵を最大限にするために、複数のマイクロチャネル反応チャネルを含ませるのが好ましい。また、このデバイスには通常、温度制御が必要な場合には、及び/又は複数の隣接した熱交換器マイクロチャネルをも含ませる。複数のマイクロチャネル反応チャネルは、例えば1つの平面層内の2、10、100、1000又はそれより多くのチャネル、及び2、10、100又はそれより多くの積層{好ましくは、反応の化学の性状のせいで温度制御が望まれる(即ち反応が有意に発熱性又は吸熱性である)場合には、交互の熱交換層(好ましくはマイクロチャネル熱交換器)と共に積層したもの}を含有することができる。好ましい具体例においては、マイクロチャネルを平面マイクロチャネルの平行配列で配列させる。マイクロチャネル反応器及びそれらの構築方法(特にシートタイプの構築)は周知であり、これらの反応器設計及び製造技術は、相間移動反応用のマイクロチャネル反応器を構築するために適合及び改良することができる。本発明の目的のためにこのタイプの反応器構造を用いることの性能利点には、非常に大きい表面積対容積比を有するフローストリームを形成させることができること、及び層流ストリームを形成させることができることが包含される。さらに、マイクロチャネル反応器を使用することによって、良好な温度制御を達成し、相対的により一層等温のプロファイル及び先行技術の構造と比較して正確に制御された滞留時間の分布を維持することができる。このことの結果として、有利なことに、ピーク温度の低下及び副反応の減少がもたらされる。
【0056】
好ましくは、反応用マイクロチャネル(群)は、バルクフロー流路を含有する。用語「バルクフロー流路」とは、反応チャンバー内のオープン流路(近接バルクフロー領域)を意味する。近接バルクフロー領域は、大きい圧力降下を起こすことなく反応チャンバー内の迅速なフローを可能にする。好ましい具体例においては、バルクフロー領域中に層流が存在する。各反応チャネル内のバルクフロー領域は、好ましくは5×10-8〜1×10-22、より一層好ましくは5×10-7〜1×10-42の近接横断面積を有する。作業範囲を規定するための横断面積、液体流速及び層流型の間の好ましい関係は、レイノルズ数の式において上で与えた。バルクフロー領域は、(1)反応チャンバーの内側容積又は(2)反応チャネルの断面の内のいずれかの少なくとも5%を占めるのが好ましく、30〜100%を占めるのがより一層好ましい。
【0057】
反応用マイクロチャネルに加えて、マイクロチャネル又は非マイクロチャネル熱交換器のような追加の特徴を存在させてもよい。存在させる場合、この熱交換器は一体型(例えば交互配置型)熱交換器であるのが好ましい。熱交換流体は気体又は液体であることができ、蒸気、液状金属、水、Therminol(登録商標)、鉱油、シリコーン油、ブライン又はその他の任意の既知の熱交換流体を包含することができ、熱交換器中に相変化があるようにシステムを最適化することができる。ある好ましい具体例においては、複数の熱交換層と複数の反応用マイクロチャネルとを交互配置させる(例えば少なくとも10の反応用マイクロチャネルと少なくとも10の熱交換器とを交互配置させる)。
【0058】
ある具体例(非層流のため又は第1のエマルションストリームを発生させ、次いでこれを層流態様の第2の不混和性ストリームと反応させるためのもの)においては、2つの不混和性フローストリームを、反応用マイクロチャネルとは別個の又は一体化したマイクロチャネルミキサーに通すことができる。この場合、2つの流体は、壁に対して直角の(又は多くの場合螺旋状にされた)シム又はブレードによって分けられたチャネルを通してポンプ輸送することができる。ブレードは短く、そこで、分けられた流体を第2のブレード、次いで第3のブレード等の一連のブレードに対して送ることができる。この2相分割手段は、小さいエマルション液滴を発生させ、これは大抵はまだインペラーを用いる通常のミキサーにおいて形成する準安定エマルションではない。優れた液滴寸法のエマルションのためには、通常は10〜14のかかるブレードで充分である。
【0059】
別の随意要素は、層を形成するための相との相互作用のために選択されたウィックであり、このウィックはチャネルの一方の側上に挿入又は形成させることができる。ウィックは、壁等上のマイクロチャネルであることができる。別の具体例においては、チャネル中にウィックを何ら存在させない。図示された具体例においては、1つの相のフローがチャネルの1つの側(面)から入り、反対側(面)から出て行く。しかしながら、別の構造においては、チャネルの長手方向に沿って多数の地点において供給物を送り出し又は取り出すことができる。矩形チャネルを図示したが、しかしその他の形状を採用することもできる。
【0060】
本発明の方法は、PTCを利用する。ある具体例においては、チャネルに追加の触媒をも含有させることができる。追加の触媒を存在させる場合、これは例えば多孔質触媒材料又はより一層好ましくはチャネル内部の一部の上のコーティング、例えば4面チャネルの1つの面の上のウォッシュコートであることができる。この触媒は、担体及び活性触媒サイトの上重ね層(群)及び随意としての介在層又は担体材料(これは接着性及び/又は表面積を高めるために用いることができる)を含むことができる。金属酸化物は、介在層の1つのタイプである(「介在層」とは、その介在層が必ずしも活性サイトとは別個のものであることを意味せず、多くの場合、活性サイトは介在層中の裂け目や穴中に分散される)。ある好ましい具体例において、触媒層は、相を引きつけ又は追い払うように選択される(例えば親水性又は疎水性触媒層)。
【0061】
PTCに追加して存在させることができる触媒活性材料には特に制限はなく、先行技術の任意の有効な触媒が包含され得る。本発明において利用できる触媒活性材料の中には、貴金属、好ましくはPt、Pd、Rh、Ir及びRuより成る群から選択される少なくとも1種の金属を含む触媒材料が包含される。その他の触媒活性材料には、Li、Mo、V、Nb、Sb、Sn、Zr、Cr、Mg、Mn、Ni、Co、Ce、希土類金属及びそれらの混合物より成る群から選択される金属の少なくとも1種の酸化物又はリン酸塩が包含される。この触媒は、アルカリ又はアルカリ土類促進剤のような追加の成分を含有していてもよい。好ましい触媒担体材料には、アルミナ、シリカ、その他の金属酸化物、メソ孔質材料及び耐火性材料が包含される。触媒はまた、金属フォーム又は金属フェルト(不織金属)上に(例えばウォッシュコーティング又は化学蒸着によって)コーティングされた金属酸化物層上に分散された貴金属であることもできる。ある好ましい具体例においては、マイクロチャネルの壁(群)(又は壁の一部のみ)の上に触媒を(例えばCVDやウォッシュコーティングによって)配置させる。触媒が内側チャネル表面に曝される場合には、相ストリームとの相互作用を考慮すべきである。特に好ましい触媒には、通常は可溶の触媒が共有結合によってマイクロチャネル壁に固定された繋留型触媒が包含される。好ましい触媒は、反応用マクロチャネル内で混合を引き起こさないものである。
【0062】
方法
本発明の方法は、(介在する膜なしで)直接接触した少なくとも2つの別個の相ストリームを用いる。好ましい具体例において、この方法は、ここに記載された装置を用いて実施される。典型的には、本方法は、1つの水相及び1つの不混和性有機相を用いる。しかしながら、ある具体例においては、その他の組合せを採用することもできる。好ましさが比較的低いある具体例においては、2つより多くの相をマイクロチャネル中に存在させることができ、例えば水相が単独でエマルションであることができ、分散した第3の相を含有することができる。
【0063】
本方法はまた、溶媒、触媒及び/又は反応成分をさらなる使用のために入口に再循環して戻す工程のような追加の工程を含むこともできる。例えば、反応の次の工程において、生成物を蒸留、沈降又は膜濾過のような分離技術によって取り出し、溶媒、触媒及び/又は反応成分を再循環することができる。
【0064】
一般的に、本発明の方法は、任意の既知の相間移動触媒される反応に対して良好な効果で適用することができる。慣用の相間移動触媒反応の2つの例が、米国特許第5347043号及び同第5514189号の両明細書に記載されているので、これらを参照用にここに取り入れる。本発明において用いるのに特に好適であると信じられる特定的な相間移動触媒される反応には、アルキル化、脱ハロゲン化水素、エステル化、加水分解,酸化、エポキシ化、マイケル付加、アルドール縮合、還元及びカルボニル化が包含される。特定的な好ましい条件、温度、圧力、溶媒、フローの型等のいくつかを、実施例の部に与える。例えば、本発明の方法は、第四級アンモニウムイオンのようなPTCの存在下でアルコールを縮合させてエーテルを形成させるために用いることができる。同様に、第四級アンモニウムイオンやクラウンエーテルのようなPTCの存在下でエステル化反応を実施することができる。相間移動触媒される反応の別の例は、アミド化である。
【0065】
以下は、本発明の相間移動触媒作用によって実施することができる反応のタイプの非限定的なリストである:ハロゲン化アルキルとアニオン類CN-、SCN-、CNO-、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、SH-、HSO3-、RS-、ArO-、RCO2-等とのSN2置換反応;NaOH(水性)及びハロゲン化アルキルを用いたアルキル化反応:C−アルキル化については、活性化ニトリル、ケトン、エステル、ニトロ化合物、シクロペンタジエン類及びその他の酸性C−H化合物、N−アルキル化についてはイミド、アミド、スルホアミド及びヘテロ環式N化合物、並びにS−アルキル化;その他の強塩基反応、例えばO−アルキル化(エーテル化)、脱ハロゲン化水素、カルベン反応、縮合反応、マイケル付加アルドール縮合、ウィッティヒ反応、ダルツェン反応;α−ヒドロキシ酸の合成;オレフィン及びアセチレンを製造するための除去反応、MNO4-、OCl-、H22、O2、IO4-、HNO3等のような無機酸化剤を用いた多くの化合物の酸化反応;BH4-、AlH4-、HCO2-等による多くの化合物の還元反応、重合反応及びポリマー変性;並びにカルボニル化、カルボキシル化及び水素化のような助触媒としての遷移金属を含有する反応。
【0066】
PTC系の反応性に影響を及ぼすファクターには、撹拌(存在させるならば)、触媒、アニオンタイプ、溶媒、反応性成分濃度、及び温度が包含される。これらのファクターは、反応成分の有機相中への移動速度及び有機相内での固有の反応速度に影響を及ぼす。これらのファクターを念頭に置いて、マイクロチャネルデバイスは、標的化合物の製造を最大化する制御されたマイクロ環境を提供することによって、従来のPTC反応器技術を上回るPTC反応の利益を提供することができる。
【0067】
最適化されたマイクロ環境は、相間移動のための非常に広い表面積、反応成分と触媒との適正な比、良好な混合及び適切な温度制御を有するものである。これまでは殆どのPTC反応は混合反応容器中で行われている。粒子寸法(表面積)及び混合の制御は、タービン又はその他のタイプの撹拌によって達成される。温度制御は、反応器壁又は内部/外部熱交換器による熱交換によってもたらされる。
【0068】
本発明のある非層流具体例については、マイクロチャネル反応器中で水中油ミクロエマルションを発生させることができる。このエマルションの粒子寸法は、従来のバッチ技術によって製造されるものより小さくなることができる。マイクロチャネル系内における短い滞留時間内で反応を完了させることができる移動速度を作り出すためには、粒子寸法をできるだけ大きくすべきであるが、過度の相分離時間を要するほど小さくするべきではない。このミクロエマルション概念は、PTC可溶性液−液系及びPTC不溶性有機−PTC−水系に当てはまる。
【0069】
より迅速な又はより完全な反応のためには、系の温度をできるだけ高くすべきである。温度が高ければ、移動速度及び固有の反応速度の改善が促進される。相間移動触媒の温度安定性に対しては、気を配らなければならない。マイクロチャネル技術によって反応器容量に対する熱移動表面積の有意の改善がもたらされるため、触媒の完全性及び最終生成物に影響を及ぼすことなく、より一層高い反応器温度で安全に運転できる。
【0070】
従来の遅いアニオン交換速度及び遅い固有反応速度の問題があったいくつかの反応を、本発明の方法によって改善することができる。このタイプの反応の代表例は、2−クロロアルカンに対するフッ化物置換反応である。フッ化物は高い装填/容量比を有し且つ最も強く水和されたイオンであるので、有機相中へのフッ化物の移動は困難である。相間移動触媒によってひとたび有機相中に移動されれば、フッ化物イオンは求核性が低いので、置換反応速度が遅い。水相と有機相との間の成分の移動速度を改善する化学的アプローチはいくつかあり、例えば2種の異なる相間移動触媒を用いるものがある。全体の反応速度を改善するためには、高められた混合速度(高められた移動速度/表面積)及び高い反応温度も推奨される。マイクロチャネルPTCデバイスは、高い拡散表面積のマイクロ環境及び良好な温度制御を提供することによって、有意の反応速度の改善を提供することができた。前記のように、マイクロチャネルデバイスは、良好な熱移動が熱移動表面と反応流体との間の全体温度差を小さくするので、従来の方法より高い反応温度で運転することができる。
【0071】
いくつかのPTC反応は、速いアニオン移動速度及び速い固有反応速度を有する。代表的な反応は、オレフィン類の過マンガン酸塩酸化である。過マンガン酸塩イオンは、PTCによって有機相中に容易に移動される。過マンガン酸塩イオンは次いで有機相中の酸化可能な基と激しく反応する。このタイプの系の主な関心は、反応制御である。マイクロチャネルPTC反応器の熱移動に関する利点は、反応速度制御の改善及び生成物選択性の改善を可能にする。
【0072】
アニオン移動速度によって速度制限されるPTC反応は、フェニルアセトニトリルのC−アルキル化(例えばエチル化、ブチル化)のような反応によって代表される。これらの反応については、水相は濃NaOH溶液であることができる。水酸化物イオン又はその反応性中間体の移動速度は遅いので、この反応は従来は、撹拌速度を高めて、境界面移動速度を改善し、全体の移動表面積を高めることによって、利益を得てきた。この反応については、文献には、撹拌速度と全体反応速度との間でかなり直線的な相関関係が示されている。この移動速度の挙動故に、C−アルキル化反応時間を長くする(30分超)ことによって、高い収率レベルをもたらすことができる。これはまた、水性NaOHを用いるその他のPCT反応(N−アルキル化及びO−アルキル化)についても真実である。本発明のPTCマイクロチャネル反応器においてはより大きい相対的境界面移動速度がもたらされるので、その結果、有意に高い全体反応速度をもたらすことができ、全体サイクル時間の短縮をもたらすことができる。
【0073】
有機相中における固有反応速度が全体反応速度を制御するPTC反応の例は、臭化アルキルのシアン化である。研究により、従来のPTC系におけるこの反応についての反応速度は撹拌するにつれてある程度増大することが示されているが、追加の利益は何ら観察されていない。この場合、マイクロチャネルデバイスの高められた熱輸送能力を活用することによって、反応をより高い温度において(制御された滞留時間で)行うことが可能になり、固有反応速度を高めることができるので、収率の点で利益をもたらすことができた。
【実施例】
【0074】
以下のすべての実施例は予言的実施例であり、本発明のPTC法によってもたらされる様々な利点を説明する。しかしながら、これらの実施例は、マイクロチャネル装置において実施された現実の実験の結果を報告したものではない。
【0075】
例1
従来のシクロヘキサンの酸化は、シクロヘキサノン−シクロヘキサノール(ケトン−アルコール)ブレンド(K−A)(アジピン酸食品酸味料のような化学商品の製造における中間体及びナイロン6,6中間体)を製造するに当たって大きいバット中で空気によって注意深く行われてきた。過酸化物及びその他の中間体が存在することによって熱ヘキサン/空気混合物の発火が引き起こされるのを避けるために、1回のパス(工程)当たりに許容されるヘキサンのK−Aへの転化率は、たった約4%だけである。また、過剰な酸化は無駄な副生成物である鎖長が短い(C4、C5)ジカルボン酸を作り出し、これをプロセス及び生成物からパージする際には有意の量の生成物アジピン酸を無駄にしなければならないので、経済的理由からも1パス当たりの転化率が制限される。さらに、触媒(例えばコバルト又はホウ酸)をヘキサンと接触させるのは、この溶媒中における溶解性が低いせいで非常に困難であり、強い混合操作を必要とする。また、高発熱性反応は容易に系を過熱させ、大きいバット中で危険な沸騰を引き起こし、生成物の分解や反応の「暴走」(即ち望まない副生成物の大量の生産)をもたらすことがある。1パス当たりの低い転化率%の結果として、大量のヘキサン及び触媒の精製及び再循環をしなければならず、実際、操作において質量の約96%が生産ラインではなくて再循環ループ中にあることになる。50超の副生成物が製造されると実質的な過剰反応がさらに起こるので、かかる副生成物は処分されなければならない。しかしながら、触媒からの毒性元素(CoやB)の存在は、この廃棄物を燃料として燃やしたり廃棄物の生物処理に送ったりすることを環境的に許容できないものにする。従って、より良好なアルカン空気酸化プロセスが必要とされる理由はたくさんある。
【0076】
1パス当たりのはるかに高い転化をはるかに高い選択性(より少ない副生成物生産)及びより少ない廃棄物生産で安全に提供することによって、K−A生産プロセスを有意に改善するために、二相マイクロテクノロジープロセッシング「MTP」が計画される。1パス当たりに0.5%の転化率上昇でさえ、12.5%の生産速度の増加を表わすので有意であることに留意されたい。二相MTPから1パス当たりのはるかに大量の収量が期待され、好ましいケースを表わす。例えば、二相MTP技術により、1パス当たりに8〜16%の転化率又は100〜400%の生産速度の上昇が、以下の理由で可能となる。
【0077】
(1)いつでもMTP反応器中の化学物質含有量在庫が少ないので、反応が激しすぎても害を及ぼすように挙動することはなく、1種又はそれより多くの原料の供給速度、例えば空気注入速度を制御することによって容易に制御することができ、その応答は時間単位ではなくむしろ秒単位であるので、従来の装置では危険だった反応条件、例えば高い温度及び/又は高い空気含有量(モルO2/モルヘキサン)を採用することが可能になるから。
【0078】
(2)非常に高い内側表面積/MTP反応器の体積の比及びMTP反応器中に構築される熱交換器表面によって、効率的な熱除去がもたらされるから。熱除去が迅速であればあるほど、K−A生産速度がより一層迅速になり、副生成物の生成がより一層少なくなる。
【0079】
(3)MTP反応器について空気、触媒及びヘキサンの3つの相の間での緊密な混合が可能になる(図を参照されたい)ことによって、副生成物の生成速度及び量を維持し(好ましくは減らし)ながらK−A生成物をより高い収率で製造するようにプロセスパラメーターを調節することができるから。
【0080】
(4)MTPハードウェアの作業容量が小さいせいで、より効果があるがしかしより高価であるというようなPTCでも用いることが可能になるから。これは、従来のプロセッシングを上回る重大な利点である。例えば、触媒が好ましいホウ酸である場合、PTCは、ホウ酸の非常に非極性の溶媒(即ちこの場合にはヘキサン)中における溶解性を最大にするために特に選択されるジ−又はポリアルコールであるように選択することができる。好ましいことに、ヘキサン中のPTC及び触媒の実際の濃度は従来のプラクティスを上回って高くなり、報告された強化をもたらすということに注目されたい。
【0081】
(5)MTPの運転資金レベルが低いせいで高性能PTCが用いられるので、中和のために非常に安い無機塩基、例えば炭酸ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができるから。PTCは外部ループ中でこれらの材料と接触し、次いで高い再循環速度でMTPデバイス中に再循環されて戻される。
【0082】
(6)効率及び安全性が上昇することにより、純粋な酸素を使用することも実行可能になり、そのため、取り扱われる窒素ガスの量がかなり減り、化学物質反応用空間がより大きくなるので、生産性がさらに高まるから。
【0083】
例2
殆どのアルデヒドは反応が進行しすぎる容易さのせいで作るのが難しい化合物である。例えば、アルコールROHを酸化することによってアルデヒドRCHOを作るに当たっては、カルボン酸RCOOHへの過剰酸化のせいで収率の大きいロスが起こる。
【化9】

好適な酸化剤は、耐酸化性のPTC{例えばピリジニウムイオンC5NH5+(py+)及びその誘導体}を有する熱い酸性二クロム酸カリウム、クロロクロム酸塩、過マンガン酸塩等である。例えばクロロクロム酸ピリジニウム(Merck Index, Vol. 12, 8157番, 第8153頁)。別の例は、18−クラウン−6をPTCとする過マンガン酸カリウム酸化剤である。例えば、n−プロパノールは硫酸で酸性にされた二クロム酸カリウムを用いて沸騰条件下でプロピルアルデヒドCH3CH2CHOに酸化されるが、収率はたった45〜49%である(Organic Synthesis Coll. Vol. 2, 541)。PTCが上に挙げたいずれかであるMTPは、これより実質的に良好な収率及び純粋な生成物を提供することが期待される。
【0084】
他方、カルボン酸を得たい場合には、過マンガン酸塩酸化剤の方がクロム酸塩より好ましいが、しかしPTCは同じもの又は類似のものとする。PTCを用いれば、この2相系によって非常に水不溶性である生成物カルボン酸を製造することが可能になる。例えば、CH3(CH2)nOHアルコール(ここで、n=12、15又は21)は92、95及び87%の収率でカルボン酸に酸化される{Manganese Compounds as Oxidizing Agents in Organic Chemistry by Diether Arndt(米国イリノイ州LaSalleのOpen Court Publ.社、1981年)の第219頁}。これらは非常に良好な収率であるが、しかしこれらの脂肪酸の大規模商品の性質を考えれば、1/2%の収率の向上でさえ魅力的である。本発明のMTP及びPTCの組合せ技術は、少なくとも数%又はそれより大きくこれらの収率を高めることを期待することができる。
【0085】
例3
一置換ヒドロキシルアミンRNHOHは、反応が進行しすぎる容易さのせいで作るのが難しい化合物である。例えば、水素ガス中でPdベースの触媒と共に加熱することによってニトロアルカン液体RNO2を還元してRNHOHを作るに当たっては、アミンRNH2への過剰還元のせいで収率の大きいロスが起こる。
【化10】

例えばRはMe−、Et−、nPr−、iPr、nBu−、iBu−、C65−、MeC65−、キシレン、ナフタレン、2−エチルヘキシル−等であることができる。
【0086】
PTC−MTP技術は、次の理由でこの問題の優れた解決策である:
(1)爆発性ブレンドである加熱されたニトロアルカンを反応器中に一度に含有させられるのは少量だけである。
(2)2つのもの(水性塩基及びニトロアルカン液体)の緊密な混合(図)によって、PTC水酸化第四級アンモニウムが反応成分同士を緊密な接触で且つ均一に一緒にさせることが可能になる。従って、反応成分濃度はあまり変化せず、より高いプロセス生産収率が可能になる。
【0087】
例4
鋭敏且つ/又は反応性が高いオレフィンの炭化又は重合は、分子の別の部分を反応させながら過剰熱分解することによって行うことができる。この場合、MTP−PTC技術は、望まれない副反応を回避又は最小限にするのに必要とされる非常に短い滞留時間を提供する。その例としては、次式で表わされるような水酸化第四級アンモニウム又は酸PTCを用いたアクリル酸メチルのアクリル酸への加水分解がある。
【化11】

【0088】
PTC系のための水溶液又は固体及び塩基/酸源はMTP反応器の外部のものであってもよいことに留意されたい。かかる配置は、非常に低価格の塩基(例えばソーダ灰、石灰、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等)及び酸(強酸樹脂、石油スルホン酸、硫酸、塩酸等)を用いることを可能にする。このような場合には、製造される加水分解生成物の単位重量当たりのPTCの量をできるだけ少なくするために、PTCが外部酸/塩基を通して何度も再循環される。
【0089】
例5
化学及び製薬産業界は、ある範囲の化合物のための中間体としてシアノヒドリンを使用する。この反応は、非常に反応性が高く且つ有毒な化合物であるアルデヒド及びシアン化水素を用いる。塩基触媒反応は次の通りである。
【化12】

この場合、本発明のMTP−PTC技術は、大量の危険な(発ガン性及び有毒な)材料から生じる危険を最小限にする。大きい反応バットの代わりに、使用の直前に少量だけ(しかし連続的に)HCNを発生させる。この使用時点MTPプロセスは、シアン化ナトリウム(低価格且つ安全に取り扱われる形のシアン化物イオン)の水性ストリーム及び硫酸を一緒に流すことを伴う。即ち次の通りである。
【化13】

【0090】
この熱及び合成反応の熱は、MTP熱交換特徴によって取り除かれ、それにより、反応性シアノヒドリンの分解及びHCN中間体又はシアノヒドリン生成物の望まれない加水分解が防止される。
【0091】
随意に、同じMTPデバイス内で、HCNをアルデヒドのストリームと反応させるために一緒にする。PTCは、2つのストリームを一緒にする時、その前又はその後に、添加することができる。
【0092】
R基の炭素数がアルデヒドの水溶性を低くする場合(例えばC数>5)には、アルデヒドを含有する非水性相中に水酸化物イオン(又はその他の任意の好適な塩基)を移動させて反応の速度を高めるために、PTCを添加する。この場合の好ましいPTCは、水酸化テトラアルキルアンモニウムである。
【0093】
このシアノヒドリンの化学は、非常に敏感な分子、糖類についてさえ、1つ炭素数を増やすため又はニトリルを作るために用いることができる。従って、MTP−PTCは、生成物及び原料の分解を最小限にし且つ生成物収率を高める。
【0094】
例7
シアノヒドリン生産のより特定的な例として、以下のようにアセトンがシアノヒドリンに転化される。
【化14】

Organic Synthesis, Collective Volumes 2, 7を参照されたい。)
従って、PTCを用いたMTPは、このシアノヒドリンを少なくとも77%の収率、好ましくは90%超の収率で製造し、不純物は少なく、効率的な熱除去のせいではるかに迅速である。
【0095】
例8
アルドール縮合反応は、非常に重要な有機合成化学反応であり、長年の間、実験室規模から工業的規模まで用いられてきた。この反応は2つのアルデヒドを結合させて「アルドール」、即ちβ−ヒドロキシアルデヒドを形成させる。この反応を起こすためには、次式のようにα水素が重要である。
【化15】

この反応は塩基で触媒される。従って、アルデヒドがそれほど水溶性ではない場合には、この反応を促進するに当たってPTCが効果的である。PTCとして特に好ましいのは、水酸化テトラアルキルアンモニウムである。望ましくないことに、2種の異なるアルデヒドをブレンドした場合又はアルデヒドとケトンとを組み合わせた場合には、すべての可能な縮合生成物が見出される。この結果は収率を大いに低下させ、分離を複雑にする。
【0096】
この反応をMTP+PTCの組合せで実施することによって、選択性及び収率の点で利点が期待される。これらの利益は、滞留時間、塩基活性及び反応性、混合条件、転化順序、温度プロファイル等を含む反応条件をMTPが厳密に制御することができることによってもたらされるものである。
【0097】
まとめ
本発明の好ましい具体例を説明してきたが、その最も広い局面における本発明から逸脱することなく多くの変更及び改良を為すことができるということは、当業者には明らかであろう。従って、添付した特許請求の範囲は、かかる変更及び改良を本発明の真の技術思想及び範囲内にあるものとしてカバーするものである。
【符号の説明】
【0098】
4・・・相間移動触媒
12・・・第1相入口
13・・・第2相入口
14・・・第1相通路(プレート入口)
15、23・・・平面反応帯域
16・・・第1相通路(プレート出口)
17・・・境界材料
18・・・第2相通路
21・・・境界材料(セパレータプレート)
22・・・第1相出口
25・・・カバープレート
26・・・第2相出口
31・・・第1相ストリーム
33・・・第2相ストリーム
102・・・リブ
106、108・・・チャネル
500、503・・・入口
504・・・一緒にされたストリーム
505・・・疎水性壁
506・・・多孔質プレート又はスクリーン
507、511・・・出口
508・・・合体要素
509・・・親水性壁
510・・・分離ゾーン
515・・・セパレータプレート
602・・・マイクロチャネル
604・・・多孔質イオン性膜
606・・・水不混和性相
608・・・水相
610・・・境界面
612、614・・・生成物ストリーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・2mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する反応チャネル;
・前記反応チャネルに連結された第1のチャネル入口;
・前記反応チャネルに連結された第2のチャネル入口;
・前記第1チャネル入口と前記第2チャネル入口とを隔てるセパレータプレート;
・前記反応チャネルに連結された第1のチャネル出口;
並びに
・前記反応チャネルに連結された第2のチャネル出口:
を含むマイクロチャネル装置であって、
前記反応チャネルが天井及び床を含み、該床及び天井がそれぞれオープンエリアの境界を画定し、前記天井と床との間の距離が該反応チャネルの厚さであり;
前記セパレータプレートの端部がオープンエリアの少なくとも1つの境界を構成し;
該オープンエリアが少なくとも3mmの長さを有し;
前記オープンエリア中に膜は存在せず;
前記第2チャネル出口が第1チャネル出口から隔てられている:
前記マイクロチャネル装置。
【請求項2】
前記床が親水性であり且つ前記天井が疎水性である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1チャネル入口が1mm又はそれ未満の厚さを有し;
前記第2チャネル入口が1mm又はそれ未満の厚さを有し;
前記第1チャネル出口が1mm又はそれ未満の厚さを有し;且つ
前記第2チャネル出口が1mm又はそれ未満の厚さを有する:
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
分離ゾーンを含み;
該分離ゾーンの内側面の少なくとも1つの部分が疎水性であり;
該分離ゾーンの内側面の少なくとも1つの部分が親水性であり;
該分離ゾーンが、反応チャネルに連結されて反応チャネルより大きい内側横断面積を有する分離ゾーン中の拡張ゾーン、相合体要素及びセパレータプレートより成る群から選択される少なくとも1つの分離補助特徴を含み;
該分離ゾーンの少なくとも1つの内寸が2mm又はそれ未満である:
請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロチャネル装置。
【請求項5】
第1のシート、第2のシート、第3のシート、第4のシート及び第5のシートを、第1のシートが第2のシートの上に重なり、第2のシートが第3のシートの上に重なり、第3のシートが第4のシートの上に重なり、第4のシートが第5のシートの上に重なるような順で積み重ね;
第1、第2、第3、第4及び第5のシートを互いに結合させる:
ことを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロチャネル装置の製造方法であって、
前記のシートが、結合されたデバイスにおいて
・第1のシートがオープンエリアのための天井を構成し、
・第5のシートがオープンエリアのための床を構成し、
・第2のシートが前記オープンエリアに連結された第1のチャネル入口及び前記オープンチャネルに連結された第1のチャネル出口を含み、
・第4のシートが前記オープンエリアに連結された第2のチャネル入口及び前記オープンエリアに連結された第2のチャネル出口を含み、
・第3のシートが第1のチャネル入口と第2のチャネル入口とを隔てるセパレータプレートを含む
ような設計を有する、前記製造方法。
【請求項6】
・2mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する反応チャネル中に配置された、1mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する第1のストリーム;
・前記反応チャネル中の、前記第1のストリームに隣接した1mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する第2のストリーム;
並びに
・相間移動触媒:
を含む相間移動触媒反応システムであって、
前記第1ストリーム及び第2ストリームが2mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する一緒にされた多相ストリームを形成し;
前記第1ストリームが第1の反応成分を含み;
前記第2ストリームが第2の反応成分を含み;
前記相間移動触媒が、生成物を生成させるための前記の第1反応成分と第2反応成分との反応を触媒する、
前記相間移動触媒反応システム。
【請求項7】
1mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する第1のストリームを用意し;
この第1ストリームに隣接した1mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する第2ストリームを用意し;
前記の第1ストリーム及び隣接した第2ストリームが2mm又はそれ未満の厚さ及び3mmを超える長さを有する一緒にされた多相ストリームを形成し;
前記第1ストリームが第1の反応成分を含み;
前記第2ストリームが第2の反応成分を含み;
相間移動触媒を用意し;
この相間移動触媒が生成物を得るための第1の反応成分と第2の反応成分との反応を触媒し;そして
多相流体ストリームを分離ゾーン中に通す:
ことを含み;
ここで、前記多相ストリームが第1の非固体相及び第2の非固体相を含み;
前記分離ゾーンが、反応チャネルに連結されて反応チャネルより大きい内側横断面積を有する分離ゾーン中の拡張ゾーン、相合体要素及びセパレータプレートより成る群から選択される少なくとも1つの分離補助特徴を含み;
前記分離ゾーン中に通される多相流体ストリームの少なくとも1つの寸法が2mm又はそれ未満であり;
前記分離ゾーンから、第1分離ストリーム及び第2分離ストリームを含む少なくとも2つの別個のストリームが通り;
前記第1分離ストリームが、第1の非固体相及び第2の非固体相を、分離ゾーンに入る多相流体ストリームと比較して高い第1非固体相対第2非固体相の比で含有し;
前記第2分離ストリームが、第1の非固体相及び第2の非固体相を、分離ゾーンに入る多相流体ストリームと比較して低い第1非固体相対第2非固体相の比で含有する:
ことを含む、化学反応を実施する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公開番号】特開2012−45544(P2012−45544A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218475(P2011−218475)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2004−546907(P2004−546907)の分割
【原出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【出願人】(504306714)バテル・メモリアル・インスティテュート (26)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693 (US)
【Fターム(参考)】