説明

多相流のための管系及び配管系

【課題】多相流を運ぶ管系又は配管系において、エアロック等のおそれを低減する。
【解決手段】多相流を運ぶ管系又は配管系が与えられ、渦流を誘発する手段を備えることにより、多相流の濃密成分が管系又は配管系の外壁へ向かい、且つ多相流の濃密でない成分が管系又は配管系の中央へ向かう。従って流れは「遠心分離効果」を示し、これは流れの軽量又は重量成分が管系又は配管系のそれぞれ上部又は下部領域に蓄積することを防止するので、エアロック等のおそれを低減する。管系又は配管系は、好ましくは螺旋形態であり、これは低振幅の螺旋としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は多相流に用いる管系及び配管系に関する。
【0002】
多相流は勿論よく知られており、管又は配管内の流れが単独の均一流体から構成されていないときに生じる。多相流の例は、気体/液体、液体/固体(例えば懸 濁液及びスラリー)、気体/固体(気体に随伴する粉末)、二つの非混和性液体(例えば油と水)、温度が異なる液体等である。
【0003】
多相流は深刻な問題をもたらす。主要な問題は、多くの場合、複数の相はその密度が異なっていることである。例えば、気体(液体よりも低密度となる)は、気 体/液体混合体を搬送する実質的に水平な配管の上部部分に蓄積するので、流体を搬送する配管がその長さに沿って完全に水平でないならば、問題を引き起こす。配管の長さに沿って起伏があるならば、気体は起伏の上部部分に蓄積してエアロックをもたらす。同様に二つの非混和性液体の濃密部分は配管の下部部分に 集積されて、同様なロックをもたらす。
【0004】
これらの問題は特に炭化水素(油と水)抽出産業において特に深刻である。このような産業では、油井を垂直に掘削してから、ドリルを概ね水平向きへ操縦する ことが一般化しつつある。代表的な油井は地中下方へ数キロメートル垂直に突き進み、水平部分を数百メートル有する。この種の油井掘削は、単独の表面位置 を、その直下のみならず、広範な領域に亘る埋蔵層へアクセスするために用いることを可能とする。更に、油井の水平部分は、炭化水素埋蔵層の水平に離間された複数の区画へアクセスするために使用し得る。
【0005】
低分子重量の炭化水素がガスコンデセートと称される液体状態で存在する深部の高圧/高温埋蔵層から炭化水素を抽出することも一般化しつつある。このような埋蔵層は、そのコストが高いので、水平産出油井により採取するようにされた埋蔵層に適している。
【0006】
代表的な埋蔵層は水上に位置する液体炭化水素を包含し得る。油井の水平部分は液体炭化水素層に沿って延在する。流体はその層から油井孔へ、選択された位置 において壁に設けられた多孔を介して移動し、その多孔において低圧形態になる。液体炭化水素が気体と液体炭化水素とに分離すると、油井へ入る混合体には、 多くの場合は、水が含まれている。液体炭化水素及び水の第2相に対して気体相が優位を占め、或いは気体及び水の第2相に対して液体炭化水素が優位を占め る。何れにおいても、油井は多相流体を移送し、その多相流体は通常は気体と二つの非混和流体とからなる。
【0007】
実際には、水平油井部分はその長さに亘って正確に水平であることは稀である。初期掘削工程においては概ね起伏する水平油井が形成される傾向にある。これは 事実上に、水平油井部分に緩やかなU字状屈曲部の形成をもたらす。油井を外側から見ると、これらは上向き凸型U字状屈曲部及び上向き凹型U字状屈曲部の形 態を採り得る。多相流が油井に沿って流れるにつれて、相の重力分離が生じるのは珍しいことではない。水は任意の上向き凹型U字状屈曲部の底部に集まり、一 方、気体は上向き凸型U字状屈曲部の上部に集積し得る。
【0008】
水がU字状屈曲部を満たすと、流れは閉塞する。油井生産は、それに濃密すぎる流体が蓄積されると中断する。気体の蓄積は地形に誘発される詰まりをもたらす。気泡が配管の壁に集積されて、それが流れを完全に遮断する限度になると詰まりが生じる。この遮断部に到来する液体は気体の圧力を上昇させる傾向にあり、その圧力が特定点に達すると、遮蔽部は突然にシフトする。この流れの突然の再開(又は「激増」)は配管及びその下流側の配管系又は設備機器にも大きな 衝撃負荷を与え、深刻な損傷を与える。
【0009】
水中ポンプを油井内に配置して水を抽出することができる。しかしながら、これには時間を要するので、生産が数日間若しくは非常に長期に亘って中断されてしまう。更に、炭化水素埋蔵層が排出されると、流体内の水含有量が増大し、より頻繁な油井の閉塞がもたらされる。この過程は水平油井においては最も一般的で あるが、多相油井においても問題が露呈する。しかも、水中ポンプの使用は地形に誘発される詰まりの問題を解決しない。
【0010】
水の蓄積に伴う他の問題は、油井内の鉱石の沈降であり、これも閉塞又は詰まりをもたらす。更に水の存在は乱流をもたらし、これは配管内に淀みや死角をもたらす。このような領域には(鉱石や炭化水素の)沈降及び堆積がより生じ易い傾向にある。
【0011】
多相生産油井における更なる問題は、低温及び圧力上限に達した油井、特に海底油井上部を産出船舶又はプラットフォームへ接続する水中ライザーで生じる。これらの条件下では、気体は大きな気泡を形成するので、これが過度な閉塞をもたらす。更に大きな気泡は油井内の圧力損失を相当に増大させるので、生産を妨げ る。
【0012】
更に、エアロック等の形成が極めて望ましくない特定の状況は、心臓手術中に用いられる管系に生じる。
【0013】
心臓切開処置中には、患者の心臓は停止する。循環を維持する目的で、血液は通常は右心房から引き抜かれてポンプ及び酸素化装置を通過させてから患者の身体を循環するように大動脈へ戻される。
【0014】
血液が患者の心臓から引き抜かれると、空気が血液に入るので、患者からポンプ及び酸素化装置へ導かれる管系内に気泡が形成されてしまう。酸素化処理中にも酸素の気泡が血液中に形成される。
【0015】
更に、一般外科(心臓切開の必要は無い)には使用した献血血液の量を低減させる傾向がある。患者自身の血液が再循環されると、患者の血液を集めるために用いられる回収装置は容易に空気を随伴させてしまい、これは気泡を形成する。
【0016】
明らかに、これらの気泡は血液が患者へ復帰される前に除去せねばならないので、この除去を可能とするために気泡補足器が管系内に規定的に設けられている。
【0017】
しかしながら、気泡に関する公知の問題、即ち気泡が患者、ポンプ及び酸素化装置を接続する管系内に蓄積してしまうという問題がある。気泡は管系を軽く叩く (tapping)ことにより管系から除去できるが、気泡の人目につかない蓄積が閉塞をもたらし、(これが解決されなければ)血液供給が遮断されるので、 極めて重大な結果を生じる。
【0018】
本発明の第1の局面によれば、多相流の濃密成分が管系又は配管系の外壁へ向かい、且つ多相流の濃密でない成分が管系又は配管系中央へ向かう方式で渦流を誘発する特徴を有する管系又は配管系が与えられる。
【0019】
渦流は多相流における状況では相当な利点を与えることが実験的に見出されている。多相渦流において、流れの軽量部分(例えば気体及び濃密でない液体)は管 の中心に沿って流れる傾向にあり、一方、流れの重量部分(濃密な液体)は概ね螺旋状の経路で管壁に沿って流れることが見出されている。これは渦流の遠心分 離効果から生じるものと考えられる。その結果、軽量又は重量部分が重力下で分離する傾向が小さくなる。
【0020】
渦流は多相流における状況では相当な利点を与える。軽量又は重量部分が重力下で分離する傾向が小さくなると、エアロック発生の虞が大いに減少する。同様に、濃密な液体は管の下部部分に集積されないので、この方式では、流れの途絶を生じる虞が小さくなる。
【0021】
これらの利点について油井生産管系を参照して更に説明する。上述のように、公知の油井生産管系の水平部分は垂直にも水平にも起伏がある。油井における曲率 は、油井に沿う流体流の特性に対して、無視できるほどの影響を有するように、低い曲率を持つように形成される。従って流れ(勿論、閉塞しないように与えら れている)は直管に沿う流れの特性を有するものとして考慮される。流れは通常は乱流となるが、公知のパイプライン水理学によれば、薄膜層が固体境界即ち管 系内壁に近接して存在する。遅い流速については、流れは層状になる。両方の場合において、直管流における軸方向速度プロファイルは管系の中心で最大であり、遅い速度は壁に近接している。
【0022】
渦流の一つの効果は、管系を横切る流れの軸方向速度プロファイルがより均一に又は「鈍く」なり、管壁に近い流れの速度は、直管油井生産管系における同様な 流れよりも早くなることである。管系の中心における流れは直管の場合よりも遅い。鈍い速度プロファイルにより、管系における流体流れはプランジャの方式で 働く。これは管系の低点(上向き凹型U字状屈曲部)における水又は他の濃密流体の蓄積及び高点(上向き凸型U字状屈曲部)における気体の蓄積を低減する傾 向にある。
【0023】
渦流の更に大きな利点は多相流の混合を促進することである。油井生産管系において、気体、液体炭化水素、及び水は混合する傾向にあるので、管系帰依に沿う 液体の蓄積の傾向は低減される傾向にある。良好な混合及び高い壁近傍の流速は、油井に沿う低点において固体の沈殿又は鉱石の沈降が生じる機会も低減する。
【0024】
これは気泡が合体する油井の高点においても重要である。渦流の混合効果は相混合を増大し、且つ大きな気泡の形成を防止する。渦流の促進は、急勾配の油井、例えば水平に対して垂直又は45°においても有益であって、水平油井部分に限るものではない。
【0025】
しかしながら、液体が本発明の管系に沿って軸方向に流れると、多相流の流れの成分は混合せず、濃密な成分は壁面近傍の管系の周りを回り、且つ濃密でない成 分は中心近傍で回転する傾向にある。この遠心分離現象は管系の低点における例えば水の蓄積の低減及び高点における気体の蓄積の低減の助けとなる。
【0026】
これら三つの要因(鈍い速度プロファイル、改良された混合及び「遠心分離」効果)の全ては、多相渦流を有する改良された流れ特性に寄与する。
【0027】
本明細書に説明された油井生産管系は、任意の多相移送管系を含む。オイル生産の環境においては、とりわけ、油井ヘッド下側の管系、任意の表面流れライン、ライザー、及び多相石油の輸送及び/又は処理のための任意の管系を含む。
【0028】
管系又は配管系に沿う渦流を誘発する手段は、管系壁又は配管系壁における螺旋状隆起又は溝、或いは壁から内側へ延出する案内ベーンから構成してもよい。し かしながら、これは最適の解決を考慮したものではない。というのは、このようなデバイスはそれ自体が遮蔽体を形成するか、或いは物質が蓄積する淀み領域を 形成するためである。更に、管系の断面積に対するぬれ縁の比は、隆起、溝、ベーン等を備えることにより増大する。これは、増大した流れ抵抗、及び圧力損失 をもたらし、或いは逆に、所定のヘッドについての流れの低減をもたらす。
【0029】
更に実験は、レイノルズ数が非常に低くない限り、この種の隆起、溝又はベーンは管壁近傍の流れにおける効果を有するのみであることを示している。流れが管 の全幅に亘って渦巻くことを確実にするためには長い管を与える必要があろう。管の中心における渦は、管壁における流れからの運動量の拡散転移を通じて達成 されるのみであり、隆起、溝又はベーンは管壁近傍の流体と管の中央における流体との間の混合を促進しない。
【0030】
管系についての更なる可能性は、ねじれた非円形断面をもたせることである。しかしながら、円形からの逸脱は断面積に対するぬれ縁の比を増大させ、これは望ましくない。更に、これは空間の有効利用にならない。
【0031】
従って管系の中心線は実質的に螺旋経路に追従させることが好ましい。
【0032】
溝、隆起又は非円形区画を用いる上述の可能な実施形態においては、管系が実質的に直線であるので、管系の中心線も直線である。螺旋中心線を有する管系の使 用は渦を誘発して、管系壁と中心核との間の混合を、直線中心線を有する管系に螺旋溝又は隆起を用いた場合よりも良好な方式で促進する。螺旋中心線を有する 管系の場合、渦構造の空間的再構成が存在し、これは関係部分の区画を横断する軸流の中心核若しくは中心核部分の運動をもたらし、断面積を横断する混合を促 進する。渦は、淀み及び流れ分離領域の形成を抑制するので流れを安定させ、上述のように「遠心分離」効果をもたらす。
【0033】
更に、好ましい実施例によれば、管系の中心線が実質的に螺旋経路に追従するならば、管系は円形断面積、ひいては小さなぬれ縁対断面積比を有するので、流れ を妨げない。管系は螺旋又は渦流を誘発する必要な特性を依然として有する。しかしながら、螺旋中心線を有する管系について非円形断面をもたせることが望ましい状況も存在するであろう。
【0034】
油井生産管系は通常は外側ケーシングの内側に嵌合する。従って管系は外側ケーシングの内径に対して、それ以下の掃引幅を占める。好ましい螺旋管系(即ち、 中心線が実質的に螺旋経路に追従する)の場合、螺旋は大きな振幅を有するならば、それに対応して流体流に利用可能な断面積は小さくなる。従って螺旋の振幅 は渦の流れを誘発するように充分に大きくすることが好ましいが、管系が占める有効断面積を可能な限り充分に小さくする。これらの基準に最初に整合する振幅 の最適化は、流体の粘性、密度及び速度になどの因子に依存している。
【0035】
本明細書においては、渦の振幅は、側方端に対する平均位置からの移動の範囲を意味する。従って、螺旋中心線を有する管系の場合には、振幅は螺旋中心線の全横幅の半分である。
【0036】
好ましくは、螺旋の振幅は、管系の内径の半分以下である。このような状況では、管系の内腔に沿う「視野方向(line of sight)」があり、これは実質的に螺旋が中心核(固体、又は空気の中心核による「仮想」の何れか)の周りに巻かれているコークスクリュー形態の場合と は対照的である。視野方向における流れは、それが直線経路に追従するとしても、一般的には渦成分を有する。
【0037】
本明細書の目的では、用語螺旋管系の「相対振幅」は、内径により除された振幅とみなす。従って好ましい実施例、即ち螺旋管系の振幅が管系の内径以下である 場合には、これは相対振幅が0.5以下であることを意味する。相対振幅は0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.1 又は0.05以下であることが好ましいであろう。小さな相対振幅は有効側方空間の良好な使用を与える。即ち円筒状外側ケーシング内の螺旋管系の場合には管 系と外側ケーシングとの間の不使用空間が小さくなる。より小さな相対振幅はより広い「視野方向」ももたらし、管系の内腔に沿って圧力ゲージ又は他の機器を 挿入するための更なる空間を与える。高レイノルズ数によれば、より小さな相対振幅を用いてもよく、一方、渦流は充分な範囲へ誘発される。これは一般に、高い流量がある所定の内径については、低い相対振幅を使用でき、一方、渦流を誘発するには充分であることを意味する。
【0038】
螺旋の角度も、油井生産列における空間的制約を流れについて有効な大きな断面積を持たせる望ましさと均衡させる関連要因である。螺旋角度は好ましくは 65°以下であり、より好ましくは55°、45°、35°、25°、20°、15°、10°、又は5°以下である。相対振幅によれば、螺旋角度は以下の条 件、即ち流体の粘性、密度及び速度に応じて最適化し得る。
【0039】
一般には、高レイノルズ数については、螺旋角度は小さく、充分な渦流が達成され、一方、低レイノルズ数によれば、充分な渦を生成するためには大きな螺旋角 度が要求される。速い流れ(高例レイノルズ数)の高い螺旋角度の使用は一般に不所望であり、これは壁近傍に淀んだ流れのポケットが生じ得るためである。 従って所定のレイノルズ数(又はレイノルズ数の範囲)については、螺旋角度は好ましくは充分な渦を生成するのに可能な限り低く選ぶ。特定の実施例において は、螺旋角度は20°未満である。
【0040】
一般に、管系は螺旋の複数の巻回を有する。管系に沿う螺旋の反復巻回は渦流を維持することを確実にする傾向にある。しかしながら、管の直線部分が螺旋渦誘 発区画の下流側に設けられていたとしても、渦流に若干の距離をとって次第に弱まるので、代替策を螺旋部分として全管に形成するようにする。この代替策は管の長さに沿った螺旋管系又は配管系の多数の個別の長さに与えることが可能である。これらの区画は「リピーター」として働く。各部分はそれを通過する流体に 渦流を誘発するが、この渦流は流体が直管に沿って通過するにつれて弱まる傾向にある。多数の「リピーター」を与えることは渦流をそれに付随する利点と共に 再確立することを可能にする。
【0041】
同様に、螺旋部分は管継手(例えばエルボベンド、T又はY接合バルブ等)の前に与えることができるので、渦流は、流れがこれらの継手に到達する前に確立される。
【0042】
配管系の長さは、通常は、長さに沿って相対振幅及び螺旋角度が実質的に同様に構成される。配管系が展開されたとき又は使用中には、引っ張り負荷による配管 系の伸長又は収縮に起因して、或いはねじれ負荷に起因して小さな変動がある。しかしながら、配管系が可変螺旋角度及び/又は相対振幅を有して、空間的制約 に適合させるか、或いは流れ条件を最適化させる状況もある。製造容易化の理由のためには、配管系はその全長に沿って実質的に一定の断面積を有することが好 ましい。再言すれば、配管系の負荷に起因する使用中の変動があり得る。
【0043】
同様に、上述のような心臓処置のための機器に用いられる配管系を形成することにより重要な利点が達成でき、配管系内を流れる流体が渦流に流れる。遠心分離 効果は、血液中の空気又は酸素の気泡が配管系の高点に蓄積されて可能な閉塞をもたらすのではなく、配管系の中心近傍に留まる傾向にあることを意味する。気 泡は配管系に沿って搬送されて、上述の気泡補足器において除去することができる。
【0044】
本発明の好ましい実施例について添付図面を参照して例示として説明する。
【0045】
以下の説明は炭化水素抽出の状況における多相渦流の使用に凝縮されているが、多相流渦流により与えられた利点は、多相流が起こる様々な他の状況において獲得できる。
【0046】
図1及び図2は 公知の方法による炭化水素抽出のための長距離水平油井の使用を示す。油井生産列50は油井ヘッド52から地面へ垂直に貫通して、要求される深さにて概ね水 平方向へ転回する。油井列が穿たれた地層は、断層56によって別々の領域に分離された埋蔵層54を含む。この埋蔵層は、水層62の上に座する液体炭化水素 層60を含む。
【0047】
油井生産列50は穿孔66(図2参照)が形成された区画を有し、流体が矢印64により示す方向で油井列へ入る。
【0048】
このような油井を掘削する公知の処理は以下の通りである。第1部分を特定の深さへ掘削して、第1の外側ケーシング区画は掘削孔を下降させて所定地で固め る。油井の次の部分を掘削して、他のケーシング区画を、既に据え付けられた区画へ下降させて、これも所定位置で囲める。この処理を続けると、連続外側ケー シング区画の径は、油井の長さが増大するにつれて小さくなる。最終的に油井の所望の全長が掘削されて外側ケーシング区画に並ぶ。
【0049】
配管系68にはサイトの地形に応じて適宜な位置に穿孔ガン70が設けられており、この配管系68は油井へ下方へ挿入される。穿孔ガンが発射されると、外側 ケーシング72を通じて穿孔66が形成される。これは、液体炭化水素を貯蔵層60から穿孔66を介して油性生産ストリング50へ通過させることを可能とする。油井内の液体は通常はガス、オイル、及び水の混合体からなる。多相流は油井生産列50に沿って表面へ向かって流れる。図2に示すように、油井の水平部分は完全には水平ではなく、上向き凹型と上向き凸型との両方の緩やかなUベンドの列を有する。
【0050】
図2は水74のプールを示し、この水は上向き凹型U字状屈曲部に集められている。最終的に、この水はUベンドを充たして、油井に沿う流れを吸蔵する閉塞を引き起こす。
【0051】
上述したように、渦流における列流の流れを形成することは、油井列におけるガス及び水の蓄積を防止することにより、この問題を回避する。渦流の特性、及び渦流を達成する特定の方式について、図4及び図5を参照して説明する。
【0052】
図4に示される配管系1は、円形断面、外径D、内径D及び壁厚Tを有する。配管系は、一定振幅A(中間から極値へ測ったもの)、一定ピッチP、一定螺旋角θ、及び掃引幅Wの螺旋へ巻かれている。配管系1は仮想 包落線20内に包含されており、これは長さ方向に延在して、螺旋の掃引幅に等しい幅を有する。包落線20は、中心長手軸30を有するものとみなすことがで き、この長手軸は螺旋巻回の軸とも称される。図示した配管系1は直線軸30を有するが、油井生産配管系においては、中心軸はしばしば大きな半径曲率(即ち U字状屈曲部を形成する)を有することが評価される。配管系は中心線40を有し、これは中心長手軸30の周りの螺旋経路に追従する。
【0053】
振幅Aは配管内径Dの 半分未満であることが解る。この寸法を下回る振幅を維持することにより、配管系及び配管系全長により占められる側方空間は比較的に小さく維持することがで き、同時に配管系の螺旋形態は配管系に沿う流体の渦流を促進する。これはまた管系に沿う比較的に広い内腔を与え、これは機器、装置その他を配管内に下降さ せることを可能にする。
【0054】
例1
実験は円形断面を有するポリビニールクロリド配管系を用いて実行された。図4に示されるパラメータを参照すると、この配管系は12mmの外径D、8mmの内径D、及び2mmの壁厚を有する。配管系は、45mmのピッチP、8°の螺旋角θを有して螺旋へ巻かれている。振幅Aは、配管系を二つの直線縁の間に置き、直線縁の間の空間を測定する。振幅は掃引幅Wから外径Dを引くことにより決定される。
【0055】
2A=W−D
即ち、
A=(W−D)/2
この例では掃引幅Wは14mmであるから、
A=(W−D)/2=(14−12)/2=1mm
上述したように、「相対振幅」Aは以下のように定義される。
【0056】
=A/D
この例の場合においては、従って、
=A/D=1/8=0.125
水は配管に沿って通過する。流れ特性を観察する目的で、配管壁を半径方向に通過する二つの針80及び82が、流れへ可視的な色素を注入するように用いられ ている。注入サイトは中心軸30の近傍、即ち流れの「核」である。一方の針80は赤インク、他方の針82は青インクを注入する。図4に明らかなように、インクフィラメント84及び86は絡み合い、核においては渦流、即ち概ね螺旋状の流れがあることを示している。図4に示す実験はレイノルズ数Rが500で実行された。二つの更なる実験においては、それぞれレイノルズ数250及び100を用い、これも渦流核が観察された。
【0057】
例2
この例のパラメータは、針80及び82がインクフィラメント84及び86を配管系の壁近傍で開放するように配置されていることを除いては、例1のそれと同様である。図5は壁近傍のインク開放、レイノルズ数Rがそれぞれ500及び250の二つの実験結果を示す。両方の場合において、インクフィラメントは螺旋配管系形状に倣い、壁近傍渦を示すことが見てとれるであろう。更に、インクフィラメントと水との混合が促進されている。
【0058】
例3
個別の検討では、8mm内径の直管における流れが、相対振幅Aが 0.45である8mm内径の螺旋管におけるそれと比較された。両方の場合において、レイノルズ数500及び0.2mlインジケータが上流側端部における薄いチューブを通じてボーラスとして射出された。流れはインジケータの射出の後の経過時間を示すディジタルクロックと共に撮影された。インジケータ最前部は 直管の下流側端部に螺旋管よりも早く到達し、透明になるのは直管の壁からのほうが螺旋管のそれよりも遅かった。更に、インジケータは螺旋管内では直管におけるよりもより小さな容積内を移動した。これら全ての結果は螺旋管における管断面積に亘る混合及び速度プロファイルの鈍化があることを示している。
【0059】
例4
この例の実験は、配管系が、単独面における正弦曲線経路に追従する中心線を有する螺旋配管系における多相流れの比較に関連している。螺旋配管系(3次元、 即ち3D配管系)の場合、内径は8mm、外径は12mm、掃引幅は17mmであり、0.3125の相対振幅が与えられた。ピッチは90mmであった。平坦な波状配管系(2次元、即ち2D配管系)の場合、内径は8mm、外径は12mm、掃引幅は波状の面から測定して17mmであった。ピッチは80mmであっ たが、3D配管系のそれから大きく異なることはなかった。この2D配管系はその垂直面における概略的な正弦中心線により保持されて、事実上、上向き凸型及び凹型U字状屈曲部を形成している。
【0060】
両方の3D及び2D配管は約400mm長であり、各場合に4−5ピッチを与えられている。両方の配管を用いて、毎分450ml及び900mlの水流(レイ ノルズ数はそれぞれ1200及び2400である)について検討した。針は全ての場合において毎分3ml、即ち450ml毎分の場合に水流の0.66%、 900ml毎分の場合に0.33%である。空気は圧縮空気ラインから到来し、各3D及び2D形状の開始部の直前の上流で配管へ注入された。
【0061】
レイノルズ数1200における3D配管系による実験の場合、気泡は大きさ約2−3mmであり、配管系に沿って迅速に通過した。レイノルズ数2400において、気泡はより大きく、約5−7mmであったが、付着する傾向を伴わずに配管に沿って移動することが保持された。
【0062】
レイノルズ数1200及び2400における2D配管系の場合、気泡は大きく、約3−5mmであったが、(配管系の外側から見て)上向き凸型曲面に付着する傾向にあった。
【0063】
実験は、多相流においては低密度流体は3D配管系に沿って輸送されるが、同等な2D配管系においては低密度流体は配管系の高部分に蓄積する傾向にある。
【0064】
図3は 本発明の好ましい実施例による油井生産配管系を有する油井を示す。この配管系は螺旋であり、この螺旋形態は配管系に沿う渦(又は概ね螺旋流)を起こす。既 に説明したように、このような流れは管内の流体に遠心分離効果を有するので、濃密物質は配管壁の内側に沿う螺旋経路に流れ、低密度物質は配管の中心線に 沿って流れる。これは壁の上向き凹型U字屈曲部に水の溜りが集まることを防止する傾向にあるので、閉塞の機会が相当に低減する。この配管系は上向き凸型U 字状屈曲部に気体のポケットが集まることを防止する傾向にもあるので、やはり閉塞の機会が低減する。
【0065】
炭化水素抽出中に多相流に生じる更なる問題は「詰まり」である。これは気体が管壁に蓄積して、それが流れを閉塞する程度になったときに生じる。気体が突然 に壁から自由になるならば、閉塞は除去されるので、流れが全く突然に再開されて、管における衝撃負荷、並びに管及び付属機器への起こり得る損傷がもたらされる。油生産プラットフォームは、このような負荷に対処するために規則的に調整される。
【0066】
この問題も渦流を用いることにより回避することが可能である。上述のように、多相渦流においては、低密度流体(例えば気体)は管の中心へ指向する傾向にあるので、壁から離間した状態を保持される。従って、流れを遮断する程度に蓄積されることはない。
【0067】
同様な利点は、上述した血流管系においても獲得される。空気及び酸素気泡は配管系の中心近傍に留まる傾向にあるので、これらは連続流に沿って輸送されるから、蓄積して流れを遮断することはない。
【0068】
気体気泡(又は事実上任意の低密度断片)が螺旋管の中心へ集まる傾向にあることは流れの気体含有量の低減に関して更なる利点を与える。
【0069】
螺旋管における気体/液体多相流においては、気体は管の中心において非常に小さい断面積を占めることが判明している。直管と比較すると、断面積(オイル工 業においては通常は「カット」と称される)を横断する気体の凝縮は低減され、この低減は20若しくは30パーセントに至る。(気体流量は両方の管において 同じであり、気体の流れは直管におけるよりも螺旋管において早く、流れの小さな断面積を補償することに留意されたい)。
【0070】
この気体凝縮の低減は、例えばポンプにとって大きな利点となる。液体用ポンプは通常は多相流に対処するように設計されていないので、高凝縮気体では通常は 良好に作動しない。本方式による螺旋管の使用により流れにおける気体の凝縮を低減することはポンプの効率を改善する。
【0071】
気体濃縮の低減は、単相流と共に良好に働く継手を流れが通過せねばならない他の状況においても利点となる。螺旋部分を継手の上流側に設けて、継手に到達する流体が渦流状態にあり、流れにおける気体の凝縮の低減を確実にすることができる。
【0072】
多相渦流により得られた更なる有益な効果は、圧力降下の低減であり、直管における圧力降下と比較して10パーセントと20パーセントとの間の低減が直管に よる実験で得られた。圧力降下の低減は同じ圧力差についての増大された流れを可能とし、流体を圧送するのに必要なエネルギ量を低減する。
【0073】
上述の説明は、特に炭化水素抽出及び血流管において獲得できる利点に絞ったが、本発明の配管系及び管系は任意の多相流に適用して、上述の渦流の利点を得られることが理解されよう。特に相分離のような重力効果の回避は、食品処理で少なからず直面する特に液体中の固体のスラリー及び懸濁液の輸送、医薬品の製造 及び処理において直面することが多い気体におけるパウダー状懸濁液の輸送において特に適切である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は従来技術による炭化水素抽出のための長距離水平油井の概略図である。
【図2】図2は図1における油井の部分拡大図である。
【図3】図3は図2と同様な図であって、本発明による油井における管系の使用を示す図である。
【図4】図4は本発明により渦流を誘発するように設計されて、実験例に用いた管系を示す立面図である。
【図5】図5は図4と同様な図であって、他の実験例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管系又は配管系であり、ライザー、フローライン、海底及び海面管系などの油井生産管系、又は血流管系、或いは懸濁液及びスラリーの何れか一方又は両方を輸送するために用いられる管系又は配管系、若しくは気体内のパウダーの懸濁液を輸送するために用いられる管系又は配管系であって、
流体が管に沿って流れるにつれて、多相流の濃密成分が管系又は配管系の外壁へ向かい、且つ多相流の濃密でない成分が管系又は配管系の中央へ向かう方式で多相流中に渦流を誘発する特徴を有すると共に管系又は配管系前記管系又は配管系の中心線が実質的に螺旋の経路に追従する管系又は配管系において、
前記螺旋の振幅が前記管系又は配管系の内径の半分以下であることを特徴とする管系又は配管系。
【請求項2】
請求項1の管系又は配管系において、前記管系又は配管系が前記螺旋の複数の巻回を有する管系又は配管系。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の管系又は配管系において、前記螺旋が前記管系又は配管系の長さに沿って実質的に同じ振幅を有する管系又は配管系。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の管系又は配管系において、前記螺旋の角度が前記管系又は配管系の長さに沿って実質的に同じである管系又は配管系。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の管系又は配管系において、前記管系又は配管系がその長さに沿って実質的に一定の断面積を有する管系又は配管系。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の管系又は配管系において、ライザー、フローライン、海底及び海面管系などの油井生産管系として用いられる管系又は配管系。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の管系又は配管系において、血流管系として用いられる管系又は配管系。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の管系又は配管系において、懸濁液及びスラリーの何れか一方又は両方を輸送するために用いられる管系又は配管系。
【請求項9】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の管系又は配管系において、気体内のパウダーの懸濁液を輸送するために用いられる管系又は配管系。
【請求項10】
外側ケーシング内の油井生産管系であって、管系の中心線が実質的に螺旋の経路に追従して多相流に渦流を誘発することを特徴とする油井生産管系。
【請求項11】
請求項10に記載の油井生産管系において、前記螺旋の振幅が前記配管系の内径の0.25倍以下である油井生産管系。
【請求項12】
請求項10に記載の油井生産管系において、前記螺旋の振幅が前記配管系の内径の0.15倍以下である油井生産管系。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の油井生産管系において、前記管系が前記螺旋の複数の巻回を有する油井生産管系。
【請求項14】
請求項10乃至13の何れか一項に記載の油井生産管系において、螺旋状中心線を有す個別の長さの複数の管系からなる油井生産管系。
【請求項15】
請求項10乃至14の何れか一項に記載の油井生産管系において、管系の壁面に螺旋状の隆起又は溝を有さず、その壁面から内側へ延出する案内ベーンも有さない油井生産管系。
【請求項16】
請求項10乃至15の何れか一項に記載の油井生産管系において、油井ヘッドの下方の管系からなる油井生産管系。
【請求項17】
請求項10乃至15の何れか一項に記載の油井生産管系において、ライザーとして用いられる油井生産管系。
【請求項18】
請求項10乃至15の何れか一項に記載の油井生産管系において、海底管系として用いられる油井生産管系。
【請求項19】
請求項10乃至15の何れか一項に記載の油井生産管系において、海面管系として用いられる油井生産管系。
【請求項20】
請求項10乃至15の何れか一項に記載の油井生産管系において、油井ヘッドの下方の管系として用いられる油井生産管系。
【請求項21】
請求項10乃至15の何れか一項に記載の油井生産管系において、多相石油の輸送のために用いられる油井生産管系。
【請求項22】
請求項10乃至15の何れか一項に記載の油井生産管系において、気体、液体炭化水素及び水の輸送のために用いられる油井生産管系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−7331(P2011−7331A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156724(P2010−156724)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2006−505985(P2006−505985)の分割
【原出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(505354729)インペリアル・カリッジ・イノベイションズ・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】