説明

多種のコンテナを積載可能なコンテナシャシ

【課題】全長を伸縮させて長さの異なる多種のコンテナを積載するコンテナシャシにおいて、伸縮作業を容易化するとともにコンテナの荷重配分を適正化する。
【解決手段】コンテナシャシのフレームを、中央のメインフレーム1、前部フレーム2及び後部フレーム3に3分割し、前部及び後部フレームをメインフレーム1にスライド可能に取り付ける。前部フレーム2とメインフレーム1との間にはストッパ装置を設置して、前部フレーム2をスライドする両端位置のみに位置決め可能とし、かつ、コンテナの緊締具が装着された前端のボルスタB2Fを、前後方向の異なる位置に設置可能とする。重量の大きい前部フレーム2は、トラクタで牽引してストッパ装置と突き当てることにより容易に両端位置に設定でき、さらに、ボルスタB2Fと後部フレーム3の位置を手動で設定すると、各種のコンテナを適正な位置に積載することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送用容器であるコンテナを積載し、トラクタに牽引されるトレーラとして構成されたコンテナシャシ、特に、長さの異なる多種のコンテナを積載するためフレームが伸縮可能に構成されたコンテナシャシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸送用容器として用いられるコンテナは、収容する貨物を保護するよう堅牢な構造を備え、反復して長期の使用が可能であって貨物の積込み及び積出し作業が容易である等の特性を有している。また、船舶、車両等の種々の輸送機関に積載することができるので、コンテナは、各種の物品の輸送用容器として盛んに利用されている。こうしたことから、コンテナについては国際規格等によって長さの寸法などが定められているが、最近では、コンテナの使用状況の多様化に応じて、長さあるいは最大積載量等の異なる多種のコンテナが用いられる傾向にある。例えば、従来から多用されている長さが20フィート(約6m)のコンテナ及び40フィート(約12m)のコンテナ以外に、長さが45フィート(約14m)のものも使用されるケースが増加している。
【0003】
コンテナは大型の容器であって、陸上を車両で輸送する場合は、トラクタで牽引される車台であるコンテナシャシ上に積載して輸送される。コンテナシャシは、全長に亘って前後方向に平行に延びる2本のメインビームとこれらを連結するクロス部材からなるフレームを備え、フレームの前端部と後端部に設置されたボルスタと呼ばれるクロス部材の両端部には、コンテナの底部の4隅を固定する緊締具が取り付けてある。
コンテナシャシの中には、長さの異なるコンテナを積載可能に構成された、例えば20フィートのコンテナと40フィートのコンテナとに兼用できるようになっているコンテナシャシがある。このような兼用のコンテナシャシは、40フィートのコンテナに対応できるよう全長が長く、また、フレームの中間部分にもボルスタと緊締具を設置して、20フィートのコンテナを積載するときは、その中央寄りに積載する。これは、コンテナの荷重をカプラ(コンテナシャシとトラクタの連結具)を介してトラクタの車軸にもいわゆる第5輪荷重として配分し、トラクタの駆動力を確保するとともに、コンテナシャシの車軸に過大な軸重が作用するのを回避するためである。
【0004】
ただし、兼用のコンテナシャシにおいて20フィートのコンテナを中央寄りに積載すると、コンテナ貨物を取扱う施設に設けられたプラットフォームにコンテナ後端部を近接させることができないので、フォークリフト等の荷役作業車を直接コンテナ内部に入り込ませ、コンテナをコンテナシャシ上に積載したまま荷役作業を行うことが不可能となる。そこで、コンテナシャシの後部にスライド可能なスライドフレームを設け、ここを伸縮自在とした兼用のコンテナシャシが知られており、一例として、本出願人の出願に係る特開2008−68790号公報(特許文献1)に開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されたコンテナシャシは、図7に示すとおり、前端から最後部の車輪の直後にまで延びる2本のメインビーム100を具備したメインフレーム101と、メインフレーム101に装着されたスライドフレーム102とに分割されている。スライドフレーム102は、ローラ等を利用して手動によりスライド可能にメインフレーム101に組み付けられている。メインフレーム101の前端及びスライドフレーム102の後端には、横方向に延びるボルスタの両端にコンテナ固定用の緊締具103A、103Dが取り付けてあり、40フィートの長さのコンテナを積載するときはスライドフレーム102を伸長し、コンテナはコンテナシャシ全体に載置される。20フィートのコンテナを積載するときは、コンテナシャシの中間部に設置された緊締具103B、103Cを利用して中央部に積載し、貨物の積み降ろしの際には、スライドフレーム102をメインフレーム101に収容してコンテナシャシの後部を短縮する。これにより、20フィートコンテナの後端をプラットフォームに接近させ、渡し板等を用いると、プラットフォームからコンテナ内にフォークリフト等を入り込ませることができる。なお、コンテナシャシは、図示しないトラクタに牽引されるものであって、前方の下部にはトラクタのカプラに連結されるキングピン104を備えている。
【0006】
特許文献1に開示されたコンテナシャシが、後部のフレームをスライド可能としたものであるのに対し、前部のフレームをスライド可能として全長を伸縮させ、異なる大きさの貨物に合わせて適切な長さに設定できるトレーラも知られており、一例として、特開2000−62643号公報(特許文献2)に開示されている。
特許文献2のトレーラのフレームは、図8に示すとおり、トレーラの車輪が装着された後部フレーム201と、トレーラと連結されるいわゆるグースネック部203が形成された前部フレーム202とに分割されている。後部フレーム201及び前部フレーム202は、それぞれ中空矩形断面形状のメインビーム201A、202Aを有しており、前部フレームのメインビーム202Aは、後部フレームのメインビーム201Aにスライド可能に嵌め込まれる。後部フレーム201には、油圧シリンダで移動可能な2本のピン204が設置されるとともに、前部フレームのメインビーム202Aには、ピン204の間隔Pと一致させた位置決め孔205が複数組形成されている。トレーラのフレームを伸縮するときには、前部フレーム202にトラクタを連結し、後部フレーム201の車輪にブレーキをかけてトラクタを微速で前後に移動させる。そして、2本のピン204が所望の位置決め孔205と一致した時点でトラクタを停止し、ピン204を位置決め孔205に挿入してトレーラを設定した長さに固定するようにしている。
【特許文献1】特開2008−68790号公報
【特許文献2】特開2000−62643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の種類のコンテナを積載可能とした兼用コンテナシャシでは、フレームを分割してスライドさせ全長を伸縮自在とすることが望ましい。伸縮自在のコンテナシャシに長さの短いコンテナを積載したときは、後部のスライドフレームを短縮することにより、コンテナトレーラの操縦性が向上し、狭い場所で駐車を行うことも可能となる。しかし、積載可能なコンテナの種類を増加させ、しかも、フレームを伸縮自在に構成すると、スライドフレームの長さが長くなり安定したコンテナの保持等が難しい。例えば、長さが20フィート、40フィート及び45フィートの3種のコンテナを積載可能なように後方にスライドフレームを設置する場合には、スライドフレームを伸長したときのコンテナシャシの全長は45フィートとなる必要があり、スライドフレームの長さ及び重量が増大して、手動によりスライドさせる作業が困難となる。また、グースネック部の長さが増大するので、20フィートのコンテナをコンテナシャシの中央部に積載した場合に、カプラを介してトラクタの車軸に配分されるコンテナの荷重が減少する結果となる。
【0008】
積載可能なコンテナの種類を増加させながら軸重配分等が優れた伸縮自在のコンテナシャシを構成するには、メインフレームの後部にスライドフレームを設けるとともに、前部のフレームもメインフレームに対して伸縮自在とすることが考えられる。つまり、コンテナシャシのフレームを、メインフレーム、前部フレーム及び後部フレームの3フレームに分割して、前部フレーム及び後部フレームをメインフレームにスライド可能に取り付ける。こうすると、後部フレームとして手動で移動可能な比較的重量の小さいフレームを採用することもできる。
【0009】
ただし、前部フレームには、トラクタと連結するグースネック部やトラクタと切り離したときにコンテナシャシの前部を支える昇降式脚部が装着されているため、その重量が非常に大きく、作業者が手動でスライドさせるのは不可能である。前部フレームをメインフレームに対してスライドさせるには、特許文献2に示されるように、前部フレームをカプラによってトラクタに連結し、コンテナシャシの車輪にブレーキを作用させつつトラクタを微速で前後に移動させるようにするが、このとき、位置決め用のピンと穴とが一致するいわばピンポイントの位置にトラクタを正確に停止するのは、熟練の運転者であっても極めて難しい。
本発明の課題は、前部フレーム及び後部フレームをメインフレームにスライド可能に取り付けたコンテナシャシにおいて、長さが異なる多種類のコンテナに対応するよう、コンテナシャシの全長を伸縮させてコンテナ緊締具の位置を設定する作業を容易とし、上述の問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、前部フレームをメインフレームに対してスライドさせる両端位置にストッパ装置を設置して、前部フレームをその両端位置のみに位置決めするようにし、かつ、前部フレームの前端部に配置されるボルスタを前後方向の異なる位置に取り付け可能に構成して、コンテナの長さに対応した複数の位置にコンテナ緊締具を位置決めするものである。すなわち、本発明は、
「トラクタに牽引され、異なる長さのコンテナを積載可能なコンテナシャシであって、
前記コンテナシャシは、トラクタとの連結具を設けた前部フレームと、中央に置かれたメインフレームと、コンテナの緊締具が装着され横方向に延びるボルスタを設けた後部フレームとを備え、前記前部フレーム及び前記後部フレームの夫々が、前記メインフレームに対してスライドすることにより伸縮可能に構成されており、さらに、
前記前部フレームと前記メインフレームとの間には、前記前部フレームがスライドする両端位置を規制するストッパ装置が設けられるとともに、前記前部フレームを前記両端位置に位置決めする位置決め装置が設けられ、
前記前部フレームには、コンテナの緊締具が装着され横方向に延びるボルスタが前後に2本設けられ、前側に設けられたボルスタが、前記前部フレームの前後方向の異なる位置に取り付け可能に構成されている」
ことを特徴とするコンテナシャシとなっている。
【0011】
前記前部フレームがスライドする両端位置を規制するストッパ装置としては、請求項2に記載のように、前記メインフレームの前後方向に平行に延びる2本のメインビームを横方向に連結し、前記前部フレームの通過する空間部が形成された複数のクロスメンバを設け、かつ、前記前部フレームには横方向に突出するストッパ板を固定することにより、前記ストッパ板が前記クロスメンバと当接して前記前部フレームの位置が規制されるように構成することができる。
【0012】
請求項3に記載のように、前記前部フレームの前側に配置されたボルスタは、前記前部フレームの前端部、及び、前端部とトラクタとの連結具との間に取り付け可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
また、請求項4に記載のように、前記後部フレームと前記メインフレームとの間には、前記後部フレームがスライドする両端位置とその中間位置とに、前記後部フレームを位置決めする位置決め装置が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコンテナシャシは、そのフレームが中央部のメインフレームと前部フレーム及び後部フレームとに3分割され、前部フレーム及び後部フレームは、メインフレームに対してスライド可能であってコンテナシャシの全長が伸縮自在となっている。コンテナシャシの前部と後部を伸長すると、例えば45フィートの長いコンテナを積載可能である。前部フレーム及び後部フレームをメインフレームに収容して短縮すると、例えば20フィートの短いコンテナを積載したときに、コンテナの荷重をトラクタの車輪に適切に分配することができるとともに、貨物の積み降ろしの際にコンテナ後端をプラットフォームに接近させることができる。このように、本発明のコンテナシャシは多種のコンテナを積載可能なため、いわゆる空荷の状態が少なくなって稼働率が向上する。
【0015】
本発明のコンテナシャシでは、前部フレームをメインフレームに対してスライドさせる両端位置にストッパ装置を設置して、前部フレームの全体は、その両端の2位置のみに位置決めするようにしている。
重量の重い前部フレームは、手動でスライドさせるのは不可能であって、トラクタを連結して微速で走行させその動力で移動させる必要がある。本発明のコンテナシャシにおいては、トラクタを微速で前進又は後進させた際に、前部フレームとメインフレームとの間に設けられたストッパ装置が当接すると、コンテナシャシの車輪にはブレーキ力が作用しているためトラクタが自動的に停止する。停止した位置は、位置決め装置により前部フレームとメインフレームとを固定可能な位置であり、これによって、スライドする前部フレームの位置決め作業が非常に容易となる。
【0016】
そして、本発明のコンテナシャシの前部フレームには、コンテナの緊締具が装着されるボルスタが前後に2本設けられ、前側に設けられたボルスタが、前部フレームの前後方向の異なる位置に取り付け可能に構成されている。ボルスタ自体はそれ程重量の大きなものではないから、手動により移動させることが十分に可能で、作業者は、前側に設けられたボルスタを容易に正確な個所に位置決めすることができる。そのため、前部フレーム自体は、その位置が伸長位置と短縮位置の2位置に限定されるものであっても、前部フレームの前側ボルスタの取り付け位置を変更して多種のコンテナを積載することが可能となる。例えば、45フィートのコンテナを積載するときには、前側のボルスタの位置を前部フレームの前端に設定し、40フィートのコンテナの積載時には、そのボルスタを後方に移動させる。前部フレームにおける後側のボルスタは、前部フレームを短縮して20フィートのコンテナを積載するときに使用される。
【0017】
請求項2の発明は、前部フレームがスライドする両端位置を規制するストッパ装置として、前部フレームに横方向に突出するストッパ板を固定し、このストッパ板を、メインフレームに設けられる、前部フレームの通過する空間部が形成された複数のクロスメンバに当接させるものである。メインフレームにこのようなクロスメンバを設けると、前部フレームのスライドする部分の剛性が増加してスムースなスライドが可能となる。また、ストッパ装置が簡易な構造となり、1枚のストッパ板で伸長位置と短縮位置の2位置を規制することができる。
【0018】
請求項3の発明は、前部フレームの前側に配置されたボルスタを、前部フレームの前端部に取り付け可能とするとともに、これを後方に移動させたときは、前部フレームの前端部とトラクタとの連結具との間に取り付け可能としたものである。この構成によれば、前側に配置されたボルスタを後方に位置決めしてコンテナを固定すると、そのコンテナの前部がトラクタとの連結具よりも前側に位置する。そのため、コンテナの荷重が直接連結具に作用し、十分な第5輪荷重をトラクタの車輪に配分することが可能となる。
【0019】
請求項4の発明は、メインフレームに対してスライド可能な後部フレームを、スライドする両端位置のみならずその中間位置にも設定することができるよう、中間位置用の位置決め装置を設けるものである。本発明では、前部フレームは伸長位置と短縮位置の2位置のみに設定可能となっているが、請求項4の発明のように後部フレームを中間位置にも設定可能な構成とすると、中間長さのコンテナ(例えば40フィートのコンテナ)の後端をその中間位置にすることにより、中間長さのコンテナの積載位置を自由に設定して第5輪荷重を調整することが可能となる。そして、後部フレームは、前部フレームよりもはるかに軽量であって手動によりきめ細かくスライドさせることができるので、後部フレームを中間位置に位置決めする作業は、容易に実施可能な作業である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明について説明する。図1は、本発明のコンテナシャシの実施例を全体的に示す概略図である。この実施例のコンテナシャシは、長さ寸法が45フィート、40フィート及び20フィートの3種類のコンテナを積載可能なものであって、45フィートのコンテナを積載した状態を実線で、40フィートのコンテナを積載した状態を破線で、20フィートのコンテナを積載した状態を2点鎖線で夫々示している。
【0021】
図1に示すとおり、本発明のコンテナシャシは、中央に置かれたメインフレーム1と、その前方及び後方に夫々置かれる前部フレーム2、後部フレーム3とを備えている。メインフレーム1には、サスペンション機構を介してコンテナシャシの車軸4A、4B、4Cが取り付けてあり、また、図示は省略するが、車輪のブレーキ装置など走行のために必要な機器類が取り付けられている。
【0022】
前部フレーム2及び後部フレーム3は、メインフレーム1に対して入れ子式にスライド可能に装着されており、したがって、このコンテナシャシは、全長が伸縮可能に構成されている。正面図から明らかなように、前部フレーム2の前方部分は、図示しないトラクタと連結するため、地上高の大きいいわゆるグースネック部21となっており、その下部には、トラクタとの連結具であるカプラ用のキングピン22が固着される。グースネック部21の後端部には、トラクタと切り離したときにコンテナシャシの前部を支えるための昇降式脚部23が取り付けられる。
【0023】
前部フレーム2及び後部フレーム3には、積載するコンテナを固定するため、コンテナシャシの横方向に延びるボルスタの両端に装着された緊締具が設けられている。この実施例のコンテナシャシでは、前部フレーム2に2本のボルスタB2F、B2Rが配置してあり、後側のボルスタB2Rが前部フレーム2に一体的に固着されているのに対し、前側のボルスタB2Fは移動可能ないわゆるスライドボルスタであって、前部フレーム2の前端部の位置と、前端部とキングピン22との間の位置の2位置に取り付け可能に構成されている。一方、後部フレーム3には、後端部に1本のボルスタB3が固着される。
【0024】
夫々のボルスタの両端部には、積載するコンテナの底部のコーナー部を固定する緊締具が装着されている。これらの緊締具は、最前方のボルスタB2Fに装着された緊締具5Aがスレットピンと呼ばれる緊締具であり、それ以外のボルスタに装着された緊締具5B〜5Dがツイストロックと呼ばれる緊締具となっている。ちなみに、この実施例のコンテナシャシでは、後部フレーム3のボルスタB3には、両端に夫々2個のツイストロック5C、5Dが前後に装着されており、20フィートのコンテナを積載するときには前側のツイストロック5Cを使用する。このツイストロック5C及び前部フレーム2の後側のツイストロック5Bには、40フィートや45フィートのコンテナを積載する際に上方に突出しないよう、下方に移動して収納可能なツイストロックが採用される。
【0025】
ここで、本発明のコンテナシャシにおける、コンテナの長さに対応したフレームの伸縮方法等について述べる。
本発明のコンテナシャシは、前部フレーム2が、メインフレーム1に対してスライドする両端位置である伸長位置と短縮位置の2位置のみに位置決め可能であって、後述するように、前部フレーム2とメインフレーム1との間には、両フレームをこの位置に規制するストッパ装置と位置決め装置とが設けてある。前部フレーム2をスライドするときは、キングピン22により前部フレーム2をトラクタに連結し、メインフレーム1の車輪にブレーキを作用させてトラクタを微速で前進又は後進させる。前部フレーム2が伸長位置あるいは短縮位置に達するとストッパ装置が当接してトラクタが自動的に停止する。これにより、前部フレーム2が重量の重いものであっても、位置決め作業が非常に容易となる。40フィート及び45フィートのコンテナを積載するときは、前部フレーム2を伸長位置に設定し、20フィートのコンテナでは短縮位置に設定する。
【0026】
このように前部フレーム2自体の位置を設定した後、作業者は、前部フレーム2の前側のボルスタB2Fの位置を手動によって設定するとともに、後部フレーム3の位置をやはり手動によって設定する。前側のボルスタB2F及び後部フレーム3は、前部フレーム2に比べればはるかに軽量であって手動で十分にスライド可能であり、また、手動であれば正確な位置決めは容易である。具体的には、45フィートコンテナの積載時には、前側のボルスタB2Fを前部フレーム2の前端部に、後部フレーム3をスライド可能な最後方の位置に位置決めする。40フィートコンテナの積載時には、前側のボルスタB2Fを前部フレーム2の前端部とキングピン22との中間に、後部フレーム3をスライドの中間位置に位置決めする。そして、20フィートコンテナの積載時には、前部フレーム2を短縮位置とするとともに後部フレーム3を最前方に位置決めする(このとき、ボルスタB2Fは、前端部とキングピン22との中間に置くのがトラクタとの干渉回避上好ましい)。
【0027】
3種類のコンテナに応じて上記のようにコンテナシャシを伸縮し、対応する緊締具で固定すると、夫々のコンテナは図1に示す態様で積載される。この積載方法によれば、20フィートコンテナを積載したときに、前部フレーム2を短縮してトラクタに適正な第5輪荷重を配分することが可能で、同時に、コンテナ後端部をプラットフォームに接近させることができる。40フィートコンテナを積載したときは、45フィートコンテナの積載時とコンテナ重心位置(中央位置)が殆ど変わらないので、第5輪荷重が過大となるのを回避することができる。
【0028】
次いで、前部フレーム2のスライド機構、ストッパ装置等について、図2、図3によって説明する。図2(a)は、前部フレーム2を伸長位置に置いたときのメインフレーム1と前部フレーム2の状態を示すものであり、図2(b)は、前部フレーム2を短縮位置に置いたときの状態を示すものである。図2(c)には、メインフレーム1と前部フレーム2との重合部分を拡大して示す。また、図3(a)(b)(c)は、図2(c)のA−A矢視図、B−B矢視図及びC−C矢視図を表すものであって、夫々、クロスメンバとストッパ装置、ガイドローラ及び位置決め装置を図示している。
【0029】
図2(a)(b)の平面図に示すとおり、メインフレーム1は、前後方向に平行に延びる2本のメインビーム11を備えている。前部フレーム2も、前後方向に平行に延びる2本の前部メインビーム24を備え、その間には、適所にクロス部材25(図1では、理解を容易とするよう、前部フレーム2のクロス部材は図示を省略)が掛け渡してある。図3から分かるように、これらのメインビームは、上下のフランジ板を中央のウエッブ板で連結した断面I形の鋼材となっており、前部メインビーム24の寸法は、メインフレーム1内をスライドするよう、メインビーム11の寸法よりも小さい。図2(c)等に示すように、メインフレーム1の前側部分にも、前部フレーム2が通過する空間部の形成された3個のクロスメンバ12A、12B、12Cが設置される(図3(a)も参照)。メインフレーム1と前部フレーム2との間には、前部フレーム2を円滑にスライドさせるガイドローラGRが設けられるとともに、前部フレーム2を位置決めする位置決め装置PDが設けられる。
【0030】
図3(a)に示すとおり(図2(c)も参照)、前部フレーム2の後端部近傍には、前部メインビーム24のウエッブ板にストッパ板26が溶接で固着されている。ストッパ板26は、前部メインビーム24のフランジ板よりも横方向に突出しており、3角形形状の補強板により支持されたものである(a−a矢視図参照)。前部フレーム2を図2(b)の短縮位置に設定する際には、前部フレーム2に連結したトラクタを極めて低速で後進させると、ストッパ板26が後方のクロスメンバ12Cに当接した図示の位置でトラクタが停止して位置が規制される。図2(a)の伸長位置に設定する際には、前部フレーム2に連結したトラクタを前進させると、ストッパ板26が中間のクロスメンバ12Bに当接した位置でトラクタが停止して位置が規制される。つまり、このストッパ装置においては、1個のストッパ板26によって短縮位置と伸長位置の2位置を規制することが可能である。
【0031】
メインフレーム1のメインビーム11には、図3(c)に示す位置決め装置が設置されている。この位置決め装置は、メインビーム11に取り付けられたハンドル付ピンPPを前部フレーム2のピン挿入孔PHに差し込んで、前部フレーム2をメインフレーム1に対して位置決めするものである。前部フレーム2には、ストッパ装置で規制される短縮位置と伸長位置においてハンドル付ピンPPと対向する2個所に、ピン挿入孔PHが設けられている(具体的には、上下のフランジ板を連結する板状のブラケットにピン挿入孔PHを設ける)。前部フレーム2が短縮位置又は伸長位置に置かれたときには、作業者は、ハンドル付ピンPPを操作してピン挿入孔PHに差し込み、前部フレーム2をメインフレーム1に対して所定の位置に固定する。
【0032】
また、図3(b)に示すように、前部フレーム2を円滑にスライドさせるガイドローラGRがメインフレーム1と前部フレーム2との間に設けられる。このガイド装置は、2個のガイドローラGRを前部メインビーム24の上下のフランジに当接させ、メインフレーム1のメインビーム11に取り付けたばねによって、ガイドローラGRを前部フレーム2に押圧するものである。このようなガイド装置の詳細な構造は、本出願人の出願に係る特許文献1に記載されており、このガイド装置を採用すると、スライドする前部フレーム2の安定したガイドが可能となる。ただし、メインビームに軸を固定した単純なガイドローラにより前部フレーム2を案内してもよい。
【0033】
図4は、前部フレーム2の前側に置かれる、取り付け位置が変更可能なボルスタ(スライドボルスタ)B2Fの構造を示すものである。図4(b)に示すとおり、このボルスタは、横方向に延びる中空の棒状鋼材からなるボルスタ本体BBを有しており、その下部には、両端にコンテナを固定するスレットピン5Aが固着されるとともに、中間部に2個の位置決め具PDが固着される。この位置決め具PDも、図3(c)に示すハンドル付ピンを有する位置決め装置と同様な構成を備えている。前部フレーム2には、その前端部の位置と、キングピン22との間の位置とに、ハンドル付ピンを挿入するピン挿入孔が設けてあり、45フィートのコンテナを積載するときは、スライドボルスタB2Fが前端部に取り付けられ(図4(a)の上図)、40フィートのコンテナを積載するときは、キングピン22との間の位置に取り付けられる(図4(a)の下図)。スライドボルスタB2F自体は軽量であって、取り付け位置を変更する作業は、手動で容易に行うことができる。
【0034】
次いで、後部フレーム3のスライド機構等について、図5及び図6によって説明する。図5(a)は、後部フレーム3を伸長位置及び中間位置(破線)に置いたときのメインフレーム1と後部フレーム3の状態を示すものであり、図5(b)は、後部フレーム3を短縮位置に置いたときの状態を示すものである。図6(a)(b)(c)は、図5(a)下図におけるA−A矢視図、B−B矢視図及びC−C矢視図を表すものであって、夫々、クロスメンバ、ガイドローラ及び位置決め装置を図示している。なお、後部フレーム3のスライド機構等は、原理的には前部フレーム2のものと変わるわけではなく、ここでは相違点を中心に説明する。
【0035】
図5に示すとおり、後部フレーム3は、平行に延びる2本の後部メインビーム31を備え、その間には、適所にクロス部材32(図5(b)参照。図1及び図5(a)では、理解を容易とするよう、後部フレーム3のクロス部材は図示を省略)が設置されている。図6から分かるように、前部フレーム2の前部メインビーム24が断面I形の鋼材であるのに対し、後部メインビーム31はコ字状断面の鋼材である。また、2本の後部メインビーム32の間の幅は、前部メインビーム24の間の幅よりも狭い。メインフレーム1の後側部分には、後部フレーム3の通過する空間部の形成されたクロスメンバ12Dが適所に設置される(図6(a)も参照)。メインフレーム1と後部フレーム3との間には、図6(b)(c)に示すとおり、前部フレーム2のスライド機構と同様なガイドローラGR及び位置決め装置PDが設けられる。ただし、位置決め装置PDのピン挿入孔は、後部フレーム3を伸長位置及び短縮位置以外に中間位置にも設定可能なように、後部メインビーム32に3個設けられている。
【0036】
後部フレーム3の後端部には、積載するコンテナの後端を固定するツイストロックを装着したボルスタB3が固着される。45フィートのコンテナを積載するときは、後部フレーム3を図5(a)の伸長位置に位置決めし、40フィートのコンテナでは、図5(a)の中間位置に位置決めしてボルスタB3の後側のツイストロック5Dを用いてコンテナを固定する。長さの短い20フィートのコンテナを積載するときは、後部フレーム3を図5(b)の短縮位置に設定して、ボルスタB3の前側のツイストロック5Cにより固定するが、場合によっては、前側のツイストロックを省略し全てのコンテナを共用のツイストロックで固定するよう構成してもよい。
後部フレーム3は比較的軽量であって、作業者は、このような位置決め作業を手動で正確に行うことができる。なお、手動による後部伸縮フレームのスライド機構は、特許文献1にも開示されている。
【0037】
以上詳述したように、本発明は、前部フレーム及び後部フレームをメインフレームにスライド可能に取り付けたコンテナシャシにおいて、前部フレームをメインフレームに対してスライドさせる両端位置にストッパ装置を設置して、前部フレームをその両端位置のみに位置決めするようにし、かつ、前部フレームの前端部に配置されるボルスタを前後方向の異なる位置に取り付け可能に構成したものである。上記の実施例では、20フィート、40フィート及び45フィートの3種のコンテナを積載するコンテナシャシについて説明したが、本発明は、その他の寸法のコンテナを積載するものに適用できることは言うまでもない。また、前部フレームのグースネック部を図7のような幅の狭いものとしたり、ガイドローラの取り付け個所を増加するなど、実施例に対し種々の変形が可能であるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のコンテナシャシの全体及びコンテナ積載状態を示す図である。
【図2】本発明の前部フレームとメインフレームとの関係を示す図である。
【図3】図2の要部断面矢視図である。
【図4】本発明の前部フレームの前側に置かれるボルスタを示す図である。
【図5】本発明の後部フレームとメインフレームとの関係を示す図である。
【図6】図5の要部断面矢視図である。
【図7】後部スライドフレームを備えた従来のコンテナシャシを示す図である。
【図8】前部スライドフレームを備えた従来のトレーラを示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 メインフレーム
11 メインビーム
12A〜12D クロスメンバ
2 前部フレーム
21 グースネック部
22 キングピン
24 前部メインビーム
26 ストッパ板
3 後部フレーム
31 後部メインビーム
5A〜5D 緊締具
B2F 前側ボルスタ(前部フレームの)
B2R 後側ボルスタ(前部フレームの)
B3 後端部のボルスタ(後部フレームの)
PD 位置決め装置
GR ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに牽引され、異なる長さのコンテナを積載可能なコンテナシャシであって、
前記コンテナシャシは、トラクタとの連結具を設けた前部フレームと、中央に置かれたメインフレームと、コンテナの緊締具が装着され横方向に延びるボルスタを設けた後部フレームとを備え、前記前部フレーム及び前記後部フレームの夫々が、前記メインフレームに対してスライドすることにより伸縮可能に構成されており、さらに、
前記前部フレームと前記メインフレームとの間には、前記前部フレームがスライドする両端位置を規制するストッパ装置が設けられるとともに、前記前部フレームを前記両端位置に位置決めする位置決め装置が設けられ、
前記前部フレームには、コンテナの緊締具が装着され横方向に延びるボルスタが前後に2本設けられ、前側に設けられたボルスタが、前記前部フレームの前後方向の異なる位置に取り付け可能に構成されていることを特徴とするコンテナシャシ。
【請求項2】
前記メインフレームは、前後方向に平行に延びる2本のメインビームと、前記2本のメインビームを横方向に連結し前記前部フレームの通過する空間部が形成された複数のクロスメンバとを備え、かつ、前記前部フレームには横方向に突出するストッパ板が固定されており、
前記前部フレームがスライドする両端位置において、前記ストッパ板が前記クロスメンバと当接して前記前部フレームの位置が規制される請求項1に記載のコンテナシャシ。
【請求項3】
前記前部フレームの前側に設けられたボルスタが、前記前部フレームの前端部、及び、前端部とトラクタとの連結具との間に取り付け可能に構成されている請求項1又は請求項2に記載のコンテナシャシ。
【請求項4】
前記後部フレームと前記メインフレームとの間には、前記後部フレームがスライドする両端位置とその中間位置とに、前記後部フレームを位置決めする位置決め装置が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコンテナシャシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−137608(P2010−137608A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313421(P2008−313421)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】