説明

多種類の標的を検出するためのマイクロ流体プラットフォーム

1つ以上の標的を検出する方法及びデバイスが開示されている。当該方法は、第1標的を含む試料をマイクロ流体デバイス内部に設ける手順、及び複数の前記第1標的のコピーと複数のナノ構造とのハイブリダイゼーションを起こす手順を有する。当該方法は、前記複数のナノ構造に電流を印加する手順、及び前記電流によって発生する電場を用いて前記複数のナノ構造を移動させる手順を有する。それに加えて、前記複数のナノ構造は分類及び評価されることで、前記第1標的の存在、不存在、又は量のうちの少なくとも1つが決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイスに関し、より詳細には多標的検出用のマイクロ流体プラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
診断アッセイは、病原体(たとえば有害バクテリア、ウイルス、有機体等)及び/若しくは異常細胞の検出並びに識別に利用可能な生化学的手法である。一の知られた診断アッセイにはポリメラーゼ鎖反応(PCR)の利用が含まれる。PCRは、DNAポリメラーゼを用いてDNA片-つまり標的DNA-を試験管内の酵素複製によって増幅する。PCRは、最初わずかな濃度で存在するDNAシーケンスを迅速に増幅し、最終的に数百万の同一DNA分子を生成することで、各DNAシーケンス/標的に対する検出感度を指数関数的に増大させることが可能とする。
【0003】
一部の診断アッセイもまた、検出標的-たとえば増幅されたDNAシーケンス、バイオメーカー分子、病原体、及び/又は他の標的-を選択的に捕獲する手順、前記標的を大きな試料から取り除く手順、及び前記標的を分子プローブに結合する手順をも有する。結合した標的は様々な手法-蛍光タグ又は放出、ラマン分光、及びIR又はUV分光を含む光センサに基づく光センサ手法を含む-によって検出することが可能である。
【0004】
これらの診断アッセイは、医療診断試験室における遺伝子診断手法で用いられている。それに加えて食料品店は、たとえば生鮮食料品に含まれる大腸菌のようなバクテリアを検出する酵素結合イムノソルベントアッセイのような診断アッセイを用いる。これらの手法は、バクテリアの検出、又は他のDNA、バイオマーカー、若しくは他の標的の検出にとっては有用だが、これらの手法では、一般的に高価でかさばる実験設備の負担が求められ、大抵の場合手動での監視及び処理が必要となり、かつ結果が出るのに数日以上が必要となる(たとえばTBバクテリアは培養に1週間必要である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型PCRキットも市販されているが、これらのアッセイは少なくとも1時間の応答時間を有する。1時間の応答時間は、小型で利用するデバイス又は高処理能力バイオマーカースクリーニングにとっては一般的に長すぎる。それに加えて従来のアッセイキットは、低処理能力のバッチ形式を用いた単一標的検出を行う。この方法は標的計数が少なく、かつこの方法の感度には疑問が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
記載された典型的なデバイス及び方法は、1つ以上の標的-たとえば病原菌及び/又は異常細胞-の検出に関する。典型的な方法は、第1標的を含む試料をマイクロ流体デバイス内部に設ける手順、及び前記第1標的の複数のコピーと複数のナノ構造とのハイブリダイゼーションを起こす手順を有する。当該方法は、前記複数のナノ構造に交流電流を印加する手順、及び電気電流によって発生する電場を用いて前記ナノ構造を捕獲し、かつ移動させる手順を有する。前記捕獲によって、前記ナノ構造全体にわたって試料を迅速に流すことが可能になることで、たとえば100μlよりも多い試料溶液から標的を捕獲することが可能となる。続いて前記ナノ構造は、前記第1標的の存在又は不存在-たとえば前記第1標的の量の決定も含まれて良い-を判断するために分類及び評価される。
【0007】
さらに、たとえばメカニカルシリンジポンプ、手動シリンジポンプ、マイクロポンプ、及び/又は他の適切なデバイスによって供給される外的又は内的に印加された圧力によって、試料流は駆動する。圧力によって駆動する連続流によって、大容量の試料のサンプリングが可能となり、かつ残骸物によるチャネル及びオリフィスの目詰まりが防止されるので、圧力によって駆動する連続流は高処理能力の小型デバイスにとって望ましい。よって本明細書に記載された典型的な方法及びシステムの分類、捕獲、並びに他の態様は加圧下で行われるので、詰まり、残骸物、及び/又は他の障害物に対して耐性を有する。換言すると、圧力が増大しても、本明細書に記載された典型的な方法又はシステムの動作は妨害されない。
【0008】
標的検出ユニットとして機能する典型的なデバイスは、第1標的の試料が内部に設けられたマイクロ流体デバイス、及び複数の前記第1標的のコピーと複数のナノ構造とを結合させるハイブリダイゼーションチャンバを有する。それに加えて当該デバイスは、前記ナノ構造を集める集合装置、前記ナノ構造を分類する分類装置、及び前記の分類されたナノ構造を収集するトラップを有する。
【0009】
他の典型的な標的検出器は、標的が複製されることで増幅された混合物が生成される複製チャンバ、及び、ナノ構造を含むマイクロ流体チャンバであって、前記ナノ構造は該ナノ構造に対して官能化する分子プローブを有する流体チャンバを有する。前記標的検出器は、マイクロ流体チャンバ内にナノ構造を保持するフィルタ、前記の増幅した混合物が貫流して前記の増幅した混合物中で前記ナノ構造と標的のハイブリダイゼーションを起こすチャネル、及び、前記標的の存在又は不存在を判断する検出器をも有する。
【0010】
複数の標的を検出するさらに他の典型的な方法は、1つ以上の標的を含む試料をマイクロ流体デバイスへ挿入する手順、前記標的を容器内に保持する手順、前記標的を複数の検出管に通過させる手順、及び前記標的のハイブリダイゼーションを行う手順を有する。当該方法は、任意の適切な検出デバイス及び/又は方法によって前記標的の存在又は不存在を検出する手順をも有する。
【0011】
多標的を検出するさらに他の典型的な標的検出器は、1つ以上の標的を含む試料を受け入れてマイクロ流体デバイスへ注入する注入孔、前記標的を保持する容器、該容器とやり取り可能なように結合する複数の検出管、及び該複数の検出管内に設けられたハイブリダイゼーションチャンバを有する。さらなる典型的な標的検出器は、前記標的の存在又は不存在を検出する検出器を同様に有する。
【0012】
本明細書に記載された典型的なデバイス及び方法の動作は、たとえば防衛、本土すなわち国家の安全保証、医療、研究、環境、プロセス制御の用途又は他の適切な目的のための検査を行うため、患者及び/又は環境から試料を取得する手順を有する。試料の中には、検査が完了する前に前処理を必要とするものがあるだろう。前処理にはたとえば、前記試料から残骸物及び/又は阻害物質を物理的、化学的、又は他の手法により除去するため、濾過、試薬による沈殿、及び/又は、物理的な残骸物及び/又は化学的な阻害物質の分解が含まれて良い。前処理はまた場合により、多数の他の様々な手法を有しても良い。
【0013】
分子検出標的が試料に加えられる。分子検出標的はたとえばバイオマーカー又は遺伝子を有して良い。典型的バイオマーカーの中には、生物学的小胞、ペプチド、及び/又は他の非DNA分子を有するものがある。遺伝子はDNA及び/又はRNAストランドを有する。一部の例では、標的が遺伝子を含む場合には、PCRが、試料中のDNA及び/又はRNAストランドを複製/増幅するのに用いられて良い。
【0014】
検出標的は、ナノ構造に対する官能基となる(つまりナノ構造に付着する)相補的分子プローブとのハイブリダイゼーション(つまり結合)を起こす。ナノ構造上での標的のハイブリダイゼーションは、たとえばAC電流によって発生する電場の存在によって促進されて良い。電場の存在は、ハイブリダイゼーションに必要な時間を顕著に短縮する。一部の例では、検出標的がナノ構造に導入されることで、ハイブリダイゼーションを1秒未満で起こすことができる。ハイブリダイゼーションの時間が短縮されることは、高処理能力の小型デバイスにとって有利である。典型的なナノ構造には、カーボンナノチューブ(CNT)、ナノビーズ、ナノワイヤ、ナノコロイド、ナノ粒子、ナノロッド、量子ドット、ナノ結晶、リポゾーム、シリカビーズ、ラテックスビーズ、金コロイド、及び/又はサブミクロンスケール-つまり1μm未満-の寸法を有する他の形状を備えた構造が含まれる。ナノ構造の官能基となることが可能な分子プローブにはたとえば、オリゴマー、プローブ、蛍光プローブ、カルボキシル基、ストレプトアビジン/アビジン、又はマイクロ構造を親水性にする他の適切な(複数の)分子プローブが含まれて良い。様々なナノ構造を分子プローブとして利用することには様々な利点がある。たとえばサイズが均一なラテックス粒子が容易に合成されると同時に、様々な化学及び物理プローブによるシリカナノビーズの官能化が一般的になる。CNTへのプローブ及び蛍光プローブの付着もまた相対的に容易になる。ナノワイヤは容易なコーディング(たとえば様々なナノワイヤ上での蛍光色素及び/又は他の形跡の付加)を可能にする。そして静電相互作用により分子は無差別にCNT上に吸着しないので、CNTは良好な選択性を供する。標的がハイブリダイゼーションを起こすという事象は大きなインピーダンス信号を発生させるので、CNTのコンダクタンスは分子のハイブリダイゼーションに対しても敏感である。さらに様々な蛍光色素は、コロイド、リポゾーム、又はナノワイヤに順次付着することで、本明細書に記載されているような蛍光バーコード又は他の形跡を供して良い。
【0015】
以降で詳述するように、検出標的のハイブリダイゼーションを起こすことが可能な手法には様々なものが存在する。たとえば遺伝子は、水素結合を介することによって相補的分子プローブ(たとえばオリゴ-ヌクレオチド-これもDNAである-)とのハイブリダイゼーションが可能である。バイオマーカーが検出標的として用いられる場合、バイオマーカーはナノ構造と結合する。よってハイブリダイゼーションは、バイオマーカー分子とナノ構造上の相補的分子との間で生じる。バイオマーカーが分子である例においては、ハイブリダイゼーションは、バイオマーカーそれ自身とナノ構造上の相補的分子との間で起こる。係るハイブリダイゼーションには、水素結合又は他の適切な化学及び/若しくは物理結合機構が含まれる。他の典型的なハイブリダイゼーションには、後述するビオチン-ストレプトアビジンが含まれる。
【0016】
検出標的は様々な方法で検出されて良い。たとえば一部の例では、誘電泳動(DEP)が結合したナノ構造に用いられることで前記ナノ構造を電場に従わせて、前記ナノ構造を様々なパターンで移動させ、かつ/又は前記ナノ構造を含む溶液のインピーダンスを測定する。他の例では、ナノ構造を含む溶液のたとえば蛍光特性(たとえば強度)の光学的観察を介して検出が行われる。他の例では、蛍光とインピーダンスの両方の測定及び/又は観察が行われて良い。
【0017】
標的の検出に利用可能な一の典型的な診断キット又は検出デバイスは、集積された連続流誘電泳動プラットフォームを有する。DEP-これには粒子に力を付与するAC電場の利用が含まれる-に基づくマイクロ/ナノ構造のプラットフォームはナノ構造を操作することで、マイクロ流体プラットフォームが標的の検出及び特定を行う。具体的にはDEPは、電場勾配の影響下での粒子(帯電している必要はない)のマイグレーションを指称する。電場は、個々のナノ構造が不均一な電場に曝露されているとき、個々のナノ構造の各々の上に粒子双極子を誘起する。ナノ構造は、制御されたマイグレーションを引き起こす正味の力を受ける。前記制御されたマイグレーションは、そのマイグレーションが高電場領域へ向かうか、又は遠ざかるのかに依存して、正のDEP(p-DEP)又は負のDEP(n-DEP)と表される。印加される周波数が増大することで、ほとんどのナノ構造はp-DEPからn-DEPへ切り替わる。ナノ構造が切り替わる地点は「クロスオーバー」地点である。ナノ構造間での「クロスオーバー」周波数の差異を利用することで、各独立した(複数の)ナノ構造に各異なる粒子の力-たとえば各異なる方向に作用する力-を迅速に与える方法が供される。
【0018】
ナノ構造のDEP方向は分子結合によって反転させることが可能である。たとえば結合は、表面コンダクタンス及び官能化されたナノ構造の実効サイズを変化させる。係る変化は、不均一なAC電場内で誘起されるナノ構造の双極子モーメントを変化させる。その結果ナノ構造は、結合/ハイブリダイゼーションの発生に依存する不均一なAC電場において、各独立した様々なパターンに集められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】A-Fは、四重極電極付近に位置する典型的な結合及び未結合ナノ構造によって形成された典型的パターンの像である。
【図2】集積された多重連続流誘電泳動分類デバイスの典型例の概略図である。
【図3】典型的な結合したナノ構造の拡大されたトラップの写真である。
【図4】各々のサイズが異なる典型的な結合したナノ構造について、クロスオーバー周波数に対する伝導率をプロットするグラフである。
【図5】典型的な結合したナノ構造の極の電荷の拡大像である。
【図6】2つの異なる検出手法を表す迅速な標的検出デバイスの典型例の概略図である。
【図7】典型的な検出デバイス上の典型的なマイクロ流体チャネルの一部を図示している。
【図8】典型的なガラススライド上に図7の典型的なマイクロチャネルを作製する典型的な方法を図示している。
【図9】典型的な図8のガラススライド上に典型的なフィルタを作製する典型的な方法を図示している。
【図10】典型的なナノ構造上に典型的なオリゴマープローブを官能化させる典型的な方法を図示している。
【図11】図6の典型的な検出デバイスのより詳細な図、並びに、典型的なフィルタ及びマイクロチャネルの拡大図が共に示された典型的なデバイスの像を示している。
【図12】遺伝子ハイブリダイゼーションを用いた典型的な多標的検出ユニットの概略図である。
【図13】図12の検出ユニットの典型的な検出サブユニットの概略図である。
【図14】図13の典型的な検出サブユニットの典型的な膜及び電極対の概略図である。
【図15】図13の典型的な検出サブユニットの典型的なインピーダンス検出器の概略図である。
【図16】図15の典型的なインピーダンス検出器の典型的な電極グリッドの拡大図である。
【図17】図16の典型的な電極グリッドの典型的なアレイ交差点の拡大図である。
【図18】典型的な像検出器の概略図である。
【図19】図18の典型的な像検出器から得られた典型的な像を概略的に表している。
【図20】選択的ハイブリダイゼーションを用いた典型的な多標的検出ユニットの概略図である。
【図21】図20の検出ユニットの典型的な検出サブユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
たとえば図1A-Fは、四重極電極の付近でのナノ構造の懸濁物を図示している。ナノ構造の懸濁物は、図1A-Cでは結合していないが、図1D-Fでは結合している。それに加えて、図1A及び1Dは周波数300kHzでのナノ構造の懸濁物を図示し、図1B及び1Eは周波数700kHzでのナノ構造の懸濁物を図示し、かつ図1C及び1Fは周波数2.1MHzでのナノ構造の懸濁物を図示する。図1A-Fに図示されているように、DNA-オリゴマーのハイブリダイゼーションを起こすナノ構造の懸濁物と上記ハイブリダイゼーションを起こさないナノ構造の懸濁物(つまり結合するものと結合しないもの)は、様々なAC周波数で各独立した様々なパターンを示す。そのパターンは、ラベリング又はタグ用試薬を用いることなく迅速にハイブリダイゼーションを特定するのに用いることが可能である。検出は、共焦点蛍光顕微鏡に代わって、携帯型光学顕微鏡によって行われて良い。ハイブリダイゼーション(つまりナノ構造への検出標的の結合)がより明確になり、かつそのハイブリダイゼーションがより大きくなることで、元の試料中すなわち患者又は環境中での標的の存在がより顕著になる。このことは、たとえば防衛、本土すなわち国家の安全保証、医療、研究、環境、プロセス制御の用途又は他の適切な目的のための有用な情報を供することができる。
【0021】
ナノ構造が電場の下で移動するので、力の方向の差異は、前記ナノ構造の分離及び分類、又は場合によっては後述するように前記ナノ構造を所定の位置に保持するのに用いられて良い。それに加えて、DEP分類は、サイトメトリとは異なり、分類の前にナノ構造を特定することを要しない。この手法は、DNA-オリゴマーハイブリダイゼーション、タンパク質-DNA、抗体-抗原(たとえば後述するビオチン-ストレプトアビジン)、及び、ラベリング又は他の試薬を必要としない、表面が官能化されたナノ構造を含む他の分子結合アッセイに適用されて良い。
【0022】
それに加えて、ナノ構造の2元、3元、又は4元懸濁物は、多標的検出に使用可能である相当に豊富なパターンのスペクトルを供することができる。たとえば様々な形状及びサイズのナノ構造を有する懸濁物は複雑性にも寄与すると考えられる。最後に生体認証の統合によって、大規模のパターンのライブラリを生成することができる。本明細書で詳述されているように、パターンのライブラリへアクセスすることで、観測されたパターンと既知のパターンとを比較して、1つ以上の標的の存在又は不存在を判断する標的検出が支援される。
【0023】
本明細書に記載された典型的なDEPプラットフォーム-たとえば動電的に流れを制御する部品-は極めて軽量である。その理由は小型バッテリーと小型変成器しか必要ないからである。オンチップの光センサが電子的に制御されるので、デバイス/チップ全体のための十分に集積された電子制御構造が、最小限のアクチュエータ及びセンサで実装されて良い。それに加えて機械的に可動な部分は最小に維持される。たとえば一部の例では、機械的に可動な部分だけが数個のボールバルブである。機械的に可動な部分の数を減らすことで、チップの製造コストが減少する。さらにフィードバック制御及び自動化が、制御小型回路構造によって実装されて良い。
【0024】
図2は、センサ不要のナノ構造の分類及び識別を可能にする、典型的な集積多重連続流DEP分類デバイス/チップ200を図示している。この例では、チップ200は、3つの異なっていて連続するDEP部品を有し、かつ3つの異なるナノ構造を、たとえば約100個のナノ構造/秒の速度で、3つの異なるチャネルに分類することができる。チップ200及び任意の周辺機器はハンドヘルド型であり、使い捨てで、かつ低コスト-たとえば約1米ドル未満-での製造が可能である。分類されたナノ構造は、マイクロフィルタを用いることなく、各チャネル内部のDEPトラップによって捕獲可能である。集められたナノ構造はさらに、オンチップ又はオフチップのセンサ及び検出器によって検知されて良い。ナノ構造はまた、たとえば1つ以上のトラップ用電極のインピーダンスを測定することによってカウントされて良い。
【0025】
それに加えて、1つ以上の典型的なチップ200が、直列又は並列に接続し、かつモジュール形式で用いられることで、大量の並列スクリーニングを実現することが可能である。このモジュール形式は、試料の調査を大量の異なる標的のレベルにまで拡大することを可能にする。このような構成はまた側方流及び循環流をも可能にする。
【0026】
典型的な集積DEPチップモジュール200の様々な部品は、様々なナノ構造によって生じる様々な方向の様々な粒子の力を利用して、微小電極付近で高電場を発生させる。上述したように、典型的なチップ200は、粗いDEP残骸物フィルタ210(上述したように試料の前処理に用いることができる)の下流に3つのステージを有する。第1ステージ220は、全ての粒子のn-DEP領域で動作する集合ユニットである。集合ステージ220は電極222の側部アレイを2つ有する。これらのアレイのギャップ幅は徐々に減少し、ほとんどのナノ構造のクロスオーバー周波数よりも高い周波数が印加される。ギャップ224の開口部が減少することで、連続流中の実質的にすべてのナノ構造は、チャネル中央部のたとえば約10μm幅未満の領域に集められる。集められたナノ構造は、1つの1次元列キューを生成し、かつ下流にて個別に取得されて良い。第2ユニット230は3つのDEPシーケンサを有する。各シーケンサは、上部基板に設けられた斜め電極と底部基板に設けられたミラーイメージ電極(図示されていない)からなる。電極対間のギャップは高電場を維持する。この高電場は、n-DEPナノ構造をはねつけてp-DEPナノ構造の通過を可能にすることでこれらのナノ構造の分離を実現することを可能にする。n-DEPナノ構造は、斜め電極対に沿って移動し、続いてp-DEPナノ構造から、各異なる流線234a-dに位置する次のシーケンサへ解放される。従ってナノ構造は、分類ユニット230の後に続く4つの取り得る流線234a-dを占めることができる。前記4つの取り得る流線とは、元の集束した流線と、3つのシーケンサの先端部を通過する流線である。これらの流線234a-dは4つの異なるチャネル236へ供給されて良い。図2の例に示された集合ユニット220の解像度が与えられると、3つの分類チャネルだけが高処理能力動作条件で用いられる。各異なるゲートで各異なる周波数を用いることによって、3つの異なるナノ構造を3つの別なチャネルに分類することができる。最終ステージでは、3Dトラップ240が各チャネル内で全てのナノ構造を捕獲するように作製される一方で、溶液は外部からの流体力学的抵抗を受けることなくギャップを流れる。
【0027】
大規模な並列化又は直列化が行われるとき、この連続流チップ200は、顕著な流体力学的抵抗を導入する分子のふるいすなわちマイクロフィルタを用いることなく高処理能力を有するラベル不要の分類を可能にする。ある特定のナノ構造に対して固有な周波数を用いることによって、集積されたシーケンサ232及びトラップ240は、ナノサイズの分子のふるいよりもはるかに高い選択性を供する。トラップ電極でのインピーダンス測定によって、捕獲されるナノ構造の数を推定することが可能である。ナノ構造のキューの典型的な捕獲は図3に表されている。この例では、毎秒約100個の粒子を2種類に分離する場合であれば、ほぼ80%の分離効率を実現することが可能である。従って2つ又は3つのモジュールを直列に用いればほぼ99%の純度を実現することができる。
【0028】
抗原が結合したナノ構造(すなわち遺伝子とのハイブリダイゼーションが行われたナノ構造)を未結合のナノ構造から分類することによって、上のユニットは、光センシング又は蛍光ラベリングを用いることなく(又はそれに加えて)、様々なナノ構造による連続流で多標的検出を行う単純な手段を供する。結合したナノ構造は、未結合のナノ構造とは、顕著に異なるDEP移動度及び/又はクロスオーバー周波数を有する。DEP移動度はサイズに敏感で、小さなナノ構造ほどDNA標的の分子固定に対してより敏感になるとはいえ、たとえばナノ構造は小さすぎてはいけないし、さもなければ移動度は重要でなくなってしまう。最適なサイズは約50〜500nmであって良い。このサイズはたとえば、DEP速度を約100μm/sにすることが可能である。DEP移動度はサイズに敏感であるため、結合した分子と同一の寸法を有するナノ構造は異なるDEP移動度を有していなければならない。またDNAは伝導性分子で、これらの結合は、小さなナノ粒子の粒子伝導度を、緩衝溶液の伝導度に対して顕著に増大させることができる。たとえば図4は、それぞれ異なるサイズのナノ構造についてのクロスオーバー周波数の差異は不均衡を増大させる。たとえばサイズ比が約6である2つのナノ構造のクロスオーバー周波数の違いは、約1mS/m未満の伝導度では、約5倍にすぎない。伝導度が高い場合では、2つのナノ構造間のクロスオーバー周波数は約2桁異なると考えられる。
【0029】
図5は、ナノ構造の極の典型的な帯電を図示している。その極、ではるかな高蛍光強度によって明らかとなるように、帯電蛍光色素は、各半サイクルで対向する極に集まり、かつその濃度を(たとえば約6桁だけ)増大させる。電気二重層が一定電位であること、接線方向のマイグレーション、及び極に集中する機構は、ナノ構造の一の極に負に帯電したDNAを集中させることができる。これらの結合したナノ構造は、順次その極で後続の伝導性分極を変化させ、かつそのナノ構造のクロスオーバー周波数に影響を及ぼす。よってハイブリダイゼーションが起こったナノ構造懸濁物もハイブリダイゼーションが起こらないナノ構造懸濁物も同一周波数で様々なパターンを示す(図1A-F参照)。よって結合したナノ構造と未結合のナノ構造の間ではクロスオーバー周波数に差異が存在し、かつDEPプラットフォーム200はセンサを必要とすることなくこれら2つのナノ構造を実効的に分類することができる。
【0030】
それに加えて、本明細書で詳述するように、ナノ構造の形状及び材料、緩衝溶液の誘電率、伝導度、及びイオン価数、並びにナノ構造-ナノ構造相互作用のすべてが、そのナノ構造のDEP挙動に影響を及ぼし、かつ分類にも影響を及ぼす。図示された例では、プローブ232の長さは、クロスオーバーが起こる周波数に影響を及ぼす。ナノ構造の中には、たとえばCNTや細長いナノワイヤのように、(細長い形状による電場集束に起因して)はるかにDEP移動度が大きく、分子捕獲の選択性がより高く、色素吸着が無視できる程度であり、そのため一部の典型的なDEPプラットフォームにとって好ましいナノ構造となるものがある。それに加えて、CNT及び細長いナノワイヤもまた相対的にバーコードを付すのが容易である。事実、CNTはナノ球よりもはるかにすぐバクテリアと結合し、結合したCNTは実際に凝集体のDEPを促進し、かつ標的-たとえば病原体-のDEP輸送体となる。
【0031】
それに加えて、たとえば両性イオン、イオン液体、及び他の添加物が媒質の誘電率や伝導度を変化させる状況では、緩衝溶液の調製が行われる必要がある。
【0032】
図6は、患者、環境、又は他のものに含まれるバクテリア、ウイルス、及び他の有害種を検出することで、たとえば流行病、テロリズム、生物兵器等を監視する、従来のDNAマイクロアレイ又はリアルタイムPCRの能力を超えた、迅速に標的を検出するデバイス600の別な例のブロック図を示している。典型的な迅速に標的を検出するデバイス600は、ストレプトアビジン/アビジンとビオチンの選択的で強い結合特性を利用する修正PCR法に基づく検出法、及び、先の細いマイクロ流体製造法を有する。ストレプトアビジンは、最近である放線菌(Streptmyces avidinii)から精製された四量体タンパク質である。ビタミンH又はB7としても知られているビオチン(C10H16N2O3S)は水溶性のビタミンB複合体である。ストレプトアビジンはビオチンに対して極度に強い親和力を有する。ビオチン-ストレプトアビジン複合体の解離定数は約10-15mol/Lのオーダーであり、このオーダーは既知の非共有相互作用であって最も強いものの1つに属する。よって本明細書で記載されているように、強いストレプトアビジン-ビオチン結合が、様々な生体分子を互いに付着させる、又は様々な生体分子の検出を助ける固体の支持体(たとえばナノ構造)上に付着させるのに用いられて良い。
【0033】
PCRプロトコル中、2つの異なるラベルが付されたプライマー-一のプライマーはビオチニル化された602で、他のプライマーは蛍光ラベルが付された604である-が、試料/標的DNA608を備えたPCRチャンバ606に加えられ、かつ、関心対象である標的DNAを増幅して、試料中の単一ストランドDNA(ssDNA)の量を増やすのに用いられる。よって増幅された標的DNA610は、二重螺旋DNA(dsDNA)の一端を介してビオチン基に付着し、かつdsDNAの他端を介して蛍光ラベルが付された色素に付着する。
【0034】
ストレプトアビジン/アビジンは、デバイス/チップチャネル上で、又は、該チップ内に含まれるナノ/マイクロビーズ、磁性ナノ粒子、カーボンナノチューブ、ナノワイヤ、ナノロッド、及び/若しくは他のナノ構造(本明細書の他の例で示されている)上で官能基化する。PCR生成物の迅速な検出を実現するため、続いて、たとえばその増幅されたDNA610を、マイクロ流体チップ614内のチャネル612内部で捕獲されたストレプトアビジン/アビジンによって官能化されたナノ構造に通過させることで、増幅されたsdDNAは、ストレプトアビジン/アビジンによって官能化されたナノ構造に曝露され、ビオチンとストレプトアビジンとの間、又はビオチンとアビジンとの間で強い相互作用が生じる。チャネル612内部の捕獲されたナノ構造にビオチン化された増幅DNA610を通過させることによって、拡散長は減少し、かつナノ構造の表面に付着したストレプトアビジンとの迅速な相互作用が可能となる。蛍光ラベルが付されたビオチン化されたdsDNAだけが、ナノ構造の表面に対して選択的、迅速、かつ強固に付着する。
【0035】
強い結合のため、相互作用の反応速度は極端に速く、かつナノ構造プラットフォームは輸送時間を顕著に減少させる。しかもナノ構造を用いることで、ビオチンとストレプトアビジン/アビジン部分とが相互作用する面積が大きくなり、その結果検出感度が改善される。ビオチン-ストレプトアビジン/アビジン結合は、オリゴ-DNA二重ストランド生成よりも選択的であり、かつ大きな試料に対してより安定で正確なアッセイ法を可能にする。それに加えて、強いハイブリダイゼーションは、流速の速い大規模処理能力を有するチップにおいて特に有利となる。このチップでは、流体力学的剪断力は通常、弱く結合するハイブリダイゼーションしたDNAを取り去る。さらに結合が強くて選択的であるため、ハイブリダイゼーション手順に続いて、すぐに洗浄用緩衝溶液を用いて全ての付着していない蛍光色素分子608を取り除くことができる。
【0036】
最終的に、ナノ構造の蛍光強度を測定することによって検出が実現可能となる。それに加えて、官能化されたカーボンナノ構造-高いコンダクタンスを有する-もまた、本明細書で述べられているように、光センサを用いることなく増幅された生成物を迅速に検出するインピーダンス測定を助ける。
【0037】
図7-11は、単一標的の遺伝子識別用のナノ構造に基づくハイブリダイゼーションプラットフォームの別な例を図示している。図7は、マイクロ流体チャネル700の一部を図示している。図示された例においては、マイクロ流体チャネル700は、プローブによって官能化されたシリカビーズとして図示されているが、任意の適切なナノ構造が用いられて良い。プローブによって官能化されたナノ構造(たとえばシリカビーズ)は、たとえばハイブリダイゼーション緩衝溶液である4倍濃縮の標準クエン酸-生理食塩水(SSC)である緩衝溶液を適切に通すことによって捕獲及び密封される。ナノ構造704の密封に成功した後、たとえば容積が100μlのビオチン化したssDNA706は、ナノ構造(たとえばシリカ)表面上で官能基化した相補的オリゴマーとのハイブリダイゼーションを行うため、たとえば約50℃の温度にて、たとえば約0.5ml/hの流速で密封されたチャンバ702を通過する。DNA706が密封されたチャンバ702を通過することで、標的DNAとナノ構造704の表面上のオリゴマープローブとの間隔が短くなるので、ハイブリダイゼーション時間が減少する。それに加えてこのナノ構造システムは、ハイブリダイゼーションを起こすため、はるかに大きな面積を供するので、検出感度が改善される。
【0038】
洗浄溶液又は他の液体-たとえば-純水又は蒸留水-は、チャンバ702から、ナノ構造704の表面又はフィルタ(後述)のいずれかに結合したハイブリダイゼーションしていないすなわち非選択的DNAを洗浄するために加えられる。よって強いストレプトアビジン-ビオチン結合反応の利点が得られる。続いて余剰色素708は、たとえば燐酸緩衝された生理食塩水(PBS)の緩衝溶液によってチャネルから洗い流され、蛍光710のパターン及び/又は強度が測定及び/又は観測される。チャネル700にDNA706を通過させることが検出の開始点だとすると、後述するように、検出時間はこの例では約2〜3時間であって良く、かつ検出感度は、約100pM-nMの範囲である。
【0039】
本明細書に記載された典型的なナノ構造に基づく検出手法は複数の要素を有する。前記複数の要素とはたとえば、(i)ガラススライド800上にマイクロチャネル700を作製すること(図8)、(ii)メタクリラートフォトポリマーの混合物を用いることによってマイクロチャネル700内部にフィルタを作製すること(図9)、(iii)ナノ構造-たとえばシリカビーズ-上へのオリゴマープローブの官能化(図10)、(iv)非対称PCRを行うことで、最終的には、デバイス/チップ内部の密封されたナノ構造マイクロチャネルに標的DNA溶液を通過させることによってハイブリダイゼーションを成功させる(図7)。上述したように、ナノ構造上での標的のハイブリダイゼーションは、たとえばAC電流によって生成される電場の存在によって促進することができる。電場の存在によって、ハイブリダイゼーションに必要な時間が顕著に短縮される。一部の例では、検出標的がナノ構造に導入されることで、ハイブリダイゼーションを1秒以内デ起こすことが可能となる。ハイブリダイゼーション時間を短縮することは、高処理能力の小型デバイスにとって有利である。
【0040】
図8は、ガラススライド800上にマイクロチャネル700を作製する様子を図示している。チャネル700の流入及び流出ポート802の穴が開けられる。マスクレイアウト804はガラススライド800と結合し、スペーサタップ806はカバースリップ808と結合する。カバースリップ808には、UV硬化可能な接着剤-たとえばロックタイト(Loctite)(登録商標)363接着剤-が素子を結合するために加えられる。その接着剤は、たとえばUVエネルギーによって約5秒間ベーキングされて良い。続いてチャネル700はアセトンやメタノールのような溶媒によって洗浄されて、たとえば2分30秒間最終UVベーキングが行われて良い。
【0041】
フィルタ900の作製(図9)が、トルエンとイソブタノール(ポロジェン)の混合物と共にメタクリラートフォトポリマー(モノマー)を用いることによって、マイクロチャネル700内部で行われる。モノマーとポロジェンの比を変化させることによって、フィルタ900の孔の直径を操作することができる。例によっては、孔のサイズが約2μmであるフィルタが、約10μmのサイズのナノ構造と併用される。それに加えて、マスクもまた結合され、その結合はたとえば約1分間のUV照射に基づく。ベーキング後、マスクは取り外され、かつチャネル700はたとえば約2時間メタノールによって洗浄される。一貫したUVベーキング-つまり硬化重合プロセス-は、マイクロチャネル700の作製プロセス及びマイクロフィルタ900の作製プロセスの両方で用いられることで、フィルタ900とマイクロチャネル700との強い結合が可能となる。
【0042】
この例では、ナノ構造の官能化、PCRの設計、及びハイブリダイゼーションの検出は、上述の例の一部又は全部を用いることによって可能となる。より詳細にはこの例では、アミン共役である27-merのオリゴプローブが、水溶性カルボジイミド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシイミド(NHS)と結合させることによって、ナノ構造(たとえばカルボキシル化シリカビーズ)に対して官能基化する。この結合例は図10に図示されている。
【0043】
一部の例では、ナノ構造に基づくハイブリダイゼーションプラットフォームを単純にするため、及び標的DNAの変性を回避するため、変性ssDNAが、マイクロチャネル内部で捕獲された、プローブによって官能化したナノ構造に到達して相互作用する前に、変性ssDNAは共に再結合することで、単一ストランドDNAを生成するように非対称PCRが行われる。この方法では、(たとえば通常の対称PCRとは対照的に)複数のプライマーの濃度が等しくないことが利用される。最初、増幅が指数関数的に始まるが、低濃度のプリマーが排出されることで、高濃度のプライマーが増幅し続けることで、単一ストランドDNAを生成する。
【0044】
この例では、チャネル702にナノ構造704を加える前に、たとえば2%の牛血清アルブミン(BSA)溶液のような溶液がマイクロチャネル700を通過することで、フィルタ900及びチャネル700表面への標的DNA及び蛍光色素708の非選択的結合を防止することができる。
【0045】
図11は、一体型の小型PCR検出チップ800のより詳細な図である。フィルタ900が、チップ800の上部に設けられたチャネル700内に図示されている。図7-11に図示された例はたとえば30分間で単一標的検出を実行して良い。このときほとんどの時間がPCRサイクルに用いられる。図11から分かるように、捕獲されたナノ構造706からの蛍光信号は、共焦点設備を用いることなく、小型のデジタルカメラによって容易に拾うことができる。この使い捨てチップ800は、ダイオードセンサのみならず、オンチップのポンプ及びバルブをも含む。よってチップ800は内蔵型小型遺伝子識別デバイス/キットである。
【0046】
検出に関しては、オリゴによって官能化されたナノ構造の単位体積あたりの表面積が大きいため、ミリメータ寸法の微小容器が、ピコモーラーの感度で、立方センチメートルの容積の試料中に含まれる全標的DNAを捕獲することが可能である。しかしすべての蛍光分子はμl容積内部に集まるので、蛍光強度は極端に高くなる。参照用として、DNAマイクロアレイ(たとえば図15-17)上の単一画素は10-2cm2の面積を有し、かつμlのマイクロビーズ(体積比50%)中の面積は4桁大きくなる。このとき蛍光強度は比例して大きくなる。この改善によって、レーザー励起及び共焦点検出を取り外すことが可能となる。ここで図示されているように、デジタルカメラ、ダイオードセンサ、又はCCDカメラに備えられた単純な光フィルタが、陽性と陰性の識別にとって適切であると考えられる。迅速で小型の陽性-陰性診断は、予備スクリーニング手順として、多くの重要な診察現場で利用するという用途を有する。そのような用途とはたとえば、空港での流行病の制御、鶏肉輸入の際の鳥インフルエンザの監視、環境モニタリング等である。
【0047】
図12-19は、一体化したPCR/検出ユニットを備えた多標的DNA検出ユニットとして利用可能な他の典型的な実施例を図示している。図12-19に図示された例は、さらに高い処理能力を備えた連続流形式へも拡張可能である。
【0048】
図示された例は、インピーダンス検出又は可視化のいずれかを用いることによる、ナノ構造上でのハイブリダイゼーションの検出及び測定である。上述したようにナノ構造には、インピーダンス信号がハイブリダイゼーション前後で非常に敏感であるCNTが含まれる。上述するように、いずれの検出法も、ナノ構造技術のハイブリダイゼーションの迅速性及び感度、並びに、ハイブリダイゼーションによるナノ構造の伝導度、サイズ、誘起された双極子及び誘電泳動移動度の変化を利用している。
【0049】
図12-19に図示された例では、ハイブリダイゼーションは、上述したように、ストレプトアビジンによって官能化されたナノ構造と、各独立したプライマーと各独立してPCR反応するビオチン化されたssDNAを用いる一般的なものである。この例では、複製すなわちPCRモジュール1200は、取り外し可能なように結合できる管のアレイボックスを有する。そのアレイボックスは複数の検出用ガラス瓶すなわち管1204を有する。検出用ガラス瓶すなわち管1204の1つが図13で詳細に図示されている。シリンジすなわちポンプ1206は、注入孔1208を介して検出用標的を含む試料をPCRモジュール1200へ供給するのに用いられて良い。試料はPCRモジュール1200へ注入されて容器1210へ入り込む。それに加えて、PCRモジュール1200は、温度をたとえば約50-90℃に維持するための熱源を供する加熱素子(図示されていない)を有する。
【0050】
図13及び14に図示されているように、容器1210内の検出標的1212は、少なくとも第1電極又は第1対の電極1216に結合する第1膜1214に束縛される。第1膜1214は、ナノ多孔性であるか又はヒドロゲルで、かつ透水性であるが、他の分子は通さない。つまり検出標的は膜1214を通過することができない。特に検出用ガラス瓶が気泡を逃がすのには小さすぎる場合には、膜1214は透水性でなければならない。膜1214に用いられる材料の一例はナフィオン(Nafion)(登録商標)である。しかし半径1mmよりも大きな管1204では、膜は水の透過が可能でなくても良い。第1電極1216にわたる電場及び/又は電圧は、第1膜1214の機能を弱めることで、検出標的1212の分子を輸送させる少なくとも1つ孔を開く。
【0051】
検出標的1212が第1膜1214を通過した後、検出標的1212は、特定の検出管1204で特定のプライマー/酵素とPCR反応する。各PCRガラス瓶-つまり検出管1204-の単位複製配列は、特定の標的ssDNAが存在する場合には、その特定の標的ssDNAによって支配され、かつ各単位複製配列は各独立した検出ユニットへ供給されるので、識別段階で選択的である必要がない。
【0052】
増幅された検出標的は、少なくとも第2電極又は第2組の電極1220と結合する第2膜1218に束縛される。この機能は、第1膜1214及び(複数の)第1電極1216と同様である。
【0053】
第2電極にわたって電圧が印加された後、第2膜は弱められ、かつ検出標的1212はPCR層からハイブリダイゼーション及び検出層へ通り抜ける。ここで検出標的1212は、上述したように、ストレプトアビジンによって官能化したナノ構造を用いることによってハイブリダイゼーションを起こすことで、結合した分子プローブすなわち結合したナノ構造1222が生成される。この反応はたとえば略室温で起こる。
【0054】
ハイブリダイゼーション後、結合した分子プローブ1222はインピーダンス検出器1224に束縛される(図13及び15)。本明細書に記載されているように、インピーダンス検出器1224で測定されるインピーダンスの値は、検出標的1212の存在又は不存在を表す。図16は、図13及び15に図示されたインピーダンス検出器1224の一部の拡大図である。微小電極グリッド1228は複数の画素1230を有する。複数の画素1230のうちの1つを拡大したものが図17に図示されている。画素1230はアドレス指定可能であり、かつある実施例では同時にアドレス指定することが可能であり、他の実施例では同時にアドレス指定することができない。各画素1230は、2つの1次元アレイ1234の交差点に誘電スペーサ1232を有する。誘電スペーサ1232は、2つの1次元アレイ1234の交差点に高電場を発生させることを可能にする。上述したように、その電場は結合したナノ構造1226の運動を操作することが可能である。結合したナノ構造1226は、可視化又はインピーダンスの読み取りを行うため、集まるように移動する。
【0055】
図18は典型的な可視化検出ユニット1800を図示している。典型的な可視化検出ユニット1800では、カメラ1802は、1つ以上の電極グリッド1228の光学的に透明なカバーレンズ又はカバースリップ1804を介して像を取得する。グリッド1228の像は、複数の結合したナノ構造1226が集まるか否かを表している。図19は典型的な像1900を表している。典型的な像1900は、結合したナノ構造1226が集まる密な領域1902、及び結合したナノ構造1226が集まらない疎な領域1904を表している。
【0056】
あるいはその代わりに、図20-21に図示された例では、標的ssDNAと、ナノ構造上で官能化する相補的オリゴとのハイブリダイゼーションは標的に固有であって良い。この代替例では、典型的な代替複製ユニットすなわちPCRユニット2000内でPCRが実行される。PCRユニット2000は、すべての可能な標的ssDNAが増幅された検出標的2002を生成するためのすべてのプライマーを有する容器を有する。よって容器は、試料中に含まれる全種類の標的についての全種類の単位複製配列の集合体を含む。マイクロポンプ/マイクロバルブ2004は、増幅された検出標的2002を有する試料を、複数の各独立した検出管又はガラス瓶2008を有するハイブリダイゼーション/検出ユニット2006へ輸送する。複数の各独立した検出管又はガラス瓶2008の1つを拡大したものが図21に図示されている。一部の例では、マイクロバルブ1604は一度だけ開きさえすればよい。PCR単位増幅配列の集合体は各独立したガラス瓶2008の全てに送られる。各独立したガラス瓶2008の各々は特定のオリゴによって官能化されたナノ構造を含む。一部の例では、上述したように、検出標的2002は、電極にわたる電場又は電圧の存在によって膜が開いている状態で、ハイブリダイゼーション層内のナノ構造から分離される。一旦検出標的2002がハイブリダイゼーション層へ入り込むと、上述したようにハイブリダイゼーションが起こる。この例ではハイブリダイゼーションは約70℃で起こる。
【0057】
検出標的2002とナノ構造とのハイブリダイゼーションが起こることで結合プローブすなわち結合したナノ構造2010が生成された後、結合したナノ構造2010はインピーダンス検出器2012に束縛されることが可能である。インピーダンス検出器2012は、上述したように、インピーダンス検出器1124と同様に、検出標的2002の存在又は不存在を検出する。それに加えて、像検出器1800もまた、この例では、検出標的2002の存在又は不存在を検出するのに用いられて良い。
【0058】
本明細書に記載された典型的な診断デバイス/検出ユニットによって多くの利点が実現される。たとえば本明細書に記載された例は、病原体の診断を、より迅速、選択的、高感度、かつ現場で行えるようにする。患者の製造率を顕著に向上させる利点は多数ある。そのような多数の利点にはたとえば、早期かつ迅速な癌の検出、又は深刻な感染-たとえば敗血症-の迅速かつ病原体に固有な診断が含まれる。速度と選択性に加えて、本明細書に記載された典型的なデバイス及び方法は、現場での使用を可能にする高い携帯性を有する。このことは、現場での使用-たとえば流行病の制御-及び世界の健康を脅かす恐れのある多種類の感染症の病原菌の識別にとって特に有用となりうる。感染症の病原菌にはたとえば、鳥インフルエンザ、SARS、溶血性尿素症症候群及び出血性下痢(大腸菌O157:H7)、結核(ヒト型結核菌)、炭疽病(炭疽菌)、肺炎(肺炎球菌)、マラリア(変形体)、肝炎(肝炎A、B、C、D、及びEウイルス)、及び出血熱(エボラウイルス)が含まれる。本明細書に記載された典型的なデバイス及び方法は、食物及び水資源中の大腸菌の検出、並びに、抗生物質に対して耐性を有する再発生する病原体の識別にも用いられて良い。そのような病原体とはたとえば、たとえば第3正解諸国における肝炎球菌、腸球菌、ブドウ球菌、熱帯マラリア変形体、及びヒト型結核菌又はマラリアバクテリアである。コンシューマ向け診断デバイス/キットでは、典型的な小型デバイスの試料と接する部品は使い捨てであって良い。それに加えて、典型的なデバイスは高い感度を有する。このことは、たとえばバイオテロや環境の用途で直面する少数の標的を含む病原体の検出にとって有用である。
【0059】
本明細書に記載された実施例は、ラボ・オン・チップのマイクロ流体プラットフォームである。そのラボ・オン・チップのマイクロ流体プラットフォームは、人間による介入なしに、単一チップ内において、一のステーションから次のステーションへ、各独立した試料又は連続流を移動させることによって、高処理能力の連続流を可能にする。それに加えて、デバイスの選択性が改善される。その理由は上述したように、所望の標的(たとえば特定DNA断片)は、マイクロ流体手段及びDEPによってプローブ付近に集中するからである。
【0060】
それに加えて、上述したAC動電的プラットフォームは、携帯電話に用いられているような小型の電源によって駆動させることが可能であるため、極端に小型である。高周波(たとえば約100kHzよりも高い周波数)AC電場は典型的には、それぞれの電圧のファラデー反応時間よりも短い周期を有し、かつその結果として、気泡及びイオン性物質の正味の発生が電極では起こらない。そのようなものとして、より厳密な流体制御を可能にするため、電極は典型的なデバイス内部に埋め込まれて良い。
【0061】
さらに本明細書に記載された実施例に係る主要な利点の1つは、多標的診断に典型的なデバイスを用いることが可能なことである。たとえ1つの標的(たとえば1つの病原体)だけを検出する場合でも、大抵の場合、そのゲノムから得られる多数のDNA標的を正確に識別することが求められる。
【0062】
それに加えて、寸法が小さく、多数存在し、かつ体積に対する表面積の割合が大きなサブミクロンナノ構造の表面上に分子プローブを官能化させることで、検出感度が増大する。たとえば1%のナノ構造(たとえばミクロンサイズのコロイド)の懸濁物の100μl試料は、全表面積である1cm2に10億のナノ構造を含む。従来のDNAマイクロアレイの画素面積1mm2と比較して、これらのナノ構造は、8桁よりも大きな捕獲面積、及び同程度に増大する感度を供する。さらに同じ試料では、ナノ構造間での平均間隔は、試料の1次元の寸法よりも3桁小さい。存在する検出標的数が少ない場合、この結果、拡散時間は最大で6桁短縮される。このことは、対流によって促進される質量移行速度よりもはるかに大きい。
【0063】
このナノ構造プラットフォームには他にも潜在的な利点が存在する。これらのナノ構造がマイクロチャネル内部で集められ、かつ分散される場合、これらのナノ構造は、マイクロCSTR、マイクロクロマトグラフ、及びマイクロ栓流反応装置を形成して良く、よってこれらの反応装置設計の利点をもたらす。その利点とは、オープンフローのCSTRでの熱力学的歩留まりよりも良好な歩留まり、並列結合反応の選択性を改善するための間隔、及び不可逆反応の歩留まりを改善するための低分散である。
【0064】
それに加えて、PCR法がストレプトアビジン/アビジンとビオチンの強い相互作用と組み合わせられるこれらの例では、検出標的種の遺伝子識別は、より単純、迅速、確か、かつ高感度になる。本明細書に記載された実施例は、感度を向上させながら応答時間を顕著に短縮させる。よって本明細書に記載された小型PCRチップ又は他のデバイスは現場で利用できる。本明細書に記載された実施例ではまた、実験室での熟練した技術及び実験室設備を必要とする蛍光検出の、攪拌、洗浄、及び清浄化の多段階手順が不要となる。それに加えて、本明細書に記載された実施例及び方法では、検出を支援するための実験室に備え付けられた共焦点設備、及び時スケールのハイブリダイゼーション時間が不要となる。また光フィルタ及びシリコンフォトダイオードと結合する発光ダイオード(LED)は、光検出プラットフォームをさらに改善及び小型化するのに用いられて良い。
【0065】
さらに本明細書に記載された典型的なマイクロチャネル及びナノ構造の形状は、従来のマイクロ流体設計が直面する感度及び携帯性の制限を緩和する。マイクロチャネル内部での体積に対する表面積の比が大きくなることで、プローブがチャネル壁の官能基となることが可能となる。これによりわずかな濃度で存在する標的を捕獲する確率が増大するので、各対応するアッセイ法の感度が改善される。感染症の病原体を検出する典型的なデバイスの能力は、病原体が引き起こす病気の発生に応じて迅速かつ有効に設置することが可能なことである。操作者-たとえば臨床微生物学者、看護師、又は他の技師-は、試料(臨床用試料、食物試料、環境試料等)中に病原体が存在するか否かを判断することが可能である。そして存在する場合には、病原体の種類及び量を特定する。特定される病原体は数個(5個未満)〜数百個であって良い。各種類の個数は数桁のオーダー-たとえばmlの試料中における数個〜数百個のコロニー形成単位(CFU)-で変化して良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の標的を検出する方法であって:
第1標的を含む試料をマイクロ流体デバイス内部に設ける手順;
複数の前記第1標的のコピーと複数のナノ構造とのハイブリダイゼーションを起こす手順;
前記複数のナノ構造に電流を印加する手順;
前記電流によって発生する電場を用いて前記複数のナノ構造を移動させる手順;
前記複数のナノ構造は分類する手順;及び
前記の分類された複数のナノ構造を評価することで、前記第1標的の存在、不存在、又は量のうちの少なくとも1つを決定する手順;
を有する方法。
【請求項2】
前記電流は誘電泳動を介して加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧力の増大によって妨害されない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記の複数の第1標的のコピーがポリメラーゼ鎖反応を介して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電場が、第1電流で第1周波数を有し、かつ第2電流で第2周波数を有し、
前記複数のナノ構造のうちの少なくとも1つが、前記第1周波数では第1方向に移動し、かつ前記第2周波数では第2方向に移動する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のナノ構造が前記電場の周波数に依存するパターンを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1標的の存在又は不存在が、病原体、ガン細胞、生物学的小胞、ペプチド、DNA、RNA、若しくは非DNA分子の存在又は不存在を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロ流体デバイス上の様々な地点で複数の電流を印加する手順をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の電流が前記マイクロ流体デバイスにわたって不均一な電場を発生させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のナノ構造が、カーボンナノチューブ、ナノビーズ、ナノワイヤ、ナノコロイド、ナノ粒子、ナノロッド、量子ドット、ナノ結晶、リポゾーム、シリカビーズ、ラテックスビーズ、金コロイド、及び/又は1μm未満の寸法を有する他の形状を備えた構造のうちの1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のナノ構造上で1つ以上の分子プローブを官能化させる手順をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の分子プローブが、オリゴマー、蛍光プローブ、カルボキシル基、又はストレプトアビジンのうちの1つ以上を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料を前処理する手順をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記前処理は抑制物質のフィルタリング及び/又は除去を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記の分類された複数のナノ構造を評価する手順が、インピーダンス値の決定、パターンの観測、又は蛍光の検出のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記分類手順前に前記複数のナノ構造を集める手順をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記試料中に含まれる第2標的を検出する手順;
複数の前記第2標的のコピーと複数のナノ構造とのハイブリダイゼーションを起こす手順;及び
前記の分類された複数のナノ構造を評価することで、前記第2標的の存在、不存在、又は量のうちの少なくとも1つを決定する手順;
を有する請求項1に記載の方法であって、
前記の複数のナノ構造に電流を印加することで、前記第1標的とハイブリダイゼーションを起こす前記複数のナノ構造が第1方向に移動し、前記第2標的とハイブリダイゼーションを起こす前記複数のナノ構造が第2方向に移動し、かつ
前記第1標的及び第2標的が、前記第1又は第2方向に基づいて分類される、
方法。
【請求項18】
第1標的の試料をマイクロ流体デバイス内部に設ける際に前記第1標的の試料が通り抜ける流入口;
複数の前記第1標的のコピーと複数のナノ構造とを結合させるハイブリダイゼーションチャンバ;
前記ナノ構造を集める集合装置;
前記ナノ構造を分類する分類装置;及び
前記の分類されたナノ構造を収集するトラップ;
を有する標的検出ユニット。
【請求項19】
前記集合装置が、前記複数のナノ構造に電場を印加することで前記第1標的のコピーの位置合わせを行う1つ以上の電極を有する、請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項20】
前記分類装置が、前記複数のナノ構造に電場を印加することで前記第1標的のコピーを第1方向に移動させる1つ以上の電極を有する、請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項21】
前記集合装置及び/又は前記分類装置が誘電泳動を利用する、請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項22】
前記複数の第1標的のコピーを生成する複製チャンバをさらに有する、請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項23】
前記複製チャンバがポリメラーゼ鎖反応を利用する、請求項22に記載の標的検出ユニット。
【請求項24】
前記集合装置及び/又は前記分類装置が電流を印加して電場を生成し、
前記電場が、第1電流で第1周波数を有し、かつ第2電流で第2周波数を有し、
前記複数のナノ構造のうちの少なくとも1つが、前記第1周波数では第1方向に移動し、かつ前記第2周波数では第2方向に移動する、
請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項25】
前記複数のナノ構造が前記電場の周波数に依存するパターンを形成する、請求項24に記載の標的検出ユニット。
【請求項26】
前記マイクロ流体デバイス上の様々な地点で複数の電流を印加する1つ以上の電極をさらに有する、請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項27】
前記複数の電流が前記マイクロ流体デバイスにわたって不均一な電場を発生させる、請求項26に記載の標的検出ユニット。
【請求項28】
前記複数のナノ構造が、カーボンナノチューブ、ナノビーズ、ナノワイヤ、ナノコロイド、ナノ粒子、ナノロッド、量子ドット、ナノ結晶、リポゾーム、シリカビーズ、ラテックスビーズ、金コロイド、及び/又は1μm未満の寸法を有する他の形状を備えた構造のうちの1つ以上である、請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項29】
1つ以上の分子プローブが前記複数のナノ構造上で官能化する、請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項30】
前記1つ以上の分子プローブが、オリゴマー、蛍光プローブ、カルボキシル基、又はストレプトアビジンのうちの1つ以上を有する、請求項29に記載の標的検出ユニット。
【請求項31】
前記試料を前処理するフィルタをさらに有する、請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項32】
前記トラップが、インピーダンス値の決定、パターンの観測、又は蛍光の検出のうちの1つ以上を有する、請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項33】
前記インピーダンス値、パターン、又は蛍光が、前記第1標的の存在又は不存在を示す、請求項32に記載の標的検出ユニット。
【請求項34】
前記第1標的の存在又は不存在が、病原体、ガン細胞、生物学的小胞、ペプチド、DNA、RNA、若しくは非DNA分子の存在又は不存在を示す、請求項33に記載の標的検出ユニット。
【請求項35】
前記試料中に第2標的が含まれ、
前記ハイブリダイゼーションチャンバが、複数の前記第2標的のコピーを複数のナノ構造と結合させ、かつ
前記分類装置が、前記第1標的とは異なる方向に前記第2標的を移動させる、
請求項18に記載の標的検出ユニット。
【請求項36】
前記分類装置が、前記複数のナノ構造に電場を印加することで、前記第1標的のコピーを第1方向に移動させ、かつ前記第2標的のコピーを第2方向に移動させる、請求項35に記載の標的検出ユニット。
【請求項37】
標的を検出する方法であって:
前記標的を含む試料を取得する手順;
前記試料中に含まれる標的を複製して増幅された混合物を生成する手順;
ナノ構造をチャンバに結合させる手順;
前記ナノ構造を分子プローブで官能化する手順;
前記ナノ構造を通り抜けるように前記増幅された混合物を流すことで前記の増幅された混合物中の標的のハイブリダイゼーションを起こす手順;及び、
前記標的の存在、不存在、又は量のうちの少なくとも1つを検出する手順;
を有する方法。
【請求項38】
前記標的がポリメラーゼ鎖反応によって複製される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリメラーゼ鎖反応が、2つの異なるラベルが付されたプライマーを用いる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記プライマーの一がビオチン化され、かつ
前記プライマーの他は蛍光ラベルが付されたものである、
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノ構造が、化学結合、物理結合、電場からの力、又はフィルタの両面の間に設けることによって、前記チャンバと結合する、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
ストレプトアビジン及び/又はアビジンが前記ナノ構造と結合し、かつ
前記の複製された標的が前記ストレプトアビジン又はアビジンと結合する、
請求項37に記載の方法。
【請求項43】
電場を印加する手順をさらに有する請求項37に記載の方法であって、前記電場の存在によって前記標的のハイブリダイゼーションが促進される、方法。
【請求項44】
前記標的が、インピーダンスの決定、パターンの観測、又は蛍光の検出のうちの1つ以上によって検出される、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
内部で標的が複製されることによって増幅された混合物が生成される複製チャンバ;
ナノ構造をチャンバに結合させる手順;
分子プローブによって官能化されるナノ構造を含むマイクロ流体チャンバ;
前記マイクロ流体チャンバ内に前記ナノ構造を保持するフィルタ;
前記増幅された混合物が前記ナノ構造を通り抜けるように流れることで前記の増幅された混合物中の標的のハイブリダイゼーションが起こるチャネル;及び、
前記標的の存在、不存在、又は量のうちの少なくとも1つを決定する検出器;
を有する標的検出器。
【請求項46】
前記標的がポリメラーゼ鎖反応によって複製される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリメラーゼ鎖反応が、2つの異なるラベルが付されたプライマーを用いる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記プライマーの一がビオチン化され、かつ
前記プライマーの他は蛍光ラベルが付されたものである、
請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ナノ構造が、化学結合、物理結合、電場からの力、又はフィルタの両面の間に設けることによって、前記チャンバと結合する、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
ストレプトアビジン及び/又はアビジンが前記ナノ構造と結合し、かつ
前記の複製された標的が前記ストレプトアビジン又はアビジンと結合する、
請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記検出器が、インピーダンス、パターン、又は蛍光によって前記標的を検出する、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
1つ以上の標的を検出する方法であって:
前記1つ以上の標的を含む試料をマイクロ流体デバイスへ挿入する手順;
前記1つ以上の標的を容器内に保持する手順;
前記1つ以上の標的を複数の検出管へ送り込む手順;
前記1つ以上の標的のハイブリダイゼーションを起こす手順;及び
前記1つ以上の標的の存在、不存在、又は量のうちの少なくとも1つを検出する手順;
を有する方法。
【請求項53】
膜が、前記1つ以上の標的を前記複数の検出管へ送り込むことが可能となるように弱められる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記膜が電圧の印加によって弱められる、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記1つ以上の標的が前記複数の検出管内で複製される、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記1つ以上の標的が特定のプライマーによって複製されることで、前記複数の検出管の各々の中で標的に固有な単位複製配列が生成される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記1つ以上の標的が、ストレプトアビジンによって官能化されたナノ構造とのハイブリダイゼーションを起こす、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記1つ以上の標的が前記容器内で複製される、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記1つ以上の標的が特定ではないプライマーによって複製されることで、前記容器内に複数の標的についての複数種類の単位複製配列の集合物が生成される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記の1つ以上の標的を複数の検出管へ送り込む手順が、前記複数種類の単位複製配列の集合物を前記複数の検出管の各々へ送り込む手順を有する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記複数の検出管が単一種類のオリゴマーによって官能化され、
単一種類の標的に対応する前記複数種類の単位複製配列の集合物のうちの1種類だけが
前記複数の検出管の各々の中でハイブリダイゼーションを起こす、
請求項60に記載の方法。
【請求項62】
電場を印加することで前記標的を微小電極グリッドへ向かって移動させる手順;並びに、
前記グリッドにわたるインピーダンスの測定及び/又は前記グリッドの像の観察によって、前記1つ以上の標的の存在、不存在、又は量を検出する手順;
をさらに有する、請求項52に記載の方法。
【請求項63】
1つ以上の標的を含む試料を受けてマイクロ流体デバイスへ送り込む注入孔;
前記1つ以上の標的を容器内に保持する容器;
前記容器とやり取り可能なように結合する複数の検出管;
前記複数の検出管内に設けられたハイブリダイゼーションチャンバ;及び
前記1つ以上の標的の存在、不存在、又は量のうちの少なくとも1つを検出する検出器;
を有する、複数の標的を検出する標的検出器。
【請求項64】
前記容器と前記複数の検出管の各々との間で結合する膜をさらに有する請求項63に記載の標的検出器であって、
前記膜は、前記1つ以上の標的を前記複数の検出管へ送り込むことが可能となるように弱められる、
標的検出器。
【請求項65】
1つ以上の電極をさらに有する請求項63に記載の標的検出器であって、
前記膜が電圧の印加によって弱められる、
標的検出器。
【請求項66】
前記1つ以上の標的が前記複数の検出管内で複製される、請求項63に記載の標的検出器。
【請求項67】
前記1つ以上の標的が特定のプライマーによって複製されることで、前記複数の検出管の各々の中で標的に固有な単位複製配列が生成される、請求項66に記載の標的検出器。
【請求項68】
前記1つ以上の標的が、ストレプトアビジンによって官能化されたナノ構造とのハイブリダイゼーションを起こす、請求項63に記載の標的検出器。
【請求項69】
前記1つ以上の標的が前記容器内で複製される、請求項63に記載の標的検出器。
【請求項70】
前記1つ以上の標的が特定ではないプライマーによって複製されることで、前記容器内に複数の標的についての複数種類の単位複製配列の集合物が生成される、請求項69に記載の標的検出器。
【請求項71】
前記の1つ以上の標的を複数の検出管へ送り込む手順が、前記複数種類の単位複製配列の集合物を前記複数の検出管の各々へ送り込む手順を有する、請求項70に記載の標的検出器。
【請求項72】
前記複数の検出管が単一種類のオリゴマーによって官能化され、
単一種類の標的に対応する前記複数種類の単位複製配列の集合物のうちの1種類だけが
前記複数の検出管の各々の中でハイブリダイゼーションを起こす、
請求項71に記載の標的検出器。
【請求項73】
前記容器及び前記複数の検出管がマイクロポンプを介して結合する、請求項63に記載の標的検出器。
【請求項74】
電場を印加することで前記標的を微小電極グリッドへ向かって移動させる手段;並びに、
前記グリッドにわたるインピーダンスの測定及び/又は前記グリッドの像の観察によって、前記1つ以上の標的の存在、不存在、又は量を検出する手段;
をさらに有する、請求項63に記載の標的検出器。
【請求項75】
前記グリッドの像を取得するカメラをさらに有する、請求項74に記載の標的検出器。
【請求項76】
前記標的検出器が小型である、請求項63に記載の標的検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−500025(P2011−500025A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528975(P2010−528975)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/079094
【国際公開番号】WO2009/048878
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510099039)ユニヴァーシティー オブ ノートル ダム デュ ラック (4)
【Fターム(参考)】