多管式熱交換器及びこれを用いた熱処理装置
【課題】外管内に複数の内管を簡単に安定配列でき、かつ、熱交換効率を良好に保つ。
【解決手段】一方の熱交換媒体FL1が流れる外管1と、この外管1内に複数設けられ且つ他方の熱交換媒体FL2が流れる内管2とを備えた多管式熱交換器であって、前記内管2が、外管1の中心に沿って延びる中央内管3と、この中央内管3の周囲に複数設けられ且つ夫々波形状に曲折形成される複数の周辺内管4とを有し、前記外管1及び中央内管3に夫々の周辺内管4を接触配置する。また、熱処理部6に多管式熱交換器5を用いた熱処理装置をも対象とする。
【解決手段】一方の熱交換媒体FL1が流れる外管1と、この外管1内に複数設けられ且つ他方の熱交換媒体FL2が流れる内管2とを備えた多管式熱交換器であって、前記内管2が、外管1の中心に沿って延びる中央内管3と、この中央内管3の周囲に複数設けられ且つ夫々波形状に曲折形成される複数の周辺内管4とを有し、前記外管1及び中央内管3に夫々の周辺内管4を接触配置する。また、熱処理部6に多管式熱交換器5を用いた熱処理装置をも対象とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外管内に複数の内管を配置し、外管と内管とに夫々熱交換媒体を流すことで両者間にて熱交換する多管式熱交換器に係り、特に、内管の構造を工夫した多管式熱交換器及びこれを用いた熱処理装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における多管式熱交換器としては例えば特許文献1ないし4に記載のものが挙げられる。
特許文献1,2は、外管内に複数の内管を配置した多管式熱交換器において、熱交換性を向上させるという観点から、内管を波形状に曲折形成したものである。
また、特許文献3は、外管内の複数の内管を波形に曲折形成し、かつ、それらの内管の位相を一致させるようにしたものである。
更に、特許文献4は、外管内に複数の内管をスパイラル状にねじったものである。
【0003】
【特許文献1】特開2006−38286(発明が解決しようとする課題,図3)
【特許文献2】特開昭59−100392(発明の詳細な説明,図6)
【特許文献3】特開2004−108641(発明の実施の形態,図1)
【特許文献4】特開2006−170571(発明を実施するための最良の形態,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した多管式熱交換器にあっては、外管内に複数の内管を配列する際には位置決め治具を用いて内管同士の位置関係を正確に位置決めした状態で、外管内に複数の内管を組み込むことが必要であり、多管式熱交換器の製造工程が面倒になり易い。
本発明の技術的課題は、外管内に複数の内管を簡単に安定配列でき、かつ、熱交換効率を良好に保つことが可能な多管式熱交換器及びこれを用いた熱処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、一方の熱交換媒体が流れる外管と、この外管内に複数設けられ且つ他方の熱交換媒体が流れる内管とを備えた多管式熱交換器であって、前記内管が、
外管の中心に沿って延びる中央内管と、この中央内管の周囲に複数設けられ且つ夫々波形状に曲折形成される複数の周辺内管とを有し、前記外管及び中央内管に夫々の周辺内管を接触配置したことを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る多管式熱交換器において、周辺内管が、夫々円形断面の筒体の一部に長円形断面の扁平部を有し、夫々の扁平部の長手方向端部を隣接しあうように配置することを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る多管式熱交換器において、中央内管が、内側筒体と外側筒体との二重管であり、内側筒体と外側筒体との間に熱交換媒体が通過する媒体流路を形成することを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る多管式熱交換器において、中央内管及び周辺内管は熱交換媒体の通過流量を略等しく設定したものであることを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る多管式熱交換器において、外管が、円形断面の筒体の両端部に開口を有すると共に両端部近傍の筒体の一部に熱交換媒体の入口部及び出口部を有し、内管の端部が、前記外管の両端部に装着される鍔部材の孔から突出配置され、かつ、鍔部材の孔縁に固着されることを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項6に係る発明は、加熱若しくは放熱するための熱処理部を有し、この熱処理部として請求項1ないし5いずれかに係る多管式熱交換器を用いることを特徴とする熱処理装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、波形状の周辺内管の周囲で外管内の熱交換媒体を乱流にすることができ、その分、周辺内管の熱交換媒体と外管内の熱交換媒体との間の熱交換効率を良好に保つことができる。
特に、波形状の周辺内管は外管及び中央内管に接触配置されるため、周辺内管は外管と中央内管との間に位置決めされ、中央内管の周囲に安定的に配列される。このため、多管式熱交換器を製造する際に位置決め治具を用いなくとも、外管内に複数の内管を簡単に配列することができるほか、中央内管の周囲に周辺内管を規則的に配列することができ、その分、熱交換効率を略均一化することができる。
請求項2に係る発明によれば、周辺内管の扁平部が中央内管周囲の周辺内管同士の移動を抑えるため、中央内管の周囲に周辺内管をより安定的に配列することができる。
請求項3に係る発明によれば、中央内管の表面寄りに熱交換媒体を集中させ、外管内の熱交換媒体との熱交換効率を良好に保つことができる。
請求項4に係る発明によれば、各内管における熱交換量を略等しくし、全体の熱交換量を略均一化することができる。
請求項5に係る発明によれば、各内管は孔付き鍔部材を介して接続配管に連通接続されるため、接続配管と各内管との間で熱交換媒体をスムースに流すことができる。
請求項6に係る発明によれば、外管内の複数の内管を簡単に安定配列でき、かつ、熱交換効率を良好に保つことが可能な多管式熱交換器を熱処理部として用いた熱処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用される多管式熱交換器の実施の形態の概要を示す。尚、図1(b)は(a)中B−B線断面図である。
同図において、多管式熱交換器は、一方の熱交換媒体FL1が通過する外管1と、この外管1内に複数設けられ且つ他方の熱交換媒体FL2が通過する内管2とを備えた多管式熱交換器であって、前記内管2が、外管1の中心に沿って延びる中央内管3と、この中央内管3の周囲に複数設けられ且つ夫々波形状に曲折形成される複数の周辺内管4とを有し、前記外管1及び中央内管3に夫々の周辺内管4を接触配置したものである。
【0008】
このような技術的手段において、外管1は少なくとも熱交換媒体FL1の入口部と出口部とを有していればよく、その態様についても、直線状に延びるものに限られるものではなく、全部若しくは一部に曲線部を有していても差し支えない。
また、内管2としては、中央内管3の周囲に波形状の周辺内管4を配置することを要する。ここで、中央内管3は外管1の中心に沿って延びる態様であればよく、外管1が直線状であれば直線状の態様になり、外管1の全部若しくは一部に曲線部を有する態様であればこれに合わせて曲線部を有する態様にすればよい。
但し、中央内管3は外管1の中心に沿って延びる態様であるため、それ自体が波形状に形成されるものではない。仮に、中央内管3が波形状に形成される態様である場合には、中央内管3の周囲に複数の波形状の周辺内管4を配置する際に、周辺内管4が中央内管3の周囲に均等に配置し難く、局部的に偏って配置される懸念があり得る。
【0009】
更に、中央内管3は熱交換媒体が流れるものであれば一重管に限られず、二重管などでもよい。
尚、中央内管3がないと、外管1内に束ねた内管2を収容する際に収容し難く、中央内管3があることで、中央内管3の周囲に波形状の周辺内管4を束ね易いものになっている。
一方、周辺内管4は波形状に曲折形成されたものであることを要する。
ここでいう‘波形状’とは山、谷が繰り返される波状の形になっている様を意味し、その山、谷の程度については適宜選定して差し支えない。
また、周辺内管4は外管1及び中央内管3の両者に接触配置されていればよく、各周辺内管4を安定的に配列するには一つの単位波形状部毎に外管1、中央内管3に交互に接触配置されることが好ましいが、必ずしも全ての単位波形状部が外管1又は中央内管3に接触配置されていなくても差し支えない。
【0010】
また、中央内管3、周辺内管4の好ましい態様としては以下の態様が挙げられる。
例えば中央内管3の熱交換効率を良好に保つという観点からすれば、中央内管3は、内側筒体3aと外側筒体3bとの二重管であり、内側筒体3aと外側筒体3bとの間に熱交換媒体が通過する媒体流路3cを形成する態様が好ましい。
更に、周辺内管4をより安定的に配列するには、周辺内管4は、夫々円形断面の筒体の一部に長円形断面の扁平部を有し、夫々の扁平部の長手方向端部を隣接しあうように配置するのが好ましい。
更にまた、中央内管3と周辺内管4との熱交換媒体FL2の通過流量については異なっていても差し支えないが、全体の熱交換量を略均一化するという観点からすれば、中央内管3及び周辺内管4は熱交換媒体FL2の通過流量を略等しく設定したものが好ましい。
また、外管1に対する内管2の好ましい取付構造としては、外管1は円形断面の筒体の両端部に開口を有すると共に両端部近傍の筒体の一部に熱交換媒体FL1の入口部1a及び出口部1bを有し、内管2の端部は、前記外管1の両端部に装着される鍔部材7の孔(図示せず)から突出配置され、かつ、鍔部材7の孔縁に固着される態様が挙げられる。本態様によれば、外管1内の各内管2は孔付き鍔部材7を介して図示外の接続配管に連通接続される。
【0011】
更に、本実施の形態は多管式熱交換器5に限られるものではなく、これを用いた熱処理装置にも適用することができる。
この種の熱処理装置は、図1(c)に示すように、加熱若しくは放熱するための熱処理部6を有し、この熱処理部6として上述した多管式熱交換器5を用いるようにすればよい。
ここでいう熱処理装置には、多管式熱交換器5を含んで熱処理(加熱処理、放熱処理)を施すものであればよく、加熱装置(例えば暖房装置など)、放熱装置(例えば冷房装置など)が含まれる。尚、蒸発処理などは加熱処理又は放熱処理の結果として生ずるものであり、これらも当然ながら含まれる。
【0012】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
―熱処理装置―
図2は本発明が適用される熱処理装置の実施の形態1を示す。
同図において、熱処理装置は給湯装置に適用されたものであり、加熱のための熱処理部Hに多管式熱交換器20を用い、この多管式熱交換器20の外管21に高温熱交換媒体FL1を循環供給可能な構成とし、更に、前記多管式熱交換器20の内管30には低温熱交換媒体FL2を供給可能な構成としたものである。
図2において、高温熱交換媒体FL1は例えば別の熱交換器で空気により加熱され、例えば図示外のコンプレッサにて加圧して高温にする。
一方、低温熱交換媒体FL2は例えば供給ポンプ25にて供給される低温水であり、多管式熱交換器20の高温熱交換媒体FL1にて加熱された後、給湯タンク26に貯蔵されて風呂などに供給されるものである。
【0013】
―多管式熱交換器―
図3(a)は本実施の形態で用いられる多管式熱交換器20の全体構成を示す。
同図において、多管式熱交換器20は、例えば高温熱交換媒体FL1が流れる外管21と、この外管21内に設けられて例えば低温熱交換媒体FL2が流れる複数の内管30とを有する。
<外管>
本実施の形態において、外管21は、例えば銅、ステンレスなどの直線パイプ材からなる管状筒体211と、この管状筒体211の一端部近傍の周面に連結され且つ高温熱交換媒体FL1の入口部を形成するための例えば銅などのパイプ材からなる入口用連結筒体212と、前記管状筒体211の他端部近傍の周面に連結され且つ高温熱交換媒体FL1の出口部を形成するための例えば銅などのパイプ材からなる出口用連結筒体213とを備えている。尚、本実施の形態では、入口用連結筒体212及び出口用連結筒体213が管状筒体211の同じ周面側に突出配置されているが、これに限られるものではなく、例えば管状筒体211の互いに反対側の周面に突出配置するなど高温熱交換媒体FL1の循環経路を考慮して適宜選定して差し支えない。
【0014】
<内管>
本実施の形態において、内管30は、図4ないし図6に示すように、外管21の中心に沿って延びる例えば銅、ステンレスなどのパイプ材からなる中央内管31と、この中央内管31の周囲に配設される例えば銅、ステンレスなどのパイプ材からなる複数(本例では6本)の周辺内管40とを有する。
ここで、中央内管31は、図5、図6及び図8に示すように、内側筒体32と外側筒体33との二重管であり、内側筒体32と外側筒体33との間に熱交換媒体FL2が通過する媒体流路34を形成したものである。
特に、本実施の形態では、内側筒体32の端部近傍の周面に例えば二つの通孔35が180度偏位して開設されており、この内側筒体32の略中央には内側通路を塞ぐために押し潰し部36が内側通路の真ん中を横切るように形成されている。
また、外側筒体33の両端部には絞り成形部37が設けられており、この絞り成形部37が内側筒体32の端部近傍の周面に密接配置されると共にロー付け等にて固着されている。
尚、内側筒体32の端部には外方に広がる鍔部38が形成されており、後述するフランジ50に対して係止されるようになっている。
【0015】
また、周辺内管40は、図4ないし図6並びに図9に示すように、直線状の円筒体41をプレス加工等にて波形状に曲折形成したものである。
ここでいう‘波形状’は山、谷を繰り返すことで波状になっている様を指すものであり、本実施の形態において、周辺内管40の単位波形状部42は山部42aと谷部42bとの間の間隔dを円筒体41の半径程度以下に設定するようにしたものである。更に、この単位波形状部42の中心に沿ったピッチpも適宜選定して差し支えないが、周辺内管40内の熱交換媒体FL2の流れ、並びに、外管21内の熱交換媒体FL1の流れが損なわれない範囲で適宜選定するようにすればよい。
尚、単位波形状部42の曲率半径Rも前記熱交換媒体FL1,FL2の流れが損なわれない範囲で選定するようにすればよい。
【0016】
更に、各周辺内管40は外管21と中央内管31との間に接触配置されている。本実施の形態では、周辺内管40の単位波形状部42の全てが外管21又は中央内管31に接触配置されており、各周辺内管40は夫々の単位波形状部42が互いに平行になるように配置されている。
更にまた、周辺内管40の円形断面積は中央内管31の媒体流路34の断面積と略同程度に設定されている。
そして更に、周辺内管40の軸方向の適宜箇所、例えば周辺内管40の軸方向長さLの1/3、2/3付近には、図9(a)(b)に示すように、例えば長円形断面の扁平部43がプレス成形されている。夫々の扁平部43のレイアウトは適宜選定して差し支えないが、各周辺内管40の配列位置を正確に保つという観点からすれば、夫々の扁平部43が長手方向端部が相互に隣接しあうように配置されていることが好ましい。尚、この扁平部43は単位波形状部42の範囲に亘って形成されている。
また、この扁平部43の長手方向寸法h、非長手方向寸法k、断面積は適宜調整しても差し支えないが、周辺内管40内の媒体通過量を一定に保つという観点からすれば、周辺内管40の円形断面部分の断面積と略同一に保たれるように夫々の寸法h,kを選定するようにすればよい。
【0017】
更に、本実施の形態において、図4、図5及び図7に示すように、外管21の管状筒体211は両端部が開口しており、この両端部にはフランジ50が嵌合装着されている。
このフランジ50は円形鍔51の周囲に周壁52を形成したものであり、前記円形鍔51には内管30(中央内管31,周辺内管40)の端部が挿入される挿入孔53が開設されている。
この挿入孔53のうち、中央の挿入孔53aは中央内管31の内側筒体32の鍔部38が弾性変形しながら挿入され、挿入後に前記鍔部38が係止されるようになっている。
また、挿入孔53のうち、周辺の複数の挿入孔53bは周辺内管40の端部が挿入される大きさで且つ等間隔に開設されている。
更に、本実施の形態では、このフランジ50にはロート状のキャップ60が被せられ、このキャップ60には図示外の接続配管に接続可能な連結筒体61が挿入結合されている。
そして、フランジ50は外管21の端部に嵌合した後に、内管30(中央内管31,周辺内管40)がフランジ50の挿入孔53に挿入されると、フランジ50と外管21、内管30の端部とフランジ50の挿入孔53縁との間がロー付けされる。
そしてまた、キャップ60もフランジ50に被せられるとロー付けされると共に、連結筒体61もキャップ60に挿入された状態でロー付けされる。
尚、フランジ50、キャップ60、連結筒体61の固定方法としてはロー付けが採用されているが、これに限られるものではなく、他の手法を採用してもよいことは勿論である。
【0018】
―多管式熱交換器の製造方法―
次に、本実施の形態で用いられる多管式熱交換器20の製造方法について説明する。
先ず、図10(a)に示すように、両端部が開口した外管21に内管30(中央内管31,周辺内管40)を束ねて挿入する。
このとき、内管30のうち、周辺内管40は外管21及び中央内管31に接触配置しながら外管21内に挿入されるため、内管30挿入時には複数の周辺内管40は相互に位置決めされながら挿入されることになり、外管21への挿入動作が完了した時点では中央内管31の周囲に略等間隔に配置された状態に至る。
この状態において、図10(b)に示すように、外管21の両端部にフランジ50を嵌合装着すると共に、フランジ50の挿入孔53に内管30(中央内管31,周辺内管40)の端部を挿入し、外管21とフランジ50、並びに、内管30の端部とフランジ50の挿入孔53縁との間をロー付けする。
この段階で、内管30(中央内管31,周辺内管40)は外管21に位置決め固定された状態にある。
しかる後、図10(c)に示すように、フランジ50にキャップ60を被せ、更に、キャップ60に連結筒体61を嵌合させ、夫々の嵌合部をロー付けするようにすればよい。
このように、本実施の形態では、専用の位置決め治具を用いることなく、外管21内に内管30(中央内管31,周辺内管40)を位置決め配列することが可能である。
【0019】
―多管式熱交換器の作動―
図11に示すように、外管21に高温熱交換媒体FL1が流れ、内管30(中央内管31,周辺内管40)に低温熱交換媒体FL2が流れたと仮定する。
この状態において、外管21には高温熱交換媒体FL1がそのまま流れ、一方、内管30のうち、中央内管31には低温熱交換媒体FL2が内側筒体32の端部から通孔35を通じて媒体流路34に沿って流れ、周辺内管40には低温熱交換媒体FL2がそのまま流れることになり、外管21内の高温熱交換媒体FL1と内管30内の低温熱交換媒体FL2との間で熱交換が行われる。
このとき、周辺内管40は波形状に曲折形成されているため、夫々の単位波形状部42の近傍には乱流mが発生し易くなり、この乱流mの影響で周辺内管40内の低温熱交換媒体FL2と外管21の高温熱交換媒体FL1との間の熱交換効率が更に高まる。
また、周辺内管40は中央内管31と外管21とに接触配置された状態で位置決めされることから、中央内管31の周囲に略等間隔で安定的に配列される。このため、各周辺内管40は外管21内の高温熱交換媒体FL1に対して略同じ条件で熱交換することになり、各周辺内管40における熱交換量が略均等になり、その分、外管21内の高温熱交換媒体FL1と内管30、特には周辺内管40内の低温熱交換媒体FL2との熱交換性能が略均一なものになる。
特に、本実施の形態では、各周辺内管40は扁平部43にて移動規制しているため、各周辺内管40の配列関係は更に安定したものになっている。
更にまた、中央内管31は二重管構造の外表面に近い媒体流路34に低温熱交換媒体FL2を流すようにしており、更に、その媒体流路34の通路面積は周辺内管40の流路面積と略等しいものであるため、中央内管31と周辺内管40との間での熱交換性能も略均等になり、外管21内の高温熱交換媒体FL1と内管30(周辺内管40,中央内管31)内の低温熱交換媒体FL2との熱交換性能が全体的に略均一なものになる。
【0020】
◎実施の形態2
図12(a)(b)は実施の形態2で用いられる多管式熱交換器の概要を示すものである。
同図において、多管式熱交換器20の基本的構成は、実施の形態1と同様であるが、中央内管31の構造が実施の形態1と相違する。尚、実施の形態1と同様な要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
つまり、本実施の形態では、中央内管31は、実施の形態1と略同様に、内側筒体32と外側筒体33との二重管構造であり、その内側筒体32の軸方向略中央部には押し潰し部39を有しているが、この押し潰し部39は、実施の形態1の押し潰し部36と異なり、図13(a)(b)に示すように、内側筒体32の半分の壁部を他の半分の壁部に向けて押し潰した態様になっている。
従って、本実施の形態では、実施の形態1と略同様な作用を奏するものである。
特に、本実施の形態では、このような押し潰し部39を採用した場合に、内側筒体32の中央部での径方向への張り出しが実施の形態1よりも少なくできるため、媒体流路34での低温熱交換媒体FL2の流路抵抗をより少なく抑えることが可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明が適用される実施の形態に係る多管式熱交換器の概要を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図、(c)は実施の形態に係る熱処理装置の概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態1に係る熱処理装置の概要を示す説明図である。
【図3】(a)は実施の形態1で用いられる多管式熱交換器を示す一部破断説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
【図4】実施の形態1で用いられる多管式熱交換器の断面説明図である。
【図5】図4の要部拡大説明図である。
【図6】(a)は図4中C−C線断面図、(b)は図4中D−D線断面図である。
【図7】(a)は実施の形態1で用いられる外管の端部構造の一例を示す説明図である。
【図8】(a)は実施の形態1で用いられる中央内管の構成を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図である。である。
【図9】(a)は実施の形態1で用いられる周辺内管の構成を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図である。
【図10】(a)〜(c)は実施の形態1で用いられる多管式熱交換器の製造方法の一例を示す説明図である。
【図11】実施の形態1で用いられる多管式熱交換器の作動を示す説明図である。
【図12】(a)は実施の形態2で用いられる多管式熱交換器の概要を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図である。
【図13】(a)は実施の形態2で用いられる中央内管の構成を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…外管,2…内管,3…中央内管,4…周辺内管,5…多管式熱交換器,6…熱処理部,7…鍔部材,FL1,FL2…熱交換媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、外管内に複数の内管を配置し、外管と内管とに夫々熱交換媒体を流すことで両者間にて熱交換する多管式熱交換器に係り、特に、内管の構造を工夫した多管式熱交換器及びこれを用いた熱処理装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における多管式熱交換器としては例えば特許文献1ないし4に記載のものが挙げられる。
特許文献1,2は、外管内に複数の内管を配置した多管式熱交換器において、熱交換性を向上させるという観点から、内管を波形状に曲折形成したものである。
また、特許文献3は、外管内の複数の内管を波形に曲折形成し、かつ、それらの内管の位相を一致させるようにしたものである。
更に、特許文献4は、外管内に複数の内管をスパイラル状にねじったものである。
【0003】
【特許文献1】特開2006−38286(発明が解決しようとする課題,図3)
【特許文献2】特開昭59−100392(発明の詳細な説明,図6)
【特許文献3】特開2004−108641(発明の実施の形態,図1)
【特許文献4】特開2006−170571(発明を実施するための最良の形態,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した多管式熱交換器にあっては、外管内に複数の内管を配列する際には位置決め治具を用いて内管同士の位置関係を正確に位置決めした状態で、外管内に複数の内管を組み込むことが必要であり、多管式熱交換器の製造工程が面倒になり易い。
本発明の技術的課題は、外管内に複数の内管を簡単に安定配列でき、かつ、熱交換効率を良好に保つことが可能な多管式熱交換器及びこれを用いた熱処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、一方の熱交換媒体が流れる外管と、この外管内に複数設けられ且つ他方の熱交換媒体が流れる内管とを備えた多管式熱交換器であって、前記内管が、
外管の中心に沿って延びる中央内管と、この中央内管の周囲に複数設けられ且つ夫々波形状に曲折形成される複数の周辺内管とを有し、前記外管及び中央内管に夫々の周辺内管を接触配置したことを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る多管式熱交換器において、周辺内管が、夫々円形断面の筒体の一部に長円形断面の扁平部を有し、夫々の扁平部の長手方向端部を隣接しあうように配置することを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る多管式熱交換器において、中央内管が、内側筒体と外側筒体との二重管であり、内側筒体と外側筒体との間に熱交換媒体が通過する媒体流路を形成することを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る多管式熱交換器において、中央内管及び周辺内管は熱交換媒体の通過流量を略等しく設定したものであることを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る多管式熱交換器において、外管が、円形断面の筒体の両端部に開口を有すると共に両端部近傍の筒体の一部に熱交換媒体の入口部及び出口部を有し、内管の端部が、前記外管の両端部に装着される鍔部材の孔から突出配置され、かつ、鍔部材の孔縁に固着されることを特徴とする多管式熱交換器である。
請求項6に係る発明は、加熱若しくは放熱するための熱処理部を有し、この熱処理部として請求項1ないし5いずれかに係る多管式熱交換器を用いることを特徴とする熱処理装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、波形状の周辺内管の周囲で外管内の熱交換媒体を乱流にすることができ、その分、周辺内管の熱交換媒体と外管内の熱交換媒体との間の熱交換効率を良好に保つことができる。
特に、波形状の周辺内管は外管及び中央内管に接触配置されるため、周辺内管は外管と中央内管との間に位置決めされ、中央内管の周囲に安定的に配列される。このため、多管式熱交換器を製造する際に位置決め治具を用いなくとも、外管内に複数の内管を簡単に配列することができるほか、中央内管の周囲に周辺内管を規則的に配列することができ、その分、熱交換効率を略均一化することができる。
請求項2に係る発明によれば、周辺内管の扁平部が中央内管周囲の周辺内管同士の移動を抑えるため、中央内管の周囲に周辺内管をより安定的に配列することができる。
請求項3に係る発明によれば、中央内管の表面寄りに熱交換媒体を集中させ、外管内の熱交換媒体との熱交換効率を良好に保つことができる。
請求項4に係る発明によれば、各内管における熱交換量を略等しくし、全体の熱交換量を略均一化することができる。
請求項5に係る発明によれば、各内管は孔付き鍔部材を介して接続配管に連通接続されるため、接続配管と各内管との間で熱交換媒体をスムースに流すことができる。
請求項6に係る発明によれば、外管内の複数の内管を簡単に安定配列でき、かつ、熱交換効率を良好に保つことが可能な多管式熱交換器を熱処理部として用いた熱処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用される多管式熱交換器の実施の形態の概要を示す。尚、図1(b)は(a)中B−B線断面図である。
同図において、多管式熱交換器は、一方の熱交換媒体FL1が通過する外管1と、この外管1内に複数設けられ且つ他方の熱交換媒体FL2が通過する内管2とを備えた多管式熱交換器であって、前記内管2が、外管1の中心に沿って延びる中央内管3と、この中央内管3の周囲に複数設けられ且つ夫々波形状に曲折形成される複数の周辺内管4とを有し、前記外管1及び中央内管3に夫々の周辺内管4を接触配置したものである。
【0008】
このような技術的手段において、外管1は少なくとも熱交換媒体FL1の入口部と出口部とを有していればよく、その態様についても、直線状に延びるものに限られるものではなく、全部若しくは一部に曲線部を有していても差し支えない。
また、内管2としては、中央内管3の周囲に波形状の周辺内管4を配置することを要する。ここで、中央内管3は外管1の中心に沿って延びる態様であればよく、外管1が直線状であれば直線状の態様になり、外管1の全部若しくは一部に曲線部を有する態様であればこれに合わせて曲線部を有する態様にすればよい。
但し、中央内管3は外管1の中心に沿って延びる態様であるため、それ自体が波形状に形成されるものではない。仮に、中央内管3が波形状に形成される態様である場合には、中央内管3の周囲に複数の波形状の周辺内管4を配置する際に、周辺内管4が中央内管3の周囲に均等に配置し難く、局部的に偏って配置される懸念があり得る。
【0009】
更に、中央内管3は熱交換媒体が流れるものであれば一重管に限られず、二重管などでもよい。
尚、中央内管3がないと、外管1内に束ねた内管2を収容する際に収容し難く、中央内管3があることで、中央内管3の周囲に波形状の周辺内管4を束ね易いものになっている。
一方、周辺内管4は波形状に曲折形成されたものであることを要する。
ここでいう‘波形状’とは山、谷が繰り返される波状の形になっている様を意味し、その山、谷の程度については適宜選定して差し支えない。
また、周辺内管4は外管1及び中央内管3の両者に接触配置されていればよく、各周辺内管4を安定的に配列するには一つの単位波形状部毎に外管1、中央内管3に交互に接触配置されることが好ましいが、必ずしも全ての単位波形状部が外管1又は中央内管3に接触配置されていなくても差し支えない。
【0010】
また、中央内管3、周辺内管4の好ましい態様としては以下の態様が挙げられる。
例えば中央内管3の熱交換効率を良好に保つという観点からすれば、中央内管3は、内側筒体3aと外側筒体3bとの二重管であり、内側筒体3aと外側筒体3bとの間に熱交換媒体が通過する媒体流路3cを形成する態様が好ましい。
更に、周辺内管4をより安定的に配列するには、周辺内管4は、夫々円形断面の筒体の一部に長円形断面の扁平部を有し、夫々の扁平部の長手方向端部を隣接しあうように配置するのが好ましい。
更にまた、中央内管3と周辺内管4との熱交換媒体FL2の通過流量については異なっていても差し支えないが、全体の熱交換量を略均一化するという観点からすれば、中央内管3及び周辺内管4は熱交換媒体FL2の通過流量を略等しく設定したものが好ましい。
また、外管1に対する内管2の好ましい取付構造としては、外管1は円形断面の筒体の両端部に開口を有すると共に両端部近傍の筒体の一部に熱交換媒体FL1の入口部1a及び出口部1bを有し、内管2の端部は、前記外管1の両端部に装着される鍔部材7の孔(図示せず)から突出配置され、かつ、鍔部材7の孔縁に固着される態様が挙げられる。本態様によれば、外管1内の各内管2は孔付き鍔部材7を介して図示外の接続配管に連通接続される。
【0011】
更に、本実施の形態は多管式熱交換器5に限られるものではなく、これを用いた熱処理装置にも適用することができる。
この種の熱処理装置は、図1(c)に示すように、加熱若しくは放熱するための熱処理部6を有し、この熱処理部6として上述した多管式熱交換器5を用いるようにすればよい。
ここでいう熱処理装置には、多管式熱交換器5を含んで熱処理(加熱処理、放熱処理)を施すものであればよく、加熱装置(例えば暖房装置など)、放熱装置(例えば冷房装置など)が含まれる。尚、蒸発処理などは加熱処理又は放熱処理の結果として生ずるものであり、これらも当然ながら含まれる。
【0012】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
―熱処理装置―
図2は本発明が適用される熱処理装置の実施の形態1を示す。
同図において、熱処理装置は給湯装置に適用されたものであり、加熱のための熱処理部Hに多管式熱交換器20を用い、この多管式熱交換器20の外管21に高温熱交換媒体FL1を循環供給可能な構成とし、更に、前記多管式熱交換器20の内管30には低温熱交換媒体FL2を供給可能な構成としたものである。
図2において、高温熱交換媒体FL1は例えば別の熱交換器で空気により加熱され、例えば図示外のコンプレッサにて加圧して高温にする。
一方、低温熱交換媒体FL2は例えば供給ポンプ25にて供給される低温水であり、多管式熱交換器20の高温熱交換媒体FL1にて加熱された後、給湯タンク26に貯蔵されて風呂などに供給されるものである。
【0013】
―多管式熱交換器―
図3(a)は本実施の形態で用いられる多管式熱交換器20の全体構成を示す。
同図において、多管式熱交換器20は、例えば高温熱交換媒体FL1が流れる外管21と、この外管21内に設けられて例えば低温熱交換媒体FL2が流れる複数の内管30とを有する。
<外管>
本実施の形態において、外管21は、例えば銅、ステンレスなどの直線パイプ材からなる管状筒体211と、この管状筒体211の一端部近傍の周面に連結され且つ高温熱交換媒体FL1の入口部を形成するための例えば銅などのパイプ材からなる入口用連結筒体212と、前記管状筒体211の他端部近傍の周面に連結され且つ高温熱交換媒体FL1の出口部を形成するための例えば銅などのパイプ材からなる出口用連結筒体213とを備えている。尚、本実施の形態では、入口用連結筒体212及び出口用連結筒体213が管状筒体211の同じ周面側に突出配置されているが、これに限られるものではなく、例えば管状筒体211の互いに反対側の周面に突出配置するなど高温熱交換媒体FL1の循環経路を考慮して適宜選定して差し支えない。
【0014】
<内管>
本実施の形態において、内管30は、図4ないし図6に示すように、外管21の中心に沿って延びる例えば銅、ステンレスなどのパイプ材からなる中央内管31と、この中央内管31の周囲に配設される例えば銅、ステンレスなどのパイプ材からなる複数(本例では6本)の周辺内管40とを有する。
ここで、中央内管31は、図5、図6及び図8に示すように、内側筒体32と外側筒体33との二重管であり、内側筒体32と外側筒体33との間に熱交換媒体FL2が通過する媒体流路34を形成したものである。
特に、本実施の形態では、内側筒体32の端部近傍の周面に例えば二つの通孔35が180度偏位して開設されており、この内側筒体32の略中央には内側通路を塞ぐために押し潰し部36が内側通路の真ん中を横切るように形成されている。
また、外側筒体33の両端部には絞り成形部37が設けられており、この絞り成形部37が内側筒体32の端部近傍の周面に密接配置されると共にロー付け等にて固着されている。
尚、内側筒体32の端部には外方に広がる鍔部38が形成されており、後述するフランジ50に対して係止されるようになっている。
【0015】
また、周辺内管40は、図4ないし図6並びに図9に示すように、直線状の円筒体41をプレス加工等にて波形状に曲折形成したものである。
ここでいう‘波形状’は山、谷を繰り返すことで波状になっている様を指すものであり、本実施の形態において、周辺内管40の単位波形状部42は山部42aと谷部42bとの間の間隔dを円筒体41の半径程度以下に設定するようにしたものである。更に、この単位波形状部42の中心に沿ったピッチpも適宜選定して差し支えないが、周辺内管40内の熱交換媒体FL2の流れ、並びに、外管21内の熱交換媒体FL1の流れが損なわれない範囲で適宜選定するようにすればよい。
尚、単位波形状部42の曲率半径Rも前記熱交換媒体FL1,FL2の流れが損なわれない範囲で選定するようにすればよい。
【0016】
更に、各周辺内管40は外管21と中央内管31との間に接触配置されている。本実施の形態では、周辺内管40の単位波形状部42の全てが外管21又は中央内管31に接触配置されており、各周辺内管40は夫々の単位波形状部42が互いに平行になるように配置されている。
更にまた、周辺内管40の円形断面積は中央内管31の媒体流路34の断面積と略同程度に設定されている。
そして更に、周辺内管40の軸方向の適宜箇所、例えば周辺内管40の軸方向長さLの1/3、2/3付近には、図9(a)(b)に示すように、例えば長円形断面の扁平部43がプレス成形されている。夫々の扁平部43のレイアウトは適宜選定して差し支えないが、各周辺内管40の配列位置を正確に保つという観点からすれば、夫々の扁平部43が長手方向端部が相互に隣接しあうように配置されていることが好ましい。尚、この扁平部43は単位波形状部42の範囲に亘って形成されている。
また、この扁平部43の長手方向寸法h、非長手方向寸法k、断面積は適宜調整しても差し支えないが、周辺内管40内の媒体通過量を一定に保つという観点からすれば、周辺内管40の円形断面部分の断面積と略同一に保たれるように夫々の寸法h,kを選定するようにすればよい。
【0017】
更に、本実施の形態において、図4、図5及び図7に示すように、外管21の管状筒体211は両端部が開口しており、この両端部にはフランジ50が嵌合装着されている。
このフランジ50は円形鍔51の周囲に周壁52を形成したものであり、前記円形鍔51には内管30(中央内管31,周辺内管40)の端部が挿入される挿入孔53が開設されている。
この挿入孔53のうち、中央の挿入孔53aは中央内管31の内側筒体32の鍔部38が弾性変形しながら挿入され、挿入後に前記鍔部38が係止されるようになっている。
また、挿入孔53のうち、周辺の複数の挿入孔53bは周辺内管40の端部が挿入される大きさで且つ等間隔に開設されている。
更に、本実施の形態では、このフランジ50にはロート状のキャップ60が被せられ、このキャップ60には図示外の接続配管に接続可能な連結筒体61が挿入結合されている。
そして、フランジ50は外管21の端部に嵌合した後に、内管30(中央内管31,周辺内管40)がフランジ50の挿入孔53に挿入されると、フランジ50と外管21、内管30の端部とフランジ50の挿入孔53縁との間がロー付けされる。
そしてまた、キャップ60もフランジ50に被せられるとロー付けされると共に、連結筒体61もキャップ60に挿入された状態でロー付けされる。
尚、フランジ50、キャップ60、連結筒体61の固定方法としてはロー付けが採用されているが、これに限られるものではなく、他の手法を採用してもよいことは勿論である。
【0018】
―多管式熱交換器の製造方法―
次に、本実施の形態で用いられる多管式熱交換器20の製造方法について説明する。
先ず、図10(a)に示すように、両端部が開口した外管21に内管30(中央内管31,周辺内管40)を束ねて挿入する。
このとき、内管30のうち、周辺内管40は外管21及び中央内管31に接触配置しながら外管21内に挿入されるため、内管30挿入時には複数の周辺内管40は相互に位置決めされながら挿入されることになり、外管21への挿入動作が完了した時点では中央内管31の周囲に略等間隔に配置された状態に至る。
この状態において、図10(b)に示すように、外管21の両端部にフランジ50を嵌合装着すると共に、フランジ50の挿入孔53に内管30(中央内管31,周辺内管40)の端部を挿入し、外管21とフランジ50、並びに、内管30の端部とフランジ50の挿入孔53縁との間をロー付けする。
この段階で、内管30(中央内管31,周辺内管40)は外管21に位置決め固定された状態にある。
しかる後、図10(c)に示すように、フランジ50にキャップ60を被せ、更に、キャップ60に連結筒体61を嵌合させ、夫々の嵌合部をロー付けするようにすればよい。
このように、本実施の形態では、専用の位置決め治具を用いることなく、外管21内に内管30(中央内管31,周辺内管40)を位置決め配列することが可能である。
【0019】
―多管式熱交換器の作動―
図11に示すように、外管21に高温熱交換媒体FL1が流れ、内管30(中央内管31,周辺内管40)に低温熱交換媒体FL2が流れたと仮定する。
この状態において、外管21には高温熱交換媒体FL1がそのまま流れ、一方、内管30のうち、中央内管31には低温熱交換媒体FL2が内側筒体32の端部から通孔35を通じて媒体流路34に沿って流れ、周辺内管40には低温熱交換媒体FL2がそのまま流れることになり、外管21内の高温熱交換媒体FL1と内管30内の低温熱交換媒体FL2との間で熱交換が行われる。
このとき、周辺内管40は波形状に曲折形成されているため、夫々の単位波形状部42の近傍には乱流mが発生し易くなり、この乱流mの影響で周辺内管40内の低温熱交換媒体FL2と外管21の高温熱交換媒体FL1との間の熱交換効率が更に高まる。
また、周辺内管40は中央内管31と外管21とに接触配置された状態で位置決めされることから、中央内管31の周囲に略等間隔で安定的に配列される。このため、各周辺内管40は外管21内の高温熱交換媒体FL1に対して略同じ条件で熱交換することになり、各周辺内管40における熱交換量が略均等になり、その分、外管21内の高温熱交換媒体FL1と内管30、特には周辺内管40内の低温熱交換媒体FL2との熱交換性能が略均一なものになる。
特に、本実施の形態では、各周辺内管40は扁平部43にて移動規制しているため、各周辺内管40の配列関係は更に安定したものになっている。
更にまた、中央内管31は二重管構造の外表面に近い媒体流路34に低温熱交換媒体FL2を流すようにしており、更に、その媒体流路34の通路面積は周辺内管40の流路面積と略等しいものであるため、中央内管31と周辺内管40との間での熱交換性能も略均等になり、外管21内の高温熱交換媒体FL1と内管30(周辺内管40,中央内管31)内の低温熱交換媒体FL2との熱交換性能が全体的に略均一なものになる。
【0020】
◎実施の形態2
図12(a)(b)は実施の形態2で用いられる多管式熱交換器の概要を示すものである。
同図において、多管式熱交換器20の基本的構成は、実施の形態1と同様であるが、中央内管31の構造が実施の形態1と相違する。尚、実施の形態1と同様な要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
つまり、本実施の形態では、中央内管31は、実施の形態1と略同様に、内側筒体32と外側筒体33との二重管構造であり、その内側筒体32の軸方向略中央部には押し潰し部39を有しているが、この押し潰し部39は、実施の形態1の押し潰し部36と異なり、図13(a)(b)に示すように、内側筒体32の半分の壁部を他の半分の壁部に向けて押し潰した態様になっている。
従って、本実施の形態では、実施の形態1と略同様な作用を奏するものである。
特に、本実施の形態では、このような押し潰し部39を採用した場合に、内側筒体32の中央部での径方向への張り出しが実施の形態1よりも少なくできるため、媒体流路34での低温熱交換媒体FL2の流路抵抗をより少なく抑えることが可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明が適用される実施の形態に係る多管式熱交換器の概要を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図、(c)は実施の形態に係る熱処理装置の概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態1に係る熱処理装置の概要を示す説明図である。
【図3】(a)は実施の形態1で用いられる多管式熱交換器を示す一部破断説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
【図4】実施の形態1で用いられる多管式熱交換器の断面説明図である。
【図5】図4の要部拡大説明図である。
【図6】(a)は図4中C−C線断面図、(b)は図4中D−D線断面図である。
【図7】(a)は実施の形態1で用いられる外管の端部構造の一例を示す説明図である。
【図8】(a)は実施の形態1で用いられる中央内管の構成を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図である。である。
【図9】(a)は実施の形態1で用いられる周辺内管の構成を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図である。
【図10】(a)〜(c)は実施の形態1で用いられる多管式熱交換器の製造方法の一例を示す説明図である。
【図11】実施の形態1で用いられる多管式熱交換器の作動を示す説明図である。
【図12】(a)は実施の形態2で用いられる多管式熱交換器の概要を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図である。
【図13】(a)は実施の形態2で用いられる中央内管の構成を示す説明図、(b)は(a)中B−B線断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…外管,2…内管,3…中央内管,4…周辺内管,5…多管式熱交換器,6…熱処理部,7…鍔部材,FL1,FL2…熱交換媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の熱交換媒体が流れる外管と、
この外管内に複数設けられ且つ他方の熱交換媒体が流れる内管とを備えた多管式熱交換器であって、
前記内管は、
外管の中心に沿って延びる中央内管と、
この中央内管の周囲に複数設けられ且つ夫々波形状に曲折形成される複数の周辺内管とを有し、前記外管及び中央内管に夫々の周辺内管を接触配置したことを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の多管式熱交換器において、
周辺内管は、夫々円形断面の筒体の一部に長円形断面の扁平部を有し、夫々の扁平部の長手方向端部を隣接しあうように配置することを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項3】
請求項1記載の多管式熱交換器において、
中央内管は、内側筒体と外側筒体との二重管であり、内側筒体と外側筒体との間に熱交換媒体が通過する媒体流路を形成することを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項4】
請求項1記載の多管式熱交換器において、
中央内管及び周辺内管は熱交換媒体の通過流量を略等しく設定したものであることを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項5】
請求項1記載の多管式熱交換器において、
外管は、円形断面の筒体の両端部に開口を有すると共に両端部近傍の筒体の一部に熱交換媒体の入口部及び出口部を有し、
内管の端部は、前記外管の両端部に装着される鍔部材の孔から突出配置され、かつ、鍔部材の孔縁に固着されることを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項6】
加熱若しくは放熱するための熱処理部を有し、この熱処理部として請求項1ないし5いずれかに記載の多管式熱交換器を用いることを特徴とする熱処理装置。
【請求項1】
一方の熱交換媒体が流れる外管と、
この外管内に複数設けられ且つ他方の熱交換媒体が流れる内管とを備えた多管式熱交換器であって、
前記内管は、
外管の中心に沿って延びる中央内管と、
この中央内管の周囲に複数設けられ且つ夫々波形状に曲折形成される複数の周辺内管とを有し、前記外管及び中央内管に夫々の周辺内管を接触配置したことを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の多管式熱交換器において、
周辺内管は、夫々円形断面の筒体の一部に長円形断面の扁平部を有し、夫々の扁平部の長手方向端部を隣接しあうように配置することを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項3】
請求項1記載の多管式熱交換器において、
中央内管は、内側筒体と外側筒体との二重管であり、内側筒体と外側筒体との間に熱交換媒体が通過する媒体流路を形成することを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項4】
請求項1記載の多管式熱交換器において、
中央内管及び周辺内管は熱交換媒体の通過流量を略等しく設定したものであることを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項5】
請求項1記載の多管式熱交換器において、
外管は、円形断面の筒体の両端部に開口を有すると共に両端部近傍の筒体の一部に熱交換媒体の入口部及び出口部を有し、
内管の端部は、前記外管の両端部に装着される鍔部材の孔から突出配置され、かつ、鍔部材の孔縁に固着されることを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項6】
加熱若しくは放熱するための熱処理部を有し、この熱処理部として請求項1ないし5いずれかに記載の多管式熱交換器を用いることを特徴とする熱処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−162417(P2009−162417A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341570(P2007−341570)
【出願日】平成19年12月30日(2007.12.30)
【出願人】(501315762)株式会社サカエ (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月30日(2007.12.30)
【出願人】(501315762)株式会社サカエ (18)
【Fターム(参考)】
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