説明

多結晶シリコンの破砕装置及び多結晶シリコン破砕物の製造方法

【課題】多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕するとともに、破砕時に微粉の発生を抑えてロス率を小さくする。
【解決手段】平行な軸心回りに互いに逆回転する一対のロール3間に塊状の多結晶シリコンを挟み込んで破砕する多結晶シリコンの破砕装置1であって、ロール3の外周面上に複数の破砕歯5が半径方向外方に突出して設けられており、各破砕歯5は、その先端面15が球面状に形成されるとともに、側面16が円錐面状又は円柱面状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用シリコン等の原料である多結晶シリコンを塊状に破砕する装置及びその破砕装置を用いた多結晶シリコン破砕物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップに使用されるシリコンウエハは、例えばチョクラルスキー(CZ)法により製造された単結晶シリコンから作製される。そして、このCZ法による単結晶シリコンの製造には、例えば、シーメンス法によって棒状に形成された多結晶シリコンを塊状に破砕したものが用いられる。
この多結晶シリコンの破砕は、図9に示すように、多結晶シリコンのロッドRを数mm〜数cmの大きさの塊Cにするものであり、ロッドRを熱衝撃等によって適宜の大きさに砕いた後に、ハンマーで直接叩き割る方法が一般的であるが、作業者の負担が大きく、棒状の多結晶シリコンから所望の大きさの塊を得るには非効率である。
【0003】
特許文献1には、棒状の多結晶シリコンをロールクラッシャーで破砕して塊状のシリコンを得る方法が開示されている。このロールクラッシャーは、一つのロールをハウジング内に収容したシングルロールクラッシャーであり、そのロール表面には複数の歯が形成され、これら歯とハウジングの内壁面との隙間に多結晶シリコンを挟むことによって連続的に衝撃を与えて棒状の多結晶シリコンを破砕する。
【0004】
しかしながら、この装置においては、ロールに形成された各歯の歯元とハウジングの内壁面との隙間に、破砕された塊状のシリコンが押し込まれ、すり潰されるために、多結晶シリコンの微粉が生成される割合が多くなる。したがって、所望の大きさの塊状のシリコンにする破砕効率が低いだけでなく、生じた微粉は粒径が小さいためにCZ法では用いることができず、損失(ロス)が大きいものとなっている。
【0005】
一方、特許文献2及び特許文献3には、粗く破砕された塊状の多結晶シリコンを破砕する破砕装置が提案されている。これらの装置は、二つのロールを備え、各ロールの隙間に塊状の多結晶シリコンを挟んで破砕するダブルロールクラッシャーである。
これらの場合も、ロール間で多結晶シリコンの塊がすり潰されながら破砕されるため、多結晶シリコンの微粉が生成される割合が多く、効率的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−122902号公報
【特許文献2】特表2009−531172号公報
【特許文献3】特開2006−192423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕するとともに、破砕時に微粉の発生を抑えてロス率を小さくすることができる、多結晶シリコンの破砕に適した装置及びその破砕装置を用いた多結晶シリコン破砕物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多結晶シリコンの破砕装置は、平行な軸線回りに互いに逆回転する一対のロール間に塊状の多結晶シリコンを挟み込んで破砕する多結晶シリコンの破砕装置であって、前記ロールの外周面上に複数の破砕歯が半径方向外方に突出して設けられており、各破砕歯は、その先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円錐面状又は円柱面状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
この破砕装置では、ロールを回転しながら破砕歯によって多結晶シリコンを連続的に打撃して、効率良く破砕することができる。また、破砕歯の先端面が球面状に形成されていることから、破砕歯の先端と多結晶シリコンとは点接触状態となり、また、その破砕歯の側面も円錐面状又は円柱面状に形成されているので、破砕歯の側面が多結晶シリコンに接触する際には線接触状態となる。したがって、破砕歯と多結晶シリコンとは点接触又は線接触状態となるから、多結晶シリコンが破砕歯により押しつぶされて微細粉が生じることが防止される。
【0010】
本発明の多結晶シリコンの破砕装置において、各破砕歯の間隔は11〜35mmとされるとともに、両ロールの対向部間における前記破砕歯の先端どうしの距離は5〜30mmとされているとよい。
前述したように多結晶シリコンと破砕歯とを点接触又は線接触となるようにして、多結晶シリコンが押しつぶされないようにしており、破砕歯の間隔及び先端どうしの距離を上記範囲に設定することにより、適切な大きさの塊を得ることができる。
【0011】
本発明の多結晶シリコンの破砕装置において、前記破砕歯は超硬合金又はシリコン材によって形成されているとよい。
破砕歯を超硬合金又はシリコン材によって形成することにより、破砕した多結晶シリコン塊への不純物のコンタミを防止することができ、特に半導体シリコンの原料として高品質の多結晶シリコンを得ることができる。
【0012】
本発明の多結晶シリコン破砕物の製造方法は、前記破砕装置のいずれかを用いて多結晶シリコンの破砕物を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロールの回転によって多結晶シリコンを連続的に効率良く破砕することができるとともに、破砕歯の先端が球面状で側面が円錐面状又は円柱面状に形成したので、多結晶シリコンへの接触が点接触又は線接触になり、多結晶シリコンが破砕歯によって押しつぶされることがなく、微細粉の発生を防止して、ロス率を小さくして生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る多結晶シリコンの破砕装置の一実施形態を示す一部を透視した斜視図である。
【図2】図1の破砕装置におけるロール表面の斜視図である。
【図3】その破砕装置に取り付けられている破砕歯ユニットの背面から見た斜視図である。
【図4】複数個並んだ状態の破砕歯ユニットの斜視図である。
【図5】破砕歯の斜視図である。
【図6】ロールの対向部における位置関係を説明する正面図である。
【図7】角錐状の破砕歯を説明する(a)が斜視図、(b)がロールの対向部における正面図である。
【図8】破砕歯について(a)(b)の二種類の変形例を示す斜視図である。
【図9】多結晶シリコンのロッドを破砕して塊状としたものを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る多結晶シリコンの破砕装置及びその破砕装置を用いた多結晶シリコン破砕物の製造方法の実施形態を図面を参照しながら説明する。
本実施形態の破砕装置1は、図1に示すように、ハウジング2内に二つのロール3がその回転軸線4を水平方向に向けて平行に配置されており、両ロール3の外周面に複数の破砕歯5が半径方向外方に向けて突設されている。この場合、各ロール3の外周面は、図2に示すように、均一な円弧面ではなく、軸方向に沿う長尺な平坦面6を周方向に連結して構成された多面体状に形成されており、各平坦面6の両端部にねじ穴7が設けられ、これら平坦面6に、破砕歯ユニット8が一つずつ固定されている。
【0016】
破砕歯ユニット8は、図3及び図4に示すように、ロール3の平坦面6に当接する短冊状の固定カバー11と、この固定カバー11に取り付けられる複数個の破砕歯5とから構成されている。
破砕歯5は、超硬合金又はシリコン材により、図5に示すように、柱状部13とその基端部で拡径する若干の厚さのつば部14とが一体に形成された形状とされている。柱状部13は、その先端面15が球面状に形成されるとともに、側面16が円柱面状に形成されている。つば部14は、円形板の両側部を柱状部13の長手方向と平行に切除した形状とされ、その切除した部分により、平面部17が180°反対向きに形成されている。
【0017】
また、固定カバー11は、ロール3の平坦面6と同じ幅、長さの短冊状に形成され、その長手方向に相互間隔をおいて破砕歯固定孔21が貫通状態に形成され、両端部にねじ挿通孔22が形成されている。これら破砕歯固定孔21は、図3に示すように、固定カバー11の厚さの半分までが破砕歯5の柱状部13の側面16に対応した断面円形の嵌合孔23とされ、残りの半分が破砕歯5のつば部14に対応して平面部24を有する拡径部25とされている。そして、破砕歯5は、固定カバー11の嵌合孔23に柱状部13を嵌合した状態でつば部14が拡径部25に嵌合し、固定カバー11の平面部24とつば部14の平面部17とが当接することにより、固定カバー11に回り止めされた状態に保持される。
【0018】
この場合、この固定カバー11は拡径部25をロール3表面に向け、嵌合孔23から破砕歯5の柱状部13を突出させた状態として、ロール3の各平坦面6に重ねられ、その両端部がねじ26によりロール表面に固定される。
また、各破砕歯ユニット8は、隣接する破砕歯ユニット8の破砕歯5がロール3の周方向に連続して並ばないように、図4に示すように、破砕歯5が千鳥状に配列した状態に取り付けられる。一方、両ロール3の間では、図6に示すように、その対向部において両ロール3の破砕歯5の先端面15どうしが対向するように配置される。なお、この図6においては、千鳥状に配列されている破砕歯5のうち、同一円周上に配置される一列の破砕歯5を実線で示し、他の列の破砕歯5を二点鎖線で示している。
【0019】
そして、この実施形態では、破砕後の多結晶シリコンの塊(多結晶シリコン破砕物)の大きさとして、最大辺の長さが5〜60mmのものを得るようにしており、その大きさの塊を得るために、各破砕歯5は、柱状部13の直径Dが10〜14mm、図6に示す固定カバー11の表面から破砕歯5の先端までの突出高さHが10〜30mmとされるとともに、隣接する破砕歯5どうしの間隔Lが11〜35mmとされている。また、両ロール3の対向部において、破砕歯5の先端面15どうしの対向距離Gが5〜30mmに設定される。
【0020】
なお、両ロール3を収容したハウジング2は、コンタミ防止のため、ポリプロピレン等の樹脂製とされ、あるいは金属製のハウジングの内面にテトラフルオロエチレンのコーティングをしたものが用いられる。
また、ハウジング2内には、両ロール3の両端部にロール3の軸線4と直交して配置される一対の仕切り板31がハウジング2の内壁面との間に一定の間隔をおいて平行に設けられている。これら仕切り板31は、ハウジング2に固定されており、両ロール3の半分以上を係合するように、ロール3の直径よりも若干大きい径の円弧状にくり抜いた2個の切欠32が形成され、これら切欠32内に各ロール3の両端部を係合した状態で、両ロール3の間に架け渡されるように配置されている。この仕切り板31をロール3に係合した状態では、仕切り板31の切欠32の内周面とロール3の外周面との間には、ロール3の回転を阻害しない程度に若干の隙間が形成され、また、ロール3の両端部に設けられている破砕歯ユニット8固定用のねじ26が仕切り板31の外側方に配置され、両仕切り板31がロール3の対向部からその上下の空間を挟んだ状態としている。そして、これら仕切り板31に挟まれた空間が多結晶シリコン破砕空間33とされ、ハウジング2の上面には、その破砕空間33の真上に配置されるように投入口34が設けられる。これら仕切り板31も、ハウジング2と同様にポリプロピレン等の樹脂製、あるいは金属製のものにテトラフルオロエチレンのコーティングをしたものが用いられる。
なお、このハウジング2には、両ロール3を回転駆動するギヤボックス(図示略)等が備えられ、ギヤボックスには排気装置(図示略)が接続されて、ハウジング2及びギヤボックスの内部空間が排気されるようになっている。
【0021】
このように構成した破砕装置1を用いて多結晶シリコン破砕物を製造する場合、両ロール3を回転させた状態で、ハウジング2の投入口34から両仕切り板31の間の多結晶シリコン破砕空間33に予め粗く破砕した適宜の大きさの多結晶シリコンを投入すると、両ロール3の破砕歯5の間で多結晶シリコンがさらに破砕されて塊状に細分化される。このとき、各破砕歯5は、その先端面15が球面状に形成されているので、この先端面15と多結晶シリコンとは点接触となり、また、柱状部13の側面16が円柱面状に形成されているので、この側面16と多結晶シリコンとは点接触又は線接触となる。このため、多結晶シリコンに対して破砕歯5は点接触又は線接触状態で衝撃を付加するので、多結晶シリコンを面で押しつぶすようなことが低減される。
【0022】
また、両ロール3の両端部上に配置されている仕切り板31は、その間で破砕される多結晶シリコンの塊がハウジング2の内壁面とロール3の端面との間に侵入してつぶされることを防止しており、多結晶シリコンの塊を確実に両ロール3の間で破砕して下方に通過させることができる。
したがって、この破砕装置1では多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕することができ、微細粉の発生を防止して、ロス率を低減することができる。
【0023】
因みに、図7(a)に示すように、破砕歯35が角錐状に形成されている場合であると、(b)に示すように、両ロールで対向している破砕歯35の間に多結晶シリコンが挟まって破砕歯35の平面35aどうしの間で押しつぶされる場合があり、これが面接触となるため微細粉が生じる。図7に示す例では、破砕歯35の先端面35bも平坦面に形成されているため、この先端面35bによっても押しつぶされる。
このような平坦面を有する破砕歯では微細粉の発生を防ぐことは難しいが、本実施形態の破砕歯は、柱状部の先端が球面状で、側面が円柱面状に形成されているため、微細粉の発生を低減することができる。
【0024】
また、この破砕装置1においては、破砕歯5を超硬合金又はシリコン材によって形成しているので、この破砕歯5から多結晶シリコンに不純物が混入することが防止される。一方、破砕歯ユニット8を固定するねじ26は一般には金属製のものが用いられるが、このねじ26は仕切り板31により多結晶シリコン破砕空間33の外方に配置されているため、多結晶シリコンに接触することがなく、多結晶シリコン破砕空間33を囲む仕切り板31、ハウジング2がポリプロピレン等の樹脂製とされ、あるいはテトラフルオロエチレンのコーティングがなされているので、破砕途中の多結晶シリコンに不純物が混入することが防止される。したがって、この破砕装置1によれば、半導体原料用の多結晶シリコンとして高品質のものを得ることができる。
【0025】
さらに、本実施形態においては、個々の破砕歯5を固定カバー11により保持して破砕歯ユニット8を構成し、この破砕歯ユニット8をロール3の表面に固定しているので、一部の破砕歯5に欠損等が生じたとしても、その欠損が生じた破砕歯5のみを交換すればよく、その場合、破砕歯ユニット8はねじ止めによりロール3に固定されているとともに、破砕歯5は固定カバー11の破砕歯固定孔21に嵌合されているだけであり、その交換作業も容易である。この固定カバー11は強度確保のためにはステンレス鋼等により製作するのがよいが、その表面にポリプロピレンやテトラフルオロエチレン等の樹脂を被覆しておけば、多結晶シリコンと接触した場合でもコンタミを防止することができる。
【0026】
図8は、破砕装置1に用いられる破砕歯の変形例を示している。いずれの破砕歯41,42も柱状部43とつば部24とを有する点は一実施形態の破砕歯5と同様であり、つば部24の形状も図5に示すものと同じである。これらの図において共通部分には同一符号を付している。
図8(a)に示す破砕歯41は、柱状部43の側面44a,44bがつば部24から長手方向の途中位置までは円柱面状に形成されるが、その途中位置よりも先端部分は円錐面状に形成され、先端面45は球面状に形成されている。この場合、円柱面状側面44aは柱状部43の長さの半分以下に形成され、円錐面状側面44bの方が円柱面状側面44aよりも長く形成されている。
また、図8(b)に示す破砕歯42は、図8(a)に示す破砕歯41に比べて柱状部43の円柱面状側面44aが長く形成され、柱状部43の長さの半分以上の長さに形成され、その分、円錐面状側面44bの長さが短く形成されている。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、両ロールの対向部で破砕歯の先端面どうしが対向するように配置したが、一方のロールの破砕歯が他方のロールの隣接する破砕歯の間に対向するように配置してもよい。
また、一実施形態で説明した破砕歯の対向間隔等の諸寸法は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0028】
1 破砕装置
2 ハウジング
3 ロール
4 回転軸線
5 破砕歯
6 平坦面
7 ねじ穴
8 破砕歯ユニット
11 固定カバー
13 柱状部
14 つば部
15 先端面
16 側面
17 平面部
21 破砕歯固定孔
22 ねじ挿通孔
23 嵌合孔
24 平面部
25 拡径部
26 ねじ
31 仕切り板
32 切欠
33多結晶シリコン破砕空間
34 投入口
41,42 破砕歯
43 柱状部
44a 円柱状側面
44b 円錐状側面
45 先端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な軸線回りに互いに逆回転する一対のロール間に塊状の多結晶シリコンを挟み込んで破砕する多結晶シリコンの破砕装置であって、前記ロールの外周面上に複数の破砕歯が半径方向外方に突出して設けられており、各破砕歯は、その先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円錐面状又は円柱面状に形成されていることを特徴とする多結晶シリコンの破砕装置。
【請求項2】
各破砕歯の間隔は11〜35mmとされるとともに、両ロールの対向部間における前記破砕歯の先端どうしの距離は5〜30mmとされていることを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコンの破砕装置。
【請求項3】
前記破砕歯は超硬合金又はシリコン材によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の多結晶シリコンの破砕装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の多結晶シリコンの破砕装置を用いて多結晶シリコンの破砕物を製造することを特徴とする多結晶シリコン破砕物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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