多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いる対象の画像の検出システム及び方法
多色エネルギー分布を持つX線ビームからの複数ビームイメージングシステムを用いる対象の画像の検出システム及び方法が開示される。一態様によれば、方法は、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成することを含む。さらに、この方法は、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるように、複数のモノクロメータ結晶を、第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置することを含む。さらに、対象を通って第2のX線ビームを透過させると共に該対象から透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象が配置されることができる。透過X線ビームは、それぞれ結晶アナライザーに入射角で向けられることができる。さらに、アナライザー結晶から回折されるビームから対象の画像が検出されることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
この仮特許出願でない出願は、2008年12月1日出願の米国仮特許出願No. 61/200,593の利益を主張し、2007年1月24日出願の米国特許出願No. 11/657,391に関連し、それらの開示は参照することにより全体が本書に援用される。
政府の権利
本書で開示される主題は、米国エネルギー省によって与えられた契約番号DE-AC02-98CH10886により米国政府支援と共になされた。従って、米国政府は本書で開示される主題に対し特定の権利を有する。
技術分野
本書に記述される主題はX線イメージングに関する。特に、本書に記述される主題は、多色エネルギー分布(polychromatic energy distribution)を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いる対象(object)の画像の検出システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線イメージングは対象を画像化するために種々の分野で用いられてきた。例えば、X線イメージングは、医療分野で非破壊検査及びX線コンピュータ断層撮影(CT)に広く用いられてきた。種々の他のタイプの技術も医用画像に用いられてきた。幾つかの現在用いられている医用画像技術の概要が、この章の以下に要約されている。
【0003】
X線吸収を用いるX線撮影
従来のX線撮影は、対象の投影されたX線吸収又は減衰を測定する。対象内の減衰の差異は、画像として表示され得る内蔵された特徴のコントラストを提供する。例えば、一般に癌組織は、周囲の非癌組織より密度が高いために通常のX線撮影に現れる。最も高い吸収コントラストは、吸収が高いX線エネルギーで一般に得られる。従来のX線撮影は、より多くの吸収、従ってより良いコントラストと画像を許容するため、低X線エネルギーを高線量で用いて典型的に行われる。患者の安全性に対する懸念のため、高エネルギーを持つX線の使用は、低線量の使用を一般に要求される。一般に、X線エネルギー準位が増大し、X線線量が減少するにつれて通常のX線撮影画像の質は低下する。
【0004】
現世代の放射線画像システムのX線源は、標準的なカソード/アノードX線管に基づく構造を用いている。X線管のエネルギースペクトル及び一般的な出力特性は、アノード材料及び配置によって主に決められる。適切なアノード材料の選択は用途に大きく基づいており、特に画像化されるモダリティ(modality)及び構造が何であるかに基づく。
【0005】
マンモグラフィーに対し、最も一般的なアノード材料はモリブデンであるが、ロジウムも使用される。約18keVのモリブデンの平均エネルギーは、軟部組織を画像化するために適切なスペクトルを提供する。マンモグラフィーシステムに対し、アノードは多くの場合に固定され、熱を低減するために銅遮断に取り付けられる。主な工学的問題は、集中された電子ビームによるアノード内での熱の生成である。その高い熱伝導率にも関わらず、熱除去の主要な手段が周囲の銅アノードであるため、固定されたアノードを有するX線管はより加熱されやすい。X線管開発の進歩は、アノードからの電子ビームがアノード上の同じ部分に衝突しないよう回転する回転アノードをもたらした。X線撮影のための主に獲得された検出方法は、比較的最近のデジタル検出器の出現までは、X線フィルムである。
【0006】
マンモグラフィーを検査するためのX線イメージングは、早期乳癌を識別するために用いられてきた。検査を受けた対照群の女性間の乳癌死亡率が検査を受けていない対照群に比べたときに著しく減少することはよく知られている。胸部検診又は乳房自己診断に比べ、マンモグラフィーは、小さくてまだ進行していない癌を識別する傾向にある。小さくてまだ進行していない乳癌の治療は、よりよい生存率をもたらす。改良されたX線撮影方法は、小さい早期乳癌でさえも発見するために使用できることは全く明らかである。臨床的に明白な乳癌の約10%は、従来のマンモグラフィー法によって生成される画像では見えない。さらに、従来のX線撮影を用い、良性病変と悪性病変とを区別するのは一般的に難しい。
【0007】
特に、従来のマンモグラフィー技術では見えない乳癌は、比較的乳房腺組織の多い患者に最も頻繁に発生する。乳房腺組織の密度は、潜在的な病変を見えなくさせる傾向がある。癌の初期段階を発見するためには、小さい早期乳癌を発見することができるようマンモグラフィーの感度を高めることが望ましい。乳癌の早期発見が死亡率の大幅な減少につながる可能性がある。
【0008】
マンモグラフィー技術は、過去数十年で大幅に進歩している。例えば、適切なX線ビーム品質、適切な乳房圧縮、及び自動露出制御を有する専用のマンモグラフィー装置が現在存在する。しかしながら、従来のマンモグラフィー技術は、正常及び異常組織の違いを決定するために依然としてX線吸収の描写に依存する。
【0009】
従来の放射線医学の限界は、怪我又は変形性関節症等の変形性関節疾患の発見と治療の間のような、軟骨の画像化でも明らかになる。より優れたイメージング技術は、回復不能の損傷となる前のように、このような変性疾患を発見するために有益であろう。
【0010】
回折増強(DIFFRACTION ENHANCED)イメージング(DEI)
DEIは、従来のX線イメージングの機能を大幅に拡張するX線イメージング技術である。DEI技術は、X線吸収、X線屈折率、超小角散乱線除去(消衰)(scatter rejection (extinction))からコントラストを生成可能なX線画像診断法である。これに対し、従来のX線イメージング技術はX線吸収のみを測定している。DEI吸収イメージ及びピークイメージは、実質的に散乱の減少(scatter degradation)がないことを除けば、従来のX線写真と同じ情報を表示する。DEIは、X線回折のブラッグの法則であるnλ=2dsinθに基づき、小さな角度変化に対して大きな強度変化を提供する完全結晶回折(perfect crystal diffraction)のブラッグピークを利用して角度変化を強度変化に変換する。従って、DEIは軟部組織のイメージングに十分適しており、さらにマンモグラフィーに非常に有望である。
【0011】
DEI技術は、従来のX線イメージング技術と比較して対象の可視化の改善を示しているが、使用可能なエネルギー範囲を拡張し、X線吸収の必要性を減少又は排除する可能性には誰も取り組んでいない。X線吸収の減少又は除去は、医療分野で重大な関心事である。
【0012】
X線ビームの経路内でSiアナライザー結晶(silicon analyzer crystal)を用いると、画像コントラスト、X線屈折率、及び消衰(超小角散乱除去)について二つの追加的形態を生じる。DEIは完全単結晶シリコンからのX線回折により準備される高度に収束された(collimated)X線を使用し、それは画像を生成するためにこれまでシンクロトロンの高い流束(flux)とエネルギー範囲が必要であった。これら収束されたX線は、単一のX線のエネルギーを持ち、実質的に単色であり、対象を画像化するためのビームとして使用される。
【0013】
ほとんど吸収コントラストを持たない対象は、かなりの屈折率と消衰コントラストを有し、これにより可視化を向上させ、X線イメージングの有用性を拡張する。生物学及び材料科学へのDEI技術の応用は、コントラストと分解能の両方を大幅に向上させ、主流の医用画像で使用される可能性を示す。DEIが特に有効な医学分野は癌診断のための乳房イメージングであり、そこでは興味を示す診断構造はしばしば低吸収コントラストを有しており、それらが見え難くしている。悪性腫瘤から延びる棘状突起(spiculation)等の低吸収コントラストを持つ構造は、高屈折率及び超小角散乱コントラストを持っている。DEIシステムに、X線ベースの乳房イメージングの感度と特異性の両方の増加能力を提供することが望ましい。
【0014】
複数の研究は、DEIの医療及び工業的応用の双方において、画像コントラストの改良を実証している。医療分野での従来のX線イメージングシステムに比べたDEIシステムの利点は、患者の放射線量の大幅な減少及び画質の向上を含む。線量の減少は、より高いX線エネルギーで機能するDEIシステムの能力による。X線吸収は光電効果Z2/E3によって影響を受け、ここでZは原子番号、Eは光子エネルギーである。
【0015】
これまで、DEIシステムは、対象を画像化するための他のシステムコンポーネントによって操作される第1の放射線ビームを生成するため、シンクロトロンの使用が要求されてきた。シンクロトロンは、エネルギーの広範囲にわたって高度に収束され、高流束のX線ビームを提供する。シンクロトロンは、光子の放出を引き起こす厳密にいえば電子の円軌道内で、荷電粒子の運動を介して放射線を生成する。シンクロトロン放射の優れた特徴は、広範囲の応用に使用可能な広いエネルギー範囲にわたって高流束のX線を生成することにある。
【0016】
DEIのコア理論は、X線回折のブラッグの法則に基づいている。ブラッグの法則は次式で定義される。
【数1】
ここで、λは入射X線ビームの波長、θは入射角、dは結晶中の原子層間の距離、及びnは整数である。
【0017】
単一エネルギーのX線写真は、画像のコントラスト及び分解能に影響を与え得る幾つかの成分(component):コヒーレントに散乱された成分Ic、非干渉に散乱された成分Il、及び伝送成分を含む。密度が異なる対象又は媒質を通過するX線は屈折されることができ、その結果として角度偏差を生じる。具体的にはX線範囲の偏差(deviation)は、ビームの経路に沿うρtの変化から生じ、ここでρは密度、tは厚さである。入射光子の一部(fraction)も、一般にミリラジアンのオーダーであり小角散乱と呼ばれる対象内部の構造によって回折されるであろう。これらの相互作用の合計は、X線写真の記録強度(recorded intensity)INに寄与し、これは次の式:
【数2】
で表すことができる。システムの空間分解能とコントラストは、コヒーレント及び非干渉散乱の両方の寄与により分解される。散布の寄与を減らすため、散乱線除去グリッド(Anti-scatter grid)がしばしば医用画像に使用されているが、それらの性能は限られており、さらにグリッドの使用は強度の損失を補うためにしばしば高線量を必要とする。
【0018】
コヒーレント及び非干渉散乱の両方の影響を実質的に低下させるため、DEIの技術は、対象の後方のX線ビームの経路でSiアナライザー結晶を使用する。Siアナライザー結晶の狭い角度を許容するウィンドウ(window)は、そのロッキングカーブ(rocking curve)と呼ばれ、DEIで使用されるX線エネルギーのマイクロラジアンのオーダーである。アナライザーは極めて敏感な角度フィルタとして機能し、屈折率と消衰コントラストの両方を測定するために使用することができる。消衰コントラストは、散乱による入射ビームからの強度損失として定義され、コントラストと分解能の両方の大幅な向上を生む。
【0019】
ダーウィン幅(DW)は、反射率曲線を記述するために使用され、反射率曲線のほぼ半値全幅(FWHM)である。-1/2DW及び+1/2DWの点は、特定のアナライザーの反射及びビームエネルギーについて、マイクロラジアン当りの光子強度の最大変化を生じる急勾配の曲線上の点である。アナライザー結晶ロッキングカーブのピークでのコントラストは、X線の吸収と消衰によって影響され、ほぼ散乱のないX線写真をもたらす。-1/2及び1/2DWの位置でロッキングカーブの傾きが最大の部分で、屈折コントラストは最も高い。一つのDEIベースの画像処理技術は、これらの画像の組から屈折率と見かけ吸収(apparent absorption)のコントラスト成分を抽出するため、これらの点を使用する。
【0020】
以下の段落は、画像の組から屈折率と見かけ吸収のコントラスト成分を抽出するためのこの手法を説明する。所定の反射及びビームエネルギーについて、アナライザー結晶が+/-1/2DWを表す角度に設定されている場合、ロッキングカーブの傾きは比較的安定し、次式:
【数3】
で表される2項テイラー級数近似として表すことができる。
【0021】
アナライザー結晶がロッキングカーブ(-1/2DW)の低い角度側に設定されている場合、得られる画像強度は次式:
【数4】
で表すことができる。
【0022】
高い角度位置(+1/2DW)に設定されたアナライザー結晶で得られた画像の記録強度は、次式:
【数5】
で表すことができる。
【0023】
これらの式は、見かけ吸収(IR)、及び以下の式:
【数6】
で表され、z方向(Δθz)で観測される角度の屈折に起因した強度変化のために解かれる。
【0024】
これらの式は、2つのコントラスト成分をDEI見かけ吸収及び屈折画像として知られているものに分割するため、画素毎の基準で高い角度と低い角度画像に適用されることができる。しかしながら、DEI見かけ吸収及び屈折画像を生成するために使用される単一の点のロッキングカーブ画像のそれぞれが有用であることに留意することが重要である。
【0025】
上記したように、現在のDEIシステムは、X線ビームを生成するためのシンクロトロンを含む。シンクロトロンベースのDEIシステムは、長年にわたり優れた結果を提供している。しかし、シンクロトロンは大きく高価な装置であり、医療又は工業的応用のいずれにも実用的ではない。劇的なコントラストの向上や線量の低下を考えると、広く臨床的使用のためにDEIシステムの有用性を向上させることが有益であろう。
【0026】
医療用DEI撮像装置の開発は、次の理由のために一般に女性の健康と医用画像にとって重要性を持つであろう:(1)DEIは、乳癌の発見及び特性評価(characterization)に重要である特徴について、非常に高いコントラストを生じることが示されている; (2)DEIの物理は、吸収のみを用いるよりも高いX線エネルギーで撮像することを可能とする;及び(3)吸収される光子を必要とせずにコントラストを生成するDEIの能力は、イオン化を劇的に低減し、それによって吸収線量を低減する。
【0027】
又、スクリーン・フィルム(screen-film)マンモグラフィーは過去40年間にわたり広く研究されており、さらに多くの大規模な無作為化スクリーニング試験により、乳癌死亡率を約18〜30パーセント減少させることが知られている。おそらく幾分はこの画像検査の広範な使用のおかげで、ここ数年の乳癌死亡率は低下し始めている。ただし、標準のスクリーン・フィルムマンモグラフィーは、完全に敏感でもなく高度に特異的でもない。高密度の乳房組織、及び乳房への腫瘍の拡散の関与は、検診マンモグラフィーの感度を低下させる傾向がある。密度の高い乳房の女性について、成長する病変は、それらが光子を吸収する能力が周囲の脂肪組織よりも非常に大きくないために見ることが難しく、可視化のためのコントラストをほとんど生成しない。自己検査や身体検査によって検出される乳癌の約10〜20%は、スクリーン・フィルムマンモグラフィーでは見ることができない。さらに、病変がマンモグラフィーや生検によって検出されたときには、病変のたった5-40%が悪性であることが判明する。又、乳癌の約30%が以前のマンモグラムを振り返ると見ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
現在のDEI及びDEI画像処理技術は、従来の画像理論に大きく基づいており、さらに画像生成のためのX線吸収を少なくとも部分的に利用(rely on)している。従って、これらの技術を用いて画像化された対象は、放射線を吸収する。線量の懸念を考えると、このような放射線被ばくは医用画像への応用に望ましくなく、この推論は臨床及び工業的転換を困難にする相当な技術上の限界を認識する。これにより、高品質の画像を生成し、より少ない吸収を利用するが、同等の診断品質と特徴の可視化を備えた画像を生成するDEI及びDEI技術を提供することが望ましい。
【0029】
従って、DEI及びDEIシステムに関連して求められる改善の観点から、対象の画像を検出するための改良されたDEI及びDEIシステム、並びに関連する方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本書に記述される主題は、多色エネルギー分布を持つX線ビームを用いる対象の画像の検出システム及び方法を含む。一態様によれば、本書に記述される主題は、対象の画像を検出するための方法を含む。この方法は、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成することを含む。さらに、この方法は、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるように、1つのモノクロメータ結晶を、第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置することを含む。さらに、対象を通って第2のX線ビームを透過させると共に該対象から透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象が配置されることができる。透過X線ビームは、結晶アナライザーに入射角で向けられることができる。さらに、アナライザー結晶から回折されるビームから対象の画像が検出されることができる。
【0031】
他の態様によれば、本書に記述される主題による方法は、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成することを含む。さらに、第1のX線ビームが平行にされた扇ビームになるよう、第1のX線ビームの一部が遮断されることができる。モノクロメータ結晶は、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、平行にされた扇ビームを遮断する所定の位置に配置されることができる。この方法は、対象を通る第2のX線ビームの透過のために第2のX線ビームの経路に対象を配置し、かつ該対象から透過X線ビームを放射させることを含むことができる。又、この方法は、アナライザー結晶に入射角度で透過X線ビームを向けることを含むことができる。この方法は又、アナライザー結晶から回折されるビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0032】
別の態様によれば、本書に記述される主題による方法は、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することにより、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成することを含むことができる。この方法は又、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置にモノクロメータ結晶を配置することを含むことができる。さらに、この方法は、対象を通る第2のX線ビームの透過のために第2のX線ビームの経路に対象を配置し、かつ該対象から透過X線ビームを放射させることを含むことができる。透過X線ビームは、アナライザー結晶に入射角度で向けられることができる。又、この方法は、アナライザー結晶から回折されるビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0033】
別の態様によれば、本書に記述される主題による方法は、第1及び第2の特性輝線を有する第1のX線ビームを生成することを含むことができる。この方法は又、第1及び第2の特性輝線を有する第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置にモノクロメータ結晶を配置することを含むことができる。又、この方法は、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつ第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させることを含むことができる。対象を介して第2のX線ビームの遮断されていない特性輝線を透過させ、かつ対象から透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方の経路に対象が配置されることができる。この方法は、アナライザー結晶に入射角度で透過X線ビームを向けることを含むことができる。さらに、この方法は、アナライザー結晶から回折されたビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0034】
別の態様によれば、本書に記述される主題による方法は、第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成することを含むことができる。第1及び第2の特性輝線を有する第2のX線ビームが生成されるよう、モノクロメータ結晶が第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置される。又、この方法は、対象を通る第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の透過のため、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の経路に対象を配置し、かつ該対象から透過X線ビームを放射させることを含むことができる。透過X線ビームは、アナライザー結晶に入射角度で向けられる。この方法は、アナライザー結晶から回折されるビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0035】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、多色エネルギー分布を持つ少なくとも一つの第1のX線ビームを生成すること、それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されるように、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置すること、対象を介して第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の対応する透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置すること、透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶アレイ(array)内の1又はそれ以上の対応するアナライザー結晶に入射角で向けること、及び1又はそれ以上のアナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0036】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されるX線源と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置され、対象を通って透過させるためにそれぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されることができる2又はそれ以上のモノクロメータと、さらにアナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するための画像検出器とを含むことができる。
【0037】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成すること、第1のX線ビームが平行にされた扇ビームのアレイになるよう、第1のX線ビームの一部を遮断すること、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、それぞれ所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、平行にされた扇ビームを遮断する所定の位置に2又はそれ以上のモノクロメータを配置すること、対象を通って第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置すること、アナライザー結晶の対応するアレイに入射角度で透過X線ビームのそれぞれを向けること、及びアナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0038】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されるX線源と、第1のX線ビームが平行にされた扇ビームの配列になるよう第1のX線ビームの一部を遮断するように配置されるアレイコリメータと、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータとを含むことができ、各モノクロメータは、対象を通って透過するためそれぞれ所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、平行にされた扇ビームを遮断する所定の位置に配置され、さらにシステムは、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0039】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することによって、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成すること、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に2又はそれ以上のモノクロメータを配置すること、対象を通って第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置すること、対応するアナライザー結晶のアレイに入射角度で透過X線ビームのそれぞれを向けること、及びアナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出すること、を含むことができる。
【0040】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することによって、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されたX線管と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、対象を通って透過するためそれぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置される2又はそれ以上のモノクロメータと、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0041】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、第1及び第2の特性輝線を有する第1のX線ビームを生成すること、第1及び第2の特性輝線をそれぞれ有する複数の第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを配置すること、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつそれぞれの第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させること、対象を介して第2のX線ビームの遮断されていない特性輝線を透過させ、かつ対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方の経路に対象を配置すること、対応するアナライザー結晶のアレイに入射角度で透過X線ビームをそれぞれ向けること、アナライザー結晶から回折された複数のビームから対象の画像を検出すること、を含むことができる。
【0042】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されたX線源と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、それぞれ第1及び第2の特性輝線を持つ複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置される2又はそれ以上のモノクロメータと、第2のX線ビームのそれぞれの第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつ対象を通して透過させるために第2のX線ビームのそれぞれの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させるのに適したスリットを有するコリメータと、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0043】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、第1及び第2の特性輝線を有する第1のX線ビームを生成すること、それぞれ第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む複数のモノクロメータを配置すること、対象を介して第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線を透過させ、かつ対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の経路に対象を配置すること、対応するアナライザー結晶のアレイに入射角度で各透過X線ビームを向けること、及びアナライザー結晶から回折された複数のビームから対象の画像を検出すること、を含むことができる。
【0044】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されたX線源と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、対象を介した透過のため、それぞれ第1及び第2の特性輝線を持つ複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置にそれぞれ配置される複数のモノクロメータと、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0045】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、特性線Kα1及びKα2を有する第1のX線ビームを生成すること、所定のエネルギー準位をそれぞれ有する複数の第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む複数のモノクロメータを配置すること、対象を介して第2のX線ビームを透過させ、かつ対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置すること、対応するアナライザー結晶のアレイに入射角度でそれぞれの透過X線ビームを向けること、アナライザー結晶から回折された複数のビームから対象の画像を検出すること、を含むことができる。
【0046】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。方法は、特性線Kα1及びKα2を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されたX線源と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、それぞれ所定のエネルギー準位を持つ複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを直接遮断するためにそれぞれ配置される複数のモノクロメータとを含むことができ、対象を通して第2のX線ビームを透過させ、それによって対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、対象に向かう経路内でモノクロメータ結晶が対応する第2のX線ビームに向けられるようそれぞれ配置され、さらにシステムは、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0047】
この開示によれば、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いる対象の画像の新規の検出システム及び方法が提供される。
【0048】
従って、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いる対象画像の新規の検出システム及び方法の提供が本書の開示の目的である。本書に記述される主題により、本書の開示から明らかになるであろうこれ及びその他の目的は、少なくとも全体として、又は部分的に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1A】本書に記述される主題の一実施形態に従い、1つのモノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能な、DEIシステムの概略図である。
【図1B】本書に記述される主題の一実施形態に従い、1つのモノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能な、DEIシステムの上面斜視図である。
【図1C】本書に記述される主題の一実施形態に従い、1つのモノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能な、DEIシステムの側面-上面概略図である。
【図1D】本書に記述される主題の一実施形態に従う、動作の異なるモードにおける図1A-1Cに示されたDEIシステムの概略図である。
【図1E】本書に記述される主題の一実施形態に従う、動作の異なるモードにおける図1A-1Cに示されたDEIシステムの概略図である。
【図2】本書に記述される主題の一実施形態に従うカソード/アノード管構造に基づくX線管の概略図である。
【図3】本書に記述された主題の実施形態に従う図1A-1EのDEIシステムを示す上面概略図である。
【図4】本書に記述された主題の実施形態に従う図1A-1EのDEIシステムを使用した対象をイメージングするための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図5】本書に記述される主題の実施形態に従う図1A-1E、及び図3に示される、DEIシステムのアナライザー結晶の側面図である。
【図6A】本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能なDEIシステムの概略図である。
【図6B】本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能なDEIシステムの上面斜視図である。
【図7】本書に記述される主題の実施形態に従う図6A及び図6BのDEIシステムを使用した対象の画像化のための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図8】異なる波長でのゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムグラフである。
【図9】異なる波長でのゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムグラフである。
【図10】異なる波長でのゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムグラフである。
【図11】本書に記述される主題の実施形態に従う図6A及び図6Bに示されるDEIシステムのゲルマニウムモノクロメータ結晶とシリコンモノクロメータ結晶の側面図である。
【図12】本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能なDEIシステムの概略図である。
【図13】本書に記述された主題の実施形態に従い、足場上の1つのモノクロメータ結晶を有するX線管及びモノクロメータタンクの典型的な配置の概略図である。
【図14】本書に記述された主題の実施形態に従い、足場上の1つのモノクロメータ結晶を有するX線管及びモノクロメータタンクの典型的な配置の概略図である。
【図15】本書に記述された主題の実施形態に従い、足場上の1つのモノクロメータ結晶を有するX線管及びモノクロメータタンクの典型的な配置の概略図である。
【図16】本書に記述された主題の実施形態に従い、足場上の1つのモノクロメータ結晶を有するX線管及びモノクロメータタンクの典型的な配置の概略図である。
【図17】本書に記述された主題の実施形態に従うX線管のX線ビーム出口部の画像である。
【図18】図17に示されるX線管のX線ビーム出口部の別の画像である。
【図19】本書に記述された主題の実施形態に従うアルミニウムフィルタ及びコリメータの画像である。
【図20】本書に記述された主題の実施形態に従う、分解してカットされたがX線管の端に取り付けるため曲げられていないシールドキャップの画像である。
【図21】本書に記述された主題の実施形態に従い、X線管の端からのX線ビームの望ましくない放出を防止する目的のための、X線管の端のシールドキャップの画像である。
【図22】本書に記述された主題の実施形態に従う、モノクロメータタンクからのX線ビームの望ましくない放出を防止するための鉛シールドを含む、モノクロメータタンクの画像である。
【図23】本書に記述された主題の実施形態に従う、モノクロメータタンクからのX線ビームの望ましくない放出を防止するための鉛シールドを含む、モノクロメータタンクの画像である。
【図24】本書に記述された主題の実施形態に従う、X線管の側面からのX線ビームの望ましくない放出を防止するための、X線管の端の近傍に配置されたシールドの別の部分の画像である。
【図25】本書に記述された主題の実施形態に従う、互いに動作位置にあるX線管及びモノクロメータタンクの画像である。
【図26】本書に記述された主題の実施形態に従う、モノクロメータタンクの内部部品の正面の画像である。
【図27】本書に記述された主題の実施形態に従う典型的なDEIシステムの上面斜視図である。
【図28】本書に記述された主題の実施形態に従う例示的なモノクロメータ結晶の側面図、上面図、及び正面図を含む概略図である。
【図29】本書に記述された主題の実施形態に従う内側/外側領域、並びに回転のχ及びθの角度を示すモノクロメータ結晶の斜視図である。
【図30】シリコン[111]、[333]、[444]、及び[555]結晶回折面を使用した国立シンクロトロン光源X15A箱の単色ビーム流束を示すグラフである。
【図31】FWHMの減少がロッキングカーブの傾きを増加させることを示すグラフである。
【図32】本書に記述される主題の実施形態に従うシンクロトロンX線ビームを用いたDEIシステムの実験配置の概略図である。
【図33】本書に記述する主題に従う例示的なアルミニウムフィルタヒートシンクの画像である。
【図34】24時間の期間にわたってサーミスタで測定された温度を示すグラフである。
【図35】本書に記述される主題の実施形態に従い、温度を低下させるための水冷却ラインを有する、典型的な改良された第2のモノクロメータベースと支持プレートの俯瞰図の画像である。
【図36】一定期間にわたるアナライザーのピーク位置を示す18keVのシステム安定性試験のグラフである。
【図37】18keVの安定性試験中の国立シンクロトロン光源(NSLS) X線リング電流のグラフである。
【図38】一定期間にわたるアナライザーのピーク位置を示す40keVのシステム安定性試験のグラフである。
【図39】40keVの安定性試験中のNSLS X線リング電流のグラフである。
【図40】本書に記述される主題の実施形態に従い、18keVで取得された典型的なCDファントムの画像である。
【図41】本書に記述される主題の実施形態に従い、30keVで取得された典型的なCDファントムの画像である。
【図42】30keV、ブラッグ[333]で、本書に記述される主題に従うシステム及び方法によりピークアナライザー結晶位置で取得されたMISTYファントムの3つの異なる領域の画像である。
【図43】エネルギーに対する、乳房の吸収、非干渉散乱、及びコヒーレント散乱の寄与を示すグラフである。
【図44】従来のX線撮影システム上に画像化された例示的な乳房標本の画像である。
【図45】本書に記述される主題に従う技術を使用し、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV、及び60keVのビームエネルギーでの同一サンプルのシンクロトロンX線写真である。
【図46A】18keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46B】25keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46C】30keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46D】40keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46E】50keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46F】60keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図47A】18keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47B】25keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47C】30keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47D】40keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47E】50keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47F】60keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図48】本書に記述された主題に従うMIRのために使用されるエネルギーに対するX線ビームエネルギーを示すグラフである。
【図49】MIRを使用した繊維径の評価を示す画像である。
【図50】本書に記述された主題に従う技術で得られたナイロン繊維の屈折プロファイルを示すグラフである。
【図51】MIRの屈折フィッティング直径較正のグラフである。
【図52A】本書に記述された主題に従う技術で得られた乳癌標本のMIR屈折画像である。
【図52B】本書に記述された主題に従う技術で得られた乳癌標本のMIR屈折画像である。
【図52C】本書に記述された主題に従う技術で得られた乳癌標本のMIR屈折画像である。
【図53】本書に記述された主題に従うDEIシステムによって得られる、限局性乳癌塊と棘状突起のMIRの組の画像である。
【図54A】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図54B】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図54C】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図54D】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図54E】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図55A】本書に記述される主題の一実施形態に従うコンピュータシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレートされたDEIシステムの概略図である。
【図55B】本書に記述される主題の一実施形態に従うコンピュータシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレートされたDEIシステムの概略図である。
【図55C】本書に記述される主題の一実施形態に従うコンピュータシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレートされたDEIシステムの概略図である。
【図56】本書に記述された主題の実施形態に従うDEIモノクロメータ結晶に結合される対数らせん集束要素の斜視図である。
【図57】火線でのソースと共に、対数らせん要素の集束効果を示す斜視図である。
【図58A】実験的研究のための特性評価システムの平面図である。
【図58B】実験的研究のための特性評価システムの立面図である。
【図59】直接X線-電荷変換検出器の模式図である。
【図60A】本書に記述される主題に従うシンクロトロンベースのシステムによって、同じナイロン線維ファントムから生成される画像である。
【図60B】本書に記述される主題に従うX線管ベースのシステムによって、同じナイロン線維ファントムから生成される画像である。
【図61】本書に記述された主題に従う技術を用い、図44及び図45A-45Fに示されるのと同一の乳房標本のシンクロトロン屈折画像である。
【図62A】本書に記述された主題に従うX線管を使用して得られた、乳房組織標本の同じ領域の画像である。
【図62B】本書に記述された主題に従うシンクロトロンを使用して得られた、乳房組織標本の同じ領域の画像である。
【図63】本書に記述された主題に従うX線管を用いて得られた、乳癌の乳房切除標本の画像である。
【図64】本書に記述された主題の実施形態に従い、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いて対象の画像を検出するためのイメージングシステムの実施形態の概略図である。
【図65】本書に記述された主題の実施形態に従い、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いて対象の画像を検出するためのイメージングシステムの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本書に記述された主題は、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いる対象の画像の検出システム及び方法を含む。特に本書に記述された主題は、対象の画像を検出するための改良されたDEI及びDEIシステム及び関連した方法を開示する。一態様によれば、本書に記述された主題は、対象の画像を検出するための方法を含むことができる。この方法は、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成することを含むことができる。又、この方法は、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置にモノクロメータ(monochromator)結晶を配置することを含むことができる。さらに、対象を通って第2のX線ビームを透過させると共に、該対象から透過X線ビームとして放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置することができる。透過X線ビームは、結晶アナライザーに入射角で向けられることができる。さらに、アナライザー結晶から回折されるビームから、対象の画像が検出されることができる。例えば医療への応用において、極めて低い線量、速い走査時間、高分解能、かつ比較的低い運用及び構築コストを提供することができるため、これらのシステム及び方法は有利であり得る。又、例えば、これらのシステムは小型ユニットに構築することができ、臨床的及び工業的用途に容易に使用可能である。
【0051】
本書に記述された主題に従うDEIを用いた画像処理技術は、対象の明確な吸収及び屈折画像を生成するためにロッキングカーブの対称点で取得された画像を使用することができる。DEI見かけ吸収画像は、従来のX線写真画像に似ているが、散乱線除去のおかげではるかに大きいコントラストを示す。DEI屈折画像は、大きな屈折率特性に起因して小さなビーム偏向の値を表すことができる。DEI消衰画像は、コントラストの基本的な構造がマイクロラジアンのオーダーで対象によって散乱された光子に起因するロッキングカーブ上の点で生成される。他のDEIベースの画像処理技術は、多重画像(Multiple Image)X線撮影(MIR)と呼ばれ、対象のX線吸収、屈折、超小角散乱を表す定量的な画像を生成するため、ロッキングカーブ上の複数のポイントを使用する。本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、アナライザーのロッキングカーブ上の任意の点で画像を生成することができ、さらに(1)任意のアナライザー位置での単一画像DEI;(2)DEI見かけ吸収及び屈折画像;(3)MIR吸収、屈折、及び散乱画像;並びに(4)質量密度画像:を生成するために使用することができる。これらのプロセス及びその他のDEIベースの処理技術に必要な未加工の(raw)画像データを生成する機能は、全てのDEIベースの処理技術に有用である。又、本書に記述されるシステム及び方法は、コンピュータ断層撮影(CT)の使用に適しており、さらに、あらゆるDEIベースのコンピュータ断層撮影アルゴリズムで使用するための未加工データを提供することができる。
【0052】
物質と光子の相互作用
このセクションでは、X線の発生、フォトニクス、及び物質と光子の相互作用の概要を提供する。又、このセクションは、X線吸収、屈折、及び散乱、並びにどのようにそれらがDEI及びDEI画像処理方法に関連するかの物理的なメカニズムを説明する。エネルギー付与(energy deposition)、線量測定、及び関連する放射線被曝の健康への影響の主題についても議論される。
【0053】
X線撮影で最も重要で基本的な物理的相互作用の一つは光電効果である。X線イメージングへのこの理論の応用は、従来のX線撮影でどのようにコントラストが得られるかを説明するのに役立つ。乳房組織などの対象を通過するX線は電子に衝突し、その軌道の結合エネルギーより上の準位にそのエネルギーを高めることができる。このことが生じると、電子は核の引力に打ち勝つ十分なエネルギーを得て、入射光子のエネルギーから電子の結合エネルギーを差し引いたエネルギーと等しい全エネルギーを持って原子を飛び出す。生体組織では、入射X線は直接的又は間接的なフリーラジカルの形成を引き起こすことができ、それらはDNA及び他の細胞構造と相互作用して突然変異やその他の有害な影響をもたらすであろう。この相互作用の肯定的な面は、X線光子のエネルギーが電子に移動されることであり、これはX線光子がフィルム又は画像システムの検出器に衝突しないことを意味する。対象を通った透過X線量の減少はX線の減衰と呼ばれ、従来のイメージングにおけるこのプロセスの主成分は、光電効果を介した吸収である。
【0054】
単位質量当り生じる光電吸収の確率はZ3/E3に比例し、ここでZは原子番号、Eは入射光子のエネルギーである。医用画像についてこの式は、ビームエネルギーの効果を反映するために簡略化され、光電吸収の確率が1/E3に比例するようになる。従来のX線撮影のコントラストは吸収に基づいているため、高いエネルギー準位では吸収コントラストが急速に減少するであろう。この傾向の例外は、各元素に固有の特性エネルギーである原子のK-吸収端で生じる。光電相互作用が発生する確率は、入射光子のエネルギーがK-吸収エネルギー又はK吸収端の直下にあるときに大幅に増大する。
【0055】
原子番号が大きくなりビームエネルギーが低くなるのに伴って光電吸収が増加するため、乳房組織の画像化は困難な試みになる。軟部組織の主要成分のほとんどは水素、炭素、窒素及び酸素から構成され、それらの全てが比較的原子番号が小さく、1keVより小さい吸収端を持つ。乳房組織の柔組織(parenchyma)を構成する主成分の比較的小さい平均原子番号及び低い吸収端の両方は、良性及び悪性の特徴の間の差異を決定することを、特に病気の初期段階で困難にする。
【0056】
従来のX線発生に固有な物理的相互作用は、「制動放射(breaking radiation)」のドイツ語であるbremsstrahlungである。画像システムで使用される非相対論的速度の電子は電圧によって加速され、次式:
【数7】
で定義される運動エネルギーを持つ。X線管のアノードのような金属中に放出される電子は、密な原子核を通り過ぎ、急速に減速するにつれて偏向させられる。電子は0から自身の総KEまでのエネルギーを放出することができ、エネルギーの損失は通過する電子が核にどれだけ近いかに依存する。低エネルギー放出によって生じる偏向の方が、大きなエネルギーの放出を生じるよりも遥かに高い確率を有する。高電位で加速され、速度の大幅な減少を生じる核との強い相互作用を持つ電子は、エネルギースペクトルのX線帯での光子の放出を生じる。診断用X線管から発生するX線の主な原因は、制動放射から来ている。
【0057】
原子と相互作用して加速された電子は、特性X線として知られる対象の原子的特性に主に基づく別のタイプのX線を生成することができる。加速された電子が原子軌道内の電子と衝突すると、そのエネルギーの一部が移動し、衝突された電子を高いエネルギー準位に上昇させる。移動するエネルギーがその電子の結合エネルギーに等しいか、又はそれより大きい場合、衝突された電子の放出が生じ得る。それらの電子のいずれかを放出する相互作用が生じると、ギャップを埋めるために高いエネルギー準位からの電子が落ちる(drop)。これらの電子は高いエネルギー準位から低いエネルギー準位に移るので、エネルギー準位の変化はエネルギーの放出を伴う。第2エネルギー準位から第1エネルギー準位へ遷移(n=2からn=1)する電子は、KαX線と呼ばれている。第3エネルギー準位から第1エネルギー準位への遷移(n=3からn=1)はKβX線として分類される。この電子衝突によって発生し得る多くの遷移が存在するが、特性X線を生成する相互作用は、低い原子エネルギー準位の遷移によって生じる。
【0058】
X線ターゲットのエネルギー出力スペクトルは、使用される金属の性質に依存する。ターゲットを選択する際に、特定のイメージング用途に必要な平均エネルギーを決定することは重要である。単色X線を利用する用途では、ターゲットによって生成された特性X線が特に重要である。
【0059】
X線光子が物質と衝突する場合、X線吸収に関し、吸収されたX線の一部及び透過されたX線の一部との相互作用は入射X線の減衰をもたらす。X線の減衰は、電子密度に基づく光子強度の減少であり、対象の平均原子番号の減少である。光子が物質を通過し、強度が減少するにつれてX線の散乱も生じ得るが、従来のX線撮影でこの成分を測定することは困難である。厚さXの対象を通過するときに吸収される光子の量の定量化は、入射ビーム(IO)の光子の数と比較して幾つの光子が透過されたか(It)によって決定される。物質を通る際の光子が減衰する度合は測定され得る材料特性であり、cm-1の単位での減衰係数(μ)と呼ばれる。線(linear)減衰係数の違いは、高い減衰と低い減衰の領域の間での最も高いコントラストで、X線画像のコントラストを可能にする。
【0060】
線吸収係数は横断する物質の密度に比例し、集計された(tabulated)値はしばしばμ/ρとして表される。この値は質量吸収係数と呼ばれ、それは物質の物理的状態(固体、液体、又は気体)とは無関係である。
【0061】
1つの媒質から他の媒質へ通過する光の屈折率は、ヴィレヴロルト・スネル(Willebrord Snell)によって最初に発見され、この過程を定義する法則はスネルの法則として知られている。数学的には、この関係は次式:
【数8】
で定義され、ここで入射媒質は媒質1、屈折媒質は媒質2である。
【0062】
一方の媒質から他の媒質へ通り過ぎる電磁波の通過は、屈折率の差による偏差で媒質中を通過する可視光に類似する。可視光の古典的な例を使用し、1つの屈折率から高い屈折率を持つ媒質へ移動する光を屈折することができる。この例は、一般的に可視光の屈折率を示すために使用されるが、この法則は、X線にも適用できる。しかしながら、X線について、複素屈折率の実数部は1より小さく、次式:
【数9】
で表すことができる。高いエネルギーX線で、かつ小さい平均原子番号の材料を用いた場合、??の近似値は次式:
【数10】
で提供され、ここでNは試料材料の単位体積当たりの電子の数、reは古典的電子半径、?はX線の波長である。これらの式を使用して、異なる屈折率を持つ2つの領域の間の線界面(linear interface)に対し、入射光子が次式:
【数11】
で近似される角度Δθで偏向されることを示すことができる。
【0063】
光子が対象に衝突すると、それらは主に3つのイベント(event)を受けることができ:何ら相互作用を生じずに通過することができ、光電効果によって吸収されることができ、又は散乱イベントを受けることができる。その最も一般的な定義では、散乱は、他の対象との相互作用に続く光子の経路の角度偏差(angular deviation)である。光子の特性、光子が移動する媒質、及び光子が衝突する対象の特性は、相互作用の結果に大きな影響を与える。
【0064】
エネルギーの損失又は移動を伴わずに起こる相互作用は弾性的であり、関連する入射光子のエネルギー損失を伴わずに生じるX線相互作用は、弾性散乱又はコヒーレント散乱と呼ばれる。コヒーレント散乱イベントでは、一次X線光子のエネルギーは最初に完全に吸収され、次に単一原子の電子によって再放出される。相互作用には正味のエネルギー損失はないが、光子再放出の方向は完全に任意である。医用画像について、コヒーレント散乱相互作用は、非干渉散乱として知られるエネルギー損失を伴って生じる光電相互作用又は散乱イベントよりも遥かに重要ではない。
【0065】
画像診断で使用されるエネルギー範囲で、支配的でしばしば問題となる散乱相互作用は、非干渉散乱である。この効果はコンプトン散乱として知られている。コンプトン散乱相互作用は、X線光子と、原子の外殻(outer)エネルギー準位の電子との間の衝突として記述することができる。外殻電子を結合するエネルギーは最低であり、光子と電子の間の相互作用で失われる全てのエネルギーは、運動エネルギーとして電子に移動される。このエネルギー移動は、光子のエネルギーの減少又は波長の増大をもたらし、かつ原子から衝突された電子の放出をもたらす。エネルギーと運動量の両方は衝突時に保存され、従って散乱された光子のエネルギーと角度偏差は、電子に移動したエネルギーの量に依存するであろう。波長変化を記述するために使用されるコンプトン散乱式は、次式:
【数12】
によって提供され、ここでλは入射光子波長、λ'は散乱された光子の波長である。
【0066】
高エネルギーX線光子は、通常は少量のエネルギーを移動し、光子の初期軌道に比べて散乱角を小さくする。逆に、低エネルギーX線光子の散乱はより実際にはより等方的である。従来のX線撮影の問題は、画像診断で使用される低エネルギーX線が等方散乱する一方で、検出される光子が前方に向けられることである。画像を生成するために使用される目的の光子と比較して、これらの散乱光子は同等のエネルギーと方向を持つことができる。エネルギーと方向が類似することは、散乱線除去グリッド及びエネルギーフィルタによるそれらの除去を困難にさせる。このような理由から、コンプトン散乱は、得られた画像を不鮮明にすることで分解能とコントラストを低下させる可能性がある。X線撮影でのコンプトン散乱の影響を低減するために精巧な方法が使用されてきたが、この効果を完全に除去することに成功した従来のX線イメージング技術は存在しない。
【0067】
電離放射線を使用した画像システムの開発及び使用はいずれも、対象又は患者の内部構造を視覚化するために使用される電磁放射によって可能であると共に基礎を置かれている。電離放射線は、原子の電子を失わさせてイオン化させるのに十分なエネルギーを持つ放射線として定義される。X線イメージングは最も一般に使用される電離撮像法であるが、他の解剖学的及び機能的画像診断法は、診断情報を取得するために電離放射線を使用する。電離放射線を使用したことによる避けられない結果は、その使用に関連する線量であり、どれだけの線量が測定されたか及び関連する健康への影響の理解が不可欠である。測定の他のシステムと同様に、放射線被曝の定量化が進んでおり、数多くの装置の製造と方法が改められてきた。
【0068】
線量は、被験者(subject)又は対象によって被曝又は吸収された放射線量として定義される。レントゲンは、X線又はガンマ線照射によって空気に生成されたイオン化を測定するための被曝単位である。レントゲンを単位とする被曝の決定は、空気の体積要素内の光子によって遊離した全ての電子が空気中で完全に停止したときに、体積要素内の空気の質量によって割られる(divide)、空気中に生成された痕跡(sign)の全てのイオンの電荷の合計を決定することを含む。1レントゲン(R)は、空気1キログラム当たり、X線又はガンマ線によって生成される電荷の2.58×10-4クーロンとして定義される。レントゲンは、標準温度及び圧力で1ccの乾燥空気内に1esu(2.08×109イオン対)の電荷を生成するx−及び/又はガンマ放射線の量としても定義される。レントゲンの使用はx及びガンマ放射線の測定に限られ、より重要なことには、それは吸収線量の測定ではないことである。その使用は医用画像装置には一般的ではないが、空気イオン化の測定は他の分野でまだ広く使用されているため、その使用は続いている。
【0069】
生物学的画像応用のための放射線のより有用な測定は、被験者又は対象によって吸収された放射線量を考慮し、ラド(rad)で表現される。ラドは、組織1gによって吸収される100エルグ(1エルグ=10-7J)のエネルギーに等しい。国際的に採用された吸収放射線の単位はグレイであり、それは100ラドに相当する。ラド又はグレイは全エネルギーの尺度ではなく、組織1g当たりどれだけの線量が吸収されたかの尺度である。全エネルギーがどのくらい放出されたかを決定するためには、被曝された組織の量を知る必要がある。ラドとグレイの両方は吸収線量の尺度を提供するが、それはまだ組織に残されたエネルギー量の尺度に過ぎない。
【0070】
特定の種類の放射線の影響を決定するのに加えて、被曝された組織の種類も全体の結果に影響を与える。特定の種類の組織は、他に比べて放射線に傷付きやすく、最も傷付きやすいものの幾つかは造血幹細胞、腸上皮、及び生殖細胞等の急速に分裂する細胞である。実効線量として知られる用語は次式:
【数13】
で表され、放射線を浴びた組織の種類に等しい線量と、それらの重み係数の積を合計することによって計算される。
【0071】
生体系は、生命に必要な機能を実行する分子と構造の極めて複雑なシステムに依存している。電離放射線は、機能の喪失又は細胞死につながる可能性がある細胞の働きを妨害し得る。体内の分子は化学結合によって結合され、しばしば酵素及び他の生物機械(biological machinery)の援助を受けて特定の順序で相互作用する。イオン化によって放出されるエネルギーは、化学結合を切断し、これらの分子の形状や機能を潜在的に変化させる。細胞への影響は、細胞のどの部分が破壊され、一定時間内にいくつのイベントが生じるかに依存する。
【0072】
細胞の最も傷付きやすく重要な構成要素のひとつはそのDNA(デオキシリボ核酸)であり、細胞の複製、転写、及びその後の翻訳に関与する。電子の放出につながるイオン化のイベントがDNA内で生じた場合、DNA内で電荷が形成される可能性がある。このようにして生じる相互作用は、イオン化イベントがDNA内又は隣接する分子から直接生じるという点で直接作用と呼ばれる。X線からのフリーラジカル生成の約2/3は間接作用として分類され、放出された電子が水分子に衝突したときに発生する。これは水分子をイオン化し、フリーラジカルを生成する一連の手順を導く可能性がある。一旦フリーラジカルが生成されると他の分子と非常に強く反応し、安定した電子配置に戻す可能性がある。フリーラジカルがDNA分子と相互作用すると、それは何もしないか、一時的な機能障害を引き起こすか、又はセルを不安定化して最終的な細胞死をもたらすエラーを生成する可能性がある。
【0073】
過度の放射線被曝は細胞死につながり、それは2つの基本的な形態に現れることができる。イオン化は、細胞がもはや自分自身を維持することができないところまで細胞機能を崩壊させ、細胞死をもたらす可能性がある。細胞が機能することは許容するが、もはや複製できない有糸分裂阻害も発生する可能性がある。細胞レベルに影響を与える結果は、臓器、組織、又は生物レベルに拡大する可能性がある。全身に対して100グレイの線量は24〜48時間以内に死に至る可能性がある。2.5〜5グレイの全身線量は数週間以内に死をもたらす可能性がある。臓器及び身体の他の部分への局所的な放射線被曝は、組織型の感受性によって部分的に決定される損傷の影響と共に、局所(focal)細胞死及び機能不全をもたらす可能性がある。
【0074】
細胞死は、電離放射線への被曝の1つの結果に過ぎず、DNAの変化はDNA設計図にエラーを生じさせる可能性がある。癌の進行は、DNA損傷の体細胞への起こり得る結果である。DNAのエラーは細胞制御の異常をもたらし、制御されない増殖及び癌の進行につながる可能性がある。生殖細胞のDNA内のエラーの誘発は、何世代にわたって自身に現れない遺伝欠陥につながる可能性がある。
【0075】
DEI及びDEIシステム、並びに関連する方法
本書に記述される主題の一実施形態に従うDEIシステムは、X線管から放射される特定のX線を排除するための1つのモノクロメータ結晶を含むことができる。図1A〜1Cは、本書に記述される主題の一実施形態に従い、1つのモノクロメータ結晶を含み、対象Oの画像を生成するように動作可能な、一般に100で示されるDEIシステムの概略図、上面斜視図、及び側面-上面(side-top)概略図である。さらに、図1D及び1Eは、本書に記述される主題の一実施形態に従う、動作の異なるモードにおけるDEIシステム100の概略図である。図1A及び1Bに関し、一般に100で示されるDEIシステムは、一般にXBで示される多色X線ビーム、又はX線管XTの点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成するように動作可能なX線管XTを含むことができる。X線ビームXBは異なるエネルギーを持つ光子を含むことができる。一例では、X線管XTは、X線ビームXBを放出可能な点源を有するタングステンX線管である。
【0076】
図2は、本書に記述される主題の一実施形態に従う、固定されたX線管構造に基づくX線管XTの概略図である。図2を参照すると、X線管XTは、一般にEBで示される電子ビームを生成するように構成されたカソードCを含む。カソードCはタングステンから作られている。高電圧がカソードCとアノードAにわたって印加され、それはX線管XTの真空内部Vを横切って高い電位差を生じる。電位は、アノード接続ANCを経由してアノードAに印加されることができる。X線管XTは、カソードCを加熱するよう構成されるフィラメントFを含むことができる。フィラメントFは、フィラメント接続FCによって電源に接続されることができる。
【0077】
真空内部Vは、X線管ハウジングXTH内で規定される。カソードCを加熱することにより、電子は熱電子的に(thermionically)カソードCから放射されるであろう。静電焦点カップ(focusing cup )EFCが電子放出点を囲み、それはアノードAに向かって電子流を集中することに役立つ。さらに、カソードCから放出された電子は、回路の両端に印加される電圧によって決定されるギャップを越え速度を持ちながら真空内部Vを横切ってアノードAに集中する。
【0078】
カソードCから放出された電子は、アノードAのタングステンターゲットTに向けられ、タングステンターゲットTに入射されることができる。ターゲットT上への電子の衝突の結果、X線ビームXBが生成される。X線ビームXBは、X線窓のXWを介して真空内部Vを出る。X線ビームXBは、特性輝線及び制動放射を含むことができる。
【0079】
X線発生装置の一例は、ドイツ、アーレンスブルクのGEインスペクションテクノロジーズから入手可能なISOVOLT TITAN160である。他の典型的なX線管は、MXR-160HP/20X線管のようなX線管のコメット(COMET)MXR-160シリーズを含み、それはスイス、フラマット(Flamatt)のコメットAGから入手可能である。他の典型的なX線管は、モリブデン、鉄、及び銅を含む、タングステン以外のアノードを使用したものを含むことができる。ターゲットの他の適切な種類は、六ホウ化バリウムターゲット及びサマリウムターゲットを含む。六ホウ化バリウムターゲットは、約30keVでX線を生成することができる。サマリウムのKα1線は約40keVに存在する。一例では、X線管のアノードは、X線ビームを放出可能な回転アノードであることができる。別の例では、X線管のアノードは、X線ビームを放出可能な静止アノードであることができる。
【0080】
図1A及び1Bを再び参照すると、コリメータC1は、モノクロメータ結晶MCの角度許容(angular acceptance)ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。システム100は又、モノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するため、X線管XTとモノクロメータ結晶MCとの間に位置する追加のコリメータを含むことができる。コリメータは、X線ビームXBの一部がモノクロメータ結晶MCへ通過できるスリット又は穴を規定することができる。さらに、コリメータは、鉛などのX線ビームを遮断するための任意の適切な材料で作られることができる。X線管XTとコリメータC1との間の距離Xは、約100ミリメートル(mm)とすることができる。
【0081】
モノクロメータ結晶MCは、それに入射されるX線ビームXBの部分の所定のエネルギーを選択するように構成されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MCは、目的とするエネルギーを持っていないX線ビームXBの光子の大部分を排除するのに適したシリコン[333]モノクロメータ結晶である。タングステンX線管の場合、シリコンモノクロメータ結晶によって反射されるビームエネルギーの様々な範囲があり得る。この場合、X線ビームの特性輝線は、59.13 keV(Kα1)と57.983(Kα2)にあると共に、モノクロメータ結晶の狭い角度許容ウィンドウ内に収まる制動放射である。制動放射の明るさは、2つのKα輝線より桁違いに小さい。
【0082】
X線ビームXBは、モノクロメータ結晶MCによって幾つかの異なる方向に散乱される。コリメータC2は、アナライザー結晶ACの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。コリメータC2は、アナライザー結晶ACによる遮断のために、X線ビームXBの一部がアナライザー結晶ACへ通過できるスリット又は穴を規定することができる。一例では、モノクロメータ結晶MCとアナライザー結晶AC間の距離Yが約500mmとされることができる。
【0083】
アナライザー結晶ACは、特定の方向に進む放射線の量を測定するために回転されることができる。結晶系の角度感度関数(angular sensitivity function)は、固有(intrinsic)ロッキングカーブと呼ばれ、この性質は、画像屈折コントラストを生成するために使用される。X線光子がロッキングカーブのピークに向かってずれている場合、その反射率、及びその強度が増加するであろう。対象の特性(feature)が光子をロッキングカーブの下方に偏向させ、又はピーク反射率の位置から離れさせる場合、それは強度の低下を引き起こす。
【0084】
試料又は対象は空気中で画像化され、又は水などの接触媒質(coupling medium)に浸漬されることができる。接触媒質の使用は、空気と画像化される対象との間の勾配率を低減するために使用されることができ、従って空気−対象の界面で顕著な屈折をすることなく、入射X線を試料内に通過させる。これは、ほとんどの対象には不要であるがDEI法の応用であり、対象の内部コントラストを改善するために使用されることができる。
【0085】
一例では、モノクロメータ結晶MCは一次元において狭い対称な結晶である。対称な結晶の格子面(X線ビームを回折するのに寄与する原子層)は、結晶の表面に平行である。対称な結晶は、入射ビームの発散と大きさを保持する。比較として、非対称な結晶は入射ビームの発散及び大きさを変更する。対称的な結晶であるモノクロメータ結晶MCのこの例では、試料対象を走査すると共に対称な結晶を用いた検出器によって広い撮像視野(例えば、100mmを単位として(by)約100mmの撮像視野)の2次元イメージングが得られる。対称な結晶が非対称な結晶より優れている一つの例示的な点は、非対称な結晶は、イメージングビームを調製する(例えば、X線を選択し、平行にする)ために大きなモノクロメータ結晶を必要とし、大きな結晶の完全性に極度に制限を課すことである。さらに、X線ビームのエネルギーの増加に伴って非対称な結晶の大きさが増加し、従って約59.13 keVのX線について実用的でなくなる。反対に、例えば、本書に記述される主題に従って用いられる対称なモノクロメータ結晶は、長さ約30mmの適度な大きさの結晶と共に59.13keVのX線を利用することができる。
【0086】
図1A及び1Bを再び参照すると、対象Oを画像化するための走査ステージSTにより、対象OはX線ビームXBの経路に配置されることができる。矢印Aで示されるように、対象Oは、X線ビームXBの方向に垂直に走査されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは対象Oを通過してアナライザー結晶ACによって解析されることができ、それはモノクロメータ結晶MCに整合するシリコン[333]結晶であることができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、デジタル検出器(又は画像版 (image plate))DDによる遮断のために回折されることができる。デジタル検出器DDは遮断されたX線ビームXBを検出し、遮断されたX線ビームを表す電気信号を生成することができる。
【0087】
一例では、線源走査システムが利用されることができる。一例では、走査システムは、対象と検出器の間で1:1の相関を持つことができる。
【0088】
電気信号は、画像解析と操作者への表示のためにコンピュータCに通信されることができる。電気信号によって表現される画像は、得られた画像のKα1及びKα2エネルギーの両方からの寄与を含むことができる。一例では、関心あるエネルギーは、59.319 keVのKα1エネルギーである。この例では、Kα2エネルギーによって生成される画像の特徴は、画像処理により除去されることができる。X線ビームのKα2部分によって生成された特徴が、目的とする分解能より低く離れた場合、その二つは共に使用されることができ、必要とする全体の画像時間を短縮する。高分解能の用途については、Kα2エネルギー部分は陰影効果(shadowing effect)を引き起こす可能性があり、画像処理により除去されることができる。コンピュータCは、吸収画像、屈折効果を示す画像、及び超小角散乱を表現する画像を生成するよう構成されることができ、その種類は以下に詳細に記述される。
【0089】
特に図1Bを参照すると、モノクロメータ結晶MCは、扇ビーム(fan beam)としてのX線ビームXBを伝搬させることができる。扇ビームは望ましくないX線を遮断するためのコリメータと視準を合わせる(collimated with)ことができ、明瞭なDEI画像及び低い被験者線量をもたらす。2次元ビームとは対照的に、扇ビームはより容易に望ましくないX線を遮断するために制御されることができる。
【0090】
図1Cを参照すると、X線管XT(図1A及び1Bに示されている)からのX線放射の放出のソースSと、モノクロメータ結晶MC、対象O、アナライザー結晶AC、及び検出器DDとの間の典型的な距離が示されている。構成要素は、用途に応じて互いに他の適切な距離で離間されてもよい。この例では、DEIシステム100は、マンモグラフィー用に構成されている。
【0091】
図1D及び1Eを参照すると、上述のように、これらの図は、異なる動作モードでのDEIシステム100を示す。X線ビームの特性輝線Kα1K1及びKα2K2は、X線管XTによって生成される。輝線Kα1K1及びKα2K2は同一の点源PSに由来する。上述したように、モノクロメータ結晶MCは、目的とするエネルギーを有しないX線ビームの光子の大部分を排除する。この場合、輝線Kα1K1及びKα2K2並びに制動放射はモノクロメータ結晶MCを通過し、示されるようにアナライザー結晶ACに向きを変えられる。
【0092】
コリメータC2は、輝線Kα1K1及びKα2K2の経路に配置される。コリメータC2は、輝線がアナライザー結晶ACに向かって選択的に通過できるような調整可能なスリットを規定する。図1Dに示される第1の動作モードでは、スリットは、点源PSから約400 mm離れて0.6 mmの開口部Xに調整されると共に、輝線Kα1K1がコリメータC2を通過し、Kα2K2が遮断されるように配置されている。従って、コリメータC2は、輝線Kα1K1からのX線、及び制動放射線の非常に狭い範囲を除き、全てのX線を排除する。このモードではビームは発散されず、対象O及び検出器DDは、逆方向に同じ走査速度で走査される。このモードは、最大可能な面外分解能(DEIのコントラストの方向)が得られるが、X線ビームからX線の一部を除去するのに費やし、それによって露光時間の増加を必要とする。対象Oの仮想点源は、VPSとして指定される。
【0093】
図1Eを参照すると、第2の動作モードでは、輝線Kα1K1及びKα2K2、並びに隣接するエネルギーでの制動放射は、コリメータC2を通過する。コリメータC2のスリットは、点源PSから約400 mm離れて2.0mmの開口部Xに調整されると共に、輝線Kα1K1及びKα2K2、並びに制動放射がコリメータC2を通過するように配置されている。このモードでは、ビーム発散が考慮される。画像ぶれを避けるため、対象O及び検出器DDは、同じ角速度で走査されることができる。検出器DD、及び対象Oが配置されている試料ステージの相対的な走査速度は、ソース−対象間の距離、及びソース−検出器間の距離(ここで距離はビーム経路に沿ってとられる)によって決定されることができる。このモードでのビーム発散は面外分解能を低下させ得るが、このモードはより多くのX線を通過させるという利点を持ち、従って、より高速な露光時間を可能にする。検出器DDの仮想点源はDVPSとして指定される。円形部分CP1及びCP2は、それぞれ対象O及び検出器DD用の仮想点源を中心とする。
【0094】
さらに、第2のモードを使用した一実施形態では、Kアルファ線と異なるX線エネルギーでの制動放射を捕捉することができる。従って、この実施形態では、システムはX線エネルギーを調整可能であり、それは特性放射エネルギーに限定されない。この機能は、モノクロメータ結晶とアナライザー結晶との入射角を変えることによって実現されることができる。一例では、この機能は、ブラッグの法則に従って入射角を11.4度に変えることによって実現され、銅フィルタをアルミニウムフィルタで置き換えることによって実現されることができる。この例では、イメージングは30keVのX線エネルギーで発生することができる。タングステン輝線エネルギーよりも低いX線エネルギーは、比較的薄い対象に利用されることができる。
【0095】
一例では、不要な結晶反射及び高調波を低減又は排除するため、約19 keVの制動放射を除去するように銅フィルタが構成されることができる。このフィルタリングが無ければ、画像が劣化する可能性がある。
【0096】
図3は、本書に記述された主題の実施形態に従う図1A-1EのDEIシステム100を示す上面概略図である。図3を参照すると、X線ビームXBはX線管XTのソースによって生成される。コリメータC1及びC2は、X線管XTのソースから約5.7度の角度でアナライザー結晶ACに向かうX線ビームXBの一部の広がりを遮断する。コリメータC1及びC2を通過するX線ビームXBの部分は、コリメータのスリットを通過するX線ビームの部分である。
【0097】
システム100は、それぞれ右及び左のアナライザーヨウ化ナトリウム検出器D1及びD2、並びにそれぞれ右及び左のモノクロメータヨウ化ナトリウム検出器D3及びD4を含むことができる。検出器D1-D4は、アナライザーの位置合わせ(alignment)のために構成されている。これらの検出器は、モノクロメータ結晶MC又はアナライザーACから放射される回折X線ビームの強度を測定するために使用される。システム調整のため、検出器D1及びD2は、アナライザー結晶AC X線ビームXBの後ろ(post)に配置される。アナライザー結晶が望ましい角度に調整されていない場合、検出器D1及びD2で測定される強度はこれを表示し、システムが調整されることができる。モノクロメータ結晶MC X線ビームXBの後ろの検出器についても同様である。さらに、検出器D1-D4はリアルタイムでX線ビームXBを測定し、アナライザー結晶、D1及びD2、χ(X線ビームの経路に沿う軸の周りに測定された角度)又はモノクロメータ結晶χ、D3及びD4を調整するために使用されることができる。アナライザー結晶ACとモノクロメータ結晶MCをセットし、測定し、及び調整するためのこれらの検出器の使用は、成功したDEI画像取得のために重要になることがあり得る。
【0098】
図4は、本書に記述された主題の実施形態に従い図1A-1Eに示される、DEIシステム100を使用した対象Oをイメージングするための例示的なプロセスを示すフローチャートである。図4を参照すると、ブロック400では、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームが生成される。例えば、X線管XTによって生成されたX線ビームXBは、多色エネルギー分布を持つことができる。さらに、例えば、X線管XTは、X線ビームを生成するための少なくとも50kWの電力に設定されることができる。別の方法では、例えば幾つかの医療応用、研究開発、小動物イメージングなどのため、X線管XTの電力は50kWより小さい電力(約30kWなど)に設定されることができる。より小さい電力を使用する利点は、削減されたコストである。第1のX線ビームは、約10keVから約60keVまでの範囲のビームエネルギーを持つことができる。一例では、第1のX線ビームは、シンクロトロンによって発生されることができる。
【0099】
ブロック402では、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、モノクロメータ結晶MCは、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置されることができる。例えば、ビームを遮断するため、モノクロメータ結晶MCの表面は、X線ビームXBの経路に配置されることができる。上記したように、モノクロメータ結晶MCは、目的とするエネルギーを有しないX線ビームXBの光子の大部分を排除するように適合されることができる。従って、結果として所定のエネルギー準位を持つ第2のX線ビームが生成されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MCの表面は、モノクロメータ結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して約5度と20度の間の角度で配置されることができる。この例では、これらの角度は、[333]反射のために使用されることができる。又、他の適切な角度は、モノクロメータ結晶MCの表面の位置決めに使用されることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MCの表面は、モノクロメータ結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して約1度と20度の間の角度で配置されることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MCの表面は、モノクロメータ結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して約1度と20度の間の角度で配置されることができる。[333]及び[111]の両方の反射が使用される場合、10から70keVのエネルギー範囲について、角度範囲は約1度と約40度の間とすることができる。
【0100】
ブロック404で、第2のX線ビームを対象Oから透過させ、かつ対象Oからの透過ビームを放出させるため、対象Oは第2のX線ビームの経路に配置されることができる。例えば、対象OをX線ビームの経路に移動させるため、対象Oは走査ステージST上に配置されることができる。
【0101】
ブロック406では、透過X線ビームは入射角でアナライザー結晶ACに向けられることができる。例えば、アナライザー結晶ACは、透過X線ビームの経路に配置され、かつ入射角度のX線ビームを遮断する角度で配置されることができる。少なくともアナライザー結晶ACで遮断されるビームの部分は、検出器DDに向かって回折されることができる。
【0102】
ブロック408では、対象Oの画像は、アナライザー結晶ACから回折されたビームから検出されることができる。例えば、検出器DDは、アナライザー結晶ACからの回折ビームを検出することができる。回折ビームは、以下の典型的な検出器:検出された画像をデジタル化するよう構成された検出器;X線写真フィルム;及び画像版:のいずれかで検出されることができる。一例では、対象の画像は、結晶アナライザーのロッキングカーブのピーク、及び/又は結晶アナライザーのロッキングカーブのピーク近傍において結晶アナライザーから回折されるビームから検出することができる。検出された画像は、ユーザに提示するためのコンピュータCを介して処理されると共に、ユーザへ提示されることができる。
【0103】
対象の画像を検出する別の例では、対象Oの第1の角度画像は、第1の角度位置に配置されたアナライザー結晶ACから放出された第1の回折ビームから検出されることができる。対象Oの第1の角度画像は、アナライザー結晶ACの低いロッキングカーブ角度設定で検出されることができる。さらに、対象Oの第2の角度画像は、第2の角度位置に位配置されたアナライザー結晶ACから放出された第2回折ビームから検出されることができる。対象Oの第2の角度画像は、アナライザー結晶ACの高いロッキングカーブの角度設定で検出されることができる。第1及び第2の角度画像は、屈折画像を得るためにコンピュータCで組み合わせられることができる。さらにコンピュータCは、屈折画像から対象Oの質量密度画像を得ることができる。質量密度画像は、コンピュータCのディスプレイを介してユーザに提示されることができる。
【0104】
図5は、本書に記述される主題の実施形態に従う図1A-1E、及び図3に示される、DEIシステム100のアナライザー結晶ACの側面図である。図5を参照すると、アナライザー結晶ACの表面からの特性輝線Kα1及びKα2の回折が示される。1以上のX線エネルギーの調整(accommodation)は、改良されたX線流束をもたらすことができる。
【0105】
別の実施形態において、本書に記述される主題に従うDEIシステムは、X線管から放出される特定のX線を排除するための不整合な結晶構造を含むことができる。この構造では、X線ビームのKα2輝線は、モノクロメータで排除されることができる。図6A及び図6Bはそれぞれ、本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み対象Oの画像を生成するように動作可能な、一般に600で示されるDEIシステムの概略図、上面斜視図である。図6A及び6Bを参照すると、DEIシステム600は、X線ビームXBを生成するよう機能するX線管XTを含む。コリメータC1は、第1のモノクロメータ結晶MC1の角度許容ウィンドウを外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。X線ビームXBの遮断されない部分は第1のモノクロメータ結晶MC1で遮断することができ、それは第2のモノクロメータ結晶MC2で遮断するための方向に、上記遮断されない部分を屈折させる。第2のモノクロメータ結晶MC2に向かって回折された単色ビームを生じさせるため、第1のモノクロメータ結晶MC1は、光子エネルギーの非常に狭い範囲を選択するためのブラッグの法則を用いて、特定の角度に調整されることができる。X線管XTからのX線ビームXBが発散するため、第1のモノクロメータ結晶MC1は、特性輝線Kα1及びKα2、並びに隣接するエネルギーの制動放射を含むことができるエネルギーの範囲を回折することができる。第2モノクロメータ結晶MC2の機能は、入射ビームと平行な方向にビームの向きを変え、アナライザー結晶ACと一直線に揃えることである。システムを特定のエネルギーに調整する場合、第1のモノクロメータ結晶が最初に調整され、次にビームの位置を見つけるために第2の結晶が調整される。
【0106】
第2のモノクロメータ結晶MC2が調整されると、結晶上のビームの位置を見つけるためにアナライザー結晶ACが走査される。ビームの位置を見つけるために結晶を搖動(rocking)させることは特定の放送局を見つけるためにラジオのダイヤルを走査することに似ており、アナライザーの角度位置が第2のモノクロメータ結晶と完全に揃ったときに強度の急激な上昇が生じる。アナライザー結晶ACが調整されると、システムが調整され、使用できるようになる。
【0107】
第1及び第2のモノクロメータ結晶MC1及びMC2はそれぞれ、X線管から放射される特定のX線を排除するための不整合な結晶構造で構成されることができる。モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、X線ビームXBのKα2輝線を排除するために使用されることができ、それは異なる結晶のエネルギーに対する角度許容を利用することによって達成されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、それぞれゲルマニウム[333]及びシリコン[333]モノクロメータ結晶であることができる。
【0108】
図7は、本書に記述される主題の実施形態に従う図6A及び図6Bに示される、DEIシステム600を使用した対象Oの画像化のための例示的なプロセスを示すフローチャートである。図7を参照すると、ブロック700で、第1のX線ビームが多色エネルギー分布を持つように生成されることができる。例えば、X線管XTによって生成されたX線ビームXBは多色エネルギー分布を持つことができる。さらに例えば、X線管XTは、X線ビームを生成するために少なくとも50kWの電力に設定されることができる。第1のX線ビームは、約10keVから約60keVの範囲のビームエネルギーを持つことができる。一例では、第1のX線ビームはシンクロトロンによって生成されることができる。
【0109】
ブロック702で、モノクロメータ結晶MC1は、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置されることができる。例えば、モノクロメータ結晶MC1の表面は、ビームを遮断するためX線ビームXBの経路に配置されることができる。上記したように、モノクロメータ結晶MC1は、目的とするエネルギーを持たないX線ビームXBの光子の大部分を排除するよう適合させることができる。従って、結果として所定のエネルギー準位を持つ第2のX線ビームが生成されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MCの表面は、モノクロメータ結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して約5度と20度の間の角度で配置されることができる。
【0110】
ブロック704で、モノクロメータ結晶MC2は、第2のX線ビームを遮断してアナライザー結晶ACに向けるように配置されることができる。一例では、コリメータC1を通過するX線ビームXBの部分の経路に平行な経路に沿って第2のX線ビームが指向されるよう、第2のモノクロメータ結晶MC2が配置されることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は不整合であることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、X線ビームXBの所定の部分を排除するために選択されることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、ゲルマニウム[333]及びシリコン[333]モノクロメータ結晶のいずれかとすることができる。
【0111】
ブロック706で、第2のX線ビームを対象Oから透過させ、かつ対象Oからの透過ビームを放出させるため、対象Oは第2のX線ビームの経路に配置されることができる。例えば、対象OをX線ビームの経路に移動させるため、対象Oは走査ステージ上に配置されることができる。
【0112】
ブロック708では、透過X線ビームは入射角でアナライザー結晶ACに向けられることができる。例えば、アナライザー結晶ACは、透過X線ビームの経路に配置され、かつ入射角度のX線ビームを遮断する角度で配置されることができる。少なくともアナライザー結晶ACで遮断されるビームの部分は、検出器DDに向かって回折されることができる。
【0113】
ブロック710では、対象Oの画像は、アナライザー結晶ACから回折されたビームから検出されることができる。例えば、検出器DDは、アナライザー結晶ACからの回折ビームを検出することができる。回折ビームは、以下の典型的な検出器:検出された画像をデジタル化するよう構成された検出器;X線写真フィルム;及び画像版:のいずれかで検出されることができる。一例では、対象の画像は、結晶アナライザーのロッキングカーブのピーク、及び/又は結晶アナライザーのロッキングカーブのピーク近傍において結晶アナライザーから回折されるビームから検出することができる。この例では、ピークはロッキングカーブのダーウィン(Darwin)幅の約半分の中で生じる可能性がある。検出された画像は、ユーザに提示するためのコンピュータCを介して処理されると共に、ユーザへ提示されることができる。
【0114】
対象の画像を検出する別の例では、対象Oの第1の角度画像は、第1の角度位置に配置されたアナライザー結晶ACから放出された第1の回折ビームから検出されることができる。対象Oの第1の角度画像は、アナライザー結晶ACの低いロッキングカーブ角度設定で検出されることができる。さらに、対象Oの第2の角度画像は、第2の角度位置に位配置されたアナライザー結晶ACから放出された第2回折ビームから検出されることができる。対象Oの第2の角度画像は、アナライザー結晶ACの高いロッキングカーブの角度設定で検出されることができる。第1及び第2の角度画像は、屈折画像を得るためにコンピュータCで組み合わせられることができる。さらにコンピュータCは、屈折画像から対象Oの質量密度画像を得ることができる。質量密度画像は、コンピュータCのディスプレイを介してユーザに提示されることができる。
【0115】
図8-10は、異なる波長でのゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラム(Dumond diagram)のグラフである。特に、図8は、タングステンのKα1及びKα2に対応する波長範囲内のゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムのグラフである。図9は、タングステンのKα1に対応する波長範囲内のゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムのグラフである。タングステンのKα1(59.319 keV)に対応する波長では、ゲルマニウム[333]及びシリコン[333]が完全に重なり、そのため、Kα1エネルギーが第1の遮断された結晶(すなわち、ゲルマニウムモノクロメータ結晶)及び第2の遮断された結晶(すなわち、シリコンモノクロメータ結晶)を横切って回折するときに、当該Kα1エネルギーの排除がないことを示す。しかし、より高い波長では、所定の角度で各結晶に許容される波長の分離がある。図10を参照すると、タングステンのKα2(57.982 keV)に対応する波長で、ゲルマニウム[333]及びシリコン[333]の波長許容(wavelength acceptance)内で重なりが存在しない。図6A及び6Bに示される例に関して説明したように、これをタングステンベースのソースに適用すれば、Kα1波長のほぼ無損失反射とKα2波長の完全な排除を可能とする平行配置にゲルマニウム及びシリコンモノクロメータ結晶が配置されることができる。
【0116】
図11は、本書に記述される主題の実施形態に従う図6A及び図6Bに示されるDEIシステム600のゲルマニウムモノクロメータ結晶MC1とシリコンモノクロメータ結晶MC2の側面図である。図11を参照すると、タングステンX線管についてKα1波長のほぼ無損失反射とKα2波長の完全な排除を提供するため、モノクロメータ結晶MC1及びMC2が平行配置で示される。
【0117】
図6A及び6Bを再び参照すると、モノクロメータ結晶MC1及びMC2を通過するX線ビームXBの部分は、幾つかの異なる方向に散乱される。コリメータC2は、アナライザー結晶ACの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されるスリット又は穴を含むことができる。
【0118】
走査ステージSTによる画像化のため、対象OはX線ビームXBの経路に配置されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは対象Oを通過してアナライザー結晶ACによって解析されることができ、それはモノクロメータ結晶MC2に整合するシリコン[333]結晶であることができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、デジタル検出器DDによる遮断のために回折されることができる。デジタル検出器DDは、遮断されたX線ビームXBを検出すると共に、コンピュータCと通信するため遮断されたX線ビームを表す電気信号を生成することができる。コンピュータCは信号表現を解析し、対象Oの画像を操作者に表示することができる。特にコンピュータCは、吸収画像、屈折効果を示す画像、及び超小角散乱を表現する画像を生成するよう構成されることができ、その種類は以下に詳細に記述される。
【0119】
図12は、本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み、対象Oの画像を生成するように動作可能な、一般に1200で示されるDEIシステムの概略図である。図12を参照すると、DEIシステム1200は、一般に矢印Aで示される方向に向けられるX線ビームXBを生成するように動作可能なタングステンX線管XTを含むことができる。X線ビームXBを遮断するため、ベリリウム(Be)ウィンドウBWがX線管XTのビーム出口端(exit end)BEに配置されることができる。BeウィンドウBWの機能は、低エネルギーX線のフィルタリング、及びX線管XTの真空内部の密封を含む。BeウィンドウBWは、ビーム出口端BEへ接続するよう構成されたハウジングH1内に保持されることができる。
【0120】
アルミニウム(Al)フィルタAFは、BeウィンドウBEを通過するX線ビームXBを遮断するためのBeウィンドウBWの下流に配置されることができる。AlフィルタAFは、BeウィンドウBWのハウジングH1へ接続するよう構成されたハウジングH2内に保持されることができる。AlフィルタAFは不要な低エネルギーX線を減衰させるために使用される。
【0121】
モノクロメータタンクMTは、AlフィルタAFを通過するX線ビームXBを遮断するためのAlフィルタAFの下流に配置されることができる。モノクロメータタンクMTは、それぞれ不整合の第1及び第2モノクロメータ結晶MC1及びMC2、並びにX線ビームXBが通過可能なスリットをそれぞれ規定する1対のコリメータC1及びC2を含むことができる。モノクロメータタンクMTは、それぞれX線ビームXBの入口及び出口に対する端部E1及びE2を含むことができる。コリメータC1及びC2は、X線ビームXBの一部を平行にすることができる。それぞれ第1及び第2モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、X線管から放射される特定のX線を排除するための不整合な結晶構造で構成されることができる。モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、X線ビームXBのKα2輝線を除去するために使用されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、それぞれゲルマニウム[333]及びシリコン[333]モノクロメータ結晶であることができる。モノクロメータタンクMTは、X線ビームXBのエネルギーを選択するため、本書に記述されたモノクロメータ結晶MC1及びMC2を回転させるための機構を収容することができる。
【0122】
システム1200は、他のコリメータC3、イオンチャンバーIC、及びモノクロメータタンクMTの下流に位置するシャッターアセンブリSAを含むことができる。モノクロメータタンクMTの出口端E2で、X線ビームXBの少なくとも一部は、X線ビームを平行にすると共にX線ビームXBの一部を遮断するためのモノクロメータタンクMTの下流に位置するコリメータC3内に規定されたスリットを通過することができる。イオンチャンバーICは、チャンバを通過するX線光子がイオン化されて電圧を生じる原理を用いてX線流束を測定するために使用される。シャッターアセンブリSAは、X線ビームXBを選択的に遮断及び通過するよう動作されることができ、従って、対象OのX線ビームXBへの選択的な露出を提供する。
【0123】
対象Oは、イメージング中にX線ビームXBの経路を走査するための走査ステージアセンブリSSAによって保持されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは対象Oを通過することができ、さらに、第2のモノクロメータ結晶MC2に整合するシリコン[333]結晶であってよいアナライザー結晶ACによって解析されることができる。本書に記述されるように、アナライザー結晶ACは、モノクロメータ結晶MC2に対して適切な角度に回転することができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、可動デジタル検出器DDによる遮断のため、回折されることができる。デジタル検出器DDは遮断されたX線ビームXBを検出すると共に、コンピュータCへ通信するため、遮断されたX線ビームを表現する電気信号を生成することができる。コンピュータCは信号表現を解析し、操作者に対象Oの像を表示することができる。特に、コンピュータCは、吸収画像、及び屈折効果を示す画像を生成するよう構成されることができ、その種類は以下に詳細に記述される。又、DEIシステム1200は、超小角散乱効果を示す画像を表示するためのDEI技術に従って変更されることができる。
【0124】
表Tは、その上にモノクロメータタンクMT、コリメータC3、イオンチャンバーIC、及びシャッターアセンブリSAが配置可能な上面を有する花崗岩の上部GTを含むことができる。表Tは、以下にさらに詳細に説明するように、システム1200を安定させるために振動を減衰させるため、下端と床Fとの間に配置されたゴムパッドRPをそれぞれ有する複数の脚部Lを含むことができる。表Tは、アナライザー結晶ACを垂直方向に上下移動するよう構成された接線(tangent)アームTAを含むことができる。
【0125】
図13-16は、本書に記述された主題の実施形態に従い、一般にSCで指定される、足場上の1つのモノクロメータ結晶MCを有するX線管XT及びモノクロメータタンクMTの典型的な配置の概略図である。特に、図13は典型的な配置の側面概略図である。図13を参照すると、モノクロメータタンクMTに対してX線管XT(参照ラベルXTによって示される内径の内部に配置される部分)を位置決めするため、足場SCは互いに接続される複数のプラットフォームPL及びロッドRDを有している。X線管XTから放射されるX線ビームXBが開口部A1を通ってモノクロメータタンクMTに入り、さらにモノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウ内に入るよう、X線管XT及びモノクロメータタンクMTは、互いに対して正確に位置決めされることができる。モノクロメータ結晶MCから回折するX線ビームXBは、開口部A2を通ってモノクロメータタンクMTを出ることができる。他が表示されない限り、図13〜16中の数字で示される距離はインチである。
【0126】
図14は、図13に示される典型的な配置の上面概略図である。図14を参照すると、X線ビームXBは、X線管XT内の点Pから扇形の広がりを形成することが示される。
【0127】
図15及び図16はそれぞれ、図13及び図14に示される典型的な配置の別の側面図及び上面図の概略図である。図15及び図16を参照すると、シールドSを示すため、配置はそれぞれ側板及び上板なしで表示される。シールドSは、望ましくない方向にX線ビームXBが放出されることを防止するよう機能されることができる。追加のシールドが保護のために利用されることができる。さらに、必要に応じて臨床装置で適切なシールドが提供されることができる。
【0128】
図17-26は、本書に記述された主題の実施形態に従うDEIシステムの例示的な一部の画像である。特に、図17を参照すると、X線管XTのX線ビーム出口部の画像が示されている。X線ビームはX線管XTから放出されてBeウィンドウBWを通り、それはX線管XTに接続されてX線ビームを遮断するために配置される。BeウィンドウBWは内部鉛(Pb)シールドPSの二層に取付られている。
【0129】
図18は、図17に示されるX線管XTのX線ビーム出口部の別の画像である。この画像では、AlフィルタAF及びコリメータC1がX線管XTに接続され、X線ビームを遮断するために配置されている。AlフィルタAFは、厚さ約2mmである。コリメータC1は、X線ビームを通すためのスリットSLを含む。この例では、コリメータC1はタンタル(Ta)製で、厚さ約1/8インチである。一例において、スリットは、X線管上のスポットサイズより少し大きくなるような大きさである。一例において、スリットは1.0mmであり、X線管上のスポットサイズは0.4mmである。スリットは、縦方向に平行にされた扇ビームを提供することができる。
【0130】
図19は、AlフィルタAF、コリメータC1、及び別のコリメータC2の画像である。この画像では、構成部品が説明のために分解されている。組み立てた状態で構成部品は互いに隣接して組み合わされることができる。
【0131】
図20及び図21は、シールドキャップ及びX線管の画像である。図20は、分解してカットされたが、X線管XTの端に取り付けるため曲げられていないシールドキャップS1の画像である。図21は、X線管XTの端からのX線ビームの望ましくない放出を防止するための、X線管XTの端のシールドキャップS1の画像である。シールドキャップS1は、X線管XTの端に嵌合するためのキャップの形状に切断及び折り曲げられた1/8インチの鉛シートである。
【0132】
図22は、モノクロメータタンクMTからのX線ビームの望ましくない放出を防止するための鉛シールドS3を含む、モノクロメータタンクMTの画像である。シールドS3は約1/2インチの厚さの鉛シートであり、X線ビームの必要な部分を放出するためのスリットSLを含む。X線管から放出されるX線は、シールドS3のスリットSLを介してモノクロメータタンクMTから出る。
【0133】
図23は、モノクロメータタンクMTからのX線ビームの望ましくない放出を防止するための鉛シールドS3を含む、モノクロメータタンクMTの画像である。シールドS3は約1/4インチの厚さの鉛シートであり、X線ビームの必要な部分を放出するためのスリットSLを含む。X線管から放出されるX線は、シールドS3のスリットSLを介してモノクロメータタンクMTに入る。
【0134】
図24は、X線管XTの側面からのX線ビームの望ましくない放出を防止するための、X線管XTの端の近傍に配置されたシールドS2の別の部分の画像である。シールドS2は、X線管XTの側面に取付けるための形状に切断及び折り曲げられた1/16インチの鉛シートである。1/8インチの鉛シートは、150keVのX線を1000の倍数で減らすことができる。
【0135】
図25は、互いに動作位置にあるX線管XT及びモノクロメータタンクMTの画像である。
【0136】
図26は、モノクロメータタンクMTの内部部品の正面の画像である。特に、モノクロメータ結晶MCが表示される。さらに、シールドSがモノクロメータタンクMTの両側に配置されている。
【0137】
図27は、本書に記述された主題の実施形態に従う、一般に2700で示される典型的なDEIシステムの上面斜視図である。図27を参照すると、DEIシステム2700は、複数のX線ビームXBを生成するためのタングステンアノードを有するX線管XTを含むことができる。コリメータC1は、モノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウを外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。この例では、モノクロメータ結晶MCはシリコン結晶である。コリメータC2は、アナライザー結晶ACの角度許容ウィンドウを外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。
【0138】
コリメータC2を通過するX線ビームXBの部分は、X線管XTによって生成された20keV制動放射X線の熱を熱的に隔離するよう構成され、かつ減衰させることが等しく重要であるよう構成される銅フィルタFTRによって遮断されることができる。特定のブラッグ角について、モノクロメータを通過できる不要な結晶反射が存在し得る。59.13 keV[333]反射を選択する約5.7度のブラッグ角を使用する一例は、19.71 keVの[111]X線の通過を可能にする角度でもある。これらのX線がモノクロメータ結晶MCで回折された場合、それらは、ぼやけた画像アーチファクトを誘発し、そのため全体的な画質が低下する。銅フィルタFTRは低エネルギーX線、特にX線ビームXBから放射され、モノクロメータMCで回折される19.71 keV制動放射、X線光子を減衰させるために使用される。
【0139】
アナライザー結晶ACは、フィルタFTRを通過するX線ビームXBの少なくとも一部を遮断するために配置されることができる。さらに、対象を画像化するための走査ステージSTによって、対象はX線ビームXBの経路に配置されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは対象Oを通過してアナライザー結晶ACによって解析されることができ、それはモノクロメータ結晶MCに整合するシリコン[333]結晶であることができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、デジタル検出器DDによる遮断のために回折されることができる。デジタル検出器DDは遮断されたX線ビームXBを検出し、遮断されたX線ビームを表す電気信号を生成することができる。電気信号は、画像解析と操作者への表示のためにコンピュータに通信されることができる。コンピュータは、吸収画像、及び屈折効果を示す画像を生成するよう構成されることができ、その種類は以下に詳細に記述される。
【0140】
図28は、本書に記述された主題の実施形態に従う例示的なモノクロメータ結晶MCの側面図、上面図、及び正面図を含む概略図である。図28を参照すると、モノクロメータ結晶MCの側面図、上面図、及び正面図はそれぞれ、SV、TV、及びFVで示される。モノクロメータ結晶MCの寸法は図に示され、約±0.5 mmとすることができる。また、モノクロメータ結晶は他の適切な寸法であってもよく、それは部分的にはイメージングの用途によって決定される。モノクロメータ結晶MCの面方位は、結晶の大面積の面に平行な格子面とすることができる。作製されるときは、他の小さな直交面の配向が参考のため記載されてもよい。典型的なモノクロメータ結晶は、ゲルマニウム[111]モノクロメータ結晶及びシリコン[111]モノクロメータ結晶であることができる。
【0141】
モノクロメータ結晶MCは、一般にCで示され、結晶の上部内に規定される張力緩和カットを含んでもよい。カットCの幅は厚さ約1/16インチである。また、幅は他の任意の適当な寸法とすることができる。カットCは、取付けのために使用される結晶の部分を除去し、アナライザー結晶AC及びモノクロメータ結晶MCの残りの部分の張力を軽減させる。任意の応力又は張力がアナライザー結晶AC又はモノクロメータ結晶MCの撮像部に誘起されている場合、それは回折特性を変え、システム性能に悪影響を及ぼす。
【0142】
マルチビームDEI及びDEIシステム
本書に記述された主題の別の実施形態に従うイメージングシステムは、複数のX線ビームを使用することができる。システムは、X線管から放射される特定のX線を排除するため、それぞれ1又はそれ以上の結晶から成る2又はそれ以上のモノクロメータを含むことができる。図64及び65は、本書に記述された主題の実施形態に従い、複数のモノクロメータ結晶を含み、対象Oの画像を生成するように動作可能な、一般に200で示されるマルチビームシステムの実施形態の概略図である。上記した1つのモノクロメータシステムと同様、一般に200で示されるイメージングシステムは、一般にXBで示されて多色X線ビームを生成するように動作可能であるか、又はX線管XTの点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成するように動作可能な、X線管XTを含むことができる。一例では、X線管XTは、X線ビームXBを放出可能な点源を有するタングステンX線管である。X線管XTは今まで通り1つの管のソースとすることもできるが、ソースは大きな角度領域に光を放射することができる。
【0143】
この構成は、上述のイメージングシステムの本質的に「拡大縮小(scaling )」と考えることができる。この構成は、撮像時間を低減するための固有の経路を提供することができる。1つの結晶モノクロメータ又は二重の結晶モノクロメータよりはむしろ、複数のモノクロメータ結晶MCのように、それぞれ1又はそれ以上の結晶から成る2又はそれ以上のモノクロメータが提供されることができる。例えば、図64に示される特定の一実施形態では、複数のモノクロメータ結晶MCは、第1のモノクロメータ結晶MC-1、第2のモノクロメータ結晶MC-2、その他n番目のモノクロメータ結晶MC-nを含むことができる。図65に示される別の特定の実施形態では、複数のモノクロメータ結晶MCは複数の二結晶モノクロメータを含むことができる。特に、モノクロメータ結晶MCは、第1のモノクロメータ結晶ペアMC1-1及びMC2-1、第2のモノクロメータ結晶ペアMC1-2及びMC2-2、その他n番目のモノクロメータ結晶ペアMC1-n及びMC2-nを含むことができる。これら二結晶モノクロメータは、整合(例えば、二つのシリコン結晶)又は不整合(例えば、一つのシリコン結晶、一つのゲルマニウム結晶)とすることができる。
【0144】
いずれの配置でも、マルチビームシステムは、1つのX線管XT、1つの検出器DDを使用することができ、さらにマルチプル(multiple)モノクロメータ結晶MCは同一防振(vibration- isolated)マウントVIMを共有することができる。マルチビーム構成は、X線管XTによって生成されるX線ビームXBの多くを遮断することができる。その結果、一定の数のビームnについて、単一のビーム構成に対して撮影時間をnの倍数で減少させることができる。構成要素の特定の配置は、上記したイメージングについての1つの構成と同様とすることができる。例えば、各モノクロメータ結晶MCは、それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されるよう、X線ビームXBを直接遮断する所定の位置に配置されることができる。特に、各モノクロメータ結晶MCは、適切な角度で配置されることができると共に、[333]又は[111]反射と共にタングステンKα1及びKα2線を反射するための十分な大きさの結晶面を持つことができる。
【0145】
アレイコリメータCAは、モノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができ、それによってX線管XTからのX線ビームXBのための複数のビーム経路を許容する。アレイコリメータCA1は、単一ビームイメージングシステムに関して上述された(例えば、単一スリットのタンタルコリメータ)コリメータC1の代わりに動作することができる。さらに、上述のように、システム200は追加のコリメータCA2を含むこともでき、コリメータCA2は、モノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するため、又はX線ビームXBの特性輝線(例えば、特性線Kα1とKα2)の1つを選択的に遮断すると共に特性輝線の遮断されていない1つの通過を許容するため、X線管XTとモノクロメータ結晶MCの間に配置されることができる。その代わり、特性輝線の1つを選択的に遮断するため、追加のコリメータCA2がモノクロメータ結晶MCと対象Oの間に配置されることができる。即ち、追加のコリメータは、X線ビームXBがモノクロメータ結晶MCによって遮断される前ではなく、遮断された後に特性輝線の1つを遮断するために配置されることができる。
【0146】
図64及び65を再び参照すると、対象OはX線ビームXBの経路に配置されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは、対象Oを通過し、さらにアナライザー結晶AC(例えば、第1のアナライザー結晶AC-1、第2のアナライザー結晶AC-2、その他n番目のアナライザー結晶AC-n)によって解析される入射角に向けられることができる。各アナライザー結晶ACは、対応するモノクロメータ結晶MCに整合することができるシリコン結晶とすることができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、デジタル検出器(又は画像版)DDによる遮断のために回折されることができる。デジタル検出器DDは遮断されたX線ビームXBを検出し、遮断されたX線ビームを表す電気信号を生成することができる。幾つかの実施形態では、デジタル検出器DDは、大面積の検出器であることができる。他の実施形態では、デジタル検出器DDは、スリット検出器の配列であることができる。
【0147】
上記したイメージングシステム及び方法を使用すると、例えば典型的な臨床イメージングに必要な所定の範囲内となるよう、流束を増大させると共に撮像時間を減少させることができる。撮像時間を減少させるため、より多くの扇ビームが使用されることができ、それはnのモノクロメータの配列について、およそnの倍率でイメージングを減らすことができる。
【0148】
DEI及びDEIシステムを使用するための撮像法及び品質管理
本書に記述された主題に従って不整合結晶構造で構成されたDEIシステムを用いた画像取得は、特定の実験に適したビームエネルギーの選択から始めることができる。一例では、ビームエネルギーは約10keVと約60keVの間の範囲から選択することができる。イメージングのための特定のエネルギーの選択は、所望の波長について適切な角度を計算するためのブラッグの法則を使用することで実現されることができる。一例では、モノクロメータの第1の結晶は、選択されたビームエネルギーを除いて入射X線ビームから全てのエネルギーを除去するため、特定の角度に調整することができる1つの移動軸のみを持つことができる。下記の表1は、18keVと60keVの間で画像を取得するための第1のモノクロメータ結晶の典型的な角度を示す。シリコンについてのこれらの角度は、ブラッグの法則λ=2dsin(θ)を用いて計算され、モノクロメータ結晶MCを横切って回折する時のX線ビームの入射角θ(θ)及び回折角θ(θ)を規定する。検出器は、X線ビームエネルギーを選択するための第1の結晶で使用されるブラッグ角の2倍である、角度2θに配置される。
【0149】
【表1】
【0150】
表1:画像を取得するための第1のモノクロメータ結晶のシリコン[333]反射のための例示的な角度
【0151】
不整合結晶構造で構成されたDEIシステムは、調整されて慎重に並べられるべき3つの結晶を含み、2つの結晶はモノクロメータ及びアナライザー結晶内にある。例えば、DEIシステム600は、調整されて並べられることができるモノクロメータ結晶MC1及びMC2、並びにアナライザー結晶ACを含む。第1の結晶(例えば、図6A及び図6Bに示されるモノクロメータ結晶MC1)とアナライザー結晶(例えば、図6A及び図6Bに示されるアナライザー結晶AC)は、各エネルギーについて計算された角度(θ角度)に調整されることができる。例えば、システムを25keVに調整するために、第1のモノクロメータ結晶は13.17度に設定されており、アナライザー結晶は13.72度に設定されている。この例ではデジタル検出器アセンブリは、アナライザー結晶の角度の2倍の角度である27.44度に設定されることができる。
【0152】
第2のモノクロメータ結晶(例えば、図6A及び図6Bに示されるモノクロメータ結晶MC2)は、χ角度と呼ばれる水平方向に調整されることができる。これらの結晶の間で水平方向の整列具合が悪いと、画像の左から右への強度変化が生じるかもしれない。モノクロメータとアナライザーの両方から放出される流束を測定するため、2つの電離箱が使用されることができ、それらは内側及び外側の領域の双方に分割される。ソースから検出器アセンブリへのX線ビームを見た場合、内側領域が右側にあり、外側領域は左側にある。内側及び外側領域は、ロッキングカーブピークが揃っていることを確認するためにサンプリングされることができる:そうでない場合、χの角度が調整されることができる。図29は、内側/外側領域、並びに回転のχ及びθの角度を示すモノクロメータ結晶の斜視図である。
【0153】
DEIシステムで適用される線量は、多数の方法で調整されることができる。例えば、線量は、アルミニウムフィルタの厚さを変えること、及び/又はX線ビームの経路に吸収体を配置することによって調整されることができる。線量は、ロッキングカーブのピークから離れて第2のモノクロメータ結晶を離調し(detuning)、必要に応じて劇的に回折強度を軽減することで、減らすことができる。一例では、X線管はシンクロトロンで置き換えられることができ、この場合、第1のモノクロメータ結晶の入射流束はシンクロトロンのリング電流によって決定される。
【0154】
サンプル収集時間は、ステップ/秒で測定された試料ステージの移動速度で、入射流束によって決定されることができる。走査速度は線量を調整することにより増加又は減少させることができ、ステップ/秒で測定される。走査速度は、ノイズ量が固定された画像版を使用するときに重要な要素ではないかもしれないが、ノイズ量がある程度収集時間によって決定されることから統合デジタル検出器を使用する際に考慮される必要がある。デジタル検出器を使用する場合は、DEIシステムは、走査速度が可能な限り最大に近くなるように調整される必要がある。
【0155】
DEI又はDEIシステムが適切なエネルギー及び線量のために調整されると、撮像される対象が試料ステージ上に置かれて整列させられることができる。一例では、X線ビームの最大幅は120mmであり、それは物理的に得られる画像の幅を制限する。幅が120mm未満のデジタル検出器又は画像版を使用すると、さらに視野を制限する可能性がある。一例では、試料ステージは約200mmの最大垂直変位を持っている。しかしながら、試料高さの物理的な制限はない。対象の特定の領域のイメージングのため、この領域がシステムにとって200mm内にあるかどうかを判断する必要がある。X線ビームの位置は固定されてもよく、従って目的とする対象の垂直領域はビームに対するその相対位置によって決定されることができる。
【0156】
DEIシステムで使用される結晶は、結晶の特定の領域で光子を回折する能力において同質であると考えられるが、結晶の構造は、強度が増加又は減少する小さな領域が存在することがある。ビームを介してスキャンされる対象の次元が固定されているため、これらの「異常(glitch)」は、画像の縦の次元を横切って塗抹(smear)される可能性がある。用語「異常」は、しばしばこれらの垂直線に適用されるが、これらの影響は予想され、システムの既知で予想された特性として考慮されるべきである。
【0157】
システムパフォーマンス特性についての実験
本書に記述されるX線管を含むDEI及びDEIシステムを構築する前に、試験目的のため、X線源としてシンクロトロンを用いて実験が行われた。最初の実証として、モリブデン及びタングステンベースのX線源をシミュレートし、18keV及び59keVのX線を用いた撮像時間及び流束要件が計算された。さらに、システム構成に関し、画素サイズ及び画素当りの光子数などの幾つかの仮定がなされた。これらの値は必要に応じて増減することができるので、5cmの組織(水)を通過する画素当り1000光子を持つ100ミクロンの画素サイズが、この例で使用される。
【0158】
100ミクロン平方画素当りの必要な光子の数は、要求される画素当りの光子数を、対象を通過する光子の減衰によって割ることによって計算されることができ、この場合では5cmの水である。
【数14】
このようにして、18keVのX線源について、各100ミクロン平方画素当り約1.6×105の入射光子が必要とされる。59keVのX線の減衰は18keVでよりもはるかに少なく、それは100ミクロン平方画素当り2.9×103光子を必要とする入射光子の減少をもたらす。
【0159】
輝線源を用いた立体角内の入射X線流束
DEI及びDEIシステムで使用される結晶光学は、選択性の高い角度ノッチフィルタとして動作し、適切なエネルギー又は角度発散を持っていないX線ビームからの光子を排除する。X線管ベースのソースについて、光子はおおよそ全立体角に放射するよう期待される。流束要件を決定するため、検出器及びX線結晶光学系によって範囲を定められる立体角に基づいて流束を計算する必要がある。任意のX線管は多色エネルギー分布を持つであろうし、結晶系はブラッグの法則によって定義される輝線の1つを選択するであろう。
【0160】
完全結晶では、所定の反射のピーク反射率は、ブラッグ法線方向の固有反射幅又はダーウィン幅に近い積分反射率を構成する、1(unity)に非常に近いと予想される。ブラッグ[333]反射を持つシリコン結晶を仮定すると、18keV及び59keVのダーウィン幅は以下のとおりである。
18keVのSi[333]ダーウィン幅= 2.9×10-6ラジアン、及び
59.3keVのSi[333] ダーウィン幅= 0.83×10-6ラジアン
結晶格子面に平行な方向に移動するX線は、ブラッグ-平行(Bragg-parallel)として知られており、ブラッグ平行方向の角度許容は、結晶ではなく、検出器分解能によって設定される。画像化される対象がX線源から1mにあり、100ミクロンの空間分解能が必要な場合、ブラッグ-平行許容角度は100マイクロラジアンである。100マイクロラジアンブラッグ-平行許容角度について、18keV及び59keVでのステラジアン(steradian)毎に必要な光子の数は次のとおりである。
【数15】
【0161】
X線管流束
X線管ベースのソースは、それらのX線スペクトルに特性輝線と制動放射の2つの成分を持つことができる。DEI及びDEIシステムの結晶光学は、管のターゲットの特性輝線を中心としなければならない唯一の非常に狭いエネルギーバンドの選択を許容する。この場合、それぞれのソースからのこれらの輝線の流速を決定するため、モリブデンのKα1(17.478 keV)及びタングステンのKα1(59.319 keV)が使用されることができる。
【0162】
現実的なイメージング条件下で生成されるであろう流束を決定するため、複数の電圧及び電流設定におけるモリブデン及びタングステンX線管のモンテカルロシミュレーションが生成された。10kWの電力で、75kVの加速電圧を使用したモリブデンのターゲットについて、Kα1に放出される流束は、次のとおりである。
【数16】
50kWの電力で、150kVの加速電圧のタングステンターゲットを使用したKα1放出は、次のとおりである。
【数17】
【0163】
推定画像収集時間
アナライザーがピーク位置からの値(80%)に離調(detune)されている場合、屈折コントラスト及び幾つかの消衰コントラストを含む1つの露光(exposure)を取得できる。これらの計算は、DEIシステムが1つのモノクロメータ結晶とアナライザー結晶を持つことを前提としている。このシミュレーションの形状(geometry)は、対象がビームを介して走査される線源X線を使用した国立シンクロトロン光源(NSLS)のX15A線源(ブルックヘブン国立研究所、アプトン、ニューヨーク州に位置する)で使用されるものと一致する。高さ10cmで100ミクロンの画素サイズ(0.1mm)の対象について、1000本の走査線が必要となるであろう。
【数18】
75kV、10kWについて、モリブデンターゲットの場合(約18keV):
【数19】
150kV、50kWについて、タングステンターゲットの場合(約59.3keV):
【数20】
【0164】
最大反射率の80%を持つロッキングカーブ上の点での1つの画像について、上記のパラメータを用い、モリブデンターゲットを使用した必要な時間は約1.1時間である。タングステン管について、同じ反射率を使用した必要な時間は約4.6分である。撮像時間は、画素ごとに必要とする光子などの撮像変数により、及び対象からソースへの距離を変更することにより、さらに減少されるであろう。
【0165】
1000mmのソースから対象への距離でブラッグ[333]反射を使用して計算されたデータに基づき、推定撮像時間が他の反射及び距離を用いて推定されることができる。DEIに使用されるブラッグ[333]及びブラッグ[111]反射の2つの結晶反射が存在する。DEI及びDEIの屈折及び消衰コントラストの両方の大部分は、角度の所定の変化に対してさらなるコントラストを提供する急峻な傾きを有し、アナライザーの反射率曲線の傾きによって決定される。屈折及び消衰コントラストに関し、ブラッグ[333]反射はブラッグ[111]反射より優れているかもしれないが、[333]反射から回折された流束は[111]反射よりも約1桁小さい。図30は、シリコン[111]、[333]、[444]、及び[555]結晶回折面を使用したNSLS X15A箱(hutch)の単色ビーム流束を示すグラフである。流束が10倍に増加すると、特定の用途に有利な[111]反射を作り、撮像時間を10の倍数で短縮できる。撮像時間のさらなる短縮は、ソースから対象までの距離を短くことによって達成することができ、それは1000mmの距離を用いて本書に記述されるように計算される。ソースから撮像される対象への光子の強度は、1/r2に比例する。対象の距離が1000mmから500mmに減少すると、強度は4倍に増加しうる。ソース−対象距離を決定することができる多くの要因があるが、最も重要な1つは対象の大きさである。用途に応じた必要により、アナライザー/検出器アセンブリは、ソースに近づき又は遠ざかって移動されることができる。
【0166】
アナライザーロッキングカーブの半値全幅(FWHM)は、エネルギーが増加するにつれて狭くなる(例えば、18keVで3.86マイクロラジアンであり、60keVで1.25マイクロラジアン)。エネルギーに対するロッキングカーブの幅の例が以下の表2に示される。特に、以下の表2は、18、30及び60keVでの測定された及び理論上の[333]アナライザーロッキングカーブのFWHMを示す。[333]二重(double)ブラッグモノクロメータは、ブラッグピークに調整された。
【表2】
【0167】
表2:18、30及び60keVでの測定された及び理論上の[333]アナライザーロッキングカーブのFWHM
【0168】
FWHMの減少はロッキングカーブの傾きを増加させ、さらに屈折及び消衰コントラストを増大させる。図31は、FWHMの減少がロッキングカーブの傾きを増加させることを示すグラフである。50kW、ブラッグ[333]反射についての流速計算、及び1000mmのソースから対象への距離を用い、以下の表3に示すように、種々の距離及び結晶反射に必要な撮像時間を見積もることができる。特に、表3は、結晶反射及びソース−対象の距離に基づいた推定(estimated)撮像時間を示す。
【表3】
【0169】
表3:結晶反射及びソース−対象の距離に基づいた推定撮像時間
【0170】
シンクロトロンベースのDEI及びDEIシステム実験
上記したように、シンクロトロンを用いてDEI及びDEIシステム実験が行われた。特に、本書に記述されるようにNSLS X-15AビームラインがDEI及びDEI実験のために利用された。本書に記述される実験のために使用されるシンクロトロンX線源は、DEI又はDEI画像を生成するため、本書に記述される主題に従うX線管を置き換えることができる。
【0171】
NSLSにおいてX線リングは、10〜60keVの高流速X線を生成することができる2.8GeVシンクロトロンである。図32は、本書に記述される主題の実施形態に従うシンクロトロンX線ビームを用い、一般に3200で示されるDEIシステムの実験配置の概略図である。図32を参照すると、シンクロトロンから放射されるX線ビームXBは、約0.2ミリラジアンの垂直発散を持ち、高度に平行化されている。長さ16.3mのビームラインパイプ(図示せず)は、シンクロトロンX線リングに実験箱(hutch)を接続する。高強度多色X線ビームXBは実験箱に入り、二重結晶モノクロメータタンクMTの使用を介して単色にレンダリング(render)される。モノクロメータタンクMTは、熱負荷を低減するために両方が水冷される2つのモノクロメータ結晶MC1及びMC2(それぞれ150mm幅×90mm幅×10mm高さ)を含む。モノクロメータタンクMTを出るX線ビームXBは単色である。
【0172】
それから単色X線ビームは、イオンチャンバーIC及び高速シャッターアセンブリSAを通って試料ステージアセンブリSSAに進み、幅120mm及び高さ3mmの最大寸法の線源X線ビームを生成する。ビーム位置を固定した状態で、アセンブリSSA上の試料対象Oは、ステッピングモータにより駆動される移動ステージを用いてX線ビーム上を移動する。
【0173】
従来のX線写真は、ビーム経路内で検出器D1(X線撮影構成で)の直接後方に試料対象Oを配置することによって得ることができ、アナライザー結晶ACの全ての影響を除去する。この構成で取得された画像は、吸収が主なコントラスト機構である点で従来のX線システムに類似するが、シンクロトロンX線写真は、従来のX線システムを使用して取得された画像と比較してより優れたコントラストを有することが示されている。本書で提供される実験の間に得られた従来のX線写真が、DEI画像との比較のために使用された。
【0174】
DEI画像は、アナライザー結晶ACの後ろに、計算されたブラッグ角の2倍の角度で検出器D2(DEI構成で)を配置することによって取得されることができる。18-60keVの範囲でイメージングに使用される角度の概要が上記の表1に示される。線源X線の使用は、DEIについての試料のそれと反対方向でかつシンクロトロンX線写真を得るためと同一の方向に検出器を移動させることを必要とする。この実験では、DEI画像はフジHR V画像版を用いたフジBAS2500画像版(コネチカット、スタンフォードのフジメディカルシステムズから入手可能)を用いて取得された。この版は、有機バインダーと混合される輝尽性蛍光体(BaFBR:Eu2+)を塗布された柔軟なプラスチック板から成り、厚さ約0.5mmである。画像は分解能50ミクロンで16ビットの階調レベルで、フジBAS2500を用いて走査される。
【0175】
さらに、別の実験では、回折増強コンピュータ断層撮影及び複数画像X線撮影(MIR)を含む、画像版を使用することが実用的でなく又は不可能であったDEI用途を可能とするため、デジタル検出器がシステムに追加された。使用され得る例示的な検出器は、50x100mmの活性領域と12ビットの出力を有するShad-o-Box 2048(カリフォルニア州、サンタクララのラド-アイコン(Rad-icon)イメージングコーポレーションから入手可能)を含む。この検出器は、Gd2O2Sシンチレータスクリーンと直接接する48ミクロンの画素間隔を持つ1024×(by)2048画素を含む光ダイオードアレイを利用している。別の例示的な検出器は、120mm×80mmのFOV及び30ミクロンの画素サイズを持つフォトニックサイエンスVHR-150X線カメラ(英国、イーストサセックス州のロベルスブリッジ(Robersbridge)から入手可能)を含む。これらの典型的な検出器の両方は、X線撮影又はDEI構成のいずれかで、画像版と同じ方法で装着されることができる。
【0176】
ビーム内に対象が無い状態で、アナライザー結晶ロッキングカーブの全域で画像を取得すると固有ロッキングカーブを生成することができ、それは、アナライザー反射率の異なるレベルでモノクロメータ及びアナライザー結晶の畳み込み(convolution)を表す。固有ロッキングカーブは吸収、屈折、又は超小角散乱によって変化せず、それは優れた基準点となることができる。対象がビーム内に配置されると、どのX線相互作用が特定の画素のコントラストを導くかを決定するため、画素毎基準で画素上のロッキングカーブの変化が使用されることができる。
【0177】
ロッキングカーブがモノクロメータとアナライザーの畳み込みであり、3つの要素からなる(triangular)ため、ERA方法で使用されるモデルはロッキングカーブを近似であるガウス分布としてモデル化する。このモデルの式は次式
【数21】
によって提供され:ここで、μTは線吸収係数、χsは消衰係数(extinction coefficient)、tは対象の厚さ、θzは屈折角、及びωsは散乱分布のガウス分布である。
【0178】
MIRは、ERA方法のより洗練されたバージョンである。MIRは、従前の処理技術に存在する問題の多くに対処し、画像コントラスト成分のより完全な表現を可能とする。上述したように、MIR技術を使用して処理された画像は、吸収及び屈折画像だけでなく、超小角散乱画像を生成することができる。MIRは又、DEI見かけ吸収及び屈折画像内に存在するかなりの誤差を補正するために示され、ノイズに対してより堅牢である。
【0179】
ERA方法と同様に、対象の吸収、屈折、及び超小角散乱を表す画像を生成するため、MIRはアナライザー結晶ロッキングカーブを使用する。固有ロッキングカーブがベースラインである場合、光子吸収が全体の強度を低下させるため、カーブ下の面積を減少させる変化はもっぱら吸収として解釈されることができる。純粋に屈折事象の場合、ロッキングカーブの重心は変化するが、ロッキングカーブの幅が一定に維持される。超小角散乱を引き起こす相互作用は、ロッキングカーブの角度分布を横切る光子を散乱させ、それはカーブを広げさせる。光子がロッキングカーブの許容ウィンドウの外に散乱されないと仮定すると、散乱効果はカーブの下の領域、丁度カーブの形状、には影響しない。ロッキングカーブが事実上ガウス分布であると仮定すると、現在の散乱量を表すためにカーブの分散が使用されることができる。
【0180】
ロッキングカーブの幅はエネルギーが増加するにつれて減少し、この変化を明らかにする(account for)ため、サンプリング手順を変更することを必要とするかもしれない。 18keVでロッキングカーブFWHMは3.64マイクロラジアンであり、60keVでは1.11マイクロラジアンに減少する。ロッキングカーブが狭くなると、屈折コントラストに影響を与える角度範囲が狭くなる。これを補うため、角度サンプリング範囲及び増分が低減されるであろう。60keVのロッキングカーブの勾配の増加は、マイクロラジアン当りの強度の大きな変化を生む点で有益である。X線管のような流束を制限するX-源を使用する場合、所定の流速にとって可能な最も大きい屈折を生成するため、これらの特性が最大限に発揮されるであろう。
【0181】
DEIシステム安定化
角度変化を強度に変換するアナライザー結晶の使用は、優れたコントラストを可能とするが、この手法の前提は、アナライザー結晶のロッキングカーブ位置が時間とともに一定であるということである。実際にはこれは事実と異なり、このような狭いロッキングカーブ幅は、アナライザーピーク位置での小さな変化でも、取得された画像に重大なエラーをもたらす可能性がある。DEI見かけ吸収及び屈折画像、MIR、並びにMIR-CTなどの処理アルゴリズムのアプリケーションは、高度のシステム安定性を必要とする。不安定性を引き起こす要因を分離するため、乳房組織の吸収、屈折、及び散乱パラメータを決定するという目標を達成することは、NSLS X-15Aビームラインの体系的なエンジニアリング解析を必要とする。
【0182】
この場合のDEIシステムの安定性は、長期間にわたってアナライザー結晶ロッキングカーブの一定のピーク位置を維持する能力として定義される。検討のため、多色X線ビームが、単一の光子エネルギーを選択するためにブラッグの法則を使って特定の角度に調整されたモノクロメータの第1の結晶に入射する。回折された単色ビームは、次に第2のモノクロメータ結晶に衝突し、その機能はビームを入射ビームに平行な方向に変えると共に、アナライザー結晶に揃えることである。システムを特定のエネルギーのために調整する場合、第1のモノクロメータ結晶が最初に調整され、次にビームの位置を見つけるために第2の結晶が調整される。タンク内の重要な構成部分を急速に酸化させて損傷を与える可能性があるオゾンの発生を減らすため、モノクロメータタンクは常にヘリウムで洗浄(flush)される。
【0183】
第2のモノクロメータ結晶が調整されると、結晶上のビームの位置を見つけるためにアナライザーが走査される。ビームの位置を見つけるために結晶を搖動(rocking)させることは特定の放送局を見つけるためにラジオのダイヤルを走査することに似ており、アナライザーの角度位置が第2のモノクロメータ結晶と完全に揃ったときに強度の急激な上昇を生じる。アナライザー結晶が調整されると、システムが調整され、使用できるようになる。
【0184】
DEIシステムにドリフトを生じさせる可能性がある要因は、振動、機械的、及び熱的の3つのカテゴリに分類される。結晶の微小な振動である。ら、コントラストの変化をもたらす角度のわずかな変化を引き起こす可能性があるため、DEIシステムの光学部分は振動に敏感である。NSLS X-15Aのビームラインでは、外部環境からの振動を減衰させるため、大きな花崗岩の厚板が使用された。アナライザーX線ビームの後ろをモニターするためのオシロスコープを用いた測定は、強度の約2〜3%の変動があることを示し、それは外付けドライブファンやビームラインでのポンプからの振動に起因する。
【0185】
結晶を整列させ、試料ステージ及び検出器アセンブリを移動させるため、複数のモータが使用された。θの角度を調整するため、第1のモノクロメータ結晶、第2のモノクロメータ結晶、及びアナライザー結晶にピコモータ(Picomotor)ドライブが使用されることができる。第2のモノクロメータ結晶及びアナライザー結晶は、χ角度を調整する第2のピコモータを使用する。これらのドライブモータのいかなる不安定性も、システムの調整に大きな狂いを生じさせる可能性があり、機械的なドリフトは、当初はDEIシステムの不安定性の主な原因と考えられていた。試料ステージ及び検出器アセンブリを駆動するために使用されるモータは画像品質のために重要であるが、それらはX線ビームの安定性に寄与しない。
【0186】
システムの不安定性の3番目の要因は、入射X線ビーム並びにシステムドライブモーター及びアンプの両方から発生する熱に起因する熱的なものである。システムの温度変動がシステム安定性に何らかの影響があることは知られていたが、それは主要な不安定要因とみなされなかった。重要な観測が行われた時に熱変動とシステム不安定との間の関連性が明らかになり、アナライザーのドリフトは比較的安定して周期的であった。この例では、DEIシステムで周期的な唯一の変数が存在し、それは主要なX線シャッターを開閉することにより生成及び失われる熱である。
【0187】
不安定性の発生源を探し出すために得られた実験的試験と観察は、ドリフトの主な発生源として、シリコン結晶構造の膨張及び圧縮を示す。これらの実験観察の簡単な説明は、ブラッグの法則(λ=2dsin(θ))を使用して見出だされることができる。所定のエネルギーを回折するための所定の角度に設定された1つの結晶を考えると、格子構造のd間隔のあらゆる変化は、回折されたビームの角度を変えることができる。モノクロメータ内のX線ビームから発生する熱は、シリコン結晶をその線膨張率に従って膨張させることができ、Δd/d=3x10-6ΔT(℃)である。
【0188】
ブラッグの法則を使用してdについて解くと、以下の式を得る。
【数22】
上記式の微分係数をとると、
【数23】
が得られる。
dで置換して並べ替えると、
【数24】
が得られ、これは
【数25】
に整理し直すことができる。
線膨張率Δd/dで置換すると、次式
【数26】
が得られる。
【0189】
18keV及び40keVについて、それぞれブラッグ角度19.2及び8.4度を使用すると、18keVで摂氏温度当り1.05マイクロラジアンの角度変化、及び40keVで摂氏温度当り0.44マイクロラジアンの角度変化を観察することが期待されるであろう。ドリフトの理論的な説明としてこの計算を使用すると、全体的なビームライン安定性の増加、及びビームエネルギーの増加に伴うアナライザードリフトの低下を観察することが期待されるであろう。
【0190】
初期のアナライザー安定性試験は、平均して60秒未満のピークアナライザー位置の安定性を持ち、システムが非常に不安定であることを示した。このことは、1つの画像走査には許容されるかもしれないが、MIR及びあらゆるCT用途には許容されなかった。コールドスタートから12時間の連続運転を通したアナライザー位置の変化を測定する複合的な(Multiple)ドリフト評価は、50〜100マイクロラジアンの間であった。どの熱源を抑制又は除去できるかを判断するため、システム安定性に対する温度の重要性の認識と共に、全てのシステム構成要素の総合的な評価が行われた。
【0191】
温度の大きな変動を受ける1つのシステム構成要素はアルミニウムフィルタアセンブリであり、その機能は、望まない低エネルギーX線を減衰させることである。これらの0.5mm厚のアルミニウム板は、シンクロトロン白色ビームに曝されるとすぐに加熱し、ビームが止まると急激に冷える。隣接するモノクロメータタンク内の熱的に敏感な結晶にアルミニウムフィルタアセンブリが近接することは、このことを不安定性の主な原因とした。フィルタによって生成された熱を除去し、アルミニウムフィルタアセンブリを熱的に分離するため、ヒートシンクが必要であった。図33は、本書に記述する主題に従う例示的なアルミニウムフィルタヒートシンクの画像である。図33を参照すると、アルミニウムフィルタ挿入口と、冷却水流入/流出管が示される。
【0192】
アルミニウムフィルタで発生する熱を熱的に隔離し、その熱を高流量の冷水導管に循環するため、銅フィルタアセンブリがシステムに構成された。又、アルミニウムフィルタは、放射表面積を限定するために大きさが縮小されると共に、銅ヒートシンクとの接触を増大させられた。水冷フィルタアセンブリを滴下後に得られた安定性試験は、システム全体のドリフトが約1桁低減され、コールドスタートから12時間の連続運転のドリフト測定が平均-6マイクロラジアンであることが示された。
【0193】
水冷フィルタヒートシンクを付加した後のシステム全体のドリフトの劇的な減少は、アナライザー及びモノクロメータ結晶の等温環境を維持することの重要性を明らかにした。しかしながら、他の発生源(source)の変更が熱をさらに低減することは、当業者であれば予測されるべきである。熱的ドリフトの残りの発生源を分離するため、各システム構成要素と外部環境の周期的な変化の体系的な解析が実施された。
【0194】
熱を下げるため、アンプ及び制御システムが実験箱から取り除かれることができる。駆動モータも取り除かれることができる。しかしながら、本実験では、試料ステージと検出器アセンブリを制御する駆動モータは除去できなかった。さらに、一定の外気温度を維持するのを助けるため、箱のドアが閉じられることができる。アナライザー結晶の温度、外気温度、及び重力(gravity)冷却水温度の12時間測定は、温度の大幅な変化を示さなかった。継続した実験は、第2のモノクロメータ結晶に直接接触して加熱される、第2のモノクロメータ結晶のアルミニウム台座に大幅な熱変動があったことを示した。
【0195】
第2のモノクロメータ結晶の機能は、第1のモノクロメータ結晶からの単色X線ビームを回折し、そのビームをアナライザー結晶と水平に揃えることである。理論的には、結晶とのX線の相互作用は弾性的であるため、発熱は無いはずである。高強度の多色シンクロトロン白色ビームの多くが第1の結晶の内部構造に吸収されるため、このことは第1のモノクロメータ結晶に当てはまらない。振動を減少させるため、重力駆動される水冷システムが第1のモノクロメータ結晶から余分な熱を除去するためにシステムに設置された。能動冷却は第2のモノクロメータ結晶には必要でなかったが、24時間の期間にわたって得られた温度測定は変更が必要であることを示した。
【0196】
サーミスタがアルミニウム支持プレート上に置かれ、24時間の典型的な運転にわたって5秒ごとに温度が測定された。図34は、24時間の期間にわたってサーミスタで測定された温度を示すグラフである。ビームがオンオフされた時から支持プレートの温度が約1.3℃上昇した。シンクロトロン蓄積(storage)リングの電流は時間とともに徐々に低下し、さらに放出及び補充される必要があり、これは温度グラフで明らかである。12時間の連続運転の後に、温度がベースラインに戻るまでにかかる時間を決定するためにビームラインが停止された。データの解析は、能動水冷のための支持プレートの改良を正当化する、第2の結晶の十分な加熱があったことを示す。図34のグラフは、通常のビームライン操作が結晶温度にどの程度影響を与えたかの教科書に注釈が付けられた。特定された熱的不安定性のこの発生源のため、水流と熱交換のための内部導管を有する銅支持プレートが設けられた。図35は、温度を低下させるための水冷却ラインを有する、典型的な改良された第2のモノクロメータベースと支持プレートの俯瞰図の画像である。
【0197】
1000時間の改良されたモノクロメータと共に約2000時間のビームライン操作の後、ビームラインの安定性の予測可能な傾向が測定及び評価された。予測されたように、光学の安定性を維持する圧倒的な要因は温度である。温度の絶対値は、時間とともに温度が変化することほど重要ではない。等温環境が維持されている場合、その後にシステムは平衡状態に到達し、モノクロメータ及びアナライザー結晶の両方に殆ど又は全くドリフトがない。蓄積リング内のリング電流が時間とともにゆっくりと、しかし予想通り減少するため、NSLSでの画像化は固有の問題を示す。第1のモノクロメータ結晶に入射するX線の強度はリング電流に比例して低下し、第1の結晶の温度を時間とともに低下させる。能動的フィードバック制御が結晶システムに配置されていない場合、第1のアナライザ結晶は時間とともに収縮し、d間隔と回折エネルギーをゆっくりと変える。第1の結晶上のブラッグ角の変化は第2の結晶上のビームの位置を変化させ、第2の結晶から放出される回折単色光子流束を減少させる。これは、アナライザー結晶に入射するX線の強度を低下させるのみならず、X線ビームの位置を変化させ、アナライザードリフトを引き起こす。
【0198】
アナライザードリフトの影響は、ビームラインのコールドスタートアップ(cold startup)中に最も明確に示され、そこではX線シャッターが閉じられた状態でビームラインの全ての構成要素が少なくとも24時間室温にある。システムが平衡に達するまでどの程度の時間がかかるかという実用的な目的と共に、起動後の最初の100分以内にアナライザーがどのようにドリフトするかを試験するため、一連の安定性試験が行われた。X線シャッターを有効にしたすぐ後でシステムを調整し、アナライザー位置をゼロにリセットすることにより、アナライザーの短期間の安定性試験が遂行された。その後、θを0.2マイクロラジアン増加させつつ、-10〜10マイクロラジアンの範囲で100秒ごとに、アナライザーが走査された。各ロッキングカーブの重心を決定するため、それぞれのロッキングカーブが続いて解析され、それはピーク位置として記録され、その対応するアナライザー位置とともに記録された。一旦システムが最初に調整されて実験が開始されると、それ以上のチューニング又は調整は行わなかった。
【0199】
全ての他のビームラインパラメータ及びアルミニウムろ過(filtration)が通常の撮像条件下で使用される範囲に設定されつつ、2つの光子エネルギー、18keV及び40keV、が試験のために選択された。高いエネルギーのX線は低いエネルギーのX線よりもはるかに貫通性があり、所定のレベルに流束を低減すると共に、多色シンクロトロン白色ビーム内に存在する低エネルギーX線を減衰させるため、より多くの前(pre-)モノクロメータフィルタを必要とする。ろ過量を増やすと、X線がモノクロメータに入る前に生じる吸収の量が増加するので、第1のモノクロメータ結晶上の熱負荷を低減する。フィルターアセンブリで発生するX線吸収から発生する熱を除去するために水冷ヒートシンクを追加すると、結晶はシンクロトロン白色ビームからより少ない熱影響を受ける。高いエネルギーで摂氏温度当たりの角度変化を減少させることと、ろ過を増やすことによるモノクロメータ上の熱負荷を低減させることの組み合わせは、ビームエネルギーの増加に比例して安定性を増加させる。
【0200】
ビームラインのコールドスタートアップから行われた安定性実験は、アナライザードリフトがリング電流の減少に密接に追随することと共に、この効果を実証する。現在の理論は、強力な入射シンクロトロン白色ビームは、ほぼ瞬時に第1のモノクロメータ結晶を深く加熱し、迅速に最高温度に到達させると仮定する。リング電流が時間とともに消失するにつれて温度がゆっくりと低下し、ドリフトを引き起こす。システムは最終的に周囲の大気及びシステム構成要素を温め、単位時間当りのドリフトの量を安定させる。40keVでのろ過量の増加は、熱負荷の影響を減らすのに役立ち、システムが熱平衡に達するまで時間を減少させる。ビームラインが5-7時間の連続運転をされると、各結晶の熱負荷の影響は最小化され、ビームラインはアナライザードリフトが殆ど又は全くない超安定(ultra-stable)になる。
【0201】
図36-39は、安定性試験の結果のグラフである。特に、図36は、一定期間にわたるアナライザーのピーク位置を示す18keVのシステム安定性試験のグラフである。図37は、18keVの安定性試験中のNSLS X線リング電流のグラフである。図38は、一定期間にわたるアナライザーのピーク位置を示す40keVのシステム安定性試験のグラフである。図39は、40keVの安定性試験中のNSLS X線リング電流のグラフである。
【0202】
この実験の結果は、光学におけるドリフトは光学内の結晶を等温に保持することによって制御することができることを実証し、それは、一定の温度を維持するために精密な加熱システムを用いてシンクロトロン及び非シンクロトロンベースのDEIシステムの両方で達成することができる。体系的なエンジニアリング解析を通して、アナライザー/モノクロメータの不安定性の問題は、根本的な制約から些細な邪魔者に縮小した。更なる改良により、問題は完全に取り除かれ、DEI及びMIR法をベースとする全てのコンピュータ断層撮影の完全利用を可能にするであろう。
【0203】
DEI及びDEIの最適な画像化パラメータを決定するためのマンモグラフィーファントム(PHANTOM)の助手(reader)の研究解析
前述のように、DEIは、X線吸収、屈折、及び超小角散乱(消衰コントラスト)からコントラストを取得するX線撮影技術である。DEIは、X線吸収と屈折からコントラストを得る類似のX線撮影技術である。従来の平面及びCTの両方のX線撮影システムは、X線が物質を通過する際の減衰に基づいて画像を生成する。X線吸収は電子密度及び平均原子番号に基づくので、対象又は患者における減衰の違いに基づいてコントラストが得られる。X線光子と物質との相互作用は、単に入射ビームから取り除かれる光子の数よりも多くの構造情報を提供することができる。DEIは、X線屈折及び超小角散乱の測定を容易にする、極めて敏感な角度フィルタとして動作するシリコンアナライザー結晶を、X線ビームの経路に組み込んでいる。公称(nominal)吸収コントラストを有する対象は、対象の特性又はその局所環境のいずれかに起因して、高屈折及び超小角散乱コントラストを持つであろう。
【0204】
乳房組織内の関心ある構造は通常、特に病気の初期段階では低い吸収コントラストを持つことを考えると、DEIは乳房イメージングに大きな可能性を持つことができる。悪性の乳房組織のDEI研究は、従来のマンモグラフィーと比較して、乳房腫瘍における棘状突起の可視化の大幅な増大を示している。乳房内の関心ある主な診断構造は石灰化、腫瘤、及び線維を含み、それらの全ては周囲の脂肪及び腺組織と比較して大きな屈折及び散乱の特徴(signature)を持つであろう。マンモグラフィーのためのDEIの利用を適切に調べるため、固有のシステムパラメータ及び構成は、乳房イメージングに診断上重要な特徴を検出するために最適化される必要がある。この研究の不可欠な要素は、吸収、屈折、及び超小角散乱除去(消衰)を用いて達成可能な放射線量の潜在的な減少を決定することである。臨床的に有用なマンモグラフィーシステムを設計し、構築するために規定されなければならない主要なDEIイメージング要素は、ビームエネルギー、アナライザー結晶反射、及びアナライザー結晶のロッキングカーブ上の位置である。
【0205】
本研究のための実験は、NSLSでX-15Aビームラインで行われた。解析中のパラメータを理解するため、システムの簡単な説明が望ましい(in order)。これらの実験のためのX線源は、NSLSにおける2.8GeVシンクロトロンのX線リングであり、10〜60keVの高流束X線を生成することができる。入射X線ビームから特定のエネルギーを選択するため、二重結晶シリコンモノクロメータが使用された。特定の角度を選択するために調整された対象の後ろにシリコンアナライザー結晶を配置することにより、DEI画像が得られた。アナライザーはマイクロラジアンの約1/10の分解能を持つ角度フィルタであり、それはX線屈折及び超小角散乱の測定を容易にする。アナライザーをその反射率曲線上の異なる位置に調整することは、X線分布の離散的な角度を選択することを可能とし、さらに幾つかの位置は対象及び病変の検出に有用な情報を提供する。
【0206】
ブラッグ[111]及びブラッグ[333]反射のように、DEIで使用可能な複数の結晶反射が存在する。DEI屈折コントラストはアナライザー結晶のロッキングカーブの傾きと共に増加し、ブラッグ[333]反射はブラッグ[111]反射よりもはるかに急な傾きを有する。ブラッグ[333]反射はより良いコントラストを提供することができるが、ブラッグ[333]反射における結晶によって入射多色X線ビームから選択可能なX線光子の数は、ブラッグ[111]反射よりおよそ1桁少ない。これらの反射の間の相対的差異を可視化して決定することは、臨床に基づくDEIシステム上の設計において重要な要因となり得る。
【0207】
X線管は、アノード材料、電圧、及びアンペア数の関数である出力スペクトル及び振幅でX線を生成するカソード/アノードの構成を使用することができる。マンモグラフィーシステムは、X線ビームを生成するための28〜32kVpの範囲の電圧で、モリブデンターゲットを有するX線源を含むことができる。この構成は、モリブデン、18keVのKαを中心とするエネルギースペクトルを持つ多色の発散X線ビームを生成する。軟部組織を画像化するため、吸収に基づくX線システムは、これらの比較的低エネルギーのX線に設定される。18keVのX線が軟部組織で大きなコントラストを提供する一方、1つの欠点は、低エネルギーX線に関連した患者の吸収線量の増大である。従来の幾つかのDEI乳房イメージング研究は、従来のマンモグラフィーシステムに匹敵するX線エネルギーに基づいていた。これらの技術は、X線吸収を測定する際の潜在的有用性を持っているにも関わらず、屈折及び超小角散乱の付加的なDEIコントラスト機構の利点に十分に対応していない。
【0208】
見かけ吸収及び屈折画像の生成を含む、DEIに適用できる幾つかの画像処理技術が存在する。他の発展的DEIベースの画像処理方法はMIRであり、それはコントラスト成分のより正確で詳細な分離である。MIRを用いた予備的研究は、この方法が低い光子カウントレベルで動作可能であり、従来のX線源との潜在的な使用を有することを実証している。DEIを扱う幾つかのグループはDEI法をCTに適用する過程にあり、それはDEIの追加的コントラスト機構をCTの空間分解能と組み合わせる。この研究が平面イメージングに焦点を当てる一方で、平面イメージングのためのシステムパラメータはシンクロトロン及び非シンクロトロンベースのCT用途の両方にも適用することができる。
【0209】
本書で記述される実験は、標準的なマンモグラフィファントムの画像化の間の取得パラメータの注意深い変化を伴う。研究のために取得された画像は、どんな二次的画像処理もなく、各システム構成で取得された生画像データを表す。専門家の助手は、理想的なDEIマンモグラフィー設備の仕様に役立つための全ての実験条件下で、既知のファントム特性(phantom feature)の可視性を採点した。
【0210】
工学及び医学の両方の観点から、最も重要なシステムパラメータの1つはビームエネルギーである。DEIのエネルギーの関数として構造可視化がどの程度変化するかの理解を得るため、次のエネルギー、18keV、25keV、30keV、及び40keV、が研究のために選ばれた。入射シンクロトロンビームからの所望のエネルギーの選択は、所望の波長のための適切なブラッグ角へモノクロメータを調整することで達成された。
【0211】
診断に有益な情報を得るため、アナライザー結晶のロッキングカーブを横切る3つの代表的な点が解析の間に使用されてもよい。各ビームのエネルギー/結晶反射の組み合わせのため、-1/2ダーウィン幅(DW)、ピーク、及び+1/2DW位置が選択された。対応するシンクロトロンX線写真が比較のために得られた。
【0212】
乳房組織及び乳癌の構造的特徴をシミュレートするため、標準化された乳房イメージングファントムがこの実験で使用された。初期の試みは実際の乳房組織標本を含んだが、生体組織と悪性の特徴の主観的な評価とに存在する変動は、この研究のためのファントムの利用をより適切なものとした。本書に記述される主題に従ったDEIシステムが複数の機構からコントラストを得ることができるため、それぞれの影響を受けやすい特徴を有するファントムが選択された。この実験では、表面に機械加工された直径と深さが異なる一連の円形の窪み(indention)を有するルーサイトから作られた、コントラスト-詳細(CD)ファントム(カナダ、オンタリオ州、トロントのサニーブルック アンド ウイミンズ リサーチインスチチュートから入手可能)が選択された。直径と深さの変化は、コントラストと空間分解能を評価するのに有用な勾配(gradient)を生成する。深い窪みは減衰の差異を増大させ、その結果としてコントラストを増大させる。窪みの円形の端は、X線の屈折を助ける界面を提供する。合計可視体積(visible volume)を決定するため、既知の半径と高さで各シリンダーの体積が計算された。
【0213】
図40A-40C及び図41A-41Cは、それぞれ18keV及び30keVで取得された典型的なCDファントムの画像である。特に、図40A-40Cはそれぞれ、18keVシンクロトロンX線写真の画像、+1/2ダーウィン幅(DW)のアナライザー結晶位置で取得された18keVのDEI画像、及びピークアナライザー結晶位置で取得された18keVのDEI画像を示す。DEIの例で使用される結晶反射はブラッグ[333]反射である。
【0214】
図41A-41Cはそれぞれ、30keVシンクロトロンX線写真の画像、-1/2ダーウィン幅(DW)のアナライザー結晶位置で取得された30keVのDEI画像、及びピークアナライザー結晶位置で取得された30keVのDEI画像を示す。DEIの例で使用される結晶反射はブラッグ[333]反射である。18keVシンクロトロンX線写真と比較して、30keVシンクロトロンX線写真ではコントラストが低下する。
【0215】
第2のファントムが実験のために使用された。第2のファントムは、デジタルマンモグラフィーシステムを試験するための国際デジタルマンモグラフィー開発グループ(IDMDG)に合わせて設計された。特に、このファントムは、デジタルマンモグラフィーイメージングスクリーニング試験(DMIST)のために開発され、MISTY(サニーブルック アンド ウイミンズ リサーチインスチチュートから入手可能)として知られている。MISTYファントムは、乳房撮影画像の品質を定量化するために使用できる種々の領域を含む。構造的にファントムは、システムのコントラスト及び分解能を定量化するために使用でき、幾つかの高分解能の細部を含む水銀-増感メッキを有するポリメチルメタクリレート(PMMA)から構成されている。
【0216】
実験で使用するためにMISTYファントムから3つの領域が選択された。図42A-42Cは、30keV、ブラッグ[333]、ピークアナライザー結晶位置で取得されたMISTYファントムの3つの異なる領域の画像である。特に、図42Aは、一連の線対(line pair)クラスタの画像であり、各クラスタは4つの線を含み、線間の距離はそれらがもはや解像できなくなるまで減少する。
【0217】
図42Bは一連の星クラスタの画像であり、それらは乳房組織の石灰化をシミュレートする。それぞれ6つの星を含む7つのクラスタの列は、消失点(missing point)に1つの星を持つ星の各クラスタで使用された。分解能とコントラストが減少すると、星はもはや見えなくなり、斑点(speck)としてのみ見える。この実験で使用するため、石灰化のシミュレーションは反転された。
【0218】
図42Cは、段状くさび(stepwedge)の画像である。段状くさびは吸収コントラストを測定するために使用される。段状くさびは6つの明確に定義された界面を含む。
【0219】
この実験では、DEI画像はフジBAS2500画像版リーダー、及びフジHR V画像版を使用して取得された。上記したように、画像版は、有機バインダーと混合された輝尽性蛍光体で被覆された、約0.5mm厚の柔軟なプラスチック板である。さらに、全ての画像は、50μmの画素サイズと16ビットの階調レベルを用いて走査された。画像取得のために使用される表面線量はエネルギーに基づいて変化したが、各エネルギー設定でX線写真及びDEI画像の両方に同じ表面線量が使用された。30keVで取得された画像に3.0mGyの表面線量が使用され、25keVで取得された画像に1.5mGyの表面線量が使用され、40keVで取得された画像に0.2mGyの表面線量が使用された。
【0220】
CD及びMISTYファントム画像結果を解析するため、2人の研究助手が実験に参加した。殆どのDEI構成の間の劇的な差異と組み合わせて標準化されたファントムの使用は、2人の助手が統計的検出力の適切なレベルを達成するために十分であることを示した。1人の熟練した乳房画像者(imager)及び1人の医療物理学者が研究に参加した。視覚環境を最適化するため、助手の研究は、500 cd/m2のピーク輝度を有する5メガピクセルのCRTモニターを使用した特別に設計された暗室で行われた。助手は各画像のグレースケールを調整することを許容され、可視化を最大にするために拡大鏡を提供された。
【0221】
病変の全周囲を視覚化する能力はマンモグラフィーで診断的意義を有し、その例は、明らかに限局性の(circumscribed)境界線を持つ良性線維腺腫と、棘状突起の有無に関わらずあまり明確に定義されない境界線を持つ潜在的に悪性の塊との間の差である。さらに、石灰化及びその形態の可視化は、基礎病理の識見を提供することができる。臨床マンモグラフィーへの診断的適用を反映する質問は助手研究計画に不可欠であり、必要に応じて明らかに異なる信頼レベルに課題を分離した。
【0222】
どの要因が最も高い性能を与えるかを決定する中で、助手によって使用するために8つの性能測定が設立された。
1.CDファントム内で完全な境界線が見られる円の体積;
2.CDファントム内で少なくとも半分の境界線が目に見える円の体積;
3.CDファントム内で境界線の任意の部分が目に見える円の体積;
4.MISTYファントム内で観測された線対グループの数;
5.MISTYファントムの石灰化シミュレーションで目に見える星の数;
6.MISTYファントムの石灰化シミュレーションで全ての点が見られる最後のクラスタ番号;
7.MISTYファントムの石灰化シミュレーションで見られる斑点の数;及び
8.MISTYファントムの段状くさびで明確に定義されたセクション(section)の数。
【0223】
画像内のデータの体系化を容易にするため、対応する遂行課題と共に各ファントムのグラフィック表現が、画像を採点する各助手に提供された。CDファントムについて、助手は、画像の各列及び行にどの円が見えたかを示すよう求められた。MISTYファントム線対の領域を評価するため、助手は4つの全てのラインが明確に見られる最も高いクラスタを決定することを求められた。石灰化シミュレーションの採点は、見られる星の総数を最初にカウントし、その後、あり得る29点の中から各クラスタで見られる星点(star point)の数を数えることを含む。さらに、助手は、見えることができる斑点の総数をカウントすることを求められた。関心ある段状くさび領域について、助手は6つの界面のうちどれがはっきり見えたかを印を付けるよう求められた。画像提示の順番は、採点する各助手に無作為に選ばれた。
【0224】
分散の複数方法(multi-way)解析が、8つの全ての結果に合わせて使用された。解析に含まれるものは、ビームエネルギー、結晶反射、カーブ位置、及び助手の間の全ての相互作用であった。正規性(normality)の仮定の妥当性を確保するため、ボックス-コックス変換が結果の一部に適用された。全ての要因を比較したときに複数の結果が考慮されたので、有意水準として0.05/8(0.00625)を設定することにより、全体のタイプIエラーを調整するためにボンフェローニ(Bonferroni)テストが使用された。この有意水準で、全ての要因の組み合わせのうち性能の違いを比較するため、我々はテューキー(Tukey)検定が使用された。
【0225】
CDファントムの結果
周囲の任意の部分が目に見える円の体積について、2人の助手の間(p値= 0.0185)及び異なるエネルギー準位の間(p値= 0.0176)で有意な差はなかった。しかしながら、結晶反射及びロッキングカーブ位置の両方は、それらの相互作用と同様に、有意である(3つ全てのp値<0.001)。テューキー検定解析は、ブラッグ[333]反射でより多い体積が見られることを示す。X線写真は目に見える体積が最も小さく、-1/2 DW、+1/2 DW及びピークアナライザー結晶位置の間でほとんど違いがない。
【0226】
結果が周囲の少なくとも半分が目に見える円の体積である場合、全ての要因の主な影響はp値が0.001未満で有意である。テューキー検定解析は、25keVが最も良く機能することを示し、25keV及び30keVの両方は、18keV及び40keVより大きな目に見える体積を生じさせる。データは、結晶反射及びアナライザー位置の間に有意な(p値<0.001)相互作用があることを示す。ブラッグ[333]反射及びピークアナライザー位置の組み合わせは最も大きな目に見える体積を生じさせるが、それがブラッグ[333]、+1/2 DW及びブラッグ[333]、-1/2DW位置の組み合わせよりも良く機能することを支持するのに十分な証拠はない。シンクロトロンX線写真は最も小さい目に見える体積を生じさせる。
【0227】
全周囲が見られる円の体積について、助手、ビームエネルギー及びロッキングカーブ位置の唯一の主な影響は、それぞれp値が0.001未満、0.0027に等しい、及び0.001未満であり有意である。テューキー検定解析は、ビームエネルギーの全てのレベルの間の差異を見い出せなかったが、データの傾向は、25keVが30keVよりも良く機能し、後者は40keV及び18keVの双方より良く機能したことを示す。他の機能測定と同様に、シンクロトロンX線写真は最も小さい目に見える体積を生じさせた。
【0228】
MISTYファントム
線対グループの解析は、ビームエネルギー、結晶反射、及びアナライザーロッキングカーブ位置の主な影響は全てのp値が0.001未満であり有意であることを示す。さらに、結晶反射及びロッキングカーブ位置の間に有意な相互作用(p値<0.001)があるように見える。データは、ピークアナライザー位置での18keV、ブラッグ[333]、又はピーク若しくは+1/2DWアナライザー位置での25keV、ブラッグ[333]の組み合わせが良く機能することを示す。線対領域で最も良い性能は、+1/2DWのロッキングカーブ位置で、30keV、ブラッグ[333]である。
【0229】
高度に平行化されたX線ビームを持つシステムで、X線を発散するために設計されたファントムを使用して生成される星クラスタ画像の多くに、アーティファクトが存在した。データは、完全性を期すため、及び従来のファントムの全体的な構造設計が可視化にどんな影響を与えるかを示すために提示される。目に見える星の数の解析は、p値が0.0026で、ビームエネルギーのみが有意であることを示す。試験結果は、25keVが最も良い選択であるが、30keVから有意な差がないことを示す。どの要因も、全ての点が見られる最後のクラスタ番号について有意でなかった。見られる斑点の数からのデータは、ブラッグ[111]又は[333]反射で30keVと同様に、18keV及びブラッグ[111]、18keV及びブラッグ[333]が最も良い組み合わせであることを示す。
【0230】
段状くさび領域について、ビームエネルギーの異なるレベル、及び異なるロッキングカーブ位置の間で有意な差があるように見える。データは、18keV、25keV、及び30keVのビームエネルギーはほぼ同等であるが、40keVで取得された画像よりも全てが良く機能することを示す。ロッキングカーブ位置についての性能の結果は、-1/2DW、ピーク、及び+1/2DWの位置がシンクロトロンX線写真の性能と同等で等しいことを示す。
【0231】
全ての性能測定解析は、-1/2DW又はピークアナライザー結晶位置におけるブラッグ[333]反射を使用し、最適なDEIシステム構成は、25又は30keVであることを示す。表4-6は、助手研究データの概要を示す。特に、表4はX線ビームエネルギーに関して助手研究データの概要を示す。下記の表5は、結晶反射に関して助手研究データの概要を示す。以下の表6は、ロッキングカーブ位置に応じてグループ化された助手研究データの概要を示す。
【0232】
【表4】
【0233】
表4:X線ビームエネルギーに関する助手研究データの概要
【0234】
【表5】
【0235】
表5:結晶反射に関する助手研究データの概要
【0236】
【表6】
【0237】
表6:ロッキングカーブ位置に応じてグループ化された助手研究データの概要
【0238】
ビームエネルギーに関し、双方のファントムについての助手研究データは、18keVより大きいエネルギーがDEIに適することを示す。吸収コントラストが1/E3で減少するため、従来のX線システムについて軟部組織の吸収コントラストは、エネルギーの増加によって急激に減少する。助手研究の結果は、より高いビームエネルギーについて、吸収からの情報の損失はDEIに固有のコントラストからの情報によって補償されることを示す。主に屈折である構造についてDEI感度は1/Eに比例し、40keV又はそれを超えるエネルギーで軟部組織の画像取得の可能性を伴う。消衰に寄与する散乱光子の除去はエネルギーに無関係であるが、散乱強度はエネルギーが増加するにつれて減少する。乳房組織内で最も重要な診断構造が重要な屈折及び散乱特性を有すると考えられているので、より高いエネルギーでのイメージングは、吸収から離れて屈折及び超小角散乱コントラストに焦点を当てることにより促進されるであろう。
【0239】
ブラッグ[333]反射について可視化の増大は、特により高い性能レベルで、CDファントムに顕著である。ブラッグ[333]反射は性能測定の大部分で優れたが、この反射及びブラッグ [111]の間の違いは予想されるよりも小さい。このことは、流束の工学的考察を考えるとブラッグ[111]反射が許容できることを示すかもしれないが、よりもっともらしい説明は、ファントムの設計はX線の屈折及び消衰に基づくコントラスト機構を測定するためには不適当であったということである。
【0240】
同じ推論は、ピークアナライザー位置が性能測定の大部分で優れていたアナライザー結晶の位置に当て嵌めることができる。吸収コントラスト及び分解能は、偏位しない(undeviated)光子の強度が最大の時に最高となり、それはアナライザーロッキングカーブのピークである。ロッキングカーブのテールに光子を散乱させる構造が除去され、追加のコントラストをもたらす点で、消衰効果はピーク位置で役割を果たす。これらのファントムはX線吸収に基づく撮像システムを試験するために設計されているので、このタイプの研究では、ピーク位置が最高に機能することが期待される。屈折コントラストはロッキングカーブのピークには存在せず、さらに-1/2DW及び+1/2DWと一般に同等又はその性能低下は、高屈折率であるファントム構造がないことを示す。
【0241】
この研究は、個々のシステム構成要素が最も有用である画像処理方法に及ぼす影響でなく、画像品質に及ぼす影響を見抜くために設計された。全撮像パラメータ空間を狭くする最初のステップとして、見かけ吸収及び屈折画像を作成するための各構成での生データの解析は、DEI画像ペアの処理よりこのように適切である。
【0242】
最も有望な成果の一つは、潜在的に40keVと同じ程度に高い高エネルギーX線を使用する能力である。より高いエネルギーでの光電効果の急速な減少は、患者に吸収された光子数の減少に対応し、放射線量の劇的な減少をもたらす。検出器に到達する同じ数の光子(107ph/cm2)について、5cmの水を通した表面吸収線量は18keVで3.3mGy、30keVで0.045mGy、及び40keVで0.016mGyである。これは、18keVに比べて30keVで線量で73倍の減少、及び40keVで206倍の減少を表す。吸収は組織の厚さと共に増加するので、線量のこの減少は厚い標本についてさらに大きくなる。
【0243】
複数画像X線撮影を用いた乳癌コントラスト機構の解析
従来のマンモグラフィーと比較した場合、DEI及びMIR技術を使用した乳房イメージング研究は可視化の改善を実証してきた。特に、乳癌線維の基本的なコントラスト機構を解析するDEI技術を用いた研究は、X線の消衰は画像コントラストに大きな役割を果たすことを示す。さらに、乳癌棘状突起の研究は、対応するX線写真と比較してDEIピーク画像で8から33倍の増加を示す。対象の超小角散乱を表す画像の追加により、MIRは、これらの特性のより完全で厳密な評価を可能とする。
【0244】
この研究は、X線源の使用可能なエネルギー範囲を広げ、さらにX線吸収の必要性を減少又は排除することに取り組んだ。軟部組織における吸収コントラストが光子エネルギーの増加とともに急激に減少するため、乳房組織の基本的なX線コントラスト機構は、重要な非シンクロトロンベースのDEIシステムとなる。高エネルギーX線を利用することは、検出器に到達する入射光子数を増やすことによってDEIシステムの効率を向上させ、さらにX線吸収の減少は、表面及び吸収された放射線量の両方を低減する。しかしながら、吸収が乳房組織の可視化のための主要なコントラスト機構である場合、あらゆるDEIシステムは、従来のX線システムと同様の範囲で低エネルギーX線を使用するであろう。この実験は、18keV及び60keVでシステム機能を比較する。
【0245】
エネルギー依存の吸収、屈折、及び乳房組織の散乱を評価するために、特性を持つ4つの乳房組織標本が複数のX線エネルギーで撮像され、さらに個々のコントラスト成分を分離するためにMIRを用いて処理された。研究で使用されたエネルギー範囲が従来のモリブデン及びタングステンX線管で使用されるエネルギーに基づいて決定され、それぞれ18keV及び60keVであった。各MIRコントラスト機構についてコントラストの低下に密接に従うため、25keV、30keV、40keV及び50keVのビームエネルギーも選択された。
【0246】
一つの実験では、NSLS X-15Aビームラインでのイメージングのため、3つの乳癌標本が選択された。NSLSでのX-15Aビームラインを用いてMIR画像の組及びシンクロトロンX線写真が取得された。画像取得のため、120mmx80mmの視野と30ミクロンの画素サイズでフォトニックサイエンスVHR-150X線カメラが使用された。
【0247】
X線の屈折及び散乱に関する光電効果の急速な減少は、一定の表面線量の維持を困難にさせる。例えば、X線吸収に対して最適化された表面線量を使用して18keVで取得された画像は、60keV等のより高いビームエネルギーでは、光子吸収の減少により大幅に露出オーバーになる。40keVのMIRイメージングに使用されるエネルギー範囲の中央にモノクロメータを調整すると共に、平均照射線量が検出器のダイナミックレンジの約半分になるように表面線量を選択することにより、平衡(balance)が見いだされた。MIR並びに18keV、25keV、30keV、及び40keVでのX線撮影イメージングのため、350mradの表面線量が選ばれた。50keV及び60keVで使用される表面線量は、50keVで20mradかつ60keVで4mradの表面線量の偏向磁石(bending magnet)X線源からのエネルギーで、光子流束が急激に減少することによって減少した。アナライザー結晶ロッキングカーブの半値全幅(FWHM)は、エネルギーの増加に伴って減少する。屈折コントラストはロッキングカーブのショルダーに特徴的であり、各エネルギーでの試料パラメータ(sampling parameter)のわずかな変更を必要とする。各MIR組のため、ロッキングカーブの幅に関係なく21個の画像が取得され、さらにFWHMの減少に合わせて調整するため、より高いエネルギーでは角度範囲及びθ増分が低減された。図43は、エネルギーに対する、乳房の吸収、非干渉散乱、及びコヒーレント散乱の寄与を示すグラフである。
【0248】
NSLSでのイメージングのため、4つの乳房標本が選択された。18keV及び25keVで取得されたMIR画像は、ピークから-5から5マイクロラジアンの範囲で取得され、0.5マイクロラジアン毎にサンプリングされた。30keV及び40keVで0.4マイクロラジアンのθ増分でのMIRイメージングについて、サンプリング範囲が±4マイクロラジアンに減少させられた。50keVで0.3マイクロラジアンのθ増分での±3マイクロラジアンの角度範囲、及び60keVでMIRイメージングについて0.2マイクロラジアンのθ増分での±2マイクロラジアンの角度範囲が使用された。各エネルギー及び線量で、対応するシンクロトロンX線写真が取得された。さらに、ゼネラルエレクトリックSenographe 2000D(コネチカット州、フェアフィールドのゼネラルエレクトリック社から入手可能)を使用して、乳房標本が画像化された。平均腺線量、サンプルを通した分布(distribution through)、及び画像を生成するために必要な流束を決定するため、各エネルギーで1つの画像に使用される線量が熱ルミネセンス検出器を用いて測定された。
【0249】
従来技術と比較するために、図44は従来のX線撮影システム上に画像化された例示的な乳房標本の画像である。この標本は、100ミクロンの画素分解能でGE Senographe 2000Dを使用して空気中で画像化された。図45A-45Fは、本書に記述される主題に従う技術を使用し、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV、及び60keVのビームエネルギーでの同一サンプルのシンクロトロンX線写真である。これらの画像は、NSLSでのイメージングに使用されるものに匹敵する圧縮レベルで空気中で取得された。
【0250】
図46A-46Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV、及び60keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。特に、図46Aは、0.5マイクロラジアンのθ増分で±5マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、18keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Bは、0.5マイクロラジアンのθ増分で±5マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、25keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Cは、0.4マイクロラジアンのθ増分で±4マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、30keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Dは、0.4マイクロラジアンのθ増分で±4マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、40keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Eは、0.3マイクロラジアンのθ増分で±3マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、50keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Fは、0.2マイクロラジアンのθ増分で±2マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、60keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。
【0251】
平均腺線量と分布は、熱ルミネセンス検出器を用いて測定された。図47A-47Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV、及び60keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布を示すグラフである。
【0252】
図48は、本書に記述された主題に従うMIRのために使用されるエネルギーに対するX線ビームエネルギーを示すグラフである。各エネルギーで得られた線量測定データを使用して、DEIの組の各X線写真及び成分を取得するために使用される流速が計算され、図に示されている。
【0253】
上記の実験結果は、MIRを使用した乳房イメージングがエネルギーの広い範囲にわたっていかに機能するかを示す。吸収のみを考慮すると、40keV又はそれより上のエネルギーでほとんど吸収コントラストがなく、エネルギーの増加に伴って軟部組織のコントラストが劇的に低下するのが期待できるであろう。特に軟部組織の吸収コントラストが実質的にゼロである60keVで、各エネルギーでのシンクロトロンX線写真はコントラストの低下を示す。
【0254】
モリブデン源を用いた従来のX線管に基づく画像取得時間は10,000秒にまでなることがあり、臨床イメージングに必要な時間ウィンドウをはるかに越える。モリブデンX線管は、熱放散を制限すると共に単位時間当り生成可能な流束に重要な工学的限界を置く固定アノードを持つ。タングステンX線管は、大きな回転アノードを持ち、はるかに高い電圧とアンペア数に耐えることができる。タングステンX線管は、流束及び熱放散に多くの利点を提供するが、タングステンにより生成される特性X線は、軟部組織における吸収コントラストを生成するには高すぎる。しかしながら、この実験は、X線吸収の必要なしに屈折及び散乱のMIR固有のコントラスト機構が優れた軟部組織コントラストを生成できることを実証する。
【0255】
より高いエネルギーでの光子の減少は線量分布曲線で明らかであり、そこには18keV及び60keVでの分布の間に顕著な違いがある。18keVで、組織の吸収による流束の大きな低下がある。この流束の低下は、50keV及び60keVで発生する光子の最も高い透過(transmission)を伴い、エネルギーの増加とともに減少する。吸収の減少は効率の向上につながり、それは図48に示された流束の測定で明らかである。
【0256】
実験についてのフィッティングアルゴリズムを較正するため、既知の直径及び屈折率の複数のナイロンモノフィラメント繊維及びルーサイト棒が解析のために選択された。乳癌棘状突起の直径及び形状を近似するため、より小さいナイロン繊維が選ばれた。40keVのX線ビームエネルギー及び350mradの表面線量を使用して、各標本及びそれに対応するシンクロトロンX線写真が取得された。MIRについて、0.4マイクロラジアンのθ増分で21個のイメージを生成するため、±4マイクロラジアンの角度分布が選ばれた。これらの画像は、X線吸収、屈折、及び散乱から生成されたコントラストを表す画像を生成するためのMIR法を用いて処理された。
【0257】
2次元画像から3次元情報を抽出することは、特に不均一な対象について重要な課題となっている。乳癌棘状突起は事実上円筒形であり、その材料特性に関して製造される近似を可能にする。乳癌棘状突起に関する情報を抽出するため、解析方法を設計し調整することが最初に必要である。適切なMIRベースの解析方法は、ナイロン及びルーサイト繊維と乳癌棘状突起の両方の直径と屈折率を決定するために使用されることができる。これらの2つの重要な特性と共に、繊維及び棘状突起の他の多くの特徴(aspect)が解析及びモデル化されることができる。MIR画像に3つのコントラスト成分が存在する一方で、屈折画像は、臨床イメージングシステムのためにたぶん最も重要であろう。イメージングのために高エネルギーX線が利用される場合、屈折画像と比較して吸収画像は劣るであろう。ロッキングカーブのテールで流束が大幅に減少するために、散乱画像もまた屈折画像に2次的な役割を置く。複数の乳癌標本にわたって屈折率を計算及び比較することは、屈折コントラストを生成する材料特性が安定し(consistent)、異常でないという保証をある程度提供することができる。
【0258】
直径の異なるナイロン及びルーサイト繊維を用いて、方法の調整が実行された。-4から4マイクロラジアンのサンプリング範囲と0.4マイクロラジアンのθ増分で、40keVでMIRを用い、200ミクロン、360ミクロン、及び560ミクロンの直径を有するナイロン繊維が画像化された。これらの線維は、臨床的に重要な棘状突起のおおよその形状と直径を近似するように選ばれた。13000ミクロン及び19,000ミクロンの直径を持つ大きなルーサイト棒は、直径が大きい対象に対するアルゴリズムを評価するために選ばれた。図49は、MIRを使用した繊維径の評価を示す画像である。ナイロン繊維は吸収が弱く、そのためDEI及びMIRコントラストを評価するための完璧なファントム材料である。図49のファントムは、直径が減少するナイロン繊維を使用してMIR及びDEIのコントラストと分解能を測定するために設計された。直径が小さくなるほど、イメージングに挑むことがより難しくなる。
【0259】
ナイロン繊維及び乳癌棘状突起のような円筒形の対象は、図50に示すような特徴的な屈折プロファイルを示し、それはナイロン繊維の屈折プロファイルを示すグラフである。屈折は棒の端で最も高く、中央でゼロになる。対象が円筒形であると仮定すると、直径を推定するためにMIR又はDEI屈折画像から屈折の特徴(refraction signature)を使用することができる。既知の直径の円筒で、繊維又は原線維(fibril)の屈折率が推定されることができる。
【0260】
以下の表7及び8は、ナイロン及びルーサイトの直径並びに屈折率の情報を含む。
【0261】
【表7】
【0262】
表7:MIR直径較正
【0263】
【表8】
【0264】
表8:MIR屈折率較正
【0265】
図51は、MIRの屈折フィッティング直径較正を示すグラフである。既知の次元の線維が画像化され、屈折率及び直径を計算するためにアルゴリズムが使用された。乳癌に見られる棘状突起がナイロン繊維に似た性質を持つという理由で、ナイロンファントムがシステムの較正のために使用された。
【0266】
この実験では、ナイロン及びルーサイト繊維の直径及び屈折率を抽出するために使用したのと同じ方法が、3つの別個の乳癌標本内の関心ある5つの領域に適用された。図52A-52Cは、乳癌標本のMIR屈折画像である。下記の表9は、計算された棘形成の直径及び屈折率を示す。
【0267】
表9:線維の屈折率
【0268】
【表9】
【0269】
図53は、本書に記述された主題に従うDEIシステムによって得られる、限局性乳癌塊(mass)と棘状突起のMIRの組の画像である。
【0270】
図54A-54Eは、従来のX線写真と比較して、DEIを用いた線維の可視化を示す画像である。特に、図54Aは、浸潤性小葉癌を含む乳房組織標本の従来のX線写真の画像である。1cmの白いボックス内の線維が腫瘍の表面から延びる腫瘍のフィンガー(finger)に対応することを確認するため、サンプルは組織学的評価を受ける。図54Bは、図54Aに1cmの白いボックスで指定された領域の拡大図を示す従来のX線写真の画像である。図54C-54Eは、図54Aに1cmの白いボックスで指定された領域の拡大図を示すDEI画像である。これらの拡大図において、対象の構造がほとんど見えない従来のレントゲン写真より、DEI画像の方が組織コントラストが高いことは明らかである。
【0271】
改良されたDEIのコントラストを定量化するため、図54B-54Eの縦の白い線で示される画像プロファイルに沿って線維のコントラスト対策(measures)が計算された。計算は、組織サンプルの他の領域について繰り返された。統計解析は、従来のX線写真よりDEI屈折画像が8〜14倍のコントラストを持つ一方で、ピーク画像はX線写真に比べて12〜33倍のコントラストを持つことを示した。
【0272】
X線の屈折及び散乱イメージングの基礎となる物理学は、特に吸収をベースとするX線イメージングの100年以上の歴史と比べると、まだ研究の初期段階である。生体組織に特有の不均一性を考えると、ほぼ円筒形の乳癌棘状突起の解析は、複数の組織標本と比べるよりも確実に診断的に有用な特徴を提供する。
【0273】
空気中で画像化される複数の標準化された均質なシリンダーの使用は、屈折ベースのフィッティングアルゴリズムの正確な較正を可能にする。生体組織を解析するためのこのアルゴリズムの使用は、生体組織の不均一な性質に起因して計算にエラーをもたらす可能性があるが、乳房組織及び診断的応用の性質は、絶対計算でこれらのエラーの重要性を低減する。
【0274】
従来のマンモグラフィーの基本的な問題は、脂肪組織の高い吸収バックグラウンドに浸ている低コントラストの対象を視覚化するのが困難であることである。腫瘍性病変は時間とともに大きさと密度が増大し、最終的にバックグラウンドを超えて十分に大きく高密度になり、従来の方法を使用して見えるようになる。乳癌の死亡率は病変の大きさや進行に直接関連するので、悪性病変の発生と検出の間の時間を短縮することは、全ての新しい乳房の画像診断法の目標である。
【0275】
DEI及びMIRは、複数のX線コントラスト機構の違いを利用することにより従来のX線撮影を改良し、良性と悪性の構造を区別する助けとなる。脂肪組織は、小さな悪性病変と同様のX線減衰を持つかもしれないが、それらは同じ屈折の特徴を持っていない。脂肪組織は屈折及び散乱コントラストをほとんど持っていないが、乳癌病変の小さな円筒形棘状突起は、大きな屈折及び散乱の特徴を持っている。40keVで、軟部組織における吸収コントラストは僅かであり、関心ある病変とバックグラウンド組織との間の全体的なコントラスト勾配をさらに増加させる。
【0276】
棘状突起についての屈折コントラストのさらなる増大はそれらの形状に由来し、それはX線屈折にとって理想的である。円筒の対象に入射する平行X線ビームについて、屈折コントラストは、円柱の上部と下部で最大となり、中央で屈折コントラストが最小になる。シリンダーの直径が減少する時、吸収コントラストのレベルがバックグラウンドに消えた後であっても、対象の形状に起因して屈折コントラストが残ることができる。複数の乳癌標本にわたって得られる屈折率の値は、材料特性が類似すると共に、最も類似した癌標本でコントラストの増大が観察されることを示す。
【0277】
乳房組織の可視化の増強をもたらす基本的なコントラスト機構を決定することは、非シンクロトロンベースのDEI/MIRシステムの設計において最も重要なステップである。本研究は、屈折及び散乱のMIRに固有なコントラスト機構が構造の可視化に大きな役割を果たし、さらに病変の可視化のためのX線吸収への依存を減らすことを示す。X線吸収の減少は患者に吸収される線量の低減につながり、それは従来のマンモグラフィーのために必要な比較的高い線量を考えると大きな利点である。
【0278】
これらの実験におけるナイロンの使用は、将来のモデル化及びシミュレーション実験のために使用できる可能性を示す。同様な形状、直径、及び屈折率で、ナイロンモノフィラメントは、これらの診断上重要な構造が高いコントラストを生成する理由についての洞察を提供し得る。
【0279】
コンピュータシミュレーション
DEI構造を試験するため、コンピュータシミュレーションソフトウェアが開発された。開発されたソフトウェアはソース(source)、結晶、対象、及び検出器の特定の配置及び仕様に基づき、患者の線量を計算し、かつDEIシステムを通したX線流束量を監視するために追跡する光学光線を使用する。結晶光学が望ましくない方向に伝わるX線を排除するので、DEIを克服する(hurdle)主な実現可能性は、検出器面に到達するまで存続する十分な数の光子を得ることである。
【0280】
1つの構造についてのシミュレーションのシステムパラメータ仕様及び結果の一覧が、以下のそれぞれ表10及び11に提供される。
【0281】
【表10】
【0282】
表10:システムパラメータ仕様
【0283】
【表11】
*全ての減衰が組織へのエネルギー付与につながると仮定した最悪の場合の見積もり
【0284】
表11:システムパラメータの結果
【0285】
図55A-55Cは、本書に記述される主題の一実施形態に従うコンピュータシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレートされた、一般に5500で示されるDEIシステムの概略図である。特に、図55A-55Cは、DEIシステムの斜視図、側面図、及び上面図である。図55A-55Cに関し、X線ビームは、線源を有するX線管XTによって生成される。1つのシミュレーションでは、X線管XTは、シーメンスDURA(登録商標)アクロンB X線管(ペンシルバニア州マルバーン市のシーメンスメディカルソリューションズUSA社から入手可能)としてシミュレートされた。シーメンスX線管はタングステンターゲットを含み、従って、それは59.3keVでKα1X線を生成する。従って、X線管XTは59.3keVでKα1X線を生成するためにシミュレートされた。ビームが患者に衝突する前に結晶光学系での損失を克服するために必要な流束を達成するため、強力な管がDEIに必要であろう。シーメンスX線管は、熱を放散する回転アノードを有し、高出力(60kW)で管が動作することを可能とする。シミュレートされたDEIシステムは、管上の線源ポート(port)を使用する。
【0286】
図56は、本書に記述された主題の実施形態に従うDEIモノクロメータ結晶5602に結合される対数らせん集束要素5600の斜視図である。図56を参照すると、要素5600は、光子流束を増加させるように構成される屈曲した(bent)回折結晶であることができる。要素5600はX線源の大きなターゲット領域を提供し、それは高出力を実現し、薄い仮想線源を形成するために放出された放射線を集束可能とする。仮想線源は小型で非常に明るいものとすることができる。さらに、屈曲した回折結晶5600は、対数らせんの一部である表面を持つ。
【0287】
図57は、火線(caustic)でのソースと共に、対数らせん要素の集束効果を示す斜視図である。表面形状は、ブラッグ回折要素を集束素子とさせる。対数らせん要素は以下の次の特徴を持つ:(1)それは明るさが最大となる固定された取り出し角度(take-off angle)で大きなターゲット領域から放出される光を集束し、(2)それはビームを単色にし;及び(3)それは高輝度の仮想線源を形成するために放射線を集束する。図58A及び58Bは、実験的研究のための特性評価システムのそれぞれ平面図及び立面図である。図58A及び58Bを参照すると、図は高輝度の仮想線源を形成するために放射線を集束する対数らせん要素を示す。
【0288】
DEIシステム5500は、前(pre)モノクロメータ、モノクロメータ、及びアナライザーの3つの結晶を含む。全ての3つの結晶はシリコンであり、[440]反射系列(reflection order)のために調整される。この方向に沿ってスライスすることで、大きな結晶が製造されることができる。このような結晶は容易に入手可能である。
【0289】
DEIシステム5500のシミュレーションにおける走査プロトコルは、検出器Dについて6秒に設定された。一例では、検出器Dは、画像ライン毎に一回読み出される1ライン(single line)の装置であることができる。別の例では、検出器Dは、X線ビームを横切る対象Oの動きに同期して走査される全領域(full-field)装置であることができる。1ライン検出器又は全領域検出器のいずれかで、画像データの1ライン又はストリップ(strip)が一度に取得される。
【0290】
別の例では、検出器Dは直接X線-電荷変換検出器(direct X-ray-to-charge conversion detector)であってもよく、それは空間分解能を大きく損なうことなく、より高いエネルギーでの効率を達成するための厚い吸収体の??使用を許容する。図59は、一般に5900で指定される直接X線-電荷変換検出器の模式図である。検出器5900は、例えばタングステンX線管によって生成されるもののように、高いX線エネルギーで良好な空間分解能と阻止能を提供することができる。高いZと密度を持つ検出器の材料は、高エネルギー性能を向上させる例えばCZT、IbI2、又はHgI2などが使用されることができる。
【0291】
シミュレーション結果は、検出器での流束量が画素当り約600光子であり、従来のマンモグラムのそれの約1/3〜1/9であることを示した。従って、シミュレーション結果は、シミュレートされたMIRシステムのノイズレベルが従来のマンモグラムより約1.7〜3倍になることを示す。しかしながら低ノイズレベルでは、屈折コントラストは従来のマンモグラムに比べて8〜33倍高くなることができる。
【0292】
さらに、シミュレートされたDEIシステムについて、平均腺線量は約0.004mGyであり、それは5cm圧縮での従来のマンモグラムに比べて約250〜750倍低い。10cm圧縮では、MIRでの吸収線量は約0.019mGyであり、それは同じ圧縮で従来のマンモグラムで得られたものより数千倍低い。
【0293】
典型的な撮像結果
上述したように、シンクロトロン及びX線管は、本書に記述された主題に従うDEI画像を生成するためのX線源の2つの適したタイプである。比較のため、図60A及び60Bは、本書に記述される主題に従うシンクロトロンベースのシステム及びX線管ベースのシステムによって、同じナイロン線維(fibril)ファントムからそれぞれ生成される画像である。図60Aの画像は60keVでシンクロトロンによって生成されたX線ビームであり、4.0mradの線量で+0.4マイクロラジアンのアナライザーロッキングカーブ位置で取得された。図60Bの画像は、0.4mradの線量でかつ160kV及び6.2mAの管設定で、+0.4マイクロラジアンのアナライザーロッキングカーブ位置で生成された。画像化されたナイロン繊維は560ミクロン(上部繊維)、360ミクロン(中央部繊維)、及び200ミクロン(下部繊維)の直径を有する。ナイロン繊維は非常に吸収が弱く、従ってこれらの画像は、このような吸収が弱い材料を表示するための屈折イメージングを使用する利点の例を示す。特に、例えばこれらの結果は、本書に記述された主題に従い160kVの電圧を用いたX線管で、軟部組織の画像が得られることを示すことに注意することが重要である。
【0294】
図61は、本書に記述された主題に従う技術を用い、図44及び図45A-45Fに示されるのと同一の乳房標本のシンクロトロン屈折画像である。この例では、ビームエネルギーは60keVで、4mrad以線量であった。
【0295】
比較のため、図62A及び62Bは、本書に記述された主題に従うそれぞれX線管及びシンクロトロンを使用して得られた、乳房組織標本の同じ領域の画像である。図62Aに示された画像は、0.4mradの線量でX線管を用いて取得された。図62Bに示された画像は、+0.4マイクロラジアンのアナライザー位置でかつ350mradの線量で、40keVのシンクロトロンを用いて取得された。乳房組織の標本は、4.5cmの水に浸漬された。
【0296】
図63は、本書に記述された主題に従うX線管を用いて得られた、乳癌の乳房切除標本の画像である。画像は0.4mradの線量で、7.0cmの完全な厚さの、最小限に圧縮された乳房を通して取得された。適切な画像を得るため、約0.5mrad未満又はそれに等しいものが他の対象又は組織に適用されることができる。この画像は、従来のマンモグラムにおけるより数百倍未満の線量で、完全な厚みの乳房組織の診断上の特徴を示す。高い厚みの軟部組織対象の画像を得ることができるため、本書に記述される主題は有利である。従来のシンクロトロンベースの装置は、そのような画像を得ることができなかった。さらに、例えば本書に記述される主題は、例えば軟部組織対象などの対象に非常に低線量を適用しながら、このように高品質の画像を得るために使用されることができる。高品質の画像を得るため、本書に記述される主題は従来のX線撮影よりも高いエネルギーを有するビームを使用することができ、従って本書に記述される主題は、患者の安全性の懸念のために低い線量が使用されることを要求することができる。
【0297】
典型的な応用
本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、種々の医学的応用に適用されることができる。上述のように、本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、乳房イメージングに適用されることができる。さらに、例えば本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、軟骨イメージング、神経画像、心臓イメージング、血管イメージング(コントラストを有し、又は有さず)、肺疾患(肺)イメージング、骨イメージング、泌尿生殖器イメージング、胃腸イメージング、一般に軟部組織イメージング、造血系イメージング、及び内分泌系イメージングに適用されることができる。画像時間及び線量に加え、高エネルギーX線を使用する大きな進歩は、画像化可能な対象の厚さである。例えば乳房イメージングなどの用途では、記述されたシステムは、臨床的に現実的な撮像時間で完全厚みの乳房組織のイメージングを可能とする。頭部、頸部、四肢、腹部、骨盤などの身体の他の部位について、同じことを言うことができる。X線吸収の制限がなく高エネルギーX線を持つDEIの利用は、X線の透過能を飛躍的に向上させる。軟部組織について、対象に入射するX線光子の少ない部分のみが吸収され、それはX線管から放出されて検出器に到達する光子の効率を大幅に増大させる。
【0298】
肺イメージングに関して、本書に記述されたDEI技術は、肺に優れたコントラストを生成し、肺炎などの肺の状態を診断するために頻繁に使用されることができる。肺の液貯留(Fluid collection)は、DEIで容易に検出可能な著しい密度勾配を生成する。密度勾配、周囲の組織の特性、及び正常な肺組織と腫瘍組織の間の幾何学的な違いは大きくなることがあり、良好なコントラストを作り出す。さらに、本書に記述されたDEI技術は、肺癌スクリーニング及び診断に適用されることができる。
【0299】
骨イメージングに関して、本書に記述されたDEI技術は、一般に骨の優れた画像を生成することができる。DEIの高い屈折及び消衰コントラストは、骨の中の骨折及び病変を可視化するために特に有用である。
【0300】
さらに、本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、様々な検査及び工業用途に適用されることができる。例えば、システム及び方法は、家禽検査などの食肉検査に適用されることができる。例えば、システム及び方法は、スクリーニング及び/又は除去を必要とする肉における鋭い骨、羽、及び他の低コントラストの対象を見るために使用されることができる。本書に記述されるシステム及び方法は、そのようなスクリーニングのために適用されることができる。
【0301】
本書に記述されるシステム及び方法は、製造検査にも適用されることができる。例えば、システム及び方法は、航空機生産のような溶接の検査に使用されることができる。本書に記述されるDEI技術は、ジェットタービンブレードなどの重く摩滅を受ける主要な構造部分を検査するために使用されることができる。さらに、例えば本書に記述されるシステム及び方法は、回路基板及び他の電子機器の検査に使用されることができる。他の例では、本書に記述されるシステム及び方法は、スチールベルト及びトレッドの完全性の検査などのタイヤ検査に使用されることができる。
【0302】
さらに、本書に記述される主題に従うシステム及び方法は、安全スクリーニングの目的で使用されることができる。例えば、システム及び方法は、空港や港でのスクリーニングに用いられことができる。本書に記述されるDEI技術は、プラスチックナイフ、従来のX線で検出することが困難な複合材料の銃、及びプラスチック爆弾などのプラスチック及び低吸収コントラスト対象のスクリーニングに使用されることができる。空港の手荷物検査などの大きな対象のイメージングについては、X線管と検出器の間の距離が増大してビームの発散を許容する。より大きな扇ビームに対応するため、より大きなアナライザー結晶が必要となる。
【0303】
記述された装置は、コンピュータ断層撮影イメージングシステム、又はDEI-CTに変更することができる機構を提供する。第三世代の従来のコンピュータ断層撮影システムに似た. DEI-CTシステムは、同じ装置であるが中心点の周りを回転するために変更された装置を使用する。その代わりに、システムが固定され、さらに対象、サンプル、又は患者がビーム内で回転されることができる。この構造のDEI-CTシステムは、X線吸収、屈折、及び超小角散乱除去(消衰)を表す画像を生成するが、これらは三次元に変換されるであろう。
【0304】
本書に開示される主題の範囲を逸脱しない限り、本書に開示される主題の各種の詳細を変更してよいことは理解されるであろう。さらに、上記の記述は説明を目的としたものに過ぎず、本書に記述された主題が以下に説明する請求項によって定義される限り、限定を目的としたものではない。
【技術分野】
【0001】
関連する出願
この仮特許出願でない出願は、2008年12月1日出願の米国仮特許出願No. 61/200,593の利益を主張し、2007年1月24日出願の米国特許出願No. 11/657,391に関連し、それらの開示は参照することにより全体が本書に援用される。
政府の権利
本書で開示される主題は、米国エネルギー省によって与えられた契約番号DE-AC02-98CH10886により米国政府支援と共になされた。従って、米国政府は本書で開示される主題に対し特定の権利を有する。
技術分野
本書に記述される主題はX線イメージングに関する。特に、本書に記述される主題は、多色エネルギー分布(polychromatic energy distribution)を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いる対象(object)の画像の検出システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線イメージングは対象を画像化するために種々の分野で用いられてきた。例えば、X線イメージングは、医療分野で非破壊検査及びX線コンピュータ断層撮影(CT)に広く用いられてきた。種々の他のタイプの技術も医用画像に用いられてきた。幾つかの現在用いられている医用画像技術の概要が、この章の以下に要約されている。
【0003】
X線吸収を用いるX線撮影
従来のX線撮影は、対象の投影されたX線吸収又は減衰を測定する。対象内の減衰の差異は、画像として表示され得る内蔵された特徴のコントラストを提供する。例えば、一般に癌組織は、周囲の非癌組織より密度が高いために通常のX線撮影に現れる。最も高い吸収コントラストは、吸収が高いX線エネルギーで一般に得られる。従来のX線撮影は、より多くの吸収、従ってより良いコントラストと画像を許容するため、低X線エネルギーを高線量で用いて典型的に行われる。患者の安全性に対する懸念のため、高エネルギーを持つX線の使用は、低線量の使用を一般に要求される。一般に、X線エネルギー準位が増大し、X線線量が減少するにつれて通常のX線撮影画像の質は低下する。
【0004】
現世代の放射線画像システムのX線源は、標準的なカソード/アノードX線管に基づく構造を用いている。X線管のエネルギースペクトル及び一般的な出力特性は、アノード材料及び配置によって主に決められる。適切なアノード材料の選択は用途に大きく基づいており、特に画像化されるモダリティ(modality)及び構造が何であるかに基づく。
【0005】
マンモグラフィーに対し、最も一般的なアノード材料はモリブデンであるが、ロジウムも使用される。約18keVのモリブデンの平均エネルギーは、軟部組織を画像化するために適切なスペクトルを提供する。マンモグラフィーシステムに対し、アノードは多くの場合に固定され、熱を低減するために銅遮断に取り付けられる。主な工学的問題は、集中された電子ビームによるアノード内での熱の生成である。その高い熱伝導率にも関わらず、熱除去の主要な手段が周囲の銅アノードであるため、固定されたアノードを有するX線管はより加熱されやすい。X線管開発の進歩は、アノードからの電子ビームがアノード上の同じ部分に衝突しないよう回転する回転アノードをもたらした。X線撮影のための主に獲得された検出方法は、比較的最近のデジタル検出器の出現までは、X線フィルムである。
【0006】
マンモグラフィーを検査するためのX線イメージングは、早期乳癌を識別するために用いられてきた。検査を受けた対照群の女性間の乳癌死亡率が検査を受けていない対照群に比べたときに著しく減少することはよく知られている。胸部検診又は乳房自己診断に比べ、マンモグラフィーは、小さくてまだ進行していない癌を識別する傾向にある。小さくてまだ進行していない乳癌の治療は、よりよい生存率をもたらす。改良されたX線撮影方法は、小さい早期乳癌でさえも発見するために使用できることは全く明らかである。臨床的に明白な乳癌の約10%は、従来のマンモグラフィー法によって生成される画像では見えない。さらに、従来のX線撮影を用い、良性病変と悪性病変とを区別するのは一般的に難しい。
【0007】
特に、従来のマンモグラフィー技術では見えない乳癌は、比較的乳房腺組織の多い患者に最も頻繁に発生する。乳房腺組織の密度は、潜在的な病変を見えなくさせる傾向がある。癌の初期段階を発見するためには、小さい早期乳癌を発見することができるようマンモグラフィーの感度を高めることが望ましい。乳癌の早期発見が死亡率の大幅な減少につながる可能性がある。
【0008】
マンモグラフィー技術は、過去数十年で大幅に進歩している。例えば、適切なX線ビーム品質、適切な乳房圧縮、及び自動露出制御を有する専用のマンモグラフィー装置が現在存在する。しかしながら、従来のマンモグラフィー技術は、正常及び異常組織の違いを決定するために依然としてX線吸収の描写に依存する。
【0009】
従来の放射線医学の限界は、怪我又は変形性関節症等の変形性関節疾患の発見と治療の間のような、軟骨の画像化でも明らかになる。より優れたイメージング技術は、回復不能の損傷となる前のように、このような変性疾患を発見するために有益であろう。
【0010】
回折増強(DIFFRACTION ENHANCED)イメージング(DEI)
DEIは、従来のX線イメージングの機能を大幅に拡張するX線イメージング技術である。DEI技術は、X線吸収、X線屈折率、超小角散乱線除去(消衰)(scatter rejection (extinction))からコントラストを生成可能なX線画像診断法である。これに対し、従来のX線イメージング技術はX線吸収のみを測定している。DEI吸収イメージ及びピークイメージは、実質的に散乱の減少(scatter degradation)がないことを除けば、従来のX線写真と同じ情報を表示する。DEIは、X線回折のブラッグの法則であるnλ=2dsinθに基づき、小さな角度変化に対して大きな強度変化を提供する完全結晶回折(perfect crystal diffraction)のブラッグピークを利用して角度変化を強度変化に変換する。従って、DEIは軟部組織のイメージングに十分適しており、さらにマンモグラフィーに非常に有望である。
【0011】
DEI技術は、従来のX線イメージング技術と比較して対象の可視化の改善を示しているが、使用可能なエネルギー範囲を拡張し、X線吸収の必要性を減少又は排除する可能性には誰も取り組んでいない。X線吸収の減少又は除去は、医療分野で重大な関心事である。
【0012】
X線ビームの経路内でSiアナライザー結晶(silicon analyzer crystal)を用いると、画像コントラスト、X線屈折率、及び消衰(超小角散乱除去)について二つの追加的形態を生じる。DEIは完全単結晶シリコンからのX線回折により準備される高度に収束された(collimated)X線を使用し、それは画像を生成するためにこれまでシンクロトロンの高い流束(flux)とエネルギー範囲が必要であった。これら収束されたX線は、単一のX線のエネルギーを持ち、実質的に単色であり、対象を画像化するためのビームとして使用される。
【0013】
ほとんど吸収コントラストを持たない対象は、かなりの屈折率と消衰コントラストを有し、これにより可視化を向上させ、X線イメージングの有用性を拡張する。生物学及び材料科学へのDEI技術の応用は、コントラストと分解能の両方を大幅に向上させ、主流の医用画像で使用される可能性を示す。DEIが特に有効な医学分野は癌診断のための乳房イメージングであり、そこでは興味を示す診断構造はしばしば低吸収コントラストを有しており、それらが見え難くしている。悪性腫瘤から延びる棘状突起(spiculation)等の低吸収コントラストを持つ構造は、高屈折率及び超小角散乱コントラストを持っている。DEIシステムに、X線ベースの乳房イメージングの感度と特異性の両方の増加能力を提供することが望ましい。
【0014】
複数の研究は、DEIの医療及び工業的応用の双方において、画像コントラストの改良を実証している。医療分野での従来のX線イメージングシステムに比べたDEIシステムの利点は、患者の放射線量の大幅な減少及び画質の向上を含む。線量の減少は、より高いX線エネルギーで機能するDEIシステムの能力による。X線吸収は光電効果Z2/E3によって影響を受け、ここでZは原子番号、Eは光子エネルギーである。
【0015】
これまで、DEIシステムは、対象を画像化するための他のシステムコンポーネントによって操作される第1の放射線ビームを生成するため、シンクロトロンの使用が要求されてきた。シンクロトロンは、エネルギーの広範囲にわたって高度に収束され、高流束のX線ビームを提供する。シンクロトロンは、光子の放出を引き起こす厳密にいえば電子の円軌道内で、荷電粒子の運動を介して放射線を生成する。シンクロトロン放射の優れた特徴は、広範囲の応用に使用可能な広いエネルギー範囲にわたって高流束のX線を生成することにある。
【0016】
DEIのコア理論は、X線回折のブラッグの法則に基づいている。ブラッグの法則は次式で定義される。
【数1】
ここで、λは入射X線ビームの波長、θは入射角、dは結晶中の原子層間の距離、及びnは整数である。
【0017】
単一エネルギーのX線写真は、画像のコントラスト及び分解能に影響を与え得る幾つかの成分(component):コヒーレントに散乱された成分Ic、非干渉に散乱された成分Il、及び伝送成分を含む。密度が異なる対象又は媒質を通過するX線は屈折されることができ、その結果として角度偏差を生じる。具体的にはX線範囲の偏差(deviation)は、ビームの経路に沿うρtの変化から生じ、ここでρは密度、tは厚さである。入射光子の一部(fraction)も、一般にミリラジアンのオーダーであり小角散乱と呼ばれる対象内部の構造によって回折されるであろう。これらの相互作用の合計は、X線写真の記録強度(recorded intensity)INに寄与し、これは次の式:
【数2】
で表すことができる。システムの空間分解能とコントラストは、コヒーレント及び非干渉散乱の両方の寄与により分解される。散布の寄与を減らすため、散乱線除去グリッド(Anti-scatter grid)がしばしば医用画像に使用されているが、それらの性能は限られており、さらにグリッドの使用は強度の損失を補うためにしばしば高線量を必要とする。
【0018】
コヒーレント及び非干渉散乱の両方の影響を実質的に低下させるため、DEIの技術は、対象の後方のX線ビームの経路でSiアナライザー結晶を使用する。Siアナライザー結晶の狭い角度を許容するウィンドウ(window)は、そのロッキングカーブ(rocking curve)と呼ばれ、DEIで使用されるX線エネルギーのマイクロラジアンのオーダーである。アナライザーは極めて敏感な角度フィルタとして機能し、屈折率と消衰コントラストの両方を測定するために使用することができる。消衰コントラストは、散乱による入射ビームからの強度損失として定義され、コントラストと分解能の両方の大幅な向上を生む。
【0019】
ダーウィン幅(DW)は、反射率曲線を記述するために使用され、反射率曲線のほぼ半値全幅(FWHM)である。-1/2DW及び+1/2DWの点は、特定のアナライザーの反射及びビームエネルギーについて、マイクロラジアン当りの光子強度の最大変化を生じる急勾配の曲線上の点である。アナライザー結晶ロッキングカーブのピークでのコントラストは、X線の吸収と消衰によって影響され、ほぼ散乱のないX線写真をもたらす。-1/2及び1/2DWの位置でロッキングカーブの傾きが最大の部分で、屈折コントラストは最も高い。一つのDEIベースの画像処理技術は、これらの画像の組から屈折率と見かけ吸収(apparent absorption)のコントラスト成分を抽出するため、これらの点を使用する。
【0020】
以下の段落は、画像の組から屈折率と見かけ吸収のコントラスト成分を抽出するためのこの手法を説明する。所定の反射及びビームエネルギーについて、アナライザー結晶が+/-1/2DWを表す角度に設定されている場合、ロッキングカーブの傾きは比較的安定し、次式:
【数3】
で表される2項テイラー級数近似として表すことができる。
【0021】
アナライザー結晶がロッキングカーブ(-1/2DW)の低い角度側に設定されている場合、得られる画像強度は次式:
【数4】
で表すことができる。
【0022】
高い角度位置(+1/2DW)に設定されたアナライザー結晶で得られた画像の記録強度は、次式:
【数5】
で表すことができる。
【0023】
これらの式は、見かけ吸収(IR)、及び以下の式:
【数6】
で表され、z方向(Δθz)で観測される角度の屈折に起因した強度変化のために解かれる。
【0024】
これらの式は、2つのコントラスト成分をDEI見かけ吸収及び屈折画像として知られているものに分割するため、画素毎の基準で高い角度と低い角度画像に適用されることができる。しかしながら、DEI見かけ吸収及び屈折画像を生成するために使用される単一の点のロッキングカーブ画像のそれぞれが有用であることに留意することが重要である。
【0025】
上記したように、現在のDEIシステムは、X線ビームを生成するためのシンクロトロンを含む。シンクロトロンベースのDEIシステムは、長年にわたり優れた結果を提供している。しかし、シンクロトロンは大きく高価な装置であり、医療又は工業的応用のいずれにも実用的ではない。劇的なコントラストの向上や線量の低下を考えると、広く臨床的使用のためにDEIシステムの有用性を向上させることが有益であろう。
【0026】
医療用DEI撮像装置の開発は、次の理由のために一般に女性の健康と医用画像にとって重要性を持つであろう:(1)DEIは、乳癌の発見及び特性評価(characterization)に重要である特徴について、非常に高いコントラストを生じることが示されている; (2)DEIの物理は、吸収のみを用いるよりも高いX線エネルギーで撮像することを可能とする;及び(3)吸収される光子を必要とせずにコントラストを生成するDEIの能力は、イオン化を劇的に低減し、それによって吸収線量を低減する。
【0027】
又、スクリーン・フィルム(screen-film)マンモグラフィーは過去40年間にわたり広く研究されており、さらに多くの大規模な無作為化スクリーニング試験により、乳癌死亡率を約18〜30パーセント減少させることが知られている。おそらく幾分はこの画像検査の広範な使用のおかげで、ここ数年の乳癌死亡率は低下し始めている。ただし、標準のスクリーン・フィルムマンモグラフィーは、完全に敏感でもなく高度に特異的でもない。高密度の乳房組織、及び乳房への腫瘍の拡散の関与は、検診マンモグラフィーの感度を低下させる傾向がある。密度の高い乳房の女性について、成長する病変は、それらが光子を吸収する能力が周囲の脂肪組織よりも非常に大きくないために見ることが難しく、可視化のためのコントラストをほとんど生成しない。自己検査や身体検査によって検出される乳癌の約10〜20%は、スクリーン・フィルムマンモグラフィーでは見ることができない。さらに、病変がマンモグラフィーや生検によって検出されたときには、病変のたった5-40%が悪性であることが判明する。又、乳癌の約30%が以前のマンモグラムを振り返ると見ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
現在のDEI及びDEI画像処理技術は、従来の画像理論に大きく基づいており、さらに画像生成のためのX線吸収を少なくとも部分的に利用(rely on)している。従って、これらの技術を用いて画像化された対象は、放射線を吸収する。線量の懸念を考えると、このような放射線被ばくは医用画像への応用に望ましくなく、この推論は臨床及び工業的転換を困難にする相当な技術上の限界を認識する。これにより、高品質の画像を生成し、より少ない吸収を利用するが、同等の診断品質と特徴の可視化を備えた画像を生成するDEI及びDEI技術を提供することが望ましい。
【0029】
従って、DEI及びDEIシステムに関連して求められる改善の観点から、対象の画像を検出するための改良されたDEI及びDEIシステム、並びに関連する方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本書に記述される主題は、多色エネルギー分布を持つX線ビームを用いる対象の画像の検出システム及び方法を含む。一態様によれば、本書に記述される主題は、対象の画像を検出するための方法を含む。この方法は、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成することを含む。さらに、この方法は、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるように、1つのモノクロメータ結晶を、第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置することを含む。さらに、対象を通って第2のX線ビームを透過させると共に該対象から透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象が配置されることができる。透過X線ビームは、結晶アナライザーに入射角で向けられることができる。さらに、アナライザー結晶から回折されるビームから対象の画像が検出されることができる。
【0031】
他の態様によれば、本書に記述される主題による方法は、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成することを含む。さらに、第1のX線ビームが平行にされた扇ビームになるよう、第1のX線ビームの一部が遮断されることができる。モノクロメータ結晶は、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、平行にされた扇ビームを遮断する所定の位置に配置されることができる。この方法は、対象を通る第2のX線ビームの透過のために第2のX線ビームの経路に対象を配置し、かつ該対象から透過X線ビームを放射させることを含むことができる。又、この方法は、アナライザー結晶に入射角度で透過X線ビームを向けることを含むことができる。この方法は又、アナライザー結晶から回折されるビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0032】
別の態様によれば、本書に記述される主題による方法は、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することにより、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成することを含むことができる。この方法は又、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置にモノクロメータ結晶を配置することを含むことができる。さらに、この方法は、対象を通る第2のX線ビームの透過のために第2のX線ビームの経路に対象を配置し、かつ該対象から透過X線ビームを放射させることを含むことができる。透過X線ビームは、アナライザー結晶に入射角度で向けられることができる。又、この方法は、アナライザー結晶から回折されるビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0033】
別の態様によれば、本書に記述される主題による方法は、第1及び第2の特性輝線を有する第1のX線ビームを生成することを含むことができる。この方法は又、第1及び第2の特性輝線を有する第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置にモノクロメータ結晶を配置することを含むことができる。又、この方法は、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつ第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させることを含むことができる。対象を介して第2のX線ビームの遮断されていない特性輝線を透過させ、かつ対象から透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方の経路に対象が配置されることができる。この方法は、アナライザー結晶に入射角度で透過X線ビームを向けることを含むことができる。さらに、この方法は、アナライザー結晶から回折されたビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0034】
別の態様によれば、本書に記述される主題による方法は、第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成することを含むことができる。第1及び第2の特性輝線を有する第2のX線ビームが生成されるよう、モノクロメータ結晶が第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置される。又、この方法は、対象を通る第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の透過のため、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の経路に対象を配置し、かつ該対象から透過X線ビームを放射させることを含むことができる。透過X線ビームは、アナライザー結晶に入射角度で向けられる。この方法は、アナライザー結晶から回折されるビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0035】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、多色エネルギー分布を持つ少なくとも一つの第1のX線ビームを生成すること、それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されるように、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置すること、対象を介して第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の対応する透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置すること、透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶アレイ(array)内の1又はそれ以上の対応するアナライザー結晶に入射角で向けること、及び1又はそれ以上のアナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0036】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されるX線源と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置され、対象を通って透過させるためにそれぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されることができる2又はそれ以上のモノクロメータと、さらにアナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するための画像検出器とを含むことができる。
【0037】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成すること、第1のX線ビームが平行にされた扇ビームのアレイになるよう、第1のX線ビームの一部を遮断すること、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、それぞれ所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、平行にされた扇ビームを遮断する所定の位置に2又はそれ以上のモノクロメータを配置すること、対象を通って第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置すること、アナライザー結晶の対応するアレイに入射角度で透過X線ビームのそれぞれを向けること、及びアナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出することを含むことができる。
【0038】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されるX線源と、第1のX線ビームが平行にされた扇ビームの配列になるよう第1のX線ビームの一部を遮断するように配置されるアレイコリメータと、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータとを含むことができ、各モノクロメータは、対象を通って透過するためそれぞれ所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、平行にされた扇ビームを遮断する所定の位置に配置され、さらにシステムは、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0039】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することによって、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成すること、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に2又はそれ以上のモノクロメータを配置すること、対象を通って第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置すること、対応するアナライザー結晶のアレイに入射角度で透過X線ビームのそれぞれを向けること、及びアナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出すること、を含むことができる。
【0040】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することによって、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されたX線管と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、対象を通って透過するためそれぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置される2又はそれ以上のモノクロメータと、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0041】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、第1及び第2の特性輝線を有する第1のX線ビームを生成すること、第1及び第2の特性輝線をそれぞれ有する複数の第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを配置すること、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつそれぞれの第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させること、対象を介して第2のX線ビームの遮断されていない特性輝線を透過させ、かつ対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方の経路に対象を配置すること、対応するアナライザー結晶のアレイに入射角度で透過X線ビームをそれぞれ向けること、アナライザー結晶から回折された複数のビームから対象の画像を検出すること、を含むことができる。
【0042】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されたX線源と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、それぞれ第1及び第2の特性輝線を持つ複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置される2又はそれ以上のモノクロメータと、第2のX線ビームのそれぞれの第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつ対象を通して透過させるために第2のX線ビームのそれぞれの第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させるのに適したスリットを有するコリメータと、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0043】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、第1及び第2の特性輝線を有する第1のX線ビームを生成すること、それぞれ第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む複数のモノクロメータを配置すること、対象を介して第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線を透過させ、かつ対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの第1及び第2の特性輝線の経路に対象を配置すること、対応するアナライザー結晶のアレイに入射角度で各透過X線ビームを向けること、及びアナライザー結晶から回折された複数のビームから対象の画像を検出すること、を含むことができる。
【0044】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。システムは、第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されたX線源と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、対象を介した透過のため、それぞれ第1及び第2の特性輝線を持つ複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置にそれぞれ配置される複数のモノクロメータと、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0045】
別の態様によれば、対象の画像を検出するための方法が開示される。この方法は、特性線Kα1及びKα2を有する第1のX線ビームを生成すること、所定のエネルギー準位をそれぞれ有する複数の第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む複数のモノクロメータを配置すること、対象を介して第2のX線ビームを透過させ、かつ対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置すること、対応するアナライザー結晶のアレイに入射角度でそれぞれの透過X線ビームを向けること、アナライザー結晶から回折された複数のビームから対象の画像を検出すること、を含むことができる。
【0046】
別の態様によれば、対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムが開示される。方法は、特性線Kα1及びKα2を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成されたX線源と、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、それぞれ所定のエネルギー準位を持つ複数の第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを直接遮断するためにそれぞれ配置される複数のモノクロメータとを含むことができ、対象を通して第2のX線ビームを透過させ、それによって対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、対象に向かう経路内でモノクロメータ結晶が対応する第2のX線ビームに向けられるようそれぞれ配置され、さらにシステムは、アナライザー結晶の入射角度で透過X線ビームを遮断するためにそれぞれ配置される複数のアナライザー結晶と、アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器と、を含むことができる。
【0047】
この開示によれば、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いる対象の画像の新規の検出システム及び方法が提供される。
【0048】
従って、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いる対象画像の新規の検出システム及び方法の提供が本書の開示の目的である。本書に記述される主題により、本書の開示から明らかになるであろうこれ及びその他の目的は、少なくとも全体として、又は部分的に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1A】本書に記述される主題の一実施形態に従い、1つのモノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能な、DEIシステムの概略図である。
【図1B】本書に記述される主題の一実施形態に従い、1つのモノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能な、DEIシステムの上面斜視図である。
【図1C】本書に記述される主題の一実施形態に従い、1つのモノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能な、DEIシステムの側面-上面概略図である。
【図1D】本書に記述される主題の一実施形態に従う、動作の異なるモードにおける図1A-1Cに示されたDEIシステムの概略図である。
【図1E】本書に記述される主題の一実施形態に従う、動作の異なるモードにおける図1A-1Cに示されたDEIシステムの概略図である。
【図2】本書に記述される主題の一実施形態に従うカソード/アノード管構造に基づくX線管の概略図である。
【図3】本書に記述された主題の実施形態に従う図1A-1EのDEIシステムを示す上面概略図である。
【図4】本書に記述された主題の実施形態に従う図1A-1EのDEIシステムを使用した対象をイメージングするための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図5】本書に記述される主題の実施形態に従う図1A-1E、及び図3に示される、DEIシステムのアナライザー結晶の側面図である。
【図6A】本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能なDEIシステムの概略図である。
【図6B】本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能なDEIシステムの上面斜視図である。
【図7】本書に記述される主題の実施形態に従う図6A及び図6BのDEIシステムを使用した対象の画像化のための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図8】異なる波長でのゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムグラフである。
【図9】異なる波長でのゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムグラフである。
【図10】異なる波長でのゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムグラフである。
【図11】本書に記述される主題の実施形態に従う図6A及び図6Bに示されるDEIシステムのゲルマニウムモノクロメータ結晶とシリコンモノクロメータ結晶の側面図である。
【図12】本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み、対象の画像を生成するように動作可能なDEIシステムの概略図である。
【図13】本書に記述された主題の実施形態に従い、足場上の1つのモノクロメータ結晶を有するX線管及びモノクロメータタンクの典型的な配置の概略図である。
【図14】本書に記述された主題の実施形態に従い、足場上の1つのモノクロメータ結晶を有するX線管及びモノクロメータタンクの典型的な配置の概略図である。
【図15】本書に記述された主題の実施形態に従い、足場上の1つのモノクロメータ結晶を有するX線管及びモノクロメータタンクの典型的な配置の概略図である。
【図16】本書に記述された主題の実施形態に従い、足場上の1つのモノクロメータ結晶を有するX線管及びモノクロメータタンクの典型的な配置の概略図である。
【図17】本書に記述された主題の実施形態に従うX線管のX線ビーム出口部の画像である。
【図18】図17に示されるX線管のX線ビーム出口部の別の画像である。
【図19】本書に記述された主題の実施形態に従うアルミニウムフィルタ及びコリメータの画像である。
【図20】本書に記述された主題の実施形態に従う、分解してカットされたがX線管の端に取り付けるため曲げられていないシールドキャップの画像である。
【図21】本書に記述された主題の実施形態に従い、X線管の端からのX線ビームの望ましくない放出を防止する目的のための、X線管の端のシールドキャップの画像である。
【図22】本書に記述された主題の実施形態に従う、モノクロメータタンクからのX線ビームの望ましくない放出を防止するための鉛シールドを含む、モノクロメータタンクの画像である。
【図23】本書に記述された主題の実施形態に従う、モノクロメータタンクからのX線ビームの望ましくない放出を防止するための鉛シールドを含む、モノクロメータタンクの画像である。
【図24】本書に記述された主題の実施形態に従う、X線管の側面からのX線ビームの望ましくない放出を防止するための、X線管の端の近傍に配置されたシールドの別の部分の画像である。
【図25】本書に記述された主題の実施形態に従う、互いに動作位置にあるX線管及びモノクロメータタンクの画像である。
【図26】本書に記述された主題の実施形態に従う、モノクロメータタンクの内部部品の正面の画像である。
【図27】本書に記述された主題の実施形態に従う典型的なDEIシステムの上面斜視図である。
【図28】本書に記述された主題の実施形態に従う例示的なモノクロメータ結晶の側面図、上面図、及び正面図を含む概略図である。
【図29】本書に記述された主題の実施形態に従う内側/外側領域、並びに回転のχ及びθの角度を示すモノクロメータ結晶の斜視図である。
【図30】シリコン[111]、[333]、[444]、及び[555]結晶回折面を使用した国立シンクロトロン光源X15A箱の単色ビーム流束を示すグラフである。
【図31】FWHMの減少がロッキングカーブの傾きを増加させることを示すグラフである。
【図32】本書に記述される主題の実施形態に従うシンクロトロンX線ビームを用いたDEIシステムの実験配置の概略図である。
【図33】本書に記述する主題に従う例示的なアルミニウムフィルタヒートシンクの画像である。
【図34】24時間の期間にわたってサーミスタで測定された温度を示すグラフである。
【図35】本書に記述される主題の実施形態に従い、温度を低下させるための水冷却ラインを有する、典型的な改良された第2のモノクロメータベースと支持プレートの俯瞰図の画像である。
【図36】一定期間にわたるアナライザーのピーク位置を示す18keVのシステム安定性試験のグラフである。
【図37】18keVの安定性試験中の国立シンクロトロン光源(NSLS) X線リング電流のグラフである。
【図38】一定期間にわたるアナライザーのピーク位置を示す40keVのシステム安定性試験のグラフである。
【図39】40keVの安定性試験中のNSLS X線リング電流のグラフである。
【図40】本書に記述される主題の実施形態に従い、18keVで取得された典型的なCDファントムの画像である。
【図41】本書に記述される主題の実施形態に従い、30keVで取得された典型的なCDファントムの画像である。
【図42】30keV、ブラッグ[333]で、本書に記述される主題に従うシステム及び方法によりピークアナライザー結晶位置で取得されたMISTYファントムの3つの異なる領域の画像である。
【図43】エネルギーに対する、乳房の吸収、非干渉散乱、及びコヒーレント散乱の寄与を示すグラフである。
【図44】従来のX線撮影システム上に画像化された例示的な乳房標本の画像である。
【図45】本書に記述される主題に従う技術を使用し、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV、及び60keVのビームエネルギーでの同一サンプルのシンクロトロンX線写真である。
【図46A】18keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46B】25keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46C】30keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46D】40keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46E】50keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図46F】60keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。
【図47A】18keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47B】25keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47C】30keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47D】40keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47E】50keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図47F】60keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布のグラフである。
【図48】本書に記述された主題に従うMIRのために使用されるエネルギーに対するX線ビームエネルギーを示すグラフである。
【図49】MIRを使用した繊維径の評価を示す画像である。
【図50】本書に記述された主題に従う技術で得られたナイロン繊維の屈折プロファイルを示すグラフである。
【図51】MIRの屈折フィッティング直径較正のグラフである。
【図52A】本書に記述された主題に従う技術で得られた乳癌標本のMIR屈折画像である。
【図52B】本書に記述された主題に従う技術で得られた乳癌標本のMIR屈折画像である。
【図52C】本書に記述された主題に従う技術で得られた乳癌標本のMIR屈折画像である。
【図53】本書に記述された主題に従うDEIシステムによって得られる、限局性乳癌塊と棘状突起のMIRの組の画像である。
【図54A】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図54B】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図54C】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図54D】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図54E】従来のX線写真と比較し、DEIによる線維の可視化を示す画像である。
【図55A】本書に記述される主題の一実施形態に従うコンピュータシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレートされたDEIシステムの概略図である。
【図55B】本書に記述される主題の一実施形態に従うコンピュータシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレートされたDEIシステムの概略図である。
【図55C】本書に記述される主題の一実施形態に従うコンピュータシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレートされたDEIシステムの概略図である。
【図56】本書に記述された主題の実施形態に従うDEIモノクロメータ結晶に結合される対数らせん集束要素の斜視図である。
【図57】火線でのソースと共に、対数らせん要素の集束効果を示す斜視図である。
【図58A】実験的研究のための特性評価システムの平面図である。
【図58B】実験的研究のための特性評価システムの立面図である。
【図59】直接X線-電荷変換検出器の模式図である。
【図60A】本書に記述される主題に従うシンクロトロンベースのシステムによって、同じナイロン線維ファントムから生成される画像である。
【図60B】本書に記述される主題に従うX線管ベースのシステムによって、同じナイロン線維ファントムから生成される画像である。
【図61】本書に記述された主題に従う技術を用い、図44及び図45A-45Fに示されるのと同一の乳房標本のシンクロトロン屈折画像である。
【図62A】本書に記述された主題に従うX線管を使用して得られた、乳房組織標本の同じ領域の画像である。
【図62B】本書に記述された主題に従うシンクロトロンを使用して得られた、乳房組織標本の同じ領域の画像である。
【図63】本書に記述された主題に従うX線管を用いて得られた、乳癌の乳房切除標本の画像である。
【図64】本書に記述された主題の実施形態に従い、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いて対象の画像を検出するためのイメージングシステムの実施形態の概略図である。
【図65】本書に記述された主題の実施形態に従い、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いて対象の画像を検出するためのイメージングシステムの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本書に記述された主題は、多色分布を持つX線ビームからのマルチビームイメージングを用いる対象の画像の検出システム及び方法を含む。特に本書に記述された主題は、対象の画像を検出するための改良されたDEI及びDEIシステム及び関連した方法を開示する。一態様によれば、本書に記述された主題は、対象の画像を検出するための方法を含むことができる。この方法は、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームを生成することを含むことができる。又、この方法は、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるように、第1のX線ビームを遮断する所定の位置にモノクロメータ(monochromator)結晶を配置することを含むことができる。さらに、対象を通って第2のX線ビームを透過させると共に、該対象から透過X線ビームとして放射させるため、第2のX線ビームの経路に対象を配置することができる。透過X線ビームは、結晶アナライザーに入射角で向けられることができる。さらに、アナライザー結晶から回折されるビームから、対象の画像が検出されることができる。例えば医療への応用において、極めて低い線量、速い走査時間、高分解能、かつ比較的低い運用及び構築コストを提供することができるため、これらのシステム及び方法は有利であり得る。又、例えば、これらのシステムは小型ユニットに構築することができ、臨床的及び工業的用途に容易に使用可能である。
【0051】
本書に記述された主題に従うDEIを用いた画像処理技術は、対象の明確な吸収及び屈折画像を生成するためにロッキングカーブの対称点で取得された画像を使用することができる。DEI見かけ吸収画像は、従来のX線写真画像に似ているが、散乱線除去のおかげではるかに大きいコントラストを示す。DEI屈折画像は、大きな屈折率特性に起因して小さなビーム偏向の値を表すことができる。DEI消衰画像は、コントラストの基本的な構造がマイクロラジアンのオーダーで対象によって散乱された光子に起因するロッキングカーブ上の点で生成される。他のDEIベースの画像処理技術は、多重画像(Multiple Image)X線撮影(MIR)と呼ばれ、対象のX線吸収、屈折、超小角散乱を表す定量的な画像を生成するため、ロッキングカーブ上の複数のポイントを使用する。本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、アナライザーのロッキングカーブ上の任意の点で画像を生成することができ、さらに(1)任意のアナライザー位置での単一画像DEI;(2)DEI見かけ吸収及び屈折画像;(3)MIR吸収、屈折、及び散乱画像;並びに(4)質量密度画像:を生成するために使用することができる。これらのプロセス及びその他のDEIベースの処理技術に必要な未加工の(raw)画像データを生成する機能は、全てのDEIベースの処理技術に有用である。又、本書に記述されるシステム及び方法は、コンピュータ断層撮影(CT)の使用に適しており、さらに、あらゆるDEIベースのコンピュータ断層撮影アルゴリズムで使用するための未加工データを提供することができる。
【0052】
物質と光子の相互作用
このセクションでは、X線の発生、フォトニクス、及び物質と光子の相互作用の概要を提供する。又、このセクションは、X線吸収、屈折、及び散乱、並びにどのようにそれらがDEI及びDEI画像処理方法に関連するかの物理的なメカニズムを説明する。エネルギー付与(energy deposition)、線量測定、及び関連する放射線被曝の健康への影響の主題についても議論される。
【0053】
X線撮影で最も重要で基本的な物理的相互作用の一つは光電効果である。X線イメージングへのこの理論の応用は、従来のX線撮影でどのようにコントラストが得られるかを説明するのに役立つ。乳房組織などの対象を通過するX線は電子に衝突し、その軌道の結合エネルギーより上の準位にそのエネルギーを高めることができる。このことが生じると、電子は核の引力に打ち勝つ十分なエネルギーを得て、入射光子のエネルギーから電子の結合エネルギーを差し引いたエネルギーと等しい全エネルギーを持って原子を飛び出す。生体組織では、入射X線は直接的又は間接的なフリーラジカルの形成を引き起こすことができ、それらはDNA及び他の細胞構造と相互作用して突然変異やその他の有害な影響をもたらすであろう。この相互作用の肯定的な面は、X線光子のエネルギーが電子に移動されることであり、これはX線光子がフィルム又は画像システムの検出器に衝突しないことを意味する。対象を通った透過X線量の減少はX線の減衰と呼ばれ、従来のイメージングにおけるこのプロセスの主成分は、光電効果を介した吸収である。
【0054】
単位質量当り生じる光電吸収の確率はZ3/E3に比例し、ここでZは原子番号、Eは入射光子のエネルギーである。医用画像についてこの式は、ビームエネルギーの効果を反映するために簡略化され、光電吸収の確率が1/E3に比例するようになる。従来のX線撮影のコントラストは吸収に基づいているため、高いエネルギー準位では吸収コントラストが急速に減少するであろう。この傾向の例外は、各元素に固有の特性エネルギーである原子のK-吸収端で生じる。光電相互作用が発生する確率は、入射光子のエネルギーがK-吸収エネルギー又はK吸収端の直下にあるときに大幅に増大する。
【0055】
原子番号が大きくなりビームエネルギーが低くなるのに伴って光電吸収が増加するため、乳房組織の画像化は困難な試みになる。軟部組織の主要成分のほとんどは水素、炭素、窒素及び酸素から構成され、それらの全てが比較的原子番号が小さく、1keVより小さい吸収端を持つ。乳房組織の柔組織(parenchyma)を構成する主成分の比較的小さい平均原子番号及び低い吸収端の両方は、良性及び悪性の特徴の間の差異を決定することを、特に病気の初期段階で困難にする。
【0056】
従来のX線発生に固有な物理的相互作用は、「制動放射(breaking radiation)」のドイツ語であるbremsstrahlungである。画像システムで使用される非相対論的速度の電子は電圧によって加速され、次式:
【数7】
で定義される運動エネルギーを持つ。X線管のアノードのような金属中に放出される電子は、密な原子核を通り過ぎ、急速に減速するにつれて偏向させられる。電子は0から自身の総KEまでのエネルギーを放出することができ、エネルギーの損失は通過する電子が核にどれだけ近いかに依存する。低エネルギー放出によって生じる偏向の方が、大きなエネルギーの放出を生じるよりも遥かに高い確率を有する。高電位で加速され、速度の大幅な減少を生じる核との強い相互作用を持つ電子は、エネルギースペクトルのX線帯での光子の放出を生じる。診断用X線管から発生するX線の主な原因は、制動放射から来ている。
【0057】
原子と相互作用して加速された電子は、特性X線として知られる対象の原子的特性に主に基づく別のタイプのX線を生成することができる。加速された電子が原子軌道内の電子と衝突すると、そのエネルギーの一部が移動し、衝突された電子を高いエネルギー準位に上昇させる。移動するエネルギーがその電子の結合エネルギーに等しいか、又はそれより大きい場合、衝突された電子の放出が生じ得る。それらの電子のいずれかを放出する相互作用が生じると、ギャップを埋めるために高いエネルギー準位からの電子が落ちる(drop)。これらの電子は高いエネルギー準位から低いエネルギー準位に移るので、エネルギー準位の変化はエネルギーの放出を伴う。第2エネルギー準位から第1エネルギー準位へ遷移(n=2からn=1)する電子は、KαX線と呼ばれている。第3エネルギー準位から第1エネルギー準位への遷移(n=3からn=1)はKβX線として分類される。この電子衝突によって発生し得る多くの遷移が存在するが、特性X線を生成する相互作用は、低い原子エネルギー準位の遷移によって生じる。
【0058】
X線ターゲットのエネルギー出力スペクトルは、使用される金属の性質に依存する。ターゲットを選択する際に、特定のイメージング用途に必要な平均エネルギーを決定することは重要である。単色X線を利用する用途では、ターゲットによって生成された特性X線が特に重要である。
【0059】
X線光子が物質と衝突する場合、X線吸収に関し、吸収されたX線の一部及び透過されたX線の一部との相互作用は入射X線の減衰をもたらす。X線の減衰は、電子密度に基づく光子強度の減少であり、対象の平均原子番号の減少である。光子が物質を通過し、強度が減少するにつれてX線の散乱も生じ得るが、従来のX線撮影でこの成分を測定することは困難である。厚さXの対象を通過するときに吸収される光子の量の定量化は、入射ビーム(IO)の光子の数と比較して幾つの光子が透過されたか(It)によって決定される。物質を通る際の光子が減衰する度合は測定され得る材料特性であり、cm-1の単位での減衰係数(μ)と呼ばれる。線(linear)減衰係数の違いは、高い減衰と低い減衰の領域の間での最も高いコントラストで、X線画像のコントラストを可能にする。
【0060】
線吸収係数は横断する物質の密度に比例し、集計された(tabulated)値はしばしばμ/ρとして表される。この値は質量吸収係数と呼ばれ、それは物質の物理的状態(固体、液体、又は気体)とは無関係である。
【0061】
1つの媒質から他の媒質へ通過する光の屈折率は、ヴィレヴロルト・スネル(Willebrord Snell)によって最初に発見され、この過程を定義する法則はスネルの法則として知られている。数学的には、この関係は次式:
【数8】
で定義され、ここで入射媒質は媒質1、屈折媒質は媒質2である。
【0062】
一方の媒質から他の媒質へ通り過ぎる電磁波の通過は、屈折率の差による偏差で媒質中を通過する可視光に類似する。可視光の古典的な例を使用し、1つの屈折率から高い屈折率を持つ媒質へ移動する光を屈折することができる。この例は、一般的に可視光の屈折率を示すために使用されるが、この法則は、X線にも適用できる。しかしながら、X線について、複素屈折率の実数部は1より小さく、次式:
【数9】
で表すことができる。高いエネルギーX線で、かつ小さい平均原子番号の材料を用いた場合、??の近似値は次式:
【数10】
で提供され、ここでNは試料材料の単位体積当たりの電子の数、reは古典的電子半径、?はX線の波長である。これらの式を使用して、異なる屈折率を持つ2つの領域の間の線界面(linear interface)に対し、入射光子が次式:
【数11】
で近似される角度Δθで偏向されることを示すことができる。
【0063】
光子が対象に衝突すると、それらは主に3つのイベント(event)を受けることができ:何ら相互作用を生じずに通過することができ、光電効果によって吸収されることができ、又は散乱イベントを受けることができる。その最も一般的な定義では、散乱は、他の対象との相互作用に続く光子の経路の角度偏差(angular deviation)である。光子の特性、光子が移動する媒質、及び光子が衝突する対象の特性は、相互作用の結果に大きな影響を与える。
【0064】
エネルギーの損失又は移動を伴わずに起こる相互作用は弾性的であり、関連する入射光子のエネルギー損失を伴わずに生じるX線相互作用は、弾性散乱又はコヒーレント散乱と呼ばれる。コヒーレント散乱イベントでは、一次X線光子のエネルギーは最初に完全に吸収され、次に単一原子の電子によって再放出される。相互作用には正味のエネルギー損失はないが、光子再放出の方向は完全に任意である。医用画像について、コヒーレント散乱相互作用は、非干渉散乱として知られるエネルギー損失を伴って生じる光電相互作用又は散乱イベントよりも遥かに重要ではない。
【0065】
画像診断で使用されるエネルギー範囲で、支配的でしばしば問題となる散乱相互作用は、非干渉散乱である。この効果はコンプトン散乱として知られている。コンプトン散乱相互作用は、X線光子と、原子の外殻(outer)エネルギー準位の電子との間の衝突として記述することができる。外殻電子を結合するエネルギーは最低であり、光子と電子の間の相互作用で失われる全てのエネルギーは、運動エネルギーとして電子に移動される。このエネルギー移動は、光子のエネルギーの減少又は波長の増大をもたらし、かつ原子から衝突された電子の放出をもたらす。エネルギーと運動量の両方は衝突時に保存され、従って散乱された光子のエネルギーと角度偏差は、電子に移動したエネルギーの量に依存するであろう。波長変化を記述するために使用されるコンプトン散乱式は、次式:
【数12】
によって提供され、ここでλは入射光子波長、λ'は散乱された光子の波長である。
【0066】
高エネルギーX線光子は、通常は少量のエネルギーを移動し、光子の初期軌道に比べて散乱角を小さくする。逆に、低エネルギーX線光子の散乱はより実際にはより等方的である。従来のX線撮影の問題は、画像診断で使用される低エネルギーX線が等方散乱する一方で、検出される光子が前方に向けられることである。画像を生成するために使用される目的の光子と比較して、これらの散乱光子は同等のエネルギーと方向を持つことができる。エネルギーと方向が類似することは、散乱線除去グリッド及びエネルギーフィルタによるそれらの除去を困難にさせる。このような理由から、コンプトン散乱は、得られた画像を不鮮明にすることで分解能とコントラストを低下させる可能性がある。X線撮影でのコンプトン散乱の影響を低減するために精巧な方法が使用されてきたが、この効果を完全に除去することに成功した従来のX線イメージング技術は存在しない。
【0067】
電離放射線を使用した画像システムの開発及び使用はいずれも、対象又は患者の内部構造を視覚化するために使用される電磁放射によって可能であると共に基礎を置かれている。電離放射線は、原子の電子を失わさせてイオン化させるのに十分なエネルギーを持つ放射線として定義される。X線イメージングは最も一般に使用される電離撮像法であるが、他の解剖学的及び機能的画像診断法は、診断情報を取得するために電離放射線を使用する。電離放射線を使用したことによる避けられない結果は、その使用に関連する線量であり、どれだけの線量が測定されたか及び関連する健康への影響の理解が不可欠である。測定の他のシステムと同様に、放射線被曝の定量化が進んでおり、数多くの装置の製造と方法が改められてきた。
【0068】
線量は、被験者(subject)又は対象によって被曝又は吸収された放射線量として定義される。レントゲンは、X線又はガンマ線照射によって空気に生成されたイオン化を測定するための被曝単位である。レントゲンを単位とする被曝の決定は、空気の体積要素内の光子によって遊離した全ての電子が空気中で完全に停止したときに、体積要素内の空気の質量によって割られる(divide)、空気中に生成された痕跡(sign)の全てのイオンの電荷の合計を決定することを含む。1レントゲン(R)は、空気1キログラム当たり、X線又はガンマ線によって生成される電荷の2.58×10-4クーロンとして定義される。レントゲンは、標準温度及び圧力で1ccの乾燥空気内に1esu(2.08×109イオン対)の電荷を生成するx−及び/又はガンマ放射線の量としても定義される。レントゲンの使用はx及びガンマ放射線の測定に限られ、より重要なことには、それは吸収線量の測定ではないことである。その使用は医用画像装置には一般的ではないが、空気イオン化の測定は他の分野でまだ広く使用されているため、その使用は続いている。
【0069】
生物学的画像応用のための放射線のより有用な測定は、被験者又は対象によって吸収された放射線量を考慮し、ラド(rad)で表現される。ラドは、組織1gによって吸収される100エルグ(1エルグ=10-7J)のエネルギーに等しい。国際的に採用された吸収放射線の単位はグレイであり、それは100ラドに相当する。ラド又はグレイは全エネルギーの尺度ではなく、組織1g当たりどれだけの線量が吸収されたかの尺度である。全エネルギーがどのくらい放出されたかを決定するためには、被曝された組織の量を知る必要がある。ラドとグレイの両方は吸収線量の尺度を提供するが、それはまだ組織に残されたエネルギー量の尺度に過ぎない。
【0070】
特定の種類の放射線の影響を決定するのに加えて、被曝された組織の種類も全体の結果に影響を与える。特定の種類の組織は、他に比べて放射線に傷付きやすく、最も傷付きやすいものの幾つかは造血幹細胞、腸上皮、及び生殖細胞等の急速に分裂する細胞である。実効線量として知られる用語は次式:
【数13】
で表され、放射線を浴びた組織の種類に等しい線量と、それらの重み係数の積を合計することによって計算される。
【0071】
生体系は、生命に必要な機能を実行する分子と構造の極めて複雑なシステムに依存している。電離放射線は、機能の喪失又は細胞死につながる可能性がある細胞の働きを妨害し得る。体内の分子は化学結合によって結合され、しばしば酵素及び他の生物機械(biological machinery)の援助を受けて特定の順序で相互作用する。イオン化によって放出されるエネルギーは、化学結合を切断し、これらの分子の形状や機能を潜在的に変化させる。細胞への影響は、細胞のどの部分が破壊され、一定時間内にいくつのイベントが生じるかに依存する。
【0072】
細胞の最も傷付きやすく重要な構成要素のひとつはそのDNA(デオキシリボ核酸)であり、細胞の複製、転写、及びその後の翻訳に関与する。電子の放出につながるイオン化のイベントがDNA内で生じた場合、DNA内で電荷が形成される可能性がある。このようにして生じる相互作用は、イオン化イベントがDNA内又は隣接する分子から直接生じるという点で直接作用と呼ばれる。X線からのフリーラジカル生成の約2/3は間接作用として分類され、放出された電子が水分子に衝突したときに発生する。これは水分子をイオン化し、フリーラジカルを生成する一連の手順を導く可能性がある。一旦フリーラジカルが生成されると他の分子と非常に強く反応し、安定した電子配置に戻す可能性がある。フリーラジカルがDNA分子と相互作用すると、それは何もしないか、一時的な機能障害を引き起こすか、又はセルを不安定化して最終的な細胞死をもたらすエラーを生成する可能性がある。
【0073】
過度の放射線被曝は細胞死につながり、それは2つの基本的な形態に現れることができる。イオン化は、細胞がもはや自分自身を維持することができないところまで細胞機能を崩壊させ、細胞死をもたらす可能性がある。細胞が機能することは許容するが、もはや複製できない有糸分裂阻害も発生する可能性がある。細胞レベルに影響を与える結果は、臓器、組織、又は生物レベルに拡大する可能性がある。全身に対して100グレイの線量は24〜48時間以内に死に至る可能性がある。2.5〜5グレイの全身線量は数週間以内に死をもたらす可能性がある。臓器及び身体の他の部分への局所的な放射線被曝は、組織型の感受性によって部分的に決定される損傷の影響と共に、局所(focal)細胞死及び機能不全をもたらす可能性がある。
【0074】
細胞死は、電離放射線への被曝の1つの結果に過ぎず、DNAの変化はDNA設計図にエラーを生じさせる可能性がある。癌の進行は、DNA損傷の体細胞への起こり得る結果である。DNAのエラーは細胞制御の異常をもたらし、制御されない増殖及び癌の進行につながる可能性がある。生殖細胞のDNA内のエラーの誘発は、何世代にわたって自身に現れない遺伝欠陥につながる可能性がある。
【0075】
DEI及びDEIシステム、並びに関連する方法
本書に記述される主題の一実施形態に従うDEIシステムは、X線管から放射される特定のX線を排除するための1つのモノクロメータ結晶を含むことができる。図1A〜1Cは、本書に記述される主題の一実施形態に従い、1つのモノクロメータ結晶を含み、対象Oの画像を生成するように動作可能な、一般に100で示されるDEIシステムの概略図、上面斜視図、及び側面-上面(side-top)概略図である。さらに、図1D及び1Eは、本書に記述される主題の一実施形態に従う、動作の異なるモードにおけるDEIシステム100の概略図である。図1A及び1Bに関し、一般に100で示されるDEIシステムは、一般にXBで示される多色X線ビーム、又はX線管XTの点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成するように動作可能なX線管XTを含むことができる。X線ビームXBは異なるエネルギーを持つ光子を含むことができる。一例では、X線管XTは、X線ビームXBを放出可能な点源を有するタングステンX線管である。
【0076】
図2は、本書に記述される主題の一実施形態に従う、固定されたX線管構造に基づくX線管XTの概略図である。図2を参照すると、X線管XTは、一般にEBで示される電子ビームを生成するように構成されたカソードCを含む。カソードCはタングステンから作られている。高電圧がカソードCとアノードAにわたって印加され、それはX線管XTの真空内部Vを横切って高い電位差を生じる。電位は、アノード接続ANCを経由してアノードAに印加されることができる。X線管XTは、カソードCを加熱するよう構成されるフィラメントFを含むことができる。フィラメントFは、フィラメント接続FCによって電源に接続されることができる。
【0077】
真空内部Vは、X線管ハウジングXTH内で規定される。カソードCを加熱することにより、電子は熱電子的に(thermionically)カソードCから放射されるであろう。静電焦点カップ(focusing cup )EFCが電子放出点を囲み、それはアノードAに向かって電子流を集中することに役立つ。さらに、カソードCから放出された電子は、回路の両端に印加される電圧によって決定されるギャップを越え速度を持ちながら真空内部Vを横切ってアノードAに集中する。
【0078】
カソードCから放出された電子は、アノードAのタングステンターゲットTに向けられ、タングステンターゲットTに入射されることができる。ターゲットT上への電子の衝突の結果、X線ビームXBが生成される。X線ビームXBは、X線窓のXWを介して真空内部Vを出る。X線ビームXBは、特性輝線及び制動放射を含むことができる。
【0079】
X線発生装置の一例は、ドイツ、アーレンスブルクのGEインスペクションテクノロジーズから入手可能なISOVOLT TITAN160である。他の典型的なX線管は、MXR-160HP/20X線管のようなX線管のコメット(COMET)MXR-160シリーズを含み、それはスイス、フラマット(Flamatt)のコメットAGから入手可能である。他の典型的なX線管は、モリブデン、鉄、及び銅を含む、タングステン以外のアノードを使用したものを含むことができる。ターゲットの他の適切な種類は、六ホウ化バリウムターゲット及びサマリウムターゲットを含む。六ホウ化バリウムターゲットは、約30keVでX線を生成することができる。サマリウムのKα1線は約40keVに存在する。一例では、X線管のアノードは、X線ビームを放出可能な回転アノードであることができる。別の例では、X線管のアノードは、X線ビームを放出可能な静止アノードであることができる。
【0080】
図1A及び1Bを再び参照すると、コリメータC1は、モノクロメータ結晶MCの角度許容(angular acceptance)ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。システム100は又、モノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するため、X線管XTとモノクロメータ結晶MCとの間に位置する追加のコリメータを含むことができる。コリメータは、X線ビームXBの一部がモノクロメータ結晶MCへ通過できるスリット又は穴を規定することができる。さらに、コリメータは、鉛などのX線ビームを遮断するための任意の適切な材料で作られることができる。X線管XTとコリメータC1との間の距離Xは、約100ミリメートル(mm)とすることができる。
【0081】
モノクロメータ結晶MCは、それに入射されるX線ビームXBの部分の所定のエネルギーを選択するように構成されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MCは、目的とするエネルギーを持っていないX線ビームXBの光子の大部分を排除するのに適したシリコン[333]モノクロメータ結晶である。タングステンX線管の場合、シリコンモノクロメータ結晶によって反射されるビームエネルギーの様々な範囲があり得る。この場合、X線ビームの特性輝線は、59.13 keV(Kα1)と57.983(Kα2)にあると共に、モノクロメータ結晶の狭い角度許容ウィンドウ内に収まる制動放射である。制動放射の明るさは、2つのKα輝線より桁違いに小さい。
【0082】
X線ビームXBは、モノクロメータ結晶MCによって幾つかの異なる方向に散乱される。コリメータC2は、アナライザー結晶ACの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。コリメータC2は、アナライザー結晶ACによる遮断のために、X線ビームXBの一部がアナライザー結晶ACへ通過できるスリット又は穴を規定することができる。一例では、モノクロメータ結晶MCとアナライザー結晶AC間の距離Yが約500mmとされることができる。
【0083】
アナライザー結晶ACは、特定の方向に進む放射線の量を測定するために回転されることができる。結晶系の角度感度関数(angular sensitivity function)は、固有(intrinsic)ロッキングカーブと呼ばれ、この性質は、画像屈折コントラストを生成するために使用される。X線光子がロッキングカーブのピークに向かってずれている場合、その反射率、及びその強度が増加するであろう。対象の特性(feature)が光子をロッキングカーブの下方に偏向させ、又はピーク反射率の位置から離れさせる場合、それは強度の低下を引き起こす。
【0084】
試料又は対象は空気中で画像化され、又は水などの接触媒質(coupling medium)に浸漬されることができる。接触媒質の使用は、空気と画像化される対象との間の勾配率を低減するために使用されることができ、従って空気−対象の界面で顕著な屈折をすることなく、入射X線を試料内に通過させる。これは、ほとんどの対象には不要であるがDEI法の応用であり、対象の内部コントラストを改善するために使用されることができる。
【0085】
一例では、モノクロメータ結晶MCは一次元において狭い対称な結晶である。対称な結晶の格子面(X線ビームを回折するのに寄与する原子層)は、結晶の表面に平行である。対称な結晶は、入射ビームの発散と大きさを保持する。比較として、非対称な結晶は入射ビームの発散及び大きさを変更する。対称的な結晶であるモノクロメータ結晶MCのこの例では、試料対象を走査すると共に対称な結晶を用いた検出器によって広い撮像視野(例えば、100mmを単位として(by)約100mmの撮像視野)の2次元イメージングが得られる。対称な結晶が非対称な結晶より優れている一つの例示的な点は、非対称な結晶は、イメージングビームを調製する(例えば、X線を選択し、平行にする)ために大きなモノクロメータ結晶を必要とし、大きな結晶の完全性に極度に制限を課すことである。さらに、X線ビームのエネルギーの増加に伴って非対称な結晶の大きさが増加し、従って約59.13 keVのX線について実用的でなくなる。反対に、例えば、本書に記述される主題に従って用いられる対称なモノクロメータ結晶は、長さ約30mmの適度な大きさの結晶と共に59.13keVのX線を利用することができる。
【0086】
図1A及び1Bを再び参照すると、対象Oを画像化するための走査ステージSTにより、対象OはX線ビームXBの経路に配置されることができる。矢印Aで示されるように、対象Oは、X線ビームXBの方向に垂直に走査されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは対象Oを通過してアナライザー結晶ACによって解析されることができ、それはモノクロメータ結晶MCに整合するシリコン[333]結晶であることができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、デジタル検出器(又は画像版 (image plate))DDによる遮断のために回折されることができる。デジタル検出器DDは遮断されたX線ビームXBを検出し、遮断されたX線ビームを表す電気信号を生成することができる。
【0087】
一例では、線源走査システムが利用されることができる。一例では、走査システムは、対象と検出器の間で1:1の相関を持つことができる。
【0088】
電気信号は、画像解析と操作者への表示のためにコンピュータCに通信されることができる。電気信号によって表現される画像は、得られた画像のKα1及びKα2エネルギーの両方からの寄与を含むことができる。一例では、関心あるエネルギーは、59.319 keVのKα1エネルギーである。この例では、Kα2エネルギーによって生成される画像の特徴は、画像処理により除去されることができる。X線ビームのKα2部分によって生成された特徴が、目的とする分解能より低く離れた場合、その二つは共に使用されることができ、必要とする全体の画像時間を短縮する。高分解能の用途については、Kα2エネルギー部分は陰影効果(shadowing effect)を引き起こす可能性があり、画像処理により除去されることができる。コンピュータCは、吸収画像、屈折効果を示す画像、及び超小角散乱を表現する画像を生成するよう構成されることができ、その種類は以下に詳細に記述される。
【0089】
特に図1Bを参照すると、モノクロメータ結晶MCは、扇ビーム(fan beam)としてのX線ビームXBを伝搬させることができる。扇ビームは望ましくないX線を遮断するためのコリメータと視準を合わせる(collimated with)ことができ、明瞭なDEI画像及び低い被験者線量をもたらす。2次元ビームとは対照的に、扇ビームはより容易に望ましくないX線を遮断するために制御されることができる。
【0090】
図1Cを参照すると、X線管XT(図1A及び1Bに示されている)からのX線放射の放出のソースSと、モノクロメータ結晶MC、対象O、アナライザー結晶AC、及び検出器DDとの間の典型的な距離が示されている。構成要素は、用途に応じて互いに他の適切な距離で離間されてもよい。この例では、DEIシステム100は、マンモグラフィー用に構成されている。
【0091】
図1D及び1Eを参照すると、上述のように、これらの図は、異なる動作モードでのDEIシステム100を示す。X線ビームの特性輝線Kα1K1及びKα2K2は、X線管XTによって生成される。輝線Kα1K1及びKα2K2は同一の点源PSに由来する。上述したように、モノクロメータ結晶MCは、目的とするエネルギーを有しないX線ビームの光子の大部分を排除する。この場合、輝線Kα1K1及びKα2K2並びに制動放射はモノクロメータ結晶MCを通過し、示されるようにアナライザー結晶ACに向きを変えられる。
【0092】
コリメータC2は、輝線Kα1K1及びKα2K2の経路に配置される。コリメータC2は、輝線がアナライザー結晶ACに向かって選択的に通過できるような調整可能なスリットを規定する。図1Dに示される第1の動作モードでは、スリットは、点源PSから約400 mm離れて0.6 mmの開口部Xに調整されると共に、輝線Kα1K1がコリメータC2を通過し、Kα2K2が遮断されるように配置されている。従って、コリメータC2は、輝線Kα1K1からのX線、及び制動放射線の非常に狭い範囲を除き、全てのX線を排除する。このモードではビームは発散されず、対象O及び検出器DDは、逆方向に同じ走査速度で走査される。このモードは、最大可能な面外分解能(DEIのコントラストの方向)が得られるが、X線ビームからX線の一部を除去するのに費やし、それによって露光時間の増加を必要とする。対象Oの仮想点源は、VPSとして指定される。
【0093】
図1Eを参照すると、第2の動作モードでは、輝線Kα1K1及びKα2K2、並びに隣接するエネルギーでの制動放射は、コリメータC2を通過する。コリメータC2のスリットは、点源PSから約400 mm離れて2.0mmの開口部Xに調整されると共に、輝線Kα1K1及びKα2K2、並びに制動放射がコリメータC2を通過するように配置されている。このモードでは、ビーム発散が考慮される。画像ぶれを避けるため、対象O及び検出器DDは、同じ角速度で走査されることができる。検出器DD、及び対象Oが配置されている試料ステージの相対的な走査速度は、ソース−対象間の距離、及びソース−検出器間の距離(ここで距離はビーム経路に沿ってとられる)によって決定されることができる。このモードでのビーム発散は面外分解能を低下させ得るが、このモードはより多くのX線を通過させるという利点を持ち、従って、より高速な露光時間を可能にする。検出器DDの仮想点源はDVPSとして指定される。円形部分CP1及びCP2は、それぞれ対象O及び検出器DD用の仮想点源を中心とする。
【0094】
さらに、第2のモードを使用した一実施形態では、Kアルファ線と異なるX線エネルギーでの制動放射を捕捉することができる。従って、この実施形態では、システムはX線エネルギーを調整可能であり、それは特性放射エネルギーに限定されない。この機能は、モノクロメータ結晶とアナライザー結晶との入射角を変えることによって実現されることができる。一例では、この機能は、ブラッグの法則に従って入射角を11.4度に変えることによって実現され、銅フィルタをアルミニウムフィルタで置き換えることによって実現されることができる。この例では、イメージングは30keVのX線エネルギーで発生することができる。タングステン輝線エネルギーよりも低いX線エネルギーは、比較的薄い対象に利用されることができる。
【0095】
一例では、不要な結晶反射及び高調波を低減又は排除するため、約19 keVの制動放射を除去するように銅フィルタが構成されることができる。このフィルタリングが無ければ、画像が劣化する可能性がある。
【0096】
図3は、本書に記述された主題の実施形態に従う図1A-1EのDEIシステム100を示す上面概略図である。図3を参照すると、X線ビームXBはX線管XTのソースによって生成される。コリメータC1及びC2は、X線管XTのソースから約5.7度の角度でアナライザー結晶ACに向かうX線ビームXBの一部の広がりを遮断する。コリメータC1及びC2を通過するX線ビームXBの部分は、コリメータのスリットを通過するX線ビームの部分である。
【0097】
システム100は、それぞれ右及び左のアナライザーヨウ化ナトリウム検出器D1及びD2、並びにそれぞれ右及び左のモノクロメータヨウ化ナトリウム検出器D3及びD4を含むことができる。検出器D1-D4は、アナライザーの位置合わせ(alignment)のために構成されている。これらの検出器は、モノクロメータ結晶MC又はアナライザーACから放射される回折X線ビームの強度を測定するために使用される。システム調整のため、検出器D1及びD2は、アナライザー結晶AC X線ビームXBの後ろ(post)に配置される。アナライザー結晶が望ましい角度に調整されていない場合、検出器D1及びD2で測定される強度はこれを表示し、システムが調整されることができる。モノクロメータ結晶MC X線ビームXBの後ろの検出器についても同様である。さらに、検出器D1-D4はリアルタイムでX線ビームXBを測定し、アナライザー結晶、D1及びD2、χ(X線ビームの経路に沿う軸の周りに測定された角度)又はモノクロメータ結晶χ、D3及びD4を調整するために使用されることができる。アナライザー結晶ACとモノクロメータ結晶MCをセットし、測定し、及び調整するためのこれらの検出器の使用は、成功したDEI画像取得のために重要になることがあり得る。
【0098】
図4は、本書に記述された主題の実施形態に従い図1A-1Eに示される、DEIシステム100を使用した対象Oをイメージングするための例示的なプロセスを示すフローチャートである。図4を参照すると、ブロック400では、多色エネルギー分布を持つ第1のX線ビームが生成される。例えば、X線管XTによって生成されたX線ビームXBは、多色エネルギー分布を持つことができる。さらに、例えば、X線管XTは、X線ビームを生成するための少なくとも50kWの電力に設定されることができる。別の方法では、例えば幾つかの医療応用、研究開発、小動物イメージングなどのため、X線管XTの電力は50kWより小さい電力(約30kWなど)に設定されることができる。より小さい電力を使用する利点は、削減されたコストである。第1のX線ビームは、約10keVから約60keVまでの範囲のビームエネルギーを持つことができる。一例では、第1のX線ビームは、シンクロトロンによって発生されることができる。
【0099】
ブロック402では、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、モノクロメータ結晶MCは、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置されることができる。例えば、ビームを遮断するため、モノクロメータ結晶MCの表面は、X線ビームXBの経路に配置されることができる。上記したように、モノクロメータ結晶MCは、目的とするエネルギーを有しないX線ビームXBの光子の大部分を排除するように適合されることができる。従って、結果として所定のエネルギー準位を持つ第2のX線ビームが生成されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MCの表面は、モノクロメータ結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して約5度と20度の間の角度で配置されることができる。この例では、これらの角度は、[333]反射のために使用されることができる。又、他の適切な角度は、モノクロメータ結晶MCの表面の位置決めに使用されることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MCの表面は、モノクロメータ結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して約1度と20度の間の角度で配置されることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MCの表面は、モノクロメータ結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して約1度と20度の間の角度で配置されることができる。[333]及び[111]の両方の反射が使用される場合、10から70keVのエネルギー範囲について、角度範囲は約1度と約40度の間とすることができる。
【0100】
ブロック404で、第2のX線ビームを対象Oから透過させ、かつ対象Oからの透過ビームを放出させるため、対象Oは第2のX線ビームの経路に配置されることができる。例えば、対象OをX線ビームの経路に移動させるため、対象Oは走査ステージST上に配置されることができる。
【0101】
ブロック406では、透過X線ビームは入射角でアナライザー結晶ACに向けられることができる。例えば、アナライザー結晶ACは、透過X線ビームの経路に配置され、かつ入射角度のX線ビームを遮断する角度で配置されることができる。少なくともアナライザー結晶ACで遮断されるビームの部分は、検出器DDに向かって回折されることができる。
【0102】
ブロック408では、対象Oの画像は、アナライザー結晶ACから回折されたビームから検出されることができる。例えば、検出器DDは、アナライザー結晶ACからの回折ビームを検出することができる。回折ビームは、以下の典型的な検出器:検出された画像をデジタル化するよう構成された検出器;X線写真フィルム;及び画像版:のいずれかで検出されることができる。一例では、対象の画像は、結晶アナライザーのロッキングカーブのピーク、及び/又は結晶アナライザーのロッキングカーブのピーク近傍において結晶アナライザーから回折されるビームから検出することができる。検出された画像は、ユーザに提示するためのコンピュータCを介して処理されると共に、ユーザへ提示されることができる。
【0103】
対象の画像を検出する別の例では、対象Oの第1の角度画像は、第1の角度位置に配置されたアナライザー結晶ACから放出された第1の回折ビームから検出されることができる。対象Oの第1の角度画像は、アナライザー結晶ACの低いロッキングカーブ角度設定で検出されることができる。さらに、対象Oの第2の角度画像は、第2の角度位置に位配置されたアナライザー結晶ACから放出された第2回折ビームから検出されることができる。対象Oの第2の角度画像は、アナライザー結晶ACの高いロッキングカーブの角度設定で検出されることができる。第1及び第2の角度画像は、屈折画像を得るためにコンピュータCで組み合わせられることができる。さらにコンピュータCは、屈折画像から対象Oの質量密度画像を得ることができる。質量密度画像は、コンピュータCのディスプレイを介してユーザに提示されることができる。
【0104】
図5は、本書に記述される主題の実施形態に従う図1A-1E、及び図3に示される、DEIシステム100のアナライザー結晶ACの側面図である。図5を参照すると、アナライザー結晶ACの表面からの特性輝線Kα1及びKα2の回折が示される。1以上のX線エネルギーの調整(accommodation)は、改良されたX線流束をもたらすことができる。
【0105】
別の実施形態において、本書に記述される主題に従うDEIシステムは、X線管から放出される特定のX線を排除するための不整合な結晶構造を含むことができる。この構造では、X線ビームのKα2輝線は、モノクロメータで排除されることができる。図6A及び図6Bはそれぞれ、本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み対象Oの画像を生成するように動作可能な、一般に600で示されるDEIシステムの概略図、上面斜視図である。図6A及び6Bを参照すると、DEIシステム600は、X線ビームXBを生成するよう機能するX線管XTを含む。コリメータC1は、第1のモノクロメータ結晶MC1の角度許容ウィンドウを外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。X線ビームXBの遮断されない部分は第1のモノクロメータ結晶MC1で遮断することができ、それは第2のモノクロメータ結晶MC2で遮断するための方向に、上記遮断されない部分を屈折させる。第2のモノクロメータ結晶MC2に向かって回折された単色ビームを生じさせるため、第1のモノクロメータ結晶MC1は、光子エネルギーの非常に狭い範囲を選択するためのブラッグの法則を用いて、特定の角度に調整されることができる。X線管XTからのX線ビームXBが発散するため、第1のモノクロメータ結晶MC1は、特性輝線Kα1及びKα2、並びに隣接するエネルギーの制動放射を含むことができるエネルギーの範囲を回折することができる。第2モノクロメータ結晶MC2の機能は、入射ビームと平行な方向にビームの向きを変え、アナライザー結晶ACと一直線に揃えることである。システムを特定のエネルギーに調整する場合、第1のモノクロメータ結晶が最初に調整され、次にビームの位置を見つけるために第2の結晶が調整される。
【0106】
第2のモノクロメータ結晶MC2が調整されると、結晶上のビームの位置を見つけるためにアナライザー結晶ACが走査される。ビームの位置を見つけるために結晶を搖動(rocking)させることは特定の放送局を見つけるためにラジオのダイヤルを走査することに似ており、アナライザーの角度位置が第2のモノクロメータ結晶と完全に揃ったときに強度の急激な上昇が生じる。アナライザー結晶ACが調整されると、システムが調整され、使用できるようになる。
【0107】
第1及び第2のモノクロメータ結晶MC1及びMC2はそれぞれ、X線管から放射される特定のX線を排除するための不整合な結晶構造で構成されることができる。モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、X線ビームXBのKα2輝線を排除するために使用されることができ、それは異なる結晶のエネルギーに対する角度許容を利用することによって達成されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、それぞれゲルマニウム[333]及びシリコン[333]モノクロメータ結晶であることができる。
【0108】
図7は、本書に記述される主題の実施形態に従う図6A及び図6Bに示される、DEIシステム600を使用した対象Oの画像化のための例示的なプロセスを示すフローチャートである。図7を参照すると、ブロック700で、第1のX線ビームが多色エネルギー分布を持つように生成されることができる。例えば、X線管XTによって生成されたX線ビームXBは多色エネルギー分布を持つことができる。さらに例えば、X線管XTは、X線ビームを生成するために少なくとも50kWの電力に設定されることができる。第1のX線ビームは、約10keVから約60keVの範囲のビームエネルギーを持つことができる。一例では、第1のX線ビームはシンクロトロンによって生成されることができる。
【0109】
ブロック702で、モノクロメータ結晶MC1は、所定のエネルギー準位を有する第2のX線ビームが生成されるよう、第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置されることができる。例えば、モノクロメータ結晶MC1の表面は、ビームを遮断するためX線ビームXBの経路に配置されることができる。上記したように、モノクロメータ結晶MC1は、目的とするエネルギーを持たないX線ビームXBの光子の大部分を排除するよう適合させることができる。従って、結果として所定のエネルギー準位を持つ第2のX線ビームが生成されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MCの表面は、モノクロメータ結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して約5度と20度の間の角度で配置されることができる。
【0110】
ブロック704で、モノクロメータ結晶MC2は、第2のX線ビームを遮断してアナライザー結晶ACに向けるように配置されることができる。一例では、コリメータC1を通過するX線ビームXBの部分の経路に平行な経路に沿って第2のX線ビームが指向されるよう、第2のモノクロメータ結晶MC2が配置されることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は不整合であることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、X線ビームXBの所定の部分を排除するために選択されることができる。別の例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、ゲルマニウム[333]及びシリコン[333]モノクロメータ結晶のいずれかとすることができる。
【0111】
ブロック706で、第2のX線ビームを対象Oから透過させ、かつ対象Oからの透過ビームを放出させるため、対象Oは第2のX線ビームの経路に配置されることができる。例えば、対象OをX線ビームの経路に移動させるため、対象Oは走査ステージ上に配置されることができる。
【0112】
ブロック708では、透過X線ビームは入射角でアナライザー結晶ACに向けられることができる。例えば、アナライザー結晶ACは、透過X線ビームの経路に配置され、かつ入射角度のX線ビームを遮断する角度で配置されることができる。少なくともアナライザー結晶ACで遮断されるビームの部分は、検出器DDに向かって回折されることができる。
【0113】
ブロック710では、対象Oの画像は、アナライザー結晶ACから回折されたビームから検出されることができる。例えば、検出器DDは、アナライザー結晶ACからの回折ビームを検出することができる。回折ビームは、以下の典型的な検出器:検出された画像をデジタル化するよう構成された検出器;X線写真フィルム;及び画像版:のいずれかで検出されることができる。一例では、対象の画像は、結晶アナライザーのロッキングカーブのピーク、及び/又は結晶アナライザーのロッキングカーブのピーク近傍において結晶アナライザーから回折されるビームから検出することができる。この例では、ピークはロッキングカーブのダーウィン(Darwin)幅の約半分の中で生じる可能性がある。検出された画像は、ユーザに提示するためのコンピュータCを介して処理されると共に、ユーザへ提示されることができる。
【0114】
対象の画像を検出する別の例では、対象Oの第1の角度画像は、第1の角度位置に配置されたアナライザー結晶ACから放出された第1の回折ビームから検出されることができる。対象Oの第1の角度画像は、アナライザー結晶ACの低いロッキングカーブ角度設定で検出されることができる。さらに、対象Oの第2の角度画像は、第2の角度位置に位配置されたアナライザー結晶ACから放出された第2回折ビームから検出されることができる。対象Oの第2の角度画像は、アナライザー結晶ACの高いロッキングカーブの角度設定で検出されることができる。第1及び第2の角度画像は、屈折画像を得るためにコンピュータCで組み合わせられることができる。さらにコンピュータCは、屈折画像から対象Oの質量密度画像を得ることができる。質量密度画像は、コンピュータCのディスプレイを介してユーザに提示されることができる。
【0115】
図8-10は、異なる波長でのゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラム(Dumond diagram)のグラフである。特に、図8は、タングステンのKα1及びKα2に対応する波長範囲内のゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムのグラフである。図9は、タングステンのKα1に対応する波長範囲内のゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモンドダイアグラムのグラフである。タングステンのKα1(59.319 keV)に対応する波長では、ゲルマニウム[333]及びシリコン[333]が完全に重なり、そのため、Kα1エネルギーが第1の遮断された結晶(すなわち、ゲルマニウムモノクロメータ結晶)及び第2の遮断された結晶(すなわち、シリコンモノクロメータ結晶)を横切って回折するときに、当該Kα1エネルギーの排除がないことを示す。しかし、より高い波長では、所定の角度で各結晶に許容される波長の分離がある。図10を参照すると、タングステンのKα2(57.982 keV)に対応する波長で、ゲルマニウム[333]及びシリコン[333]の波長許容(wavelength acceptance)内で重なりが存在しない。図6A及び6Bに示される例に関して説明したように、これをタングステンベースのソースに適用すれば、Kα1波長のほぼ無損失反射とKα2波長の完全な排除を可能とする平行配置にゲルマニウム及びシリコンモノクロメータ結晶が配置されることができる。
【0116】
図11は、本書に記述される主題の実施形態に従う図6A及び図6Bに示されるDEIシステム600のゲルマニウムモノクロメータ結晶MC1とシリコンモノクロメータ結晶MC2の側面図である。図11を参照すると、タングステンX線管についてKα1波長のほぼ無損失反射とKα2波長の完全な排除を提供するため、モノクロメータ結晶MC1及びMC2が平行配置で示される。
【0117】
図6A及び6Bを再び参照すると、モノクロメータ結晶MC1及びMC2を通過するX線ビームXBの部分は、幾つかの異なる方向に散乱される。コリメータC2は、アナライザー結晶ACの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されるスリット又は穴を含むことができる。
【0118】
走査ステージSTによる画像化のため、対象OはX線ビームXBの経路に配置されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは対象Oを通過してアナライザー結晶ACによって解析されることができ、それはモノクロメータ結晶MC2に整合するシリコン[333]結晶であることができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、デジタル検出器DDによる遮断のために回折されることができる。デジタル検出器DDは、遮断されたX線ビームXBを検出すると共に、コンピュータCと通信するため遮断されたX線ビームを表す電気信号を生成することができる。コンピュータCは信号表現を解析し、対象Oの画像を操作者に表示することができる。特にコンピュータCは、吸収画像、屈折効果を示す画像、及び超小角散乱を表現する画像を生成するよう構成されることができ、その種類は以下に詳細に記述される。
【0119】
図12は、本書に記述される主題の一実施形態に従い、不整合モノクロメータ結晶を含み、対象Oの画像を生成するように動作可能な、一般に1200で示されるDEIシステムの概略図である。図12を参照すると、DEIシステム1200は、一般に矢印Aで示される方向に向けられるX線ビームXBを生成するように動作可能なタングステンX線管XTを含むことができる。X線ビームXBを遮断するため、ベリリウム(Be)ウィンドウBWがX線管XTのビーム出口端(exit end)BEに配置されることができる。BeウィンドウBWの機能は、低エネルギーX線のフィルタリング、及びX線管XTの真空内部の密封を含む。BeウィンドウBWは、ビーム出口端BEへ接続するよう構成されたハウジングH1内に保持されることができる。
【0120】
アルミニウム(Al)フィルタAFは、BeウィンドウBEを通過するX線ビームXBを遮断するためのBeウィンドウBWの下流に配置されることができる。AlフィルタAFは、BeウィンドウBWのハウジングH1へ接続するよう構成されたハウジングH2内に保持されることができる。AlフィルタAFは不要な低エネルギーX線を減衰させるために使用される。
【0121】
モノクロメータタンクMTは、AlフィルタAFを通過するX線ビームXBを遮断するためのAlフィルタAFの下流に配置されることができる。モノクロメータタンクMTは、それぞれ不整合の第1及び第2モノクロメータ結晶MC1及びMC2、並びにX線ビームXBが通過可能なスリットをそれぞれ規定する1対のコリメータC1及びC2を含むことができる。モノクロメータタンクMTは、それぞれX線ビームXBの入口及び出口に対する端部E1及びE2を含むことができる。コリメータC1及びC2は、X線ビームXBの一部を平行にすることができる。それぞれ第1及び第2モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、X線管から放射される特定のX線を排除するための不整合な結晶構造で構成されることができる。モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、X線ビームXBのKα2輝線を除去するために使用されることができる。一例では、モノクロメータ結晶MC1及びMC2は、それぞれゲルマニウム[333]及びシリコン[333]モノクロメータ結晶であることができる。モノクロメータタンクMTは、X線ビームXBのエネルギーを選択するため、本書に記述されたモノクロメータ結晶MC1及びMC2を回転させるための機構を収容することができる。
【0122】
システム1200は、他のコリメータC3、イオンチャンバーIC、及びモノクロメータタンクMTの下流に位置するシャッターアセンブリSAを含むことができる。モノクロメータタンクMTの出口端E2で、X線ビームXBの少なくとも一部は、X線ビームを平行にすると共にX線ビームXBの一部を遮断するためのモノクロメータタンクMTの下流に位置するコリメータC3内に規定されたスリットを通過することができる。イオンチャンバーICは、チャンバを通過するX線光子がイオン化されて電圧を生じる原理を用いてX線流束を測定するために使用される。シャッターアセンブリSAは、X線ビームXBを選択的に遮断及び通過するよう動作されることができ、従って、対象OのX線ビームXBへの選択的な露出を提供する。
【0123】
対象Oは、イメージング中にX線ビームXBの経路を走査するための走査ステージアセンブリSSAによって保持されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは対象Oを通過することができ、さらに、第2のモノクロメータ結晶MC2に整合するシリコン[333]結晶であってよいアナライザー結晶ACによって解析されることができる。本書に記述されるように、アナライザー結晶ACは、モノクロメータ結晶MC2に対して適切な角度に回転することができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、可動デジタル検出器DDによる遮断のため、回折されることができる。デジタル検出器DDは遮断されたX線ビームXBを検出すると共に、コンピュータCへ通信するため、遮断されたX線ビームを表現する電気信号を生成することができる。コンピュータCは信号表現を解析し、操作者に対象Oの像を表示することができる。特に、コンピュータCは、吸収画像、及び屈折効果を示す画像を生成するよう構成されることができ、その種類は以下に詳細に記述される。又、DEIシステム1200は、超小角散乱効果を示す画像を表示するためのDEI技術に従って変更されることができる。
【0124】
表Tは、その上にモノクロメータタンクMT、コリメータC3、イオンチャンバーIC、及びシャッターアセンブリSAが配置可能な上面を有する花崗岩の上部GTを含むことができる。表Tは、以下にさらに詳細に説明するように、システム1200を安定させるために振動を減衰させるため、下端と床Fとの間に配置されたゴムパッドRPをそれぞれ有する複数の脚部Lを含むことができる。表Tは、アナライザー結晶ACを垂直方向に上下移動するよう構成された接線(tangent)アームTAを含むことができる。
【0125】
図13-16は、本書に記述された主題の実施形態に従い、一般にSCで指定される、足場上の1つのモノクロメータ結晶MCを有するX線管XT及びモノクロメータタンクMTの典型的な配置の概略図である。特に、図13は典型的な配置の側面概略図である。図13を参照すると、モノクロメータタンクMTに対してX線管XT(参照ラベルXTによって示される内径の内部に配置される部分)を位置決めするため、足場SCは互いに接続される複数のプラットフォームPL及びロッドRDを有している。X線管XTから放射されるX線ビームXBが開口部A1を通ってモノクロメータタンクMTに入り、さらにモノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウ内に入るよう、X線管XT及びモノクロメータタンクMTは、互いに対して正確に位置決めされることができる。モノクロメータ結晶MCから回折するX線ビームXBは、開口部A2を通ってモノクロメータタンクMTを出ることができる。他が表示されない限り、図13〜16中の数字で示される距離はインチである。
【0126】
図14は、図13に示される典型的な配置の上面概略図である。図14を参照すると、X線ビームXBは、X線管XT内の点Pから扇形の広がりを形成することが示される。
【0127】
図15及び図16はそれぞれ、図13及び図14に示される典型的な配置の別の側面図及び上面図の概略図である。図15及び図16を参照すると、シールドSを示すため、配置はそれぞれ側板及び上板なしで表示される。シールドSは、望ましくない方向にX線ビームXBが放出されることを防止するよう機能されることができる。追加のシールドが保護のために利用されることができる。さらに、必要に応じて臨床装置で適切なシールドが提供されることができる。
【0128】
図17-26は、本書に記述された主題の実施形態に従うDEIシステムの例示的な一部の画像である。特に、図17を参照すると、X線管XTのX線ビーム出口部の画像が示されている。X線ビームはX線管XTから放出されてBeウィンドウBWを通り、それはX線管XTに接続されてX線ビームを遮断するために配置される。BeウィンドウBWは内部鉛(Pb)シールドPSの二層に取付られている。
【0129】
図18は、図17に示されるX線管XTのX線ビーム出口部の別の画像である。この画像では、AlフィルタAF及びコリメータC1がX線管XTに接続され、X線ビームを遮断するために配置されている。AlフィルタAFは、厚さ約2mmである。コリメータC1は、X線ビームを通すためのスリットSLを含む。この例では、コリメータC1はタンタル(Ta)製で、厚さ約1/8インチである。一例において、スリットは、X線管上のスポットサイズより少し大きくなるような大きさである。一例において、スリットは1.0mmであり、X線管上のスポットサイズは0.4mmである。スリットは、縦方向に平行にされた扇ビームを提供することができる。
【0130】
図19は、AlフィルタAF、コリメータC1、及び別のコリメータC2の画像である。この画像では、構成部品が説明のために分解されている。組み立てた状態で構成部品は互いに隣接して組み合わされることができる。
【0131】
図20及び図21は、シールドキャップ及びX線管の画像である。図20は、分解してカットされたが、X線管XTの端に取り付けるため曲げられていないシールドキャップS1の画像である。図21は、X線管XTの端からのX線ビームの望ましくない放出を防止するための、X線管XTの端のシールドキャップS1の画像である。シールドキャップS1は、X線管XTの端に嵌合するためのキャップの形状に切断及び折り曲げられた1/8インチの鉛シートである。
【0132】
図22は、モノクロメータタンクMTからのX線ビームの望ましくない放出を防止するための鉛シールドS3を含む、モノクロメータタンクMTの画像である。シールドS3は約1/2インチの厚さの鉛シートであり、X線ビームの必要な部分を放出するためのスリットSLを含む。X線管から放出されるX線は、シールドS3のスリットSLを介してモノクロメータタンクMTから出る。
【0133】
図23は、モノクロメータタンクMTからのX線ビームの望ましくない放出を防止するための鉛シールドS3を含む、モノクロメータタンクMTの画像である。シールドS3は約1/4インチの厚さの鉛シートであり、X線ビームの必要な部分を放出するためのスリットSLを含む。X線管から放出されるX線は、シールドS3のスリットSLを介してモノクロメータタンクMTに入る。
【0134】
図24は、X線管XTの側面からのX線ビームの望ましくない放出を防止するための、X線管XTの端の近傍に配置されたシールドS2の別の部分の画像である。シールドS2は、X線管XTの側面に取付けるための形状に切断及び折り曲げられた1/16インチの鉛シートである。1/8インチの鉛シートは、150keVのX線を1000の倍数で減らすことができる。
【0135】
図25は、互いに動作位置にあるX線管XT及びモノクロメータタンクMTの画像である。
【0136】
図26は、モノクロメータタンクMTの内部部品の正面の画像である。特に、モノクロメータ結晶MCが表示される。さらに、シールドSがモノクロメータタンクMTの両側に配置されている。
【0137】
図27は、本書に記述された主題の実施形態に従う、一般に2700で示される典型的なDEIシステムの上面斜視図である。図27を参照すると、DEIシステム2700は、複数のX線ビームXBを生成するためのタングステンアノードを有するX線管XTを含むことができる。コリメータC1は、モノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウを外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。この例では、モノクロメータ結晶MCはシリコン結晶である。コリメータC2は、アナライザー結晶ACの角度許容ウィンドウを外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができる。
【0138】
コリメータC2を通過するX線ビームXBの部分は、X線管XTによって生成された20keV制動放射X線の熱を熱的に隔離するよう構成され、かつ減衰させることが等しく重要であるよう構成される銅フィルタFTRによって遮断されることができる。特定のブラッグ角について、モノクロメータを通過できる不要な結晶反射が存在し得る。59.13 keV[333]反射を選択する約5.7度のブラッグ角を使用する一例は、19.71 keVの[111]X線の通過を可能にする角度でもある。これらのX線がモノクロメータ結晶MCで回折された場合、それらは、ぼやけた画像アーチファクトを誘発し、そのため全体的な画質が低下する。銅フィルタFTRは低エネルギーX線、特にX線ビームXBから放射され、モノクロメータMCで回折される19.71 keV制動放射、X線光子を減衰させるために使用される。
【0139】
アナライザー結晶ACは、フィルタFTRを通過するX線ビームXBの少なくとも一部を遮断するために配置されることができる。さらに、対象を画像化するための走査ステージSTによって、対象はX線ビームXBの経路に配置されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは対象Oを通過してアナライザー結晶ACによって解析されることができ、それはモノクロメータ結晶MCに整合するシリコン[333]結晶であることができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、デジタル検出器DDによる遮断のために回折されることができる。デジタル検出器DDは遮断されたX線ビームXBを検出し、遮断されたX線ビームを表す電気信号を生成することができる。電気信号は、画像解析と操作者への表示のためにコンピュータに通信されることができる。コンピュータは、吸収画像、及び屈折効果を示す画像を生成するよう構成されることができ、その種類は以下に詳細に記述される。
【0140】
図28は、本書に記述された主題の実施形態に従う例示的なモノクロメータ結晶MCの側面図、上面図、及び正面図を含む概略図である。図28を参照すると、モノクロメータ結晶MCの側面図、上面図、及び正面図はそれぞれ、SV、TV、及びFVで示される。モノクロメータ結晶MCの寸法は図に示され、約±0.5 mmとすることができる。また、モノクロメータ結晶は他の適切な寸法であってもよく、それは部分的にはイメージングの用途によって決定される。モノクロメータ結晶MCの面方位は、結晶の大面積の面に平行な格子面とすることができる。作製されるときは、他の小さな直交面の配向が参考のため記載されてもよい。典型的なモノクロメータ結晶は、ゲルマニウム[111]モノクロメータ結晶及びシリコン[111]モノクロメータ結晶であることができる。
【0141】
モノクロメータ結晶MCは、一般にCで示され、結晶の上部内に規定される張力緩和カットを含んでもよい。カットCの幅は厚さ約1/16インチである。また、幅は他の任意の適当な寸法とすることができる。カットCは、取付けのために使用される結晶の部分を除去し、アナライザー結晶AC及びモノクロメータ結晶MCの残りの部分の張力を軽減させる。任意の応力又は張力がアナライザー結晶AC又はモノクロメータ結晶MCの撮像部に誘起されている場合、それは回折特性を変え、システム性能に悪影響を及ぼす。
【0142】
マルチビームDEI及びDEIシステム
本書に記述された主題の別の実施形態に従うイメージングシステムは、複数のX線ビームを使用することができる。システムは、X線管から放射される特定のX線を排除するため、それぞれ1又はそれ以上の結晶から成る2又はそれ以上のモノクロメータを含むことができる。図64及び65は、本書に記述された主題の実施形態に従い、複数のモノクロメータ結晶を含み、対象Oの画像を生成するように動作可能な、一般に200で示されるマルチビームシステムの実施形態の概略図である。上記した1つのモノクロメータシステムと同様、一般に200で示されるイメージングシステムは、一般にXBで示されて多色X線ビームを生成するように動作可能であるか、又はX線管XTの点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成するように動作可能な、X線管XTを含むことができる。一例では、X線管XTは、X線ビームXBを放出可能な点源を有するタングステンX線管である。X線管XTは今まで通り1つの管のソースとすることもできるが、ソースは大きな角度領域に光を放射することができる。
【0143】
この構成は、上述のイメージングシステムの本質的に「拡大縮小(scaling )」と考えることができる。この構成は、撮像時間を低減するための固有の経路を提供することができる。1つの結晶モノクロメータ又は二重の結晶モノクロメータよりはむしろ、複数のモノクロメータ結晶MCのように、それぞれ1又はそれ以上の結晶から成る2又はそれ以上のモノクロメータが提供されることができる。例えば、図64に示される特定の一実施形態では、複数のモノクロメータ結晶MCは、第1のモノクロメータ結晶MC-1、第2のモノクロメータ結晶MC-2、その他n番目のモノクロメータ結晶MC-nを含むことができる。図65に示される別の特定の実施形態では、複数のモノクロメータ結晶MCは複数の二結晶モノクロメータを含むことができる。特に、モノクロメータ結晶MCは、第1のモノクロメータ結晶ペアMC1-1及びMC2-1、第2のモノクロメータ結晶ペアMC1-2及びMC2-2、その他n番目のモノクロメータ結晶ペアMC1-n及びMC2-nを含むことができる。これら二結晶モノクロメータは、整合(例えば、二つのシリコン結晶)又は不整合(例えば、一つのシリコン結晶、一つのゲルマニウム結晶)とすることができる。
【0144】
いずれの配置でも、マルチビームシステムは、1つのX線管XT、1つの検出器DDを使用することができ、さらにマルチプル(multiple)モノクロメータ結晶MCは同一防振(vibration- isolated)マウントVIMを共有することができる。マルチビーム構成は、X線管XTによって生成されるX線ビームXBの多くを遮断することができる。その結果、一定の数のビームnについて、単一のビーム構成に対して撮影時間をnの倍数で減少させることができる。構成要素の特定の配置は、上記したイメージングについての1つの構成と同様とすることができる。例えば、各モノクロメータ結晶MCは、それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2のX線ビームが生成されるよう、X線ビームXBを直接遮断する所定の位置に配置されることができる。特に、各モノクロメータ結晶MCは、適切な角度で配置されることができると共に、[333]又は[111]反射と共にタングステンKα1及びKα2線を反射するための十分な大きさの結晶面を持つことができる。
【0145】
アレイコリメータCAは、モノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するために配置されることができ、それによってX線管XTからのX線ビームXBのための複数のビーム経路を許容する。アレイコリメータCA1は、単一ビームイメージングシステムに関して上述された(例えば、単一スリットのタンタルコリメータ)コリメータC1の代わりに動作することができる。さらに、上述のように、システム200は追加のコリメータCA2を含むこともでき、コリメータCA2は、モノクロメータ結晶MCの角度許容ウィンドウから外れるX線ビームXBの部分を遮断するため、又はX線ビームXBの特性輝線(例えば、特性線Kα1とKα2)の1つを選択的に遮断すると共に特性輝線の遮断されていない1つの通過を許容するため、X線管XTとモノクロメータ結晶MCの間に配置されることができる。その代わり、特性輝線の1つを選択的に遮断するため、追加のコリメータCA2がモノクロメータ結晶MCと対象Oの間に配置されることができる。即ち、追加のコリメータは、X線ビームXBがモノクロメータ結晶MCによって遮断される前ではなく、遮断された後に特性輝線の1つを遮断するために配置されることができる。
【0146】
図64及び65を再び参照すると、対象OはX線ビームXBの経路に配置されることができる。対象Oの走査の間、X線ビームXBは、対象Oを通過し、さらにアナライザー結晶AC(例えば、第1のアナライザー結晶AC-1、第2のアナライザー結晶AC-2、その他n番目のアナライザー結晶AC-n)によって解析される入射角に向けられることができる。各アナライザー結晶ACは、対応するモノクロメータ結晶MCに整合することができるシリコン結晶とすることができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは、デジタル検出器(又は画像版)DDによる遮断のために回折されることができる。デジタル検出器DDは遮断されたX線ビームXBを検出し、遮断されたX線ビームを表す電気信号を生成することができる。幾つかの実施形態では、デジタル検出器DDは、大面積の検出器であることができる。他の実施形態では、デジタル検出器DDは、スリット検出器の配列であることができる。
【0147】
上記したイメージングシステム及び方法を使用すると、例えば典型的な臨床イメージングに必要な所定の範囲内となるよう、流束を増大させると共に撮像時間を減少させることができる。撮像時間を減少させるため、より多くの扇ビームが使用されることができ、それはnのモノクロメータの配列について、およそnの倍率でイメージングを減らすことができる。
【0148】
DEI及びDEIシステムを使用するための撮像法及び品質管理
本書に記述された主題に従って不整合結晶構造で構成されたDEIシステムを用いた画像取得は、特定の実験に適したビームエネルギーの選択から始めることができる。一例では、ビームエネルギーは約10keVと約60keVの間の範囲から選択することができる。イメージングのための特定のエネルギーの選択は、所望の波長について適切な角度を計算するためのブラッグの法則を使用することで実現されることができる。一例では、モノクロメータの第1の結晶は、選択されたビームエネルギーを除いて入射X線ビームから全てのエネルギーを除去するため、特定の角度に調整することができる1つの移動軸のみを持つことができる。下記の表1は、18keVと60keVの間で画像を取得するための第1のモノクロメータ結晶の典型的な角度を示す。シリコンについてのこれらの角度は、ブラッグの法則λ=2dsin(θ)を用いて計算され、モノクロメータ結晶MCを横切って回折する時のX線ビームの入射角θ(θ)及び回折角θ(θ)を規定する。検出器は、X線ビームエネルギーを選択するための第1の結晶で使用されるブラッグ角の2倍である、角度2θに配置される。
【0149】
【表1】
【0150】
表1:画像を取得するための第1のモノクロメータ結晶のシリコン[333]反射のための例示的な角度
【0151】
不整合結晶構造で構成されたDEIシステムは、調整されて慎重に並べられるべき3つの結晶を含み、2つの結晶はモノクロメータ及びアナライザー結晶内にある。例えば、DEIシステム600は、調整されて並べられることができるモノクロメータ結晶MC1及びMC2、並びにアナライザー結晶ACを含む。第1の結晶(例えば、図6A及び図6Bに示されるモノクロメータ結晶MC1)とアナライザー結晶(例えば、図6A及び図6Bに示されるアナライザー結晶AC)は、各エネルギーについて計算された角度(θ角度)に調整されることができる。例えば、システムを25keVに調整するために、第1のモノクロメータ結晶は13.17度に設定されており、アナライザー結晶は13.72度に設定されている。この例ではデジタル検出器アセンブリは、アナライザー結晶の角度の2倍の角度である27.44度に設定されることができる。
【0152】
第2のモノクロメータ結晶(例えば、図6A及び図6Bに示されるモノクロメータ結晶MC2)は、χ角度と呼ばれる水平方向に調整されることができる。これらの結晶の間で水平方向の整列具合が悪いと、画像の左から右への強度変化が生じるかもしれない。モノクロメータとアナライザーの両方から放出される流束を測定するため、2つの電離箱が使用されることができ、それらは内側及び外側の領域の双方に分割される。ソースから検出器アセンブリへのX線ビームを見た場合、内側領域が右側にあり、外側領域は左側にある。内側及び外側領域は、ロッキングカーブピークが揃っていることを確認するためにサンプリングされることができる:そうでない場合、χの角度が調整されることができる。図29は、内側/外側領域、並びに回転のχ及びθの角度を示すモノクロメータ結晶の斜視図である。
【0153】
DEIシステムで適用される線量は、多数の方法で調整されることができる。例えば、線量は、アルミニウムフィルタの厚さを変えること、及び/又はX線ビームの経路に吸収体を配置することによって調整されることができる。線量は、ロッキングカーブのピークから離れて第2のモノクロメータ結晶を離調し(detuning)、必要に応じて劇的に回折強度を軽減することで、減らすことができる。一例では、X線管はシンクロトロンで置き換えられることができ、この場合、第1のモノクロメータ結晶の入射流束はシンクロトロンのリング電流によって決定される。
【0154】
サンプル収集時間は、ステップ/秒で測定された試料ステージの移動速度で、入射流束によって決定されることができる。走査速度は線量を調整することにより増加又は減少させることができ、ステップ/秒で測定される。走査速度は、ノイズ量が固定された画像版を使用するときに重要な要素ではないかもしれないが、ノイズ量がある程度収集時間によって決定されることから統合デジタル検出器を使用する際に考慮される必要がある。デジタル検出器を使用する場合は、DEIシステムは、走査速度が可能な限り最大に近くなるように調整される必要がある。
【0155】
DEI又はDEIシステムが適切なエネルギー及び線量のために調整されると、撮像される対象が試料ステージ上に置かれて整列させられることができる。一例では、X線ビームの最大幅は120mmであり、それは物理的に得られる画像の幅を制限する。幅が120mm未満のデジタル検出器又は画像版を使用すると、さらに視野を制限する可能性がある。一例では、試料ステージは約200mmの最大垂直変位を持っている。しかしながら、試料高さの物理的な制限はない。対象の特定の領域のイメージングのため、この領域がシステムにとって200mm内にあるかどうかを判断する必要がある。X線ビームの位置は固定されてもよく、従って目的とする対象の垂直領域はビームに対するその相対位置によって決定されることができる。
【0156】
DEIシステムで使用される結晶は、結晶の特定の領域で光子を回折する能力において同質であると考えられるが、結晶の構造は、強度が増加又は減少する小さな領域が存在することがある。ビームを介してスキャンされる対象の次元が固定されているため、これらの「異常(glitch)」は、画像の縦の次元を横切って塗抹(smear)される可能性がある。用語「異常」は、しばしばこれらの垂直線に適用されるが、これらの影響は予想され、システムの既知で予想された特性として考慮されるべきである。
【0157】
システムパフォーマンス特性についての実験
本書に記述されるX線管を含むDEI及びDEIシステムを構築する前に、試験目的のため、X線源としてシンクロトロンを用いて実験が行われた。最初の実証として、モリブデン及びタングステンベースのX線源をシミュレートし、18keV及び59keVのX線を用いた撮像時間及び流束要件が計算された。さらに、システム構成に関し、画素サイズ及び画素当りの光子数などの幾つかの仮定がなされた。これらの値は必要に応じて増減することができるので、5cmの組織(水)を通過する画素当り1000光子を持つ100ミクロンの画素サイズが、この例で使用される。
【0158】
100ミクロン平方画素当りの必要な光子の数は、要求される画素当りの光子数を、対象を通過する光子の減衰によって割ることによって計算されることができ、この場合では5cmの水である。
【数14】
このようにして、18keVのX線源について、各100ミクロン平方画素当り約1.6×105の入射光子が必要とされる。59keVのX線の減衰は18keVでよりもはるかに少なく、それは100ミクロン平方画素当り2.9×103光子を必要とする入射光子の減少をもたらす。
【0159】
輝線源を用いた立体角内の入射X線流束
DEI及びDEIシステムで使用される結晶光学は、選択性の高い角度ノッチフィルタとして動作し、適切なエネルギー又は角度発散を持っていないX線ビームからの光子を排除する。X線管ベースのソースについて、光子はおおよそ全立体角に放射するよう期待される。流束要件を決定するため、検出器及びX線結晶光学系によって範囲を定められる立体角に基づいて流束を計算する必要がある。任意のX線管は多色エネルギー分布を持つであろうし、結晶系はブラッグの法則によって定義される輝線の1つを選択するであろう。
【0160】
完全結晶では、所定の反射のピーク反射率は、ブラッグ法線方向の固有反射幅又はダーウィン幅に近い積分反射率を構成する、1(unity)に非常に近いと予想される。ブラッグ[333]反射を持つシリコン結晶を仮定すると、18keV及び59keVのダーウィン幅は以下のとおりである。
18keVのSi[333]ダーウィン幅= 2.9×10-6ラジアン、及び
59.3keVのSi[333] ダーウィン幅= 0.83×10-6ラジアン
結晶格子面に平行な方向に移動するX線は、ブラッグ-平行(Bragg-parallel)として知られており、ブラッグ平行方向の角度許容は、結晶ではなく、検出器分解能によって設定される。画像化される対象がX線源から1mにあり、100ミクロンの空間分解能が必要な場合、ブラッグ-平行許容角度は100マイクロラジアンである。100マイクロラジアンブラッグ-平行許容角度について、18keV及び59keVでのステラジアン(steradian)毎に必要な光子の数は次のとおりである。
【数15】
【0161】
X線管流束
X線管ベースのソースは、それらのX線スペクトルに特性輝線と制動放射の2つの成分を持つことができる。DEI及びDEIシステムの結晶光学は、管のターゲットの特性輝線を中心としなければならない唯一の非常に狭いエネルギーバンドの選択を許容する。この場合、それぞれのソースからのこれらの輝線の流速を決定するため、モリブデンのKα1(17.478 keV)及びタングステンのKα1(59.319 keV)が使用されることができる。
【0162】
現実的なイメージング条件下で生成されるであろう流束を決定するため、複数の電圧及び電流設定におけるモリブデン及びタングステンX線管のモンテカルロシミュレーションが生成された。10kWの電力で、75kVの加速電圧を使用したモリブデンのターゲットについて、Kα1に放出される流束は、次のとおりである。
【数16】
50kWの電力で、150kVの加速電圧のタングステンターゲットを使用したKα1放出は、次のとおりである。
【数17】
【0163】
推定画像収集時間
アナライザーがピーク位置からの値(80%)に離調(detune)されている場合、屈折コントラスト及び幾つかの消衰コントラストを含む1つの露光(exposure)を取得できる。これらの計算は、DEIシステムが1つのモノクロメータ結晶とアナライザー結晶を持つことを前提としている。このシミュレーションの形状(geometry)は、対象がビームを介して走査される線源X線を使用した国立シンクロトロン光源(NSLS)のX15A線源(ブルックヘブン国立研究所、アプトン、ニューヨーク州に位置する)で使用されるものと一致する。高さ10cmで100ミクロンの画素サイズ(0.1mm)の対象について、1000本の走査線が必要となるであろう。
【数18】
75kV、10kWについて、モリブデンターゲットの場合(約18keV):
【数19】
150kV、50kWについて、タングステンターゲットの場合(約59.3keV):
【数20】
【0164】
最大反射率の80%を持つロッキングカーブ上の点での1つの画像について、上記のパラメータを用い、モリブデンターゲットを使用した必要な時間は約1.1時間である。タングステン管について、同じ反射率を使用した必要な時間は約4.6分である。撮像時間は、画素ごとに必要とする光子などの撮像変数により、及び対象からソースへの距離を変更することにより、さらに減少されるであろう。
【0165】
1000mmのソースから対象への距離でブラッグ[333]反射を使用して計算されたデータに基づき、推定撮像時間が他の反射及び距離を用いて推定されることができる。DEIに使用されるブラッグ[333]及びブラッグ[111]反射の2つの結晶反射が存在する。DEI及びDEIの屈折及び消衰コントラストの両方の大部分は、角度の所定の変化に対してさらなるコントラストを提供する急峻な傾きを有し、アナライザーの反射率曲線の傾きによって決定される。屈折及び消衰コントラストに関し、ブラッグ[333]反射はブラッグ[111]反射より優れているかもしれないが、[333]反射から回折された流束は[111]反射よりも約1桁小さい。図30は、シリコン[111]、[333]、[444]、及び[555]結晶回折面を使用したNSLS X15A箱(hutch)の単色ビーム流束を示すグラフである。流束が10倍に増加すると、特定の用途に有利な[111]反射を作り、撮像時間を10の倍数で短縮できる。撮像時間のさらなる短縮は、ソースから対象までの距離を短くことによって達成することができ、それは1000mmの距離を用いて本書に記述されるように計算される。ソースから撮像される対象への光子の強度は、1/r2に比例する。対象の距離が1000mmから500mmに減少すると、強度は4倍に増加しうる。ソース−対象距離を決定することができる多くの要因があるが、最も重要な1つは対象の大きさである。用途に応じた必要により、アナライザー/検出器アセンブリは、ソースに近づき又は遠ざかって移動されることができる。
【0166】
アナライザーロッキングカーブの半値全幅(FWHM)は、エネルギーが増加するにつれて狭くなる(例えば、18keVで3.86マイクロラジアンであり、60keVで1.25マイクロラジアン)。エネルギーに対するロッキングカーブの幅の例が以下の表2に示される。特に、以下の表2は、18、30及び60keVでの測定された及び理論上の[333]アナライザーロッキングカーブのFWHMを示す。[333]二重(double)ブラッグモノクロメータは、ブラッグピークに調整された。
【表2】
【0167】
表2:18、30及び60keVでの測定された及び理論上の[333]アナライザーロッキングカーブのFWHM
【0168】
FWHMの減少はロッキングカーブの傾きを増加させ、さらに屈折及び消衰コントラストを増大させる。図31は、FWHMの減少がロッキングカーブの傾きを増加させることを示すグラフである。50kW、ブラッグ[333]反射についての流速計算、及び1000mmのソースから対象への距離を用い、以下の表3に示すように、種々の距離及び結晶反射に必要な撮像時間を見積もることができる。特に、表3は、結晶反射及びソース−対象の距離に基づいた推定(estimated)撮像時間を示す。
【表3】
【0169】
表3:結晶反射及びソース−対象の距離に基づいた推定撮像時間
【0170】
シンクロトロンベースのDEI及びDEIシステム実験
上記したように、シンクロトロンを用いてDEI及びDEIシステム実験が行われた。特に、本書に記述されるようにNSLS X-15AビームラインがDEI及びDEI実験のために利用された。本書に記述される実験のために使用されるシンクロトロンX線源は、DEI又はDEI画像を生成するため、本書に記述される主題に従うX線管を置き換えることができる。
【0171】
NSLSにおいてX線リングは、10〜60keVの高流速X線を生成することができる2.8GeVシンクロトロンである。図32は、本書に記述される主題の実施形態に従うシンクロトロンX線ビームを用い、一般に3200で示されるDEIシステムの実験配置の概略図である。図32を参照すると、シンクロトロンから放射されるX線ビームXBは、約0.2ミリラジアンの垂直発散を持ち、高度に平行化されている。長さ16.3mのビームラインパイプ(図示せず)は、シンクロトロンX線リングに実験箱(hutch)を接続する。高強度多色X線ビームXBは実験箱に入り、二重結晶モノクロメータタンクMTの使用を介して単色にレンダリング(render)される。モノクロメータタンクMTは、熱負荷を低減するために両方が水冷される2つのモノクロメータ結晶MC1及びMC2(それぞれ150mm幅×90mm幅×10mm高さ)を含む。モノクロメータタンクMTを出るX線ビームXBは単色である。
【0172】
それから単色X線ビームは、イオンチャンバーIC及び高速シャッターアセンブリSAを通って試料ステージアセンブリSSAに進み、幅120mm及び高さ3mmの最大寸法の線源X線ビームを生成する。ビーム位置を固定した状態で、アセンブリSSA上の試料対象Oは、ステッピングモータにより駆動される移動ステージを用いてX線ビーム上を移動する。
【0173】
従来のX線写真は、ビーム経路内で検出器D1(X線撮影構成で)の直接後方に試料対象Oを配置することによって得ることができ、アナライザー結晶ACの全ての影響を除去する。この構成で取得された画像は、吸収が主なコントラスト機構である点で従来のX線システムに類似するが、シンクロトロンX線写真は、従来のX線システムを使用して取得された画像と比較してより優れたコントラストを有することが示されている。本書で提供される実験の間に得られた従来のX線写真が、DEI画像との比較のために使用された。
【0174】
DEI画像は、アナライザー結晶ACの後ろに、計算されたブラッグ角の2倍の角度で検出器D2(DEI構成で)を配置することによって取得されることができる。18-60keVの範囲でイメージングに使用される角度の概要が上記の表1に示される。線源X線の使用は、DEIについての試料のそれと反対方向でかつシンクロトロンX線写真を得るためと同一の方向に検出器を移動させることを必要とする。この実験では、DEI画像はフジHR V画像版を用いたフジBAS2500画像版(コネチカット、スタンフォードのフジメディカルシステムズから入手可能)を用いて取得された。この版は、有機バインダーと混合される輝尽性蛍光体(BaFBR:Eu2+)を塗布された柔軟なプラスチック板から成り、厚さ約0.5mmである。画像は分解能50ミクロンで16ビットの階調レベルで、フジBAS2500を用いて走査される。
【0175】
さらに、別の実験では、回折増強コンピュータ断層撮影及び複数画像X線撮影(MIR)を含む、画像版を使用することが実用的でなく又は不可能であったDEI用途を可能とするため、デジタル検出器がシステムに追加された。使用され得る例示的な検出器は、50x100mmの活性領域と12ビットの出力を有するShad-o-Box 2048(カリフォルニア州、サンタクララのラド-アイコン(Rad-icon)イメージングコーポレーションから入手可能)を含む。この検出器は、Gd2O2Sシンチレータスクリーンと直接接する48ミクロンの画素間隔を持つ1024×(by)2048画素を含む光ダイオードアレイを利用している。別の例示的な検出器は、120mm×80mmのFOV及び30ミクロンの画素サイズを持つフォトニックサイエンスVHR-150X線カメラ(英国、イーストサセックス州のロベルスブリッジ(Robersbridge)から入手可能)を含む。これらの典型的な検出器の両方は、X線撮影又はDEI構成のいずれかで、画像版と同じ方法で装着されることができる。
【0176】
ビーム内に対象が無い状態で、アナライザー結晶ロッキングカーブの全域で画像を取得すると固有ロッキングカーブを生成することができ、それは、アナライザー反射率の異なるレベルでモノクロメータ及びアナライザー結晶の畳み込み(convolution)を表す。固有ロッキングカーブは吸収、屈折、又は超小角散乱によって変化せず、それは優れた基準点となることができる。対象がビーム内に配置されると、どのX線相互作用が特定の画素のコントラストを導くかを決定するため、画素毎基準で画素上のロッキングカーブの変化が使用されることができる。
【0177】
ロッキングカーブがモノクロメータとアナライザーの畳み込みであり、3つの要素からなる(triangular)ため、ERA方法で使用されるモデルはロッキングカーブを近似であるガウス分布としてモデル化する。このモデルの式は次式
【数21】
によって提供され:ここで、μTは線吸収係数、χsは消衰係数(extinction coefficient)、tは対象の厚さ、θzは屈折角、及びωsは散乱分布のガウス分布である。
【0178】
MIRは、ERA方法のより洗練されたバージョンである。MIRは、従前の処理技術に存在する問題の多くに対処し、画像コントラスト成分のより完全な表現を可能とする。上述したように、MIR技術を使用して処理された画像は、吸収及び屈折画像だけでなく、超小角散乱画像を生成することができる。MIRは又、DEI見かけ吸収及び屈折画像内に存在するかなりの誤差を補正するために示され、ノイズに対してより堅牢である。
【0179】
ERA方法と同様に、対象の吸収、屈折、及び超小角散乱を表す画像を生成するため、MIRはアナライザー結晶ロッキングカーブを使用する。固有ロッキングカーブがベースラインである場合、光子吸収が全体の強度を低下させるため、カーブ下の面積を減少させる変化はもっぱら吸収として解釈されることができる。純粋に屈折事象の場合、ロッキングカーブの重心は変化するが、ロッキングカーブの幅が一定に維持される。超小角散乱を引き起こす相互作用は、ロッキングカーブの角度分布を横切る光子を散乱させ、それはカーブを広げさせる。光子がロッキングカーブの許容ウィンドウの外に散乱されないと仮定すると、散乱効果はカーブの下の領域、丁度カーブの形状、には影響しない。ロッキングカーブが事実上ガウス分布であると仮定すると、現在の散乱量を表すためにカーブの分散が使用されることができる。
【0180】
ロッキングカーブの幅はエネルギーが増加するにつれて減少し、この変化を明らかにする(account for)ため、サンプリング手順を変更することを必要とするかもしれない。 18keVでロッキングカーブFWHMは3.64マイクロラジアンであり、60keVでは1.11マイクロラジアンに減少する。ロッキングカーブが狭くなると、屈折コントラストに影響を与える角度範囲が狭くなる。これを補うため、角度サンプリング範囲及び増分が低減されるであろう。60keVのロッキングカーブの勾配の増加は、マイクロラジアン当りの強度の大きな変化を生む点で有益である。X線管のような流束を制限するX-源を使用する場合、所定の流速にとって可能な最も大きい屈折を生成するため、これらの特性が最大限に発揮されるであろう。
【0181】
DEIシステム安定化
角度変化を強度に変換するアナライザー結晶の使用は、優れたコントラストを可能とするが、この手法の前提は、アナライザー結晶のロッキングカーブ位置が時間とともに一定であるということである。実際にはこれは事実と異なり、このような狭いロッキングカーブ幅は、アナライザーピーク位置での小さな変化でも、取得された画像に重大なエラーをもたらす可能性がある。DEI見かけ吸収及び屈折画像、MIR、並びにMIR-CTなどの処理アルゴリズムのアプリケーションは、高度のシステム安定性を必要とする。不安定性を引き起こす要因を分離するため、乳房組織の吸収、屈折、及び散乱パラメータを決定するという目標を達成することは、NSLS X-15Aビームラインの体系的なエンジニアリング解析を必要とする。
【0182】
この場合のDEIシステムの安定性は、長期間にわたってアナライザー結晶ロッキングカーブの一定のピーク位置を維持する能力として定義される。検討のため、多色X線ビームが、単一の光子エネルギーを選択するためにブラッグの法則を使って特定の角度に調整されたモノクロメータの第1の結晶に入射する。回折された単色ビームは、次に第2のモノクロメータ結晶に衝突し、その機能はビームを入射ビームに平行な方向に変えると共に、アナライザー結晶に揃えることである。システムを特定のエネルギーのために調整する場合、第1のモノクロメータ結晶が最初に調整され、次にビームの位置を見つけるために第2の結晶が調整される。タンク内の重要な構成部分を急速に酸化させて損傷を与える可能性があるオゾンの発生を減らすため、モノクロメータタンクは常にヘリウムで洗浄(flush)される。
【0183】
第2のモノクロメータ結晶が調整されると、結晶上のビームの位置を見つけるためにアナライザーが走査される。ビームの位置を見つけるために結晶を搖動(rocking)させることは特定の放送局を見つけるためにラジオのダイヤルを走査することに似ており、アナライザーの角度位置が第2のモノクロメータ結晶と完全に揃ったときに強度の急激な上昇を生じる。アナライザー結晶が調整されると、システムが調整され、使用できるようになる。
【0184】
DEIシステムにドリフトを生じさせる可能性がある要因は、振動、機械的、及び熱的の3つのカテゴリに分類される。結晶の微小な振動である。ら、コントラストの変化をもたらす角度のわずかな変化を引き起こす可能性があるため、DEIシステムの光学部分は振動に敏感である。NSLS X-15Aのビームラインでは、外部環境からの振動を減衰させるため、大きな花崗岩の厚板が使用された。アナライザーX線ビームの後ろをモニターするためのオシロスコープを用いた測定は、強度の約2〜3%の変動があることを示し、それは外付けドライブファンやビームラインでのポンプからの振動に起因する。
【0185】
結晶を整列させ、試料ステージ及び検出器アセンブリを移動させるため、複数のモータが使用された。θの角度を調整するため、第1のモノクロメータ結晶、第2のモノクロメータ結晶、及びアナライザー結晶にピコモータ(Picomotor)ドライブが使用されることができる。第2のモノクロメータ結晶及びアナライザー結晶は、χ角度を調整する第2のピコモータを使用する。これらのドライブモータのいかなる不安定性も、システムの調整に大きな狂いを生じさせる可能性があり、機械的なドリフトは、当初はDEIシステムの不安定性の主な原因と考えられていた。試料ステージ及び検出器アセンブリを駆動するために使用されるモータは画像品質のために重要であるが、それらはX線ビームの安定性に寄与しない。
【0186】
システムの不安定性の3番目の要因は、入射X線ビーム並びにシステムドライブモーター及びアンプの両方から発生する熱に起因する熱的なものである。システムの温度変動がシステム安定性に何らかの影響があることは知られていたが、それは主要な不安定要因とみなされなかった。重要な観測が行われた時に熱変動とシステム不安定との間の関連性が明らかになり、アナライザーのドリフトは比較的安定して周期的であった。この例では、DEIシステムで周期的な唯一の変数が存在し、それは主要なX線シャッターを開閉することにより生成及び失われる熱である。
【0187】
不安定性の発生源を探し出すために得られた実験的試験と観察は、ドリフトの主な発生源として、シリコン結晶構造の膨張及び圧縮を示す。これらの実験観察の簡単な説明は、ブラッグの法則(λ=2dsin(θ))を使用して見出だされることができる。所定のエネルギーを回折するための所定の角度に設定された1つの結晶を考えると、格子構造のd間隔のあらゆる変化は、回折されたビームの角度を変えることができる。モノクロメータ内のX線ビームから発生する熱は、シリコン結晶をその線膨張率に従って膨張させることができ、Δd/d=3x10-6ΔT(℃)である。
【0188】
ブラッグの法則を使用してdについて解くと、以下の式を得る。
【数22】
上記式の微分係数をとると、
【数23】
が得られる。
dで置換して並べ替えると、
【数24】
が得られ、これは
【数25】
に整理し直すことができる。
線膨張率Δd/dで置換すると、次式
【数26】
が得られる。
【0189】
18keV及び40keVについて、それぞれブラッグ角度19.2及び8.4度を使用すると、18keVで摂氏温度当り1.05マイクロラジアンの角度変化、及び40keVで摂氏温度当り0.44マイクロラジアンの角度変化を観察することが期待されるであろう。ドリフトの理論的な説明としてこの計算を使用すると、全体的なビームライン安定性の増加、及びビームエネルギーの増加に伴うアナライザードリフトの低下を観察することが期待されるであろう。
【0190】
初期のアナライザー安定性試験は、平均して60秒未満のピークアナライザー位置の安定性を持ち、システムが非常に不安定であることを示した。このことは、1つの画像走査には許容されるかもしれないが、MIR及びあらゆるCT用途には許容されなかった。コールドスタートから12時間の連続運転を通したアナライザー位置の変化を測定する複合的な(Multiple)ドリフト評価は、50〜100マイクロラジアンの間であった。どの熱源を抑制又は除去できるかを判断するため、システム安定性に対する温度の重要性の認識と共に、全てのシステム構成要素の総合的な評価が行われた。
【0191】
温度の大きな変動を受ける1つのシステム構成要素はアルミニウムフィルタアセンブリであり、その機能は、望まない低エネルギーX線を減衰させることである。これらの0.5mm厚のアルミニウム板は、シンクロトロン白色ビームに曝されるとすぐに加熱し、ビームが止まると急激に冷える。隣接するモノクロメータタンク内の熱的に敏感な結晶にアルミニウムフィルタアセンブリが近接することは、このことを不安定性の主な原因とした。フィルタによって生成された熱を除去し、アルミニウムフィルタアセンブリを熱的に分離するため、ヒートシンクが必要であった。図33は、本書に記述する主題に従う例示的なアルミニウムフィルタヒートシンクの画像である。図33を参照すると、アルミニウムフィルタ挿入口と、冷却水流入/流出管が示される。
【0192】
アルミニウムフィルタで発生する熱を熱的に隔離し、その熱を高流量の冷水導管に循環するため、銅フィルタアセンブリがシステムに構成された。又、アルミニウムフィルタは、放射表面積を限定するために大きさが縮小されると共に、銅ヒートシンクとの接触を増大させられた。水冷フィルタアセンブリを滴下後に得られた安定性試験は、システム全体のドリフトが約1桁低減され、コールドスタートから12時間の連続運転のドリフト測定が平均-6マイクロラジアンであることが示された。
【0193】
水冷フィルタヒートシンクを付加した後のシステム全体のドリフトの劇的な減少は、アナライザー及びモノクロメータ結晶の等温環境を維持することの重要性を明らかにした。しかしながら、他の発生源(source)の変更が熱をさらに低減することは、当業者であれば予測されるべきである。熱的ドリフトの残りの発生源を分離するため、各システム構成要素と外部環境の周期的な変化の体系的な解析が実施された。
【0194】
熱を下げるため、アンプ及び制御システムが実験箱から取り除かれることができる。駆動モータも取り除かれることができる。しかしながら、本実験では、試料ステージと検出器アセンブリを制御する駆動モータは除去できなかった。さらに、一定の外気温度を維持するのを助けるため、箱のドアが閉じられることができる。アナライザー結晶の温度、外気温度、及び重力(gravity)冷却水温度の12時間測定は、温度の大幅な変化を示さなかった。継続した実験は、第2のモノクロメータ結晶に直接接触して加熱される、第2のモノクロメータ結晶のアルミニウム台座に大幅な熱変動があったことを示した。
【0195】
第2のモノクロメータ結晶の機能は、第1のモノクロメータ結晶からの単色X線ビームを回折し、そのビームをアナライザー結晶と水平に揃えることである。理論的には、結晶とのX線の相互作用は弾性的であるため、発熱は無いはずである。高強度の多色シンクロトロン白色ビームの多くが第1の結晶の内部構造に吸収されるため、このことは第1のモノクロメータ結晶に当てはまらない。振動を減少させるため、重力駆動される水冷システムが第1のモノクロメータ結晶から余分な熱を除去するためにシステムに設置された。能動冷却は第2のモノクロメータ結晶には必要でなかったが、24時間の期間にわたって得られた温度測定は変更が必要であることを示した。
【0196】
サーミスタがアルミニウム支持プレート上に置かれ、24時間の典型的な運転にわたって5秒ごとに温度が測定された。図34は、24時間の期間にわたってサーミスタで測定された温度を示すグラフである。ビームがオンオフされた時から支持プレートの温度が約1.3℃上昇した。シンクロトロン蓄積(storage)リングの電流は時間とともに徐々に低下し、さらに放出及び補充される必要があり、これは温度グラフで明らかである。12時間の連続運転の後に、温度がベースラインに戻るまでにかかる時間を決定するためにビームラインが停止された。データの解析は、能動水冷のための支持プレートの改良を正当化する、第2の結晶の十分な加熱があったことを示す。図34のグラフは、通常のビームライン操作が結晶温度にどの程度影響を与えたかの教科書に注釈が付けられた。特定された熱的不安定性のこの発生源のため、水流と熱交換のための内部導管を有する銅支持プレートが設けられた。図35は、温度を低下させるための水冷却ラインを有する、典型的な改良された第2のモノクロメータベースと支持プレートの俯瞰図の画像である。
【0197】
1000時間の改良されたモノクロメータと共に約2000時間のビームライン操作の後、ビームラインの安定性の予測可能な傾向が測定及び評価された。予測されたように、光学の安定性を維持する圧倒的な要因は温度である。温度の絶対値は、時間とともに温度が変化することほど重要ではない。等温環境が維持されている場合、その後にシステムは平衡状態に到達し、モノクロメータ及びアナライザー結晶の両方に殆ど又は全くドリフトがない。蓄積リング内のリング電流が時間とともにゆっくりと、しかし予想通り減少するため、NSLSでの画像化は固有の問題を示す。第1のモノクロメータ結晶に入射するX線の強度はリング電流に比例して低下し、第1の結晶の温度を時間とともに低下させる。能動的フィードバック制御が結晶システムに配置されていない場合、第1のアナライザ結晶は時間とともに収縮し、d間隔と回折エネルギーをゆっくりと変える。第1の結晶上のブラッグ角の変化は第2の結晶上のビームの位置を変化させ、第2の結晶から放出される回折単色光子流束を減少させる。これは、アナライザー結晶に入射するX線の強度を低下させるのみならず、X線ビームの位置を変化させ、アナライザードリフトを引き起こす。
【0198】
アナライザードリフトの影響は、ビームラインのコールドスタートアップ(cold startup)中に最も明確に示され、そこではX線シャッターが閉じられた状態でビームラインの全ての構成要素が少なくとも24時間室温にある。システムが平衡に達するまでどの程度の時間がかかるかという実用的な目的と共に、起動後の最初の100分以内にアナライザーがどのようにドリフトするかを試験するため、一連の安定性試験が行われた。X線シャッターを有効にしたすぐ後でシステムを調整し、アナライザー位置をゼロにリセットすることにより、アナライザーの短期間の安定性試験が遂行された。その後、θを0.2マイクロラジアン増加させつつ、-10〜10マイクロラジアンの範囲で100秒ごとに、アナライザーが走査された。各ロッキングカーブの重心を決定するため、それぞれのロッキングカーブが続いて解析され、それはピーク位置として記録され、その対応するアナライザー位置とともに記録された。一旦システムが最初に調整されて実験が開始されると、それ以上のチューニング又は調整は行わなかった。
【0199】
全ての他のビームラインパラメータ及びアルミニウムろ過(filtration)が通常の撮像条件下で使用される範囲に設定されつつ、2つの光子エネルギー、18keV及び40keV、が試験のために選択された。高いエネルギーのX線は低いエネルギーのX線よりもはるかに貫通性があり、所定のレベルに流束を低減すると共に、多色シンクロトロン白色ビーム内に存在する低エネルギーX線を減衰させるため、より多くの前(pre-)モノクロメータフィルタを必要とする。ろ過量を増やすと、X線がモノクロメータに入る前に生じる吸収の量が増加するので、第1のモノクロメータ結晶上の熱負荷を低減する。フィルターアセンブリで発生するX線吸収から発生する熱を除去するために水冷ヒートシンクを追加すると、結晶はシンクロトロン白色ビームからより少ない熱影響を受ける。高いエネルギーで摂氏温度当たりの角度変化を減少させることと、ろ過を増やすことによるモノクロメータ上の熱負荷を低減させることの組み合わせは、ビームエネルギーの増加に比例して安定性を増加させる。
【0200】
ビームラインのコールドスタートアップから行われた安定性実験は、アナライザードリフトがリング電流の減少に密接に追随することと共に、この効果を実証する。現在の理論は、強力な入射シンクロトロン白色ビームは、ほぼ瞬時に第1のモノクロメータ結晶を深く加熱し、迅速に最高温度に到達させると仮定する。リング電流が時間とともに消失するにつれて温度がゆっくりと低下し、ドリフトを引き起こす。システムは最終的に周囲の大気及びシステム構成要素を温め、単位時間当りのドリフトの量を安定させる。40keVでのろ過量の増加は、熱負荷の影響を減らすのに役立ち、システムが熱平衡に達するまで時間を減少させる。ビームラインが5-7時間の連続運転をされると、各結晶の熱負荷の影響は最小化され、ビームラインはアナライザードリフトが殆ど又は全くない超安定(ultra-stable)になる。
【0201】
図36-39は、安定性試験の結果のグラフである。特に、図36は、一定期間にわたるアナライザーのピーク位置を示す18keVのシステム安定性試験のグラフである。図37は、18keVの安定性試験中のNSLS X線リング電流のグラフである。図38は、一定期間にわたるアナライザーのピーク位置を示す40keVのシステム安定性試験のグラフである。図39は、40keVの安定性試験中のNSLS X線リング電流のグラフである。
【0202】
この実験の結果は、光学におけるドリフトは光学内の結晶を等温に保持することによって制御することができることを実証し、それは、一定の温度を維持するために精密な加熱システムを用いてシンクロトロン及び非シンクロトロンベースのDEIシステムの両方で達成することができる。体系的なエンジニアリング解析を通して、アナライザー/モノクロメータの不安定性の問題は、根本的な制約から些細な邪魔者に縮小した。更なる改良により、問題は完全に取り除かれ、DEI及びMIR法をベースとする全てのコンピュータ断層撮影の完全利用を可能にするであろう。
【0203】
DEI及びDEIの最適な画像化パラメータを決定するためのマンモグラフィーファントム(PHANTOM)の助手(reader)の研究解析
前述のように、DEIは、X線吸収、屈折、及び超小角散乱(消衰コントラスト)からコントラストを取得するX線撮影技術である。DEIは、X線吸収と屈折からコントラストを得る類似のX線撮影技術である。従来の平面及びCTの両方のX線撮影システムは、X線が物質を通過する際の減衰に基づいて画像を生成する。X線吸収は電子密度及び平均原子番号に基づくので、対象又は患者における減衰の違いに基づいてコントラストが得られる。X線光子と物質との相互作用は、単に入射ビームから取り除かれる光子の数よりも多くの構造情報を提供することができる。DEIは、X線屈折及び超小角散乱の測定を容易にする、極めて敏感な角度フィルタとして動作するシリコンアナライザー結晶を、X線ビームの経路に組み込んでいる。公称(nominal)吸収コントラストを有する対象は、対象の特性又はその局所環境のいずれかに起因して、高屈折及び超小角散乱コントラストを持つであろう。
【0204】
乳房組織内の関心ある構造は通常、特に病気の初期段階では低い吸収コントラストを持つことを考えると、DEIは乳房イメージングに大きな可能性を持つことができる。悪性の乳房組織のDEI研究は、従来のマンモグラフィーと比較して、乳房腫瘍における棘状突起の可視化の大幅な増大を示している。乳房内の関心ある主な診断構造は石灰化、腫瘤、及び線維を含み、それらの全ては周囲の脂肪及び腺組織と比較して大きな屈折及び散乱の特徴(signature)を持つであろう。マンモグラフィーのためのDEIの利用を適切に調べるため、固有のシステムパラメータ及び構成は、乳房イメージングに診断上重要な特徴を検出するために最適化される必要がある。この研究の不可欠な要素は、吸収、屈折、及び超小角散乱除去(消衰)を用いて達成可能な放射線量の潜在的な減少を決定することである。臨床的に有用なマンモグラフィーシステムを設計し、構築するために規定されなければならない主要なDEIイメージング要素は、ビームエネルギー、アナライザー結晶反射、及びアナライザー結晶のロッキングカーブ上の位置である。
【0205】
本研究のための実験は、NSLSでX-15Aビームラインで行われた。解析中のパラメータを理解するため、システムの簡単な説明が望ましい(in order)。これらの実験のためのX線源は、NSLSにおける2.8GeVシンクロトロンのX線リングであり、10〜60keVの高流束X線を生成することができる。入射X線ビームから特定のエネルギーを選択するため、二重結晶シリコンモノクロメータが使用された。特定の角度を選択するために調整された対象の後ろにシリコンアナライザー結晶を配置することにより、DEI画像が得られた。アナライザーはマイクロラジアンの約1/10の分解能を持つ角度フィルタであり、それはX線屈折及び超小角散乱の測定を容易にする。アナライザーをその反射率曲線上の異なる位置に調整することは、X線分布の離散的な角度を選択することを可能とし、さらに幾つかの位置は対象及び病変の検出に有用な情報を提供する。
【0206】
ブラッグ[111]及びブラッグ[333]反射のように、DEIで使用可能な複数の結晶反射が存在する。DEI屈折コントラストはアナライザー結晶のロッキングカーブの傾きと共に増加し、ブラッグ[333]反射はブラッグ[111]反射よりもはるかに急な傾きを有する。ブラッグ[333]反射はより良いコントラストを提供することができるが、ブラッグ[333]反射における結晶によって入射多色X線ビームから選択可能なX線光子の数は、ブラッグ[111]反射よりおよそ1桁少ない。これらの反射の間の相対的差異を可視化して決定することは、臨床に基づくDEIシステム上の設計において重要な要因となり得る。
【0207】
X線管は、アノード材料、電圧、及びアンペア数の関数である出力スペクトル及び振幅でX線を生成するカソード/アノードの構成を使用することができる。マンモグラフィーシステムは、X線ビームを生成するための28〜32kVpの範囲の電圧で、モリブデンターゲットを有するX線源を含むことができる。この構成は、モリブデン、18keVのKαを中心とするエネルギースペクトルを持つ多色の発散X線ビームを生成する。軟部組織を画像化するため、吸収に基づくX線システムは、これらの比較的低エネルギーのX線に設定される。18keVのX線が軟部組織で大きなコントラストを提供する一方、1つの欠点は、低エネルギーX線に関連した患者の吸収線量の増大である。従来の幾つかのDEI乳房イメージング研究は、従来のマンモグラフィーシステムに匹敵するX線エネルギーに基づいていた。これらの技術は、X線吸収を測定する際の潜在的有用性を持っているにも関わらず、屈折及び超小角散乱の付加的なDEIコントラスト機構の利点に十分に対応していない。
【0208】
見かけ吸収及び屈折画像の生成を含む、DEIに適用できる幾つかの画像処理技術が存在する。他の発展的DEIベースの画像処理方法はMIRであり、それはコントラスト成分のより正確で詳細な分離である。MIRを用いた予備的研究は、この方法が低い光子カウントレベルで動作可能であり、従来のX線源との潜在的な使用を有することを実証している。DEIを扱う幾つかのグループはDEI法をCTに適用する過程にあり、それはDEIの追加的コントラスト機構をCTの空間分解能と組み合わせる。この研究が平面イメージングに焦点を当てる一方で、平面イメージングのためのシステムパラメータはシンクロトロン及び非シンクロトロンベースのCT用途の両方にも適用することができる。
【0209】
本書で記述される実験は、標準的なマンモグラフィファントムの画像化の間の取得パラメータの注意深い変化を伴う。研究のために取得された画像は、どんな二次的画像処理もなく、各システム構成で取得された生画像データを表す。専門家の助手は、理想的なDEIマンモグラフィー設備の仕様に役立つための全ての実験条件下で、既知のファントム特性(phantom feature)の可視性を採点した。
【0210】
工学及び医学の両方の観点から、最も重要なシステムパラメータの1つはビームエネルギーである。DEIのエネルギーの関数として構造可視化がどの程度変化するかの理解を得るため、次のエネルギー、18keV、25keV、30keV、及び40keV、が研究のために選ばれた。入射シンクロトロンビームからの所望のエネルギーの選択は、所望の波長のための適切なブラッグ角へモノクロメータを調整することで達成された。
【0211】
診断に有益な情報を得るため、アナライザー結晶のロッキングカーブを横切る3つの代表的な点が解析の間に使用されてもよい。各ビームのエネルギー/結晶反射の組み合わせのため、-1/2ダーウィン幅(DW)、ピーク、及び+1/2DW位置が選択された。対応するシンクロトロンX線写真が比較のために得られた。
【0212】
乳房組織及び乳癌の構造的特徴をシミュレートするため、標準化された乳房イメージングファントムがこの実験で使用された。初期の試みは実際の乳房組織標本を含んだが、生体組織と悪性の特徴の主観的な評価とに存在する変動は、この研究のためのファントムの利用をより適切なものとした。本書に記述される主題に従ったDEIシステムが複数の機構からコントラストを得ることができるため、それぞれの影響を受けやすい特徴を有するファントムが選択された。この実験では、表面に機械加工された直径と深さが異なる一連の円形の窪み(indention)を有するルーサイトから作られた、コントラスト-詳細(CD)ファントム(カナダ、オンタリオ州、トロントのサニーブルック アンド ウイミンズ リサーチインスチチュートから入手可能)が選択された。直径と深さの変化は、コントラストと空間分解能を評価するのに有用な勾配(gradient)を生成する。深い窪みは減衰の差異を増大させ、その結果としてコントラストを増大させる。窪みの円形の端は、X線の屈折を助ける界面を提供する。合計可視体積(visible volume)を決定するため、既知の半径と高さで各シリンダーの体積が計算された。
【0213】
図40A-40C及び図41A-41Cは、それぞれ18keV及び30keVで取得された典型的なCDファントムの画像である。特に、図40A-40Cはそれぞれ、18keVシンクロトロンX線写真の画像、+1/2ダーウィン幅(DW)のアナライザー結晶位置で取得された18keVのDEI画像、及びピークアナライザー結晶位置で取得された18keVのDEI画像を示す。DEIの例で使用される結晶反射はブラッグ[333]反射である。
【0214】
図41A-41Cはそれぞれ、30keVシンクロトロンX線写真の画像、-1/2ダーウィン幅(DW)のアナライザー結晶位置で取得された30keVのDEI画像、及びピークアナライザー結晶位置で取得された30keVのDEI画像を示す。DEIの例で使用される結晶反射はブラッグ[333]反射である。18keVシンクロトロンX線写真と比較して、30keVシンクロトロンX線写真ではコントラストが低下する。
【0215】
第2のファントムが実験のために使用された。第2のファントムは、デジタルマンモグラフィーシステムを試験するための国際デジタルマンモグラフィー開発グループ(IDMDG)に合わせて設計された。特に、このファントムは、デジタルマンモグラフィーイメージングスクリーニング試験(DMIST)のために開発され、MISTY(サニーブルック アンド ウイミンズ リサーチインスチチュートから入手可能)として知られている。MISTYファントムは、乳房撮影画像の品質を定量化するために使用できる種々の領域を含む。構造的にファントムは、システムのコントラスト及び分解能を定量化するために使用でき、幾つかの高分解能の細部を含む水銀-増感メッキを有するポリメチルメタクリレート(PMMA)から構成されている。
【0216】
実験で使用するためにMISTYファントムから3つの領域が選択された。図42A-42Cは、30keV、ブラッグ[333]、ピークアナライザー結晶位置で取得されたMISTYファントムの3つの異なる領域の画像である。特に、図42Aは、一連の線対(line pair)クラスタの画像であり、各クラスタは4つの線を含み、線間の距離はそれらがもはや解像できなくなるまで減少する。
【0217】
図42Bは一連の星クラスタの画像であり、それらは乳房組織の石灰化をシミュレートする。それぞれ6つの星を含む7つのクラスタの列は、消失点(missing point)に1つの星を持つ星の各クラスタで使用された。分解能とコントラストが減少すると、星はもはや見えなくなり、斑点(speck)としてのみ見える。この実験で使用するため、石灰化のシミュレーションは反転された。
【0218】
図42Cは、段状くさび(stepwedge)の画像である。段状くさびは吸収コントラストを測定するために使用される。段状くさびは6つの明確に定義された界面を含む。
【0219】
この実験では、DEI画像はフジBAS2500画像版リーダー、及びフジHR V画像版を使用して取得された。上記したように、画像版は、有機バインダーと混合された輝尽性蛍光体で被覆された、約0.5mm厚の柔軟なプラスチック板である。さらに、全ての画像は、50μmの画素サイズと16ビットの階調レベルを用いて走査された。画像取得のために使用される表面線量はエネルギーに基づいて変化したが、各エネルギー設定でX線写真及びDEI画像の両方に同じ表面線量が使用された。30keVで取得された画像に3.0mGyの表面線量が使用され、25keVで取得された画像に1.5mGyの表面線量が使用され、40keVで取得された画像に0.2mGyの表面線量が使用された。
【0220】
CD及びMISTYファントム画像結果を解析するため、2人の研究助手が実験に参加した。殆どのDEI構成の間の劇的な差異と組み合わせて標準化されたファントムの使用は、2人の助手が統計的検出力の適切なレベルを達成するために十分であることを示した。1人の熟練した乳房画像者(imager)及び1人の医療物理学者が研究に参加した。視覚環境を最適化するため、助手の研究は、500 cd/m2のピーク輝度を有する5メガピクセルのCRTモニターを使用した特別に設計された暗室で行われた。助手は各画像のグレースケールを調整することを許容され、可視化を最大にするために拡大鏡を提供された。
【0221】
病変の全周囲を視覚化する能力はマンモグラフィーで診断的意義を有し、その例は、明らかに限局性の(circumscribed)境界線を持つ良性線維腺腫と、棘状突起の有無に関わらずあまり明確に定義されない境界線を持つ潜在的に悪性の塊との間の差である。さらに、石灰化及びその形態の可視化は、基礎病理の識見を提供することができる。臨床マンモグラフィーへの診断的適用を反映する質問は助手研究計画に不可欠であり、必要に応じて明らかに異なる信頼レベルに課題を分離した。
【0222】
どの要因が最も高い性能を与えるかを決定する中で、助手によって使用するために8つの性能測定が設立された。
1.CDファントム内で完全な境界線が見られる円の体積;
2.CDファントム内で少なくとも半分の境界線が目に見える円の体積;
3.CDファントム内で境界線の任意の部分が目に見える円の体積;
4.MISTYファントム内で観測された線対グループの数;
5.MISTYファントムの石灰化シミュレーションで目に見える星の数;
6.MISTYファントムの石灰化シミュレーションで全ての点が見られる最後のクラスタ番号;
7.MISTYファントムの石灰化シミュレーションで見られる斑点の数;及び
8.MISTYファントムの段状くさびで明確に定義されたセクション(section)の数。
【0223】
画像内のデータの体系化を容易にするため、対応する遂行課題と共に各ファントムのグラフィック表現が、画像を採点する各助手に提供された。CDファントムについて、助手は、画像の各列及び行にどの円が見えたかを示すよう求められた。MISTYファントム線対の領域を評価するため、助手は4つの全てのラインが明確に見られる最も高いクラスタを決定することを求められた。石灰化シミュレーションの採点は、見られる星の総数を最初にカウントし、その後、あり得る29点の中から各クラスタで見られる星点(star point)の数を数えることを含む。さらに、助手は、見えることができる斑点の総数をカウントすることを求められた。関心ある段状くさび領域について、助手は6つの界面のうちどれがはっきり見えたかを印を付けるよう求められた。画像提示の順番は、採点する各助手に無作為に選ばれた。
【0224】
分散の複数方法(multi-way)解析が、8つの全ての結果に合わせて使用された。解析に含まれるものは、ビームエネルギー、結晶反射、カーブ位置、及び助手の間の全ての相互作用であった。正規性(normality)の仮定の妥当性を確保するため、ボックス-コックス変換が結果の一部に適用された。全ての要因を比較したときに複数の結果が考慮されたので、有意水準として0.05/8(0.00625)を設定することにより、全体のタイプIエラーを調整するためにボンフェローニ(Bonferroni)テストが使用された。この有意水準で、全ての要因の組み合わせのうち性能の違いを比較するため、我々はテューキー(Tukey)検定が使用された。
【0225】
CDファントムの結果
周囲の任意の部分が目に見える円の体積について、2人の助手の間(p値= 0.0185)及び異なるエネルギー準位の間(p値= 0.0176)で有意な差はなかった。しかしながら、結晶反射及びロッキングカーブ位置の両方は、それらの相互作用と同様に、有意である(3つ全てのp値<0.001)。テューキー検定解析は、ブラッグ[333]反射でより多い体積が見られることを示す。X線写真は目に見える体積が最も小さく、-1/2 DW、+1/2 DW及びピークアナライザー結晶位置の間でほとんど違いがない。
【0226】
結果が周囲の少なくとも半分が目に見える円の体積である場合、全ての要因の主な影響はp値が0.001未満で有意である。テューキー検定解析は、25keVが最も良く機能することを示し、25keV及び30keVの両方は、18keV及び40keVより大きな目に見える体積を生じさせる。データは、結晶反射及びアナライザー位置の間に有意な(p値<0.001)相互作用があることを示す。ブラッグ[333]反射及びピークアナライザー位置の組み合わせは最も大きな目に見える体積を生じさせるが、それがブラッグ[333]、+1/2 DW及びブラッグ[333]、-1/2DW位置の組み合わせよりも良く機能することを支持するのに十分な証拠はない。シンクロトロンX線写真は最も小さい目に見える体積を生じさせる。
【0227】
全周囲が見られる円の体積について、助手、ビームエネルギー及びロッキングカーブ位置の唯一の主な影響は、それぞれp値が0.001未満、0.0027に等しい、及び0.001未満であり有意である。テューキー検定解析は、ビームエネルギーの全てのレベルの間の差異を見い出せなかったが、データの傾向は、25keVが30keVよりも良く機能し、後者は40keV及び18keVの双方より良く機能したことを示す。他の機能測定と同様に、シンクロトロンX線写真は最も小さい目に見える体積を生じさせた。
【0228】
MISTYファントム
線対グループの解析は、ビームエネルギー、結晶反射、及びアナライザーロッキングカーブ位置の主な影響は全てのp値が0.001未満であり有意であることを示す。さらに、結晶反射及びロッキングカーブ位置の間に有意な相互作用(p値<0.001)があるように見える。データは、ピークアナライザー位置での18keV、ブラッグ[333]、又はピーク若しくは+1/2DWアナライザー位置での25keV、ブラッグ[333]の組み合わせが良く機能することを示す。線対領域で最も良い性能は、+1/2DWのロッキングカーブ位置で、30keV、ブラッグ[333]である。
【0229】
高度に平行化されたX線ビームを持つシステムで、X線を発散するために設計されたファントムを使用して生成される星クラスタ画像の多くに、アーティファクトが存在した。データは、完全性を期すため、及び従来のファントムの全体的な構造設計が可視化にどんな影響を与えるかを示すために提示される。目に見える星の数の解析は、p値が0.0026で、ビームエネルギーのみが有意であることを示す。試験結果は、25keVが最も良い選択であるが、30keVから有意な差がないことを示す。どの要因も、全ての点が見られる最後のクラスタ番号について有意でなかった。見られる斑点の数からのデータは、ブラッグ[111]又は[333]反射で30keVと同様に、18keV及びブラッグ[111]、18keV及びブラッグ[333]が最も良い組み合わせであることを示す。
【0230】
段状くさび領域について、ビームエネルギーの異なるレベル、及び異なるロッキングカーブ位置の間で有意な差があるように見える。データは、18keV、25keV、及び30keVのビームエネルギーはほぼ同等であるが、40keVで取得された画像よりも全てが良く機能することを示す。ロッキングカーブ位置についての性能の結果は、-1/2DW、ピーク、及び+1/2DWの位置がシンクロトロンX線写真の性能と同等で等しいことを示す。
【0231】
全ての性能測定解析は、-1/2DW又はピークアナライザー結晶位置におけるブラッグ[333]反射を使用し、最適なDEIシステム構成は、25又は30keVであることを示す。表4-6は、助手研究データの概要を示す。特に、表4はX線ビームエネルギーに関して助手研究データの概要を示す。下記の表5は、結晶反射に関して助手研究データの概要を示す。以下の表6は、ロッキングカーブ位置に応じてグループ化された助手研究データの概要を示す。
【0232】
【表4】
【0233】
表4:X線ビームエネルギーに関する助手研究データの概要
【0234】
【表5】
【0235】
表5:結晶反射に関する助手研究データの概要
【0236】
【表6】
【0237】
表6:ロッキングカーブ位置に応じてグループ化された助手研究データの概要
【0238】
ビームエネルギーに関し、双方のファントムについての助手研究データは、18keVより大きいエネルギーがDEIに適することを示す。吸収コントラストが1/E3で減少するため、従来のX線システムについて軟部組織の吸収コントラストは、エネルギーの増加によって急激に減少する。助手研究の結果は、より高いビームエネルギーについて、吸収からの情報の損失はDEIに固有のコントラストからの情報によって補償されることを示す。主に屈折である構造についてDEI感度は1/Eに比例し、40keV又はそれを超えるエネルギーで軟部組織の画像取得の可能性を伴う。消衰に寄与する散乱光子の除去はエネルギーに無関係であるが、散乱強度はエネルギーが増加するにつれて減少する。乳房組織内で最も重要な診断構造が重要な屈折及び散乱特性を有すると考えられているので、より高いエネルギーでのイメージングは、吸収から離れて屈折及び超小角散乱コントラストに焦点を当てることにより促進されるであろう。
【0239】
ブラッグ[333]反射について可視化の増大は、特により高い性能レベルで、CDファントムに顕著である。ブラッグ[333]反射は性能測定の大部分で優れたが、この反射及びブラッグ [111]の間の違いは予想されるよりも小さい。このことは、流束の工学的考察を考えるとブラッグ[111]反射が許容できることを示すかもしれないが、よりもっともらしい説明は、ファントムの設計はX線の屈折及び消衰に基づくコントラスト機構を測定するためには不適当であったということである。
【0240】
同じ推論は、ピークアナライザー位置が性能測定の大部分で優れていたアナライザー結晶の位置に当て嵌めることができる。吸収コントラスト及び分解能は、偏位しない(undeviated)光子の強度が最大の時に最高となり、それはアナライザーロッキングカーブのピークである。ロッキングカーブのテールに光子を散乱させる構造が除去され、追加のコントラストをもたらす点で、消衰効果はピーク位置で役割を果たす。これらのファントムはX線吸収に基づく撮像システムを試験するために設計されているので、このタイプの研究では、ピーク位置が最高に機能することが期待される。屈折コントラストはロッキングカーブのピークには存在せず、さらに-1/2DW及び+1/2DWと一般に同等又はその性能低下は、高屈折率であるファントム構造がないことを示す。
【0241】
この研究は、個々のシステム構成要素が最も有用である画像処理方法に及ぼす影響でなく、画像品質に及ぼす影響を見抜くために設計された。全撮像パラメータ空間を狭くする最初のステップとして、見かけ吸収及び屈折画像を作成するための各構成での生データの解析は、DEI画像ペアの処理よりこのように適切である。
【0242】
最も有望な成果の一つは、潜在的に40keVと同じ程度に高い高エネルギーX線を使用する能力である。より高いエネルギーでの光電効果の急速な減少は、患者に吸収された光子数の減少に対応し、放射線量の劇的な減少をもたらす。検出器に到達する同じ数の光子(107ph/cm2)について、5cmの水を通した表面吸収線量は18keVで3.3mGy、30keVで0.045mGy、及び40keVで0.016mGyである。これは、18keVに比べて30keVで線量で73倍の減少、及び40keVで206倍の減少を表す。吸収は組織の厚さと共に増加するので、線量のこの減少は厚い標本についてさらに大きくなる。
【0243】
複数画像X線撮影を用いた乳癌コントラスト機構の解析
従来のマンモグラフィーと比較した場合、DEI及びMIR技術を使用した乳房イメージング研究は可視化の改善を実証してきた。特に、乳癌線維の基本的なコントラスト機構を解析するDEI技術を用いた研究は、X線の消衰は画像コントラストに大きな役割を果たすことを示す。さらに、乳癌棘状突起の研究は、対応するX線写真と比較してDEIピーク画像で8から33倍の増加を示す。対象の超小角散乱を表す画像の追加により、MIRは、これらの特性のより完全で厳密な評価を可能とする。
【0244】
この研究は、X線源の使用可能なエネルギー範囲を広げ、さらにX線吸収の必要性を減少又は排除することに取り組んだ。軟部組織における吸収コントラストが光子エネルギーの増加とともに急激に減少するため、乳房組織の基本的なX線コントラスト機構は、重要な非シンクロトロンベースのDEIシステムとなる。高エネルギーX線を利用することは、検出器に到達する入射光子数を増やすことによってDEIシステムの効率を向上させ、さらにX線吸収の減少は、表面及び吸収された放射線量の両方を低減する。しかしながら、吸収が乳房組織の可視化のための主要なコントラスト機構である場合、あらゆるDEIシステムは、従来のX線システムと同様の範囲で低エネルギーX線を使用するであろう。この実験は、18keV及び60keVでシステム機能を比較する。
【0245】
エネルギー依存の吸収、屈折、及び乳房組織の散乱を評価するために、特性を持つ4つの乳房組織標本が複数のX線エネルギーで撮像され、さらに個々のコントラスト成分を分離するためにMIRを用いて処理された。研究で使用されたエネルギー範囲が従来のモリブデン及びタングステンX線管で使用されるエネルギーに基づいて決定され、それぞれ18keV及び60keVであった。各MIRコントラスト機構についてコントラストの低下に密接に従うため、25keV、30keV、40keV及び50keVのビームエネルギーも選択された。
【0246】
一つの実験では、NSLS X-15Aビームラインでのイメージングのため、3つの乳癌標本が選択された。NSLSでのX-15Aビームラインを用いてMIR画像の組及びシンクロトロンX線写真が取得された。画像取得のため、120mmx80mmの視野と30ミクロンの画素サイズでフォトニックサイエンスVHR-150X線カメラが使用された。
【0247】
X線の屈折及び散乱に関する光電効果の急速な減少は、一定の表面線量の維持を困難にさせる。例えば、X線吸収に対して最適化された表面線量を使用して18keVで取得された画像は、60keV等のより高いビームエネルギーでは、光子吸収の減少により大幅に露出オーバーになる。40keVのMIRイメージングに使用されるエネルギー範囲の中央にモノクロメータを調整すると共に、平均照射線量が検出器のダイナミックレンジの約半分になるように表面線量を選択することにより、平衡(balance)が見いだされた。MIR並びに18keV、25keV、30keV、及び40keVでのX線撮影イメージングのため、350mradの表面線量が選ばれた。50keV及び60keVで使用される表面線量は、50keVで20mradかつ60keVで4mradの表面線量の偏向磁石(bending magnet)X線源からのエネルギーで、光子流束が急激に減少することによって減少した。アナライザー結晶ロッキングカーブの半値全幅(FWHM)は、エネルギーの増加に伴って減少する。屈折コントラストはロッキングカーブのショルダーに特徴的であり、各エネルギーでの試料パラメータ(sampling parameter)のわずかな変更を必要とする。各MIR組のため、ロッキングカーブの幅に関係なく21個の画像が取得され、さらにFWHMの減少に合わせて調整するため、より高いエネルギーでは角度範囲及びθ増分が低減された。図43は、エネルギーに対する、乳房の吸収、非干渉散乱、及びコヒーレント散乱の寄与を示すグラフである。
【0248】
NSLSでのイメージングのため、4つの乳房標本が選択された。18keV及び25keVで取得されたMIR画像は、ピークから-5から5マイクロラジアンの範囲で取得され、0.5マイクロラジアン毎にサンプリングされた。30keV及び40keVで0.4マイクロラジアンのθ増分でのMIRイメージングについて、サンプリング範囲が±4マイクロラジアンに減少させられた。50keVで0.3マイクロラジアンのθ増分での±3マイクロラジアンの角度範囲、及び60keVでMIRイメージングについて0.2マイクロラジアンのθ増分での±2マイクロラジアンの角度範囲が使用された。各エネルギー及び線量で、対応するシンクロトロンX線写真が取得された。さらに、ゼネラルエレクトリックSenographe 2000D(コネチカット州、フェアフィールドのゼネラルエレクトリック社から入手可能)を使用して、乳房標本が画像化された。平均腺線量、サンプルを通した分布(distribution through)、及び画像を生成するために必要な流束を決定するため、各エネルギーで1つの画像に使用される線量が熱ルミネセンス検出器を用いて測定された。
【0249】
従来技術と比較するために、図44は従来のX線撮影システム上に画像化された例示的な乳房標本の画像である。この標本は、100ミクロンの画素分解能でGE Senographe 2000Dを使用して空気中で画像化された。図45A-45Fは、本書に記述される主題に従う技術を使用し、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV、及び60keVのビームエネルギーでの同一サンプルのシンクロトロンX線写真である。これらの画像は、NSLSでのイメージングに使用されるものに匹敵する圧縮レベルで空気中で取得された。
【0250】
図46A-46Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV、及び60keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房標本の画像である。特に、図46Aは、0.5マイクロラジアンのθ増分で±5マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、18keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Bは、0.5マイクロラジアンのθ増分で±5マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、25keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Cは、0.4マイクロラジアンのθ増分で±4マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、30keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Dは、0.4マイクロラジアンのθ増分で±4マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、40keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Eは、0.3マイクロラジアンのθ増分で±3マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、50keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。図46Fは、0.2マイクロラジアンのθ増分で±2マイクロラジアンのサンプリングパラメータで、60keVでMIRを用いた乳房標本の画像である。
【0251】
平均腺線量と分布は、熱ルミネセンス検出器を用いて測定された。図47A-47Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV、及び60keVのビームエネルギーについての平均腺線量と分布を示すグラフである。
【0252】
図48は、本書に記述された主題に従うMIRのために使用されるエネルギーに対するX線ビームエネルギーを示すグラフである。各エネルギーで得られた線量測定データを使用して、DEIの組の各X線写真及び成分を取得するために使用される流速が計算され、図に示されている。
【0253】
上記の実験結果は、MIRを使用した乳房イメージングがエネルギーの広い範囲にわたっていかに機能するかを示す。吸収のみを考慮すると、40keV又はそれより上のエネルギーでほとんど吸収コントラストがなく、エネルギーの増加に伴って軟部組織のコントラストが劇的に低下するのが期待できるであろう。特に軟部組織の吸収コントラストが実質的にゼロである60keVで、各エネルギーでのシンクロトロンX線写真はコントラストの低下を示す。
【0254】
モリブデン源を用いた従来のX線管に基づく画像取得時間は10,000秒にまでなることがあり、臨床イメージングに必要な時間ウィンドウをはるかに越える。モリブデンX線管は、熱放散を制限すると共に単位時間当り生成可能な流束に重要な工学的限界を置く固定アノードを持つ。タングステンX線管は、大きな回転アノードを持ち、はるかに高い電圧とアンペア数に耐えることができる。タングステンX線管は、流束及び熱放散に多くの利点を提供するが、タングステンにより生成される特性X線は、軟部組織における吸収コントラストを生成するには高すぎる。しかしながら、この実験は、X線吸収の必要なしに屈折及び散乱のMIR固有のコントラスト機構が優れた軟部組織コントラストを生成できることを実証する。
【0255】
より高いエネルギーでの光子の減少は線量分布曲線で明らかであり、そこには18keV及び60keVでの分布の間に顕著な違いがある。18keVで、組織の吸収による流束の大きな低下がある。この流束の低下は、50keV及び60keVで発生する光子の最も高い透過(transmission)を伴い、エネルギーの増加とともに減少する。吸収の減少は効率の向上につながり、それは図48に示された流束の測定で明らかである。
【0256】
実験についてのフィッティングアルゴリズムを較正するため、既知の直径及び屈折率の複数のナイロンモノフィラメント繊維及びルーサイト棒が解析のために選択された。乳癌棘状突起の直径及び形状を近似するため、より小さいナイロン繊維が選ばれた。40keVのX線ビームエネルギー及び350mradの表面線量を使用して、各標本及びそれに対応するシンクロトロンX線写真が取得された。MIRについて、0.4マイクロラジアンのθ増分で21個のイメージを生成するため、±4マイクロラジアンの角度分布が選ばれた。これらの画像は、X線吸収、屈折、及び散乱から生成されたコントラストを表す画像を生成するためのMIR法を用いて処理された。
【0257】
2次元画像から3次元情報を抽出することは、特に不均一な対象について重要な課題となっている。乳癌棘状突起は事実上円筒形であり、その材料特性に関して製造される近似を可能にする。乳癌棘状突起に関する情報を抽出するため、解析方法を設計し調整することが最初に必要である。適切なMIRベースの解析方法は、ナイロン及びルーサイト繊維と乳癌棘状突起の両方の直径と屈折率を決定するために使用されることができる。これらの2つの重要な特性と共に、繊維及び棘状突起の他の多くの特徴(aspect)が解析及びモデル化されることができる。MIR画像に3つのコントラスト成分が存在する一方で、屈折画像は、臨床イメージングシステムのためにたぶん最も重要であろう。イメージングのために高エネルギーX線が利用される場合、屈折画像と比較して吸収画像は劣るであろう。ロッキングカーブのテールで流束が大幅に減少するために、散乱画像もまた屈折画像に2次的な役割を置く。複数の乳癌標本にわたって屈折率を計算及び比較することは、屈折コントラストを生成する材料特性が安定し(consistent)、異常でないという保証をある程度提供することができる。
【0258】
直径の異なるナイロン及びルーサイト繊維を用いて、方法の調整が実行された。-4から4マイクロラジアンのサンプリング範囲と0.4マイクロラジアンのθ増分で、40keVでMIRを用い、200ミクロン、360ミクロン、及び560ミクロンの直径を有するナイロン繊維が画像化された。これらの線維は、臨床的に重要な棘状突起のおおよその形状と直径を近似するように選ばれた。13000ミクロン及び19,000ミクロンの直径を持つ大きなルーサイト棒は、直径が大きい対象に対するアルゴリズムを評価するために選ばれた。図49は、MIRを使用した繊維径の評価を示す画像である。ナイロン繊維は吸収が弱く、そのためDEI及びMIRコントラストを評価するための完璧なファントム材料である。図49のファントムは、直径が減少するナイロン繊維を使用してMIR及びDEIのコントラストと分解能を測定するために設計された。直径が小さくなるほど、イメージングに挑むことがより難しくなる。
【0259】
ナイロン繊維及び乳癌棘状突起のような円筒形の対象は、図50に示すような特徴的な屈折プロファイルを示し、それはナイロン繊維の屈折プロファイルを示すグラフである。屈折は棒の端で最も高く、中央でゼロになる。対象が円筒形であると仮定すると、直径を推定するためにMIR又はDEI屈折画像から屈折の特徴(refraction signature)を使用することができる。既知の直径の円筒で、繊維又は原線維(fibril)の屈折率が推定されることができる。
【0260】
以下の表7及び8は、ナイロン及びルーサイトの直径並びに屈折率の情報を含む。
【0261】
【表7】
【0262】
表7:MIR直径較正
【0263】
【表8】
【0264】
表8:MIR屈折率較正
【0265】
図51は、MIRの屈折フィッティング直径較正を示すグラフである。既知の次元の線維が画像化され、屈折率及び直径を計算するためにアルゴリズムが使用された。乳癌に見られる棘状突起がナイロン繊維に似た性質を持つという理由で、ナイロンファントムがシステムの較正のために使用された。
【0266】
この実験では、ナイロン及びルーサイト繊維の直径及び屈折率を抽出するために使用したのと同じ方法が、3つの別個の乳癌標本内の関心ある5つの領域に適用された。図52A-52Cは、乳癌標本のMIR屈折画像である。下記の表9は、計算された棘形成の直径及び屈折率を示す。
【0267】
表9:線維の屈折率
【0268】
【表9】
【0269】
図53は、本書に記述された主題に従うDEIシステムによって得られる、限局性乳癌塊(mass)と棘状突起のMIRの組の画像である。
【0270】
図54A-54Eは、従来のX線写真と比較して、DEIを用いた線維の可視化を示す画像である。特に、図54Aは、浸潤性小葉癌を含む乳房組織標本の従来のX線写真の画像である。1cmの白いボックス内の線維が腫瘍の表面から延びる腫瘍のフィンガー(finger)に対応することを確認するため、サンプルは組織学的評価を受ける。図54Bは、図54Aに1cmの白いボックスで指定された領域の拡大図を示す従来のX線写真の画像である。図54C-54Eは、図54Aに1cmの白いボックスで指定された領域の拡大図を示すDEI画像である。これらの拡大図において、対象の構造がほとんど見えない従来のレントゲン写真より、DEI画像の方が組織コントラストが高いことは明らかである。
【0271】
改良されたDEIのコントラストを定量化するため、図54B-54Eの縦の白い線で示される画像プロファイルに沿って線維のコントラスト対策(measures)が計算された。計算は、組織サンプルの他の領域について繰り返された。統計解析は、従来のX線写真よりDEI屈折画像が8〜14倍のコントラストを持つ一方で、ピーク画像はX線写真に比べて12〜33倍のコントラストを持つことを示した。
【0272】
X線の屈折及び散乱イメージングの基礎となる物理学は、特に吸収をベースとするX線イメージングの100年以上の歴史と比べると、まだ研究の初期段階である。生体組織に特有の不均一性を考えると、ほぼ円筒形の乳癌棘状突起の解析は、複数の組織標本と比べるよりも確実に診断的に有用な特徴を提供する。
【0273】
空気中で画像化される複数の標準化された均質なシリンダーの使用は、屈折ベースのフィッティングアルゴリズムの正確な較正を可能にする。生体組織を解析するためのこのアルゴリズムの使用は、生体組織の不均一な性質に起因して計算にエラーをもたらす可能性があるが、乳房組織及び診断的応用の性質は、絶対計算でこれらのエラーの重要性を低減する。
【0274】
従来のマンモグラフィーの基本的な問題は、脂肪組織の高い吸収バックグラウンドに浸ている低コントラストの対象を視覚化するのが困難であることである。腫瘍性病変は時間とともに大きさと密度が増大し、最終的にバックグラウンドを超えて十分に大きく高密度になり、従来の方法を使用して見えるようになる。乳癌の死亡率は病変の大きさや進行に直接関連するので、悪性病変の発生と検出の間の時間を短縮することは、全ての新しい乳房の画像診断法の目標である。
【0275】
DEI及びMIRは、複数のX線コントラスト機構の違いを利用することにより従来のX線撮影を改良し、良性と悪性の構造を区別する助けとなる。脂肪組織は、小さな悪性病変と同様のX線減衰を持つかもしれないが、それらは同じ屈折の特徴を持っていない。脂肪組織は屈折及び散乱コントラストをほとんど持っていないが、乳癌病変の小さな円筒形棘状突起は、大きな屈折及び散乱の特徴を持っている。40keVで、軟部組織における吸収コントラストは僅かであり、関心ある病変とバックグラウンド組織との間の全体的なコントラスト勾配をさらに増加させる。
【0276】
棘状突起についての屈折コントラストのさらなる増大はそれらの形状に由来し、それはX線屈折にとって理想的である。円筒の対象に入射する平行X線ビームについて、屈折コントラストは、円柱の上部と下部で最大となり、中央で屈折コントラストが最小になる。シリンダーの直径が減少する時、吸収コントラストのレベルがバックグラウンドに消えた後であっても、対象の形状に起因して屈折コントラストが残ることができる。複数の乳癌標本にわたって得られる屈折率の値は、材料特性が類似すると共に、最も類似した癌標本でコントラストの増大が観察されることを示す。
【0277】
乳房組織の可視化の増強をもたらす基本的なコントラスト機構を決定することは、非シンクロトロンベースのDEI/MIRシステムの設計において最も重要なステップである。本研究は、屈折及び散乱のMIRに固有なコントラスト機構が構造の可視化に大きな役割を果たし、さらに病変の可視化のためのX線吸収への依存を減らすことを示す。X線吸収の減少は患者に吸収される線量の低減につながり、それは従来のマンモグラフィーのために必要な比較的高い線量を考えると大きな利点である。
【0278】
これらの実験におけるナイロンの使用は、将来のモデル化及びシミュレーション実験のために使用できる可能性を示す。同様な形状、直径、及び屈折率で、ナイロンモノフィラメントは、これらの診断上重要な構造が高いコントラストを生成する理由についての洞察を提供し得る。
【0279】
コンピュータシミュレーション
DEI構造を試験するため、コンピュータシミュレーションソフトウェアが開発された。開発されたソフトウェアはソース(source)、結晶、対象、及び検出器の特定の配置及び仕様に基づき、患者の線量を計算し、かつDEIシステムを通したX線流束量を監視するために追跡する光学光線を使用する。結晶光学が望ましくない方向に伝わるX線を排除するので、DEIを克服する(hurdle)主な実現可能性は、検出器面に到達するまで存続する十分な数の光子を得ることである。
【0280】
1つの構造についてのシミュレーションのシステムパラメータ仕様及び結果の一覧が、以下のそれぞれ表10及び11に提供される。
【0281】
【表10】
【0282】
表10:システムパラメータ仕様
【0283】
【表11】
*全ての減衰が組織へのエネルギー付与につながると仮定した最悪の場合の見積もり
【0284】
表11:システムパラメータの結果
【0285】
図55A-55Cは、本書に記述される主題の一実施形態に従うコンピュータシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレートされた、一般に5500で示されるDEIシステムの概略図である。特に、図55A-55Cは、DEIシステムの斜視図、側面図、及び上面図である。図55A-55Cに関し、X線ビームは、線源を有するX線管XTによって生成される。1つのシミュレーションでは、X線管XTは、シーメンスDURA(登録商標)アクロンB X線管(ペンシルバニア州マルバーン市のシーメンスメディカルソリューションズUSA社から入手可能)としてシミュレートされた。シーメンスX線管はタングステンターゲットを含み、従って、それは59.3keVでKα1X線を生成する。従って、X線管XTは59.3keVでKα1X線を生成するためにシミュレートされた。ビームが患者に衝突する前に結晶光学系での損失を克服するために必要な流束を達成するため、強力な管がDEIに必要であろう。シーメンスX線管は、熱を放散する回転アノードを有し、高出力(60kW)で管が動作することを可能とする。シミュレートされたDEIシステムは、管上の線源ポート(port)を使用する。
【0286】
図56は、本書に記述された主題の実施形態に従うDEIモノクロメータ結晶5602に結合される対数らせん集束要素5600の斜視図である。図56を参照すると、要素5600は、光子流束を増加させるように構成される屈曲した(bent)回折結晶であることができる。要素5600はX線源の大きなターゲット領域を提供し、それは高出力を実現し、薄い仮想線源を形成するために放出された放射線を集束可能とする。仮想線源は小型で非常に明るいものとすることができる。さらに、屈曲した回折結晶5600は、対数らせんの一部である表面を持つ。
【0287】
図57は、火線(caustic)でのソースと共に、対数らせん要素の集束効果を示す斜視図である。表面形状は、ブラッグ回折要素を集束素子とさせる。対数らせん要素は以下の次の特徴を持つ:(1)それは明るさが最大となる固定された取り出し角度(take-off angle)で大きなターゲット領域から放出される光を集束し、(2)それはビームを単色にし;及び(3)それは高輝度の仮想線源を形成するために放射線を集束する。図58A及び58Bは、実験的研究のための特性評価システムのそれぞれ平面図及び立面図である。図58A及び58Bを参照すると、図は高輝度の仮想線源を形成するために放射線を集束する対数らせん要素を示す。
【0288】
DEIシステム5500は、前(pre)モノクロメータ、モノクロメータ、及びアナライザーの3つの結晶を含む。全ての3つの結晶はシリコンであり、[440]反射系列(reflection order)のために調整される。この方向に沿ってスライスすることで、大きな結晶が製造されることができる。このような結晶は容易に入手可能である。
【0289】
DEIシステム5500のシミュレーションにおける走査プロトコルは、検出器Dについて6秒に設定された。一例では、検出器Dは、画像ライン毎に一回読み出される1ライン(single line)の装置であることができる。別の例では、検出器Dは、X線ビームを横切る対象Oの動きに同期して走査される全領域(full-field)装置であることができる。1ライン検出器又は全領域検出器のいずれかで、画像データの1ライン又はストリップ(strip)が一度に取得される。
【0290】
別の例では、検出器Dは直接X線-電荷変換検出器(direct X-ray-to-charge conversion detector)であってもよく、それは空間分解能を大きく損なうことなく、より高いエネルギーでの効率を達成するための厚い吸収体の??使用を許容する。図59は、一般に5900で指定される直接X線-電荷変換検出器の模式図である。検出器5900は、例えばタングステンX線管によって生成されるもののように、高いX線エネルギーで良好な空間分解能と阻止能を提供することができる。高いZと密度を持つ検出器の材料は、高エネルギー性能を向上させる例えばCZT、IbI2、又はHgI2などが使用されることができる。
【0291】
シミュレーション結果は、検出器での流束量が画素当り約600光子であり、従来のマンモグラムのそれの約1/3〜1/9であることを示した。従って、シミュレーション結果は、シミュレートされたMIRシステムのノイズレベルが従来のマンモグラムより約1.7〜3倍になることを示す。しかしながら低ノイズレベルでは、屈折コントラストは従来のマンモグラムに比べて8〜33倍高くなることができる。
【0292】
さらに、シミュレートされたDEIシステムについて、平均腺線量は約0.004mGyであり、それは5cm圧縮での従来のマンモグラムに比べて約250〜750倍低い。10cm圧縮では、MIRでの吸収線量は約0.019mGyであり、それは同じ圧縮で従来のマンモグラムで得られたものより数千倍低い。
【0293】
典型的な撮像結果
上述したように、シンクロトロン及びX線管は、本書に記述された主題に従うDEI画像を生成するためのX線源の2つの適したタイプである。比較のため、図60A及び60Bは、本書に記述される主題に従うシンクロトロンベースのシステム及びX線管ベースのシステムによって、同じナイロン線維(fibril)ファントムからそれぞれ生成される画像である。図60Aの画像は60keVでシンクロトロンによって生成されたX線ビームであり、4.0mradの線量で+0.4マイクロラジアンのアナライザーロッキングカーブ位置で取得された。図60Bの画像は、0.4mradの線量でかつ160kV及び6.2mAの管設定で、+0.4マイクロラジアンのアナライザーロッキングカーブ位置で生成された。画像化されたナイロン繊維は560ミクロン(上部繊維)、360ミクロン(中央部繊維)、及び200ミクロン(下部繊維)の直径を有する。ナイロン繊維は非常に吸収が弱く、従ってこれらの画像は、このような吸収が弱い材料を表示するための屈折イメージングを使用する利点の例を示す。特に、例えばこれらの結果は、本書に記述された主題に従い160kVの電圧を用いたX線管で、軟部組織の画像が得られることを示すことに注意することが重要である。
【0294】
図61は、本書に記述された主題に従う技術を用い、図44及び図45A-45Fに示されるのと同一の乳房標本のシンクロトロン屈折画像である。この例では、ビームエネルギーは60keVで、4mrad以線量であった。
【0295】
比較のため、図62A及び62Bは、本書に記述された主題に従うそれぞれX線管及びシンクロトロンを使用して得られた、乳房組織標本の同じ領域の画像である。図62Aに示された画像は、0.4mradの線量でX線管を用いて取得された。図62Bに示された画像は、+0.4マイクロラジアンのアナライザー位置でかつ350mradの線量で、40keVのシンクロトロンを用いて取得された。乳房組織の標本は、4.5cmの水に浸漬された。
【0296】
図63は、本書に記述された主題に従うX線管を用いて得られた、乳癌の乳房切除標本の画像である。画像は0.4mradの線量で、7.0cmの完全な厚さの、最小限に圧縮された乳房を通して取得された。適切な画像を得るため、約0.5mrad未満又はそれに等しいものが他の対象又は組織に適用されることができる。この画像は、従来のマンモグラムにおけるより数百倍未満の線量で、完全な厚みの乳房組織の診断上の特徴を示す。高い厚みの軟部組織対象の画像を得ることができるため、本書に記述される主題は有利である。従来のシンクロトロンベースの装置は、そのような画像を得ることができなかった。さらに、例えば本書に記述される主題は、例えば軟部組織対象などの対象に非常に低線量を適用しながら、このように高品質の画像を得るために使用されることができる。高品質の画像を得るため、本書に記述される主題は従来のX線撮影よりも高いエネルギーを有するビームを使用することができ、従って本書に記述される主題は、患者の安全性の懸念のために低い線量が使用されることを要求することができる。
【0297】
典型的な応用
本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、種々の医学的応用に適用されることができる。上述のように、本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、乳房イメージングに適用されることができる。さらに、例えば本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、軟骨イメージング、神経画像、心臓イメージング、血管イメージング(コントラストを有し、又は有さず)、肺疾患(肺)イメージング、骨イメージング、泌尿生殖器イメージング、胃腸イメージング、一般に軟部組織イメージング、造血系イメージング、及び内分泌系イメージングに適用されることができる。画像時間及び線量に加え、高エネルギーX線を使用する大きな進歩は、画像化可能な対象の厚さである。例えば乳房イメージングなどの用途では、記述されたシステムは、臨床的に現実的な撮像時間で完全厚みの乳房組織のイメージングを可能とする。頭部、頸部、四肢、腹部、骨盤などの身体の他の部位について、同じことを言うことができる。X線吸収の制限がなく高エネルギーX線を持つDEIの利用は、X線の透過能を飛躍的に向上させる。軟部組織について、対象に入射するX線光子の少ない部分のみが吸収され、それはX線管から放出されて検出器に到達する光子の効率を大幅に増大させる。
【0298】
肺イメージングに関して、本書に記述されたDEI技術は、肺に優れたコントラストを生成し、肺炎などの肺の状態を診断するために頻繁に使用されることができる。肺の液貯留(Fluid collection)は、DEIで容易に検出可能な著しい密度勾配を生成する。密度勾配、周囲の組織の特性、及び正常な肺組織と腫瘍組織の間の幾何学的な違いは大きくなることがあり、良好なコントラストを作り出す。さらに、本書に記述されたDEI技術は、肺癌スクリーニング及び診断に適用されることができる。
【0299】
骨イメージングに関して、本書に記述されたDEI技術は、一般に骨の優れた画像を生成することができる。DEIの高い屈折及び消衰コントラストは、骨の中の骨折及び病変を可視化するために特に有用である。
【0300】
さらに、本書に記述された主題に従うシステム及び方法は、様々な検査及び工業用途に適用されることができる。例えば、システム及び方法は、家禽検査などの食肉検査に適用されることができる。例えば、システム及び方法は、スクリーニング及び/又は除去を必要とする肉における鋭い骨、羽、及び他の低コントラストの対象を見るために使用されることができる。本書に記述されるシステム及び方法は、そのようなスクリーニングのために適用されることができる。
【0301】
本書に記述されるシステム及び方法は、製造検査にも適用されることができる。例えば、システム及び方法は、航空機生産のような溶接の検査に使用されることができる。本書に記述されるDEI技術は、ジェットタービンブレードなどの重く摩滅を受ける主要な構造部分を検査するために使用されることができる。さらに、例えば本書に記述されるシステム及び方法は、回路基板及び他の電子機器の検査に使用されることができる。他の例では、本書に記述されるシステム及び方法は、スチールベルト及びトレッドの完全性の検査などのタイヤ検査に使用されることができる。
【0302】
さらに、本書に記述される主題に従うシステム及び方法は、安全スクリーニングの目的で使用されることができる。例えば、システム及び方法は、空港や港でのスクリーニングに用いられことができる。本書に記述されるDEI技術は、プラスチックナイフ、従来のX線で検出することが困難な複合材料の銃、及びプラスチック爆弾などのプラスチック及び低吸収コントラスト対象のスクリーニングに使用されることができる。空港の手荷物検査などの大きな対象のイメージングについては、X線管と検出器の間の距離が増大してビームの発散を許容する。より大きな扇ビームに対応するため、より大きなアナライザー結晶が必要となる。
【0303】
記述された装置は、コンピュータ断層撮影イメージングシステム、又はDEI-CTに変更することができる機構を提供する。第三世代の従来のコンピュータ断層撮影システムに似た. DEI-CTシステムは、同じ装置であるが中心点の周りを回転するために変更された装置を使用する。その代わりに、システムが固定され、さらに対象、サンプル、又は患者がビーム内で回転されることができる。この構造のDEI-CTシステムは、X線吸収、屈折、及び超小角散乱除去(消衰)を表す画像を生成するが、これらは三次元に変換されるであろう。
【0304】
本書に開示される主題の範囲を逸脱しない限り、本書に開示される主題の各種の詳細を変更してよいことは理解されるであろう。さらに、上記の記述は説明を目的としたものに過ぎず、本書に記述された主題が以下に説明する請求項によって定義される限り、限定を目的としたものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の画像を検出するための方法であって:
(a)非シンクロトロンX線源から多色エネルギー分布を持つ第1の発散X線ビームを生成し、;
(b)それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2の発散X線ビームが生成されるように、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを、前記第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置し、;
(c)対象を通って前記第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、前記第2のX線ビームの経路に前記対象を配置し、;
(d)前記透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶アレイ内の対応するアナライザー結晶に入射角で向け、:及び
(e)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから前記対象の画像を検出することを含む方法。
【請求項2】
前記第1のX線ビームは特性線Kα1及びKα2を含み、かつ2又はそれ以上のモノクロメータを、前記第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置することは、特性線Kα1及びKα2を含む狭いエネルギーバンドをそれぞれ有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するように2又はそれ以上のモノクロメータを配置することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のX線ビームの生成は、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数の第1のX線ビームを生成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2又はそれ以上のモノクロメータを配置することは、前記2又はそれ以上のモノクロメータを1つの防振マウント上に配置することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のX線ビームの経路に対象を配置することは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動することを含み;及び
前記対象の画像の検出は、前記第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となる第2の円弧状経路を通って前記検出器を移動することにより、前記アナライザー結晶から回折された複数のビームを検出器で受けることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムであって:
(a)多色エネルギー分布を持つ第1の発散X線ビームを生成するよう構成される非シンクロトロンX線源;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、前記第1のX線ビームを直接遮断すると共に、対象を透過するための所定のエネルギー準位を有する複数の第2の発散X線ビームを生成するよう所定の位置に配置される2又はそれ以上のモノクロメータ;
(c)複数のアナライザー結晶であって、それぞれ前記アナライザー結晶の入射角で透過X線ビームを遮断するよう配置されるアナライザー結晶;及び
(d)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器、
を含むシステム。
【請求項7】
前記第1のX線ビームは特性線Kα1及びKα2を含み、かつ前記2又はそれ以上のモノクロメータは、特性線Kα1及びKα2を含む狭いエネルギーバンドをそれぞれ有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう配置される請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記X線源は、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数の第1のX線ビームを生成するよう構成される請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記2又はそれ以上のモノクロメータは、1つの防振マウント上に配置される請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
画像化される前記対象がその上に配置される走査ステージを含み、前記走査ステージは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動させるように移動可能であり;
第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となるように、前記画像検出器は前記第2の円弧状経路を通って移動可能である請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
対象の画像を検出するための方法であって:
(a)非シンクロトロンX線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することにより、多色エネルギー分布を持つ第1の発散X線ビームを生成し、;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを、前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2の発散X線ビームが生成される所定の位置に配置し、;
(c)対象を通って前記第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、前記第2のX線ビームの経路に対象を配置し、;
(d)前記透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶の対応するアレイ内に入射角で向け、:及び
(e)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから前記対象の画像を検出することを含む方法。
【請求項12】
前記第1のX線ビームは特性線Kα1及びKα2を含み、かつ2又はそれ以上のモノクロメータを所定の位置に配置することは、特性線Kα1及びKα2を含む狭いエネルギーバンドをそれぞれ有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するように2又はそれ以上のモノクロメータを配置することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
2又はそれ以上のモノクロメータを配置することは、前記2又はそれ以上のモノクロメータを1つの防振マウント上に配置することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の発散X線ビームの経路に対象を配置することは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動することを含み;及び
前記対象の画像の検出は、前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となる角速度で第2の円弧状経路を通って前記検出器を移動することにより、前記アナライザー結晶から回折された複数のビームを検出器で受けることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムであって:
(a)X線管のX線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することにより、多色エネルギー分布を持つ第1の発散X線ビームを生成するよう構成されるX線管;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を有する2又はそれ以上のモノクロメータであって、各モノクロメータは、対象を透過するためのそれぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2の発散X線ビームが生成されるよう、前記第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置され;
(c)複数のアナライザー結晶であって、それぞれ前記アナライザー結晶の入射角で透過X線ビームを遮断するよう配置されるアナライザー結晶;及び
(d)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器、
を含むシステム。
【請求項16】
前記第1のX線ビームは特性線Kα1及びKα2を含み、かつ前記2又はそれ以上のモノクロメータは、特性線Kα1及びKα2を含む狭いエネルギーバンドをそれぞれ有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう配置される請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記2又はそれ以上のモノクロメータは、1つの防振マウント上に配置される請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
画像化される前記対象がその上に配置される走査ステージを含み、前記走査ステージは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動させるように移動可能であり;
第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となるように、前記画像検出器は前記第2の円弧状経路を通って移動可能である請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
対象の画像を検出するための方法であって:
(a)非シンクロトロンX線源からつ第1のX線ビームを生成し、前記第1のX線ビームは第1及び第2の特性輝線を有し;
(b)前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ前記第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを所定の位置に配置し、;
(c)前記第2のX線ビームのそれぞれの前記第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつ前記第2のX線ビームのそれぞれの前記第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させ;
(d)対象を介して前記第2のX線ビームの遮断されていない特性線を透過させ、かつ前記対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方の経路に前記対象を配置し、;
(e)前記透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶の対応するアレイ内に入射角で向け、:及び
(f)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから前記対象の画像を検出することを含む方法。
【請求項20】
2又はそれ以上のモノクロメータを配置することは、前記2又はそれ以上のモノクロメータを1つの防振マウント上に配置することを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方の経路に対象を配置することは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動することを含み;及び
前記対象の画像の検出は、前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となる角速度で第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動することにより、前記アナライザー結晶から回折された複数のビームを検出器で受けることを含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムであって:
(a)第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成される非シンクロトロンX線源;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ前記第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう、それぞれのモノクロメータが所定の位置に配置される2又はそれ以上のモノクロメータ;
(c)前記第2のX線ビームのそれぞれの前記第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつ対象を通して透過させるために前記第2のX線ビームのそれぞれの前記第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させるために調整可能なスリットを有するコリメータ;
(d)複数のアナライザー結晶であって、それぞれ前記アナライザー結晶の入射角で透過X線ビームを遮断するよう配置されるアナライザー結晶;及び
(e)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器、
を含むシステム。
【請求項23】
前記2又はそれ以上のモノクロメータは、1つの防振マウント上に配置される請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
画像化される前記対象がその上に配置される走査ステージを含み、前記走査ステージは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動させるように移動可能であり;
第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となるように、前記画像検出器は前記第2の円弧状経路を通って移動可能である請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
対象の画像を検出するための方法であって:
(a)非シンクロトロンX線源から第1のX線ビームを生成し、前記第1のX線ビームは第1及び第2の特性輝線を有し;
(b)前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ前記第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む複数のモノクロメータを所定の位置に配置し、;
(c)対象を介して前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線を透過させるため、前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線の経路に前記対象を配置し、かつ前記対象から複数の透過X線ビームを放射させ;
(d)前記透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶の対応するアレイ内に入射角で向け、:及び
(e)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから前記対象の画像を検出することを含む方法。
【請求項26】
複数のモノクロメータを配置することは、前記複数のモノクロメータを1つの防振マウント上に配置することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線の経路に対象を配置することは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動することを含み;及び
前記対象の画像の検出は、前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となる角速度で第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動することにより、前記アナライザー結晶から回折された複数のビームを検出器で受けることを含む請求項25に記載の方法。
【請求項28】
対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムであって:
(a)第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成される非シンクロトロンX線源;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ対象を介して透過するための前記第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう、それぞれのモノクロメータが所定の位置に配置される複数のモノクロメータ;
(c)複数のアナライザー結晶であって、それぞれ前記アナライザー結晶の入射角で透過X線ビームを遮断するよう配置されるアナライザー結晶;及び
(d)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器、
を含むシステム。
【請求項29】
前記複数のモノクロメータは、1つの防振マウント上に配置される請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
画像化される前記対象がその上に配置される走査ステージを含み、前記走査ステージは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動させるように移動可能であり;
第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となるように、前記画像検出器は前記第2の円弧状経路を通って移動可能である請求項28に記載のシステム。
【請求項1】
対象の画像を検出するための方法であって:
(a)非シンクロトロンX線源から多色エネルギー分布を持つ第1の発散X線ビームを生成し、;
(b)それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2の発散X線ビームが生成されるように、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを、前記第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置し、;
(c)対象を通って前記第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、前記第2のX線ビームの経路に前記対象を配置し、;
(d)前記透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶アレイ内の対応するアナライザー結晶に入射角で向け、:及び
(e)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから前記対象の画像を検出することを含む方法。
【請求項2】
前記第1のX線ビームは特性線Kα1及びKα2を含み、かつ2又はそれ以上のモノクロメータを、前記第1のX線ビームを直接遮断する所定の位置に配置することは、特性線Kα1及びKα2を含む狭いエネルギーバンドをそれぞれ有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するように2又はそれ以上のモノクロメータを配置することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のX線ビームの生成は、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数の第1のX線ビームを生成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2又はそれ以上のモノクロメータを配置することは、前記2又はそれ以上のモノクロメータを1つの防振マウント上に配置することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のX線ビームの経路に対象を配置することは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動することを含み;及び
前記対象の画像の検出は、前記第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となる第2の円弧状経路を通って前記検出器を移動することにより、前記アナライザー結晶から回折された複数のビームを検出器で受けることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムであって:
(a)多色エネルギー分布を持つ第1の発散X線ビームを生成するよう構成される非シンクロトロンX線源;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、前記第1のX線ビームを直接遮断すると共に、対象を透過するための所定のエネルギー準位を有する複数の第2の発散X線ビームを生成するよう所定の位置に配置される2又はそれ以上のモノクロメータ;
(c)複数のアナライザー結晶であって、それぞれ前記アナライザー結晶の入射角で透過X線ビームを遮断するよう配置されるアナライザー結晶;及び
(d)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器、
を含むシステム。
【請求項7】
前記第1のX線ビームは特性線Kα1及びKα2を含み、かつ前記2又はそれ以上のモノクロメータは、特性線Kα1及びKα2を含む狭いエネルギーバンドをそれぞれ有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう配置される請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記X線源は、X線点源から異なる方向に扇形に散開する複数の第1のX線ビームを生成するよう構成される請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記2又はそれ以上のモノクロメータは、1つの防振マウント上に配置される請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
画像化される前記対象がその上に配置される走査ステージを含み、前記走査ステージは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動させるように移動可能であり;
第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となるように、前記画像検出器は前記第2の円弧状経路を通って移動可能である請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
対象の画像を検出するための方法であって:
(a)非シンクロトロンX線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することにより、多色エネルギー分布を持つ第1の発散X線ビームを生成し、;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを、前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2の発散X線ビームが生成される所定の位置に配置し、;
(c)対象を通って前記第2のX線ビームを透過させると共に該対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、前記第2のX線ビームの経路に対象を配置し、;
(d)前記透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶の対応するアレイ内に入射角で向け、:及び
(e)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから前記対象の画像を検出することを含む方法。
【請求項12】
前記第1のX線ビームは特性線Kα1及びKα2を含み、かつ2又はそれ以上のモノクロメータを所定の位置に配置することは、特性線Kα1及びKα2を含む狭いエネルギーバンドをそれぞれ有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するように2又はそれ以上のモノクロメータを配置することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
2又はそれ以上のモノクロメータを配置することは、前記2又はそれ以上のモノクロメータを1つの防振マウント上に配置することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の発散X線ビームの経路に対象を配置することは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動することを含み;及び
前記対象の画像の検出は、前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となる角速度で第2の円弧状経路を通って前記検出器を移動することにより、前記アナライザー結晶から回折された複数のビームを検出器で受けることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムであって:
(a)X線管のX線点源から異なる方向に扇形に散開する複数のX線ビームを生成することにより、多色エネルギー分布を持つ第1の発散X線ビームを生成するよう構成されるX線管;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を有する2又はそれ以上のモノクロメータであって、各モノクロメータは、対象を透過するためのそれぞれ所定のエネルギー準位を有する複数の第2の発散X線ビームが生成されるよう、前記第1のX線ビームを遮断する所定の位置に配置され;
(c)複数のアナライザー結晶であって、それぞれ前記アナライザー結晶の入射角で透過X線ビームを遮断するよう配置されるアナライザー結晶;及び
(d)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器、
を含むシステム。
【請求項16】
前記第1のX線ビームは特性線Kα1及びKα2を含み、かつ前記2又はそれ以上のモノクロメータは、特性線Kα1及びKα2を含む狭いエネルギーバンドをそれぞれ有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう配置される請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記2又はそれ以上のモノクロメータは、1つの防振マウント上に配置される請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
画像化される前記対象がその上に配置される走査ステージを含み、前記走査ステージは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動させるように移動可能であり;
第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となるように、前記画像検出器は前記第2の円弧状経路を通って移動可能である請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
対象の画像を検出するための方法であって:
(a)非シンクロトロンX線源からつ第1のX線ビームを生成し、前記第1のX線ビームは第1及び第2の特性輝線を有し;
(b)前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ前記第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む2又はそれ以上のモノクロメータを所定の位置に配置し、;
(c)前記第2のX線ビームのそれぞれの前記第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつ前記第2のX線ビームのそれぞれの前記第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させ;
(d)対象を介して前記第2のX線ビームの遮断されていない特性線を透過させ、かつ前記対象から複数の透過X線ビームを放射させるため、前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方の経路に前記対象を配置し、;
(e)前記透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶の対応するアレイ内に入射角で向け、:及び
(f)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから前記対象の画像を検出することを含む方法。
【請求項20】
2又はそれ以上のモノクロメータを配置することは、前記2又はそれ以上のモノクロメータを1つの防振マウント上に配置することを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方の経路に対象を配置することは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動することを含み;及び
前記対象の画像の検出は、前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となる角速度で第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動することにより、前記アナライザー結晶から回折された複数のビームを検出器で受けることを含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムであって:
(a)第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成される非シンクロトロンX線源;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ前記第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう、それぞれのモノクロメータが所定の位置に配置される2又はそれ以上のモノクロメータ;
(c)前記第2のX線ビームのそれぞれの前記第1及び第2の特性輝線のいずれかを選択的に遮断し、かつ対象を通して透過させるために前記第2のX線ビームのそれぞれの前記第1及び第2の特性輝線の遮断されていない方を通過させるために調整可能なスリットを有するコリメータ;
(d)複数のアナライザー結晶であって、それぞれ前記アナライザー結晶の入射角で透過X線ビームを遮断するよう配置されるアナライザー結晶;及び
(e)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器、
を含むシステム。
【請求項23】
前記2又はそれ以上のモノクロメータは、1つの防振マウント上に配置される請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
画像化される前記対象がその上に配置される走査ステージを含み、前記走査ステージは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動させるように移動可能であり;
第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となるように、前記画像検出器は前記第2の円弧状経路を通って移動可能である請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
対象の画像を検出するための方法であって:
(a)非シンクロトロンX線源から第1のX線ビームを生成し、前記第1のX線ビームは第1及び第2の特性輝線を有し;
(b)前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ前記第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう、それぞれ1又はそれ以上の結晶を含む複数のモノクロメータを所定の位置に配置し、;
(c)対象を介して前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線を透過させるため、前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線の経路に前記対象を配置し、かつ前記対象から複数の透過X線ビームを放射させ;
(d)前記透過X線ビームのそれぞれを、アナライザー結晶の対応するアレイ内に入射角で向け、:及び
(e)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから前記対象の画像を検出することを含む方法。
【請求項26】
複数のモノクロメータを配置することは、前記複数のモノクロメータを1つの防振マウント上に配置することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のX線ビームの前記第1及び第2の特性輝線の経路に対象を配置することは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動することを含み;及び
前記対象の画像の検出は、前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となる角速度で第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動することにより、前記アナライザー結晶から回折された複数のビームを検出器で受けることを含む請求項25に記載の方法。
【請求項28】
対象の画像を検出するためのマルチビーム回折増強イメージングシステムであって:
(a)第1及び第2の特性輝線を持つ第1のX線ビームを生成するよう構成される非シンクロトロンX線源;
(b)それぞれ1又はそれ以上の結晶を含み、前記第1のX線ビームを遮断すると共に、それぞれ対象を介して透過するための前記第1及び第2の特性輝線を有する複数の第2のX線ビームを選択して生成するよう、それぞれのモノクロメータが所定の位置に配置される複数のモノクロメータ;
(c)複数のアナライザー結晶であって、それぞれ前記アナライザー結晶の入射角で透過X線ビームを遮断するよう配置されるアナライザー結晶;及び
(d)前記アナライザー結晶から回折される複数のビームから対象の画像を検出するよう構成される画像検出器、
を含むシステム。
【請求項29】
前記複数のモノクロメータは、1つの防振マウント上に配置される請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
画像化される前記対象がその上に配置される走査ステージを含み、前記走査ステージは、第1の円弧状経路を通って前記対象を移動させるように移動可能であり;
第2の円弧状経路を通って前記検出器が移動する角速度が前記第1の円弧状経路を通って前記対象が移動する角速度と実質的に同一となるように、前記画像検出器は前記第2の円弧状経路を通って移動可能である請求項28に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図34】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図43】
【図44】
【図46A】
【図46B】
【図46C】
【図46D】
【図46E】
【図46F】
【図47A】
【図47B】
【図47C】
【図47D】
【図47E】
【図47F】
【図48】
【図50】
【図52A】
【図52B】
【図52C】
【図54A】
【図54B】
【図54C】
【図54D】
【図54E】
【図55A】
【図55B】
【図55C】
【図56】
【図57】
【図58A】
【図58B】
【図59】
【図60A】
【図60B】
【図61】
【図62A】
【図62B】
【図63】
【図64】
【図65】
【図23】
【図33】
【図35】
【図40】
【図41】
【図42】
【図45】
【図49】
【図51】
【図53】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図34】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図43】
【図44】
【図46A】
【図46B】
【図46C】
【図46D】
【図46E】
【図46F】
【図47A】
【図47B】
【図47C】
【図47D】
【図47E】
【図47F】
【図48】
【図50】
【図52A】
【図52B】
【図52C】
【図54A】
【図54B】
【図54C】
【図54D】
【図54E】
【図55A】
【図55B】
【図55C】
【図56】
【図57】
【図58A】
【図58B】
【図59】
【図60A】
【図60B】
【図61】
【図62A】
【図62B】
【図63】
【図64】
【図65】
【図23】
【図33】
【図35】
【図40】
【図41】
【図42】
【図45】
【図49】
【図51】
【図53】
【公表番号】特表2012−510320(P2012−510320A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538730(P2011−538730)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/066239
【国際公開番号】WO2010/065532
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【出願人】(503447519)ブルックヘブン サイエンス アソシエーツ (1)
【出願人】(511132052)ネクストレイ インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】NEXTRAY INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/066239
【国際公開番号】WO2010/065532
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【出願人】(503447519)ブルックヘブン サイエンス アソシエーツ (1)
【出願人】(511132052)ネクストレイ インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】NEXTRAY INC.
【Fターム(参考)】
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