多色化粧料用プレス装置
【課題】多色化粧料の表面全体を有効に面一化できるプレス装置を提供する。
【解決手段】プレスヘッド２ａ〜２ｃは、化粧皿内５に充填される固形化粧料６ａ〜６ｃのそれぞれの表面に形状的に対応したプレス面を有する。油圧シリンダ３ａ〜３ｃは、プレスヘッド２ａ〜２ｃを個別に昇降させる。油圧シリンダ３ａ〜３ｃによるプレス圧やプレス量は、固形化粧料６ａ〜６ｃの処方に応じて個別に最適化されている。
【解決手段】プレスヘッド２ａ〜２ｃは、化粧皿内５に充填される固形化粧料６ａ〜６ｃのそれぞれの表面に形状的に対応したプレス面を有する。油圧シリンダ３ａ〜３ｃは、プレスヘッド２ａ〜２ｃを個別に昇降させる。油圧シリンダ３ａ〜３ｃによるプレス圧やプレス量は、固形化粧料６ａ〜６ｃの処方に応じて個別に最適化されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、多色化粧料用プレス装置に係り、特に、互いに独立して駆動可能なマルチプレスヘッド構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、色の組み合わせによる面白さを演出するために、色調の異なる複数の固形化粧料を化粧皿内に並べた多色化粧料が知られている。特許文献１には、化粧皿内にストライプ状に充填されたスラリー状の多色化粧料を、化粧皿の開口全体の形状に対応した面形状のプレスヘッドを用いて、一括でプレスする手法が開示されている。
【０００３】
また、化粧料とは異なる技術分野に関するものであるが、特許文献２には、複数の異なるプレス加工が必要な部品（ワーク）の加工を１台の加工機で同時に行うことができるプレス加工機が開示されている。このプレス加工機は、互いに独立して駆動可能な複数の油圧シリンダを有し、油圧シリンダのロッド突出し量および加圧力の少なくとも一方が金型毎に独立して制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００７−０６３１７０号公報
【特許文献２】特開平８−１６８８９７号公報
【特許文献３】特開２００３−３３４６９９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
ところで、特許文献３にも指摘されているように、固形化粧料のプレス工程では、化粧料内部に残存する空気溜まりの影響が懸念される。化粧料粉末体内に空気が溜まっていると、金型内に充填された粉末体の粒子密度が疎になる。このような状態で粉末体のプレスを行った場合、内部に残存する空気によって、プレス後に再膨張してしまう。特に、マット系およびパールリッチ系といったように、処方が異なる複数の化粧料を組み合わせた多色化粧料を単一のプレスヘッドを用いて一括でプレスした場合、化粧料毎に異なる膨張量が表面の非連続な起伏となって露出するので、外観不良が大きな問題となる。
【０００６】
そこで、本発明の目的は、多色化粧料の表面全体を有効に面一化できるプレス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
かかる課題を解決すべく、本発明は、少なくとも第１および第２のプレスヘッドと、少なくとも第１および第２の駆動源とを有する多色化粧料用プレス装置を提供する。第１のプレスヘッドは、化粧皿内に充填される第１の化粧料の表面に形状的に対応したプレス面を有する。第２のプレスヘッドは、第１のプレスヘッドと隣接しており、化粧皿内に第１の化粧料と隣接して充填される第２の化粧料の表面に形状的に対応したプレス面を有し、かつ、第１のプレスヘッドとは独立して昇降自在である。第１の駆動源は、第１のプレスヘッドを昇降させる。第２の駆動源は、第２のプレスヘッドを昇降させる。
【０００８】
ここで、本発明において、第１のプレスヘッドおよび第２のプレスヘッドは、互いに離間しており、これによって生じた隙間に、第１のプレスヘッドおよび第２のプレスヘッドの水平方向の変位を規制する規制部材を介在させてもよい。これにより、色の境界に仕切りが存在する多色化粧料のプレスにおいて、プレスヘッドの横ずれを防止できる。また、これに代えて、第１のプレスヘッドおよび第２のプレスヘッドは、互いの側面が接触しており、かつ、一方の側面が他方の側面を摺動しながら昇降することが好ましい。これにより、色の境界に仕切りが存在しない多色化粧料のプレスにおいて、プレスヘッドの横ずれを防止できる。
【０００９】
さらに、本発明において、プレスヘッドと駆動源との間を、水平方向に延在するリンク機構を介して接続してもよい。このリンク機構は、プレスヘッドおよび駆動源よりなるセットのすべてに設けられている必要はなく、少なくとも一つのセットにおいて設けられていれば足りる。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、互いに独立して昇降自在な複数のプレスヘッドを設け、これらを駆動源によって個別に昇降させる。化粧料の処方に応じた最適なプレス圧やプレス量を化粧料毎に個別に設定することによって、各化粧料の再膨張の違いを吸収できるので、多色化粧料の表面全体を有効に面一化できる。
【図面の簡単な説明】
【００１１】
【図１】本実施形態に係る多色化粧料用プレス装置の概略的な外観斜視図
【図２】仕切り板によって区分された多色化粧料のプレス工程の説明図
【図３】仕切り板によって区分された多色化粧料のプレス工程の説明図
【図４】仕切り板によって区分されていない多色化粧料のプレス工程の説明図
【図５】リンク機構の説明図
【発明を実施するための形態】
【００１２】
図１は、本実施形態に係る多色化粧料用プレス装置の概略的な外観斜視図である。このプレス装置１は、横一列に並んだ３つのプレス系Ａ〜Ｃを有する。これらのプレス系Ａ〜Ｃは、互いに独立して動作し、プレス圧やプレス量を個別に設定することができる。プレス系Ａ〜Ｃのそれぞれは、独立して昇降自在なプレスヘッド２と、プレスヘッド２を昇降させる駆動源としての油圧シリンダ３と、プレスヘッド２と油圧シリンダ３との間を接続する昇降棒４とを主体に構成されている。なお、駆動源としては、油圧シリンダ３以外にも、エアシリンダ等を含めて各種のアクチュエータを用いることができる。
【００１３】
プレス装置１は、その直下に配置された化粧皿５内に充填された多色化粧料６をプレスする。プレスの対象となる多色固形化粧料６としては、例えば、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった粉末固形メイクアップ化粧料が挙げられる。多色化粧料６を構成するそれぞれの固形化粧料６ａ〜６ｃは、乾式化粧料および湿式化粧料のどちらであってもよい。乾式化粧料は、化粧料の粉体を打型して固化させものである。また、湿式化粧料は、スラリー（化粧料の流動体）中の揮発成分を吸収・乾燥させて固化したものである。スラリーとしては、化粧料基材と、エタノール、水、流動パラフィン、イソパラフィン、イソプロピルアルコール等の揮発性溶剤とを混合したものが用いられる。湿式化粧料は、乾式化粧料と比べて粒子密度が疎であることに起因して、しっとりサラサラにした使用感が得られるという特性がある。
【００１４】
固形化粧料６ａ〜６ｃの色調は、色の組み合わせによる演出効果を与えるべく、互いに異なっている。本明細書では、「異なる色調」という用語を、両者の違いをユーザが視覚的に認識できれば足りる程度の意味合いで用いている。したがって、明度、彩度、色相の違いはもとより、同一色であっても、パール等を加えたものと、そうでないものといったように質感が異なるものも、ここでいう「異なる色調」の範疇に含まれる。なお、同図は、３色の直線状のストライプを例示しているが、より多くの色調の固形化粧料を用いてもよいし、より複雑な模様にしてもよい。また、これらの固形化粧料６ａ〜６ｃは、異なる処方によって生成されている。本実施形態では、一例として、マット系化粧料と、パールリッチ系化粧料とを組み合わせている。一般に、マット系化粧料よりもパールリッチ系化粧料の方が、化粧料内部の空気溜まりに起因したプレス時の膨張量が大きいことが知られている。
【００１５】
３つのプレスヘッド２ａ〜２ｃは、互いに隣り合って並んでいる。プレスヘッド全体におけるプレス面の形状は、化粧皿５の開口形状にほぼ対応している。また、各プレスヘッド２ａ〜２ｃのプレス面の形状は、それがプレスしようとするいずれかの固形化粧料６ａ〜６ｃの表面形状に対応している。図１に例示したストライプ状の多色化粧料６の場合、左側のプレスヘッド２ａのプレス面は、左側の固形化粧料６ａのみをプレスすべく、この固形化粧料６ａの表面と形状的に対応している。また、中央のプレスヘッド２ｂのプレス面は、中央の固形化粧料６ｂのみをプレスすべく、この固形化粧料６ｂの表面と形状的に対応している。さらに、右側のプレスヘッド２ｃのプレス面は、右側の固形化粧料６ｃのみをプレスすべく、この固形化粧料６ｃの表面と形状的に対応している。プレスヘッド２ａ〜２ｃの個数やプレス面の形状は、固形化粧料６ａ〜６ｃの数や表面形状に応じて決定される。ただし、固形化粧料６ａ〜６ｃと、プレスヘッド２ａ〜２ｃとを１対１に対応付ける必要は必ずしもなく、プレスの条件を共通化できるものについては同一のプレスヘッドを用いて共通化してもよい。例えば、固形化粧料６ａ，６ｂは処方は異なるものの、同じプレス条件でプレスしても構わないならば、プレスヘッド２ａ，２ｂを一体化した形状のものを用いて、同一のプレス系にて処理してもよい。
【００１６】
図２および図３は、仕切り板によって区分された多色化粧料６のプレス工程の説明図である。このプレス工程に先立ち、収容された化粧皿５を含む金型７内の充填空間には、処方が異なる乾式または湿式の固形化粧料６ａ〜６ｃが充填される。また、化粧皿５には仕切り板が一体形成されているので、充填された固形化粧料６ａ〜６ｃは、仕切り板によって互いに区分された状態になる。このような状態で多色化粧料６が充填された化粧皿５が、プレス装置１の直下にセットされる。
【００１７】
図２に示すように、仕切りあり多色化粧料６のプレスでは、プレスヘッド２ａ〜２ｃの下降時における仕切り板との干渉を避けるために、少なくとも仕切り板の厚さ分だけ、隣り合ったプレスヘッド２ａ〜２ｃを離間させる必要がある。この場合、昇降棒４ａ〜４ｃの太さ、強度、延在長等にもよっては、昇降棒４ａ〜４ｃの開放端に取り付けられたプレスヘッド２ａ〜２ｃの横ずれ、すなわち水平方向の変位が生じ易くなる。横ずれを防止するためには、プレスヘッド２ａ〜２ｃの離間によって生じる隙間も含めて、プレスヘッド２ａ〜２ｃの周囲全体に規制部材８を配置することが好ましい。規制部材８は、厚みのある金属製の部材であり、プレスヘッド２ａ〜２ｃの配置位置に対応して複数の貫通孔が設けられており、それぞれの貫通孔に個々のプレスヘッド２ａ〜２ｃが挿入される。
【００１８】
図３に示すように、直下にセットされた化粧皿５に対して、プレスヘッド２ａ〜２ｃを油圧シリンダ３ａ〜３ｃによって個別に下降させる。プレス圧やプレス量といったプレス条件は、固形化粧料６ａ〜６ｃの処方に応じて個別に最適化されており、その条件に従って油圧シリンダ３ａ〜３ｃが制御される。これにより、一回のプレスで、固形化粧料６ａ〜６ｃ毎に最適なプレスを同時に実現できる。例えば、プレス後の再膨張量が比較的小さいマット系化粧料に関しては、プレス圧を低くしたり、プレス量を小さくする一方、プレス後の再膨張量が比較的大きいマット系化粧料に関しては、プレス圧を高くしたり、プレス量を大きくするといった如くである。
【００１９】
本実施形態に係るプレス装置１は、以上のような仕切りあり多色化粧料６のプレスのみならず、仕切りなし多色化粧料６のプレス用途としても用いることができる。図４は、仕切り板によって区分されていない多色化粧料６のプレス工程の説明図である。仕切りなし多色化のプレスでは、仕切り板自体が存在しないので、本来的にそれとの干渉を考慮する必要はない。この場合、上述した横ずれ防止の観点から、隣接したプレスヘッド２ａ〜２ｃの側面を離間させることなく互いに接触させることが好ましい。プレスヘッド２ａ〜２ｃの昇降過程では、一方のプレスヘッド（例えば２ａ）の側面が他方のプレスヘッド（例えば２ｂ）の側面を摺動しながら昇降する。これにより、一方が他方の横ずれを規制する役割を担うので、プレスヘッド２ａ〜２ｃ全体の横ずれを有効に防止できる。
【００２０】
また、あるプレス系におけるプレスヘッド２と油圧シリンダ３との間は、昇降棒４で直結してもよいが、図５に示すように、横方向に延在するリンク機構９を介在させてもよい。同図の場合、油圧シリンダ３ａに接続された昇降棒４ａは、プレスヘッド２ａに接続された取付棒１０ａに対して横方向にオフセットしており、両者４ａ，１０ａはリンク機構９によって接続されている。同様に、油圧シリンダ３ｃに接続された昇降棒４ｃは、プレスヘッド２ｃに接続された取付棒１０ｃに対して横方向にオフセットしており、両者４ｃ，１０ｃはリンク機構９によって接続されている。リンク機構９としては、テコを応用したものが周知であり、本実施形態でもそれを用いることができる。化粧皿５の開口面積に対して油圧シリンダ３の径が大きすぎて、小型な化粧皿５の直上に油圧シリンダ３ａ〜３ｃを配置できない場合であっても、このようなリンク機構９を用いることで、それぞれの油圧シリンダ３ａ〜３ｃの駆動力を化粧皿５の開口直上に集約できる。
【００２１】
このように、本実施形態によれば、互いに独立して昇降自在な複数のプレスヘッド２ａ〜２ｃを設け、これらを油圧シリンダ３ａ〜３ｃによって個別に昇降させる。固形化粧料６ａ〜６ｃの処方に応じて、プレス圧やプレス量を個別に設定することにより、それぞれの化粧料６ａ〜６ｃの再膨張の違いを１回のプレスで吸収できるので、多色化粧料の６表面全体を有効に面一化できる。
【産業上の利用可能性】
【００２２】
以上のように、本発明に係る多色化粧料用プレスヘッドは、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった様々な多色化粧料のプレス加工において、広く適用できる。
【符号の説明】
【００２３】
１ 多色化粧料用プレス装置
２ａ〜２ｃ プレスヘッド
３ａ〜３ｃ 駆動源
４ａ〜４ｃ 昇降棒
５ 化粧皿
６ 多色化粧料
６ａ〜６ｃ 固形化粧料
７ 金型
８ 規制部材
９ リンク機構
１０ａ，１０ｃ 取付棒
【技術分野】
【０００１】
本発明は、多色化粧料用プレス装置に係り、特に、互いに独立して駆動可能なマルチプレスヘッド構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、色の組み合わせによる面白さを演出するために、色調の異なる複数の固形化粧料を化粧皿内に並べた多色化粧料が知られている。特許文献１には、化粧皿内にストライプ状に充填されたスラリー状の多色化粧料を、化粧皿の開口全体の形状に対応した面形状のプレスヘッドを用いて、一括でプレスする手法が開示されている。
【０００３】
また、化粧料とは異なる技術分野に関するものであるが、特許文献２には、複数の異なるプレス加工が必要な部品（ワーク）の加工を１台の加工機で同時に行うことができるプレス加工機が開示されている。このプレス加工機は、互いに独立して駆動可能な複数の油圧シリンダを有し、油圧シリンダのロッド突出し量および加圧力の少なくとも一方が金型毎に独立して制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００７−０６３１７０号公報
【特許文献２】特開平８−１６８８９７号公報
【特許文献３】特開２００３−３３４６９９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
ところで、特許文献３にも指摘されているように、固形化粧料のプレス工程では、化粧料内部に残存する空気溜まりの影響が懸念される。化粧料粉末体内に空気が溜まっていると、金型内に充填された粉末体の粒子密度が疎になる。このような状態で粉末体のプレスを行った場合、内部に残存する空気によって、プレス後に再膨張してしまう。特に、マット系およびパールリッチ系といったように、処方が異なる複数の化粧料を組み合わせた多色化粧料を単一のプレスヘッドを用いて一括でプレスした場合、化粧料毎に異なる膨張量が表面の非連続な起伏となって露出するので、外観不良が大きな問題となる。
【０００６】
そこで、本発明の目的は、多色化粧料の表面全体を有効に面一化できるプレス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
かかる課題を解決すべく、本発明は、少なくとも第１および第２のプレスヘッドと、少なくとも第１および第２の駆動源とを有する多色化粧料用プレス装置を提供する。第１のプレスヘッドは、化粧皿内に充填される第１の化粧料の表面に形状的に対応したプレス面を有する。第２のプレスヘッドは、第１のプレスヘッドと隣接しており、化粧皿内に第１の化粧料と隣接して充填される第２の化粧料の表面に形状的に対応したプレス面を有し、かつ、第１のプレスヘッドとは独立して昇降自在である。第１の駆動源は、第１のプレスヘッドを昇降させる。第２の駆動源は、第２のプレスヘッドを昇降させる。
【０００８】
ここで、本発明において、第１のプレスヘッドおよび第２のプレスヘッドは、互いに離間しており、これによって生じた隙間に、第１のプレスヘッドおよび第２のプレスヘッドの水平方向の変位を規制する規制部材を介在させてもよい。これにより、色の境界に仕切りが存在する多色化粧料のプレスにおいて、プレスヘッドの横ずれを防止できる。また、これに代えて、第１のプレスヘッドおよび第２のプレスヘッドは、互いの側面が接触しており、かつ、一方の側面が他方の側面を摺動しながら昇降することが好ましい。これにより、色の境界に仕切りが存在しない多色化粧料のプレスにおいて、プレスヘッドの横ずれを防止できる。
【０００９】
さらに、本発明において、プレスヘッドと駆動源との間を、水平方向に延在するリンク機構を介して接続してもよい。このリンク機構は、プレスヘッドおよび駆動源よりなるセットのすべてに設けられている必要はなく、少なくとも一つのセットにおいて設けられていれば足りる。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、互いに独立して昇降自在な複数のプレスヘッドを設け、これらを駆動源によって個別に昇降させる。化粧料の処方に応じた最適なプレス圧やプレス量を化粧料毎に個別に設定することによって、各化粧料の再膨張の違いを吸収できるので、多色化粧料の表面全体を有効に面一化できる。
【図面の簡単な説明】
【００１１】
【図１】本実施形態に係る多色化粧料用プレス装置の概略的な外観斜視図
【図２】仕切り板によって区分された多色化粧料のプレス工程の説明図
【図３】仕切り板によって区分された多色化粧料のプレス工程の説明図
【図４】仕切り板によって区分されていない多色化粧料のプレス工程の説明図
【図５】リンク機構の説明図
【発明を実施するための形態】
【００１２】
図１は、本実施形態に係る多色化粧料用プレス装置の概略的な外観斜視図である。このプレス装置１は、横一列に並んだ３つのプレス系Ａ〜Ｃを有する。これらのプレス系Ａ〜Ｃは、互いに独立して動作し、プレス圧やプレス量を個別に設定することができる。プレス系Ａ〜Ｃのそれぞれは、独立して昇降自在なプレスヘッド２と、プレスヘッド２を昇降させる駆動源としての油圧シリンダ３と、プレスヘッド２と油圧シリンダ３との間を接続する昇降棒４とを主体に構成されている。なお、駆動源としては、油圧シリンダ３以外にも、エアシリンダ等を含めて各種のアクチュエータを用いることができる。
【００１３】
プレス装置１は、その直下に配置された化粧皿５内に充填された多色化粧料６をプレスする。プレスの対象となる多色固形化粧料６としては、例えば、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった粉末固形メイクアップ化粧料が挙げられる。多色化粧料６を構成するそれぞれの固形化粧料６ａ〜６ｃは、乾式化粧料および湿式化粧料のどちらであってもよい。乾式化粧料は、化粧料の粉体を打型して固化させものである。また、湿式化粧料は、スラリー（化粧料の流動体）中の揮発成分を吸収・乾燥させて固化したものである。スラリーとしては、化粧料基材と、エタノール、水、流動パラフィン、イソパラフィン、イソプロピルアルコール等の揮発性溶剤とを混合したものが用いられる。湿式化粧料は、乾式化粧料と比べて粒子密度が疎であることに起因して、しっとりサラサラにした使用感が得られるという特性がある。
【００１４】
固形化粧料６ａ〜６ｃの色調は、色の組み合わせによる演出効果を与えるべく、互いに異なっている。本明細書では、「異なる色調」という用語を、両者の違いをユーザが視覚的に認識できれば足りる程度の意味合いで用いている。したがって、明度、彩度、色相の違いはもとより、同一色であっても、パール等を加えたものと、そうでないものといったように質感が異なるものも、ここでいう「異なる色調」の範疇に含まれる。なお、同図は、３色の直線状のストライプを例示しているが、より多くの色調の固形化粧料を用いてもよいし、より複雑な模様にしてもよい。また、これらの固形化粧料６ａ〜６ｃは、異なる処方によって生成されている。本実施形態では、一例として、マット系化粧料と、パールリッチ系化粧料とを組み合わせている。一般に、マット系化粧料よりもパールリッチ系化粧料の方が、化粧料内部の空気溜まりに起因したプレス時の膨張量が大きいことが知られている。
【００１５】
３つのプレスヘッド２ａ〜２ｃは、互いに隣り合って並んでいる。プレスヘッド全体におけるプレス面の形状は、化粧皿５の開口形状にほぼ対応している。また、各プレスヘッド２ａ〜２ｃのプレス面の形状は、それがプレスしようとするいずれかの固形化粧料６ａ〜６ｃの表面形状に対応している。図１に例示したストライプ状の多色化粧料６の場合、左側のプレスヘッド２ａのプレス面は、左側の固形化粧料６ａのみをプレスすべく、この固形化粧料６ａの表面と形状的に対応している。また、中央のプレスヘッド２ｂのプレス面は、中央の固形化粧料６ｂのみをプレスすべく、この固形化粧料６ｂの表面と形状的に対応している。さらに、右側のプレスヘッド２ｃのプレス面は、右側の固形化粧料６ｃのみをプレスすべく、この固形化粧料６ｃの表面と形状的に対応している。プレスヘッド２ａ〜２ｃの個数やプレス面の形状は、固形化粧料６ａ〜６ｃの数や表面形状に応じて決定される。ただし、固形化粧料６ａ〜６ｃと、プレスヘッド２ａ〜２ｃとを１対１に対応付ける必要は必ずしもなく、プレスの条件を共通化できるものについては同一のプレスヘッドを用いて共通化してもよい。例えば、固形化粧料６ａ，６ｂは処方は異なるものの、同じプレス条件でプレスしても構わないならば、プレスヘッド２ａ，２ｂを一体化した形状のものを用いて、同一のプレス系にて処理してもよい。
【００１６】
図２および図３は、仕切り板によって区分された多色化粧料６のプレス工程の説明図である。このプレス工程に先立ち、収容された化粧皿５を含む金型７内の充填空間には、処方が異なる乾式または湿式の固形化粧料６ａ〜６ｃが充填される。また、化粧皿５には仕切り板が一体形成されているので、充填された固形化粧料６ａ〜６ｃは、仕切り板によって互いに区分された状態になる。このような状態で多色化粧料６が充填された化粧皿５が、プレス装置１の直下にセットされる。
【００１７】
図２に示すように、仕切りあり多色化粧料６のプレスでは、プレスヘッド２ａ〜２ｃの下降時における仕切り板との干渉を避けるために、少なくとも仕切り板の厚さ分だけ、隣り合ったプレスヘッド２ａ〜２ｃを離間させる必要がある。この場合、昇降棒４ａ〜４ｃの太さ、強度、延在長等にもよっては、昇降棒４ａ〜４ｃの開放端に取り付けられたプレスヘッド２ａ〜２ｃの横ずれ、すなわち水平方向の変位が生じ易くなる。横ずれを防止するためには、プレスヘッド２ａ〜２ｃの離間によって生じる隙間も含めて、プレスヘッド２ａ〜２ｃの周囲全体に規制部材８を配置することが好ましい。規制部材８は、厚みのある金属製の部材であり、プレスヘッド２ａ〜２ｃの配置位置に対応して複数の貫通孔が設けられており、それぞれの貫通孔に個々のプレスヘッド２ａ〜２ｃが挿入される。
【００１８】
図３に示すように、直下にセットされた化粧皿５に対して、プレスヘッド２ａ〜２ｃを油圧シリンダ３ａ〜３ｃによって個別に下降させる。プレス圧やプレス量といったプレス条件は、固形化粧料６ａ〜６ｃの処方に応じて個別に最適化されており、その条件に従って油圧シリンダ３ａ〜３ｃが制御される。これにより、一回のプレスで、固形化粧料６ａ〜６ｃ毎に最適なプレスを同時に実現できる。例えば、プレス後の再膨張量が比較的小さいマット系化粧料に関しては、プレス圧を低くしたり、プレス量を小さくする一方、プレス後の再膨張量が比較的大きいマット系化粧料に関しては、プレス圧を高くしたり、プレス量を大きくするといった如くである。
【００１９】
本実施形態に係るプレス装置１は、以上のような仕切りあり多色化粧料６のプレスのみならず、仕切りなし多色化粧料６のプレス用途としても用いることができる。図４は、仕切り板によって区分されていない多色化粧料６のプレス工程の説明図である。仕切りなし多色化のプレスでは、仕切り板自体が存在しないので、本来的にそれとの干渉を考慮する必要はない。この場合、上述した横ずれ防止の観点から、隣接したプレスヘッド２ａ〜２ｃの側面を離間させることなく互いに接触させることが好ましい。プレスヘッド２ａ〜２ｃの昇降過程では、一方のプレスヘッド（例えば２ａ）の側面が他方のプレスヘッド（例えば２ｂ）の側面を摺動しながら昇降する。これにより、一方が他方の横ずれを規制する役割を担うので、プレスヘッド２ａ〜２ｃ全体の横ずれを有効に防止できる。
【００２０】
また、あるプレス系におけるプレスヘッド２と油圧シリンダ３との間は、昇降棒４で直結してもよいが、図５に示すように、横方向に延在するリンク機構９を介在させてもよい。同図の場合、油圧シリンダ３ａに接続された昇降棒４ａは、プレスヘッド２ａに接続された取付棒１０ａに対して横方向にオフセットしており、両者４ａ，１０ａはリンク機構９によって接続されている。同様に、油圧シリンダ３ｃに接続された昇降棒４ｃは、プレスヘッド２ｃに接続された取付棒１０ｃに対して横方向にオフセットしており、両者４ｃ，１０ｃはリンク機構９によって接続されている。リンク機構９としては、テコを応用したものが周知であり、本実施形態でもそれを用いることができる。化粧皿５の開口面積に対して油圧シリンダ３の径が大きすぎて、小型な化粧皿５の直上に油圧シリンダ３ａ〜３ｃを配置できない場合であっても、このようなリンク機構９を用いることで、それぞれの油圧シリンダ３ａ〜３ｃの駆動力を化粧皿５の開口直上に集約できる。
【００２１】
このように、本実施形態によれば、互いに独立して昇降自在な複数のプレスヘッド２ａ〜２ｃを設け、これらを油圧シリンダ３ａ〜３ｃによって個別に昇降させる。固形化粧料６ａ〜６ｃの処方に応じて、プレス圧やプレス量を個別に設定することにより、それぞれの化粧料６ａ〜６ｃの再膨張の違いを１回のプレスで吸収できるので、多色化粧料の６表面全体を有効に面一化できる。
【産業上の利用可能性】
【００２２】
以上のように、本発明に係る多色化粧料用プレスヘッドは、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった様々な多色化粧料のプレス加工において、広く適用できる。
【符号の説明】
【００２３】
１ 多色化粧料用プレス装置
２ａ〜２ｃ プレスヘッド
３ａ〜３ｃ 駆動源
４ａ〜４ｃ 昇降棒
５ 化粧皿
６ 多色化粧料
６ａ〜６ｃ 固形化粧料
７ 金型
８ 規制部材
９ リンク機構
１０ａ，１０ｃ 取付棒
【特許請求の範囲】
【請求項１】
多色化粧料用プレス装置において、
化粧皿内に充填される第１の化粧料の表面に形状的に対応したプレス面を有する第１のプレスヘッドと、
前記第１のプレスヘッドと隣接しており、前記化粧皿内に前記第１の化粧料と隣接して充填される第２の化粧料の表面に形状的に対応したプレス面を有し、かつ、前記第１のプレスヘッドとは独立して昇降自在な第２のプレスヘッドと、
前記第１のプレスヘッドを昇降させる第１の駆動源と、
前記第２のプレスヘッドを昇降させる第２の駆動源と
を有することを特徴とする多色化粧料用プレス装置。
【請求項２】
前記第１のプレスヘッドおよび前記第２のプレスヘッドは、互いに離間しており、これによって生じた隙間には、前記第１のプレスヘッドおよび前記第２のプレスヘッドの水平方向の変位を規制する規制部材が介在していることを特徴とする請求項１に記載された多色化粧料用プレス装置。
【請求項３】
前記第１のプレスヘッドおよび前記第２のプレスヘッドは、互いの側面が接触しており、かつ、一方の側面が他方の側面を摺動しながら昇降することを特徴とする請求項１に記載された多色化粧料用プレス装置。
【請求項４】
前記第１のプレスヘッドと前記第１の駆動源との間、および、前記第２のプレスヘッドと前記第２の駆動源との間の少なくとも一方は、水平方向に延在するリンク機構を介して接続されていることを特徴とする請求項１から３のいずれかに記載された多色化粧料用プレス装置。
【請求項１】
多色化粧料用プレス装置において、
化粧皿内に充填される第１の化粧料の表面に形状的に対応したプレス面を有する第１のプレスヘッドと、
前記第１のプレスヘッドと隣接しており、前記化粧皿内に前記第１の化粧料と隣接して充填される第２の化粧料の表面に形状的に対応したプレス面を有し、かつ、前記第１のプレスヘッドとは独立して昇降自在な第２のプレスヘッドと、
前記第１のプレスヘッドを昇降させる第１の駆動源と、
前記第２のプレスヘッドを昇降させる第２の駆動源と
を有することを特徴とする多色化粧料用プレス装置。
【請求項２】
前記第１のプレスヘッドおよび前記第２のプレスヘッドは、互いに離間しており、これによって生じた隙間には、前記第１のプレスヘッドおよび前記第２のプレスヘッドの水平方向の変位を規制する規制部材が介在していることを特徴とする請求項１に記載された多色化粧料用プレス装置。
【請求項３】
前記第１のプレスヘッドおよび前記第２のプレスヘッドは、互いの側面が接触しており、かつ、一方の側面が他方の側面を摺動しながら昇降することを特徴とする請求項１に記載された多色化粧料用プレス装置。
【請求項４】
前記第１のプレスヘッドと前記第１の駆動源との間、および、前記第２のプレスヘッドと前記第２の駆動源との間の少なくとも一方は、水平方向に延在するリンク機構を介して接続されていることを特徴とする請求項１から３のいずれかに記載された多色化粧料用プレス装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１２−１４７０（Ｐ２０１２−１４７０Ａ）
【公開日】平成２４年１月５日（２０１２．１．５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１３６８６２（Ｐ２０１０−１３６８６２）
【出願日】平成２２年６月１６日（２０１０．６．１６）
【出願人】（０００１５８７８１）紀伊産業株式会社 (327)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１月５日（２０１２．１．５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年６月１６日（２０１０．６．１６）
【出願人】（０００１５８７８１）紀伊産業株式会社 (327)
【Ｆターム（参考）】
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