説明

多色発光デバイス及びその製造方法

【課題】生産性が高く、安価に製造できる色変換方式多色発光デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板上に少なくとも3種類の色変換フィルター層と、ガスバリア層と、電界を印加されると発光する電界発光素子を配設した多色発光デバイスであって、該色変換フィルター層の少なくとも1種はカラーフィルター層と色変換層の積層体であり、前記色変換層が、電界発光素子の発光の一部を吸収し、吸収した光の波長とは異なる波長の光を放出する機能を有するフォトクロミック化合物を含有していることを特徴とする多色発光デバイス及び該色変換層が、カラーフィルター層上全面にフォトクロミック化合物を含有する塗布液を塗布後、緑色変換部位および赤色変換部位にそれぞれ特定の波長の紫外光を照射することにより緑色変換層および赤色変換層を形成することを特徴とする上記多色発光デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色発光デバイスおよびその製造方法に関する。該発光デバイスは、イメージセンサー、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、テレビ、オーディオ、ビデオ、カーナビゲーション、電話機、携帯端末、ならびに産業用計測器の表示などに使用することができる。
【背景技術】
【0002】
表示装置に適用される発光素子の一例として、電界発光素子が知られている。電界発光素子は、薄膜の自発光型素子であり、低駆動電圧、高解像度、高視野角といった優れた特徴を有することから、それらの実用化に向けて様々な検討がなされている。
【0003】
電界発光素子を用いてフルカラーディスプレイの作製方式としては、電界を印加することにより、それぞれ赤色、緑色および青色に発光する素子を配列する「3色発光方式」、白色の発光を特定波長域の光を透過させるカラーフィルターを通して赤色、緑色および青色の光とする「カラーフィルター方式」、および、近紫外光、青色光、青緑色光または白色光を吸収し、波長分布変換を行って可視領域の光を発光する色変換色素をフィルターに用いる「色変換方式」が提案されている。
【0004】
このカラーフィルター方式で用いられる白色発光素子として、白色発光の主色を発光するホスト材料と、該ホスト材料の発光色の補色を発光するドーパント材料と、前記ホスト材料の発光を吸収して前記ホスト材料の発光中心波長よりも可視領域の長波長側の光を発光する波長変換物質との少なくとも3つの有機蛍光体を含む単一もしくは複数の層からなる発光部を有する白色発光素子の提案もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、電界発光素子が発光する光を励起光とすることを特徴とするフォトクロミック表示素子の提案もある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、有機発光部からの光の通路にフォトクロミック材料層を配置して、強い外光の下であっても表示の鮮明度を確保することのできる有機EL表示装置の提案もある(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3の有機EL表示装置は発光部がRBGのそれぞれを発光する発光素子の組み合わせからなり、発光部からの光の通路に設けられたフォトクロミック材料は発光部から光3原色のうちのいずれかの色の光が入射され、前記色を出射するとともに、白色光がフォトクロミック材料層に照射されたときに前記色の光の強度を増して出射するものである。
さらに、フィルターや色変換膜などの第三の部材を用いることなく簡便な方法で多色発光させる方法として、有機EL素子の発光層を形成する有機蛍光物質にフォトクロミック材料を適用する提案もある(例えば、特許文献4参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−243565号公報
【特許文献2】特開2004−264424号公報
【特許文献3】特開2005−85683号公報
【特許文献4】特開平11−260550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
3色発光方式では、マスク蒸着で発光素子を赤、緑、青に塗り分けるため、プロセス難度が高くなり、大型化が困難である。
また、金属電極の反射を防止する透過率50%以下の円偏光板が必要となり、コスト高になるとともに効率のロスも大きいという問題がある。
【0009】
特許文献1に記載したような白色発光素子を用いたカラーフィルター方式ではELスペクトルの電流依存性が大きくなるという問題や、駆動によって発光バランスが崩れやすくなる結果、色ずれが生じるといった問題が生じる。そのため、フルカラー有機ELディスプレイとしての寿命が低下するという問題が生じる。
【0010】
また、白色発光素子と色変換フィルターの組み合わせでは、色変換層形成の工程において、各色のフィルターをフォト工程で塗り分けているためプロセスが多くなり、製造効率が低下しその結果、コストが高くなってしまう、また形成される各フィルター層から発生する色の品質も十分によいとはいえないという問題点を有している。
【0011】
特許文献3の有機EL表示装置では光3原色のそれぞれの光を発光する発光素子を必要とし、フォトクロミック材料は発光素子からの入射した光には何の影響も与えずそのまま出射し、フォトクロミック材料に外光である白色光が照射されたとき、フォトクロミック材料が白色光を発光素子から入射した光と同じ波長の光を出射、すなわち前記色の光の強度を増して出射するので、発光層からの光を変換するものではない。
【0012】
特許文献4に記載の方法で用いたデバイス構成ではフィルターや色変換膜等の第3の部材を用いることなく有機電界発光素子を提供できるとあるが、このままでは、外光で励起されてしまいコントラストが低下してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、フォトクロミック化合物を含有する色変換層を用いた多色発光デバイスは高品位かつ高精細なフルカラーディスプレイを実現可能であり、また、フォトクロミック化合物を含有する同一の塗布液を用いても、それぞれ特定の波長の紫外光を照射すれば緑色変換層及び赤色変換層を形成することができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の目的は、上述のような従来技術における問題がなく、生産性が高く、高品位かつ高精細なフルカラーディスプレイを実現可能な多色発光デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
すなわち、本発明の多色発光デバイスは、透明基板上に少なくとも3種類の色変換フィルター層と、ガスバリア層と、電界を印加されると発光する電界発光素子を配設した多色発光デバイスであって、該色変換フィルター層の少なくとも1種はカラーフィルター層と色変換層の積層体であり、前記色変換層が、電界発光素子の発光の一部を吸収し、吸収した光の波長とは異なる波長の光を放出する機能を有するフォトクロミック化合物を含有していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の多色発光デバイスの製造方法は、透明基板上に少なくとも3種類の色変換フィルター層を独立して配設し、色変換層を配設した透明基板上にガスバリア層及び発光素子を順次配設する多色発光デバイスの製造方法であって、該色変換フィルター層の少なくとも1種はカラーフィルター層と色変換層の積層体であり、前記色変換層が、電界発光素子の発光の一部を吸収し、吸収した光の波長とは異なる波長の光を放出する機能を有するフォトクロミック化合物を含有しており、該色変換層が、カラーフィルター層上全面にフォトクロミック化合物を含有する塗布液を塗布後、緑色変換部位および赤色変換部位にそれぞれ特定の波長の紫外光を照射することにより緑色変換層および赤色変換層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の多色発光デバイスを用いたフルカラーディスプレイは高品位かつ高精細なディスプレイとすることができ、生産性にも優れる。
また、本発明の多色発光デバイスの製造方法によれば、色変換層の形成を従来より少ない工程数で形成でき、歩留まりよく多色発光デバイスを製造することができる。
さらに、上記色変換層は単層塗りのため平滑性を有しており、従来の色変換方式のデバイスに比べ、平坦化層形成工程を省くことができ、歩留まりよく多色発光デバイスを製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の多色発光デバイスの一実施態様の断面概略図(1画素分)を図1に示す。図1の多色発光デバイスは、透明基板12の上に、ブラックマトリクス5、色変換フィルター層(赤色カラーフィルター6、緑色カラーフィルター7、青色カラーフィルター8、フォトクロミック材料による赤色変換層9、フォトクロミック材料による緑色変換層10、フォトクロミック材料層)、ガスバリア層4、発光素子が積層されている。発光素子は陽極2、有機発光体3、および陰極1から構成されている。ブラックマトリクス2およびガスバリア層10は、任意選択的に設けてもよい層であるが、設けることが好ましい層である。以下、各構成要素について説明する。
【0018】
(透明基板)
本発明において用いられる透明基板は、可視光透過性に優れ、かつ、色変換フィルター及び多色発光デバイスの形成プロセスにおいて、色変換フィルターあるいは多色発光デバイスの性能低下を引き起こさないものであればいずれも用いることができる。このような透明基板の具体例としてガラス基板、各種プラスチック基板若しくは各種フィルム等を挙げることができる。
【0019】
(色変換フィルター層)
本明細書において、色変換フィルター層は、カラーフィルター層、色変換層、およびカラーフィルター層と色変換層との積層体の総称である。カラーフィルター層6、7、8に用いられるカラーフィルターとしては、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用に用いられるものを適用することができ、近年では、フォトレジストに顔料を分散させた顔料分散型カラーフィルターが広く用いられている。
【0020】
本発明における色変換フィルター層は互いに異なる波長域に透過域を有する少なくとも3種類の色変換フィルター層からなり、該色変換フィルター層の少なくとも1種はカラーフィルター層と色変換層の積層体である。この3種類の色変換フィルター層としては例えば、赤、緑、青の色変換フィルター層を例示できる。
【0021】
(カラーフィルター層)
図1に示した構成においては、カラーフィルター層6、7、8は、互いに異なる波長域に透過域を有するカラーフィルター層である。例えば、カラーフィルター層6を赤色領域(600nm以上の波長域)の光を透過する赤色カラーフィルター層とし、カラーフィルター層7を緑色領域(500〜600nmの波長域)の光を透過する緑色カラーフィルター層とし、カラーフィルター層8を青色領域(400〜550nmの波長域)の光を透過する青色カラーフィルター層とすることができる。また、各カラーフィルター間に、主にコントラストの向上を目的として、可視域の光を透過しないブラックマトリックスを配設することが一般的に行われている。
【0022】
(色変換層)
色変換層はフォトクロミック材料とマトリクス樹脂を含む層である。色変換層に用いるフォトクロミック材料は、紫外光及び可視光のうち所定の波長領域の光を吸収して消色状態から発色状態に変化し、450〜700nmの可視光で発光する材料を使用する。
【0023】
フォトクロミック材料としては、スチルベン誘導体、スピロピラン類、スピロオキサジン類、ジアリールエテン類、フルキド類、シクロファン類、カルコン誘導体など、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0024】
ジアリールエテン類としては、例えば、1,2−ビス(2,4−ジメチル−3−チエニル)パーフルオロシクロペンタン、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)無水マレイン酸、2−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−3−(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)無水マレイン酸、2,3−ビス(1,2−ジメチル−3−インドリル)無水マレイン酸、2,3−ビス(1,2−ジメチル−5−メトキシ−3−インドリル)無水マレイン酸、2−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−3−(2,4−ジメチル−5−シアノ−3−チエニル)無水マレイン酸、1−(1,2−ジメチル−5−メトキシ−3−インドリル)−2−(2,4−ジメチル−5−シアノ−3−チエニル)パーフルオロシクロペンタン、1,2−ビス(2−ヘキシル−3−チエニル)パーフルオロシクロペンタンのジチエノ(チオフェン)誘導体などを挙げることができる。
【0025】
フルギド類としては、例えば、2−[1−(3,5-ジメチル−4−イソオキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(2−フェニル−5−メチル−4−オキサゾリル)ステアリリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(2,5−ジメチル−1−フェニルピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(3−メトキシ−5−メチル−1−フェニル−4−ピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(2−メチル−5−スチリル−3−チエニル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物などを挙げることができる。
【0026】
色変換層に使用するマトリックスとしては、上記フォトクロミック化合物との相溶性がよく、寸法安定性と透明性に優れる樹脂材料が好ましい。このような樹脂材料として、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルホン、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ノルボルネン系樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合樹脂、環状オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン系樹脂、多官能性アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、イミド系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、あるいはポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート等と官能性あるいは4官能性のアルコキシシランを含むポリマーハイブリッド、あるいはシリコーンポリマーなどを挙げることができる。
【0027】
マトリックスとフォトクロミック材料との混合比は十分な光学濃度と発光強度が得られれば特に限定されるものではないが、マトリックスとの混合物中のフォトクロミック材料の量が5〜10重量%であることが好ましい。
【0028】
色変換層の形成方法としては、例えば、緑色フォトクロミック材料と赤色フォトクロミック材料とマトリックスからなる塗布液をスピンコート法で膜形成し、マスクを用いて緑色変換部位のみを露出させ、紫外光を当てて緑色フォトクロミック材料を発色させ、緑色変換層を形成する。続いて、マスクを用いて赤色変換部位のみを露出させ、紫外光を当てて緑色フォトクロミック材料と赤色フォトクロミック材料を発色させ、赤色変換層を形成する方法を挙げることができる。この場合、照射する紫外光の波長で発色する色が変化するので、赤色変換部位には赤色に発光する波長の紫外線を照射し、緑色変換部位には緑色に発光する波長の紫外線を照射する。
【0029】
(ガスバリア層)
ガスバリア層4は、その下に形成される層に由来する水分および/または酸素が有機発光体3に到達して有機発光体3を劣化させることを防止することを目的とする層である。ガスバリア層4は、可視域における透明性が高く(400〜700nmの範囲で透過率50%以上)、100℃以上のガラス転移温度(Tg)および鉛筆硬度2H以上の膜硬度を有し、下に形成される色変換フィルター6〜8の機能を低下させない材料から形成される。たとえば、イミド変性シリコーン樹脂;TiO、Al、SiO等の無機金属化合物をアクリル、ポリイミド、シリコーン樹脂等の中に分散した材料;アクリレートモノマー/オリゴマー/ポリマー等の反応性ビニル基を有した樹脂;レジスト樹脂;ゾル−ゲル法で形成される無機化合物;フッ素系樹脂などの光硬化型樹脂および/または熱硬化型樹脂を挙げることができる。
【0030】
ガスバリア層の形成法には特に制約はなく、スパッタ法、蒸着法、CVD法などの乾式法、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法などの湿式法などの慣用の手法を採用することができる。
【0031】
また、ガスバリア層4を、電気絶縁性ならびにガスおよび有機溶剤に対するバリア性を有し、可視域における透明性が高く(400〜800nmの範囲で透過率50%以上)、かつその上に形成される電極の成膜条件に耐える硬度として好ましくは鉛筆硬度2H以上の膜硬度を有する材料を用いて形成してもよい。そのような材料として、たとえば、SiO、SiN、SiN、AlO、TiO、TaO、ZnO等の無機酸化物、無機窒化物等の材料を挙げることができる。このガスバリア層の形成方法も特に制約はなく、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法、ディップ法などの慣用の手法を採用することができる。
【0032】
ガスバリア層4は、前述の材料の単層であってもよく、あるいは前述の材料から形成される複数の層の積層構造であってもよい。
【0033】
本発明の多色発光デバイスにガスバリア層4を配設する場合には、考慮しなければならない重要な要素がある。すなわち、ガスバリア層の膜厚が表示性能、特に視野角特性におよぼす影響を考慮する必要がある。色変換方式有機発光ディスプレイにおいて得に重要な視野角特性とは、ディスプレイに対して見る角度を変えた際に生じる色の変化である。
【0034】
厚すぎるガスバリア層4を形成した場合、有機発光体3を発した光がガスバリア層4を透過して色変換フィルター層に到達するまでの光路長が長くなる。その結果、斜め方向から多色発光デバイスを見た場合に、隣接する別の色の画素ないし副画素への光の漏れ(光学的クロストーク)が発生する。多色発光デバイスのディスプレイとしての表示性能を考慮すると、本来の画素ないし副画素の発光量に対する、光学的クロストークによる隣接する画素ないし副画素の発光量の比率を十分に小さくすることが要求される。この点を考慮すると、ガスバリア層4の膜厚(複数層の積層体である場合は、総膜厚)は、0.1〜1.0μmであることが好ましい。
【0035】
(有機発光体)
有機発光体は、一対の電極1、2の間に有機発光層を挟持し、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、および/または電子注入層を介在させた構造を有する。より具体的には、たとえば以下に示すような構造が挙げられる。
(1)陽極/有機発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/有機発光層/陰極
(3)陽極/有機発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/有機発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層/陰極
【0036】
上述の(1)〜(5)の構造において、陽極および陰極の少なくとも一方は、該有機発光体の発する光の波長域において透明であることが望ましく、この透明である電極を通して光を発して、前記補色層に光を入射させる。当該技術において、陽極を透明にすることが容易であることが知られており、本発明において、陽極2を透明とすることが好ましい。
また、陰極1は反射電極とすることが好ましい。
【0037】
陽極2の透明電極は、スパッタ法によりSnO、In、ITO、IZO、ZnO:Alなどの導電性金属酸化物を積層することにより形成される。透明電極の透過率は、波長400〜800nmの光に対して50%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。陽極11は、通常50nm以上、好ましくは50nm〜1μm、より好ましくは100〜300nmの範囲内の厚さを有することが望ましい。
【0038】
陰極1の反射電極は、高反射率の金属、アモルファス合金、微結晶性合金などを用いて形成されることが好ましい。高反射率の金属としては、Al、Ag、Mo、W、Ni、Crなどを例示できる。高反射率のアモルファス合金は、NiP、NiB、CrPおよびCrBなどを例示できる。高反射率の微結晶性合金は、NiAlなどを例示できる。あるいはまた、前述の高反射率の金属を含む他の合金(たとえばMg/Ag合金など)を用いることができる。
【0039】
陽極および陰極のパターンはそれぞれ平行な複数のストライプ形状部分電極から形成して、陽極のストライプ形状部分電極と陰極のストライプ形状部分電極とが互いに交差し、好ましくは直交するように形成されていてもよい。その場合には、本発明の有機発光素子はマトリクス駆動を行うことができる。すなわち、陽極の特定のストライプ形状部分電極と陰極の特定のストライプ形状部分電極に電圧が印加されたときに、有機発光層において、それらのストライプ形状部分電極が交差する部分が発光する。したがって、陽極および陰極の選択されたストライプ形状部分電極に電圧を印加することによって、特定の補色層および/または色変換フィルター層が位置する部分のみを発光させることができる。
【0040】
また、陽極をストライプパターンのない一様な平面電極とし、陰極を各画素に対応するようパターニングしてもよい。その場合には、各画素に対応するスイッチング素子を設けて、いわゆるアクティブマトリクス駆動を行うことが可能となる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明につき、実施例を用いてさらに説明する。
<実施例1>
(カラーフィルター)
透明ガラス基板(1737ガラス:コーニング社製)上に、ブラックマトリクス材料(CK−7001:富士フイルムARCH製)、赤色カラーフィルター材料(CR−7001:富士フイルムARCH製)、緑色カラーフィルター材料(CG−7001:富士フイルムARCH製)、および青色カラーフィルター材料(CB−7001:富士フイルムARCH製)を用いて、ブラックマトリクス5およびカラーフィルター6、7、8(赤色、緑色および青色)を成膜した。緑色カラーフィルター7の膜厚を2μmとし、他のフィルターの膜厚を1μmとした。
【0042】
各カラーフィルターは、赤色、緑色および青色の副画素を横方向に整列させた一組を1画素とするように形成した。各副画素の寸法は縦300μm×横100μmであり、隣接する副画素間の間隔を縦方向30μm、横方向10μmとした。従って1つの画素は縦300μm×横320μmの寸法を有し、隣接する画素間の間隔は縦方向30μm、横方向10μmであった。本実施例においては、縦方向に50画素、横方向に50画素を配列させ、合計2500画素を形成した。
【0043】
(色変換層)
2−[1−(3,5-ジメチル−4−イソオキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下、PC−2と略す。)、2−[1−(2,5−ジメチル−1−フェニルピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下、PC−3と略す。)をそれぞれ1重量部、ポリメタクリル酸メチル9重量部を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)9重量部へ溶解させて塗布液を調製し、 上記の基板上に形成したカラーフィルターの上にスピンコート法により、膜厚5μmの層を形成した。続いて、緑色変換部位及び赤色変換部位以外をマスクで覆い、365nmの紫外光を当てて緑色フォトクロミック材料PC3を発色させ、次に、赤色変換部位以外をマスクで覆い、400nmの紫外光を当てて赤色フォトクロミック材料PC2を発色させ、緑色変換層と赤色変換層とを形成した。
【0044】
(ガスバリア層)
次に色変換フィルター層の上に、スパッタ法を用いてSiOを堆積させて、膜厚0.5μmのガスバリア層を形成した。スパッタ装置としてRF−プレーナマグネトロン型装置を用い、ターゲットとしてSiOを用いた。製膜時のスパッタガスとしてArを使用し、形成時の基板温度を80℃に設定した。
【0045】
(有機発光体)
次に、このガスバリア層の上に陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層/陰極なる6層構成で、有機発光体を形成した。
【0046】
まず、ガスバリア層の上面にスパッタ法により透明電極(ITO)を全面製膜した。このITOの上にレジスト剤「OFRP−800」(商品名、東京応化製)を塗布した後、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、赤、緑、青のそれぞれの色の発光部に位置する、幅105μm、ピッチ110μm、膜厚100nmのそれぞれ平行な複数のストライプ形状部分電極からなる陽極を得た。
【0047】
次いで、透明電極を形成した基板を抵抗加熱蒸着装置内に装着し、正孔注入層、正孔輸送層、青色発光層、赤色発光層および電子注入層を、真空を破らずに順次成膜した。成膜に際して真空槽内圧は1×10−4Paまで減圧した。正孔注入層として、膜厚100nmの銅フタロシアニン(CuPc)を積層した。正孔輸送層として、膜厚20nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を積層した。発光層として、膜厚30nmの4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を積層した。電子注入層として、膜厚20nmのアルミキレート(Alq)を積層した。
【0048】
さらに、真空を破ることなしに、陽極のストライプ形状部分電極のラインと垂直に幅300μm、ピッチ330μmのストライプパターンが得られるマスクを用いて膜厚200nmのMg/Ag(10:1の重量比率)からなる陰極を形成した。
【0049】
さらに、真空を破ることなしに、陽極のストライプ形状部分電極のラインと垂直に幅300μm、ピッチ330μmのストライプパターンが得られるマスクを用いて膜厚200nmのMg/Ag(10:1の重量比率)からなる陰極を形成した。
【0050】
最後に、得られた積層体を、乾燥窒素雰囲気(酸素濃度および水分濃度ともに10ppm以下)のグローブボックス内に移動させ、封止ガラス(図示せず)およびUV硬化型接着剤を用いて封止し、発光デバイスを得た。こうして得られた多色発光デバイスの断面概略図(1画素分)を図1に示す。
【0051】
<比較例1>
(カラーフィルター)
透明ガラス基板(1737ガラス:コーニング社製)上に、ブラックマトリクス材料(CK−7001:富士フイルムARCH製)、赤色カラーフィルター材料(CR−7001:富士フイルムARCH製)、緑色カラーフィルター材料(CG−7001:富士フイルムARCH製)、および青色カラーフィルター材料(CB−7001:富士フイルムARCH製)を用いて、ブラックマトリクス5およびカラーフィルター6、7、8(赤色、緑色および青色)を成膜した。緑色カラーフィルター7の膜厚を2μmとし、他のフィルターの膜厚を1μmとした。
【0052】
各カラーフィルターは、赤色、緑色および青色の副画素を横方向に整列させた一組を1画素とするように形成した。各副画素の寸法は縦300μm×横100μmであり、隣接する副画素間の間隔を縦方向30μm、横方向10μmとした。従って1つの画素は縦300μm×横320μmの寸法を有し、隣接する画素間の間隔は縦方向30μm、横方向10μmであった。本実施例においては、縦方向に50画素、横方向に50画素を配列させ、合計2500画素を形成した。
【0053】
(緑色変換層)
蛍光色素としてクマリン6(0.7重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させ、次いで、光重合性樹脂の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化成工業株式会社)100重量部を加えて溶解させ、緑色変換層用塗液を得た。この塗布液をカラーフィルターを形成した基板上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法にてパターニングを実施し、緑色カラーフィルターの上に線幅134μm、ピッチ1016μm、膜厚8μmのラインパターンの緑色変換層を形成した。
【0054】
(赤色変換層)
蛍光色素としてクマリン6(0.6重量部)、ローダミン6G(0.3重量部)、ベーシックバイオレット11(0.3重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させ、次いで、光重合性樹脂の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化成工業株式会社)100重量部を加えて溶解させ、赤色変換層用塗液を得た。この塗布液を、カラーフィルターを形成した基板上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法にて赤色カラーフィルターの上に線幅134μm、ピッチ1016μm、膜厚8μmのラインパターンの赤色変換層を形成した。
【0055】
(平坦化層)
こうして形成された赤、緑、青の色変換フィルター層の上に、UV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート)をスピンコート法で塗布し、高圧水銀灯を照射して膜厚8μmの平坦化層を形成した。平坦化層形成時における色変換フィルター層の変形はなく、平坦化層表面は平坦であった。
【0056】
こうして形成された平坦化層の上に、実施例1と同様にしてガスバリア層、有機発光体、陰極を形成、封止して図2に示す多色発光デバイスを得た。
【0057】
実施例1及び比較例1で得られた多色発光デバイスをDC駆動0.1A/cmで点灯し、デバイスの点灯特性を測定した。その結果を表1に示す。なお、赤・青・緑各色のバックライトは同一条件で点灯させた。輝度(白色灯)は比較例1の輝度を1とした。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から明らかなように本発明(実施例1)の多色発光デバイスは従来の色変換方式の多色発光デバイスである比較例1のデバイスに比較して遜色なく、本発明の多色発光デバイスでは実施例1に見られるように、比較例1のように色変換フィルターを色に応じて塗り分ける必要がなく、また、形成された色変換フィルター層はその上面が平坦なため、平坦化層形成工程を削減することができ、コスト及び歩留まりの点で比較例1に代表される従来の色変換方式の多色発光デバイスより優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のデバイス構成の多色発光デバイスは、その製造に当たって、従来の色変換方式多色発光デバイスの製造では必要であった色変換層形成時の赤、緑の塗りわけ工程をなくすことができ、さらに各色の色変換層を同じ厚みにできるので平坦化層形成工程もなくすことができるため全体工程数を少なくすることができ、そのため歩留まりが向上し、コスト削減できるため、安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の多色発光デバイスの断面概略図(1画素分)である
【図2】従来の色変換方式の多色発光デバイスの概略断面図(1画素分)である
【符号の説明】
【0062】
1:陰極 2:陽極
3:有機発光体 4:ガスバリア層
5:ブラックマトリクス 6:赤色カラーフィルター
7:緑色カラーフィルター 8:青色カラーフィルター
9:赤色変換層 10:緑色変換層
12:透明基板 13:平坦化層
14:赤色変換層+赤色カラーフィルター
15:緑色変換層+緑色カラーフィルター 16:青色カラーフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に少なくとも3種類の色変換フィルター層と、ガスバリア層と、電界を印加されると発光する電界発光素子を配設した多色発光デバイスであって、該色変換フィルター層の少なくとも1種はカラーフィルター層と色変換層の積層体であり、前記色変換層が、電界発光素子の発光の一部を吸収し、吸収した光の波長とは異なる波長の光を放出する機能を有するフォトクロミック化合物を含有していることを特徴とする多色発光デバイス。
【請求項2】
前記色変換層が平坦化層の機能を兼ね備えていることを特徴とする請求項1記載の多色発光デバイス。
【請求項3】
透明基板上に少なくとも3種類の色変換フィルター層を独立して配設し、色変換層を配設した透明基板上にガスバリア層及び発光素子を順次配設する多色発光デバイスの製造方法であって、該色変換フィルター層の少なくとも1種はカラーフィルター層と色変換層の積層体であり、前記色変換層が、電界発光素子の発光の一部を吸収し、吸収した光の波長とは異なる波長の光を放出する機能を有するフォトクロミック化合物を含有しており、該色変換層が、カラーフィルター層上全面にフォトクロミック化合物を含有する塗布液を塗布後、緑色変換部位および赤色変換部位にそれぞれ特定の波長の紫外光を照射することにより緑色変換層および赤色変換層を形成することを特徴とする多色発光デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記色変換層が平坦化層の機能を兼ね備えていることを特徴とする請求項3記載の多色発光デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−220431(P2007−220431A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38486(P2006−38486)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】