説明

多色X線源を有するX線撮像装置

本発明は、多色X線源(10)と、各々のピクセルが、少なくとも1つの調整可能な閾値により範囲が規定されている少なくとも1つのエネルギ・ウィンドウ内で光子計数モードにて動作するのに適している複数のピクセルを有する検出器(1、2)と、少なくとも1つのカウンタとを備えるX線撮像装置に関し、各々のピクセルは、予め定められた期間にてエネルギ・ウィンドウ内で各々のピクセルにより受領された光子の数に対応する出力を送出することが可能である。X線撮像装置は、さらに、リアルタイムで、種々のエネルギ・ウィンドウ内で複数のピクセルの閾値を連続して調整することが可能な調整手段(12)と、リアルタイムで、種々のエネルギ・ウィンドウ内で複数のピクセルの出力の微分処理を実行するための処理手段(16)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色X線源を有するX線撮像装置(X−ray imaging device)に関する。さらに詳しくいえば、本発明は、各々のピクセルが、少なくとも1つの調整可能な閾値により範囲が規定されているエネルギ・ウィンドウ内で光子計数モード(photon counting mode)にて動作するべく構成される複数のピクセルを有する検出器(detector)と、複数のピクセルの閾値を調整することが可能な調整手段とを備えるX線撮像装置に関するものである。このような構成の検出器によって、各々のピクセルは、予め定められた期間にてエネルギ・ウィンドウ内で当該ピクセルにより受領された光子の数に対応する出力を送出することが可能である。
【背景技術】
【0002】
上記のような構成の検出器は、先行技術文献(従来技術)である「XPAD:材料科学および小動物撮像用の光子計数型ピクセル検出器(XPAD:A photon counting pixel detector for material sciences and small animal imaging)」(ピー.デルピエール他(P.Delpierre et al.)著、産業技術総合研究所の核計測およびメソッドの物理学研究室に関連した論文のA572(2007年)250〜253頁(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A572(2007)250−253))(後述の非特許文献1に対応する)や、「XPAD3:X線CT(コンピュータ断層撮影)スキャナ用の新しい光子計数チップ(XPAD3:A new photon counting chip for X−ray CT(computed tomography)−scanner」(ピー.デルピエール他著、産業技術総合研究所の核計測およびメソッドの物理学研究室に関連した論文のA571(2007年)321〜324頁(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A571(2007)321−324))(後述の非特許文献2に対応する)や、「PIXSCAN:小動物撮像用のピクセル検出器CTスキャナ(PIXSCAN:Pixel detector CT−scanner for small animal imaging)」(ピー.デルピエール他著、産業技術総合研究所の核計測およびメソッドの物理学研究室に関連した論文のA571(2007年)425〜428頁(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A571(2007)425−428))(後述の非特許文献3に対応する)に記述されている。
【0003】
可視光を用いて物質の化学組成を識別するか、または可視光を用いて不透明体内の化学元素の存在を見つけることがしばしば必要になる。このような事態は、未知の対象物を検査したり、生き物の体内の医療用マーカ(例えば、造影剤)の存在を見つけたりする場合に生ずる。
【0004】
そのために、検出対象である化学元素によって強く吸収される波長の寄与が最大になるように(有効なコントラストを増加させる波長の寄与が最大になるように)、多色X線源の発光スペクトルを最適化することが可能であり、また一方で、(背景により誘発されるコントラストを減少させる目的で)周囲に存在する他の化学元素によって選択的に吸収される波長による影響を制限することが可能である。このようにして、高い含有量を有する興味のある化学元素を含む領域が、背景に対して浮き出るようになる。
【0005】
上記の観点より、アンチカソード(anti−cathode)に特有のエネルギにて放出される非常に強い再配列ピークを利用して擬似的な多色X線源が開発されてきた。しかしながら、それにもかかわらず、複雑な対象物に対して要求される情報を消し去るような低下したコントラストを誘発する恐れがある多数の他の波長による影響が大きいままになっている。その上、理想的なスペクトルは、要求される原子の固有の性質と対象物が検出される周囲の状況の両方に依存している。それゆえに、実際には、ユーザは、体系的に、全ての使用条件の下で最適なコントラストを生成するような多色X線源を見出すことが困難であるという事態に直面する。医療用撮像の分野の特殊な状況において、所定のX線源は、1つの種類の造影剤のみ(例えば、ヨウ素(I)であり、バリウム(Ba)またはガドリニウム(Gd)ではない)にのみ適合しており、且つ、身体の中で所定の平均密度(density)を有する部分(例えば、胸または手)にのみ適合している。
【0006】
化学的環境に対するスペクトルの依存性を低減させるために、1つの方法(解)として、それぞれ異なるスペクトルを有する2つの多色X線源を使用することが提案されている。これらの多色X線源の一方の多色X線源(すなわち、造影剤の光電遷移Kの近傍において高い光子密度を有する擬似的な多色X線源)では、造影剤によって選択的に吸収されるエネルギが最大になり、他方の多色X線源(すなわち、理想的に、一様なスペクトルを有する多色X線源)では、当該エネルギが最大にならない。2つの多色X線源の各々から取得された減衰の比を形成することによって、要求されている元素を含む領域が、画像の中に浮き出るようになる。なぜならば、これらの多色X線源は、それぞれ対応する条件の下で非常に異なる減衰を有しているからである。
【0007】
かなり改善された解として、シンクロトロン(synchrotron)を動作させることで利用可能な複数の単色ビームを使用することが提案されている。この解が提案されている理由として、このような単色ビームは、要求される元素の光電遷移Kの直ぐ下側および直ぐ上側において、2つの正確な波長に割り当てられることが可能である点が挙げられる。この解の利点は、複数の単色ビームの照射条件の間で、周囲の状況による吸収率(absorption)の変化が全く生じないのに対して、興味のある元素は、その吸収率において急激且つ非常に顕著な変化(純粋化合物に関しては10倍の吸収率の変化)を示すことである。図1は、ヨウ素の場合における上記の改善された方法(解)を示すものである。この場合、コントラストは周囲の状況の吸収率の勾配によって低下しない、なぜならば、この周囲の状況は、2つの類似の波長に対してほぼ一定の吸収率を維持するからである。この結果として、前述の先行技術文献に示すように、元素の検出感度がかなり改善される。
【0008】
さらに、上記ビームは単色なので、所定のエネルギに対して絶対的な減衰係数を規定することが可能である。この減衰係数は、対象物を通して入射する光子と検出される光子との比から取得され、当該減衰係数の対数が算出される。2つの所定のエネルギに対する2つの減衰係数の間で減算が行われた場合、元素の濃度に比例する相対的な減衰係数が得られる。ただし、この元素内の電子の遷移は、所定の厚さの物質に対する上記2つのエネルギの間に位置している。この減衰係数の曲線を平坦な曲線と比較することにより、相対的な減衰係数に基づいて元素の濃度の定量的な測定結果を得ることが可能である。医療用撮像の分野においては、上記の改善された方法によって、15〜50μg/ml(マイクログラム/ミリリットル)程度の低濃度のヨウ素の濃度を検出することが可能になり、ひいては、一般的な手法(すなわち、多色X線源を使用する方法)によっては目に見えない腫瘍を検出してその場所を突き止めることが可能になる。
【0009】
それゆえに、上記の改善された方法は、有効であることが証明されている。また一方で、上記の改善された方法では、対象物をシンクロトロンのビームラインに接近させることが必要であり、且つ、全ての波長に対して順次データを取得することが必要である。しかしながら、同一の身体内の幾つかの元素が検出対象である場合、全ての波長に対して順次データを取得することは、多くの労力と時間を要する。
【0010】
このような不都合な事態に対処するための1つの手法として、各々の波長に対する画像を生成することができるようにするために、X線源を検討する代わりに、「検出器(detector)」を検討することが提案されている。特に、ハイブリッド型ピクセル検出器(hybrid pixel detector)は、シンクロトロンのX線源の使用に関連して生ずる欠点を解消することを可能にするために、専用に使用され得る。
【0011】
例えば、先行技術文献の独国特許出願公開第19904904号公報(後述の特許文献1に対応する)においては、単一の閾値および2つの閾値を有するコントラスト撮像用のハイブリッド型検出器が記述されているが、リアルタイムで拡大画像(magnification)を得る手段は記述されていない。
【0012】
例えば、先行技術文献の米国特許出願公開第2005/0123093号公報(後述の特許文献2に対応する)においては、概して、コントラスト拡大画像の原理が記述されている。
【0013】
より特定的にいえば、先行技術文献の米国特許出願公開第2006/0056581号公報(後述の特許文献3に対応する)および米国特許第6,922,462号(後述の特許文献4に対応する)においては、多層検出器を用いてリアルタイムで拡大画像を得る方法が記述されている。
【0014】
しかしながら、所定のエネルギ・ウィンドウ内で光子を計数するための複数の検出要素の各々と関連付けられた複数の電子回路は、複雑になっている(数百万個のトランジスタを含む)。その上、各々の構成要素の領域に等しい領域内またはそれよりも小さい領域内に上記のトランジスタを収容することは、非常に難しい。この結果として、対応する光子カウンタ、調整手段および読み出し手段を含み且つ複数のエネルギ・ウィンドウを有する複数の電子回路の各々における構成要素に関して、ピクセルの表面積が増大し、ひいては、空間分解能の低下を招くことになる。
【0015】
このような不都合な事態は、部分的にサブミクロン技術を利用することによって解消され得る。しかしながら、上記の電子回路を製造するためのマスクおよび装置は、極めて高価である。0.25μm(ミクロン)技術を利用しても、1つのエネルギ・ウィンドウのみに対してピクセルのサイズを50μm(ミクロン)より小さくすることは不可能である。このピクセルのサイズに関連したピクセルの寸法は、実際には、エネルギ・ウィンドウの数に比例する。
【0016】
このために、1つの解として、単一の閾値を有する単一の電子回路のみを保有した状態で複数のエネルギ・ウィンドウを作成することが提案されている。この解による結果は、各々が複数のピクセルからなる複数のグループ(例えば、各々が4つのピクセルからなる複数のグループ)により複数のピクセルを構成し、且つ、各グループ内の各々のピクセル(複合ピクセル)に対して異なるエネルギ・ウィンドウを割り当てることによって得られる。この解の欠点は、空間分解能およびスペクトル分解能が、複数のピクセルからなる各グループのサイズに対応しており、それゆえに、これらの分解能が低下することである。
【0017】
このような分解能の低下に対処するための1つの手法が、先行技術文献である「光子計数カラー撮像用の面積効率の良い読み出しアーキテクチャ (An area efficient readout architecture for photon counting color imaging)」(ラングレン他(Lungren et al.)著、産業技術総合研究所の核計測およびメソッドの物理学研究室関連の学会の刊行物、セクションA、加速器、分光器および検出器、オランダのアムステルダムのエルセビアにて発行、2007年2月6日、576巻、第1号、132〜136頁、XP022072098、国際標準逐次刊行物番号0168−9002(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research,Section A,Accelerators,spectrometers,detectors, Elsevier,Amsterdam,NL, Vol.576,No.1,February 6,2007,Pages 132−136,XP022072098,ISSN 0168−9002))(後述の非特許文献4に対応する)に記述されている。この先行技術文献に記述されている方法は、複数のピクセルの各々に対して単一のエネルギ閾値を提供し、且つ、4つのピクセルからなる各グループに対して2つのエネルギ・ウィンドウを付加することである。ここで、各々のピクセルは、エネルギ・ウィンドウが4つのピクセルからなる各グループに対応している状態で、各々のピクセルにより受領された光子の強度および光子の数により算出されるエネルギの重み付けを付与される。かくして、2つのエネルギ・ウィンドウが得られる。さらに、全ての光子の強度の合計と上記2つのエネルギ・ウィンドウの出力の合計との差に基づく減算によって、第3のウィンドウが得られる。光子の強度に関する空間分解能は、1つのピクセルのサイズに対応している。また一方で、エネルギ分解能(エネルギ・ウィンドウの分解能)は、4つのピクセルからなる各グループのサイズに対応している。さらに、上記2つのエネルギ・ウィンドウを供給する電子回路を組み込むことができるようにするために、複数のピクセルのサイズを増加させることが必要である。
【0018】
この先行技術文献に記述されているように、4つのピクセルからなる各グループに対して2つのエネルギ・ウィンドウを付加する方法は、4つのピクセルからなる1つのグループ内の各々のピクセルに対して異なるエネルギ・ウィンドウを割り当てる方法よりも進歩している。しかしながら、前者の方法においても、エネルギ・ウィンドウの分解能を、4つのピクセルからなる各グループのサイズに対応させるようにするために、複数のピクセルのサイズを増加させることが必要である。換言すれば、エネルギ・ウィンドウの分解能が4倍の値にまで低下することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】独国特許出願公開第19904904号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0123093号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0056581号公報
【特許文献4】米国特許第6,922,462号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】「XPAD:材料科学および小動物撮像用の光子計数型ピクセル検出器(XPAD:A photon counting pixel detector for material sciences and small animal imaging)」(ピー.デルピエール他著、産業技術総合研究所の核計測およびメソッドの物理学研究室に関連した論文のA572(2007年)250〜253頁(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A572(2007)250−253))
【非特許文献2】「XPAD3:X線CT(コンピュータ断層撮影)スキャナ用の新しい光子計数チップ(XPAD3:A new photon counting chip for X−ray CT(computed tomography)−scanner」(ピー.デルピエール他著、産業技術総合研究所の核計測およびメソッドの物理学研究室に関連した論文のA571(2007年)321〜324頁(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A571(2007)321−324))
【非特許文献3】「PIXSCAN:小動物撮像用のピクセル検出器CTスキャナ(PIXSCAN:Pixel detector CT−scanner for small animal imaging)」(ピー.デルピエール他著、産業技術総合研究所の核計測およびメソッドの物理学研究室に関連した論文のA571(2007年)425〜428頁(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A571(2007)425−428))
【非特許文献4】「光子計数カラー撮像用の面積効率の良い読み出しアーキテクチャ (An area efficient readout architecture for photon counting color imaging)」(ラングレン他著、産業技術総合研究所の核計測およびメソッドの物理学研究室関連の学会の刊行物、セクションA、加速器、分光器および検出器、オランダのアムステルダムのエルセビアにて発行、2007年2月6日、576巻、第1号、132〜136頁、XP022072098、国際標準逐次刊行物番号0168−9002(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research,Section A,Accelerators,spectrometers,detectors, Elsevier,Amsterdam,NL, Vol.576,No.1,February 6,2007,Pages 132−136,XP022072098,ISSN 0168−9002))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、前述のような従来技術の問題点を解決することにある。
【0022】
さらに詳しくいえば、本発明の目的は、単一のX線源を用いてリアルタイムで複数の造影剤の拡大画像を得ることが可能なX線撮像装置を提供することにある。
【0023】
本発明のさらなる目的は、同一のX線源を用いて幾つかの異なる化学元素を見つけ出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、多色X線源(10)と、各々のピクセルが、少なくとも1つの調整可能な閾値により範囲が規定されている少なくとも1つのエネルギ・ウィンドウ内で光子計数モードにて動作するべく構成される複数のピクセルを有する検出器(1、2)と、少なくとも1つのカウンタとを備えるX線撮像装置であって、各々のピクセルは、予め定められた期間にてエネルギ・ウィンドウ内で各々のピクセルにより受領された光子の数に対応する出力を送出することが可能であるようなX線撮像装置を提供する。このX線撮像装置は、さらに、リアルタイムで、それぞれ異なるエネルギ・ウィンドウ内で複数のピクセルの閾値を連続して調整することが可能な調整手段(12)と、リアルタイムで、それぞれ異なるエネルギ・ウィンドウ内で複数のピクセルの出力の微分処理を実行するための処理手段(16)とを備えることを特徴とする。
【0025】
上記のような本発明の構成によって、従来よりもはるかに多くの数のエネルギ・ウィンドウにて空間的測定を行うことが可能になり(エネルギ・ウィンドウの数は、プロセッサのクロック速度およびX線源の電力によってのみ制限される)、また一方で、各々のピクセルに対して簡単な電子回路を保持することが可能になる。これは、複数のピクセルのサイズを減少させ、ひいては、空間分解能を改善するという点において有利である。かくして、空間分解能は、エネルギに関して最高になると共に、エネルギの選択に関しても最高になる(空間分解能は、1つのピクセルのサイズに対応している)。
【0026】
さらに、本発明は、ユーザによる特殊な試験の必要性に対して、ソフトウェアにより適応させることが可能である。このように、本発明の他の利点は、汎用性を有することである。
【0027】
本発明の検出器は、特に、2次元の検出器であり得ることが認識されるであろう。より特定的にいえば、本発明の検出器は、ハイブリッド型ピクセル検出器であることが可能である。
【0028】
特定の実施態様において、複数のピクセルは、予め定められた幾何学的分布に従って複合ピクセルにグループ化された基本ピクセルであり、調整手段は、幾何学的分布に従って、それぞれ異なるエネルギ・ウィンドウ内で複合ピクセルのそれぞれ異なる基本ピクセルの閾値を調整するように構成され、処理手段は、同一の調整エネルギを有する複数のピクセルの空間的処理を実行するように構成される。
【0029】
第1の実施態様において、調整手段は、リアルタイムで、周期的な時間的分布に従って複数のピクセルの閾値をそれぞれ異なる値に調整するように構成され、処理手段は、時間的配列に従って複数のピクセルの出力を処理するように構成される。
【0030】
第2の実施態様において、調整手段は、リアルタイムで、予め定められた基準に基づいて適応可能に(in an adaptive manner)複数のピクセルの閾値をそれぞれ異なる値に調整するように構成され、処理手段は、時間的配列に従って複数のピクセルの出力を処理するように構成される。
【0031】
さらに、特定の実施態様において、それぞれ異なるエネルギ・ウィンドウの少なくとも幾つかは、最低レベルの閾値および最高レベルの閾値により規定される。
【0032】
さらに、特定の実施態様において、それぞれ異なるエネルギ・ウィンドウの少なくとも幾つかは、連続している。
【0033】
さらに、他の特定の実施態様において、検出器は、2次元の検出器である。
【0034】
さらに、他の特定の実施態様において、検出器は、ハイブリッド型ピクセル検出器である。
【0035】
以下、非限定的な例に基づいて、添付の概略的な図面を参照しながら本発明の特定の実施形態(実施例)を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来のX線撮像装置の動作を示すグラフである。
【図2】一般の光子計数型の検出器の動作を示すために、光子計数型の検出器の切断面を大きく拡大して示す断面図である。
【図3】図2の光子計数型の検出器における1つのピクセルを示す回路図である。
【図4】本発明に係るX線撮像装置を示すブロック図である。
【図5】本発明に係るX線撮像装置にて使用可能な2つの検出器の一方の平面図である。
【図6】本発明に係るX線撮像装置にて使用可能な2つの検出器の他方の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図2は、一般の光子計数型の検出器の動作を示すために、光子計数型の検出器の切断面を大きく拡大して示す断面図である。図2を参照すれば明らかなように、公知のタイプの光子計数型の検出器は、半田接続点3に接続された2つのプレート(検出器)1、2により構成されることがわかるであろう。一方のプレート1は、光子Xが複数の電荷に変換されるような半導体(または純粋な絶縁体)基板により構成される。これらの電荷をプレート1の表面の複数の電極4に向かわせるために、半導体基板内に電界が形成される。各々の電極4は、検出器の1つのピクセルに対応している。複数のピクセルに関する2つの可能な配列が、後述の図5および図6を参照することによって明らかであろう。
【0038】
各々の電極4は、半田接続点3(各々のピクセルに対して1つの半田接続点が存在する)を介して、他方のプレートの電極5に接続されている。プレート2は、複数のピクセルとほぼ同数の複数の完全な電子解析システムを有する半導体プレートである。それゆえに、各々の電極5は、1つの電子解析システムの入力電極になっている。
【0039】
図3は、図2の光子計数型の検出器における1つのピクセルを示す回路図である。図3を参照すれば明らかなように、各々の電子解析システムは、増幅器6と、単一のエネルギ閾値または2つのエネルギ閾値設定部7と、カウンタ8とを具備する。このカウンタ6の後段には、読み出し回路9が接続されている。
【0040】
図4は、本発明に係るX線撮像装置を示すブロック図である。図4を参照すれば明らかなように、本発明に係るX線撮像装置の実施形態では、前述のような多色X線源10および検出器(プレート)1、2が設けられていることがわかるであろう。多色X線源10と検出器1、2との間には、検査対象物11が配置されている。
【0041】
例えばマイクロコンピュータである閾値調整装置(調整手段)12は、プレート2の閾値調整接続部13に接続されている。
【0042】
プレート2の読み出し出力14は、プロセッサ(例えば、FPGA(field programmable grid array)タイプのプロセッサ)15に接続されている。このプロセッサ15の出力は、処理ユニット(処理手段)16に接続されている。この処理ユニット16は、例えば、閾値調整装置12と同様のマイクロコンピュータであってよい。
【0043】
ピクセルで構成された光子計数型の検出器1において、複数のピクセルの各々は、前述のような電子回路と関連付けられている。この検出器1によって、光子のエネルギが所定の値(エネルギ閾値)よりも大きい複数の光子を計数することが可能になる。このエネルギ閾値は、マイクロコンピュータ等の閾値調整装置12からプログラミングを行うことによって調整可能である。
【0044】
読み出しシステム(読み出し回路)9および閾値調整システム(単一のエネルギ閾値または2つのエネルギ閾値設定部)7は、閾値調整、データ取得および読み出しからなる3つの動作が、周期的または非周期的な動作モードで連続して実行されることが可能であるような実行速度を有する。この場合、データ取得時間に関しては、実質的にむだ時間(dead time)がない状態(例えば、2μsec(マイクロ秒)のオーダーのむだ時間のみ)になっている。このような構成は、プレート2内に設置されている一時レジスタ(temporary register)への高速転送のシステム、閾値調整装置12に割り当てられた予め規定されている分極値(polarization value)のマトリックス、および、プロセッサ15内の実行プログラムによって実現される。
【0045】
周期的な閾値の調整の場合には、2つのエネルギ・ウィンドウを有するX線断層撮影の例を挙げることが可能である。この場合、データ取得のシーケンスは、下記のとおりである。
【0046】
画像1
―閾値1の調整―データ取得―読み出し―閾値2の調整―データ取得―読み出し―閾値3の調整―データ取得―読み出し―閾値4の調整―データ取得―読み出し等
【0047】
ここで、検査対象物11の周囲の装置を回転させるステップが実行される。その後のデータ取得のシーケンスは、下記のとおりである。
画像2
―閾値1の調整―データ取得―読み出し―閾値2の調整―データ取得―読み出し―閾値3の調整―データ取得―読み出し―閾値4の調整―データ取得―読み出し等
【0048】
さらに、検査対象物11の周囲の装置を回転させるステップが再度実行され、画像3等が形成される。
これらの動作は、全てのピクセルに対して同時に実行される。
【0049】
このようにして、単一の閾値に関連した電子装置に対して要望される数とほぼ同数のエネルギ・ウィンドウが得られる。また一方で、光子の強度およびスペクトルのエネルギ・ウィンドウの両方に関して、1つのピクセルのサイズに対応する最高の空間分解能が維持される。
【0050】
他の実施形態のモードにおいて、閾値の動的調整は、例えば画像のコントラストの質等の基準に基づいて適応可能に行われる。このような基準は、処理ユニット16にて算出されることが可能である。この処理ユニット16は、閾値調整装置12に対してなされるべき新しい調整に対処することができる。
【0051】
図5は、本発明に係るX線撮像装置にて使用可能な2つの検出器の一方の平面図である。以下、図5を参照しながら説明する。
【0052】
複合ピクセルの原理は、所定の数のピクセル(2、3、4または5以上)をまとめてグループ化し、且つ、複数の基本ピクセルの各々、または当該複合ピクセルの複数の基本ピクセルのサブアセンブリ(sub−assembly)の各々に対して異なる閾値(相関している(related)または凸状(convex))を割り当てることにある。この場合、1回のX線断層撮影において、電子装置は、異なる閾値に基づいて光子を計数することが可能である。異なる閾値を有する複数のピクセルの計数値間で減算を行うことによって、1つのエネルギ・ウィンドウに対応する光子の数が取得される。
【0053】
例えば、4つの基本ピクセルからなる複合ピクセルの場合には、単一のX線照射において、2つの異なるエネルギ・ウィンドウを得ることが可能である。
すなわち、任意のエネルギ閾値En(nは任意の正の整数)よりも大きなエネルギに対して計数される光子の数をEnとし、E1<E2<E3<E4の関係が成立するとした場合、2つの異なるエネルギ・ウィンドウは下記のようになる。
(E2−E1)=[(E<E2)−(E<E1)]
および
(E4−E3)=[(E<E4)−(E<E3)]
【0054】
ここで、エネルギE5にて吸収率の急激な変化が生ずるような身体に対応する画像要素を選択する場合を想定する。ただし、E2<E5<E3の関係が成立するとしている。
【0055】
このような画像要素を選択するために、これらの2つのエネルギ・ウィンドウにそれぞれ対応する2つの計数値の差が見出される。2つの計数値の差は、下記のように算出される。
(E4−E3)−(E2−E1
【0056】
2つのエネルギ・ウィンドウが連続している場合、これらの2つのエネルギ・ウィンドウを形成する際に、複合ピクセルは、3つの基本ピクセルのみにより構成されることが可能である。この場合、2つのエネルギ・ウィンドウは下記のようになる。
(E2−E1)=[(E<E2)−(E<E1)]
および
(E3−E2)=[(E<E3)−(E<E2)]
【0057】
ここでは、各々のサブグループ(sub−group)において、これらの3つの基本ピクセルは、下記のように配列されることが可能である。
123
312
または
123
312
231
さらに、同一の閾値により調整される複数の基本ピクセル内で測定された値は、平均化され得る。
【0058】
図6は、本発明に係るX線撮像装置にて使用可能な2つの検出器の他方の平面図である。図6の実施形態においては、各々のピクセルに対して、1つのエネルギ・ウィンドウに対応する光子の数を直接知らせるように構成される。それゆえに、エネルギE5にて吸収率の急激な変化が生ずるような身体に対応する画像要素を示すためには、2つのピクセルがあれば十分である。ただし、ここでも、E2<E5<E3の関係が成立するとしている。
【0059】
図6の実施形態では、各々が4つのピクセルからなる複合ピクセルにより、単一のX線照射において、2つの異なる身体(または対比すべき生産品)に対応する画像要素をマークすることが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多色X線源(10)と、各々のピクセルが、少なくとも1つの調整可能な閾値により範囲が規定されている少なくとも1つのエネルギ・ウィンドウ内で光子計数モードにて動作するべく構成される複数のピクセルを有する検出器(1、2)と、少なくとも1つのカウンタとを備えるX線撮像装置であって、各々の前記ピクセルは、予め定められた期間にて前記エネルギ・ウィンドウ内で各々の前記ピクセルにより受領された光子の数に対応する出力を送出することが可能であり、
前記X線撮像装置は、さらに、
リアルタイムで、それぞれ異なる前記エネルギ・ウィンドウ内で前記複数のピクセルの閾値を連続して調整することが可能な調整手段(12)と、
リアルタイムで、それぞれ異なる前記エネルギ・ウィンドウ内で前記複数のピクセルの出力の微分処理を実行するための処理手段(16)とを備えることを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記複数のピクセルは、予め定められた幾何学的分布に従って複合ピクセルにグループ化された基本ピクセルであり、
前記調整手段は、前記幾何学的分布に従って、それぞれ異なる前記エネルギ・ウィンドウ内で前記複合ピクセルのそれぞれ異なる前記基本ピクセルの閾値を調整するように構成され、
前記処理手段は、同一の調整エネルギを有する前記複数のピクセルの空間的処理を実行するように構成される請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記調整手段は、リアルタイムで、周期的な時間的分布に従って前記複数のピクセルの閾値をそれぞれ異なる値に調整するように構成され、
前記処理手段は、時間的配列に従って前記複数のピクセルの出力を処理するように構成される請求項1または2記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記調整手段は、リアルタイムで、予め定められた基準に基づいて適応可能に前記複数のピクセルの閾値をそれぞれ異なる値に調整するように構成され、
前記処理手段は、時間的配列に従って前記複数のピクセルの出力を処理するように構成される請求項1または2記載のX線撮像装置。
【請求項5】
それぞれ異なる前記エネルギ・ウィンドウの少なくとも幾つかは、最低レベルの閾値および最高レベルの閾値により規定される請求項1から4のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
【請求項6】
それぞれ異なる前記エネルギ・ウィンドウの少なくとも幾つかは、連続している請求項1から5のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
【請求項7】
前記検出器は、2次元の検出器である請求項1から6のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
【請求項8】
前記検出器は、ハイブリッド型ピクセル検出器である請求項1から7のいずれか一項に記載のX線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−530058(P2010−530058A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506983(P2010−506983)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050807
【国際公開番号】WO2008/149003
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【出願人】(509309743)ユニベルシテ ドゥ ラ メディテラネ エ−マルセイユ ドゥーズィエーム (2)
【Fターム(参考)】