説明

多視点画像記録媒体および真贋判定方法

【課題】偽造防止性およびコバート要素を備える多視点画像記録媒体ならびに該多視点画像記録媒体を利用した真贋判定方法を提供する。
【解決手段】多視点画像記録媒体には、少なくとも1つの主画像と、主画像の表示される面積より小なる表示面積を有する副画像の複数個とが記録される。再生時に主画像および副画像の複数個が同時に表示され、副画像の複数個のうち、少なくとも1つが、視点の移動に従って変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多視点画像記録媒体および真贋判定方法に関する。特に、観察方向によって再生される画像情報が変化する多視点画像記録媒体およびその多視点画像記録媒体を利用した真贋判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市場における不正コピー商品の氾濫が大きな問題となっている。不正コピー商品が市場に流出してしまうと、直接的な売り上げの減少のほか、信用低下など、企業にとって大きな損害が発生してしまう。そのため、市場に流通している商品が真正商品であることを保証する手段を提供できることが望まれる。
【0003】
また、個人情報の保護の要求がますます高まっている。そのため、重要な情報が記録されるカード類、身分証明書等に真贋判定機能、偽造防止機能が付与されていることが望まれる。
【0004】
上述したような問題に対し、立体表示が可能なホログラムが真贋判定のために使用される。近年では、干渉パターンを記録層内部の屈折率の差として記録する体積型ホログラムが使用されることが多い。これは、体積型ホログラムの偽造には、記録画像の制作に高度な技術が要求されること、記録材料が入手困難なことによる。
【0005】
真贋判定技術には、一見してわかるオバート(Overt)と呼ばれる技術要素の他、器具などを使わないと判定しにくいコバート(Covert)と呼ばれる技術要素も望まれている。
【0006】
コバートな技術要素の一つとして、記録されるコンテンツに隠し文字を入れることが知られている(例えば、下記の特許文献1参照。)。また、ホログラムのコンテンツを細かい文字で構成し、顕微鏡などで観察するとその内容を読めるようすることや、故意にスペルミスを混入させるようなことも知られている。
【0007】
しかしながら、ホログラムに記録するコンテンツへの隠し文字やスペルミスの混入は、一度その存在に気付いてしまえば、実写ホログラムの手法を用いて、エンボスホログラム等による再現が不可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−262167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
偽造防止性およびコバート要素を備える多視点画像記録媒体ならびに該多視点画像記録媒体を利用した真贋判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
多視点画像記録媒体の好ましい実施の態様は、以下のとおりである。
少なくとも1つの主画像と、
主画像の表示される面積より小なる表示面積を有する副画像の複数個と
が記録され、
再生時に主画像および副画像の複数個が同時に表示され、
副画像の複数個のうち、少なくとも1つが、視点の移動に従って変化する。
【0011】
真贋判定方法の好ましい実施の態様は、以下のとおりである。
識別情報を備え、
少なくとも1つの主画像と、
主画像の表示される面積より小なる表示面積を有する副画像の複数個と
が記録され、
再生時に主画像および副画像の複数個が同時に表示され、
副画像の複数個のうち、少なくとも1つが、視点の移動に従って変化する多視点画像記録媒体に対し、
識別情報および副画像の変化を特徴づける量を関連付けて登録するデータベースを準備し、
識別情報および副画像の変化を特徴づける量をデータベースに照会することにより真贋判定を行う。
【発明の効果】
【0012】
少なくとも1つの実施例によれば、多視点画像記録媒体の偽造防止性および真贋判定機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】副画像の変化の第1の構成例を示す概略図である。
【図2】副画像の変化の第2の構成例を示す概略図である。
【図3】副画像の変化の第3の構成例を示す概略図である。
【図4】副画像の変化の第4の構成例を示す概略図である。
【図5】副画像の変化の第5の構成例を示す概略図である。
【図6】副画像の変化の第6の構成例を示す概略図である。
【図7】副画像の変化の第7の構成例を示す概略図である。
【図8】多視点画像記録媒体に記録されるコンテンツの例を示す図である。
【図9】副画像のそれぞれに番号を振り、その番号を用いて副画像の位置を指定する場合の例を示す図である。
【図10】副画像を付与したホログラム原版を説明するための概略図である。
【図11】ホログラフィックステレオグラム作成システムの一構成例を示す略線図である。
【図12】ホログラフィックステレオグラム作成時の画像処理の一例の説明に用いる略線図である。
【図13】ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置の光学系の一例を示す略線図である。
【図14】ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置の光学系の他の例を示す略線図である。
【図15】ホログラム用記録媒体の一例を示す断面図である。
【図16】光重合型フォトポリマの感光プロセスを示す略線図である。
【図17】記録媒体送り機構の一構成例を示す略線図である。
【図18】露光処理の一例のフローチャートである。
【図19】コンタクトコピー装置の概略を示した略線図である。
【図20】多視点画像記録媒体の一構成例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、多視点画像記録媒体および真贋判定方法の実施の形態について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<0.体積型ホログラム>
[ホログラム原版の作成]
[コンタクトプリントによる複製]
<1.第1の実施の形態>
[多視点画像記録媒体]
[観察方向の変化に伴う副画像の変化の例]
<2.第2の実施の形態>
[記録されるコンテンツに対する関連付けの例]
<3.第3の実施の形態>
[多面付け原版への副画像の付与]
<4.第4の実施の形態>
<5.変形例>
【0015】
なお、以下に説明する実施の形態は、多視点画像記録媒体および真贋判定方法の好適な具体例である。以下の説明においては、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、多視点画像記録媒体および真贋判定方法の例は、以下に示す実施の形態に限定されないものとする。
【0016】
<0.体積型ホログラム>
実施の形態の説明の前に、観察する方向に応じて、記録された情報が切り替わる体積型ホログラムおよびその製造方法について説明する。
【0017】
体積型ホログラムの制作方法としては、被写体にレーザを照射する実写ホログラムと、多視点からの視差画像をもとに記録するホログラフィックステレオグラムとがある。以下では、ホログラフィックステレオグラムについて説明する。
【0018】
ホログラフィックステレオグラムを制作する過程は、概略的には、画像の取得と、取得した画像の編集等の処理からなるコンテンツ製作工程と、ホログラム原版作成工程と、複製(量産)工程とからなる。画像は、撮像、またはコンピュータグラフィックスにより取得される。画像編集工程で得られた複数の画像のそれぞれが例えば円筒状レンズによって短冊状の画像に変換される。画像の物体光と参照光との干渉縞が短冊状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体に順次記録されることによって原版が作製される。原版に対してホログラム記録媒体が密着され、レーザ光が照射され、ホログラムが複製される。
【0019】
[ホログラム原版の作成]
まず、被複製ホログラム原版の作成について説明する。
【0020】
ホログラフィックステレオグラムは、多数の画像を原画として、これらを1枚のホログラム用記録媒体に短冊状の要素ホログラムとして順次記録することにより制作される。したがって、ホログラフィックステレオグラムの手法によれば、異なる視点から見た被写体の2次元画像を原画として、3次元画像を再生するホログラムを合成することが可能である。
【0021】
短冊状の要素ホログラムを順次記録する場合には、水平方向のみに視差を持つHPO(Horizontal Parallax Only)ホログラフィックステレオグラムが作成される。HPO型は、プリントにかかる時間が短く、高画質記録が実現できる。なお、体積型ホログラム記録媒体を使えば、上下方向視差も記録できるため、記録方式において上下視差も入れて水平方向および垂直方向の両方向に視差を持つFP(Full Parallax)型のホログラフィックステレオグラムを作成することもできる。
【0022】
(ホログラフィックステレオグラム作成システム)
ホログラフィックステレオグラムを作成するホログラフィックステレオグラム作成システムの一構成例について説明する。以下では、短冊状の複数の要素ホログラムを1つの記録媒体上に記録することにより、水平方向の視差情報を持たせたホログラフィックステレオグラムを構成するための装置について説明する。
【0023】
このホログラフィックステレオグラム作成システムは、物体光と参照光との干渉縞が記録されたホログラム記録媒体をそのままホログラフィックステレオグラムとする、いわゆるワンステップホログラフィックステレオグラムを作成するシステムである。図11に示すように、ホログラフィックステレオグラム作成システムは、記録対象の画像データの処理を行うデータ処理部10と、このシステム全体の制御を行う制御用コンピュータ20と、ホログラフィックステレオグラム作成用の光学系を有するホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30とから構成されている。
【0024】
データ処理部10は、多眼式カメラや移動式カメラ等を備えた視差画像列撮影装置130から供給される視差情報を含む複数の画像データD1に基づいて、視差画像列D3を生成する。または、画像データ生成用コンピュータ140によって生成された視差情報を含む複数の画像データD2に基づいて、視差画像列D3を生成させてもよい。
【0025】
ここで、視差画像列撮影装置130から供給される視差情報を含む複数の画像データD1は、複数画像分の画像データである。かかる画像データは、例えば、多眼式カメラによる同時撮影、または移動式カメラによる連続撮影等によって、実物体を水平方向の異なる複数の観察点から撮影することにより得られる。
【0026】
画像データ生成用コンピュータ140によって生成される画像データD2は、視差情報を含む複数の画像データからなっている。画像データD2は、例えば、水平方向に順次視差を与えて作成された複数のCAD(Computer Aided Design)画像やCG(Computer Graphics)画像等の画像データである。
【0027】
データ処理部10は、視差画像列D3に対して画像処理用コンピュータ110によってホログラフィックステレオグラム用の所定の画像処理を施す。そして、所定の画像処理が施された画像データD4を、メモリまたはハードディスク等の記憶装置120に記録する。
【0028】
また、データ処理部10は、ホログラム用記録媒体に画像を記録する際に、記憶装置120に記録された画像データD4から、1画像分毎にデータを順番に読み出し、この画像データD5を制御用コンピュータ20に送出する。
【0029】
一方、制御用コンピュータ20は、ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30を駆動する。データ処理部10から供給された画像データD5に基づく画像が、ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30内にセットされたホログラム記録媒体300に、短冊状の要素ホログラムとして順次記録される。
【0030】
このとき、制御用コンピュータ20は、後述するように、ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30に設けられたシャッタ320、表示装置410および記録媒体送り機構等の制御を行う。すなわち、制御用コンピュータ20は、シャッタ320に制御信号S1を送出してシャッタ320の開閉を制御する。また、表示装置410に画像データD5を供給して表示装置410に当該画像データD5に基づく画像を表示させる。さらに、記録媒体送り機構に制御信号S2を送出して記録媒体送り機構によるホログラム記録媒体300の送り動作を制御する。
【0031】
画像処理は、図12に示すように、視差情報を含む複数の画像データD1のそれぞれを視差方向、すなわち、横(幅)方向にスリット状に分割し、分割後のスライスを寄せ集めて処理後の画像D5を再構成するものである。この画像D5が表示装置410に表示される。
【0032】
上述したホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30の光学系について、図13を参照してより詳細に説明する。なお、図13Aは、ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30全体の光学系を上方から見た図であり、図13Bは、ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30全体の光学系を横から見た図である。
【0033】
(ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置)
ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30は、図13に示すように、所定の波長のレーザ光を出射するレーザ光源310と、レーザ光源310からのレーザ光L1の光軸上に配されたシャッタ320、ミラー380およびハーフミラー330とを備えている。ここで、レーザ光源310には、例えば、波長が約532nmのレーザ光を出射するものを用いる。
【0034】
シャッタ320は、制御用コンピュータ20によって制御され、ホログラム記録媒体300を露光しないときには閉じられ、ホログラム記録媒体300を露光するときに開放される。また、ハーフミラー330は、シャッタ320を通過してきたレーザ光L2を、参照光と物体光とに分離するためのものであり、ハーフミラー330によって反射された光L3が参照光となり、ハーフミラー330を透過した光L4が物体光となる。
【0035】
なお、この光学系において、ハーフミラー330によって反射され、ホログラム記録媒体300に入射する参照光の光路長と、ハーフミラー330を透過しホログラム記録媒体300に入射する物体光の光路長とは、ほぼ同じ長さとする。これにより、参照光と物体光との干渉性が高まり、より鮮明な再生像が得られるホログラフィックステレオグラムを作成することが可能となる。
【0036】
ハーフミラー330によって反射された光L3の光軸上には、参照光用の光学系として、シリンドリカルレンズ340と、参照光を平行光とするためのコリメータレンズ350と、コリメータレンズ350からの平行光を反射する反射ミラー360とがこの順に配置されている。
【0037】
そして、ハーフミラー330によって反射された光は、まず、シリンドリカルレンズ340によって発散光とされる。次に、コリメータレンズ350によって平行光とされる。その後、反射ミラー360によって反射され、ホログラム記録媒体300の裏面側に入射する。
【0038】
一方、ハーフミラー330を透過した光L4の光軸上には、物体光用の光学系が設けられる。光学系として、ハーフミラー330からの透過光を反射する反射ミラー380、凸レンズとピンホールを組み合わせたスペーシャルフィルタ390、物体光を平行光とするためのコリメータレンズ400が使用される。さらに、記録対象の画像を表示する表示装置410、表示装置410を透過してきた光を要素ホログラムの幅方向に拡散させる一次元拡散板420が使用される。さらに、一次元拡散板420を透過した物体光をホログラム記録媒体300上に集光するシリンドリカルレンズ430、一次元拡散機能をもつ光学機能板450が使用される。
【0039】
シリンドリカルレンズ430が第1の視差方向(要素ホログラム短手方向または観察時水平方向)に物体光を集光する。
【0040】
光学機能板450は、集光された物体光を短冊状の要素ホログラムの長手方向に一次元的に拡散するもので、長手方向での視点の移動に対応するためのものである。光学機能板450は、微細な構造体であり、例えばピッチが微細なレンチキュラーレンズを光学機能板450として使用することができる。
【0041】
そして、ハーフミラー330を透過した光L4は、反射ミラー380によって反射された後、スペーシャルフィルタ390によって点光源からの発散光とされる。次に、コリメータレンズ400によって平行光とされ、その後、表示装置410に入射する。ここで、本例では、スペーシャルフィルタ390には、20倍の対物レンズと直径20μmのピンホールを用いた。また、コリメータレンズ400の焦点距離は100mmとした。
【0042】
表示装置410は、例えば液晶ディスプレイからなる投影型の画像表示装置であり、制御用コンピュータ20によって制御され、制御用コンピュータ20から送られた画像データD5に基づく画像を表示する。本例では、画素数480×1068、大きさ16.8mm×29.9mmの白黒液晶パネルを用いた。
【0043】
そして、表示装置410を透過した光は、表示装置410に表示された画像によって変調された光となり、一次元拡散板420によって拡散される。一次元拡散板420は、表示装置410の近傍に配置すればよく、表示装置410の直前、あるいは直後に配置される。本例では、表示装置410の直後に配置した。
【0044】
ここで、一次元拡散板420は、表示装置410からの透過光を要素ホログラム幅方向に若干拡散させることにより、要素ホログラム内に光を分散させることで、作成されるホログラフィックステレオグラムの画質の向上に寄与する。
【0045】
このとき、拡散板420には、拡散板移動手段(図示は省略する)を設け、各要素ホログラムを形成する毎にこれをランダムに移動し、その位置を要素ホログラム毎に変えるようにする。これにより、ホログラムを観察したときに無限遠に定位するノイズを低減することができる。
【0046】
拡散板420の移動のための拡散板移動手段としては、ステッピングモータ等の機械的手法によって拡散板420を一定量ずつ移動する移動機構等が採用できる。この構成による拡散板420の移動方向は、要素ホログラムの幅方向(図13B中、矢印X方向)であってもよいし、これとは直交する方向(図13A中、矢印Y方向)であってもよい。さらには、これらを組み合わせてもよいし、全くのランダムに移動してもよい。往復動とすることも可能である。
【0047】
このように、拡散板420を配置することで、要素ホログラムの幅内が一様に露光される。そのため、得られるホログラムの画質が向上する。しかしながら、一様な露光を実現しようとすると、拡散板420の拡散をある程度強くする必要がある。拡散板420により拡散された物体光は、ホログラム記録媒体300上で広がりを持ち、本来の要素ホログラムの幅よりも広い範囲を露光してしまうことになる。
【0048】
そこで、光路中に、図14に示すように、マスク440を配置し、その像を記録材料上に投影することにより、各要素ホログラムが適正な幅で露光されるようにする。すなわち、拡散板420による拡散と、マスク440による不要光の遮蔽によって、一様で適正な露光幅が得られるようにする。マスクの位置は、図14Aおよび図14Bに示すように、拡散板42とシリンドリカルレンズ430との間に設けてもよいし、ホログラム記録媒体300に近接させてもよい。
【0049】
すなわち、表示装置410からの透過光は、拡散板420を透過して要素ホログラムの幅方向に拡散された後、シリンドリカルレンズ430によりホログラム記録媒体300上に集束される。このとき、拡散板420の影響により、物体光は1点には集光せず、ある範囲に広がる。
【0050】
図14に示すように、この広がった集束光のうち、中心部の所定範囲だけをマスク440の開口部440aを透過させ、物体光としてホログラム記録媒体300に入射する。物体光の形状は短冊状である。
【0051】
上述したように、光学機能板450が第2の拡散板として配置されており、物体光は、短冊状の要素ホログラムの長手方向に一次元的に拡散され、ホログラム記録媒体300に照射される。これにより、反射型ホログラムの縦方向(垂直方向)の視野角を広げることができる。
【0052】
通常の水平方向のみに視差を持つホログラフィックステレオグラムでは、この光学機能板450は、最終ホログラフィックステレオグラムの上下方向視野角とほぼ同等の光学機能角を持たせる。一方、この一次元拡散角を狭くすれば、複数の画像情報をホログラフィックステレオグラムに記録した場合に、画像情報同士のオーバーラップを避けることができる。
【0053】
ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30は、制御用コンピュータ20の制御のもとに、ホログラム記録媒体300を1要素ホログラム分だけ間欠送りし得る記録媒体送り機構500を備えている。この記録媒体送り機構500は、後述するように、制御用コンピュータ20からの制御信号に基づいて、フィルム状のホログラム記録媒体を間欠送りし得るようになっている。そして、プリンタ装置30でホログラフィックステレオグラムを作成する際は、記録媒体送り機構500にセットされたホログラム記録媒体300に対して、視差画像列の各画像データに基づく画像を短冊状の要素ホログラムとして順次記録する。
【0054】
(ホログラム記録媒体の一例)
ここで、上述したホログラフィックステレオグラム作成システムにおいて使用されるホログラム記録媒体300について、詳細に説明する。このホログラム記録媒体300は、図15に示すように、テープ状に形成されたフィルムベース材300a上に光重合型フォトポリマからなるフォトポリマ層300bが形成される。さらに、当該フォトポリマ層300b上にカバーシート300cが被着されることにより形成された、いわゆるフィルム塗布タイプの記録媒体である。
【0055】
光重合型フォトポリマは、初期状態では、図16Aに示すように、モノマMがマトリクスポリマに均一に分散している。これに対して、図16Bに示すように、10〜400mJ/cm2程度のパワーの光LAを照射すると、露光部においてモノマMが重合する。そして、ポリマ化するにつれて周囲からモノマMが移動してモノマMの濃度が場所によって変化し、これにより、屈折率変調が生じる。この後、図16Cに示すように、1000mJ/cm2程度のパワーの紫外線または可視光LBを全面に照射することにより、モノマMの重合が完了する。このように、光重合型フォトポリマは、入射された光に応じて屈折率が変化するので、参照光と物体光との干渉によって生じる干渉縞を、屈折率の変化として記録することができる。
【0056】
このような光重合型フォトポリマを用いたホログラム記録媒体300は、露光後に特別な現像処理を施す必要が無い。したがって、光重合型フォトポリマを感光部に用いたホログラム記録媒体300を使用する本実施の形態に係るホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30は、構成を簡略化することができる。
【0057】
(記録媒体送り機構)
次に、記録媒体送り機構500について、詳細に説明する。図17は、ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置30の記録媒体送り機構500の部分を拡大した図である。
【0058】
図17に示すように、記録媒体送り機構500は、ローラ510と、間欠送り用ローラ520とを備えており、ホログラム記録媒体300は、ローラ510に巻き付けられた状態でフィルムカートリッジ530内に収納されている。そして、この記録媒体送り機構500は、所定位置に装填されたフィルムカートリッジ530内のローラ510を所定のトルクをもって回転自在に軸支する。さらに、当該フィルムカートリッジ530から引き出されたホログラム記録媒体300は、ローラ510と間欠送り用ローラ520とで保持し得るようになされている。このとき、記録媒体送り機構500は、ホログラム用記録媒体300の主面が、ローラ510と間欠送り用ローラ520と間において物体光に対してほぼ垂直とされる。そのため、ホログラム記録媒体300を保持する。また、ローラ510および間欠送り用ローラ520は、トーションコイルばねにより互いに離反する方向に付勢されている。これにより、ローラ510と間欠送り用ローラ520との間に掛け渡されるようにローディングされたホログラム用記録媒体300に対して、所定のテンションが付与される。
【0059】
記録媒体送り機構500の間欠送り用ローラ520は、図示しないステッピングモータに接続されており、当該ステッピングモータからの回転力に基づいて、図中矢印A1で示す方向に自在に回転し得るようになされている。このステッピングモータは、制御用コンピュータ20から供給される制御信号S2に基づいて、1画像分の露光終了毎に1要素ホログラムに対応した所定角度だけ、間欠送り用ローラ520を順次回転させる。これにより、ホログラム記録媒体300は、1画像分の露光毎に1要素ホログラム分だけ送られることとなる。
【0060】
また、ホログラム記録媒体300の進路のうち間欠送り用ローラ520の後段には、当該進路に沿って紫外線ランプ540が配設されている。この紫外線ランプ540は、露光されたホログラム記録媒体300のモノマMの重合を完了させるためのものであり、間欠送り用ローラ520によって送られてきたホログラム記録媒体300に対して、所定パワーの紫外線UVを照射し得るようになされている。
【0061】
さらに、ホログラム記録媒体300の進路のうち紫外線ランプ540の後段には、回転自在に軸支されたヒートローラ550と、一対の排出用送りローラ560,570と、カッター580とが順次配設されている。
【0062】
ここで、排出用送りローラ560,570は、ホログラム記録媒体300のカバーシート300c側がヒートローラ550の周側面に約半周にわたって密着した状態に巻きつくように、ホログラム記録媒体300を送るようになされている。この排出用送りローラ560,570は、図示しないステッピングモータに接続されており、当該ステッピングモータからの回転力に基づいて回転し得るようになされている。このステッピングモータは、制御用コンピュータ20から供給される制御信号S2に基づいて回転される。すなわち、1画像分の露光終了毎に1要素ホログラムに対応した所定角度だけ、間欠送り用ローラ520の回転と同期して、排出用送りローラ560,570が順次回転する。これにより、ホログラム記録媒体300は、間欠送り用ローラ520と排出用送りローラ560,570と間において弛むことなく、確実にヒートローラ550の周側面に密着した状態で送られることとなる。
【0063】
ヒートローラ550は、内部にヒータ等の発熱手段を備えており、この発熱手段により、その周側面が約120℃程度の温度を保ち得るようになされている。そして、このヒートローラ550は、送られてきたホログラム記録媒体300のフォトポリマ層300bをカバーシート300cを介して加熱する。この加熱により、フォトポリマ層300bの屈折率変調度を増加させ、ホログラム記録媒体300に記録画像を定着させる。このため、ヒートローラ550は、その周側面にホログラム記録媒体300が当接し始めてから離れるまでに記録画像が定着し得る程度の時間がかかるようにその外径が選定されている。
【0064】
また、カッター580は、図示しないカッター駆動機構を備えており、このカッター駆動機構を駆動することにより、送られてきたホログラム記録媒体300を切断し得るようになされている。このカッター駆動機構は、カッター580を駆動させる。すなわち、記録媒体300に視差画像列の各画像データに基づく各画像が全て記録された後、当該記録媒体300の画像が記録された全ての部分が排出された段階で、カッター580が駆動される。これにより、画像データが記録された部分が他の部分から切り離され、1枚のホログラフィックステレオグラムとして外部に排出される。
【0065】
(ホログラフィックステレオグラム作成システムの動作)
以上のような構成を有するホログラフィックステレオグラム作成システムにおいて制御用コンピュータ20の制御の下でホログラフィックステレオグラムを作成する際の動作について図18のフローチャートを参照して説明する。
【0066】
ステップST1では、ホログラム記録媒体300が初期位置とされる。ステップST2がループの開始端のステップであり、ステップST7がループの終了端のステップである。ステップST3〜ステップST6の一連の処理が実行される毎に、要素ホログラムの1本の処理が終了され、全ての要素ホログラムの本数(n)が終了するまで、ST3〜ST6が繰り返される。
【0067】
ステップST3において、制御用コンピュータ20は、データ処理部10から供給された画像データD5に基づいて表示装置410を駆動して、表示装置410に画像を表示させる。ステップST4において、制御用コンピュータ20は、シャッタ320に制御信号S1を送出して所定時間だけシャッタ320を開放させ、ホログラム記録媒体300を露光する。このとき、レーザ光源310から出射されシャッタ320を透過したレーザ光L2のうち、ハーフミラー330によって反射された光L3が、参照光として、ホログラム記録媒体300に入射する。同時に、ハーフミラー330を透過した光L4が、表示装置410に表示された画像が投影された投影光となり、当該投影光が物体光としてホログラム記録媒体300に入射する。これにより、表示装置410に表示された1画像が、ホログラム記録媒体300に短冊状の要素ホログラムとして記録される。
【0068】
そして、1画像の記録が終了すると、ステップST5において、制御用コンピュータ20は、間欠送り用ローラ520を駆動するステッピングモータと、排出用送りローラ560,570を駆動するステッピングモータに制御信号S2を送出する。ステッピングモータを駆動することにより、ホログラム記録媒体300を1要素ホログラム分だけ送らせる。ホログラム記録媒体300を送った後は、振動が減衰するのを待つ時間が設けられる(ステップST6)。
【0069】
次いで、ステップST3に処理が戻り、制御用コンピュータ20がデータ処理部10から供給される次の画像データD5に基づいて表示装置410を駆動して、次の画像を表示装置410に表示させる。この後、上述と同様の動作(ST4,ST5,ST6)を順次繰り返すことにより、データ処理部10から供給される各画像データD5に基づく各画像が、ホログラム記録媒体300に短冊状の要素ホログラムとして順次記録される。
【0070】
すなわち、このホログラフィックステレオグラム作成システムでは、記憶装置120に記録された画像データに基づく画像が表示装置410に順次表示される。これとともに、各画像毎にシャッタ320が開放され、各画像がそれぞれ短冊状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体300に順次記録される。このとき、ホログラム記録媒体300は、1画像毎に1要素ホログラム分だけ送られるので、各要素ホログラムは、観察時の水平方向(横方向)に連続して並ぶこととなる。これにより、水平方向の視差情報の画像が、横方向に連続した複数の要素ホログラムとしてホログラム用記録媒体300に記録される。このようにして水平方向の視差を有するホログラフィックステレオグラムが得られる。
【0071】
以上、露光過程までを説明したが、その後、必要に応じて後処理(ステップST8)が行われ、プリント工程が完了する。紫外線照射、および、加熱が必要なフォトポリマの場合、図17に示すような装置構成とすることができる。すなわち、紫外線ランプ540から紫外線UVが照射される。これにより、モノマMの重合が完了する。次いで、ホログラム記録媒体300は、ヒートローラ550により加熱され、これにより、記録画像の定着がなされる。
【0072】
そして、画像が記録された部分が全て外部に送り出されると、制御用コンピュータ20は、カッター駆動機構に制御信号S2を供給して、カッター駆動機構を駆動する。これにより、ホログラム記録媒体300のうち、画像が記録された部分がカッター580によってから切り離され、1枚のホログラフィックステレオグラムとして外部に排出される。以上の工程により、水平方向の視差を有するホログラフィックステレオグラムが完成する。
【0073】
[コンタクトプリントによる複製]
上述したようにして、画像情報が記録された体積型ホログラムを得ることができる。さらに、体積型ホログラムに記録された画像情報を再生させ、その再生光を物体光として、別のホログラム記録媒体に画像情報をコピーすることもできる。このような手法は、画像情報を記録したホログラムを原版とし、別のホログラム記録媒体を密着させた状態で記録を行うことから、コンタクトプリントと呼ばれる。以下、コンタクトプリントによる複製をコンタクトコピーと適宜称する。
【0074】
図19は、コンタクトコピー装置の概略を示した略線図である。図19に示すように、コンタクトコピー装置では、レーザ光源111からのレーザ光が空間フィルタ117によって拡大され、コリメーションレンズ119に入射される。コリメーションレンズ119によって平行光とされたレーザ光が、感光性材料を含むホログラム記録媒体101およびホログラム原版511に照射(S偏光)される。
【0075】
ホログラム原版511は、例えばリップマン型ホログラムである。感光性材料の層を有するホログラム記録媒体101およびホログラム原版511は、直接密着されるか、屈折率調整液(インデックスマッチング液と称される)を介して密着される。ホログラム記録媒体101には、ホログラム原版511によって回折した光と、入射レーザ光とによって形成される干渉パターンが記録される。
【0076】
<1.第1の実施の形態>
次に、実施の形態について説明する。多視点画像記録媒体として、ホログラム記録媒体を例にとって説明を行う。
【0077】
第1の実施の形態によれば、ホログラム記録媒体には、複数の画像情報が記録されている。ホログラム記録媒体のコンテンツとして、少なくとも1つの主画像と、主画像の表示される面積より小なる表示面積を有する副画像の複数個とが記録される。再生時に主画像と同時に表示される複数の副画像のうち、少なくとも1つが、ホログラム記録媒体を観察する視点の移動に従って変化する。ここで、主画像とは、媒体に表示されている画像のうち、観察者に主として知覚されるものを指す。
【0078】
副画像が隠し文字の役割を果たし、ホログラム記録媒体の偽造防止性を高める。さらに、副画像の存在に気づかれても、その表示面積の大きさから、副画像が変化していることまでは気づかれにくく、より高い真贋判定機能をホログラム記録媒体に与えることができる。
【0079】
実写ホログラムでは、連続的な変化を伴うコンテンツが記録された原版の制作が困難である。そのため、観察する視点の移動に従って変化する副画像をホログラフィックステレオグラムの手法などにより作成して体積型ホログラムに記録しておけば、体積型ホログラムを、きわめて偽造防止効果の高いホログラム記録媒体とすることができる。もちろん、ホログラフィックステレオグラムに代えて計算機合成ホログラムを使用してもよい。
【0080】
したがって、好ましい実施の態様によれば、単純に隠し文字が記録された多視点画像記録媒体に比べ、偽造防止効果のより高い多視点画像記録媒体を得ることができる。
【0081】
[多視点画像記録媒体]
図20は、多視点画像記録媒体の一構成例を示した概略図である。多視点画像記録媒体は、例えば、観察する視点の移動に従って変化するように、複数の画像が記録された体積型ホログラムである。図20に示す構成例では、観察者の視点に応じて、3つの主画像が切り替わるように記録が行われている。すなわち、ホログラム記録媒体201に対して左側から観察を行うと、図20Bに示すように、「L」という画像情報が観察される。ホログラム記録媒体201に正対して観察を行うと、図20Cに示すように、自動車の画像情報が観察される。ホログラム記録媒体201に対して右側から観察を行うと、図20Dに示すように、「R」という画像情報が観察される。なお、これらの画像情報は、観察者の視点の変化に応じて、あるところを境に急激に切り替わるようなものでもよいし、連続的に切り替わるようなものとしてもよい。
【0082】
このような主画像の切り替わりおよび多視点画像記録媒体に記録されているコンテンツの内容を確認することが、多視点画像記録媒体の第1の真贋判定のポイントとなる。主画像の切り替わりは、1つの視差方向に対して3つ程度にしておくと、観察者にとって画像情報の切り替わりが確認しやすく好ましい。
【0083】
図20に示す構成例では、上述した「L」、「R」および自動車の画像情報に加えて、これらよりも小さな表示面積を有する副画像が、「L」および「R」の表示される領域内に複数個記録されている。例えば、図20Bおよび図20Dに示すように、アルファベット一文字を単位とする副画像の一群が記録されている。すなわち、図20Bおよび図20Dに示す例では、微小なアルファベット一文字一文字が副画像であり、副画像を単位としてなる「GENUINE」というマイクロテキストが記録されている。さらに、一部の「G」の文字が、他のマイクロテキストとは異なった角度で記録されている。なお、副画像の角度を異ならせるほか、スペルミスを故意に混入させていてもよい。
【0084】
図20の例では、これらの副画像が、隠し文字の役割を果たす。偽造防止の観点から、副画像は、表示されたときに占める面積が小さい方が好ましい。ここで、副画像の表示面積とは、表示される副画像が包括される領域の面積のことを指す。例えば、表示される副画像が文字であれば、その一文字を包括する長方形を想定し、その長方形の面積を表示面積とすることができる。副画像の大きさを、副画像の表示面積によって規定する場合、個々の副画像の表示面積が、50mm2以下であることが好ましく、10mm2以下であることがより好ましく、2mm2以下であることがさらに好ましい。または、副画像の表示面積が、主画像の表示される面積の1/10以下であると、観察者の注意が主として主画像の方に向けられるので、隠し文字として副画像を記録することの効果が高くなるため好ましい。
【0085】
ここで、副画像の表示面積として、好ましくは50mm2以下としたのは、一般的な偽造防止用ラベルは30mm角以内の大きさであり、その面積900mm2のうち、主画像面積を500mm2と想定したときの1/10が50mm2となるためである。
【0086】
副画像の表示面積は、多視点画像記録媒体の発行者が必要に応じて適宜設定すればよい。副画像の表示面積に応じて、目視レベルで気付く(Overt)、虫眼鏡レベルで気付く(Covert)、顕微鏡などで詳細検討してやっとわかる(Forensic)というように、動的な副画像を記録しておくことによる効果を選択することができるからである。
【0087】
副画像の表示面積が50mm2以下であるとしたときのOvertの効果として、誰が見ても動的な副画像の存在に気付くようにし、真贋判別ポイントの一つとして告知しておくということが考えられる。副画像の表示面積が10mm2以下であるとしたときのCovertの効果として、簡単には動的な副画像の存在を気付かれないようにし、一般には告知しないでおく。偽造品製造者はこのことに気付かずに、静的な副画像のみが記録された偽モノを製造することになるが、真正品を提供する側は、適当なタイミングを見計らって、真贋判別のポイントとして動的な副画像の存在を一般に告知することができる。副画像の表示面積が2mm2以下であるとしたときのForensicの効果として、専門家が厳密に調べれば、真正品と偽造品の差が確実にわかるため、押収品を証拠として鑑別するような際に有効となる。
【0088】
このように、多視点画像記録媒体に対して、Overt、CovertまたはForensicのどのような効果を持たせたいかにより、副画像の表示面積を設定することができる。したがって、副画像は、目視できない程度の表示面積を有するものであってもよい。この場合において、副画像は、虫眼鏡や顕微鏡などの器具を適宜選択・使用することによって、その存在が確認できる程度の表示面積を有していればよい。また、例えば、1m四方のポスターに50mmの文字高で副画像を表示させ、遠くから見たときに隠し文字としての効果を発揮させるといったこともできる。なお、複数ある副画像の表示面積は、全て同じである必要はなく、段階的に設定してもよい。
【0089】
好ましい実施の態様は、上述したような副画像を、観察者の視点に応じて変化するようにさせるものである。副画像の存在および観察者の視点に応じた副画像の変化を確認することが、多視点画像記録媒体の第2の真贋判定のポイントとなる。なお、ホログラムは、(照明光の入射方向,ホログラムの観察方向,ホログラムの向き)のうち、いずれかを変化させても、再生される画像情報が変化する。したがって、本明細書にいう観察方向の変化とは、照明光の入射方向を変化させることや多視点画像記録媒体自体の向きを変化させることも含むものとする。
【0090】
[観察方向の変化に伴う副画像の変化の例]
次に、多視点画像記録媒体に記録されるコンテンツとして好適な例を説明する。以下の説明では、逆T字型の主画像Imおよび副画像Isの一群Gが、主画像Imの内部の領域に記録されている場合を例にとる。なお、以下で参照する図1〜図10に示すコンテンツの例は、主画像や副画像を模式的に示したものである。したがって、主画像や副画像の例は、実際の表示面積を現したものではない。
【0091】
以下の説明では、水平方向に視差を有する画像がホログラム記録媒体に記録されている場合を例にとるが、水平方向のみではなく、上下方向やその他の方向に視差を有する画像が記録されていても構わない。また、視点の移動に伴って、主画像Imが変化するように記録されたものを考えてもよい。
【0092】
なお、副画像とは、マイクロ文字や微小記号、微小な模様などの総称を指すものとする。副画像は、記録されるべき画像情報として、特にその内容が限定されるものではない。副画像として何を選択するかは、多視点画像記録媒体の発行者が、必要に応じて自由に選択することができる。また、変化する副画像の数も、多視点画像記録媒体の発行者が、必要に応じて自由に選択することができるものである。
【0093】
(第1の構成例)
図1は、副画像の変化の第1の構成例を示す概略図である。図1Aに示すように、ホログラム記録媒体1に対する観察方向をDb〜Dc〜Ddと変化させると、観察者の視点の移動に従って、副画像が連続的に変化する。すなわち、観察者に知覚される画像情報が、図1B〜図1C〜図1Dに示すように順に変化する。
【0094】
図1に示す例では、副画像Isのうち、「B」の文字が、記録面に略垂直な軸を中心として回転していくように記録がなされている。副画像Isの回転方向は、右回りまたは左回りのどちらをとってもよいし、ある視点を境に回転方向が逆となるようなものでもよい。
【0095】
(第2の構成例)
図2は、副画像の変化の第2の構成例を示す概略図である。図2Aに示すように、ホログラム記録媒体1に対する観察方向をDb〜Dc〜Ddと変化させると、観察者の視点の移動に従って、副画像が連続的に変化する。すなわち、観察者に知覚される画像情報が、図2B〜図2C〜図2Dに示すように順に変化する。
【0096】
図2に示す例では、副画像Isのうち、「B」の文字が、記録面を含む軸SAを中心として回転していくように記録がなされている。回転軸SAは、面内のどの方向を向いていてもよいし、回転軸SAに対する回転方向も、右回りまたは左回りのどちらをとってもよい。
【0097】
(第3の構成例)
図3は、副画像の変化の第3の構成例を示す概略図である。図3Aに示すように、ホログラム記録媒体1に対する観察方向をDb〜Dc〜Ddと変化させると、観察者の視点の移動に従って、副画像が連続的に変化する。すなわち、観察者に知覚される画像情報が、図3B〜図3C〜図3Dに示すように順に変化する。
【0098】
図3に示す例では、副画像Isのうち、「B」の文字を観察したときの輝度が連続的に変化していくように記録がなされている。すなわち、観察者は、「B」の文字の見ための明るさが連続的に変化しているように感じられる。ここでいう輝度とは、反射面や透過面から観測者の方向へ向かって発する光の強さを人間の目の感度(CIE標準分光視感効率V[λ])で評価した測光量を指す。ホログラムの場合、照明光の強さによって回折されて見える像の輝度は変わるので、同じ条件で照明したときの相対的数値で評価する。
【0099】
例えば、ホログラム記録媒体1を観察方向Dbから観察したときには確認できなかった「B」の文字が、視点の移動につれて明瞭に確認されるように記録がなされる。このような記録は、実写ホログラムでは困難である。なお、副画像Isに、フェードインやフェードアウトのような効果を持たせてもよい。
【0100】
(第4の構成例)
図4は、副画像の変化の第4の構成例を示す概略図である。図4Aに示すように、ホログラム記録媒体1に対する観察方向をDb〜Dc〜Ddと変化させると、観察者の視点の移動に従って、副画像が連続的に変化する。すなわち、観察者に知覚される画像情報が、図4B〜図4C〜図4Dに示すように順に変化する。
【0101】
図4に示す例では、副画像Isのうち、「B」の文字の表示される位置が、連続的に変化していくように記録がなされている。例えば、ホログラム記録媒体1を観察方向Dbから観察したときに、左側の「A」の文字に近い位置にあった「B」の文字が、視点の移動につれて、左側の「A」の文字から徐々に離れていくように記録がなされる。副画像Isの移動の方向、距離、視点の移動に対する変化量は、自由に設定して問題ない。また、移動の軌跡も、ある曲線や折れ線などに沿った移動としてもよい。
【0102】
(第5の構成例)
図5は、副画像の変化の第5の構成例を示す概略図である。図5Aに示すように、ホログラム記録媒体1に対する観察方向をDb〜Dc〜Ddと変化させると、観察者の視点の移動に従って、副画像が連続的に変化する。すなわち、観察者に知覚される画像情報が、図5B〜図5C〜図5Dに示すように順に変化する。
【0103】
図5に示す例では、副画像Isのうち、「B」の文字の形状が、連続的に変化していくように(morphing)記録がなされている。ここでいう形状とは、副画像の一単位の全体の形状のことを指す。例えば、ホログラム記録媒体1を観察方向Dbから観察したときには、日蝕のように欠けていた「B」の文字が、視点の移動につれて全体の形状が確認できるように記録がなされる。そのほか、視点の移動にともなって、別の文字や記号、図形に変化していくようにしてもよいし、副画像Isとしてマイクロ文字を使用する場合には、フォントが徐々に変化するようにしてもよい。
【0104】
(第6の構成例)
図6は、副画像の変化の第6の構成例を示す概略図である。図6Aに示すように、ホログラム記録媒体1に対する観察方向をDb〜Dc〜Ddと変化させると、観察者の視点の移動に従って、副画像が連続的に変化する。すなわち、観察者に知覚される画像情報が、図6B〜図6C〜図6Dに示すように順に変化する。
【0105】
図6に示す例では、副画像Isのうち、「B」の文字の線の太さが、連続的に変化していくように記録がなされている。このように、副画像Isを構成する線の太さが変化するようにしてもよい。
【0106】
(第7の構成例)
図7は、副画像の変化の第7の構成例を示す概略図である。図7Aに示すように、ホログラム記録媒体1に対する観察方向をDb〜Dc〜Ddと変化させると、観察者の視点の移動に従って、副画像が連続的に変化する。すなわち、観察者に知覚される画像情報が、図7B〜図7C〜図7Dに示すように順に変化する。
【0107】
図7に示す例では、副画像Isのうち、「B」の文字が、ある観察方向に近い範囲で、見えなくなるように記録がなされている。このように、副画像Isが、フェードインやフェードアウトとは異なる不連続的な変化をするようにしてもよい。
【0108】
<2.第2の実施の形態>
第2の実施の形態は、どの副画像がどのような変化をするかについての情報が、ある入力情報に関連付けられた出力情報として決められるようにするものである。すなわち、副画像の変化を特徴づける量が、特定の対応により決定される。
【0109】
このような関連付けが行われると、変化すべき副画像およびその変化の態様が指定される。したがって、記録されている副画像が関連付けから外れたような変化をする多視点画像記録媒体は、偽造が行われたものであると判定することができ、より高い真贋判定機能を多視点画像記録媒体に与えることができる。
【0110】
ここで、入力情報としては、多視点画像記録媒体または多視点画像記録媒体と組み合わせられるべき商品に関する情報を選ぶことができる。例えば、製造枚数、製造番号、製造工場、製造日、製造国、販売日、販売国、賞味期限、消費期限、価格、商品名、原版の多面付け数、顧客名、記録媒体の形状、記録媒体の寸法、記録媒体にもたせた識別情報などが挙げられる。このような入力情報は、多視点画像記録媒体の発行者が任意に設定することができる。
【0111】
入力情報に対する出力情報とは、例えば、動的パラメータ、変化対象の個数パラメータおよび変化すべき副画像を指定する対象パラメータなどである。動的パラメータとは、第1の実施の形態で述べたような変化のうち、副画像がどのような変化をするのかを指定するパラメータである。個数パラメータとは、変化する副画像の数を指定するパラメータである。対象パラメータとは、複数ある副画像のうち、どの副画像が変化するのかを指定するパラメータである。出力情報は、これらのほか、多視点画像記録媒体の発行者が任意に設定することができる。
【0112】
[記録されるコンテンツに対する関連付けの例]
以下、入力情報と多視点画像記録媒体に記録されるコンテンツとの間の関連付けの例について説明する。以下の説明では、逆T字型の主画像Imおよび副画像Isの一群Gが、主画像Imの内部の領域に記録されている場合を例にとる。
【0113】
図8に、多視点画像記録媒体に記録されるコンテンツの例を示す。なお、図8A〜図8Cに示すコンテンツの例は、ある視点において確認される画像情報を模式的に示すものである。図8Aは、文字、数字および記号が配置されている例である。図8Aに示すように、副画像は、全て異なったものとしてもよい。図8Bは、アルファベットの「A」の文字が多数配置されている例である。図8Bに示すように、副画像は、全て同じものとしてもよい。図8Cは、連続性のある文字列が配置されている例である。図8Cに示すように、規則的な文字列を使用してもよいし、円周率や自然対数の底、オイラーの定数のようなよく知られた数のほか、物理定数などを使用することもできる。
【0114】
(第1の構成例)
図8Aに示すようなコンテンツに対して、商品の製造日を入力情報とした場合の例を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
表1では、動的パラメータを「パラメータ」と、個数パラメータを「個数」と、対象パラメータを「対象1」、「対象2」、…と略記している。なお、表の行数および列数は、表1に示したものに限られず、必要に応じて増加・減少させてよい。以下の説明で用いる表2〜表15においても、同様とする。
【0117】
表1において、製造日が2010年4月1日の行では、動的パラメータが「回転1」、個数パラメータが「2」とされ、対象パラメータが「Y」および「7」とされている。すなわち、図8Aに示す副画像Isのうち、文字「Y」および数字「7」の2つが、観察者の視点の移動に従って変化をする副画像とされる。また、「回転1」が、記録面に略垂直な軸を中心とする回転を指定するものであるとすると、動的パラメータが「回転1」とされているため、文字「Y」および数字「7」が、図1に示したような変化をするように記録がなされる。
【0118】
(第2の構成例)
図8Aに示すようなコンテンツに対して、商品の販売国を入力情報とした場合の例を表2に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
表1に示す例は、入力情報である商品の製造日に対して、全ての出力情報が同じ場合の例であったが、表2に示す例は、入力情報により出力情報が異なる例である。例えば、A国で販売される商品に被着される多視点画像記録媒体は、文字「Y」および数字「7」が、図1に示したような変化をするように記録がなされる。一方、C国で販売される商品に被着されるホログラム記録媒体は、文字「Q」、「y」および記号「◇」が、図6に示したような変化をし、文字「H」が、図4に示したような変化をするように記録がなされる。
【0121】
したがって、文字「Y」および数字「7」が、図1に示したような変化をする多視点画像記録媒体が被着された商品がC国で見つかったならば、製造者が意図しない輸出入が行われた可能性があるということになる。または、商品もしくは多視点画像記録媒体が、A国で偽造された可能性を示唆するものともなる。
【0122】
(第3の構成例)
図8Bに示すようなコンテンツに対して、商品の製造番号を入力情報とした場合の例を表3に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
この例では、副画像Isが同じ文字「A」で共通しているため、副画像が配置される(行,列)の組によって、変化する副画像の位置が指定されている。すなわち、図8Bに示す副画像Is1およびIs2が、図3に示したような変化をするように記録がなされる。なお、変化する副画像の位置の指定は、(行,列)の組のほか、x−y座標、基準に対する相対位置など、任意のものを設定することができる。
【0125】
(第4の構成例)
図8Bに示すようなコンテンツに対して、商品の製造数を入力情報とした場合の例を表4に示す。
【0126】
【表4】

【0127】
表3に示す例は、入力情報である商品の製造番号に対して、全ての出力情報が同じ場合の例であったが、表4に示す例は、入力情報により出力情報が異なる例である。例えば、1000個目までの商品に被着される多視点画像記録媒体は、3つの「A」が、図6に示したような変化をするように記録がなされる。一方、2001個目〜3000個目までの商品に被着される多視点画像記録媒体は、2つの「A」が、図1に示したような変化をし、別の2つの「A」が、図4に示したような変化をするように記録がなされる。言い換えれば、4つの「A」が、視点の移動に従って変化するように記録がなされている。
【0128】
このような関連付けは、例えば、初回生産分だけに特典を付すような場合に有効である。また、製造年を入力情報に設定すれば、多視点画像記録媒体に記録されている情報を、ヴィンテージ商品かどうかを判定する際の一つの基準とすることができる。
【0129】
(第5の構成例)
図8Cに示すようなコンテンツに対して、商品を製造した製造工場を入力情報とした場合の例を表5に示す。
【0130】
【表5】

【0131】
この例では、全てが同じではないが、同じ副画像が複数存在している。この場合には、例えば、副画像Isのそれぞれに番号を振り、その番号を用いて副画像の位置を指定するといった方法が考えられる。
【0132】
図9は、副画像のそれぞれに番号を振り、その番号を用いて副画像の位置を指定する場合の例を示す図である。図9Aに示す個々の副画像と図9Bに示す一連の番号との間には、対応が付けられている。すなわち、図9Aに示す副画像Is3は、「40」という番号で指定される。
【0133】
この例では、図9Bに示す一連の番号のうち、「8」、「34」および「62」によって、変化する副画像の位置が指定されている。すなわち、図9Aにおいて、下線を付けて示した「c」、「D」および「B」が、図5に示したような変化をするように記録がなされる。
【0134】
このように、商品を製造した製造工場を入力情報としておけば、仮に一部の工場で不具合品が発生したとしても、不具合品の確実な選別ができる。
【0135】
(第6の構成例)
図8Cに示すようなコンテンツに対して、商品の寸法を入力情報とした場合の例を表6に示す。
【0136】
【表6】

【0137】
表5に示す例は、入力情報である商品の製造工場に関する情報に対して、全ての出力情報が同じ場合の例であったが、表6に示す例は、入力情報により出力情報が異なる例である。
【0138】
このような関連付けは、電池のように規格が定められている商品に対して多視点画像記録媒体を被着する場合に有効である。なお、多視点画像記録媒体自身の寸法を入力情報として設定してもよい。
【0139】
(第7の構成例)
図8Aに示すようなコンテンツに対して、顧客情報および商品の製造月を入力情報とする例を表7および表8に示す。
【0140】
【表7】

【0141】
【表8】

【0142】
表7に示す例では、顧客情報に数αを、商品の製造月に数βを対応させている。次にα×βを求め、表8により、その下1桁の値から動的パラメータの値を決定している。同様に、表8により、α+βの下1桁の値から個数パラメータの値を、α−βの下1桁の値から、対象パラメータの値を決定している。例えば、顧客がe、製造月が3月であれば、(α,β)=(5,3)であるから、動的パラメータの値が「消失」、個数パラメータの値が「2」、対象パラメータの値が「F」、「f」、「5」および「◎」となる。このように、関連付けに複数種類の入力情報を用いることもできる。
【0143】
なお、この例では、対象パラメータの個数が、個数パラメータの値「2」より大きい。このような場合においては、対象パラメータの値に優先順位をつけるか、任意に抽出すればよい。したがって、関連付けのためのデータベースを作成する場合には、対象パラメータの個数が、個数パラメータの値より小さくならないようにしておくとよい。
【0144】
(第8の構成例)
図8Aに示すようなコンテンツに対して、製造国に関する情報を入力情報とする例ならびに顧客情報および商品の製造月を入力情報とする例を表9〜表11に示す。
【0145】
【表9】

【0146】
【表10】

【0147】
【表11】

【0148】
表9に示す例では、製造国に関する情報に乱数を対応させている。表10に示す例では、顧客情報および商品の製造月の組に対して乱数を対応させている。次に、表11により、対応させた乱数の下3桁目の値から動的パラメータの値を決定している。同様に、対応させた乱数の下2桁目の値から個数パラメータの値を、対応させた乱数の下1桁の値から対象パラメータの値を決定している。
【0149】
表10および表11を用いる場合、顧客がe、製造月が5月であれば、対応する乱数は「909」であるから、動的パラメータの値が「回転2」、個数パラメータの値が「4」、対象パラメータの値が「L」、「p」、「z」および「4」となる。このように、関連付けに乱数表を用いることもできる。動的パラメータの「回転2」は、例えば、記録面を含む軸を中心とする回転を指定するものである。
【0150】
(第9の構成例)
図8Aに示すようなコンテンツに対して、商品または多視点画像記録媒体に付与した識別情報を入力情報とする例を表12および表13に示す。
【0151】
【表12】

【0152】
【表13】

【0153】
表12に示す例では、個々の識別情報に対して、動的パラメータ、個数パラメータおよび対象パラメータが決定される。
【0154】
表13に示す例では、識別情報の下3桁目の値から動的パラメータの値を決定している。同様に、識別情報の下1桁の値から個数パラメータの値を、識別情報の下2桁目の値から対象パラメータの値を決定している。すなわち、副画像の変化を特徴づける量が、識別情報から、特定の対応により決定される。
【0155】
ここで、識別情報とは、個々の商品、多視点画像記録媒体またはこれらの組み合わせを識別するために付与される情報である。このような識別情報は、多視点画像記録媒体に記録されていてもよいし、商品もしくはその包装に記録されていてもよい。識別情報を多視点画像記録媒体に直接記録しない場合は、多視点画像記録媒体に記録される情報と識別情報との間に何らかの関連付けを行っておけばよい。識別情報は、商品等に直接的に表示せず、製造者が保有していてもよい。
【0156】
識別情報の記録方法としては、印刷やレーザマーキングも可能であるし、本発明者が先に提案したホログラフィックな記録方法を用いてもよい。もちろん、識別情報の記録の形態は文字列に限られず、文字、番号、記号、図形、模様、1次元バーコード、2次元バーコードまたはこれらの結合を用いることができる。
【0157】
<3.第3の実施の形態>
第3の実施の形態は、多面付けの原版を作成する際に、多面付けのそれぞれの面に対し、副画像を面ごとに異ならせて付加するものである。
【0158】
さらに、付加される副画像を識別情報と関連付けておけば、ある識別情報に対する副画像の変化のパターンが、本来ありえないものであるかどうかの判定を行うことができる。したがって、第3の実施の形態によれば、より高い真贋判定機能を多視点画像記録媒体に与えることができる。
【0159】
[多面付け原版への副画像の付与]
ホログラム記録媒体を多視点画像記録媒体とする場合、多面付けホログラム原版を作成する際に、多面付けのそれぞれのホログラムデータに対し、副画像を面ごとに異ならせて付加する。図10は、副画像Ita〜Iteを付与したホログラム原版を説明するための概略図である。図10に示す例では、ホログラム原版3は、6つの面S1〜S6に区分されている。ホログラム記録媒体に対してこのホログラム原版3を用いて複製を行った後、裁断により、6枚のホログラム記録媒体を得る。
【0160】
理解を容易とするため、図10では、ホログラム原版3が6面付けのものであるとして説明を行う。また、この例では、ホログラム原版3に記録されている主画像Imは共通しているものとし、副画像Isの一群Gは、観察方向の変化にともなって変化する画像を含んでいないものとする。
【0161】
図10に示すように、面S1の左上には副画像Itaとして文字「k」が記録されている。面S2および面S3の境界には、境界をまたぐように副画像Itbとして記号「★」が記録されている。このように、複数の面をまたぐように副画像を配置してもよい。
【0162】
面S4には、副画像が記録されていない。このように、副画像が記録されていない面があってもよい。本明細書において、多面付けホログラム原版に副画像を付加するというときには、副画像群G以外の副画像が付加されていない面がある場合も含むものとする。
【0163】
面S5の右側には、副画像Itcとして文字「Ω」が記録されている。このように、面ごとに副画像の位置や大きさが変わるようにしておいてもよい。
【0164】
面S6の左上には、副画像Itdとして文字「w」が、面S6の右下には、副画像Iteとして記号「△」が記録されている。このように、1つの面に複数の副画像があってもよい。
【0165】
第1および第2の実施の形態とは異なり、面ごとに異なるようにして付加される副画像Itは、記録される大きさおよび位置が指定される必要がある。副画像Itの大きさとしては、ホログラム原版3からの複製が行われたホログラム記録媒体を観察したときに、Overt、CovertまたはForensicのどのような効果を持たせたいかにより設定することができる。したがって、虫眼鏡や顕微鏡などの器具を適宜選択・使用することによって副画像の存在が確認できればよいという点は、第1および第2の実施の形態と同様である。
【0166】
(第1の構成例)
面ごとに異なる副画像が付加されたホログラム原版3を用いて、ホログラムの複製を行う場合の例を表14に示す。
【0167】
【表14】

【0168】
表14のデータは、図10に示した原版に対応するものである。表14では、副画像Itの動的パラメータ、個数パラメータおよび対象パラメータが、面ごとに指定されている。また、副画像Itの高さHおよび幅Wならびに副画像Itの中心点の位置(X,Y)が指定されている。このように、各種パラメータを面ごとに任意に設定することができる。
【0169】
(第2の構成例)
表15に、各種パラメータを識別情報と関連付けた例を示す。
【0170】
【表15】

【0171】
表15に示す例では、個々の識別情報に対して、面S1〜S6を割り振るようにしている。さらに、複製されるホログラム記録媒体の枚数が1000枚を超えるごとに原版を変更し、動的パラメータを変更するようにしている。
【0172】
ホログラム記録媒体の観察者は、副画像Itの変化のパターンと識別情報とを照合することにより、複製されたホログラム記録媒体が真正なものであるかどうかの判定を行うことができる。表15に示すような関連付けは製造者側で保有すればよいので、複製されたホログラム記録媒体からこのような関連付けを推測することは困難である。
【0173】
さらに、上述の例では6面付けの例としたが、例えば、数百にもおよぶ多面付けであれば、数百種類の異なった画像パターンの記録が可能である。そのため、製造者が保有する識別情報との関連付けすることにより、不正なコピーを制作することはきわめて困難なこととなる。したがって、不正なコピーを防止する効果の高いホログラム記録媒体を得ることができる。
【0174】
<4.第4の実施の形態>
第4の実施の形態は、識別情報を備え、視点の移動に従って変化する副画像が記録されたホログラム記録媒体に対して、識別情報と副画像の変化を特徴づける量とを関連付けてデータベースに登録しておく。多視点画像記録媒体の観察者は、副画像の変化の態様をデータベースに照会することにより、多視点画像記録媒体の真贋判定を行う。
【0175】
副画像の変化の態様を識別情報と関連付けておけば、インターネット等のネットワークを介してデータベースに問い合わせることにより、ある識別情報に対する副画像の変化のパターンが、本来ありえないものであるかどうかの判定を行うことができる。必要に応じ、関連付けの際に暗号化をさらに行ってもよい。副画像の変化を特徴づける量と識別情報との関連付けは、製品または多視点画像記録媒体の製造者側で保有すればよく、このような関連付けは、副画像の変化の態様から推測することが困難である。
【0176】
したがって、第4の実施の形態によれば、より高い真贋判定機能を多視点画像記録媒体に与えることができる。
【0177】
<5.変形例>
以上、好適な実施の形態について説明してきたが、好適な具体例は、上述した説明に限定されるものではない。例えば、上述した例を適宜組み合わせてもよい。
【0178】
以上の説明では、多視点画像記録媒体としてホログラム記録媒体を例にとったが、主画像および副画像の複数個が、マイクロレンズアレイを介して観察されるものであってもよい。
【0179】
多視点画像記録媒体は、商品の包装、非接触ICカード、IDカード、銀行カード、クレジットカード、社員証、学生証、定期券、運転免許証、外国旅券、ビザ、証券、通帳、印紙、切手、携帯電話、貨幣、宝くじ等、種々のものに使用することができる。なお、多視点画像記録媒体として、ホログラム記録媒体を接着層等を介して被着体に接合する場合、接着層の接着力は、ホログラム記録媒体のホログラム記録層の自己結集力または破断強度に対して、強くされていることが望ましい。ホログラム記録媒体1を被着体から剥離し、ホログラム記録媒体を原版として不正なコンタクトコピーを試みようとしても、ホログラム記録層が破壊され、複製ができなくなるからである。
【符号の説明】
【0180】
1 ・・・ホログラム記録媒体
3 ・・・ホログラム原版
Im ・・・主画像
Is,It・・・副画像
G ・・・副画像の一群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの主画像と、
前記主画像の表示される面積より小なる表示面積を有する副画像の複数個と
が記録され、
再生時に前記主画像および前記副画像の複数個が同時に表示され、
前記副画像の複数個のうち、少なくとも1つが、視点の移動に従って変化する
多視点画像記録媒体。
【請求項2】
前記主画像によって規定される領域内に前記副画像の複数個が表示される
請求項1に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項3】
前記副画像の表示される面積が、50mm2以下または前記主画像の表示される面積の1/10以下である
請求項1または2に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項4】
前記変化が、連続的な変化であり、
前記連続的な変化が、記録面に略垂直な軸を中心とする回転である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項5】
前記変化が、連続的な変化であり、
前記連続的な変化が、記録面を含む軸を中心とする回転である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項6】
前記変化が、連続的な変化であり、
前記連続的な変化が、前記副画像を観察したときの輝度の連続的な変化である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項7】
前記変化が、連続的な変化であり、
前記連続的な変化が、前記副画像の表示される位置の連続的な変化である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項8】
前記変化が、連続的な変化であり、
前記連続的な変化が、前記副画像の形状の連続的な変化である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項9】
前記変化が、連続的な変化であり、
前記連続的な変化が、前記副画像の線の太さの連続的な変化である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項10】
前記変化が、前記副画像が見えなくなる変化を含む
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項11】
前記主画像および前記副画像の複数個が、ホログラフィックステレオグラムにより作成されたものである
請求項1〜10のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項12】
前記主画像および前記副画像の複数個が、計算機合成ホログラムにより作成されたものである
請求項1〜10のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項13】
前記主画像および前記副画像の複数個が、マイクロレンズアレイを介して観察されるものである
請求項1〜10のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項14】
前記視点の移動に従って変化する副画像が、多面付け原版の面ごとに付加された副画像から複製されたものである
請求項1〜13のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項15】
前記副画像の前記連続的な変化を特徴づける量のうち、少なくとも1つが、特定の対応により決定される
請求項1〜14のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項16】
識別情報をさらに備え、
前記副画像の前記連続的な変化を特徴づける量のうち、少なくとも1つが、前記識別情報から特定の対応により決定される
請求項1〜15のいずれか1項に記載の多視点画像記録媒体。
【請求項17】
識別情報を備え、
少なくとも1つの主画像と、
前記主画像の表示される面積より小なる表示面積を有する副画像の複数個と
が記録され、
再生時に前記主画像および前記副画像の複数個が同時に表示され、
前記副画像の複数個のうち、少なくとも1つが、視点の移動に従って変化する多視点画像記録媒体に対し、
前記識別情報および前記副画像の変化を特徴づける量を関連付けて登録するデータベースを準備し、
前記識別情報および前記副画像の変化を特徴づける量を前記データベースに照会することにより真贋判定を行う真贋判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−18324(P2012−18324A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156102(P2010−156102)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニーDADC (88)
【Fターム(参考)】