多軸性繊維ウェブを製造する方法及びその装置
【課題】コストを低減させることができる、多軸性繊維シートを製造する方法を提供する。
【解決手段】複数の一方向性シート(30a、30b、30c)が異なる方向に重ね合わされ、それらは一体に結合される。少なくとも1つの一方向性シートが、均一な厚さ、5cmよりも小さくない幅、および300g/m2よりも小さくない重さを有するように、トウを広げることによって形成され、他のシートと重ね合わせる前に当該シートを取り扱うことを可能にするために、凝集状態が付与される。有利には、一方向性シートは炭素繊維からなり、大きなトウを広げることによって得られる。
【解決手段】複数の一方向性シート(30a、30b、30c)が異なる方向に重ね合わされ、それらは一体に結合される。少なくとも1つの一方向性シートが、均一な厚さ、5cmよりも小さくない幅、および300g/m2よりも小さくない重さを有するように、トウを広げることによって形成され、他のシートと重ね合わせる前に当該シートを取り扱うことを可能にするために、凝集状態が付与される。有利には、一方向性シートは炭素繊維からなり、大きなトウを広げることによって得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維シートに関するものであり、特に、種々の方向に配される複数の一方向性(unidirectional)繊維シートを一緒に重ね合わせ、およびリンク(linking)させることによって形成される多軸性(multiaxial)シートに関する。
【0002】
本発明が適用される分野は、複合材料パーツ製造用の補強用プライを形成するための多軸性繊維シートを製造する分野である。考えられる材料には、有機もしくは無機材料、またはそれらのための前駆物質、例えば、ポリマー、ガラス、カーボン、セラミック、パラ−アラミド等であり得る繊維補強材料によって構成される材料があり、それら補強材料は、有機マトリックス、例えば樹脂、または無機マトリックス、例えば、ガラス、カーボンもしくはセラミックによって緻密化(densify)され得る。
【背景技術】
【0003】
一方向性シート、即ち本質的に1方向に配向される繊維または糸(thread)により形成されるシートを重ね合わせることによって多軸性繊維シートを製造することは長い間知られており、一方向性シートは種々の方向に重ね合わせられている。
【0004】
共通する技術は、最初に、一方向性繊維シートを形成し、そして、繊維シートを形成するエレメント(elements)を分散させることなく、繊維シートを取り扱うことができるような十分な凝集力(cohesion;または凝集状態)を繊維シートに付与する点にある。
【0005】
共通して提起される解決手段(solution)は、横糸方向に延びる糸によって、一方向性シートの縦糸(ワープ)を形成するエレメントを一緒に結合させることである。このことは、必然的に、複数のシートを重ね合わせて、相互に押圧する場合に、繊維が押し潰されたり破断されたりして、そのために繊維に不連続な部分が生じ得るという、うねり(undulation)を生じる結果をもたらす。そのことは、このようにして形成された多軸性シートの品質を低下させ、従って、そのような多軸性シートから形成される複合材料(composite material)パーツの機械的特性の品質を低下させる。
【0006】
そのような欠点を補うために、できるだけ軽量で少ない数の結合糸を用いるというよく知られている解決手段がある。炭素前駆体繊維のシートに関しては、文献GB−A−1 190 214(Rolls Royce Limited)が、ガラス繊維のシートに関しては、文献FR−A−1 469 065(Les Fils d'Auguste Chomarat & Cie)がそのような方法について説明している。しかしながら、上述したような問題点は低減されてはいても、排除されていないということは明らかである。
【0007】
文献EP−A−0 193 478(Etablissements Les Fils d'Auguste Chomarat & Cie)には、熱溶融性物質により形成されている結合繊維を用いることが提案されている。複合材料を製造する際に、用いられる温度によって結合糸が少なくとも部分的に溶融し、それによって結合糸が縦糸エレメントと交差する部分における余分の厚さが減少し得る。しかしながら、結合繊維の材料には、複合材料のマトリックスの特性に適合し得ることが必要とされ、そのことはこの方法を用いることについて大きな制約をもたらしている。
【0008】
もう1つの解決手段は、文献FR−A−1 394 271(Les Fils d'Auguste Chomarat & Cie)に記載されており、その手段は、ガラス繊維糸を互いに平行に配置して、それらを化学的に一緒に結合し、マトリックスに可溶性のバインダーを用いるというものである。その場合にも、バインダーとマトリックスとの間での相溶性が必要とされることにより、方法の適用には制約がある。更に、糸を互いに平行に配することを可能にする手段は記載されておらず、工業的規模で幅広いシートを製造することは現実に実際的な問題点を引き起こし得るということは容易に理解できるであろう。最後に、得られるシートについて、サイド・バイ・サイドに配される糸のために、うねりは解消されない。
【0009】
更にもう1つの解決手段は、複数のトウを引き延ばし、得られる一方向性繊維ストリップを一緒にサイド・バイ・サイドの構成(並列構成)としてシートを形成し、ニードリングによってシートへ横方向の凝集力を付与するというものである。そのような方法は、特に、文献US−A−5 184 387(Aerospace Preforms Limitedへ譲渡された)に記載されており、そこでは破断することなくニードリングすることができる炭素前駆体繊維により形成されているトウが用いられている。しかしながら、多軸性シートは、それらの一方向性シートを重ね合わせることによっては製造されていない。この文献によれば、一方向性シートから環状のセクターが切り出されて、環状のプライが形成され、そのプライが重ね合わせられてニードリングされる。
【0010】
多軸性シートを製造するために一方向性シートに一時的凝集力を付与する必要性を避けるため、複数の一軸性シートを形成すること、および中間での処理を行うことなく、それらを種々の方向で重ね合わせることによって、多軸性シートを直接的に製造することが知られている。重ね合わせたシートは、ボンディング(結合)、ソーイング(縫合)またはニッティング(編成)によって互いに結合させることができる。
【0011】
その技術について説明している文献には、例えば、US−A−4 518 640、US−A−4 484 459およびUS−A−4 677 831がある。
【0012】
文献US−A−4 518 640(Karl Mayerへ譲渡された)には、シートを形成する間に、シートの中へ補強糸を案内し、それによって繊維を通して穿孔(piercing)することなく、結合を形成することができることが開示されている。しかしながら、多軸性シートには開口部が存在するようになり、その開口部によって表面には不連続性が生じる。
【0013】
文献US−A−4 484 459(Kyntex Preformへ譲渡された)には、各一方向性シートは、2本の平行なエンドレスの鎖によって移送されるスパイクの回りに、スパイクどうしの間で自由に(制約を受けずに)延びる糸の部分は互いに平行となるように1本の糸を通すことによって形成される。各糸を種々の方向に案内することによって一方向性シートは形成され、それらの糸はソーイングによって互いに結合される。その技術によれば、多軸性シートの長手方向に補強糸を有することはできず、残念ながら、その主方向に補強エレメントを配することが必要とされることはしばしばある。更に、各シートにおける平行性(parallelism)を確保するために糸に大きな張力をかける場合には、スパイクされたチェーンどうしの間で拡がる糸の部分を、繊維のタイトニング(tightening)によって回転させることができ、それによって多軸性シートに開口部を形成することができる。最後に、その技術は、各一方向性シートを形成するために必要とされる時間が与えられたときに、非常に高い生産速度の達成を可能とするものではないことが見出されている。
【0014】
文献US−A−4 677 831(Liba Maschinenfabrik GmbHへ譲渡された)において開示されている技術は、主となる一方向性シートを長手方向に、それを構成するエレメントの方向と平行に配すること、ならびに、主シート(0°)の方向との間で所定の角度、例えば、+45°および−45°ならびに/または+60°および−60°をなす角度の方向に、横方向の一方向性シートを主シートの上に重ねることを含んでなる。横方向シートは、主シートのいずれかの側に位置する2つのスパイク付きのチェーンの間に配されるプロセスによってレイイングされる。主シートが存在することを必ずしも必要とはしないその方法も種々の問題点を伴っている。
【0015】
即ち、横方向シートがスパイクの回りで転回するマージナル領域(marginal zone;または縁の領域)を除くことが必要とされる。残念ながら、横方向シートの幅が広いほど、マージナル領域は大きくなり、そしてマージナル領域が除かれることによって材料の損失は大きくなり、スパイクのところでシートを転回させることもより困難となる。このことによって、横方向シートに用いることができる幅は大きく制限される。更に、多軸性シートに存在し得る不規則性についての上述のような問題点も見出されており、その問題点は、特に、シートを配置する間、互いに平行に保たせるために、横方向シートのエレメントに適用することが必要とされる張力のために穴が形成されることに起因するということも見出されている。
【0016】
更に、得られる多軸性シートに十分な強度を与えるためには、レイイング(laying)の直ぐ後での比較的高いステッチ密度が必要とされる。滑らかな表面状態を保持することができないようにすることに加えて、ステッチ密度がこのように高いことによって、多軸性シートの可撓性は影響を受け、使用時における変形性、例えばドレープ性は制限される。
【0017】
更に、主シート(0°)が供給されている場合には、横方向シートをレイイングする間、全体が主シートの同じ側に見出されるように、支持することが必要とされる。補強エレメントは、実際には、主方向(0°)に延びるように配されるが、得られる多軸性シートはその面の間において左右対称とは限らない。残念ながら、そのような対称性は通常の補強材料の形成を促進するために有利なものであり、従って、多軸性シートの中間において、その面の間で、主方向を0°に配することが望ましい。
【0018】
一方向性シートを形成するために糸を用いるそれらの技術に共通する問題点は、1つは、糸に起因して表面粗さが存在することであり、もう1つのは、時として所望される程薄くすることができないという点にあるということも観察される。
【0019】
最後に、一方向性シートから多軸性シートを形成する方法は、文献GB−A−1 447 030(Hyfil Limited)にも開示されている。縦糸を形成する炭素繊維の第1の一方向性シートは前もってニードリングされており、もう1つの横糸を形成する一方向性シートは、ニードリングと同様の手段によって、第1のシートに結合される。第1のシートの前もって行うニードリングは、結合に寄与するように、第2のシートを配する側から繊維を移動させようとするものである。上述した文献GB−A−1 190 214に記載されているように、使用される一方向性シートは結合糸によって密着性(coherent)に形成されており、そこから生じる問題点を有している。
【0020】
上述した既知の技術はいずれも、炭素繊維を用いて製造する場合などにおいて、多軸性繊維シートのコストが比較的高くつくという問題点を伴っている。特に、適用分野を拡大するために、そのようなシートのコストを低減させる必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
この発明の目的は、多軸性繊維シートを製造する方法、特に、高コストであると称される繊維、例えば、炭素繊維などにより形成される多軸性シートを一層魅力あるものにするように、そのようなシートを製造するコストを低減させることができる方法を提供することである。
【0022】
本発明のもう1つの目的は、鏡映性多軸性シート("mirror" multiaxial sheets)、即ち、中央面(midplane)、特に、主一方向性シート(0°)に対して対称性を呈する多軸性シートを製造することができる方法を提供することであり、主一方向性シートは主方向に対してそれぞれ反対の角度をなしている横方向一方向性シートどうしの間に設けられる。
【0023】
本発明のもう1つの目的は、例えば穴(holes)または粗さ(roughnesses)などの不規則性を伴わずに、滑らかな外観の表面を呈する多軸性繊維シートを製造することができる方法を提供することである。
【0024】
本発明の更にもう1つの目的は、密着性(凝集性(coherence))を確保するために、多軸性繊維シートを構成する一方向性シートに対して、非常に小さい密度の横方向の結合だけを要求する多軸性繊維シートを製造することができ、それによって多軸性繊維シートの良好な変形性を保有することができる方法を提供することである。
【0025】
本発明の更に別の目的は、上述のような特性を有する一方で、長さが長く、小さな厚みおよび(単位面積あたりの)小さな重量を有する多軸性繊維シートを提供することである。
【0026】
本発明の更に別の目的は、一方向性シートから、比較的幅が広く、その一方で、良好な表面規則性を保持し、および材料の損失を制限することができる多軸性繊維シートを製造することができるレイイング方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
1つの要旨において、本発明は多軸性繊維シートを製造する方法を提供するものであり、その方法は、複数の一方向性シートを種々の方向に重ね合わせる工程、および重ね合わせたシートを一緒に結合する工程を含んでおり、その方法は、少なくとも1つの一方向性シートを形成するために、少なくとも1つのトウを、5cm以上の幅および300グラム/平方メートル(g/m2)以下の重量を有する、実質的に一様な厚さのシートが得られるように広げる(拡開する)こと、ならびに、少なくとも1つの他の一方向性シートと重ね合わせる前に、当該一方向性シートに凝集力を付与して取り扱うことができるようにすることを含んでいる。
【0028】
本発明の方法の1つの特徴においては、少なくとも1つの一方向性シートを形成するために複数のトウが使用されており、トウは一方向性ストリップを形成するように広げられており、5cm以上の幅および300g/m2以下の重量を有する一方向性シートが形成されるようにストリップはサイド・バイ・サイドに配されている。
【0029】
本発明の方法の利点を更に向上させるために、特に炭素繊維を用いる場合、少なくとも1つの一方向性シートは、12K(12000のフィラメント)に等しいかまたはそれ以上であり、可能な場合には、480K(480000のフィラメント)に等しいかまたはそれ以上の数であるフィラメントを有する少なくとも1つのトウを拡開させることによって形成することが好ましい。
【0030】
あらゆる工業的繊維を用いて、同様の技術を用いることができる。
本発明の方法の利点は、大きなトウを、特に、多様な種類の繊維について利用することができる最大規模のトウを用いることである。
【0031】
特に炭素繊維の場合、所定の重量あたりで、肉厚のトウのコストは、出願人が知る限りにおいて、多軸性シートを製造するための技術水準において用いられる種類の薄いトウまたは糸の場合よりも、非常に低いものである。
【0032】
一例として、従来技術の場合のように相互に平行な糸によって形成されるか、または本発明のように拡開されるトウによって形成されるかに応じて、以下の表は、種々の数のフィラメントを用いて形成される市販の炭素糸またはトウにあてはまり、一方向性シートについて得られる重量を与える。糸またはトウは、ポリアクリロニトリルまたは異方性ピッチ前駆材料を用いて、高強度または高モジュラス炭素から形成されている。
【0033】
【表1】
【0034】
300g/m2以下の単位面積あたり重量を有する少なくとも1つの一方向性シートを形成するように、1本のトウを拡開し、または複数のトウを拡開して並置し、その結果、限られた数の重いトウから、比較的幅の広い、即ち、少なくとも5cm、好ましくは少なくとも10cmのシートを形成することができる。
【0035】
比較的軽量の一方向性シートを用いることによって、そのような一方向性シートから形成される多軸性シートにおいて、この特性を保持することが可能となる。
【0036】
更に、上述したような平行な糸のシートを用いる従来の技術とは反対に、軽量のシートが得られるまでトウを拡開させることによって、穴やうねりなどの表面欠陥を有さず、滑らかな表面外観を有する、多軸性シートを製造することができる。本発明の方法によれば、脆弱な(fragile)繊維を用いることも可能である。
【0037】
不連続フィラメントから一方向性シートを形成する場合、フィラメントを軽い程度にてマット化(matting)することによって凝集力を付与することができる。そのために、シートをプレートの上に配して、ニードリングに付したり、または、加圧下にて水のジェットに曝したりすることができる。シートは、その後、凝集力を失うことなく、広げることができる。
【0038】
いずれの場合にも、一方向性シートを形成するフィラメントが連続であるかまたは不連続性であるかとは無関係に、化学的結合剤(chemical bonding agent)を供給することによって凝集力を付与することができ、化学的結合剤は、場合により、取り除く(または犠牲にする)のに適するものであってよい。結合剤は、シート上に液状の配合物を噴霧することによって、またはシートを浴の中に通すことによって適用することが有利である。凝集力を供給するのは、シート上にパウダー形態の熱溶融性または熱接着性ポリマーを振りかけることによっても行うことができる。
【0039】
少なくとも1つの熱溶融性もしくは熱接着性フィルムまたは糸を用いて、または、実際には、接着剤、例えば揮発性溶剤中の接着剤溶液を線状に適用することによって、使用する一方向性シートの少なくとも1つに横方向凝集力を付与することを考えることもできる。
【0040】
本発明の方法は、特に、多軸性シートの長手方向に平行な進行方向に移動する移動サポート(moving support;または移動支持体)の上に、少なくとも1つの横方向の一方向性シートを供給(fetch)することによって、長手方向を有する連続多軸性シートを製造しようとするものであり、当該横方向の一方向性シートまたは各横方向の一方向性シートは、隣接するかまたは部分的に重なっており、進行方向に対してそれぞれ同等の選択された角度をなしている連続セグメントとして供給されている。
【0041】
重ね合わせた一方向性シートの凝集力によって、一方向性シートを互いにレイイングする際に、拘束することなく、多軸性シートを形成することが可能となり、従って、一方向性シートを重ね合わせる順序に関して大きな融通性がもたらされる。従って、長い中央の一方向性シートの両側において、その中央の一方向性シートに対してそれぞれ反対の角度をなして配される2つの横方向の一方向性シートと共に、中央面に対して、特に、長手方向が進行方向に対して平行である中央の長い一方向性シートに対して、対称性(鏡映対称性)を呈する、多軸性シートを製造することができる。
【0042】
本発明の方法の好ましい実施形態では、横方向シートを形成する各連続セグメントは、横方向シートの方向と平行に、測定される多軸性シートの寸法(dimension)と実質的に同等の長さ以上にシートを移動させ、このように供給されるセグメントが切り取られ、および、切り取られたセグメントを移動するサポートまたは形成される多軸性シートの上に被覆させることによって、供給される。有利な態様において、横方向シートは、それが切り取られる領域において、例えば、その表面の少なくとも一方にフィルムを取り付けることによって、補強される。
【0043】
横方向シートを連続する切り取ったセグメントに配することによって、スパイクの回りでシートを転回させることによる既知の敷設(laying)技術と比較して、材料の損失を制限することができるということも見出されるであろう。更に、このようにして加工することによって繊維に損傷を与えることを回避し、従って、脆弱な繊維、例えば、高モジュラスな炭素繊維もしくは異方性ピッチ系の炭素繊維またはセラミック繊維をレイイング(敷設)することが可能となる。更に、横方向シートの供給が中断した後で、レイイング(敷設)・プロセスを再開することは、横方向シートが互いに結合されていない平行な繊維の組合せによって形成されている場合と比べると、遙かに容易である。
【0044】
もう1つの要旨において、本発明は、上述の方法によって得られるように一方向性シートまたは多軸性繊維シートを提供する。
【0045】
更にもう1つの要旨において、本発明は、マトリックスによって高密度化された繊維補強材料を有する複合材料パーツであって、そのような一方向性シートまたは多軸性繊維シートの少なくとも1種から繊維補強材料が形成されるパーツを形成することを提供する。
【0046】
更に別の要旨において、本発明は、実施する方法の好ましい実施を可能にするレイイング(敷設)・マシンを提供する。
【0047】
そのため、本発明は、一方向性繊維シートを、種々の方向に重ね合わせることによって多軸性繊維シートを製造するレイイング・マシンを提供するものであって、そのマシンは、
・形成される多軸性シートを支持する支持手段、および、支持手段を進行方向へ駆動させる駆動手段を有してなる、多軸性シートを進行させる装置;
・進行方向と平行な方向に長い一方向性シートを供給する供給手段:
・交差レイイング(敷設)・デバイスに連続一方向性シートを供給する供給手段、シートの自由端を保持固定する移動把持ヘッド、および、進行方向に対して選択された角度にて、横方向方向と平行にシートの連続セグメントをレイイングする手段であって、把持ヘッドを駆動させる手段を有するレイイング手段をそれぞれ有する複数の交差レイイング・デバイス;
・重ね合わせた一方向性シートを一体に結合させる手段であって、進行方向において支持手段から下流側に配される結合手段
を有する。
【0048】
この装置において、各交差レイイング・デバイスは切断手段を有しており、更に、各交差レイイング・デバイスについて、把持ヘッドによる一方向性シートの自由端を把持すること、一方向性シートのセグメントを供給するために把持ヘッドを移動させること、一方向性シートの供給したセグメントを切り取ること、および切り取った一方向性シートを支持手段の上にレイイングすることを含む連続サイクルを実施するための手段が更に設けられている。
【0049】
そのようなマシンの1つの重要な利点は、横方向方向を含めて、比較的幅の広い一方向性シートをレイイングできる可能性がある点である。
【0050】
重ね合わせた一方向性シートは、種々の手段で、例えばソーイングによって、ニッティングによって、ニードリングによって、または接着剤によって、例えば、シートの間に、接着剤を噴霧することによって、もしくは熱溶融性もしくは熱接着性フィルムもしくは糸を挿入することによって、互いに結合することができる。一方向性シート内に凝集力を供給するのに用いることができる結合剤を再活性化させて、シートどうしを互いに結合させることもできる。
【0051】
本発明は、添付した図面を参照して非限定的な説明により与えられる以下の説明を読むことによって、よりよく理解されるであろう。
【0052】
一方向性シートの製造(図1〜5)
トウは個々に広げられ、得られた一方向性のストリップは適宜並べられて一方向性シートを形成する。当該一方向性シートの凝集(または結合)状態は、シートをリールに蓄積する前に、シートを構成するフィラメント間に結合または接着剤を供給することによりもたらされる。
【0053】
図1においては、図を明瞭にするために、トウを広げるデバイスが1つ示されている。トウ10aは、それが詰められた箱から直接的に取り出される。1つのバリエーションにおいて、トウはクリールによって担持されているリールから取り出すことができる。
【0054】
種々のトウが、予定されているシートの用途に応じて使用され得る。例えば、トウは炭素(カーボン)繊維もしくはセラミック繊維、または炭素もしくはセラミックの前駆体である繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、あるいは種々の繊維の混合物であってよい。適当なセラミックは、特に、炭化ケイ素、および耐熱性酸化物、例えば、アルミナおよびジルコニアである。トウは連続フィラメントまたは不連続フィラメントから成っていてよく、それらが不連続である場合には、例えば、それらは連続フィラメントのトウを破断する(burst;または裂く)ことによって得ることができる。不連続フィラメントから成るトウを用いる場合、ともに緊密に混合された種々の材料のフィラメントを含む混成(またはハイブリッド)トウを用いることができる。それらは、種々の材料から成る破断したリボンまたはトウを供給し、それらをギル・ボックス(gill box)を通過させることにより、繊維を混合することによって得ることができる。
【0055】
可能である場合には、特に得られるシートの原価を減少させるために、大量のトウが用いられる。「大量」のトウという用語は、ここでは、少なくとも12Kのフィラメントから成るトウ(即ち、12,000本のフィラメントから成るトウ)、好ましくは、50Kよりも少なくない数であって、可能な場合には480Kまたはそれ以上の数のフィラメントを有するトウについて用いられる。
【0056】
トウ10aは、取り出してもつれをほどくデバイス12を通過する。当該デバイスは、2つのエンド・プレート12bの間に延在する複数の棒12aによって形成され、全体のアセンブリーがモーター13により駆動されて棒に平行な軸の回りを回転する。棒12a(例えば4本の棒)は、回転軸の回りに規則正しく配置される。
【0057】
自由に回転するように取り付けられたデフレクター(deflector;またはそらせ板)・ローラ14および16を通過した後、トウ10aは、同様に自由に回転するように取り付けられた4つのローラ18a、18b、18cおよび18dから成る張力調節デバイス18に達する。これらのローラは、周知の方法で、アクチュエーター19により駆動されて変形可能な平行四辺形を構成する。アクチューエーターは、張力を一定に保つために、ローラを有するアームを作動させることによって、張力調節デバイスを経由するトウ10aの経路を長くする、または短くすることができる。
【0058】
その後、トウ10aは、複数の固定された「バナナ」形の湾曲ローラ22a、22b、22cを連続的に通過する。これらのローラは、例えば3つ設けられてよく、薄い一方向性ストリップ20aを形成するために、公知の方法で作動してリボンを広げる。
【0059】
ストリップ20aにおける張力は、ローラ24a、24bおよび24cを通過させることによって、常套的な方法で測定される。これらのローラにおいて、ローラ24bは鉛直方向に移動できるとともに弾力によりバイアスされる。ローラ24bの軸の移動を測定することによって与えられるストリップの張力の変化に関する情報は、測定される張力を一定に維持するべく、アクチュエーター19を制御するために使用される。
【0060】
ストリップ20aは、自由に回転するローラ25上にある同一または類似の他のストリップ20b、20c、20dおよび20eに隣接して配置され、それにより一方向性シート30を形成する。従って、ストリップは同一または異なるトウから得ることができ、例えば、トウが異なる場合、異なる重さのトウ、または異なる種類の繊維から成るトウからストリップを得ることができ、それにより混成シートを形成することが可能になる。
【0061】
ストリップ20b〜20eは、上述したデバイスと同一のトウを広げるデバイスを用いることによって得られる。
【0062】
図2に示すように、種々のスプレッダー(spreader;または拡開)・デバイスが、鎖線の矩形で示される各フレーム26a、26b、26c、26dおよび26eに取り付けられる。フレームは、互いに当たらないように、共通の水平面の上下に交互に配置される。
【0063】
種々のスプレッダー・デバイスから来るストリップ20a〜20eはローラ25に集まる。それらが正確に隣接できるようストリップの位置を調節するために、トウの進行方向に対するフレームの横方向の位置を調節することができる。従って、各フレーム、例えば26eは、モーター29eにより駆動されて横方向のガイディング・スライドウェイ(guiding slideway;またはガイド用摺動路)28eにそって移動し得る。
【0064】
1つのバリエーションにおいて、一方向性ストリップは、隣接するのではなくて、部分的な重なりを含むように、並べて配置することもできる。ストリップを正確に縁と縁とを合わせて配置させることと比べて、より小さい許容差が必要とされるが、得られたシートにおいて各縁に沿って位置する部分は犠牲になる必要がある。
【0065】
横方向の凝集状態は、ローラ25から液体の配合物(compound;またはコンパウンド)をシート30c上の下流側に投入することによって、シート30cに付与でき、前記配合物は化学的な結合剤、例えば、溶液中のポリマーを含む配合物である。
【0066】
種々のポリマーを使用することができる。有利には、使用されるポリマーは犠牲となるのに適したもの、即ち、例えば溶解させる又は熱処理を施すことによって容易に除去されるのに適したものであってよい。そのようなポリマーとして、水に溶解し得るタイプのポリビニルアルコール(PVA)またはポリビニルピロリドン、および可溶性ポリエステルを挙げることができる。一方向性シートを含む多軸性シートから成る補強用布帛を用いて複合材料を作る場合、後の段階にて析出されるマトリックスと適合するポリマーを使用することもまた想定できる。「マトリックスと適合するポリマー」という用語は、ここでは、マトリックスと同じ種類のものを有する、またはマトリックスに溶解するのに適したポリマー(例えば樹脂)、あるいは実際には、異なる種類ではあるが、マトリックスと接触して存在しても複合材料の性質に影響を及ぼさないポリマーを意味するために使用される。
【0067】
液体配合物はフィード・パイプ34を経由してノズル32へ搬送される。配合物がスプレーされた後、シートは、シート30の表面全体に所定量の液体配合物を均一に分布させるために、調節された圧力にて互いに押し付け合っている2つのローラ36の間を通過する。その後、シート30は、液体配合物に含まれる溶媒を除去するためにストリップ・ドライヤー38の下方を通過する。凝集シート30はそれから、モーター39によって回転させられるリール40に蓄積してよい。
【0068】
1つのバリエーションにおいて、凝集状態は、液体樹脂を含む配合物をスプレーし、それから樹脂を硬化させることによってシートに付与することができる。有利には、紫外線に曝すことによって硬化し得る樹脂が用いられ、その場合、ストリップ・ドライヤー38はUVの光源で置き換えられる。例えば、そのような樹脂はUV硬化型アクリル酸エステルである。
【0069】
更に、熱溶融性または熱接着性ポリマーの粉体をシートに散布する、あるいは熱溶融性または熱接着性フィルムもしくは糸(thread;またはスレッド)をシート上に置いて、それからそれを加熱デバイスに曝す方法もまた利用できる。後で蒸発する溶媒を用いた溶液中の接着剤により構成される「接着剤のライン」をシートに形成することもまた想定できる。
【0070】
使用されるトウの重量および数に応じて、より大きいまたは小さい幅のシート30を得ることが可能である。かなり大きい数のフィラメントを有するトウから開始すれば、既に言及したように、本発明は、限られた数のトウ、従って限られた数のスプレッダー・デバイスを用いて、幅の広いシート、即ち少なくとも5cm幅のシート、好ましくは少なくとも10cmまたはそれ以上の幅のシートが得られることを可能にするという利点を有する。本発明の別の特徴は、重さが300g/m2よりも大きくなく、均一な厚さを有する薄いシートが得られることを可能にすることである。
【0071】
結合剤は、シートが連続的なフィラメントから成る場合、およびシートが不連続フィラメントから成る場合に、均一に十分に固定するために、シートに適用(または塗布)される。
【0072】
シートを、繊維補強材をマトリックスで緻密化することにより得られる複合材料のパーツの繊維補強材を形成するために用いることが予定されている場合、結合剤は用途の関数として選択することが好ましい。例えば、犠牲となるのに適した結合剤であって、複合材料のマトリックスによる緻密化の前に、溶解することにより、または熱を与えることにより消失し得る結合剤を用いることができる。マトリックスの性質が低下しないように、マトリックスと適合する結合剤、即ち、マトリックスと化学的に反応することなく残る、又はマトリックスに溶解し得る結合剤を使用することもまた可能である。
【0073】
シートが不連続なフィラメントから成る場合、横方向の十分な凝集状態をシートに付与してシートを取り扱うことを可能にする、他の固定方法もまた想定され得る。これらの方法は、平行な不連続な繊維を互いに結合するように作用する固定方法に特に関する。
【0074】
図3は、シートが金属プレート33aを通過している間に、圧力下でウォーター・ジェット(または圧力水の噴流)をシートにスプレーするデバイス33を通過する隣接する一方向性ストリップ20a〜20eにより形成されるシート30を示す。ウォーター・ジェットは、プレート33aでリバウンドさせることにより、不連続なフィラメントを適度にマット化する(または絡み合わせる)。その後、シート30はリール40に蓄積される前に、乾燥ストリップ38の前を通過する。
【0075】
図4に示す別のバリエーションにおいて、ストリップ30はニードリング・デバイス35を通過する。このデバイスは、鉛直方向に往復運動するように駆動されるニードルボード35a、およびストリップ30が通過する支持体35bを含む。支持体35bはボード35aのニードルと重なるように開口部を有する。その結果、ニードルは、不連続なフィラメントが移動している間に、シート30の厚さ全体にわたって貫通し、それにより、横方向で所望の凝集状態を与える、限られた量の横方向での絡み合いを生じさせる。ニードリングされたシートはリール40に蓄積される。
【0076】
図1に示すスプレッダー・デバイスは、連続的または不連続なフィラメントもしくは繊維から成るトウについて用いることができ、それは特に連続フィラメントのトウに最も適している。
【0077】
有利には、不連続フィラメントから成る一方向性シートまたはストリップを形成する操作は、連続フィラメントのシート20aを得るために、図1に示すように連続フィラメントのトウを広げることを含む。これは引張および破断デバイス21に送られる(図5)。引張および破断技術はそれ自体周知である。それは、シートを、幾つかの連続する対のドライブ・ローラ(drive roll)、例えば、21a、21bおよび21cの間を通過させることに存する。ドライブ・ローラは、各自の速度va、vbおよびvcにて、vc>vb>vaとなるように駆動される。増加する速度でシートを引っ張ることにより、連続的なフィラメントは破断させられる。対のローラ間の距離、特に21aと21bとの間の距離は、破断パターンを決定する、即ち、それは破断したフィラメントの平均長を決定する。
【0078】
引張および破断の後、シート20'aは引っ張られているが、その(単位面積あたりの)重量はシート20aのそれと比較してかなり減少している。不連続なフィラメントから成る引っ張られたシート20'aは適宜、他の同様のシート20'b〜20'eと並列に又は部分的に重ねて並べられ、それから上述した適度なマット化(または絡み合わせ)手段によって凝集され、例えば、図3の実施態様に示すように高圧のウォーター・ジェットに付すことにより、または図4の態様のようにニードリング・デバイス35によってニードリングに付すことにより、凝集される。
【0079】
得られたシート30は、更に(単位面積あたりの)重量を減らすために、シートの凝集を損なうことなく、幅を広げることができる。この幅が広くなり得る性質は、用いられた凝集技術(ウォーター・ジェットまたはニードリング)によって付与される。
【0080】
幅を広くすることは、例えば、凝集シート30を、リール40に蓄積する前に、1または複数の対の湾曲したローラ37を通過させることによって実施され得る。
【0081】
シートは、リール40に蓄積された後、例えば、それが多軸性シートを形成するためにストレージ・リール(storage reel)から取り出されるときに、幅を広げてもよいことが理解されるであろう。
【0082】
トウを広げることによって一方向性シートを得る別の公知の技術、例えば、ローヌ・プーランク・フィブレ(Rhone Poulenc Fibre)のFR−A−2 581 085号およびFR−A−2 581 086号の文献に記載された技術もまた利用され得る。それらの文献においては、広げるトウは、スパイクを備えている細長い弾性要素を含むローラに運ばれる。当該弾性要素は、母線に沿って、ローラの周縁部に配置されている。ローラと接触する経路の一部において、トウはスパイク上に係合されており、それはローラの軸に平行に延びる弾性要素によって広げられる。
【0083】
多軸性シートの製造
次に図6A〜6Bを参照する。図6A〜6Bは、連続的な多軸性シートを、少なくとも1つが上述した方法により得られる複数の一方向性シートで製造するのに適した、本発明の実施態様を構成しているレイイング・マシンを示す。
【0084】
図示した例において、多軸性シート50は、3つの一方向性シート30a、30bおよび30cで構成され、それぞれのシートは長手方向に対してそれぞれ次の角度:0°、+60°および−60°を形成している。0°の角度で位置するシート(シート30a)、即ち「主たる」シートは、上述した方法により得られた凝集一方向性シートであり、リール40aから繰り出される(または解かれる)。+60°の角度で位置する横方向のシート(シート30b)および−60°の角度で位置する横方向のシート(シート30c)は、上述した方法により得られる凝集シートであり得る一方向性シートであり、リール40bおよび40cからそれぞれ繰り出される。使用される一方向性シートは、必ずしも同じ幅を有する必要はない。従って、当該実施例において、横方向シート30bおよび30cはともに同じ幅を有し、それは長手方向のシート30aの幅よりも小さい。一般に、横方向シートは通常、主シート(0°)の幅よりも小さい幅を有するであろう。
【0085】
横方向シートにより形成される、0°の角度で位置するシートに対する角度は、+60°および−60°以外であってもよく、例えば、それらは+45°または−45°であってよく、より一般には、それらは好ましくは反対符号の角度であり得るが、必ずしも等しくない。2つよりも多い横方向シートを、例えば、90°の角度で位置するシートを追加する、及び/または、長手方向に対して反対符号の角度を形成する少なくとも1つの他の対のシートを追加することによって、0°のシートと重ね合わせ得ることもまた理解されるであろう。
【0086】
図6Aに示すように、多軸性シート50は、モーター47により駆動されるドライブ・ローラ46上、およびデフレクション(または偏向)・ローラ48(図6B)上を通過するコンベア44のエンドレスベルト42の水平方向の上側セグメントによって構成される支持体の上に形成される。ベルト42の幅はシート50のそれよりも狭く、そのためにシートは僅かにベルト42の両方の側部42aおよび42bからはみ出ることが理解されよう。
【0087】
シートは、+60°の角度にて並べられたセグメント30bをベルト42の上に供給し、それから、その上に0°に向けられたシート30aを置き、続いて−60°に向けられたシート30cの並べられたセグメントを導入することにより形成される。0°のシートが2つの横方向シートの間に配置される多軸性シート50を形成し得ることは有利な特徴であり、それによりシート50に対称性が付与される。これは、シート30aに備わっている凝集により可能となる。
【0088】
また有利には、上述した方法により得られる0°の角度で位置する一方向性シートはかなり広い幅を有し、5cmよりも小さくなく、好ましくは少なくとも10cmであり、従って、広い幅の多軸性シートを形成することが可能となる。
【0089】
シート30bおよび30cの連続的なセグメントを供給し、切断し、敷設するデバイス60は、同一であり、そのためシート30cに関するデバイスだけを図示している。
【0090】
シート30cは、シート30cの自由端をつかむことができる少なくとも1つのクランプを有する把持ヘッド70によって、リール40cから繰り出される。
【0091】
シート30cは、コンベアー・ベルト42の縁部42aから、長手方向のシートの幅を被覆するのに十分な長さだけ引き出される。従って、供給されたセグメントは、コンベアー・ベルトの縁部42a上に位置するシート30aの縁部(またはエッジ)にて、切断デバイス80を用いて長手方向に切断される。同時に、シート30cの切断したセグメントは、先に供給したセグメントに対する、従って、すでに敷設されたシート30aおよび30bに対するコンベアー・ベルト上での位置を維持するために、切断された端部によって固定される。
【0092】
シート30cを変形およびほつれを生じさせることなく切断するために、フィルムまたはテープ92のセグメントの形態の局所的な補強材が、切断される各場所にてシート30cの各面に固定される。フィルム92は、例えば、接着剤、熱接着剤、高周波溶接、超音波溶接等により、デバイス90によって固定できる。例えば、熱接着により固定できるポリエチレンフィルムが用いられる。補強用フィルムはシート30cの一方の面にのみ固定してよいことが理解されるであろう。
【0093】
把持ヘッド70は、ビーム(beam;または梁)66のスライドウェイ64でスライドする滑車62により搬送される。例えば、滑車62はスライドウェイ64で可逆モータ69により駆動されるエンドレス・ケーブル68に固定される。ビーム66はリール40cを支持し、また、シートのセグメントを切り離して敷設するデバイス80および補強用フィルムを所定位置に配するデバイス90をも支持する。
【0094】
ヘッド70ならびにデバイス80および90の使用法についての詳しい説明を以下に述べる。把持ヘッドは、ビーム66に取り付けられたデバイス80および90と同様に、滑車62に取り付けられたスイベル(swivel)であってよいことが理解されよう。その結果、敷設された横方向シートにより形成される長手方向(0°)に対する角度は、ビーム66の方向を適当に調節し、また、ヘッド60、ならびにビームに対するデバイス80および90の位置を調節することによって容易に変更できる。ヘッド70およびデバイス80、90の作動は、ビーム66に沿って通っているケーブル102の束により接続されているコントロール・ユニット100によって制御される。
【0095】
各シート30bおよび30cのセグメントは、コンベアー44が静止している間に供給され、切り離され、敷設され、そして固定される。その後、コンベアーは、長手方向(0°)で測定されるシート30bおよび30cの寸法に等しい長さだけ進行し、そして工程が繰り返される。コンベアー44の各進行において、長手方向のシートが同じ長さだけ繰り出される。
【0096】
重ね合わされた後、シート30a、30bおよび30cは一体に結合される。図6Bに示す実施例においては、この結合は、多軸性シート50がコンベアー44bから離れるときに、多軸性シート50の幅全体にわたって延在するニードルボード52を用いてニードリングにより実施される。ニードリングの間、シート50は、例えばポリプロピレンから成るベース・フェルト52bを有するプレート52aにより支持される。ニードルは、損傷されることなく、このベース・フェルトに進入できる。そして、ニードリングはコンベアーが進行するたびに実施される。ニードリングによる結合は、ニードリングにより過度に損傷されるおそれがない連続フィラメントから成るシートまたは不連続フィラメントから成るシートに特に適している。
【0097】
多軸性シート内へ横切って導入されるようにニードルで捕らえられるのに適した不連続な繊維を供給するために、不連続な繊維ウェブをニードリングの直前に多軸性シートに重ねることができ、それにより結合することができる。
【0098】
ニードリングの後、補強用フィルム92の一部を担持している多軸性シートの縁の領域(marginal zone;またはマージナル領域)は、シートの両側に配置された回転するカッター・ホイール56により切り離すことによって取り除くことができる。得られる多軸性シートは、コンベアー44の断続的な進行と同時にモーター59により駆動されるリール58に蓄積され得る。
【0099】
次に図7を参照する。図7は、熱接着により補強用フィルム92を所定位置に配するデバイス90をより詳細に非常に模式的に示している。
【0100】
各フィルム92は、各ストレージ・リール92aから引き出され、2つのリール93aおよび93bの間を通過する。リール93aおよび93bのうち1つのリール(例えば93a)は駆動モータ(図示せず)に連結され、駆動モータは、両方のリール93aに共通であってよい。2つのクランプ96がアクチュエーター96aの制御下で開閉し、そしてクランプ96は、空気式のアクチュエーター99の同じシリンダーに取り付けられたロッド98の端部に固定される。2つのロッド98はそれぞれ、リール40cから引き出されるシート30cの経路の上方および下方で延びており、それらの長さはシートの幅よりも長い。
【0101】
2つの加熱プレス97が、シート30cの経路の両側に配置されている。支持ブレード(backing blade)94bと協働する2つのブレード(blade)94aが、アクチュエーター(図示せず)の制御下にてフィルム92を切断できるよう、対のリール93a、93bのすぐ下流側に配置されている。
【0102】
補強用フィルム92を所定位置に配するサイクルは、図8A〜8Cに図示されている以下の操作を含む。
【0103】
サイクルの開始時に、クランプ96を有するロッド98は、アクチュエーター99に近接する縁部とは反対側のシート30c縁部を越えて最も進行した位置にあり、フィルム92は、それらの自由端が、開いた状態にあるクランプ96に十分に係合するまで、リール93a、93bによって進行させられる(図8A)。ドライブ・ホイール93aは、フィルム92の端がクランプ96内の所定位置にあることを適当なセンサーを用いて検知したことに応答して、あるいはフィルムが所定距離だけ進行した後に、止めることができる。
【0104】
クランプ96はアクチュエータ96aの制御下にて閉じられ、リール93aのクラッチは切られ、そしてアクチュエーター99は、ロッド98を引っ込め、アクチュエーター99と同じ側のシート30cの縁部を越えるまでフィルム92を引き出すように制御される(図8B)。
【0105】
フィルム92のセグメントを熱接着により固定するために、加熱プレス97が、シート30cの両側で、シート30cの各面の上に位置するフィルム92のセグメントに押し当てられる。プレス97が押し当てられると同時に、クランプ96が開かれ、ブレード94aが作動してフィルム92を切断し、それにより、熱接着の間、フィルムのブレード・セグメントを開放する(図8C)。
【0106】
プレス97を後退し、シート30cを進行させた後、ロッド98を再度、アクチュエーター99によって進行した位置に移動させ、それからフィルム・レイイング・サイクルを繰り返すことができる。
【0107】
次に図9および10を参照する。図9および10は、把持ヘッド70、および横方向シートのセグメントを切断し固定するデバイス80をより詳細に、しかし非常に模式的に示すものである。把持ヘッド70は、シート30cの自由端をつかむ2つの要素71aおよび71bを有するクランプ71を含む。クランプ71の開閉は、上側要素71aに作用するアクチュエーター72の制御下にある。更に、クランプ71は、滑車62に固定されクランプ71を支持する別のアクチュエーター73の制御下で、コンベアー・ベルト42の面に近接する位置と、前記の面から遠ざかる位置との間で、移動することができる。
【0108】
シート30cが供給される側に位置するコンベアー・ベルト42の側部42aの付近において、クランプの形態のガイド・デバイス74が配置されている。このクランプは、アクチュエーター75aの制御下にて、コンベアー・ベルト42の面から離れている高い位置と、実際には前記の面に位置する低い位置との間で移動できる上側要素74aを含む。クランプ74はまた、アクチュエーター75bの制御下にて、実際にはコンベアー・ベルト42の面に位置する低い位置と、前記面から離れている高い位置との間で移動できる下側要素74bを有する。
【0109】
切断デバイス80は、コンベアー・ベルト42の面の下方に位置する支持体82に取り付けられているブレード81を含む。支持体82は、アクチュエーター84の制御下にてベルト42の側部42aに沿ってスライドすることができる。プレッサー(または押え)・デバイス85は、シートのセグメントが切り離されている間、支持体86にシート30cを押し付けるために、コンベアー・ベルト42の面の上方に配置されている。圧力を加えること、およびプレッサー・デバイス85を後退させることは、アクチュエーター87によって制御されている。支持体87およびプレッサー・デバイス85はそれぞれ、ブレード81を通過させるスロット86aおよび85aを有する。
【0110】
プレッサー・デバイス85および支持体86はまた加熱要素であり、コンベアー・ベルトの側部42aに形成される多軸性シート50の側部に対して締め付けることが可能な加熱プレスを構成する。アクチュエーター89の制御下にある2つの類似する要素88から成る加熱プレスを、コンベアー・ベルトの反対の側部42bに設けることができる。
【0111】
切断デバイス80側の側部42aおよび任意の加熱プレス88側の側部42bに必要なスペースを残すために、コンベアー・ベルト42の幅は形成される多軸性シート50の幅よりも小さい。
【0112】
横方向シート30cのセグメントを供給、切り離して、固定するサイクルは、図11A〜11Cで示すように、以下の操作を含む。
【0113】
コンベアー・ベルト42の側部42aの付近のシート30cの自由端は、要素74aおよび74bが高い位置にあるクランプ74によってつかまれる。把持ヘッド70は、高い位置にクランプ71を有し、コンベアー・ベルトの側部42aでストロークの端に位置している。この位置において、クランプ71は、アクチュエーター72によって閉じられ、シート30cの端部をつかむことができる(図11A)。
【0114】
クランプ74は、その下側要素74bを下げることにより開かれ、滑車62はモーター69によって移動させられてクランプ71をストロークの他端に至らせ、コンベアー・ベルト42の側部42bを僅かに越えさせる(図11B)。
【0115】
クランプ71は、既にシート30bおよび30aを支持しているコンベアー・ベルト42にシート30cのセグメントを押し付けるために、クランプ74の上側要素74aと同じように低下させられる。プレッサー・デバイス85は、支持体86にシート30cを押し付けるために、アクチュエーター87によって低下させられる。それから、ブレード81はシート30cを切断するために縦方向に移動させられる(図11C)。シート30cは、補強用フィルム92が固定された場所で切断され、補強用フィルムを重ねるデバイス90と横方向シートを切断するデバイス80との間の距離は、シート30cの横方向の進行距離、即ち、切断されるシート30cのセグメントの長さに等しくなる。
【0116】
加熱要素85および86は、補強用フィルム92の切断部分を、コンベアー・ベルト42の側部42aに位置する多軸性シートの縁部に接着させて、当該側部でシート30cの切断されたセグメントの部分を固定するために、必要な熱を生成するように制御される。切断後、シート30cの自由端に取り付けられたままである他方のフィルムの部分92は、加熱プレス88を用いて、多軸性シート50の他方の側部に接着させることができる。その結果、シート30cの各切断セグメントは、多軸性シートの形成の間、多軸性シートの残りの部分に対して所定の位置に保持される。このことは、多軸性シートが最終的に固定される前に、コンベアー・ベルト42の進行中、横方向シートのセグメントが時宜を得ずに配置されることを回避する。
【0117】
それから、クランプ71は、コンベアー・ベルトの側部42aに向かって移動させられて戻る前に、開かれて、その高い位置に戻され、同時に、クランプ74は、所望の位置で把持ヘッドにシート30cの自由端を与えるために、その高い位置に戻される。
【0118】
種々の実施態様
上述したレイイング・マシンは、多軸性シートが形成されている間、多軸性シートを不連続的に進行させながら、作動する。生産のスループットを増加させるために、また、重ね合わされた一方向性シートを一体に結合することが縫合またはニッティングにより実施される場合には、当該結合手段との適合性を向上させるために、レイイング・マシンはその進行が連続的であるように作動させることが好ましい。
【0119】
このために(図12)、横方向シートの切断したセグメントは、移動デバイス104によってつかまれて、連続的に形成され進行している多軸性シート50上に連続的に運ばれる。移動デバイスは、コンベアー・ベルト42の両側で進行方向に平行に並進運動し得る滑車106a、106bにより搬送される、2つの対のクランプ104a、104bを有する。このために、滑車106aおよび106bは、モーター110により駆動されるドライブ・ホイール108aおよび108b、ならびに2つのデフレクター・ホイール112aおよび112bを通過するエンドレス・ケーブルに固定される。2つの対の加熱プレッサー・ホイール114aおよび114bは、横方向シートのセグメントを、それが敷設されたときにただちに、シートのセグメントの端部にてフィルム92の熱接着により横方向シートのセグメントを固定する作用をする。
【0120】
横方向シートの各セグメントは、切断デバイス80がビーム66により担持され、切断したシートのセグメントを固定する加熱プレスが設けられていない点を除いて、図6A〜6Bに示す装置と類似する交差レイイング・デバイス60により供給され、切り離される。
【0121】
敷設は、交差レイイング・デバイスにより各セグメントを供給して切断することにより、そして切断したセグメントが交差レイイング・デバイスにより解放されたときにただちにクランプ104aおよび104bを用いて切断したセグメントをつかむことによって実施される。これらは、所定の速度にてモーター110により同時に移動させられて、切断したセグメントを、予め敷設したセグメントと接触させ、所定の(隣接する又は重なる)位置に配する。その後、クランプ104a、104bはそれらの最初の位置に戻されて、次の切断したシートのセグメントを運ぶ。
【0122】
別のバリエーションにおいて、そしてまた生産のスループットを増加させるために、横方向シートの連続するセグメントを供給して、切り離し、敷設する各交差レイイング・デバイスは、閉じたループのパス(または経路)に沿って移動させられる複数の把持ヘッドを有する。その結果、1つの把持ヘッドが戻っている間に、別の把持ヘッドが作動し得る。
【0123】
図13A〜13Dは、横方向シートのセグメントを供給して、切り離し、固定する連続的な工程を示している。
【0124】
交差レイイング・デバイスは、ベルトまたはチェーンを用いた循環(またはエンドレスの)搬送装置76に取り付けられている、複数の、例えば2つの把持ヘッド701および702を有している点において、図6A〜11Cのそれとは異なっている。搬送装置76は、コンベアー・ベルト42の上方でそれと平行に、敷設される横方向シート30cを敷設する方向で延びている、下側および上側長さを有する。搬送装置76は、コンベアー・ベルト42の両側に位置するドライブ・ホイール76aとリターン・ホイール76bを通過する。ヘッド70は、搬送装置76上で、対向する位置に取り付けられる。
【0125】
各ヘッド701および702は、、アクチュエーター78の端部にて固定されているシュー77を有する。把持ヘッドとシート30cの自由端との間の接続は、接着剤用ノズル79によりシュー77にスプレーされる接着剤によって供される。接着剤用ノズル79は、戻り経路の端部付近で搬送装置76の上側部分の(長さの)上方に配置される。
【0126】
図13A〜13Dの交差レイイング・デバイスはまた、プレッサー・デバイス85が、シートに対して垂直に駆動されるアクチュエーター手段の制御下においてではなく、ピボッティング・マウント(pivoting mount)を用いて作動させられ、また後退させられる点において図6A〜11Cのそれとは異なる。プレッサー・デバイス85は、ヒンジ式に動くリンク85cによって支持体85bに接続されている。ヒンジ式に動くリンク85cは、モーター部材(図示せず)によって駆動されて、ブレード81上にある前側の位置と、把持ヘッドの移動が妨げられない後側の位置との間で、円弧に沿ってプレッサー・デバイス85を移動させる。支持体85bは、シート50の面の上方の高い位置と、シート50と実質的に同じ高さの低い位置との間で、アクチュエーター85eにより駆動されて移動し得る。ここでは図9〜11Cのガイド・デバイス74は不必要であることもまた理解されるであろう。操作は次のとおりである。
【0127】
はじめに、支持体85bを高い位置に、プレッサー・デバイス85を後側の位置に配置させて、接着剤がスプレーされた把持ヘッド701を、シート30cの自由端に接触させる(図13A)。
【0128】
シート30cの自由端がコンベアー・ベルト42の側部42bに向かってシート50の上に運ばれるように、プレッサー・デバイス85がリンク85cによって持ち上げられ、搬送装置76が駆動される(図13B)。
【0129】
シート30cの自由端が所定位置に来たとき、搬送装置76が止められ、プレッサー・デバイス85がその前方の位置に傾いて、それにより把持ヘッド701とプレッサー・デバイス85との間で張力がかけられた状態でシート30cをつかむ(図13C)。
【0130】
その後、アクチューエーター85eおよびヘッド70のアクチュエーター78が、シート30cをシート50に押し付けるように制御される(図13D)。セグメントはそれから、スロット85aを通過するブレード81によって切り離される。同時に、切断されたセグメントの縁部は、加熱プレスを構成するプレッサー・デバイス85および支持体86により、また、加熱要素88にてへッド701からの圧力により接着させられる。図9とは違って、1つの加熱要素88が設けられていることが理解されるであろう。同時に、接着剤がヘッド702にノズル79によってスプレーされる。その後、ヘッド701が持ち上げられて、それから搬送装置76が再び駆動され、それにより新しいレイイング・サイクルがヘッド702を用いて開始し得る。
【0131】
上記において、横方向シートのセグメントの端部を多軸性シートの一方のまたは両方の長手方向の縁部に沿って熱接着により一時的に固定するために装置が設けられ、その縁部は後で除去される。
【0132】
1つのバリエーションにおいて、横方向シート・セグメントの一時的な固定は、コンベアー・ベルト42の縁部42a、42bに沿った、長手方向の2列のスパイク49によって与えられ得る(図14)。横方向シート・セグメントは、クランプ71、74を低下させることにより、または図12の移動デバイスにより、コンベアー・ベルト42に押し付けられると、それらの端部にてスパイク49に係合する。
【0133】
別のバリエーションにおいて、横方向の連続的なセグメントが互いに隣接せずに、部分的に重なって配置される(図15)。重なりの程度は、所定位置に配される2つの連続的な横方向シート・セグメントの間でコンベアー44の速度を調節することにより調節される。そのような部分的な重なりは、横方向シート・セグメントを縁と縁とを合わせて配置するときに直面する困難を回避することを可能にする。その場合、図5に示すように広げた後に得ることができる、軽い横方向シートが用いられる。
【0134】
連続的なセグメントを供給することにより横方向シートを敷設する上述した方法は、本発明の好ましい実施態様であるが、他の敷設(またはレイイング)技術を使用する可能性は、特に横方向シートがかなり小さい幅を有するものである場合には、除外されるものではない。
【0135】
従って、図16に非常に模式的に示すように、上述したUS−A−4 677 831号の文献で説明されたものに類似するタイプの技術を使用することが可能である。その技術において、横方向シート30b、30cの端部は、横方向シートの方向に平行に往復並進運動するように駆動される交差レイイング・キャリッジ110に固定される。シート30bおよび30cは、必要に応じて交差レイイング・キャリッジにより搬送されるリール(図示せず)から繰り出される。交差レイイング・キャリッジのストロークの各端では、横方向シートは、コンベアー・ベルト42によって担持されているスパイク111を、その長手方向の各側部に沿って通過することにより、折り返される。
【0136】
図6Bは、ニードリングによって一体に結合した、重ね合わされたシートを示す。他の方法を用いてもよい。
【0137】
従って、図17は、コンベアー44の直ぐ下流に位置するデバイス120を用いるステッチングによる結合を示す。ステッチングは、種々の異なるステッチ、たとえば常套であるチェーン・ステッチ122を用いて実施され得る。例示のために、使用する縫い糸124は、ポリエステル、ガラス、炭素、アラミド、・・・からなる糸であってよい。ニッティング、例えばジグザグ・ニッティング・ステッチによって結合させることも可能である。
【0138】
図18は、一方向性シート間に導入される熱溶融性の糸による結合を示す。第1の熱溶融性の糸130が、交差レイイング・デバイス131によってシート・セグメント30bの上に配置され、その後、シート30aが敷かれ、第2の熱溶融性糸132が、交差レイイング・デバイス133によってシート・セグメント30aの上に配置され、その後、シート・セグメント30cが敷かれる。コンベアー44の直ぐ下流では、多軸性シート50が2個の加熱ロール124間に通され、この加熱ロール124は糸130および132を融かし、これにより多軸性シートを凝集する。例示においては、糸130および132は、ポリプロピレンでコートされたガラス糸である。熱溶融性糸の代わりに、熱溶融性フィルムあるいは熱接着性フィルムまたは糸を用いることも可能である。
【0139】
最後に、図19は、接着剤による結合を示す。接着剤をスプレーするためのストリップ140および142が、一方向性シート30aを敷くためのステーションおよび一方向性シート30cを敷くためのステーションの直ぐ下流のコンベアー・ベルト42を横切って配置される。コンベアー44の直ぐ下流においては、多軸性シート50が2個のロール144間に通される。
【0140】
一方向性シートの凝集状態が熱溶融性または熱接着性結合剤によって得られる場合、一方向性シート間の結合は、結合剤を熱的に再び活性化させることによっても得られ得る。
【0141】
上述のレイイング(または敷設)のための方法およびマシンは、任意の数の重ね合わされたシートを含む多軸性シートを作製するために用いられる。従って、少なくとも2枚の横方向の一方向性シートを配置することによって、長手方向の一方向性シート(0°)を有さない多軸性シートを形成することが可能である。この場合、また、好ましくは、横方向のシートは、長手方向に対して相互に反対の角度にある方向を有する少なくとも1対のシートを、オプションとして90°にある横方向シートと共に含む。上述のように長手方向の一方向性シートを設ける場合、少なくとも1対の横方向シートが、長手方向の両側の面に、かつ、これに対して反対の角度で配置される;この場合、少なくとも1枚の90°にある横方向シートを追加することが可能である。
【0142】
得られた多軸性シートは、例えば重ね合わされたプライをドレーピングまたはニードリングする周知の技術によって、複合材料パーツの補強材を形成するために用いられ得る。得られた補強材は、その後、化学気相浸透法(CVI)または液相プロセス(液状のマトリクス前駆体(例えば樹脂)を含浸させ、その後、前駆体を改変する(例えば熱処理による)こと)によって、あるいは実際には加熱(califaction)によって得られるマトリクスで緻密化される。加熱では、予備成形体はマトリクスの液状前駆体に浸漬され、予備成形体は(例えば、誘導コアと接触させることによって、あるいは誘導コイルと直接に結合させることによって)加熱され、これにより、前駆体は予備成形体と接触すると同時に蒸発し、予備成形体の孔の内部に蒸着されることにより浸透して、マトリクスを形成し得る。
【実施例】
【0143】
多軸性シートを作製する実施例を以下に例示によって説明する。
実施例1
30,000テックスの重さの、3600MPaの引張り破壊強度と250GPaのモジュラスとを有する480,000(480K)本の連続フィラメントで構成される高強度の炭素繊維からなるトウを、図1の装置と同様の装置によって150mmの幅に亘って広げた。広げられたトウを、引張およびバースティング(破断)操作にかけた。この間に連続フィラメントは不連続フィラメントに改変され、この大部分は25mm〜170mmの範囲にある長さを有した。バースティングの間、広げられたトウを2倍に延伸し、その(単位面積あたりの)重さを減少させ、150mmの幅と110g/m2の重さとを有する一方向性シートを得た。
【0144】
繊維をわずかに向き変えることによってシートが固定され、そのほとんどはシートの向きに対して並行に維持された。向き変えは、金属プレート上に配置されたシートを少なくとも100barの圧力下にある水のジェットに供することによって実施された。
得られたシートは、取扱い性に非常に優れていた。
【0145】
2つの同様の一方向性シートを、図6Aおよび6Bに示すマシンと同様のマシンによって、得られたシートの長手方向(0°)に対して+45°と−45°との角度を形成するように敷いた。約20ストローク/cm2のニードリング密度での軽いニードリングによってシートを一体に結合させた。±45°の2つの軸と220g/m2の重さとを有するシートを得た。
【0146】
プライを2軸性シートから切出し、製造するべき炭素−炭素複合材料パーツのための強化材を形成するために重ね合わせた。例えばUS−A−4 790 052公報に開示されるような周知の方法で、プライを重ね合わせている間にプライをニードリングによって一体に結合させた。
【0147】
得られた予備形成体を、化学蒸気浸透法によって蒸着された炭素マトリクスで緻密化させた。
【0148】
実施例2
実施例1の2軸性シートを、ニードリングによってではなく、長手方向に対して並行なジグザグ・ニット・ステッチを用いるステッチングによって固定した。編糸は、2本のストランド(またはより糸)を有する150デシテックスの綿糸とした。取扱い性に非常に優れた2軸性シートを得た。
【0149】
実施例3
広げて、引張およびバースティングの後に水のジェットによって固定された実施例1のトウを、曲がったバーの上で送ることによって拡幅して、その幅を80mmから120mmへ増加させた。このようにして得られた2つの同様の一方向性シートを、実施例1と同じく+45°および−45°にて、ただし、シートの連続して敷かれたセグメント間の重なりが50%となるように敷いた。2軸性シートを実施例1と同じくニードリングによって固定した。530g/m2の重さを有する2軸性シートを得、これは取扱い性に非常に優れていた。
【0150】
実施例4
それぞれ320Kのフィラメントからなる、不連続炭素繊維で構成される4個のトウを並べて広げ、幅600mmおよび重さ約140g/m2を有する一方向性シートを形成した。30ストローク/cm2の密度でのプレニードリングによってシートを固定した。
【0151】
3枚の同様の一方向性シートを、図6A〜Bに例示したようなレイイング・マシンによって、それぞれ0°、+60°、および−60°に等しい方向に敷いた。30ストローク/cm2の密度でのニードリングによって、シートを一体に結合させた。得られた3軸性シートは、420g/m2の重さであった。これは、平坦なプライを積み重ね(またはスタックし)、ニードリングすることによって、あるいは、マンドレルに巻付け、ニードリングすることによって、複合材料パーツのための予備成形体を作製するのに特に適切であった。
【0152】
実施例5
それぞれ50Kのフィラメントを有し、予め酸化させたポリアクリロニトリル(PAN)炭素前駆体からなる4個の高強度炭素トウを、実施例1で説明したように一緒に広げてバースト(または破断)した。得られた一方向性ストリップは、幅8cm、重さ170g/m2であった。
【0153】
320Kのフィラメントを有し、等方性ピッチの前駆体からなる炭素繊維トウを同様の方法でバーストし、8cmの幅と230g/m2の重さとを有する一方向性ストリップを得た。
【0154】
等方的なピッチの前駆体に基づくタイプの2個のバースト・ストリップを、予め酸化させたPAN前駆体に基づく上記のタイプの8個のバースト・ストリップに挟み込み、このアセンブリをギル・ボックスまたは「交差」型マシン(これにおいては、10個全てのストリップがコームされ、延伸される)に一回通し、これにより、異なる前駆体繊維の均質混合物からなる、250g/m2の重さおよび10cmの幅を有するバースト・シートを得た。
【0155】
得られた混成シートを、圧力下にある水のジェットに供することによって固定し、その後、シートを金属プレートの上に配置した。
【0156】
そのようにして作製された3枚の一方向性シートを用いて、0°、+60°、および−60°にある軸を有する3軸性シートを作製した。
【0157】
実施例6
それぞれが12Kのフィラメントを有する高強度炭素繊維からなるトウを、その幅が約7mmとなるように広げた。約100mmに等しい幅と、125g/m2の重さとを有する3枚の一方向性シートを、広げられたトウを並べて形成し、100cmに等しい幅で同じ(単位面積あたりの)重さを有する一方向シートを同様に形成した。シートを、図1に示すように、液状結合剤をスプレーすることによって固定した。使用した結合剤は、水溶性ポリビニルアルコール(PVA)であった。使用したPVAの量は、シートの重さに対して2.1重量%とした。
【0158】
図6Aおよび16に示した型のマシンを用いて、長手方向シート(0°)としての幅100cmの一方向性シートを、次の方向:90°、+45°、および−45°で敷かれた横方向シートとしての幅100mmの一方向性シートと共に用いて、多軸性シートを形成した。順序は、90°/+45°/0°/−45°とした。76デシテックスの連続したポリエステル糸を用いるステッチングによって、4枚のシートを一体に結合させた。6ゲージを用い、4mmのピッチを有するチェーン・ステッチ型のステッチを用いた。
【0159】
一方向性シートを一体に結合させた後、多軸性シートを脱脂して、PVAを除去し、意図した用途に適合させた。
そのような多軸性シートは、例えば複合材料パーツを形成するためにエポキシ樹脂を含浸させるのに適している。
【0160】
実施例7
フランスのSOFICAR社製の高モジュラスのM46JB型炭素繊維からなる長手方向の一方向性シート(0°)と、日本の東レ(TORAY)社製の高強度のT700SC型炭素繊維からなる2枚の横方向の一方向性シート(+45°、−45°)とから、+45°/0°/−45°「ミラー」(または鏡映対称)多軸性シートを作製した。
【0161】
12K−フィラメントのトウを3mmの幅に広げ、広げられたトウを並置することによって、0°のシートを形成して、150g/m2の重さの幅300mmのシートを得た。
【0162】
12K−フィラメントのトウを8mmの幅に広げ、広げられたケーブルを並置することによって、+45°および−45°のシートを形成し、これにより100g/m2の重さの幅130mmのシートを得た。
【0163】
一方向性シートを、エポキシ樹脂エマルションを含むバスに浸漬することによって固定した。樹脂を搾り出すためにシートをプレスロール間に通し、これにより、樹脂の最終濃度はシートの重量に対して1.8重量%となった。
【0164】
横方向シートのセグメントをエッジ同士で並置させ、+45°/0°/−45°の順でレイイングを実施した。
【0165】
図17に示すように、熱溶融性コポリアミド糸を100mm毎にシートの間に配置し、多軸性シートを2つの加熱ロール間に通すことによって、一方向性シート間の結合が提供された。
【0166】
一方向性シートを凝集するために用いられる結合剤に化学的に適合するエポキシ樹脂を含浸させた後、得られた多軸性シートは、ボート用の炭素/エポキシ複合マストを作製するために使用された。
【0167】
実施例8
3枚の同等の一方向性シートから、90°/+30°/−30°の3軸性シートを作製した。高強度炭素繊維からなる50K−フィラメントのトウを18mmの幅に広げ、広げられたトウを並置することによって、各一方向性シートを形成して、200g/m2の重さの幅200mmのシートを得た。ビニルピロリドンポリマーのエマルションを0.8乾燥重量%に対応する濃度でスプレーすることによって、一方向性シートを固定した。
【0168】
一方向性シートを、エッジ同士が並べられたセグメント状に重ね、76デシテックスのポリエステル糸を用い、チェーン・ステッチ型のステッチ縫いを用いるステッチングによって一体に結合させた。6ゲージを用いて4mmのピッチの縫い目とした。
【0169】
その後、得られた多軸性シートを脱脂し、一方向性シートを凝集するために使用した結合剤を除去した。
【0170】
実施例9
4枚の同等の一方向性シートから0°/+45°/90°/−45°の多軸性シートを作製した。「Roving 2400テックス」型のガラス繊維糸を広げることによって、各一方向性シートを形成した。広げられた糸を長手方向に並置し、横方向に約5cm毎に配置された熱溶融性の糸で互いに平行に保持し、このようにして、300g/m2の重さの、20cmの幅の凝集状態の一方向シートを形成した。
【0171】
これらの一方向性シートを用いて、エッジ同士が並置されたセグメントで構成される+45°、90°、−45°のシートで、0°/+45°/90°/−45°の多軸性シートを形成した。4枚の一方向性シートを、ポリエステル糸を用いるステッチングのラインによって一体に結合させた。このステッチは約10mmの長さを有するものとし、ステッチのラインは約40mmの間隔とした。
【0172】
多軸性シートが容易に予備成形されるのに十分な可撓性を保持し、滑らかな表面状態を有するように、非常に低い密度でのステッチングを有する凝集状態のガラス繊維多軸性シートを得た。
【0173】
実施例10
4枚の同等の一方向性シートから4軸性シートを作製した。日本の「東レ(Toray)」社から「T700SC」の参照番号で市販される12K−フィラメントの炭素糸を広げることによって、各一方向性シートを形成した。広げられた糸を並置し、横方向に約5cm毎に配置された熱可融性の糸で一体に保持し、これにより、150g/m2の重さの、10cmの幅の凝集状態の一方向シートを得た。
【0174】
これらの一方向性シートから、以下のタイプAおよびBの2枚の多軸性シートを形成した:
A:−45°/0°/+45°/90°
B:+45°/0°/−45°/90°。
これらの2枚の多軸性シートを形成する一方向性シートを、ポリエステル糸でのステッチングによって一体に保持した。長さ10mmのステッチで、25mm間隔のステッチングラインで、低密度のステッチングを実施した。
【0175】
多軸性AおよびBシートは、対称の中心の長手方向の面の両側に同じ数のシートを有する、該面に対して各AシートまたはBシートがBシートまたはAシートに対称である「ミラー」スタックを形成するように重ね合わされてよい。
【0176】
例えば、1つの「ミラー」スタックは、次の順のシートを有した:A/A/A/B/B/B。このスタックは、アラミド糸(例えば217デシテックスの「Kevlar」(登録商標)糸)で5mm×5mmのピッチでステッチングを、その厚さに亘ってステッチングすることによって凝集状態にできた。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1は、凝集一方向性シートを製造することができる装置の一部欠切全体図である。
【図2】図2は、図1の装置の一部の模式的平面図である。
【図3】図3は、図1の装置の凝集手段の第1の異なる態様の部分図である。
【図4】図4は、図1の装置の凝集手段の第2の異なる態様の部分図である。
【図5】図5は、不連続な繊維から成る凝集一方向性シートを形成し、広げる様子の一部を示す模式図である。
【図6A】図6Aは、本発明を実施して多軸性繊維シートを製造するレイイング・マシンの全体の非常に模式的な平面図である。
【図6B】6Bは、本発明を実施して多軸性繊維シートを製造するレイイング・マシンの全体の非常に模式的な平面図である。
【図7】図7は、図6A〜6Bの機械において局所的な補強用フィルムを所定位置に配するデバイスの詳細を示す模式的立面図である。
【図8A】図8Aは、図8Bおよび図8Cとともに、図7のデバイスを用いて補強用フィルムを所定位置に配する連続的な工程を示す。
【図8B】図8Bは、図8Aおよび図8Cとともに、図7のデバイスを用いて補強用フィルムを所定位置に配する連続的な工程を示す。
【図8C】図8Cは、図8Aおよび図8Bとともに、図7のデバイスを用いて補強用フィルムを所定位置に配する連続的な工程を示す。
【図9】図9は、図6A〜6Bのマシンにおいて、横方向の一方向性シートをセグメントに切断し、切断したセグメントを固定するデバイスの詳細を示す模式的側面図である。
【図10】図10は、図9の切断および固定デバイスの模式的端面図である。
【図11A】図11Aは、図11Bおよび図11Cとともに、図6A〜6Bのマシンにおいて横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図11B】図11Bは、図11Aおよび図11Cとともに、図6A〜6Bのマシンにおいて横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図11C】図11Cは、図11Aおよび図11Bとともに、図6A〜6Bのマシンにおいて横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図12】図12は、図6A〜6Bのレイイング・マシンの異なる態様の一部を非常に模式的に示す。
【図13A】図13Aは、図13B〜13Dとともに、図6A〜6Bのレイイング・マシンの別の異なる態様において横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図13B】図13Bは、図13A,図13C,および図13Dとともに、図6A〜6Bのレイイング・マシンの別の異なる態様において横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図13C】図13Cは、図13A,図13B,および図13Dとともに、図6A〜6Bのレイイング・マシンの別の異なる態様において横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図13D】図13Dは、図13A〜図13Cとともに、図6A〜6Bのレイイング・マシンの別の異なる態様において横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図14】図14は、図6A〜6Bのようなレイイング・マシンにおいて横方向の一方向性シートのセグメントを固定する別の実施態様を非常に模式的に示す。
【図15】図15は、横方向の一方向性シートのレイイングの異なる実施を非常に模式的に示す。
【図16】図16は、横方向の一方向性シートが部分的に重なるレイイングの異なる実施を非常に模式的に示す。
【図17】図17は、レイイング・マシンにおいて重ね合わされた一方向性シートを一体に結合する手段の第1、第2および第3の異なる態様を非常に模式的に示す。
【図18】図18は、レイイング・マシンにおいて重ね合わされた一方向性シートを一体に結合する手段の第1、第2および第3の異なる態様を非常に模式的に示す。
【図19】図19は、レイイング・マシンにおいて重ね合わされた一方向性シートを一体に結合する手段の第1、第2および第3の異なる態様を非常に模式的に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維シートに関するものであり、特に、種々の方向に配される複数の一方向性(unidirectional)繊維シートを一緒に重ね合わせ、およびリンク(linking)させることによって形成される多軸性(multiaxial)シートに関する。
【0002】
本発明が適用される分野は、複合材料パーツ製造用の補強用プライを形成するための多軸性繊維シートを製造する分野である。考えられる材料には、有機もしくは無機材料、またはそれらのための前駆物質、例えば、ポリマー、ガラス、カーボン、セラミック、パラ−アラミド等であり得る繊維補強材料によって構成される材料があり、それら補強材料は、有機マトリックス、例えば樹脂、または無機マトリックス、例えば、ガラス、カーボンもしくはセラミックによって緻密化(densify)され得る。
【背景技術】
【0003】
一方向性シート、即ち本質的に1方向に配向される繊維または糸(thread)により形成されるシートを重ね合わせることによって多軸性繊維シートを製造することは長い間知られており、一方向性シートは種々の方向に重ね合わせられている。
【0004】
共通する技術は、最初に、一方向性繊維シートを形成し、そして、繊維シートを形成するエレメント(elements)を分散させることなく、繊維シートを取り扱うことができるような十分な凝集力(cohesion;または凝集状態)を繊維シートに付与する点にある。
【0005】
共通して提起される解決手段(solution)は、横糸方向に延びる糸によって、一方向性シートの縦糸(ワープ)を形成するエレメントを一緒に結合させることである。このことは、必然的に、複数のシートを重ね合わせて、相互に押圧する場合に、繊維が押し潰されたり破断されたりして、そのために繊維に不連続な部分が生じ得るという、うねり(undulation)を生じる結果をもたらす。そのことは、このようにして形成された多軸性シートの品質を低下させ、従って、そのような多軸性シートから形成される複合材料(composite material)パーツの機械的特性の品質を低下させる。
【0006】
そのような欠点を補うために、できるだけ軽量で少ない数の結合糸を用いるというよく知られている解決手段がある。炭素前駆体繊維のシートに関しては、文献GB−A−1 190 214(Rolls Royce Limited)が、ガラス繊維のシートに関しては、文献FR−A−1 469 065(Les Fils d'Auguste Chomarat & Cie)がそのような方法について説明している。しかしながら、上述したような問題点は低減されてはいても、排除されていないということは明らかである。
【0007】
文献EP−A−0 193 478(Etablissements Les Fils d'Auguste Chomarat & Cie)には、熱溶融性物質により形成されている結合繊維を用いることが提案されている。複合材料を製造する際に、用いられる温度によって結合糸が少なくとも部分的に溶融し、それによって結合糸が縦糸エレメントと交差する部分における余分の厚さが減少し得る。しかしながら、結合繊維の材料には、複合材料のマトリックスの特性に適合し得ることが必要とされ、そのことはこの方法を用いることについて大きな制約をもたらしている。
【0008】
もう1つの解決手段は、文献FR−A−1 394 271(Les Fils d'Auguste Chomarat & Cie)に記載されており、その手段は、ガラス繊維糸を互いに平行に配置して、それらを化学的に一緒に結合し、マトリックスに可溶性のバインダーを用いるというものである。その場合にも、バインダーとマトリックスとの間での相溶性が必要とされることにより、方法の適用には制約がある。更に、糸を互いに平行に配することを可能にする手段は記載されておらず、工業的規模で幅広いシートを製造することは現実に実際的な問題点を引き起こし得るということは容易に理解できるであろう。最後に、得られるシートについて、サイド・バイ・サイドに配される糸のために、うねりは解消されない。
【0009】
更にもう1つの解決手段は、複数のトウを引き延ばし、得られる一方向性繊維ストリップを一緒にサイド・バイ・サイドの構成(並列構成)としてシートを形成し、ニードリングによってシートへ横方向の凝集力を付与するというものである。そのような方法は、特に、文献US−A−5 184 387(Aerospace Preforms Limitedへ譲渡された)に記載されており、そこでは破断することなくニードリングすることができる炭素前駆体繊維により形成されているトウが用いられている。しかしながら、多軸性シートは、それらの一方向性シートを重ね合わせることによっては製造されていない。この文献によれば、一方向性シートから環状のセクターが切り出されて、環状のプライが形成され、そのプライが重ね合わせられてニードリングされる。
【0010】
多軸性シートを製造するために一方向性シートに一時的凝集力を付与する必要性を避けるため、複数の一軸性シートを形成すること、および中間での処理を行うことなく、それらを種々の方向で重ね合わせることによって、多軸性シートを直接的に製造することが知られている。重ね合わせたシートは、ボンディング(結合)、ソーイング(縫合)またはニッティング(編成)によって互いに結合させることができる。
【0011】
その技術について説明している文献には、例えば、US−A−4 518 640、US−A−4 484 459およびUS−A−4 677 831がある。
【0012】
文献US−A−4 518 640(Karl Mayerへ譲渡された)には、シートを形成する間に、シートの中へ補強糸を案内し、それによって繊維を通して穿孔(piercing)することなく、結合を形成することができることが開示されている。しかしながら、多軸性シートには開口部が存在するようになり、その開口部によって表面には不連続性が生じる。
【0013】
文献US−A−4 484 459(Kyntex Preformへ譲渡された)には、各一方向性シートは、2本の平行なエンドレスの鎖によって移送されるスパイクの回りに、スパイクどうしの間で自由に(制約を受けずに)延びる糸の部分は互いに平行となるように1本の糸を通すことによって形成される。各糸を種々の方向に案内することによって一方向性シートは形成され、それらの糸はソーイングによって互いに結合される。その技術によれば、多軸性シートの長手方向に補強糸を有することはできず、残念ながら、その主方向に補強エレメントを配することが必要とされることはしばしばある。更に、各シートにおける平行性(parallelism)を確保するために糸に大きな張力をかける場合には、スパイクされたチェーンどうしの間で拡がる糸の部分を、繊維のタイトニング(tightening)によって回転させることができ、それによって多軸性シートに開口部を形成することができる。最後に、その技術は、各一方向性シートを形成するために必要とされる時間が与えられたときに、非常に高い生産速度の達成を可能とするものではないことが見出されている。
【0014】
文献US−A−4 677 831(Liba Maschinenfabrik GmbHへ譲渡された)において開示されている技術は、主となる一方向性シートを長手方向に、それを構成するエレメントの方向と平行に配すること、ならびに、主シート(0°)の方向との間で所定の角度、例えば、+45°および−45°ならびに/または+60°および−60°をなす角度の方向に、横方向の一方向性シートを主シートの上に重ねることを含んでなる。横方向シートは、主シートのいずれかの側に位置する2つのスパイク付きのチェーンの間に配されるプロセスによってレイイングされる。主シートが存在することを必ずしも必要とはしないその方法も種々の問題点を伴っている。
【0015】
即ち、横方向シートがスパイクの回りで転回するマージナル領域(marginal zone;または縁の領域)を除くことが必要とされる。残念ながら、横方向シートの幅が広いほど、マージナル領域は大きくなり、そしてマージナル領域が除かれることによって材料の損失は大きくなり、スパイクのところでシートを転回させることもより困難となる。このことによって、横方向シートに用いることができる幅は大きく制限される。更に、多軸性シートに存在し得る不規則性についての上述のような問題点も見出されており、その問題点は、特に、シートを配置する間、互いに平行に保たせるために、横方向シートのエレメントに適用することが必要とされる張力のために穴が形成されることに起因するということも見出されている。
【0016】
更に、得られる多軸性シートに十分な強度を与えるためには、レイイング(laying)の直ぐ後での比較的高いステッチ密度が必要とされる。滑らかな表面状態を保持することができないようにすることに加えて、ステッチ密度がこのように高いことによって、多軸性シートの可撓性は影響を受け、使用時における変形性、例えばドレープ性は制限される。
【0017】
更に、主シート(0°)が供給されている場合には、横方向シートをレイイングする間、全体が主シートの同じ側に見出されるように、支持することが必要とされる。補強エレメントは、実際には、主方向(0°)に延びるように配されるが、得られる多軸性シートはその面の間において左右対称とは限らない。残念ながら、そのような対称性は通常の補強材料の形成を促進するために有利なものであり、従って、多軸性シートの中間において、その面の間で、主方向を0°に配することが望ましい。
【0018】
一方向性シートを形成するために糸を用いるそれらの技術に共通する問題点は、1つは、糸に起因して表面粗さが存在することであり、もう1つのは、時として所望される程薄くすることができないという点にあるということも観察される。
【0019】
最後に、一方向性シートから多軸性シートを形成する方法は、文献GB−A−1 447 030(Hyfil Limited)にも開示されている。縦糸を形成する炭素繊維の第1の一方向性シートは前もってニードリングされており、もう1つの横糸を形成する一方向性シートは、ニードリングと同様の手段によって、第1のシートに結合される。第1のシートの前もって行うニードリングは、結合に寄与するように、第2のシートを配する側から繊維を移動させようとするものである。上述した文献GB−A−1 190 214に記載されているように、使用される一方向性シートは結合糸によって密着性(coherent)に形成されており、そこから生じる問題点を有している。
【0020】
上述した既知の技術はいずれも、炭素繊維を用いて製造する場合などにおいて、多軸性繊維シートのコストが比較的高くつくという問題点を伴っている。特に、適用分野を拡大するために、そのようなシートのコストを低減させる必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
この発明の目的は、多軸性繊維シートを製造する方法、特に、高コストであると称される繊維、例えば、炭素繊維などにより形成される多軸性シートを一層魅力あるものにするように、そのようなシートを製造するコストを低減させることができる方法を提供することである。
【0022】
本発明のもう1つの目的は、鏡映性多軸性シート("mirror" multiaxial sheets)、即ち、中央面(midplane)、特に、主一方向性シート(0°)に対して対称性を呈する多軸性シートを製造することができる方法を提供することであり、主一方向性シートは主方向に対してそれぞれ反対の角度をなしている横方向一方向性シートどうしの間に設けられる。
【0023】
本発明のもう1つの目的は、例えば穴(holes)または粗さ(roughnesses)などの不規則性を伴わずに、滑らかな外観の表面を呈する多軸性繊維シートを製造することができる方法を提供することである。
【0024】
本発明の更にもう1つの目的は、密着性(凝集性(coherence))を確保するために、多軸性繊維シートを構成する一方向性シートに対して、非常に小さい密度の横方向の結合だけを要求する多軸性繊維シートを製造することができ、それによって多軸性繊維シートの良好な変形性を保有することができる方法を提供することである。
【0025】
本発明の更に別の目的は、上述のような特性を有する一方で、長さが長く、小さな厚みおよび(単位面積あたりの)小さな重量を有する多軸性繊維シートを提供することである。
【0026】
本発明の更に別の目的は、一方向性シートから、比較的幅が広く、その一方で、良好な表面規則性を保持し、および材料の損失を制限することができる多軸性繊維シートを製造することができるレイイング方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
1つの要旨において、本発明は多軸性繊維シートを製造する方法を提供するものであり、その方法は、複数の一方向性シートを種々の方向に重ね合わせる工程、および重ね合わせたシートを一緒に結合する工程を含んでおり、その方法は、少なくとも1つの一方向性シートを形成するために、少なくとも1つのトウを、5cm以上の幅および300グラム/平方メートル(g/m2)以下の重量を有する、実質的に一様な厚さのシートが得られるように広げる(拡開する)こと、ならびに、少なくとも1つの他の一方向性シートと重ね合わせる前に、当該一方向性シートに凝集力を付与して取り扱うことができるようにすることを含んでいる。
【0028】
本発明の方法の1つの特徴においては、少なくとも1つの一方向性シートを形成するために複数のトウが使用されており、トウは一方向性ストリップを形成するように広げられており、5cm以上の幅および300g/m2以下の重量を有する一方向性シートが形成されるようにストリップはサイド・バイ・サイドに配されている。
【0029】
本発明の方法の利点を更に向上させるために、特に炭素繊維を用いる場合、少なくとも1つの一方向性シートは、12K(12000のフィラメント)に等しいかまたはそれ以上であり、可能な場合には、480K(480000のフィラメント)に等しいかまたはそれ以上の数であるフィラメントを有する少なくとも1つのトウを拡開させることによって形成することが好ましい。
【0030】
あらゆる工業的繊維を用いて、同様の技術を用いることができる。
本発明の方法の利点は、大きなトウを、特に、多様な種類の繊維について利用することができる最大規模のトウを用いることである。
【0031】
特に炭素繊維の場合、所定の重量あたりで、肉厚のトウのコストは、出願人が知る限りにおいて、多軸性シートを製造するための技術水準において用いられる種類の薄いトウまたは糸の場合よりも、非常に低いものである。
【0032】
一例として、従来技術の場合のように相互に平行な糸によって形成されるか、または本発明のように拡開されるトウによって形成されるかに応じて、以下の表は、種々の数のフィラメントを用いて形成される市販の炭素糸またはトウにあてはまり、一方向性シートについて得られる重量を与える。糸またはトウは、ポリアクリロニトリルまたは異方性ピッチ前駆材料を用いて、高強度または高モジュラス炭素から形成されている。
【0033】
【表1】
【0034】
300g/m2以下の単位面積あたり重量を有する少なくとも1つの一方向性シートを形成するように、1本のトウを拡開し、または複数のトウを拡開して並置し、その結果、限られた数の重いトウから、比較的幅の広い、即ち、少なくとも5cm、好ましくは少なくとも10cmのシートを形成することができる。
【0035】
比較的軽量の一方向性シートを用いることによって、そのような一方向性シートから形成される多軸性シートにおいて、この特性を保持することが可能となる。
【0036】
更に、上述したような平行な糸のシートを用いる従来の技術とは反対に、軽量のシートが得られるまでトウを拡開させることによって、穴やうねりなどの表面欠陥を有さず、滑らかな表面外観を有する、多軸性シートを製造することができる。本発明の方法によれば、脆弱な(fragile)繊維を用いることも可能である。
【0037】
不連続フィラメントから一方向性シートを形成する場合、フィラメントを軽い程度にてマット化(matting)することによって凝集力を付与することができる。そのために、シートをプレートの上に配して、ニードリングに付したり、または、加圧下にて水のジェットに曝したりすることができる。シートは、その後、凝集力を失うことなく、広げることができる。
【0038】
いずれの場合にも、一方向性シートを形成するフィラメントが連続であるかまたは不連続性であるかとは無関係に、化学的結合剤(chemical bonding agent)を供給することによって凝集力を付与することができ、化学的結合剤は、場合により、取り除く(または犠牲にする)のに適するものであってよい。結合剤は、シート上に液状の配合物を噴霧することによって、またはシートを浴の中に通すことによって適用することが有利である。凝集力を供給するのは、シート上にパウダー形態の熱溶融性または熱接着性ポリマーを振りかけることによっても行うことができる。
【0039】
少なくとも1つの熱溶融性もしくは熱接着性フィルムまたは糸を用いて、または、実際には、接着剤、例えば揮発性溶剤中の接着剤溶液を線状に適用することによって、使用する一方向性シートの少なくとも1つに横方向凝集力を付与することを考えることもできる。
【0040】
本発明の方法は、特に、多軸性シートの長手方向に平行な進行方向に移動する移動サポート(moving support;または移動支持体)の上に、少なくとも1つの横方向の一方向性シートを供給(fetch)することによって、長手方向を有する連続多軸性シートを製造しようとするものであり、当該横方向の一方向性シートまたは各横方向の一方向性シートは、隣接するかまたは部分的に重なっており、進行方向に対してそれぞれ同等の選択された角度をなしている連続セグメントとして供給されている。
【0041】
重ね合わせた一方向性シートの凝集力によって、一方向性シートを互いにレイイングする際に、拘束することなく、多軸性シートを形成することが可能となり、従って、一方向性シートを重ね合わせる順序に関して大きな融通性がもたらされる。従って、長い中央の一方向性シートの両側において、その中央の一方向性シートに対してそれぞれ反対の角度をなして配される2つの横方向の一方向性シートと共に、中央面に対して、特に、長手方向が進行方向に対して平行である中央の長い一方向性シートに対して、対称性(鏡映対称性)を呈する、多軸性シートを製造することができる。
【0042】
本発明の方法の好ましい実施形態では、横方向シートを形成する各連続セグメントは、横方向シートの方向と平行に、測定される多軸性シートの寸法(dimension)と実質的に同等の長さ以上にシートを移動させ、このように供給されるセグメントが切り取られ、および、切り取られたセグメントを移動するサポートまたは形成される多軸性シートの上に被覆させることによって、供給される。有利な態様において、横方向シートは、それが切り取られる領域において、例えば、その表面の少なくとも一方にフィルムを取り付けることによって、補強される。
【0043】
横方向シートを連続する切り取ったセグメントに配することによって、スパイクの回りでシートを転回させることによる既知の敷設(laying)技術と比較して、材料の損失を制限することができるということも見出されるであろう。更に、このようにして加工することによって繊維に損傷を与えることを回避し、従って、脆弱な繊維、例えば、高モジュラスな炭素繊維もしくは異方性ピッチ系の炭素繊維またはセラミック繊維をレイイング(敷設)することが可能となる。更に、横方向シートの供給が中断した後で、レイイング(敷設)・プロセスを再開することは、横方向シートが互いに結合されていない平行な繊維の組合せによって形成されている場合と比べると、遙かに容易である。
【0044】
もう1つの要旨において、本発明は、上述の方法によって得られるように一方向性シートまたは多軸性繊維シートを提供する。
【0045】
更にもう1つの要旨において、本発明は、マトリックスによって高密度化された繊維補強材料を有する複合材料パーツであって、そのような一方向性シートまたは多軸性繊維シートの少なくとも1種から繊維補強材料が形成されるパーツを形成することを提供する。
【0046】
更に別の要旨において、本発明は、実施する方法の好ましい実施を可能にするレイイング(敷設)・マシンを提供する。
【0047】
そのため、本発明は、一方向性繊維シートを、種々の方向に重ね合わせることによって多軸性繊維シートを製造するレイイング・マシンを提供するものであって、そのマシンは、
・形成される多軸性シートを支持する支持手段、および、支持手段を進行方向へ駆動させる駆動手段を有してなる、多軸性シートを進行させる装置;
・進行方向と平行な方向に長い一方向性シートを供給する供給手段:
・交差レイイング(敷設)・デバイスに連続一方向性シートを供給する供給手段、シートの自由端を保持固定する移動把持ヘッド、および、進行方向に対して選択された角度にて、横方向方向と平行にシートの連続セグメントをレイイングする手段であって、把持ヘッドを駆動させる手段を有するレイイング手段をそれぞれ有する複数の交差レイイング・デバイス;
・重ね合わせた一方向性シートを一体に結合させる手段であって、進行方向において支持手段から下流側に配される結合手段
を有する。
【0048】
この装置において、各交差レイイング・デバイスは切断手段を有しており、更に、各交差レイイング・デバイスについて、把持ヘッドによる一方向性シートの自由端を把持すること、一方向性シートのセグメントを供給するために把持ヘッドを移動させること、一方向性シートの供給したセグメントを切り取ること、および切り取った一方向性シートを支持手段の上にレイイングすることを含む連続サイクルを実施するための手段が更に設けられている。
【0049】
そのようなマシンの1つの重要な利点は、横方向方向を含めて、比較的幅の広い一方向性シートをレイイングできる可能性がある点である。
【0050】
重ね合わせた一方向性シートは、種々の手段で、例えばソーイングによって、ニッティングによって、ニードリングによって、または接着剤によって、例えば、シートの間に、接着剤を噴霧することによって、もしくは熱溶融性もしくは熱接着性フィルムもしくは糸を挿入することによって、互いに結合することができる。一方向性シート内に凝集力を供給するのに用いることができる結合剤を再活性化させて、シートどうしを互いに結合させることもできる。
【0051】
本発明は、添付した図面を参照して非限定的な説明により与えられる以下の説明を読むことによって、よりよく理解されるであろう。
【0052】
一方向性シートの製造(図1〜5)
トウは個々に広げられ、得られた一方向性のストリップは適宜並べられて一方向性シートを形成する。当該一方向性シートの凝集(または結合)状態は、シートをリールに蓄積する前に、シートを構成するフィラメント間に結合または接着剤を供給することによりもたらされる。
【0053】
図1においては、図を明瞭にするために、トウを広げるデバイスが1つ示されている。トウ10aは、それが詰められた箱から直接的に取り出される。1つのバリエーションにおいて、トウはクリールによって担持されているリールから取り出すことができる。
【0054】
種々のトウが、予定されているシートの用途に応じて使用され得る。例えば、トウは炭素(カーボン)繊維もしくはセラミック繊維、または炭素もしくはセラミックの前駆体である繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、あるいは種々の繊維の混合物であってよい。適当なセラミックは、特に、炭化ケイ素、および耐熱性酸化物、例えば、アルミナおよびジルコニアである。トウは連続フィラメントまたは不連続フィラメントから成っていてよく、それらが不連続である場合には、例えば、それらは連続フィラメントのトウを破断する(burst;または裂く)ことによって得ることができる。不連続フィラメントから成るトウを用いる場合、ともに緊密に混合された種々の材料のフィラメントを含む混成(またはハイブリッド)トウを用いることができる。それらは、種々の材料から成る破断したリボンまたはトウを供給し、それらをギル・ボックス(gill box)を通過させることにより、繊維を混合することによって得ることができる。
【0055】
可能である場合には、特に得られるシートの原価を減少させるために、大量のトウが用いられる。「大量」のトウという用語は、ここでは、少なくとも12Kのフィラメントから成るトウ(即ち、12,000本のフィラメントから成るトウ)、好ましくは、50Kよりも少なくない数であって、可能な場合には480Kまたはそれ以上の数のフィラメントを有するトウについて用いられる。
【0056】
トウ10aは、取り出してもつれをほどくデバイス12を通過する。当該デバイスは、2つのエンド・プレート12bの間に延在する複数の棒12aによって形成され、全体のアセンブリーがモーター13により駆動されて棒に平行な軸の回りを回転する。棒12a(例えば4本の棒)は、回転軸の回りに規則正しく配置される。
【0057】
自由に回転するように取り付けられたデフレクター(deflector;またはそらせ板)・ローラ14および16を通過した後、トウ10aは、同様に自由に回転するように取り付けられた4つのローラ18a、18b、18cおよび18dから成る張力調節デバイス18に達する。これらのローラは、周知の方法で、アクチュエーター19により駆動されて変形可能な平行四辺形を構成する。アクチューエーターは、張力を一定に保つために、ローラを有するアームを作動させることによって、張力調節デバイスを経由するトウ10aの経路を長くする、または短くすることができる。
【0058】
その後、トウ10aは、複数の固定された「バナナ」形の湾曲ローラ22a、22b、22cを連続的に通過する。これらのローラは、例えば3つ設けられてよく、薄い一方向性ストリップ20aを形成するために、公知の方法で作動してリボンを広げる。
【0059】
ストリップ20aにおける張力は、ローラ24a、24bおよび24cを通過させることによって、常套的な方法で測定される。これらのローラにおいて、ローラ24bは鉛直方向に移動できるとともに弾力によりバイアスされる。ローラ24bの軸の移動を測定することによって与えられるストリップの張力の変化に関する情報は、測定される張力を一定に維持するべく、アクチュエーター19を制御するために使用される。
【0060】
ストリップ20aは、自由に回転するローラ25上にある同一または類似の他のストリップ20b、20c、20dおよび20eに隣接して配置され、それにより一方向性シート30を形成する。従って、ストリップは同一または異なるトウから得ることができ、例えば、トウが異なる場合、異なる重さのトウ、または異なる種類の繊維から成るトウからストリップを得ることができ、それにより混成シートを形成することが可能になる。
【0061】
ストリップ20b〜20eは、上述したデバイスと同一のトウを広げるデバイスを用いることによって得られる。
【0062】
図2に示すように、種々のスプレッダー(spreader;または拡開)・デバイスが、鎖線の矩形で示される各フレーム26a、26b、26c、26dおよび26eに取り付けられる。フレームは、互いに当たらないように、共通の水平面の上下に交互に配置される。
【0063】
種々のスプレッダー・デバイスから来るストリップ20a〜20eはローラ25に集まる。それらが正確に隣接できるようストリップの位置を調節するために、トウの進行方向に対するフレームの横方向の位置を調節することができる。従って、各フレーム、例えば26eは、モーター29eにより駆動されて横方向のガイディング・スライドウェイ(guiding slideway;またはガイド用摺動路)28eにそって移動し得る。
【0064】
1つのバリエーションにおいて、一方向性ストリップは、隣接するのではなくて、部分的な重なりを含むように、並べて配置することもできる。ストリップを正確に縁と縁とを合わせて配置させることと比べて、より小さい許容差が必要とされるが、得られたシートにおいて各縁に沿って位置する部分は犠牲になる必要がある。
【0065】
横方向の凝集状態は、ローラ25から液体の配合物(compound;またはコンパウンド)をシート30c上の下流側に投入することによって、シート30cに付与でき、前記配合物は化学的な結合剤、例えば、溶液中のポリマーを含む配合物である。
【0066】
種々のポリマーを使用することができる。有利には、使用されるポリマーは犠牲となるのに適したもの、即ち、例えば溶解させる又は熱処理を施すことによって容易に除去されるのに適したものであってよい。そのようなポリマーとして、水に溶解し得るタイプのポリビニルアルコール(PVA)またはポリビニルピロリドン、および可溶性ポリエステルを挙げることができる。一方向性シートを含む多軸性シートから成る補強用布帛を用いて複合材料を作る場合、後の段階にて析出されるマトリックスと適合するポリマーを使用することもまた想定できる。「マトリックスと適合するポリマー」という用語は、ここでは、マトリックスと同じ種類のものを有する、またはマトリックスに溶解するのに適したポリマー(例えば樹脂)、あるいは実際には、異なる種類ではあるが、マトリックスと接触して存在しても複合材料の性質に影響を及ぼさないポリマーを意味するために使用される。
【0067】
液体配合物はフィード・パイプ34を経由してノズル32へ搬送される。配合物がスプレーされた後、シートは、シート30の表面全体に所定量の液体配合物を均一に分布させるために、調節された圧力にて互いに押し付け合っている2つのローラ36の間を通過する。その後、シート30は、液体配合物に含まれる溶媒を除去するためにストリップ・ドライヤー38の下方を通過する。凝集シート30はそれから、モーター39によって回転させられるリール40に蓄積してよい。
【0068】
1つのバリエーションにおいて、凝集状態は、液体樹脂を含む配合物をスプレーし、それから樹脂を硬化させることによってシートに付与することができる。有利には、紫外線に曝すことによって硬化し得る樹脂が用いられ、その場合、ストリップ・ドライヤー38はUVの光源で置き換えられる。例えば、そのような樹脂はUV硬化型アクリル酸エステルである。
【0069】
更に、熱溶融性または熱接着性ポリマーの粉体をシートに散布する、あるいは熱溶融性または熱接着性フィルムもしくは糸(thread;またはスレッド)をシート上に置いて、それからそれを加熱デバイスに曝す方法もまた利用できる。後で蒸発する溶媒を用いた溶液中の接着剤により構成される「接着剤のライン」をシートに形成することもまた想定できる。
【0070】
使用されるトウの重量および数に応じて、より大きいまたは小さい幅のシート30を得ることが可能である。かなり大きい数のフィラメントを有するトウから開始すれば、既に言及したように、本発明は、限られた数のトウ、従って限られた数のスプレッダー・デバイスを用いて、幅の広いシート、即ち少なくとも5cm幅のシート、好ましくは少なくとも10cmまたはそれ以上の幅のシートが得られることを可能にするという利点を有する。本発明の別の特徴は、重さが300g/m2よりも大きくなく、均一な厚さを有する薄いシートが得られることを可能にすることである。
【0071】
結合剤は、シートが連続的なフィラメントから成る場合、およびシートが不連続フィラメントから成る場合に、均一に十分に固定するために、シートに適用(または塗布)される。
【0072】
シートを、繊維補強材をマトリックスで緻密化することにより得られる複合材料のパーツの繊維補強材を形成するために用いることが予定されている場合、結合剤は用途の関数として選択することが好ましい。例えば、犠牲となるのに適した結合剤であって、複合材料のマトリックスによる緻密化の前に、溶解することにより、または熱を与えることにより消失し得る結合剤を用いることができる。マトリックスの性質が低下しないように、マトリックスと適合する結合剤、即ち、マトリックスと化学的に反応することなく残る、又はマトリックスに溶解し得る結合剤を使用することもまた可能である。
【0073】
シートが不連続なフィラメントから成る場合、横方向の十分な凝集状態をシートに付与してシートを取り扱うことを可能にする、他の固定方法もまた想定され得る。これらの方法は、平行な不連続な繊維を互いに結合するように作用する固定方法に特に関する。
【0074】
図3は、シートが金属プレート33aを通過している間に、圧力下でウォーター・ジェット(または圧力水の噴流)をシートにスプレーするデバイス33を通過する隣接する一方向性ストリップ20a〜20eにより形成されるシート30を示す。ウォーター・ジェットは、プレート33aでリバウンドさせることにより、不連続なフィラメントを適度にマット化する(または絡み合わせる)。その後、シート30はリール40に蓄積される前に、乾燥ストリップ38の前を通過する。
【0075】
図4に示す別のバリエーションにおいて、ストリップ30はニードリング・デバイス35を通過する。このデバイスは、鉛直方向に往復運動するように駆動されるニードルボード35a、およびストリップ30が通過する支持体35bを含む。支持体35bはボード35aのニードルと重なるように開口部を有する。その結果、ニードルは、不連続なフィラメントが移動している間に、シート30の厚さ全体にわたって貫通し、それにより、横方向で所望の凝集状態を与える、限られた量の横方向での絡み合いを生じさせる。ニードリングされたシートはリール40に蓄積される。
【0076】
図1に示すスプレッダー・デバイスは、連続的または不連続なフィラメントもしくは繊維から成るトウについて用いることができ、それは特に連続フィラメントのトウに最も適している。
【0077】
有利には、不連続フィラメントから成る一方向性シートまたはストリップを形成する操作は、連続フィラメントのシート20aを得るために、図1に示すように連続フィラメントのトウを広げることを含む。これは引張および破断デバイス21に送られる(図5)。引張および破断技術はそれ自体周知である。それは、シートを、幾つかの連続する対のドライブ・ローラ(drive roll)、例えば、21a、21bおよび21cの間を通過させることに存する。ドライブ・ローラは、各自の速度va、vbおよびvcにて、vc>vb>vaとなるように駆動される。増加する速度でシートを引っ張ることにより、連続的なフィラメントは破断させられる。対のローラ間の距離、特に21aと21bとの間の距離は、破断パターンを決定する、即ち、それは破断したフィラメントの平均長を決定する。
【0078】
引張および破断の後、シート20'aは引っ張られているが、その(単位面積あたりの)重量はシート20aのそれと比較してかなり減少している。不連続なフィラメントから成る引っ張られたシート20'aは適宜、他の同様のシート20'b〜20'eと並列に又は部分的に重ねて並べられ、それから上述した適度なマット化(または絡み合わせ)手段によって凝集され、例えば、図3の実施態様に示すように高圧のウォーター・ジェットに付すことにより、または図4の態様のようにニードリング・デバイス35によってニードリングに付すことにより、凝集される。
【0079】
得られたシート30は、更に(単位面積あたりの)重量を減らすために、シートの凝集を損なうことなく、幅を広げることができる。この幅が広くなり得る性質は、用いられた凝集技術(ウォーター・ジェットまたはニードリング)によって付与される。
【0080】
幅を広くすることは、例えば、凝集シート30を、リール40に蓄積する前に、1または複数の対の湾曲したローラ37を通過させることによって実施され得る。
【0081】
シートは、リール40に蓄積された後、例えば、それが多軸性シートを形成するためにストレージ・リール(storage reel)から取り出されるときに、幅を広げてもよいことが理解されるであろう。
【0082】
トウを広げることによって一方向性シートを得る別の公知の技術、例えば、ローヌ・プーランク・フィブレ(Rhone Poulenc Fibre)のFR−A−2 581 085号およびFR−A−2 581 086号の文献に記載された技術もまた利用され得る。それらの文献においては、広げるトウは、スパイクを備えている細長い弾性要素を含むローラに運ばれる。当該弾性要素は、母線に沿って、ローラの周縁部に配置されている。ローラと接触する経路の一部において、トウはスパイク上に係合されており、それはローラの軸に平行に延びる弾性要素によって広げられる。
【0083】
多軸性シートの製造
次に図6A〜6Bを参照する。図6A〜6Bは、連続的な多軸性シートを、少なくとも1つが上述した方法により得られる複数の一方向性シートで製造するのに適した、本発明の実施態様を構成しているレイイング・マシンを示す。
【0084】
図示した例において、多軸性シート50は、3つの一方向性シート30a、30bおよび30cで構成され、それぞれのシートは長手方向に対してそれぞれ次の角度:0°、+60°および−60°を形成している。0°の角度で位置するシート(シート30a)、即ち「主たる」シートは、上述した方法により得られた凝集一方向性シートであり、リール40aから繰り出される(または解かれる)。+60°の角度で位置する横方向のシート(シート30b)および−60°の角度で位置する横方向のシート(シート30c)は、上述した方法により得られる凝集シートであり得る一方向性シートであり、リール40bおよび40cからそれぞれ繰り出される。使用される一方向性シートは、必ずしも同じ幅を有する必要はない。従って、当該実施例において、横方向シート30bおよび30cはともに同じ幅を有し、それは長手方向のシート30aの幅よりも小さい。一般に、横方向シートは通常、主シート(0°)の幅よりも小さい幅を有するであろう。
【0085】
横方向シートにより形成される、0°の角度で位置するシートに対する角度は、+60°および−60°以外であってもよく、例えば、それらは+45°または−45°であってよく、より一般には、それらは好ましくは反対符号の角度であり得るが、必ずしも等しくない。2つよりも多い横方向シートを、例えば、90°の角度で位置するシートを追加する、及び/または、長手方向に対して反対符号の角度を形成する少なくとも1つの他の対のシートを追加することによって、0°のシートと重ね合わせ得ることもまた理解されるであろう。
【0086】
図6Aに示すように、多軸性シート50は、モーター47により駆動されるドライブ・ローラ46上、およびデフレクション(または偏向)・ローラ48(図6B)上を通過するコンベア44のエンドレスベルト42の水平方向の上側セグメントによって構成される支持体の上に形成される。ベルト42の幅はシート50のそれよりも狭く、そのためにシートは僅かにベルト42の両方の側部42aおよび42bからはみ出ることが理解されよう。
【0087】
シートは、+60°の角度にて並べられたセグメント30bをベルト42の上に供給し、それから、その上に0°に向けられたシート30aを置き、続いて−60°に向けられたシート30cの並べられたセグメントを導入することにより形成される。0°のシートが2つの横方向シートの間に配置される多軸性シート50を形成し得ることは有利な特徴であり、それによりシート50に対称性が付与される。これは、シート30aに備わっている凝集により可能となる。
【0088】
また有利には、上述した方法により得られる0°の角度で位置する一方向性シートはかなり広い幅を有し、5cmよりも小さくなく、好ましくは少なくとも10cmであり、従って、広い幅の多軸性シートを形成することが可能となる。
【0089】
シート30bおよび30cの連続的なセグメントを供給し、切断し、敷設するデバイス60は、同一であり、そのためシート30cに関するデバイスだけを図示している。
【0090】
シート30cは、シート30cの自由端をつかむことができる少なくとも1つのクランプを有する把持ヘッド70によって、リール40cから繰り出される。
【0091】
シート30cは、コンベアー・ベルト42の縁部42aから、長手方向のシートの幅を被覆するのに十分な長さだけ引き出される。従って、供給されたセグメントは、コンベアー・ベルトの縁部42a上に位置するシート30aの縁部(またはエッジ)にて、切断デバイス80を用いて長手方向に切断される。同時に、シート30cの切断したセグメントは、先に供給したセグメントに対する、従って、すでに敷設されたシート30aおよび30bに対するコンベアー・ベルト上での位置を維持するために、切断された端部によって固定される。
【0092】
シート30cを変形およびほつれを生じさせることなく切断するために、フィルムまたはテープ92のセグメントの形態の局所的な補強材が、切断される各場所にてシート30cの各面に固定される。フィルム92は、例えば、接着剤、熱接着剤、高周波溶接、超音波溶接等により、デバイス90によって固定できる。例えば、熱接着により固定できるポリエチレンフィルムが用いられる。補強用フィルムはシート30cの一方の面にのみ固定してよいことが理解されるであろう。
【0093】
把持ヘッド70は、ビーム(beam;または梁)66のスライドウェイ64でスライドする滑車62により搬送される。例えば、滑車62はスライドウェイ64で可逆モータ69により駆動されるエンドレス・ケーブル68に固定される。ビーム66はリール40cを支持し、また、シートのセグメントを切り離して敷設するデバイス80および補強用フィルムを所定位置に配するデバイス90をも支持する。
【0094】
ヘッド70ならびにデバイス80および90の使用法についての詳しい説明を以下に述べる。把持ヘッドは、ビーム66に取り付けられたデバイス80および90と同様に、滑車62に取り付けられたスイベル(swivel)であってよいことが理解されよう。その結果、敷設された横方向シートにより形成される長手方向(0°)に対する角度は、ビーム66の方向を適当に調節し、また、ヘッド60、ならびにビームに対するデバイス80および90の位置を調節することによって容易に変更できる。ヘッド70およびデバイス80、90の作動は、ビーム66に沿って通っているケーブル102の束により接続されているコントロール・ユニット100によって制御される。
【0095】
各シート30bおよび30cのセグメントは、コンベアー44が静止している間に供給され、切り離され、敷設され、そして固定される。その後、コンベアーは、長手方向(0°)で測定されるシート30bおよび30cの寸法に等しい長さだけ進行し、そして工程が繰り返される。コンベアー44の各進行において、長手方向のシートが同じ長さだけ繰り出される。
【0096】
重ね合わされた後、シート30a、30bおよび30cは一体に結合される。図6Bに示す実施例においては、この結合は、多軸性シート50がコンベアー44bから離れるときに、多軸性シート50の幅全体にわたって延在するニードルボード52を用いてニードリングにより実施される。ニードリングの間、シート50は、例えばポリプロピレンから成るベース・フェルト52bを有するプレート52aにより支持される。ニードルは、損傷されることなく、このベース・フェルトに進入できる。そして、ニードリングはコンベアーが進行するたびに実施される。ニードリングによる結合は、ニードリングにより過度に損傷されるおそれがない連続フィラメントから成るシートまたは不連続フィラメントから成るシートに特に適している。
【0097】
多軸性シート内へ横切って導入されるようにニードルで捕らえられるのに適した不連続な繊維を供給するために、不連続な繊維ウェブをニードリングの直前に多軸性シートに重ねることができ、それにより結合することができる。
【0098】
ニードリングの後、補強用フィルム92の一部を担持している多軸性シートの縁の領域(marginal zone;またはマージナル領域)は、シートの両側に配置された回転するカッター・ホイール56により切り離すことによって取り除くことができる。得られる多軸性シートは、コンベアー44の断続的な進行と同時にモーター59により駆動されるリール58に蓄積され得る。
【0099】
次に図7を参照する。図7は、熱接着により補強用フィルム92を所定位置に配するデバイス90をより詳細に非常に模式的に示している。
【0100】
各フィルム92は、各ストレージ・リール92aから引き出され、2つのリール93aおよび93bの間を通過する。リール93aおよび93bのうち1つのリール(例えば93a)は駆動モータ(図示せず)に連結され、駆動モータは、両方のリール93aに共通であってよい。2つのクランプ96がアクチュエーター96aの制御下で開閉し、そしてクランプ96は、空気式のアクチュエーター99の同じシリンダーに取り付けられたロッド98の端部に固定される。2つのロッド98はそれぞれ、リール40cから引き出されるシート30cの経路の上方および下方で延びており、それらの長さはシートの幅よりも長い。
【0101】
2つの加熱プレス97が、シート30cの経路の両側に配置されている。支持ブレード(backing blade)94bと協働する2つのブレード(blade)94aが、アクチュエーター(図示せず)の制御下にてフィルム92を切断できるよう、対のリール93a、93bのすぐ下流側に配置されている。
【0102】
補強用フィルム92を所定位置に配するサイクルは、図8A〜8Cに図示されている以下の操作を含む。
【0103】
サイクルの開始時に、クランプ96を有するロッド98は、アクチュエーター99に近接する縁部とは反対側のシート30c縁部を越えて最も進行した位置にあり、フィルム92は、それらの自由端が、開いた状態にあるクランプ96に十分に係合するまで、リール93a、93bによって進行させられる(図8A)。ドライブ・ホイール93aは、フィルム92の端がクランプ96内の所定位置にあることを適当なセンサーを用いて検知したことに応答して、あるいはフィルムが所定距離だけ進行した後に、止めることができる。
【0104】
クランプ96はアクチュエータ96aの制御下にて閉じられ、リール93aのクラッチは切られ、そしてアクチュエーター99は、ロッド98を引っ込め、アクチュエーター99と同じ側のシート30cの縁部を越えるまでフィルム92を引き出すように制御される(図8B)。
【0105】
フィルム92のセグメントを熱接着により固定するために、加熱プレス97が、シート30cの両側で、シート30cの各面の上に位置するフィルム92のセグメントに押し当てられる。プレス97が押し当てられると同時に、クランプ96が開かれ、ブレード94aが作動してフィルム92を切断し、それにより、熱接着の間、フィルムのブレード・セグメントを開放する(図8C)。
【0106】
プレス97を後退し、シート30cを進行させた後、ロッド98を再度、アクチュエーター99によって進行した位置に移動させ、それからフィルム・レイイング・サイクルを繰り返すことができる。
【0107】
次に図9および10を参照する。図9および10は、把持ヘッド70、および横方向シートのセグメントを切断し固定するデバイス80をより詳細に、しかし非常に模式的に示すものである。把持ヘッド70は、シート30cの自由端をつかむ2つの要素71aおよび71bを有するクランプ71を含む。クランプ71の開閉は、上側要素71aに作用するアクチュエーター72の制御下にある。更に、クランプ71は、滑車62に固定されクランプ71を支持する別のアクチュエーター73の制御下で、コンベアー・ベルト42の面に近接する位置と、前記の面から遠ざかる位置との間で、移動することができる。
【0108】
シート30cが供給される側に位置するコンベアー・ベルト42の側部42aの付近において、クランプの形態のガイド・デバイス74が配置されている。このクランプは、アクチュエーター75aの制御下にて、コンベアー・ベルト42の面から離れている高い位置と、実際には前記の面に位置する低い位置との間で移動できる上側要素74aを含む。クランプ74はまた、アクチュエーター75bの制御下にて、実際にはコンベアー・ベルト42の面に位置する低い位置と、前記面から離れている高い位置との間で移動できる下側要素74bを有する。
【0109】
切断デバイス80は、コンベアー・ベルト42の面の下方に位置する支持体82に取り付けられているブレード81を含む。支持体82は、アクチュエーター84の制御下にてベルト42の側部42aに沿ってスライドすることができる。プレッサー(または押え)・デバイス85は、シートのセグメントが切り離されている間、支持体86にシート30cを押し付けるために、コンベアー・ベルト42の面の上方に配置されている。圧力を加えること、およびプレッサー・デバイス85を後退させることは、アクチュエーター87によって制御されている。支持体87およびプレッサー・デバイス85はそれぞれ、ブレード81を通過させるスロット86aおよび85aを有する。
【0110】
プレッサー・デバイス85および支持体86はまた加熱要素であり、コンベアー・ベルトの側部42aに形成される多軸性シート50の側部に対して締め付けることが可能な加熱プレスを構成する。アクチュエーター89の制御下にある2つの類似する要素88から成る加熱プレスを、コンベアー・ベルトの反対の側部42bに設けることができる。
【0111】
切断デバイス80側の側部42aおよび任意の加熱プレス88側の側部42bに必要なスペースを残すために、コンベアー・ベルト42の幅は形成される多軸性シート50の幅よりも小さい。
【0112】
横方向シート30cのセグメントを供給、切り離して、固定するサイクルは、図11A〜11Cで示すように、以下の操作を含む。
【0113】
コンベアー・ベルト42の側部42aの付近のシート30cの自由端は、要素74aおよび74bが高い位置にあるクランプ74によってつかまれる。把持ヘッド70は、高い位置にクランプ71を有し、コンベアー・ベルトの側部42aでストロークの端に位置している。この位置において、クランプ71は、アクチュエーター72によって閉じられ、シート30cの端部をつかむことができる(図11A)。
【0114】
クランプ74は、その下側要素74bを下げることにより開かれ、滑車62はモーター69によって移動させられてクランプ71をストロークの他端に至らせ、コンベアー・ベルト42の側部42bを僅かに越えさせる(図11B)。
【0115】
クランプ71は、既にシート30bおよび30aを支持しているコンベアー・ベルト42にシート30cのセグメントを押し付けるために、クランプ74の上側要素74aと同じように低下させられる。プレッサー・デバイス85は、支持体86にシート30cを押し付けるために、アクチュエーター87によって低下させられる。それから、ブレード81はシート30cを切断するために縦方向に移動させられる(図11C)。シート30cは、補強用フィルム92が固定された場所で切断され、補強用フィルムを重ねるデバイス90と横方向シートを切断するデバイス80との間の距離は、シート30cの横方向の進行距離、即ち、切断されるシート30cのセグメントの長さに等しくなる。
【0116】
加熱要素85および86は、補強用フィルム92の切断部分を、コンベアー・ベルト42の側部42aに位置する多軸性シートの縁部に接着させて、当該側部でシート30cの切断されたセグメントの部分を固定するために、必要な熱を生成するように制御される。切断後、シート30cの自由端に取り付けられたままである他方のフィルムの部分92は、加熱プレス88を用いて、多軸性シート50の他方の側部に接着させることができる。その結果、シート30cの各切断セグメントは、多軸性シートの形成の間、多軸性シートの残りの部分に対して所定の位置に保持される。このことは、多軸性シートが最終的に固定される前に、コンベアー・ベルト42の進行中、横方向シートのセグメントが時宜を得ずに配置されることを回避する。
【0117】
それから、クランプ71は、コンベアー・ベルトの側部42aに向かって移動させられて戻る前に、開かれて、その高い位置に戻され、同時に、クランプ74は、所望の位置で把持ヘッドにシート30cの自由端を与えるために、その高い位置に戻される。
【0118】
種々の実施態様
上述したレイイング・マシンは、多軸性シートが形成されている間、多軸性シートを不連続的に進行させながら、作動する。生産のスループットを増加させるために、また、重ね合わされた一方向性シートを一体に結合することが縫合またはニッティングにより実施される場合には、当該結合手段との適合性を向上させるために、レイイング・マシンはその進行が連続的であるように作動させることが好ましい。
【0119】
このために(図12)、横方向シートの切断したセグメントは、移動デバイス104によってつかまれて、連続的に形成され進行している多軸性シート50上に連続的に運ばれる。移動デバイスは、コンベアー・ベルト42の両側で進行方向に平行に並進運動し得る滑車106a、106bにより搬送される、2つの対のクランプ104a、104bを有する。このために、滑車106aおよび106bは、モーター110により駆動されるドライブ・ホイール108aおよび108b、ならびに2つのデフレクター・ホイール112aおよび112bを通過するエンドレス・ケーブルに固定される。2つの対の加熱プレッサー・ホイール114aおよび114bは、横方向シートのセグメントを、それが敷設されたときにただちに、シートのセグメントの端部にてフィルム92の熱接着により横方向シートのセグメントを固定する作用をする。
【0120】
横方向シートの各セグメントは、切断デバイス80がビーム66により担持され、切断したシートのセグメントを固定する加熱プレスが設けられていない点を除いて、図6A〜6Bに示す装置と類似する交差レイイング・デバイス60により供給され、切り離される。
【0121】
敷設は、交差レイイング・デバイスにより各セグメントを供給して切断することにより、そして切断したセグメントが交差レイイング・デバイスにより解放されたときにただちにクランプ104aおよび104bを用いて切断したセグメントをつかむことによって実施される。これらは、所定の速度にてモーター110により同時に移動させられて、切断したセグメントを、予め敷設したセグメントと接触させ、所定の(隣接する又は重なる)位置に配する。その後、クランプ104a、104bはそれらの最初の位置に戻されて、次の切断したシートのセグメントを運ぶ。
【0122】
別のバリエーションにおいて、そしてまた生産のスループットを増加させるために、横方向シートの連続するセグメントを供給して、切り離し、敷設する各交差レイイング・デバイスは、閉じたループのパス(または経路)に沿って移動させられる複数の把持ヘッドを有する。その結果、1つの把持ヘッドが戻っている間に、別の把持ヘッドが作動し得る。
【0123】
図13A〜13Dは、横方向シートのセグメントを供給して、切り離し、固定する連続的な工程を示している。
【0124】
交差レイイング・デバイスは、ベルトまたはチェーンを用いた循環(またはエンドレスの)搬送装置76に取り付けられている、複数の、例えば2つの把持ヘッド701および702を有している点において、図6A〜11Cのそれとは異なっている。搬送装置76は、コンベアー・ベルト42の上方でそれと平行に、敷設される横方向シート30cを敷設する方向で延びている、下側および上側長さを有する。搬送装置76は、コンベアー・ベルト42の両側に位置するドライブ・ホイール76aとリターン・ホイール76bを通過する。ヘッド70は、搬送装置76上で、対向する位置に取り付けられる。
【0125】
各ヘッド701および702は、、アクチュエーター78の端部にて固定されているシュー77を有する。把持ヘッドとシート30cの自由端との間の接続は、接着剤用ノズル79によりシュー77にスプレーされる接着剤によって供される。接着剤用ノズル79は、戻り経路の端部付近で搬送装置76の上側部分の(長さの)上方に配置される。
【0126】
図13A〜13Dの交差レイイング・デバイスはまた、プレッサー・デバイス85が、シートに対して垂直に駆動されるアクチュエーター手段の制御下においてではなく、ピボッティング・マウント(pivoting mount)を用いて作動させられ、また後退させられる点において図6A〜11Cのそれとは異なる。プレッサー・デバイス85は、ヒンジ式に動くリンク85cによって支持体85bに接続されている。ヒンジ式に動くリンク85cは、モーター部材(図示せず)によって駆動されて、ブレード81上にある前側の位置と、把持ヘッドの移動が妨げられない後側の位置との間で、円弧に沿ってプレッサー・デバイス85を移動させる。支持体85bは、シート50の面の上方の高い位置と、シート50と実質的に同じ高さの低い位置との間で、アクチュエーター85eにより駆動されて移動し得る。ここでは図9〜11Cのガイド・デバイス74は不必要であることもまた理解されるであろう。操作は次のとおりである。
【0127】
はじめに、支持体85bを高い位置に、プレッサー・デバイス85を後側の位置に配置させて、接着剤がスプレーされた把持ヘッド701を、シート30cの自由端に接触させる(図13A)。
【0128】
シート30cの自由端がコンベアー・ベルト42の側部42bに向かってシート50の上に運ばれるように、プレッサー・デバイス85がリンク85cによって持ち上げられ、搬送装置76が駆動される(図13B)。
【0129】
シート30cの自由端が所定位置に来たとき、搬送装置76が止められ、プレッサー・デバイス85がその前方の位置に傾いて、それにより把持ヘッド701とプレッサー・デバイス85との間で張力がかけられた状態でシート30cをつかむ(図13C)。
【0130】
その後、アクチューエーター85eおよびヘッド70のアクチュエーター78が、シート30cをシート50に押し付けるように制御される(図13D)。セグメントはそれから、スロット85aを通過するブレード81によって切り離される。同時に、切断されたセグメントの縁部は、加熱プレスを構成するプレッサー・デバイス85および支持体86により、また、加熱要素88にてへッド701からの圧力により接着させられる。図9とは違って、1つの加熱要素88が設けられていることが理解されるであろう。同時に、接着剤がヘッド702にノズル79によってスプレーされる。その後、ヘッド701が持ち上げられて、それから搬送装置76が再び駆動され、それにより新しいレイイング・サイクルがヘッド702を用いて開始し得る。
【0131】
上記において、横方向シートのセグメントの端部を多軸性シートの一方のまたは両方の長手方向の縁部に沿って熱接着により一時的に固定するために装置が設けられ、その縁部は後で除去される。
【0132】
1つのバリエーションにおいて、横方向シート・セグメントの一時的な固定は、コンベアー・ベルト42の縁部42a、42bに沿った、長手方向の2列のスパイク49によって与えられ得る(図14)。横方向シート・セグメントは、クランプ71、74を低下させることにより、または図12の移動デバイスにより、コンベアー・ベルト42に押し付けられると、それらの端部にてスパイク49に係合する。
【0133】
別のバリエーションにおいて、横方向の連続的なセグメントが互いに隣接せずに、部分的に重なって配置される(図15)。重なりの程度は、所定位置に配される2つの連続的な横方向シート・セグメントの間でコンベアー44の速度を調節することにより調節される。そのような部分的な重なりは、横方向シート・セグメントを縁と縁とを合わせて配置するときに直面する困難を回避することを可能にする。その場合、図5に示すように広げた後に得ることができる、軽い横方向シートが用いられる。
【0134】
連続的なセグメントを供給することにより横方向シートを敷設する上述した方法は、本発明の好ましい実施態様であるが、他の敷設(またはレイイング)技術を使用する可能性は、特に横方向シートがかなり小さい幅を有するものである場合には、除外されるものではない。
【0135】
従って、図16に非常に模式的に示すように、上述したUS−A−4 677 831号の文献で説明されたものに類似するタイプの技術を使用することが可能である。その技術において、横方向シート30b、30cの端部は、横方向シートの方向に平行に往復並進運動するように駆動される交差レイイング・キャリッジ110に固定される。シート30bおよび30cは、必要に応じて交差レイイング・キャリッジにより搬送されるリール(図示せず)から繰り出される。交差レイイング・キャリッジのストロークの各端では、横方向シートは、コンベアー・ベルト42によって担持されているスパイク111を、その長手方向の各側部に沿って通過することにより、折り返される。
【0136】
図6Bは、ニードリングによって一体に結合した、重ね合わされたシートを示す。他の方法を用いてもよい。
【0137】
従って、図17は、コンベアー44の直ぐ下流に位置するデバイス120を用いるステッチングによる結合を示す。ステッチングは、種々の異なるステッチ、たとえば常套であるチェーン・ステッチ122を用いて実施され得る。例示のために、使用する縫い糸124は、ポリエステル、ガラス、炭素、アラミド、・・・からなる糸であってよい。ニッティング、例えばジグザグ・ニッティング・ステッチによって結合させることも可能である。
【0138】
図18は、一方向性シート間に導入される熱溶融性の糸による結合を示す。第1の熱溶融性の糸130が、交差レイイング・デバイス131によってシート・セグメント30bの上に配置され、その後、シート30aが敷かれ、第2の熱溶融性糸132が、交差レイイング・デバイス133によってシート・セグメント30aの上に配置され、その後、シート・セグメント30cが敷かれる。コンベアー44の直ぐ下流では、多軸性シート50が2個の加熱ロール124間に通され、この加熱ロール124は糸130および132を融かし、これにより多軸性シートを凝集する。例示においては、糸130および132は、ポリプロピレンでコートされたガラス糸である。熱溶融性糸の代わりに、熱溶融性フィルムあるいは熱接着性フィルムまたは糸を用いることも可能である。
【0139】
最後に、図19は、接着剤による結合を示す。接着剤をスプレーするためのストリップ140および142が、一方向性シート30aを敷くためのステーションおよび一方向性シート30cを敷くためのステーションの直ぐ下流のコンベアー・ベルト42を横切って配置される。コンベアー44の直ぐ下流においては、多軸性シート50が2個のロール144間に通される。
【0140】
一方向性シートの凝集状態が熱溶融性または熱接着性結合剤によって得られる場合、一方向性シート間の結合は、結合剤を熱的に再び活性化させることによっても得られ得る。
【0141】
上述のレイイング(または敷設)のための方法およびマシンは、任意の数の重ね合わされたシートを含む多軸性シートを作製するために用いられる。従って、少なくとも2枚の横方向の一方向性シートを配置することによって、長手方向の一方向性シート(0°)を有さない多軸性シートを形成することが可能である。この場合、また、好ましくは、横方向のシートは、長手方向に対して相互に反対の角度にある方向を有する少なくとも1対のシートを、オプションとして90°にある横方向シートと共に含む。上述のように長手方向の一方向性シートを設ける場合、少なくとも1対の横方向シートが、長手方向の両側の面に、かつ、これに対して反対の角度で配置される;この場合、少なくとも1枚の90°にある横方向シートを追加することが可能である。
【0142】
得られた多軸性シートは、例えば重ね合わされたプライをドレーピングまたはニードリングする周知の技術によって、複合材料パーツの補強材を形成するために用いられ得る。得られた補強材は、その後、化学気相浸透法(CVI)または液相プロセス(液状のマトリクス前駆体(例えば樹脂)を含浸させ、その後、前駆体を改変する(例えば熱処理による)こと)によって、あるいは実際には加熱(califaction)によって得られるマトリクスで緻密化される。加熱では、予備成形体はマトリクスの液状前駆体に浸漬され、予備成形体は(例えば、誘導コアと接触させることによって、あるいは誘導コイルと直接に結合させることによって)加熱され、これにより、前駆体は予備成形体と接触すると同時に蒸発し、予備成形体の孔の内部に蒸着されることにより浸透して、マトリクスを形成し得る。
【実施例】
【0143】
多軸性シートを作製する実施例を以下に例示によって説明する。
実施例1
30,000テックスの重さの、3600MPaの引張り破壊強度と250GPaのモジュラスとを有する480,000(480K)本の連続フィラメントで構成される高強度の炭素繊維からなるトウを、図1の装置と同様の装置によって150mmの幅に亘って広げた。広げられたトウを、引張およびバースティング(破断)操作にかけた。この間に連続フィラメントは不連続フィラメントに改変され、この大部分は25mm〜170mmの範囲にある長さを有した。バースティングの間、広げられたトウを2倍に延伸し、その(単位面積あたりの)重さを減少させ、150mmの幅と110g/m2の重さとを有する一方向性シートを得た。
【0144】
繊維をわずかに向き変えることによってシートが固定され、そのほとんどはシートの向きに対して並行に維持された。向き変えは、金属プレート上に配置されたシートを少なくとも100barの圧力下にある水のジェットに供することによって実施された。
得られたシートは、取扱い性に非常に優れていた。
【0145】
2つの同様の一方向性シートを、図6Aおよび6Bに示すマシンと同様のマシンによって、得られたシートの長手方向(0°)に対して+45°と−45°との角度を形成するように敷いた。約20ストローク/cm2のニードリング密度での軽いニードリングによってシートを一体に結合させた。±45°の2つの軸と220g/m2の重さとを有するシートを得た。
【0146】
プライを2軸性シートから切出し、製造するべき炭素−炭素複合材料パーツのための強化材を形成するために重ね合わせた。例えばUS−A−4 790 052公報に開示されるような周知の方法で、プライを重ね合わせている間にプライをニードリングによって一体に結合させた。
【0147】
得られた予備形成体を、化学蒸気浸透法によって蒸着された炭素マトリクスで緻密化させた。
【0148】
実施例2
実施例1の2軸性シートを、ニードリングによってではなく、長手方向に対して並行なジグザグ・ニット・ステッチを用いるステッチングによって固定した。編糸は、2本のストランド(またはより糸)を有する150デシテックスの綿糸とした。取扱い性に非常に優れた2軸性シートを得た。
【0149】
実施例3
広げて、引張およびバースティングの後に水のジェットによって固定された実施例1のトウを、曲がったバーの上で送ることによって拡幅して、その幅を80mmから120mmへ増加させた。このようにして得られた2つの同様の一方向性シートを、実施例1と同じく+45°および−45°にて、ただし、シートの連続して敷かれたセグメント間の重なりが50%となるように敷いた。2軸性シートを実施例1と同じくニードリングによって固定した。530g/m2の重さを有する2軸性シートを得、これは取扱い性に非常に優れていた。
【0150】
実施例4
それぞれ320Kのフィラメントからなる、不連続炭素繊維で構成される4個のトウを並べて広げ、幅600mmおよび重さ約140g/m2を有する一方向性シートを形成した。30ストローク/cm2の密度でのプレニードリングによってシートを固定した。
【0151】
3枚の同様の一方向性シートを、図6A〜Bに例示したようなレイイング・マシンによって、それぞれ0°、+60°、および−60°に等しい方向に敷いた。30ストローク/cm2の密度でのニードリングによって、シートを一体に結合させた。得られた3軸性シートは、420g/m2の重さであった。これは、平坦なプライを積み重ね(またはスタックし)、ニードリングすることによって、あるいは、マンドレルに巻付け、ニードリングすることによって、複合材料パーツのための予備成形体を作製するのに特に適切であった。
【0152】
実施例5
それぞれ50Kのフィラメントを有し、予め酸化させたポリアクリロニトリル(PAN)炭素前駆体からなる4個の高強度炭素トウを、実施例1で説明したように一緒に広げてバースト(または破断)した。得られた一方向性ストリップは、幅8cm、重さ170g/m2であった。
【0153】
320Kのフィラメントを有し、等方性ピッチの前駆体からなる炭素繊維トウを同様の方法でバーストし、8cmの幅と230g/m2の重さとを有する一方向性ストリップを得た。
【0154】
等方的なピッチの前駆体に基づくタイプの2個のバースト・ストリップを、予め酸化させたPAN前駆体に基づく上記のタイプの8個のバースト・ストリップに挟み込み、このアセンブリをギル・ボックスまたは「交差」型マシン(これにおいては、10個全てのストリップがコームされ、延伸される)に一回通し、これにより、異なる前駆体繊維の均質混合物からなる、250g/m2の重さおよび10cmの幅を有するバースト・シートを得た。
【0155】
得られた混成シートを、圧力下にある水のジェットに供することによって固定し、その後、シートを金属プレートの上に配置した。
【0156】
そのようにして作製された3枚の一方向性シートを用いて、0°、+60°、および−60°にある軸を有する3軸性シートを作製した。
【0157】
実施例6
それぞれが12Kのフィラメントを有する高強度炭素繊維からなるトウを、その幅が約7mmとなるように広げた。約100mmに等しい幅と、125g/m2の重さとを有する3枚の一方向性シートを、広げられたトウを並べて形成し、100cmに等しい幅で同じ(単位面積あたりの)重さを有する一方向シートを同様に形成した。シートを、図1に示すように、液状結合剤をスプレーすることによって固定した。使用した結合剤は、水溶性ポリビニルアルコール(PVA)であった。使用したPVAの量は、シートの重さに対して2.1重量%とした。
【0158】
図6Aおよび16に示した型のマシンを用いて、長手方向シート(0°)としての幅100cmの一方向性シートを、次の方向:90°、+45°、および−45°で敷かれた横方向シートとしての幅100mmの一方向性シートと共に用いて、多軸性シートを形成した。順序は、90°/+45°/0°/−45°とした。76デシテックスの連続したポリエステル糸を用いるステッチングによって、4枚のシートを一体に結合させた。6ゲージを用い、4mmのピッチを有するチェーン・ステッチ型のステッチを用いた。
【0159】
一方向性シートを一体に結合させた後、多軸性シートを脱脂して、PVAを除去し、意図した用途に適合させた。
そのような多軸性シートは、例えば複合材料パーツを形成するためにエポキシ樹脂を含浸させるのに適している。
【0160】
実施例7
フランスのSOFICAR社製の高モジュラスのM46JB型炭素繊維からなる長手方向の一方向性シート(0°)と、日本の東レ(TORAY)社製の高強度のT700SC型炭素繊維からなる2枚の横方向の一方向性シート(+45°、−45°)とから、+45°/0°/−45°「ミラー」(または鏡映対称)多軸性シートを作製した。
【0161】
12K−フィラメントのトウを3mmの幅に広げ、広げられたトウを並置することによって、0°のシートを形成して、150g/m2の重さの幅300mmのシートを得た。
【0162】
12K−フィラメントのトウを8mmの幅に広げ、広げられたケーブルを並置することによって、+45°および−45°のシートを形成し、これにより100g/m2の重さの幅130mmのシートを得た。
【0163】
一方向性シートを、エポキシ樹脂エマルションを含むバスに浸漬することによって固定した。樹脂を搾り出すためにシートをプレスロール間に通し、これにより、樹脂の最終濃度はシートの重量に対して1.8重量%となった。
【0164】
横方向シートのセグメントをエッジ同士で並置させ、+45°/0°/−45°の順でレイイングを実施した。
【0165】
図17に示すように、熱溶融性コポリアミド糸を100mm毎にシートの間に配置し、多軸性シートを2つの加熱ロール間に通すことによって、一方向性シート間の結合が提供された。
【0166】
一方向性シートを凝集するために用いられる結合剤に化学的に適合するエポキシ樹脂を含浸させた後、得られた多軸性シートは、ボート用の炭素/エポキシ複合マストを作製するために使用された。
【0167】
実施例8
3枚の同等の一方向性シートから、90°/+30°/−30°の3軸性シートを作製した。高強度炭素繊維からなる50K−フィラメントのトウを18mmの幅に広げ、広げられたトウを並置することによって、各一方向性シートを形成して、200g/m2の重さの幅200mmのシートを得た。ビニルピロリドンポリマーのエマルションを0.8乾燥重量%に対応する濃度でスプレーすることによって、一方向性シートを固定した。
【0168】
一方向性シートを、エッジ同士が並べられたセグメント状に重ね、76デシテックスのポリエステル糸を用い、チェーン・ステッチ型のステッチ縫いを用いるステッチングによって一体に結合させた。6ゲージを用いて4mmのピッチの縫い目とした。
【0169】
その後、得られた多軸性シートを脱脂し、一方向性シートを凝集するために使用した結合剤を除去した。
【0170】
実施例9
4枚の同等の一方向性シートから0°/+45°/90°/−45°の多軸性シートを作製した。「Roving 2400テックス」型のガラス繊維糸を広げることによって、各一方向性シートを形成した。広げられた糸を長手方向に並置し、横方向に約5cm毎に配置された熱溶融性の糸で互いに平行に保持し、このようにして、300g/m2の重さの、20cmの幅の凝集状態の一方向シートを形成した。
【0171】
これらの一方向性シートを用いて、エッジ同士が並置されたセグメントで構成される+45°、90°、−45°のシートで、0°/+45°/90°/−45°の多軸性シートを形成した。4枚の一方向性シートを、ポリエステル糸を用いるステッチングのラインによって一体に結合させた。このステッチは約10mmの長さを有するものとし、ステッチのラインは約40mmの間隔とした。
【0172】
多軸性シートが容易に予備成形されるのに十分な可撓性を保持し、滑らかな表面状態を有するように、非常に低い密度でのステッチングを有する凝集状態のガラス繊維多軸性シートを得た。
【0173】
実施例10
4枚の同等の一方向性シートから4軸性シートを作製した。日本の「東レ(Toray)」社から「T700SC」の参照番号で市販される12K−フィラメントの炭素糸を広げることによって、各一方向性シートを形成した。広げられた糸を並置し、横方向に約5cm毎に配置された熱可融性の糸で一体に保持し、これにより、150g/m2の重さの、10cmの幅の凝集状態の一方向シートを得た。
【0174】
これらの一方向性シートから、以下のタイプAおよびBの2枚の多軸性シートを形成した:
A:−45°/0°/+45°/90°
B:+45°/0°/−45°/90°。
これらの2枚の多軸性シートを形成する一方向性シートを、ポリエステル糸でのステッチングによって一体に保持した。長さ10mmのステッチで、25mm間隔のステッチングラインで、低密度のステッチングを実施した。
【0175】
多軸性AおよびBシートは、対称の中心の長手方向の面の両側に同じ数のシートを有する、該面に対して各AシートまたはBシートがBシートまたはAシートに対称である「ミラー」スタックを形成するように重ね合わされてよい。
【0176】
例えば、1つの「ミラー」スタックは、次の順のシートを有した:A/A/A/B/B/B。このスタックは、アラミド糸(例えば217デシテックスの「Kevlar」(登録商標)糸)で5mm×5mmのピッチでステッチングを、その厚さに亘ってステッチングすることによって凝集状態にできた。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1は、凝集一方向性シートを製造することができる装置の一部欠切全体図である。
【図2】図2は、図1の装置の一部の模式的平面図である。
【図3】図3は、図1の装置の凝集手段の第1の異なる態様の部分図である。
【図4】図4は、図1の装置の凝集手段の第2の異なる態様の部分図である。
【図5】図5は、不連続な繊維から成る凝集一方向性シートを形成し、広げる様子の一部を示す模式図である。
【図6A】図6Aは、本発明を実施して多軸性繊維シートを製造するレイイング・マシンの全体の非常に模式的な平面図である。
【図6B】6Bは、本発明を実施して多軸性繊維シートを製造するレイイング・マシンの全体の非常に模式的な平面図である。
【図7】図7は、図6A〜6Bの機械において局所的な補強用フィルムを所定位置に配するデバイスの詳細を示す模式的立面図である。
【図8A】図8Aは、図8Bおよび図8Cとともに、図7のデバイスを用いて補強用フィルムを所定位置に配する連続的な工程を示す。
【図8B】図8Bは、図8Aおよび図8Cとともに、図7のデバイスを用いて補強用フィルムを所定位置に配する連続的な工程を示す。
【図8C】図8Cは、図8Aおよび図8Bとともに、図7のデバイスを用いて補強用フィルムを所定位置に配する連続的な工程を示す。
【図9】図9は、図6A〜6Bのマシンにおいて、横方向の一方向性シートをセグメントに切断し、切断したセグメントを固定するデバイスの詳細を示す模式的側面図である。
【図10】図10は、図9の切断および固定デバイスの模式的端面図である。
【図11A】図11Aは、図11Bおよび図11Cとともに、図6A〜6Bのマシンにおいて横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図11B】図11Bは、図11Aおよび図11Cとともに、図6A〜6Bのマシンにおいて横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図11C】図11Cは、図11Aおよび図11Bとともに、図6A〜6Bのマシンにおいて横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図12】図12は、図6A〜6Bのレイイング・マシンの異なる態様の一部を非常に模式的に示す。
【図13A】図13Aは、図13B〜13Dとともに、図6A〜6Bのレイイング・マシンの別の異なる態様において横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図13B】図13Bは、図13A,図13C,および図13Dとともに、図6A〜6Bのレイイング・マシンの別の異なる態様において横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図13C】図13Cは、図13A,図13B,および図13Dとともに、図6A〜6Bのレイイング・マシンの別の異なる態様において横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図13D】図13Dは、図13A〜図13Cとともに、図6A〜6Bのレイイング・マシンの別の異なる態様において横方向の一方向性シートのセグメントを供給し、切断し、固定する連続的な工程を示す。
【図14】図14は、図6A〜6Bのようなレイイング・マシンにおいて横方向の一方向性シートのセグメントを固定する別の実施態様を非常に模式的に示す。
【図15】図15は、横方向の一方向性シートのレイイングの異なる実施を非常に模式的に示す。
【図16】図16は、横方向の一方向性シートが部分的に重なるレイイングの異なる実施を非常に模式的に示す。
【図17】図17は、レイイング・マシンにおいて重ね合わされた一方向性シートを一体に結合する手段の第1、第2および第3の異なる態様を非常に模式的に示す。
【図18】図18は、レイイング・マシンにおいて重ね合わされた一方向性シートを一体に結合する手段の第1、第2および第3の異なる態様を非常に模式的に示す。
【図19】図19は、レイイング・マシンにおいて重ね合わされた一方向性シートを一体に結合する手段の第1、第2および第3の異なる態様を非常に模式的に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
12K以上のフィラメントを有し、広げられている、少なくとも一つのフィラメント・トウによって構成されている凝集繊維の一方向性シートであって、不連続なフィラメントによって構成されており、目付が300g/m2以下で幅が5cm以上であることを特徴とする、シート。
【請求項2】
炭素繊維からなることを特徴とする、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
複数の異なる材料で構成された繊維からなることを特徴とする、請求項1に記載のシート。
【請求項4】
複数の均一に混合された異なる材料で構成された繊維から成ることを特徴とする、請求項3に記載のシート。
【請求項5】
凝集が結合剤の存在によって付与されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項6】
結合剤は除去されるのに適していることを特徴とする、請求項5に記載のシート。
【請求項7】
結合剤は水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項6に記載のシート。
【請求項8】
凝集状態は、不連続フィラメントを軽くマット化することによって付与されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項9】
凝集状態はニードリングによって付与されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項10】
マトリックスによって緻密化された繊維補強材を有して成る複合材料パーツであって、繊維補強材は請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの一方向性シートを有して成ることを特徴とするパーツ。
【請求項11】
長手方向を有する連続ストリップの形態の多軸性繊維シートであって、一体に結合された異なる方向の重ねられた複数の一方向性シートを有して成り、請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの一方向性シートを含むことを特徴とするシート。
【請求項12】
多軸性シートの長手方向に対して+45°および−45°の角度の2つの一方向性シートによって構成されていることを特徴とする請求項11に記載の多軸性シート。
【請求項13】
多軸性シートの長手方向に向き決めされている長手方向の一方向性シート、および
長手方向の一方向性シートの各面上にそれぞれが配置され、長手方向の一方向性シートの方向に対して、反対の角度を形成する方向で延在している少なくとも2つの横方向の一方向性シート
を有して成ることを特徴とする請求項11に記載の多軸性シート。
【請求項14】
凝集性の一方向性繊維シートを、12K以上の数のフィラメントを有する、少なくとも1つの連続フィラメントのトウから製造する方法であって、
各トウを広げ、拡開−破断に付して、不連続フィラメントの一方向性ストリップを得、 5cm以上の幅、および300g/m2以下の目付を有する不連続なフィラメントの一方向性シートを、少なくとも一つの一方向性ストリップで形成し、横方向凝集状態を一方向性シートに付与することを特徴とする、方法。
【請求項15】
一方向性シートが、フィラメントの数が12K以上であることを特徴とする、少なくとも一つのカーボントウから成ることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
一方向性のシートが、異なる複数の材料で構成される複数のトウから製造することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
横方向凝集状態を、不連続フィラメントを軽くマット化することによって、一方向性シートに付与することを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
マット化することは、プレート上でシートを送りながら、シートを圧力下ウォーター・ジェットに付すことにより実施することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
横方向凝集状態を、ニードリングすることによって、一方向性シートに付与する、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
一方向性シートに横方向凝集状態を付与した後、シートを広げることを特徴とする、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
横方向凝集状態を、化学的結合剤を適用することによって一方向性シートに付与することを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
除去できる結合剤を使用することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
水溶性結合剤を使用することを特徴とする請求22に記載の方法。
【請求項24】
結合剤またはその前駆体を含む液体配合物を一方向性シートに付着させることによって結合剤を適用することを特徴とする請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
溶液中にポリマーを含む液体配合物を一方向性シートに付着させることによって結合剤を適用することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
樹脂を含む液体配合物を一方向性シートに付着させ、樹脂を重合することによって結合剤を適用することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
一方向性シートに液体配合物をスプレーすることによって結合剤を付着させることを特徴とする請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
液体配合物を含むバスに一方向性シートを浸すことによって結合剤を付着させることを特徴とする請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
横方向凝集状態を、少なくとも1つの熱溶融性糸を取りつけることによって少なくとも1つの一方向性シートに付与することを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
異なる方向で一方向繊維シートを重ねることによって多軸性繊維シートを製造するためのレイイング・マシンであって、
多軸性シートを進行させる装置であって、形成されつつある多軸性シートを支持する支持手段および進行方向に支持手段を進める駆動手段を有して成る装置、
進行方向に対して平行な方向に長手方向の一方向性シートを供給するフィード手段、
連続的一方向性シートを交差レイイング・デバイスに供給するフィード手段、シートの自由端部を保持する移動把持ヘッド、および進行方向に対して選択された角度の横方向に対して平行にシートの連続セグメントを敷設する手段をそれぞれが含む複数の交差レイイング・デバイスであって、当該敷設手段が把持ヘッドを駆動する手段を有して成る、複数の交差レイイング・デバイス、ならびに
重ねられた一方向性シートを一体に結合する手段であって、進行方向において支持手段から下流に位置する手段
を有して成るマシンであって、
各交差レイイング・デバイスは切断手段を含み、各交差レイイング・デバイスに対して、把持ヘッドによって一方向性シートの自由端部を掴み、一方向性シートのセグメントを供給するように把持ヘッドを移動し、一方向性シートの供給したセグメントを切り離し、支持手段上に一方向性シートの切り離したセグメントを敷設することを含む連続サイクルを実施する手段が設けられていることを特徴とするマシン。
【請求項1】
12K以上のフィラメントを有し、広げられている、少なくとも一つのフィラメント・トウによって構成されている凝集繊維の一方向性シートであって、不連続なフィラメントによって構成されており、目付が300g/m2以下で幅が5cm以上であることを特徴とする、シート。
【請求項2】
炭素繊維からなることを特徴とする、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
複数の異なる材料で構成された繊維からなることを特徴とする、請求項1に記載のシート。
【請求項4】
複数の均一に混合された異なる材料で構成された繊維から成ることを特徴とする、請求項3に記載のシート。
【請求項5】
凝集が結合剤の存在によって付与されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項6】
結合剤は除去されるのに適していることを特徴とする、請求項5に記載のシート。
【請求項7】
結合剤は水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項6に記載のシート。
【請求項8】
凝集状態は、不連続フィラメントを軽くマット化することによって付与されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項9】
凝集状態はニードリングによって付与されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項10】
マトリックスによって緻密化された繊維補強材を有して成る複合材料パーツであって、繊維補強材は請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの一方向性シートを有して成ることを特徴とするパーツ。
【請求項11】
長手方向を有する連続ストリップの形態の多軸性繊維シートであって、一体に結合された異なる方向の重ねられた複数の一方向性シートを有して成り、請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの一方向性シートを含むことを特徴とするシート。
【請求項12】
多軸性シートの長手方向に対して+45°および−45°の角度の2つの一方向性シートによって構成されていることを特徴とする請求項11に記載の多軸性シート。
【請求項13】
多軸性シートの長手方向に向き決めされている長手方向の一方向性シート、および
長手方向の一方向性シートの各面上にそれぞれが配置され、長手方向の一方向性シートの方向に対して、反対の角度を形成する方向で延在している少なくとも2つの横方向の一方向性シート
を有して成ることを特徴とする請求項11に記載の多軸性シート。
【請求項14】
凝集性の一方向性繊維シートを、12K以上の数のフィラメントを有する、少なくとも1つの連続フィラメントのトウから製造する方法であって、
各トウを広げ、拡開−破断に付して、不連続フィラメントの一方向性ストリップを得、 5cm以上の幅、および300g/m2以下の目付を有する不連続なフィラメントの一方向性シートを、少なくとも一つの一方向性ストリップで形成し、横方向凝集状態を一方向性シートに付与することを特徴とする、方法。
【請求項15】
一方向性シートが、フィラメントの数が12K以上であることを特徴とする、少なくとも一つのカーボントウから成ることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
一方向性のシートが、異なる複数の材料で構成される複数のトウから製造することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
横方向凝集状態を、不連続フィラメントを軽くマット化することによって、一方向性シートに付与することを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
マット化することは、プレート上でシートを送りながら、シートを圧力下ウォーター・ジェットに付すことにより実施することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
横方向凝集状態を、ニードリングすることによって、一方向性シートに付与する、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
一方向性シートに横方向凝集状態を付与した後、シートを広げることを特徴とする、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
横方向凝集状態を、化学的結合剤を適用することによって一方向性シートに付与することを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
除去できる結合剤を使用することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
水溶性結合剤を使用することを特徴とする請求22に記載の方法。
【請求項24】
結合剤またはその前駆体を含む液体配合物を一方向性シートに付着させることによって結合剤を適用することを特徴とする請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
溶液中にポリマーを含む液体配合物を一方向性シートに付着させることによって結合剤を適用することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
樹脂を含む液体配合物を一方向性シートに付着させ、樹脂を重合することによって結合剤を適用することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
一方向性シートに液体配合物をスプレーすることによって結合剤を付着させることを特徴とする請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
液体配合物を含むバスに一方向性シートを浸すことによって結合剤を付着させることを特徴とする請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
横方向凝集状態を、少なくとも1つの熱溶融性糸を取りつけることによって少なくとも1つの一方向性シートに付与することを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
異なる方向で一方向繊維シートを重ねることによって多軸性繊維シートを製造するためのレイイング・マシンであって、
多軸性シートを進行させる装置であって、形成されつつある多軸性シートを支持する支持手段および進行方向に支持手段を進める駆動手段を有して成る装置、
進行方向に対して平行な方向に長手方向の一方向性シートを供給するフィード手段、
連続的一方向性シートを交差レイイング・デバイスに供給するフィード手段、シートの自由端部を保持する移動把持ヘッド、および進行方向に対して選択された角度の横方向に対して平行にシートの連続セグメントを敷設する手段をそれぞれが含む複数の交差レイイング・デバイスであって、当該敷設手段が把持ヘッドを駆動する手段を有して成る、複数の交差レイイング・デバイス、ならびに
重ねられた一方向性シートを一体に結合する手段であって、進行方向において支持手段から下流に位置する手段
を有して成るマシンであって、
各交差レイイング・デバイスは切断手段を含み、各交差レイイング・デバイスに対して、把持ヘッドによって一方向性シートの自由端部を掴み、一方向性シートのセグメントを供給するように把持ヘッドを移動し、一方向性シートの供給したセグメントを切り離し、支持手段上に一方向性シートの切り離したセグメントを敷設することを含む連続サイクルを実施する手段が設けられていることを特徴とするマシン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−197896(P2007−197896A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76302(P2007−76302)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【分割の表示】特願平10−541222の分割
【原出願日】平成10年3月25日(1998.3.25)
【出願人】(592027148)ソシエテ・ナシオナル・デテユード・エ・ドウ・コンストリユクシオン・ドウ・モトール・ダヴイアシオン、“エス.エヌ.ウ.セ.エム.アー.” (4)
【出願人】(398052955)エクセル・リーインフォースメンツ (1)
【氏名又は名称原語表記】HEXCEL REINFORCEMENTS
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【分割の表示】特願平10−541222の分割
【原出願日】平成10年3月25日(1998.3.25)
【出願人】(592027148)ソシエテ・ナシオナル・デテユード・エ・ドウ・コンストリユクシオン・ドウ・モトール・ダヴイアシオン、“エス.エヌ.ウ.セ.エム.アー.” (4)
【出願人】(398052955)エクセル・リーインフォースメンツ (1)
【氏名又は名称原語表記】HEXCEL REINFORCEMENTS
【Fターム(参考)】
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