説明

多軸負荷試験装置及び方法

【課題】本発明は、多軸状態で精度のよい負荷試験を行うことができる多軸負荷試験装置及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】多軸負荷試験装置は、供試体100を収容する収容孔50が形成されるとともに収容孔50に収容された供試体100の周囲に作動油を貯留する圧力容器部5、供試体100に対して軸方向に荷重を印加する軸圧印加部6、軸圧印加部6に取り付けられるとともに供試体100の内部空間に貯留する作動油により供試体100に内圧を印加する内圧印加部7、供試体100を軸方向に移動させて作動油により供試体100の外周に外圧を印加する外圧印加部8、外圧印加部8に取り付けられるとともに外圧印加部8の作動体82を回転させて作動体82に接続固定された供試体100にねじり荷重を印加するねじり印加部9を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物、部材、部品等に用いられる構造材料の多軸負荷試験装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物、部材、部品等に用いられる構造材料の代表的なものとして金属材料が挙げられるが、金属材料を構造材料として用いる場合、構造材料として必要となる耐久性を検証するために様々な試験が行われている。その中で機械的な試験としては、引張試験、圧縮試験、曲げ試験、ねじり試験といった材料に様々な負荷を与えて機械的な強度を測定する試験が行われており、また、こうした負荷を繰り返し与えて材料に生じる破壊現象等を分析する疲労試験が行われている。
【0003】
機械的な負荷を材料に与える負荷試験では、材料に対して軸荷重、曲げ荷重又はねじり荷重といった負荷を与えることで材料内部に様々な負荷状態を実現している。材料内部の負荷状態は、一般に応力及びひずみの状態で表わされるが、主応力又は主ひずみの方向が1つの軸方向にのみ作用する場合には単軸状態と称され、主応力又は主ひずみが複数の軸方向に作用する場合には多軸状態と称されている。そして、実際の構造材料における負荷状態は、ほとんどの場合多軸状態であることが知られている。
【0004】
したがって、構造材料に関する機械的強度を検証するためには、構造材料を多軸状態に設定して試験を行う必要がある。こうした多軸状態による構造材料の試験方法としては、例えば、特許文献1では、互いに独立して作用する回転曲げ荷重負荷機構と、ねじり荷重負荷機構と、軸方向荷重負荷機構とを備え、各負荷機構を単独又は複数で同時に作用させるように作動することができる疲労試験装置が記載されている。また、特許文献2では、薄肉中空円筒状の試験片の軸方向の引張荷重及び圧縮荷重、試験片の軸を回転中心とするねじり荷重、及び試験片の内部及び外部からの内外圧荷重の3種類の荷重を組み合せて負荷を与える多軸負荷試験機が記載されている。また、円筒状の試験片に対して内圧又は外圧を付与する試験装置としては、例えば、特許文献3では、鋼管の端部が圧力ベッセルから外に突き出すように取り付けられ、圧力ベッセルに穿設された外圧水供給ポートから水を供給して鋼管に外圧を印加するようにした外圧負荷試験装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭50−142279号公報
【特許文献2】特開昭57−072042号公報
【特許文献3】特開2001−074624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発電所や化学プラントの配管部では、内部流体の移動や圧力の変化等による機械的負荷及び内部流体の温度変化による熱負荷を受けて複雑な負荷状態となり、こうした負荷状態では、配管を構成する管体の内部において主応力及び主ひずみの方向が時間的に変化する非比例負荷の状態が生じることが知られている。非比例負荷の状態では、主応力及び主ひずみの方向が固定された比例負荷の状態よりも構造材料の強度が低下しやすくなるため、実際の使用状態での構造材料の強度を検証するには、非比例負荷の状態で負荷試験を行うことが望ましい。
【0007】
上述した特許文献に記載された試験装置では、多軸状態に設定可能であるものの実際の使用状態に近い非比例負荷の状態のような複雑な負荷状態に設定することは難しい。例えば、特許文献2では、軸方向の荷重、ねじり荷重及び内外圧荷重を中空円筒状の試験片に印加するようになっているが、内圧及び外圧については、外部の油圧装置から試験片の内側及び外側に油を供給して油圧を印加することで負荷状態を設定している。そのため、油圧を供給する配管が必要となるが、配管の強度以上の高圧状態とすることができないため、内圧及び外圧を高圧に設定することが難しくなる。また、内圧及び外圧を変化させる場合に、配管を通して油圧制御を行うため内圧及び外圧を高速で正確に変化させることが難しく、実際の使用状態に近い負荷状態で精度のよい負荷試験を行う点で難点がある。
【0008】
そこで、本発明は、多軸状態で精度のよい負荷試験を行うことができる多軸負荷試験装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る多軸負荷試験装置は、構造材料からなる供試体に対して荷重を印加して多軸状態で負荷試験を行う多軸負荷試験装置であって、前記供試体に対して軸方向に荷重を印加する軸圧印加部と、前記供試体を収容する収容孔が形成されるとともに当該収容孔に収容された前記供試体の周囲に作動流体を貯留する圧力容器部と、前記供試体を軸方向に移動させて前記作動流体により前記供試体の外周に外圧を印加する外圧印加部とを備えている。さらに、前記供試体に印加される軸方向の荷重を検知する軸圧検知センサと、前記供試体に印加される外圧を検知する外圧検知センサと、前記軸圧検知センサからの検知信号に基づいて前記軸圧印加部をフィードバック制御する軸圧制御回路と、前記外圧検知センサからの検知信号に基づいて前記外圧印加部をフィードバック制御する外圧制御回路とを備えている。さらに、前記軸圧印加部に取り付けられるとともに前記供試体の内部空間に貯留する作動流体により前記供試体に内圧を印加する内圧印加部を備えている。さらに、前記外圧印加部に取り付けられるとともに前記外圧印加部の作動体を回転させて当該作動体に接続固定された前記供試体にねじり荷重を印加するねじり印加部を備えている。
【0010】
本発明に係る多軸負荷試験方法は、構造材料からなる供試体に対して荷重を印加して多軸状態で負荷試験を行う多軸負荷試験方法であって、圧力容器部に形成された収容孔に前記供試体を収容して当該収容孔に収容された前記供試体の周囲に作動流体を貯留し、前記供試体を軸方向に移動させて前記作動流体により前記供試体の外周に外圧を印加し、前記供試体に対して軸方向に荷重を印加して負荷試験を行う。さらに、前記供試体に印加される外圧を検知する外圧検知センサからの検知信号に基づいて印加する外圧が設定条件に合致するようにフィードバック制御を行い、前記供試体に印加される軸方向の荷重を検知する軸圧検知センサからの検知信号に基づいて軸方向の荷重が設定条件に合致するようにフィードバック制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記のような構成を有することで、多軸状態で精度のよい負荷試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
【図2】圧力容器部に関する部分拡大図である。
【図3】図1で説明した実施形態の動作制御に関するブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。図1は、本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。多軸負荷試験装置は、基台1の上面に支持フレーム2が立設されており、支持フレーム2に上部取付台3及び下部取付台4が支持されている。上部取付台3及び下部取付台4のほぼ中間には圧力容器部5が支持フレーム2に支持固定されている。
【0014】
上部取付台3の上面には、軸荷重を印加するための軸圧印加部6が支持固定されており、軸圧印加部6の上部には内圧印加部7が設けられている。軸圧印加部6は、内部に油圧用の作動油を貯留するシリンダ部60が軸方向を軸圧印加方向(上下方向)に沿うように形成されており、シリンダ部60内にはピストン部61が軸圧印加方向(上下方向)に摺動可能に設けられている。そして、ピストン部61の軸圧印加側に作動体62が延設されており、作動体62はシリンダ部60及び取付台3に形成された取付孔から下方に突き抜けて軸圧印加方向に移動可能に取り付けられている。また、ピストン部61の軸圧印加側とは反対側に連結体63が上方に延設されており、後述するように、連結体63の先端部が内圧印加部7に挿入されている。
【0015】
シリンダ部60の内部には、図示せぬ油圧ポンプから作動油が油路64を介してピストン部61の上下両側の作動空間に供給される。そして、上側作動空間への作動油の油圧及び下側作動空間への作動油の油圧を制御することで、ピストン部61を上下動させて作動体62を介して供試体100に対して油圧による軸圧を印加するようになっている。
【0016】
内圧印加部7は、内部に油圧用の作動油を貯留するシリンダ部70が軸方向を軸圧印加方向(上下方向)に沿うように形成されており、シリンダ部70内にはピストン部71が軸圧印加方向(上下方向)に摺動可能に設けられている。そして、ピストン部71の内部には、油貯留部72が形成されており、油貯留部72から下方に向かって軸圧印加方向に沿ってピストン部71内に形成された取付孔に連結体63が摺動可能に挿入されている。連結体63、ピストン部61及び作動体62には、中心軸に沿って連通油路73が貫通するように形成されており、連通油路73は、後述する供試体100の内部空間と油貯留部72との間を連通するようになっている。
【0017】
シリンダ部70の内部には、図示せぬ油圧ポンプから作動油が油路74を介してピストン部71の上下両側の作動空間に供給される。そして、上側作動空間への作動油の油圧及び下側作動空間への作動油の油圧を制御することで、ピストン部71を上下動させて油貯留部72を連結体63に対して上下動させるようにすることができる。
【0018】
油貯留部72内を作動油で満たした状態では、油貯留部72が連結体63に対して下方に移動した場合、連結体63の先端部が油貯留部72の内部にさらに挿入されて油貯留部72内の容積が減少し、減少した容積分の作動油が連通油路73を流通して供試体100の内部空間に流出するようになる。また、油貯留部72が連結体63に対して上方に移動した場合には、連結体63の先端部における油貯留部72内への挿入部分が短くなってその分だけ油貯留部72内の容積が増加し、供試体100内の作動油が連通油路73を流通して油貯留部72内に流入するようになる。したがって、ピストン部71を上下動することで、油貯留部72内と供試体100の内部空間との間で作動油を流通させて供試体100に内圧を印加するようになっている。
【0019】
圧力容器部5には、中央部分に供試体100を収容するための収容孔50が貫通して形成されている。図2は、圧力容器部5に関する部分拡大図である。供試体100は、略円筒状で中央部分が薄肉となるように絞られた形状となっている。下側支持部101及び上側支持部102は厚肉に形成されており、図示していないがシール用のOリングを装着するための溝が形成されている。そして、上側支持部102よりも下側支持部101の外径が大きくなるように設定されている。また、供試体100の内部には、所定の内径で中心軸に沿って内部空間104が形成されている。供試体100の形状は、構造材料に生じる多軸負荷状態に相当する負荷状態が印加されるように外形寸法や肉厚を設定すればよい。
【0020】
収容孔50は、下部において供試体100の下側支持部101の外径とほぼ一致するように円形状に形成されており、上部に行くに従い拡径して供試体100の上側支持部102の外径よりも広い円形状に設定され、供試体100の作用部103に外圧を印加するための作動油を貯留する作用空間が形成される。収容孔50の上側開口は蓋体51で密閉されており、蓋体51の中央部分には、供試体100の上側支持部102の外径とほぼ一致するように取付孔51aが形成されている。
【0021】
そして、収容孔50の下部に供試体100の下側支持部101を密着させるように配置するとともに取付孔51aに供試体100の上側支持部102を密着させるように配置することで、作動油を貯留する作用空間が供試体100の作用部103の周囲に水密状態に設定される。蓋体51には、作用空間と連通する一対の連通路51b及び51cが穿設されており、一方の連通路から作動油を供給していき、その際に他方の連通路から内部の空気を抜くようにすることで、作用空間内を作動油で満たすことができる。そして、作動油を満たした状態で連通路の一方を密閉栓等で閉鎖し、他方の連通路に後述する外圧検知センサを取り付けることで、印加される外圧を検知することができる。
【0022】
蓋体51から上方に突出した状態に設定された供試体100の上側支持部102には、作動体62が接続固定されており、作動体62の内部に形成された連通油路73と供試体100の内部空間104とが接続されて連通した状態となる。また、圧力容器部5から下方に突出した状態に設定された供試体100の下側支持部101の下面には、当接体52が密着した状態で取り付けられる。当接体52の内部には供試体100の内部空間104と接続して連通する連通路52aが形成されており、連通路52aの一端が外部に開口して供給口となっている。また、図1では図示されていないが、油貯留部72と外部を連通する流通管が内圧印加部7に設けられており、連通路52aの供給口から作動油を流入させて、内部空間104から連通油路73を通って油貯留部72内に流入させて流通管から作動油を流出させるように循環させる。そして、油貯留部72、連通油路73、内部空間104及び連通路52a内が作動油で満たされた空気の抜けた状態に設定した後、連通路52a及び流通管を栓により封止する。こうして、油貯留部72、連通油路73及び内部空間104全体を作動油で満たした状態に設定することができる。
【0023】
下部取付台4の下面には、外圧を印加するための外圧印加部8が支持固定されており、外圧印加部8の下部には、ねじり荷重を印加するためのねじり印加部9が設けられている。外圧印加部8は、内部に油圧用の作動油を貯留するシリンダ部80が軸方向を軸圧印加方向(上下方向)に沿うように形成されており、シリンダ部80内にはピストン部81が軸圧印加方向(上下方向)に摺動可能に設けられている。そして、ピストン部81の軸圧印加側に作動体82が延設されており、作動体82はシリンダ部80及び下部取付台4に形成された取付孔から上方に突き抜けて軸圧印加方向に移動可能に取り付けられている。作動体82の上端部に接続体83を介して当接体52に接続固定されている。また、ピストン部81の軸圧印加側とは反対側には、ねじり印加部9の回転駆動体91が接続固定されて下方に延設されている。
【0024】
シリンダ部80の内部には、図示せぬ油圧ポンプから作動油が油路84を介してピストン部81の上下両側の作動空間に供給される。そして、上側作動空間への作動油の油圧及び下側作動空間への作動油の油圧を制御することで、ピストン部81を上下動させて作動体82を介して接続体83及び当接体52に接続された供試体100に油圧を印加するようになっている。
【0025】
外圧印加部8により供試体100を押し上げるように作用させる場合、供試体100の下側支持部101が圧力容器5の作用空間内に進入していき、下側支持部101が進入した分だけ作用空間の容積が減少する。一方、供試体100の上昇に伴って上側支持部102が上方に移動する分だけ作用空間の容積が増加するが、下側支持部101の外径が上側支持部102の外径よりも大きいため下側支持部101の進入分による容積減少の方が大きくなり、供試体100の上昇により作用空間全体の容積は減少する。また、供試体100の下降により作用空間全体の容積は増加するようになる。したがって、外圧印加部8により供試体100を上下動させることで、作用空間の容積を増減させて内部に充満した作動油の油圧を調整することができ、供試体100の作用部103の外周に加わる外圧を調整することが可能となる。
【0026】
圧力容器部5に形成した収容孔50内に作動油を充満させて供試体100の上下動により作用部103に外圧を印加するように構成しているので、少量の作動油で外圧印加を行うことができ、装置のコンパクト化を図るとともに装置の安全性を向上させることが可能となる。また、供試体100の上下動により直接外圧を変動させることができるので、高圧に設定することが可能で、高速かつ正確な外圧変動を行うことが可能となる。また、作動油が少量で外部からの出入りがないため温度管理が容易になり、高精度で様々な試験条件の設定ができ、幅広い構造材料の多軸負荷試験を行うことが可能となる。
【0027】
ねじり印加部9は、回転駆動体91の周囲に油貯留体90が設けられており、回転駆動体91は油貯留体90に対して軸方向に摺動可能となるように設定されている。そして、油貯留体90に外部から油圧ポンプ等により作動油が供給されて回転駆動体91を軸回りに回転動作させる。例えば、油貯留体90内に形成された作動空間に回転駆動体91の周囲に羽根状の作動部分を形成しておき、作動部分に作動油の圧力を作用させることで、回転駆動体91を軸回りに回転させることができる。
【0028】
回転駆動体91の回転動作によりピストン部81及び作動体82も一体となって回転するようになり、作動体82から接続体83及び当接体52を介して供試体100の下側支持部101を軸回りに回転させるように作用する。供試体100の上側支持部102は、作動体62に接続固定されているので、供試体100の作用部103には、上側支持部102が軸回りの回転に対して固定された状態での下側支持部101の軸回りの回転動作に伴うねじり荷重が印加されるようになる。
【0029】
供試体100の作用部103の外周面には、図示されていないが、軸方向のひずみ、周方向のひずみ及びねじりひずみを検知する複数のひずみゲージが予め貼付されて収容されており、これらのひずみゲージからの検知信号に基づいて負荷試験中の供試体100の荷重による変化をリアルタイムで検知することができる。また、軸方向の荷重を検知するために上部取付台3の下面にロードセル等の軸圧検知センサS1が取り付けられており、軸圧印加部6により印加される軸方向の荷重を常時検知するようになっている。また、圧力容器5の収容孔50に連通する蓋体51の連通路51cには、開口部分に圧力計等の外圧検知センサS2が取り付けられており、収容孔50内の油圧を常時検知するようになっている。また、作動体62には、軸方向と直交する方向に連通油路73と連通する連通路が形成されており、その連通路の開口部分に圧力計等の内圧検知センサS3が取り付けられている。内圧検知センサS3は、供試体100の内部空間104内の油圧を常時検知するようになっている。また、接続体83の内部には軸・トルク力計等を用いてねじり量を検知するねじり検知センサS4が配置されており、供試体100に印加されるねじり荷重を常時検知するようになっている。なお、軸・トルク力計を用いることで、軸方向の荷重についても検知することができる。
【0030】
供試体100を試験装置にセットする場合には、まず、供試体100を圧力容器部5の収容孔50内に挿入し、供試体100の下側支持部101を当接体52の上面に接続固定し、上側支持部102を作動体62の下面に接続固定する。そして、供試体100の内部空間104に作動油を注入するとともに収容孔50内に作動油を注入して供試体100の作用部103の内側及び外側を作動油で満たした状態に設定する。
【0031】
次に、内圧印加部7を動作させてピストン部71を下方に移動させ、供試体100の内部空間104内の圧力が所定の内圧となるまで動作させる。そして、外圧印加部8を動作させてピストン部81を上方に移動させて作動体82により供試体100を押し上げるように作用させ、収容孔50内の作用空間の圧力が所定の外圧となるまで動作させる。その際に、軸圧印加部6の作動体62は、作動体82の上昇動作に連動して上昇するように動作させる。また、作動体62の移動に伴い内圧印加部7で生じる内圧が変化するが、内圧検知センサS3の検知信号に基づいてフィードバック制御を行うことで所定の内圧に維持される。
【0032】
内圧及び外圧を所定の圧力に設定した状態で、軸圧印加部6を動作させてピストン部61を下方に移動させ、供試体100に所定の軸圧が印加されるまで動作させる。その際に供試体100が押し下げられるようになるが、外圧印加部8では、外圧検知センサS2の検知信号に基づいてフィードバック制御を行うことで、所定の外圧に維持される。同様に、作動体62の移動に伴い内圧印加部7で生じる内圧が変化するが、フィードバック制御により所定の内圧に維持される。
【0033】
内圧、外圧及び軸圧を所定の圧力に設定した状態で、ねじり印加部9を動作させて回転駆動体91を回転させ、所定のねじり量だけ供試体100の下側支持部101を軸回りに回転するよう動作させる。
【0034】
以上のように、軸圧印加部6、内圧印加部7、外圧印加部8及びねじり印加部9をそれぞれ独立して動作させるとともに各印加部を各検知センサの検知信号に基づいてフィードバック制御することで所定の圧力状態又はねじり状態に維持することができ、任意の複雑な応力状態を容易に実現することが可能となる。また、供試体100の一方の側から軸圧印加部6により軸方向に押圧し、他方の側から外圧印加部8により軸圧印加部6とは反対方向に押圧するように構成されているので、供試体100を安定した状態で軸圧及び外圧をフィードバック制御により所定の圧力状態に設定することができる。
【0035】
そして、供試体100の作用部103に軸方向の荷重、ねじり荷重及び内外圧荷重を高精度で印加して様々な多軸状態で負荷試験を安定して行うことができる。また、疲労試験を行う場合でも各印加部を独立して動作制御することで、正確に各荷重を独立して繰り返し変化させることもでき、精度の高い疲労試験を行うことができる。また、応答速度を高速化して各荷重を変化させることも可能で、幅広い条件設定で負荷試験を行うことが可能となる。
【0036】
図3は、図1で説明した実施形態の動作制御に関するブロック構成図である。多軸負荷試験装置は、装置本体200及び制御装置300から構成されており、装置本体200については、図1及び図2を用いて既に詳述したので、説明を省略する。制御装置300は、装置の全体を制御する制御部310、負荷試験に必要な設定データ等を入力する入力部311、試験結果等を表示する表示部312、装置の制御に必要なプログラムやデータ等を記憶する記憶部313、及び、ひずみゲージ、検知センサからの検知信号を受信するとともに各印加部の制御回路に制御信号を送信する送受信部314を備えている。また、各印加部の動作制御を行うために、軸圧印加部6を動作制御する軸圧制御回路320、ねじり印加部9を動作制御するねじり制御回路321、外圧印加部8を動作制御する外圧制御回路322、及び、内圧印加部7を動作制御する内圧制御回路323を備えており、軸圧及びねじりによるフィードバック制御又はひずみによるフィードバック制御に切り換える切換回路330を備えている。
【0037】
制御部310は、条件設定部310a、検知データ処理部310b及び解析部310cを備えており、条件設定部310aでは、入力部311からの入力データ及び記憶部313に記憶された設定データ、検知データ及び算出データ等に基づいて負荷試験を行うための条件設定を行い、送受信部314を介して各制御回路に設定条件に応じた制御信号を送信する。検知データ処理部310bでは、供試体100の作用部103に設けられたひずみゲージS5及びS6、外圧及び内圧を検知する検知センサS2及びS3、軸圧及びねじり量を検知する検知センサS1及びS4から送信される検知データに基づいてデータ処理を行い、供試体100に作用する各種応力成分(軸方向主応力、周方向主応力、せん断応力等)、各種ひずみ成分(軸方向ひずみ、周方向ひずみ、せん断ひずみ等)を算出する。そして、得られた検知データ及び算出データは記憶部313に記憶する。解析部310cでは、記憶部313に記憶された検知データ、算出データ等の試験結果に基づいてデータの解析を行う。
【0038】
外圧制御回路322は、外圧検知センサS2の検知信号が入力されて外圧を設定条件に合致するようにフィードバック制御を行う。また、内圧制御回路323は、内圧検知センサS3の検知信号が入力されて内圧を設定条件に合致するようにフィードバック制御を行う。軸圧制御回路320及びねじり制御回路321は、切換回路330からのフィードバック信号に基づいてフィードバック制御を行う。軸圧及びねじりによるフィードバック制御の場合には、軸圧検知センサS1の検知信号が軸圧制御回路320に入力されて軸圧を設定条件に合致するようにフィードバック制御され、ねじり検知センサS4の検知信号がねじり制御回路321に入力されてねじり量を設定条件に合致するようにフィードバック制御が行われる。また、ひずみによるフィードバック制御の場合には、軸方向のひずみを検知するひずみゲージS5の検知信号が軸圧制御回路320に入力されて軸圧を設定条件に合致するようにフィードバック制御され、ねじりによるひずみを検知するひずみゲージS6の検知信号がねじり制御回路321に入力されてねじり量を設定条件に合致するようにフィードバック制御が行われる。
【0039】
以上説明した実施形態では、圧力容器部5、軸圧印加部6、外圧印加部8及びねじり印加部9において作動油を用いて油圧により荷重を印加するようにしているが、油圧以外の方法により荷重を印加するものであってもよく、特に限定されない。例えば、気体等の作動流体を用いた圧力印加装置、電磁作用により動作する圧力印加装置といった装置を用いることもできる。
【0040】
また、圧力容器部5、軸圧印加部6、内圧印加部7、外圧印加部8及びねじり印加部9は、上部取付台3や下部取付台4に取り外し可能に取り付けられているため、様々な負荷試験に応じて各部を適宜取り付けることで負荷試験に合わせた装置構成に容易に変更することができる。例えば、軸圧印加部6、内圧印加部7、外圧印加部8及びねじり印加部9を取り付けて装置構成すれば、内圧荷重、軸方向の荷重及びねじり荷重を組み合せた負荷試験を行うことが可能となり、内圧印加部7を省略すれば、軸方向の荷重及びねじり荷重を組み合せた負荷試験を行うことが可能となる。この場合、ねじり検知センサS4として、軸・トルク力計を用いることで、軸方向の荷重及びねじり荷重の両方を検知することができる。
【0041】
また、本発明では、供試体100の外形を円筒状以外の様々な形状に形成して負荷試験を行うこともでき、例えば、角柱状や角筒状に形成したものでも負荷試験を行うことが可能である。そして、内部空間のない中実体の場合でも、ねじり荷重及び内圧荷重以外を印加する負荷試験を行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・基台、2・・・支持フレーム、3・・・上部取付台、4・・・下部取付台、5・・・圧力容器部、6・・・軸圧印加部、7・・・内圧印加部、8・・・外圧印加部、9・・・ねじり印加部、50・・・収容孔、100・・・供試体、S1・・・軸圧検知センサ、S2・・・外圧検知センサ、S3・・・内圧検知センサ、S4・・・ねじり検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造材料からなる供試体に対して荷重を印加して多軸状態で負荷試験を行う多軸負荷試験装置であって、前記供試体に対して軸方向に荷重を印加する軸圧印加部と、前記供試体を収容する収容孔が形成されるとともに当該収容孔に収容された前記供試体の周囲に作動流体を貯留する圧力容器部と、前記供試体を軸方向に移動させて前記作動流体により前記供試体の外周に外圧を印加する外圧印加部とを備えている多軸負荷試験装置。
【請求項2】
前記供試体に印加される軸方向の荷重を検知する軸圧検知センサと、前記供試体に印加される外圧を検知する外圧検知センサと、前記軸圧検知センサからの検知信号に基づいて前記軸圧印加部をフィードバック制御する軸圧制御回路と、前記外圧検知センサからの検知信号に基づいて前記外圧印加部をフィードバック制御する外圧制御回路とを備えている請求項1に記載の多軸負荷試験装置。
【請求項3】
前記軸圧印加部に取り付けられるとともに前記供試体の内部空間に貯留する作動流体により前記供試体に内圧を印加する内圧印加部を備えている請求項1又は2に記載の多軸負荷試験装置。
【請求項4】
前記外圧印加部に取り付けられるとともに前記外圧印加部の作動体を回転させて当該作動体に接続固定された前記供試体にねじり荷重を印加するねじり印加部を備えている請求項1から3のいずれかに記載の多軸負荷試験装置。
【請求項5】
構造材料からなる供試体に対して荷重を印加して多軸状態で負荷試験を行う多軸負荷試験方法であって、圧力容器部に形成された収容孔に前記供試体を収容して当該収容孔に収容された前記供試体の周囲に作動流体を貯留し、前記供試体を軸方向に移動させて前記作動流体により前記供試体の外周に外圧を印加し、前記供試体に対して軸方向に荷重を印加して負荷試験を行う多軸負荷試験方法。
【請求項6】
前記供試体に印加される外圧を検知する外圧検知センサからの検知信号に基づいて印加する外圧が設定条件に合致するようにフィードバック制御を行い、前記供試体に印加される軸方向の荷重を検知する軸圧検知センサからの検知信号に基づいて軸方向の荷重が設定条件に合致するようにフィードバック制御を行う請求項5に記載の多軸負荷試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−211823(P2012−211823A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77656(P2011−77656)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 平成22年度 博士前期課程 公聴会 主催者名 国立大学法人福井大学大学院工学研究科 開催日 平成23年2月17日 発行者名 国立大学法人福井大学大学院工学研究科 刊行物名 2010(平成22)年度 学位論文要旨集(博士前期課程) 発行年月日 平成23年2月17日
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】