説明

多軸骨固定装置

【課題】 多軸骨固定装置を提供する。
【解決手段】 多軸骨固定装置は、骨への係止用のシャンクおよび頭部を有する骨固定要素と;第1の端部および開口した第2の端部を有する頭部受け部とを含み、中心軸が第1の端部および第2の端部を通って延在し、内部中空部分が開口した第2の端部と連通して頭部を受け、頭部受け部は頭部のクランプを可能にするよう可撓性があり、多軸骨固定装置は、頭部受け部の周りに取付けられロッド受け部を有するロックリングを含み、頭部は頭部受け部において回動可能であり、ロックリングによる頭部受け部の圧縮により角度をなしてロックすることができ、多軸骨固定装置は、ロッドを覆い頭部受け部に係合するよう構成され第1の端部および第2の端部を有するキャップを含み、中心軸が端部を通って延在し、対向位置の2つの脚部が中心軸の方向に延在し、多軸骨固定装置は、キャップを通って延在しロッドに係合するよう構成されたロック要素を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨または堆骨への固定用の骨固定要素と、骨固定要素の頭部を受けるための頭部受け部と、頭部受け部のまわりに取付けられて頭部受け部および骨固定要素に安定化ロッドを連結するためのロックリングと、ロッドを留めかつアセンブリ全体をロックするためのロック要素を備えたキャップとを含む多軸骨固定装置に関する。ロッドがロックリングのロッド受け部に取付けられ、キャップがアセンブリ上に配置されると、キャップは、頭部受け部を基準にして、頭部受け部から外れている第1の位置から、頭部受け部に係合する第2の位置へと回転可能となる。ロック要素はロッドに圧力を加えて、ロックリングを、当該ロックリングが頭部を頭部受け部にロックする位置へと移動させる。同時に、ロッドはロック要素によって固定される。
【背景技術】
【0002】
US2009/0149887A1は、コネクタ本体、コネクタ本体を囲むスリーブおよびキャップを含み、骨固定具を支持ロッドに接続するための装置を開示する。
【0003】
US2011/0213419A1は、ねじ頭部をそこに据付けるためのねじ座部と、ロッドをそこに据付けるためのロッド座部とを含む本体部材を備えたねじおよびロッド固定アセンブリを開示する。調整可能なロックリングは、ねじ座部に据付けられたねじ頭部に対してロック力を加え、ロックキャップは、ロッド座部に据付けられたロッドに対して調整可能にロック力を加える。調整可能なねじロックリングおよびロックキャップは互いに独立して機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2009/0149887A1
【特許文献2】US2011/0213419A1
【特許文献3】US2007/0123862A1
【特許文献4】US2007/0055242A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、適用分野が広く、特に小型の骨固定具を必要とする適用例に適した多軸骨固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の多軸骨固定装置によって達成される。さらなる展開例が従属請求項において提供される。
【0007】
多軸骨固定装置では、キャップと、キャップに収容されてロッドおよび頭部を留付けて固定するためのロック要素とが用いられる。したがって、従来の骨固定具から公知のロック要素を締めるときに受け部の部分が広がるといった問題は起こらない。さらに、キャップを備えることで、骨固定装置は骨固定要素の軸方向または高さ方向に薄くなる。これにより、骨固定装置が、頸椎もしくは小児分野での使用、外傷および低侵襲例への適用、または骨手術での使用に特に適したものとなる。
【0008】
多軸骨固定装置により、モジュール式の骨固定システムを提供することができる。モジュール式システムは、ロックリングと予め組立てられた頭部受け部と、ロック要素と予め組立てられたキャップと、さまざまなシャンクを有する1組のさまざまな骨固定要素とを含む。異なる直径、ねじ切り形状または他の異なる特徴を有するさまざまなシャンクは、特定の臨床的状況における要件に応じて頭部受け部およびロックリングと組合せることができる。したがって、外科医はインプラントの実質的な選択権を有することとなる。モジュール性により、在庫を保有するコストを減らすことができる。
【0009】
さらなる特徴および利点が、添付の図面によって実施例の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の分解斜視図である。
【図2】図1の多軸骨固定装置を組立てられた状態で示す斜視図である。
【図3】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の頭部受け部を上方から示す斜視図である。
【図4】第1の実施例に従った頭部受け部を底から見た斜視図である。
【図5】第1の実施例に従った頭部受け部を、ロッド軸に対して垂直な断面に沿って示す断面図である。
【図6】第1の実施例に従った頭部受け部の上面図である。
【図7】上方から見た第1の実施例に従った多軸骨固定装置のキャップを上方から見た斜視図である。
【図8】第1の実施例に従ったキャップを底から見た斜視図である。
【図9】第1の実施例に従ったキャップを示す側面図である。
【図10】第1の実施例に従ったキャップを90°回転させた別の側面図である。
【図11】第1の実施例に従ったキャップの上面図である。
【図12】第1の実施例に従ったキャップを図11の線A−Aに沿って示す断面図である。
【図13】第1の実施例に従った多軸骨固定装置のロックリングを示す斜視図である。
【図14】第1の実施例に従ったロックリングを図13の線B−Bに沿って示す断面図である。
【図15】第1の実施例に従ったロックリングの上面図である。
【図16a】組立てられた多軸骨固定装置を、ロッド軸に対して垂直な面に沿って示す断面図である。
【図16b】図16aの一部の拡大図である。
【図17】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の組立ておよび使用のステップを示す図である。
【図18】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の組立ておよび使用のステップを示す図である。
【図19】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の組立ておよび使用のステップを示す図である。
【図20】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の組立ておよび使用のステップを示す図である。
【図21】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の組立ておよび使用のステップを示す図である。
【図22】第1の実施例に従った多軸骨固定装置の組立ておよび使用のステップを示す図である。
【図23】第2の実施例に従った多軸骨固定装置を示す斜視図である。
【図24】第2の実施例に従った多軸骨固定装置を組立てられた状態で示す斜視図である。
【図25】第2の実施例に従った多軸骨固定装置の頭部受け部を上方から示す斜視図である。
【図26】第2の実施例に従った頭部受け部を底から示す斜視図である。
【図27】第2の実施例に従った頭部受け部の上面図である。
【図28】第2の実施例に従った頭部受け部を、図27の線C−Cに沿って示す断面図である。
【図29】第2の実施例に従った多軸骨固定装置のキャップを上方から見た斜視図である。
【図30】第2の実施例に従ったキャップを底から示す斜視図である。
【図31】第2の実施例に従ったキャップの側面図である。
【図32】第2の実施例のキャップを90°回転させた側面図である。
【図33】第2の実施例に従ったキャップの上面図である。
【図34】第2の実施例に従ったキャップを、図33の線D−Dに沿って示す断面図である。
【図35】第2の実施例に従った多軸骨固定装置を、組立てられた状態で、ロッド軸に沿った方向から見た側面図である。
【図36a】図35に示される第2の実施例に従った多軸骨固定装置を示す断面図である。
【図36b】図36aの一部の拡大図である。
【図37a】さらなる代替的実施例に従った多軸骨固定装置の頭部受け部を示す斜視図である。
【図37b】さらなる代替的実施例に従った多軸骨固定装置の頭部受け部を示す斜視図である。
【図38a】さらなる代替的実施例に従った多軸骨固定装置の組立ておよび使用のステップを示す図である。
【図38b】さらなる代替的実施例に従った多軸骨固定装置の組立ておよび使用のステップを示す図である。
【図38c】さらなる代替的実施例に従った多軸骨固定装置の組立ておよび使用のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および図2に図示のとおり、第1の実施例に従った多軸骨固定装置は、ねじ部を備えたシャンク2と球形セグメント状の頭部3とを有する骨ねじの形状をした骨固定要素1を含む。頭部3は、工具との係合のための凹部4(図16a)を有する。骨固定装置はさらに、骨固定要素の頭部3を受けるための頭部受け部5と、ロッド7、たとえば脊柱安定化ロッド、を受け、このロッド7を骨固定要素1に接続するためのロックリング6とを含む。加えて、骨固定装置は、ロッド7を留めるためのキャップ8と、ロッドおよび頭部3をロックするための止ねじの形状をしたロック要素9とを含む。
【0012】
特に図3〜図6を参照すると、頭部受け部5は、第1の端部5aおよび反対側の第2の端部5bと、中心軸Cおよび同軸の貫通孔5cとを有する。頭部受け部は、第1の端部5aにおいて、外側に延在するフランジまたはリム51を備えた円筒形部分50を有する。円筒セグメント形状の凹部52が第1の端部5aに形成される。凹部52はロッド7のための案内部および座部としての役割を果たす。円筒セグメント形状の凹部52の両端では、リム51が平坦化されて、対向する位置に平面52a、52bをもたらす。2つの対向する位置にあるリム部分51a、51bが径方向外側に延在するように、円筒軸Lに対して角度をなしてリム51から切欠き53a、53bが設けられている。リム部分51a、51bは、実質的にロッド案内凹部52の端部間において円筒軸Lに対して最大約90°の角度まで円周方向に延在する。切欠き53a、53bの基部面は円筒形である。リム部分51a、51bは各々、第1の端部5aとは反対側に、円周方向に延在するアンダーカット部分51cを有する。アンダーカット部分51cは、外方向および第2の端部5bの方に傾斜した面によって形成される。アンダーカット部分51cは、キャップ8の一部と係合する役割を果たす。円筒形部分50は、第2の端部5bに向かって広がる円錐形の外面部分55に続いている。さらに、収容空間と、骨固定要素1の球形セグメント状の頭部3のための座部とを形成する内部中空の球状区域56が、頭部受け部5に形成される。内部中空の球状区域56は、頭部3の最大直径を含む領域を覆う側から骨固定要素の頭部を囲むよう構成される。
【0013】
第2の端部5bに開口する複数のスリット57が設けられる。スリット57は、実質的に内部中空部分56の壁を通って延在し、頭部受け部5のうち頭部3が収容される領域を可撓性のあるものにする。スリット57の大きさおよび数によって、所望の弾力性が頭部受け部5にもたらされる。頭部受け部5は、骨固定要素1の頭部3が頭部受け部の拡張によって挿入可能となり、頭部受け部の圧縮によってクランプ可能となるような弾力性を有する。
【0014】
図7〜図12を参照すると、キャップ8は、第1の端部8aと反対側に第2の端部8bとを備えた実質的に円筒形の部分である。第1の端部8aには、ロック要素9を受けるためのねじ切りされた同軸の貫通孔81がある。ねじ切りされた貫通孔81よりも直径の大きな同軸ボア82は、第2の端部8bから始まり、第1の端部8aから距離を空けた位置まで延在する。ねじ切りされた貫通孔81は同軸ボア82に開口している。第2の端部から距離を空けて設けられた円周溝83は下方傾斜壁を有する。これにより、キャップは、内側に向けられたリム85をその第2の端部8bに隣接して備え、その傾斜した壁がアンダーカット部分84を形成している。アンダーカット部分84の傾斜は、頭部受け部5のアンダーカット部分51cの傾斜に実質的に対応する。
【0015】
キャップ8はさらに、実質的に立方形状で対向する位置にある2つの凹部86a、86bを含む。これら凹部86a、86bは、第2の端部8bから始まり、第1の端部8aから距離を空けた位置まで延在する。凹部86a、86bは丸みを帯びた端縁を有する。凹部86a、86bにより、対向する位置にある長手方向の2つの脚部87a、87bがキャップの下方部分に形成される。凹部86a、86bは、ロッド7が頭部受け部5およびロックリング6に取付けられたときにキャップ8がロッド7を覆うよう構成されるような高さおよび幅を有する。さらに、凹部86a、86bは、ロッド7の直径よりも実質的に長い幅を円周方向に有しており、このため、脚部87a、87bが、切欠き53a、53bの位置においてロックリングとリム部分51a、51bとの間の空間に嵌まるよう構成される。言換えれば、脚部87a、87bは、頭部受け部5における切欠き53a、53bの幅以下の幅を円周方向に有する。
【0016】
止ねじ形状のロック要素9は、ねじ切りされた貫通孔81に捩じ込まれるよう構成される。ねじ山は角ねじとして示されているが、メートルねじなどの他の如何なるねじ山形状も用いることができる。
【0017】
図13〜図16bを参照すると、ロックリング6は、第1の端部6aとその反対側に第2の端部6bとを備えたリング部分60を有する。リング部分60の外面は、骨固定装置の寸法を径方向に小さくするよう、第2の端部6bに向かってわずかに円錐形の先細にされてもよい。リング部分60は、ロックリングの中心に向かって湾曲した内面部分62を有する。湾曲した面部分62は球形の湾曲を有し得るが、他の型の湾曲も可能である。ロックリングは、ロックリング6が頭部受け部5の外側円錐面部分55に沿って摺動可能となるような内径にされる。これにより、下方への摺動時に頭部受け部5が徐々に圧縮され得る。
【0018】
ロックリング6は、第1の端部6aにおいて、直径方向に互いの反対側に位置する2つの突起63を含む。突起63は、たとえば図18に図示のとおり、ロックリング6が頭部受け部5のまわりに取付けられたときにこれら突起63が頭部受け部の第1の端部5aから上向きにかつ第1の端部5aから離れる方向に突出るような高さを有する。突起は各々、それらの自由端において凹部64を有しており、当該凹部64は、円のセグメント形状を有しており、少なくとも一部に最大直径を有する。円のセグメント形状の凹部64の直径は、実質的にロッド7の直径に相当する。凹部64により、各々の突起63は、ロッド7を捉えることのできる直立の脚部63a、63bを含む。図13および図15に見られるように、リングの中心に面する突起の側部63cは平坦である。
【0019】
ロックリング6は、その第1の端部6aにおけるロックリングの内側において、突起63の位置に、内側に突出た2つの面65を含み得る。このような面は止め部として機能し得る。
【0020】
頭部受け部5の可撓性や、開口した第2の端部5bの頭部受け部5の寸法により、ロックリング6を第2の端部5bから取付けることが可能となる。ロックリング6が頭部受け部5上に取付けられると、頭部受け部の平面52a、52bが突起63の平坦な側部63cに面するために、ロックリング6が頭部受け部5を中心として回転するのが防止される。部品は、頭部3がわずかな摩擦力によって頭部受け部5に予備的に保持され、かつロックリング6も摩擦力によって頭部受け部5のまわりで予備的に保持され得るような寸法に設計され得る。
【0021】
図1、図3、図16aおよび図16bから分かるように、頭部受け部、ロックリングおよびキャップは、脚部87a、87bが頭部受け部5の切欠き53a、53bへと延在している第1の位置で、ロッドが挿入されたロックリング上にキャップを配置することが可能となるように構成される。キャップ8および頭部受け部5はさらに、キャップを、キャップのアンダーカット部分84が頭部受け部のアンダーカット部分51cに係合する第2の位置へと回転させることができるよう構成される。第2の位置では、キャップ8が、頭部受け部の中心軸Cに沿った方向に外れるのが防止される。
【0022】
頭部受け部5、ロックリング6、キャップ8およびロック要素9、さらには骨固定要素1は、生体適合性のある材料、たとえば、チタンもしくはステンレス鋼、またはニッケル‐チタン合金などの生体適合性のある合金、たとえば、ニチノール、または、たとえばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの生体適合性のあるプラスチック材料、で作られている。部品はすべて、同じ材料または異なる材料から作ることができる。
【0023】
図17〜図22を参照して、多軸骨固定装置の取付けおよび使用のステップを説明する。図17に図示のとおり、ロックリング6は、図18に図示のとおり、ロッド7を受けるための突起63が頭部受け部5の第1の端部5aから上向きに延在するように、第2の端部5bから頭部受け部5へと取付けられる。ロックリング6は、突起63が頭部受け部の円筒セグメント形状の凹部52と位置合わせされるような向きにされる。凹部52の端部の位置にあるリム部分51は、ロックリングの支持面65によって支持される。
【0024】
頭部受け部5およびロックリング6は予め組立てられた状態で搬送されてもよい。図18に示される第2のステップにおいては、特定の臨床応用に適したシャンク2を備えた骨固定要素1が、第2の端部5bから、頭部受け部5およびロックリング6によって形成されるアセンブリに取付けられる。ロックリングはその最上位置にある。頭部3は、頭部受け部5の内部中空区域56に差込まれる。これが可能となるのは、頭部受け部5に可撓性があるからである。
【0025】
この段階で、骨固定装置のモジュール性により、手術中または手術前に、頭部受け部を備えた特定のシャンクと特定の骨固定要素とを組合せることが可能となる。次いで、このように組立てられた多軸骨固定装置が骨または堆骨に挿入される。代替的な使用方法では、骨固定要素が、まず、骨または堆骨に挿入され、その後、頭部受け部5とロックリング6とのアセンブリがねじの埋込み後に頭部3に取付けられる。
【0026】
次いで、図19に図示のとおり、ロックリング6が、頭部受け部5を圧縮するように下方に動かされる。頭部3は予備的な角度位置で保持することができ、そして、ロックリング6はまた、一方では頭部受け部5と頭部3との間、他方ではロックリング6と頭部受け部5との間に作用する摩擦力によって、その位置に保持され得る。
【0027】
次のステップにおいては、図20に図示のとおり、ロッド7が、突起63に設けられた凹部64に挿入される。凹部64が最大直径を上回る直径を有する円セグメント形状を有しているので、ロッドを凹部に捉えることができ、これにより、ロッドがその適所で予備的に保持される。
【0028】
次のステップにおいては、図21に図示のとおり、キャップ8はアセンブリ上に配置される。ロック要素9は、キャップ8と予め組立てられてもよい。第1の位置では、脚部87a、87bは、切欠き53a、53bに沿って延在する。これにより、脚部87a、87bは、ロックリングの突起63と頭部受け部5のリム部分51a、51bとの間の空間に延在する。次いで、図22に図示のとおり、キャップ8を回転させることにより、そのアンダーカット部分84が頭部受け部5のリム部分51a、51bにおけるアンダーカット部分51cに係合する。第2の位置においては、キャップ8が軸方向に引離されることが防止される。次いで、ロック要素9が締められる。その下面がロッド7に接触し、ロッド7がロックリングの突起63の凹部64に押込まれる。ロッドに作用する力がロックリングに伝わり、ロックリングが、頭部受け部を堅固に圧縮し頭部3をロックするまで、下方に動かされる。こうして、頭部およびロッドが同時にロックされる。また、ロック要素が締められると、頭部受け部およびキャップが互いに反対方向にねじられ、アセンブリ全体が固定される。
【0029】
多軸骨固定装置の第2の実施例を図23および図24に関連付けて説明する。第1の実施例の部品および部分と同じ部品および部分は同じ参照番号で示され、その説明は繰返されない。第2の実施例に従った骨固定装置は、頭部受け部およびキャップの設計が第1の実施例に従った骨固定装置とは異なる。
【0030】
特に図23〜図28に図示のとおり、頭部受け部5’はロッド案内凹部を備えておらず、第1の円筒形部分50’と外側に延在するリムとを含む。外側に延在するリムは、径方向に対向する位置にあり円周方向に延在する2つのブラケット51a’、51b’を有する。これら2つのブラケット51a’、51b’はアンダーカット部分51c’を有する直立のリムを備える。各々のブラケット51a’、51b’は、対向する位置にある平面52a’52b’が円筒形部分50’の外周に形成されるように、平坦な側部を有する。平面52a’、52b’とブラケット51a’、51b’との間に円筒面53a’53b’があり、これにより、キャップ8の脚部をブラケット51a’、51b’と平面52a’、52b’と間に挿入することが可能となる。さらに、頭部受け部5’は、その第1の端部5aにおいて、円筒形部分50’の外径よりも小さな直径を有する直立した円形リム54を含む。リム54の外側には、アンダーカット部分51c’の傾斜とは逆方向に傾斜した傾斜面54aがあり、この傾斜面54aは、特に図28から分かるように、ブラケット51a’、51b’のアンダーカット部分51c’とともに実質的に蟻継ぎ形状の溝5dを形成する。頭部受け部5’の下方部分は、第1の実施例の頭部受け部の下方部分と同じであるかまたはそれに類似している。
【0031】
図29〜図34を参照すると、第2の実施例に従ったキャップ8’は、ねじ切りされた貫通孔81’の直径よりもほんのわずかだけ大きい直径を有する同軸ボア82’を備える点で、第1の実施例に従ったキャップとは異なる。立方形の凹部86’、86b’により、長手方向に延在する脚部87a’、87b’がキャップ8’にもたらされる。キャップの第2の端部8bには、頭部受け部5における蟻継ぎ形状の溝5dと協働する蟻継ぎ形状の部分85’が設けられている。第2の実施例に従った多軸骨固定装置の高さはさらにより低くなっている。
【0032】
このため、キャップ8’が固定要素1、頭部受け部5’およびロックリング6から成るアセンブリに配置されると、第1の位置において、脚部87a’、87b’が、頭部受け部の円筒形部分53a’、53b’に沿って延在する。次いで、図35b、図36aおよび図36bに図示のとおり、キャップ8’を回転させることによって、頭部受け部5において蟻継ぎ形状のリム85’が蟻継ぎ形状の溝5dと係合し、これにより、キャップが頭部受け部に接続され、ロッドが外れないよう固定される。蟻継ぎ形状により、キャップが軸方向に外れるのが防止される。次いで、ロック要素が締められて、アセンブリ全体が固定される。
【0033】
図37aおよび図37bにおいては、さらなる代替的実施例の頭部受け部が示される。図37aおよび図37bにおいては、第1の実施例の頭部受け部とは異なる構成を有する頭部受け部5”が示される。すなわち、リム部分51aおよび51bは異なる構成を有しており、第1の実施例の頭部受け部のリム部分と比べて、頭部受け部5”のうち互いに反対側の部分にあるものとして記載され得る。
【0034】
図38a〜図38cにおいては、多軸骨固定装置のさらなる代替的実施例は、図37aおよび図37bに示される頭部受け部5”を含む。図38a〜図38cにおける多軸骨固定装置の組立は、以下の点を除いては図20〜図22に示されるのと同様である。すなわち、図38a〜図38cにおいては、キャップ8およびロック要素9が同じ方向に締められるのに対して、図20〜図22においては、キャップ8およびロック要素9は反対方向に締められる。図38a〜図38cに示される代替的なステップは、図19に示されるステップの後に行われてもよい。
【0035】
図38aにおいては、突起63に設けられた凹部64にロッド7が挿入される。凹部64はロッド7の最大直径を含む円セグメント形状を有しているので、ロッド7をこの凹部64に捉えるかまたは保持することができ、これにより、ロッドがその適所で予備的に保持される。
【0036】
次のステップにおいては、図38bに図示のとおり、キャップ8はアセンブリの残りの部分上に配置される。ロック要素9はキャップ8と予め組立てられてもよい。第1の位置では、脚部87a、87bは、切欠き53a、53bに沿って延在するか、または切欠き53a、53bと位置合わせされ、こうして、脚部87a、87bは、ロックリング6の突起63と頭部受け部5”のリム部分51a、51bとの間の空間に延在する。
【0037】
次いで、図38cに図示のとおり、キャップ8を回転させることにより、アンダーカット部分84が頭部受け部5”のリム部分51a、51bにおけるアンダーカット部分51cに係合する。第2の位置においては、キャップ8が、アセンブリの残りの部分から軸方向に引離されることが防止される。次いで、ロック要素9がキャップ8と同じ方向に締められる。たとえば、ロック要素9およびキャップ8はともに、締めたりロックしたりするために、時計回りに回転させられてもよく、または代替的には、反時計回りに回転させられてもよい。交互に配置された切欠き53a、53bおよびリム部分51a、51bによって、ロックキャップ8およびロック要素9をともに同じ方向に締めることが可能となる。すなわち、切欠き53a、53bは、キャップ8およびロック要素9をともにロックする方向に対してリム部分51a、51bの上流にくるよう配向される。キャップ8およびロック要素9が同じ回転方向に締められるので、アセンブリをロックするロック力が増大する。加えて、ロックするのと同じ方向であれば、ロック要素9を締めることで結果としてキャップ8が不注意に緩んでしまうことがなくなるだろう。
【0038】
ロック要素9が締められると、ロック要素9の下面がロッド7に接触し、ロッド7がロックリング6の突起63の凹部64に押込まれる。ロッド7に作用する力がロックリング6に伝わり、ロックリング6が下方に動かされて、頭部受け部5”を堅固に圧縮し頭部3をそこにロックする。アセンブリが固定またはロックされると、頭部3およびロッド7が同時にロックされ得る。ロック要素9が締められると、頭部受け部5”とキャップ8との間の接続も強化され得る。
【0039】
図示される実施例の変形例が実現可能であることを理解されたい。係合位置にあるキャップが外れるのを防ぐキャップと頭部受け部との如何なる係合構造も実現可能である。特に、リム部分51a、51bの寸法または円周方向の蟻継ぎ溝5dは、図示される実施例とは異なっていてもよい。
【0040】
他の変形例も想到可能である。ロックリングや、頭部受け部の協働する外面部分の構成は、他の態様で設計することもできる。たとえば、ロックリングの内面を先細にして頭部受け部の先細の外面と協働させることも可能である。または、頭部受け部の外面部分を凸状に丸みを帯びたものにし、ロックリングの内面を直線状もしくは先細にする。ロックリングと頭部受け部との間の締まりばめによって頭部がクランプされるように、ロックリングおよび頭部受け部の協働面同士を平行にすることもできる。
【0041】
骨固定要素については、それぞれのシャンクの長さ、直径もしくはねじ切り形状が異なるか、または薬剤もしくは骨用セメントの投入用の開口部を備えた貫通チャネルを有するさまざまな骨固定要素を用いることができる。また、フック、釘または他の固定要素も可能である。
【0042】
ロッドを受ける凹部はまた、半円形、4分の1円形もしくはU字型であってもよく、または、ロッドをそこに収容するよう構成された如何なる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 骨固定要素、2 シャンク、3 頭部、5、5’ 頭部受け部、5a 第1の端部、5b 第2の端部、6 ロックリング、8、8’ キャップ、8a 第1の端部、8b 第2の端部、C 中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸骨固定装置であって、
骨への係止のためのシャンク(2)および頭部(3)を有する骨固定要素(1)と、
第1の端部(5a)および開口した第2の端部(5b)を有する頭部受け部(5,5’)とを含み、中心軸(C)が第1の端部(5a)および第2の端部(5b)を通って延在し、内部中空部分(56)が、頭部(3)を受けるために前記開口した第2の端部と連通しており、頭部受け部は、頭部のクランプを可能にするよう可撓性があり、前記多軸骨固定装置はさらに、
頭部受け部のまわりに取付けられるロックリング(6)を含み、ロックリングはロッド受け部(63,64)を有し、
頭部(3)は、頭部受け部において回動可能であり、ロックリング(6)によって頭部受け部を圧縮することによって角度をなしてロック可能であり、前記多軸骨固定装置はさらに、
ロッドを覆い、かつ頭部受け部に係合するよう構成され、第1の端部(8a)および第2の端部(8b)を有するキャップ(8,8’)を含み、中心軸(C)が端部を通って延在し、対向する位置にある2本の脚部(87a,87b;87a’,87b’)が中心軸の方向に延在し、前記多軸骨固定装置はさらに、
キャップを通って延在し、ロッドに係合するよう構成されたロック要素(9)を含み、
キャップ(8,8’)は、脚部が頭部受け部から外れている第1の位置と、脚部が頭部受け部に係合する第2の位置との間で頭部受け部(5)に対して回転可能であり、
ロック要素が締められると、ロッドおよび骨固定要素(1)が互いに対してロックされる、多軸骨固定装置。
【請求項2】
頭部受け部(5,5’)は、第1の端部(5a)に隣接しキャップによる係合のためのアンダーカット(51c,51c’;54a)を備えた第1の部分(51,51’)を含む、請求項1に記載の骨固定装置。
【請求項3】
頭部受け部は、キャップ(8,8’)との係合のための、180°間隔を空けて配置された2つの径方向突起(51a,51b;51a’,51b’)を含む、請求項1または2に記載の骨固定装置。
【請求項4】
ロッド(7)が挿入されると、径方向突起(51a,51b;51a’,51b’)がロッド軸(L)に対して実質的に30°〜60°で配置される、請求項3に記載の骨固定装置。
【請求項5】
頭部受け部(5,5’)は、開口した端部(5b)に向かって大きくなる外径を有する外面(55)を備えた可撓性部分を含む、請求項1から4のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項6】
頭部受け部(5)はその壁に複数のスリット(57)を含む、請求項1から5のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項7】
頭部(3)は球形の外面部分を有し、頭部受け部は頭部のための球形の座部分(56)を有する、請求項1から6のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項8】
頭部受け部(5,5’)は、第1の端部において、頭部(3)の最大直径よりも小さな直径を有する貫通孔(5c)を有する、請求項1から7のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項9】
ロックリング(6)は、円周方向に互いに対向する位置にある2つの突起(63)を含み、突起は各々、ロッドを挿入しそこにロッドを予備的に保持するよう構成された凹部(64)を有する、請求項1から8のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項10】
凹部(64)は円セグメントの輪郭を有し、セグメントは好ましくは半円よりも大きい、請求項9に記載の骨固定装置。
【請求項11】
キャップは実質的に円筒形であり、第2の端部に開口しロッドを通過させるための、円周方向に対向した位置にある2つの凹部(86a,86b;86a’,86b’)を含む、請求項1から10のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項12】
ロッドが挿入されたとき、脚部(87a,87b;87a’,87b’)の円周方向の幅は、ロッド(7)と径方向突起(51a,51b;51a’,51b’)との間の距離以下である、請求項3から11のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項13】
キャップ(8)はねじ切りされた貫通孔(81)を含み、ロック要素(9)は貫通孔に設けられた止めねじである、請求項1から12のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項14】
キャップ(8)は、頭部受け部の一部(51c)との係合のためのアンダーカット部分(85)を有する、請求項1から13のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項15】
頭部受け部(5’)は蟻継ぎ溝(5d)を有し、脚部(87a’,87b’)は蟻継ぎ溝との係合のための蟻継ぎ部分(85’)を有する、請求項1から14のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項16】
頭部受け部(5)は第1の端部(5a)にロッド案内凹部(52)を含む、請求項1から15のいずれかに記載の骨固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36a】
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【図36b】
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【図37a】
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【図37b】
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【図38a】
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【図38b】
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【図38c】
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【公開番号】特開2013−103133(P2013−103133A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247438(P2012−247438)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】