説明

多部門応用のためのナノコンポジット材料の製造プロセス

本発明は層状構造を有し有機化合物に基づくインターカレートさせたナノコンポジットを製造するプロセスに関し、以下のステップからなることを特徴とする。:
層状粒子のサイズを縮小させそれらを精製すること;
天然及び/又は合成層状構造物を、前駆体を用いることにより前処理すること;
前記層状構造物中で変性剤をインターカレートさせること;
先のステップから生じた生成物を液体状態でプラスチックマトリックスの加工中に添加し、及び/又は前記先のステップから生じた生成物を沈殿させ、マスターバッチを得ること;および
前記マスターバッチをいずれかのプラスチック加工方法によってプラスチックマトリックスに取り込ませること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された気体および蒸気のバリア性と熱および機械的性質を有し、抗菌性、および活性および生物活性化合物放出特性を有する生分解性のナノコンポジット材料を製造するプロセスに関する。プラスチック材料、好適には両者ともに石油および再生可能資源と再生不能資源からの生分解性材料に由来するポリエステルおよび極性ポリマーの気体バリア性は、前記の提案したナノコンポジット材料の合成プロセスによって、実質的に改善される。
【背景技術】
【0002】
最近、ナノ材料、特にナノコンポジット研究に多大な努力が注がれている。ナノコンポジットは、ナノスケールサイズの充填剤(すなわち、少なくとも1方向において1ナノメーターから数10ナノメーターまでの桁数の大きさを有する)で強化されたポリマーである。ポリマーマトリックス中での剥離による分散とこのタイプの無機粒子のインターカレーションにより、ミクロコンポジットのような従来の材料が共有していない一連の新規性質が入手できるようになる。
【0003】
ナノコンポジットは、インターカレートされたかまたは剥離された構造を生ずる異なるプロセスによって層を分離させることによって形成される。ナノコンポジットの剥離およびインターカレーションという用語については、米国特許第6384121B1号明細書、国際公開第WO0069957号パンフレット、米国特許第5844032号明細書、米国特許第6228903B1号明細書、米国特許出願公開第2005/0027040A1号明細書、国際公開第WO9304118A1号パンフレットに記載されている(特許文献1〜6参照)。これらの構造において、ポリマーチェーンはナノフィラー層の間に挿入されているか、または、それらは、前記ポリマーチェーンの間に当初のクレイ層を完全に分散させ、機械的およびバリア特性を強化している。
【0004】
ハイブリッド有機−無機材料から製造されたナノコンポジットに関して文献では進歩が見られ、これらの材料の合成に注目しているかまたはその特定の応用に注目している(前記参考文献)。この高い関心は、ナノメーター規模に到達するまで分散相の大きさが低下することに伴う界面張力および表面化学の重要な役割にしばしば関連するこれらコンポジットの独自の性質によるものである。これらのハイブリッド材料の機械的、粘着、結合、電気的、光学的、光化学的、触媒および磁性的性質は、しばしば、前記構成成分類のみが有する性質の相乗的組み合わせの結果である。有機ポリマーは、該有機ポリマー中への無機成分の侵入、混入または分散という手段によって、より大きな引っ張り強度、弾性、低表面エネルギー、より大きな硬度、化学耐性、放射線および熱に対する耐性を有し、同様に官能基または触媒基を包含できる。この種の材料類における親水性−疎水性、共有結合性または配位相互作用により、高い界面領域を有する不相溶性の相類を安定化させることが可能となる。この時点で、例えば各成分が他者の構造を変えるインターカレートした構造物、または分散相すなわちナノフィラーの大きさが、各成分がその特定の構造および性質を保持するようなものである真正ナノコンポジットのようなゲスト−ホスト系を区別することが重要であるが、ただし、前記の小さなサイズと大きな界面に由来する重要な性質についても同様に述べることができる。
【0005】
従って、ハイブリッド材料の定義は、むしろ広くなり、ハイブリッド組成物が前記主成分に関して異なる種類の官能基または置換基の存在を称する単相高分子性ネットワークからゲスト−ホストまたはセルフアセンブリ超構造類までの範囲にわたる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6384121B1号明細書
【特許文献2】国際公開第WO0069957号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5844032号明細書
【特許文献4】米国特許第6228903B1号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0027040A1号明細書
【特許文献6】国際公開第WO9304118A1号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国特許第6384121B1号明細書におけるようにクレイを特異的に変性することを利用してナノコンポジットを産生する先行発明があるという事実にもかかわらず、溶融混合法という手段によってさえも、これらの発明は、基本的に4級アンモニウム塩に基づく変性剤を提案しており、それらは、多くの場合食品との接触を禁じられている物質でありかつさらに多くのポリマー類族との良好な相溶性を生み出しえない異なる炭化水素類を生じることがあり、あるいは、それらは、処理時に反応する。ここで提案された改善は、ナノコンポジットがバリア性を高めるために提案された実施例で記載されていない(参考文献EP 0 780 340 B1)。また、多くのナノコンポジットは、マトリックス剛性を高めるために開発されているということが一般的にわかる;しかし、多くの生分解性材料において、それらが一般的に多くの適用で可塑剤を必要とする極めて剛性の材料であるということを鑑みれば、前記材料を可塑化することがより重要である。また、生体医薬および薬剤適用に使用できるナノ材料類は生体適合性でかつ生分解性であるので、それらを提供することに多くの関心が寄せられており、それらは、前記マトリックスの性質を改良し、それらを、例えば、活性物質放出を制御できるように設計して食品中に機能性物質類を放出させる活性包装適用および生体活性適用において、および、生体医薬および薬学適用において使用できる。こうした理由のため、ナノコンポジットを製造する改良プロセスを見出す必要があり、それらは、コストを削減し、その製造時間を短縮し、最終産物の品質を損なうことなくその性質を改良しかつ異なるマトリックスおよび適用への使用を最適化可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、気体および蒸気のバリア性が改良された最終生成物を生ずるナノコンポジットを製造する新たな手段を提供し、それは、生分解性であり、且つ抗菌性であるかまたは抗菌剤、抗酸化剤、エチレン、エタノール、薬物類、生物利用可能なカルシウム化合物類およびその混合物類のような活性または生物活性物質の放出制御能力を有する。それはまた、前記処方に応じて、前記マトリックスを剛性とするかまたは可塑化することができ、さらに、それは、食品及び/又は生物医薬および製薬学的用途として認可された物質との接触ができる物質を利用し、従って、最終生成物の品質を改善しかつ先行知識に関して新規性と改善をもたらしかつ当該技術水準における問題を解決する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で詳述するナノコンポジットを製造するための新規プロセスは、クレイ(例えば、モンモリロナイト、カオリナイト、ベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、セピオライト、サポナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、マイカ)を含む層状フィロケイ酸塩のような構造物または有機タイプの材料でインターカレートした層状構造を有する合成または天然の層状二重水酸化物類に基づくことができ、前記プロセスは、下記のステップを含む。:
【0010】
機械的作用により前記層状粒子のサイズを縮小すること、そして、0.1から100ミクロンを含む間隔に到達するまでのバイブレーションスクリーンフィルタリングプロセスであり、本発明の好適な態様によれば、前記縮小は、粒子径25ミクロン未満を得る。フィルタリングプロセスの後、有機物は、デカント、上清の採取、または過酸化物のような酸化物質による化学反応によって除去され、変性を受けなかった結晶酸化物および硬い粒子は、最終的に、遠心分離プロセス及び/又は溶液中重力プロセスまたはターボドライプロセスのいずれかによって、好適には圧低下制御による噴霧プロセスによって、除去される。このようにして得られた薄層は、本発明の出発物質とみなされる。
【0011】
前記プロセスにおける次のステップは、表1に示した膨張型前駆体、好適にはDMSO、アルコール類、アセテート類、または水、およびその混合物を用いて、1つまたは複数のステップで前記層状構造を前処理することであり、これらは、前記層類の基準スペーシングを最初に増加させて清澄剤を活性化させかつ前記クレイの表面特性を変性する。前記前駆体の侵入は、温度、乱流法ホモジナイザー、超音波、圧力またはその組み合わせを使用することによって促進される。それらは、乾燥室における蒸発、凍結、遠心分離プロセス及び/又は溶液中重力プロセスまたはターボドライプロセスによってまたは噴霧プロセスによって乾燥させることができる。本発明の別の好適な態様によれば、インターカレートした前駆体の溶液は、重合調整剤取り込みの次のステップから出発手段としての事前の乾燥プロセスなしで使用できる。
【0012】
層状構造を有する有機材料に基づくインターカレートされたナノコンポジットを製造するプロセスにおけるもうひとつの次のステップは、水性塩基中においてまたは極性溶媒により前記層状構造への有機材料のインターカレーションから構成される。本発明の好適な態様によれば、前記有機材料は、PVOH、EVOHおよび同一族の誘導体類、及び/又はペプチド、天然タンパク質または化学的に得られたか微生物類または植物類の遺伝的変性によって得られた合成タンパク質、および天然多糖類または化学的に得られたかまたは微生物類または植物類の遺伝的変性によって得られた合成多糖類およびポリペプチド類、核酸類および化学的に得られたかまたは微生物類または植物類の遺伝的変性によって得られた合成核酸ポリマー類のようなバイオポリマー類、およびポリ乳酸、ポリ乳酸−グリコール酸、アジピン酸およびその誘導体類、およびポリヒドロキシアルカノーアート類、好適にはポリヒドロキシブチレートおよびそれらのバレラート類とのコポリマー類のような生分解性ポリエステル類、およびハイドロキシアパタイトのような生体医薬材料である。インターカレートされる有機材料がEVOHまたはその族のいずれかの材料であり、エチレンモル含量が好適には48%未満でさらに好適には29%未満である時、それらは、水性媒体中でまたは特定のアルコール型溶媒類およびアルコールと水の混合物中において飽和させることができ、前記混合物は、水の容量比率が50%を超える水とイソプロパノールの混合物である。本発明のもうひとつの好適な態様によれば、可塑剤のあるなしにかかわらず、架橋剤のあるなしにかかわらずおよび懸濁化剤または界面活性剤類または別のタイプの添加剤類のあるなしにかかわらずバイオポリマー類は、セルロースおよび誘導体類、カラゲニンおよび誘導体類、アルギネート類、デキストラン、アラビアゴムおよび好適にはキトサンまたはその天然および合成誘導体類の両者のいずれか、より好適にはキトサン塩類および更に好適にはキトサンアセテートのような合成および天然(植物または動物)多糖類、植物類および動物類由来のタンパク質類両者およびトウモロコシ(ゼイン)由来のタンパク質類、グルテンまたはそのグリアジンおよびグルテニン分画のようなグルテン誘導体類、およびさらに好適にはゼラチン、カゼインおよび大豆タンパク質類およびその誘導体類、ならびに、化学的に得られたかまたは微生物類または植物類の遺伝的変性によって得られたエラスチンタイプの天然または合成ポリペプチド類、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドおよびその混合物類の群由来である。キトサンの場合、脱アセチル化度は、好適には80%を超え、さらに好適には、87%を超える。前記前駆体類の侵入は、温度、乱流法ホモジナイザー、超音波、圧力またはそれらの組み合わせを用いることによって促進される。
【0013】
活性または生物活性を有する低分子量物質を、先に提案した前駆体で前処理した清澄剤および変性剤を溶解させた後のステップまたはそれに代わるステップにおいて制御しながらインターカレーションさせるか放出させるかのいずれかの目的のために添加し、活性または生物活性能力を有するナノコンポジットを生じる。前記活性物質類は、エタノールまたはエチレン、または好適にはチモール、カルバクロール、リナロールおよび混合物類のような精油タイプであるか、または、天然の小型抗菌ペプチド類(バクテリオシン)、または遺伝的変性によって得られたもので好適にはナイシン類、エンテロシン類、ラクチシン類およびリゾチームであり、または好適にはポリフェノール類、好適にはフラボノイド類、ローズマリー抽出物および好適にはアスコルビン酸およびビタミンCのようなビタミン類のような天然または合成抗酸化剤類、または薬物類、または生体利用可能なカルシウム化合物類生体利用可能なカルシウム化合物類である。これらの要素類は、制御された方法で前記生成物に対してナノコンポジットから放出されることができ(マトリックスコントロール)、それらの活性または生物活性役割を発揮すること、前記マトリックスから放出されることができること、および前記ナノ粒子類が動態を制御するであろう(ナノ添加物制御)こと、または、それは両者から放出されることができることが予測される。添加される含量は、一般的に、前記溶液の80容量%未満であり、好適には12%未満であり、さらに好適には8%未満である。これらの物質類の侵入は、温度、乱流法ホモジナイザー、超音波、圧力またはそれらの組み合わせを用いることによって加速される。
【0014】
本発明のもうひとつのステップは、先のステップからの生成物を液体状態でプラスチックマトリックスに添加することである。この場合、押し出し、射出、吹き込み、圧縮成形、レジントランスファー成形、カレンダ加工、熱衝撃、内部超音波混合、共押し出し、共射出、およびそれらの組み合わせのようなプラスチック加工産業に関連する製造方法を用いて、その処理時においてプラスチックマトリックスに添加される。好適な態様によれば、前記プラスチックマトリックスは、好適には、PVOH、EVOHまたは誘導体類、およびタンパク質、多糖類およびポリエステル類のような生分解性材料、およびハイロドキシアパタイト類のような生体医薬材料または先に述べたもの全ての混合物類から製造され、通常プラスチック類に添加されるいかなるタイプの添加物も含むことができ、それらの加工またはそれらの性質を改善する。
【0015】
本発明の別の好適な態様によれば、先のステップから生じた生成物は、加熱及び/又は遠心分離プロセス及び/又は溶液中における重力プロセスまたはターボドライプロセス及び/又は噴霧プロセスのような乾燥方法を用いて蒸発させることによって;冷却させることによってまたは沈殿剤を添加してマスターバッチすなわち添加濃縮物を形成させることによって、沈殿させ、それを粉砕によって粉末化させ、粒子状産物を生じさせるか、及び/又は、それをいずれかのプラスチック加工方法によって処理して、固体状態のペレットを得る。これと同じ意味で、前記マスターバッチを直接用いて、押し出し、射出、吹き込み、圧縮成形、レジントランスファー成形、カレンダリング、熱ショック、内部超音波混合、共押し出し、共射出、およびそれらの組み合わせのようなプラスチック加工業界に関連する製造方法のいずれかを用いても最終産物を得ることができ、または、それを希釈添加物として同一または別のプラスチックマトリックス(上記のバイオポリマーおよび生体医薬材料を含む)中で、上述のもののような従来のプラスチック加工経路で用いる。
【0016】
本発明に記載のプロセスによれば、一般的には包装適用および特に食品および食品成分包装適用、ナノバイオコンポジットとしての生体医薬適用のため、および溶媒およびアロマおよびアロマ成分、オイル類および炭化水素類のような有機生成物に対しておよび混合有機および無機生成物に対するバリアとしての活性成分類放出のための薬剤適用、生分解性またはコンポスト可能な性質を必要とする適用、抗菌、抗酸化性を必要とするかまたは好適には揮発性物質である低分子量物質の放出制御を必要とする別タイプの活性適用、抗菌能を必要とする適用、および可塑剤使用を必要としないかまたは少量の後者を必要とするバイオポリマー類の用途のため、層状構造を有する有機材料に基づくインターカレートされたナノコンポジットをプラスチック強化のために適用する。
【0017】
本発明の上記に述べた全ての特徴および利点ならびに他の特徴および利点は、下記の実施例でさらによく理解できる。さらに、本実施例は、本発明の理解を深めるために例示したもので、限定するものではない。
【実施例】
【0018】
実施例1:EVOH経路
本実施例では、変性プロセスが、精製したカオリナイトとモンモリオナイトクレイ清澄剤類をエタノール/水 50/50(v/v)混合物で50℃において前処理することから構成される。このプロセスは、1時間の超音波振とう処理プロセスとともにホモジナイザーによる2時間の振とうを実施し、前記クレイ中における前駆体のインターカレーションを有利にした。次に、前記溶媒を、凍結乾燥及び/又は蒸発によって除去した。別の実施例では、DMSO水溶液を前駆体として用いて、前記クレイのはるかに大きい膨張を得て、それを表1に示した。
【0019】
【表1】

【0020】
さらに、EVOH26(26モル%エチレン含量)を有するイソプロパノール/水 70/30(v/v)溶液を調製し、別の実施例では、PVOH水溶液を調製した。両者の場合において、懸濁プロセスを、1時間の超音波振とう処理と1時間のホモジナイザーによる振とうとともに実施した。
【0021】
次に、前記前処理クレイダストを、ある場合には約40重量%のクレイ飽和条件になるまでEVOH26(26モル%エチレン含量)を有するイソプロパノール/水 70/30(v/v)に添加し、別の実施例では前記PVOH水溶液に添加した。溶媒を除去するかまたは冷却によって飽和条件に到達した際に得られた沈殿物は、マスターバッチまたは濃縮物と称する。別の実施例では、先の溶液類またはクレイ含量の観点からより希釈されている溶液を、沈殿したものの代わりに液体状態で金型に添加し、そこからナノコンポジットフィルムを溶媒蒸発によって得た。
【0022】
DMSOで処理したサンプルにおいて、図1のディフラクトグラムを参照すればわかるように、DMSO前駆体が、クレイの層間隔を低角度のほうに膨張させることが分かる;このことは、インターカレーションによるクレイ層の膨張を示唆している。先のプロトコールに記載のように変性させたこのクレイと共に最終的に得られたマスターバッチにおいて、ポリマーによる高度のインターカレーションを見ることができ、それは低角度における異なるピークから得られる。このようにして得られたマスターバッチは、温度210℃および100rpmで最大5分間純粋なEVOH32とインターナルミキサー中で溶融して押し出されるか混合され、クレイ含量4重量%のナノコンポジットを得る。
【0023】
先のプロセスと別のプロセスにおいて、マスターバッチ溶液のさらに希釈したもの(クレイ中10重量%未満)を純粋なEVOH32とともに溶融押出プロセスまたは混合プロセスに添加し、この目的のため温度210℃において100rpmで最大5分間、インターナルミキサーを用いて、4重量%EVOH/クレイナノコンポジットを得た。別の実施例では、前駆体処理クレイ溶液を、直接溶融押し出しまたは混合プロセスに添加した。それら全てのうちで最も満足のいくケースは、沈殿させたかまたは液体状態で溶融押し出しまたは混合プロセスに添加したマスターバッチのケースであった。
【0024】
75ミクロン厚のシートを、ホットプレートプレスを用いる溶融処理の抽出材料を用いて調製した。用いた成形条件は、温度220℃および圧力2MPaで4分間であった。得られたシートは、形態学的および機械的特性解析のためおよびバリア性の特性解析のために用いた。図2はTEM顕微鏡写真を示しており、このナノコンポジットの高度剥離及び/又は挿入により、ひとつの形態が得られることを示唆しており、分散クレイナノフレークは、ポリマーマトリックス中で暗色としてみることができる。
【0025】
ホットミキシングによって希釈したマスターバッチから得られたサンプルフィルム中で測定したキャリア特性を、表2に示した。
【0026】
【表2】

【0027】
表2は、酸素に対するバリア性が、ナノコンポジットではるかに優れていること、およびナノコンポジットに関する先行特許または科学的文献で報告されているものよりもはるかに大きな値を有していることを示している。
【0028】
実施例2:バイオポリマー経路
本実施例で行った変性プロセスは、前駆体としての酢酸カリウムおよびDMSO水溶液処理によるカオリナイトおよびモンモリロナイトクレイ清澄剤類の第1変性ステップから構成される。このプロセスは、50℃において1時間の超音波振とう処理とホモジナイザーによる2時間の振とうを行い、前記クレイ中における前駆体のインターカレーションを有利にした。
【0029】
さらに、1実施例において、キトサン水溶液を40℃において懸濁し(キトサン1gごとに水100mlと酢酸2mlを必要とした)、また、別の実施例において、大豆タンパク質水溶液を、45℃において懸濁した。両者の場合において、懸濁プロセスは、1時間の超音波振とう処理とホモジナイザーによる1時間の振とうにより行った。
【0030】
次に、前記前駆体で変性したクレイの懸濁液を、1実施例では重量比で(2:1)バイオポリマークレイにおいてキトサン水溶液に添加し、別の実施例では重量比で(2:1)バイオポリマークレイにおいて大豆タンパク質水溶液に添加した。このプロセスは、1時間の超音波振とう処理とホモジナイザーによる1時間の振とうを行い、クレイ中におけるバイオポリマーのインターカレーションを有利にした。次に、前記溶媒を、凍結乾燥及び/又は蒸発プロセスによって除去した。ナノコンポジットを最終的に、単軸押し出し機またはインターナルミキサーを用いてPCL(ソルヴェイ(Solvay)のポリカプロラクトン,ベルギー)について110℃、およびPLA(ギャラクティック(Galactic)の無水ポリ乳酸,ベルギー)とPHB(グッドフェロー(Goodfellow)の可塑化ポリヒドロキシブチレート,英国)について190℃において、100rpmで最大5分間を用いて、得られた。
【0031】
別の実施例では、前記前駆体類で処理したクレイの溶液を、バイオポリマー類の溶液に添加し、ホモジナイゼーション(均質化)及び/又は超音波に1時間供し、次に、金型に添加し、溶媒を蒸発させることによってナノコンポジットフィルムを得る(図3参照)。図3は、クロロホルム溶液からの蒸発によって得られたPCLナノコンポジットの高度の剥離及び/又はインターカレーションを有する形態を示しており、分散クレイナノフレークが、前記マトリックス中において暗色としてみることができる。
【0032】
700ミクロン厚のシートを、ホットプレートプレスを用いる溶融プロセスの抽出材料を用いて調製した。得られたシートは、形態学的および機械的特性解析のためおよびバリア性の特性解析のために用いた。
【0033】
図4は、PLA厚およびPLAナノコンポジットについて補正時間に従ったメタノールの重力収着を示している。メタノールの収着を用いて、材料中において抗菌性を有する極性化合物の保持能をシミュレーションしている。この図において、前記ナノコンポジットがいかにしてより大きな成分量を保持するかを見ることができ、この挙動は、それにより前記活性および生物活性物質放出を異なる適用において変性し制御できるようになるので、有利である。
【0034】
【表3】

【0035】
表3は、ポリオレフィン類(HDPEを参照)およびPCLについて予測されるものおよびそれについて観察されたものと対比的に、溶融プロセスによって得られた剛性PLAおよびPHB材料類のナノバイオコンポジットが、機械的剛性係数低下を示していることを示唆している。示した機械的データは、曲げ中の動的機械分析(DMA)によって測定される。このことは驚くべきことであり、生体材料と本発明で提案した添加物類との間に確立された特異的相互作用に緊密に関連している。純粋な生体材料が通常過度の剛性を有しているので、ナノコンポジット中における可塑化の観察は好ましいものであり、本発明のナノクレイの取り込みの結果としてのそれらの可塑化により、バイオポリマー類の過度のもろさが問題となっている適用においてそれらを非常に適切にしている。表2は、さらに、全ての材料類、特にPHBが酸素バリアに関して改善を示していることを示唆している。表2はまた、先の特許文献に記載されたもののようなアンモニウム塩類により行われた変性がPLAの場合のようにより小さな透過性低下を生じることまたはPHBの場合のように不連続サンプルを生じることを示唆している。
【0036】
PHBの改善は非常に重要で、今日まで文献で報告されている酸素バリア性で行われた改善全てよりも優れている。
【0037】
キトサンと同様、アルコール類および精油類は、強力な抗菌および生物活性剤であり、キトサンで変性されたクレイ及び/又は活性および生体活性物質類を含むクレイとそれらのフィルム類または混合物類が抗菌または生物活性能力を有していると期待できる。このことは、これらの物質が抗菌および生物活性剤として優れた能力を有しているとする既存の科学文献にある数多くの実施例から、誘導できる。また、全ての成分および材料は生分解性でかつコンポスト化ができるので、それを証明する科学文献がたくさんあることから、その組み合わせによりナノコンポジットを作製しても、それもまた、生分解性でありかつコンポスト化ができることが予測される。
【0038】
実施例3:ポリオレフィン経路
本実施例では、変性プロセスが、カオリナイトとモンモリロナイトクレイ清澄剤を前駆体としてのDMSO溶液により処理する第1変性ステップから構成される。このプロセスは、50℃における1時間の超音波振とう処理プロセスおよびホモジナイザーによる2時間の振とうで実施し、前記クレイ中の前駆体のインターカレーションを有利にした。次に、前記溶媒を、凍結乾燥及び/又は蒸発プロセスによって除去し、粉末生成物を得た。
【0039】
第2ステップにおいて、前記クレイを再度、50℃における4時間の超音波振とうとホモジナイザーの存在下でヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(C16)水溶液中で懸濁させるか、または上記のようにキトサン溶液中に懸濁させる。次に、前記溶媒を、凍結乾燥及び/又は蒸発プロセスによって除去し、粉末生成物を得た。
【0040】
前記変性クレイを、HDPE(BPケミカルズ社)および無水マレイン酸(5重量%未満)のような相溶化剤とともに溶融混合プロセスに粉末状にして添加し、クレイ7重量%のHDPE/クレイナノコンポジットを得て、その目的のため、単軸押し出し機またはインターナルミキサーを温度180℃においてかつ80rpmで10分間用いた。
【0041】
700ミクロン厚のシートを、ホットプレートプレスを用いる溶融プロセスにより得られた材料を用いて調製した。得られたシートは、機械的特性解析のためおよびバリア性の特性解析のために用いた。
【0042】
表3から、ポリエチレンおよび本発明の変性条件の場合、材料の機械的剛性が低温および室温の両者で高まることがわかり、そのことは、機械的性質の改良を示唆している。さらに、表2から、ナノコンポジットが前記酸素バリアにおいてポリオレフィンに対して有意な増加を示すことがわかる。
【0043】
図5は、同一厚さの純粋なポリエチレンサンプルと例示としてのナノコンポジットサンプルについて時間によるリナロール放出能を示している。リナロールは抗菌性を有する比較的極性の精油であり、従って、抗菌剤または他の活性または生物活性物質類の制御放出を必要とする適用について非常に関心が寄せられている。この図から、図4のナノバイオコンポジット類のように、このナノコンポジットが大量の活性及び/又は生物活性物質類を保持し従って放出することが誘導できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】DMSOで処理したサンプルのディフラクトグラムである。
【図2】ナノコンポジットのTEM顕微鏡写真である。
【図3】PCLナノコンポジットの形態を示す顕微鏡写真である。
【図4】PLA厚およびPLAナノコンポジットについて補正時間に従ったメタノールの重力収着を示すグラフである。
【図5】純粋なポリエチレンサンプルと例示としてのナノコンポジットサンプルについて時間によるリナロール放出能を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状構造を有するナノコンポジットを製造するプロセスであって、インターカレートされた有機材料を含有しかつ以下のステップからなることを特徴とするプロセス。:
a)層状粒子のサイズを縮小させそれらを精製すること;
b)前記層状構造物を、前駆体を用いることにより前処理すること;
c)前記層状構造物に有機材料をインターカレートさせること;
d)先のステップから生じた生成物を液体状態でプラスチックマトリックスの加工中に添加し、及び/又は先のステップからの生成物を沈殿させ、マスターバッチを得ること;および
e)前記マスターバッチをいずれかのプラスチック加工方法によってプラスチックマトリックスに取り込ませること。
【請求項2】
層状構造を有する有機材料に基づいた前記インターカレートさせたナノコンポジットが、層状フィロケイ酸塩類及び/又は合成及び/又は天然の層状二重水酸化物の群に由来することを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
ステップa)が、機械的作用により実行され、続けて、ろ過および有機物除去が行われることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
ステップa)からの生成物が0.1から100ミクロンのサイズを有することを特徴とする先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記層状粒子のサイズの縮小が25ミクロン以下までなされることを特徴とする請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
ステップb)が1つのステップまたは複数のステップで行われることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項7】
前記前処理が膨張剤によって行われることを特徴とする請求項1および6に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップc)において、インターカレートされる有機材料が、PVOH,EVOHであることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項9】
ステップc)において、インターカレートされる有機材料が、添加物のある又は添加物のないバイオポリマー類からなる群に由来することを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項10】
前記バイオポリマー類のインターカレーションが極性溶媒類中で行われることを特徴とする請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
前記バイオポリマー類が、多糖類、ポリエステル類、ペプチド類、タンパク質類及び/又は核酸類の群に由来することを特徴とする請求項9〜10記載のプロセス。
【請求項12】
前記ポリエステル類が、生分解性ポリエステル類の群に由来することを特徴とする請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
前記多糖類が、キトサン及び/又はその誘導体類のいずれかの群に由来することを特徴とする請求項11記載のプロセス。
【請求項14】
キトサンの脱アセチル化度が、80%を超えることを特徴とする請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
キトサンの脱アセチル化度が、87%を超えることを特徴とする請求項13記載のプロセス。
【請求項16】
前記タンパク質類が、植物類及び/又は動物類に由来することを特徴とする請求項11記載のプロセス。
【請求項17】
前記ペプチド類が、エラスチンからなる群に由来することを特徴とする請求項11記載のプロセス。
【請求項18】
ステップc)において、インターカレートされる有機材料が、精油及び/又は抗酸化剤、及び/又はエタノール及び/又はエチレン及び/又は薬物及び/又は生体利用可能なカルシウム化合物及び/又はバクテリオシンからなる群からの活性及び/又は生体活性の性質であることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項19】
前記精油がチモール、リナロール、カルバクロール、その混合物からなる群に由来することを特徴とする請求項18記載のプロセス。
【請求項20】
前記バクテリオシンが、ナイシン類、エンテロシン類、ラクチシン類およびリゾチームからなる群に由来することを特徴とする請求項18記載のプロセス。
【請求項21】
前記抗酸化剤が、ポリフェノール類及び/又はローズマリー抽出物及び/又はビタミン類からなる群に由来することを特徴とする請求項18記載のプロセス。
【請求項22】
前記活性及び/又は生体活性の性質の有機材料が、80容量%未満の濃度で添加されることを特徴とする請求項18記載のプロセス。
【請求項23】
前記活性及び/又は生体活性の性質の有機材料が、12容量%未満の濃度で添加されることを特徴とする請求項18記載のプロセス。
【請求項24】
前記活性及び/又は生体活性の性質の有機材料が、8容量%未満の濃度で添加されることを特徴とする請求項18記載のプロセス。
【請求項25】
EVOHまたはEVOH族のいずれかの材料の含量が48%未満であることを特徴とする請求項8記載のプロセス。
【請求項26】
EVOHまたはEVOH族のいずれかの材料の含量が29%未満であることを特徴とする請求項8記載のプロセス。
【請求項27】
ステップd)のプラスチックマトリックスが、生分解性及び/又は生体医薬及び/又は薬剤マトリックス類を含むいずれかのプラスチックマトリックスであることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項28】
前記プラスチックマトリックスが、いずれかのプラスチック製造プロセスを用いて混合することによって処理できることを特徴とする請求項27記載のプロセス。
【請求項29】
ステップc)から生じた生成物が、同一及び/又は異なる材料のプラスチックマトリックスに液体状態で添加され、いずれかのプラスチック加工方法により最終生成物を得ることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項30】
ステップc)から生じる生成物を、沈殿させ、粉砕によって粉末化し、及び/又はいずれかのプラスチック加工方法によって処理し、固体状態でマスターバッチと称される最終生成物を得ることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項31】
ステップc)から生じる生成物を蒸発によって沈殿させることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項32】
ステップc)から生じる生成物を冷却によって沈殿させることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項33】
ステップc)から生じる生成物を沈殿剤添加によって沈殿させることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項34】
前記マスターバッチをステップd)において直接使用し、いずれかのプラスチック加工方法により最終生成物を得ることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項35】
前記マスターバッチを添加物として同一マトリックス及び/又は別のバイオポリマーマトリックスのために従来のプラスチック加工経路で使用することを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項36】
一般的に包装適用および食品および食品成分類の包装において、特に気体、溶媒類および有機産物類に対しておよび混合した有機および無機産物類に対するバリアを必要とする適用において、及び/又は生分解性またはコンポスト可能な性質を必要とする適用のため、及び/又は抗菌性を必要とする活性包装のため、及び/又は抗菌能を必要とするいずれかの適用のため、及び/又は可塑剤類使用の必要がなく及び/又はその少量のみを必要とするバイオポリマー類の用途のため、活性および生物活性包装類のため、および一般的に活性及び/又は生物活性物質の放出制御においておよび特に生体医薬および薬剤分野のために、層状構造を有する有機材料に基づくインターカレートさせたナノコンポジットを、プラスチック強化のために適用することを特徴とする先行請求項のいずれかに記載のプロセス。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−522390(P2009−522390A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547992(P2008−547992)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000685
【国際公開番号】WO2007/074184
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508194700)ナノバイオマターズ, エス.エル. (1)
【Fターム(参考)】