説明

多重エネルギCT撮像データを取得するシステム及び方法

【課題】内部の雑音を低減した多重エネルギ撮像データを得る。
【解決手段】CTシステム(10)が、走査対象(22)を収容する開口(48)を有する回転式ガントリ(12)と、制御器(28)とを含んでおり、制御器(28)は、第一の時間的期間(454)にわたり第一のkVp(452)を印加し、第一の時間的期間(454)とは異なる第二の時間的期間(458)にわたり第二のkVp(456)を印加し、第一の時間的期間(454)の少なくとも一部の間に第一の非対称型ビュー・データ集合(550)を取得し、第二の時間的期間(458)の少なくとも一部の間に第二の非対称型ビュー・データ集合(554)を取得して、取得された第一及び第二の非対称型ビュー・データ集合(550、554)を用いて画像を形成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の各実施形態は一般的には、診断撮像に関し、さらに具体的には、多重エネルギCT撮像応用での雑音を改善する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムでは、X線源が患者又は手荷物のような被検体又は物体へ向けてファン(扇形)形状又はコーン(円錐形)形状のビームを放出する。以下では、「被検体」及び「対象」「物体」等の用語は、撮像されることが可能な任意の物体を含むものとする。ビームは被検体によって減弱された後に放射線検出器のアレイに入射する。検出器アレイにおいて受光される減弱後のビーム放射線の強度は典型的には、被検体によるX線ビームの減弱量に依存する。検出器アレイ内の各々の検出器素子が、各々の検出器素子によって受光される減弱後のビームを示す別個の電気信号を発生する。電気信号はデータ処理システムへ伝送されて解析され、ここから最終的に画像を形成する。
【0003】
一般的には、X線源及び検出器アレイは、撮像平面内で被検体を中心としてガントリの周りで回転する。X線源は典型的には、焦点においてX線ビームを放出するX線管を含んでいる。X線検出器は典型的には、検出器において受光されるX線ビームをコリメートするコリメータと、コリメータに隣接して設けられてX線を光エネルギへ変換するシンチレータと、隣接するシンチレータから光エネルギを受け取ってここから電気信号を発生するフォトダイオードとを含んでいる。典型的には、シンチレータ・アレイの各々のシンチレータがX線を光エネルギへ変換する。各々のシンチレータは、隣接するフォトダイオードに光エネルギを放出する。各々のフォトダイオードが光エネルギを検出して、対応する電気信号を発生する。次いで、フォトダイオードの出力はデータ処理システムへ伝送されて画像再構成を施される。
【0004】
CTイメージング・システムは、物質分解、実効Z、又は単色画像推定のためのデータを取得するために、エネルギ感知(ES)型、多重エネルギ(ME)型、及び/又は二重エネルギ(DE)型のCTイメージング・システムを含む場合があり、これらのシステムは、ESCTイメージング・システム、MECTイメージング・システム、及び/又はDECTイメージング・システムとも呼ばれる。ESCT/MECT/DECTはエネルギ識別を提供する。例えば、対象散乱が存在しない状態で、システムは、スペクトルからの二つの相対的なフォトン・エネルギ領域からの信号すなわち入射X線スペクトルの低エネルギ部分及び高エネルギ部分からの信号に基づいて、異なるエネルギにおける物質減弱を導く。医用CTに関連する所与のエネルギ領域では、二つの物理的過程すなわち(1)コンプトン散乱及び(2)光電効果がX線減弱を支配する。これら二つの過程はフォトン・エネルギに対する感受性を有するため、原子状元素の各々が特有のエネルギ感受性の減弱特徴を有する。従って、二つのエネルギ領域からの検出信号は、被撮像物質のエネルギ依存性を分解するのに十分な情報を提供する。さらに、二つのエネルギ領域からの検出信号は、コンプトン散乱及び光電効果によって物質減弱係数を決定するのに十分な情報を提供する。代替的には、物質減弱は、2種の仮想的物質で構成される物体の相対的な組成として表わされてもよいし、被撮像物体の密度及び実効原子番号として表わされてもよい。当技術分野では理解されているように、数学的基底変換を用いると、エネルギ感受性減弱は、2種の基底物質、密度又は実効Z数によって表わされることもできるし、異なるkeVを有する二つの単色表現として表わされることもできる。
【0005】
かかるシステムは、シンチレータの代わりに直接変換型検出器物質を用いていてもよい。一例としてESCTイメージング・システム、MECTイメージング・システム、及び/又はDECTイメージング・システムの一つが、異なるX線スペクトルに応答するように構成される。検出器に到達する各々のX線フォトンが当該フォトンのフォトン・エネルギを示すようなエネルギ感知型検出器を用いることができる。物質分解のための投影データを取得する一つの手法は、電子的に画素化された構造を有し又はアノードを取り付けられたCZT又は他の直接変換物質のようなエネルギ感知型検出器を用いることを含んでいる。しかしながら、かかるシステムは典型的には、各々の受光されたX線フォトンのエネルギ内容を分離して識別するために付加的な経費及び動作の複雑性を含む。
【0006】
代替的には、従来のシンチレータ方式の第三世代CTシステムを用いてエネルギ感知型測定を提供することができる。かかるシステムは、放出されるX線ビームを構成する入射フォトンのエネルギのピーク及びスペクトルを変化させるようなX線管の異なるピーク・キロボルト数(kVp)動作レベルにおいて逐次的に投影を取得することができる。二つの別個のエネルギ・スペクトルによる走査の主な目的は、異なる多色エネルギ状態にある二つの走査を利用することにより、画像の内部の情報(コントラスト分離及び物質特異性等)を強調する診断用CT画像を得ることである。
【0007】
エネルギ感知走査を達成するために、例えば80kVp及び140kVpにおいて2回の走査を取得することを含む一つの手法が提案されている。これら2回の走査は、例として(1)走査が数百ミリ秒乃至数秒で離隔し得る被検体の周りでのガントリの2回の回転を必要とし、連続して(back-to-back)時間的に逐次的に取得する、(2)被検体の周りでの1回の回転を必要とし、回転角度の関数としてインタリーブされた状態で取得する、又は(3)管/検出器を約90°離隔して装着した2管/2検出器システムを用いる等によって取得され得る。
【0008】
高周波低キャパシタンス発生器が、交互のビューに対して高周波電磁エネルギ投射源のkVp電位を切り換えてデータ集合をインタリーブすることを可能にした。結果として、2種のエネルギ感知走査のデータを、数秒で離隔して行なわれる別個の走査にも2管/2検出器システムにもよらずに、時間的にインタリーブされた態様で得ることができる。コントラストを改善し、またビーム・ハードニング・アーティファクトを低減する又は解消するために、高低各kVpの走査の間のエネルギ分離を増大させることが望ましい。高kVp走査ではエネルギを高めることによりエネルギ分離を増大させることができる。しかしながら、高kVp走査は、高電圧でのシステム安定性のため制限される場合がある。
【0009】
代替的には、エネルギ分離は、低kVp走査でのエネルギを低下させることにより増大させることもできる。しかしながら、低kVp投影ではシステム雑音が受信信号を埋没させる程のX線減弱が起こる場合があり、またX線減弱は典型的には、撮像対象の寸法が大きいほど大きくなる。従来の単一kVp撮像に見受けられ得るように、例えば120kVpまででの撮像は対象によっては、検出信号が極く弱くなって電子システム雑音及び散乱X線雑音のような他の干渉信号によって埋没する場合があるので、投影データの汚染を招き得る。これにより、信号対雑音比(SNR)の低下が生じ得る。このように、SNR低下が電子雑音によって起こる場合があり、電子雑音は、一例として低kVp走査と高kVp走査の間のエネルギ分離を増大させることにより一定の範囲まで軽減され得る。
【0010】
しかしながら、当該限度を下回ると低kVpデータを得ることが有利でなくなり得るような限度が存在する。当該閾値を下回ると信号が損なわれ得るような低信号閾値を決定することができる。低信号閾値は、例えばイメージング・システムに関連する幾何学的要因及び他の撮像パラメータに基づき得る。典型的には、低信号閾値を決定して、低kVpエネルギ・レベルを確立するのに用いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、高低各kVpの走査の間のエネルギ分離を増大させることにより、SNR及び他の撮像特性を改善することができる。しかしながら、高kVpエネルギをさらに高めて印加すると共に低kVpエネルギをさらに低くして印加するように発生器を誘導することによりエネルギ分離を増大させることはできるが、高kVpでの高電圧安定性の問題並びに低kVp端での電子雑音及び他の雑音のため、全体的な利益は限定され得る。このように、多重エネルギ撮像応用での雑音を減少させる必要性が存在する。
【0012】
従って、内部の雑音を低減した多重エネルギ撮像データを得るシステム及び方法を提供することができると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の各実施形態は、内部の雑音を低減した撮像データを得る方法及び装置に関するものである。
【0014】
本発明の一観点によれば、CTシステムが、走査対象を収容する開口を有する回転式ガントリと、制御器とを含んでおり、制御器は、第一の時間的期間にわたり第一のkVpを印加し、第一の時間的期間とは異なる第二の時間的期間にわたり第二のkVpを印加し、第一の時間的期間の少なくとも一部の間に第一の非対称ビュー・データ集合を取得し、第二の時間的期間の少なくとも一部の間に第二の非対称ビュー・データ集合を取得して、取得された第一及び第二の非対称ビュー・データ集合を用いて画像を形成するように構成されている。
【0015】
本発明のもう一つの観点によれば、撮像の方法が、発生器の特性に基づいて立ち上がり時間スキュー期間を選択するステップと、発生器の特性に基づいて立ち上がり時間スキュー期間とは異なる立ち下がりスキュー期間を選択するステップと、第一の時間枠の間に立ち下がりスキュー期間に基づいて低kVpデータ集合の取得にトリガを与えるステップと、第二の時間枠の間に立ち上がりスキュー期間に基づいて高kVpデータ集合の取得にトリガを与えるステップであって、第一の時間枠は第二の時間枠の持続時間よりも長い持続時間である、トリガを与えるステップと、少なくとも取得された低kVpデータ集合及び取得された高kVpデータ集合を用いて画像を形成するステップとを含んでいる。
【0016】
本発明のさらにもう一つの観点によれば、コンピュータ可読の記憶媒体が、当該記憶媒体に記憶され一組の命令を表わすコンピュータ・プログラムを有しており、この一組の命令はコンピュータによって実行されると、第一のエネルギ・レベルにおいて取得される撮像データと第二のエネルギ・レベルにおいて取得される撮像データとの間のエネルギ分離を、発生器の立ち上がり時間特性及び立ち下がり時間特性に基づいて最適化し、第一のエネルギ・レベルが発生器によって撮像用線源に印加されている第一の時間的期間の少なくとも一部にわたり撮像データの第一のビューを取得し、第二のエネルギ・レベルが発生器によって撮像用線源に印加されている第二の時間的期間の少なくとも一部にわたり撮像データの第二のビューを取得し、取得された撮像データの第一のビュー及び取得された撮像データの第二のビューを用いて画像を形成することをコンピュータに行なわせる。
【0017】
これらの利点及び特徴、並びに他の利点及び特徴は、添付図面と共に掲げられる以下の本発明の好適実施形態の詳細な説明からさらに容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】CTイメージング・システムの見取り図である。
【図2】図1に示すシステムのブロック概略図である。
【図3】CTシステム検出器アレイの一実施形態の遠近図である。
【図4】検出器の一実施形態の遠近図である。
【図5】本発明の一実施形態による低kVpデータを調節する流れ図である。
【図6】本発明の一実施形態による低kVpデータを調節する流れ図である。
【図7】本発明の一実施形態による局所領域投影スケーリングを決定する流れ図である。
【図8】本発明の一実施形態による低kVp投影データ及び高kVp投影データを取得する図である。
【図9】本発明の一実施形態による非侵襲型小包検査システムと共に用いられるCTシステムの見取り図である。
【図10】非対称型標本化区間及び対応する対称型標本化区間の図である。
【図11】非対称型標本化区間及び対応する対称型標本化区間の図である。
【図12】関連するそれぞれの遅延期間又はスキュー期間を有する高低各kVpの積分期間のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
診断法装置は、X線システム、磁気共鳴(MR)システム、超音波システム、計算機式断層写真法(CT)システム、陽電子放出断層写真法(PET)システム、超音波、核医学、及び他の形式のイメージング・システムを含んでいる。X線源の応用は、撮像応用、医学応用、警備応用、及び工業用検査応用を含んでいる。但し、当業者には、具現化形態がシングル・スライス型構成又は他のマルチ・スライス型構成での利用に適用可能であることが認められよう。また、具現化形態は、X線の検出及び変換に利用可能である。しかしながら、当業者はさらに、具現化形態が他の高周波電磁エネルギの検出及び変換にも利用可能であることを認められよう。具現化形態は、「第三世代」CTスキャナ及び/又は他のCTシステムと共に利用可能である。
【0020】
本発明の動作環境を64スライス型計算機式断層写真法(CT)システムに関して説明する。しかしながら、当業者には、本発明が他のマルチ・スライス型構成での利用、及び動作時に焦点スポットをシフトさせるすなわち「揺動(wobbling)」させる能力を有するシステムでの利用にも同等に適用可能であることを認められよう。また、本発明をX線の検出及び変換に関して説明する。しかしながら、当業者はさらに、本発明が他の高周波電磁エネルギの検出及び変換にも同等に適用可能であることを認められよう。本発明を「第三世代」CTスキャナに関して説明するが、本発明は他のCTシステムでも同等に適用可能である。
【0021】
二重エネルギCTシステム及び方法が開示される。本発明の各実施形態は、医用CTでの解剖的細部及び組織特徴評価情報の取得、並びに手荷物の内部の構成要素の取得の両方を支援する。エネルギ識別情報又はデータを用いて、ビーム・ハードニング等の影響を低減することができる。このシステムは、組織識別データの取得を支援し、従って疾患又は他の病理を示す診断情報を提供する。また、この検出器を用いて、ヨード及びカルシウム(並びに他の原子番号の大きい物質)のコントラストを強調する最適エネルギ加重の利用によって、造影剤及び他の特殊な物質のように被検体内に注入され得る物質を検出し、測定して、特徴評価することができる。造影剤は、例えばさらに良好な視覚化のために血流に注入されるヨードを含み得る。手荷物走査では、エネルギ感知型CTの原理から生成される実効原子番号が、ビーム・ハードニングのような画像アーティファクトの低減を可能にすると共に、偽警報の減少のための付加的な識別情報を提供する。
【0022】
図1及び図2には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム10が、「第三世代」CTスキャナに典型的なガントリ12を含むものとして示されている。ガントリ12はX線源14を有し、X線源14は、ガントリ12の反対側に位置するコリメータを含む検出器アセンブリ18へ向けてX線ビーム16を投射する。本発明の各実施形態では、X線源14は静止ターゲット又は回転ターゲットの何れかを含んでいる。検出器アセンブリ18は、複数の検出器20及びデータ取得システム(DAS)32によって形成されている。複数の検出器20は、患者22を透過する投射X線を感知し、DAS32は後続の処理のためにデータをディジタル信号へ変換する。各々の検出器20が、入射X線ビームの強度を表わし従って患者22を透過した減弱後のビームを表わすアナログ電気信号を発生する。X線投影データを取得するための1回の走査の間に、ガントリ12及びガントリ12に装着されている構成部品は回転中心24の周りを回転する。
【0023】
ガントリ12の回転及びX線源14の動作は、CTシステム10の制御機構26によって制御される。制御機構26は、X線源14に電力及びタイミング信号を供給するX線制御器28及び発生器29と、ガントリ12の回転速度及び位置を制御するガントリ・モータ制御器30とを含んでいる。画像再構成器34が、標本化されてディジタル化されたX線データをDAS32から受け取って高速再構成を実行する。再構成された画像、及び本書に記載される各実施形態はコンピュータ36への入力として印加され、コンピュータ36は、コンピュータRAM及びディスク等を含み得る大容量記憶装置38に画像を記憶させる。
【0024】
コンピュータ36はまた、キーボード、マウス、音声作動式コントローラ、又は他の任意の適当な入力装置のような何らかの形態の操作者インタフェイスを有するコンソール40を介して、操作者から命令及び走査用パラメータを受け取る。付設されている表示器42によって、操作者は、再構成された画像及びコンピュータ36からのその他のデータを観測することができる。操作者が供給した命令及びパラメータはコンピュータ36によって用いられて、DAS32、X線制御器28及びガントリ・モータ制御器30に制御信号及び情報を供給する。加えて、コンピュータ36は、電動テーブル46を制御するテーブル・モータ制御器44を動作させて、患者22及びガントリ12を配置する。具体的には、テーブル46は患者22を図1のガントリ開口48を通して全体として又は部分的に移動させる。
【0025】
システム10は単極モード又は双極モードの何れかで動作することができる。単極動作では、アノードが接地されてカソードに負電位が印加されるか、又はカソードが接地されてアノードに正電位が印加される。反対に、双極動作では、印加される電位がアノードとカソードとの間で分割される。単極又は双極の何れの場合でも、電位がアノードとカソードとの間に印加され、カソードから放出される電子はこの電位を介してアノードへ向けて加速される。例えば、カソードとアノードの間に−140kVの電圧差が保たれ、管が双極設計であるときに、カソードは例えば−70kVに保たれ、アノードは+70kVに保たれ得る。対照的に、カソードとアノードとの間に同様に−140kVの離隔を有する単極設計では、カソードは呼応してこの相対的に大きい−140kVの電位に保たれ、アノードは接地されるため約0kVに保たれる。従って、アノードは管の内部のカソードと正味140kVの差を有して動作する。
【0026】
図3に示すように、検出器アセンブリ18は、コリメート用ブレード又はプレート19を間に配置したレール17を含んでいる。プレート19は、X線ビームが例えば検出器アセンブリ18に配置された図4の検出器20に入射する前にX線16をコリメートするように配置されている。一実施形態では、検出器アセンブリ18は、後に図示するような57個の検出器20を含んでおり、各々の検出器20が64×16のアレイ寸法のピクセル素子50を有している。結果として、検出器アセンブリ18は64列の横列及び912列の縦列(16×57個の検出器)を有し、ガントリ12の各回の回転によって64枚の同時スライスのデータを収集することを可能にしている。
【0027】
図4を参照すると、検出器20はDAS32を含んでおり、各々の検出器20が、パック51として構成されている多数の検出器素子50を含んでいる。検出器20は、検出器素子50に対してパック51の内部に配置されたピン52を含んでいる。パック51は、複数のダイオード59を有する背面照射型ダイオード・アレイ53の上に配置されている。次に、背面照射型ダイオード・アレイ53は多層基材54の上に配置されている。スペーサ55が多層基材54の上に配置されている。検出器素子50は背面照射型ダイオード・アレイ53に光学的に結合され、次に背面照射型ダイオード・アレイ53は多層基材54に電気的に結合されている。軟質(フレックス)回路56が、多層基材54の面57及びDAS32に取り付けられている。検出器20は、ピン52の利用によって検出器アセンブリ18の内部に配置されている。
【0028】
一実施形態の動作時には、検出器素子50の内部に入射するX線がフォトンを発生し、フォトンがパック51を横断することによりアナログ信号を発生して、この信号が背面照射型ダイオード・アレイ53の内部のダイオードにおいて検出される。発生されるアナログ信号は、多層基材54を通り、フレックス回路56を通ってDAS32まで運ばれて、ここでアナログ信号がディジタル信号へ変換される。
【0029】
以下の議論は、単一の検出器及び単一の制御器を有する単一のエネルギ線源からの高低各kVpの投影データ集合を含む本発明の一実施形態を参照する。但し、本発明は、限定しないが2以上の線源及び2以上の検出器を有することを含む広範囲のシステムに同等に適用可能であることを理解されたい。かかるシステムでは、線源及び検出器を制御するために単一の制御器を用いてもよいし、多数の制御器を用いてもよい。
【0030】
さらに、以下の議論は、後にあらためて記載するように、低kVp投影データ及び高kVp投影データを取得し、高kVp投影データを用いて低kVp投影データを補正することを参照している。しかしながら、本発明は一般的に、一つのkVpにおいて得られたデータに対するもう一つのkVpにおいて得られたデータを用いることによる補正にも適用可能であることを理解されたい。例えば、以下の議論では、高kVpデータよりも低kVpデータの方が高レベルの雑音(又は劣った統計値)を含み、これにより画像アーティファクトを招き得ると想定し、従って高kVpデータを用いて低kVpデータを補正している。しかしながら、取得される高kVp投影データに比較して低kVp投影データの方で低い雑音又は良好な統計値が得られるような例では、本発明はかかる例にも同様に適用可能であり、この例では低kVp投影データからの高周波成分すなわち統計値を同等に用いて高kVp投影データの高雑音及び/又は劣った統計値を補正することができる。
【0031】
図5には、低kVpCT撮像データを取得して軽減する手法200が示されている。手法200は、本発明の各実施形態によれば、ステップ202において、例えば図2の発生器29を用いて線源14に電圧を印加して高低各kVpの投影データ又はデータ集合を取得するステップと、ステップ204において低kVp信号軽減又は補正ステップを適用すべきか否かを判定するステップとを含んでいる。ステップ204での判定は、低信号閾値(LST)、システム特性、及び画像取得設定等に基づいて客観的に行なわれ得る。代替的には、ステップ204での判定は、例えば白縞又は他のアーティファクトが最終画像に観察されるときに利用者の観察に基づいて主観的に行なわれてもよい。
【0032】
軽減又は補正ステップが適用されない場合(ブロック206)には、ステップ202において取得された高低各kVpの投影データを用いて、ステップ208において最終画像を形成する。しかしながら、軽減又は補正を適用すべき場合(ブロック210)には、ステップ212において高kVp投影データからの高周波データを用いて低kVp投影データを軽減する。このことについては後に図6においてあらためて説明する。ステップ214において、公知の二重エネルギ画像再構成方法に従って、取得された高kVp投影データ及び調節済みの低kVp投影データを用いて二重エネルギ画像を形成する。
【0033】
一旦、図5のステップ210において低kVpデータを軽減するものと判定されたら、本発明の各実施形態に従って、高周波分解パターンが高kVp投影から抽出されて、取得される低kVp投影に加算される。一実施形態によれば、図6に示すように、隣接する高kVp投影データを用いることにより、低kVp信号分解が強化され又は軽減される。この実施形態では、低kVp投影の各チャネルがLSTに対して検査され、1又は複数のチャネルがLSTを下回っている場合には、隣接する高kVp投影を結合してここから高周波成分を抽出する。一実施形態では、LSTは、低信号劣化が開始する点として定義され、基底ファントムに対して動作条件に基づいて経験的に決定され得る。例えば、LSTは、回転当たりのビュー数、焦点スポット揺動、ガントリ回転周期、幾何学的効率、構成要素の幾何学的構成(すなわち線源及び検出器等)、検出器光出力、DAS効率、DAS電子雑音、kVp、又はmA等のような1又は複数のパラメータに基づいて決定され得る。
【0034】
従って、図6は、ステップ302から開始する低kVpデータ軽減のためのループ300を表わし、ステップ302では低kVp投影が可能な軽減について識別される。ステップ304では、識別された低kVp投影の各チャネルがLSTに対して検査される。LSTを下回っていなければ(ステップ306)、ステップ308においてさらに他の低kVpデータ集合を検査するか否かについて問い合わせを行なう。検査する場合(ステップ310)には、ステップ312において次の低kVp投影データ集合を考察する。しかしながら、全ての低kVp投影が検査されており考察のための投影が残っていない場合(ステップ314)には、図5に関してステップ214において議論したように、ステップ316において高kVpデータ及び軽減後の低kVpデータを用いて画像を再構成する。
【0035】
図6にさらに詳細に示すように、低kVpデータを軽減することができる。従って、上述のように低kVp投影データをLSTに対して検査するときに、低kVpデータ集合の1又は複数のチャネルがLSTを下回っている場合(ステップ318)には、本発明の一実施形態によれば、高kVp投影データH(n)から抽出された高周波データを用いて低kVp投影データ集合が補正される。
【0036】
このように、この実施形態によれば、軽減したい低kVp投影データL(n)に隣接するH(n−1)及びH(n+1)がステップ320において決定される。ステップ322では、平均又は加重平均高kVp投影H(n)が、
(n)=(H(n−1)+H(n+1))/2 (式1)
を用いて決定される。
【0037】
ステップ324では、スケーリングされた高kVp投影H(n)が、平均又は加重平均高kVp投影H(n)を用いて決定される。
【0038】
(n)=(1−H(n))*Sf(n)+1 (式2)
本発明は、平均が単純平均であるか加重平均によるものかを問わずデータの平均化に適用される。平均化は典型的には、データの単純平均を含んでいるが、加重平均は、当技術分野では理解されているように不等の加重によってデータを平均することを含んでいる。換言すると、当技術分野では理解されているように、幾つかのデータが他のデータよりも大きく加重され得る。しかしながら、何れにせよ加重平均及び非加重平均の両方が本発明の各実施形態の範囲内に含まれ、任意の形式の平均を参照するときには包含されている。
【0039】
スケーリング・ファクタSf(n)は、本発明の各実施形態によれば多様な方法によって決定されることができ、このことについては後にあらためて説明する。ステップ326において、スケーリング後の高kVp投影H(n)から高周波成分をフィルタ除去することにより、フィルタ処理された高kVp投影Hsm(n)が形成される。ステップ328において、スケーリング後の高kVp投影H(n)からフィルタ処理後の高kVp投影Hsm(n)を減算することにより、スケーリング後の高kVp投影Hs(n)から高周波数が抽出されて高周波投影Hδ(n)を形成する。
【0040】
Hδ(n)=H(n)−Hsm(n) (式3)
ステップ330において、低kVp投影データL(n)から高周波成分をフィルタ除去することにより、フィルタ処理された又は基底の低kVp投影データL(n)が形成される。一旦フィルタ処理されたら、ステップ332において、高周波データHδ(n)がフィルタ処理後の低kVp投影L(n)に加算されて、再構成用の低kVp投影L(n)を形成する。
【0041】
(n)=L(n)+Hδ(n) (式4)
スケーリング・ファクタSf(n)は、多様な方法によって決定され得る。一実施形態によれば、平均又は加重平均スケーリング・ファクタSf(n)が、低kVp投影L(n)から決定される平均低kVp投影L(n)と、平均又は加重平均高kVp投影H(n)(上述のようにして決定されている)との両方を用いることにより決定される。
Sf(n)=Σ(1−L(n))/Σ(1−H(n)) (式5)
もう一つの実施形態によれば、スケーリング・ファクタSf(n)は、局所的なビン(bin)又は小領域にわたって決定される。この実施形態によれば、スケーリング・ファクタSf(n)を決定する方法が、チャネル・ビン(例えば幅75)の各領域について局所的なスケール・ファクタを算出するステップと、チャネル依存型のスケール・ファクタ・ベクトルを作成して、このスケール・ファクタ・ベクトルを低域通過フィルタ処理する(例えば幅150点のハニング・カーネルによって)ステップとを含んでいる。この例は、71チャネルの単一次元低域通過信号補正フィルタに基づくものである。従って、図7を参照すると、ステップ400において局所領域スケーリング・ファクタSfがチャネル・ビンの各領域について決定され、ステップ402において定数値を有するチャネル依存型スケール・ファクタが、各々の小領域ビンの範囲内でSf(j,n)に従って作成され、ステップ404においてこのスケール・ファクタが例えば50点ハニング・カーネルを用いて低域通過フィルタ処理される。
【0042】
低kVpCT撮像データでの低信号の影響をさらに最小化する又は軽減するために、高低各kVpの投影データは、従来又は公知の低信号軽減方式を用いるにせよ上の図5に示したもののような方式を用いるにせよ取得されるデータを軽減する必要性を小さくし得るような態様で取得され得る。一つの方法によれば、高低各kVpの投影データは、低kVp積分期間が高kVp積分期間よりも長くなるような非対称型標本化区間において取得され得る。従って、図8を参照して述べると、図1及び図2の発生器29のような発生器が、低及び高kVp450を出力するように構成され得る。低kVp452は第一の期間454にわたり出力され、高kVp456は第二の期間458にわたり出力される。図示のように、第一の期間454は第二の時間的期間458よりも長い時間的期間にわたり生ずる。実際の又は達成されるkVp出力は、システムのキャパシタンス及び他の既知の効果による結果的な立ち下がり時間468及び立ち上がり時間470を含んでいる。
【0043】
呼応して、低及び高kVp積分は、低kVp積分期間474及び高kVp積分期間476を含んでおり、これらの期間は低kVpから高kVpへの切り換えと共にトリガを受け、反対の場合も同様である。このようなものとして、低kVp信号の積分は、高kVp信号の積分の時間的期間よりも長い時間的期間にわたり生ずる。このことから、標本当たりさらに多くのX線フォトンを捕捉して積分することが可能になり、これにより、所望の検出信号が例えば電子雑音を上回って増大する。一実施形態では、固定されたトリガ間隔を非対称に結合することにより改善を実現することができる。一例では、データは例えば低kVpにある三つの固定された標本区間にわたり相次いで対称型で取得され、次いで高kVpにある二つの固定された標本区間にわたり相次いで取得され得る。しかしながら、ビューの加算又は対称型方式での標本化は、ノイズ・フロアを実効的に高める。このようなものとして、本発明の各実施形態によれば、低kVp積分期間及び高kVp積分期間474、476は、後に議論するように非対称型で取得されるデータを含んでいる。各実施形態を結合して相応に代償関係を評価することにより、信号及び経費の最適化が実現され得ることを理解されたい。一例として、全低kVp積分が高kVp積分を超える時間的期間にわたるように設定され得るが、このことは後述するように対称型で取得されるデータを含み得る。このようなものとして、低kVpでの延長された積分の雑音に関する利点は、かかるデータを対称型で得ることにより一定範囲まで相殺され得る。
【0044】
このように、非対称型の時間区間を有するデータが取得され、又は多数/逐次型低kVpショット及び続く多数/逐次型高kVpショットによってデータが取得されるときに、本発明の各実施形態は、当技術分野では理解されているように、対応するガントリの位置を考慮するように取得投影データに加重することを含んでいる。例えば、上の式1について記載したようにステップ320において隣接する高kVp投影データを決定し、続いて取得データを平均するときに、式1は、取得データの非対称性を考慮するように隣接する高kVp投影H(n−1)及びH(n+1)に加重することにより適当に変形される。さらに、当業者は、ステップ322において多数の隣接する高kVp投影を用いて平均又は加重平均高kVp投影H(n)を求め得ることを認められよう。
【0045】
独立に、又は本書に開示される方法及び手法の任意のものと組み合わせて用いられ得るさらにもう一つの方法は、投影数を減少させることにより低kVp積分区間を増大させるものである。このことは、方位角方向の分解能損及びビュー・エイリアシングを考慮して最適化しつつ実行され得る。
【0046】
さらに、投影が損なわれる可能性が高いときには、スカウト・データから決定することが可能である。一実施形態では、直交する走査投影データが横方向スカウト走査及び前後方向(AP)スカウト走査の両方について取得される。回転当たり網羅される各々のZ幅についてボウタイ型減弱を考慮した後に、ビュー平均を求めて中心域及びエッジ域に分離することができる。投影測定(PM)(水に対して正規化して表わした減弱)をスキャナの動作条件の関数である低信号閾値(LST)に対して比較する。本発明の各実施形態では、患者減弱及びLSTは、対数処理前の信号強度によって直接的に表わされてもよいし、対数処理後のPM及びLSTを用いることにより表わされてもよい。従って、横方向及びAP方向の両スカウト走査を用いて、LST−PMをそれぞれの横方向ビュー及びAP方向ビューについて決定することができ、LST−PMが設定限度を下回る場合には、対応する区画又はビューにおいて減少させたビュー率を用いることができる。
【0047】
上の議論では、「低kVp」データとは、二重エネルギ取得時に相対的に劣った統計値を有する投影データ集合を記述する一般的な用語である。例えば、二重管−検出器構成(一例として約90°の角度でずらして配置された二組の管−検出器の対)では、付加的なフィルタ処理を高kVpの管−検出器に適用し(例えば140kVp設定では付加的なSnフィルタ)、他方の管−検出器対の低kVpを高める(例えば80kVpから100kVpまで増大させる)ことができる。しかしながら、前述のように、低いkVp設定(100kVp)によるデータ集合の方が、高いkVp設定(140kVp)よりも雑音が少ない可能性がある。この場合には、上で概略を述べた補正アプローチを、低いkVp設定(100kVp)の代わりに高いkVp設定(140kVp)に適用する。
【0048】
また、上で概略を述べた工程(「低kVp」データの低域通過フィルタ処理及び高域通過フィルタ処理された「高kVp」データの加算)は、「低kVp」の不十分さを補正するための「高kVp」情報の有効活用を示す説明目的のためのものであることを理解されたい。しかしながら、本発明によれば、かかる不十分さを補正するために他のアプローチを用いることもできる。例えば、かなりの雑音を呈する「低kVp」チャネルについて、対応する「高kVp」チャネルを「低kVp」チャネルにフィッティングさせて、不正の「低kVp」チャネルの推定を得ることができる。さらに明確に述べると、「低kVp」チャネルのチャネルkが閾値試験に合格しない場合に、k−nからk+nまでの近隣のチャネルの「高kVp」データを用いて、k−nからk+nまでの「低kVp」データの多項式フィッティングを実行して、フィッティング後の「高kVp」チャネルkによって「低kVp」チャネルkの推定を求めることができる。
【0049】
また、フィルタ処理パラメータ(例えば図6に記載されている高域通過及び低域通過の両方)を測定された投影データに依存して動的に変化させてもよいことを理解されたい。
【0050】
図9を参照すると、小包/手荷物検査システム510が、小包又は手荷物を通過させ得る開口514を内部に有する回転式ガントリ512を含んでいる。回転式ガントリ512は、高周波電磁エネルギ源516と、図4に示すものと同様のシンチレータ・セルで構成されたシンチレータ・アレイを有する検出器アセンブリ518とを収容している。また、コンベヤ・システム520が設けられており、コンベヤ・システム520は、構造524によって支持されており走査のために小包又は手荷物526を自動的に且つ連続的に開口514に通すコンベヤ・ベルト522を含んでいる。物体526をコンベヤ・ベルト522によって開口514に送り込み、次いで撮像データを取得し、コンベヤ・ベルト522によって開口514から小包526を除去することを、制御された連続的な態様で行なう。結果として、郵便物検査官、手荷物積み降ろし員及び他の警備人員が、爆発物、刃物、銃及び密輸品等について小包526の内容を非侵襲的に検査することができる。
【0051】
前述のように、多重エネルギ・データを対称型又は非対称型の標本化区間にわたって取得することができる。一般的には、ビュー・データを対称型で取得し結合して、所与のkVpにおける撮像データを生成することができる。例えば、例として述べると積分期間を三つの対称型窓に分割してもよいし(図10)、二つの対称型窓に分割してもよい(図11)。しかしながら、かかる対称的に得られたデータのビューを結合するときに、電子雑音(En)は結合されているビュー・データ集合の数の平方根に比例して増大する。
Noise∝(#views*En)1/2 (式7)
換言すると、一例では、積分期間が三つのビュー・データ集合の結合を含んでいる場合には、この積分期間での電子雑音は√3倍すなわち約1.7に等しい倍数で増大する。同様に、もう一つの例では、任意の積分期間が二つのビュー・データ集合の結合を含んでいる場合には、この積分期間での電子雑音は√2倍すなわち約1.4倍で増大する。これら対称型区間について図10及び図11に関して図示して説明する。
【0052】
図10及び図11を参照して述べると、対称及び非対称の両方を含む標本化区間が示されている。図10に示す第一の例では、積分期間550は画像データ積分のための期間であり、例えば図8の低kVp積分期間474又は高kVp積分期間476に対応し得る。上述のように、電子雑音En及び三つの対称型ビュー・データ集合を有する積分期間では、全電子雑音Nは電子雑音の約1.7倍、又は約1.7×Enである。反対に、さらに図10を参照して述べると、本発明の各実施形態によれば画像データを非対称に取得してもよい。すなわち、積分期間550にわたって単一のビュー・データ集合を取得し又は標本化することができる。代替的には、データを対称型構成で標本化し又は積分してもよい。対称型構成では、ビュー・データは三つの別個の対称型ビュー窓552にわたって取得され得る。各々のビュー・データ集合が、対応するレベルの電子雑音Enを含んでいる。
【0053】
図11の第二の例では、積分期間554が、図8に示すような低kVp積分期間474又は高kVp積分期間476に対応し得る。上述のように、電子雑音En及び二つの対称型ビュー・データ集合を有する積分期間では、全電子雑音Nは電子雑音の約1.4倍、従って約1.4×Enに等しい。反対に、さらに図11を参照して述べると、本発明によれば画像データを非対称に取得してもよい。すなわち、単一のビュー・データ集合を低kVp積分期間にわたって取得し又は標本化することができ、この期間は例えば図8の低kVp積分期間474又は高kVp積分期間476に対応し得る。積分期間554は対称型構成又は非対称型構成として積分されてよく、これらの構成の両方について議論の目的のために説明する。対称型構成では、ビュー・データは二つの別個のビュー窓556にわたって取得され得る。各々のビュー・データ集合が、対応するレベルの電子雑音Enを含んでいる。
【0054】
非対称型の取得は各々の積分期間にわたって取得される単一のビュー・データ集合に対応するため、図10及び図11に関して議論されるような対称型の図に記載された電子雑音の増大効果は存在しない。従って、本発明の一実施形態によれば、各々のそれぞれの低kVp期間及び高kVp期間にわたって撮像信号を積分することにより、単一のビュー・データ集合を非対称型で取得することができる。低kVp積分期間では雑音の影響が典型的には相対的に重要となるため(すなわち、SNRは可能性としては、電子雑音の結果として高kVpよりも低kVpにおいて大きく損なわれる)、本発明の各実施形態は、例えば高kVp積分期間にデータを対称型で取得し、低kVp積分期間にデータを非対称型で取得することを含み得る。
【0055】
当技術分野では理解されているように、積分期間が長くなると、CTデータを取得するときに画像分解能に一定範囲まで影響を及ぼし得る。しかしながら、幾つかの撮像応用では、画像分解能は、画像雑音に対して考察するときには二次的な役割を果たし得る。従って、非対称型積分区間は、画像雑音と画像分解能との間で最適化することにより選択され得ることを理解されたい。一例では、例えば、低kVp信号は高kVp信号の3分の1乃至8分の1にわたり得るため、低kVp積分期間は高kVp積分期間の3倍〜8倍に長くすることができる。
【0056】
さらに、図8に関して議論したように、積分区間は典型的には、立ち下がり時間468及び立ち上がり時間470のような立ち下がり時間及び立ち上がり時間にわたる積分を含んでいることを理解されたい。例えば、低kVp積分期間474は立ち下がり時間468を含んでおり、高kVp積分期間476は立ち上がり時間470を含んでいる。しかしながら、立ち下がり時間及び立ち上がり時間での積分は画像雑音に悪影響を及ぼす場合があり、例えば高kVp積分期間に立ち下がり時間及び立ち上がり時間の延長部分の一方又は両方を選択的に積分することが望ましい場合がある。換言すると、電子雑音又は他の雑音の増大は多重エネルギ画像応用の際の立ち下がり時間及び立ち上がり時間に関連する場合があり、またSNRが低kVp期間に比較して高kVp期間での方が高くなる傾向があるので、積分のためのトリガ点に関連する雑音が好ましくは高kVp期間に積分されるようにこれらのトリガ点をスキューする(ずらす)ことが望ましい場合がある。さらに、立ち下がり時間及び立ち上がり時間は典型的には異なる時定数を有し、両者での雑音が異なる場合がある。従って、一実施形態によれば、例えば画像分解能に対して雑音を最も十分に最適化するために、高kVp積分期間及び低kVp積分期間の各トリガ点を独立してトリガすることができる。トリガ点は、印加されるべきkVpのトリガ点とビュー・データを取得するためのトリガ点との間のスキューの量を決定することにより選択され得る。従って、本発明の一実施形態によれば、立ち上がり時間スキューと立ち下がり時間スキューの量を発生器の特性に基づいて選択することができる。
【0057】
ここで図12を参照して述べると、本発明の一実施形態に従って高低各kVpが印加されており、ここから高低各kVpのそれぞれの積分期間がスキューされ得る。この実施形態を説明するために、図12に図示される実施形態を、高低各kVpの印加、立ち上がり時間及び立ち下がり時間、並びに積分期間に関して図8のそれぞれの要素に対応するものとして議論する。図12は高低各kVpの印加の第一の対を示しており、図8に示すような高低各kVpのショットの反復パターンを表わしている。低kVpが第一の期間454に出力され、高kVpが第二の期間458に出力される。一実施形態では、第二の期間458は電圧立ち上がり時間470の開始時に始まり電圧立ち下がり時間468の開始時に終わる。第一の期間454は電圧立ち下がり時間468の開始時に始まり次の電圧立ち上がり時間470の開始時に終わる。高低各kVpの電圧は、それぞれの電圧立ち上がり時間又は立ち下がり時間470、468の後に定常状態に安定する。
【0058】
低kVp信号及び高kVp信号は、それぞれの期間474、476にわたり積分され得る。しかしながら、図8に示すものとは対照的に、図12の低kVp積分期間及び高kVp積分期間474、476は、一例では高kVpに対応する立ち下がり時間及び立ち上がり時間の雑音が高kVp積分信号に含まれるようにするために、立ち上がり時間470及び立ち下がり時間468の開始時からスキューされ又はオフセットされ得る。一実施形態では、低kVp積分期間及び高kVp積分期間474、476のトリガ印加は、それぞれの低kVp及び高kVpが発生器を介して印加されるトリガ点から同じ長さの時間だけオフセットされ得る。しかしながら、本発明のもう一つの実施形態では、低kVp積分期間及び高kVp積分期間474、476は、図示のように立ち上がり時間遅延又はスキュー期間558(スキューR)及び立ち下がり時間遅延又はスキュー期間560(スキューF)を実効的に別個に制御することにより、別個に制御可能とすることができる。一実施形態では、スキューR558はゼロに設定され、従って立ち上がり時間470に関連する雑音は好ましくは高kVp積分データ内に含まれる。当業者は、本発明の各実施形態によればスキューR558及びスキューF560の両方が、全体的な雑音を最小にするような態様で別個に制御され得ることを認められよう。
【0059】
従って、本発明の各実施形態によれば、積分期間の全体的な雑音を最小にするために、データを非対称型で得ることができる。さらに、一実施形態によれば、立ち上がり時間及び立ち下がり時間に関連する雑音が高kVp積分データに優先的に含まれ得るようにするために、立ち上がり時間及び立ち下がり時間のスキューを選択的に且つ個別に制御することができる。当技術分野では理解されているように、取得データでの雑音性能を最適化し、また例として雑音、分解能及びエネルギ分離を含み得る競合する要因を最適化して均衡させるようにスキューを繰り返すことができる。
【0060】
本発明の各実施形態の具現化形態は一例では、1又は複数の電子的構成要素、ハードウェア構成要素、及び/又はコンピュータ・ソフトウェア構成要素のような複数の構成要素を含んでいる。多数のかかる構成要素が本発明の各実施形態の具現化形態において結合され又は分割され得る。本発明の各実施形態の具現化形態の例示的な構成要素は、当業者には認められるように多数のプログラミング言語の任意のもので書かれ又は具現化された一組及び/又は一連のコンピュータ命令を用い及び/又は含んでいる。
【0061】
本発明の各実施形態の具現化形態は一例では、1又は複数のコンピュータ可読の記憶媒体を用いる。本発明の各実施形態の具現化形態のためのコンピュータ可読の信号担持媒体の一例は、画像再構成器34の記録可能なデータ記憶媒体、及び/又はコンピュータ36の大容量記憶装置38を含んでいる。本発明の各実施形態の具現化形態のためのコンピュータ可読の記憶媒体は一例では、磁気式、電気式、光学式、生物式、及び/又は原子式のデータ記憶媒体の1又は複数を含んでいる。例えば、コンピュータ可読の信号担持媒体の具現化形態は、フロッピィ・ディスク、磁気テープ、CD−ROM、DVD−ROM、ハード・ディスク・ドライブ、及び/又は電子メモリを含んでいる。
【0062】
開示された方法及び装置の技術的な寄与は、多重エネルギ撮像線源を用いて1よりも多いエネルギ範囲において撮像データを取得するコンピュータ実装型の装置及び方法を提供することである。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、CTシステムが、走査対象を収容する開口を有する回転式ガントリと、制御器とを含んでおり、制御器は、第一の時間的期間にわたり第一のkVpを印加し、第一の時間的期間とは異なる第二の時間的期間にわたり第二のkVpを印加し、第一の時間的期間の少なくとも一部の間に第一の非対称ビュー・データ集合を取得し、第二の時間的期間の少なくとも一部の間に第二の非対称ビュー・データ集合を取得して、取得された第一及び第二の非対称ビュー・データ集合を用いて画像を形成するように構成されている。
【0064】
本発明のもう一つの実施形態によれば、撮像の方法が、発生器の特性に基づいて立ち上がり時間スキュー期間を選択するステップと、発生器の特性に基づいて立ち上がり時間スキュー期間とは異なる立ち下がりスキュー期間を選択するステップと、第一の時間枠の間に立ち下がりスキュー期間に基づいて低kVpデータ集合の取得にトリガを与えるステップと、第二の時間枠の間に立ち上がりスキュー期間に基づいて高kVpデータ集合の取得にトリガを与えるステップであって、第一の時間枠は第二の時間枠の持続時間よりも長い持続時間である、トリガを与えるステップと、少なくとも取得された低kVpデータ集合及び取得された高kVpデータ集合を用いて画像を形成するステップとを含んでいる。
【0065】
本発明のさらにもう一つの実施形態によれば、コンピュータ可読の記憶媒体が、当該記憶媒体に記憶され一組の命令を表わすコンピュータ・プログラムを有しており、この一組の命令はコンピュータによって実行されると、第一のエネルギ・レベルにおいて取得される撮像データと第二のエネルギ・レベルにおいて取得される撮像データとの間のエネルギ分離を、発生器の立ち上がり時間特性及び立ち下がり時間特性に基づいて最適化し、第一のエネルギ・レベルが発生器によって撮像用線源に印加されている第一の時間的期間の少なくとも一部にわたり撮像データの第一のビューを取得し、第二のエネルギ・レベルが発生器によって撮像用線源に印加されている第二の時間的期間の少なくとも一部にわたり撮像データの第二のビューを取得し、取得された撮像データの第一のビュー及び取得された撮像データの第二のビューを用いて画像を形成することをコンピュータに行なわせる。
【0066】
発明を限定された数の実施形態にのみ関連して詳細に記載したが、本発明はかかる開示された実施形態に限定されないことが容易に理解されよう。寧ろ、本発明は、本書では記載されていないが発明の要旨及び範囲に沿った任意の数の変形、変更、置換又は均等構成を組み入れるように改変することができる。さらに、単一エネルギ手法及び二重エネルギ手法について上で議論しているが、本発明は2よりも多いエネルギによるアプローチを包含している。加えて、発明の様々な実施形態について記載したが、発明の各観点は所載の実施形態の幾つかのみを含んでいてもよいことを理解されたい。従って、本発明は、以上の記載によって制限されるのではなく、特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。
【符号の説明】
【0067】
10 計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム
12 ガントリ
14 X線源
16 X線ビーム
17 レール
18 検出器アセンブリ
19 コリメート用ブレード又はプレート
20 検出器
22 患者
24 回転中心
26 制御機構
28 X線制御器
29 発生器
30 ガントリ・モータ制御器
32 データ取得システム(DAS)
34 画像再構成器
36 コンピュータ
38 大容量記憶装置
40 コンソール
42 表示器
44 テーブル・モータ制御器
46 電動テーブル
48 ガントリ開口
50 ピクセル素子
51 パック
52 ピン
53 背面照射型ダイオード・アレイ
54 多層基材
55 スペーサ
56 軟質回路
57 ダイオードの面
59 複数のダイオード
200 手法
300 ループ
450 低及び高kVp
452 低kVp
454 第一の期間
456 高kVp
458 第二の期間
468 立ち下がり時間
470 立ち上がり時間
474 低kVp積分期間
476 高kVp積分期間
510 小包/手荷物検査システム
512 回転式ガントリ
514 開口
516 高周波電磁エネルギ源
518 検出器アセンブリ
520 コンベヤ・システム
522 コンベヤ・ベルト
524 構造
526 小包又は手荷物
550、554 積分期間
552、556 ビュー窓
558、560 スキュー期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査対象(22)を収容する開口(48)を有する回転式ガントリ(12)と、
制御器(28)と
を備えた計算機式断層写真法(CT)システム(10)であって、前記制御器(28)は、
第一の時間的期間(454)にわたり第一のkVp(452)を印加し、
前記第一の時間的期間(454)とは異なる第二の時間的期間(458)にわたり第二のkVp(456)を印加し、
前記第一の時間的期間(454)の少なくとも一部の間に第一の非対称型ビュー・データ集合(550)を取得し、
前記第二の時間的期間(458)の少なくとも一部の間に第二の非対称型ビュー・データ集合(554)を取得して、
前記取得された第一及び第二の非対称型ビュー・データ集合(550、554)を用いて画像を形成する
ように構成されている、計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項2】
前記制御器(28)は、立ち下がり時間スキュー期間(468)の後に前記第一の非対称型ビュー・データ集合(550)を取得するように構成され、また立ち上がり時間スキュー期間(470)の後に前記第二の非対称型ビュー・データ集合(554)を取得するように構成されている、請求項1に記載の計算機式断層写真法システム(10)。
【請求項3】
前記立ち下がり時間スキュー期間(468)及び前記立ち上がり時間スキュー期間(470)は、相異なる持続時間を含んでいる、請求項2に記載の計算機式断層写真法システム(10)。
【請求項4】
前記第一の非対称型ビュー・データ集合(550)は、立ち下がり時間スキュー期間(468)の経過の後に開始して取得され、該立ち下がり時間スキュー期間(468)は、前記第一のkVp(452)が前記制御器(28)により印加されるときと、前記制御器(28)が前記第一の非対称型ビュー・データ集合(550)にトリガを与えるときとの間の時間量を含んでいる、請求項1に記載の計算機式断層写真法システム(10)。
【請求項5】
前記第二の非対称型ビュー・データ集合(554)は、立ち上がり時間スキュー期間(470)の経過の後に取得され、該立ち上がり時間スキュー期間(470)は、前記第二のkVp(456)が前記制御器(28)により印加されるときと、前記制御器(28)が前記第二の非対称型ビュー・データ集合(554)にトリガを与えるときとの間の時間量を含んでいる、請求項1に記載の計算機式断層写真法システム(10)。
【請求項6】
前記第二のkVp(456)は、前記第一のkVp(452)よりも大きい、請求項1に記載の計算機式断層写真法システム(10)。
【請求項7】
前記第一のkVp(452)は約80kVpであり、前記第二のkVp(456)は約140kVpである、請求項6に記載の計算機式断層写真法システム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−224341(P2011−224341A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−282501(P2010−282501)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】