説明

多重効用缶式蒸留水製造装置

【課題】各蒸発缶の下部室に、各蒸発缶の加熱室で発生させた気水混合液に遠心力を加える気水分離機構を設けて、該気水混合液から純蒸気を効率的に分離することができるようにした多重効用缶式蒸留水製造装置を提供する。
【解決手段】供給水の予熱手段と、予熱した供給水から気水混合液を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた気水混合液の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備える多重効用缶式蒸留水製造装置において、各蒸発缶の下部室に気水分離機構が設けられており、該気水分離機構は、下部室の外筒と下部室の中央部に挿入された内筒との間に設けられた螺旋状フィンを備えていて、かかる気水分離機構により気水混合液に遠心力を加えて該気水混合液から純蒸気を分離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多重効用缶式蒸留水製造装置に関し、更に詳しくは複数の竪形蒸発缶とその付属機器等から構成される多重効用缶式蒸留水製造装置の改良に関する。例えば各種医薬品の製造工場や医療現場では、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)や日本薬局方に適合した蒸留水が求められる。本発明はかかる蒸留水を製造するための多重効用缶式蒸留水製造装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような多重効用缶式蒸留水製造装置として、供給水の予熱手段と、予熱した供給水から気水混合液を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた気水混合液の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備えるものが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
ところが、かかる従来の多重効用缶式蒸留水製造装置には、蒸発缶の加熱室で発生させた気水混合液を、蒸発缶の下部室にて、純蒸気は上方へ、また蒸発しなかった供給水(以下、単に飽和水ともいう)は下方へと単に比重分離するだけであるため、気水混合液の気水分離効率が悪く、純蒸気と共に飽和水の一部が持ち込まれてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−051588号公報
【特許文献2】特開平10−296236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、各蒸発缶の下部室に、各蒸発缶の加熱室で発生させた気水混合液の下方向流れに直接遠心力を加える気水分離機構を設けて、該気水混合液から純蒸気を効率的に分離することができるようにした多重効用缶式蒸留水製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決する本発明は、供給水の予熱手段と、予熱した供給水から気水混合液を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた気水混合液の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備える多重効用缶式蒸留水製造装置において、各蒸発缶の下部室に気水分離機構が設けられており、該気水分離機構は、下部室の外筒と下部室の中央部に挿入された内筒との間に設けられた螺旋状フィンを備えていて、かかる気水分離機構により気水混合液に遠心力を加えて該気水混合液から純蒸気を分離するようにして成ることを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置に係る。
【0007】
本発明に係る多重効用缶式蒸留水製造装置(以下、単に本発明の装置という)も、従来の多重効用缶式蒸留水製造装置と同様、供給水の予熱手段と、予熱した供給水から気水混合液を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた気水混合液の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備えている。
【0008】
本発明の装置では、気水分離手段として、複数の蒸発缶の各下部室に気水分離機構が設けられている。各蒸発缶は、供給水や飽和水を加熱室の伝熱管へと送入する上部室と、伝熱管へと送入した供給水や飽和水を加熱蒸気で間接加熱する加熱室と、加熱により発生した気水混合液を純蒸気と飽和水とに分離する下部室とに大別されるが、本発明の装置ではかかる蒸発缶の各下部室に気水分離機構が設けられているのである。
【0009】
本発明の装置において、各蒸発缶の下部室に設けられた気水分離機構は、下部室の外筒と下部室の中央部に挿入された内筒との間に設けられた螺旋状フィンを備えている。本発明の装置は、下部室に落下してくる気水混合液に、螺旋状フィンで旋回させることにより遠心力を加え、かかる遠心力により該気水混合液から純蒸気を分離するようになっている。各下部室には、螺旋状フィンの上方に、螺旋状フィンと同じ方向へ旋回する螺旋状羽根を設けるのが好ましく、また螺旋状フィンの下方に、螺旋状フィンで回転しながら分離されてくる飽和水を中央部に集めて下部室から排出し易くするための集液部材を設けるのが好ましい。かかる集液部材としては、詳しくは後述するように、下部室の底面から離間して水平方向に支持された円板上部材と、該円板上部材の周縁部から所定間隔で垂設された複数の横断面くの字状部材とを備え、これらのくの字状部材によって、螺旋状フィンにより回転しながら分離されてくる飽和水を中央部に集めるようにしたものが好ましい。
【0010】
また本発明の装置において、各蒸発缶の下流側には気水分離器を接続することもできるが、該気水分離器には気水分離機構を設けるのが好ましい。かかる気水分離機構としては、気水分離器の外筒と気水分離器の中央部に挿入された先端閉鎖の内筒との間に設けられた螺旋状フィンを備えていて、かかる気水分離機構により微細水滴を含んだ純蒸気に遠心力を加えて該純蒸気から微細水滴を分離するようにしたものが好ましい。
【0011】
更に本発明の装置において、発生する純蒸気や製造する蒸留水の非凝縮性気体の含有量を減らすため、第1蒸発缶の上部室には脱気機構を設けるのが好ましい。脱気機構としては、全体として偏平な円錐状部材を上段に備え且つ中央部に向かい降下する傾斜面を有する全体としてリング状部材を下段に備えていて、かかる脱気機構により供給水を上段の円錐状部材及び下段のリング状部材の各表面に沿って薄膜状で流しつつ脱気するようにしたものが好ましい。かかる脱気機構は、場合によっては2番目以降の蒸発缶の上部室にも設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、各蒸発缶の下部室に、各蒸発缶の加熱室で発生させた気水混合液に遠心力を加える気水分離機構を設けたため、これにより気水混合液から純蒸気を効率的に分離することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の装置を例示する全体図。
【図2】図1の本発明の装置における第1蒸発缶の下部室とその気水分離機構を示す拡大縦断面図。
【図3】図2の気水分離機構における螺旋状フィンを示す側面図。
【図4】図2の気水分離機構における螺旋状羽根を示す平面図。
【図5】図1の本発明の装置における第1蒸発缶の下部室とその集液部材を示す拡大横断面図。
【図6】図1の本発明の装置における気水分離器とその気水分離機構を示す拡大縦断面図。
【図7】図1の本発明の装置における第1蒸発缶の上部室とその脱気機構を示す拡大縦断面図。
【実施例】
【0014】
図1にしたがって、本発明の装置を説明する。図1に例示した本発明の装置では、合計3本の第1蒸発缶70、第2蒸発缶80及び第3蒸発缶90を備えている。第1蒸発缶70、第2蒸発缶80及び第3蒸発缶90の各下流側には気水分離器75,85,95が接続されており、気水分離器95の下流側にコンデンサが接続されている。コンデンサは第1コンデンサ30と第2コンデンサ40とからなり、気水分離器95は第1コンデンサ30に接続され、第1コンデンサ30に第2コンデンサ40が接続されていて、第2コンデンサ40には蒸留水出口配管4が接続されている。
【0015】
第1蒸発缶70、第2蒸発缶80及び第3蒸発缶90は、上部室70A,80A,90A、加熱室70B,80B,90B及び下部室70C,80C,90Cの大きく3室に区分されており、加熱室70B,80B,90Bには、上部室70A,80A,90Aから下部室70C,80C,90Cに渡る複数の伝熱管70D,80D,90Dが通されている。
【0016】
各蒸発缶の下部室70C,80C,90Cには気水分離機構が設けられている。下部室80C,90Cの気水分離機構は下部室70Cの気水分離機構と同じになっているので、以下、下部室70Cの気水分離機構について説明する。図2及び図3に示すように、第1蒸発缶70の下部室70Cの気水分離機構は、下部室70Cの外筒70Lと下部室70Cの中央部に挿入された内筒70Mとの間に設けられた螺旋状フィン70Nを備えていて、かかる気水分離機構により気水混合液に遠心力を加えて該気水混合液から純蒸気を分離するようになっている。図1に例示した本発明の装置では、図3〜図5に示すように、下部室70Cには、螺旋状フィン70Nの上方に、螺旋状フィン70Nと同じ方向へ旋回する螺旋状羽根70Kが設けられており、また螺旋状フィン70Nの下方に、螺旋状フィン70Nで回転しながら分離されてくる飽和水を中央部に集めて下部室70Cから排出し易くするための集液部材70Pが設けられている。図示した本発明の装置の場合、集液部材70Pは、下部室70Cを形成する底面から離間して水平方向に支持された円板上部材70Qと、円板上部材70Qの下面周縁部から突出して垂設された合計4本の横断面くの字状部材70Rとを備え、かかるくの字状部材70Rにより、回転しながら分離されてくる飽和水を中央部に集めるようになっている。
【0017】
また各蒸発缶の下流側に接続された気水分離器75,85,95にも気水分離機構が設けられている。気水分離器85,95の気水分離機構は気水分離器75の気水分離機構と同じになっているので、以下、気水分離器75の気水分離機構について説明する。図5に示すように、気水分離器75の気水分離機構は、気水分離器75の外筒75Jと気水分離器75の中央部に挿入された先端閉鎖の内筒75Kとの間に設けられた螺旋状フィン75Lを備えており、この螺旋状フィン75Lは前記の螺旋状フィン70Nと同様の構成になっていて、かかる気水分離機構により微細水滴を含んだ純蒸気に遠心力を加えて純蒸気から微細水滴を分離するようになっている。
【0018】
更に第1蒸発缶70の上部室70Aには脱気機構が設けられている。この脱気機構は、上蓋70Uに合計3本の平板状の支持部材70Vで支持された全体として円錐状部材70Sを上段に備え且つ上部室70Aの外筒70Wに支持された中央部に向かい降下する傾斜面を有する全体としてリング状部材70Tを下段に備えていて、かかる脱気機構により供給水を薄膜状に落下させて脱気するようになっている。
【0019】
図1に基づいて本発明の装置を更に詳細に説明する。図1において、1は供給水入口配管であり、第1コンデンサ30の供給水入口ノズルに接続されている。供給水入口配管1には、供給水ポンプ1B、圧力センサ1C、流量計1D、自動式開閉弁1E及び手動式の水量調整弁1Fが介装されている。
【0020】
第1コンデンサ30は、第2コンデンサ40と共に、蒸留水製造運転中に蒸留水となる純蒸気を冷却及び凝縮するものであり、共に二重管板式多管円筒型熱交換器である。第1コンデンサ30において、供給水入口配管1の供給水は第1コンデンサ30の伝熱管を通過する際は冷却用として用いられ、自らは加熱される。また第2コンデンサ40において、冷却水入口配管8より送られる冷却水は、第2コンデンサ40の伝熱管を経て内部を冷却し、自らは加熱されて冷却水出口配管9より排出される。8Cは第2コンデンサ40から出る製造した蒸留水の温度を後述の温度センサ4Bにて設定温度(例えば95〜105℃)に保持するように冷却水量を調節するための比例式制御弁である。
【0021】
第1コンデンサ30には気水分離器95から送られてくる純蒸気の入口が設けられており、また第3蒸発缶90の加熱室90Bで製造された凝縮水の入口が設けられている。第1コンデンサ30の内部に導入された純蒸気及び凝縮水は第1コンデンサ30の伝熱管により凝縮及び冷却されて蒸留水となり、第1コンデンサ30下部の蒸留水出口より排出され、下段に設けられた第2コンデンサ40に入る。
【0022】
第1コンデンサ30上部には、蒸留水製造運転中、第1コンデンサ30内に蓄積した非凝縮性気体を抜くための非凝縮性気体抜き口が設けられており、非凝縮性気体抜き口には非凝縮性気体出口配管6が接続されている。非凝縮性気体出口配管6には、非凝縮性気体を抜く方向に作用する逆止弁6C及び手動弁6Dが介装されている。蒸留水製造を休止する場合、第2コンデンサ40の伝熱管に冷却水を供給して装置内部に残留する純蒸気を凝縮させると、内部が負圧になる傾向になる。かかる負圧を防ぐために、外気吸込配管15から外気を吸込み、ベントフィルタ6Fで外気に含まれた微生物や微粒子を取り除いた後、逆止弁6Bを介して装置内部に外気を入れ、内部が負圧になるのを防ぐ。逆止弁6Bは外気の導入のみを許す逆止弁である。ベントフィルタ6Fは、気水分離器75と第2蒸発缶80とを接続する蒸気配管76から分岐した配管77を介して導入される純蒸気にて蒸気滅菌することができる。このときの純蒸気は、第1蒸発缶70の上部室70Aに設けた前記の脱気機構により非凝縮性気体を除去して非凝縮性気体の含有量を少なくしたもので、蒸気滅菌に用いるのに適している。
【0023】
第1コンデンサ30下部には排出口が設けられており、第1コンデンサ30内部で凝縮されなかった純蒸気及び凝縮水を第2コンデンサ40に排出する。第2コンデンサ40上部には受け口が設けられており、この受け口から第1コンデンサ30内部で凝縮されなかった純蒸気及び凝縮水が流入する。流入した純蒸気は第2コンデンサ40の伝熱管にて残らず凝縮され、第1コンデンサ30から流入した凝縮水と共に蒸留水出口配管4から排出される。このとき、温度センサ4Bの設定温度(通常は95〜105℃)を保持するように、冷却水量が調節される。
【0024】
第1コンデンサ30は、排熱回収器50及び予熱器60を介して第1蒸発缶70に接続され、供給水を第1蒸発缶に供給する。排熱回収器50及び予熱器60は共に二重管板式多管円筒型熱交換器である。排熱回収器50には、予熱器60及び第1蒸発缶70の蒸気ドレンを受ける口が設けられており、供給水はかかる排熱回収器50及び予熱器60にて予熱された後、予熱された高温の供給水となって第1蒸発缶70に供給される。一方、熱回収済みの蒸気ドレンは温度が下がり、逆止弁3Bを介して蒸気ドレン出口配管3から流出する。図1において、2は予熱器60及び第1蒸発缶70の加熱室70Bに蒸気を供給する蒸気入口配管であり、2Bは手動開閉弁である。また71は加熱室70Bの蒸気ドレンを排出する蒸気ドレン排出配管であり、71Aは蒸気トラップ、71Bは逆止弁である。
【0025】
第1蒸発缶70は、供給された供給水の一部を加熱蒸気との熱交換により効率よく蒸発させて純蒸気とする二重管板式多管円筒型熱交換器であり、予熱供給水が導入される上部室70Aと、加熱蒸気が導入される加熱室70Bと、純蒸気と飽和水との気水混合液が導入される下部室70Cとに区分されていて、加熱室70Bには上部室70Aの予熱供給水を下部室70Cに導く複数の伝熱管70Dが挿設されている。加熱室70B上部には加熱蒸気の供給口が設けられており、また加熱室70B下部には加熱蒸気のドレンを缶外に導く蒸気ドレン排出配管71が接続されている。蒸気ドレン排出配管71の排出側端部は排熱回収器50に接続されている。そして、下部室70C上部には純蒸気排出口が設けられており、また底部には蒸発しなかつた飽和水の飽和水排出口が設けられている。
【0026】
第1蒸発缶70の上部室70Aに入った予熱供給水は、ここで図7について前記した脱気機構により脱気された後、伝熱管70Dを経て下部室70Cに至る間に加熱室70Bの加熱蒸気により加熱されて気液混合状態となり、下部室70Cに落下し、ここで図2〜図5について前記した気水分離機構により純蒸気と飽和水とに分離され、純蒸気は上昇して上部の蒸気排出口に至り、飽和水は下降して下部の飽和水排出口より排出される。72は飽和水配管であって、一端が第1蒸発缶70底部の飽和水排出口に接続され、また他端が第2蒸発缶80の上部室80A上部の接続口に接続されていて、飽和水が第2蒸発缶80の上部室80Aに供給されるようになっている。72Aは飽和水配管72に設けられたオリフイスであって、飽和水配管72のパッキンを介して所定孔径のオリフイス孔を有するオリフイス板が介装されたものからなっている。後述する各オリフイスも同様の構造となっているが、それぞれのオリフイスによって所定の孔径ものが選定される。
【0027】
第1蒸発缶70の純蒸気排出口と第2蒸発缶80の加熱室80Bの蒸気供給口との間には、気水分離器75を介して第2蒸発缶の加熱源となる純蒸気を送る蒸気配管73が接続されている。気水分離器75に送られた純蒸気は、ここで図6について前記した気水分離機構により微細水滴が除去され、除去された微細水滴はオリフイス75Dを介して第2蒸発缶80の下部室80Cに入る。
【0028】
第2蒸発缶80は、第1蒸発缶70と異なり、二重管板を持たない多管円筒型熱交換器である、上部室80Aに入った前記の飽和水は伝熱管80Dを経て下部室80Cに至る間に、加熱室80Bの純蒸気により加熱され、気液混合状態となって下部室80Cに落下し、気液混合液は下部室60Cにて第1蒸発缶70の下部室70Cと同じ気水分離機構にて純蒸気と飽和水とに分離され、純蒸気は上昇して上部の蒸気排出口に至り、飽和水は下降して下部の飽和水排出口より排出される。82は飽和水配管であって、一端が第2蒸発缶80底部の飽和水排出口に接続され、また他端が第3蒸発缶90の上部室90Aの接続口に接続されていて、飽和水が第3蒸発缶90の上部室90Aに供給されるようになっている。82Aは飽和水配管82に設けられたオリフイスである。
【0029】
81は凝縮水配管であって、第2蒸発缶80の加熱室80Bでの熱交換により生成した凝縮水を第3蒸発缶90の加熱室90Bの下部に導くものであり、81Aは凝縮水配管81に介装されたオリフイスである。第2蒸発缶80の蒸気排出口と第3蒸発缶90の加熱室90Bの蒸気供給口とは蒸気配管83で接続されており、蒸気配管83には気水分離器75と同様の構造の気水分離器85が介装されていて、気水分離器85で除去された微細水滴はオリフイス86Aを介して第3蒸発缶の下部室90Cに入るようになっている。
【0030】
第3蒸発缶90の構造は第2蒸発缶80と同様になっており、飽和水配管82にて供給される飽和水を蒸気との熱交換により一部蒸発させ、更に純蒸気と飽和水との気水混合液とする蒸発缶である。第3蒸発缶90は、飽和水が導入される上部室90Aと、蒸気が導入される加熱室90Bと、気水混合液が導入される下部室90Cとに区分されている。加熱室90Bには上部室90Aの飽和水を下部室90Cに導く伝熱管90Dが挿設されており、また加熱室90Bには純蒸気を導入する供給口と、熱交換により凝縮された純蒸気の凝縮水を底部より缶外に排出する凝縮水排出配管91が設けられている。下部室90C上部には蒸気排出口が設けられており、また下部室90Cの底部には飽和水排出口が設けられている。第3蒸発缶90では、上部室90Aに入った飽和水は伝熱管90Dを経て下部室90Eに至る間に、加熱室90Bの純蒸気により加熱され、気水混合液となって、下部室90Cに落下し、ここで第1蒸発缶70の下部室70Cと同じ気水分離機構にて純蒸気と飽和水に分けられ、蒸気は下部室90Cの上部の蒸気排出口に至る。
【0031】
7は飽和水出口配管であり、7Bは自動式開閉弁、7Cはオリフイスである。91は凝縮水配管であり、熱交換による凝縮水を第1コンデンサ30の凝縮水入口に送るものであって、91Aはオリフイスである。93は気水分離器95を介して純蒸気を第1コンデンサ30に送る蒸気配管である。気水分離器95で除去された微細水滴は蒸気トラップ96A及び逆止弁96Bを介して飽和水出口配管7に合流している。第3蒸発缶90で発生した蒸気は気水分離器95を介して第1コンデンサ30に流入する。
【0032】
4は第2コンデンサ40下部の蒸留水出口に接続され、蒸留水を外部に導くための蒸留水出口配管である。蒸留水出口配管4は一部U字形状に配設されている。4Cは蒸留水出口配管4に介装された水質センサであって、蒸留水の導電率が計測可能となっている。4Bは蒸留水出口配管4に取付けられた温度調節計と電気的に繋がっている温度センサであり、例えば95〜105℃の設定温度に設定され、第2コンデンサ40に接続された冷却水入口配管8の比例制御弁8Cに電気的に連係されていて、蒸留水出口配管4の蒸留水の温度が所定温度を越えた場合に作動して冷却水の流入水量を制御するようになっている。4Dは蒸留水出口配管4に介装された自動式開閉弁であり、5は蒸留水出口配管4の自動式開閉弁4Dの上流位置で分岐された廃蒸留水出口配管であって、水質センサ4Cの測定結果が設定の水質値以上の場合は蒸留水出口配管4の自動式開閉弁4Dが開、廃蒸留水出口配管5の自動式開閉弁5Bが閉にされ、蒸留水が蒸留水出口配管4より排出される。そして水質センサ4Cの測定結果が設定の水質値以下の場合は蒸留水出口配管4の開閉弁4Dが閉、廃蒸留水出口配管5の開閉弁5Bが開にされ、水質基準に合わない蒸留水は廃蒸留水出口配管5より排出される。
【0033】
以上、蒸発缶と気水分離器を各3本備える場合について図面に基づき本発明の装置を説明したが、蒸発缶と気水分離器がそれ以上に多い例えば4〜7本の場合でも同様である。
【符号の説明】
【0034】
1 供給水入口配管
2 加熱用の蒸気入口配管
3 蒸気ドレン出口配管
4 蒸留水出口配管
5 廃蒸留水出口配管
6 非凝縮性気体出口配管
7 飽和水出口配管
8 冷却水入口配管
9 冷却水出口配管
15 外気入口配管
30 第1コンデンサ
40 第2コンデンサ
50 排熱回収器
60 予熱器
70 第1蒸発缶
80 第2蒸発缶
90 第3蒸発缶
70K 螺旋状羽根
70N,75L 螺旋状フィン
70P 集液部材
70Q 円板状部材
70R くの字状部材
70S 円錐状部材
70T リング状部材
75,85,95 気水分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水の予熱手段と、予熱した供給水から気水混合液を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた気水混合液の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備える多重効用缶式蒸留水製造装置において、各蒸発缶の下部室に気水分離機構が設けられており、該気水分離機構は、下部室の外筒と下部室の中央部に挿入された内筒との間に設けられた螺旋状フィンを備えていて、かかる気水分離機構により気水混合液に遠心力を加えて該気水混合液から純蒸気を分離するようにして成ることを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置。
【請求項2】
各蒸発缶の下流側に気水分離器が接続され、該気水分離器には気水分離機構が設けられており、該気水分離機構は、気水分離器の外筒と気水分離器の中央部に挿入された先端閉鎖の内筒との間に設けられた螺旋状フィンを備えていて、かかる気水分離機構により微細水滴を含んだ純蒸気に遠心力を加えて該純蒸気から該微細水滴を分離するようにした請求項1記載の多重効用缶式蒸留水製造装置。
【請求項3】
第1蒸発缶の上部室に脱気機構が設けられており、該脱気機構は、全体として偏平な円錐状部材を上段に備え且つ中央部に向かい降下する傾斜面を有する全体としてリング状部材を下段に備えていて、かかる脱気機構により供給水を脱気するようにした請求項1又は2記載の多重効用缶式蒸留水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−66838(P2013−66838A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206946(P2011−206946)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(597103573)株式会社イシン技研 (5)
【Fターム(参考)】