説明

多重多標的スクリーニング方法

本発明は、高スループットスクリーニング技術(フローサイトメトリー(FCM)を含む)を用いて、1つ以上の野生型リガンド標的もしくは変異型リガンド標的を有する細胞集団の多重された多標的スクリーニングおよびリガンドに対する細胞応答の測定についてのシステムを提供する。この方法は、1)スクリーニングされる複数の細胞集団を増殖させる工程;2)各細胞集団について異なる励起/発光サインを生じるために1つ以上の蛍光色素を用いて細胞集団を染色する工程;3)単一混合細胞懸濁液に標識された細胞集団を合わせる工程;4)特徴的なサインに基づい細胞を解像するために分析する工程;ならびに5)集団についての有益な情報を得るためにデータを逆重畳積分することによって、混合細胞懸濁物中の細胞集団各々を解像する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2003年5月7日に出願した米国仮特許出願番号60/469,089号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、1種以上の野生型リガンド標的または改変体リガンド標的を有する複数の集団をスクリーニングすることに関する。より具体的には、本発明は、高スループットスクリーニング技術(フローサイトメトリーを含む)を使用して、試験候補化合物に対する応答を測定することに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
フローサイトメトリーは、懸濁状態にある細胞の物理的特徴および化学的特徴に関する複数パラメーターデータを提供し得る技術である。このフローサイトメトリーは、水力(または流体)システム、光学システム、ならびに電子工学システム、およびコンピューターシステムを有する。この水力システムは、流体力学的集束を介して層流を確立するための一群の空気圧コントロールおよび流体送達システムから構成され、この層流は、細胞懸濁物中にある細胞がフローチャンバを介して一本の道を移動するのを可能にする。上記光学システムは、光源、フィルター、レンズ、必要な場合には鏡、そして検出器からなる。この光源は、通常は、レーザーまたはレーザーダイオードによって生成される。一般的に、複数のレーザー光源が使用され、それによって、そのフローサイトメトリー分析の柔軟性および精度が増加する。一般的に使用される光源の1つは、通常は循環空気または循環水により冷却されるガスレーザー(一般的にはアルゴン)であり、これは、488nmの単色光を生じる。この光源により生じる光は、細胞に結合した蛍光色素標識を励起するために使用される。これにより、特徴的なスペクトルプロフィールでのその蛍光色素による発光が生じる。1種以上の蛍光色素の蛍光発光は、代表的には、最適かつ分解可能な発光的サインを生じるように選択される。この選択は、しばしば、二色性フィルターおよび帯域フィルターを取り扱うことによって行われ、その結果、個々の蛍光色素からの発光シグナルは、個々の光検出器へと向かう。これによって、各々の蛍光色素についての蛍光シグナル分布が、個別に検出されて細胞上に存在する他の蛍光色素から解像されるのが可能になる。上記電子工学システムは、シグナル検出(例えば、蛍光発光および散乱した励起光シグナル)、データ処理、および自動化のために使用される。最後に、上記コンピューターシステムは、このサイトメーターからのデジタル化情報を受容し、その情報を後の分析のために処理する。これらのシステムの統合によって、多数の細胞の正確かつ迅速な分析が短時間で可能になる。
【0004】
フローサイトメトリー測定は、各細胞のいくつかの異なる特徴に対してなされ得る。フローサイトメトリー分析が混合物中に個別の細胞に対して実行され得るという事実によって、個別の細胞の応答が測定されるのでより正確な分析が可能なり、同時に、標準的なスクリーニングシステム(例えば、蛍光定量画像化プレートリーダー(FLIPRTM))は、は、細胞集団の平均的応答のみを測定する。混合物中の個別の細胞の複数パラメーター測定によって、細胞の種々の特徴を相関付け、それにより部分集団を規定し、かつ/または異なる細胞型間を区別することが、可能になう。代表的な市販のフローサイトメーターによって、5〜20種の異なるパラメーターを各細胞について補正することが可能であり、それによって、集団の多次元提示が得られる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本開示は、多重(multiplexed)スクリーニング方法を提供する。この方法は、(a)スクリーニングされるべき複数の細胞集団を増殖(develop)させる工程であって、各細胞集団は、リガンド標的を発現する、工程;(b)それらの細胞集団のうちの少なくとも1つを蛍光色素で染色することにより、それらの細胞集団各々をカラーコーディング(color−code)して、カラーコーディングされた細胞集団各々についての明確な光学的サイン(optical signature)を生じる工程;(c)カラーコーディングされた細胞集団を合わせて、混合細胞懸濁物を形成する工程;(d)混合細胞懸濁物を、リガンドまたはコントロール化合物と接触させる工程;(e)単一細胞分析システムによって、1つ以上の光源を使用して混合細胞懸濁物中のカラーコーディングされた細胞各々を励起させること、そして励起された細胞各々からの蛍光発光を収集して各細胞の明確な光学的サインおよび細胞応答を測定することによって、混合細胞懸濁物を分析する工程;ならびに(f)工程(e)において収集したデータを逆重畳積分(deconvolute)することによって、混合細胞懸濁物中の細胞集団各々を解像する工程;を包含する。
【0006】
カラーコーディングについて、細胞は、1種以上の蛍光色素で染色され得る。その蛍光色素としては、FM 1−43、FM 4−64、DiO、DiI、DiA、DiD、DiR、PKH 2、PKH 26、Bodipy 665、LysoSensor Blue、Hoescht 33232、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、Alexa 488、Alexa 500、Alexa 514、フィコエリトリン、Alexa 594、Alexa 647、Alexa 660、およびAlexa 750が挙げられるが、これらに限定されない。上記細胞集団は、少なくとも1種の蛍光色素で直接染色され得るか、または2段階プロセスを使用して間接的に染色され得る。この2段階プロセスにおいて、細胞集団は、まず、アンカー分子で標識され、その後、少なくとも1種の蛍光色素が、そのアンカー分子に結合する。間接的染色方法において、そのアンカー分子は、ビオチン化分子であり、その蛍光色素は、ビオチン結合分子(例えば、ストレプトアビジンもしくはアビジン)に結合体化される。同様に、アンカー分子は、アビジン結合体化分子またはストレプトアビジン結合体化分子であり得、蛍光色素が、アビジン結合分子もしくはストレプトアビジン結合分子(例えば、ビオチンもしくはビオチン誘導体)に結合体化される。細胞集団はまた、蛍光色素で染色することによってではなく、カラーコーディングされ得る、これにより、非染色細胞集団についての明確な光学的サインが生じる。
【0007】
本明細書中で提供される多重スクリーニング方法において、指示薬色素を用いて測定される細胞応答は、リガンドに対する細胞応答である。そのリガンドに対する細胞応答は、Ca2+動員(mobilization)(Ca2+)であり得る。これは、Indo−1、Fluo−3、Fluo−4、Oregon Green 488 BAPTA、Calcium Green、X−rhod−1、またはFura Redを指示薬色素として測定し得る。このリガンドに対する細胞応答は、膜電位の変化であり得る。
【0008】
混合細胞懸濁物は、分析する前の任意の適切な期間の間、リガンドとともにインキュベートされ得る。その期間としては、約0.1秒間〜約1週間、約1秒間〜約5秒間、約1分間〜約1時間、または約1時間〜約48時間が挙げられる。さらなる指示薬色素が、分析前に混合物に添加され得る。
【0009】
本明細書中に提供される多重スクリーニング方法において、上記の複数の細胞集団は、以下のうちのいずれか1つ以上を、単独でかまたは組み合わせて含み得る:内因性リガンド標的を発現する細胞集団;トランスフェクトしたリガンド標的を発現する細胞集団;調節可能なリガンド標的を発現する細胞集団;発現タグとともにリガンド標的を発現する細胞集団;野生型リガンド標的を発現する細胞集団;改変体リガンド標的を発現する細胞集団(この改変体リガンド標的は、天然に存在する改変体リガンド標的または変異体リガンド標的であり得る)。上記の複数の細胞集団は、野生型リガンド標的を発現する細胞集団、および改変体リガンド標的を発現する少なくとも1つの細胞集団を含み得る。上記の複数の細胞集団は、別個の改変体リガンド標的を発現する複数の細胞集団を含み得る。
【0010】
本明細書中で提供される多重スクリーニング方法において、混合細胞懸濁物を分析すること、およびその混合細胞懸濁物中の複数の細胞集団の各々を解像することは、リガンドに対する応答が増加した細胞集団を同定するために使用され得る。リガンドに対する応答が増加した細胞が、単離される。
【0011】
本明細書中に提供される多重スクリーニング方法において、単一の細胞分析システムは、フローサイトメトリーシステムであり得、特に、蛍光細胞分析分離(FACS)を備えたフローサイトメトリーシステムであり得る。細胞は、FACSを使用して分別および単離され得る。
【0012】
本明細書中で提供される多重スクリーニング方法において、単一の細胞分析システムは、混合細胞懸濁物を調製するために作動する液体取り扱い装置(liquid handler)、サンプル分析装置、およびその分析装置に接続した注入ガイドを備え得る。この注入ガイドは、液体取り扱い装置からの混合細胞懸濁物を受容して、サンプル分析装置の流体システムへと混合細胞懸濁物を提供するように作動する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本開示は、1種以上の野生型リガンド標的または変異リガンド標的を有する細胞集団を多重多標的スクリーニングし、そして高スループットスクリーニング技術(フローサイトメトリー(FCM)を含む)を使用してリガンドに対する細胞応答を測定するためのシステムを提供する。本開示は、多重多標的スクリーニングのための方法、組成物、装置、および分析技術を提供する。簡単に述べると、この方法は、1)スクリーニングされるべき細胞集団を増殖させる工程;2)その細胞集団のうちの少なくとも1つを少なくとも1つの蛍光色素で染色して、各細胞集団についての明確な励起/発光の光学的サインを生じる工程;(3)細胞に1つ以上の指示薬色素を負荷して細胞応答をモニターする工程;(4)染色された細胞集団を合わせて、単一の混合細胞懸濁物にする工程;(5)混合細胞懸濁物において染色された細胞各々を励起するために光源を使用し、励起されたカラーコーディングされた細胞各々からの蛍光発光を収集することによって、混合細胞懸濁物を分析する工程;(6)各細胞集団に対応する明瞭な光学的サインに基づいて、混合細胞懸濁物中に存在する個々の細胞集団を解像する工程;ならびに(7)データを逆重畳積分(deconvolute)して、各細胞集団に関する有意義な情報を抽出する工程;を包含する。本発明は、本明細書中に提供される方法を実行するために適切な組成物、装置、および分析技術を包含する。
【0014】
本開示は、リガンド標的とリガンドとの間の相互作用を測定するために有用なであるシステムを提供する。特に、本開示は、リガンド標的とリガンドとの間の相互作用するための有用なシステムを提供する。「リガンド標的」または「目的の標的」は、任意のリガンド結合タンパク質(レセプター、リガンド関門型イオンチャネル、単一の膜貫通ドメインを有するリガンド結合タンパク質、結合後に細胞膜を通ってトランスロケートするリガンド結合タンパク質、リガンド結合酵素、遺伝子発現のリガンド結合調節因子、リガンド結合構造タンパク質、またはリガンド結合が細胞応答を誘発する他の任意のタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない)を意味することが意図される。一般的には、リガンド標的または目的の標的は、レセプター(シグナル伝達またはシグナル報告に関与するレポーター、特に、Gタンパク質共役レセプター(GPCR)が挙げられるが、これらに限定されない)である。スクリーニングされるべきリガンド標的は、野生型標的または変異標的(例えば、野生型レセプターまたは変異改変体レセプター)であり得る。本発明の種々の局面に従って、これらの標的は、内因的に発現されるアップレギュレートされた内因性レセプター、または外因性配列の導入の結果として発現されるレセプター(例えば、調節可能もしくは調節不可能なトランスフェクションおよび発現によって発現されるレセプター)であり得る。
【0015】
「リガンド」とは、本明細書中に開示されるシステムにおいて試験される任意の化合物を意味するために使用され、ここで、この用語は、一般的には、スクリーニングされるリガンド標的に結合し得る任意のリガンドを指すことが、理解される。用語「リガンド」とは、本明細書中で使用される場合、用語「試験化合物」と互換可能であることが意図される。リガンドは、天然リガンド、改変リガンド、変異リガンド、天然に存在しない合成化合物、天然に存在するリガンドの合成バージョン、または本明細書中に提供されるスクリーニングシステムにおいて試験化合物として使用するために適切な任意の試験化合物であり得る。また、「リガンド」の定義に包含されるのは、生物学的分子(例えば、ペプチド、タンパク質(抗体を含む)、RNA分子(例えば、アンチセンスRNAおよびサイレンシングRNA、NDA、合成ヌクレオチド(例えば、PNAおよびLNA)、アプタマー、オリゴヌクレオチド、およびオリゴヌクレオシド)である。用語「リガンド」は、リガンドおよび/もしくはリガンド標的と、またはリガンド−リガンド標的複合体と、そのリガンドとリガンド標的との相互作用に対する生物学的応答を調節するように相互作用する化合物を指すために使用され得ることが、さらに理解される。
【0016】
「コントロール」または「コントロール化合物」は、細胞応答についてのベースライン値を提供するために使用される処理を意味するために使用される。これらのベースライン値は、リガンド標的とリガンドとの相互作用に応答した細胞応答を評価する際に比較目的のために使用される。「コントロール」または「コントロール化合物」は、ネガティブコントロールであり得、最も一般的には、指示薬色素を含む細胞が、リガンドが通常懸濁される緩衝液で飲み処理されている、「緩衝液コントロール」であり得る。緩衝液コントロールは、緩衝剤に加えて、特定環境にて評価されるリガンドの溶液中にて通常見出される他の化合物(溶媒、塩、保存剤、抗生物質、または安定化剤が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得ることが、理解される。用語「コントロール」または「コントロール化合物」は、ポジティブコントロールであり得、最も一般的には、スクリーニングされる細胞集団において細胞応答を誘発することが公知である処理であり得る。ポジティブコントロールは、スクリーニングされる細胞集団におけるリガンド標的の既知リガンドであり得る。ポジティブコントロールは、リガンド標的を含むことなく細胞応答を惹起する処理であり得る。例えば、カルシウムイオノフォアは、細胞応答としてCa2+動員を測定する実施形態においてポジティブコントロールとして使用され得る。本開示は、多重多標的スクリーニングのためのポジティブコントロールおよびネガティブコントロールの非限定的例を提供する。当業者は、特定の実施形態のために適切な1つ以上のコントロール化合物を選択し得ることが、理解される。
【0017】
リガンド標的とリガンドとの間の相互作用によって誘発される細胞応答としては、リガンド標的の構造または機能の変化、細胞膜を通るイオンフラックスの変化、特に、細胞内Ca2+(Ca2+)レベルを変えるイオンフラックスの変化、または膜電位の変化を引き起こすイオンフラックスの変化、細胞のサイズもしくは形状の変化、細胞増殖の変化、細胞分化の変化、酵素の活性の調節、遺伝子発現の変化、および細胞死が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のスクリーニングシステムにおいて使用するのに適切な、細胞応答を測定するための方法が、提供される。
【0018】
用語、例えば、「リガンド標的」および「リガンド」の選択は、本明細書中にて提供されるシステムを使用してスクリーニングするために適切なリガンド結合タンパク質の範囲もリガンドの範囲も限定することは意図されないことが、理解される。用語「細胞応答」は、本明細書中に提供されるシステムを使用してスクリーニングするために適切な生物学的応答の範囲を限定することは意図されないことが、さらに理解される。
【0019】
「フローサイトメーター」および「フローサイトメトリー」は、本明細書中で使用される場合、多数の米国特許および科学文献中にて記載される周知の方法および道具を指す。これらの米国特許および科学文献は、とりわけ、米国特許第3,826,364号;同第3,826,412号;同第4,600,302号;同第4,660,071号;同第4,661,913号;同第4,988,619号;同第5,092,184号;同第5,994,089号;同第5,968,738号;同第6,014,904号;同第6,248,590号;同第6,256,096号;同第6,664,110号;同第6,680,367号;Haynes「Principles of Flow Cytometry」(1988)Cytometry Supplement 3:7〜18;Ormerod編,Flow Cytometry:A Practical Approach,Oxford Univ.Press(1997);Jaroszeskiら編,Flow Cytometry Protocols,Methods in Molecular Biology No.91,Humana Press(1997);ならびにShapiro,Practical Flow Cytometry,第3版,Wiley−Liss(1995)である。用語「FACS」とは、本明細書中で使用される場合、蛍光細胞分析分離装置(ある細胞を他の数千個の細胞から選択し得るフローサイトメトリーに基づく装置)と、蛍光細胞分析分離方法との両方を指す。残りのすべての用語は、フローサイトメトリーの分野におけるその通常の意味を有する。これは、とりわけ、Haynes,「Principles of Flow Cytometry」(1988)Cytometry Supplement 3:7〜18;Ormerod編,Flow Cytometry:A Practical Approach,Oxford Univ.Press(1997);Jaroszeskiら編,Flow Cytometry Protocols,Methods in Molecular Biology No.91,Humana Press(1997);ならびにShapiro,Practical Flow Cytometry.第3版,Wiley−Liss(1995)において示される。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「多重化」とは、複数の信号の同時またはほぼ同時の測定をいう。本明細書中で提供されるように、多重化アレイは、複合細胞サンプル中の複数の変数の決定を可能にし、例えば、信号は、複数のリガンド標的を有する複数の細胞集団を含む混合物中で測定され得、そして各細胞集団は、各集団に対して明確な最適サインを生じるカラーコーディングに起因して、混合物中で他の細胞集団と区別される(以下を参照のこと)。同様に、複数の細胞応答が、複合細胞サンプル中で測定され得、例えば、リガンド標的に結合するリガンドの測定は、様々な細胞応答を測定するための手段のうちの明確なカラーコーディングに起因して、Ca2+レベルおよび膜電位の変化と同時に測定され得る。本発明のスクリーニング系における多重化は、フローサイトメトリーシステムのマルチパラメトリック能力によってさらに支持され、このマルチパラメトリック能力は、細胞が複数の物理的特性、化学的特性、および生物学的特性に基づいて同定され、区別されること(そして必要に応じて、分類されそして回収されること)を可能にする。
【0021】
本明細書中で提供される多重多標的スクリーニングシステム(multiplexed multitarget screening system)は、このシステムが、何百または何千ものサンプル(細胞集団、リガンド標的、リガンド)の迅速なスクリーニングを可能にするので、「高スループット」なスクリーニングシステムであると考えられ得る。本明細書中で提供されるスクリーニングシステムはまた、測定されるリガンド標的−リガンド相互作用の速度論、特異性、および他の時間的−空間的動力学についての詳細な情報を与えるので、「ハイコンテント」なスクリーニングシステムであると考えられ得る。1つの局面に従って、本明細書中で提供されるスクリーニングシステムで使用される各細胞から得られる情報は、各細胞が他の細胞を使用して容易に再現され得る単一の「実験」であると考えられ得る、そのような高度な情報量を有する。
【0022】
本開示は、用語「工程」を単に本発明の種々の局面の理解を容易にするために使用し、そしてこの用語は、個別の活動としてまたは固定した順序でこれらのいわゆる「工程」を行うように本発明を限定することを意図されないことが理解される。同様に、特許請求の範囲における特定の順序での本発明の個別の要素の表現は、個別の活動としてまたは固定した順序でこれらの要素を行うように本発明を限定することを意図されない。以下に示されるように、本発明の「工程」は、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の様式または種々の順序で組み合わされ得る。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「a」または「an」の使用は、単数形および複数形の両方を包含することが理解される。従って、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」と類似の範囲を有することが意図される。
【0024】
(1.スクリーニングされる細胞集団を成長させる)
本発明の1つの局面に従って、第一の工程は、リガンド標的を有する1以上の細胞集団を成長させる工程を包含し、ここで、そのリガンド標的を有する細胞集団は、リガンドとの相互作用についてスクリーニングされる。1つの局面に従って、リガンド標的を有する細胞集団の細胞応答が、リガンド標的とリガンドとの間の相互作用を測定するために測定される。リガンド標的とリガンド標的との間の相互作用によって引き起こされる細胞応答を測定することは、多重スクリーニング法を提供し、この方法は、リガンド、および相互作用するリガンド標的の同定を可能し、そしてさらにその相互作用の親和性および効力(細胞応答の量)の測定を可能にする、特定の実施形態において、野生型リガンド標的を有する細胞が、リガンドとの相互作用についてスクリーニングされる。特定の実施形態において、改変体または変異リガンド標的を有する細胞が、リガンドとの相互作用についてスクリーニングされる。
【0025】
「野生型」とは、リガンド標的の存在するバージョンをいう。「改変体」は、そのリガンド標的に対して野生型として同定されたリガンド標的とは異なるリガンド標的を参照するために使用される。本明細書中で使用される場合、「改変体」とは、天然に存在する改変体(例えば、対立遺伝子、一塩基多型(SNP)、または野生型リガンド標的をコードする遺伝子のスプライス改変体)、あるいはリガンド標的の故意の修飾または変異によって作製される改変体(代表的には、標的をコードするDNAを変異させることによってであるが、タンパク質の化学修飾または標的の最終的な化学的性質を改変するための他の代替的な方法によってでもある)を言及し得る。「変異体」とは、野生型リガンド標的とは異なる変異型リガンド標的をコードするように故意に改変または変異されたDNAによってコードされるリガンド標的をいう。用語「改変体」および「変異体」は、多くの場合、野生型リガンド標的とは異なるすべてのリガンド標的を包含するように、本開示において組み合わせて使用される。用語「リガンド標的をコードするDNA」は、リガンド標的遺伝子(コード領域)に転写かつ翻訳されるDNA配列、および転写または翻訳されてもされなくてもよい関連する調節領域の両方に関する「リガンド標的遺伝子」と類似の範囲を包含することが意図される。
【0026】
改変型リガンド標的または変異型リガンド標的は、リガンド標的をコードするDNAを変異または他の場合にはDNAを改変するための標準的な分子生物学の技術を使用して生成され、ここで、そのDNAは、1以上の残基で改変される。リガンド標的をコードするDNAの変異体または改変体としては、限定なしに、付加体、欠失体、置換体、複製体および転位体が挙げられ、さらに操作されたスプライス改変体が挙げられる。リガンド標的をコードするDNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)から逆転写された相補DNA(cDNA)、または合成DNAであり得る。本発明に従って、DNAのコード領域および非コード(調節)領域の両方が、変異リガンド標的を生成するために改変または変異され得る。変異リガンド標的を生成するためのDNAの改変または変異のための標準的な技術としては、「ショットガン」変異誘発、カセット変異誘発、化学的変異誘発、部位特異的変異誘発、インサイチュ変異誘発、変異誘発株誘導性変異誘発、標的化変異誘発のためのRNA−DNAキメラ形成法、DNAシャッフリング、エラープローンPCR、他のコンビナトリアル技術、または例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、(第3版(2000)、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、N.Y.)、またはAusubelら編、Current Protocols in Molecular Biology(1991および最新版)Wiley Interscience、N.Y.に見出されるような他の標準的な技術が挙げられる。
【0027】
リガンド標的は、細胞中にすでに存在するDNAから発現されても、細胞に導入されたDNAから発現されてもよい。野生型リガンド標的、改変型リガンド標的、および変異型リガンド標的は、細胞中にすでに存在するDNAから発現され得る。1つの非限定的な実施例において、変異リガンド標的は、細胞中にすでに存在する変異DNAから発現され、ここでその細胞は、化学的変異誘発に供されている。この局面に従って、リガンド標的の発現は、内因性の調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、活性化因子、またはリプレッサー)によって調節される。1つの実施形態において、細胞中にすでに存在するDNAから発現されるリガンド標的は、構成プロモーターまたはエンハンサーの制御下で連続的に発現される。別の実施形態において、細胞中にすでに存在するDNAから発現されるリガンド標的の発現は、誘導性の調節エレメント(例えば、誘導プロモーターまたはリプレッサー)、およびこれらの調節エレメントの操作に依存する発現の制御下にある。
【0028】
野生型リガンド標的、改変型リガンド標的、および変異型リガンド標的は、宿主細胞に導入されたDNAから発現され得る。用語「トランスフェクション」は、核酸分子が真核生物細胞または原核生物細胞に導入され得る任意の手段が含まれることが意図される。導入される核酸分子は、DNAまたはRNAであり得、そして一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る;本開示において導入される核酸分子は、DNAと称される。本明細書中で使用される場合、「トランスフェクション」は、一過性の細胞トランスフェクション(リガンド標的をコードするDNAが、一過性に発現される)および細胞の安定な形質転換(リガンド標的をコードするDNAが、染色体DNAへの統合または安定な細胞外染色体要素に存続することによって維持される)の両方を包含する。宿主細胞のトランスフェクションで使用されるDNAは、特定の実施形態のために選択されるトランスフェクション法および発現法に依存して、環状に(例えば、ベクター(プラスミド)に)なり得るか、または線状になり得る。リガンド標的の「組換え」発現とは、宿主細胞のトランスフェクションおよびリガンド標的をコードする導入されたDNAの発現をいう。
【0029】
1つの局面に従って、宿主細胞は、野生型リガンド標的をコードするDNAでトランスフェクトされ、組換え発現された野生型リガンド標的を有する細胞を産生する。別の局面に従って、宿主細胞は、改変型リガンド標的または変異型リガンド標的をコードするDNでトランスフェクトされ、組換え発現された改変型リガンド標的または変異型リガンド標的を有する細胞を産生する。
【0030】
適切なトランスフェクション法としては、哺乳動物細胞への核酸の導入に有用な種々の技術(エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン処理、リポフェクション、微量注入、およびウイルス感染を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物細胞をトランスフェクトするのに適切な方法は、Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、(第3版(2000)、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、N.Y.)またはAusubelら編、Current Protocols in MolecularBiology、(1991および最新版)Wiley Interscience,N.Y.および他の実験書に見出され得る。1つの局面において、宿主細胞にDNAを導入するための非ウイルス媒介性の方法は、細胞送達ビヒクル(例えば、カチオン性リポソームまたは誘導体(例えば、抗体結合型)ポリリジン結合体、グラミシジンS、または人工のウイルス膜(例えば、Philipら(1994)Mol Cell Biol 14:2411)を含む。別の実施形態において、リガンド標的をコードするDNAは、核酸結合剤および細胞特異的結合剤を含む可溶性分子の複合体の形態で宿主細胞に送達され、その結果、複合体が、宿主細胞表面に結合し、その後例えば、米国特許第5,166,320号に記載されるように細胞によって内在化される。別の実施形態において、リガンド標的をコードするDNAは、YangおよびSun(1995)Nature Medicine 1:481に記載されるように微粒子銃によって宿主細胞に導入される。別の局面に従って、リガンド標的をコードするDNAは、ベクター(例えば、ウイルスベクター(組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルス−1が挙げられる))を使用して導入され得る。
【0031】
1つの適切なトランスフェクション法は、単一標的統合部位(Single Target Integration Site;STIS)として公知であり、この方法では、たった1つのDNA配列が、首尾よく各宿主にトランスフェクトされ、そして各宿主によって発現され、各DNAが、相同組換え技術を使用して各細胞における同一の遺伝子座に統合される。この技術は、各々の統合されたDNAの発現が、細胞の集団内の細胞から細胞で一貫性があることを保証する。1つの実施形態において、STISは、アッセイ結果の均一性を保証するように選択される。
【0032】
別の適切なトランスフェクション法は、ランダム標的統合部位(Random Target−Integration Site;RTIS)である。標準的なトランスフェクション技術(例えば、リポフェクタミンまたはエレクトロポレーション)は、細胞集団をトランスフェクトするために使用される。各細胞がゲノムの同じ位置で各々のトランスフェクトされたDNAを統合する保証が存在しないので、RTISは、集団内の細胞間で異なる発現レベルを導き得ることが留意されるべきである。
【0033】
リガンド標的の発現は、リガンド標的をコードするDNAの発現を調節し得る種々の配列を含むように、宿主に導入されるDNA分子を設計することによって影響を受け得ることが理解される。そのような分子は、代表的には、調節エレメントを含み、この調節エレメントに対してリガンド標的をコードするDNAが、宿主細胞においてリガンド標的の発現に関する転写事象、翻訳事象、または翻訳後事象に影響し得るような様式で作動可能に連結される。調節エレメントは、適切な宿主細胞でリガンド標的の発現を導くように選択され、これらとしては、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、およびリガンド標的を適切な細胞区画に輸送する(通常は、細胞膜への挿入)のに必須の配列が挙げられるが、これらに限定されない。導入されるDNAが組換え発現ベクターにおけるcDNAである場合、そのcDNAの転写および/または翻訳を制御する調節エレメントは、多くの場合、ウイルス配列に由来する。調節エレメントは、当該分野で公知であり、そしてGoeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.(1990)に記載されている。
【0034】
リガンド標的をコードするDNAに連結される調節配列は、構成的な転写または誘導性の転写を提供するように選択し得るプロモーターを含む。種々のシステムにおける使用のために適切なプロモーターは、当該分野で公知である。例えば、マウス細胞における使用のために適切なプロモーターとしては、RSV LTR、MPSV LTR、SV40 IEP、およびメタロチオネインプロモーターが挙げられ、CMV IEPが、ヒト細胞における使用のために適切なプロモーターである。一般に使用されるウイルスプロモーターの例としては、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびSimianウイルス40、ならびにレトロウイルスLTRに由来するプロモーターが挙げられる。
【0035】
特定の実施形態において、リガンド標的をコードするDNAは、誘導性の制御エレメント(例えば、「誘導性プロモーター」またはエンハンサー)の制御下であり、その結果、発現が、宿主細胞を誘導性の制御エレメントに影響を及ぼす因子と接触させること(または接触させないこと)によって調節され得る。哺乳動物細胞で使用するための誘導性調節システムは、当該分野で公知であり、例えば、遺伝子発現が重金属イオン(Mayoら、(1982)Cell 29:99−108;Brinsterら、(1982)Nature 296:39−42;Searleら、(1985)Mol Cell Biol 5:1480−1489)、熱ショック(Nouerら、(1991)Heat Shock Response、Nouer編、CRC、Boca Raton、Fla.、167〜220頁)、ホルモン(Leeら、(1981)Nature 294:228−232;Hynesら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2038−2042;Klockら(1987)Nature 329:734−736;Israel & Kaufman(1989)Nuc.Acids Res.11:2589−2604およびPCT出願番号WO 93/23431)、テトラサイクリン(Gossen,M.およびBujard,H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−5551およびPCT出願番号WO 94/29442)またはFK506関連分子(PCT出願番号WO 94/18317)によって調節されるシステムである。
【0036】
本発明の別の実施形態において、リガンド標的をコードするDNAは、リガンド標的をコードするDNAの発現を構成的に駆動する調節配列(例えば、「構成プロモーター」または構成エンハンサー)の制御下にある。例示的な構成プロモーターとしては、以下の遺伝子に対するプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)(Scharfmannら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4626−4630(1991))、アデノシンデアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼホスホグリセロールムターゼ、βアクチンプロモーター(Laiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10006−10010(1989))、および当業者に公知の他の構成プロモーター。さらに、多くのウイルスプロモーターは、真核生物細胞において構成的に機能し、SV40初期プロモーターおよび後期プロモーター(BernoistおよびChambon、Nature、290:304(1981)を参照のこと);モロニー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの末端反復配列(LTR)(Weissら、RNA Tumor Viruses、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1985)を参照のこと);単純ヘルペスウイルス(HSV)のチミジンキナーゼ(TK)プロモーター(Wagnerら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、78:1441(1981)を参照のこと);サイトメガロウイルス最初期(IE1)プロモーター(Karasuyamaら、J.Exp.Med.、169:13(1989)を参照のこと);ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター(Yamamotoら、Cell、22:787(1980));アデノウイルス主後期プロモーター(Yamadaら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、82:3567(1985));および当業者に公知の他のウイルス由来の構成プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
(宿主細胞)
適切な宿主細胞が、各実施形態の特性に従って選択され得ることが理解される。1つの局面に従って、リガンド標的をコードするDNAによるトランスフェクションに適切な宿主細胞は、通常はそのリガンド標的を発現しない細胞である。これらの細胞において、測定される細胞応答は、リガンド標的とリガンドとの相互作用に反映すると考えられる。
【0038】
別の局面に従って、通常は野生型リガンド標的を発現する宿主細胞が、改変型リガンド標的または変異型リガンド標的をコードするDNAによってトランスフェクトされる。通常はリガンド標的を発現する宿主細胞において、野生型リガンド標的を発現する正常細胞のベースライン細胞応答特性が公知であり、その結果、そのベースラインとの差異が、改変型リガンド標的または変異型リガンド標的も発現することの効果に帰され得る。宿主細胞の選択が、発現ベクターの選択によって決定され得ることが理解される。宿主細胞としての使用に適切な培養細胞が、形質転換(トランスフェクト)および/または不死化され得る。適切な宿主細胞の例としては、HEK293、U937、COS−7、NIH/3T3、HeLa、CHO、CCRF−CEM、Jurkat、RAMOS、およびTHP−1細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
特定の実施形態において、非哺乳動物宿主細胞が適切であり得、それらとしてDrosophila melanogaster S2細胞、Spodoptera frugiperda Sf9細胞、High−5細胞、酵母細胞(Saccharomyces種またはPichia種が挙げられる)、および細菌細胞(例えば、E.coli)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明に従う宿主細胞としての使用に対する特定の細胞の適合性は、リガンド標的をコードするDNAをその細胞に導入する能力、およびそのリガンド標的を発現する能力に依存する。細胞は、接着性であっても非接着性であってもよい。宿主細胞は、その宿主細胞の前駆細胞の特定の望ましい特性に基づいて選択されても開発されてもよい。当業者が、特定の実施形態の目的、特徴、条件、および/または制約に従って、適切な宿主細胞を選択することが理解される。
【0041】
別の局面に従って、すでにリガンド標的を発現する宿主細胞が、リガンド標的をコードするDNAでのトランスフェクションなしに、改変型リガンド標的または変異型リガンド標的の発現を誘導するように処理され得る。1つの適切な方法としては、(例えば、化学的変異誘発または発光性変異誘発による)リガンド標的を発現する宿主細胞のインサイチュ変異誘発が挙げられる。別の適切な方法としては、リガンド標的を発現する宿主細胞の挿入突然変異(例えば、トランスポゾン変異誘発)が挙げられる。1つの実施形態において、宿主細胞は、活性化された1以上のトランスポゾンをすでに含む。別の実施形態において、1以上のトランスポゾンが宿主細胞に導入される。変異誘発後、細胞がスクリーニングされて、改変型リガンド標的または変異型リガンド標的を発現する細胞が同定される。
【0042】
宿主細胞はまた、正常細胞(例えば、血液細胞または一次組織単離物)を含み得る。宿主細胞としての使用に適切な血液細胞型としては、末梢血液細胞、特に、末梢血単核細胞(HPBMC)、好塩基球(多形核好塩基球、PMB)、好酸球(多形核好酸球、PME)、白血球、単球、好中球(多形核好中球、PMN)、血小板(platelet)(血小板(thrombocyte))、または赤血球細胞(赤血球;リガンド標的を発現する赤血球が、内因性リガンド標的を発現するか、または改変型リガンド標的の発現を誘導するためにトランスフェクションもしくは変異誘発が除核前の赤血球前駆体を使用して行われたことが理解される)が挙げられるが、これらに限定されない。そのような細胞は、新たに単離されてすぐに多重分析のために調製されても、単離されてその後分析のために調製される期間の間組織培養物中に置かれてもよい。1つの実施形態において。
【0043】
(細胞集団)
本発明は、本明細書中で開示される多重多標的スクリーニング法で使用するための薬物標的発現細胞集団を提供する。目的にリガンド標的を発現する細胞は、例えば、上記の方法のいずれかによって生成および同定され、細胞集団は、これらの細胞から成長される。各実施形態について、細胞集団は、その実施形態で使用される宿主細胞に適切な方法を使用して成長される。簡単に述べると、細胞集団は、細胞がリガンド標的の発現も容易にする条件下で、(サイトカイン、成長因子、および栄養分を添加することによって)細胞を培養物中での細胞分裂および細胞増殖を刺激するのに十分な1以上の因子とインキュベートすることによって成長される。用語「細胞増大(cell expansion)」は、例えば以下に記載されるような適切な細胞集団を生成するための、細胞増殖を刺激するプロセスを記載するために、しばしば当該分野で使用される:MatherおよびBarnes、Animal Cell Culture Methods、(1998)、Academic Press;Harrisonら、General Techniques of Cell Culture(1997)Cambridge University Press;およびDoyleら、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(1998)John Wiley and Sons。誘導プロモーターの制御下でリガンド標的を発現する細胞について、細胞手段は、誘発刺激の存在下で成長される。特定に実施形態において、リガンド標的の発現を誘発する刺激が、細胞増大プロセスの間加えられる。他の実施形態において、リガンド標的の発現を誘発する刺激が、増大された細胞集団が得られた後に加えられる。
【0044】
1つの局面に従って、細胞集団が成長され、その集団において、細胞は、1細胞あたり1つのリガンド標的の1つの野生型バージョンを発現する。1細胞あたり1つのリガンド標的の1つの野生型バージョンを発現する細胞は、任意の適切な方法(上記の方法のいずれかを含む)によって成長され得る。1つの実施形態において、細胞集団は、通常は野生型リガンド標的を発現する細胞から成長される。別の実施形態において、細胞集団は、通常は野生型リガンド標的を発現しない細胞で、野生型標的をコードするDNAでトランスフェクトされた細胞から成長される。複数の細胞集団が成長され得、各細胞集団は、1細胞あたり1つのリガンド標的の1つの野生型バージョンを発現する。
【0045】
別の局面に従って、細胞集団が成長され、その集団において、細胞は、1細胞あたり1つのリガンド標的の1つの改変体を発現する。1つの局面に従って、改変体は、天然に存在する野生型リガンド標的の改変体である。別の局面に従って、改変体は、リガンド標的の変異改変体である。1細胞あたり1つのリガンド標的の1つの改変体を発現する細胞集団は、任意の適切な方法(上記の方法のいずれかを含む)によって成長される。複数の細胞集団が成長され得、各細胞集団は、1細胞あたり1つのリガンド標的の1つの改変体を発現する。
【0046】
1つの局面に従って、細胞集団が成長され、その集団において細胞は、1細胞あたり1つよりも多いリガンド標的を発現する。1細胞あたり1つよりも多いリガンド標的を発現する細胞集団は、任意の適切な方法(上記の方法のいずれかを含む)を使用して成長され得る。細胞集団は、1つよりも多いリガンド標的をコードする1つよりも多いDNA配列でトランスフェクトされ得る。特定の実施形態において、細胞集団は、1細胞あたり1つよりも多い野生型リガンド標的を発現する細胞を含む。他の実施形態において、細胞集団は、1細胞あたり1つよりも多い改変型リガンドを発現する細胞を含む。1つの実施形態において、細胞集団は、1細胞あたり1つ以上の天然に存在する改変型リガンド標的を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、細胞集団は、1細胞あたり1つよりも多い変異改変型リガンド標的を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、細胞集団は、1細胞あたり1以上の天然に存在する改変型リガンド標的および1以上の変異改変型リガンド標的を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、細胞集団は、1細胞あたり野生型リガンド標的および変異型リガンド標的の両方を発現する細胞を含む。特定の実施形態において、細胞集団は、1細胞あたり野生型リガンド標的および変異型リガンド標的の両方を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、細胞集団は、1細胞あたり、野生型改変型リガンド標的および天然に存在する改変型リガンドの両方を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、細胞集団は、1細胞あたり、野生型変異改変型リガンド標的および変異改変型リガンド標的の両方を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、細胞集団は、同じ細胞中で野生型リガンド標的、天然に存在する改変型リガンド標的、および変異改変型リガンド標的を発現する細胞を含む。
【0047】
本発明の別の局面に従って、発現されるリガンド標的としては、抗体または他の結合物質によって認識される任意の発現タグまたはエピトープタグが挙げられる。適切な発現タグ(エピトープタグ)は、リガンド標的のリガンド結合特性または他の機能的活性を妨害しないことが理解される。発現タグは、宿主から組換え発現されたタンパク質を単離するために使用され得、精製、配列決定、または単離されたタンパク質のさらなる研究を可能にする。発現タグは、特に、細胞集団が1つよりも多い野生型リガンド標的または変異系変体リガンド標的を含む場合に、特定のリガンド標的を有する細胞を同定するために使用され得る。公知の発現タグの使用は、公知の方法および材料を使用する簡便な精製を可能にし、それによって、個々のタンパク質に特異的な抗血清または精製戦略を開発する必要性を排除する。適切な発現タグとしては、抗原(エピトープ)タグ(例えば、FLAG、c−MYC、HSV、V5、HA、ヘキサヒスチジン(HIS))、または当業者によって同定され得るものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
(2.各集団についての別個の光学的サインを生じるためのカラーコーディング細胞集団)
本発明の別の局面に従って、第2の工程は、各細胞集団についての別個の光学的サインを生じるためのカラーコーディング細胞集団を含む。本明細書中に提供されるカラーコーディング細胞集団は、蛍光色素を用いて細胞集団を染色して、例えば、単一細胞フローサイトメトリーによって、単一細胞分析に適切なカラーコーディング集団を発色させる工程を包含する。本明細書中に提供されるカラーコーディング細胞集団は、以下の実施例6に示されるように、非染色細胞集団についての別個の光学的サインを生じるために細胞集団を染色しないことを包含する。
【0049】
個々の蛍光色素および/または蛍光色素の組み合わせは、励起供給源および発光プロフィールに基づいて分解され得る各集団についての独特の「サイン」を生じるために、細胞集団を染色するために使用される。リガンド標的発現を達成するために使用されるトランスフェクション方法論または変異誘発方法に関わらず、1つ以上のリガンド標的を発現する各細胞集団は、細胞培養物において別々に増殖させられ、個々にカラーコーディングされ、その結果、任意の細胞集団が、その「サイン」励起/発光プロフィールによって別々に認識され得る。1つの実施形態において、1つのリガンド標的を発現する各細胞集団は、細胞培養物において別々に増殖させられ、個々にカラーコーディングされる。別の実施形態において、1つより多くのリガンド標的を発現する細胞集団は、細胞培養物において増殖され、カラーコーディングされ、その結果、その集団の「サイン」が、1つより多くのリガンド標的を用いて相関される。種々の実施形態において、カラーコーディング集団は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、またはそれ以上のリガンド標的を有し得る。
【0050】
「カラーコーディング」とは、他の蛍光色素または蛍光色素の組み合わせと識別され得る発光スペクトルを有し、使用される励起供給源および蛍光色素の発光プロフィールに基づく各集団についての別個の「光学的サイン」を生じる、個々の蛍光色素または蛍光色素の組み合わせを用いて各細胞集団を染色するプロセスをいう。各蛍光色素は、励起スペクトルおよび発光スペクトル全体を通して独特の最適な吸収強度および発光強度を有する励起スペクトルおよび発光スペクトルの別個の対を有する。独特のバンドの光を発する特定の励起レーザー源がカラーコーディングされた細胞を励起するために使用される場合、細胞は、蛍光発光獲得ハードウェアおよびソフトウェアによって検出および逆重畳され得る特定の蛍光パターンの光を発する。複数の染色集団が分析のために単一の集団にプールされる(各集団が単一または複数の染色の結果として別個の光学的サインを有する)場合、単一または複数のレーザーFCMを用いてプールされた集団を分析することによって各集団の別個の染色パターン(「光学的サイン」)を認識することが可能である。本発明の細胞集団の光学的サインの多様性は、異なる蛍光色素および蛍光色素の組み合わせを使用すること、ならびに組み合わせにおける蛍光色素の異なる比、および蛍光色素の異なる濃度(強度)を利用することから生じる。
【0051】
本明細書中に提供されるように分解され得る別個の集団の数は、追加のレーザーおよび発光検出経路で増加する。単一のレーザーシステムは、3〜4個の細胞集団を含む混合物を分割するために適切であり得るが、一方、3つのレーザーシステムは、図18および19に示されるように、20以上の細胞集団を分割し得る。
【0052】
一般的に、各集団のカラーコーディングは、各細胞集団を別々に染色することによって達成され、その後、これらの集団からの染色細胞が、混合され得る。次いで、カラーコーディング(染色)された細胞集団は、混合されて、同じリガンド(リガンド)に暴露され得、各集団における各集団の細胞の応答が個々に測定され得る。細胞は、蛍光色素標識で直接染色され得るか、または蛍光色素標識は、細胞に結合される「アンカー」分子に結合され得る。細胞は、発現されるリガンド標的上の発現タグに特異的な蛍光色素結合抗体を使用してカラーコーディングされ得る。適切な染色技術は、以下がある:(1)プローブは、各染色集団の細胞を均質かつ均一な状態に標識する;(2)プローブは、全ての集団で調査される生物学的読み出しまたはパラメーターを妨害しない;および(3)プローブは、均質な染色パターンを可能にするのに十分な長さで細胞中に残る。染色細胞の方法が、記載された方法に制限されないこと、および当業者が、本明細書中に提供されるように使用のためにカラーコーディング細胞に他の方法を適合させ得ることが理解される。
【0053】
(蛍光疎水標識(蛍光色素)を用いる直接的染色)
本発明の1つの局面に従って、1つ以上のリガンド標的を発現する細胞は、細胞を直接的に染色するために、蛍光疎水性分子(蛍光色素)を使用して直接染色され得る。この方法を使用して染色された細胞の複数の集団の分析は、図18に示される。
【0054】
適切な蛍光色素としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:蛍光カルボシアニンプローブ、ジアルキルカルボシアニンおよびジアルキルアミノスチリルプローブ、または他の疎水性(親油性)蛍光色素(例えば、FM 1−43(Invitrogen,Carlsbad CA;以前は、Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR)またはPKH−2またはPKH26プローブ(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO))。これらは、数日〜数週間インビトロまたはインビボで標識され得る。Bodipy665のような他の親油性蛍光色素はまた、これらの蛍光色素が細胞標識のために特異的に製造されていないとしても、使用され得る。LysoSensor Blue(Molecular Probes,Inc.)またはDNA stain Hoechst 33342のような特定の細胞小器官または細胞区画を標識する他のプローブもまた、それらが、数時間細胞内に保持され、スクリーニングで研究される細胞性応答を妨害しない限り、使用され得る。本開示は、さらに、細胞表面上または細胞内部で反応性基を標識する蛍光色素、特に、Invtrogen(Carsbad,CA)から入手可能なアミン反応性蛍光色素(Invtrogen(Carsbad,CA)から入手可能なスクシンイミジルエステル(SE)プローブを含むがこれに限定されない)を提供する。本発明における使用のためのさらなる適切な蛍光色素としては、蛍光ランタニド錯体(ユーロピウムおよびテルビウムの錯体を含む)、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリトロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、Cascade BlueTM、Texas Red、およびHaugland,The Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 6thEd.(1996),Molecular Probes Inc.,Eugene OR.(The Handbook of Fluorescent Probes and Indicators、9thEd.としても入手可能、http://www.probes.com/handbookにおいて「The Handbook,Web Edition」としてオンラインで入手可能)によって記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
さらなる標識としては、米国特許第6,673,943号に記載されるような蛍光色素複合体が挙げられる。簡単に述べると、このような錯体は、第1の吸収および発光スペクトルを有する第1またはドナー蛍光色素、ならびに第2の吸収および発光スペクトルを有する第2またはアクセプター蛍光色素(ここで、第1の蛍光色素または第2の蛍光色素の少なくとも1つは、シアニン色素である)を含む。第2の蛍光色素の発光最大の波長は、第1の蛍光色素の発光最大の波長よりも長く、そして第2の蛍光色素の吸収スペクトルの一部は、光での励起の際に第1の蛍光色素によって吸収されるエネルギーの第2の蛍光色素への移動のために、第1の蛍光色素の発光スペクトルの一部と重複する。複合体はまた、第1の蛍光色素と第2の蛍光色素との間で共鳴エネルギー移動を可能にするために蛍光色素を共有結合し、効率的なエネルギー移動を提供する距離によって蛍光色素を分離するリンカーを含む。これらの蛍光色素の複合体は、以下に記載される間接的染色方法での使用のための「アンカー分子」に結合し得る基を含み得る。本発明の標識複合体は、好ましくは、シアニン蛍光色素を他のシアニン蛍光色素を共有結合して、エネルギードナー−アクセプター複合体を形成することによって合成される。シアニン蛍光色素は、利用可能な幅広い範囲のスペクトル特性および構造バリエーションに起因して、これらの複合体の調製に特に有用である。例えば、Majumdarら、「Cyamine dye labeling reagent.Sulfoindocyanine succininmidyl ester」Bioconjugate Chemistry,4:105−111(1993)およびWaggonerらに対する米国特許第5,268,486号(これらの開示は、本明細書中において参考として援用される)を参照のこと。
【0056】
さらなる標識としては、米国特許第6,544,732号に記載されるようなナノクリスタルまたはQ−ドットが挙げられる。
【0057】
当業者は、例えば、Haugland,The Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 6thEd.(1996)Molecular Probes Inc.,Eugene OR、および関連刊行物において提供される手引きを使用して、特定の実施形態に適切な1つ以上の蛍光色素を選択し得る。
【0058】
1つの局面に従って、蛍光色素のストック溶液は、適切な溶媒を用いて調製され、染色溶液中の細胞に添加される。非限定的な例示的な実施形態において、プローブは、ストック溶液を提供するために、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはエタノール中に、1〜10mMで溶解される。1つの実施形態において、細胞は、適切な緩衝液(例えば、Hybridoma Medium(Sigma−Aldrich)中に懸濁され、そして各細胞集団が、細胞を約1×10〜1×10細胞/mlの濃度に希釈し、そして蛍光色素ストック溶液を緩衝液中の細胞の各溶液に、1〜10μMの最終濃度まで添加することによって、別々に染色される。染色溶液は、細胞に加えて、蛍光色素、および緩衝液、細胞の染色を容易にする他の成分を含み得る。本明細書中に記載される濃度および量は、非制限的であり、手引きの目的のみであることが理解される。当業者は、本明細書中に提供される技術を適用して、任意の特定の実施形態についての細胞、蛍光色素、および他の成分の最適な濃度を決定し得る。
【0059】
(アンカー分子および蛍光色素を使用する、2工程または間接的染色)
本開示はまた、2工程または間接的染色手順を提供し、ここで、1つ以上のリガンド標的を発現する細胞が、非蛍光性「アンカー分子」および蛍光色素によって最初に標識され、次いで、アンカー分子に結合される。この局面に従って、アンカー分子ストック溶液のアリコートは、細胞を標識するのに十分な最終濃度まで、適切な媒体中の細胞懸濁液に添加される。細胞懸濁物は、代表的に、1ミリリットル(ml)当たり1×10〜10×10個の細胞を有する。特定の実施形態において、特に光感受性化合物について、アンカー分子と混合される細胞が、暗い条件(例えば、箔に包まれる)下で維持されることが望ましい。細胞およびアンカー分子は、例えば、シェーカーまたは回転子プラットフォームにおいて混合される。細胞は、温度、細胞濃度、アンカー分子濃度、および標識の親和性に依存して、適切な時間、標識され得る。1つの実施形態において、ビオチン化ホスホエタノールアミン(ビオチン化DHPE、Invitrogen,Carlsbad CA)がアンカー分子として使用される。この2工程方法論を使用して染色される細胞の複数の集団の混合物の分析は、図19に示される。1つの実施形態において、ビオチン化DHPEは、1〜10mg/mlのストック溶液から、0.5〜10μg/mlの最終濃度まで、ハイブリドーマ培地中の細胞懸濁液(約1×10〜1×10細胞/ml)に添加される。細胞を箔に包み、30〜90分間、好ましくは、60分間、室温で回転子プラットフォーム上に配置した。
【0060】
本発明の1つの局面に従って、細胞を、アンカー分子で標識する工程の後で、最終の標識工程の前に、リガンドに対する細胞性応答をモニターするために1つ以上のインジケーター(indicator)色素を充填する。細胞性応答をモニターするためのインジケーター色素を細胞に充填するための適切な方法および組成物は、以下に開示される。特定の実施形態において、細胞内Ca2+(Ca2+)は、例えば、Indo−1色素またはFluo4色素(Invitrogen)を使用して、リガンド(リガンド)結合に応答した内部Ca2+ストアの動員のインジケーターとしたモニターされる。1つの実施形態において、細胞は、細胞を標識するためにアンカー分子とともにインキュベーションされた後に遠心分離され、1〜10×10細胞/mlの濃度で、適切な培地(例えば、ハイブリドーマ培地)中に懸濁される。
【0061】
細胞がアンカー分子で標識された後に、アンカー分子に結合する第2の標識が、細胞に添加される。第2の標識は、アンカー分子に結合するか、またはアンカー分子に結合する分子に結合される任意の蛍光分子を含み、その結果、第2の標識は、細胞膜に既に結合されているアンカー分子に結合し、それによって、その細胞をカラーコーディングする。必要に応じて、第2の標識は、細胞がアンカー分子で標識され、そして細胞性応答をモニターするためにインジケーター色素を充填された後に、添加される。一般的に、細胞を約30〜60分間、第2の標識とともにインキュベーションする。ビオチン化アンカー分子を使用する実施形態において、第2の標識は、一般的に、アビジンまたはストレプトアビジン、あるいは抗ビオチン抗体または改変アビジンもしくはストレプトアビジンのようなビオチンを認識し得る別の分子に結合された蛍光色素を含む。アンカー分子のようなビオチン化DHPEを使用する1つの実施形態において、FITC−ストレプトアビジンは、第2の標識として使用され、既に細胞膜中のビオチン化DHPEに結合することによって、細胞を標識した。
【0062】
第2の標識は、上記のように各細胞集団について「カラーコーディング」および別個の光学的サインを達成するために、各細胞集団が染色されるように選択された蛍光色素または蛍光色素の組み合わせを含む。ビオチン化アンカー分子を使用する特定の実施形態において、適切な蛍光色素としては、フルオレセインのストレプトアビジン結合体が挙げられ、クマリンまたはローダミンが使用され、これらには、AlexaTM蛍光色素(例えば、Alexa488、Alexa500、Alexa514、フィコエリトリン、Alexa594、Alexa647、Alexa660およびAlexa750(Invitrogen))のストレプトアビジン結合体形態またはアビジン結合体形態が挙げられる。図19は、ストレプトアビジン結合蛍光色素を使用する実施形態の結果を示す。アンカー分子結合分子に結合され得る実質的に任意の蛍光色素が利用され得るので、間接的染色方法は、独特の「サイン」吸収および発光スペクトルを発生するための幅広い範囲の選択肢を提供する。間接的染色方法は、さらに、細胞集団の均質な染色を提供する。例えば、アビジンまたはストレプトアビジンに結合し得る任意の蛍光色素が、ビオチン化アンカー分子で既に標識された細胞を染色するために利用され得る。本明細書中に提供されるように、間接的染色技術は、多数の別個に分解可能な細胞集団を生じる可能性を有する。
【0063】
本明細書中に提供される直接的染色技術および間接的染色技術の両方が、以下の場合に、本発明における使用に適切なカラーコーディング細胞集団を生じる:1)プローブが、各染色された細胞集団における細胞を均質かつ均一な状態に標識する場合;2)プローブが、細胞集団においてモニターされる細胞性応答を妨害しない場合;3)プローブが、細胞集団中でモニターされる細胞性応答の測定(または「読み出し」)を妨害しない場合;および4)分析を実行するのに十分な時間の間、均質なパターンで細胞中に残る場合。特定の実施形態において、プローブは、少なくとも約2時間、細胞中に残る。
【0064】
(細胞性応答をモニターするための、インジケーター色素の添加)
本発明の別の局面に従って、本発明の細胞は、リガンド標的のリガンドへの曝露に対する細胞性応答をモニターするために「インジケーター色素」として作用する1つ以上のさらなる蛍光色素を充填される。本明細書中に提供される場合、細胞性応答は、細胞生理学における変化として測定され、これには、内部Ca2+(Ca2+)ストアの動員、膜電位の変化、細胞質または細胞小器官内のpHの変化、およびCa2+以外の種々のイオンの細胞内濃度の変化が挙げられる。本明細書中に提供される「インジケーター色素」は、関連する細胞性応答を示す核酸染色を含む。例えば、Hoechst 33342は、クロマチン断片化および/またはアポトーシスを含み得る細胞性応答をモニターするために、可変DNA染色として使用され得る。本開示は、細胞性応答を測定するための方法を提供し、この方法は、細胞全体または細胞小器官において測定され得、例えば、細胞質または細胞小器官(例えば、ミトコンドリア、核、葉緑体、小胞体(ER)、ゴルジ装置、またはプロテアソーム)においてイオン濃度を測定し、形質膜および/または細胞小器官膜を横切る膜電位を測定する。
【0065】
1つの局面に従って、1つ以上のインジケーター色素が、細胞集団の染色(「カラーコーディング」)の前に添加される。1つの実施形態において、リガンド標的を有する細胞集団は、インジケーター色素を充填され、次いで、別個の光学的サインでカラーコーディングされる。別の実施形態において、リガンド標的を有する細胞集団は、インジケーター色素を充填され、次いで、亜集団に分割され、次いで、これらの各々が、別個の光学的サインでカラーコーディングされる。1つの局面に従って、1つ以上のインジケーター色素が、細胞集団を染色(「カラーコーディング」)する間に添加される。1つの実施形態において、表面染色およびインジケーター色素は、染色溶液中の細胞に一緒に添加される。別の局面に従って、1つ以上のインジケーター色素が、細胞集団の染色の後に添加される。1つの実施形態において、細胞集団は、カラーコーディングの後に染色され、次いで、インジケーター色素の充填のために新鮮な溶液中へと交換される。
【0066】
1つの局面に従って、細胞内Ca2+(Ca2+)は、リガンド標的とリガンド(リガンド)との相互作用に応答した内部Ca2+ストアの動員のインジケーターとしてモニターされる。特定の実施形態において、細胞および細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)中のCa2+は、The Handbook of Fluorescent Probes and Indicators,9th Ed.,Chapter 20,(Molecular Probes,Invitrogen;http://www.probes.com/handbookにおいて「The Handbook,Web Edition」としてオンラインで入手可能)に記載されるように、蛍光Ca2+インジケーター色素を使用して測定される。適切なCa2+インジケーター色素としては、Invitrogen(Carlsbad CA)から入手可能なIndo、Fluo、BAPTAインジケーター、特に、Indo−1、Fluo−3、Fluo−4、Oregon Green 488 BAPTA、Calcium Green、X−rhod−1およびFura Redインジケーターおよびそれらの改変物が挙げられるが、これらに限定されず、これらによって、幅広い濃度範囲でCa2+を検出し得る。特定の実施形態において、蛍光インジケーターは、改善された細胞保持およびより少ない区画化(compartmentalization)のために高分子量または低分子量のデキストランに結合される。特定の実施形態において、蛍光インジケーターは、膜近くのCa2+を測定するための親油性Ca2+インジケーターに結合され得る。Ca2+インジケーターを細胞に充填するための適切な方法は、DMSO中のストック溶液から細胞懸濁液へ、0.5〜10μMの濃度で色素のアセトキシメチルエステル(AM)形態を使用して、一方で、細胞をカラーコーディング染料で染色していることを包含する。一般的に、細胞を箔で巻いて、周囲の光による任意のプローブの光退色を妨げる。細胞は、一般的に、回転プラットフォームまたは振動プラットフォーム上に配置されて、細胞が懸濁液に維持される。細胞を懸濁液中で、適切な時間(しばしば、約30分〜約90分、代表的には、約60分)、適切な温度でインキュベーションされる。特定の実施形態に依存して、細胞は、室温(例えば、25℃)、またはより低いもしくはより高い温度(例えば、37℃)にインキュベーションされ得る。当業者は、各特定の実施形態に適切な標識化条件およびインキュベーション条件を決定し得る。
【0067】
別の局面に従って、他の二価カチオンの濃度は、リガンド標的とリガンド(リガンド)との相互作用に応答してモニターされる。特定の実施形態において、細胞および細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)中の二価カチオン(Mg2+、Zn2+、Ba2+、Cd2+、およびSr2+を含むがこれらに限定されない)は、The Handbook of Fluorescent Probes and Indicators,9th Ed.,Chapter 20,(Molecular Probes,Invitrogen;http://www.probes.com/handbookにおいて「The Handbook,Web Edition」としてオンラインで入手可能)に記載されるように蛍光インジケーターを使用して測定される。1つの局面に従って、亜鉛濃度は、fura−2のような名目上Ca2+検出のために設計された蛍光インジケーターを使用して、またはより高いZn2+選択性を有する蛍光インジケーター(例えば、FuraZin−1、IndoZin−1、FluoZin−1、FluoZin−2 およびRhodZin−1(全てInvitrogenから入手可能)(これらは、最小の妨害性のCa2+感受性で、0.1〜100μMの範囲のZn2+を検出する))を使用して、または本質的にCa2+に対する感受性を有さないZn2+インジケーター色素(例えば、Newport Green DCFおよびNewport Green PDX(Invitrogenから入手可能)を使用して、測定され得る。これらのインジケーターのスペクトル応答は、同様に名付けられたCa2+インジケーターのスペクトル応答を密接に模倣し、IndoZin−1は、Zn2+依存性の励起スペクトルシフトおよび発光スペクトルシフトのそれぞれを示し、そしてFluoZin−2およびRhodZin−1は、付随するスペクトルシフト無しで、Zn2+依存性蛍光を示す(Handbook of Molecular Probes、上記、Chapter 20を参照のこと)。本発明の「カラーコーディング」の局面によって、上記亜鉛インジケーター色素を含む細胞が、例えば、類似のスペクトル応答を有するCa2+インジケーターを含む混合細胞懸濁液中で分析されることを可能にする。なぜなら、各細胞のスペクトル応答は、その細胞の独特の光学的サインと相関するからである。
【0068】
別の局面に従って、膜電位は、リガンド標的とリガンド(リガンド)との相互作用に応答する膜貫通イオンフラックスのインジケーターとしてモニターされる。ここで、このフラックスは、膜を横切る電気化学電位を変化させるのに十分な電荷を運ぶ。特定の実施形態において、細胞および細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)の膜電位は、The Handbook of Fluorescent Probes and Indicators,9th Ed.,Chapter 23,(Molecular Probes,Invitrogen;http://www.probes.com/handbookにおいて「The Handbook,Web Edition」としてオンラインで入手可能)およびCelis,Ed.,Cell Biology:A Laboratory Handbook,2nd Ed.,Vol.3,pp.375−379(1998)に記載されるように、電位差計光学プローブを使用して測定される。この局面に従って、電位差計光学プローブは、リガンド標的とリガンドとの相互作用に応答する膜電位の変化を検出するために使用される。膜電位の増加および減少、または膜過分極および脱分極のそれぞれは、例えば、神経インパルス伝播、筋肉収縮、細胞シグナル伝達およびイオンチャネルゲーティングに関与する細胞性応答において中心的な役割を果たす。電位差計プローブは、これらの細胞プロセスを研究するため、および細胞生存能力を評価するため、新規なリガンドを高スループットでスクリーニングするための重要なツールである。電位差計プローブとしては、カチオン性または双性イオン性スチリル色素、カチオン性カルボシアニンおよびローダミン、アニオン性オキサノールおよびハイブリッドオキサノール、メロシアニン540、およびJC−1が挙げられるが、これらに限定されない。当業者が、細胞における蓄積、応答機構および毒性のような因子に基づいて、特定の実施形態において使用するために色素を選択し得ることが理解される。本明細書中に提供される画像化技術とともに、これらのプローブは、高いレベルのサンプリング周波数および空間分解能で励起可能細胞を横切る膜電位のバリエーションをマッピングするのに使用され得る。
【0069】
なお別の局面に従って、種々のカチオン(例えば、NaもしくはK)またはアニオン(例えば、Cl、ホスフェート、ピロホスフェート、ニトレート、またはスルフェート)の任意の1つの細胞内濃度は、リガンド標的とリガンド(リガンド)との相互作用に対する細胞性応答のインジケーターである。特定の実施形態において、これらのイオン濃度は、The Handbook of Fluorescent Probes and Indicators,9th Ed.,Chapter 22,(Molecular Probes,Invitrogen;http://www.probes.com/handbookにおいて「The Handbook,Web Edition」としてオンラインで入手可能)に記載されるように、インジケーターを使用して測定される。適切なカチオンインジケーターとしては、クラウンエーテルキレーターに連結されたベンゾフラニル発蛍光団(例えば、Invitrogen(Carlsbad CA)から入手可能なPBFIおよびSBFI)、ここで、カチオン選択性は、クラウンエーテルの空洞サイズによって与えられる)が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態において、カチオンがSBFIまたはPBFIに結合する場合、インジケーターの蛍光量子収量は、増加し、その励起ピークは狭くなり、そしてその励起最大は、より短い波長に移動し、340/380nmにおいて励起される蛍光強度の比に有意な変化をもたらす。適切な塩化物(Cl)インジケーターとしては、6−メチル−N−(3−スルホプロピル)キノリニウム(SPQ)、N−(エトキシカルボニルメチル)−6−メトキシキノリニウムブロミド(MQAE)、6−メトキシ−N−エチルキノリニウムヨージド(MEQ)またはルシゲニン(全て、Invitrogen(Carlsbad CA)から入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。モノクロロビマンは、グルタチオンプローブとして使用され得る蛍光色素である。
【0070】
(3.カラーコーディングされた(color−coded)細胞集団の混合細胞懸濁液中への混合)
本発明において提供される場合、カラーコーディングされた細胞は、複数の解像可能(resolvable)にカラーコーディングされた集団由来の細胞を含む混合細胞懸濁液を抵抗するために、混合される。一般的に、細胞集団は、上記のように染色され、各カラーコーディングされた細胞集団は、混合前に、染色溶液から分離されて懸濁緩衝液に移される。1つの例示的実施形態において、このカラーコーディングされた細胞は、緩やかな遠心分離によって遠心沈殿され、適切な干渉液中に再懸濁される。適切な緩衝液は、多数の供給元(例えば、Sigma−Aldrich)から得られるハイブリドーマ培地、アッセイ緩衝液、または、例えば、宿主細胞の選択および/または特定の実施形態に取り入れられている計測に依存して当業者によって選択され得る、他に規定された培地を含む。次いで、別個にカラーコーディングされた細胞集団を含む細胞懸濁液は、所望される場合、混合細胞懸濁液を提供するために混合される。混合細胞懸濁液において、細胞は、別個の光学的サインを有する、複数の解像可能にカラーコーディングされた細胞集団から与えられる。蛍光色素標識細胞がレーザー源によって励起されて、光学フィルターを通して発光(emission)が収集される場合、各細胞集団に対して提供されるこの別個にカラーコーディングされた光学的サインに基づいて、混合細胞懸濁液中の各細胞の起源が検出可能である。各細胞集団が解像され得る限り、混合され得る細胞集団の数に既知の制限がないことが理解される。所望される場合、細胞は、細胞を含有する容器を振盪機または回転機(nutator)に配置することによって、細胞は懸濁液中に維持され得る。
【0071】
(4.フローサイトメトリーによる集団の分析)
本発明の別の局面によると、混合細胞懸濁液は、リガンドと接触させられて、フローサイトメトリーシステムで分析される。上記のように、フローサイトメトリーシステムに導入された混合細胞懸濁液は、リガンド標的を発現し、細胞応答をモニタリングするための1つ以上のインジケーター色素を有するカラーコーディングされた細胞を含む。フローサイトメトリーによる分析の間、各細胞の源集団は、カラーコーディングされた蛍光色素を測定することによって決定され、そしてこの細胞の、リガンドに対する細胞応答は、インジケーター色素を測定することによって決定される。
【0072】
特定の実施形態において、混合細胞懸濁液は、自動混合システムによってリガンドと接触し、そして自動サンプル投入フローサイトメトリーシステムによって分析される。このフローサイトメトリーシステムでは、混合遅延(delay)は低くなければならず、懸濁液中の細胞は、リガンドと迅速かつ徹底的に混合されて、結果として全細胞が許容可能な短期間内(例えば、約0.5秒以内もしくは約1秒以内、もしくは約1.5秒以内、もしくは約2秒以内、もしくは約2.5秒以内、もしくは約3秒以内、)でリガンドに曝露されなければならないことが、理解される。一実施形態においては、全ての細胞が約2秒以下の混合遅延でリガンドと接触するように細胞およびリガンドが混合されなければならない。
【0073】
細胞およびリガンドが徹底的に混合された後、この混合物は、次いで、フローサイトメトリーシステムに注入される。「注入遅延」とは、混合から注入までの期間をいう。「注入期間」とは、細胞とリガンドとの混合物を注入するのに必要な時間の長さをいう。特定の実施形態の条件に依存して、当業者によって最適な注入遅延および注入期間が決定され得ることが理解される。例えば、リガンド標的とリガンドとの相互作用に対する細胞応答の反応速度が決定されている場合、最適な注入遅延および注入期間が制御されて、正確な時間での細胞応答の測定を可能にしなければならない。同様に、短寿命の一過性細胞応答が測定されている場合、注入遅延および注入期間は、できるだけ短くし、一過性の事象の正確な測定を促進すべきである。一実施形態において、この混合物は、約2秒(注入遅延)以内にフローサイトメトリーシステムに注入され、この細胞は約5秒の期間(注入期間)にわたって注入される。
【0074】
本発明の一局面によると、細胞およびリガンドは、以下の節(表題「高スループット流体システムのための直接混合および直接注入」)、および同時係属中の特許出願(2004年5月7日に出願された、発明の名称「Direct sample mixing and injection for high throughput fluidic systems」および「Sample analysis system employing direct sample mixing and injection」)(上記内容の全体は、本明細書において参考として援用される)で詳細に記載される、自動サンプル混合方法およびその装置ならびに自動サンプル注入法およびその装置を用いて混合され、注入される。
【0075】
(分析:混合細胞懸濁液中のカラーコーディングされた細胞の解像)
本発明の別の局面によると、フローサイトメトリーシステムにおいて、1つ以上のレーザー源が使用されて、混合物中の各蛍光色素標識細胞を励起する。その後、装置の発光収集経路(蛍光軸)を介して蛍光発光が収集され、各蛍光色素の発光の特定領域が、受容された波長を記録する検出器に伝達される。蛍光色素によって発光された蛍光は、例えば、スペクトル操作ミラー(spectral steering mirror)、ダイクロイック、およびフィルターを用いて検出器に伝達され得る。特定の実施形態において、蛍光色素によって放射される蛍光は、特定の波長の光が通過することを可能にする一方で、他の波長を反射するダイクロイックミラーを通る前に、フィルターを通過し得る。本発明における使用に適切な光検出器および/または蛍光検出器は、光電子倍増管もしくは当該分野で公知の同様のデバイスである。これらは、光信号を電気インパルスに変換し、結果として、それによって検出される光は、フローサイトメトリーシステムを通過するカラーコーディングされた細胞に関連し得る。光検出器および蛍光検出器からの電気信号は、代表的に、表示、保存、および分析下で細胞の1つ以上の特徴を決定し得るためのさらなる処理の目的のための分析システムに伝達される。以下に提供される例示的実施形態は、上述をより詳細に記載する。
【0076】
本明細書において提供される場合、カラーコーディングされた細胞に使用される各蛍光色素または蛍光色素の組み合わせの「サイン」励起/発光プロフィール(光学的サイン)は、各カラーコーディングされた細胞を同定する能力を提供する。この各カラーコーディングされた細胞の光学的サインは、混合物中の他の全てのカラーコーディングされた細胞からそれを解像することを可能にする。各蛍光色素または蛍光色素の組み合わせの最適なサインが検出され得る限り、各蛍光色素が最適に励起されることも、各発光がその至適状態で収集されることも必要ではないことが理解される。
【0077】
上記で注意したように、各々が固有の光学的サインを有し、本明細書において提供されるように混合および分析され得る種々の細胞手段の数に対する、理論的制限は存在しない。本明細書において提供されるように解像され得る細胞集団の数に対する唯一の制限は、実施形態で使用されるフローサイトメトリーシステムの光学的性能、または特定の実施形態に対して利用可能な蛍光色素のような制約から生じるということが、理解される。同様であるが同一でない蛍光色素発光プロフィールを有する細胞は、混合細胞懸濁液中で組み合わせられ得、これらの蛍光色素からの発光データは、単一の二重発光(dual emission)プロット(二変量)に組み合わせられ得、そして、混合細胞懸濁液中の各細胞は、それにもかかわらず、同定され、解像され得る。種々の実施形態において、2、3、4、5、6、7、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50もしくはそれ以上の別個の細胞集団からの細胞が、混合細胞懸濁液中で混合され、そして各細胞は、各細胞から収集された発光プロフィール(光学的サイン)に基づいて、互いの細胞から解像された。
【0078】
(分析:単一のカラーコーディングされた細胞における細胞応答の多重測定(multiplexed measurement))
本開示は、フローサイトメトリーシステムが使用されて同じ細胞のいくつかの細胞特性の複数パラメーター(multiparameter)測定、および同時もしくはほぼ同時に複数の別個の細胞の複数パラメーター測定を行う、多重設計を提供する。本明細書において提供される多重システムは、各細胞の少なくとも2つの局面:細胞応答(例えば、リガンドと細胞によって発現されたリガンド標的との相互作用によって誘発されたカルシウム動員もしくは膜内外電位);および/または光学的サインを提供して、細胞応答が測定された細胞集団の供給源を同定および解像する、励起/発光プロフィール、を測定する。
【0079】
1つの局面によると、本明細書において提供される多重多標的(multiplexed multitarget)システムは、単一リガンドと複数リガンド標的との相互作用を測定するために使用され得る。特定の実施形態において、本明細書において提供される多重多標的システムは、同じサンプルにおける単一リガンドと複数リガンド標的との相互作用を測定するために使用される。例えば、細胞応答および光学的サインは、複数の供給源集団に由来する細胞を含むサンプルの各細胞(各供給源集団由来の細胞は、1つ以上の別個のリガンド標的を発現する)について測定される。特定の実施形態において、このシステムは、野生型リガンド標的を発現する細胞ならびに複数の改変体リガンド標的および変異体リガンド標的を発現する細胞を含む混合細胞懸濁液中における、各細胞の細胞応答を同定および測定するために使用される。
【0080】
別の局面によると、本明細書において提供されるこの多重多標的システムは、単一リガンド標的と複数のリガンドとの相互作用を測定するために使用され得る。一般的に、これは、単一リガンド標的と複数のリガンドとの相互作用が、リガンド標的を発現する細胞を含む複数の別個のサンプル(各サンプルは、異なるリガンドに曝露されている)を用いて行われることを必要とする。本明細書において提供される場合、別個のサンプルから得られたデータは、リガンド標的とリガンドとの相互作用を分析する目的のために組み合わせられ得、比較され得る。さらに本明細書において提供される場合、本発明の多重多標的システムを用いて得られたデータは、複数リガンド標的と複数のリガンドとの相互作用を分析するために使用され得る。
【0081】
以下の非限定的な例示的実施形態は、本発明の多重多標的スクリーニング法の多機能性を例証する。非限定的例では、10種の異なるカラーコーディングされた細胞集団が上記のように調製される。ここで、各集団の細胞は、野生型薬物レセプターを発現し、この光学的サインを有する。この実施形態において、一つの集団の細胞によって発現される野生型薬物レセプターは、他の9種のカラーコーディングされた細胞集団の各々によって発現された野生型薬物レセプターとは区別される。混合懸濁液は、10種のカラーコーディングされた集団の各々からサンプルを取ることによって上記のように調製される。これらの細胞は、Caインジケーター色素で負荷され、そしてこの懸濁液は、11のアリコートに分割される。10個のアリコートは、10個の別個のリガンドと混合されて、10個の異なるアッセイを形成する。各アリコート(アッセイ)は、フローサイトメトリーシステムに注入され、そしてアリコートの各細胞の光学的サインおよびCaが、測定される。アリコートの各細胞から得られたシグナルは、逆重畳積分され、解析される。混合細胞懸濁液の残りのアリコートは、リガンドに曝露されずにフローサイトメトリーシステムに注入されて、混合細胞懸濁液中に見出される細胞のCaおよび光学的サインの質的コントロールおよびベースライン測定を提供する。各細胞の光学的サインは、どのリガンド標的がその細胞上で発現されているかを表した。各細胞のCa測定は、その細胞によって発現されたリガンド標的と、その細胞が曝露されたリガンドとの相互作用によって誘発されたある細胞応答の量的測定を提供した。アリコート(アッセイ)内では、10の別個の供給源集団の各々から得られたCa値の比較は、種々の標的に対する単一リガンドの効果の基準を提供した。10のアリコートの各々における同じ供給源集団に由来する細胞から得られたCa値の比較は、同じリガンド標的に対する種々のリガンドの影響の測定を提供した。
【0082】
上記で注意したように、用語「多重」とは、複数シグナルの同時もしくはほぼ同時の測定を指すことを意図する。シグナルの「同時もしくはほぼ同時の測定」のための時間枠が、複数の細胞を含むサンプル中の各細胞からの細胞応答の測定値および光学的サインを収集するのに必要とする時間枠を意味することが、理解される。当業者が、特定の実施形態における目的のリガンド標的およびリガンドに依存して、本明細書において提供されるような多重多標的スクリーニングを可能にする実験条件を決定し得ることが理解される。
(5.集団の解像およびデータの逆重畳積分)
本発明の別の実施形態によると、サンプル中の各細胞からのデータは、適切なコンピュータで読み取り可能な形式に収集され、分析される。本発明における使用に適切なフローサイトメトリーシステムが、データ収集手段、データ分析手段、および記録手段(例えばコンピュータ、ここでは、複数のデータチャンネルが、各細胞によって発せられたシグナル(データ)を、それがフローサイトメーターの検出領域を通過する場合に記録し得、そして所望の情報を得るためにデータを分析し得る。)を含むことが理解される。各細胞によって発せられたシグナルもしくはデータは、特定の実施形態のために適切な手段によって、例えば、電気的シグナルとして、または(米国特許第6,248,590号に記載されるように)細胞の特徴を捉えた画像として、または電荷結合素子(CCD)検出器によって捕獲された光として、捕獲され得る。当業者は、特定の実施形態において作られたシグナルに適切な、そしてデータ分析に適切な、データ捕獲手段を選択し得る。
【0083】
各細胞から収集されたデータは、別個の細胞集団およびそれらの細胞応答を解析するため、その細胞の供給源細胞集団を同定するために使用される。一般的に、この細胞集団は、ND、OR、NOTおよび他の演算子を用いた適切なブール理論を採用してカラーコーディングされた細胞および試験化合物に対する細胞応答に関連する情報を解析する、論理的ゲーティング分析(logical gating analysis)ソフトウェアを用いて互いに解析される。
【0084】
測定されるパラメーターとしては、形態、蛍光、蛍光偏光、蛍光寿命、入射光散乱、電磁界誘導、吸光、発光、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、および生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、複数発光もしくは複数パラメーターが測定され、二重パラメータープロットが使用されて、「コントロール」細胞集団からの結果と試験される薬物化合物に曝された種々の細胞集団からの結果との間の差をより明瞭に解析する。例示的実施形態において、特定のリガンドに曝された混合細胞懸濁液中の生存細胞、初期アポトーシス細胞、死細胞、および細片を区別することによって、アポトーシスの種々の段階にある細胞を検出するために、アポトーシスの複数のインジケーターが測定される。一実施形態において、核酸染色およびミトコンドリア染色は、生存細胞中におけるアポトーシスを検出するための二重染色技術に使用される(Pootら,(1997)Cytometry 27:358−364;Hamoriら,(1980)Cytometry 1:132−135.(1980);Pootら,Human Genetics 104,10−14)。特定の実施形態において、DNA特異的(核特異的)な生存可能な染色として、ヘキスト33342が使用され、ヨウ化プロピジウム(PI)は、死細胞のみを染色し得る膜非透過性DNA染色として使用され、そして種々のSYTOTM染色は、生細胞の核、ミトコンドリア、および細胞質内の核酸(DNAおよびRNA)を染色し得る(ヘキスト33342、PI、およびSYTOTMは、Molecular Probes,Invitrogenから販売される)。この実施形態において、生細胞は、ヘキスト33342染色に対してポジティブであり、PI染色に対してネガティブである。初期アポトーシス細胞は、ヘキスト33342ポジティブ、PIネガティブであり減少した(低)レベルのSYTOTM染色を示す。そして死細胞は、PI染色に対してポジティブである。本明細書において提供されるように、混合細胞懸濁液中の細胞には、アポトーシスおよび崩壊の種々の段階が続き得る。別の実施形態としては、ミトコンドリア透過性の遷移の測定が挙げられる。これは、細胞アポトーシスの開始の初期のインジケーターである。ミトコンドリア透過性の遷移は、代表的に、ミトコンドリア膜を横切る電気化学的勾配の崩壊として規定され、膜電位の変化として、例えば、蛍光カチオン色素、5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチル−ベンズアミダゾロカルボシアニン(benzamidazolocarbocyanin)ヨウ化物(一般に、JC−1(Cell Technology Inc.,Mountain View CA)として知られる)を用いて、測定される。別の実施形態において、混合細胞懸濁液中の細胞は、ヘキスト33342とJC−1との組み合わせに曝露される。ここで、ヘキスト33342染色は、アポトーシスの間のクロマチン断片化を評価するために使用され、JC−1は、ミトコンドリア透過性遷移の状態にある細胞を検出するために使用される。当業者が、特定の実施形態における目的の細胞応答に関連する複数パラメーターを測定する、他の実施形態を設計し得ることが理解される。
【0085】
特定の実施形態において、データは、フローサイトメトリー標準(FCS)ファイル形式で収集される。これは、データがリアルタイムで再生されることを可能にする。多くの市販のフローサイトメーターが、細胞から収集したデータを、FCSファイル形式の種々のリリースバージョン(FCS1.0、FCS2.0、もしくはFCS3.0ファイル形式)へと保存することが、理解される。FCS2.0形式は、Data File Standard Committee of the Society for Flow Cytometryによって開発され、この規格は、論文(表題「Data File Standard for Flow Cytometry」(1990),Cytometry 11:323−332)で公開された。FCS データファイル形式に関する情報は、以下のサイトから公的に利用可能である:http://nucleus.immunol.washington.edu/ISAC/Ref_Data/refs.htm。さらに、非FCSファイル構造が、特定のフローサイトメトリーシステム(例えば、EPICS and Profileフローシステム(Beckman Coulter,Fullerton CA))において使用されることが理解される(EPICS and Profileファイルは、「FCAP−inp」通信プログラムによってFCSファイルに変換され得る)。
【0086】
一旦別個の集団がカラーコーディングによって同定された場合、いくつかの統計学的方法のいずれかによって各集団のデータ分析が行われる。例えば、インジケーターとしてIndo−1を用いてサンプル中におけるCa応答が測定される場合、各集団の基本状態は、集団の希釈緩衝液コントロールサンプルにおける分析を実施することによって規定される。平均相対Caレベルは、各集団に対して計算され、1以上の標準偏差が計算される。平均値を1標準偏差、2標準偏差、3標準偏差もしくはそれ以上の標準偏差で上回る標準偏差を使用することを決定することが、「ポジティブ応答閾値」の値を選択するための経験的決定であることが、理解される。各カラーコーディングされた集団に対して、リガンドに曝露された後に所定のポジティブ応答閾値を上回る値を有する細胞のパーセンテージ(percentage)は、「応答パーセンテージ(response percentage)」として計算される。計算された応答パーセンテージの値は、コンピュータで読み取り可能な媒体に取り込まれる;応答パーセンテージは、ASCIIファイルとしてデータベースに出力され得るか、または適切な表示(例えば、各リガンドに対する各集団の応答の棒グラフ)に変換され得る。リガンドに曝露された任意の1集団とそのコントロールとの間の差の統計学的測定は、任意の適切な標準的統計学的試験(例えば、二段階(two state)カイ二乗検定)を用いて実施され得る。そして、一実施形態において、カイ二乗統計量は、リガンド処理されたサンプルがコントロールと異なる細胞応答を誘発する信頼水準を示す。別の実施形態において、Ca応答データは、リガンドに曝露された各集団についての平均Caレベルおよび変動係数が計算されるアプローチを用いて分析され、これらの値は、ベースラインのコントロールサンプルの対応する値と比較される。他の応答パラメーター(例えば、膜電位もしくは免疫蛍光)についてのデータ分析は、他の方法(例えば、「パーセントポジティブ」計算もしくは集団平均強度の決定)で利用され得る。さらに他の応答測定(例えば、上記のようにミトコンドリア膜電位を評価するためのJC−1の使用)は、より複雑な手順(例えば、コントロールと処理集団との間の差を評価するための二重発光プロット)を含み得る。
【0087】
Ca応答を測定する場合、単一細胞分析の能力は、活性の弱い化合物を検出する能力に関する分解能を増強する。この増強された分解能は、所定の応答閾値を超えている集団中の細胞のパーセンテージとしてデータが分析された場合にのみ明らかにされる。図21は、静止状態(最初の20秒)および1μM NDP−αMSH(MC4Rのリガンド)の添加後(ギャップ後)にフローサイトメトリーによって測定された、メラノコルチン4レセプター(MC4R)でトランスフェクトされたHEK293細胞中で測定されたCaレベルの分布を示す。図21において、各点は、単一の細胞を表す。ここで、画素空間当たり1つ以上の細胞は、白黒プロットにおいてはより暗い陰影からより明るい陰影への移行によって、および色付きプロットにおいては赤〜黄〜白色への移行(これらの移行もまた定量的に取り込まれる)によって、表示されている。図21のプロットは、集団の継続的なサンプリング結果を示す。図21において、実線は、単一細胞データとして計算された、X軸(時間)の各範囲(bin)でのサンプリングした集団の平均を表す。集団の平均応答を経時的に測定する装置(例えば、分光蛍光計もしくは蛍光画像プレートリーダー(FLIPRTM))は、上記実線のようなプロットを作製するが、一方本明細書において提供されるような単一細胞分析は、異なる情報をもたらす。例えば分光蛍光計またはFLIPRTMによって測定された、この平均応答は、サンプル中の全ての細胞において細胞応答が、経時的に比較的ゆっくりと発生し、最終的にピーク値に到達して、その後ゆっくりと基本レベルまで減少することを意味する。対照的に、サンプルの単一細胞分析は、以下の結果を提供する:(1)サンプル中の全細胞は、静止状態で、非常に類似した低いCaレベルを示す;(2)一部の細胞のみが、リガンドに応答する;そして(3)その応答は、ほとんど瞬間的であり、したがって応答する細胞は、非常に迅速にそのピークに達する。加えて、このピークの後、細胞の1分画が、基本状態を超えてさらに上昇されるCaレベルを有するとして検出され得る、持続的期間が続く。この結果は、「平均応答」プロットではほとんど分からない。この挙動は、本明細書において提供されるように単一細胞レベルで分析された全GPCRに関して、一貫して見られる。このような応答および基本集団の、回転されたヒストグラムプロットが、図22の左パネルに示される。このプロットでは、CaレベルがX軸に示され、そして各Caレベルを達成している細胞の数はY軸上にある。応答がこのような迅速な開始の「全か無か」挙動を示すため、応答は、閾値Caレベルを確立し、そして閾値レベルを超えるサンプルのパーセンテージ、または「パーセント応答(percent responding)」を決定することによって、定量化され得る。試験化合物に曝露された全サンプルは、次いで、緩衝液コントロールサンプルの存在下での基本状態にあって閾値Caレベルを超える細胞のパーセンテージと比較され得る。閾値は、緩衝液コントロールサンプル中でのCaレベルの平均を計算し、そして平均を1以上上回る標準偏差を計算することによって設定される。1以上の標準偏差の使用の選択は、緩衝液コントロールサンプルと完全に活性化されたポジティブコントロールサンプルとの間の誤差を最小化することに基づく。代表的に、閾値誤差範囲として、1〜3標準偏差が使用される。図22の中央のパネルは、2つの緩衝液コントロールサンプル、および1μM セロトニン(5HT)で刺激された5HT2Aレセプター保有細胞を含む実験サンプルの応答プロットを示す。自動サンプリングフローサイトメトリーおよび単一細胞分析を用いた結果は、3つの個別の「プラグ」に関するCaレベルが、左から右へ示されることを示す。平均Caレベルを2標準偏差超えた閾値レベルは、矢印で示される。本明細書において提供されるような単一細胞フローサイトメトリーはサンプルを迅速に分析し得るので、約100〜200細胞もしくはそれ以上が短期間に分析され得る。このデータは二元的形式(細胞が閾値を超えたか否か)へと換算されるので、結果は、(観察パーセント−予測パーセント)/(予測パーセント)として計算される、自由度1を用いたカイ二乗技術によって正確に分析される。データ分析は、各サンプルについての応答頻度に従ってカイ二乗値を自動的に計算する自動ソフトウェアアルゴリズムにおいて、実行される。閾値を超えると予測される細胞のパーセンテージ(予測パーセント)は、緩衝液コントロールサンプルから決定され、閾値を超えることが観察された細胞のパーセンテージ(観察パーセント)は、実際に測定されたものの頻度である。応答頻度は、いくつかの方法で表され得、そして一例は、図22の右パネルに示される。この例では、頻度は、サンプルあたりに基づく単純な棒グラフである。リガンドで刺激されたサンプルについての結果を示すこの例では、シグナル対ベースライン比(非刺激応答頻度に対する刺激応答頻度)は、50を超える。分析された多数の細胞、カイ二乗分析によって決定された大きな信頼水準、およびこの分析アルゴリズムから得られた高いシグナル対ベースライン比は、本明細書において提供される分析の高い分解能および高い統計的有意性の基本である。
【0088】
図23に示される、上記応答分析アルゴリズムによって得られる高分解能の値の非限定的な例においては、5HT2Aレセプター保有細胞を、自動フローサイトメトリーを用いて、増加した濃度の同族のリガンド、セロトニン(5HT)により刺激した。サンプルからのデータを分析し、平均応答の大きさもしくは応答細胞の頻度を決定し、そしてそのシグナル対ノイズ値を、式:(刺激値−ベースラインコントロール値)/(ベースライン値)を用いて計算した。図23は、全濃度で、頻度分析計算値のシグナル対ノイズがサンプル平均計算値のシグナル対ノイズを超えたことを示す。より重要なことには、図23は、減少したリガンドの濃度で、頻度分析計算値のシグナル対ノイズがサンプル平均計算値のシグナル対ノイズを超えたことを示す。この結果は、本明細書において提供される頻度分析法が、サンプル平均計算法によって検出されない弱い活性のリガンドの分解能を許容することを示す。
【0089】
実施例3に記載される非限定的な例において、ヒトHEK293細胞の8種の別個にカラーコーディングされた集団を含む混合細胞懸濁液を、単一細胞フローサイトメトリーによって分析し、そして8つの異なる細胞集団は、図19に示されるように同時に解像された。説明の目的で、図19Cで示されるAlexa594で染色された細胞集団を、図19A、図19B、図19Dで示された他の3つの二変数ドットプロット中に同定されるように、他の細胞集団の各々の周囲に情報「領域」を構築すること、およびそれらの他の集団を図9Cの表示から「除去」することによって、データ分析ソフトウェアにおいて単離した。結果が二変数(2−D)プロットで表示される場合、データおよびシグナル処理へのこのアプローチは、Alexa594標識細胞集団からの予測シグナルに対応するシグナルのみを残す。このアプローチは、他の細胞集団からのシグナルが除去されているため、各別個の細胞集団の細胞応答の分析を容易にする。一旦集団が明らかに解像された場合、細胞応答(例えば、Ca移行もしくは膜電位変化)の分析が、各集団に対して別々に行われて、結果が記録される。
【0090】
(任意の回収工程)
本開示は、本明細書中に記載されたプロセスによって分析された細胞を回収するための、任意の選別工程をさらに提供する。上記フローサイトメトリー測定から生じるデータは、十分に迅速に分析され得るので、電子細胞選別手順が、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって細胞を選別および回収するために、使用され得る。細胞の選別、または回収は、本発明の方法のために必須ではない。なぜなら、本明細書中に記載されるように分析され、そして分解される、標識された細胞は、独立して維持され得る供給源細胞集団から取られるからである。従って、上記システムは、所望の質を有する細胞を同定するために使用され得、これによって、所望の質を有する細胞供給源手段を同定し得、一方で、フローサイトメトリーによって実際に分析された細胞は、処分され得る(すなわち、回収されない)。なぜなら、さらなる細胞が、対応する供給源細胞集団から回収され得るからである。
【0091】
別の局面に従って、分析された個々の細胞の選別および回収が、望ましくあり得る。倍増された集団からの、応答表現型に基づく選別の例としては、トランスフェクトされたレセプター、アップレギュレートされたレセプター、または内因性のレセプターを保有する細胞の複数の集団から、2つ以上の選別容器内に選別して、複数のアッセイ候補のアッセイ特性を改善すること、および試験化合物に対する応答性または非応答性の尺度として1つのパラメーターを使用して、初代細胞または不死化細胞の複数の集団から選別することが挙げられる。複数の集団の分析および選別は、応答性の細胞と非応答性の細胞との間の差の、さらなる比較的な分子分析および生化学的分析を可能にする。
【0092】
(高スループットの流体系のための、直接的なサンプルの混合および注入)
1つの例示的な実施形態において、本発明は、不連続なサンプルの混合物を混合し、そして以下に記載されかつ図1〜16に図示されるようなフローサイトメーターまたは他のサンプル分析装置内へと注入する、システムおよび方法を使用して実施される。いくつかの例示的な実施形態に従って、例えば、サンプル注入ガイドが、液体取り扱い装置とサンプル分析装置とを接続し得、不連続なサンプル混合物を、この装置の流体系に注入することを容易にする。
【0093】
以下により詳細に記載されるように、サンプル分析システムは、一般に:不連続なサンプル混合物を調製するために作動可能な、液体取り扱い装置;サンプル分析装置;およびこの分析装置に接続された注入ガイドを備え得;この注入ガイドは、液体取り扱い装置から不連続なサンプル混合物を受容し、そしてこの不連続なサンプル混合物を、この分析装置の流体系へと提供するように、作動可能である。いくつかの実施形態に従って、この注入ガイドは:液体取り扱い装置によって操作されるピペットチップを係合するように作動可能な、ガイドウェル;およびこのガイドウェルと流体連絡しており、そして不連続なサンプル混合物をこのピペットチップから受容し、そしてこの不連続なサンプル混合物を、この流体系に連絡させるように作動可能な、ポートを備え得る。これらのガイドウェルおよびポートは、流体系と連続的に流体連絡し得る。
【0094】
ここで図面を参照すると、図1は、直接サンプル注入システムの要素を組み込むサンプル分析システムの1つの実施形態の機能的構成要素を図示する、単純化されたブロック図であり、そして図2は、直接サンプル注入システムの要素を組み込むサンプル分析システムの別の実施形態の機能的構成要素を図示する、単純化されたブロック図である。
【0095】
以下に記載される機能的説明は、主として、図2の実施形態の作動特徴に関し、この実施形態は、二重ピペッティングアーム液体取り扱い装置を使用し得るが、単一ピペッティングアーム配置(例えば、図1に図示されるよなもの)もまた、種々の適用において、用途を有し得る。当業者は、本明細書中で企図されるようなサンプル分析システムが、多数の変更および修飾を受け得ること、ならびに構造的構成要素の特定の構成が、無数の考慮(全体的なシステムの要件、1つ以上の構造要素の大きさまたは規模の制限;種々の処理構成要素の実行、プログラミング、支持、および電算帯域幅;ならびに他の要因が挙げられるが、これらに限定されない)に従って、選択的に調節され得ることを、理解する。具体的には、本開示は、任意の特定の液体取り扱い装置によって使用される、関節付きアームの数によって限定されることは、意図されない。
【0096】
図1および2に図示されるように、例示的なサンプル分析システム100は、一般に、分析装置(例えば、フローサイトメーター190など)、ならびに液体またはサンプルの取り扱いおよび注入システム(例えば、液体取り扱い装置180)を備える。本明細書中で企図される場合、「直接サンプル注入」および類似の用語は、一般に、不連続なサンプル混合物を、液体取り扱い装置180から、独立した流体系(例えば、サンプル分析装置(例えば、フローサイトメーター190)に組み込まれるかまたは一体化され得るもの)へと送達するプロセスに関連する;この文脈において、用語「独立した」とは、一般に、液体取り扱い装置180に関連する(一般的には)構造体および(具体的には)流体系から不連続であるか、またはこれらと必ずしも一体化されないが、システム100においてこれらと組み合わせて使用される、サンプル分析装置の流体系をいうことが理解される。
【0097】
いくつかの実施形態において、フローサイトメーター190は、蛍光活性化細胞選別(FACS)適用において、実施され得る;さらに、または代替的に、フローサイトメーター190は、当該分野において一般的に公知であるか、もしくは開発された種々のサンプル分析適用のいずれかにおいて使用され得、そして公知の原理に従って、作動し得る。システム100の代替的な実施において、フローサイトメーター190は、以下により詳細に記載されるような直接サンプル注入機能から利益を得る、種々の異なる型のサンプル分析適用のいずれかで補充され得るか、または置き換えられ得る。例えば、1つのこのような代替の装置は、種々の微小流体適用を許容するかまたは可能にする、適切な構造要素を備え得る;当業者は、直接サンプル注入システムが、最小の改変を伴って、または改変なしで、多数の環境において用途を有し得ることを理解する。
【0098】
使用の間、液体取り扱い装置180は、分析さえるべきサンプルを調製するため、およびサンプル材料または他の液体混合物を、フローサイトメーター190または他のサンプル分析装置へと、サンプル注入ガイド構成要素139を介して送達するように、作動し得る。この点に関して、図2における液体取り扱い装置180の配置は、種々の市販のコンピュータまたはマイクロプロセッサにより制御される、二重アームの液体取り扱いステーション(例えば、Cavro RSP 9000ユニットなど)のいずれかにおいて実施され得るか、またはこれらを組み込み得る;同様に、図1の液体取り扱い装置180は、任意の単一アームの液体取り扱いステーション(例えば、一般に入手可能であるか、または本明細書中に記載される機能的特徴に従って開発および作動され得るようなもの)において実施され得るか、あるいはこれらを備え得る。
【0099】
図1および図2に加えて、ここで図13〜15を参照すると、図13は、直接サンプル注入システムを組み込むサンプル分析システムの1つの実施形態の構成要素を図示する、単純化された斜視図であり、図14は、直接サンプル注入システムの1つの実施形態の構成要素を図示する、単純化された斜視図であり、そして図15は、図14の直接サンプル注入システムのさらなる構成要素を図示する、単純化された斜視図であることが、注目される。
【0100】
液体取り扱い装置180は、一般に、任意の数のピペッティングアーム上に、使い捨てピペットチップを実装するように構成され得、そして作動され得る;上記のように、一方で、図2、13、および14の例示的な実施形態は、2つのピペッティングアーム(参照番号181および182)を使用し、1つのアームを組み込むシステム(図1)および2つより多くのアームを組み込むシステムもまた、企図される。任意の数のピペッティングアームを使用するこのようなシステムは、本明細書中に記載される原理および機能的性質に従って、実施され得る。例示的なシステム100において、それぞれのピペッティングプローブ183、184は、各それぞれのアーム181、182に関連する、それぞれの並進支持構造体185、186から懸下され得る。このようなピペッティングアームアセンブリは、プローブ183、184の、x座標、y座標およびz座標(すなわち、直角座標)の方向での、迅速かつ精密な動きに適合する。多くの適用について、特定の座標方向での約0.003インチ(0.076mm)の増分での並進は、従来の自動液体取り扱い装置またはマイクロプロセッサにより制御される取り扱い装置を使用して、容易に達成され得る;このような精密さは、十分であり得るが、代表的な使用のために、必ずしも必要ではないかもしれない。ピペッティングアーム(181、182)ならびにその関連する支持構造体(185、186)およびプローブ(183、184)が移動される精密さの程度は、種々の要因によって異なり得ることが、理解される;本開示は、従来の液体取り扱いシステムにおける構造要素の正確かつ精密な配置に影響を与えるパラメーターによって限定されることを、意図されない。
【0101】
ピペッティングアーム181、182、構造体185、186、およびプローブ183、184の組み合わせは、一般に、三次元空間において、複数のプローブ183、184を操作するように作動し、プローブ183、184が、ピペットチップ(図14において、参照番号188)を選択的に係合することを可能にする。このピペットチップは、プラスチック、アクリル、ラテックス、または当該分野において一般的に公知であるような他の適切な材料から作製され得る。この点に関して、プローブ183、184は、プローブ183、184を対応するピペットチップ188に連結させるために、ピペットチップのラック(参照番号121)内に低下され得る。現在利用可能な、このようなピペットチップ188のいくつかは、例えば、約20〜1000μlの流体体積容量を有し得る(例えば、VWR/Quality scientific Products製のTecan Genesisチップが、上記容量範囲で入手可能であり、そして自動ピペッティング手順または半自動ピペッティング手順を含む種々の適用のために、適切であり得る)。
【0102】
いくつかの実施形態において、連結構造体または連結構成要素は、プローブ183、184の、既知の構造的寸法を有する特定の型のピペットチップ188への連結を容易にし得る。具体的には、図6、7、および8は、ピペットプローブがピペットチップに係合することを可能にする連結構成要素の1つの実施形態の、それぞれ斜視図、側面立面図、および軸方向図を図示する、単純化された図である。図6〜8に図示されるように、連結構成要素110は、一般に、導管112を備え得、この導管を通って、流体が連絡し得る。連結構成要素110は、プラスチック(例えば、DELRINTMなど)、アクリル、金属、または適切な強度、剛性、および腐食耐性特徴(例えば、これらは適用に対して特殊であり得る)を有する他の材料から製造され得る。
【0103】
連結構成要素110は、連結構成要素110をプローブ183、184に固定するように構成され、そして作動する、適切な構造要素を備え得る;具体的には、プローブ183、184、および連結構成要素110は、密封して係合し得、これらの間の接合部における漏出または他の液体の損失を防止する。例示的な実施形態において、プローブ183、184と連結構成要素110との間の構造的連結または相互接続は、ねじ切りされた部分111において果たされるように、表される。しかし、プローブ183、184と連結構成要素110とを連結することは、他の構造要素(例えば、即脱着機構、ホースバーブ(hose barb)、または流体系において用途を有する他の連結デバイスなど)を使用して達成され得ることが理解される。
【0104】
同様に、連結構成要素110は、ピペットチップ188を連結構成要素110に固定するように構成され、そしてそのように作動する、適切な構造要素をさらに備え得る;上記のことと関連して、連結構成要素110およびピペットチップ188は、密封して係合し得、これらの間の接合部における漏出または他の液体の損失を防止する。例示的な実施形態において、連結構成要素110とピペットチップ188との間の構造的連結または相互接続は、角度のついた部分114において達成されるように、表される。この角度の付いた部分は、(例えば、ホースバーブのように)ピペットチップ188(当該分野において公知のように、対応して角度のついた内部直径の寸法を有する)の協働する開放端部と圧力下で係合するように作動する。ピペットチップ188と連結構成要素110との連結は、流体系において用途を有する、他の構造要素を使用して達成され得ることが、理解される。自動液体取り扱い装置および技術を実施するいくつかの実施形態において、連結構成要素110は、角度のついた部分114からのピペットチップ188の自動排出(すなわち、脱係合または脱連結)を、さらに許容するかまたは可能にし得る。
【0105】
ピペッティング操作の間、連結構成要素110がプローブ183、184とピペットチップ188との間に介在する場合、液体は、端部115において、プローブ183、184から導管112内へ、そしてその逆へ連絡し得る;同様に、液体は、端部113において、導管122からピペットチップ188へ、そしてその逆へ連絡し得る。連結構成要素110の、一般には種々の要素が、そして具体的には特殊な構造的配置が、種々の改変を請けやすくあり得ること、および図6〜8に図示される例示的な構造の局面が、多数の問題(プローブ183、184、ピペットチップ188、またはその両方の寸法および他の構造的特徴が挙げられるが、これらに限定されない)に従って、選択的に寸法決めされ得るか、変更され得るか、省略され得るか、または再配置され得ることが、理解される。例えば、プローブ183、184およびピペットチップ188が、直接の連結または他の補助されない係合のために適切に構築される場合、連結構成要素110を、この流体経路から省略することが可能であり得る(すなわち、連結構成要素110は、液体取り扱い装置180のいくつかの実施形態の適切な作動のために、必要とされないかもしれない)。
【0106】
図1および図2に図示されるように、サンプル分析システム100は、一般に、流体フローおよび液体取り扱い手順を制御するように構成され、そしてそのように作動する、ポンプシステム150を備え得る。図2および図15に示されるように、各それぞれのピペッティングアーム181、182、およびプローブ183、184のアセンブリについてのピペッティング機能は、それぞれのポンプシステム151、152によって駆動され得るか、または他の様式で影響を受け得る。例示的な実施において、ポンプシステム151、152は、コンピュータまたはマイクロプロセッサによって制御される、サーボモータ駆動シリンジおよび反らせ弁システム(これらは、例えば、可撓性配管を介して、または何らかの他の適切な流体経路もしくは導管を通して、プローブ183、184の内部と流体連絡する)において実施され得るか、またはそれを備え得る。1つの例示的な装置である、Hamilton PSD3サーボシリンジポンプは、市販されており、そして本開示に従って使用するために適切であり得る。
【0107】
操作の際に、シリンジモータ(図15には示されない)は、制御ソフトウェア、ファームウェア、または他のプログラミング支持セットからの指令を受信し得る;図1、図2および図13において、このような制御機能は、一般に、参照暗号170によって表される。従って、シリンジモータは、シリンジのプランジャーを引き抜くように(例えば、シリンジ153、154を装填するように)、またはシリンジプランジャーを前進させるように(例えば、シリンジ153、154の内容物を押し出すように)、選択的に支持され得る。いくつかのシステムにおいて、反らせ弁159A、159Bはまた、制御ソフトウェアまたは他の何らかのプロセシングおよび制御構成要素170(すなわち、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェア)から、指令を受信し得る。この点に関して、反らせ弁159A、159Bは、例えば、ポート155、156を通してシリンジ153、154と緩衝液供給源(図1および2における参照番号125)の間で、または代替のポート157、158を通してシリンジ153、154とプローブ183、184との間での液体の連絡を可能にするように選択的に指示され得る。
【0108】
上記配置は、シリンジ153、154が、適切な緩衝剤量(例えば、PBSまたはHBSS)で、または他の化学試薬もしくは生物学試薬で満たされること、および以下により詳細に記載されるように、シリンジ153、154の流体内容物を、連結構成要素110の内部(導管112)を通してピペットチップ188内へ、もしくはピペットチップ188を通して選択的に駆動することを、可能にする。具体的には、それぞれのプローブ183、184に連結されたピペットチップ188内へ引き込まれるか、またはこのピペットチップから分配される、材料の体積は、それぞれのポンプシステム151、152の選択的な作動によって、制御され得る(例えば、液圧制御)。
【0109】
システム100の上記作動および他の種々の機能的特徴は、処理構成要素170によって制御され得る。この点に関して、処理構成要素170は、1つ以上のコンピュータ、マイクロプロセッサまたはマイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、プログラム可能論理コントローラ、フィールドプログラム可能ゲートアレイ、または他の適切に構成可能もしくはプログラム可能なハードウェア構成要素において実施され得るか、またはこれらを備え得る。具体的には、処理構成要素170は、システム100の構成要素の作動パラメーターを制御するように、または他の様式でこれらの構成要素の機能性に影響を与えるように、構成され、適切にプログラムされ、そして選択的に作動する、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはその何らかの組み合わせを備え得る。処理構成要素は、一般に、データおよび指令で符号化された、コンピュータ読取り可能媒体を備え、これらのデータおよび指令は、これらの指令を実行する装置(例えば、一般には、システム100の種々の構成要素であり、具体的には、液体取り扱い装置180)に、本明細書中に記載される機能のうちのいくつかまたは全てを実施させる。
【0110】
処理構成要素170によって影響を受け得るかまたは制御され得るパラメーターとしては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:アーム181、182、支持構造体185、186、プローブ183、184、およびより具体的には、これらの何らかの組み合わせの、移動のタイミングおよび精密な三次元の位置決め;シリンジ153、154および弁アセンブリ159A、159Bを含むポンプシステム151、152の、ピペットチップ188内の流体の体積およびその行き先に影響を与えるタイミングおよび精密な制御;混合操作(以下に記載されるような)のタイミングおよび特徴;ガイド139を通して独立した流体系へのサンプル注入速度;ならびに他の要因。
【0111】
従って、処理構成要素170は、制御信号または他の指令を、他の種々の電気系要素または電気機械系要素へと伝達し得る;協働する電気要素および機械要素(例えば、モータ、サーボ、アクチュエータ、ラックおよびピニオン、伝動装置システム、ならびに他の相互接続されたかまたは係合する動的部品など)が、一般に、これらの間に種々の電気接続および配線を有する場合、明瞭さのために、図面から省略されていることが理解される。この点に関して、当業者は、コンピュータ周辺機器と他の電気構成要素とを相互接続するか、または他の様式で連結する際に用途を有する種々の通信技術およびプロトコルのいずれかに従って、制御信号が、処理構成要素170から伝達され得、そしてこの処理構成要素170によって、種々の電気機械構成要素からのフィードバックが受信され得ることを理解する。具体的には、システム100に実装されるデバイスは、例えば、シリアル接続またはイーサネット(登録商標)接続を使用して、あるいは他の規格(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)または電子電気学会(IEEE)規格1394(すなわち、「ファイヤーワイヤ」)接続など)を使用して、一方向または双方向のデータ通信を可能にするように、接続され得る。いくつかの実施形態において、このような接続された構成要素は、無線データ通信技術(例えば、BLUETOOTHTMなど)、または赤外線(IR)信号もしくは高周波数(RF)信号に基づく他の形態の無線通信技術を使用し得る。
【0112】
図13および図14に示されるように、液体取り扱い装置180を備える自動ピペッティングアームアセンブリ120は、フレーム128に設置され得、ピペッティングアーム181、182およびプローブ183、184のアセンブリが、アーム181、182の下方に一般的に位置するデッキまたはプラットフォーム129上に選択的に位置決めまたは配置された、いくつかの異なるステーション(例えば、ピペットチップラックステーション121、マイクロウェルプレートステーション122、チューブステーション123、および廃棄物バッグステーション124)をアドレスすることを可能にする。フレーム128および129は、金属(例えば、アルミニウムまたは鋼など)、プラスチック、アクリル、ガラス繊維、あるいはアーム181、182、および液体取り扱い装置180、ポンプシステム151、152、ステーション121〜124の他の構成要素、ならびにこれらに配置された付随するハードウェアまたは消耗品の重量を保持し得る他の適切に剛性の材料から構築され得る。
【0113】
具体的には、上記のように、プラットフォーム129は、いくつかの選択的ステーション121〜124を支持し得る。これらのステーションの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:試験化合物(リガンド)のためのマイクロウェルプレートステーション(たとえば、122に示される);細胞と試験化合物(リガンド)とを混合するためのマイクロウェルプレートステーション(例えば、122に示される)(ここで、ウェルは、最初、希釈緩衝液または試験化合物を、含んでも含まなくてもよい);緩衝液、プローブ、もしくは試験化合物標準物質を保持するための、チューブを備えるラック(例えば、123に示される);チップを処分し、そしてプローブ183、184からプライミング緩衝液を排出するための、廃棄物バッグステーション(例えば、124に示される);ならびにピペットチップの予め分配されるトレイを保持するためのラック(例えば、121に示される)。実験において用途を有する、異なる消耗品または他の物品を収容する、他の種々の型のステーションもまた、備えられ得る;さらに、種々のステーション121〜124の特定の数および配向は、望ましいシステムの能力または適用の要件に従って、変更され得る。
【0114】
図15に示されるように、プラットフォーム129は、サンプル注入ガイド139をさらに支持し得る。この点に関して、図9、図10、図11、および図12は、サンプル注入ガイドの1つの実施形態の、それぞれ斜視図、平面図、側面立面図、および軸方向断面図を図示する、単純化された図である。いくつかの実施形態において、ガイド139は、プラットフォーム129またはフレーム128の他の何らかの構造要素に、堅固にまたはしっかりと取り付けられ得る。この取り付けは、実質的に、永続的であり得、例えば、溶接、鋲、感圧性接着剤もしくは感熱性接着剤、または他の実質的に永続的な取り付け機構によって、達成され得る;あるいは、ガイド139は、例えば、ねじ、ボルト、タブ予備スロット、または他の協働構造体は位置によって、プラットフォーム129またはフレーム128に取り外し可能に取り付けられ得る。取り外し可能または調節可能な取り付け機構は、種々の適用に対する融通性を提供し得ることが、理解される。いくつかの代替の実施形態において、ガイド139は、フローサイトメーター190または他のサンプル分析装置の構造体に、取り付けられ得るか、連結され得るか、組み込まれ得るか、または他の様式で一体化され得る。このような実施形態において、プラットフォーム129、フレーム128の他の構成要素、またはその何らかの組み合わせの寸法または相対位置を、改変するかまたは他の様式で調節して、以下に詳細に記載されるような、ガイド139とのピペットチップ188の係合を可能にすることが、望ましくあり得る。
【0115】
図5は、使用の間の、ピペットチップと係合したサンプル注入ガイドの1つの実施形態の斜視図を図示する、単純化された図である。具体的には、ガイド139は、ピペットチップ188の端部と係合するように、そしてピペットチップ188からフローサイトメーター190または別のサンプル分析装置の流体系へと流体を連絡させるように、構築され得、そして作動し得る。ガイド139の1つの実施形態、およびそのいくつかの機能的特徴の詳細な説明が、以下に提供される。
【0116】
(一般的な機能性)
図2および図13〜15を特に参照して上に詳細に記載されたように、機能的な図および機械的な図は、二重アーム直接サンプル注入システムを使用するサンプル分析システム100の1つの実施形態の種々の構成要素を図示する。より単純な、単一アームの実施形態(図1)の機能的特徴、ならびに2つより多いピペッティングアームを使用する、より複雑な実施形態の機能的特徴は、以下の作動特徴の詳細な説明から、容易に推論される。
【0117】
各それぞれのアーム181、182、支持構造体185、186、およびプローブ183、184のアセンブリは、チップラック121(または例えば、複数のチップトラック121のうちの選択された1つ、指定された1つ、もしくは予め決定された1つ)に選択的に達し得、ピペットチップ188を、各それぞれのプローブ183、184の端部にシールし、そしてプラットフォーム129上の別のステーション122〜124への移動のための準備において、このシールされたピペットチップ188を引き抜く。上位のように、プローブ183、184(例えば、連結構成要素110と組み合わせてか、または独立して)は、ピペットチップ188と充分に完成されたシールを形成して、プローブ183、184が引き抜かれる場合に落下することなく、ピペットチップ188がチップラック121から引き抜かれることを可能にし得る。具体的には、このようなシールはまた、流体がレザバまたはそれぞれのポンプシステム151、152のいずれかからピペットチップ188内へと移動される場合に、空気または流体の漏出を防止するように、充分に完成され得る。図15を特に参照して上に記載されたように、ポンプシステム151、152は、流体を(プローブ183、184を通して)提供し得、そしてピペットチップ188のための体積吸引および移動を駆動し得る。
【0118】
連結構成要素110は、チップ188とプローブ183、184との間に、改良された密封を提供し得る。1つの実施形態において、例えば、連結構成要素110は、DELRINTMプラスチックから作製され得るが、他のプラスチック、アクリル、ガラス繊維、および他の材料もまた、適切であり得る。連結構成要素110は、精密な寸法使用で構築され得、そして一般に、約20μl〜約1000μlの体積容量のピペットチップ188を収容するように、設計され得、そして作動し得る。図6〜8を特に参照して上に記載されたように、異なる使い捨てピペットチップ188製品は、連結構成要素110の異なる使用および構造構成要素を必要とし得るか、またはこのような構成要素から、かなりの利益を得ることが可能である。
【0119】
操作時に、ピペッティングアーム182は、連続して別個の(discrete)サンプル混合物をフローサイトメーター190に、ガイド139を通して注入するために使用され得る。最初に、アーム182は、プローブ184を、廃棄物バッグステーション124に、またはいくつかの他の指定されたもしくは選択された廃棄物容器位置に、位置づけ得る;この取り付けられたピペットチップ188は、次いで、作業液体(例えば、緩衝液)で完全に満たされ得る(すなわち、わずかに過剰量が、廃棄物として排出されるまで)。いくつかの実施形態において、望ましい緩衝溶液は、ポート156を通って、緩衝液レザバ(図1および2における参照番号125)からシリンジ154へ引き抜かれ得る。上記のように、緩衝液レザバ125またはピペット流体経路(それぞれ、ポート156、158を介して)とのシリンジ154の選択的接続性は、概して、シリンジ154と一直線になったバルブ159Bによって制御され得る;従って、シリンジ154の内容物は、次いで、プローブ184およびピペットチップ188へとポート158を通って提供され得る。ピペットチップ188を緩衝液で完全に満たすと、ピペットチップ188から圧縮性の気泡が除去され得、別個のサンプル混合物が後の操作の間に(例えば、フローサイトメーター190の流体システムからの陽圧が、ピペットチップ188の内容物と連絡する場合の、チップ188とガイド139との係合の際に)、ピペットチップ188へと逆流して、取って代わられないようにし得る。いくつかの単純化された二重アーム液体取り扱い実施形態において、アーム182は、別個のサンプル混合物を、プラットフォーム129上の選択された位置から回収し、連続して、これらの別個のサンプル混合物をフローサイトメーター190または別の分析装置へ注入するために、厳密に使用され得る。
【0120】
調和した操作または実質的に同時の操作において、ピペッティングアーム181はまた、チュービング経路(すなわち、プローブ183を介して、およびピペットチップ188へ)内に緩衝液流体を有し得る。上記のように、アーム182に対して具体的に言及すると、この流体フローは、ポンプシステム151のシリンジ153およびバルブ159Aの選択的操作を介して調節され得る。このような緩衝液流体は、アーム181のチュービング経路における圧縮性の空気の減少を容易にし得る。アーム181のプローブ183がサンプル分析装置の高圧流体システムと連絡しない(すなわち、ピペットチップ188とガイド139とを連結または係合しない)実施形態において、緩衝溶液は、ピペットチップ188を満たすために必要とされないかもしれない。例示的な二重アーム液体取り扱い実施形態において、アーム181は、細胞サンプルを細胞懸濁システム(下記)から回収し、これらのサンプルを、プラットフォーム129上の選択されたステーション122におけるアッセイプレートまたはマイクロウェルプレートに分配し、試験化合物(リガンド)または緩衝溶液を、プラットフォーム129上の所定の位置における1種以上のさらなるステーション122から回収し、その試験化合物(リガンド)または緩衝溶液を、プラットフォーム129上の特定のステーション122におけるアッセイプレートまたはマイクロウェルプレートに分配し、混合機能(例えば、細胞サンプルと化合物を混合する工程、化合物と希釈試薬を混合する工程、またはその両方)を行うために使用され得る。
【0121】
アーム181が移動するタイミングは、アーム182の優先事項および移動から解除され得る(key off)。具体的には、アーム181、182の間の衝突を防止するために、移動の衝突は、例えば、アーム182に優先順位を提供することによって解決され得る;このような実施形態において、アーム181は、アーム181がその次の工程または空間的に次の位置に進む前に高い優先事項のタスクを完了するために、アーム182を待つことが必要とされる。より複雑な動的優先順位付けストラテジーは、洗練された液体取り扱い技術において使用され得る。アーム182が恒久的な優先事項を有するストラテジーを採用する例示的な実施形態において、アーム181、182は、同期化されて、最大の移動効率のために動作を調和させ得る。使用される特定の同期化ストラテジーは、特定の適用であり得、従って、引き出されかつ分配されるサンプル、化合物、または他の試薬の数、特定の適用のためにプラットフォーム129上で使用しているステーション121〜124の数、行われる混合作動の数および長さ、別個のサンプル混合物が分析装置に注入される迅速さ、および他の要因によって影響を受け得ることが理解される。
【0122】
アーム181は、アゴニストモード、アンタゴニストモード、アロステリックモジュレーターモード、または種々の他の作動もしくは実験のモダリティーおよびプロトコルで使用される化合物プレートステーション122に位置づけ得る。化合物または試薬は、ピペットチップ188に取り上げられ得、選択されたステーション122でマイクロウェルプレートの所定のウェルまたは選択されたウェル中の細胞サンプルまたは緩衝液に添加され得る(希釈目的で)。細胞サンプル材料と化合物または化合物と緩衝液の混合は、アーム181およびプローブ183によって、例えば、シリンジ153の選択的用途を介して行われて、交互に、混合物をマイクロウェルから引き抜き、混合物を排出し得る。いくつかの実施形態において、単一のこのようなサイクルは、適切な混合を提供するために十分であり得るが、混合サイクルは、例えば、いくらかの場合において省略され得るか、または相互作用の任意の所望の回数にわたって反復され得る。
【0123】
具体的には、アーム181およびプローブ183は、生存性の細胞サンプルの懸濁液を位置づけ得、その後、一様に懸濁された細胞の選択されたまたは所定のサンプル容積を、マイクロウェルプレートの選択されたウェルへの送達のために、ピペットチップ188へと引き抜く。すなわち、アーム181およびプローブ183は、その細胞サンプル容積をマイクロウェルプレートへと分配するために使用され得る。さらに、アーム181およびプローブ183は、パラメーター(例えば、細胞内Ca2+)が測定される文脈において、細胞を実質的に障害することなく、(例えば、選択された回数または所定の回数だけ、上下にピペッティングすることによって)特定のウェルの内容物を混合するために実装され得る。あるいは、細胞サンプルをそのウェルへ注入することは、混合のために十分であり得、さらにピペッティングをする必要性を排除し得る。この細胞懸濁液混合物は、次いで、その内容物が分析装置への注入のためにアーム182およびプローブ184によって引き抜かれるまで、混合ウェル中に残され得る。
【0124】
特定のウェルのためにその細胞サンプルおよび化合物を混合した(すなわち、別個のサンプル混合物を調製した)後、アーム181は、次いで、廃棄バッグステーション124に移動し得、自動的にピペットチップ188をプローブ183から跳ね出す。いくつかの実施形態において、チップ跳ね出しは、例えば、IRまたは他の適切なセンサもしくはカメラによってモニターされて、ピペットチップ188の適切かつ完全な跳ね出しを確実にし得る。不完全な跳ね出しの場合、緩衝液が、プローブ183およびピペットチップ188を通して迅速に流され得、そして跳ね出し手順が、ピペットチップ188がプローブ183から取り外されるまで反復され得る。適切なチップ跳ね出しの確認後、アーム181は、プローブ183をチップラック121(または異なるチップラックに)戻して、次のタスクの準備のために新しいピペットチップ188を補充するように、操作され得る。
【0125】
上記のように、アーム182およびプローブ184は、混合後の適切な、所定の、または他の方法で選択された持続時間の後に、細胞材料および化合物(別個のサンプル混合物)をピペットチップ188へと引き抜き得る;アーム182およびプローブ184は、次いで、ピペットチップ188とサンプル注入ガイド139(図5において例示される)とを係合し得、この別個のサンプル混合物をフローサイトメーター190に(または別のサンプル分析装置に)移動し得る。
【0126】
別個のサンプル混合物の独立した流体システムへの注入に関して、図9、10、11、および12は、それぞれ、サンプル注入ガイドの一実施形態の斜視図、平面図、側面図、および軸断面図を例示する、単純化した模式図であることが示される。さらに、上記のように、図5は、使用の間にピペットチップと係合したサンプル注入ガイドの一実施形態の斜視図を例示する単純化した模式図である。
【0127】
ガイド139およびその種々の構成要素は、実質的に任意の適切な非反応性材料から製造され得る。この文脈において、「非反応性」とは、一般に、分析装置中で起こっている実験に有害な影響を及ぼさない物質をいう。一実施形態において、例えば、ガイド139は、DELRINTMプラスチックから製造され得るが、他のプラスチック、アクリル、繊維硝子、金属、および他の材料もまた、適切であり得る。
【0128】
図面に示されるように、ガイド139の一実施形態は、一般に、ガイドウェル135を含み、このガイドウェル135は、ピペットチップ188、ならびに分析装置のガイドウェル135および流体システムの両方と流体連絡状態にあるポート136を受容するか、あるいは他の方法で密閉するように係合するような寸法にされ、かつ作動する。注入操作の間に、ピペットチップ188は、ガイドウェル135に係合され得るかまたは設置され得、その結果、液体または空気は、ガイドウェル135とピペットチップ188との間の接触の領域を介して漏れ出ることができない。その点に関して、ガイドウェル135の一般的な構造および具体的寸法(例えば、深さ、内径、およびテーパー)が、ガイドウェル135とともに使用することが意図されるピペットチップ188のタイプに従って選択され得ることは理解される。例えば、ガイドウェル135は、図11および12にテーパーが付けられているように例示される;いくつかの実施形態において、ガイドウェル135に設けられるテーパーまたは角度的な寸法は、ピペットチップ188の対応しかつ補完的であるようにテーパーが付けられた部分と調和するように、固有に設計され得る。
【0129】
ピペットチップ188が、上記のようにガイドウェル135と係合される場合、別個のサンプル混合物、またはピペットチップ188の他の内容物は、ポート136を介して、分析装置の流体システムへと注入され得る。ポート136は、独立した流体システムに、例えば、可撓性チュービング、ホースかかり(hose barb)、迅速着脱アセンブリ)(quick−disconnect assembly)、ならびに当該分野で一般に公知の他の型の流体連結のハードウェアおよび機構を用いて、連結され得る。ポート136と独立した流体システムとの間のこの「接続」は、明瞭にするために、図面から省略した。
【0130】
ピペットチップ188が、ガイドウェル135から引き抜かれる場合、その独立した流体システムの自由流動圧が、ポート136を通って、ガイドウェル135へと流体を押し戻すように作用し得、接続、ポート136、およびガイドウェル135を洗い流す。この洗い流しは、ある別個のサンプル混合物に由来する残りの物質がその後の別個のサンプル混合物を汚染しないようにし得、かつその分析を変化させず、別な方法で影響を与えないようにし得る。流体システムと関連する動圧は、ガイドウェル135の溢出(flooding)および流出(overflow)を引き起こし得ることが理解される;さらに、ポート136を通ってガイドウェル135へ戻って溢れた液体を除去することは、連続的なサンプル混合物間の有害な汚染の最小化を容易にし得る。従って、ガイド139のいくつかの実施形態は、流出ウェル134およびサイフォンポート137、138をさらに備え得る。
【0131】
操作の間に、独立した流体システムからの背圧は、一般に、流体が、ポート136を通してガイドウェル135および流出ウェル134へと流れるようにする。他方で、ガイドウェル135および流出ウェル134における流体の深さは、十分な静水圧を働かせて、ポート136を介して流体進入ウェル135、134の圧力の釣り合いをとり、スプレーまたは「吹き上げ(geyser)」効果を防止し、液体廃棄物を最小にし得る。戻って流れた液体(および任意のサンプル細胞、試薬またはそこに保持されている他の汚染物質)は、例えば、サイフォンポート137、138を介して、重力単独によるかまたはポンプ作用機構によるかのいずれかで、サイホン作用により流され(siphoned)得る。
【0132】
種々の要素(すなわち、ウェル134、135、ポート136〜138、および実装される場合はサイフォンポンプ)の構造的特徴、相対的寸法、位置、および配向は、使用される独立した流体システムのタイプおよび予測される操作上の動圧に従って選択され得ることが理解される。例えば、さらなるサイフォンポートは、いくつかの場合において必要とされ得る;あるいは、サイフォンポート137、138の一方または両方が、省略されてもよい。サイフォンポートが設けられない場合、ガイドウェル135または流出ウェル134は、単に、例えば、廃棄物排出管または廃棄物バッグへ流出させ得るか、またはガイド139の構造へ一体化されないサイフォン管が採用され得る。
【0133】
例示的実施形態において、例えば、流出ウェル134から、サイフォンポート137、138によりサイホン作用により流されない過剰な液体は、チャネル131に指向され得る。このチャネルにおいて、この液体は、次いで、ポート132、133を介して適切な廃棄物容器または廃棄物排出管へ排出され得る。さらにまたは代わりに、ポート132、133の一方または両方は、例えば、ねじ、ボルト、または他の締め付け部材のためのガイド穴として使用されて、ガイド139をプラットフォーム129または分析装置に取り付けることを容易にし得る。本開示は、図5および9〜12に例示されるガイド139の構造的配置および設計特徴により制限されるとは意図しない。多くの改変がガイド139に対して行われ得、本明細書に記載される機能性は図面に示される設計に制限されないことが理解される。
【0134】
例示的な実施形態に従って、ガイド139は、以下に記載の機能的要件を満たし得る。図5において最もよく例示されるように、ガイド139は、別個のサンプル混合物を含むピペットチップ188と、システム100とともに使用される、フローサイトメーター190または任意の他のサンプル分析装置の投入ポート(示さず)との間のドッキングポートとして作用し得る。フローサイトメーター190の場合において、例えば、このような投入ポートは、フローノズルまたはキュベットと流体連絡状態にあるチューブ中に埋め込まれ得るかまたはこのようなチューブを備え得る。ガイド139は、別個のサンプル混合物(ピペットチップ188によってガイド139を介して注入される)とその分析装置の流体システム中のシース流体との間の流体力学的集中が、その分析装置の投入ポートまたはそのすぐ下流で生じる場合に特定の有用性を有し得る。
【0135】
特に、ガイド139は、ピペットチップ188の内容物を、ポート136を介して、別個のサンプル毎のベースでフローサイトメーター190へ(または任意の独立した流体システムへ)直接注入することを可能にし得る。ガイド139の操作は、ピペットチップ188の内容物(すなわち、別個のサンプル混合物)が、従来のフローサイトメトリー適用において記載される理想的なサンプルストリームとして処理され、またはこのようなストリームとして挙動することが可能になる。すなわち、個々のサンプルチューブがサンプル投入ステーションに手動で配置される。
【0136】
さらに、ガイド139は、サンプル投入チュービング(例えば、分析装置の投入ポート)の迅速な洗い流しが、前のサンプル混合物からの接着性化合物および残りのサンプル材料を除去することを可能にする。ガイド139(ポート136において)をフローノズルに(すなわち、分析装置の流体システムと関連づけて)接続するチュービングは、理想的には、連続的な別個のサンプル間の汚染がないように洗浄される必要があることが理解される;このような洗い流しは、データストリーム中のサンプル持ち越しによる人工産物を防止し得る。上記に詳細に記載されるように、連続的な別個のサンプル投入操作の間にこの洗い流しを達成するために、ポート136およびガイドウェル135は、標準的フローサイトメーターの流体システムにおいて使用される通常のシース流体と連続して流体連絡した状態にあり得る。ピペットチップ188がガイドウェル135から脱係合される場合、独立した流体システムのシース流体(通常陽圧下にある)は、ポート136を通って後ろ向きに洗浄する。この逆流は、コネクタチューブおよびポート136を洗浄する様に働く。上記のように、過剰な流体は、サイフォンポート137、138およびチャネル131を介して、例えば、重力により、または連続吸引により(例えば、真空ポンプにより)、除去され得る。
【0137】
上記に詳細に記載されるように、ガイド139は、ピペットチップ188およびガイドウェル135のドッキングまたは係合を容易にし、ピペットチップ188が、しっかりと、かつきつく、ガイドウェル135の壁でシールされるようにし得る;さらに、ガイド139は、ドッキングの力(すなわち、ピペットチップ188とガイドウェル135との係合)が、サンプル混合物ストリーム中の細胞と、フローサイトメーター190または分析装置における他の装置のレーザーとの間の整列を妨害しないように作用し得る。いくつかの実施形態において、前述の整列は、サンプル混合物を、ポート136から独立した流体システムへ通す、一本の可撓性チューブを利用することによって、達成され得る。このような可撓性チュービングは、ピペットチップ188とガイドウェル135との反復係合と関連した応力を吸収し得、そしてそれらの応力を分析装置の構成要素に伝わらないようにし得る。前述様式で整列を維持すると、連続する実験の反復実施全体にわたる、連続的なデータの一貫性および品質が保証され得る。
【0138】
別個のサンプル混合物を分析装置に送達することは、アーム182上のプローブ184に作動可能に連結されるピペッティングシリンジ154により、次に、シリンジ154を駆動するモーター(例えば、サーボモーターまたは等価なデバイス)によって制御され得る。別個のサンプル混合物をポート136を介して注入することは、選択的に、例えば、迅速かつ短時間であってもよいし、あるいはゆっくりと長時間であってもよい。例示的な実施形態において、サンプル混合物注入速度は、例えば、サーボモーター、その結果、シリンジ154の分配速度の制御を介して選択的に制御され得る。同様に、アーム181およびプローブ183のピペッティング機能性(容積および速度を含む)は、シリンジ153を駆動するサーボモーターによって制御され得る。上記のように、このような制御は、処理構成要素170のための指示の適切なプログラミングを介して実現され得る。
【0139】
注入サイクルが完了した(すなわち、別個のサンプル混合物がガイド139を介して独立した流体システムへ注入された)場合、アーム182およびプローブ184は、廃棄バッグステーション124に移動し得、アーム181およびプローブ183に言及して上記に実質的に記載されるように、ピペットチップ188を廃棄物容器へ跳ね出し得る。前述の跳ね出し手順と同様に、プローブ184からピペットチップ188の跳ね出しは、(例えば、センサまたはカメラによって)モニターされて、ピペットチップ188の首尾よい跳ね出しを確実にし得る。それぞれのアーム181、182およびプローブ183、184は、新しいピペットチップ188を、指定されたまたは選択されたチップラック121から補充することによって、次にサイクルのために準備され得る。
【0140】
図15の実施形態に従って、分析されるべき細胞サンプル材料は、作動中の細胞懸濁システム(CSS)140によって懸濁液中に維持され得る。操作の間、CSS140は、細胞が沈まないようにし得、従って、細胞材料を、懸濁液容積全体にわたって一定の密度に維持し得る。この点で、CSS140は、一般に、振盪装置145に取り付けられたチューブ141を備え得る。チューブ141は、細胞および液体懸濁媒体で充填され得、一般に、ピペットチップ188によるその内容物への接近を可能にする装置142を備え得る。チューブ141およびその内容物は、振盪装置145により、水平位置から、その水平軸からほぼ±45°へと交互に振盪され得る。いくつかの場合において、振盪は、CSS140が、例えば、Ca2+i膜電位または原形質膜完全性を示す蛍光プローブによって測定される場合、休止細胞の生理学を妨害しないような様式で懸濁液を攪拌しないように、制御され得る。
【0141】
例示によれば、懸濁容器(例えば、チューブ141)は、50mlの密閉可能なプラスチックチューブ(例えば、Falcon Labwareまたは種々の他の製造業者から入手可能であり得る)であり得るが、特定の寸法、容積、および材料は、所望に応じて変動し得る。上記のように、チューブ141は、一般に、アクセスポートまたは開口部142(これは、プローブ183に連結されたピペットチップ188が、チューブ141中の細胞懸濁液に接近することを可能にする)を備える。いくつかの実施形態において、概してCSS140、特に、振盪装置145は、処理構成要素170の制御下にあり得;処理構成要素170からの適切な制御シグナルに応答して、例えば、振盪装置145の操作が中断され得、チューブ141は、望ましい配向に維持され得ると同時に、プローブ183に連結されたピペットチップ188は、チューブ141に近づき、開口部142に入り、選択された容積の細胞サンプル材料を引き抜き得る。処理構成要素170からのさらなるシグナルに応答して、または所定のまたは選択された時間の後、開口部142からピペットチップ188が引き抜かれた後に、振盪動作が再開され得る。
【0142】
図3は、直接サンプル注入システムを用いて分析を行う方法の一実施形態の一般的操作を例示する、単純化したフロー図である。ブロック311に示されるように、任意の特定の分析方法の開始時に、(任意の望ましい、または選択された容積およびモル濃度の)試験化合物のプレートは、プラットフォーム129上の選択されたまたは所定のステーション122に配置され得る;さらに、または代わりに、試験管のラック(試験管の各々は、選択された容積およびモル濃度の1種以上の化合物を含み得、プラットフォーム129上の選択されたまたは所定のステーション123に配置され得る。上記のように、種々の化合物または試薬、あるいはこれらの望ましい組み合わせを含む、任意の数のマイクロウェルプレートまたは試験管のラックが、プラットフォーム上の1つ以上のこのようなステーション122、123に配置され得る;具体的には、ブロック311に示される操作は、望ましい任意の回数、特定の分析プロトコルに従って、反復され得る。特定のマイクロウェルプレートまたは試験管の位置(すなわち、プラットフォーム129上のステーション122または123における位置)、ならびに各ウェルまたは各試験間の具体的な内容物と関連づけられたデータおよびパラメーターは、入力され得るか、または例えば、さらなる参照のために処理構成要素170におけるソフトウェアもしくは他の指示設定を用いて、別の方法で記録されて、アーム181、182およびプローブ183、184などにより実行された操作のシーケンスをプログラムし得る。
【0143】
ブロック312に示されるように、自動化ピペッティング装置(例えば、液体取り扱い装置(liquid handler)180)は、所定のまたは予め選択された容積の細胞材料および懸濁媒体(例えば、CSS140から)を獲得し得る。いくつかの実施形態において、ブロック312に示される操作を支配または他の方法で影響を及びす指示は、処理構成要素170、あるいは自動化または半自動化された電気機械システムに命令を供給するように適合された等価な制御機構によって提供され得る;さらに、または代わりに、このような指示は、全体的にまたは部分的に、ユーザーの介入によって与えれ得る。例示的な図14の実装において、サンプル細胞材料のこのような補充は、専用のピペッティングアーム181および関連づけられたハードウェアにより実現され得るが、種々の他のピペッティングアームの器具もまた、企図される。
【0144】
複数のピペッティングアーム(例えば、アーム181、182)のどれが、ブロック312における操作を実行しようとするにも拘わらず(または単一のアーム液体取り扱い装置180が、採用されようと)、サンプル材料は、ブロック313に示されるように、特定のまたは所定の(ステーション122における)化合物ウェルまたは(ステーション123における)試験管に添加され得るかまたは提供され得る。具体的には、ブロック313における操作は、プラットフォーム129上の(例えば、ステーション122またはステーション123における)特定の位置での、別個のサンプル混合物(すなわち、胸痛サンプル供給源から(例えば、懸濁容器またはチューブ141から)得られた望ましい容積のサンプル材料、特定されたまたは所定の化合物、試薬、緩衝溶液、またはこれらのいくつかの望ましい組み合わせを含む混合物)の準備を示す。ブロック313においてさらに示されるように、1以上の混合操作が行われ得る。いくつかの場合において(例えば、分析プロトコル、別個のサンプル混合物の特定の化学的性質、および他の要因に依存して)、前述のサンプル材料をウェルまたは試験管に提供する工程はまた、必要な混合または望ましい混合をを実現し得る。あるいは、混合は、1回以上のピペッティングサイクルを介して行われ得る。ここでこの別個のサンプル混合物(選択されたウェルまたは試験管中のサンプル材料および化合物または他の化学成分の)は、交互に、引き抜かれた後に適切なウェルまたは試験管に戻される。繰り返すと、ブロック313に示される操作は、自動的にまたはユーザーの介入に従うかのいずれかで、処理構成要素170によって影響を及ぼされ得るかまたは制御され得、ポンプシステム(例えば、図15において参照番号151によって示される)によって駆動され得る。
【0145】
ブロック314に示されるように、タイムディレイは、特定の別個のサンプル混合物について望ましい反応が起こる十分な時間を可能にするために提供され得る。いくつかの実施形態において、このようなディレイタイムは、上記のように調製された各別個のサンプル混合物について同一であってもよいし、実質的に同一であってもよい。あるいは、1種以上の別個のサンプル混合物についての反応時間は、プラットフォーム129で調製された他の別個のサンプル混合物から変動し得、分析装置への注入を待っている。ピペッティングアーム動作についての同期化の考慮事項、優先順位付けのストラテジー、またはその両方が、調製され、かつ分析装置に提供されるべき各別個のサンプル混合物によって必要とされるか、またはこれらの混合物について望ましい、種々の反応時間に従って、影響を及ぼされ得るかあるいは別の方法で作用され得ることが理解される。従って、ディレイタイムは、例えば、処理構成要素170によって記録およびモニターされ得、液体取り扱い装置180は、種々の反応およびディレイ所要時間(delay duration)を適応させるために適切に制御され得る。
【0146】
所望のまたは所定のディレイ期間(ブロック313)の後に、別個のサンプル混合物は、ブロック315に示されるように、サンプル注入ガイド139への送達または接近のために、そのウェルまたは試験管ステーション(122または123)から引き抜かれ得る。具体的には、プラットフォーム129上の特定の位置において調製された各別個のサンプル混合物は、例えば、処理構成要素170によって提供される指示に従って、液体取り扱い装置180により、個々に位置づけられてもよいし、連続して引き抜かれてもよい。図面に例示され、上記で詳述されるように、例示的な直接注入システムは、ブロック315に示される操作のためにきれいなピペットチップ188を使用し、連続的な注入操作(ブロック316および317)の間の汚染を排除するかまたは最小化し得る。
【0147】
ブロック316およびブロック317で示されるように、別個のサンプル混合物が、図5および図9〜12を特に参照して上に実質的に示される分析装置の流体システムに注入され得る。特に、別個のサンプル混合物を含むピペットチップ188は、サンプル注入ガイド139(ブロック316)とドッキングされ得るか、またはサンプル注入ガイド139(ブロック316)と密閉して係合され得る;この別個のサンプルの混合物は次いで、ガイド139を通って、サンプル分析装置(例えば、フローサイトメーター190)を付随した独立流体システム(ブロック317)に提供され得る。上記のように、特定の別個のサンプル混合物に対する注入速度は、例えば、処理構成要素170の制御下で、ポンプシステム(例えば、参照番号152で示される)の操作を介して選択的に制御され得る。
【0148】
別個のサンプル混合物に関するデータは、保存または分析のために、例えば、処理構成要素170で、別の電子装置で、またはその両方でコンピュータ読み取り可能媒体に記録され得;さらにこのようなデータは、記録媒体またはネットワークデータ伝達を介して、例えば、任意の所望のコンピュータ化デバイスまたは記録もしくはさらなる分析のための
データ処理装置に伝達され得る。ブロック311〜315および317に関して記載される前述の操作に関する適切な、所望の、または関連するデータとしては、特定の別個のサンプル混合物と関連する以下の情報のいくつか、または全てが挙げられるが、これらに限定されない:特定の化学的性質、体積、パーセンテージ、濃度、組成物、または細胞サンプルの別個の混合物に関連する他の因子、化合物、試薬、および緩衝溶液;混合パラメーター(例えば、行なわれたピペッティング周期の数)、例えば、それらの周期が実行された力強さまたは速度(例えば、流速に関して);別個のサンプル混合物の調製とこのサンプル混合物の分析装置への注入との間に許容される時間の遅れ;特定の別個のサンプル混合物が分析装置に注入される時間、ならびに注入プロセスの速度(または所要時間):ならびに処理構成要素170によってモニタリングされるか、または制御される任意の他のパラメーター。前述のプロセスと関連して記録されるデータの性質および関連性は、特定の実験または分析装置内で生じるアッセイの機能であり得ることが理解される。
【0149】
ブロック318で示される分析装置の標準的な操作または改変された操作に従ってさらなるデータが得られ得る。本開示は、任意の特定の分析装置またはそれらの操作上の特性もしくは制限に限定されることは意図されないが、ブロック318で示される操作が、例えば、フローサイトメーター190によって、または当該分野で公知であるか、または流体システムの既知の原則に従って開発され、作動する任意の他のサンプル分析装置によって実行され得ることに注意すべきである。分析装置(ブロック318)によって得られたデータは、処理構成要素170または他のところで上記のように記録されたデータと合わされ得るか、または他の方法で関連付けられ得る;あるいは、別々のデータファイルは、保存のために維持され得るか、または所望のとおりに処理され得る。
【0150】
ブロック319およびブロック312に戻る点線で示されるように、以下の操作は、任意の回数、分析されることが求められる任意の数の別個のサンプル混合物に対して実施され得る。上記のように処理構成要素170、または等価な機構は、調製された別個のサンプル混合物の位置を記録するために使用され得、分析されていないものに対する分析されたものを記録するために使用され得る。
【0151】
上記のように、ガイド139および任意の付随する連結管または同じく独立した流体システムに接続する他の流体水路は、例えば、ガイド139の操作上の位置を通って鞘の流体の逆流を通して洗浄され得る。図5および図9〜12を特に参照して上に示されるこの洗浄操作はまた、ブロック319で示される。
【0152】
図4は、直接的なサンプル注入システムを使用して分析を実施する方法の別の実施形態の一般的な操作を図示する単純化したフローダイアグラムである。ブロック411および421で示される任意の特定の分析方法の開始時に、化合物および緩衝溶液(任意の所望の体積または選択された体積およびモル濃度)を含む試験管が、プラットフォーム129の選択されたか、または所定のステーション122、123に配置され得る。上記の方法と同様に、種々の化合物、試薬、緩衝液またはこれらの所望の組合せを含む任意の数のマイクロウェルプレートまたは試験管が、プラットフォーム上の1つ以上のこのようなステーション122、123に配置され得る。特定のマイクロウェルプレートまたは試験管の位置、ならびにその特定の内容物を代表する適切なデータは、処理構成要素170または他のどこかに入力され得るか、または他の方法で記録され得る。これらのデータは、アーム181、182およびプローブ183、184などによって実行される一連の操作をプログラムするために、さらなる参考のために使用され得る。
【0153】
ブロック412および422で示されるように、自動化ピペッティング装置(例えば、液体取り扱い装置180)は、一種以上の化合物をプラットフォーム上の特定の位置の選択された他のウェルまたは試験管に移し得る;生じる液体の組合せは、ブロック412で示されるように混合され得る。いくつかの実施形態において、ブロック412および422で示される操作を制御するかまたは他の方法で影響する指示は、処理構成要素170または等価な制御機構により提供され得る;さらに、またはあるいは、このような指示が使用者の介入に完全に、または一部従って提供され得る。ブロック412での混合は、図3のブロック313を特に参照して上記のように実質的に進行され得る。
【0154】
特定のウェルまたは試験管に対する所望の別個のサンプル混合物を作製するために、所望の成分の混合の後、過剰な液体が、特定のウェルまたは試験管(ブロック413)から取り除かれ、特定のウェルが適切な量の化合物、試薬、緩衝液などを含むことを確実にする。ブロック413で企図されるとおりに取り除かれた過剰な液体は、廃棄物として廃棄され得る。ブロック413で示される操作は、完全に、またはその一部が、処理構成要素170によって、特定の実験のための所望のサンプル分析プロトコルに従って、選択的に制御され得る。
【0155】
ブロック414〜416に示される操作(すなわち、供給源(例えば、CSS140)から所望の体積の細胞サンプル物質を除去するか、または獲得し、それを所望のウェルまたは試験管に添加し、混合し、所望の遅延時間を割り当てる)は、図3のブロック312〜314を特に参照して上に示すように実質的に進行され得る。特に、ブロック414〜416での操作は、一般的なサンプル供給源(例えば、懸濁液容器または管141)から得た所望の体積のサンプル材料および特定のまたは予め選択した化合物、試薬、緩衝溶液またはこれらのいくつかの所望の組合せを含む別個のサンプル混合物の調製を代表する。この別個のサンプル混合物は、プラットフォーム129上の特定の位置(例えば、ステーション122またはステーション123)で調製され、そして維持され得る。
【0156】
ブロック416でさらに示されるように、一つ以上の混合操作が行なわれ得る。このような操作は、例えば、分析プロトコル、別個のサンプルの混合物の特定の化学物質および上記の実質的に他の因子に依存し得る。混合工程は、いくつかの適用においては、必要とされ得ない。さらに、時間の遅延は、特定に別個のサンプル混合物に生じる所望の反応に対する十分な時間を可能にするように提供され得る。このような時間の遅延は、各別個のサンプル混合物に対して同一であるか、または実質的に同一であり得るが、一つ以上の別個のサンプル混合物に対する反応時間の遅延は、他の別個のサンプル混合物から変動し得る。従って、ピペッティングアームの動きに対する同調に関する考察事項、優先順位方法またはこの両方は、影響を受け得るか、または他の方法で作用され得る。必要な場合、ブロック416で示される操作の一方または両方が、自動的にかまたは使用者の介入に従って処理構成要素170によって影響を受け得るか、または制御され得る。
【0157】
ブロック417〜419で示される操作(すなわち、別個のサンプル混合物の除去および注入、分析装置からのデータの獲得および手順の反復)は、図3のブロック315〜319を特に参照して上に実質的に示されるように進行し得る。特に、別個のサンプル混合物は、特に図5および図9〜12を参照して液体取り扱い装置180により回収され、上記の分析装置の流体システムに注入され得る(ブロック417)。それに関して、別個のサンプル混合物を含むピペットチップ188は、サンプル注入ガイド139とドッキングされ得るか、またはサンプル注入ガイド139と係合され得る;この別個のサンプルの混合物は次いで、ガイド139を通って、サンプル分析装置(例えば、フローサイトメーター190)を付随した独立流体システムに提供され得る。特定の別個のサンプル混合物に対する注入速度または持続時間は、例えば、処理構成要素170の制御下で、ポンプシステム(例えば、参照番号152で示される)の操作を介して選択的に制御され得る。
【0158】
別個のサンプル混合物と関連する関連データまたは所望のデータが、例えば、上に実質的に示される処理構成要素170の制御下で、記録され得るか、伝達され得るか、またはその両方である。図3の実施形態におけるように、これらのデータとしては、以下が挙げられる:特定の化学的性質、体積、パーセンテージ、濃度、組成物、または細胞サンプルの別個の混合物に関連する他の因子、化合物、試薬、および緩衝溶液;混合パラメーター;時間の遅延;特定の別個のサンプル混合物が分析装置に注入される時間(および速度);ならびに処理構成要素170によってモニタリングされるか、または制御される任意の他のパラメーター。獲得され、記録され、または前述のプロセスと組み合わせて他の方法で操作されたデータの性質および関連性は、分析装置に生じる特定の実験またはアッセイの関数であり得る。
【0159】
ブロック418で示される分析装置の標準的な操作または改変された操作に従ってさらなるデータが得られ得る。最後に、ブロック419およびブロック422に戻る破線で示されるとおり、前述の操作は、任意の回数反復され得、そして、分析されることが求められる任意の数の別個のサンプル混合物に対して反復され得る。処理構成要素170または等価な機構は、調製された別個のサンプル混合物の位置、および分析されていないサンプルに対する分析されたサンプルの位置を記録するために使用され得る。ガイド139および任意の付随する連結管または同じく独立した流体システムに対する接続する流体水路は、例えば、ガイド139の操作上の位置を通って鞘の流体の逆流を通して洗浄され得る。図5および図9〜12を特に参照して上に示されるこの洗浄操作はまた、ブロック419で示される。
【0160】
図3および4に示される機能的ブロックの特定の配置および組織化は、他の可能性の排除に対する任意の特定の順序(order)または順序(sequence)の操作を含むと解釈される。種々の操作の代替的な順序、組合せおよび同時の排除がまた企図され、例えば、複数のアーム液体取り扱い装置実施形態において、そしてサンプル注入周期の連続した反復の間に可能にされ得るか、または容易にされ得る。例えば、一つのサンプル混合物に関してブロック315〜319で示される操作は、次の連続したか、または異なる別個のサンプル混合物に対して異なる反復、またはその後の反復に関して行なわれる操作312〜314と並行してまたは実質的に同時に生じ得る。同様に、(一つのサンプル混合物に関して)ブロック422および412〜416で示される操作は、(以前に調製されたサンプル混合物に関して)ブロック417〜419で示される操作と並行してまたは実質的に同時に実行され得る。当業者は、ブロック317および318で示される操作が、実質的に同時に生じ得ること;同様に図4に示される注入操作(ブロック417)および獲得操作(ブロック418)が実質的に同時に実行され得ることを理解する。
【0161】
図16は、分析を実施する方法の一つの実施形態の一般的な操作を例示する単純化したフローダイアグラムである。ブロック1601および1602で示されるように、データは、サンプル注入システム(例えば、処理構成要素170により)から、および図3および図4を特に参照して上に実質的に示される分析装置から獲得され得る。次いで、獲得したデータは、どのデータ記録が、特定の別個のサンプル混合物を付随する注入システムにより得られ、そして記録されたデータ記録に連絡するサンプル分析装置により得られたかを同定するために比較され得る。特定のサンプル混合物に対する注入時間および速度が処理構成要素170により記録される場合、例えば、その時点でおよびその後の特定の期間に分析装置により得られたデータは、特定の別個のサンプル混合物と関連して印を付けられ得る。前述の様式で、分析装置由来のデータは、データ記録が、特定の別個のサンプル混合物と適合し、関連し得るように注入システムからのデータと関連付けられ得る。この関連は、どの分析結果が、特定のウェルまたは試験管のサンプル混合物から得られたかを確認するのに特に有用性を有し得、いくつかの適用において、サンプル混合物の組成物と関連する分析結果は、結果の解釈を容易にし得る。
【0162】
ブロック1604で示されるように、特定の集団に属する細胞サンプル材料は、同定され得、サンプル混合物が調製され、引き出された特定のウェルまたは試験管と関連付けられ得る。一実施形態に従って、例えば、集団内の細胞の同定は、細胞が、同定されることが求められる集団を特定する全てのゲートに分類されるか否かを決定する工程を包含する。これらのゲートおよび他の分類基準もしくはパラメーターは、使用者特異的および適用に特異的であり得る。前述の様式において、特定のウェルまたは試験管内の細胞は、特定の実験に適切であるか、またはそれらに求められる集団基準と関連し得る。
【0163】
次いで、ブロック1605で示される特定の集団に属するかまたはそれに関連するとして同定された特定のウェルまたは試験管(すなわち、別個のサンプル混合物)から選択された細胞に対して、選択されたか、もしくは所望の分析が実施され得る。統計分析技術を含む種々の分析が、ブロック1605で企図される。例えば、平均強度、強度中央値、所定の閾値強度値を上回る細胞の割合などが適切であり得るか、または所望され得る。ブロック1605で実施される分析の性質、およびその実行と関連して獲得されたデータ記録の性質は、制限なしに以下のいくつかまたは全てに従って変動し得る:使用される分析装置の型;その機能特性および機能の限界;分析装置を制御するために設定される操作上の様式またはパラメーター;実施される実験の型;および他の因子。
【0164】
ブロック1605での分析の間に獲得されたデータは、記録されるか、伝達されるか、処理されるか、またはブロック1606で一般的に示されるように他の方法で操作され得る。記録されたデータ記録は、例えば、後の加工のために、コンピュータ読み取り可能媒体に記録され得るか、保存され得;さらに、またはあるいは、データ処理は、ブロック1606で示される記録と同時にまたはそれと合わせて生じ得る。図3および4を参照して上記に示されるように、データは、記録媒体、例えば、すなわち任意の所望のコンピュータ化デバイスまたは加工装置へのネットワークデータ伝達を介して伝達され得る
判定ブロック1611および1621によって示されるように、前述のプロセスは、例えば、全ての集団および全ての別個のサンプル混合物が分析されるまで選択的に反復され得る。図16の実施形態の反復する性質は、所望の場合使用者の介入に従って選択的に中断され得る。
【0165】
本開示で引用した全ての参考文献、特許および特許出願の内容は全て、その全体が参考として本明細書中に明白に援用される。
【実施例】
【0166】
(実施例1.同時に細胞の集団ごとに一つのリガンド標的の一つの変異したバージョンを用いた細胞集団の開発および染色)
工程1。改変体リガンド標的の開発。標的cDNAを一つ以上の残基で変異させるために、分子生物学的技術を用いて改変体または変異体リガンド標的を開発した。これを、ショットガンまたはコンビナトリアル様式で、特に、部位特異的変異形成様式で行なった。
【0167】
工程2.フローサイトメトリー(FCM)分析および選別のための色で分類した集団の開発。使用したトランスフェクション方法に関わらず、各トランスフェクトした集団を、個々に色で分類し、分析の間機器を用いて別個に識別した。各集団の色による分類を、各集団を別個に染色することにより達成した。各集団を、二つの異なる方法の一方または両方により標識した。第一の方法は、細胞の脂質膜中に分布する疎水性蛍光色素(例えば、DiI、DiO、DiAおよびDiR(Invitrogen、Carlsbad、CA))、および種々の細胞区画に分配する他の無毒性の蛍光色素を使用した。各集団を支持培地(例えば、それらの通常の増殖培地またはハイブリドーマ培地(Sigma−Aldrich))中で、約1×10細胞/mlで懸濁した。蛍光色素をストック溶液(例えば、10mM)から約0.1〜10μMの最終濃度に添加した。細胞を回転デバイス上で、60〜90分間懸濁液中で維持し、周囲の光を遮断するためにホイル中に包んだ。その後、細胞を遠心分離によりペレット化し、適切な培地中で1回洗浄し、アッセイで使用するために再懸濁した。第二の方法は、間接的な二工程の染色技術を使用する。細胞を1mLあたり0.1×10〜10×10個の細胞で支持培地(ハイブリドーマ培地)中に懸濁し、0.5〜10μg/mlの最終濃度のXビオチン化ホスホエタノールアミン(ビオチン−X−DHPE、Invitrogen、Carlsbad、CA)(1〜10mg/mlのストック溶液由来)とともにインキュベートする。細胞をホイルで包み、室温で60分間回転プラットフォーム上に配置する。その細胞をペレット化し、培地中で洗浄し、1〜20μg/mlの第二の分子(例えば、ストレプトアビジン結合Alexa488(Invitrogen))と60分間、回転装置上でインキュベートする。次いで細胞をペレット化し、分析の前に一度洗浄した。データ分析の間の各蛍光集団の間の明確な分解能を得るために、異なる細胞型および機器に対して、染色の濃度、細胞密度および染色工程の時間を別個に最適化した。代表的に、最も良好な集団間の分解能を、最も明るく、最も均質の染色を用いて達成した。
【0168】
工程3。細胞集団の一体化。染色後、各細胞集団からの細胞を合わせ、混合した細胞懸濁液を提供した。ここで、各細胞は、単一の細胞が種々のレーザー供給源により励起される場合、その供給源細胞集団の別個の色で分類した蛍光の形跡を示し、その発光を種々の光学フィルターを通して集めた。
【0169】
工程4。フローサイトメトリーによる集団の分析。合わせた細胞集団を、自動化細胞−化合物混合システムによりリガンドと混合し、自動化サンプル入力フローサイトメトリーシステム(FCM)により分析した。全ての細胞が、2秒間以内(混合の遅延)にリガンドに曝露されるように細胞および化合物を十分に混合した。次いで、この混合物を5秒間以内(注入の遅延)(所望の場合、それ以上の時間)にFCMに注入した。この細胞を、5秒間(注入時間)または所望の場合より長くにわたって注入した。使用した機器に依存してFCMで一種以上のレーザービームが混合物中で各細胞を刺激するように、分析を行なった。蛍光発光を、機器の発光回収経路の下で回収し、特定の蛍光色素の発光の特定のスペクトル領域を検出器へ伝達するためにスペクトル操縦鏡(steering mirror)、二色鏡(dichroic)およびフィルターを用いて選択した。各蛍光色素が必要に応じて励起されることは必ずしも必要ではなく、各蛍光色素に対する発光が最適発光波長で収集されることも必ずしも必要ではない。目的は、混合した集団で、できるだけ多くの蛍光色素を合わせること、およびそれらを最終的に収集された発光プロフィールに基づいて互いから解像することである。従って、類似するが同一ではない発光プロフィールを有するいくつかの蛍光色素からの結果を、単一の二重発光(二変数)プロットに合わせることが可能である。
【0170】
工程5。集団の解像および逆重畳積分データ。データをFCS標準ファイルフォーマットに回収した後、論理的ゲーティング分析ソフトウェア(logical gating analysis software)を用いて集団を互いから完全に解像した。例えば、図19に示されるように、他の3つの二変数のドットプロット(図19Cを参照のこと)で同定された他の集団のそれぞれの周囲に領域を構築すること、およびその表示から集団を取り除くこと、二変数の表示に明らかであるAlexa594集団に対応するドットプロットのみを残すことによりAlexa594集団をソフトウェアで単離した(図19Dを参照のこと)。Alexa594集団からの結果を単離することにより、その集団の反応を分析することがより容易になる。より詳細は、以下の実施例3に提供される。一旦集団が明白に解像されると、反応(例えば、Ca2+動員)の分析を、各集団に対して別個に行なって、その結果をファイルに記録した。
【0171】
(実施例2.U937細胞の20個の集団の解像)
ATP活性化プリン作動性レセプターを発現するU237細胞を使用して20個の細胞集団を作製した。20個の別個のU937細胞集団を、Dio、DiI、DiA、DiD、DiR、FM1−43およびFM4−64を使用して個々の蛍光色素および蛍光色素の組み合わせで直接染色した。この蛍光色素をジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはエタノールに1〜10mMで溶解し、ストック溶液を調製した。この細胞を、染色緩衝液としての血清なしのハイブリドーマ培地(カタログ番号H4281、Sigma Aldrich)に懸濁した。各細胞集団を、細胞を約10細胞/mlまで希釈し、1〜10μMの最終濃度まで色素を添加することにより別個に染色した。また全ての細胞を、Indo−1でロードし、ATPでの細胞の刺激に応答した全ての集団でのCa2+動員をモニタリングした。細胞を色でコードする色素で染色する間に、アセトキシメチルエステル(AM)形態の色素を0.5〜10μM(DMSO中1〜5mMのストック溶液由来)で細胞懸濁液に添加することにより、インジケーター色素を細胞中にロードした。総DMSO濃度を細胞懸濁液中で1体積%以下で維持した。細胞をホイルで包み、周囲の光によるプローブの光脱色を防止し、そして、細胞を懸濁液中に維持するために回転プラットフォームまたは振動(rocking)プラットフォーム上に配置した。この細胞を室温で懸濁液中で30〜90分間(代表的には60分間)インキュベートした。
【0172】
図18は、3つのレーザーフローサイトメトリーによりモニタリングした、20個の色でコードされたU937細胞集団の解像および各集団におけるCa2+動員反応を図示する。細胞をプールし、Cytomaton CyAn高速フローサイトメトリーにより分析した。細胞を10μMのATPで刺激した後、集団の全てにおけるCa2+動員をIndo−1でモニタリングした。20個の別個の集団を、DiO、DiI、DiA、DiD、DiR、FM 1〜43およびFM4〜64を使用して作製した。DiI、DiO、DiA、FM1^43およびFM4〜64に対する発光プロフィールを、488nmのアルゴンレーザー供給源による励起の後収集し、DiDおよびDiRに対する発光プロフィールを、635nmのダイオードレーザーによる励起の後収集した。発光を選択し、488nmの励起通路について550nmおよび600nmの二色鏡を用いて異なる帯域フィルターに導き、そして各図の軸に示される帯域フィルターを使用して収集した。例えば、図18D〜図18Iのx軸上に示される「530/40」は、530±40nmの帯域フィルターである。635nmの励起通路については、720nmのロングパスの操縦二色鏡を用いて発光を分割し、発光を670nmの帯域フィルターおよび740のロングパスフィルターに向け、740nmより上の全ての発光を収集する。
【0173】
(実施例3.2工程「アンカー分子」染色技術を用いた8つのHEK293細胞集団の解像)
8つの異なるカラーコードした集団を、ビオチン化ホスホエタノールアミン技術および単一細胞フローサイトメトリー(FCM)を用いて同時に解像した。HEK293細胞の8つの異なる群を、まずビオチン化ホスホエタノールアミン(DHPE,Invitrogen,Carlsbad CA)で染色し、次いでAlexaTM蛍光色素のストレプトアビジン結合体化形態またはアビジン結合体化形態(Molecular Probes,Inc.,Eugene OR/Invitrogen,Carlsbad CA)で染色した。Alexa 488、Alexa 500、Alexa 514、フィコエリトリン、Alexa 594、Alexa 647、Alexa 660およびAlexa 750またはフィコエリトリン(PE)。各HEK293細胞集団を、ハイブリドーマ培地に1×10/mlで懸濁し、そしてビオチン化DHPE(5μg/ml)をDMSO(10mg/ml)のストックから加えた。これらの細胞を、60分間ローテイタープラットホームにのせ、次いで遠心分離によってペレット化させ、そしてハイブリドーマ培地に1×10/mlで再懸濁した。異なるアビジン結合体化蛍光色素またはストレプトアビジン結合体化蛍光色素を各サンプルに添加し、そしてさらに60分間にわたってローテイターを維持した。各細胞をペレット化し、ハイブリドーマ培地で洗浄し、ハイブリドーマ培地に1×10/mlで再懸濁し、FCMによる分析のために合わせた。これらの細胞をまた、第一のインキュベーションの間にCa2+インジケーター色素Indo−1でローディングし、このインジケーターを、マルチラインWレーザー供給源により励起させた。各細胞をまた、488nmおよび647nmレーザーにより励起させた。488nmレーザーおよび647nmレーザーからの発光は本明細書中に示される。488nm励起に由来する発光を、図19に示すように、ステアリングミラー(直径525 nm、555 nm、および605 nm)を用いて収集し、最終的に505+/1 10 nm、540±20 nm、580±30 nmおよび613±nmバイパスフィルターでフィルタ処理した。647nm励起レーザーからの発光を、695nm2色性ミラーで導き、670±20nmフィルターおよび787nmフィルターを通して収集した。他の混入している蛍光信号から特定の集団を識別し、そして明確するために、ゲーティング論理(gating logic)を用いて、これらの集団を解像した。Alexa 488、Alexa 500、Alexa 514およびPEの集団を、488nmレザーを用いて解像した(図19Aおよび19Bをご参照ください)。488nmレーザーによって励起されたAlexa 594集団は、パネル3.C.に示されるように他の集団により部分的に覆い隠されていた(613 nm×505 nm)。Alexa 594集団は、図19.A.(540 nm発光×505 nm発光)および図19.B.(580 nm発光×540 nm発光)において示される2変数プロットに関する領域を作り、次いで613nm×505nmディスプレイ(図19.D.)によって他の集団を排除することにより、ソフトウェアにおいて解像され得る。Alexa 647、Alexa 660およびAlexa 750集団を、647 nmレーザーおよび787 nm発光×670 nm発光のディスプレイ(図19.E.)を用いて解像した。内因性レセプターに対するリガンドについてのCa2+動員応答は、どのような蛍光色素によっても変更しなかった。
【0174】
(実施例4.2つの蛍光色素、単一アンカー分子および単一レーザーを用いる10の集団の解像)
HEK293細胞の集団を、10の別個の集団に分けた。10の集団を、室温にて、ロッキングプラットホーム上で1時間にわたってハイブリドーマ培地中1×10細胞/mlで、ビオチン−X DHPE(5μ/ml)を用いて染色した。ビオチン−X DHPEで染色した細胞をペレット化し、ハイブリドーマ培地に再懸濁し、次いで洗浄し、そしてハイブリドーマ培地に再懸濁した。1つの集団(集団番号10)はさらなる染色をしなかった。ストレプトアビジン結合体化Alexa 700およびストレプトアビジン結合体化Alexa 635を、残りの9つの集団に、2つの蛍光色素を用いて集団を差示的に染色するために以下のAlexa 700: Alexa 635比で添加した:集合番号1,0:10;集合番号2,1:9;集合番号3,3:7;集合番号4,1:1;集合番号5,7.5:2.5;集合番号6,9:1;集合番号7,25:1;集合番号8,75:1集合番号9,10:0;集合番号10,未染色。Alexa染色調製物の最終濃度は20μg/mlであった。これらの集団をペレット化し、再懸濁し、そしてハイブリドーマ培地に約1×10細胞/mlの最終密度に再懸濁した。10の集団を、同じ割合で混合し、そして35mWの電力の635nm2極管レーザーからの発光を用いるFCMにより分析した。蛍光発光を、700nmロングパスステアリング二色性で収集し、二色性を通過したAlexa700発光を収集し、そして反射した光を665±20nmバンドパスフィルターを通してフォルターにかけ、A635発光を収集した。
【0175】
(実施例5.4つの異なる細胞におけるアポトーシスおよびネクローシスの同時多重分析)
本実施例は、異なる細胞に対する異なる化合物の特異性(化合物の親和性)および異なる細胞特性に対する化合物の効力(化合物の効力)を決定する、本明細書中に提供されるシステムが、集団および応答パラメーターの多重測定を同時に実行するためにどのように使用され得るかを実証する。4つの造血性細胞株(CCRF−CEM,Jurkat,RAMOS,THP−1)(すべてATCCから)を、実施例2に記載するように、蛍光色素DiDおよびDiRで染色し、4つの異なる細胞集団をカラーコードした。細胞をまた、室温で60分間にわたって、ハイブリドーマ培地中、1〜10μM CFDA−SEにおいて細胞をインキュベートすることにより、細胞基質プローブCFDA SE (カルボキシフルオレセインジアセテート、スクシンイミジルエステル(5(6)−CFDAse,Invitrogen,Carlsbad CA)でロードした。CFDA SEは、細胞内に残留している数日間にわたって細胞分裂の追跡(世代分析)を可能にし、娘細胞にほぼ均等に分配される。4つの集団の各々に由来するカラーコードされた細胞を、混合した細胞懸濁液にプールし、96ウェルマイクロウェルプレートに0.5×10細胞/mlで播種した。各ウェルは、試験化合物(リガンド)を10μMで含み、そして右から5〜10のウェルはポジティブ緩衝液コントロールを含んだ。一方、右から1〜4のウェルはネガティブ緩衝液コントロールを含んだ。化合物が、アポトーシスにより測定されるような細胞増殖および生存度に影響するように、これらのプレートを一晩インキュベートした。次の日、上清を除去し、細胞核を、10μg/mlの膜不浸透性DNAプローブDAPI(Invitrogen)で染色した。DAPI染色は、アポトーシス細胞において見られるようなわずかに漏出性の膜を有する細胞と、ネクローシス細胞において見られるような完全に浸透する細胞膜を有する細胞を識別するために使用され得る。これらのプレートを、上記のような自動サンプリングフローサイトメトリーシステムに置き、4つの集団の各々において、各ウェルの成分を分析し、アポトーシスおよびネクローシスの証拠(DAPI蛍光)ならびに増殖活性(CFDA SE蛍光)を示す細胞の割合を解析した。図24に示すように、4つの集団の各々においてアポトーシスおよびネクローシスの測定値(DAPI蛍光)は上のパネルに示され、そして4つの集団の各々における増殖活性(CFDA−SE蛍光)は下のパネルに示される。図24のバープロットにおけるバーの各クラスターは、以下の順での結果を示す:左〜右、CCRF−CEM、RAMOS、THP−1、Jurkat。ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールは、右から10のバークラスターにおいて示される。左から7番目の化合物(上のパネル)は、RAMOS、特に、増殖をほとんどもたらさないTHP−1細胞においてアポトーシス/ネクローシスを促進した(下のパネル)。一方、左から12番目の化合物(下のパネル)は、アポトーシス/ネクローシスの誘導が最小のRAMOS細胞の増殖を遅らせる。このことは、特定のパラメーターに対する化合物活性および特定の細胞に対する化合物の活性の選択性を同時に解析するシステムの能力を説明する。
【0176】
(実施例6.初代ヒト血球の免疫表現型で分類されたサブセットにおけるCa2+動員応答の多重同時測定)
本実施例は、初代組織サンプル集団における細胞性サブセットが、自動化された多重形式において化合物を試験するために、抗原特異的モノクローナル抗体で識別され、迅速な応答パラメーターについて分析する方法を実証する。ここでは、この迅速な応答パラメーターは、Ca2+動員である。ヒト短核血球(HPBMC)を、密度勾配遠心分離を用いて単離した。実施例2において記載されるように、HPBMCをCa2+インジケーター色素Indo−1でロードし、次いでAlexa 647−抗−CD4抗体およびAlexa 700−抗−CD14抗体(Becton−Dickinson)で染色し、CD4+ヘルパーT細胞およびCD14+単球、それぞれを同定した。8つの蛍光色素カップリング抗体により染色されなかった細胞(二重ネガティブ細胞)を、8つの集団に属さないCD14−/CD4−細胞と推定した。抗原特異的蛍光色素を用いることにより、多重にカラーコードされた細胞集団(各々が異なる光学的サインを有する)を、不均一な開始サンプル(heterogenous starting sample)を分画することなく発色させることができた。カラーコードされる細胞集団に対するこの標的特異的アプローチは、単一の不均一な開始サンプルにおいて複数の異なる細胞集団を生成することを可能にするだけでなく、このアプローチは、多重多標的分析に適する混合細胞懸濁液を自動的に生成する。最終的に、以下に記載されるように、そして図25に示されるように、このアプローチは、8つの抗体カップリング蛍光色素によって染色されない細胞(二重ネガティブ細胞)についての有益な情報を得ることを可能にする。
【0177】
これらの細胞をこれらの混合物がフローサイトメトリーに直接注入した後、混合された細胞懸濁液中の細胞を、96ウェル化合物保存プレートから取り出された試験化合物と混合される自動化フローサイトメトリーシステムにおいて分析した。フローサイトメトリーにおいて、各細胞のCa2+動員応答を測定し、解析した。その結果、個々の細胞(CD4+ヘルパーT細胞、CD14+単球および二重ネガティブ細胞)のサブセットにおけるCa2+動員が自動化様式において決定された。
【0178】
Ca2+動員応答を閾値の規定Ca2+レベルを設定し、分析の間にこの閾値を越えた細胞の割合を決定することにより定量した。図25に示されるように、X軸に沿うバーの各クラスターは、クラスターの下にあるレジェンドに列挙される試験化合物に対する3つの集団の応答を示す。各化合物(リガンドまたはコントロール)は、96ウェルプレートにおける位置を用いて記載されており、結果のサブセットは説明のためにだけに選択されている。図25において、バーの各クラスターは、左〜右に、試験化合物に対して応答した、CD14+細胞の割合(中程度の濃淡)、CD4+細胞の割合(明るい濃淡)、および二重ネガティブ細胞の割合(暗い濃淡)を示す。細胞を、ポジティブコントロールとしてCa2+動員イオン透過担体(イオノマイシン)で処理した:イオノマイシンポジティブコントロールについての結果は、図26において、ヒストグラムチャートの一番右のB15およびB16に示す。細胞を、ネガティブコントロールとして緩衝液で処理した:ネガティブコントロールについての結果は、A3およびA4に示す。ネガティブコントロールアッセイは、細胞特異的規定値を提供すること(例えば、CD14+細胞は、「休止」条件下でさえ閾値以上のCa2+レベルを有する細胞の割合が常に高い)に注意されたい。リガンドコントロールそしてセロトニンを用いた結果を、B3およびB5に示す。D10として列挙した化合物は、CD4+集団選択性を活性化し、一方、17として列挙した化合物は、CD14+集団選択性を活性化した。N8として列挙した化合物は、3つの細胞集団すべてを活性化した。これは、初代組織細胞亜集団の多重分析を実行し、一連の試験化合物に対する細胞型選択的活性を検出するために、自動化システムがどのように使用され得るのかを説明する。
【0179】
本発明の局面は、例示を目的とするのみであり、限定を目的とするものではない特定の実施形態に関連して詳細に説明および記載されている。種々の改変および変更が、本発明の開示の範囲および意図から逸脱することなく、例示的な実施形態に対してなされ得ることが理解される得る。従って、本発明は、添付の特許請求項の範囲によってのみ限定されるとみなされるべきであることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】図1は、直接サンプル注入システムの要素を組み込んでいるサンプル分析システムの一実施形態の機能的構成要素を示す、単純化したブロック図である。
【図2】図2は、直接サンプル注入システムの要素を組み込んでいるサンプル分析システムの別の実施形態の機能的構成要素を示す、単純化したブロック図である。
【図3】図3は、直接サンプル注入システムを使用して分析を実施する方法の一実施形態の一般的操作を示す、単純化したフロー図である。
【図4】図4は、直接サンプル注入システムを使用して分析を実施する方法の別の実施形態の一般的操作を示す、単純化したフロー図である。
【図5】図5は、使用の間にピペットチップと係合しているサンプル注入ガイドの一実施形態の斜視図を示す、略図である。
【図6】図6は、ピペットプローブにピペットチップと係合させる接続構成要素の一実施形態の斜視図を示す、略図である。
【図7】図7は、図6の接続構成要素の側面図を示す、略図である。
【図8】図8は、図6の接続構成要素の軸方向図を示す、略図である。
【図9】図9は、サンプル注入ガイドの一実施形態の斜視図を示す、略図である。
【図10】図10は、図9のサンプル注入ガイドの一実施形態の平面図を示す、略図である。
【図11】図11は、図9のサンプル注入ガイドの実施形態の側面図を示す、略図である。
【図12】図12は、図10における線12−12上で見た図9のサンプル注入ガイドの実施形態の軸方向断面図を示す、略図である。
【図13】図13は、直接サンプル注入システムを組み込んでいるサンプル分析システムの一実施形態の構成要素を示す、略斜視図である。
【図14】図14は、直接サンプル注入システムの一実施形態の構成要素を示す、略斜視図である。
【図15】図15は、図14の直接サンプル注入システムのさらなる構成要素を示す、略斜視図である。
【図16】図16は、分析を実施する方法の一実施形態の一般的操作を示す、略フロー図である。
【図17】図17は、例として複数の変異レセプター集団を使用する、多重多標的スクリーニング方法における工程のフローチャートである。
【図18】図18は、3−レーザーフローサイトメトリー(FCM)によりモニターされるU937細胞の20個の集団におけるCa2+動員応答を示す。Ca2+動員は、細胞がATPで刺激された後にIndo−1指示薬色素を用いてモニターされた。20個の別個の集団が、DiO蛍光色素、DiI蛍光色素、DiA蛍光色素、DiD蛍光色素、DiR蛍光色素、FM 1−43蛍光色素、およびFM 4−64蛍光色素を使用して、標識された。標識細胞がプールされ、内部Ca2+(Ca2+)レベルが、ATPでの刺激前にFCMによって分析されて、基礎Ca2+レベルが測定され、ATPでの刺激の後に各集団中のCa2+応答(Ca2+レベル)の活性化が測定された。
【図19】図19は、ビオチン化DHPE(N−(ビオチノイル)−1,2−ジヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)を「アンカー分子」として用いる間接的染色を使用する、単一の細胞フローサイトメトリー(FCM)による8個のHEP293細胞集団の同時解像を示す。8個の異なるHEK293細胞群が、まず、ビオチン化DHPEで染色され、その後、ストレプトアビジン結合体化形態またはアビジン結合体化形態のAlexa 488、Alexa 500、Alexa 514、フィコエリトリン、Alexa 594、Alexa 647、Alexa 660、およびAlexa 750で染色された。これらの細胞にはまた、Ca2+指示薬色素であるIndo−1が負荷された。細胞がプールされ、そしてFCMによって分析された。ここで、細胞は、488nmレーザーおよび647レーザーに曝されて蛍光色素が励起され、そしてUVレーザーに曝されてIndo−1指示薬色素が励起された。
【図20】2つの蛍光色素、1つのアンカー分子、および1つのレーザーを用いる差次的染色を使用する、10個のHEK 293細胞集団の解像を示す。HEK 293細胞は、10個の集団へと分轄され、「アンカー分子」としてのBiotin−X DHPEで標識され、その後、以下の比率(SA−Alexa 700:SA−Alexz 635)でストレプトアビジン結合体化Alexa 700およびストレプトアビジン結合体化Alexa 635で標識されて、2つの蛍光色素による集団の差次的染色が達成された:集団#1 0:10;集団#2 1:9;集団#3 3:7;集団#4 1:1;集団#5 7.5:2.5;集団#6 9:1;集団#7 25:1;集団#8 75:1;集団#9 10:0;集団#10 ミ染色(Biotin−X DHPEでのみ標識)。
【図21】図21は、メラノコルチン4レセプター(MC4R)でトランスフェクトされたHEK293細胞におけるCa2+レベルの分布を示す。これは、休止時(最初の20秒間)および1μM NDP−αMSH(MC4Rのリガンド)を添加した後(ギャップ後)に、フローサイトメトリーによって測定した。このプロットは、3分間にわたって集団を連続サンプリングした結果を示す。各点は、細胞を示し、実線は、単一細胞データから計算したX軸(時間)における各値範囲(bin)におけるサンプリングされた集団の平均を示す。
【図22】図22は、2つの緩衝液コントロールサンプルと、1μMセロトニン(5HT)で刺激したIndo−1負荷5HT2Aレセプター保有細胞を含む実験サンプルとの応答プロットを示す。このプロットは、オートサンプリングフローサイトメトリーおよび単一細胞分析を使用して、Ca2+レベルを測定した。左図:強度比によって測定されるCa2+レベルの分布および矢印によって示される閾値レベルの決定。中央図:2つのコントロール集団および1つのアゴニスト(5HT)処理集団からの細胞のCa2+レベル(y軸)を示す、フローサイトメトリーの結果。右図:中央図において示されるプロットからのデータ分析からの結果の棒グラフ。未処理コントロール集団(B1およびB2)およびアゴニスト処理集団(C1)の各々における平均Ca2+レベルを少なくとも2標準偏差超えるCa2+を有する細胞の割合を示す。
【図23】図23は、平均強度方法およびセロトニン(5HT)に対する5HT2Aレセプター保有細胞の応答を測定する「全か無か」方法を使用した、シグナル対ノイズ比(y軸)の比較を、一定範囲の5HT濃度(x軸)にわたって各濃度の5HTに関して示す。
【図24】図24は、試験化合物およびコントロールに対する暴露に応答した、4種の細胞株におけるアポトーシスおよび壊死(DAPI蛍光、上図)および増殖活性(CFDA SE蛍光、下図)の測定を示す。この4種の細胞株は、CCRF−CEM細胞(黒色)、RAMOS細胞(暗灰色影)、THP−1細胞(明灰色影)、Jurkat細胞(白色、影なし)である。ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールが、この図の右側に、A3、A6、およびA9において10個のクラスターとして示されている。
【図25】図25は、種々の試験化合物およびコントロールに応答する、CD14+細胞(中程度の影付き)、CD4+細胞(最も明るい影付き)、およびCD14−/CD4−二重陰性細胞(最も暗い影付き)の割合を示す。ネガティブコントロール(緩衝液コントロール)についての結果が、A3およびA4において示される。イオノマイシン(Ca2+イオノフォア)陽性コントロールに関する結果が、B15およびB16に示される。セロトニンをリガンドコントロール(ポジティブコントロール)として使用した結果が、B3およびB5において示される。試験化合物(試験リガンド)を使用する結果が、D9、D10、I7、I8、J9、J10、N7、N8において示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重スクリーニング方法であって、該方法は、以下:
(a)スクリーニングされる複数の細胞集団を増殖させる工程であって、各細胞集団は、リガンド標的を発現する、工程;
(b)カラーコーディングされた各細胞集団について異なった光学的サインを生じさせるために、蛍光色素を用いて少なくとも1つの細胞集団を染色することにより、複数の細胞集団の各々をカラーコーディングする工程、および細胞性応答をモニタリングするために蛍光インジケーター色素を各細胞集団にローディングする工程;
(c)混合細胞懸濁液を形成するためにカラーコーディングされた細胞集団を合わせる工程;
(d)リガンドまたはコントロール化合物と、該混合細胞懸濁液とを接触させる工程;
(e)単一細胞分析システムにより該混合細胞懸濁液を分析する工程であって、該混合細胞懸濁液においてカラーコーディングされた各細胞を励起させるために1つ以上の光源を用いる工程ならびに該異なる光学的サインおよび各細胞の細胞性応答を測定するために励起した各細胞から蛍光発光を集める工程を包含する、工程;ならびに
(f)工程(e)において集められたデータを逆重畳することにより該混合細胞懸濁液における複数の細胞集団の各々を解像する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記細胞集団は、FM 1−43、FM 4−64、DiO、DiI、DiA、DiD、DiR、PKH 2、PKH26、Bodipy 665、LysoSensor Blue、ヘキスト33232、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、Alexa 488、Alexa 500、Alexa 514、フィコエリトリン、Alexa 594、Alexa 647、Alexa 660およびAlexa 750から選択される少なくとも1つの蛍光色素で染色される、方法。
【請求項3】
前記細胞集団が、少なくとも1つの蛍光色素で直接染色される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞集団がアンカーの分子で一次標識され、そして少なくとも1つの蛍光色素が該アンカー分子に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アンカーの分子がビオチン化分子であり、そして前記蛍光色素がビオチン結合分子に結合体化されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光色素がストレプトアビジンまたはアビジンに結合体化されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アンカー分子がアビジン結合体化分子またはストレプトアビジン結合体化分子であり、そして前記蛍光色素がアビジン結合分子またはストレプトアビジン結合分子に結合体化されている、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光色素がビオチンまたはビオチン誘導体に結合体化されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記蛍光色素が、Alexa 488、Alexa 500、Alexa 514、フィコエリトリン、Alexa 594、Alexa 647、Alexa 660またはAlexa 750である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)における複数の細胞集団をカラーコーディングする工程が、染色されていない細胞集団に対して異なった光学的サインを得るために、該複数の細胞集団のうちの1つを染色しない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞性応答が、リガンドに対する細胞性応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記リガンドに対する細胞性応答が、内部のCa2+動員(Ca2+)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インジケーターが、Indo−1、Fluo−3、Fluo−4、Oregon Green 488 BAPTA、Calcium Green、X−rhod−1またはFura Redである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リガンドに対する細胞性応答が、膜電位の変化である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記混合細胞懸濁液が、分析工程の前に約0.1秒間〜約1週間にわたって前記リガンドとともにインキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
分析工程の前に、追加インジケーター色素を添加する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合細胞懸濁液が、分析工程の前に約1秒間〜約5秒間にわたって前記リガンドとともにインキュベートされる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記混合細胞懸濁液が、約1分間〜約1時間にわたって前記リガンドとともにインキュベートされる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記混合細胞懸濁液が、分析工程の前に約1時間〜約48時間にわたって前記リガンドとともにインキュベートされる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の細胞集団が、内因性リガンド標的を発現している細胞集団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の細胞集団が、トランスフェクトされたリガンド標的を発現している細胞集団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の細胞集団が、調節可能なリガンド標的を発現している細胞集団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記複数の細胞集団が、発現タグとともにリガンド標的を発現している細胞集団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の細胞集団が、野生型リガンド標的を発現している細胞集団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の細胞集団が、改変体リガンド標的を発現している細胞集団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記改変体リガンド標的が、天然に存在する改変体リガンド標的である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記改変体リガンドが、変異体リガンド標的である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の細胞集団が、野生型リガンド標的を発現する細胞集団、および改変体リガンド標的を発現する細胞集団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
複数の改変体リガンド標的を発現する複数の細胞集団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記混合細胞懸濁液を分析する工程、および該混合細胞懸濁液中の前記複数の細胞集団の各々を解像させる工程が、前記リガンドに対する応答が増加した細胞集団を同定する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記リガンドに対する応答が増加した細胞が単離される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記単一細胞分析システムが、フローサイトメトリーシステムである、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記フローサイトメトリーシステムが、蛍光活性化細胞選別器(FACS)をさらに備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞がFACSを用いて選別される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1に記載の方法であって、前記単一細胞分析システムが、混合細胞懸濁液を調製するように操作される液体取り扱い装置(liquid handler)、サンプル分析装置、および該分析装置に接続された注入ガイドを備え、ここで、該注入ガイドは、該液体取り扱い装置から該混合細胞懸濁液を受け取り、該サンプル分析装置の流体システムに該混合細胞懸濁液を提供するように操作される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2007−504837(P2007−504837A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532836(P2006−532836)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/014215
【国際公開番号】WO2004/102165
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504195060)ノバサイト ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】