説明

多重引き式引戸装置

【課題】第1及び第2扉体を連動させて開閉移動させる連動機構の紐状部材が一方の扉体に扉体厚さ方向にずれた2つの連結位置で連結されても、これらの扉体を開き限界位置まで移動させることができる多重引き式引戸装置を提供すること。
【解決手段】第1及び第2扉体1,2は、第1扉体1に配置された2個の回転部材41,42に掛け回された紐状部材43等で構成されている連動機構40で連結され、第1及び第2扉体1,2に対して不動となっている無目5に結合されている紐状部材43は、第2扉体2の厚さ方向にずれた2つの連結位置B1,B2で第2扉体2に結合され、連結位置B1に、第1及び第2扉体1,2が開き限位置に近づいてからこれらの扉が開き限位置に達するまでの間に紐状部材43の実質的長さを長くするための実質的長さ変更手段120が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド部材で案内される複数個の扉体が扉体厚さ方向に配置され、これらの扉体の同一方向への移動で開口部が開閉されてこれらの扉体が開閉方向へずれることによりこの開口部が閉じられる多重引き式引戸装置に係り、例えば、それぞれの扉体が上部に配置されたガイド部材から吊り下げられた上吊り式引戸装置等に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
多重引き式引戸装置である二重引き式引戸装置は、第1及び第2の2個の扉体と、これらの扉体を開閉方向へ案内する第1及び第2のガイド部材となっている2個のガイドレールとを備え、扉体厚さ方向にずれて隣接配置されている第1及び第2扉体の同一方向への移動によって開口部が開閉されるとともに、この開口部は、開閉方向へずれた第1扉体と第2扉体によって閉じられる。そして、上吊り式引戸装置の場合には、2個のガイドレールは扉体の上部に配置され、それぞれの扉体はこれらのガイドレールから吊り下げられる。
【0003】
従来の二重引き式引戸装置では、下記の特許文献1に示されているように、第1扉体のための第1ガイドレールと第2扉体のための第2ガイドレールの両方は、これらの扉体に対して不動となっている上枠に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−6372(段落番号0010、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来技術によると、第1扉体と第2扉体のうち、開口部を閉じたときに閉じ側、すなわち戸先側となる第2扉体は、開口部を閉じたときの第1扉体よりも閉じ側へ前進しているとともに、開口部を開けたときの第2扉体は、開口部を開けたときの第1扉体と同じ又は略同じ位置まで後退するため、この第2扉体を開閉方向へ案内するための第2ガイドレールは、第2扉体の大きな開閉移動量に対応する長大な長さを有するものとなる。これによると、引戸装置全体の構造が複雑化する。
【0006】
本発明の目的は、開口部を閉じたときに戸先側となる扉体を案内するためのガイド部材の長さを短くできるようになる多重引き式引戸装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る多重引き式引戸装置は、少なくとも第1及び第2の2個の扉体と、これらの扉体を開閉方向へ案内する第1及び第2のガイド部材とを備え、扉体厚さ方向にずれて隣接配置されている前記第1及び第2扉体の同一方向への移動によって開口部が開閉されるとともに、この開口部が、前記第1扉体よりも前記第2扉体が閉じ側へ前進することにより開閉方向へずれた前記第1及び第2扉体によって閉じられる多重引き式引戸装置において、前記第1扉体のための前記第1ガイド部材は前記第1及び第2扉体に対して不動となっている不動部材に取り付けられ、前記第2扉体のための前記第2ガイド部材は第1扉体に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
この多重引き式引戸装置によると、第1扉体よりも閉じ側へ前進して開口部を閉じる第2扉体のための第2ガイド部材は、第1及び第2扉体に対して不動となっている不動部材ではなく、第1ガイド部材に案内されて移動する第1扉体に取り付けられているため、この第2ガイド部材は第1扉体と共に開閉方向へ移動する。このため、第2ガイド部材を不動部材に取り付けた場合と比較して、開閉方向への第2ガイド部材の長さを短縮することができ、これにより、第2ガイド部材についての材料コストの低減と、多重引き式引戸装置の全体構造の簡単化とを達成することができる。
【0009】
また、第2ガイド部材を第1扉体の外面に取り付けることにより、不動部材に取り付けられている第1ガイド部材に第1扉体を係合配置した後、第2扉体を第2ガイド部材に係合配置するための施工作業を容易に行えるようになる。
【0010】
本発明において、第1ガイド部材と第2ガイド部材は、高さ位置を上下にずらして配置してもよく、これらのガイド部材を同じ又は略同じ高さ位置に配置してもよい。
【0011】
後者によると、第1ガイド部材と第2ガイド部材が配置される部分についての多重引き式引戸装置の高さ寸法を小さくできることになり、この結果、多重引き式引戸装置全体の上下寸法を短縮できてコンパクト化を図ることができる。
【0012】
本発明において、第1ガイド部材と第2ガイド部材は、第1扉体と第2扉体を開閉方向へ案内できるものであれば任意な構造、形式のものでよく、その一例は上述したガイドレールであり、他の例はスライドレールである。なお、ガイドレールとは、扉体側の部材となっているローラが転動自在に係合することにより、扉体を開閉方向へ案内するための部材であり、また、スライドレールとは、スライドベアリングを介して扉体側の部材と連結され、このスライドベアリングによって扉体を開閉方向へ案内するための部材である。
【0013】
また、第1ガイド部材が第1ガイドレールであって、第2ガイド部材も第2ガイドレールである場合には、第1扉体と第2扉体のそれぞれにはこれらのガイドレールに案内されて転動する複数個のローラが開閉方向に設けられるが、第2扉体に設けられる複数個のローラの全部を第2ガイド部材に転動自在に配置してもよいが、これらのローラのうち、閉じ側に配置された少なくとも1個のローラを第1ガイドレールに案内されて転動自在とし、残りのローラを第2ガイドレールに案内されて転動自在とすることが好ましい。
【0014】
これによると、第2扉体に設けられた全部のローラを第2ガイドレールに案内させて転動自在とした場合よりも、第2ガイドレールの閉じ側への延伸長さを短くでき、第2ガイドレールの一層の短縮化を図ることができる。
【0015】
また、これによると、第2扉体の重量は第1ガイドレールと第2ガイドレールとに分かれて支持されることになるため、第1扉体よりも閉じ側へ移動して前記開口部を閉じたときにおける第2扉体の重量支持を、これらのガイドレールによって有効に分担して行えることになる。
【0016】
また、第2ガイドレールを取り付ける第1扉体の箇所は任意である。例えば、第1扉体が、扉体本体と、この扉体本体に取り付けられ、第1ガイドレールに案内されるローラを備えたブラケットとを含んで形成される場合には、扉体本体に第2ガイドレールを取り付けてもよく、扉体本体とブラケットに跨ってこれらの扉体本体とブラケットの両方に第2ガイドレールを取り付けてもよく、ブラケットに第2ガイドレールを取り付けてもよい。
【0017】
ブラケットに第2ガイドレールを取り付けると、扉体本体に第2ガイドレールを取り付けるためのねじ孔加工等の加工作業を行う必要がなくなり、それだけ、扉体本体の製造を容易化できる。
【0018】
なお、第1及び第2ガイドレールと上記ローラとの係合構造は任意でよい。すなわち、溝とこの溝に挿入される突部とによって凹凸係合するガイドレールとローラのうち、ローラに溝が形成されていてガイドレールに突部が形成されていてもよく、ローラに突部が形成されていてガイドレールに溝が形成されていてもよい。
【0019】
また、第1扉体に、この第1扉体に取り付けられている第2ガイド部材の撓み変形に対する強度を補強するための補強部を備えさせてもよい。
【0020】
これによると、第2扉体の重量が第2ガイド部材に作用しても、補強部によって第2ガイド部材の撓み変形に対する強度は補強されているため、第2ガイド部材が大きく撓み変形することはなく、これにより、第2ガイド部材で案内されてなされる第2扉体の開閉移動を安定させることができる。
【0021】
このように第1扉体に、第2ガイド部材の撓み変形に対する強度を補強するための補強部を備えさせる場合には、この補強部を、第1扉体を形成するために用いられる部材における一部として第1扉体に設けてもよく、あるいは、第1扉体を形成するために用いられる部材とは別の部材として補強部材を用意し、この補強部材を第1扉体に設けることにより、この補強部材を第1扉体が備えた上記補強部としてもよい。
【0022】
後者のように第1扉体に、第2ガイド部材の撓み変形に対する強度を補強するための補強部材を設ける場合において、この補強部材の形状、構造は任意である。その一例は、補強部材に第2ガイド部材を下から受ける部分を設けることであり、これにより、第2ガイド部材の撓み変形の防止を有効に実現できる。
【0023】
また、このように補強部材に第2ガイド部材を下から受ける部分を設ける場合の一例は、この部分を、第2ガイド部材の閉じ側の先端部を越えた箇所において形成されているL字状のフック部とすることである。
【0024】
これによると、第2ガイド部材の最も撓みやすい箇所を補強部材で補強し、第2ガイド部材の全体の撓み量を小さくできる。
【0025】
また、第2ガイド部材と補強部材はそれぞれ個別に第1扉体に取り付けてもよいが、これらの第2ガイド部材と補強部材を、第1扉体の厚さ方向に重ねて同じ結合具により共締め結合することが好ましい。
【0026】
これによると、第2ガイド部材と補強部材を少ない部材による簡単な構造で第1扉体に取り付けることができる。
【0027】
以上の本発明において、第1扉体と第2扉体を互いに関連づけて開閉移動させるための構造は任意でよい。その一例は、第1扉体と第2扉体とのうちの少なくとも一方に、開口部を開いた位置まで後退していた第2扉体を閉じ側へ所定距離移動させたときに第1扉体と第2扉体とが互いに連結された状態となる係止部材を設け、それ以上に第2扉体を閉じ側へ移動させると両方の扉体がこの係止部材によって一体となって移動するように構成することである。また、他の例は、第1扉体と第2扉体を連動機構で連結し、第2扉体の高速移動が第1扉体に低速移動となって伝達され、これらの扉体が連動して開閉移動するように構成することである。
【0028】
また、以上説明した第1ガイド部材と第2ガイド部材は第1扉体と第2扉体の上部に配置してもよく、下部に配置してもよく、上部と下部の両方に配置してもよい。すなわち、本発明は、第1及び第2ガイド部材による第1及び第2扉体の移動案内をこれらの扉体の上部で行う上部案内方式の多重引き式引戸装置にも適用でき、扉体の下部で行う下部案内方式の多重引き式引戸装置にも適用でき、扉体の上下部両方で行う上下部両方案内方式の多重引き式引戸装置にも適用できる。
【0029】
また、本発明は、扉体厚さ方向にずれて配置される複数個の扉体の個数が2個である二重引き式引戸装置にも、3個である三重引き式引戸装置にも、4個以上である四重超引き式引戸装置にも、適用できる。本発明を三重超引き式引戸装置に適用する場合には、前述した第1扉体でもなく、第2扉体でもない扉体のためのガイド部材は、この扉体に隣接配置される扉体に取り付けてもよく、不動部材に取り付けてもよい。
【0030】
さらに、本発明は、第1扉体と第2扉体とが左右両側に2個ずつ配置され、これらが互いに逆方向へ移動することにより開口部が開閉される引き分け式の引戸装置にも適用でき、また、本発明は、3個以上ずつの扉体が左右両側に配置される引き分け式の三重超引き式引戸装置にも適用できる。
【0031】
さらに、本発明は、開口部を開けるために後退移動した第1及び第2扉体が収納される戸袋を備えた引戸装置や、戸袋を備えていない引戸装置、さらには、戸袋を備えているが、この戸袋が扉体の片面のみを隠す片面式戸袋となっている引戸装置にも適用できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、多重引き式引戸装置において、開口部を閉じたときに戸先側となる扉体を案内するためのガイド部材の長さを短くできるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る二重引き式引戸装置の全体を示す正面図であって、第1及び第2の2個の扉体が出入口となっている開口部を閉じているときを示す図である。
【図2】図2は、2個の扉体を開閉移動させる移動機構を、図1で示された無目のカバーを取り外して示す正面図であって、2個の扉体が図1の位置にあるときの図である。
【図3】図3は、図2の移動機構を示す平面図であって、2個の扉体が図1の位置にあるときの図である。
【図4】図4は、2個の扉体を連動させて開閉移動させるための連動機構を示す平面図であって、2個の扉体が図1の位置にあるときの図である。
【図5】図5は、2個の扉体を開閉移動させる移動機構を、図1で示された無目のカバーを取り外して示す正面図であって、2個の扉体が後退位置まで達して図1で示された開口部を開けているときを示す図である。
【図6】図6は、図5のときの移動機構を示す平面図である。
【図7】図7は、図5のときの連動機構を示す平面図である。
【図8】図8は、図5のS8−S8線断面図である。
【図9】図9は、図2のS9−S9線断面図である。
【図10】図10は、第1扉体と、この第1扉体の2個のブラケットに取り付けられた第2ガイドレールとを示す正面図である。
【図11】図11は、図1で示された第1及び第2扉体のための下部ガイド手段を示す扉体の縦断面図である。
【図12】図12は、図11で示されている第1扉体のための下部ガイド手段を示す平面図である。
【図13】図13は、第1及び第2ガイドレールに係合するローラを第1及び第2扉体に取り付けるためのブラケットと、このブラケットに設けるローラ外れ防止手段とを示す分解斜視図である。
【図14】図14は、図13のローラ外れ防止手段をブラケットに取り付けた第1扉体を第1ガイドレールに沿って移動自在とした状態を示す第1扉体の上部正面図である。
【図15】図15は、別実施形態に係るローラ外れ防止手段を示す図14と同様の図である。
【図16】図16は、連動機構の紐状部材と第2扉体との結合箇所に、紐状部材の実質的長さを長くするための実質的長さ変更手段を設けた実施形態を示す図4と同様の図である。
【図17】図17は、図16の実施形態における図7と同様の図である。
【図18】図18は、台座部材の回動止め用突起を示す図16のS18−S18線断面図である。
【図19】図19は、第1扉体に取り付けられている第2ガイドレールの撓み変形に対する強度を補強するための補強部材を第1扉体に設けた実施形態を示す図10と同様の図である。
【図20】図20は、図19の実施形態における図8と同様の図である。
【図21】図21は、図19で示されているフリーストップ装置を示す正面図である。
【図22】図22は、図21のフリーストップ装置の平面図である。
【図23】図23は、第2扉体の戸先部についての別実施形態を示す戸先部の平断面図である。
【図24】図24は、図23とは別構造となっている第2扉体2の戸先部の実施形態を示す平断面図である。
【図25】図25は、連動機構における張力緩和手段の別実施形態を示す図7と同様の図である。
【図26】図26は、連動機構における緊張力付与手段の別実施形態を示す図7と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図である。
【0035】
図1に示されているとおり、本実施形態に係る引戸装置は2個の第1扉体1と第2扉体2を有する二重引き式引戸装置となっている。これらの扉体1,2は、建物内の廊下と部屋との間の出入口となっている開口部3を開閉するもので、この開口部3は、二重引き式引戸装置用外枠組みの構成部材となっている戸先側の縦枠部材4と、上部の横枠部材である無目5と、戸尻側の縦枠部材6と、床7とで囲まれている空間のうち、片面式戸袋を形成している戸袋パネル8よりも戸先側(閉じ側)の空間によって形成されている。
【0036】
同一方向へ移動することによって開口部3を開閉する第1扉体1と第2扉体2は、これらの扉体1,2の厚さ方向にずれて配置されている(図8参照)とともに、これらの扉体1,2が閉じ側へ前進して開口部3を閉じたときには、図1で示されているように、第2扉体2が閉じ側となり、第1扉体1の位置がこの第2扉体2から開き側へずれた位置となる(図3参照)。また、両方の扉体1,2が図1で示す戸袋パネル8側へ開き移動したときには、これらの扉体1,2は、これらの扉体1,2の厚さ方向に重なって後退位置に達する(図6参照)。
【0037】
図1で示されている2個の縦枠部材4と6との間に跨る長さを有する無目5には、カバー9で塞がれる点検口がこの無目5の全長又は略全長に亘って設けられ、通常時、この横長の点検口はカバー9で塞がれており、カバー9は、縦枠部材4の突片部4Aと縦枠部材6の突片部6Aに形成されたねじ孔にねじ込まれる止めねじ10,11で無目5に取り付けられる。カバー9を取り外すことにより、2個の扉体1,2を開閉移動させるために無目5の内部に組み込まれている移動機構についての点検、保守、修理等の作業を行える。
【0038】
図2は、カバー9を取り外して示すこの移動機構の正面図であって、図1のように2個の扉体1,2が開口部1を閉じているときを示す図である。また、図3は、このときの移動機構を示す平面図である。さらに、図5及び図6には、2個の扉体1,2が開き側の後退位置に達して開口部3を開けているときにおける図2及び図3と同様の図が示されている。
【0039】
図8には、図5のS8−S8線断面図が示され、この図8で示すように、カバー9が配置される側とは反対側の無目5の側面部5Aには、補強部材を兼ねる取付部材12を介して第1ガイド部材である第1ガイドレール21が取り付けられている。この第1ガイドレール21は、取付部材12に結合されて上下方向に延びる基部21Aと、この基部21Aの下端から扉体1,2の厚さ方向へ延びる下辺部21Bと、この下辺部21Bの先端から立ち上った立上部21Cとからなる。
【0040】
アルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品であるこの第1ガイドレール21は、図3及び図6から分かるように、無目5の略全長に亘る長さを有している。これらの図3及び図6で示されているように、第1ガイドレール21には、第1扉体1にこの第1扉体1の開閉移動方向に2個設けられたローラ31,32が転動自在に係合し、これらのローラ31,32は、図13で示されたブラケット13を介して第1扉体1の扉体本体1A(図8参照)の上部に取り付けられている。
【0041】
このため、第1扉体1は、上部に配置された第1ガイドレール21に案内されて移動自在になっているとともに、このガイドレール21から吊り下げられた上吊り式扉体となっている。図3及び図6で示されているとおり、第1扉体1の2個のブラケット13には、第1ガイドレール21と同じく扉体1,2の開閉移動方向へ延びる第2ガイド部材である第2ガイドレール22が取り付けられている。この第2ガイドレール22も、図8で示されているように、第1ガイドレール21と同じく、上下方向に延びる基部22Aと、この基部22Aの下端から扉体1,2の厚さ方向へ延びる下辺部22Bと、この下辺部22Bの先端から立ち上った立上部22Cとからなり、基部22Aが第1扉体1のブラケット13に結合されている。
【0042】
図10には、第1扉体1と、この第1扉体1の2個のブラケット13に取り付けられた第2ガイドレール22との正面図が示されている。
【0043】
図3及び図6で示されているように、第2ガイドレール22には、第2扉体2にこの第2扉体2の開閉移動方向に2個設けられたローラ33,34のうち、開き側(戸尻側)のローラ34が転動自在に係合し、閉じ側(戸先側)のローラ33は、第1ガイドレール21に転動自在に係合している。ローラ33,34のうち、ローラ34は図13で示されたブラケット13を介して第2扉体2の扉体本体2A(図8参照)の上部に取り付けられ、ローラ33は、図3及び図6から分かるように、ブラケット13よりも扉体1,2の厚さ方向の寸法が大きくかつ第2ガイドレール22の上方を跨ぐ形状となっているブラケット14を介して第2扉体2の扉体本体2Aの上部に取り付けられている。このブラケット14は、図2のS9−S9線断面図である図9にも示されている。
【0044】
このため、第2扉体2は、上部に配置された第1及び第2ガイドレール21,22に案内されて移動自在になっているとともに、これらのガイドレール21,22から吊り下げられた上吊り式扉体となっている。また、第2ガイドレール22は、第2扉体2を開閉方向へ案内するためのものとなっている。
【0045】
そして、第1ガイドレール21は開閉移動する扉体1,2に対して不動部材となっている無目5に取り付けられているため、常に不動であるが、第2ガイドレール22は第1扉体1に取り付けられているため、第1扉体1と共に移動する。
【0046】
以上の第1扉体1と第2扉体2は図4及び図7で示された連動機構40で連結され、これにより、これらの扉体1,2が異なる速度で同一方向へ開閉移動するようになっている。図4は、図1の開口部3が2個の扉体1,2によって閉じられているときにおける連動機構40を示し、図7は、2個の扉体1,2が後退したためにその開口部3が開かれたときにおける連動機構40を示している。
【0047】
連動機構40は、第1扉体1の扉体本体1Aの上面に設けられた2個の回転体41,42と、第1扉体1の開閉移動方向に配置されているこれらの回転体41,42に掛け回されている紐状部材43とを含んで構成され、紐状部材43は、箇所Aにおいて不動部材である無目5に結合されているとともに、回転体41,42を間に挟んで箇所Aとは反対側となっている箇所Bにおいても、第2扉体2に結合されている。
【0048】
結合箇所Aにおける紐状部材43の無目5への結合構造は、無目5にブラケット44を介して取り付けられ、扉体1,2の開閉移動方向への長さを有しているゴム製の弾性部材45と、この弾性部材45に扉体1,2の開閉移動方向へ貫通して形成された孔45Aと、この孔45Aに挿通された紐状部材43に弾性部材45を挟んだ両側で固定された2個の当接部材46とで構成されている。このため、紐状部材43が扉体1,2の開閉移動方向へ移動することは、当接部材46が弾性部材45に当接することにより阻止されており、紐状部材43が弾性部材45の孔45Aの内部を移動して扉体1,2の開閉移動方向へ移動することはない。
【0049】
そして、紐状部材43に扉体1,2の開閉移動方向への大きな張力が瞬時に作用してこの方向へ紐状部材43が移動しようとしたときには、当接部材46によって弾性部材45が弾性圧縮変形することにより、この瞬時の張力が緩和される。したがって、この結合箇所Aにおける結合構造は、紐状部材43に作用する張力を弾性部材45の弾性変形で緩和することができる張力緩和手段47を構成するものとなっている。
【0050】
なお、それぞれの回転体41,42の下側には、これらの回転体41,42の鉛直の回転中心軸41A,42Aを支持する支持部材48,49が配置され、これらの支持部材48,49における回転体41,42の外周部と対応する部分に折り曲げ片48A,49Aが設けられている。これらの折り曲げ片48A,49Aにより、回転体41,42の外周溝に掛け回された紐状部材43の抜け落ちが防止されている。
【0051】
結合箇所Bにおける紐状部材43の第2扉体2への結合構造は、第2扉体2の扉体本体2Aの上面に回動中心軸50Aを中心に回動自在に配置された回動部材50と、この回動部材50における回動中心軸50Aに対して互いに反対側となっている部分に形成された2個の孔50Bと、これらの孔50Bに挿入されている紐状部材43の両方の端部に固定されたストップ部材51と、先端が第2扉体2の扉体本体2Aの段部2Bに当接するまで回動部材50に螺入され、ロックナット52で通常時は回動部材50に結合されているボルト53とで構成されている。紐状部材43の両端部は、回動部材50における回動中心軸50Aに対して互いに反対側となっている部分にそれぞれのストップ部材51によって抜け止めされているため、紐状部材43の両端部は回動部材50に連結されている。
【0052】
このため、紐状部材43は回動部材50を介して第2扉体2に結合されているとともに、ロックナット52を緩めてボルト53を回転前進させると、回動部材50は回動中心軸50Aを中心に図4及び図7中において右回動するため、紐状部材43に緊張力が付与される。したがって、ボルト53は、回動部材50を回動操作するための回動操作部材になっているとともに、結合箇所Bにおける結合構造は、紐状部材43に緊張力を付与するための緊張力付与手段54を構成するものとなっている。
【0053】
以上のように構成された連動機構40によって第1扉体1と第2扉体2は連結されているため、図1で示されている第2扉体2の把持部55によってこの第2扉体2を手操作で開き側へ移動させると、この移動力は、図4で示された紐状部材43から回転体41に作用するため、第1扉体1も同じ方向へ移動することになる。そして、この第1扉体1の移動は、第1扉体1に配置されている回転体41,42が回転して紐状部材43を送りながら行われるため、第1扉体1は第2扉体2の半分の速度で移動する。
【0054】
第1及び第2扉体1,2が図7で示すように後退位置に達した後、把持部55によって第2扉体2を閉じ側へ移動させた場合には、この移動力が紐状部材43から回転体42に作用することにより、第1扉体1も閉じ側へ移動し、そして、第1扉体1は第2扉体2の半分の速度で移動する。
【0055】
このように、本実施形態の連動機構40によると、第1扉体1は、低速で開閉移動する低速扉体となっており、第2扉体2は、高速で開閉移動する高速扉体となっており、この第2扉体2の移動速度は第1扉体1の移動速度の2倍であり、また、これらの扉体1,2の移動方向は同じである。
【0056】
また、この連動機構40によると、第2扉体2を開閉移動させると、この開閉移動の初めから第1扉体1も開閉移動を開始することになり、第1扉体1と第2扉体2を最初から最後まで円滑に連動移動させることができる。
【0057】
図1で示されているように、第1扉体1の下部には下部ガイド手段61が設けられ、第2扉体2の下部にも下部ガイド手段62が設けられている。前述した第1ガイドレール21で案内される第1扉体1の移動は、下部ガイド手段61でも案内され、第1及び第2ガイドレール21、22で案内される第2扉体2の移動は、下部ガイド手段62でも案内されるようになっている。
【0058】
図11には、これらの下部ガイド手段61,62が示されており、図12は、これらの下部ガイド手段61,62のうち、第1扉体1のための下部ガイド手段61を示す平面図である。この下部ガイド手段61は、図11に示されているとおり、床7に固定された板状のベース部材63と、このベース部材63の上に載せられた板状の回動部材64とを有する。図12に示されているとおり、下部ガイド手段61には、扉体1,2の開閉移動方向に離れた中心軸65,66と、これらの中心軸65,66の上部に回転自在に取り付けられ、扉体1,2の下部を開閉移動方向に案内するためのガイド部材となっているガイドローラ67,68とが設けられ、一方の中心軸65の下端は回動部材64を貫通してベース部材63に結合され、他方の中心軸66の下端は回動部材64に結合されている。
【0059】
このため、回動部材64と、中心軸66と、この中心軸66に設けられているガイドローラ68は、ガイドローラ67のための中心軸65を中心にベース部材63に対して回動可能となっている。
【0060】
この回動を行わせるための回動手段69が下部ガイド手段61のベース部材63に設けられている。この回動手段69は、回動部材64に形成された欠部64Aと対応するベース部材63の箇所に固定された突起70と、この突起70に螺入され、通常時はロックナット71Aで突起70に結合されているボルト71とを有し、このボルト71の先端は、回動部材64に形成されている当て部64Bと対面している。ロックナット71Aを緩めてボルト71を回転前進させ、ボルト71の先端が当て部64Bに当接した後もボルト71を回転前進させると、回動部材64と中心軸66とガイドローラ68は、図12の2点鎖線64’,66’,68’で示されているように、中心軸65を中心にベース部材63に対して回動する。このため、本実施形態に係る回動手段69は、ボルト71等を用いた押し式の手段となっている。
【0061】
2個のガイドローラ67,68は、図11で示されているとおり、第1扉体1の下面に、この扉体1の厚さ方向と直交又は略直交する扉体1の開閉移動方向に長く形成されている溝1Cの内部に挿入され、これによって第1扉体1の移動を案内するが、ガイドローラ67,68の直径が溝1Cの幅寸法よりも比較的小さい場合には、第1扉体1の移動時における下部ガイド手段61による第1扉体1の下部ガイド作用は、扉体1の開閉移動方向と直交又は略直交する扉体1の厚さ方向にがたついた状態でなされることになる。
【0062】
このような場合に、回動手段69によって回動部材64と中心軸66とガイドローラ68を、図12の2点鎖線64’,66’,68’で示されているように、中心軸65を中心にベース部材63に対して回動させる。これにより、配置位置が第1扉体1の厚さ方向に不動となっているガイドローラ67に対し、ガイドローラ68の配置位置は第1扉体1の厚さ方向の成分を有する方向へ変更されることになり、2個のガイドローラ67,68を溝1Cの内部の互いに反対側の側面部に当てることができるため、第1扉体1の下部が第1扉体1の厚さ方向に振れるのを防止しながら、第1扉体1を下部ガイド手段61で案内することができる。
【0063】
図11で示された第2扉体2のための下部ガイド手段62の構造は、以上説明した第1扉体1のための下部ガイド手段61と基本的には同じである。相違する点は、下部ガイド手段62のベース部材72がL字形となっていて、このベース部材72が第1扉体1の下部外面に結合されていることである。このため、第2扉体2のための下部ガイド手段62は、第1扉体1と一体となって移動する。ベース部材72の水平部の上に回動部材73が載せられ、第2扉体2の開閉移動方向に2本設けられている中心軸74,75のうちの一方の中心軸74の下部は回動部材73を貫通してベース部材72に結合され、他方の中心軸75の下部は回動部材73に結合され、これらの中心軸74,75の上部には、第2扉体2の下面に形成されている溝2Cの内部に挿入されたガイドローラ76,77が回転自在に取り付けられている。
【0064】
そして、回動部材73と中心軸75とガイドローラ77は、前記回動手段69と同じ構造の回動手段78により、中心軸74を中心にベース部材72に対して回動させることができる。この回動手段78はベース部材72に設けられている。
【0065】
図13で示した前記ブラケット13には、このブラケット13に回転自在に取り付けられている前記ローラ31,32,34が第1及び第2ガイドレール1,2から外れるのを防止するためのローラ外れ防止手段80が取り付けられている。このローラ外れ防止手段80は、板材の打ち抜き、折り曲げ加工によって形成されたものであって、ブラケット13における扉体1,2の扉体本体1A,2Aの上面に結合されるベース部13Aから立ち上がった立上部13Bの扉体1,2の開閉移動方向両側の折り曲げ部13C,13Dのうちのいずれか一方に、ビス等の止着具により取り付けられるようになっている。
【0066】
具体的に説明すると、ローラ外れ防止手段80は、折り曲げ部13C,13Dのうちのいずれか一方(図13の実施形態の場合には折り曲げ部13C)にビス等の止着具で取り付けられる主部81と、この主部81から扉体1,2の移動方向と平行な方向へ直角に折り曲げられ、ブラケット13の立上部13Bと対向する副部82とからなる平面L字形である。主部81には、この主部81の高さ方向の途中において、副部82から切り込まれた欠部83が形成され、この欠部83の下部は副部82側へ延びる浮き上がり防止部84となっている。また、副部82にも、上辺の高さ位置が欠部83の上辺と同じ高さ位置になった欠部85が主部81の側から形成されているが、この欠部85は副部82の先端(主部81とは反対側の副部82の端部)まで達していないため、この副部82の先端下部には下方へ突出する脱落防止部86が設けられている。この脱落防止部86の下方への突出量は、主部81の浮き上がり防止部84まで達していない。
【0067】
図14には、第1扉体1のローラ31が取り付けられたブラケット13にローラ外れ防止手段80を取り付けた状態が示されている。このローラ31は、第1及び第2ガイドレール21,22に係合しているほかのローラ32〜34と同じく、ローラ31の厚さ方向両側のフランジ部31A、31Bと、これらのフランジ部31A,31Bの間であるローラ31の幅方向中央に形成され、第1ガイドレール21の立上部21Cが係合する溝部31Cとを有し、第1ガイドレール21の下辺部21Bと立上部21Cは、ローラ外れ防止手段80の主部81の欠部83に挿入されている。
【0068】
このため、図14で示すように、ローラ31が第1ガイドレール21に転動自在に係合している状態から、何らかの理由によって第1扉体1に大きな浮き上がり力が作用し、第1扉体1及びローラ31が上方へ浮き上がったときには、第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面にローラ外れ防止手段80の浮き上がり防止部84が当接し、それ以上に第1扉体1及びローラ31が上方へ浮き上がることは防止されるため、第1ガイドレール21の上に載せられているローラ31の溝部31Cが第1ガイドレール21から外れることは防止される。
【0069】
また、図14で示す状態から、何らかの理由によって第1扉体1に図14の左側から右側への大きな衝撃力が作用し、第1扉体1及びローラ31が右側へ大きく移動しようとしたときには、ローラ外れ防止手段80の脱落防止部86は、ローラ31のフランジ部31A,31Bよりも下方へ突出する突出量を有しているため、第1ガイドレール21の立上部21Cが脱落防止部86に当接し、フランジ部31Aを越えて第1ガイドレール21の立上部21Cが脱落すること、言い換えると、フランジ部31Aがこの立上部21Cから脱落することが防止される。
【0070】
また、図14で示す状態から、何らかの理由によって第1扉体1に図14の右側から左側への大きな衝撃力が作用し、第1扉体1及びローラ31が左側へ大きく移動しようとしたときには、第1ガイドレール21の立上部21Cが、ローラ外れ防止手段80の主部81の欠部83における第1扉体1の厚さ方向の先端部87に当接するため、ローラ31のフランジ部31Bを越えて第1ガイドレール21の立上部21Cが脱落すること、言い換えると、フランジ部31Bがこの立上部21Cから脱落することが防止される。
【0071】
したがって、この場合には、ローラ外れ防止手段80の主部81の欠部83の先端部87は、脱落防止部86と同じ機能を発揮する部分、すなわち、脱落防止部となっている。
【0072】
以上説明したことから分かるように、本実施形態に係るローラ外れ防止手段80は、板材の折り曲げによって主部81と副部82とを有する平面L字形状となっているが、全体としては、この板材に、図13で示された2つの欠部83と85からなる切り込み部80Aが副部82側からローラ31の厚さ方向へ延出形成されたものとなっている。そして、図14で示されているとおり、この切り込み部80Aにガイドレール21が挿通されるとともに、切り込み部80Aにおけるガイドレール21よりも下側に配設されている部分が浮き上がり防止部84となっている。また、切り込み部80Aの延出方向の手前側で下方へ突出した部分が、2個の脱落防止部86と87のうちの1個の脱落防止部86となっているとともに、切り込み部80Aの延出方向先端部が残りの脱落防止部87となっており、これらの脱落防止部86,87は、ローラ31の厚さ方向両側に配設されている。
【0073】
以上は、ローラ31のためのブラケット13に取り付けられるローラ外れ防止手段80についての説明であったが、図3及び図6で示されている第1扉体1と第2扉体2のローラ32,34のためのブラケット13に取り付けられるローラ外れ防止手段80についても、同じである。
【0074】
また、前記ローラ33は図3及び図6で説明したようにブラケット14で第2扉体2に取り付けられているが、このブラケット14にもローラ外れ防止手段80が設けられているため、このローラ33についての第1ガイドレール21からの外れ防止も、このローラ外れ防止手段80によってなされる。
【0075】
すなわち、ローラ外れ防止手段80は、第1扉体1と第2扉体2のそれぞれに2個配置されているローラ31〜34ごとに設けられている。そして、これらのローラ外れ防止手段80は、第1扉体1と第2扉体2の扉体本体1A,2Aではなく、扉体本体1A,2Aに結合されてローラ31〜34を備えているブラケット13,14に取り付けられている。
【0076】
図2で示されているように、第1及び第2扉体1,2における戸尻側のブラケット13には当接部材91,92が設けられ、これらの当接部材91,92が、図3で示されている第1ガイドレール21の後端部近くに配置されたストップ部材93,94に当接することにより、第1及び第2扉体1,2は開き限位置(後退限位置)に達する。また、第1ガイドレール21の後端部近くには、板ばねによる係止部材95,96が配置され、第1及び第2扉体1,2が開き限位置に達したときに、これらの係止部材95,96に、図2で示されている第1及び第2扉体1,2の当接部材91,92に設けられているローラによる被係止部材97,98が、図5で示されているように係止され、これにより、第1及び第2扉体1,2がその位置で停止するようになっている。
【0077】
図2で示されているように、この実施形態に係る二重引き式引戸装置には、第1扉体1を閉じ側へ常時付勢して自動移動させるための自動移動手段100が設けられている。この自動移動手段100は、図3で示されているように、第1ガイドレール21にブラケット101を介してこの第1ガイドレール21の前端部近くに取り付けられた装置本体102と、図2で示すように、この装置本体102の内部に回転自在に組み込まれたリール103と、このリール103に一端が結合されて巻かれており、装置本体102から延びている他端が第2扉体2の戸先側のブラケット14に結合された紐状部材104とを有する。リール103の内側には、一端がリール103に結合され、他端が装置本体102に結合された渦巻きばねが配置されている。
【0078】
このため、第2扉体2を図2の位置から図1で示されている把持部55を把持して開き側へ移動させると、回転しながら紐状部材104を繰り出すリール103によって渦巻きばねが蓄圧される。この蓄圧力が第2扉体2を閉じ側へ自動移動させるようとする駆動力となり、把持部55から手を離すと、また、前記被係止部材98の係止部材96への係止によって開き側の移動限位置に停止していた第2扉体2に閉じ側への操作力を付与し、これによって被係止部材98の係止部材96への係止を解除すると、上記駆動力により第2扉体2は自動的に閉じ移動し、この第2扉体2に前記連動機構40によって連結されている第1扉体1も自動的に閉じ移動する。
【0079】
また、この実施形態に係る二重引き式引戸装置には、第1扉体1が後退限位置(開き限位置)から閉じ側へ所定距離まで達したときに、これ以後の第1扉体1の閉じ移動速度を減速させるための図2で示す制動装置110が設けられている。この制動装置110は、第1ガイドレール21にブラケット111で取り付けられたシリンダ112と、このシリンダ112に対して伸縮自在となったピストンロッド113と、第1扉体1の戸尻側のブラケット13の当接部材91に取り付けられ、この第1扉体1が後端限位置から閉じ側へ所定距離まで移動したときに、シリンダ112から第1扉体1の開き側に突出しているピストンロッド113に磁力等によって連結し、これ以後の第1扉体1の閉じ移動によってピストンロッド113をシリンダ112に対して収縮移動させるキャッチ部材114とを有する。シリンダ112には、ピストンロッド113の収縮移動によって圧縮されるシリンダ112の内部の空気を絞りながら排出するオリフィスが設けられているため、第1扉体1が後退限位置から閉じ側へ所定距離まで達してさらに閉じ移動したときには、この第1扉体1の閉じ移動と、第1扉体1に連動機構40で連結されている第2扉体2の閉じ移動は、オリフィスの絞り作用によって減速されたものとなる。
【0080】
また、図1の把持部55により第2扉体2を開き移動させ、連動機構40で第1扉体1も開き移動させたときには、キャッチ部材114に磁力等によって連結されているピストンロッド113はシリンダ112に対して伸長移動し、シリンダ112には、このときに多量の空気をシリンダ112の内部に入れるための吸気口を開く一方弁が設けられているため、第1扉体1と第2扉体2は、図1の把持部55に作用させた開き操作力の大きさに応じた速度で開き移動し、扉体1の開き移動距離が所定距離に達すると、キャッチ部材114は、伸張移動限位置に達したピストンロッド113から離れる。
【0081】
以上説明した本実施形態によると、第1扉体1の開閉移動は不動部材となっている無目5に取り付けられた第1ガイドレール21で案内されるが、第2扉体2は、第1ガイドレール21と、第1扉体1に取り付けられた第2ガイドレール22とで案内され、この第2ガイドレール22は第1扉体1と一体となって移動するため、第2扉体2の開閉移動距離が第1扉体1の開閉移動距離よりも長くなっていても、第2ガイドレール22の長さを短くできる。これにより、第2ガイドレール22についての材料コストを低減でき、また、二重引き式引戸装置の全体構造を簡単化することができる。
【0082】
また、第2扉体2にこの第2扉体2の開閉移動方向に2個設けられたローラ33,34のうち、閉じ側のローラ33は、第2ガイドレール22ではなく、第1ガイドレール21に転動自在に係合されてこの第1ガイドレール21で案内され、開き側のローラ34だけが第2ガイドレール22で案内されるため、これら2個のローラ33,34を第2ガイドレールで案内させるようにした場合と比較して、第2ガイドレール22の長さを短くでき、これにより、第2ガイドレール22の一層の短縮化を図ることができる。
【0083】
さらに、第2扉体2の2個のローラ33,34を第2ガイドレールに係合させた場合には、第2扉体2が閉じ限位置まで達したときに、第1扉体1から閉じ側へ長く延びた第2ガイドレールにおける第1扉体1から外れた箇所にこれらのローラ33,34が達し、第1扉体1に片持ち状態で取付支持されている第2ガイドレールで第2扉体2の全体重量を支持することになるが、本実施形態では、これらのローラ33,34のうちの閉じ側のローラ33は第1ガイドレール21に係合しているため、このような事態が発生することはない。
【0084】
また、図8で示されているように、第1ガイドレール21が配置された高さ位置と第2ガイドレール22が配置された高さ位置は同じ又は略同じとなっているため、これらのガイドレール21,22の配置箇所の高さ寸法、具体的には、これらのガイドレール21,22が収納されている無目5の高さ寸法を小さくでき、これにより、本実施形態に係る2重引き式引戸装置の全体的なコンパクト化を図ることができる。
【0085】
さらに、本実施形態によると、第2ガイドレール22は、第1扉体1の扉体本体1Aではなく、第1扉体1の開閉移動を案内する第1ガイドレール21に係合するローラ31,32を備えたブラケット13に取り付けられているため、扉体本体1Aには第2ガイドレール22の取り付けのためのねじ孔加工等の加工を行う必要がなく、このため、扉体本体1Aの製造を容易化できる。
【0086】
また、本実施形態によると、連動機構40によって同一方向へ移動する第1扉体1と第2扉体2のうち、これらの扉体1,2を閉じ側へ自動移動させるための自動移動手段100は、連動機構40のために第1扉体1よりも高速でかつ長距離移動する第2扉体2に連結されているため、自動移動手段100から第2扉体2に付与する自動移動力は小さくてよいことになる。
【0087】
この結果、自動移動手段100による自動移動方向とは反対側である開き側へ第2扉体2を把持部55による手動操作で移動させるときには、小さな手操作力を第2扉体2に付与すればよく、第2扉体2及びこの第2扉体2と連動機構40を介して連結された第1扉体1を開き移動させる操作を、小さな操作力で容易に行えるようになる。
【0088】
また、連動機構40は、無目5との結合箇所Aにおいて、図4及び図7で説明したように、紐状部材43を弾性部材45の内部に挿通させ、この紐状部材43に弾性部材45の両側において当接部材46を固定した構造となっている張力緩和手段47を備えているため、第1及び第2扉体1,2を開閉するために図1で示した第2扉体2の把持部55に急激な手操作力を作用させ、これにより、連動機構40の紐状部材43に張力が瞬時に作用して紐状部材43が第1及び第2扉体1,2の移動方向へ急激に引っ張られても、2個の当接部材46のうち、この張力作用方向とは反対側に配置されている当接部材46が弾性部材45を弾性圧縮変形させて紐状部材43の少しの移動を許容することになり、これにより張力が緩和されるため、この瞬時の張力によって紐状部材43が切損する等の事態の発生を防止できる。
【0089】
また、連動機構40は、第2扉体2との結合箇所Bにおいて、図4及び図7で説明したように、紐状部材43に緊張力を付与する緊張力付与手段54を備えたものとなっており、この緊張力付与手段54は、回動中心軸50Aを中心に回動可能であって、この回動中心軸50Aに対して互いに反対側となった部分に紐状部材43の両端部がストップ部材51で結合された回動部材50と、この回動部材50を回動中心軸50Aを中心に回動操作するための回動操作部材53とを有するものとなっているため、紐状部材43が経年変化等で伸び変形した場合には、回動操作部材53で回動部材50を回動させることにより、第1扉体1と第2扉体2を連動させて開閉移動させるために必要な紐状部材43の緊張力を得られる。
【0090】
また、紐状部材43の両端部は、回動部材50における回動中心軸50Aに対して互いに反対側となった部分に結合されているため、回動操作部材53による回動部材50の小さな回動量によって紐状部材43の充分に長い引っ張り量を得られ、緊張力を紐状部材43に付与する作業を容易に行える。
【0091】
さらに、本実施形態によると、第1及び第2扉体1,2のための下部ガイド手段61,62のそれぞれは、第1及び第2扉体1,2の下面に形成された溝1C、2Cの内部に挿入される2個のガイドローラ67,68,76,77を含んで構成され、これらのガイドローラのうちの1個67,76は、第1及び第2扉体1,2の扉体の厚さ方向に配置位置が不動となっていて、残りのガイドローラ68,77は、回動手段69,78によるベース部材63,72に対する回動部材64,73の回動により、第1及び第2扉体1,2の厚さ方向の成分を有する方向に配置位置が調整可能となっているため、溝1C、2Cへのガイドローラ67,68,76,77の挿入を容易に行えるようにするために、溝1C、2Cの幅寸法に対してこれらのガイドローラ67,68,76,77の直径が比較的小さくなっていても、それぞれの溝1C、2Cの内部において、2個のガイドローラ67と68,76と77を溝1C、2Cにおける扉体1,2の厚さ方向の両側の側面に当接させることができる。これにより、第1及び第2扉体1,2の下部についての下部ガイド手段61,62による案内を、これらの扉体1,2に扉体厚さ方向への振れが生ずるのを抑えて行える。
【0092】
また、第1及び第2扉体1,2にブラケット13,14を介して取り付けられたローラ31〜34には、ローラ厚さ方向両側のフランジ部31A,31Bと、これらのフランジ部31A,31Bの間のローラ厚さ方向中央に形成され、第1及び第2ガイドレール21,22が係合する溝部31Cとが設けられ、また、第1及び第2扉体1,2にはローラ外れ防止手段80が設けられ、このローラ外れ防止手段80は、第1及び第2ガイドレール21,22よりも下側にあり、扉体1,2の上方への浮き上がりによるガイドレール21,22との当接によって溝部31Cがガイドレール21,22から外れるのを防止するための浮き上がり防止部84と、溝部31Cのローラ厚さ方向両側にあり、扉体1,2の扉体厚さ方向への移動によるガイドレール21,22との当接によってフランジ部31A、31Bがガイドレール21,22から脱落するのを防止するための脱落防止部86,87とを備えているため、扉体1,2に大きな浮き上がり力や扉体1,2の厚さ方向への大きな衝撃力が作用しても、ローラ31〜34がガイドレール21,22から外れるのを防止できる。
【0093】
また、ローラ外れ防止手段80は、板金の打ち抜き、折り曲げ加工により形成された一つの部品となっており、浮き上がり防止部84と脱落防止部86,87がこの一つの部品に一体に形成されたものとなっているため、その部品の製造は容易であり、安価なコストで製造できる。
【0094】
また、ローラ外れ防止手段80は、第1及び第2扉体1,2に配置されているそれぞれのローラ31〜34ごとに設けられているため、それぞれのローラ31〜34について、これらのローラ31〜34がガイドレール21,22から外れるのを個別に防止できることになり、このため、ローラ外れ防止手段80によるローラ外れ防止機能を向上させることができる。
【0095】
さらに、ローラ外れ防止手段80は第1及び第2扉体1,2の扉体本体1A,2Aに取り付けられているのではでなく、扉体本体1A,2Aに結合され、ローラ31〜34を備えているブラケット13,14に取り付けられているため、ローラ外れ防止手段80の取り付けのためのねじ孔加工等の加工作業を扉体本体1A,2Aに行う必要がなく、この加工作業を加工が容易なブラケット13,14に行えばよいため、加工作業の容易化を図ることができる。
【0096】
次に、本発明に係るそれぞれの別実施形態を説明する。これらの別実施形態の説明では、前述した実施形態と同じ部材又は同じ機能の部材には、同一符号を用いる。
【0097】
図15は、別実施形態に係るローラ外れ防止手段80’を示す。このローラ外れ防止手段80’も、浮き上がり防止部84’と脱落防止部86’,87’とを有しているが、ローラ外れ防止手段80’が取り付けられるこの実施形態のブラケット13’の折り曲げ部13C’についての扉体1,2の厚さ方向の寸法が、前記実施形態のブラケット13の折り曲げ部13Cについての扉体1,2の厚さ方向の寸法よりも小さくなっており、また、ローラ外れ防止手段80’の欠部83’における扉体1,2の厚さ方向への深さは、前記実施形態のローラ外れ防止手段80の欠部83の深さよりも小さい。このため、この実施形態のローラ外れ防止手段80’における脱落防止部86’,87’は、ローラ31の厚さ方向において、ローラ31の両側のフランジ部31A,31Bにおける溝部31C側の内面と一致又は略一致する位置に形成されている。
【0098】
これによると、フランジ部31A,31Bがガイドレール21の立上部21Cから脱落するのを脱落防止部86’,87’によって防止することは、フランジ部31A,31Bが立上部21Cに達する直前の早期の時点で行えることになる。
【0099】
図16及び図17は、第2扉体2と連動機構40の紐状部材43との結合箇所Bに、第1及び第2扉体1,2が開き限位置に達したときに紐状部材43の実質的長さを長くする実質的長さ変更手段120が設けられている実施形態を示す。この実質的長さ変更手段120は、開き移動した第1及び第2扉体1,2が開き限位置に近づいてから、これらの扉体1,2が開き限位置に達するまでの間において、紐状部材43の実質的長さを長くできるものである。
【0100】
すなわち、この実施形態では、前記緊張力付与手段54の回動部材50には、回動中心軸50Aに対して互いに反対側となった2つの部分において孔50Bが形成され、これらの孔50Bに挿入された紐状部材43のそれぞれの端部にストップ部材51が固定されており、これにより、紐状部材43は、回動部材50において、第2扉体2の厚さ方向にずれた2つの位置B1,B2でこの第2扉体2に連結されているが、これらの連結位置B1,B2のうち、第1扉体1から遠い連結位置B1の連結構造は、紐状部材43の端部に設けたストップ部材51と、回動部材50との間に弾性部材であるコイルばね121を介入配置したものとなっている。
【0101】
通常時の紐状部材43の実質的長さ、すなわち、第1及び第2扉体1,2の連動移動に寄与する紐状部材43の長さは、図16で示されているとおり、コイルばね121が伸張している分だけ短くなっている。このように紐状部材43の実質的長さが短くなっている状態において、第1及び第2扉体1,2は開き側から閉じ側へ連動機構40によって連動移動し、第2扉体2の戸先部が図1で示されている閉じ側の縦枠部材4に当接することにより、第1及び第2扉体1,2によって前記開口部3が閉じられる。
【0102】
一方、第1及び第2扉体1,2が連動して開き移動し、この開き移動により第1及び第2扉体1,2が開き限位置の近くに達したが、正確な開き限位置に達していないときに、図1の把持部55によって第2扉体2をさらに開き側へ移動させると、図17で示すように、連結位置B1のストップ部材51がコイルばね121を圧縮しながら回動部材50の側へ移動することにより、紐状部材43は回動部材50の孔50Bから開き側へ繰り出され、これによって紐状部材43の実質的長さが長くなり、第1及び第2扉体1,2は正確な開き限位置に達する。
【0103】
この実施形態によると、開閉方向についての第1及び第2扉体1,2の寸法は、図1の開口部3の幅寸法等に基づき定められた所定の寸法にしなければならないという設計上の制約を満足した上で、紐状部材43を、回動部材50における第2扉体2の厚さにずれた2つの位置B1,B2で第2扉体2に連結しているため、第1及び第2扉体1,2を正確な開き限位置に到達させるためには、第1扉体1に対して遠くなっている連結位置B1から無目5と紐状部材43との結合箇所Aまでの紐状部材43の長さを、第1扉体1に対して近くなっている連結位置B2から無目5と紐状部材43との結合箇所Aまでの紐状部材43の長さと比較して、第1扉体1からこれらの連結位置B1,B2までの距離の違いに応じた分だけ長い長さにしなければならないという問題が、実質的長さ変更手段120によって解決されている。
【0104】
このように本実施形態では、第2扉体2に設けられた第2扉体部材となっている回動部材50の連結位置B1,B2に紐状部材43の両端部を連結する際に必要となる実質的長さ変更手段120が、回動部材50と、この回動部材50における第1扉体1から遠い位置に形成された孔50Bと、この孔50Bに挿通された紐状部材43の端部に固定されているストップ部材51と、このストップ部材51と回動部材50との間に配置された弾性部材であるコイルばね121とを含んで構成されている。
【0105】
また、この実施形態では、図16で示されているとおり、緊張力付与手段54の回動部材50は板状の台座部材130に配置されている。また、第2扉体2の開き側のローラ34が取り付けられているブラケット13は、このブラケット13の図13で示したベース部13Aにおける扉体2の開閉方向の2つの位置において、回転型結合具であるボルト131により第2扉体2の扉体本体2Aに結合され、図16には、これらのボルト131のうち、扉体2の開き側である回動部材50側の1個のボルト131が示されている。このボルト131は、台座部材130とブラケット13の両方を第2扉体2の扉体本体2Aに共締め結合するためのボルトとなっている。
【0106】
すなわち、第2扉体2の扉体本体2Aの上面に置かれたブラケット13のベース部材13Aの上にさらに台座部材130が載せられており、図16のS18−S18線断面図である図18に示されているように、ボルト131は、台座部材130の凹欠部130A及びベース部13Aの孔132に挿通されているとともに、第2扉体2の扉体本体2Aの内部に埋設されているナット133に螺入されている。ボルト131を回転させると、台座部材130は、1個のボルト131によってベース部13Aと共に第2扉体2の扉体本体2Aに結合される。
【0107】
これにより、台座部材130を扉体本体2Aに結合するためのボルトは、ブラケット13を扉体本体2Aに結合するためのボルト131となり、ボルト131の兼用化により、第2扉体2の構造の簡単化を図ることができる。
【0108】
しかし、このように台座部材130を1個のボルト131で扉体本体2Aに結合する構造とした場合には、ボルト131を回転させたときに、このボルト131の頭部131Aが台座部材130に接触すると、台座部材130がボルト131と共に回転してしまうおそれがある。
【0109】
このため、この実施形態では、図16に示されているとおり、台座部材130に下向きに突出した2個の突起134を形成し、これらの突起134を、図18で示されているように、ブラケット13のベース部13Aの端面及び扉体本体2Aの端面に当接させている。これにより、ボルト131の回転作業時において、台座部材130がボルト131と共に回転するのを突起134で阻止することができる。
【0110】
また、この実施形態では、台座部材130はプレス加工された板金製であり、突起134は、この板金の一部の打ち出し成形又は押し出し成形等によるプレス成形によって台座部材130と一体に形成されたものとなっている。このため、台座部材130に突起134を設ける作業を、突起134のための特別の部品を用いることなく容易に行える。
【0111】
なお、この実施形態では、緊張力付与手段54の前述した回動操作部材であるボルト53の先端を当接させるための扉体本体2Aの段部2Bは、板金製の台座部材130を折り曲げ加工することによって形成されている。
【0112】
図19及び図20の実施形態は、第2扉体2の開閉移動を案内するために第1扉体1に取り付けられている第2ガイドレール22が第2扉体2の重量を受けても、このガイドレール22が大きく下方へ撓み変形しないようにした実施形態である。
【0113】
図19で示されているように、第2ガイドレール22が取り付けられている第1扉体1の2個のブラケット13には、補強部材140がビス等の結合具141で結合されている。この補強部材140は、第2ガイドレール22と同じく第1扉体1の開閉移動方向への長さを有する部材になっているとともに、図20で示されているとおり、板状の補強部材140は、第2ガイドレール22の上下に延びている基部22Aの側面に第1扉体1の厚さ方向に重ねられ、これらの補強部材140と第2ガイドレール22は第1扉体1のブラケット13に同じ結合具141により共締め結合されている。
【0114】
また、図19で示されているとおり、第2ガイドレール22の閉じ側の先端部を越えている補強部材140の閉じ側の先端部には、下方へ延びるL字状のフック部142が形成され、このフック部142の水平部142Aの上に、図20から分かるように、第2ガイドレール22の下辺部22Bが載せられている。言い換えると、補強部材140のフック部142が、第2ガイドレール22の閉じ側の先端部を下から受けている補強部材140の部分となっている。
【0115】
この実施形態によると、第2ガイドレール22の閉じ側の先端部が第1扉体1から突出し、より具体的に説明すると、第2ガイドレール22の閉じ側の先端部が第1扉体1に設けられている2個のブラケット13のうちの閉じ側のブラケット13から突出し、このため、第2ガイドレール22が第1扉体1の2個のブラケット13に片持ち状態で取り付けられていても、補強部材140は、第2扉体2の重量によって第2ガイドレール22の先端部が下方へ大きく撓み変形するのを防止し、この撓み変形に対する第2ガイドレール22の強度が補強部材140で補強されていることになるため、第1及び第2ガイドレール21,22で案内される第2扉体2の開閉移動を所定どおり安定させた状態で行わせることができる。
【0116】
また、この実施形態によると、補強部材140と第2ガイドレール22は第1扉体1のブラケット13に同じ結合具141によって共締め結合されているため、これらの補強部材140と第2ガイドレール22の第1扉体1への取付構造を少ない部材による簡単な構造とすることができる。
【0117】
図19には、第1扉体1に設けられている2個のブラケット13のうち、開き側のブラケット13に、第1扉体1を開閉方向の任意な位置で停止させることができるフリーストップ装置150が取り付けられていることが示されている。このフリーストップ装置150の正面図は図21で示され、平面図は図22で示されている。
【0118】
図22で示すように、フリーストップ装置150の平面U字状の本体151は、中間部材152を介してブラケット13に結合され、この本体151の内部にスライダ153が配置されている。スライダ153は、第1扉体1の開閉移動方向に2本設けられているピン154の端部が、図21で示されているように、本体151に第1扉体1の開閉移動方向に長く形成されている長孔151Aに挿入されているため、この開閉移動方向へスライド可能である。本体151の一定位置で回転自在となっている送りねじ軸155は、スライダ153に螺入されているため、この送りねじ軸155をドライバ等の回転工具で回転させることにより、スライダ153はスライドする。
【0119】
スライダ153の内部には振り子部材156が配置され、この振り子部材156は、図21で示されている上部の中心軸157を中心に第1扉体1の開閉移動方向へ揺動自在となっており、振り子部材156の下部は、振り子部材156の下側に配置されている不動部材となっている第1ガイドレール21の立上部21Cに接触している。中心軸157は、本体151とスライダ153に形成された長孔151B,153Aに挿入され、本体151の長孔151Bは上下に長く、スライダ153の長孔153Aは、上下方向に対する傾き角を有する長孔となっている。
【0120】
振り子部材156は、全体又は一部がゴム等の弾性材料で形成された弾性部材となっており、通常時の振り子部材156は、図21で示されているとおり、第1ガイドレール21の立上部21Cに傾いた姿勢で接触している。このため、図21の実線で示すように、振り子部材156の下部が第1扉体1の閉じ側へ出た状態となって、この振り子部材156が第1扉体1の閉じ側へ傾いているときには、図2及び図5で説明した自動移動手段100による閉じ側への自動移動力が第2扉体2及び前記連動機構40を介して第1扉体1に作用しても、不動部材となっている第1ガイドレール21からの荷重によって振り子部材156に生ずる摩擦力により、第1及び第2扉体1,2が閉じ側へ移動することが阻止される。
【0121】
この状態において、第2扉体2の図1で示した把持部55に閉じ移動操作力を加えることにより第2扉体2に閉じ側への移動力が生じ、そして、前記連動機構40を介して第1扉体1に閉じ側への移動力が作用すると、弾性材料からなる振り子部材156は第1ガイドレール21の立上部21Cから受ける荷重で弾性圧縮変形するため、振り子部材156が図21の2点鎖線で示すように中心軸157を中心に反対側へ傾き揺動しながら、第1扉体1は閉じ側へ移動する。また、前記自動移動手段100で第1扉体1が移動している途中において、第1扉体1を停止させたい位置に第1扉体1が達したときに、第2扉体2の把持部55の手操作によって第1扉体1に開き側への移動力を作用させると、上述の場合と同じく、振り子部材156が第1ガイドレール21の立上部21Cから受ける荷重で弾性圧縮変形されることにより、振り子部材156は、図21の実線で示すように、閉じ側へ中心軸157を中心に傾き揺動し、これにより、第1ガイドレール21からの荷重で振り子部材156の下部に生ずる摩擦力によって第1扉体1を閉じ側の任意な位置で停止させることができる。
【0122】
また、送りねじ軸155によってスライダ153を移動させると、中心軸157は、上述の本体151とスライダ153の長孔151B,153Aにより上下方向に移動し、この結果、第1ガイドレール21の立上部21Cに対する振り子部材156の高さ位置が調整されるため、振り子部材156を弾性圧縮変形させて振り子部材156の傾き方向を変更させるために必要な第1扉体1の移動力の大きさを変更することができる。
【0123】
この実施形態において、第1及び第2扉体1,2は連動機構40で同一方向へ開閉移動するものになっているとともに、第1扉体1は低速扉体であり、第2扉体2は高速扉体となっているため、これまでの実施形態と異なり、前記把持部55を第1扉体1に設けることにより、この第1扉体1に第1及び第2扉体1,2を開閉移動方向へ手操作で移動させるための移動力を作用させるようにした場合よりも、把持部55を第2扉体1に設けることにより、この第2扉体2に第1及び第2扉体1,2を開閉移動方向へ手操作で移動させるための移動力を作用させるようにした場合の方が、把持部55に作用させる手動の移動力は小さくてすむ。
【0124】
そして、この実施形態では、フリーストップ装置150を低速扉体である第1扉体1に取り付けているため、第1及び第2扉体1,2を開閉移動方向の任意な位置で停止させているフリーストップ装置150の振り子部材156を弾性圧縮変形させてこれらの扉体1,2の移動を再開させる際に、振り子部材156を弾性圧縮変形させるために必要な第1ガイドレール21からの荷重は、第2扉体2の把持部55に小さな移動力を作用させることによって発生させることができる。このため、この実施形態によると、フリーストップ装置150は、連動機構40で連結された低速扉体1と高速扉体2のうちの低速扉体1に取り付けられ、高速扉体2には取り付けられていないため、このフリーストップ装置150の取り付けは、これらの扉体1,2の特性を考慮して、この特性に適切に対応させてなされており、フリーストップ装置150で停止していたこれらの扉体1,2の移動を再開させる際における良好な扉体移動操作性を達成することができる。
【0125】
さらに、フリーストップ装置150は低速扉体1だけに取り付ければよいため、フリーストップ装置150の個数を少なくでき、これにより、引戸装置全体のコストの低減、構造の簡単化を達成できる。
【0126】
また、この実施形態に係るフリーストップ装置150は、第1扉体の扉体本体1Aに取り付けられているのではなく、上吊り式の第1扉体1のローラ32をこの第1扉体1の扉体本体1Aに取り付けるための部材となっているブラケット13に取り付けられているため、このブラケット13は、フリーストップ装置150を第1扉体1に取り付けるための部材としても活用されている。そして、フリーストップ装置150の取り付けのためのねじ孔加工等の加工作業を扉体本体1Aに行う必要がなく、この加工作業を加工が容易なブラケット13に行えばよいため、加工作業の容易化を図ることができる。また、第1扉体本体1Aの全体構造を簡単化することができる。
【0127】
図23は、第2扉体2の戸先部2Dについての別実施形態を示す。
【0128】
第2扉体2の戸先部2Dが、図1の開口部3の閉じ側の端部を形成している前記縦枠部材4に当接することにより、この開口部3は第1及び第2扉体1,2によって閉じられることになる。戸先部2Dは、粉状とした磁石を混入させたゴム製の戸先部材160で形成され、縦枠部材4は磁性材料である鋼板によって形成されている。
【0129】
このため、第2扉体2が図2及び図5で説明した自動移動手段100で閉じ側へ移動し、戸先部2Dが縦枠部材4に当接すると、戸先部材160は弾性を有するゴム製であるため、第2扉体2には縦枠部材4からの跳ね返り力が生ずるが、この戸先部材160に混入されている磁石が鋼板製の縦枠部材4を吸引するため、この吸引力により、第2扉体2が縦枠部材4から跳ね返されることがない。また、戸先部材160が縦枠部材4に密着するため、開口部3を高度の気密性で閉鎖することができる。
【0130】
図24は、図23とは別構造となっている第2扉体2の戸先部2Dの実施形態を示す。この戸先部2Dは、粉状とした磁石が混入されていないゴム製の戸先部材161と、この戸先部材161の背後に配置された板状の磁石162と、扉体本体2Aの端部に配置され、この磁石162を戸先部材161と共に挟着しているエンド部材163とで形成されている。
【0131】
この実施形態でも、鋼板製の縦枠部材4に対する磁石162の吸引力により、第2扉体2が縦枠部材4から跳ね返されることがなく、また、戸先部材161が縦枠部材4に密着し、開口部3を高度の気密性で閉鎖することができる。
【0132】
図25は、前記連動機構40における張力緩和手段47の別実施形態を示す。この実施形態の張力緩和手段47は、板ばねからなる弾性部材245で形成され、この弾性部材245は、不動部材である無目5にビス等の結合具246で結合されたベース部245Aと、このベース部245Aにおける扉体1,2の開閉移動方向の両端に設けられ、ベース部245Aから第1扉体1の側へ延出した延出部245B,245Cとを有する。これらの延出部245B,245Cに紐状部材43の両端部が挿通されているとともに、これらの両端部に当接部材46が取り付けられ、これにより、紐状部材43が延出部245B,245Cに連結されている。
【0133】
この実施形態に係る張力緩和手段47においては、第2扉体2の把持部55の手動操作によって扉体1,2を開閉移動させる際、紐状部材43に扉体1,2の開閉移動方向への大きな張力が瞬時に作用した場合には、延出部245B,245Cのうち、張力が作用した側の延出部がベース部245Aに対して弾性的に撓み変形することによってこの瞬時の張力が緩和され、これにより紐状部材43の切損が防止される。
【0134】
図26は、連動機構40における緊張力付与手段54の別実施形態を示す。第1扉体1に設けられる2個の回転体41,42のうち、1個の回転体41は、第1扉体1にこの扉体1の開閉方向へスライド自在に配置されている支持部材248に軸41Aを中心に回転自在に支持され、第1扉体1には、ベース部材250が第1扉体1の開閉方向に支持部材248と対向してビス等の結合具251で取り付けられている。支持部材248におけるベース部材250側の端部と、ベース部材250における第1扉体1の開閉方向の両端部とに形成されている立上部248A、250A,250Bには、長寸のボルト252が挿通され、このボルト252は、ボルト頭部252Aと締め付けナット253とで支持部材248の立上部248Aに結合されている。また、ベース部材250の2個の立上部250Aと250Bの間において、コイルばねによる弾発部材254がボルト252の外周に嵌合され、この弾発部材254は、ベース部材250の立上部250Bとボルト252に設けたダブルナット255,256との間において、圧縮されている。
【0135】
このため、ベース部材250の立上部250A,250Bに対して移動自在となっているボルト252には、弾発部材254の弾発力による支持部材248側へのスライド力が生じており、このスライド力は支持部材248に作用している。したがって、この実施形態の緊張力付与手段54は、紐状部材43が掛け回されている2個の回転体41,42のうちの回転体41をこのスライド力で扉体1の閉じ側へ常時移動させようとし、これらの回転体41と42の間隔を常に拡大させようとする構造になっている。そして、この緊張力付与手段54は、2個の回転体41,42のうちの一方の回転体41を回転自在に支持し、第1扉体1に第1及び第2扉体1,2の開閉移動方向へスライド自在に配置された支持部材248と、この支持部材248を、2個の回転体41,42のうちの他方の回転体42とは反対側へ弾性的に付勢する弾性部材である弾発部材254とを含んで構成されたものとなっている。
【0136】
紐状部材43は、第2扉体2に設けられたボス部材257の孔257Aに挿通されて両端同士が接合された無端のループ状となっており、ボス部材257の両側において、紐状部材43にはストップ部材51が取り付けられている。これにより、紐状部材43はボス部材257に連結されている。このため、図1で示された把持部材55によって第2扉体2を開閉移動操作すると、これまで説明した実施形態と同じく、連動機構40によって第1扉体1も開閉移動する。
【0137】
また、この実施形態では、緊張力付与手段54によって2個の回転体41と42の間隔が常に拡大されようとしているため、紐状部材43に経年変化等による伸びが生じても、2個の扉体1,2を連動させるために必要な緊張力を紐状部材43に常に付与できる。
【0138】
なお、この実施形態の緊張力付与手段54は、図4及び図7で示されている緊張力付与手段と併用してもよく、単独で採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、少なくとも第1及び第2の2個の扉体を有し、これらの扉体の同一方向への移動によって開口部が開閉される引戸装置に利用できる。
【符号の説明】
【0140】
1 第1扉体
2 第2扉体
3 開口部
5 不動部材である無目
21 第1ガイド部材である第1ガイドレール
22 第2ガイド部材である第2ガイドレール
40 連動機構
41,42 回転体
43 紐状部材
47 張力緩和手段
50 回動部材
53 回動操作部材であるボルト
54 緊張力付与手段
120 実質的長さ変更手段
A 不動部材である無目と紐状部材との結合箇所
B 紐状部材と第2扉体との結合箇所
B1,B2 連結位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1及び第2の2個の扉体と、これらの扉体を開閉方向へ案内する第1及び第2のガイド部材とを備え、前記第1及び第2扉体の同一方向への移動によって開口部が開閉されるとともに、この開口部が、前記第1扉体よりも前記第2扉体が閉じ側へ前進することにより開閉方向へずれた前記第1及び第2扉体によって閉じられる多重引き式引戸装置において、
前記第1扉体と前記第2扉体は連動機構で連結されており、
前記連動機構は、前記第1扉体に設けられた2個の回転体と、前記第1扉体の開閉移動方向に配置されているこれらの回転体に掛け回されている紐状部材とを含んで構成され、この紐状部材は、前記第1及び第2扉体に対して不動となっている不動部材に結合されているとともに、前記2個の回転体を間に挟んで前記不動部材とは反対側となっている箇所において、前記第2扉体に結合されており、
前記第2扉体における前記紐状部材の結合箇所では、この紐状部材が前記第2扉体の厚さ方向にずれた2つの連結位置で前記第2扉体に連結されており、
前記第2扉体における前記紐状部材の結合箇所に、前記第1及び第2扉体が開き限位置に近づいてからこれらの扉が開き限位置に達するまでの間に前記紐状部材の実質的長さを長くするための実質的長さ変更手段が設けられていることを特徴とする多重引き式引戸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多重引き式引戸装置において、前記第2扉体には回動部材が回動可能に配置され、前記紐状部材は、前記第2扉体の厚さ方向にずれた前記回動部材の2つの連結位置において、この回動部材に連結されていることを特徴とする多重引き式引戸装置。
【請求項3】
請求項2に記載の多重引き式引戸装置において、前記回動部材は、この回動部材の回動によって前記紐状部材に緊張力を付与するための緊張力付与手段を構成するものになっていることを特徴とする多重引き式引戸装置。
【請求項4】
請求項3に記載の多重引き式引戸装置において、前記回動部材には、先端が前記第2扉体に当接しているボルトが螺入され、このボルトの回転で前記回動部材が回動することにより前記紐状部材に緊張力が付与されることを特徴とする多重引き式引戸装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の多重引き式引戸装置において、前記実質的長さ変更手段は、前記紐状部材が連結されている前記第2扉体の厚さ方向にずれた前記2つの連結位置のうち、前記第1扉体に対して遠くなっている連結位置において、前記紐状部材の実質的長さを長くするための手段となっていることを特徴とする多重引き式引戸装置。
【請求項6】
請求項5に記載の多重引き式引戸装置において、前記紐状部材が連結されている前記第2扉体の厚さ方向にずれた前記2つの連結位置では、これらの連結位置に設けられている2つの孔に挿入された前記紐状部材のそれぞれの端部にストップ部材が固定され、前記2つの連結位置のうち、前記第1扉体に対して遠くなっている連結位置では、この連結位置の前記孔が形成されている部材と前記ストップ部材との間に弾性部材が介入されていることを特徴とする多重引き式引戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−60807(P2013−60807A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−860(P2013−860)
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【分割の表示】特願2009−184064(P2009−184064)の分割
【原出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)