説明

多重特異性受容体の精製の改善

一の作用物質と結合する受容体(典型的には、分子インプリントポリマー、MIP)に富み、該受容体の各々が該作用物質上の少なくとも2個所の別個の部位に特異的に結合する、組成物の製造方法であって、受容体の一のサンプルを、作用物質の一の結合部位が受容体と結合するのにアクセスできない作用物質を用いるアフィニティ精製の第一の工程に付し、つづいてその精製された受容体を、作用物質の第二の結合部位がアクセスできない作用物質を用いるアフィニティ精製の少なくとも1つのさらなる工程に付すことで製造される方法を開示する。また、フェニルケトン尿症(PKU、Fφlling病)、高フェニルアラニン血症(HPA)、アルカプトン尿症(黒色尿病)、チロシン血症、高チロシン血症、重症筋無力症、ヒスチジン血症、ウロカニン酸尿症、メープルシロップ尿症(MSUD)、イソ吉草酸血症(イソバレリル−CoAデヒドロゲナーゼ欠損症)、ホモシステイン尿症、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、グルタル酸尿症1型(GA−1)およびガラクトース血症からなる群より選択される疾患の治療、緩和または予防方法であって、その必要とする患者の胃腸管に、有効量の分子インプリントポリマー(MIP)の組成物を投与することを含み、該組成物が該疾患の病徴誘発物質との結合能を有するところの、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、複合的受容体、すなわちアミノ酸または炭水化物などの一の症状を誘発する分子上にある複数の構造体との結合能を有する受容体を精製する分野に関する。本願発明はまた、普通食より由来の生体分子が患者にて病徴を誘発する、多くの代謝障害の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アフィニティクロマトグラフィーは、クロマトグラフィーマトリックスにある分子と、その分子の結合パートナーの間の相互作用を活用し、該分子に対して種々のアフィニティを有する物質の大きなプールから、または発酵ストックなどの未処理の混合物から、結合パートナーの部分集団を選択する、方法である。
【0003】
精製、解析、診断等を目的とする分子間の結合を利用するアフィニティクロマトグラフィーなどの方法は、本質的に、クロマトグラフィーマトリックスにある分子の適応性により、およびそれがマトリックスと(キャリア蛋白、スペーサー、リンカー等を介して)カップリングする方法によって惹起される立体障害により制限される。この結果として、分子全体の別個の結合部位の限られた部分だけが受容体に曝露され、マトリックスとのカップリングに使用された結合部位は結合パートナーにアクセスできず、被覆されたクロマトグラフィーマトリックスと接触することとなる。
【0004】
多くの場合、このことは、結合パートナーのただ一つの特定の結合特性が目的であるため、問題を提起することはない。
【0005】
受容体、いわゆる、抗体などのいわゆる天然の受容体、または分子インプリントポリマー(MIP)などの合成の受容体のいずれかを開発する場合、可溶性または不溶性のいずれかである、最も結合の強い個々の受容体の化合物−抗体分子またはMIP粒子の選択/単離が、得られた受容体をベースとする生成物のアフィニティ、特異性、結合能等を改善する手段であり、MIPに関しては、WO2007/095949にて、標的分子に対する結合アフィニティおよび結合能が改善されているMIP組成物を生じさせる精製方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MIPおよびポリクローナル抗体などの組成物の結合特性をさらに改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
標的分子に対する受容体の組成物を調製する場合、標的分子の結合についてのアフィニティおよびアビディティには多くの因子が関与する。ポリクローナル抗体およびMIPなどの相対的に大きな受容体の分子は標的上の多くの異なる別個の部位でより小さな標的に結合し、クロマトグラフィーマトリックス上で捕獲剤として標的分子を用い、その標的分子が一の特定の官能基を介して結合するところの精製方法は、その精製された生成物が必ずしも特定の官能基と結合しない(マトリックスとカップリングした後は、アクセスして結合できないため)と結論付けられるであろう。他方で、かかる複数の部位で結合する受容体の特性は、第1ラウンドの精製後に得られる分子が第1ラウンドの精製から由来のアクセスできない部位と少なくとも部分的に結合する受容体を包含するであろうことである。そこで、捕獲剤と同じ標的分子を用いるが、異なる官能性を介して結合するさらなる工程を創作すると、第1の精製工程にて「遮蔽結合部位」に対しても合理的に高いアフィニティを示す、受容体をさらに富ませることが可能である。
【0008】
また、官能性がそのマトリックとの結合により遮蔽される各精製工程について、意図する標的分子の「特徴的」部分と結合する受容体を富ませることも可能であり、その結合について遮蔽された官能性に依存する受容体は精製操作の間に排除されるであろう。それで、標的分子が複数の他の分子と共有する(各々がアミノ酸からアミノ酸へと構造的に同じであるN−末端およびC−末端を有するアミノ酸の場合のように)特徴的でない官能性を含む場合、その特徴的でない官能性の各々を、順次、遮蔽させる多工程の精製操作に付し、標的分子について本当に特徴的である部位と結合する受容体の組成物を得る。
【0009】
そこで、第一の態様において、本願発明は、一の作用物質と結合する受容体に富み、該受容体の各々が該作用物質上の少なくとも2個所の別個の部位に特異的に結合する、組成物の製造方法であって、
a.該受容体を含むサンプルを提供し、
b.該サンプルを、該作用物質をアフィニティ精製剤として用いる、アフィニティクロマトグラフィーの第一工程に供し、ここで該作用物質はその少なくとも2個所の別個の部位のうちの一つの部位との結合を介して固相または半固相に固定されており、
c.該作用物質に結合している受容体を回収し、
d.上記工程にて回収した受容体を、該作用物質をアフィニティ精製剤として用いる、アフィニティクロマトグラフィーの少なくとも1つのさらなる工程に供し、ここで該作用物質はその少なくとも2個所の別個の部位のうちのもう一つ別の部位との結合を介して固相または半固相に固定され、該作用物質に結合する受容体を回収する
ことを含み、
アフィニティクロマトグラフィーの少なくとも1つのさらなる工程の各々において、少なくとも2個所の別個の部位の一方が、作用物質の固相または半固相への固定のために工程bおよびdにて予め使用されている、その少なくとも2個所の別個の部位のもう一方とは異なる、方法に関する。
【0010】
第二の態様において、本願発明は、一の作用物質と結合する受容体に富み、該受容体の各々が該作用物質上の少なくとも2個所の別個の部位に特異的に結合する、組成物の製造方法であって、本願発明の第一の態様の方法に従って少なくとも2つの組成物を調製し、その後で少なくとも2つの組成物を合わせ、該作用物質に結合する受容体に富む組成物を得、ここで、
i.該少なくとも2つの組成物の各々を調製するのに、固相または半固相に固定するのに使用される、作用物質にある別個の部位の組み合わせが、少なくとも2つの組成物について異なり、および/または
ii.作用物質にある別個の部位が少なくとも2つの各々の組成物を調製するのに固相または半固相に固定するのに使用される順序が、少なくとも2つの組成物の少なくとも2つの調製において異なる、方法に関する。
【0011】
第三の態様において、本願発明は、フェニルケトン尿症(PKU、Fφlling病)、高フェニルアラニン血症(HPA)、アルカプトン尿症(黒色尿病)、チロシン血症、高チロシン血症、重症筋無力症、ヒスチジン血症、ウロカニン酸尿症、メープルシロップ尿症(MSUD)、イソ吉草酸血症(イソバレリル−CoAデヒドロゲナーゼ欠損症)、ホモシステイン尿症、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、グルタル酸尿症1型(GA−1)およびガラクトース血症からなる群より選択される疾患の治療、緩和または予防方法であって、その必要とする患者の胃腸管に、有効量の分子インプリントポリマー(MIP)の組成物を投与することを含み、該組成物が該疾患の病徴誘発物質との結合能を有するところの方法に関する。この態様はかかる方法にて使用されるMIPの組成物と関連付けられる。
【0012】
最後に、第四の態様において、本願発明は、医薬組成物の調製方法であって、本願発明の第一または第二の態様の方法を用いて組成物を調製し、その後で該組成物を医薬上許容される担体、希釈体またはビヒクルと混合することを含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
「受容体」なる語は、本願明細書中にて、目的とする作用物質、すなわち、標的に対してアフィニティを示し、該物質と特異的に結合する能力を有する物質を示すのに用いられる。当該語は、このように、一般に生物学的受容体分子と称されるものだけでなく、抗体および分子インプリントポリマーなどの特異的結合を発揮する他の分子も包含する。本願発明において、特異結合性が重要であり、関係のない多くの標的と結合する物質を効果的に排除する;しかしながら、一見すれば関係のない分子と結合する受容体の交差反応は、この特徴が受容体の結合する2つの標的にて共通の構造因子の存在を必要とするため、排除されない。典型的には、特異結合は結合検定にて負の対照として用いられる1または数種の無関係の分子よりも標的に対するより高い結合アフィニティで特徴付けられる。
【0014】
「分子インプリントポリマー」(MIP)は、高分子化する前に、モノマーを架橋することからなり、モノマーマトリックスに組み込まれる1または複数の鋳型分子に少なくとも部分的に対応する空洞(または空隙)を含むポリマーである。高分子化の後に得られるポリマーは鋳型分子に形状が対応する多くの空洞を含む。典型的には、MIPを小粒子にシークエスターし、それにより鋳型が容易に除去され、鋳型分子と類似する、または同一である標的分子と相互作用するように一部の空洞は開放されたままである。本願明細書および特許請求の範囲において、「MIP」なる語は一般にMIPのいずれの形態(可溶性ならびに不溶性)をもいい、「MIP」および「MIPs」はMIP粒子なる語と互換的に使用されることを意味する。
【0015】
本願発明にて精製されるか、または利用されるMIPは不溶性の分子/化合物であり、これは、例えば、WO2007/095949に記載の原理に従って調製されるMIPについての場合であることが理解されよう。これらのMIPは、その不溶性が胃腸管から体内への(例、循環への)管を制限または妨げるため、胃腸管で用いる医薬として特に適している。言い換えれば、経口投与されると、本願発明にて使用される不溶性MIPは、それらが糞便中に廃棄されるまで、実質的に胃腸管に留められたままである。
【0016】
しかしながら、本願明細書に記載の原理に従って精製されるMIPはまた、MIPを胃腸管に留めることを特に目的としない、多くの異なる用途に有用である、可溶性MIPであってもよい。
【0017】
「抗体」は免疫学的攻撃に対する応答にてB−リンパ球により産生され、かつ分泌される可溶性生体分子である。本願明細書中、該語は大抵はポリクローナル抗体、すなわち、B−リンパ球の数種のクローンによって産生される抗体の混合物を示すのに用いられる。該語はまた、ファージ提示技法によって使用される、ファージ粒子によってエンコードされ、該粒子に結合する抗体または抗体フラグメントをもいう。本願発明に従って精製される抗体はいずれの抗体種であってもよく、例えば、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM種とすることができる。一本鎖抗体(ラクダまたはラマ抗体など)などのヒト以外の抗体種も該語の範囲内である。
【0018】
「標的分子」は、本願明細書にて、受容体が特異的に結合することができる分子であり、典型的には、一の目的のために最終的に該受容体を用いる場合に精製された受容体が結合することを意図とする分子である。「標的分子」なる語は、本願明細書中で、「作用物質」と互換的に使用され、受容体と作用物質との結合に言及する場合、本願発明の方法にて用いられる「作用物質」は必ずしも標的分子と同じである必要はなく、むしろ作用物質は本願明細書中で言及する精製工程に有用である標的分子の模倣体または誘導体であることが多いことに留意すべきである。作用物質は、例えば、標的分子と比べて大きな分子の一部を形成してもよく、仮に意図する標的分子がアミノ酸である場合、蛋白またはペプチドの一部を形成する対応するアミノ酸残基も工程bおよびdにおける作用物質として有用でありうる。例えば、精製方法は、精製の一の工程にてアミノ酸がC−末端にあるペプチドを利用し、もう一つ別の工程にてペプチドのN−末端にあるアミノ酸を利用する、一のアミノ酸残基と結合する受容体について富ませるようにセットアップされてもよく、そのような場合には、作用物質は精製工程にて使用される物質であり、それに対して標的分子は富化されている受容体と効果的に結合されている物質であると考えられる。
【0019】
同様に、「鋳型分子」は、通常、標的分子/作用物質と同じであるが、その模倣体または誘導体(すなわち、標的分子の構造と少なくとも部分的に同じ3D構造、および標的分子のプロフィールと適合するプロフィールを有する分子、例えば標的分子のフラグメントで構築される模倣体)であってもよい。鋳型は、その後で、標的分子と結合しうるようにMIP構造にて空隙を「作り出す物質」として役立つ。
【0020】
受容体に富む組成物(例、MIP組成物)が、本願明細書に記載される本願発明の方法にて鋳型として用いられる物質または作用物質として用いられる物質よりも、他の分子との特異的な結合性を発揮することも注目される。したがって、かかる受容体の組成物は、可能性のある(および必ずしも関連する必要はない)標的分子との結合について、スクリーンされ得るライブラリーにて使用され得る。これは、ファージ提示受容体分子(例、抗体ライブラリー)が元々は受容体分子に結合するように使用される抗原よりも全く異なる起源の分子と結合することを示す、ファージ提示技法にたとえられ得る。例えば、the 6th International Meeting on Molecular Imprinting, August 9-12, 2010, New Orleans, LAにて、Ecevit Yilmaze博士(SE)は、MIP合成法にて最初に使用された鋳型分子と、構造が全く異なる分子に対してMIPが交差反応を示す例を公開した。さらには、Ecevit Yilmaze博士は特異的な標的分子に対してアフィニティを有するポリマー組成物を同定するのに用いることができる一般的なMIPライブラリーを示した。そのような同定の後で、選択されたポリマーは本願発明に記載のアフィニティ精製方法に供され、それにより粗野な精製されていないMIPよりも高い能力を有するMIPを得ることができた。
【0021】
「アフィニティクロマトグラフィー」とは、物質を捕獲する固体支持体(クロマトグラフィーマトリックスなど)に結合したアフィニティ精製剤を用いて、受容体と結合パートナーの間の特異的結合を利用する、受容体の精製方法をいう。当該分野にて公知の典型例は、抗体と結合する抗原を精製するためのクロマトグラフィービーズにカップリングする捕獲剤として抗体を用いるアフィニティ精製である。本願発明に従って適用されるアフィニティ精製方法は本願明細書に記載の特徴を有するMIP粒子の精製能を有する方法であると理解できよう。かくして、不溶性MIPの典型的なアフィニティ精製方法は当業者に公知の拡張床吸着(expanded bed adsorption)(EBA)とすることができる。
【0022】
「固相または半固相」は、本願明細書にて、共有結合または非共有結合により捕獲剤を固定するのに用いられてもよい。かくして、クロマトグラフィー材料の調製に一般的に使用されるいずれの材料(プラスチックポリマー、糖、金属、ガラス、シリカ、ラバー等)を固相に供してもよい。固相材料は、捕獲剤の問題の材料へのカップリングを可能とする適切な官能基を含有してもよい。かかる誘導化材料は蛋白および他の巨大分子のクロマトグラフィー精製の分野の当業者に公知である。さらには、固相は、(蛋白などの単体の生体分子と比較した場合に)MIPなどの相対的に大きな不溶性粒子の捕獲を可能とするいずれの物理形態を有してもよい。かくして、固相は、繊維(好ましくは、中空)、クロマトグラフィーマトリックス(好ましくは、EBAに適するマトリックス)、ビーズ(好ましくは、磁気的手段により分離されてもよいもの)の形態、または下記に示されるようないずれか適当な形態であってもよい。
【0023】
オリゴヌクレオチドは、典型的には、多くて30個のヌクレオチドの、例えば、多くて25個の、多くて20個の、多くて19個の、多くて18個の、多くて17個の、多くて16個の、多くて15個の、多くて14個の、多くて13個の、多くて12個の、多くて11個のヌクレオチドの、多くてヌクレオチド残基のショート配列である。RNAおよびDNAの両方のオリゴヌクレオチドが該語により含まれる。
【0024】
「オリゴヌクレオチド誘導体」は、その骨格が本質的にオリゴヌクレオチドの骨格と同じであるが、リボース骨格の糖にて化学変化の導入がある誘導化オリゴヌクレオチドをいうことを意図としており、該語はその範囲内に配列中にLNAヌクレオチドを包含するヌクレオチドなどの分子を包含する。しかしながら、オリゴヌクレオチド誘導体はまた、PNAなどのオリゴヌクレオチドの模倣体であってもよい。
【0025】
発明の第一の態様の実施形態
上記したように、第一の態様は、一の作用物質と結合する受容体に富み、該受容体の各々が該作用物質上の少なくとも2個所の別個の部位に特異的に結合する、組成物の製造方法であって、
a.該受容体を含むサンプルを提供し、
b.該サンプルを、該作用物質をアフィニティ精製剤として用いる、アフィニティクロマトグラフィーの第一工程に供し、ここで該作用物質はその少なくとも2個所の別個の部位のうちの一つの部位との結合を介して固相または半固相に固定されており、
c.該作用物質に結合している受容体を回収し、
d.上記工程にて回収した受容体を、該作用物質をアフィニティ精製剤として用いる、アフィニティクロマトグラフィーの少なくとも1つのさらなる工程に供し、ここで該作用物質はその少なくとも2個所の別個の部位のうちのもう一つ別の部位との結合を介して固相または半固相に固定され、該作用物質に結合する受容体を回収する
ことを含み、
アフィニティクロマトグラフィーの少なくとも1つのさらなる工程の各々において、少なくとも2個所の別個の部位の一方が、作用物質の固相または半固相への固定のために工程bおよびdにて予め使用されている、その少なくとも2個所の別個の部位のもう一方とは異なる、方法に関する。
【0026】
このように、該原理は、最初の組成物中で、アフィニティクロマトグラフィーの第一ラウンドにて作用物質のアクセス可能な部分と、アフィニティクロマトグラフィーの第二でその後のラウンドにて作用物質のアクセス可能な部分の両方を含む、作用物質の構造に結合する、それらの受容体が富むことを可能とする。
【0027】
上記したように、作用物質は大きな分子の一部であり得、一の実用例が、標的分子がフェニルアラニン(または他のアミノ酸、以下参照)ならびにアミノ酸を含む短ペプチドである、場合である。アミノ酸と最適に結合する受容体を富ませるために、例えば、アミノ酸がN−末端アミノ酸残基として存在するジペプチドを調製し、ついで該ペプチドを第一精製工程の固相または半固相にカップリングさせてもよい。さらに強化するために、アミノ酸がC−末端残基であるジペプチドが、その後の精製工程としてそのN−末端を介して固相または半固相にカップリングされ得る。工程を組み合わせることで、組成物が、ペプチド結合に独占的に関連付けられないか、または遊離N−またはC−末端を構成する、アミノ酸部分に結合する受容体を富むようになる。
【0028】
受容体は、典型的には、分子インプリントポリマー(MIP)およびポリクローナル抗体からなる群より選択され、これら分子に富む混合物を得ることが望ましいが、受容体が、例えばその表面に抗体フラグメントを発現するファージ粒子の集団であってもよい。本質的に、技法は、2ラウンドにて異なる方向性を有する、捕獲剤に対してパンニングする2ラウンドを包含する。このように、本願発明は、受容体が標的分子上の関連する表面積の密度と比べて相対的に大きな接触面積を有する状況にて特別な用途を見出す。
【0029】
第一態様の方法は、受容体が可溶性または不溶性MIPより選択される状況にて適用可能であり、一の態様においては、該受容体が不溶性MIPである。
【0030】
ある実施態様において、該受容体は単一特異性ポリクローナル抗体である。「単一特異性」なる語はポリクローナル抗体を構成する構成する異なる抗体のすべてが特異的に同じ作用物質と結合することを意味する。
【0031】
アフィニティクロマトグラフィーは当業者に既知の方法により行われ得る。例えば、アフィニティクロマトグラフィーは拡張床吸着システムなどの流動床システムの使用を伴う;このことは受容体が不溶性の懸濁化分子である場合に特に有用である。しかしながら、アフィニティクロマトグラフィーはまた、伝統的なカラムをベースとするクロマトグラフィー(HPLCおよびFPLCモードを含む)であってもよく、それは可溶性受容体の場合に特に有用である。
【0032】
上記した実施態様において、作用物質は式:H−CH(R)−COO,例えばアミノ酸で示される化学物質であってもよく、または作用物質は多くて5個のアミノ酸残基を有するペプチドであってもよい。アミノ酸は、典型的には、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、トリプロファン、スレオニン、バリンおよびリジンより選択される。また、ペプチドは、典型的には、その配列内に、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、トリプロファン、スレオニン、バリンおよびリジンからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、ものである。特定の実施態様において、これらのアミノ酸はペプチドにてN−末端および/またはC−末端アミノ酸として現れる。
【0033】
作用物質がペプチドである実施態様において、それは、典型的には、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドである。
【0034】
上記した発明の第一および第二態様の特定の他の実施態様において、該作用物質は炭水化物、例えば最大10の単糖ユニットを有する分岐または直鎖のオリゴ糖である。特定の実施態様において、炭水化物は単糖、二糖および三糖より選択される。特に関心のある炭水化物はD−ガラクトースおよびラクトースである。
【0035】
また、作用物質は脂肪酸または脂質であってもよい;とにかく、作用物質は、典型的には、コレステロール、トリグリセリドおよび胆汁酸またはその塩からなる群より選択される。
【0036】
さらには、作用物質は、RNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド、LNAオリゴヌクレオチド、PNAオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド混合物からなる群より選択されるオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体などのオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体であり得る。特定の実施態様において、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体はオリゴヌクレオチド混合物であり、それは少なくとも1つのリボ−またはデオキソリボヌクレオチドユニットおよび少なくとも1つのLNAまたはPNAヌクレオチドユニットを含む。
【0037】
上記したすべての実施態様は、別に、アフィニティクロマトグラフィー方法の代わりに凝集を用いることで利用されてもよい。本願発明の第一態様のかかる実施態様において、受容体の単離は、受容体が数個の標的作用物質の間で「架橋」を形成する、凝集により得られる。
【0038】
実施上の配慮
本願明細書に開示される選択/単離方法は、分子(作用物質)が官能基を介してマトリックスに(典型的には)共有結合してカップリングする、不溶性材料(典型例は架橋多糖類、ポリスチレン、ガラス等である)でできているクロマトグラフィー媒体(マトリックス)を負荷したカラムを利用してもよい。作用物質は、上記したように、アミノ酸、ペプチド、炭水化物、コレステロール、胆汁酸、トリグリセリド、脂肪酸等であり得る。受容体の化合物の溶液または懸濁液は(カラム上の、または拡張床システム中の)クロマトグラフィー媒体に適用され、作用物質の暴露された部分に対して高いアフィニティを有する受容体の化合物または受容体の分子は、選択プロセスのクロマトグラフィー媒体上の作用物質に結合するであろうし、カラムより溶出されると、このことは出発物質よりもより高いアフィニティおよび高い結合能を有する受容体の化合物または分子の部分集合が得られるであろう。
【0039】
第二の選択が第一溶液から選択された受容体の化合物または分子上で行われるが、第一の選択とは異なる配向性のクロマトグラフィー媒体にカップリングする作用物質で行われる場合、作用物質の両方の配向性を認識する受容体の化合物または分子の新たな部分集合が得られるであろう。これらの二重またはタンデムな選択される受容体の化合物または分子は第一の選択からの受容体の化合物または分子の部分集合よりもより高いアフィニティ、特異性およびキャパシティーで遊離した、結合していない作用物質の分子と結合するであろう。
【0040】
一例は標的としてのフェニルアラニンと高分子化されているMIPの集合の精製である。Piletskyおよびその共同研究者(Piletsky, S.A, Andersson, H, およびNichoils, I.A. Polymer Journal, 37 (2005) 793-796)によって作られたフェニルアラニンMIPは相互作用の可能性のある3つの標的特異的な点:フェニル環、アミノ基およびカルボキシル基を有する。アフィニティ剤としてフェニルアラニンを用いる拡張床吸着(EBA)クロマトグラフィーを用いるその後の選択または精製プロセスにて、フェニルアラニン分子はアミノ基によるか、またはカルボキシル基(あるいは、反応基があるならば、原則としてはフェニル基によっても)によるかのいずれかでEBA媒体に結合し得る。しかしながら、MIPは、Piletskyの論文に概略的に示されるように、フェニル基とアミノ基、フェニル基とカルボキシル基、アミノ基とカルボキシル基、またはフェニル基とアミノ基とカルボキシル基の両方と同時に相互作用する結合能を含有する。フェニルアラニンMIPが拡張床吸収を用いて精製されるか、または標的分子に対するアフィニティにより不溶性粒子の精製を可能とするもう一つ別の方法により精製され、標的分子が、例えばフェニルアラニンのアミノ基を介してクロマトグラフィーマトリックスに固定される場合、その時にはフェニル環および同時にカルボキシル基に対して最大の結合を有するMIPが選択されるであろう。MIPの部分集合は、フェニル環およびアミノ基とも相互作用し得る結合空洞を主に有するMIPのもう一つ別の部分集合を含有してもよい。この部分−部分集合はフェニル環、カルボキシル基およびアミノ基の両方と同時に相互作用しうる結合空洞を有しなければならない。3つすべての官能基と関与する結合は、相互作用の可能性のある3つの点のうち2点だけ、すなわち別個の結合部位だけを認識する結合部位を主に有するMIP粒子と比較して、より高いアフィニティおよびより高い選択性を有すると考えられ、MIP粒子により高い結合能を付与するであろう。
【0041】
第二の例においては、フェニルアラニンMIP粒子を粉砕し、それらが可溶化しうる大きさにする。その場合には、個々のMIP粒子はより大きなMIP粒子と比較して結合キャビティを有しないであろうし、所定の粒子が主に一の型の結合キャビティ、すなわち、フェニルアラニン分子上の3つすべての官能基と相互作用しうる結合キャビティであるか、あるいはフェニルアラニン等中にある官能基のうち2つだけと相互作用する結合キャビティを有する機会を有する。第一の例にあるように、フェニルアラニンがアミノ基を介してクロマトグラフィーマトリックスに固定される第一の精製に続いて、フェニルアラニンがカルボキシル基を介してクロマトグラフィーマトリックスに固定される第二の精製がなされる場合、得られる部分−部分集団はフェニル環、カルボキシル基およびアミノ基の両方を有するフェニルアラニンと相互作用し得る結合キャビティを有するであろう。MIPが可溶性である場合には、クロマトグラフィーは拡張床吸着クロマトグラフィーである必要はないが、通常の充填床クロマトグラフィーであり得る。
【0042】
第三の例においては、エピトープと、高度の立体化学、例、単糖または二糖との複雑なセットの抗原に対する抗体が産生される。糖類が抗体のアフィニティ精製のためのクロマトグラフィーマトリックスにカップリングする場合、エピトープのすべてのセットの一部だけが暴露される。作用物質で精製される抗体分子の部分集合は、該適応に曝されるエピトープと、作用物質が別個に適応される場合に暴露されるエピトープのセットとの組み合わせを認識する抗体分子のもう一つ別の部分集合をも含有する適応の環境下にある。この第二の部分集合は、第一の部分集合がもう一つ別の適応とカップリングした糖類作用物質を用いる第二のクロマトグラフィーカラムに適用されるかどうかを選択しうる。かかる第二の部分集合は、両方の第一の部分集合および生の未精製の抗体よりも、より高いアフィニティ、より高い選択性およびより高い結合能を有し得る。
【0043】
本願発明の第二の態様の実施態様
第一の態様に記載の本願発明の方法は、各クロマトグラフィー工程に使用されるこれらすべての官能基により規定される結合キャビティを含む、標的作用物質の表面に結合する受容体に富む組成物をもたらす。
【0044】
しかしながら、所望の多重部位結合受容体のフラクションが、第一のクロマトグラフィー工程にて、競合のため、作用物質上の個々の関連する結合部位の両方と結合しないため、その後で排除される、受容体より排除されることを除くことができない。
【0045】
標的上の数個の結合キャビティを十分に利用するため、本願発明の原理に従って受容体に富む組成物を調製する場合、一の有利な方法は、従って、各々の工程にて並行して数種のアフィニティクロマトグラフィー操作を行うことであり、ここで異なる操作は作用物質がその作用物質上の異なる別個の部位を介してクロマトグラフィーマトリックスに結合することを利用し、この後で第一工程にて富む材料をその後の工程に供し、さらに異なる別個の部位を一の工程の操作に利用するものである。最後に、連続した精製工程の各「アーム」からの富化された組成物をプールする。このことは、各クロマトグラフィー工程の適用順序が意図的でない受容体であって、作用物質上の所望の大きな部分との結合能を実際に有する受容体の排除をもたらさないことを保証する。
【0046】
この方法の一の簡易なバージョンは、2つの異なる官能性を介する作用物質の結合を使用することを伴う:受容体分子を含有するサンプルを2つに分け、その両方を本願発明の第一の態様の方法に供するが、クロマトグラフィー工程の順序は逆であり;最後に2つの得られる富化したフラクションをプールする。
【0047】
より一般的に処方すると、本願発明の第二の態様は,一の作用物質と結合する受容体に富み、該受容体の各々が該作用物質上の少なくとも2個所の別個の部位に特異的に結合する、組成物の製造方法であって、本願発明の第一の態様の方法に従って少なくとも2つの組成物を調製し、その後で少なくとも2つの組成物を合わせ、該作用物質に結合する受容体に富む組成物を得、ここで、同じ作用物質を少なくとも2つの組成物の調製における工程bおよびdにて用い、
i.該少なくとも2つの組成物の各々を調製するのに、固相または半固相に固定するのに使用される、作用物質にある別個の部位の組み合わせが、少なくとも2つの組成物について異なり、および/または
ii.作用物質にある別個の部位が少なくとも2つの各々の組成物を調製するのに固相または半固相に固定するのに使用される順序が、少なくとも2つの組成物の少なくとも2つの調製において異なる、方法を伴う。
【0048】
この態様の好ましい実施態様は、少なくとも2つの各々の組成物を調製する場合、固定するのに作用物質中の同種の別個の部位を用い、ここで少なくとも2つの組成物の数が少なくとも2個所の別個の部位の数に等しく、その別個の部位を固相または半固相に固定するのに用い、その少なくとも2つの各々の組成物を調製する順序が、少なくとも2つの各々の組成物について独特である、方法に関する。典型的には、別個の部位の数は2または3である。
【0049】
本願発明の第三の態様の実施態様
本願発明の第三の態様は、フェニルケトン尿症(PKU、Fφlling病)、高フェニルアラニン血症(HPA)、アルカプトン尿症(黒色尿病)、チロシン血症、高チロシン血症、重症筋無力症、ヒスチジン血症、ウロカニン酸尿症、メープルシロップ尿症(MSUD)、イソ吉草酸血症(イソバレリル−CoAデヒドロゲナーゼ欠損症)、ホモシステイン尿症、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、グルタル酸尿症1型(GA−1)およびガラクトース血症からなる群より選択される疾患の治療、緩和または予防方法であって、その必要とする患者の胃腸管に、有効量の分子インプリントポリマー(MIP)の組成物を投与することを含み、該組成物が該疾患の病徴誘発作用物質と結合しうるところの方法に関する。
【0050】
天然アミノ酸の代謝作用の機能不全が代謝産物の、またはアミノ酸そのものの病理的濃縮物の蓄積をもたらす、代謝作用の多くの先天異常が知られている。かかる疾患を患っている個人の場合、これらの代謝産物の蓄積を回避するのに、毎日の食物摂取を管理しなければならない。
【0051】
典型例は疾患フェニルケトン尿症である。この疾患を患っている個人は酵素フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)を欠いている。この酵素はアミノ酸フェニルアラニンをアミノ酸チロシンに代謝させるのに不可欠であり、フェニルアラニンが患者に蓄積し、代謝産物のフェニルピルベートに変換されることを意味する。治療しないまま放置すると、この症状は脳発達に問題を引き起こし、進行性精神発達遅滞および他の神経学的問題に至り得る。フェニルケトン尿症は、現在、フェニルアラニンの少ない食事を組み合わせ、時に、安全で非毒性の濃度範囲に達するように、フェニルアラニンの血中濃度を低下させることを目的とする治療方法と合わせて治療される。フェニルアラニンの濃度を安全な範囲までの低下はフェニルアラニンの低い食事と医薬を組み合わせることで達成され得る。
【0052】
本願発明は現在の治療方法に代わる魅力的な方法を提供する。フェニルアラニンおよびフェニルアラニン含有短ペプチドと特異的に結合するMIP(典型的には不溶性MIPは、その不溶性により、確実に、胃腸粘膜を横切らないであろう)の組成物を経口投与することで、毒性量のフェニルアラニンの血流へのエントリーを回避または減少させることができる。また、かかるMIPの胃腸管中の存在は、(フェニルアラニンの胃腸管に結合するより大きな容量を単に提供することで)胃腸粘膜にフェニルアラニンが遊離することを「妨げ」、それによりその血中濃度は低下する。
【0053】
この特定の原理は、一般に、遊離アミノ酸および/またはその代謝産物の蓄積が代謝酵素の欠損により起こる、多くの他の疾患に適用できる。原則として、不溶性MIPの組成物はこの方法に有用であるが、WO2007/095949に記載されるように、不溶性MIPの典型的な組成物は所望の標的分子に結合しない実質的な量のMIPを含有し、その結果として、かかる組成物は極めて多量で投与しなければならないのに対して、WO2007/095949に開示される方法に従って調製される組成物または本願発明に従って調製される組成物は、実質的に非結合MIPを欠くため、はるかに効果的であろう。本願発明に従って調製されるMIP組成物(およびWO2007/095949に従って調製される組成物)の特に魅力的な特徴は、かかるMIPが目的とする遊離アミノ酸と結合するだけでなく、そのアミノ酸配列にて関連するアミノ酸を含む短ペプチドとも結合するであろうということである。本願発明のこの第三の態様の重要な実施態様はMIPの組成物が該病徴を惹起する物質と結合しないMIPを実質的に含まないことである。
【0054】
かくして、対応する標的(すなわち、疾患誘発物質)と結合する、MIPを経口投与することで下記の代謝作用の先天異常の治療は、好ましくは、2007/095949に開示される方法に従って調製される不溶性MIP、より好ましくは本願発明の第一および第二の態様(そのすべての実施態様を含む)に従って調製される不溶性MIPの組成物を用いることによりなされる。
【0055】
【表1】

【0056】
ソース:OMMBID- The Online Metabolic & Molecular Bases of Inherited Disease- (1) Part 8: アミノ酸、(2) Part 9: 有機酸、(3) Part 7: 炭水化物
【0057】
本願発明の第三の態様の一の実施態様において、疾患はフェニルケトン尿症(PKU)であり、病徴誘発物質はL−フェニルアラニンである。
【0058】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患は高フェニルアラニン血症(HPA)であり、病徴誘発物質はL−フェニルアラニンである。
【0059】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はアルカプトン尿症であり、病徴誘発物質はL−フェニルアラニンである。
【0060】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はチロシン血症であり、病徴誘発物質はL−フェニルアラニンおよび/またはL−チロシンである。
【0061】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患は高チロシン血症であり、病徴誘発物質はL−フェニルアラニンおよび/またはL−チロシンである。
【0062】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患は重症筋無力症であり、病徴誘発物質はL−ヒスチジンである。
【0063】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はヒスチジン血症であり、病徴誘発物質はL−ヒスチジンである。
【0064】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はウロカニン酸尿症であり、病徴誘発物質はL−ヒスチジンである。
【0065】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はメープルシロップ尿症であり、病徴誘発物質はL−ロイシンである。
【0066】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はイソ吉草酸血症(イソバレリル−CoAデヒドロゲナーゼ欠損症)であり、病徴誘発物質はL−ロイシンである。
【0067】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はホモシステイン尿症であり、病徴誘発物質はL−メチオニンである。
【0068】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はプロピオン酸血症であり、病徴誘発物質はL−イソロイシンおよび/またはL−バリンおよび/またはL−メチオニンおよび/またはL−スレオニンである。
【0069】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はメチルマロン酸血症であり、病徴誘発物質はL−イソロイシンおよび/またはL−バリンおよび/またはL−メチオニンおよび/またはL−スレオニンである。
【0070】
本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はグルタル酸尿症1型(GA−1)であり、病徴誘発物質はL−トリプトファンおよび/またはL−リジンである。
【0071】
最後に、本願発明の第三の態様のもう一つ別の実施態様において、疾患はガラクトース血症であり、病徴誘発物質はD−ガラクトースおよび/またはラクトースである。
【0072】
投与方法はMIP組成物に依存するであろうし、その関連する疾患誘発物質の正確な結合能、治療手段により除去される病徴誘発物質の量、および治療されるべき個体の体格および年齢に依存するであろう。
【0073】
製剤との関連で、本願発明に従って調製されるMIP粒子は、典型的には経口投与用のいずれか一般的な形態で、懸濁または可溶化させた形態にて含まれ得る。ある実施態様にて、MIP粒子は単に水に懸濁させ、所望により最先端の添加剤を添加し、風味(経口組成物の場合)、色彩、臭い、硬度/質感、放出性、分配等を改善してもよい。単に混合することで食品および飲料にMIP粒子を組み込むことも可能である。
【0074】
本願発明の第四態様の実施態様
本願発明はまた、医薬組成物の調製方法であって、本願発明の第一または第二の態様の方法に従って組成物を調製し、その後で該組成物を医薬上許容される担体、希釈体またはビヒクルと混合することを含む、方法を伴う。医薬組成物は経口投与に適するように調製されるのが都合よく、それは該組成物が不溶性MIP粒子を含む場合に実用的であろう。しかしながら、該組成物はポリクローナル抗体または可溶性MIP粒子を含む場合、該調製は非経口投与用製剤の調製に関する基準に従うであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の作用物質と結合する受容体に富み、該受容体の各々が該作用物質上の少なくとも2個所の別個の部位に特異的に結合する、組成物の製造方法であって、
a.該受容体を含むサンプルを提供し、
b.該サンプルを、該作用物質をアフィニティ精製剤として用いる、アフィニティクロマトグラフィーの第一工程に供し、ここで該作用物質はその少なくとも2個所の別個の部位のうちの一つの部位との結合を介して固相または半固相に固定されており、
c.該作用物質に結合している受容体を回収し、
d.工程cにて回収した受容体を、該作用物質をアフィニティ精製剤として用いる、アフィニティクロマトグラフィーの少なくとも1つのさらなる工程に供し、ここで該作用物質はその少なくとも2個所の別個の部位のうちのもう一つ別の部位との結合を介して固相または半固相に固定され、該作用物質に結合する受容体を回収する
ことを含み、
ここで、アフィニティクロマトグラフィーの少なくとも1つのさらなる工程の各々において、少なくとも2個所の別個の部位の一方が、作用物質の固相または半固相への固定のために工程bおよびdにて予め使用されている、その少なくとも2個所の別個の部位のもう一方とは異なる、方法。
【請求項2】
受容体が、分子インプリントポリマー(MIP)およびポリクローナル抗体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
受容体が、可溶性または不溶性MIPより選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
受容体が不溶性MIPである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
受容体が可溶性MIPである、請求項3記載の方法。
【請求項6】
受容体が単一特異性ポリクローナル抗体である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
アフィニティクロマトグラフィーが拡張床システムなどの流動床システムの使用を必要とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
作用物質が、アミノ酸などの式:H−CH(R)−COOで示される化学物質,または多くて5個のアミノ酸残基を有するペプチドである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アミノ酸が、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、トリプロファン、スレオニン、バリンおよびリジンより選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ペプチドが、その配列内に、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、トリプロファン、スレオニン、バリンおよびリジンからなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
ペプチドが、N−末端にて、C−末端にて、またはその両末端にて、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、トリプロファン、スレオニン、バリンおよびリジンからなる群より選択される一のアミノ酸を有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ペプチドが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドである、請求項8または請求項10記載の方法。
【請求項13】
作用物質が炭水化物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
作用物質が最大10の単糖ユニットを有する分岐または直鎖のオリゴ糖である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
炭水化物が単糖、二糖および三糖より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
炭水化物がD−ガラクトースおよびラクトースより選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
作用物質が脂肪酸または脂質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
作用物質が、コレステロール、トリグリセリドおよび胆汁酸またはそれらの塩からなる群より選択される脂質である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
作用物質がオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体が、RNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド、LNAオリゴヌクレオチド、PNAオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド混合物からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのリボ−またはデオキソリボヌクレオチドユニットおよび少なくとも1つのLNAまたはPNAヌクレオチドユニットを含む、オリゴヌクレオチド混合物である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
一の作用物質と結合する受容体に富み、該受容体の各々が該作用物質上の少なくとも2個所の別個の部位に特異的に結合する、組成物の製造方法であって、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法に従って少なくとも2つの組成物を調製し、その後でその少なくとも2つの組成物を合わせ、該作用物質に結合する受容体に富む組成物を得、ここで、少なくとも2つの組成物の調製における工程bおよびdにて同じ作用物質を用い、
iii.該少なくとも2つの組成物の各々を調製するのに、固相または半固相に固定するのに使用される、作用物質にある別個の部位の組み合わせが、少なくとも2つの組成物について異なり、および/または
iv.作用物質にある別個の部位が少なくとも2つの各組成物を調製するのに固相または半固相に固定するのに使用される順序が、少なくとも2つの組成物の少なくとも2つの調製において異なる、方法。
【請求項23】
少なくとも2つの各々の組成物を調製する場合、固定するのに作用物質中の同種の別個の部位を用い、ここで少なくとも2つの組成物の数が少なくとも2個所の別個の部位の数に等しく、その別個の部位を固相または半固相に固定するのに用い、その少なくとも2つの各々の組成物を調製する順序が、少なくとも2つの各々の組成物について独特である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
別個の部位の数が2または3である、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
フェニルケトン尿症(PKU、Fφlling病)、高フェニルアラニン血症(HPA)、アルカプトン尿症(黒色尿病)、チロシン血症、高チロシン血症、重症筋無力症、ヒスチジン血症、ウロカニン酸尿症、メープルシロップ尿症(MSUD)、イソ吉草酸血症(イソバレリル−CoAデヒドロゲナーゼ欠損症)、ホモシステイン尿症、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、グルタル酸尿症1型(GA−1)およびガラクトース血症からなる群より選択される疾患の治療、緩和または予防方法であって、その必要とする患者の胃腸管に、有効量の分子インプリントポリマー(MIP)の組成物を投与することを含み、該組成物が該疾患の病徴誘発物質との結合能を有するところの、方法。
【請求項26】
MIPの組成物が実質的に病徴誘発物質と結合しないMIPを含まない、請求項25記載の方法。
【請求項27】
MIPの組成物が請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法に従って調製されるか、WO2007/095949に開示の方法に従って調製される、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
医薬組成物の調製方法であって、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法に従って組成物を調製し、つづいて該組成物を医薬上許容される担体、希釈体またはビヒクルと混合する、方法。
【請求項29】
医薬組成物が経口投与に適するように調製される、請求項28記載の方法。

【公表番号】特表2013−504611(P2013−504611A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529271(P2012−529271)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063614
【国際公開番号】WO2011/033021
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508248759)
【Fターム(参考)】