説明

多重画像形成装置

【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野 本発明は、電子写真装置、レーザビームプリンター、印刷装置等のように画像情報を転写材のような像支持体上に形成する画像形成装置に関し、特にカラー電子写真装置あるいはカラーレーザビームプリンタ等のように、画像形成手段を複数個、配置して多重画像を形成する多重画像形成装置に関する。以下、本発明の多重画像形成装置に関連して、本明細書では4連ドラム式カラーレーザビームプリンタを例に取り述べる。
従来技術とその問題点 従来、複数個の画像形成部を備え、各画像形成部にてそれぞれ色の異なった画像を形成し、該画像を同一転写材に重ねて転写する画像形成装置、いわゆるカラー画像形成装置のような多重画像形成装置が種々提案されているが、このような多重画像形成装置では、画像形成部の画像を転写材に転写する際に、該転写材を画像形成部に搬送する搬送手段として、ベルトが用いられることが多い。
上記したような多重画像を形成する場合に、転写材に重ねて転写される、例えばシアン、マゼンタ、イエロ、ブラック等の各4色のトナー像のレジストレーションが悪い場合、色ズレ、色相の変化として現われ転写画像の品位を著しく劣化させ、レジストレーション精度は、画像品位にとって大きなウェイトを占める。
また、各画像部ごとに転写材に転写される各色の画像の濃度及び階調性は、環境、耐久等による感光ドラム特性の変化、現像剤のT/C比変化、現像剤の耐久による劣化等に伴ない変化し、高品位で、かつ安定した濃度の画像を常に出力させるためにも画像濃度の制御が必要である。
ところが、従来の多重画像形成装置においては、上記ベルトの速度変動や、ベルト、画像形成部などのメンテナンスや交換後の位置再現性が完全でないこと等によって、各画像形成部から1枚の転写材へ転写される際に各画像部から形成される画像相互間の転写ズレが発生する。これは特にカラー画像における色のにじみや色相の変化等といつた重大な問題点となる。
それ故、従来の多重画像形成装置では、各画像形成部から1枚の転写材に転写され重ねられる各色の転写位置のズレを補正するために、特定の位置決めパターン(トンボ)を転写ベルトに転写した後に、そのパターンを、パターン読み取り装置としての位置決めパターン読み取りセンサーで、電気的信号として読み取り、その信号を処理して各色の転写位置のズレを補正していた。
さらに、転写材上に転写される画像の濃度を制御するために、上記と同様に、転写ベルトに各色毎に階調をもった濃度パターンを転写した後に、そのパターンの各濃度パッチを、パターン読み取り装置としての濃度パターン読み取りセンサーで、光学的に読み取り、転写材上に転写される画像の濃度を制御することも行なわれていた。
しかしながら、上記従来例では、位置決めパターンと濃度パターンとのそれぞれに対して別個のパターン読み取り装置で読み取るために、多重画像形成装置内の空間の有効利用の面からも、また、コストの面からも最適なものとは言えなかった。
本発明は、上記の問題点解消するためになされたものである。
発明の目的 したがって、本発明の目的は、転写材に転写される位置決めパターン及び濃度パターンを、同一のパターン読み取り装置で読み取ることができ、したがって、パターン読み取り装置の占める空間を最小にすると共に製造コストを低減させることができる多重画像形成装置を提供することである。
問題点を解決するための手段 上記目的は、本発明に係わる多重画像形成装置によつて達成される。要約すれば本発明は、多重画像を形成するために複数個の画像形成部が配置された多重画像形成装置において、各画像形成部にてそれぞれ色の異なった各画像を形成し、転写材に転写され重ねられる該各画像の転写位置のズレを補正するための特定の位置決めパターンの読み取りと、転写材上に転写される画像の濃度を制御するための濃度パターンの読み取りとを同一のパターン読み取り装置で共用させて読み取ることを特徴とする多重画像形成装置である。
実施例 以下本発明を、その実施例に基づいて添付図面を参照しつつ説明する。
第1図に示すように、本発明による多重号材形成装置の一例としてのカラー電子写真複写機の如き4連ドラム式カラーレーザビームプリンタ100は、例えば、第1から第4までの4つの画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdを有すると共に、一方側に転写材給送部となる転写材を収納したカセット108及び他方側に定着器113を備えており、これらの間に転写材を搬送する転写ベルト109が配設されている。
このカセット108には、転写材を供給するために、転写材供給コロ駆動モータ(図示せず)により回動駆動される転写材供給コロ107が配設され、そして、転写ベルト109には、転写ベルト駆動モータ(図示せず)により回転駆動されるベルト駆動ローラ119が配設され、このベルト駆動ローラ119の回転駆動により、転写ベルト109は、第1図の矢印A方向に駆動される。
上記各画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdには、それぞれ感光ドラム111a,111b,111c及び111dが備えられ、これらの感光ドラムは、転写ベルト109による転写材の搬送路上で、搬送方向に対して所定間隔で配置されている。これらの感光ドラム111a,111b,111c及び111d周辺には、帯電器112a,112b,112c及び112dが設けられると共に、現像器106a,106b,106c及び106dが配設されており、さらに、転写器110a,110b,110c及び110d、そしてクリーナ120a,120b,120c及び120dが配設されている。
また、各画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdには、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの異なる色のトナーが貯蔵されているトナーホッパ(図示せず)が配設されている。
そして、各画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdには、それぞれについて、レーザ発振器(図示せず)、ポリゴンミラー104a,104b,104c及び104dが設けられると共に反射ミラー117a,117b,117c,117dからなる光学系が設けられている。
このように4つの画像形成部を有する多重画像形成装置において、画像を形成する際には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する各画素形成部Pa〜Pdの両端部に、第4図に示すような位置決めパターンとしての位置決めマーク像30を、カールソンプロセス等の所定のプロセスを介し、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対して形成し(第3図に示されているように、それぞれの各色に対し形成された位置決めマーク像を、それぞれ30a,30b,30c及び、30dとする)、順次搬送ベルト109上に転写する。
転写ベルト109上において、各画像形成部Pa〜Pdの両端部に形成されるこの位置決めマーク像30は、第3図から明らかなように、転写ベルト109の搬送方向と直行する方向、すなわち主走査方向の各画像形成部の右側端及び左側端に転写され、しかもその転写位置は、転写ベルト109の搬送方向、すなわち副走査方向Aに対してシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの順にそれぞれが混色しないようにずらしてある。
転写ベルト109上において各画像形成部の右側端及び左側端に転写された位置決めマーク像30は、第2図に示されるように、これを読みとれるように、それぞれに対応して配設されたパターン読み取り装置、すなわち位置決めマーク像読み取りセンサとしてのCCDイメージセンサ21、22により読み取られる。
この読み取りは、位置決めマーク像が、転写ベルト109と共に搬送され、CCDイメージセンサ21、22の位置決めマーク像読取領域に達すると、位置決めマーク像検出手段(図示せず)の作動により転写ベルト109のやや上方に配設された発光部となる照明ランプ23を作動させ、この照明ランプ23からの照明光を、転写ベルト上の位置決めマーク像で反射させ、この反射光をCCDイメージセンサ21、22で読み取ることにより行なわれる。
その際、位置決めマーク像の読取は赤外域(750〜950nm)で行なわれることが望ましくその理由は、4色(シアン、マゼンタ、イエロ、ブラツク)の各トナーで転写ベルト109上に書かれた各位置決めマーク像をできるだけ同感度で検出するためである。また、転写ベルト109は透明であるため、位置決めマーク像以外からの光の入射は殆どない。
このようにして、CCDイメージセンサ21、22で読み取られた反射光は、CPU(中央処理装置)に入力されて処理され、このCPU(中央処理装置)により位置決めマーク像30の位置が求められて、レジストレーションのズレ量が演算される。このとき、位置決めマーク像30の転写位置は、既知であり、CPU(中央処理装置)でレジストレーションが正確に合っていると判断された場合は、CPU(中央処理装置)の指示により、この既知の位置に転写される。逆に、CPU(中央処理装置)でレジストレーションが悪化していると判断された場合には、この既知の値と位置決めマーク像30が実際に転写された位置との誤差をCPU(中央処理装置)で演算することによりズレ量を求める。
このズレ量に応じて、第1図のレーザ光路中にある反射ミラー117をステッピングモータ(図示せず)を用いて作動させ、倍率、副走査方向の傾き、平行移動等を調整することにより、レジストレーションを合わせる。なお、レジストレーションのズレ量を、上記した他に感光ドラムや転写ベルトの駆動を制御して補正することもできる。
このレジストレーション補正は、第1図に示すシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4つの画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdのうちの1つを基準の画像形成部とし、その際、基準画像形成部の補正は、いっさい行なわず、他の3つの画像形成部をこの基準画像形成部に合わせるようにして行なわれる。
ここで、位置決めマーク像は、好ましくは、カーギ形状として、一度に2方向のズレを検出することができるものとされる。そして所望の色の画像形成に必要とされ、読み取られた転写ベルト上の位置決めマーク像はベルト用クリーナブレード118(第1図参照)の作動により転写ベルト109上から除去され、次の画像形成が可能となる。
次に、第5図を用いて転写材上に形成される濃度パターンの読み取りについて述べる。
まず、この濃度パターンの読み取りは、レジストレーション補正の際の位置決めマーク像の読み取りとは別に行なわれる。第5図に示すように、濃度パターン54のプリントについては、階調を変えた一様な濃度パッチを有する濃度パターン54が、各色ごとに、前述したパターン読み取り装置、すなわち位置決めパターン読み取りセンサと共用される濃度パターン読み取りセンサとしてのCCDイメージセンサの読み取り領域もしくはそれよりも広い領域の範囲で、カールソンプロセス等の所定のプロセスを介して形成される数階調の濃度パッチを、ある間隔をもって転写ベルト109の右、左の両端あるいは両端のどちらか一方に、CCDイメージセンサ21、22に対応するように、転写ベルト109上の位置にプリントする。
数階調の濃度パッチを有する濃度パターン54の転写ベルト109への転写は、転写ベルト109上に1色ずつ適当な間隔をもって行なわれ、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色について行なわれる。この濃度パターン54は、各色ごとに転写ベルト109の左右両端どちらか、もしくはその両端に転写されるが、転写ベルト109上に形成された濃度パターンは、CCDイメージセンサで濃度パターンの濃度パッチを読み取った後は、第1図R>図に示すベルトクリーナ118でクリーニングされる。
濃度パターン54を読み取るように配設された、転写ベルト109のCCDイメージセンサ21、22で読み取られた濃度パターンの出力値は、あらかじめ測定されたCCDイメージセンサの出力と画像濃度との関係に基づいて画像濃度に変換され、これにより、その時の画像の階調性を知ることができ、濃度制御が行なわれる。また、その際、感光ドラム上の濃度パターンにおける濃度パッチに対応する位置の表面電位を同時に測定することで、画像の濃度特性にとって重要であるV−D特性を把握でき、画像濃度を制御する際の基礎データとすることができ、このV−D特性から適正なコントラスト電位を求め、レーザパワー、グリッドバイアス、現像バイアス等を変えることで、画像の濃度制御が行なわれる。
以上、述べてきたレジストレーション補正及び画像の濃度制御は、別々の動作であり、それぞれの動作が行なわれるタイミングは、レジストレーション補正に関しては各色のレジストレーションのズレ量が常にあらかじめ定められた範囲内に収まるように、また、画像の濃度制御に関しては、各色の画像の濃度もしくは階調性が一定に保たれるように行なわれる。このように、レジストレーション補正により転写ズレのない状態で、なおかつ画像の濃度制御により各色の画像の濃度及び階調性が適正に保たれている状態において、以下のようなプリント動作が行なわれる。
まず、シアン色に対応する第1の画像形成部Paの感光ドラム111aが、第1図において時計方向に回転され、感光ドラム111aの表面上が帯電器112により均一に帯電される。
次に、レーザ発振器により発生され画像に応じてオン・オフされるレーザ光が高速回転するポリゴンミラーにより、反射ミラー117aを介して感光ドラム111aの表面上を主走査方向(感光ドラムの回転軸方向)に振られて主走査を行ない、感光ドラム表面上に原稿画像のシアン成分色の静電潜像が形成された後、現像器106aにより、シアントナーが感光ドラム表面上に付着され、上記静電潜像に対応した可視画像のシアントナー像が形成される。
そして、転写材を収納したカセット108から転写材が転写材給送コロ107にてプリンタ内の転写ベルト109上に給送・載置され、この転写ベルトにより、転写ベルト109上に静電吸着される転写材が、シアン色に対応する第1の画像形成部Paに搬送され、転写器110aにてシアントナー像が転写されて、転写材に上記濃度制御されたシアン画像が形成される。
一方、上記シアン画像が転写材に形成されている間に、マゼンタ色に対応した第2の画像形成部Pbの感光ドラム111b上では、前述したと同様に、原稿画像のマゼンタ成分色の潜像が、補正された位置に形成され、続いて現像器106bでマゼンタトナーによる可視画像のトナー像が形成され、先の第1の画像形成部Paでシアン画像の転写が終了した転写材が第2の画像形成部Pbに搬送されると、転写材の所定の位置でシアン画像に対して転写ズレなく、前述と同様に、濃度制御されたマゼンタトナー像が転写される。
以下、イエロ、ブラツクについて同様に画像形成が行なわれ、転写材上に4色のトナー像が転写ズレなく、重ね合わせられ、この転写ズレのないトナー像の重ね合わせが終了すると、転写材は定着器113の熱ローラ114と圧接ローラ122との間に搬送され、熱ローラ114により転写材のトナー像が熱定着される。しかる後、転写材は、転写材排出コロ116によりトレー115上に排出される。
以上のようにして、色ズレあるいは色相などの変化のない、しかも濃度の制御された高品位な多重転写画像(フルカラー画像も含む)を得ることができる。
ここで、上記した本実施例では、画像形成部が4つ並置されている4連ドラム式のフルカラープリンタの場合について述べたが、これに限らず、複数個の画像形成部を有するものであればいずれの場合にも適用できる。例えば、2色、3色等のマルチカラープリンタにおいても、当然、応用が可能である。
また、上記した本実施例では、各色ごとに転写ベルトの左右どちらか一方、もしくは両方に濃度パターンをプリントしているが、左右それぞれに色を変えて転写ベルトに2色ずつ濃度パターンをプリントし、同時に、左右それぞれの2色の濃度パターンを読み取ることも可能である。この場合には、濃度パターンの読み取りにかかる時間は、半減されるが、パターン読み取り装置、すなわち各感光ドラムに対しての電位センサの位置を4色のうち、2色は左側にして、他の2色は右側という配置にする必要がある。
さらに、本実施例で述べたパターン読み取り装置としての読み取りセンサは、CCDセンサーに限るものではなく、フオトトランジスターアレイなども利用可能である。
上記した実施例では、転写領域近傍を通過する移動部材を転写ベルトとして説明してきたが、各画像形成部から各画像を一旦中間転写体に多重転写した後、転写材に一度に再転写する構成における中間転写体であつても同様に本発明の効果が得られるのはいうまでもない。
発明の効果 以上説明したように、本発明によれば、転写ベルト上にプリントされた位置決めパターンと濃度パターンとを同一のパターン読み取り装置としてのCCDイメージセンサで読み取ることにより、多重画像形成装置内の空間を有効に利用することができ、かつ、その読み取りを共用させることでイメージセンサの数を減らせ、コストダウンをはかることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に用いられる多重画像形成装置の一実施例としての4連ドラム式カラーレーザビームプリンタの断面図である。
第2図は、第1図の多重画像形成装置に用いられる、位置決めパターン及び濃度パターンを読み取るためのパターン読み取り装置の概略構成図である。
第3図は、第2図の示すパターン読み取り装置により、転写ベルト上に転写された位置決めパターンとしての位置決めマーク像を読み取るときの平面図である。
第4図は、第3図に示す転写ベルト上に転写される位置決めパターンとしての位置決めマーク像の形状を示す説明図である。
第5図は、第2図に示すパターン読み取り装置により、転写ベルト上に転写された階調を有する濃度パターンとしての各濃度パッチを読み取るときの平面図である。
Pa〜Pd:画像形成部
21、22:パターン読み取り装置
23:照明ランプ
30:位置決めマーク像
54:濃度パターン
104a、104b、104c、104d:ポリゴンミラー
106a、106b、106c、106d:現像器
107:転写材供給コロ
108:カセット
109:転写ベルト
110a、110b、110c、110d:転写器
111a、111b、111c、111d:感光ドラム
112a、112b、112c、112d:帯電器
113:定着器
114:熱ローラ
115:トレー
116:転写材排出コロ
117a、117b、117c、117d:反射ミラー
118:ベルトクリーナ
119:ベルト駆動ローラ
120a、120b、120c、120d:クリーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】多重画像を形成するために複数個の画像形成部が配置された多重画像形成装置において、各画素形成部にてそれぞれ色の異なった各画素を形成し、転写材に転写され重ねられる該各画像の転写位置のズレを補正するための特定の位置決めパターンの読み取りと、転写材上に転写される画像の濃度を制御するための濃度パターンの読み取りとを同一のパターン読み取り装置で共用させて読み取ることを特徴とする多重画像形成装置。

【第2図】
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【第3図】
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【第1図】
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【第4図】
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【第5図】
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【特許番号】第2573855号
【登録日】平成8年(1996)10月24日
【発行日】平成9年(1997)1月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−325765
【出願日】昭和62年(1987)12月23日
【公開番号】特開平1−167769
【公開日】平成1年(1989)7月3日
【出願人】(999999999)キヤノン株式会社