説明

多重衣類処理システムの駆動方法

【課題】本発明は、多重衣類処理システムの複数個のハンガーが同時に振動する場合、振動が重畳されて増幅されることを防止するための多重衣類処理システムの駆動方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る多重衣類処理システムの駆動方法は、収容された衣類に振動を加えるハンガーを備えた第1衣類処理装置及び第2衣類処理装置を含む多重衣類処理システムの駆動方法であって、第1衣類処理装置の第1ハンガーと第2衣類処理装置の第2ハンガーが同時に駆動される場合、各ハンガーの振動周波数が同一であるか否かを判断するステップ(S200)と、第1ハンガーと第2ハンガーの振動周波数が同一である場合、第2ハンガーの振動位相が第1ハンガーの振動位相と逆位相となるように第2ハンガーの駆動を制御する逆位相制御ステップ(S300)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重衣類処理システムのハンガーが同時に振動する時、振動が増幅されることを防止するための多重衣類処理システムの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類処理装置は、キャビネットの内部に備えられた収納室内に収納される衣類に水分または熱風などを供給して処理する装置をいう。収納された衣類の処理とは、衣類に水分または熱風(単純な送風を含む)を供給し、衣類に残留する臭い、シワまたは湿気などを除去して、衣類を着用する使用者に満足感を与えることができる一連の段階を言う。
【0003】
例えば、1回以上同じ衣類を着用すれば、衣類には臭い、シワまたは湿気などが残留することになり、衣類に残留する臭いなどは、同じ服を再び着用しようとする使用者に不快感を与える。これを除去するためには衣類を洗濯することができるが、頻繁な衣類の洗濯は衣類の寿命を短縮させ、衣類の維持及び管理に必要なコストを上昇させるという問題点がある。
【0004】
また、洗濯後、乾燥が完了した服でもシワが残留する場合があり、そのような衣類を直ちに着用できず、使用者は別途の面倒なアイロンがけなどを行わなければならない。
【0005】
このような問題点を解決するために、衣類に残留する臭い、シワまたは湿気などを除去する衣類処理装置を使用することができる。衣類処理装置は、収納された衣類の臭い、シワまたは湿気などを除去するために、衣類にスチームを噴射し、噴射されたスチームにより湿気が含まれていた衣類を乾燥させるために送風(熱風を含む)することができる。
【0006】
衣類を風又は熱風に露出させるだけでも臭い、シワまたは湿気などを除去する効果があり得るが、その効果を極大化させるために、収納された衣類に水分を供給できる。
【0007】
衣類処理装置に収納された衣類にスチームを噴射すると、微細な水粒子が繊維組織の深いところに残留する臭い粒子と結合し、臭い粒子と結合した水粒子は乾燥工程で衣類から分離されて排出される。このような方式で衣類に残留する臭いを除去する。
【0008】
そして、衣類処理装置において、収納された衣類に供給される水分の形態としてスチームを使用すると、衣類に残留するシワなどを緩和する効果がある。供給されたスチームによって濡れた衣類は、乾燥工程でシワが緩和または除去されることができる。
【0009】
このような工程を通じて、衣類に残留する臭い、シワまたは湿気などを除去でき、衣類の使用者はより快適な状態で衣類を着用できる。
【0010】
このような衣類処理装置は、モータにより回転するドラムを備えたドラム型衣類処理装置とキャビネット方式の衣類処理装置とがある。衣類処理装置がキャビネット方式で提供される場合、キャビネットの一側に備えられたドアによって選択的に開放または遮蔽され得る衣類の収容空間と、各種機械部品が実装された機械室とがキャビネットの内部に提供される形態であってもよい。
【0011】
特に、洗濯を前提とせずに簡単に衣類を処理するために、キャビネット形態の衣類処理装置が使われることができる。この場合、衣類が収容される収容空間に衣類を収納する方法は、衣服ハンガーに衣類を掛けた後、これをその内部に備えられたハンガーなどに掛ける方法で多量の服を同時に装着することができる。
【0012】
特に、ハンガーとして、衣類のシワが伸びる効果を高め、スチームの供給及び熱風の供給時に、繊維によく染み込むことができるように振動を加えるムービングハンガーを利用できる。
【0013】
最近では、一つの衣類処理装置だけではその容量が十分でないため、複数個の衣類処理装置に対する需要の増大によって、複数の衣類処理装置で構成された多重衣類処理システムが登場した。
【0014】
ただし、多重衣類処理システムのムービングハンガーが同時に振動する場合、振動が増幅されて騒音が増大し、衣類処理装置の耐久性にも影響を及ぼして故障の頻度が高まるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、多重衣類処理システムの複数個のハンガーが同時に振動する場合、振動が重畳されて増幅されることを防止するための多重衣類処理システムの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記のような目的を達成するために、収容された衣類に振動を加えるハンガーを備えた第1衣類処理装置及び第2衣類処理装置を含む多重衣類処理システムの駆動方法において、前記第1衣類処理装置の第1ハンガーと前記第2衣類処理装置の第2ハンガーが同時に駆動され、前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周波数が同一である場合、前記第2ハンガーの振動位相が第1ハンガーの振動位相と逆位相となるように制御する逆位相制御ステップを含む多重衣類処理システムの駆動方法を提供する。
【0017】
ここで、前記逆位相制御ステップは、前記第2ハンガーの振動位相が前記第1ハンガーの振動位相と逆位相となるまで前記第2ハンガーの動作を遅延させることができる。
【0018】
一方、前記逆位相制御ステップは、前記第2ハンガーの振動周波数を変化させる周波数変換ステップと、前記第1ハンガーと第2ハンガーの周波数を一致させる周波数同期化ステップとを含むことができる。
【0019】
前記周波数変換ステップは、前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周期が同一に終了する時点において行われることができる。
【0020】
前記周波数変換ステップにおいて前記第2ハンガーの振動周波数は、前記第1ハンガーの振動周波数の(2n+1)/2(nは0または自然数)であってもよい。
【0021】
前記周波数同期化ステップは、前記第1ハンガーと第2ハンガーの位相が互いに反対であり、振動周期が同一に終了する時点において行われることができる。
【0022】
前記第1ハンガーの振幅と前記第2ハンガーの振幅とを一致させる振幅同期化ステップをさらに含むことができる。
【0023】
前記第1ハンガーと前記第2ハンガーの振動周波数が同一でない場合、前記第2ハンガーの振動位相が前記第1ハンガーの振動位相と同位相とならないように前記第2ハンガーを制御する同位相防止制御ステップをさらに含むことができる。
【0024】
また、前記同位相防止制御ステップは、前記第1ハンガー及び第2ハンガーのうち少なくとも一つの振動周波数を変化させて、第1ハンガー及び第2ハンガーの振動周波数を一致させる周波数同期化ステップを含むことができる。
【0025】
前記周波数同期化ステップは、前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周期が同一に終了する時点において行われることができる。
【0026】
前記周波数同期化ステップが行われる時点において前記第1ハンガーと第2ハンガーの位相が同一である場合、前記第2ハンガーの振動を(2n+1)/2(nは0または自然数)周期の間、停止する遅延ステップをさらに含むことができる。
【0027】
前記第1ハンガーの振幅と前記第2ハンガーの振幅とを一致させる振幅同期化ステップをさらに含むことができる。
【0028】
前記各ハンガーの振動周波数は、ハンガーの動きを感知するホールセンサを用いて測定できる。
【0029】
また、本発明は、収容された衣類に振動を加える第1ハンガーを備えた第1衣類処理装置と、収容された衣類に振動を加える第2ハンガーを備えた第2衣類処理装置と、前記第1ハンガーと前記第2ハンガーが同時に駆動され、前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周波数が同一である場合、前記第2ハンガーの振動位相が第1ハンガーの振動位相と逆位相となるように制御する制御部と、を含む多重衣類処理システムを提供する。
【0030】
前記制御部は、前記第2ハンガーの振動位相が前記第1ハンガーの振動位相と逆位相となるまで前記第2ハンガーの動作を遅延させることができる。
【0031】
前記制御部は、前記第2ハンガーの振動周波数を変換させて、第1ハンガーと第2ハンガーの振動周波数が互いに異なるように制御した後、前記第1ハンガーと第2ハンガーの位相が互いに反対であり、振動周期が同一に終了する時点において前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周波数を一致させることができる。
【0032】
前記制御部は、前記第2ハンガーの振動周波数を前記第1ハンガーの振動周波数の(2n+1)/2(nは0または自然数)に変換させることができる。
【0033】
前記制御部は、前記第1ハンガーの振幅と前記第2ハンガーの振幅とを一致させるように制御することができる。
【0034】
前記制御部は、前記第1ハンガーと前記第2ハンガーの振動周波数が同一でない場合、前記第1ハンガー及び第2ハンガーのうち少なくとも一つの振動周波数を変化させて、第1ハンガー及び第2ハンガーの振動周波数を一致させることができる。
【0035】
前記制御部は、前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周期が同一に終了する時点において前記第1ハンガー及び第2ハンガーの振動周波数を一致させることができる。
【0036】
前記制御部は、前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周期が同一に終了する時点において第1ハンガーと第2ハンガーの位相が同一である場合、第2ハンガーの振動を、(2n+1)/2(nは0または自然数)周期の間、遅延させることができる。
【0037】
前記第1ハンガーと第2ハンガーの動きを感知するホールセンサをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0038】
多重衣類処理システムの複数個のハンガーが同時に振動する時に発生する騷音を最小化することができ、振動が大きくなることによる多重衣類処理システムの故障発生を防ぐことができ、多重衣類処理システムの寿命が短縮されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】多重衣類処理システムを示す斜視図である。
【図2】本発明の多重衣類処理システムのムービングハンガーを示す斜視図である。
【図3】本発明の多重衣類処理システムを示す分解斜視図である。
【図4】本発明の多重衣類処理システムの機械室の内部構成を示す概略図である。
【図5】多重衣類処理システムの振動態様を示す斜視図である。
【図6】多重衣類処理システムの振動を示すグラフである。
【図7】多重衣類処理システムの振動を示すグラフである。
【図8】本発明の多重衣類処理システムの駆動方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の多重衣類処理システムの駆動方法の第1実施例に係る多重衣類処理システムの振動を示すグラフである。
【図10】本発明の多重衣類処理システムの駆動方法の第1実施例に係る多重衣類処理システムの振動を示すグラフである。
【図11】本発明の多重衣類処理システムの駆動方法の第2実施例に係る多重衣類処理システムの振動を示すグラフである。
【図12】本発明の多重衣類処理システムの駆動方法の第3実施例に係る多重衣類処理システムの振動を示すグラフである。
【図13】本発明の多重衣類処理システムの駆動方法の第4実施例に係る多重衣類処理システムの振動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施例に係る乾燥兼用洗濯装置の乾燥サイクルの制御方法及びこれに用いられる乾燥兼用洗濯装置について詳細に説明する。本発明の説明において、定義される各構成要素の名称は本発明での機能を考慮して定義されたものである。
【0041】
したがって、本発明の技術的構成要素を限定する意味で理解されてはならない。また、各構成要素に定義されたそれぞれの名称は当該業界において他の名称として呼ばれることもある。
【0042】
図1は、多重衣類処理システムを示す斜視図である。多重衣類処理システムは、複数個のキャビネットタイプの衣類処理装置10,20を連続的に連結して、処理できる衣類の量を増加させたことが特徴である。本発明の多重衣類処理システムは、第1衣類処理装置10と第2衣類処理装置20を含む。
【0043】
衣類処理装置10,20は、外観を形成するキャビネット11,21と、キャビネット11,21の内部に衣類を収容できる処理室12,22とを備える。また、処理室12,22を外部と隔離したり、または開放したりすることができるようにキャビネット11,21の前面に設置されたドア13,23と、処理室12,22の一側に設置され、衣類が掛けられるハンガー15,25とを含む。本発明に係る衣類処理装置10,20は、底面に衣類を置くのではなく、上部又は側部に衣類を掛けることができることを特徴とする。
【0044】
処理室12,22は、収容された衣類に熱風やスチームを加えて衣類の物理的または化学的性質が変わるように処理する空間である。すなわち、熱風を加えて衣類を乾燥させたり、スチームを用いて衣類に生じたシワを伸ばしたりすることができる。また、芳香剤を噴射して衣類から香りがするように処理したり、静電気防止剤を噴射して衣類で静電気が起こることを防止したりするなどの多様な方法で衣類処理が行われる空間である。
【0045】
ハンガー15,25は、服を掛ける衣服ハンガー18、28を掛けられることができるように一般的に棒状に構成されるが、これに限定されない。本発明のハンガー15,25は、衣類処理の効果を高めるために振動が加えられる。処理室12,22の一側に位置する駆動部は、モータの回転力をプーリなどを用いて一軸方向または2以上の軸方向に揺れる振動運動に変換する。ハンガー15,25の振動運動は、衣類のシワを伸ばす効果を増大させ、スチームと熱風が衣類にさらによく染み込むように助ける。
【0046】
振動を加えることができるハンガー15,25の構造をより具体的に説明する。図2及び図3は、振動を加えることができるムービングハンガー50の構造を示すものであって、図1の第1ハンガー15と第2ハンガー25の両方に適用可能な振動ハンガー50である。
【0047】
図2は、ムービングハンガー50の構成を示す斜視図で、図3は、ムービングハンガー50の分解斜視図である。
【0048】
図2及び図3を参照すると、ムービングハンガー50は、衣服ハンガー200に掛けられた衣類を支持するためのハンガーバー250と、ハンガーバー250の両端を支持する支持部280とを含む。ハンガーバー250には、衣服ハンガー200が掛けられる場合に位置を固定する溝251が多数備えられる。支持部280は、ムービングハンガーフレーム213に連結されて支持され、ムービングハンガーフレーム213は、キャビネット11,21の内部の天井の上側に備えられ、外部から見えないように備えられる。ハンガーバー250の両端部には支持部リブ254を備え、支持部リブ254が支持部280の端部を覆いながら連結される。
【0049】
したがって、本発明による衣類処理装置は、収納される衣類が衣服ハンガーに掛けられた状態であるので、リフレッシュは勿論であり、衣類の乾燥効率においても従来の衣類処理装置に比べて格段に優れた効果を期待できる。
【0050】
一方、ムービングハンガー50は、モータ230と、モータ230から提供される回転運動をハンガーバー250の水平方向の直線運動に変換するための動力変換部260と、モータ230から提供される動力を動力変換部260に伝達する動力伝達部240と、を含む。
【0051】
動力伝達部240は、モータ230に備えられる主動プーリ241と、主動プーリ241とベルト243で連結される従動プーリ242と、従動プーリ242の中心に結合する回転軸244と、を含むように備えられることができる。回転軸244は、ムービングハンガーフレーム213に備えられるベアリングハウジング270の内部に回転可能に備えられる。
【0052】
ハンガーバー250は、その長手方向と直交するスロット252をさらに含むように備えられることが好ましい。具体的に、ハンガーバー250の上部にスロットハウジング253を備え、スロットハウジング253の略中央部にスロット252を備える。また、動力変換部260は、スロット252に挿入されるスロット挿入部263、回転軸244に結合する軸結合部261、及びスロット挿入部263と軸結合部261とを連結させる回転アーム262を含むように備えられることができる。動力変換部260は、外部から見えないようにカバー214により覆われ、カバー214は、ムービングハンガーフレーム213とスロットハウジング253との間に備えられる。
【0053】
上記のような構成において、モータ230が回転すると従動プーリ242が回転するようになるので、従動プーリ242に結合された回転軸244も回転し、スロット挿入部263は、所定の直径を有する円運動をする。
【0054】
一方、ハンガーバー250に備えられたスロット252は、ハンガーバー250の長手方向と直交するように備えられ、さらに、その長さがスロット挿入部263の回転軌跡の直径よりも長いように備えられる。よって、スロット252は、スロット挿入部263が円運動をしても、水平方向に直線運動をする。したがって、スロット252に結合されたハンガーバー250は水平方向に直線運動をする。
【0055】
一方、処理室12,22内へ熱風及びスチームのうち少なくとも一つを供給するための空気供給装置40または水分発生装置30を備えた機械室26が処理室22の一側に備えられる。図1では、機械室26は第2衣類処理装置20にのみ備えられたものを示しているが、これに限定されず、第1衣類処理装置10にのみ備えられたり、または第1衣類処理装置10と第2衣類処理装置20の両方に備えられたりしてもよい。一方の衣類処理装置20にのみ機械室26が備えられた場合には、他方の衣類処理装置にダクトなどを通じてスチーム及び熱風を供給するように連結される。
【0056】
機械室26は、好ましくは、処理室22の下に位置し、内部に空気供給装置40及び水分発生装置30などが位置する。このように、機械室26が処理室22の下方に位置する理由は、処理室22に供給される熱風及びスチームなどは上昇しようとする性質を有するので、機械室26が下部に位置し、上部に向かって熱風及びスチームを供給することが好ましいためである。
【0057】
図4は、機械室26の内部の構成を概略的に示す斜視図である。機械室26の内部構成を示すために、便宜上、図4においてキャビネット21は、その骨格を形成するフレーム21’のみを示した。また、図4では、説明の便宜のために、空気供給装置40、水分発生装置30を含んだ主要構成要素のみを示し、主要構成要素を連結する配管ラインは示していない。
【0058】
図4を参照すると、機械室26の内部には、処理室12,22に空気または熱風を供給する空気供給装置40が位置する。
【0059】
本発明の空気供給装置に該当するヒートポンプ42は、冷媒が循環する蒸発器44、圧縮機46、凝縮器48及び膨張弁(図示せず)を備え、これによって空気を除湿して加熱するようになる。
【0060】
すなわち、蒸発器44で冷媒が蒸発しながら周辺空気の潜熱を吸収することによって、空気を冷却させて空気中の水分を凝縮させて除去するようになる。また、圧縮機46を経て凝縮器48で冷媒が凝縮される場合に周辺空気に向かって潜熱を放出することによって、周辺空気を加熱するようになる。したがって、蒸発器44と凝縮器48が熱交換器の機能をすることになり、機械室26に流入した空気は、蒸発器44と凝縮器48を経て除湿及び加熱されて処理室12,22に供給される。
【0061】
このように、ヒートポンプ42により加熱された空気は、従来の電気式ヒータなどを使用して加熱された空気に比べて、温度は多少低いことがあるが、別途の除湿装置を使用せずに空気を除湿できるようになる。したがって、ヒートポンプ42により処理室12,22へ再び供給される空気は、相対的に「低温乾燥空気」に該当する(ここで、「低温」とは、絶対的に温度が低いことを意味するのではなく、加熱された空気に該当するが、従来の加熱空気に比べて相対的に温度が低いという意味として使われる)。
【0062】
本発明の一実施例に係る衣類処理装置は、低温乾燥空気を供給することによって、衣類のリフレッシュまたは乾燥を行う場合に、高温により衣類に変形又は損傷などが生じることを防止できる。結局、本発明の一実施例に係る衣類処理装置においてヒートポンプ42により供給される空気は、従来の衣類処理装置の熱風に比べて温度は低いが、別途の除湿装置なしに除湿された空気を供給することになるので、衣類を容易に乾燥させてリフレッシュすることが可能になる。
【0063】
具体的に、機械室26の前端の上部には、処理室12,22の空気が機械室26の内部へ流入する空気流入口41A(図4参照)が形成され、空気流入口41Aと蒸発器44、凝縮器48及びファンを連結する流入ダクト49によって空気が流動する流路を形成するようになる。流入ダクト49により空気流入口41Aを通じて機械室26へ流入された空気は、ヒートポンプ42を通過しながら除湿及び加熱され、ファンにより排出ダクト43及び空気排出口41Bを通じて再び処理室12,22に供給される。
【0064】
ここで、図示してはいないが、空気流入口41Aには、好ましくは、フィルタが備えられることができる。空気流入口41Aにフィルタを備えることによって、処理室12,22から機械室26へ流入される空気中に含まれ得る各種異物などをろ過して、新鮮な空気のみを処理室12,22へ供給することが可能になる。
【0065】
一方、機械室26には、処理室12,22に水分、ミストまたはスチーム(以下、「スチーム」という)を選択的に供給する水分発生装置30を備える。
【0066】
水分発生装置30は、内部に水を加熱するヒータ(図示せず)を備え、水を加熱してスチームを生成して処理室12,22へ供給する。水分発生装置30へ水を供給する水供給源としては、外部の蛇口などを使用したり、または機械室26の一側に提供される水供給タンク(図示せず)を使用したりしてもよい。
【0067】
また、水分発生装置30で生成されたスチームは、スチームホース36及びスチームノズル(図1及び図2参照)を通じて処理室12,22へ供給される。この場合、スチームホース36に沿ってスチームが移動する途中にスチームの温度が下がったり、またはスチームが凝縮したりすることを防止するために、スチームホース36の長さは短いほど好ましい。したがって、機械室26が処理室12,22の下方に位置する場合に、スチームノズルは機械室26の上部、すなわち、処理室12,22の下部を通じてスチームを供給することが好ましい。
【0068】
また、機械室26の背面部には循環ファン(図示せず)を備えることができる。循環ファンは、機械室26の外部の空気を機械室26の内部へ供給することによって、前述したヒートポンプ42及び水分発生装置30が駆動され、機械室26の内部の温度が過度に上昇することを防止する。
【0069】
多重衣類処理システムは、それぞれ独立した空間で衣類処理が行われるが、ハンガー15,25が振動する場合、図5に示されたように同時に振動が発生すると振動が増幅し得る。
【0070】
図6を参照すると、第1衣類処理装置10の振動態様と第2衣類処理装置20の振動態様が示されている。それぞれ所定の振幅A、Bを持って振動する。この振動の位相が同位相となって、図7に示されたように増幅されると、騷音が大きくなり、衣類処理装置に及ぼす衝撃が大きくなるため、衣類処理装置の故障を起こすことがある。
【0071】
本発明は、このように同時に第1衣類処理装置10と第2衣類処理装置20が作動する場合、このような振動が増幅されることを防止するための多重衣類処理システムの制御方法に関する。
【0072】
多重衣類処理システムは、第1ハンガーと第2ハンガーの振動を制御する制御部を含む。以下説明される多重衣類処理システムの制御方法において、第1ハンガーと第2ハンガーの振動周波数及び振幅の制御は、制御部により行われる。
【0073】
図8を参照すると、本発明の多重衣類処理システムの駆動方法を示すフローチャートが示されている。
【0074】
まず、第1衣類処理装置10の第1ハンガー15と第2衣類処理装置20の第2ハンガー25が同時に動作するか否かを判断する(S100)。同時に作動する場合、すなわち、第1衣類処理装置10の第1ハンガー15と第2衣類処理装置20の第2ハンガー25とが同時に駆動される場合、各ハンガー15,25の振動周波数が同一であるか否かを判断する(S200)。振動周波数は、ハンガーを駆動するモータ230の振動周波数及び周期と関連があり、振動周波数が同一であると振動周波数の周期が同一であるため振動が増幅し得る。ハンガーの振動周波数は、振動周波数及び周期と関連があり、同一の振動周波数で振動するハンガーは、周期及びモータの振動周波数が同一である。図6及び図7に示されたハンガー15,25の周期は2xとして同一であり、振動周波数も同一である。
【0075】
第1衣類処理装置10の第1ハンガー15の振動と第2衣類処理装置20の第2ハンガー25の振動の位相が、図6及び図7に示されたように、振動方向が同一で、二つの振動が加わって振幅が増加する場合を同位相といい、逆に、周期は同一であるが振動方向が反対である場合を逆位相という。同位相である場合、振動の増幅の程度が激しくなり、騷音及び衣類処理装置10,20に加えられる衝撃が問題になる。逆に、逆位相である場合、振動が相殺されて振幅が小さくなるので、むしろ一つのハンガーが振動する時よりも、振動が相殺されて騷音が減ることができる。
【0076】
したがって、第1ハンガー15と第2ハンガー25の振動周波数が同一である場合、第2ハンガー25の振動位相が第1ハンガー15の振動位相と逆位相となるように第2ハンガー25の駆動を制御する逆位相制御を行う(S300)。
【0077】
逆位相制御は、多様な方法で行われることができ、図9乃至図11は、振動周波数が同一である場合、すなわち、周期が同一である場合に多重衣類処理システムを制御する方法を示すグラフである。
【0078】
図9及び図11を参照すると、振動の初期には同位相であったが、逆位相となるように制御して、後半(T2又はT5地点の以後)には位相が互いに反対、すなわち、逆位相となる。特に、第1ハンガー15と第2ハンガー25の振幅が同一であるように制御(T3又はT5地点の以後)すると、全体の振動は完全に相殺される効果がある。
【0079】
より具体的に説明すると、図9に示されたように、第2ハンガー25の振動位相が第1ハンガー15の振動位相と逆位相となるまで第2ハンガー25の動作を遅延させて逆位相となるようにすることができる。すなわち、第2ハンガー25を一定時間停止させた後、第1ハンガー15と第2ハンガー25の位相が反対になる時点で第2ハンガー25の振動を再開することができる。
【0080】
例えば、図9に示されたように、開始時に同位相であった場合、半周期xを遅延させればよい。図10に示されたように、位相が同位相ではなく少しずれた場合、遅延時間がwとして差があるだけで、図9のように逆位相となるまで第2ハンガー25の動作を遅延させて逆位相となるようにする。
【0081】
更に他の方法として、逆位相制御は、図11に示されたように、第2ハンガー25の振動周波数を一時的に変化させて、第1ハンガー15の振動位相と逆位相となるように、第2ハンガー25の駆動を制御する方式で行うことができる。このような逆位相制御は、第1ハンガー15及び第2ハンガー25のうち少なくとも一つの振動周波数を変化させる周波数変換ステップと、第1ハンガー15と第2ハンガー25の周波数を一致させる周波数同期化ステップと、を含むことができる。以下では、説明の便宜のために第2ハンガー25の周波数を変換させることを例として説明するが、二つのハンガーの周波数を全て変換させることができるのは勿論である。
【0082】
振動周波数を小さくすると周期が増えてしまい、図11に示されたように、周期が2xから2yに増える。一定の周期が反復された後に、第1ハンガー15と第2ハンガー25の振動方向が互いに反対になる瞬間(T2又はT5地点)から再び振動周波数を同一にすると、逆位相状態で振動するようになるので、全体の振動が最小になるように制御することができる。
【0083】
より具体的に、図11を参照すると、周波数変換ステップが行われる時点は、第1ハンガー15と第2ハンガー25の振動周期が同一に終了する時点(図11の開始時点)において行われることが好ましい。なお、周波数変換ステップが行われる時点において第1ハンガー15と第2ハンガー25の位相が互いに反対である場合には、第2ハンガー25の振動周波数を第1ハンガー15の振動周波数の(2n+1)/2に変換させることができる。また、周波数変換ステップが行われる時点において第1ハンガー15と第2ハンガー25の位相が互いに同一である場合には、第2ハンガー25の振動周波数を第1ハンガー15の振動周波数のnに変換させることができる。ここで、nは、0または自然数を意味する。
【0084】
周波数変換ステップの後には周波数同期化ステップが行われる。このとき、周波数同期化ステップは、第1ハンガー15と第2ハンガー25の位相が互いに反対であり、振動周期が同一に終了する時点(T5)において行われることが好ましい。すなわち、周波数変換ステップを経ると、一定時間が経過した後、第1ハンガーと第2ハンガーの振動周期が同一の時点(T5)で終了するようになる。このように、第1ハンガー15と第2ハンガー25の振動周期が同一に終了する時点において、第1ハンガー15と第2ハンガー25の位相が互いに反対になる時点で周波数同期化ステップが行われる。したがって、第1ハンガー15と第2ハンガー25は逆位相に制御されることができる。この方法も必ず最初に同位相でなくても適用可能である。一方、第1ハンガー15と第2ハンガー25の振幅が異なる場合、二つのハンガーの振幅を一致させる振幅同期化ステップがさらに行われることができる。振幅同期化ステップは、逆位相制御ステップの前又は後に行われることができ、好ましくは、逆位相制御ステップの後に行われることができる。
【0085】
一方、第1ハンガー15と第2ハンガー25の振動周波数が同一でない場合、第2ハンガー25の振動位相が第1ハンガー15の振動位相と同位相とならないように第2ハンガー25を制御することを特徴とする同位相防止ステップを行う(S400)。
【0086】
同位相防止制御ステップ400は、第1ハンガー15及び第2ハンガー25のうち少なくとも一つの振動周波数を変化させて、第1ハンガー15及び第2ハンガー25の振動周波数を一致させる周波数同期化ステップを含むことができる。周波数同期化ステップは、第1ハンガーと第2ハンガーの振動周期が同一に終了する時点に行われることが好ましい。
【0087】
図12は、本発明の多重衣類処理システムの駆動方法の同位相防止ステップによる実施例を示したもので、初期には第1ハンガー15と第2ハンガー25の振動周波数が同一でないので同位相防止制御ステップ(S400)が行われる。
【0088】
本発明の一実施例による場合、同位相防止制御ステップ(S400)は、周波数同期化ステップと第2ハンガーの振動を一定時間停止させる遅延ステップとを含むことができる。
【0089】
周波数同期化ステップは、第1ハンガーと第2ハンガーの振動周期が同一に終了する時点において行われることが好ましい。
【0090】
図12のように、周波数同期化ステップが行われる時点T7で第1ハンガー15と第2ハンガー25の位相が互いに同一である場合に、遅延ステップにおいて第2ハンガーの振動は(2n+1)/2周期の間、停止することが好ましい。ここで、nは、0又は自然数を意味する。一方、周波数同期化ステップが行われる時点において第1ハンガーと第2ハンガーの位相が互いに反対である場合には、遅延ステップは省略できる。
【0091】
図12を参照すると、同位相制御ステップは、究極的に逆位相制御ステップと同じ結果を得るためのステップであって、まず、第2ハンガー25の振動周波数を変化させて、第1ハンガー15の振動周波数と一致させ(T7〜T8の区間)、第2ハンガー25の振動位相が第1ハンガー15の振動位相と逆位相となるように第2ハンガー25の駆動を遅延させる(T8の以後)。図12を参考すると、第2ハンガー25の振動を半周期遅延させて逆位相となるように制御して、振動を相殺させる。
【0092】
一方、図13を参照すると、周波数同期化ステップが行われる時点(T9)で第1ハンガー15と第2ハンガー25の位相が互いに反対である。この場合、遅延ステップは省略できる。すなわち、第2ハンガー25の振動が第1ハンガー15の振動と反対方向に振動されるとき(T9)、第1ハンガーと第2ハンガーの振動周波数を同一にして、第1ハンガーの位相と第2ハンガーの位相が逆位相となるように制御できる。
【0093】
同位相防止制御ステップ(S400)も、第1ハンガー15の振幅と第2ハンガー25の振幅が異なると、振幅が同一になるように第2ハンガー25を制御する振幅同期化ステップをさらに含むことで、振動相殺効果を高めることができる。
【0094】
上記のような多重衣類処理システムの制御方法によれば、ハンガーが振動する時に発生する騷音を最小化することができ、振動が大きくなることによって多重衣類処理システムの寿命が短縮されることを防止することができる。
【符号の説明】
【0095】
10 第1衣類処理装置
20 第2衣類処理装置
11,21 キャビネット
12,22 処理室
13,23 ドア
15,25 ハンガー
26 機械室
18,28 衣服ハンガー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容された衣類に振動を加えるハンガーを備えた第1衣類処理装置及び第2衣類処理装置を含む多重衣類処理システムの駆動方法において、
前記第1衣類処理装置の第1ハンガーと前記第2衣類処理装置の第2ハンガーが同時に駆動され、前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周波数が同一である場合、前記第2ハンガーの振動位相が第1ハンガーの振動位相と逆位相となるように制御する逆位相制御ステップを含む、多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項2】
前記逆位相制御ステップは、前記第2ハンガーの振動位相が前記第1ハンガーの振動位相と逆位相となるまで前記第2ハンガーの動作を遅延させることを特徴とする、請求項1に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項3】
前記逆位相制御ステップは、
前記第2ハンガーの振動周波数を変化させる周波数変換ステップと、
前記第1ハンガーと第2ハンガーの周波数を一致させる周波数同期化ステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項4】
前記周波数変換ステップは、前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周期が同一に終了する時点において行われることを特徴とする、請求項3に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項5】
前記周波数変換ステップにおいて、前記第2ハンガーの振動周波数は、前記第1ハンガーの振動周波数の(2n+1)/2(nは0または自然数)であることを特徴とする、請求項4に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項6】
前記周波数同期化ステップは、前記第1ハンガーと第2ハンガーの位相が互いに反対であり、振動周期が同一に終了する時点において行われることを特徴とする、請求項3に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項7】
前記第1ハンガーの振幅と前記第2ハンガーの振幅とを一致させる振幅同期化ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項8】
前記第1ハンガーと前記第2ハンガーの振動周波数が同一でない場合、前記第2ハンガーの振動位相が前記第1ハンガーの振動位相と同位相とならないように前記第2ハンガーを制御する同位相防止制御ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項9】
前記同位相防止制御ステップは、前記第1ハンガー及び第2ハンガーのうち少なくとも一つの振動周波数を変化させて、第1ハンガー及び第2ハンガーの振動周波数を一致させる周波数同期化ステップを含むことを特徴とする、請求項8に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項10】
前記周波数同期化ステップは、前記第1ハンガーと第2ハンガーの振動周期が同一に終了する時点において行われることを特徴とする、請求項9に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項11】
前記周波数同期化ステップが行われる時点において前記第1ハンガーと第2ハンガーの位相が同一である場合、前記第2ハンガーの振動を(2n+1)/2(nは0または自然数)周期の間、停止する遅延ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項12】
前記第1ハンガーの振幅と前記第2ハンガーの振幅とを一致させる振幅同期化ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。
【請求項13】
前記各ハンガーの振動周波数は、ハンガーの動きを感知するホールセンサを用いて測定することを特徴とする、請求項1に記載の多重衣類処理システムの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−81782(P2013−81782A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225269(P2012−225269)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(502032105)エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド (2,269)
【Fターム(参考)】