説明

多重通信制御装置

【課題】容易にアドレスを設定でき、且つ部品の品番管理を簡素化する。
【解決手段】電子回路1としてアドレス毎に異なる部品を搭載することなく、その電子回路1が実装される側に突起部品15を形成し、この突起部品15で電子回路1内の自律復帰型の接点3a〜3dの開閉状態を設定し、その開閉状態をアドレス認識回路5で認識する。電子回路1側で予めアドレスを設定する必要がないことから、電子回路1としての部品の品番管理が楽になる。また、アドレス設定のための作業工数が少なくて済む利点がある。さらに、多重通信制御装置の搭載位置側にアドレスを設定できるので便利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部配線に接続されると共に、内部に電子回路が実装された多重通信制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コネクタやアクチュエータに電子回路を内蔵し、その電子回路内の多重通信回路で多重通信が行われている。この場合、コネクタが接続されるアクチュエータや、回路が搭載されているアクチュエータについて、制御信号を送信して制御を行う。このようなアクチュエータ内蔵電子回路やコネクタ内蔵電子回路では、トポロジとしてパラレル接続がなされているものが多い。
【0003】
このようにパラレル接続された多重通信ノードにおいては、それぞれのノードを識別するためのアドレスを各ノードに割り振る必要がある。
【0004】
この場合、それぞれのノードにアドレスを設定するために、従来では、搭載している電子部品をアドレス毎に異なるものにしていた。例えば、それぞれ異なるユニークなアドレスをメモリやマイコン内に予め記憶させておくことで、個々のメモリやマイコンを識別できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異なるユニークなアドレスをメモリやマイコン内に予め記憶させておく場合は、アドレスが異なる毎に部品の種類が異なることになるため、多重通信回路を搭載しているアクチュエータやコネクタの品番が増加してしまい、部品の種類が増大して管理が煩雑となって、管理コストの増大を招いてしまう。
【0006】
そこで、本発明の課題は、容易にアドレスを設定でき、且つ部品の品番管理を簡素化し得る多重通信制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、外部配線に接続されると共に、内部に電子回路が実装された多重通信制御装置であって、機械的に開閉するとともに、電子回路が実装される部位に形成された突起部品により押圧されて閉状態または開状態となる複数の接点と、前記接点の開閉の組合せを認識し、その組合せをアドレスに変換するアドレス認識回路とを備えるものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多重通信制御装置であって、前記接点が自律復帰型である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の多重通信制御装置であって、前記突起部品が、前記電子回路が実装される所定の取付板に形成されるものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の多重通信制御装置であって、前記突起部品が、前記外部配線を位置決めするためのガイド部品に形成されるものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の多重通信制御装置であって、前記外部配線に接続される所定の電装ユニットに内蔵されるものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の多重通信制御装置であって、所定の電装ユニットを前記外部配線に接続するためのコネクタに内蔵されるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜請求項6に記載の発明の多重通信制御装置は、電装ユニット(請求項5)やコネクタ(請求項6)等に内蔵されて、各電子回路の接点が、所定の取付板(請求項3)やガイド部品(請求項4)に形成される突起部品により押圧されて閉状態または開状態となり、この各接点の開閉の組合せをアドレス認識回路で認識してアドレスに変換するので、各電子回路としてアドレス毎に異なる部品を搭載することなくアドレスを設定できる。したがって、電装ユニット(請求項5)やコネクタ(請求項6)等の電子回路としての部品の品番管理が楽になる。この場合、請求項2のように、接点が自律復帰型であると便利である。
【0014】
また、電子回路が実装される側に突起部品を形成する場合、例えば樹脂製のパッケージ部品やガイド部品に突起部品を形成するだけでいいので、パッケージ部品やガイド部品の金型で突起部品を形成することができ、突起部品を形成するための特別の工程を要しないため容易に突起部品を形成できる。したがって、例えばジャンパーピンを設定するなどしてアドレスを設定する場合に比べて、アドレス設定のための作業工数が少なくて済む利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一の実施形態に係る多重通信制御装置の概要を示す回路図、図2及び図3はその一部を示す模式図である。
【0016】
この多重通信制御装置は、例えば自動車内に実装され、例えば、HVACに取り付けられるサーボモータを制御する制御ユニットや、その他の部位に取り付けられるセンサユニット、あるいは、通信におけるノードとしてアドレスが付与される通信機能付きコネクタ装置等の所定の装置ユニットに適用されるもので、図1〜図3の如く、外部配線に接続される内蔵の電子回路1内に、機械的に開閉する複数の接点3a〜3dとアドレス認識回路5とを備え、接点3a〜3dが外力により開閉するよう構成され、この接点3a〜3dの開閉の組合せをアドレス認識回路5で認識して、その組合せをアドレスに変換するようになっている。
【0017】
各接点3a〜3dは、自律復帰型の押し式スイッチであり、図1の如く、各接点3a〜3dの一端が接地されるとともに、他端がプルアップ抵抗7a〜7dにそれぞれ接続され、各接点3a〜3dの開閉により当該各接点3a〜3dの他端の電位が変化するようになっている。
【0018】
具体的に、各接点3a〜3dは、例えば図2及び図3の如く、板ばね式の金属片が使用され、当該金属片の先端部が略楔形に折曲されて、凸部10が形成され、この凸部10が接地側の第1の接続部位11に接続可能となっている。
【0019】
また各接点3a〜3dの基部側は、プルアップ抵抗7a〜7dに接続された第2の接続部位13に接続されており、自然状態で図2のように開状態となる一方、各接点3a〜3dの先端部付近に図3のように外部の突起部品15が当接したときに、当該突起部品15の押圧力により各接点3a〜3dの基端部が弾性変形して、凸部10が第1の接続部位11に当接して閉状態になるように構成されている。
【0020】
ここで、各接点3a〜3dの先端部付近に当接する突起部品15は、この電子回路1が取り付けられる相手側の表面に設置されており、例えば、アクチュエータやコネクタを取り付けるためのケースの表面やハーネスを保護するための保護ガイド等に一体的に形成されている。即ち、全ての接点3a〜3dが自然状態で開状態になるため、本来的には電子回路1に予めアドレスの設定が行われているわけではないが、電子回路1が取り付けられる位置に予め突起部品15が形成されることにより、その取付位置に対応するアドレスを各接点3a〜3dの開閉の組合せにより設定することになる。
【0021】
アドレス認識回路5は、例えば通信機能を有するICが適用される。また、アクチュエータの制御や通信プロトコルの制御等、多重通信制御装置として必要な様々な機能が併せて搭載されている。
【0022】
このように、この多重通信制御装置では、各電子回路1の内部にアドレスを予め設定する場合に比べて、接点3a〜3dや突起部品15等の部品の増加を伴うが、電子回路1としてアドレス毎に異なる部品を搭載することなく、その電子回路1が実装される側に突起部品15を形成することでアドレスの設定を行うので、電子回路1としての部品の品番管理が楽になる。
【0023】
また、多重通信制御装置の搭載位置側にアドレスを設定できるので便利である。
【0024】
さらに、電子回路1が実装される側に突起部品15を形成する場合、例えば樹脂製のパッケージ部品やガイド部品に突起部品15を形成するだけでいいので、パッケージ部品やガイド部品の金型で突起部品15を形成することができ、突起部品15を形成するための特別の工程を要しないため容易に突起部品15を形成できる。したがって、例えばジャンパーピンを設定するなどしてアドレスを設定する場合に比べて、アドレス設定のための作業工数が少なくて済む利点がある。
【0025】
<実施例1>
図4は、アクチュエータユニット21a〜21cの内部に多重通信制御装置が搭載された場合の実施例を示す模式図である。この実施例では、内部に多重通信制御装置が設置されたアクチュエータユニット21a〜21cが、取付板23の上面に取り付けられる。この場合、アクチュエータユニット21a〜21cと取付板23との固定は、接着材や溶接を行っても良いし、あるいは、図示しないネジ等の固定部品を用いて固定してもよい。
【0026】
各アクチュエータユニット21a〜21cは、図5のように、下面開放または開放孔が形成されたケース25内に、電子回路1が形成された回路基板27が収納されてなり、この回路基板27の下面に、上記した接点3a〜3dが形成されている。板ばね状の接点3a〜3d及び電子回路1の回路構成は、図1に示した通りである。尚、図5においてICであるアドレス認識回路5が図示省略されている。そして、各アクチュエータユニット21a〜21cは、複数の電線が束ねられてなるワイヤーハーネス(外部配線)22を通じて、自動車内ネットワーク(車内LAN)や電源に接続される。
【0027】
また、取付板23の上面には、接点3a〜3dを押圧して閉状態にするための突起部品15が形成されている。尚、図5においては、四個の接点3a〜3dの全てを閉状態にするため、四個の突起部品15が取付板23に形成された例を示しているが、図4のように、アドレスの設定に応じて、四個の突起部品15のうちのいくつかが省略されたりして、その突起部品15の形成位置及び形成個数等によりアクチュエータユニット21a〜21c個々のアドレスがユニークに設定されるようになっている。
【0028】
かかる実施例1では、アクチュエータユニット21a〜21cを取付板23に固定するだけで、取付板23の上面に選択的に形成された突起部品15のみがアクチュエータユニット21a〜21c内の回路基板27の下面に形成された接点3a〜3dを押圧してこれを閉状態とする。したがって、取付板23上の突起部品15の有無の組合せにより、各アクチュエータユニット21a〜21cのアドレスを容易に設定できる。したがって、アクチュエータユニット21a〜21cの品番管理が楽になるとともに、アドレスを容易に設定できる。
【0029】
<実施例2>
図6及び図7は、実施例2として、例えば自動車において、ある部位に設置されたアクチュエータ等の複数の電装ユニット31a,31bにワイヤーハーネス33を接続するための多重通信回路内蔵コネクタ35a,35bを示している。
【0030】
この実施例では、複数の電装ユニット31a,31bが取付板23の下面側に固定されており、この電装ユニット31a,31bにコネクタ35a,35bを挿入して嵌合するための嵌合孔37がそれぞれ形成されている。
【0031】
また、各コネクタ35a,35bの内部には、図1に示した多重通信制御装置の電子回路1が形成され、この多重通信制御装置の電子回路1により、コネクタ35a,35b同士が相互に通信を行うようになっている。望ましくは、各コネクタ35a,35bによって通信プロトコルの物理層及びデータリンク層等が定義される。
【0032】
そして、各コネクタ35a,35bの下面側には、図2及び図3に示した板ばね状の接点3a〜3dが取り付けられている。この接点3a〜3dの構成は上述の通りであるため、その説明を省略する。
【0033】
また、取付板23の上面の嵌合孔37に隣接する領域には、各コネクタ35a,35b内の接点3a〜3dを押圧して閉状態にするための突起部品15が形成されている。
【0034】
かかる実施例2では、コネクタ35a,35bを取付板23に固定するだけで、取付板23の上面に選択的に形成された突起部品15のみがコネクタ35a,35b内の接点3a〜3dを押圧してこれを閉状態とする。したがって、取付板23上の突起部品15の有無の組合せにより、各コネクタ35a,35b及び各電装ユニット31a,31bのアドレスを容易に設定でき、コネクタ35a,35b及び各電装ユニット31a,31bの品番管理が楽になるとともに、これらのコネクタ35a,35bのアドレスを容易に設定できる。
【0035】
<実施例3>
図8は、実施例3として、例えば自動車内に搭載されるアクチュエータや電子制御ユニット(ECU)等の所定の電装ユニット40a,40bにワイヤーハーネス42を接続するための多重通信回路内蔵コネクタ41a,41bを示している。
【0036】
この実施例では、ワイヤーハーネス42を位置決めするためのガイド部品44に沿ってワイヤーハーネス42が敷設される。このガイド部品44は、樹脂等が用いられて細長状に形成され、底壁44aと、その両側の側壁44b,44cとを有して上面開放の溝形状に形成される。そして、側壁44bの一部には、このコネクタ41a,41bが嵌入される篏入孔46が形成されている。
【0037】
また、各コネクタ41a,41bの内部には、図1に示した多重通信制御装置の電子回路1が形成され、この多重通信制御装置の電子回路1により、コネクタ41a,41b同士が相互に通信を行うようになっている。望ましくは、各コネクタ41a,41bによって通信プロトコルの物理層及びデータリンク層等が定義される。さらに、各コネクタ41a,41bの一部には、電装ユニット40a,40bに着脱自在に接続するための雄端子48が取り付けられている。
【0038】
そして、各コネクタ41a,41bの下面側には、図2及び図3に示した板ばね状の接点3a〜3dが取り付けられている。この接点3a〜3dの構成は上述の通りであるため、その説明を省略する。
【0039】
また、ガイド部品44の底壁44aの上面で、各コネクタ41a,41bが取り付けられる位置には、各コネクタ41a,41b内の接点3a〜3dを押圧して閉状態にするための突起部品15が形成されている。
【0040】
かかる実施例3では、コネクタ41a,41bをガイド部品44に固定するだけで、ガイド部品44の底壁44aの上面に選択的に形成された突起部品15のみがコネクタ41a,41b内の接点3a〜3dを押圧してこれを閉状態とする。したがって、ガイド部品44上の突起部品15の有無の組合せにより、各コネクタ41a,41bのアドレスを容易に設定でき、各コネクタ41a,41b及び各電装ユニット40a,40bの品番管理が楽になるとともに、これらのコネクタ41a,41b及び各電装ユニット40a,40bのアドレスを容易に設定できる。
【0041】
尚、上記各実施形態では、各接点3a〜3dを押圧したときにこれが閉状態になる例について説明したが、各接点3a〜3dを押圧したときにこれが開状態になるよう構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一の実施形態に係る多重通信制御装置の電子回路を示す回路図である。
【図2】本発明の一の実施形態に係る多重通信制御装置の一部を示す模式図である。
【図3】本発明の一の実施形態に係る多重通信制御装置の一部を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例1に係る多重通信制御装置を示す模式図である。
【図5】本発明の実施例1に係る多重通信制御装置を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例2に係る多重通信制御装置を示す模式図である。
【図7】本発明の実施例2に係る多重通信制御装置を示す模式図である。
【図8】本発明の実施例3に係る多重通信制御装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 電子回路
3a〜3d 接点
5 アドレス認識回路
7a〜7d プルアップ抵抗
9 金属片
10 凸部
15 突起部品
21a〜21c アクチュエータユニット
22 ワイヤーハーネス
23 取付板
25 ケース
27 回路基板
31a,31b 電装ユニット
33 ワイヤーハーネス
35a,35b 多重通信回路内蔵コネクタ
40a,40b 電装ユニット
41a,41b 多重通信回路内蔵コネクタ
42 ワイヤーハーネス
44 ガイド部品
46 篏入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部配線に接続されると共に、内部に電子回路が実装された多重通信制御装置であって、
機械的に開閉するとともに、電子回路が実装される部位に形成された突起部品により押圧されて閉状態または開状態となる複数の接点と、
前記接点の開閉の組合せを認識し、その組合せをアドレスに変換するアドレス認識回路と
を備える多重通信制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多重通信制御装置であって、
前記接点が自律復帰型であることを特徴とする多重通信制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の多重通信制御装置であって、
前記突起部品が、前記電子回路が実装される所定の取付板に形成されることを特徴とする多重通信制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の多重通信制御装置であって、
前記突起部品が、前記外部配線を位置決めするためのガイド部品に形成されることを特徴とする多重通信制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の多重通信制御装置であって、
前記外部配線に接続される所定の電装ユニットに内蔵されることを特徴とする多重通信制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の多重通信制御装置であって、
所定の電装ユニットを前記外部配線に接続するためのコネクタに内蔵されることを特徴とする多重通信制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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