説明

多重量子点層を持つ量子点発光素子

【課題】多重量子点層を持つ量子点発光素子を提供する。
【解決手段】基板と、基板上に形成された第1電極と、第1電極上に配された第2電極と、第1電極と第2電極との間に配された第1電荷輸送層と、第1電荷輸送層と第1及び第2電極のうち一つとの間に配された量子点発光層と、量子点発光層とは異なるエネルギーバンドレベルを持って量子点発光層と第1電荷輸送層との間または前記量子点発光層の両側に配された少なくとも一つの量子点内包層とを備える量子点発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子点発光素子に係り、より詳細には、量子点を内包する複数の量子点層を持つ量子点発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(OLED;Organic Light Emitting Device)は、主に低分子の有機素材からなる複数層の薄膜構造を持つが、このようなOLEDを利用した表示装置は、内部薄膜として選択できる物質の種類が多様であり、高純度の薄膜形成が容易であり、高い発光性能を持つ長所がある一方、外部の有害物質との反応を通じる酸化または結晶化の問題点があり、真空蒸着を利用して所定の位置に形成されるので、複雑かつ高コストの成膜工程が要求されるという問題点がある。
【0003】
最近には、量子点(Quantum Dot:QD)の発光特性を利用した発光素子についての研究が活発に進められている。
【0004】
量子点は、ボーア(Bohr)励起子半径よりさらに小さなサイズ、すなわち、数nmサイズの結晶構造を持つ半導体物質であって、量子点内に多くの電子を持つが、自由電子の数は約1ないし100個ほどに制限される。この場合、電子が持つエネルギー準位が不連続的に制限されて、連続的なバンドを形成するバルク状態の半導体とは異なる電気的及び光学的特性を表す。量子点は、そのサイズによってエネルギー準位が変わるため、単純にサイズを変えることによってバンドギャップを調節できる。すなわち、量子点はサイズ調節だけで発光波長を調節できる。
【0005】
量子点を発光層に適用した量子点発光素子(Quantum Dot Light Emitting Device:QD−LED)は、量子点発光層を介して両端に正孔輸送層(Hole Transport Layer;HTL)と電子輸送層(Electron Transport Layer;ETL)とを備える3層構造の素子が基本素子として知られている。関連先行技術には、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−363436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
量子点発光層に付加して、量子点発光層とは異なるエネルギーバンドレベルを持つ量子点内包層を適用して、量子点発光層と正孔輸送層とのエネルギーバンドレベル差を低減させる量子点発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による量子点発光素子は、基板と、前記基板上に形成された第1電極と、前記第1電極上に配された第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配された第1電荷輸送層と、前記第1電荷輸送層と前記第1及び第2電極のうち一つとの間に配された量子点発光層と、前記量子点発光層と前記第1電荷輸送層との間または前記量子点発光層の両側に配され、少なくとも一のエネルギーバンドレベルが前記量子点発光層とは異なるエネルギーバンドレベルを持つようになっている、少なくとも一層からなる量子点内包層と、を備える。
【0009】
前記量子点発光素子は、第2電荷輸送層をさらに備えることができる。前記第1及び第2電荷輸送層のうち一つは正孔輸送層、残りの一つは電子輸送層であり、前記多重量子点の少なくとも一層からなる量子点内包層は前記正孔輸送層上に配され、前記量子点発光層は前記少なくとも一層からなる量子点内包層上に配される。
【0010】
このとき、前記少なくとも一層からなる量子点内包層は、前記量子点発光層と同一なバンドギャップまたは異なるバンドギャップを持つことができる。
【0011】
また、前記少なくとも一層からなる量子点内包層は単一量子点内包層を持ち、前記量子点発光層、量子点内包層、正孔輸送層のエネルギーバンドレベルは、順次に高くなるように配列される。
【0012】
前記少なくとも一層からなる量子点内包層は第1及び第2量子点内包層を備え、前記量子点発光層、第1及び第2量子点内包層、正孔輸送層のエネルギーバンドレベルは、順次に高くなるように配列される。
【0013】
前記少なくとも一層からなる量子点内包層は、前記量子点発光層の両側に配される第1及び第2量子点内包層を備え、前記第1及び第2量子点内包層のバンドギャップは、前記量子点発光層のバンドギャップより大きくなるように形成される。
【0014】
このとき、前記正孔輸送層上に第1量子点内包層、量子点発光層、第2量子点内包層の順に配され、少なくとも前記量子点発光層、第1量子点内包層、正孔輸送層のエネルギーバンドレベルは、順次に高くなるように配列される。
【0015】
前記第1及び第2電荷輸送層は誘電体物質を含み、前記少なくとも一層からなる量子点内包層は、前記量子点発光層の両側に配される第1及び第2量子点内包層を備える。
【0016】
このとき、前記第1及び第2量子点内包層のバンドギャップは、前記量子点発光層のバンドギャップより大きくなるように形成される。
【0017】
前記第1及び第2電荷輸送層のうち一つの上に、第1量子点内包層、量子点発光層、第2量子点内包層の順に配され、前記量子点発光層、第1量子点内包層、前記第1または第2電荷輸送層のエネルギーバンドレベルは、順次に高くなるように配列される。
【0018】
前記第1及び第2電荷輸送層を誘電体物質で形成する場合、量子点発光素子は、前記第1及び第2電極に連結される交流発生器をさらに備える。
【0019】
本発明の実施形態による量子点発光素子の製造方法は、基板を用意するステップと、前記基板上に第1電極を用意するステップと、前記第1電極上に、第1エネルギーバンドレベルを持つ量子点内包層を配するステップと、前記量子点内包層上に、第1エネルギーバンドレベルとは異なる第2エネルギーバンドレベルを持つ量子点発光層を配するステップと、前記量子点発光層上に、第2電極を配するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0020】
量子点発光層に、量子点発光層とは異なるエネルギーバンドレベルを持つ量子点内包層をさらに適用して、量子点発光層と正孔輸送層とのエネルギーバンドレベル差を低減させることができて、既知の正孔輸送層(HTL)を利用する場合にも、量子点発光素子の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】いろいろな輸送層物質とCdSe QDとのエネルギーバンドレベルとを比較して示すグラフである。
【図2】量子点発光素子の一実施形態を概略的に示す断面図である。
【図3】量子点発光素子のバンド構造の例を概略的に示すグラフである。
【図4A】図2の量子点内包層及び量子点発光層の製造過程を概略的に示す図面である。
【図4B】図2の量子点内包層及び量子点発光層の製造過程を概略的に示す図面である。
【図4C】図2の量子点内包層及び量子点発光層の製造過程を概略的に示す図面である。
【図5】量子点内包層と量子点発光層との二重量子点層を持つ時の輝度特性を、量子点内包層なしに量子点発光層で形成された単一量子点層のみを持つ時と比較して示すグラフである。
【図6】量子点内包層と量子点発光層との二重量子点層を持つ時の発光効率特性を、量子点内包層なしに量子点発光層で形成された単一量子点層のみを持つ時と比較して示すグラフである。
【図7A】シリコン基板上にスピンコーティングされ、熱的または化学的に処理された量子点層のHe II UPSスペクトルを示すグラフである。
【図7B】図7Aの点線で表示されたバレンスバンドエッジ領域の拡大グラフである。
【図8】シリコン基板上に形成された量子点層の発光(Elcetroluminescence:EL)強度を測定した結果を示したグラフである。
【図9】量子点発光素子の他の実施形態を概略的に示す図面である。
【図10】図9の量子点発光素子のバンド構造の例を概略的に示す図面である。
【図11】量子点発光素子のさらに他の実施形態を概略的に示す図面である。
【図12】図11の量子点発光素子のバンド構造の例を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。
【0023】
量子点発光素子(Quantum Dot Light Emitting Device:QD−LED)において、現在多く使われるII−VI族半導体量子点、例えば、CdSe、CdTe及び/またはCdSなどを含む量子点は、他のIII−V族量子点や、OLED(Organic Light Emitting Device)用の有機発光物質とは異なり、エネルギーバンドレベルが図1に示したように下にずれている。
【0024】
図1を参照すれば、例えば、一般的な有機高分子発光物質のHOMO(Highest Occupied Molecular level)エネルギーバンドレベルは、約5.0eV前後であるのに対し、CdSe QD(red)のバレンスバンドレベルは約6.8eVである。OLEDや量子点発光素子に使われるほとんどの有機モノマーまたはポリマーの正孔輸送層物質、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(“TPD”)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N−N’−ジフェニル−ベンジジン(“NPB”)、ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(“TFB”)、ポリ(p−フェニレンビニレン)(“PPV”)、ポリN−ビニルカルバゾール(“PVK”)などは、HOMOエネルギーバンドレベルが平均的に約5.2eVほどである。既存のOLEDの場合には、発光層も有機(ポリマー)物質からなっていて、OLEDでは、正孔輸送層(HTL)のHOMOエネルギーバンドレベルと、発光層のHOMOエネルギーバンドレベルとが類似している。したがって、OLEDでは効率的な正孔注入が行われ、したがって、素子の効率も相対的に高い値を持つ。
【0025】
一方、CdSe量子点を利用し、かつOLEDと類似した構造を持つ量子点発光素子は、まだOLED素子ほど良い効率値を示していないが、かかる効率低下の主な理由のうち一つは、正孔輸送層と量子点発光層とのバレンスバンドレベルの相対的に大きいエネルギー差(バンドオフセット)に起因する。バンドオフセットは、両層間のエネルギーバンド位置差をいう。
【0026】
かかるバンドオフセットは、量子点を利用する素子での発光効率の低下だけではなく、ターンオン電圧の上昇、作動電圧の上昇による電力効率の低減などの問題も引き起こす。
【0027】
したがって、量子点発光素子で量子点発光層と正孔輸送層との間のバンドオフセットを低減させて発光素子の性能を改善することができる。
【0028】
ここで開示された実施形態は、量子点発光層に量子点内包層をさらに備える量子点発光素子(OD−LED)の構成を含む。量子点内包層は、量子点発光層とは異なるエネルギーバンドレベルを持ち、電荷輸送層(正孔輸送層(HTL)または電子輸送層(ETL))の間に配される。特に、量子点内包層は、量子点発光層と正孔輸送層とのエネルギー差を低減させて、キャリア注入効率及び光学的拘束(confinement)などを向上させるように設けられる。さらに説明すれば、量子点発光素子は量子点発光層に付加して量子点内包層をさらに備えて、量子点を持つ層を複数層(多重量子点層)に形成し、前記量子点内包層のエネルギーバンドレベルを量子点発光層のエネルギーバンドレベルと異なって形成する。
【0029】
この時、量子点内包層は、後述する実施形態のように量子点発光層として機能するか、電荷輸送層(すなわち、正孔輸送層または電子輸送層)として機能するか、正孔遮断層(HBL:Hole Blocking Layer)または電子遮断層(EBL:Electron Blocking Layer)のようなキャリア拘束層として機能することができる。量子点発光層や電荷輸送層として機能する場合、量子点内包層は、量子点発光層と実質的に同一なバンドギャップを持ってエネルギーバンドレベルのみシフトされるように形成されうる。キャリア拘束層として機能する場合、量子点内包層は、量子点発光層とは異なるバンドギャップ、例えば、さらに大きいバンドギャップを持つように形成されうる。
【0030】
量子点層のエネルギーバンドレベル調整は、量子点の表面交換工程、例えば、表面改質を通じる量子点の表面交換工程により、エネルギーバンドレベルをシフトさせることによって得られる。
【0031】
このように、量子点発光層とは異なるエネルギーバンドレベルを持つ量子点内包層を付加して多重量子点層を構成することによって、量子点発光層と正孔輸送層との間のバンドオフセットを低減させるか、注入された電子と正孔とが量子点発光層内に効果的に制限されるようにすることができる。量子点発光層と正孔輸送層との間のバンドオフセットを低減させるように多重量子点層が構成される場合、正孔と電子との伝達が効率的に行われて、キャリア注入効率及び発光効率が高くなり、量子点発光素子のターンオン電圧と作動電圧とが低くなりうる。多重量子点層が注入された電子と正孔とが量子点発光層内に効果的に制限されるように構成される場合、光学的拘束を向上させることができ、発光効率を高めることができる。
【0032】
図2は、量子点発光素子の一実施形態を概略的に示す断面図である。図3は、量子点発光素子のバンド構造の例を概略的に示す。図3は、図2には図示されていない正孔注入層が加えられた実施形態のバンド構造を概略的に示す。図2及び図3は、量子点発光層と正孔輸送層との間のバンドオフセットを低減させるように、多重量子点層が構成されていることを示す。
【0033】
図2及び図3を参照すれば、量子点発光素子10は、基板12と、基板12上に相異なるエネルギーバンドレベルを持つ量子点発光層18と量子点内包層17とを備える多重量子点層16とを備える。また量子点発光素子10は、量子点発光層18にキャリア(正孔及び電子などの電荷運搬体)を注入するように、外部電源と連結された第1電極14(例えば、アノード電極)及び第2電極22(例えば、カソード電極)を備える。また量子点発光素子10は、前記多重量子点層16と第1電極14との間の第1電荷輸送層、例えば、正孔輸送層15、前記多重量子点層16と第2電極22との間の第2電荷輸送層、例えば、電子輸送層20を備える。図2及び図3は、多重量子点層16が、量子点発光層18、及びこの量子点発光層18と正孔輸送層15との間の量子点内包層17の二重層構造になった例を示す。本実施形態において、前記量子点内包層17は、エネルギーバンドレベルが量子点発光層18と正孔輸送層15との間に位置するように形成され、量子点発光層18と共に量子点発光層として機能するか、前記正孔輸送層15と共に正孔輸送層として機能して、量子点発光層と正孔輸送層との間のバンドオフセットを低減させる。
【0034】
前記基板12としては、透明なガラスや、柔軟性を持つプラスチック基板または類似した特性を持つ他の物質が使用できる。前記プラスチック基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリブテン;ポリブタジエン;ポリメチルペンテンなどのポリアルキルペンテン;ポリ塩化ビニル;トリアセチルセルロース;ポリエーテルスルホン;ポリウレタン;ポリエチレンビニルアセテートなどのポリアルキレンビニルアセテート;イオノマー樹脂;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などのアルキレン−(メタ)アクリル酸共重合体;エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのアルキレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;ポリスチレン;ポリイミド;ポリアミド;ポリアミドイミド;フッ素樹脂;これらの共重合体;及びこれらの混合物からなる群から選択される樹脂からなりうるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記第1電極14は正極(アノード)として使われ、量子点発光素子に正孔を注入できるように、高い仕事関数を持つ物質からなりうる。例えば、前記第1電極14は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、類似した特性を持つ他の物質などの透明酸化物でありうる。前記第1電極14は、スパッタリングなどのドライ蒸着法を通じて基板12上に形成できる。
【0036】
前記第1電極14上に正孔輸送層(HTL)15が位置する。前記正孔輸送層15は、pタイプ半導体物質からなりうる。例えば、前記正孔輸送層15は、PSS[ポリ(スチレンスルホン酸)]誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリメタクリレート誘導体、ポリ(9,9−オクチルフルオレン)誘導体、ポリ(スピロ−フルオレン)誘導体、TPD、NPB、m−MTDATA(トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)−トリフェニルアミン)、TFB、PFB(ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)−コ−N,N−ジフェニル−N,N−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンジン)、poly−TPD、NiO、MoOなどの金属酸化物、MoS、CdTeなどのカルコゲン化物、または類似した特性を持つ他の物質などを挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0037】
かかる正孔輸送層15は、発光素子の寿命を延長し、量子点発光素子10の作動開始電圧であるターンオン電圧を低める機能を行う。特に、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、PSS、PPV、PVK、TFB、PFB、poly−TPDなどのポリマー素材の正孔輸送層15は、低分子の有機素材に比べて、酸素や水分などの有害物質に対して相対的に耐性が強い特性を持ち、結晶化に対する高い抵抗性を持つ。前記正孔輸送層15は、スピンコーティングなどのウェットコーティング法によって形成される。例えば、前記第1電極14上にPPVのポリマー膜を成膜する場合、PPV前駆体ポリマーとメタノール有機溶媒とが含まれた前駆体溶液を第1電極14上にスピンコーティングし、例えば、N2の不活性ガス雰囲気または真空下で、250ないし300℃の硬化温度で3時間熱処理することで、PPV薄膜からなる正孔輸送層15を得ることができる。
【0038】
前記多重量子点層16は、正孔輸送層15上に形成されうる。多重量子点層16をなす量子点内包層17及び量子点発光層18は、それぞれ多数の量子点が単一膜または複数層膜に配列されたものである。ここで前記量子点は、量子拘束効果を持つ所定サイズの粒子をいう。前記量子点は、ほぼ1nmないし10nmほどの直径を持つことができる。
【0039】
本実施形態において、前記量子点内包層17は量子点発光層18と同一エネルギーバンドギャップを持ち、バレンスバンドエネルギーバンドレベルのみ異なって形成されうる。これは後述するように、量子点内包層17を、量子点発光層18に形成される量子点と同じサイズ及び同一材質の量子点が配列されるように形成し、量子点内包層17のバレンスバンドエネルギーバンドレベルが量子点発光層18と異なるように、量子点の表面交換工程を追加することにより形成されうる。前記量子点内包層17が、図2及び図3のように正孔輸送層15と量子点発光層18との間に位置する場合、量子点内包層17の量子点のバレンスバンドレベルは、量子点発光層18の量子点のバレンスバンドレベルと正孔輸送層15のHOMOエネルギーバンドレベルとの間に位置するようにシフトされる。かかる量子点内包層17は、例えば、第2の正孔輸送層または第2の量子点発光層、または両方ともの機能をし、実質的に正孔輸送層15と量子点発光層18との間の有効バンドオフセットを低減させることができて、キャリア注入効率、発光効率などを高めることができ、量子点発光素子のターンオン電圧、駆動電圧を低めることができる。
【0040】
量子点内包層17及び量子点発光層18に配列される量子点は、ウェット化学工程、有機金属化学蒸着工程、分子線エピタキシー工程または他の類似した工程により合成されうる。ウェット化学工程は、有機溶媒に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。結晶が成長する時、有機溶媒が自然に量子点結晶の表面に配位されて、分散剤の役割を行って結晶の成長を調節するので、有機金属化学蒸着(MOCVD、Metal Organic Chemical Vapor Deposition)や、分子線エピタキシー(MBE、Molecular Beam Epitaxy)などの気相蒸着法よりさらに容易かつ低コストの工程を通じて、ナノ粒子の成長を制御できる。量子点のサイズを調節することによってエネルギーバンドギャップを調節できるようになり、量子点発光層18で多様な波長帯の光を得ることができる。したがって、複数の異なるサイズの量子点を使用することは、複数波長の光を出射するディスプレイを可能にする。量子点のサイズは、カラーディスプレイができるように、赤色、緑色、青色光が出射されるように選択でき、または多様なカラー光が白色光を出射するように組み合わせられうる。さらに具体的に、前記量子点は、II−VI族半導体化合物;III−V族半導体化合物;IV−VI族半導体化合物;IV族元素または化合物;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される半導体物質を使用できる。
【0041】
前記II−VI族半導体化合物は、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択される。
【0042】
前記III−V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択される。
【0043】
前記IV−VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されることができる。
【0044】
前記IV族元素または化合物は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群から選択される元素化合物;及びSiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物からなる群から選択される。
【0045】
前記量子点は、均質な単一構造またはコア・シェルの二重構造を持つことができる。コア・シェルは相異なる物質を含むことができる。それぞれのコアとシェルとをなす物質は、前記の相異なる半導体化合物からなりうる。ただし、前記シェル物質のエネルギーバンドギャップは、コア物質のエネルギーバンドギャップより大きい。例えば、CdSe/ZnSのコア・シェル構造(コアはCdSeを含み、シェルはZnSを含みうる)を持つ量子点を得ようとする場合、界面活性剤としてTOPO(trioctylphosphine oxide)を使用した有機溶媒に、(CHCd(dimethylcadmium)、TOPSe(trioctylphosphine selenide)などのコア(CdSe)に当る前駆体物質を注入して結晶を生成させ、結晶が一定のサイズに成長するように高温で一定時間を維持した後、シェル(ZnS)に当る前駆体物質を注入して、既に生成されたコアの表面にシェルを形成させることによって、TOPOでキャッピングされたCdSe/ZnSの量子点を得ることができる。
【0046】
量子点のエネルギーバンドレベルは、図4Aのように量子点コーティング膜を形成した後、表面改質すれば変更できる。
【0047】
図4Aないし図4Cは、図2の量子点内包層及び量子点発光層の製造過程を概略的に示す。図4Aでは、量子点のエネルギーバンドレベル変更のための表面交換工程として、量子点コーティング膜を形成した後で表面改質する例を示す。
【0048】
図4Aを参照すれば、量子点発光層18とは異なるエネルギーバンドレベルの量子点内包層17を形成するために、まず、量子点コーティング膜17’を形成する。量子点コーティング膜17’は量子点105の配列(array)で形成され、量子点105は、量子点コア101とその表面に存在する第1有機リガンド103とを備える。量子点コーティング膜17’は、量子点を含むコロイド溶液を、スピンコーティング、ディップコーティング、プリンティング、スプレーコーティングなどのウェット工程を通じて形成できる。次いで、量子点コーティング膜17’を表面改質して第1有機リガンド103に付加して、第2有機リガンド107が含まれた量子点109を含む量子点内包層17を形成する。図4Aないし図4Cを参照すれば、第1有機リガンド103は、量子点コアに連結される丸いヘッドを持つと図示され、一方、第2有機リガンド107は、量子点コアに連結される三角形のヘッドを持つと図示され、かかる区別は、単に図示のためのものであって、第1有機リガンド103及び第2有機リガンド107は多様な形態を持つことができる。そして、図4Cに示したように、量子点内包層17上に量子点コーティング膜18’を形成する。量子点コーティング膜18’は、量子点コーティング膜17’の形成時と同様に、量子点を含むコロイド溶液をスピンコーティング、ディップコーティング、プリンティング、スプレーコーティングなどのウェット工程を通じて形成でき、量子点コア101の表面に存在する第1有機リガンド103を備える量子点105の配列で形成される。この量子点コーティング膜18’が量子点発光層18になる。図4Cでは、量子点内包層17と量子点コーティング膜18’との量子点のサイズが相異なると図示したが、それらのサイズ差は、単に図示の明確性のためのものであり、実施形態が量子点のサイズの相異なる構成を含むとしても、本実施形態における相異なる層の量子点はほぼ同一である。すなわち、相異なる層は、類似した量子点コア101と類似した第1有機リガンド103を利用できる。
【0049】
図4Cは、量子点の表面改質なしに量子点発光層18を形成する例を示す。ここで、量子点コーティング膜18’を表面改質して量子点発光層18を形成してもよい。この時、量子点コーティング膜18’は、量子点コーティング膜17’と同じ過程で表面改質でき、但し、量子点のバレンスバンドレベルが相異なる条件を満たせねばならないが、このようなバレンスバンドレベル差は、後述する非対称構造の有機リガンド分布差から得られる。
【0050】
前記量子点を含むコロイド溶液は、有機溶媒と第1界面活性剤、及び正イオン前駆体を混合して混合物を製造した後、前記混合物を加熱して反応温度を維持しつつ負イオン前駆体を注入する方法があるが、特別にこれらに限定されるものではない。前記第1界面活性剤は、量子点コーティング膜17’及び量子点コーティング膜18’の第1有機リガンド103を構成できる。
【0051】
前記有機溶媒としては、炭素数6ないし22の一次アルキルアミン、炭素数6ないし22の二次アルキルアミン、炭素数6ないし22の三次アルキルアミン、炭素数6ないし22の一次アルコール、炭素数6ないし22の二次アルコール、炭素数6ないし22の三次アルコール、炭素数6ないし22のケトン及びエステル、炭素数6ないし22の窒素または硫黄を含むヘテロ環化合物、炭素数6ないし22のアルカン、炭素数6ないし22のアルケン、炭素数6ないし22のアルキン、トリオクチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシドなどの酸化トリアルキルホスフィンオキシド、類似した特性を持つ他の物質などを例として挙げることができる。
【0052】
前記第1界面活性剤は、下記化学式1で示した化合物を使用できる。
【0053】
【化1】

【0054】
前記化学式1で、Xは、N、O、P、F、Cl、またはSの元素を含む作用基及び酸基からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含む作用基であって、例えば、N,NO、NO、NH、NH、NH、COOH、CO、CO、P、POOH、P=O、PO、PO、S、SOOH、SH、SO、SO、SO、CN、F、Clなどがあり、Rは炭化水素基であって、例えば、炭素数3ないし20の置換または非置換のアルキル、または炭素数6ないし30の置換または非置換のアリールであり、置換されたアルキルまたはアリールは、アルキル、アリール、及びハロゲンからなる群から選択される置換基で置換されたアルキルまたはアリールである。
【0055】
前記正イオン前駆体としては、Zn、Cd、HgなどのII族元素の前駆体、Al、Ga、In、TiなどのIII族元素の前駆体、Si、Ge、Sn、PbなどのIV族元素の前駆体、または類似した特性を持つ他の物質を挙げることができる。前記負イオン前駆体としては、P、As、Sb、BiなどのV族元素の前駆体、O、S、Se、TeなどのVI族元素の前駆体、または類似した特性を持つ他の物質を例として挙げることができる。それ以外にも量子点、すなわち、量子点コア101をなす構成元素によって正イオン前駆体と負イオン前駆体とを選択して使用できる。
【0056】
前駆体として使用する時、各元素のカルボキシレート、カルボネート、ハライド、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが使われてもよい。
【0057】
前記量子点を含むコロイド溶液は、正孔輸送層15上にコーティングされて量子点コーティング膜17’を形成する。同様に、前記量子点を含むコロイド溶液は、量子点内包層17上にコーティングされて量子点コーティング膜18’を形成する。前記量子点コーティング膜17’または18’は、量子点コア101と、表面に分布する第1有機リガンド103とを備える。第1有機リガンド103は、量子点の合成時に使われる第1界面活性剤から由来する。
【0058】
量子点内包層17は、第2界面活性剤を含む表面改質組成物を量子点コーティング膜17’に適用して形成できる。前記第2界面活性剤は、量子点コア101の表面に第2有機リガンド107を形成して、量子点109が量子点105と差があるようにする。
【0059】
前記表面改質組成物で第2界面活性剤の濃度は、例えば、約5mMないし約100mMでありうる。前記表面改質組成物は、第2界面活性剤を適切な溶媒に分散させて製造でき、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどアルコール溶媒または類似した特性を持つ他の溶媒を使用できる。前記溶媒としては、第2界面活性剤のみ分散さえできれば、制限なしに使用できる。また量子点を溶解させることができる溶媒を使用しなくてもよいので、溶媒の選択幅が大きく、これにより第2界面活性剤も多様に使用できる。
【0060】
前記表面改質組成物のコーティング方法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、プリンティング、スプレーコーティング及び他の類似した方法で実施でき、これらに限定されるものではない。前記ディップコーティング時には、例えば、約30秒ないし約24時間浸漬することができ、表面改質組成物の温度は、例えば、常温ないし約70℃でありうる。前記スピンコーティングで実施する場合には、被コーティング部を例として、約300rpmないし約5000rpmで回転しつつ、表面改質組成物で、例えば、約15秒ないし約2分間コーティングする。スピンコーティングは、例えば、約1回ないし約20回繰り返して実施できる。スプレーコーティング時に被コーティング部の温度は、例えば、約0℃ないし約200℃に調節でき、例えば、約5秒ないし約2時間スプレーできる。このようにコーティングした後、アルコールで洗浄して不純物を除去できる。
【0061】
前記第2有機リガンド107を導入するための第2界面活性剤は、下記の化学式2で表現できる。
【0062】
【化2】

【0063】
前記化学式2で、X’は、N、O、P、F、Cl、またはSの元素を含む電気陰性度の大きい電子吸引基、及び酸基からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含む作用基で、例えば、N,NO、NO、NH、NH、NH、COOH、CO、CO、P、POOH、P=O、PO、PO、S、SOOH、SH、SO、SO、SO、CN、F、Cl、または類似した特性を持つ他の物質などがあり、但し、X’は、量子点に第1有機リガンドを提供する化学式1の第1界面活性剤のXとは異なり、電気陰性度が大きい。
【0064】
R’は、炭化水素基であり、例えば、炭素数3ないし20の置換または非置換のアルキル、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリール、または類似した特性を持つ他の物質であり、置換されたアルキルまたはアリールは、アルキル、アリール、ハロゲン、及び類似した特性を持つ他の物質からなる群から選択される置換基で置換されたアルキルまたはアリールである。
【0065】
前記化学式2で表現される第2界面活性剤の具体的な例としては、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、へキシルホスホン酸、n−オクチルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、n−オクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプチルアミンなどのアルキルアミン、オクタンチオールなどのアルカンチオールなどがある。
【0066】
前記化学式2のRの末端に、Xと異なる作用基で構成されたY基をさらに含む下記化学式3の第2界面活性剤も使われうる。
【0067】
【化3】

【0068】
前記化学式3で、X’とR’とは、化学式2と同一であり、Yは、N、O、P、F、Cl、またはSの元素を含む電気陰性度の大きい電子吸引基及び酸基からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含む作用基であって、例えば、N,NO、NO、NH、NH、NH、COOH、CO、CO、P、POOH、P=O、PO、PO、S、SOOH、SH、SO、SO、SO、CN、F、Clなどがあり、但し、X’とYとは、量子点に第1有機リガンドを提供する化学式1の第1界面活性剤のXとは異なり、電気陰性度が大きい。X’とYとは相異なる。
【0069】
前記化学式2と化学式3とで表現される第2界面活性剤は、少なくとも一部の第1有機リガンド103を置換して、量子点109を形成するように量子点105の表面を改質する。既に量子点コーティング膜17’が形成された後、第2界面活性剤で表面改質するものであるため、正孔輸送層15と接する第1面と、以後の工程により量子点発光層18と接する第2面とは相異なる表面改質環境にある。特に、正孔輸送層15(または正孔輸送層15が省略された場合には、正極14)に接する面は、下部面側上で遮断されるため、表面改質処理に少なく露出される。したがって、下部層に接していなくて第2界面活性剤にさらに多く露出される第2面は、第1有機リガンド103が第2有機リガンド107でさらに多く置換されて、相異なる有機リガンド分布を持つ量子点109が形成される。さらに説明すれば、以後の工程で量子点発光層18と接する第2面は、正孔輸送層15と接する第1面と比較して、相対的にさらに多くの第2有機リガンド107を持つ量子点109を備える。したがって、有機リガンド分布は非対称構造を持ち、具体的には、下部層に接していない第2面から、下部層に接するか、または近接した第1面へ行くほど、第2有機リガンド107が段々減少する分布を持つことができる。
【0070】
前記化学式2または化学式3で表現される第2界面活性剤に存在する電気陰性度の大きい電子吸引基であるX’とYとは、量子点内包層17の量子点コア101の表面に位置して、量子点内包層17の電子密度分布に影響を与えて量子点内包層17のバレンスバンドレベルを変化させる。また前記X’とYとは、量子点内包層17の極性を誘導して、量子点内包層17が正孔輸送層15または量子点発光層18と接する界面でエネルギー障壁を低めて、キャリアの伝達を容易にすることができる。両末端のリガンドが相異なる化学式3の第2界面活性剤で表面改質する場合、前記のような極性がさらに大きく誘導されうる。
【0071】
一方、前記のような非対称構造の有機リガンド分布を持つ量子点内包層17を形成した後、その上に量子点発光層18を形成するが、表面改質を適用しない場合、量子点発光層18は対称構造の有機リガンド分布を持つ。すなわち、図4Cに図示したように、量子点発光層18に配列される量子点105は、量子点コア101の表面に第1有機リガンド103が対称に存在する構造を持つことができる。
【0072】
図3に示したように、非対称構造の有機リガンド分布を持つ量子点109が配列された量子点内包層17は、対称構造の有機リガンド分布を持つ量子点105が配列された量子点発光層18に比べて、エネルギーバンドレベルが正孔輸送層15のエネルギーバンドレベル側にシフトされうる。
【0073】
前記非対称構造を持つ有機リガンドの分布は、量子点109のエネルギーバンドレベルをシフトさせることによって、量子点発光層18のバレンスバンドレベルと正孔輸送層15のHOMOレベルとの間のバンドオフセットを減少させて、キャリア注入効率に優れ、ターンオン電圧と駆動電圧とが低くて、発光効率に優れた量子点発光素子の具現を可能にする。
【0074】
前記量子点内包層17に配列される量子点109は、量子点コア101と、前記量子点コア101の表面に分布する第1有機リガンド103及び第2有機リガンド107を備えて、正孔輸送層15及び量子点発光層18とそれぞれ接する量子点内包層17の第1面及び第2面は相異なる有機リガンド分布を持つ。量子点内包層17は、量子点発光層18と接する第2面の電気陰性度の正孔輸送層15に接する第1面の電気陰性度よりさらに高く形成され、前記電気陰性度の差が、例えば、約0.1ないし約3.7の範囲内でありうる。量子点109の表面改質を通じて、正孔輸送層15と接する第1面と、量子点発光層18と接する第2面との電気陰性度の差を調節すれば、量子点内包層17のエネルギーバンドレベルのシフト量が調節できて、量子点発光素子の効率をさらに改善できる。
【0075】
一方、前記のように形成された量子点内包層17及び量子点発光層18は、さらに熱処理してさらに安定化させることができる。前記熱処理工程は、例えば、約60℃ないし約240℃の温度で約5分ないし約24時間行うことができる。
【0076】
量子点コーティング膜17を形成した後、表面改質してエネルギーバンドレベルが調節された量子点内包層17を形成すれば、簡単な工程で量子点内包層17を形成でき、量子点109が損失する恐れがない。すなわち、量子点109が溶解されるか、または劣化する恐れがない。
【0077】
一方、再び図2を参照すれば、前記のように多重量子点層16を形成した後、量子点発光層18上には電子輸送層20が形成されるが、電子輸送層20を構成する素材として、多様な物質が幅広く選択されうる。例えば、電子輸送層20は、TiO、ZrO、HfOなどの金属酸化物、Siを含む無機物やnタイプの半導体ポリマー、または類似した特性を持つ他の物質などが使われうる。さらに具体的な例として、電子輸送層20に使われうる材料としては、TiO、ZnO、SiO、SnO、WO、Ta、BaTiO、BaZrO、ZrO、HfO、Al、Y、ZrSiOからなる群から選択された酸化物;Siなどの窒化物;またはCdS、ZnSe及びZnSからなる群から選択された半導体;FBT(ポリ−(2,7−(9,9’−ジ−n−オクチルフルオレン−3,6−ベンゾチアゾール)などの電子輸送ポリマーを例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
前記のように、無機素材またはポリマー素材で電子輸送層20を形成すれば、酸化または腐食による発光素子の劣化を構造的に防止でき、特に低分子有機物に近い低いしきい電圧を持つ素材を利用すれば、量子点発光素子のターンオン電圧を、既存のOLEDのように低いレベルに維持できる。前記電子輸送層20は、スパッタリングなどの真空蒸着法、プラズマメッキ、及びイオンメッキなどのドライ成膜法またはスピンコーティング、浸漬法、流動コーティング法及び他の類似した方法などのウェット成膜法によって形成できる。
【0079】
前記電子輸送層20上に形成される第2電極22は、陰極(カソード)として使われ、電子輸送層20への電子注入を容易にするために、仕事関数の小さな物質からなりうる。第2電極22形成に適した物質としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛、セシウム、バリウムなどの金属及びこれらの合金;LiF/Al、LiO/Al、LiF/Ca、LiF/Al、BaF/Caなどの複数層構造物質などを使用できるが、これらに限定されるものではない。前記第2電極22は、スパッタリングなどのドライ蒸着法を通じて形成できる。
【0080】
一方、他の実施形態による量子点発光素子は、第1電極14と正孔輸送層15との間に正孔注入層(Hole Injection Layer、HIL;図示せず)、または第2電極22と電子輸送層20との間に電子注入層(Electron Injection Layer、EIL;図示せず)をさらに備えることができる。
【0081】
正孔注入層に使われうる材料は特別に制限なく、界面特性に優れ、正孔を正孔輸送層に容易に与えられる材料ならば可能である。例えば、正孔注入層は、PEDOTを含む材料で形成できる。電子注入層に使われうる材料は特別に制限がなく、産業的にLiFを多く利用している。
【0082】
一方、図3のエネルギーバンド構造は、第1電極14(アノード)にITOを使用し、第2電極22(カソード)にAlを使用し、正孔注入層13がPEDOTで形成され、正孔輸送層15(HTL)がTFBで形成され、電子輸送層20(ETL)がTiO2で形成され、量子点発光層18(Emitting Layer、EML、QD layer2)と正孔輸送層15(HTL)との間に、表面交換工程によりバンドレベルがシフトされた量子点内包層17(QD layer1)が形成された量子点発光素子の場合を示す。量子点発光層18としては、CdSe/CdS/ZnSのコア/シェル/シェル構造のナノ粒子層を使用し、量子点内包層17としては、同じCdSe/CdS/ZnSのコア/シェル/シェル構造のナノ粒子をコーティングした後、1,7−ジアミノヘプタンで表面処理をして、バンドレベルが0.6eVほど真空(vacuum level)にシフトしたものを使用した。図3のようなバンド構造を持つように量子点発光素子を形成する場合、量子点内包層を持っていない場合に比べて、バンドオフセットは、例えば、既存の約1.5eVから約0.9eVに約0.6eVまたは約40%ほど減少できる。
【0083】
図5及び図6は、それぞれ図3のエネルギーバンド構造で、量子点内包層17が約15nm厚さに形成され、量子点発光層18が約30nm厚さに形成された、量子点内包層17と量子点発光層18との二重量子点層(Dual QD layer)を持つ時の輝度及び発光効率特性を、量子点内包層17なしに約30nm厚さの量子点発光層18で形成された単一量子点層(Single QD layer)のみを持つ時と比較して示す。
【0084】
図5及び図6のように、量子点内包層17と量子点発光層18との二重量子点層を持つ時には、量子点発光層18のみを持つ時に比べて、特定電圧及びピーク効率で輝度は約4倍ほど、発光効率は約3倍ほど増大させることができる。図5及び図6のグラフを理解する他の方法は、単層量子点発光素子でより、二重層量子点発光素子で、さらに低い電圧で同じ光度に到達できるということである。
【0085】
表1は、シリコン基板上に形成された表面改質前の量子点層(As−coated:f1)、表面改質なしに熱処理した量子点層(Spin/anneal:f2)、表面改質後の量子点層(Spin/cross−link:f3)、表面改質後に80℃で熱処理した量子点層(Spin/cross−link/anneal@80℃:f4)、及び表面改質後に180℃で熱処理した量子点層(Spin/cross−link/anneal@180℃:f5)に対して、HeIIUVフォトエレクトロンスペクトロスコピー(untraviolet photoelectron spectroscopy:UPS)によりイオン化ポテンシャルを測定した結果を示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1のように、表面改質された量子点層f3、f4、及びf5が、表面改質していない量子点層f1及びf2に比べてイオン化ポテンシャルが約0.6eVシフトされたことを確認できる。
【0088】
図7Aは、それぞれ表1のように、シリコン基板上にスピンコーティングされ、熱的または化学的に処理された量子点層のHe II UPSスペクトルを示し、図7Bは、図7Aの点線で表示されたバレンスバンドエッジ領域の拡大グラフを示す。量子点の表面交換後、HOMOレベルの変化は、図7B及び表1のイオン化ポテンシャル値の変化から分かる。
【0089】
表1、図7A及び図7Bの結果は、量子点を1,7−ジアミノヘプタンで表面処理する時に得られたものである。量子点表面処理後に、量子点のバンドレベルが約0.6eVほど真空レベル側にシフトされることが、UPS測定を通じて分かった。このような量子点の表面処理以後にバンドレベルがシフトされる現象は、量子点をアミン基で表面改質させる時に現れ、熱処理工程のみ適用した場合には現れていない。
【0090】
一方、図8は、シリコン基板上に形成された表面改質前の量子点層(As−coated:f1)、表面改質なしに熱処理した量子点層(Spin/anneal:f2)、表面改質後の量子点層(Spin/cross−link:f3)、表面改質後に80℃で熱処理した量子点層(Spin/cross−link/anneal@80℃:f4)に対して発光(EL)強度を測定した結果を示す。図8を説明すれば、4つの場合に対する発光ピーク位置は618nmであり、半値全幅(FWHM)は約35nmであって、表面改質及び熱処理工程により発光強度のピークポジションが変わっていないことが分かる。すなわち、表面改質及び熱処理工程によって量子点のバンドギャップは変わっていないことが確認できる。
【0091】
表1、図7A、図7B及び図8の結果から、量子点表面処理工程を通じて、バンドギャップは変化なしに、エネルギーバンドレベル自体がシフトされうることが確認できる。したがって、例えば、表面処理過程を利用して約15nmほどの厚さを持つ量子点内包層17を設け、その上に約30nmほどの厚さを持つ量子点発光層18をスピンコーティングして形成した後、熱処理工程を行えば、図3のようなバンド構造とエネルギーバンドレベルとを持つ量子点発光素子を製作できる。量子点を表面処理した量子点内包層のバレンスバンドレベルは約6.2eVであって、量子点発光層のバレンスバンドレベルと約0.6eV差を表し、量子点発光層(EML、QD layer2)、量子点内包層(QD layer1)、正孔輸送層(HTL)のエネルギーバンドレベルが順次に階段式エネルギー配列することが分かる。図5のように、表面処理した量子点内包層を付加的な正孔輸送層として使用した量子点発光素子と、かかる付加的な正孔輸送層のない量子点発光素子とを比較すれば、付加的な正孔輸送層なしにTFBからなる正孔輸送層から量子点発光層へ正孔が伝えられる量子点発光素子は、最大輝度が約1500cd/mであるのに対し、表面処理した量子点を持つ量子点内包層を付加的な正孔輸送層に挿入した量子点発光素子は、最大輝度が約7000cd/mであって性能が向上したことが分かる。
【0092】
以上では基板上に、第1電極(アノード)、正孔輸送層、多重量子点層、電子輸送層、第2電極(カソード)の順にスタックされた場合を例として挙げて説明及び図示したが、本発明がこれに限定されるものではなく、その順序は変わってもよい。量子点発光素子は、基板上に第2電極(カソード)、電子輸送層、多重量子点層、正孔輸送層、第1電極(アノード)の順にスタックされてもよく、この場合、多重量子点層は、例えば、二重量子点層構造である場合、電子輸送層上に量子点発光層、量子点内包層、正孔輸送層の順に形成されてもよく、かかるスタック構造を製造する方法については、前述したものから十分に類推できるので、ここでは、その製造方法についての説明は省略する。
【0093】
一方、図2の量子点発光素子で、正孔輸送層15または電子輸送層20は、多重量子点層16と同様に、量子点を備えるように形成されてもよい。正孔輸送層15と電子輸送層20とが量子点を備えるように構成された場合、正孔輸送層15と電子輸送層20とのエネルギーバンドレベル調節が可能なため、量子点発光層18のエネルギーバンドレベルとよく調和をよくなして、効果的な電荷輸送が可能になる。また正孔輸送層15や電子輸送層20の場合は、一般的に20nm以上の厚い厚さを持つ場合をいう。この場合、薄膜での電荷輸送と関連した値と物性(電荷濃度及び移動度)値を、量子点を含む効果でもって調節する場合、効果的な電荷輸送や注入が可能である。
【0094】
一方、以上では多重量子点層が量子点内包層と量子点発光層との二重層構造であり、量子点内包層と量子点発光層とのバンドギャップは同一であるが、量子点内包層のエネルギーバンドレベルが量子点発光層とは異なる場合を、例として挙げて説明及び図示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下で説明するように多様な実施形態が可能である。
【0095】
図9は、3重層構造の多重量子点層を備える量子点発光素子30の実施形態を概略的に示し、図10は、図9の量子点発光素子30のバンド構造の例を概略的に示す。前述した実施形態と同一な参照符号は実質的に同一部材を表し、ここでは反復的な説明は省略する。
【0096】
図2及び図9を比較すれば、図9の量子点発光素子30は、図2の量子点発光素子10の単一量子点内包層17の代りに第1及び第2量子点内包層17a、17bを備えるという差がある。
【0097】
図9及び図10を参照すれば、本実施形態において、多重量子点層16’は、第1及び第2量子点内包層17a、17bと量子点発光層18との3重層構造で形成されうる。正孔輸送層15上に第1量子点内包層17a、第2量子点内包層17b、量子点発光層18の順にスタックされうる。第1及び第2量子点内包層17a、17bの材質及び第1量子点内包層17a、第2量子点内包層17b、量子点発光層18のスタックの製造方法は、図2の量子点発光素子10についての詳細な説明から十分に類推できるので、ここでは材質及び製造方法についての具体的な説明は省略する。
【0098】
図10に示したように、多重量子点層16’(QD−multilayer)は、量子点発光層18、第2量子点内包層17b、第1量子点内包層17aのエネルギーバンドレベルが順次に階段式エネルギー配列をなすように形成される。すなわち、量子点発光層18から始まって、各層のエネルギーバンドレベルが正孔輸送層へ行くほど増加する。これにより、実質的に正孔輸送層15(HTL)と量子点発光層18との有効バンドオフセットが低減できる。
【0099】
以上では、図2ないし図10を参照にして量子点発光素子で、多重量子点層をなす少なくとも一つの量子点内包層と量子点発光層とが同一バンドギャップを持って、そのエネルギーバンドレベル位置のみ相異なって、正孔輸送層と量子点発光層との有効バンドオフセットを低減させるように形成される場合を説明及び図示したが、少なくとも一つの量子点内包層と量子点発光層とは、バンドギャップを異ならせて形成されてもよい。
【0100】
図11は、量子点内包層17c、17dが量子点発光層の両側に位置し、量子点内包層17c、17dが量子点発光層のバンドギャップと相異なるようになっている3重層構造の多重量子点層を備える量子点発光素子50の実施形態を概略的に示し、図12は、図11の量子点発光素子50のバンド構造の例を概略的に示す。前述した実施形態と同一参照符号は実質的に同一部材を表し、ここでは反復的な説明は省略する。
【0101】
図9と図11とを比較すれば、図11の量子点発光素子50は、図9の量子点発光素子30での量子点発光層18の一側、すなわち、同側に位置する第1及び第2量子点内包層17a、17bの代りに、量子点発光層18の両側に位置する第1及び第2量子点内包層17c、17dを備えるという差がある。
【0102】
図11及び図12を参照すれば、本実施形態において、多重量子点層16”は、量子点発光層18とその両側に位置した第1及び第2量子点内包層17c、17dとの3重層構造で形成されうる。正孔輸送層15上に第1量子点内包層17c、量子点発光層18、第2量子点内包層17dの順にスタックされうる。第1及び第2量子点内包層17c、17dの材質、及び第1量子点内包層17c、量子点発光層18、第2量子点内包層17dのスタックの製造方法は、図2の量子点発光素子10についての詳細な説明から十分に類推できるので、ここでは材質及び製造方法についての具体的な説明は省略する。
【0103】
図12に示したように、多重量子点層16(QD−multilayer)は、第1及び第2量子点内包層17c、17dのバンドギャップが、その間に位置した量子点発光層18のバンドギャップより大きく形成されうる。さらに、少なくとも、量子点発光層18、第1量子点内包層17c及び正孔輸送層15(HTL)のエネルギーバンドレベルが順次に階段式エネルギー配列をなすように形成されうる。この場合、第1及び第2量子点内包層17c、17dにより量子点発光層18に注入されたキャリアが閉じ込められ、光学的拘束などが向上する。尚、実質的に正孔輸送層15(HTL)と量子点発光層18との有効バンドオフセットが低減できる。
【0104】
一方、図11及び図12に図示された量子点発光素子50は、正孔輸送層15(HTL)及び電子輸送層20(ETL)として第1及び第2誘電体層を備えてもよい。すなわち、電荷輸送層を誘電体層で形成してもよい。
【0105】
電荷輸送層として、正孔輸送層15(HTL)及び電子輸送層20(ETL)の役割を行う第1及び第2誘電体層を備えれば、第1及び第2電極14、22に連結された交流発生器を付加することにより交流(Alternating Current:AC)駆動が可能になる。
【0106】
以上の実施形態では、正孔輸送層及び電子輸送層を備えると説明したが、二つのうちずれか一つまたは二つとも備える多様な変形が可能である。また正孔遮断層または電子遮断層を備えることができる。また、正孔輸送層及び電子輸送層または正孔注入層及び正孔輸送層が、正孔輸送層−電子輸送層または正孔注入層−正孔輸送層を形成するように組み合わせられうる。
【0107】
発光が主に量子点発光層18で行われると説明したが、発光はまた量子点内包層で発生しうる。したがって、量子点内包層の発光は量子点発光層の波長と同じであるか、または異なるように選択されうる。相異なる層が相異なる波長特性を表すことができるため、結果的な発光、すなわち、量子点発光層及び量子点内包層の両方による発光は、特定カラー、すなわち、赤色、緑色または青色またはその組み合わせ、すなわち、白色になるように選択されうる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、発光素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0109】
10 量子点発光素子、
12 基板、
14 第1電極、
15 正孔輸送層、
16 多重量子点層、
17 量子点内包層、
18 量子点発光層、
20 電子輸送層、
22 第2電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極と、
前記第1電極上に配された第2電極と、
前記第1電極と第2電極との間に配された第1電荷輸送層と、
前記第1電荷輸送層と前記第1及び第2電極のうち一つとの間に配された量子点発光層と、
前記量子点発光層と前記第1電荷輸送層との間または前記量子点発光層の両側に配され、少なくとも一つのエネルギーバンドレベルが前記量子点発光層とは異なるエネルギーバンドレベルを持つ、少なくとも一層からなる量子点内包層と、
を備える量子点発光素子。
【請求項2】
前記少なくとも一層からなる量子点内包層は、前記量子点発光層と同一なバンドギャップまたは異なるバンドギャップを持つ請求項1に記載の量子点発光素子。
【請求項3】
前記第1電極と第2電極との間に第2電荷輸送層をさらに備え、前記第1及び第2電荷輸送層のうち一つは正孔輸送層、残りの一つは電子輸送層であり、
前記少なくとも一層からなる量子点内包層は前記正孔輸送層上に配され、前記量子点発光層は前記少なくとも一層からなる量子点内包層上に配される請求項1または2に記載の量子点発光素子。
【請求項4】
前記第1電荷輸送層は正孔輸送層であり、
前記少なくとも一層からなる量子点内包層は単一量子点内包層を有し、
前記量子点発光層、量子点内包層、正孔輸送層のエネルギーバンドレベルは、順次に高くなるように配列される請求項2または3に記載の量子点発光素子。
【請求項5】
前記第1電荷輸送層は正孔輸送層であり、
前記少なくとも一層からなる量子点内包層は第1及び第2量子点内包層を備え、
前記量子点発光層、第1及び第2量子点内包層、正孔輸送層のエネルギーバンドレベルは、順次に高くなるように配列される請求項2または3に記載の量子点発光素子。
【請求項6】
前記少なくとも一層からなる量子点内包層は、前記量子点発光層の両側にそれぞれ配される第1及び第2量子点内包層を備え、
前記第1及び第2量子点内包層のバンドギャップは、前記量子点発光層のバンドギャップより大きい請求項2または3に記載の量子点発光素子。
【請求項7】
前記第1電荷輸送層は正孔輸送層であり、
前記正孔輸送層上に第1量子点内包層、量子点発光層、第2量子点内包層の順に配され、
前記量子点発光層、第1量子点内包層、正孔輸送層のエネルギーバンドレベルは、順次に高くなるように配列される請求項6に記載の量子点発光素子。
【請求項8】
前記第1電極と第2電極との間に第2電荷輸送層をさらに備え、
前記第1及び第2電荷輸送層は誘電体物質を含み、
前記少なくとも一層からなる量子点内包層は、前記量子点発光層の両側に配される第1及び第2量子点内包層を備える請求項1に記載の量子点発光素子。
【請求項9】
前記第1及び第2量子点内包層のバンドギャップは、前記量子点発光層のバンドギャップより大きい請求項8に記載の量子点発光素子。
【請求項10】
前記第1及び第2電荷輸送層のうち一つの層の上に、第1量子点内包層、量子点発光層、第2量子点内包層の順に配され、
前記量子点発光層、第1量子点内包層、前記第1または/及び第2電荷輸送層のエネルギーバンドレベルは、順次に高くなるように配列される請求項9に記載の量子点発光素子。
【請求項11】
前記第1及び第2電荷輸送層のうち一つの層の上に、第1量子点内包層、量子点発光層、第2量子点内包層の順に配され、
前記量子点発光層、第1量子点内包層、前記第1または第2電荷輸送層のエネルギーバンドレベルは、順次に高くなるように配列される請求項8に記載の量子点発光素子。
【請求項12】
前記第1及び第2電極に連結される交流発生器をさらに備える請求項8ないし11のうちいずれか1項に記載の量子点発光素子。
【請求項13】
前記量子点発光層及び前記量子点内包層は複数の量子点を含み、複数の量子点それぞれは、量子点コア及び第1有機リガンドを含み、
前記量子点内包層に対応する複数の量子点は、第2有機リガンドをさらに含む請求項1に記載の量子点発光素子。
【請求項14】
基板を用意するステップと、
前記基板上に、第1電極を配するステップと、
前記第1電極上に、第1エネルギーバンドレベルを持つ量子点内包層を配するステップと、
前記量子点内包層上に、第1エネルギーバンドレベルとは異なる第2エネルギーバンドレベルを持つ量子点発光層を配するステップと、
前記量子点発光層上に、第2電極を配するステップと、
を含む量子点発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記第1電極上に、第1エネルギーバンドレベルを持つ量子点内包層を配するステップは、前記量子点内包層内に位置した複数の量子点の表面を処理し、エネルギーバンドレベルをシフトして前記第2エネルギーバンドレベルに近づけるステップを含む請求項14に記載の量子点発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−199067(P2010−199067A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37840(P2010−37840)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】