説明

多関節型産業用ロボット

【課題】円滑な作業の妨げとならないようにしてケーブルを取り回しつつ手首部の構成を全体として小型化する。
【解決手段】ロボット1の手首部3が、エンドエフェクタ8に電力、動力、信号及び材料の少なくともいずれかを供給するためのエフェクタ用ケーブル9を挿通させるガイド孔93を有したケーブルガイド92を備えている。手首部3を駆動する複数のモータ24〜26のうち2つのモータ25,26が、手首部3の第1可動部14に取り付けられ、ケーブルガイド92を第1手首軸線Sに直交する方向に挟むようにして配置される。ケーブルガイド92は、第1可動部14に第1手首軸線S上に位置するように設けられている。ガイド孔93の断面形状は、第1手首軸線Sの軸線方向の中央部93bでくびれており、両端部93a,93bで拡開している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーム部と、アーム部の先端部に連結される手首部と、手首部を駆動する複数のモータとを備える多関節型産業用ロボットに関する。特に、エンドエフェクタに電力等を供給するためのエフェクタ用ケーブルが手首部の中心を通過する多関節型産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
多関節型産業用ロボットは、溶接及び塗装等の各種作業に広く利用されている。例えば特許文献1には、手首部にスポット溶接ガンを装着したスポット溶接ロボットが開示されている。このロボットでは、手首部を駆動するモータの幾つかがアーム部後端に取り付けられている。手首部では、スポット溶接ガンに電力を供給するためのケーブルが取り付けられている。このケーブルは手首部の外側で取り回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−136462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、モータが特許文献1に開示されるようにアーム部後端に取り付けられると、モータから手首部の手先端部まで動力を伝達するための動力伝達機構を配置しなくてはならない。その結果、部品点数が増えて手首部の組立てが煩雑となったり、手首部の構成を全体として大型化する必要が生じたりする。
【0005】
特に、スポット溶接用のロボットでは、大電流を溶接ガンに供給するためケーブルが大径化しがちである。ケーブルが手首部の外側で取り回されていると、ケーブルが外部構造と干渉するおそれがある。これを防ぐには、ケーブルの保護のため、手首部に大型の保護構造を取り付ける必要が生ずる。また、ケーブルが大径であると、ケーブルとの干渉を避けるようにして動力伝達機構を配置することも非常に困難になる。
【0006】
そこで本発明は、手首部の構成を全体として小型化しながら、円滑な作業の妨げとならないように且つケーブルの損傷を抑制するようにケーブルを取り回すことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成すべくなされたものである。本発明に係る多関節型産業用ロボットは、アーム部と、前記アーム部の先端部に連結される手首部と、前記手首部を駆動する複数のモータと、を備え、前記手首部が、前記アーム部に連結され、前記アーム部に対して第1手首軸線周りに回転する第1可動部と、前記第1可動部に連結され、前記第1可動部に対して前記第1手首軸線と異なる方向に延びる第2手首軸線周りに回転する第2可動部と、前記第2可動部に連結され、前記第2可動部に対して前記第2手首軸線と異なる方向に延びる第3手首軸線周りに回転し、エンドエフェクタが装着される第3可動部と、前記エンドエフェクタに電力、動力、信号及び材料の少なくともいずれかを供給するためのエフェクタ用ケーブルを挿通させるガイド孔を有したケーブルガイドと、を有し、前記複数のモータのうち2つのモータが、前記第1可動部に取り付けられ、前記ケーブルガイドを前記第1手首軸線に直交する方向に挟むようにして配置され、前記ケーブルガイドが、前記第1可動部に前記第1手首軸線上に位置するように設けられ、前記ガイド孔の断面形状が、前記第1手首軸線の軸線方向の中央部でくびれており、両端部で拡開している。
【0008】
前記構成によれば、エフェクタ用ケーブルが、第1可動部の回転中心となる第1手首軸線上に位置するケーブルガイドのガイド孔に挿通される。このため、手首部の動作に伴ってエフェクタ用ケーブルが大きく振れ回ったり、ロボット外部の周辺構造と干渉したりするのを抑制することができる。ケーブルガイドのガイド孔は軸線方向の中央部でくびれて両端部で拡開している。このため、エフェクタ用ケーブルがケーブルガイドの端部に引っ掛かって損傷したり、ケーブルガイドの端部で磨耗して損傷したりするのを抑制することができる。そして、2つのモータは第1可動部に取り付けられるので、2つのモータから第2可動部又は第3可動部までの距離が短くなり、動力伝達機構の簡素化を図ることができる。2つのモータは第1可動部の回転中心となる第1手首軸線を挟むので、第1可動部の回転時に第1可動部の重量バランスが安定する。2つのモータはケーブルガイドを挟むので、ケーブルガイドを第1可動部に保持することができ、ケーブルガイドを第1可動部に取り付けるための構造の簡単化を図ることができる。
【0009】
前記第2手首軸線が前記第1手首軸線に垂直であり、前記ガイド孔の前記中央部が、前記第1手首軸線及び前記第2手首軸線に直交する方向に幅狭となるようにしてくびれており、前記第2手首軸線の延在方向に長寸であってもよい。
【0010】
ケーブルの挙動において、基準姿勢から第1可動部もしくは第3可動部が回転していてエフェクタ用ケーブルが第1手首軸線周りに捩られている状態で第2可動部が回転しようとすると、エフェクタ用ケーブルは、第1手首軸線に直交する方向に振れようとする。前記構成によれば、このような場合でも、ケーブルガイドが当該直交する方向に長寸であるので、中央部をくびれさせてケーブルガイドの小型化及び端部での損傷抑制を図りながら、エフェクタ用ケーブルの振れを許容することも可能になる。
【0011】
前記第1可動部が、前記ケーブルガイドを取り付けるためのガイド取付壁を有し、前記ケーブルガイドは、前記第1手首軸線の軸線方向手先側の端部で前記ガイド取付壁に取り付けられ、前記第1手首軸線の軸線方向手元側の端部で前記2つのモータに挟まれていてもよい。
【0012】
前記構成によれば、ケーブルガイドは、軸線方向手先側端部で第1可動部に取り付けられる一方、手元側端部では第1可動部に直接的に固定されない。このため、ケーブルガイドを第1可動部に取り付ける作業を簡単に行うことができる。ケーブルガイドは、一見片持ち梁状になるところ、軸線方向手先側の端部で2つのモータにより挟まれている。このため、エフェクタ用ケーブルがガイド孔の内面に押し付けられても、その応力をモータで受けることができ、ケーブルガイドの軸線方向手先側端部やガイド取付壁に作用する応力が軽減される。
【0013】
前記ケーブルガイドは、分割可能に第1ガイド半体及び第2ガイド半体を結合してなり、前記ガイド取付壁に設けられた取付穴に挿入された状態で前記ガイド取付壁に取り付けられ、前記第1ガイド半体を前記第2ガイド半体に結合するための結合部が、前記ケーブルガイドを前記ガイド取付壁に取り付けた状態で、又は、前記ケーブルガイドを前記取付穴から引き出した状態で、前記第1可動部の外からアクセス可能であってもよい。
【0014】
前記構成によれば、ケーブルガイドが半割り構造を有し、結合部が第1可動部の外からアクセス可能である。このため、手首部がアーム部に連結され、エフェクタ用ケーブルが手首部に設けられている状態のまま、ケーブルガイドのみを第1可動部から取り外したり組み入れたりすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、円滑な作業の妨げとならないようにしてケーブルを取り回しつつ、手首部の構成を全体として小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る多関節型ロボットの全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す先端アーム及び手首部の斜視図である。
【図3】図2に示すケーブルガイドの側面図である。
【図4】図2に示すケーブルガイドの平面図である。
【図5】図4のa−a矢視図、b−b断面図及びc−c断面図を重ね合わせた図である。
【図6】図1に示す手首部の平面視断面図である。
【図7】図1に示す手首部の側面視断面図である。
【図8】図8(a)は、ケーブルガイドが取り付けられている状態における手首部の部分平面図である。図8(b)は、ケーブルガイドが引き出された状態における手首部の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
【0018】
(多関節型ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る多関節型ロボット(以下、単に「ロボット」と称す)の全体構成を示す斜視図である。図1に示すロボット1は、例えば、垂直多関節型6軸ロボットである。ロボット1は、作業現場に据え付けられた基台10と、基台10に連結されたアーム部2と、アーム部2の先端部に連結された手首部3と、アーム部2及び手首部3を駆動する複数のモータ21〜26とを備えている。
【0019】
手首部3の先端部には、作業用のエンドエフェクタ8が取外し可能に装着される。エンドエフェクタ8には、例えば、スポット溶接作業を行うためのスポット用接ガン、アーク溶接作業を行うためのアーク溶接トーチ、塗装作業を行うための塗装ガン、ピッキング作業を行うための把持具又は吸着具など、様々なツール又はエフェクタを適用することができる。ロボット1には、装着されたエンドエフェクタ8に電力、動力、信号及び材料(例えば塗料や接着剤等)の少なくともいずれかを供給するためのエフェクタ用ケーブル9が取り付けられる。スポット溶接ガン又はアーク溶接トーチがエンドエフェクタ8に適用される場合、エフェクタ用ケーブル9には、ガン又はトーチに電力を供給するための電気ケーブルなど複数本のケーブルが含まれる。エフェクタ用ケーブル9は、これら複数本のケーブルを束ねたものである。
【0020】
アーム部2は、基端アーム11、中間アーム12及び先端アーム13を有している。基端アーム11は、基台10の上面側に連結され、基台10に対して第1腕軸線A1周りに回転する。中間アーム12は、その基端部にて基端アーム11に連結され、基端アーム11に対して第2腕軸線A2周りに回転する。先端アーム13は、中間アーム12の先端部に連結され、中間アーム12に対して第3腕軸線A3周りに回転する。先端アーム13はアーム部2の先端部を成し、手首部3は先端アーム13に連結されている。
【0021】
手首部3は、第1可動部14、第2可動部15及び第3可動部16を有している。第1可動部14は、その基端部にて先端アーム13に連結され、先端アーム13に対して第1手首軸線S周りに回転する。第2可動部15は、第1可動部14の先端部に連結され、第1可動部14に対して第2手首軸線B周りに回転する。第3可動部16は、第2可動部15に連結され、第2可動部15に対して第3手首軸線T周りに回転する。第3可動部16は手首部3の先端部を成し、エンドエフェクタ8は第3可動部16に装着される。
【0022】
第1手首軸線Sは、第3腕軸線A3に対して垂直な方向であって第1可動部14の長手方向に延在している。第1手首軸線Sの向きは、基端アーム11の第1腕軸線A1周りの回転位置、中間アーム12の第2腕軸線A2周りの回転位置及び先端アーム13の第3腕軸線A3周りの回転位置に応じて変化する。第1手首軸線Sの向きが変化すると、手首部3及びエンドエフェクタ8の姿勢が変化する。
【0023】
第2手首軸線Bは、第1手首軸線Sに対して垂直な方向に延在している。第2手首軸線Bの向きは、基端アーム11、中間アーム12及び先端アーム13の回転位置、第1可動部14の第1手首軸線S周りの回転位置に応じて変化する。第2手首軸線Bの向きが変化すると、第2可動部15、第3可動部16及びエンドエフェクタ8の姿勢が変化する。
【0024】
第3手首軸線Tは、第2手首軸線Bに対して垂直な方向に延在している。第3手首軸線Tの向きは、基端アーム11、中間アーム12、先端アーム13及び第1可動部14の回転位置、第2可動部15の第2手首軸線B周りの回転位置に応じて変化する。第3手首軸線Tの向きが変化すると、第3可動部16及びエンドエフェクタ8の姿勢が変化する。
【0025】
なお、以降では、図1に示されたロボット1の姿勢を「基準姿勢」と称す。アーム部2及び手首部3を構成している部分11〜16が所定の基準回転位置に位置していれば、ロボット1は基準姿勢をとる。図1に示すように、基準姿勢では、3つの手首軸線S,B,Tが水平に向けられ、第3手首軸線Tが第1手首軸線Sと同軸状に位置し、第2手首軸線Bが第1手首軸線S及び第3手首軸線Tに垂直に交差する。部分11〜16は、基準回転位置から正方向にも逆方向にも回転可能である。基準回転位置からの回転により、ロボット1の姿勢が基準姿勢から変化する。
【0026】
複数のモータには、基端アーム11を第1腕軸線A1周りに回転させる第1アームモータ21と、中間アーム12を第2腕軸線A2周りに回転させる第2アームモータ22と、先端アーム13を第3腕軸線A3周りに回転させる第3アームモータ23とが含まれる。更に、複数のモータには、第1可動部14を第1手首軸線S周りに回転させる第1手首モータ24と、第2可動部15を第2手首軸線B周りに回転させる第2手首モータ25と、第3可動部16を第3手首軸線T周りに回転させる第3手首モータ26とが含まれる。これら6つのモータ21〜26は、例えばブラシレスサーボモータである。
【0027】
第2及び第3手首モータ25,26は第1可動部14に取り付けられる。他のモータ21〜24の配置は特に限定されない。例えば、第3アームモータ23及び第1手首モータ24は、先端アーム13に取り付けられる。
【0028】
第1、第2及び第3アームモータ21〜23が動作すると、エンドエフェクタ8は、手首部3と共に、第1、第2及び第3腕軸線A1〜A3周りに回転可能である。第1手首モータ24が動作すると、エンドエフェクタ8は、手首部8と共に先端アーム13に対して旋回するようにして第1手首軸線S周りに回転する。第2手首モータ25が動作すると、エンドエフェクタ8は、第2及び第3可動部15,16と共に、第1可動部14に対して屈曲するようにして第2手首軸線B周りに回転する。第3手首モータ26が動作すると、エンドエフェクタ8は、第3可動部16と共に、第2可動部15に対して捻られるようにして第3手首軸線T周りに回転する。これにより、アーム部2及び手首部3が姿勢を変えながらエンドエフェクタ8が所望の経路に沿って移動する。
【0029】
(第1〜第3可動部、第1〜第3手首モータ)
図2は、図1に示す先端アーム13及び手首部3の斜視図である。以降の説明では、第1手首軸線S又は第3手首軸線Tの延在方向のうち、エンドエフェクタ8に近付く側を「手先側」、反対にアーム部2に近付く側を「手元側」と称する。
【0030】
図2に示すように、先端アーム11は、モータ収容部31、手首受け部32及びモータステー部33を有している。モータ収容部31は、両端が開放された円筒状に形成され、第3アームモータ23を収容する。手首受け部32は、モータ収容部31の外周側に一体的に設けられ、手先側が開放されて手元側が閉鎖された円筒状に形成されている。手首部3の第1可動部14は、手首受け部32の開口を介して手首受け部32に受容される。モータステー部33は、手首受け部32の手元側に設けられ、第1手首モータ24は、このモータステー部33に取り付けられている。手首受け部32内には、第1手首モータ24の回転を第1可動部14に伝達する動力伝達機構(図示せず)が収容される。
【0031】
第1可動部14は、筒部41、一対の梁部43,44及びブリッジ部45を有している。筒部41は、円筒状に形成され、その手元端部にて手首受け部32に受容され、先端アーム13に対して中心軸線周りに回転可能に連結される。筒部41の中心軸線は、手首受け部32の中心軸線と一致し、第1手首軸線Sと一致する。一対の梁部43,44は、筒部41の手先端部から突出し、第1手首軸線Sと略平行に延在し、第1手首軸線Sと垂直な方向(第2手首軸線Bの延在方向)に向き合っている。ブリッジ部45は、一対の梁部43,44の間に架け渡されている。
【0032】
第2可動部15は、一対の梁部43,44の手先端部の間に挟み込まれる。第2可動部15は、ディスク部53から手元側へ突出する一対のフランジ部51,52を有し、第1フランジ部51は、第1梁部43の内面に回転可能に連結され、第2フランジ部52は、第2梁部44の内面に回転可能に連結される。第1フランジ部51の回転軸線は第2フランジ部52の回転軸線と同軸状に位置し、この共通の回転軸線が第2手首軸線Bと一致する。第3可動部16は、円筒状に形成され、ディスク部53に対して中心軸線周りに回転可能に連結される。第3可動部16の中心軸線は、第2手首軸線Bに垂直であり、第3手首軸線Tと一致する。
【0033】
ブリッジ部45は、一対の梁部43,44の長手方向中間部同士を接続している。一対の梁部43,44及びブリッジ部45は、第1手首軸線Sとも第2手首軸線Bとも垂直な方向(基準姿勢では鉛直方向)から見てH字状を呈している。ブリッジ部45を設けることにより、第1可動部14の強度が高くなり、第1可動部14は、第2可動部15、第3可動部16及びエンドエフェクタ8を好適に支持することができる。
【0034】
第1可動部14は、ブリッジ部45よりも手元側に、筒部41、一対の梁部43,44により囲まれた基端スペースを有する。第1可動部14は、ブリッジ部45よりも手先側に一対の梁部43,44及び第2可動部15により囲まれた先端スペース49を有する。逆に言えば、ブリッジ部45は、筒部41、一対の梁部43,44及び第2可動部15で囲まれたスペースを第1手首軸線Sの延在方向に二分している。
【0035】
基端スペースは、後述するケーブルガイド92により、第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向(基準姿勢では鉛直方向)に二分される。ここで、二分された基端スペースのうち、基準姿勢で上側に位置するものを第1基端スペース47とし、基準姿勢で下側に位置するものを第2基端スペース48とする。
【0036】
第2手首モータ25は、第2基端スペース48に配置され、第3手首モータ26は、第1基端スペース47に配置される。このように、第2及び第3手首モータ25,26は、第1手首軸線Sを挟むように且つ第1手首軸線Sと垂直な方向に重なり合うように第1手首部14に取り付けられる。第2及び第3手首モータ25,26がこのように取り付けられるので、第1可動部14が第1手首軸線S周りに回転するときに第1可動部14の重量バランスが安定する。
【0037】
第2手首モータ25の出力軸及び第3手首モータ26の出力軸は両方とも、第1手首軸線Sと垂直な方向であって第2手首軸線Bと平行な方向(基準姿勢では水平方向)に延在している。換言すれば、第2手首モータ25の出力軸及び第3手首モータ26の出力軸は、第1可動部14の長手方向に垂直な方向に延在している。したがって、第1可動部14に第2及び第3手首モータ25,26を取り付けても、第1可動部14の長手方向の寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0038】
第1梁部43の手元端部及び第2梁部44の手元端部は、第1手首軸線Sにも第2手首軸線Bにも垂直な方向(基準姿勢では鉛直方向)にズレて配置されている。第1梁部43の手元端部は、第1手首軸線Sよりも第1基端スペース47側(基準姿勢では上側)に配置され、第2梁部44の手元端部は、第1手首軸線Sよりも第2基端スペース48側(基準姿勢では下側)に配置される。一対の梁部43,44を例えば第1手首軸線S周りに180度回転対称に配置することにより、このような構造が実現される。
【0039】
この配置により、第1基端スペース47は、第2手首軸線Bと平行な方向のうち一側では第1梁部43で覆われる一方、他側では第2梁部44で覆われず開放される。このため、第3手首モータ26のハウジングを、第2梁部44の内面よりも他側へとはみ出すように配置することができる。第2基端スペース48、一対の梁部43,44及び第2手首モータ25も同様である。逆に言えば、一対の梁部43,44の間隔を、手首モータ25,26の出力軸線方向の寸法よりも短くすることができる。したがって、第1可動部14の長手方向の寸法を短くするように第1可動部14に第2及び第3手首モータ25,26を取り付けつつ、第1可動部14の第2手首軸線Bの延在方向の寸法を短くすることもできる。また、モータ25,26を配置するスペース47,48がモータ25,26の出力軸線方向における何れか一方の側で開放されるので、第2及び第3モータ25,26を簡単に第1可動部14に取り付け且つ第1可動部14から取り外すことができ、第2及び第3手首モータ25,26を簡便に組み立てたり整備したりすることができる。
【0040】
第1梁部43は第1サイドカバー71で覆われ、第2梁部44は第2サイドカバー72で覆われる。第2手首モータ26は、第1梁部43の内面に取り付けられ、第3手首モータ26の出力軸は、第1梁部43と第1サイドカバー71とで囲まれた空間(図示せず)内に配置される。この空間内に、第3手首モータ26の回転を第3可動部16に伝達する動力伝達機構(図示せず)が収容される。第2手首モータ25は、第2梁部44の内面に取り付けられ、第2手首モータ25の出力軸は、第2梁部44と第2サイドカバー72とで囲まれた空間(図示せず)内に配置される。この空間内に第2手首モータ25の回転を第2可動部15に伝達する動力伝達機構(図示せず)が収容される。
【0041】
このように、一対の梁部43,44は、単に第1可動部14のフレームメンバとしての機能だけでなく、第2及び第3手首モータ25,26が取り付けられるステーとしての機能も、2つの動力伝達機構(図示せず)を個別に収容するハウジングメンバとしての機能も有している。一対の梁部43,44を設けたことにより、2つの動力伝達機構が、第1手首軸線Sと垂直な方向に離れるように、また、第1手首軸線Sを当該垂直な方向において挟むように配置される。このため、第1可動部14が回転するときに第1可動部14の重量バランスが安定する。また、第1又は第2サイドカバー71,72を取り外すだけで、動力伝達機構を整備することができる。しかも、一方の動力伝達機構を整備しようとする場合に、他方の動力伝達機構が邪魔にならず、整備作業の煩雑化を抑制することができる。
【0042】
前述したとおり、手首部3には、エンドエフェクタ8が取外し可能に装着され、ロボット1には、エンドエフェクタ8に電力等を供給するためのエフェクタ用ケーブル9が設けられる。本実施形態では、エフェクタ用ケーブル9が、ロボット1の外部から先端アーム13の手首受け部32の内部へと導かれている。図2では詳細な図示を省略しているが、エフェクタ用ケーブル9は、手首受け部32の内部から手首部3を通過してエンドエフェクタ8に接続される。
【0043】
エフェクタ用ケーブル9は、手首部3を通過する過程では、概ね手首部3の長手方向に沿って延在する。例えば、エフェクタ用ケーブル9は、手首受け部32の内部から、筒部41の内部、基端スペース、ブリッジ部45の内部、先端スペース49、一対のフランジ部51,52の間隙、ディスク部53の貫通孔及び第3可動部16の貫通孔91をこの順で通過する。エフェクタ用ケーブル9は、第1可動部14では、第1手首軸線S上に位置するように設けられ、第3可動部16では、第3手首軸線T上に位置するように設けられる。
【0044】
手首部3は、エフェクタ用ケーブル9が挿通されるガイド孔93を有したケーブルガイド92を有している。ケーブルガイド92は、ブリッジ部45に取り付けられて基端スペース内に配置される。エフェクタ用ケーブル9は、ケーブルガイド92のガイド孔93内に挿通され、それにより基端スペース及びブリッジ部45の内部を通過している。
【0045】
(ケーブルガイドの構造)
図3は、図2に示すケーブルガイド92の側面図である。図4は、図2に示すケーブルガイド92の平面図である。図5は、図4のa−a矢視図、b−b断面図及びc−c断面図を重ね合わせた図である。図3乃至図5を参照した以降の説明でも、方向の概念は、特段断らない限り、ケーブルガイド92を第1可動部14に取り付けた状態での方向を基準とする。例えば、図3の紙面上下方向は第1手首軸線Sにも第2手首軸線Bにも垂直な方向に対応し、図3の紙面左右方向は第1手首軸線Sの延在方向に対応する。図4の紙面上下方向は第2手首軸線Bの延在方向に対応し、図4の紙面左右方向は第1手首軸線Sの延在方向に対応する。図3及び図4の紙面右側は手元側に対応し、紙面左側は手先側に対応する。図3のa−a線は、ケーブルガイド92の手元側端部に接し、b−b線は、ケーブルガイド92の第1手首軸線Sの延在方向の中央部を通過し、c−c線は、ケーブルガイド92の手先側端部を通過する。
【0046】
ケーブルガイド92は、全体として筒状又はラッパ状に形成されている。ケーブルガイド92は、第1手首軸線Sの延在方向に延びる中空のガイド孔93を有しており、ガイド孔93は、第1手首軸線Sの延在方向の両端部(すなわち手元側端部及び手先側端部)で開放されている。
【0047】
ガイド孔93の断面形状は、第1手首軸線Sの延在方向の中央部ではくびれている一方、第1手首軸線Sの延在方向の両端部(すなわち、手先側端部及び手元側端部)では拡開している。ガイド孔93の中央部93bは、両端部93a,93cと対比すると、第1手首軸線Sにも第2手首軸線Bにも垂直な方向に顕著にくびれている。一方、第2手首軸線Bの延在方向の寸法は、中央部93bにおいて最も小さくなるが(図4、図5参照)、ケーブルガイド92の第1手首軸線Sの延在方向の位置に関わらず略一定で推移するとも言える。
【0048】
図5に示すb−b断面を参照するとわかるとおり、ガイド孔93の中央部93bの断面形状は、第1手首軸線Sにも第2手首軸線Bにも垂直な方向には幅狭となるようにしてくびれており、第2手首軸線Bの延在方向には比較的長寸である。例えば、中央部93bの断面形状は、第2手首軸線Bの延在方向に長寸の長円状又は楕円状に形成されている。
【0049】
ガイド孔93の手元側端部93cは、ガイド孔93の手先側端部93aほどには大きく拡開していない。図5に示すc−c断面を参照するとわかるとおり、ガイド孔93の手元側端部93cの断面形状も、第1手首軸線Sにも第2手首軸線Bにも垂直な方向には幅狭であり、第2手首軸線Bの延在方向には長寸である。例えば、手元側端部93cの断面形状も、第2手首軸線Bの延在方向に長寸の長円状又は楕円状に形成される。
【0050】
ガイド孔93の手先側端部93aは、中間部93bと比べるともちろんのこと、手元側端部93cと比べても大きく拡開している。図5に示すa−a断面を参照するとわかるとおり、ガイド孔93の手先側端部93aの断面形状は、第1手首軸線Sにも第2手首軸線Bにも垂直な方向の寸法が、第2手首軸線Bの延在方向の寸法と略同一となるようにして形成されている。それにより、手先側端部93aの断面形状は、中央部93b及び手元側端部93cと比較すると、第1手首軸線Sにも第2手首軸線Bにも垂直な方向において顕著に拡大している。例えば、手先側端部93aの断面形状は、菱形状、多角形状又は円形状に形成される。
【0051】
ケーブルガイド92の手先側端部には、ガイド孔93の開口から半径方向外側に拡がった取付フランジ94を有している。取付フランジ94には複数のビス挿通孔95が設けられている。ビス挿通孔95に通されたビス(図示せず)を用いて、ケーブルガイド92を第1可動部14に固定することができる。本実施形態では、取付用フランジ94が、周方向に無端状に連続して円環状に形成されているが、ビス止めがなされる部分のみに対応するようにしてガイド孔93の開口から放射状に複数のフランジ部が配置されるようになっていてもよい。
【0052】
ケーブルガイド92は、分割可能に第1ガイド半体101と第2ガイド半体102とを結合して成る。第1ガイド半体101及び第2ガイド半体102は、同一形状に形成されており、ケーブルガイド92を第1手首軸線Sにも第2手首軸線Bにも直交する方向に二分する。よって、ケーブルガイド92のパーティングラインは、第1手首軸線S上に位置する。第1ガイド半体101は、第2手首軸線Bの延在方向の一方側の端部に、第1手首軸線Sの延在方向に間隔をおいて、複数の結合用フランジを有している。これら結合用フランジ103は、第1ガイド半体101のうちガイド孔を形成する本体部分105から前記一方側に突出するように設けられている。第1ガイド半体101は、第2手首軸線Bの延在方向の他方側の端部にも、同様にして複数の結合用フランジ103を有している。本実施形態では、第1手首軸線Sを基準にして、一方側と他方側とに同じ数(4つ)の結合用フランジ103が線対称に配置され、合計8個の結合用フランジ103(#1〜#8)が、第1手首軸線Sの延在方向に分かれて、また、第2手首軸線Bの延在方向に分かれて配置されている。
【0053】
第2ガイド半体102にも、第1ガイド半体101と同様にして、ガイド孔93を形成する本体部分106から、第2手首軸線Bの延在方向両側に突出するようにして、第1手首軸線Sの延在方向に分かれて且つ第2手首軸線Bの延在方向に分かれて、複数の結合用フランジ104が設けられている。
【0054】
第1ガイド半体101を第2ガイド半体102と結合するにあたっては、第1ガイド半体101の結合用フランジ103を、第2ガイド半体102の対応する結合用フランジ105に合わせる。これにより、結合用フランジ103のビス挿通穴107が、結合用フランジ104のビス挿通穴108と連通する。次に、第1手首軸線S及び第2手首軸線に垂直な方向に重なり合った合計8組の結合用フランジ103,105の全てにビスを通す。これにより、第1ガイド半体101が第2ガイド半体102に結合され、前述した断面形状を有するガイド孔93が形成される。
【0055】
(ケーブルガイドの配置)
図6及び図7は、基準姿勢での手首部3の部分断面図である。図6では、3つの手首軸線S,B,Tが図示された断面上で延在する。図7では、第1及び第3手首軸線S,Tが図示された断面上で延在する一方、第2手首軸線Bが当該断面に直交する。
【0056】
図6及び図7に示すように、ケーブルガイド92は、ガイド孔93の中心軸線が第1手首軸線S上に位置するように第1可動部14に設けられている。ケーブルガイド92を第1可動部14に取り付けるため、ブリッジ部45には、第1手首軸線Sの延在方向に貫通孔45aが形成されている。貫通孔45aは円形状の断面を有し、貫通孔45aの中心軸線は第1手首軸線S上に位置する。ケーブルガイド92は、貫通孔45aの内部に挿し込まれている。
【0057】
取付用フランジ94は、ブリッジ部45の手先側の端面に当接され、ブリッジ部45に例えばビス等の固定要素を用いて取外し可能に固定される。ケーブルガイド92は、ブリッジ部45の貫通孔45aよりも、第1手首軸線Sの延在方向において大きい寸法を有している。よって、ケーブルガイド92は、貫通孔45aを抜け、ブリッジ部45の手元側の端面から基端スペースを手元側に向かって突出するように設けられる。このようにケーブルガイド92を設けると、ガイド孔93の手元側端部が筒部41の内部又は基端スペースの手元部分と連通し、手先側端部にて先端スペース49と連通する。
【0058】
本実施形態では、ブリッジ部45が、ケーブルガイド92を取り付けるために第1可動部14に設けられたガイド取付壁としての機能を果たしている。また、ブリッジ部45の貫通孔45aが、ケーブルガイド92がガイド取付壁を貫通するように第1可動部14に取り付けるべくガイド取付壁に設けられた取付穴としての機能を果たしている。
【0059】
基端スペースは、ケーブルガイド92により、基準姿勢で上側の第1基端スペース47と第2基端スペース48とに物理的に分離される。前述のとおり、第2手首モータ25は、第2基端スペース47に配置され、第3手首モータ26が第1基端スペース47に配置されるところ、これら第2及び第3手首モータ25,26は、ケーブルガイド92の手元側端部を第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向に挟むように配置される。
【0060】
上記のようにケーブルガイド92を配置することにより、エフェクタ用ケーブル9は、筒部41の内部空間に導入された後、ケーブルガイド92の手元側端部の開口を介してガイド孔93に導入される。エフェクタ用ケーブル9はガイド孔93を通過した後、ケーブルガイド92の手先側端部の開口を介して先端スペース49に導入される。
【0061】
ケーブルガイド92が、第1可動部14の回転中心となる第1手首軸線S上に位置するように設けられているので、ガイド孔93に挿通されたエフェクタ用ケーブル9も第1手首軸線S上に位置するように設けられる。このため、エフェクタ用ケーブル9が、手首部3の動作に連れて大きく振れ回ったり、作業スペース周辺の構造体やワークと干渉したりするのを抑制することができる。
【0062】
また、ガイド孔93は、軸線方向の中央部でくびれており両端部で拡開している。このため、エフェクタ用ケーブル9がケーブルガイドの端部に引っ掛かって損傷したり、ケーブルガイドの端部で磨耗して損傷したりするような自体を良好に抑制することができる。
【0063】
しかも、第1手首軸線Sは一対の梁部43,44で囲まれており、ケーブルガイド92及びエフェクタ用ケーブル9は一対の梁部43,44で囲まれたスペースに配置される。このため、エフェクタ用ケーブル9を一対の梁部43,44で保護することができる。このように、一対の梁部43,44は、前述のフレームメンバ、ステー及びハウジングメンバとしての機能だけでなく、エフェクタ用ケーブル9をロボット外部の周辺構造から保護するプロテクタとしての機能も有する。したがって、エフェクタ用ケーブル9を保護するために専用の構造を手首部3に設けることなく、エフェクタ用ケーブル9の外部構造との干渉を抑制することができる。
【0064】
そして、ケーブルガイド92は手先側端部で第1可動部14のブリッジ部45に取り付けられる一方、手元側端部では第1可動部14へと直接的に固定されてはいない。このため、ケーブルガイド92を第1可動部14に取り付ける作業を簡単に行うことができる。すると、ケーブルガイド92は、一見片持ち梁状になるが、手先側端部では第2及び第3手首モータ25,26によって挟まれている。このため、ケーブルガイド92を手先側端部でブリッジ部45に取り付けられていても、ケーブルガイド92の全体を第1可動部14にしっかりと固定することができる。仮に手首部3の動作に応じてエフェクタ用ケーブル9がガイド孔93の内面を押し付けられても、その応力を第2及び第3手首モータ25,26で受けることができ、ケーブルガイド92の手先側端部やブリッジ部45に作用する応力を軽減することができる。なお、前述したとおり、第2及び第3手首モータ25,26は、第1可動部14の回転中心となる第1手首軸線Sを挟むように第1可動部14に取り付けられるので、第1可動部14の回転時に第1可動部の重量バランスが安定する。また、第2及び第3手首モータ25,26に接続される動力伝達機構を簡素化することができる。
【0065】
第2手首モータ25は、ケーブルガイド92の外面に設置され、第3手首モータ26は、ケーブルガイド92の外面であって、第2手首モータ25が取り付けられている側とは第1手首軸線S周りに略180度離れた部分に設置される。このように、ケーブルガイド92は、第2及び第3手首モータ25,26を取り付けるためのステーとしての機能も有している。このように、基端スペース内にケーブルガイド92が設けられると、第2及び第3手首モータ25,26を安定的に設置することもできる。また、エフェクタ用ケーブル9が第2又は第3手首モータ25,26と干渉するのを良好に抑制することもできる。しかも、ケーブルガイド92は、第1梁部43及び第2梁部44を接続するブリッジ部45に設けられて一対の梁部43,44の間に配置される一方、梁部43,44それぞれによって形成される一対の空間内に動力伝達機構(図示せず)が配置される。このため、エフェクタ用ケーブル9は、これら動力伝達機構と干渉することもない。
【0066】
なお、モータ25,26の安定設置及びエフェクタ用ケーブル9の干渉抑制のため、例えば、ケーブルガイド92の手元側端部は、第2手首モータ25の出力軸及び第3手首モータ26の出力軸よりも、更に手元側に突出していることが好ましい。
【0067】
ケーブルガイド92は、第2及び第3手首モータ25,26により挟まれる箇所において、第2手首軸線Bの延在方向に長寸である。第2手首軸線Bの延在方向は、第2及び第3手首モータ25,26の出力軸の軸線方向でもあり、本実施形態では、第2手首モータ25のハウジングが、出力軸線方向に長寸であり、第3手首モータ26のハウジングが、出力軸線方向に長寸である。このため、ケーブルガイド92が、第2及び第3手首モータ25,26を設置するため大きな設置面を提供するので、第2及び第3手首モータをケーブルガイド92で安定的に支持することができる。
【0068】
逆に、ケーブルガイド92は、第2及び第3手首モータ25,26により挟まれる箇所において、第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向に短寸である。特に、中間部では、くびれのため、このような傾向が顕著となる。ガイド孔93は当該垂直な方向において、定常状態におけるエフェクタ用ケーブル9を挿通させるために必要とされるだけの小さい寸法を有している。このため、第2及び第3手首モータ25,25が、エフェクタ用ケーブル9及びケーブルガイド92、ガイド孔93及びエフェクタ用ケーブル9を第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向に挟むように配置しつつも、第2及び第3手首モータ25,26を当該垂直な方向に極力密集させることができる。これにより、手首部3が第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向に大型化するのを良好に抑制することができる。
【0069】
ケーブルガイド92の中央部及び手元側端部が、第2手首軸線Bの延在方向に長寸で、第1手首軸線S及び第2手首軸線Sに垂直な方向に短寸であると、第1可動部14及び第3可動部16が、前述した基準回転位置に位置していれば、捩られずに定常状態となる。第1可動部14又は第3可動部16が基準回転位置から回転すると、エフェクタ用ケーブル9が捩られる。前述のとおり、エフェクタ用ケーブル9は、複数本のケーブルを束にして成るので、捩りにより、エフェクタ用ケーブル9は前端の断面が楕円状に変形する。つまり、エフェクタ用ケーブル9は、ある方向に縮径して収縮する一方、別の方向に拡径して膨張する。ガイド孔93は、第2手首軸線Bの延在方向に長寸であるので、エフェクタ用ケーブル9の断面形状が捩れにより変形したとしてもこの変形が許容され、エフェクタ用ケーブル9がケーブルガイド92の内面に圧迫されるのを抑制することができる。
【0070】
更に、このように捩られた状態から第2可動部15が基準回転位置から回転すると、エフェクタ用ケーブル9は、捩れが解消される方向へと回転しながら、第1手首軸線Sと直交する方向に振れようとする。ケーブルガイド92は、中央部及び手元側端部が第2手首軸線Bの延在方向に長寸であるので、このようなエフェクタ用ケーブル9の振れを許容することもできる。しかも、第2手首軸線Bに近い側の端部である手先側端部においては、中央部よりも手元側端部よりも大きく拡開しているので、このような振れが生じてもエフェクタ用ケーブル9に損傷が生じるのを抑制することができる。
【0071】
(ケーブルガイドの着脱)
図8(a)は、ケーブルガイド92が取り付けられた状態の第1可動部14の平面図、図8(b)は、ケーブルガイド92が僅かに引き抜かれた状態の第1可動部14の平面図である。ケーブルガイド92が、筒状に形成されており、エフェクタ用ケーブル9が、ケーブルガイド92に挿通されているので、一旦ケーブルガイド92にエフェクタ用ケーブル9が挿通されると、ケーブルガイド92を第1可動部14から取り外すことは困難をとなる。本実施形態に係るロボット1では、ケーブルガイド92が分割可能に第1ガイド半体101及び第2ガイド半体102を結合して成るので、エフェクタ用ケーブル9の取り回しを変えることなく、ケーブルガイド92のみを第1可動部14から取り外すことができる。
【0072】
つまり、第2可動部15は、一対の梁部43,44の内面にそれぞれ連結される一対のフランジ部51,52を有し、ブリッジ部45の先端側には、一対のフランジ部51,52により囲まれて間隙が形成されている。この間隙を活用して、手首部3を分解することなくケーブルガイド92を手先側に引き抜くことが可能である。そして、第1可動部14は、第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向に見てH字状に形成され、基端スペース内には当該垂直な方向のいずれの側からもアクセス可能になっている。他方、第1ガイド半体101の結合用フランジ103は、第2ガイド半体102の結合用フランジ104と、第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向に重なり合っており、これら結合用フランジ103,104には、当該垂直な方向にビスが挿し通されている。
【0073】
第2及び第3手首モータ25,26が重なるように配置されている箇所は、これらモータ25,26と干渉するので、基端スペース内にまでアクセスすることができない。本実施形態では、第2及び第3手首モータ25,26がブリッジ部45の手元側の端面から更に手元側に離れて配置されている。また、第2及び第3手首モータ25,26が、筒部41の手先側の端面から更に手先側に配置されている。結果として、基端スペースのうち、ブリッジ部45と第2及び第3手首モータ25,26との間、及び第2及び第3手首モータ25,26と筒部41との間にはそれぞれ、第1可動部14の外側からアクセス可能なスペースが形成される。以降の説明では、ブリッジ部45よりも手先側のアクセス可能な空間を「第1アクセス空間111」と称し、ブリッジ部45とモータ25,26との間のアクセス可能な空間を「第2アクセス空間112」と称し、モータ25,26と筒部41との間のアクセス可能な空間を「第3アクセス空間113」と称する。
【0074】
次に、ケーブルガイド92を取り外す手順について説明する。図8(a)に示すように、ケーブルガイド92が第1可動部14に取り付けられている状態で、第2アクセス空間112又は第3アクセス空間113に露出している結合用フランジ103からビスを取り外す。本実施形態においては、結合用フランジ103(#3),103(#4),103(#6)が、第2アクセス空間112内に露出しており、結合用フランジ103(#7)が、第3アクセス空間113に露出している。
【0075】
次に、取付用フランジ94に挿通されているビスを取り外し、ブリッジ部45からケーブルガイド92を取り外す。次に、ケーブルガイド92を手先側に引き抜く。図8(b)に示すように、この引き抜く過程で、手先端部に設けられている結合用フランジ103(#1),103(#2)が、第1アクセス空間111に露出する。露出したところで、これら結合用フランジ103(#1),103(#2)に挿通されているビスを取り外す。また、この引き抜く過程で、その他の結合用フランジ103(#5)、103(#8)が第2アクセス空間に露出する。それぞれ露出したところで、各結合用フランジ103(#5),103(#8)に挿通されているビスを取り外す。
【0076】
このようにして全ての結合用フランジ103(#1〜#8)からビスを取り外すと、第1ガイド半体101と第2ガイド半体102とが分解される。そこで、2つのガイド半体101,102を順番に1つずつ取り外す。
【0077】
以上の手順を踏むことにより、エフェクタ用ケーブル9を挿通させる筒状のガイド孔93を有したケーブルガイドを、第1可動部14を分解したりエフェクタ用ケーブル9の取り回しを変えたりすることなく、第1可動部14から取り外すことができる。よって、ケーブルガイド92の交換を簡便に行うことができる。また、エフェクタ用ケーブル9のメンテナンス作業においては、ケーブルガイド92内を挿通している状態を解除すると都合が良い場合がある。このような場合に、エフェクタ用ケーブル9のメンテナンス作業が簡便になる。なお、ケーブルガイド92を第1可動部14に再び取り付けるときは、これと逆の手順を踏めばよい。
【0078】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、円滑な作業の妨げとならないようにしてケーブルを取り回しつつ手首部の構成を全体として小型化することができるという作用効果を奏し、多関節型産業用ロボットに適用すると有益である。
【符号の説明】
【0080】
1 多関節型産業用ロボット
2 アーム部
3 手首部
14 第1可動部
15 第2可動部
16 第3可動部
24 第1手首モータ
25 第2手首モータ
26 第3手首モータ
45 ブリッジ部
45a 貫通孔
92 ケーブルガイド
93 ガイド孔
94 取付用フランジ
101 第1ガイド半体
102 第2ガイド半体
103,104 結合用フランジ
S 第1手首軸線
B 第2手首軸線
T 第3手首軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム部と、前記アーム部の先端部に連結される手首部と、前記手首部を駆動する複数のモータと、を備え、
前記手首部が、
前記アーム部に連結され、前記アーム部に対して第1手首軸線周りに回転する第1可動部と、
前記第1可動部に連結され、前記第1可動部に対して前記第1手首軸線と異なる方向に延びる第2手首軸線周りに回転する第2可動部と、
前記第2可動部に連結され、前記第2可動部に対して前記第2手首軸線と異なる方向に延びる第3手首軸線周りに回転し、エンドエフェクタが装着される第3可動部と、
前記エンドエフェクタに電力、動力、信号及び材料の少なくともいずれかを供給するためのエフェクタ用ケーブルを挿通させるガイド孔を有したケーブルガイドと、を有し、
前記複数のモータのうち2つのモータが、前記第1可動部に取り付けられ、前記ケーブルガイドを前記第1手首軸線に直交する方向に挟むようにして配置され、
前記ケーブルガイドが、前記第1可動部に前記第1手首軸線上に位置するように設けられ、前記ガイド孔の断面形状が、前記第1手首軸線の軸線方向の中央部でくびれており、両端部で拡開している、多関節型産業用ロボット。
【請求項2】
前記第2手首軸線が前記第1手首軸線に垂直であり、前記ガイド孔の前記中央部が、前記第1手首軸線及び前記第2手首軸線に直交する方向に幅狭となるようにしてくびれており、前記第2手首軸線の延在方向に長寸である、請求項1に記載の多関節型産業用ロボット。
【請求項3】
前記第1可動部が、前記ケーブルガイドを取り付けるためのガイド取付壁を有し、前記ケーブルガイドは、前記第1手首軸線の軸線方向手先側の端部で前記ガイド取付壁に取り付けられ、前記第1手首軸線の軸線方向手元側の端部で前記2つのモータに挟まれている、請求項1又は2に記載の多関節型産業用ロボット。
【請求項4】
前記ケーブルガイドは、分割可能に第1ガイド半体及び第2ガイド半体を結合してなり、前記ガイド取付壁に設けられた取付穴に挿入された状態で前記ガイド取付壁に取り付けられ、
前記第1ガイド半体を前記第2ガイド半体に結合するための結合部が、前記ケーブルガイドを前記ガイド取付壁に取り付けた状態で、又は、前記ケーブルガイドを前記取付穴から引き出した状態で、前記第1可動部の外からアクセス可能である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多関節型産業用ロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111716(P2013−111716A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261260(P2011−261260)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】