説明

多面体構造ポリシロキサン変性体、その製造方法および該変性体を含む組成物

【課題】 高い透明性、耐熱性、耐光性を有し、加工性等に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体およびこれから得られる組成物を提供すること。
【解決手段】 アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物(A)に、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)および環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)をヒドロシリル化させて得られる多面体構造ポリシロキサン変性体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い透明性、耐熱性、耐光性、加工性等に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体、およびこれから得られる組成物に関する。さらに詳しくは、アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物(A)に、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)および環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)をヒドロシリル化させて得られる多面体構造ポリシロキサン変性体、その製造方法および該変性体を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多面体骨格を有するポリシロキサン化合物は、その特異的な化学構造から優れた耐熱性、耐光性、化学的安定性、低誘電性等を示し、その応用が期待されている。
例えば、光素子封止剤用途への展開を意図し、多面体骨格を有するシルセスキオキサンを用いた樹脂組成物が開示されている(特許文献1、2)。しかしながら、必ずしも十分な耐熱性や耐光性を有しておらず、さらには、材料が脆いために、材料としての加工性、例えば、封止剤として適用する上で重要特性の1つである切削加工性(ダイシング性)には必ずしも優れず、材料としての十分な使いこなしができない場合があり、改善が求められている。
【0003】
また、上述のような加工性を付与するために、多面体骨格を有するポリシロキサンへの種々の有機基の導入が試みられているが(特許文献3)、有機基を導入した結果、多面体骨格を有するポリシロキサン本来の特徴である耐熱性や耐光性を低下する恐れがある。
上述のように、多面体骨格を有するポリシロキサン化合物を用いた材料の開示は見られるが、本来期待される高い耐熱性・耐光性を維持しつつ、加工性・成形性を持ち合せた材料の例は見られず、新たな材料の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−359933
【特許文献2】特開2007−31619
【特許文献3】特表2008−523165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題が解決された、高い透明性、耐熱性、耐光性を有し、加工性等に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体、その製造方法および該変性体を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成によるものである。
【0007】
1). アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物(A)に、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)および環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)をヒドロシリル化させて得られる多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0008】
2). (B)由来のヒドロシリル基が残留していないことを特徴とする1)に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0009】
3). 温度20℃において、液状であることを特徴とする、1)または2)に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0010】
4). 分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有する事を特徴とする、1)〜3)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0011】
5). (A)成分が、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する事を特徴とする、1)〜4)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0012】
6). (A)成分のアルケニル基が、ビニル基であることを特徴とする、1)〜5)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0013】
7). (B)成分が、直鎖構造を有するポリシロキサンであることを特徴とする、1)〜6)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0014】
8). (B)成分が、分子末端にヒドロシリル基を有することを特徴とする、1)〜6)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0015】
9). (C)成分が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンであることを特徴とする、1)〜6)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0016】
10). アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(A)と直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)とをヒドロシリル化反応させて中間体(a)を得た後、さらに該中間体(a)と環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)とをヒドロシリル化反応させて得られることを特徴とする、1)〜9)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0017】
11). アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(A)、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)、環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)をヒドロシリル化反応させて得られることを特徴とする、1)〜9)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体の製造方法。
【0018】
12). アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(A)と直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)とをヒドロシリル化反応させて中間体(a)を得た後、さらに該中間体(a)と環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)とをヒドロシリル化反応させて得られることを特徴とする、1)〜10)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体の製造方法。
【0019】
13). 1)〜10)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体を含むポリシロキサン系組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い透明性、耐熱性、耐光性を有し、加工性等に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体、その製造方法および該変性体を含む組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明は、アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物(A)に、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)および環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)をヒドロシリル化させて得られる多面体構造ポリシロキサン変性体に関する。
【0022】
<(A)多面体構造ポリシロキサン>
本発明における(A)成分は、アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物であればよく、特に限定されない。
【0023】
以下、前記、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物について説明する。
【0024】
本発明において使用される多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物において、多面体骨格に含有されるSi原子の数は6〜24であることが好ましく、具体的に、例えば、以下の構造で示される多面体構造を有するシルセスキオキサンが例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。
【0025】
【化1】

【0026】
上記式中R1〜R8は、アルケニル基;アルケニル基を含有する基;エポキシ基、メルカプト基;アミノ基を含有する有機基;水素原子;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子あるいはシアノ基などで置換した基から選択される同一又は異種の基であり、R1〜R8のうちの少なくとも1つは、アルケニル基あるいはアルケニル基を含有する基を示す。
【0027】
中でも好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の非置換又は置換の1価の炭化水素基である。これらのうち、アルケニル基としては具体的にはビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基を例示することができる。アルケニル基を含有する基としては具体的には(メタ)アクリロイル基を例示することができる。
【0028】
アルキル基としては好ましくは炭素数が1〜20のアルキル基を、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を例示することができる。シクロアルキル基としては具体的にはシクロヘキシル基を例示することができる。アリール基としては具体的にはフェニル基、トリル基を例示することができる。ハロゲン原子あるいはシアノ基などで置換した基としては具体的にクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基をあげることができる。
【0029】
前記アルケニル基あるいはアルケニル基を含有する基においては、耐熱性の観点からアルケニル基が、さらにはビニル基が好ましく、アルケニル基あるいはアルケニル基を含有する基以外の基が選択される場合は、耐熱性の観点からアルキル基、さらにはメチル基が好ましい。
【0030】
上記、多面体構造を有するシルセスキオキサンは、例えば、RSiX3(式中Rは、上述のR1〜R8を表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、RSiX3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより、閉環し、多面体骨格を有するシルセスキオキサンを合成する方法も知られている。
【0031】
本発明での多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物において、さらに好ましい例としては、以下の構造で示されるような多面体構造を有するシリル化ケイ酸が例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。該化合物においては、多面体骨格を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合していることから、得られる硬化物の剛直になり過ぎず、良好な成形体を得ることができる。
【0032】
【化2】

【0033】
上記、構造中、R9〜R32は、アルケニル基;アルケニル基を含有する基;エポキシ基、メルカプト基;アミノ基を含有する有機基;水素原子;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子あるいはシアノ基などで置換した基から選択される同一又は異種の基であり、R9〜R32のうち、少なくとも1つはアルケニル基あるいはアルケニル基を含有する基を示す。
【0034】
これらのうち、アルケニル基としては具体的にはビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基を例示することができる。アルケニル基を含有する基としては具体的には(メタ)アクリロイル基を例示することができる。
【0035】
アルキル基としては好ましくは炭素数が1〜20のアルキル基を、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を例示することができる。シクロアルキル基としては具体的にはシクロヘキシル基を例示することができる。アリール基としては具体的にはフェニル基、トリル基を例示することができる。
【0036】
ハロゲン原子あるいはシアノ基などで置換した基としては具体的にクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基をあげることができる。
【0037】
これらR9〜R32のうち、少なくとも1つはアルケニル基であることが好ましい。前記アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましく、アルケニル基以外の基が選択される場合も、耐熱性、耐光性の観点からメチル基が好ましい。
【0038】
多面体構造を有するシリル化ケイ酸の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成される。前記合成方法としては、具体的に、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。
【0039】
本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合したポリシロキサンを得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカ含有する物質からも、同様の多面体構造を有するシリル化ケイ酸を得ることが可能である。
【0040】
本発明においては、多面体骨格に含有されるSi原子の数として、6〜24、さらに好ましくは、6〜10のものを好適に用いることが可能である。また、Si原子数の異なる多面体骨格を有するポリシロキサンの混合物であってもよい。以下、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)について説明する。
【0041】
<直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)>
本発明における(B)成分としては、ヒドロシリル基を有する化合物であれば特に問題ないが、得られる変性ポリシロキサンの透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、さらに好ましくは、ヒドロシリル基を有する直鎖構造のシロキサン化合物である。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明における(B)成分の具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0043】
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH32SiO1/2単位)とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0044】
本発明におけるヒドロシリル基含有ポリシロキサンの重合度については、3以上300以下のものが好ましい。重合度が3未満の場合、得られる硬化物が脆くなり、また、300を超えるものは、入手性に劣る。
(B)成分においては、耐熱性の観点から、Si原子上は、水素原子およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0045】
(B)成分の添加量は、(A)成分のアルケニル基に対してSi原子に直結した水素原子が30〜500モル%、好ましくは50〜200モル%となる割合であることが望ましい。(B)成分の添加量が多すぎると、発泡等による外観不良のリスクが高くなり、また、少なすぎると、硬化物の強度が不十分となる。
【0046】
以下、環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)について説明する。
【0047】
<環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)>
本発明における(C)成分としては、ヒドロシリル基を有する化合物であれば特に問題ないが、得られる変性ポリシロキサンの透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、さらに好ましくは、ヒドロシリル基を有する環状構造のシロキサン化合物である。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明における(C)成分の具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0049】
(C)成分においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0050】
以下、多面体構造ポリシロキサン変性体について述べる。
【0051】
<多面体構造ポリシロキサン変性体>
本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体は、アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物(A)に、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)および環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)をヒドロシリル化反応により合成することができる。
【0052】
本発明においては、ポリシロキサン化合物(A)に直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)を用いてアルケニル基の一部をヒドロシリル化する際、(B)成分由来のヒドロシリル基が残留しないことが好ましい。ヒドロシリル基が残留すると、例えば得られる硬化物の耐熱性、耐光性が低下したり、また、十分な切削加工性が得られない恐れがある。前記(B)成分由来のヒドロシリル基の残留を低減させるために、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体の製造においては、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(A)と直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)とをヒドロシリル化反応させて中間体(a)を得た後、さらに該中間体(a)と環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)とをヒドロシリル化反応させることが好ましい。
【0053】
多面体構造ポリシロキサン変性体の合成時に用いるヒドロシリル化触媒としては、後述のヒドロシリル化触媒成分を用いることができる。ヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、多面体構造ポリシロキサン(A)のアルケニル基1モルに対して10-1〜10-10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10-4〜10-8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多すぎると、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、得られる硬化物の耐光性の低下する恐れがあり、また、硬化物が発泡する恐れもある。また、ヒドロシリル化触媒が少なすぎると、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
【0054】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、好ましくは、40〜250℃、さらに好ましくは、45℃〜140℃である。
【0055】
このようにして得られた多面体構造ポリシロキサン変性体は、アルケニル基を少なくとも2個以上、好ましくは2.5個以上含有していることで、温度20℃において液状とすることが可能であり、ハンドリング性に優れ、各種化合物との相溶性を確保できる。また、分子内に、少なくとも3個のヒドロシリル基が導入されていることが好ましく、ヒドロシリル基を含有していることで、後述の組成物を得ることができる。以下、組成物について説明する。
【0056】
<組成物>
本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体に、アルケニル基を有する化合物、ヒドロシリル化触媒を用いて組成物と成すことができる。さらに硬化遅延剤を用いることで組成物安定性、硬化過程でのヒドロシリル化の反応性の調整をすることができる。
【0057】
組成物には必要に応じて種々の配合物を適宜選択して用いることができる。本発明のポリシロキサン系組成物は、透明な液状性樹脂組成物となす事が可能である。液状組成物と成すことにより、基材に塗布し、加熱して硬化させることで透明の膜を得ることができ、例えば、各種接着剤、コーティング剤、封止剤として好適に用いることが可能である。
【0058】
また、本組成物は成形体に流し込み、加熱することにより、硬化物として得ることもできる。
【0059】
硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは40〜250℃である。硬化温度が高くなり過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃、180℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることが可能となる。
【0060】
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量その他、本願組成物のその他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜20時間、好ましくは10分〜16時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0061】
本発明における組成物に用いることのできるアルケニル基を有する化合物は、1分子中に少なくともアルケニル基を2個含有するものが好ましく、アルケニル基を有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサン、アルケニル基を含有する環状シロキサンなどが例示される。
【0062】
これらアルケニル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。得られる硬化物の強度の観点から、分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンであることが好ましく、両末端にアルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサンであることがさらに好ましい。
【0063】
直鎖構造を有するアルケニル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0064】
分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0065】
アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0066】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0067】
本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体に添加するヒドロシリル化触媒については、通常ヒドロシリル化触媒化触媒として用いられるものを用いることができ特に制限はなく、任意のものが使用できる。
【0068】
具体的には例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34}(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0069】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0070】
また、前述した多面体構造ポリシロキサン変性体中に、ヒドロシリル化触媒が残存する場合は、残存するヒドロシリル化触媒を用いることも可能である。さらに、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、ヒドロシリル化触媒を追加することができる。
【0071】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましい。
本発明のポリシロキサン系組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもかまわない。
【0072】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示されうる。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示されうる。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示されうる。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示されうる。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。
【0073】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10-1〜103モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0074】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ増量剤として粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンなどの充填剤を添加してもよい。
【0075】
また、本発明のポリシロキサン系組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。
【0076】
この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0077】
また、本発明のポリシロキサン系組成物を難燃性、耐火性にするためには二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe23、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0078】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
【0079】
本発明のポリシロキサン系組成物は、成形体として使用することができる。成形方法としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の方法を使用することができる。
【0080】
本発明によるポリシロキサン系組成物から得られる成形体は、耐熱性、耐光性に優れる。
【0081】
本発明のポリシロキサン系組成物は、光学材料用組成物として用いることができる。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0082】
本発明において得られる変性体および組成物の用途としては、具体的には、カラーフィルター、レジスト材料、液晶ディスプレイ分野における基板材料、パッシベーション膜、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。
【0083】
また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLED素子のモールド材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0084】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。
【0085】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーが例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0086】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0087】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0088】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0089】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラスが例示される。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートが例示される。
【0090】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
【0091】
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【実施例】
【0092】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0093】
<試験方法>
(耐熱試験)
200℃に温度設定した熱風循環オーブン内にて、3mm厚板状成形体を12時間養生し、養生後の外観を目視で評価し、透明性の変化がみられない場合を○、着色がみられる場合を×とした。
【0094】
(光線透過率)
紫外可視分光光度計V−560(日本分光株式会社製)を用い、温度20℃/湿度50%の条件下、波長700nmでの光線透過率を測定した。
【0095】
(ダイシング性)
ISOMETTM低速切断機(BUEHLER製)を用い、3mm厚板状成形体をダイヤモンドカッターで切断し、クラックなく切断できたものを○、切断できたが、数個のクラックが入ってしまったものを△、多数クラックが入り、切断できなかったものを×とした。
【0096】
(製造例)
多面体構造を有するポリシロキサンの合成方法としては、48%コリン水溶液386gにテトラエトキシシラン312gを加え、室温で2時間激しく攪拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、攪拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール225mLを加え均一溶液とした。ジメチルビニルクロロシラン252g、トリメチルクロロシラン98g、ヘキサン225mLの溶液を攪拌しながら、得られた均一溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で攪拌し洗浄した後、ろ別することにより多面体構造を有するポリシロキサン170gを得た。得られたポリシロキサンの1H−NMRより、メチルビニルクロロシラン由来のビニル基が導入している事を確認した。
【0097】
(実施例1)
製造例で得られた多面体構造を有するポリシロキサン5g、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.5μL、トルエン15gの混合溶液を、分子末端にヒドロシリル基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)7gとトルエン20gの混合溶液に滴下し、105℃で1時間加温したのち、室温まで冷却した。1H−NMRより、直鎖状ポリジメチルシロキサン由来のヒドロシリル基が消失している事を確認した。
【0098】
次いで得られた反応溶液に白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.75μLを追加し、1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(クラリアント製)7gとトルエン7gの混合溶液に滴下し、105℃で2時間加温したのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液から、トルエンと未反応の1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体16gを得た。得られたポリシロキサン変性体は、温度20℃で液状であった。また、1H−NMRより、1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン由来のヒドロシリル基が導入している事を確認した。
【0099】
得られた多面体構造ポリシロキサン変性体6.0gに、ビニル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVD8MV、クラリアント製)3.10g、ビニル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−V33、ゲレスト製)0.31g、ジメチルマレート0.34μLを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。得られた多面体構造ポリシロキサン系組成物を型枠に流し込み、80℃で3時間、90℃で2時間、100℃で2時間、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃で1時間加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。このようにして得られた成形体の耐熱試験、耐光試験、ダイシング性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(実施例2)
製造例で得られた多面体構造を有するポリシロキサン5g、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)1.25μL、トルエン15gの混合溶液を、分子末端にヒドロシリル基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)7g、1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(クラリアント製)7g、トルエン27gの混合溶液に滴下し、105℃で1時間加温したのち、室温まで冷却した。
【0101】
得られた反応溶液から、トルエンと未反応の1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体14gを得た。得られたポリシロキサン変性体は、温度20℃で液状であり、1H−NMRよりヒドロシリル基が導入している事を確認した。
【0102】
得られた多面体構造ポリシロキサン変性体6.0gに、ビニル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVD8MV、クラリアント製)3.09g、ビニル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−V33、ゲレスト製)0.62g、ジメチルマレート0.46μLを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。得られた多面体構造ポリシロキサン系組成物を型枠に流し込み、80℃で3時間、90℃で2時間、100℃で2時間、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃で1時間加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。このようにして得られた成形体の耐熱試験、耐光試験、ダイシング性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(比較例1)
製造例で得られた多面体構造を有するポリシロキサン10g、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)2.51μL、トルエン30gの混合溶液を、1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(クラリアント製)7gとトルエン7gの混合溶液に滴下し、105℃で2時間加温したのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液から、トルエンと未反応の1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体14gを得た。
【0104】
得られた多面体構造ポリシロキサン変性体6.0gに、ビニル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MVD8MV、クラリアント製)10.2g、ジメチルマレート1.58μLを加え、多面体構造ポリシロキサン系組成物を調整した。得られた多面体構造ポリシロキサン系組成物を型枠に流し込み、80℃で3時間、90℃で2時間、100℃で2時間、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃で1時間加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。このようにして得られた成形体の各種評価結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
以上のように、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体より得られる組成物は、透明性、耐熱性、耐光性、ダイシング性に優れている。また、液状組成物としての取り扱いも可能となるため、加工性・成形性にも優れることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物(A)に、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)および環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)をヒドロシリル化させて得られる多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項2】
(B)由来のヒドロシリル基が残留していないことを特徴とする請求項1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項3】
温度20℃において、液状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項4】
分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有する事を特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項5】
(A)成分が、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する事を特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項6】
(A)成分のアルケニル基が、ビニル基であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項7】
(B)成分が、直鎖構造を有するポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項8】
(B)成分が、分子末端にヒドロシリル基を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項9】
(C)成分が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項10】
アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(A)と直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)とをヒドロシリル化反応させて中間体(a)を得た後、さらに該中間体(a)と環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)とをヒドロシリル化反応させて得られることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項11】
アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(A)、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)、環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)をヒドロシリル化反応させて得られることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体の製造方法。
【請求項12】
アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(A)と直鎖構造を有するヒドロシリル基含有化合物(B)とをヒドロシリル化反応させて中間体(a)を得た後、さらに該中間体(a)と環状構造を有するヒドロシリル基含有化合物(C)とをヒドロシリル化反応させて得られることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体を含むポリシロキサン系組成物。

【公開番号】特開2011−16968(P2011−16968A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164096(P2009−164096)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】