説明

多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物および硬化物

【課題】半導体発光装置の個体間の色度ずれを低減する多面体構造ポリシロキサン系組成物を提供する。
【解決手段】半導体発光装置の封止に使用される多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物であって、発光体層と蛍光体層からなる半導体発光装置から放たれた発光色を式(1)、(2):δ(x)<0.004(1)、δ(y)<0.005(2)(式中、δ(x)は半導体発光装置の発光色のxyY表色系の色度座標上におけるxの標準偏差、δ(y)は半導体発光装置の発光色のxyY表色系の色度座標上におけるyの標準偏差。これら標準偏差の標本数は無作為に500である。)で表される標準偏差の範囲に収束させることができ、且つ、80℃に加熱10分後の粘度が10Pa・s以下である多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置の個体間の色度ずれを低減する多面体構造ポリシロキサン系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置は、長寿命、低消費電力、耐衝撃性、高速応答性、軽薄短小化の実現などの特徴を有し、液晶ディスプレイ、携帯電話、情報端末などのバックライト、車載照明、屋内外広告、屋内外照明など多方面への展開が飛躍的に進んでいる。
【0003】
半導体発光装置は、通常、半導体からなる発光素子(以下、適宣、LED)上に蛍光体を含有する硬化性組成物を塗布し、これを硬化させることにより、LEDを封止して製造される。この際、蛍光体を硬化性組成物中に均一に分散させる目的や硬化物に散乱効果を付与する目的などにより、蛍光体とともにフィラーを硬化性組成物に含有させることがある(特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、上記のような蛍光体とフィラーを含有する硬化性組成物を用いてLEDの封止を行った場合、硬化性組成物に含有されるフィラーの分散が不十分であるなどして、凝集したフィラーにより過剰な光散乱が生じ、光半導体装置の発光効率が低下したり、蛍光体が分散ムラを起こすことで、得られる半導体発光装置内の色むらや半導体発光装置ごとの色度ずれにつながり、製造時の品質や歩留まりに影響を与え、製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
一方、多面体構造を有するポリシロキサンで構成された組成物は、その特異的な化学構造から、優れた耐熱性、耐光性、化学的安定性、低誘電性等を示すことが知られており、例えば、特許文献3において、多面体構造を有するポリシロキサン系変性体を用いた組成物が開示されている。この組成物は、成型加工性、透明性、耐熱性、耐光性、接着性に優れており、LED封止剤として用いることもできる。しかしながら、ポリシロキサン系組成物によって封止された光半導体装置の個体間ごとの色度ずれに関しては、さらなる改良の余地も残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−102514号公報
【特許文献2】特開2006−294821号公報
【特許文献3】WO08/010545
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、半導体発光装置の個体間の色度ずれを低減する多面体構造ポリシロキサン系組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のことを見出して本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、以下の構成をなす。
【0010】
1).半導体発光装置の封止に使用される多面体構造ポリシロキサンを含む多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物であって、発光体層と蛍光体層からなる半導体発光装置から放たれた発光色を式(1)、(2):
δ(x)<0.004 (1)
δ(y)<0.005 (2)
(式中、δ(x)は半導体発光装置の発光色のxyY表色系の色度座標上におけるxの標準偏差、δ(y)は半導体発光装置の発光色のxyY表色系の色度座標上におけるyの標準偏差。これら標準偏差の標本数は無作為に500である。)で表される標準偏差の範囲に収束させることができ、且つ、80℃に加熱10分後の粘度が10Pa・s以下である多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0011】
2).多面体構造ポリシロキサンが、1分子中にヒドロシリル基を平均して3個以上有することを特徴とする1)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0012】
3).多面体構造ポリシロキサンがアルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基を有する化合物(b)と、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)とをヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)であることを特徴とする1)または2)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0013】
4).多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、温度20℃において、液状であることを特徴とする3)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0014】
5).1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)が、アリール基を1個以上有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする3)または4)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0015】
6).アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)が、式:
[ARSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、3)〜5)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0016】
7).ヒドロシリル基を含有する化合物(b)が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサン、および/または、分子末端にヒドロシリル基を含有する直鎖状シロキサンであることを特徴とする、3)〜6)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0017】
8).ヒドロシリル基を含有する化合物(b)が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンであることを特徴とする、3)〜6)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0018】
9).ヒドロシリル基を含有する化合物(b)が、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることを特徴とする、8)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0019】
10).多面体構造ポリシロキサンが、式:
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
[{a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0020】
【化1】

【0021】
【化2】

【0022】
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。;ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子であり、少なくとも1つは下記一般式(3)の構造を有する。
−[CH]−R (3)
(lは2以上の整数;Rは有機ケイ素化合物を含有する基);Rは、アルキル基またはアリール基}]
を構成単位とする多面体構造ポリシロキサン変性体(A)であることを特徴とする1)または2)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0023】
11).Rがアリール基を1個以上有することを特徴とする10)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0024】
12).1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物(B)を含有することを特徴とする1)〜11)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0025】
13).化合物(B)が1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)であることを特徴とする12)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0026】
14).1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)がアリール基を1個以上有することを特徴とする13)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0027】
15).化合物(B)が、下記一般式(4)で表される有機化合物であって
【0028】
【化3】

【0029】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)、かつ1分子中にアルケニル基を2個以上有する有機化合物(B2)であることを特徴とする12)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0030】
16).有機化合物(B2)が、数平均分子量900未満であることを特徴とする15)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0031】
17).有機化合物(B2)が、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートからなる群において選ばれる少なくとも1種類の化合物であることを特徴とする15)または16)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0032】
18).有機化合物(B2)が、ジアリルモノメチルイソシアヌレートであることを特徴とする15)または16)に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0033】
19).ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする、1)〜18)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0034】
20).硬化遅延剤を含有することを特徴とする、1)〜19)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【0035】
21).蛍光体を含有する1)〜20)のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物を硬化させることによって得られる硬化物。
【0036】
22).21)に記載の硬化物を搭載した半導体発光装置。
【発明の効果】
【0037】
本発明のポリシロキサン系組成物は半導体発光装置の個体間の色度ずれを低減させ、半導体発光装置の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0039】
<半導体発光装置>
本発明の硬化性組成物は後述の蛍光体と併用し、半導体からなる発光素子を封止するために使用される。発光素子を硬化性組成物で封止する方法としては、特に限定されないが、例えば、LED用パッケージに発光素子を実装し、硬化性組成物を注入・硬化して封止してもよいし、LED用パッケージを用いずに、プレス成形・トランスファー成形などの手法により、LED用基盤に実装したLEDを硬化性組成物で直接封止してもよい。ここで、LED用パッケージやLED用基盤としては、特に限定されず、汎用されているものなどを用いることができる。
【0040】
本発明の硬化性組成物を使用した半導体発光装置は、蛍光体が放つ蛍光と発光素子から発光されて蛍光体層を通過した光とが加色された光を放ち、その加色された発光色が下記式(1)、(2)で表される範囲を満足する。
δ(x)<0.004 (1)
δ(y)<0.005 (2)
(式中、δ(x)は半導体発光装置の発光色のxyY表色系の色度座標上におけるxの標準偏差、δ(y)は半導体発光装置の発光色のxyY表色系の色度座標上におけるyの標準偏差。これら標準偏差の標本数は無作為に500である。)
ここで、δ(x)は0.0035より小さいことがより好ましく、0.003より小さいことがさらに好ましい。δ(x)が大きいと、半導体発光装置ごとの色度ずれが大きく、製造時の歩留まりに影響を与え、製造コストが高くなる。また、δ(y)は0.0045より小さいことがより好ましく、0.004より小さいことがさらに好ましい。δ(x)と同様に、δ(y)が大きいと、半導体発光装置ごとの色度ずれが大きく、製造時の歩留まりに影響を与え、製造コストが高くなる。なお、δ(x)およびδ(y)は小さいほうが好ましいが、最小値は0である。
【0041】
<半導体からなる発光素子>
本発明の硬化性組成物が使用される半導体発光装置に用いられる半導体からなる発光素子としては、特に限定されず、半導体発光装置のLEDとして汎用されているもの等を用いることができる。例えば、放射した光により蛍光体を励起して可視光を発光させるものであり、青色発光タイプのLEDや紫外発光タイプのLEDなどが挙げられる。本発明の硬化性組成物が使用される半導体発光装置においては、1つの半導体発光装置あたりに複数個の同一または異なる種類のLEDを実装してもよい。
【0042】
<蛍光体>
本発明の硬化性組成物は蛍光体を含有してもよく、蛍光体層を形成する。蛍光体は上記発光素子の発する光を吸収して異なる波長の光を発生するものであり、本発明の硬化性組成物に用いられる蛍光体としては、特に限定されず、一般的に公知の無機蛍光体や有機蛍光体を用いることができ、本発明の硬化性組成物が使用された半導体発光装置が必要とする発光色を得るために任意のものを選択することができる。具体的に、例えば、YAG系蛍光体、TAG系蛍光体、オルトシリケートアルカリ土類系蛍光体、α−サイアロン系蛍光体、β−サイアロン系蛍光体、カズン系蛍光体、ニトリドおよびオキシニトリド系蛍光体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら蛍光体は1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0043】
本発明に用いる蛍光体の粒径には、特に制限はないが、中央粒径(D50)が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。中央粒径(D50)が小さいと、組成物中で蛍光体が凝集してしまう場合があり、中央粒径(D50)が大きいと、蛍光体の塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる場合がある。また蛍光体の粒度分布(QD)は、組成物中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上あり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。また、蛍光体の形状は、特に限定されず、任意の形状のものを用いることが可能である。
【0044】
本発明における蛍光体の使用量には特に制限は無く、半導体発光装置が必要とする発光色を得るために任意の量を使用することができるが、あえて例示するならば、硬化性組成物中に好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下である。蛍光体の使用量が少ないと、蛍光体による波長変換が不十分となり、目的とする発光色が得られなくなる場合があり、蛍光体の使用量が多いと、組成物のハンドリング性が低下したり、光学的な干渉作用により蛍光体の利用効率が低くなったりする可能性がある。
【0045】
<多面体構造ポリシロキサン>
本発明の硬化性組成物は多面体構造ポリシロキサンを含有する。本発明に用いられる多面体構造ポリシロキサンとしては、公知の多面体構造ポリシロキサンを広く使用することができ、一般式[RSiO3/2]や一般式[RSiO−SiO3/2](Rは任意の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい;aは6〜24の整数)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサンが例示されるが、その構造中に[RSiO2/2]単位や[RSiO1/2]単位を含む部分開裂型の多面体構造ポリシロキサンであってもよい。
【0046】
また、多面体構造ポリシロキサンは、後述の(B)成分等と反応させた場合に、得られる硬化物の強度や耐熱性、耐光性、ガスバリア性の観点から、1分子中にヒドロシリル基を平均して3つ以上含有することが好ましい。
【0047】
本発明に用いられる多面体構造ポリシロキサンは、アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)と、ヒドロシリル基を有する化合物(b)と、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)とをヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)であることであることが、得られる硬化性組成物の耐熱性、耐光性、ガスバリア性、耐冷熱衝撃性、ハンドリング性(粘度)等の点からさらに好ましい。
【0048】
<アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)>
本発明の硬化性組成物に用いられるアルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)は、分子中にアルケニル基を有する、多面体骨格を有するポリシロキサンであれば、特に限定はない。具体的に、例えば、以下の式:
[RSiO3/2[RSiO3/2
(x+yは6〜24の整数;xは1以上の整数、yは0または1以上の整数;Rはアルケニル基、または、アルケニル基を有する基;Rは、任意の有機基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物を好適に用いることができ、さらには、式:
[ARSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物が好ましいものとして例示される。
【0049】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0050】
は、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるRとしては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0051】
は、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるRとしては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0052】
aは1以上の整数であれば、特に制限はないが、化合物の取り扱い性や得られる硬化物の物性から、2以上が好ましく、3以上がさらに好ましい。また、bは、0または1以上の整数であれば、特に制限はない。
【0053】
aとbの和(=a+b)は、6〜24の整数であるが、化合物の安定性、得られる硬化物の安定性の観点から、6〜12、さらには、6〜10であることが好ましい。
【0054】
(a)成分の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる。合成方法としては、例えば、RSiX(式中Rは、上述のR、Rを表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって得られる。または、RSiXの加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、多面体構造ポリシロキサンを合成する方法も知られている。
【0055】
その他にも、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合した多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能である。
【0056】
<ヒドロシリル基を有する化合物(b)>
本発明の硬化性組成物に用いられるヒドロシリル基を有する化合物(b)は、分子中に1個以上のヒドロシリル基を有していれば特に制限はないが、得られる多面体構造ポリシロキサン変性体の透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、さらには、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンあるいは直鎖状ポリシロキサンであることが好ましい。特に耐熱性、耐光性、ガスバリア性の観点からは、環状シロキサンであることが好ましい。
【0057】
ヒドロシリル基を有する直鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。
【0058】
特に、ヒドロシリル基を有する直鎖状ポリシロキサンとしては、変性させる際の反応性や得られる硬化物の耐熱性、耐光性等の観点から、ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリシロキサン、さらにはジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリジメチルシロキサンを好適に用いることができ、具体的に例えば、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが、好ましい例として例示される。
【0059】
ヒドロシリル基を有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンなどが例示される。本発明における環状シロキサンとしては、工業的入手性および反応性、あるいは、得られる硬化物の耐熱性、耐光性、強度等の観点から、具体的に例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを好適に用いることができる。
【0060】
これら(b)成分である、ヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
<1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)>
本発明の硬化性組成物に用いられる1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)は、前述のヒドロシリル基を有する化合物(b)のヒドロシリル基と反応する。(a’)成分を用いることで、得られる硬化物の弾性率を低下させることができ、耐冷熱衝撃性を向上させることができる。また、得られる組成物の粘度コントロールをすることが可能となり、LED封止剤として用いた場合に蛍光体の凝集を抑制したり、LED封止剤として用いた場合のハンドリング性を向上させることが可能となる。
【0062】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0063】
本発明における(a’)成分は、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物であれば特に限定はされないが、1分子中に少なくともアリール基を1個以上含有していることが、ガスバリア性や屈折率の観点から好ましく、さらには、該アリール基が直接ケイ素原子に結合していることが、耐熱性、耐光性の観点から、さらに好ましい。
【0064】
本発明における(a’)成分は、耐熱性、耐光性の観点から、シラン、またはポリシロキサンであることが好ましい。このような(a’)成分が、1分子中にアルケニル基を1個有するシランである場合、具体的に例えば、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、ジエチルフェニルビニルシラン、エチルジフェニルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルジメチルフェニルシラン、アリルメチルジフェニルシラン、アリルトリフェニルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルジエチルフェニルシラン、アリルエチルジフェニルシラン等が例示される。中でも、耐熱性、耐光性の観点から、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられ、さらに、ガスバリア性や屈折率の観点から、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられる。
【0065】
また(a’)成分がポリシロキサンである場合、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサン、アルケニル基を1個有する環状シロキサン等が例示される。
【0066】
(a’)成分が、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサンである場合、具体的に例えば、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体等が例示される。
【0067】
分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサンである場合、具体的に例えば、先に例示したジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端が1個ずつ封鎖されたポリシロキサン、SiO単位、SiO3/2単位、SiO単位、SiO1/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位および1つのジメチルビニルシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0068】
(a’)成分が、アルケニル基を1個有する環状シロキサンである場合、具体的に例えば、1−ビニル−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
【0069】
これら(a’)成分である、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(A)>
本発明の硬化性組成物に用いられる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、後述のヒドロシリル化触媒の存在下、アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基を有する化合物(b)と1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)とをヒドロシリル化反応させることにより得られる。
【0071】
多面体構造ポリシロキサン変性体を得る方法としては、特に限定されず種々設定できるが、予め(a)成分と(b)成分を反応させた後、(a’)成分を反応させても良いし、予め(a’)成分と(b)成分を反応させた後、(a)成分を反応させても良いし、(a)成分と(a’)成分を共存させて(b)成分と反応させても良い。各反応の終了後に、例えば減圧・加熱条件下にて、揮発性の未反応成分を留去し、目的物あるいは次のステップへの中間体として用いても良い。(a’)成分と(b)成分のみが反応し、(a)成分を含まない化合物の生成を抑制するためには、(a)成分と(b)成分を反応させ、未反応の(b)成分を留去した後、(a’)成分を反応させる方法が好ましい。(a’)成分と(b)成分のみが反応し、(a)成分を含まない化合物の生成の抑制は耐熱性の観点から好ましい。
【0072】
こうして得られた多面体構造ポリシロキサン変性体には、反応に用いた(a)成分のアルケニル基が一部残存していてもよい。
【0073】
(b)成分の添加量は、(a)成分が有するアルケニル基1個に対し、ヒドロシリル基の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行するため、多面体構造ポリシロキサン変性体のハンドリング性が劣る場合があり、添加量が多いと、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0074】
(a’)成分の添加量は、(b)成分が有するヒドロシリル基1個に対し、アルケニル基の数が0.01〜0.4個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、得られる硬化物の耐冷熱衝撃性改善への効果が小さい場合があり、添加量が多いと、得られる硬化物に硬化不良が生じる場合がある。
【0075】
多面体構造ポリシロキサン変性体の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、反応に用いる(a)成分及び(a’)成分のアルケニル基1モルに対して10−1〜10−10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−4〜10−8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多いと、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になったり、得られる硬化物の耐光性が低下する恐れがあり、また、硬化物が発泡する恐れもある。また、ヒドロシリル化触媒が少ないと、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
【0076】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0077】
本発明の硬化性組成物に用いられる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、式
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
[a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0078】
【化4】

【0079】
【化5】

【0080】
{lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子であり、少なくとも1つは下記一般式(3)の構造を有する。
−[CH]−R (3)
(lは2以上の整数;Rは有機ケイ素化合物を含有する基);Rはアルキル基またはアリール基}]
で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン系化合物であってもよい。
【0081】
ここで、Rはケイ素化合物を含有する基であれば特に限定はされないが、1分子中に少なくともアリール基を1個以上含有していることが、ガスバリア性や屈折率の観点から好ましく、さらには、該アリール基が直接ケイ素原子に結合していることが、耐熱性、耐光性の観点から、好ましい。
【0082】
このような多面体構造ポリシロキサン変性体は、各種化合物、具体的には、後述の(B)成分との相溶性を確保でき、さらに、例えば、分子内にヒドロシリル基を含有していることから、各種アルケニル基を有する化合物と反応させることが可能となる。具体的には、後述の1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)や有機化合物(B2)と反応させることにより、耐熱性や耐光性、ガスバリア性等に優れる硬化物を得ることができる。
【0083】
また、多面体構造ポリシロキサン変性体は、温度20℃において液状とすることも可能である。多面体構造ポリシロキサン変性体を液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
【0084】
<1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物(B)>
本発明の硬化性組成物は、1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物(B)を含有しえる。本発明に用いられる硬化性組成物が化合物(B)を含有し、かつ、多面体構造ポリシロキサンがヒドロシリル基を有する場合、これらをヒドロシリル化反応させることにより、硬化物となすことができる。ヒドロシリル化反応に際してはヒドロシリル化触媒を用いることが好ましい。この反応に用いることができるヒドロシリル化触媒としては、後述のものを用いることができる。
【0085】
化合物(B)の添加量は種々設定できるが、多面体構造ポリシロキサンがヒドロシリル基を有する場合、化合物(B)のアルケニル基1個あたり、多面体構造ポリシロキサン変性体に含まれるヒドロシリル基が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3個となる割合で添加されることが望ましい。アルケニル基の割合が少ないと、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、アルケニル基の割合が多いと、硬化後の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0086】
ここで、化合物(B)としては、例えば、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)や、後述する有機化合物(B2)などが好ましい。なお、(B1)成分と(B2)成分とは併用してもよい。
【0087】
<1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)>
本発明の硬化性組成物が含有しえる、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)のシロキサンのユニット数は、特に限定されないが、2つ以上が好ましく、さらに好ましくは、2〜10個である。1分子中のシロキサンのユニット数が少ないと、組成物から揮発しやすくなり、硬化後に所望の物性が得られないことがある。また、シロキサンのユニット数が多いと、得られた硬化物のガスバリア性が低下する場合がある。
【0088】
1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンは、アリール基を有していることが、ガスバリア性の観点から好ましい。また、アリール基を有する1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンは、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上に直接アリール基が結合していることが好ましい。また、アリール基は分子の側鎖または末端いずれにあってもよく、このようなアリール基含有ポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば直鎖状、分岐鎖状、一部分岐鎖状を有する直鎖状の他に、環状構造を有してもよい。
【0089】
このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、3−イソブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、3−tブチルフェニル基、4−tブチルフェニル基、3−ペンチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、3−ヘキシルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,3−ジエチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,5−ジエチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、ビフェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、3−エポキシフェニル基、4−エポキシフェニル基、3−グリシジルフェニル基、4−グリシジルフェニル基等が挙げられる。中でも、耐熱・耐光性の観点から、フェニル基が好ましい例として挙げられる。これらは、単独で用いても良く、2種以上併用して用いてもよい。
【0090】
本発明における1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンとしては、耐熱性、耐光性の観点から、アルケニル基を2個以上有する直鎖状ポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン、アルケニル基を2個以上有する環状シロキサンなどが好ましい例として挙げられる。
【0091】
アルケニル基を2個以上有する直鎖状ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。
【0092】
分子末端にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルビニルシロキサン単位2つ以上とSiO単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0093】
アルケニル基を2個以上有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−ビニル−1−フェニル−3,5,7−トリメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−ビニル−1,3−ジフェニル−5,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−ビニル−1,5−ジフェニル−3,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−ビニル−1,3,5−トリフェニル−7−メチルシクロテトラシロキサン、1−フェニル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジフェニル−5,7−ジビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
これら1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンは、単独で用いても良く、2種類以上併用して用いてもよい。
【0094】
<有機化合物(B2)>
本発明の硬化性組成物が含有しえる、有機化合物(B2)は、下記一般式(4)で表される有機化合物であって、かつ、1分子中にアルケニル基を2個以上有する有機化合物であれば特に限定はされない。
【0095】
【化6】

【0096】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)
(B2)成分は、1分子中にアルケニル基を平均して2個以上含有しているため、得られる硬化物の強度やガスバリア性、耐熱性、耐光性等が優れることとなる。また、ガスバリア性の観点から、数平均分子量900未満であることが好ましい。
【0097】
また、(B2)成分の骨格中にアルケニル基以外の官能基を有していても構わないが、多面体構造ポリシロキサンとの相溶性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖上の脂肪族炭化水素系基をはじめとする極性の低い官能基であるほうが好ましく、耐熱性、耐光性の観点から、特にメチル基が好ましい。
【0098】
(B2)成分は、例えば組成物を基材と硬化させた場合の基材との接着性の観点から、上記一般式(4)で表され、かつ、1分子中にアルケニル基を2個以上含有するイソシアヌル酸誘導体であることが好ましく、さらに耐熱性・耐光性のバランスの観点から、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートを用いることがより好ましく、特に耐冷熱衝撃性の観点からジアリルモノメチルイソシアヌレートがさらに好ましい。これらは、単独で用いても良く、2種類以上併用して用いてもよい。
【0099】
<ヒドロシリル化触媒>
本発明で用いることができるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを選択でき、特に制限はない。
【0100】
具体的に例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0101】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0102】
<硬化遅延剤>
硬化遅延剤は、本発明で用いられる硬化性組成物の保存安定性の改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応性を調整するために用いることができる成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0103】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0104】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0105】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0106】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0107】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0108】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0109】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10−1〜10モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0110】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、蛍光体と多面体構造ポリシロキサン、また、必要に応じて、1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物(B)、ヒドロシリル化触媒、硬化遅延剤等を加えることにより得ることができる。
【0111】
蛍光体を硬化性組成物に混合・分散する方法としては、蛍光体の結晶構造に損傷を与えず蛍光体を均一に分散することが可能な方法であれば特に制限はなく、例えばミキサー、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、2本ロール、ニーダー、ビーズミル等、従来公知の方法を用いることが出来る。上記の中でも特に、遊星攪拌ミキサー、3本ロール、2本ロール、など分散にあたり発熱の少ないものや混合機由来の金属磨耗粒子の混入が少ないものが好ましく、なかでも遊星攪拌ミキサーが蛍光体の損傷少なく脱泡しながら混合・分散できるので好ましい。これらの混合・分散方法は、一種のみ行ってもよく、また二種以上を組み合わせて行ってもよい。混合・分散時間は、蛍光体が硬化性組成物に均一に分散すれば特に制限はないが、例えば、遊星撹拌ミキサーを用いた場合は、好ましくは10秒以上1時間以内、より好ましくは30秒以上30分以内、さらに好ましくは1分以上20分以内である。混合・分散時間が短いと、蛍光体が硬化性組成物中に均一に分散しない恐れがある。また、混合・分散時間が長いと、硬化性組成物および/または蛍光体が変質する恐れがある。
【0112】
蛍光体を含有する硬化性組成物は、上述の混合・分散後、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、さらに好ましくは30分以内に成形に使用されることが好ましい。ここで、成形とは、発光素子を硬化性組成物で封止することを意味し、発光素子を実装したLED用パッケージに硬化性組成物を注入することや、LED用基盤に実装したLEDを、プレス成形・トランスファー成形などの手法により、硬化性組成物で直接封止することなどが例示される。混合・分散から成形までの時間が長いと、硬化性組成物中の蛍光体の分散が均一でなくなり、得られる半導体発光装置間の色度ずれが大きくなる恐れがある。
【0113】
本発明の硬化性組成物の粘度は、特に制限はないが、温度23℃において1Pa・s〜300Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは2Pa・s〜200Pa・sである。硬化性組成物の粘度が低いと、蛍光体が凝集してしまう恐れがあり、粘度が高いと、硬化性組成物のハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0114】
硬化性組成物を硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは50〜250℃である。硬化温度が高いと、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低いと硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、80℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
【0115】
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及び反応性基の量、その他、硬化性組成物の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜12時間、好ましくは10分〜8時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0116】
硬化性組成物を加熱硬化させる際、硬化物が一定時間の間、低粘度であることにより、得られる半導体発光装置の個体間の色ずれを低減させることができる。具体的には、80℃に加熱した際の硬化性組成物の粘度が10分後に10Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・sであることがより好ましく、2Pa・s以下であることがさらに好ましい。粘度がこれより高いと半導体発光装置の個体間の色ずれが大きくなる傾向にある。また、80℃に加熱した際の硬化性組成物の粘度の下限としては、0.01Pa・s以上が好ましい。粘度がこれより低くなると成形性に問題が生じる懸念がある。
【0117】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて接着性付与剤を添加することができる。
【0118】
接着性付与剤は、例えば、本発明におけるポリシロキサン系組成物と基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものであれば特に制限はないが、シランカップリング剤が好ましい例として例示できる。
【0119】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0120】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0121】
シランカップリング剤の添加量としては、硬化性組成物100重量部に対して、0.05〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0122】
また、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることもできる。接着性促進剤としては、エポキシ含有化合物、エポキシ樹脂、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機フィラーを添加することができる。無機フィラーを用いることにより、得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
【0124】
無機フィラーは、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0125】
無機フィラーは、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0126】
無機フィラーの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種用いることができる。無機フィラーの平均粒径や粒径分布は、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、平均粒径が0.005〜50μmであることが好ましく、さらには0.01〜20μmであることがより好ましい。同様に、BET比表面積についても、特に限定されるものでないが、ガスバリア性の観点から、70m/g以上であることが好ましく、100m/g以上であることがより好ましく、さらに200m/g以上であることが特に好ましい。
【0127】
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、硬化性組成物100重量部に対して、1〜1000重量部、よりこの好ましくは、3〜500重量部、さらに好ましくは、5〜300重量部である。無機フィラーの添加量が多いと、流動性が悪くなる場合があり、無機フィラーの添加量が少ないと、所望の物性が得られない場合がある。
【0128】
無機フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。無機フィラーの混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下で行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
【0129】
また、本発明の硬化性組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0130】
本発明の硬化性組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりしてもよい。
【0131】
本発明の硬化性組成物を使用した半導体発光装置は従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的に、例えば、受発光デバイス液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【実施例】
【0132】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0133】
(製造例1)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1262gにテトラエトキシシラン1083gを加え、室温で2時間激しく撹拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、撹拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1000mLを加え、均一溶液とした。ジメチルビニルクロロシラン1485gおよびヘキサン1942mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基8個を有するアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1226.3)を白色固体として597g得た。
【0134】
(製造例2)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン10.00gをトルエン74.89gに溶解させ、ビニルジフェニルメチルシラン27.45g(使用した1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基1個に対し、アルケニル基0.37個となる量)、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)2.45μLを加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン19.61g(使用したトリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンのアルケニル基1個に対し、ヒドロシリル基4.9個となる量)、トルエン19.61gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール4.67μl、マレイン酸ジメチル1.09μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン変性体54.22g(SiH価2.03mol/kg)を得た。
【0135】
(実施例1)
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体10.00gに、ジアリルメチルイソシアヌレート1.89gを加えて撹拌した。この組成物の80℃加熱10分後における粘度を、Bohlin Instruments製溶融粘弾性測定装置にて測定した。得られた粘度を表1に記載した。次に、インテマティックス社製蛍光体(品番:EY4750)1.66gを組成物に加えて撹拌した後、さらにThinky社製あわとり練太郎AR−250を用いて、撹拌5分、脱泡5分、撹拌5分を順に行うことで、多面体構造ポリシロキサンと蛍光体を含有する硬化性組成物を作成した。なお、この撹拌と脱泡の際、硬化性組成物に熱がかからないよう、機械の放熱に留意した。別途、ジェネライツ社製12mil×13mil角 青色LEDチップ(品番:B1213AAA0 S46B/C−19/20)を、金ワイヤーと信越化学社製ダイボンド剤KER−3000を用い、エノモト社製LEDパッケージ(品番:TOP LED 1−IN−1)に実装した。ここに得られた組成物を、上記の撹拌と脱泡から15分以内に、サンエイテック社製ディスペンサー 1500シリーズ、サンエイテック社製3ccバレル−ピストンセット(品番:5109CP−B)、サンエイテック社製チップ(品番:5123−B)を用いて注入した。続いて、注入完了から10分後に、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間の条件でのステップキュアを開始した。得られた評価サンプルを、大塚電子社製全光束測定(φ300mm)システム(品番:HM−0930)を用いて、温度25℃、電流30mA、待機時間30秒の条件で通電して発光させ、その発光色の色度を測定し、測定したサンプル500個の発光色の色度の平均値と標準偏差を表1に記載した。
【0136】
(比較例1)
市販のフェニルシリコーン系封止剤である、東レダウコーニング社製OE6630−A2.00gに、OE6630−B8.00gを加えて攪拌した。この組成物の80℃加熱10分後における粘度を実施例1と同様の方法で測定した。得られた粘度を表1に記載した。次に、インテマティックス社製蛍光体(品番:EY4750)1.40gを加えて撹拌することで、蛍光体を含有する硬化性組成物を作成した。得られた硬化性組成物を用いて、実施例1と同様に評価サンプルを作成し、実施例1と同じ条件で発光色の色度を測定し、測定したサンプル500個の発光色の色度の平均値と標準偏差を表1に記載した。
【0137】
【表1】

【0138】
表1に示すように、本発明の硬化性組成物は80℃での粘度が10Pa・s以下であり、さらに、本発明の硬化性組成物を使用した半導体発光装置の個体間の色度ずれが少ないことが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光装置の封止に使用される多面体構造ポリシロキサンを含む多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物であって、発光体層と蛍光体層からなる半導体発光装置から放たれた発光色を式(1)、(2):
δ(x)<0.004 (1)
δ(y)<0.005 (2)
(式中、δ(x)は半導体発光装置の発光色のxyY表色系の色度座標上におけるxの標準偏差、δ(y)は半導体発光装置の発光色のxyY表色系の色度座標上におけるyの標準偏差。これら標準偏差の標本数は無作為に500である。)で表される標準偏差の範囲に収束させることができ、且つ、80℃に加熱10分後の粘度が10Pa・s以下である多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項2】
多面体構造ポリシロキサンが、1分子中にヒドロシリル基を平均して3個以上有することを特徴とする請求項1に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項3】
多面体構造ポリシロキサンがアルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基を有する化合物(b)と、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)とをヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)であることを特徴とする請求項1または2に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項4】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、温度20℃において、液状であることを特徴とする請求項3に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項5】
1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)が、アリール基を1個以上有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項3または4に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項6】
アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)が、式:
[ARSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項7】
ヒドロシリル基を含有する化合物(b)が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサン、および/または、分子末端にヒドロシリル基を含有する直鎖状シロキサンであることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項8】
ヒドロシリル基を含有する化合物(b)が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンであることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項9】
ヒドロシリル基を含有する化合物(b)が、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることを特徴とする、請求項8に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項10】
多面体構造ポリシロキサンが、式:
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
[{a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【化1】

【化2】

(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。;ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子であり、少なくとも1つは下記一般式(3)の構造を有する。
−[CH]−R (3)
(lは2以上の整数;Rは有機ケイ素化合物を含有する基);Rは、アルキル基またはアリール基}]
を構成単位とする多面体構造ポリシロキサン変性体(A)であることを特徴とする請求項1または2に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項11】
がアリール基を1個以上有することを特徴とする請求項10に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項12】
1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物(B)を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項13】
化合物(B)が1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)であることを特徴とする請求項12に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項14】
1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)がアリール基を1個以上有することを特徴とする請求項13に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項15】
化合物(B)が、下記一般式(4)で表される有機化合物であって
【化3】

(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)、かつ1分子中にアルケニル基を2個以上有する有機化合物(B2)であることを特徴とする請求項12に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項16】
有機化合物(B2)が、数平均分子量900未満であることを特徴とする請求項15に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項17】
有機化合物(B2)が、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートからなる群において選ばれる少なくとも1種類の化合物であることを特徴とする請求項15または16に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項18】
有機化合物(B2)が、ジアリルモノメチルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項15または16に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項19】
ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項20】
硬化遅延剤を含有することを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物。
【請求項21】
蛍光体を含有する請求項1〜20のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン系硬化性組成物を硬化させることによって得られる硬化物。
【請求項22】
請求項21に記載の硬化物を搭載した半導体発光装置。

【公開番号】特開2013−104053(P2013−104053A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251017(P2011−251017)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】