説明

多面体状メロンの栽培方法及び四角いメロン栽培用型枠

【課題】単に形状がしっかり現れるだけでなくネットの美しさも達成された四角いメロン(六面体状メロン)を栽培する。
【解決手段】組み立てた状態で内部に六面体形状の空間を形成する鉄製型枠1を成長途中の果実を覆う様に取り付けて成長させることにより、ネット系メロンを六面体形状に栽培するための方法であって、以下の構成を採用する。(1)型枠の内面にクッション材を取り付けたものを用いること。(2)型枠を取り付ける時期を、成長途中にあるネット系メロンの果実に二次ネットが発生し始める頃とすること。(3)型枠を取り付けるメロンとして、二次ネットの発生時の果実が型枠内にわずかに隙間を開けて収納される程度のサイズのものを選択すること。(4)型枠が、出荷に適する重量に肥大化した果実を枠内面に密着した状態に収納することができる容積を有するものであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果皮表面にネットが形成されるネット系メロンを球形ではなく、多面体形状(例えば、六面体状)のものに栽培するためのメロン栽培方法と、特に六面体状のメロンの栽培に適する四角いメロン栽培用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キュウリについて、真っ直ぐに育てて見栄えよくするために筒等を被せる栽培方法や(特許文献1〜特許文献3)、真っ直ぐでかつ意匠的に面白い断面形状となる様に、四角形、三角形、花弁型等とした筒体を被せる栽培方法(特許文献4)の提案がなされている。
【0003】
また、ハート形、三つ葉形、四つ葉クローバー形、星形など、意匠的に特徴ある断面形状のレモンを栽培するための果実矯正具の提案もある(特許文献5,特許文献6)。
【0004】
さらに、トマト、スイカ、メロン等の球形に育つ果菜を、四角い形状に栽培する方法及びそのための器具の提案もある(特許文献7〜特許文献10)。
【特許文献1】特公昭54−42893号公報(第1図〜第3図)
【特許文献2】特公昭57−35616号公報(第2図〜第5図)
【特許文献3】特公昭59−53005号公報(第1図〜第4図)
【特許文献4】特開昭50−68827号公報(第1図〜第4図)
【特許文献5】実用新案登録第3091597号公報(図1〜図5)
【特許文献6】実用新案登録第3091598号公報(図1〜図12)
【特許文献7】特公昭55−27767号公報(第1図〜第3図)
【特許文献8】実開昭57−28635号公報(第1図〜第3図)
【特許文献9】実用新案登録第3120369号公報(図1〜図4)
【特許文献10】特許第3583386号公報(図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜6に記載されている栽培方法や器具は、主として果実の横方向への成長だけを矯正する方法であり、六面体状の四角いメロンを栽培する方法としては適するものではない。これに対し、特許文献7〜10に記載されている栽培方法や器具は、果実の縦方向及び横方向の成長を制限し、六面体状に成長する様に誘導することによって立方体又は直方体形状の果実を得ることから、四角いメロンの栽培に応用することが可能である。
【0006】
しかし、メロンの内、一般に高級とされるネット系メロンの場合、単に形状が四角いだけでは不十分であり、高級感に大きく寄与するネットの美しさも達成されなければならない。この点、特許文献7〜10に開示された技術では、未だ十分とはいえない。
【0007】
そこで、本発明は、単に形状がしっかり現れるだけでなくネットの美しさも達成された多面体状メロンを栽培することを第1の目的とする。また、特に、四角いメロンにおいて、その栽培を容易になし得る栽培用型枠を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するためになされた本発明の多面体状メロンの栽培方法は、組み立てた状態で内部に多面体形状の空間を形成する型枠を成長途中の果実を覆う様に取り付けて成長させることにより、ネット系メロンを多面体形状に栽培するための方法であって、以下の構成を採用することを特徴とする。
(1−1)前記型枠として、その内面にクッション材を取り付けたものを用いること。
(1−2)前記型枠を取り付ける時期を、前記成長途中にあるネット系メロンの果実に二次ネットが発生し始める頃とすること。
(1−3)前記型枠を取り付けるメロンとして、前記二次ネットの発生時の果実が前記型枠内にわずかに隙間を開けて収納される程度のサイズのものを選択すること。
(1−4)前記型枠が、出荷に適する重量に肥大化した果実を枠内面に密着した状態に収納することができる容積を有するものであること。
【0009】
この本発明の多面体状メロンの栽培方法によれば、(1−1)〜(1−4)の構成を採用することにより、最終形状としての多面体形状に成長させると共に、ネットを十分に発生させることもでき、しっかりした多面体形状であって、しかもネットも美しい多面体形状のネット系メロンを栽培することができる。
【0010】
ここで、(1−2)及び(1−3)は、メロンの果実の下端(お尻)の中心が真下に向いたまま肥大化させるのに効果的であり、メロンの果実を型枠内で片寄ることなく成長させる作用を発揮する。また、(1−4)は、最終的な出荷形状をしっかりと形成する作用を発揮する。そして、(1−1)及び(1−4)は、ネットがしっかりと美しく発生するのに寄与する。この結果、本発明によれば、単に多面体形状になるだけでなく、歪みのない美しいネットが形成された多面体形状のネット系メロンを栽培することができるのである。
【0011】
ここで、(1−3)にいう「わずかな隙間」とは、縦径方向について指一本も入らない程度を意味し、より望ましくは縦径方向の隙間が5mm以下、さらに望ましくは縦径方向の隙間が数mm以下となる様にするとよい。
【0012】
また、上記第1の目的を達成するに当たり、本発明の多面体状メロンの栽培方法においては、さらに、以下の構成を採用するとよい。
(2−1)前記型枠は、六面を鉄板で構成した鉄製型枠であること。
【0013】
(2−1)の構成を採用すると日光が遮断されるが、ネット系メロンにおいては、白っぽい色が好まれることから日照を遮断することによる不具合はない。逆に、鉄板の有する十分な強度等により、メロン果実の成長による圧力に十分耐えることができ、良好な形状成形機能を発揮することができるからである。また、鉄板製の型枠は、型枠内が湿度過多になることを避ける作用を発揮する。従って、湿度過多による病害等の発生を助長しないという作用も発揮する。
【0014】
また、上記第1の目的を達成するに当たり、本発明の多面体状メロンの栽培方法においては、さらに、以下の構成をも採用するとよい。
(3−1)前記クッション材は、少なくとも前記ネット系メロンの果実が直に接する面が吸湿性を有する素材で構成されていること。
【0015】
上述の様に、鉄製型枠は、湿度過多を避ける作用が、例えば、FRP製型枠などよりも優れているが、上記(3−1)を採用することにより、さらに、湿度による果皮表面の病害等発生を抑制することができるからである。また、クッション材は、鉄製型枠の熱が果実に直接伝わらない様にする作用ももっている。そして、病害等の発生を抑制する吸湿性は、当該水分の蒸発による型枠内温度上昇の抑制という作用も発揮し得る。この作用を発揮させる上で、(3−2)「鉄製型枠を各面を構成する鉄板を組み立てて果実に取り付ける構成とし、組立状体において、多面体の角部に隙間ができる様にしたもの」を用いるとよい。
【0016】
ここで、この様なクッション材としては、布地を挙げることができる。本発明方法に用いるのに適する布地としては、吸湿性があり、かつ、クッション性も備えることから、タオル地を推奨することができる。タオル地は、そのパイル織りによるクッション性、素材である綿の吸湿性の点に加えて、安価で入手が容易な点も、本発明方法に適するものといえる。パイル織りの他、ハチス織りの布地も適している。パイル織り、ハチス織りなど、厚さ方向に立体的な織り方は、それ自体によるクッション性という点で優れている。また、タオル地を構成する綿は、天然繊維であり、親水性を有することから良好な吸湿性を示す。また、タオル地以外に、例えば、ニット製品などもクッション性が良好であり、毛糸を構成する羊毛は、吸湿性に加えて、透湿性を有するなど、本発明方法において採用するのに適する性質を有している。また、布地は、織物に限らず、不織布であってもよい。また、和紙も吸湿性やクッション性という点で本発明方法に適する性質を有するといえる。和紙を用いる場合、厚さを出すために二つ折り、三つ折りなどにして用いることは本発明方法におい好適ということができる。タオル地を用いる場合も、二つ折り、三つ折り等に折って使用するとよい。さらに、メロンの果皮に接する部分をタオル地等とし、枠体側に接する部分はスポンジなどの発泡体や梱包用緩衝材シートとするなど複数の素材を積層して用いることもできる。
【0017】
また、上記第1の目的を達成するに当たり、本発明の多面体状メロンの栽培方法においては、さらに、以下の構成をも採用するとよい。
(4−1)前記ネット系メロンが、夏作に適するアールスフェボリットであること。
(4−2)前記ネット系メロンの播種及び定植を、交配適期が6月上旬以降6月下旬以前となる様に実施すること。
【0018】
これまで説明した様に、本発明の多面体状メロンの栽培方法においては、しっかりとした多面体形状で、しかも美しいネットが形成されたメロンを栽培することができる。従って、ネットの美しさに商品価値が認められるアールスフェボリットに特に適している。また、特に、(4−1)「夏作に適するアールスフェボリット」を、(4−2)「6月上旬以降6月下旬以前に交配適期が来るように播種及び定植すること」により、型枠の取付時期を、わが国特有の梅雨期の高温多湿の影響を最小限に留められる時期にすることができ、かつ、贈答などの需要が最も多く見込まれる7月下旬〜8月中旬頃に、意匠的な面白さを備え、かつ、ネット系メロン本来の美しいネットが形成された商品価値の高いメロンを栽培することができる。
【0019】
ここで、アールスフェボリット(Earl’s Favourite) は、ネット系メロンの代表品種である。略してアールスメロンとも呼ばれる。果実はほぼ球形で、果皮表面にはコルク質の網目を生じる。果肉は黄緑色で、果汁が多く、非常に甘い。栽培は温度・湿度を管理した温室内で行わなければならず、まめに手を加えなければ品質の良いものはできない。また1本のつるからは1個だけしか生産できない。
【0020】
また、麝香(musk)のような強い芳香を持つメロンの総称としてのマスクメロン(muskmelon)は、わが国では、アールスフェボリット(あるいはその系統の品種)のことを指す。
【0021】
この様な価値の高い商品を提供するのにより適する品種としては、次の品種を挙げることができる。
(5−1)前記ネット系メロンの品種が、アールスベネチア又はアールスアリーナであること。
【0022】
アールスベネチア及びアールスアリーナは、そのネット発生の特性や、肥大化の特性において、本発明方法を適用するのに最も適している。また、これらの品種は、多面体状メロンに栽培した状態において美しいネットを安定して形成するのに適している。
【0023】
なお、本発明の基本的な技術思想は、アールスフェボリットに限られず、アンデスメロンや夕張メロン、なんぶハート(商品名)など、アールスフェボリットからの交配種に適用することを否定するものではない。また、アールスフェボリットに関してもアールスベネチア及びアールスアリーナにのみ限定するものではない。さらに、アールスベネチア及びアールスアリーナも含めて、その栽培時期を夏作に限らず、春作、秋作、冬作とすることも可能である。また、夏作についても、中元商戦初期の7月上旬頃〜7月中旬頃の出荷に合わせて栽培するのに本発明方法の基本的な技術思想を適用できることはもちろんである。
【0024】
これらアールスフェボリット及びその交配品種も含め、本発明方法においては、以下の少なくとも一つを満たす様な品種を採用するとよい。
【0025】
(6−1)前記ネット系メロンは、交配後48日〜60日で出荷に適する果実となる品種であること。
【0026】
(7−1)前記ネット系メロンは、交配後12日〜25日で二次ネットが発生し始める品種である。
【0027】
(8−1)前記ネット系メロンは、二次ネット発生後出荷適合果実となるまでの肥大化期間が25日〜40日となる様な品種であること。
【0028】
交配後出荷適合果実に生育するまでの期間が48日よりも短いものでは、多面体形状をしっかりと現すことができない可能性があり、逆に、交配後出荷適合果実に生育するまでの期間が60日よりも長いものでは、枠体装着日数が長期間となって果実に病害が発生する可能性を増大させる。このことは、型枠取り付け後の肥大化期間が25日より短い場合には多面体形状をしっかりと現すことができない可能性があり、逆に、肥大化期間が40日を越える場合の病害の発生や、圧迫が強すぎることによるネットの盛り上がり不足などを生じるおそれがある。これら交配後出荷適合果実となるまでの期間や、二次ネット発生後出荷適合果実となるまでの肥大化期間の要件を容易に満たすには、交配後12日〜25日で二次ネットが発生し始める品種が適しているのである。なお、上述したアールスベネチア及びアールスアリーナは、(6−1),(7−1)及び(8−1)のいずれの条件をも満足する品種である。
【0029】
また、上記第2の目的を達成するためになされた本発明の四角いメロン栽培用型枠は、組み立てた状態で内部に六面体空間を形成し、成長途中の果実を覆う様に取り付けて成長させることにより、ネット系メロンを六面体形状に栽培するための型枠であって、以下の構成を採用したことを特徴とする。
(9−1)六面を鉄板で構成した鉄製型枠であること。
(9−2)前記鉄製型枠は、底面板と、該底面板の四辺に回動可能に取り付けられた側面板と、該側面板の内の対面する二つの側面板のそれぞれに組立時の上端側の辺に回動可能に取り付けられた半割天板とを備え、前記各半割天板の側縁を上方に折り曲げた天板側縁部と、該半割天板を備えていない残り二つの側面板の上端とを締結部材で締結することによって、少なくとも側面板間に隙間を有する六面体に組み立てることができるものであること。
(9−3)前記各半割天板には、組立時に合わさる辺の中央に、前記ネット系メロンの果実の茎を通すことのできる孔を形成する半割孔が備えられていること。
(9−4)前記二つの半割天板の内の、一方の半割天板の前記天板側縁部には埋め込みボルトを外に向けて立設してあり、他方の半割天板の前記天板側縁部にはナットが固定してあること。
(9−5)前記天板側縁部と締結される側面板の上端部には、締結時に前記埋め込みボルトを挿通することのできる埋め込みボルト挿通孔と、前記ナットに螺合するボルト軸を挿通することのできるボルト軸挿通孔とが貫通されていること。
(9−6)前記六面を構成する鉄板の内面には、クッション材が取り付けてあること。
【0030】
この本発明の四角いメロン栽培用型枠は、底面板と、四枚の側面板と、二枚の半割天板とを、各半割天板に形成した天板側縁部と半割天板を備えていない残り二つの側面板の上端とを締結部材で締結することによって六面体に組み立てるものなので、側面板同士の間には、隙間を形成することができ、枠内の通気性を確保することが可能である。また、鉄製型枠としたことにより、十分な強度を備える。そして、クッション材が取り付けられていることにより、ネットの生成を妨げることもない。なお、クッション材としては、上述した様に、吸湿性を有するタオル地等を用いるとよい。クッション材は、吸湿性に加えて乾燥状態を保ち易い透湿性も備えることが望ましいが、上述の通り、側面板同士の間に隙間が形成できることから、当該隙間による通気性によって、クッション材が吸った湿気を外部に逃がすことができることから、少なくとも吸湿性が備わっていれば十分といえる。
【0031】
本発明の四角いメロン栽培用型枠は、まず、埋め込みボルトに対して側面板の上端の孔を通して当該埋め込みボルトにナットを螺合して、縦径方向の果実サイズと型枠サイズの適合度合いを容易に判別し得る半組立状態とする。そして、適合サイズの果実を選択したら、果実の茎を閉じている方の半割天板の半割孔に合わせて半組立状態の型枠内に収納し、その後、まだ閉じていない側板を閉じながら固定されていない方の半割天板も閉じ、ボルト軸をナットに螺合させて組み立てる。全てを埋め込みボルトとしなかったことで、この一連の作業を一人で実施することができる。
【0032】
こうして型枠内にネット系メロンの果実を収納した状態に組み立てたら、型枠をヒモ等を用いて吊り下げる。
【0033】
なお、この型枠の吊り下げをするに当たっては、以下の構成を採用しておくとよい。
(9−7)前記締結部材で締結した際に前記天板側縁部と重なり合う前記側面板の上端は、該天板側縁部の幅方向両端がそれぞれはみ出し部となる幅に構成されていること。
(9−8)前記各はみ出し部には、吊り下げ用のヒモ、ワイヤ等の吊り下げ索を通すことのできる吊り下げ索挿通孔が形成されていること。
【0034】
この様なはみ出し部に吊り下げ索挿通孔を形成しておくことで、半組立状態とした型枠を吊り下げた状態にしてから果実を収納するといった作業方法をとることもできる。
【0035】
ここで、この型枠取り付け作業をより容易に実施する上で、さらに、以下の構成をも採用するとよい。
(10−1)前記締結部材として、前記埋め込みボルトに対しては蝶ナットを、前記ナットに対しては蝶ボルトを用いること。
【0036】
蝶ナット及び蝶ボルトを用いることで、型枠組立作業はもとより、分解作業においてもスパナ等の工具を用いる必要がなく、より作業性が改善する。
【発明の効果】
【0037】
本発明の栽培方法によれば、単に形状がしっかり現れるだけでなくネットの美しさも達成された商品価値の高い多面体状メロンを栽培することができる。また、品種の選定及び播種及び定植時期の選定により、最も需要の見込まれる時期に商品価値の高い多面体状メロンを提供することができる。そして、本発明の四角いメロン栽培用型枠によれば、四角いメロンの栽培に当たって、型枠を容易に取り付け、本発明の栽培方法を実施する上での果実サイズと型枠サイズの適合度合いの確認を容易になし得るという効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
まず、本発明の実施形態としての四角いメロン栽培用型枠の構造について、図面を参照しつつ説明する。実施形態の四角いメロン栽培用の鉄製型枠1は、図1に示す様に、組み立てた状態で内部に六面体空間2を形成し、成長途中の果実3を覆う様に取り付けて成長させることにより、ネット系メロンを六面体形状に栽培するための型枠である。
【0039】
この鉄製型枠1は、図2に示す様に、1枚の底面板11と、4枚の側面板12〜15と、2枚の半割天板16,17とを備えている。これら底面板11、側面板12〜15及び半割天板16,17は、いずれも鉄板を用いて製造されている。底面板11には、12φの通気口11aが4個開口されている。各側面板12〜15は、この底面板11の四辺に対して蝶番21〜24で連結されている。また、これら側面板12〜15の内、正面の側壁を構成する側面板12の組立時に上端となる側の辺に対して半割天板16が、背面の側壁を構成する側面板14の組立時に上端となる側の辺に対して半割天板17が、それぞれ蝶番25,26で連結されている。
【0040】
各半割天板16,17には、組立時に合わさる辺の中央に、ネット系メロンの果実の茎を通すことのできる茎挿通孔4(図1参照)を形成する半割孔16a,17aが形成されている。また、各半割天板16,17は、その側縁を上方に折り曲げた天板側縁部31〜34を備えている。そして、4枚の側面板12〜15の内、左右の側壁を構成する側面板13,15は、組立時の上端高さが、天板側縁部31〜34の上端とほぼ同一となると共に、上端の両角を斜めにカットした面取りが施された台形重なり部35,36を備えている。従って、組立時には、天板側縁部31〜34には、それぞれ、左右の側面板13,15の台形重なり部35,36とは重ならないはみ出し部31a〜34aが形成される。これら各はみ出し部31a〜34aには、吊り下げ用のヒモを通すことのできる吊り下げ索挿通孔31b〜34bが形成されている。なお、台形重なり部35,36の先端は内側へ直角に折り曲げられている。
【0041】
組立時に背面側の天板を構成する方の半割天板17の天板側縁部33,34には、ボルト43,44が外に軸を向ける様に溶接固定した埋め込みボルトが立設されている。一方、組立時に正面側の天板を構成する方の半割天板16の天板側縁部31,32には、ナット41,42が溶接固定されている。そして、左右の側面板13,15の台形重なり部35,36には、ボルト43,44を挿通することのできる埋め込みボルト挿通孔35a,36aと、ナット41,42に螺合するボルト軸を挿通することのできるボルト軸挿通孔35b,36bとが貫通されている。
【0042】
また、実施形態の鉄製型枠1の六面を構成する各鉄板11〜17の内面には、それぞれクッション材51〜57が貼り付けてある。なお、この鉄製型枠1は、出荷に適する重量に肥大化したメロンの果実を枠内面に密着した状態に収納することができる容積を有する寸法に設計する。
【0043】
そして、この鉄製型枠1を、温室において成長途中にあるネット系メロンの果実に二次ネットが発生し始める頃に装着する。この際、鉄製型枠1を取り付けるメロンとして、二次ネットの発生時の果実の内、型枠1内に収納したときに縦径方向について指一本も入らない程度の大きさのものを選択する。この果実の選択に当たっては、物差し等を用いて果実の縦径を測ってもよいし、型枠1をあてがって見て決定する様にしてもよい。
【0044】
型枠1の取付に当たっては、図3(A)に示す展開状態から、まず、背面の側壁となる側面板14を上方へ回動して底面板11に対して直角に起立した状態とし、その上端の半割天板17を前方へ90度回動させ、左右の側面板13,15を上方へ回動して台形重なり部35,36の埋め込みボルト挿通孔35a,36aに、ボルト43,44を挿通し、蝶ナット61を締め付けて正面を開放した状態に組み立てる(図3(B)→図4(A))。
【0045】
次に、上述の様な適合サイズの果実を選択したら、茎を背面側の半割天板17の半割孔17aに合わせて型枠1内に収納する。そして、図4(B)に示す様に、正面側の側面板12及び半割天板16を回動し、半組立状態の左右の側面板13,15の台形重なり部35,36の正面側に半割天板16の天板側縁部31,32を差し込む様に重ね合わせ、蝶ボルト62を用いて組立状態とする。組み立てた状態では、側面板同士の間は、5mm程度の隙間19(図1(A),図5参照)が開いた状態となる。
【0046】
こうして組立終わったら、天板側縁部31〜34のはみ出し部31a〜34aの吊り下げ索挿通孔31b〜34bに吊り下げ用のヒモを通し、調度良い高さに吊り下げる。
【0047】
この後、約30日間程度、果実を出荷に適合する状態に肥大化させる。そして、出荷適合状態に成長させた後、型枠1ごと果実を収穫し、型枠1を開いて四角いメロンを取り出す。
【0048】
次に、本実施形態におけるアールスベネチア及びアールスアリーナによる四角いメロンの栽培計画につき、主要な作業及びその時期を説明する。なお、( )内の日数は、交配開始日を基準とする日数の目安、[ ]内は、型枠取り付け後の日数の目安である。
【0049】
(1)播種:(約53日前)
(2)鉢上げ:発芽ぞろいの時期(約47日前)
(3)元肥:(約33日前)
(4)定植:展開葉3〜4枚の時期(約27日前)
(5)わき芽取り:(約22日前)
(6)下葉かき:展開葉7枚前後の時期(約15日前)
(7)誘引:展開葉9枚前後の時期(約12日前)
(8)側枝の除去:展開葉15枚前後の時期(約5日前)
(9)追肥:(1日前)
(10)交配開始
(11)摘果:[約9日後]
(12)玉ふき:縦ネット出現始めの時期(約12〜13日後)
(13)型枠の設置:横ネット(二次ネット)出現始めの時期(約19日後)
(14)液肥:[約10日後]
(15)袋かけ:[約17日後]
(16)植物成長調整剤:[約20日後]
(17)収穫:[約35日後]
【0050】
ここで、袋かけは、型枠に直射日光を当てない様にするために実施するものである。また、この栽培計画では、型枠内に貼り付けるクッション材として、タオル地を二つ折りにしたものを用いることを推奨する。また、鉄製型枠1としては、各面を構成する鉄板として板厚2.6mmのものを用い、鉄板間の内面幅×内面高さ=13cm×13cmのサイズに設計したものを用いることを推奨する。また、型枠設置に当たっては、実施形態において説明した様に、二次ネットが出現した果実の内、型枠1内に収納したときに縦径方向について数mm程度の隙間しかできないサイズのものを選択することを推奨する。
【0051】
次に、中元用としてのアールスベネチア及びアールスアリーナによる四角いメロンの栽培計画につき、主要な作業及びその時期を説明する。なお、この中元用として特に推奨する品種は、八重種苗のアールスベネチア(夏一)、萩原農場のアールスアリーナ(夏二)である。
【0052】
(1)播種:4月中旬〜5月上旬
(2)定植:5月上旬〜5月下旬
(3)追肥:6月上旬〜6月下旬
(4)交配開始:6月上旬〜6月下旬
(5)型枠の設置:6月下旬〜7月中旬
(6)液肥:7月上旬〜7月下旬
(7)袋かけ:7月中旬〜8月上旬
(8)植物成長調整剤:7月中旬〜8月上旬
(9)収穫:7月下旬〜8月中旬
【0053】
なお、「(2)定植」の1週間ぐらい前に元肥を、「(4)交配開始」の前日頃に追肥を施肥する。また、定植後交配開始までの間に、「わき芽取り」、「下葉かき」、「誘引」、「側枝の除去」を適宜実施する。さらに、交配後10日ほど後で一つの茎に一つの果実となる様に「摘果」を実施する。また、「(5)型枠設置」の数日前には「玉ふき」を実施する。
【0054】
以上、発明を実施するための最良の形態としての一実施形態を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【0055】
なお、実施形態では、鉄製型枠1をヒモで吊る方法を説明したが、適当な高さの台を用意し、鉄製型枠をこの台の上に置いて栽培してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態における四角いメロン栽培用型枠をメロンに取り付けた状態を示し、(A)は斜視図、(B)は内部の様子の正面図である。
【図2】実施形態における四角いメロン栽培用型枠の展開図である。
【図3】実施形態における四角いメロン栽培用型枠の組立方法を示し、デジタル写真を元に作成した斜視図である。
【図4】実施形態における四角いメロン栽培用型枠の組立方法を示し、デジタル写真を元に作成した斜視図である。
【図5】実施形態における四角いメロン栽培用型枠の組立時の隙間の様子を示し、デジタル写真を元に作成した斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・鉄製型枠
2・・・六面体空間
3・・・成長途中の果実
4・・・茎挿通孔
11・・・底面板
11a・・・通気口
12・・・側面板(正面壁)
13・・・側面板(右側面壁)
14・・・側面板(左側面壁)
15・・・側面板(背面壁)
16・・・半割天板(正面側)
16a・・・半割孔
17・・・半割天板(背面側)
17a・・・半割孔
19・・・隙間
21〜26・・・蝶番
31,32・・・天板側縁部(正面側)
33,34・・・天板側縁部(背面側)
31a〜34a・・・はみ出し部
31b〜34b・・・吊り下げ索挿通孔
35,36・・・台形重なり部
35a,36a・・・埋め込みボルト挿通孔
35b,36b・・・ボルト軸挿通孔
41,42・・・ナット
43,44・・・ボルト
51〜57・・・クッション材
61・・・蝶ナット
62・・・蝶ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立てた状態で内部に多面体形状の空間を形成する型枠を成長途中の果実を覆う様に取り付けて成長させることにより、ネット系メロンを多面体形状に栽培するための方法であって、以下の構成を採用することを特徴とする多面体状メロンの栽培方法。
(1−1)前記型枠として、その内面にクッション材を取り付けたものを用いること。
(1−2)前記型枠を取り付ける時期を、前記成長途中にあるネット系メロンの果実に二次ネットが発生し始める頃とすること。
(1−3)前記型枠を取り付けるメロンとして、前記二次ネットの発生時の果実が前記型枠内にわずかに隙間を開けて収納される程度のサイズのものを選択すること。
(1−4)前記型枠が、出荷に適する重量に肥大化した果実を枠内面に密着した状態に収納することができる容積を有するものであること。
【請求項2】
さらに、以下の構成を採用したことを特徴とする請求項1記載の多面体状メロンの栽培方法。
(2−1)前記型枠は、六面を鉄板で構成した鉄製型枠であること。
【請求項3】
さらに、以下の構成を採用したことを特徴とする請求項1又は2記載の多面体状メロンの栽培方法。
(3−1)前記クッション材は、少なくとも前記ネット系メロンの果実が直に接する面が吸湿性を有する素材で構成されていること。
【請求項4】
さらに、以下の構成を採用したことを特徴とする請求項3記載の多面体状メロンの栽培方法。
(4−1)前記ネット系メロンが、夏作に適するアールスフェボリットであること。
(4−2)前記ネット系メロンの播種及び定植を、交配適期が6月上旬以降6月下旬以前となる様に実施すること。
【請求項5】
さらに、以下の構成を採用したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の多面体状メロンの栽培方法。
(5−1)前記ネット系メロンの品種が、アールスベネチア又はアールスアリーナであること。
【請求項6】
さらに、以下の構成を採用したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の多面体状メロンの栽培方法。
(6−1)前記ネット系メロンは、交配後48日〜60日で出荷に適する果実となる品種であること。
【請求項7】
さらに、以下の構成を採用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の多面体状メロンの栽培方法。
(7−1)前記ネット系メロンは、交配後12日〜25日で二次ネットが発生し始める品種である。
【請求項8】
さらに、以下の構成を採用したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の多面体状メロンの栽培方法。
(8−1)前記ネット系メロンは、二次ネット発生後出荷適合果実となるまでの肥大化期間が25日〜40日となる様な品種であること。
【請求項9】
組み立てた状態で内部に六面体空間を形成し、成長途中の果実を覆う様に取り付けて成長させることにより、ネット系メロンを六面体形状に栽培するための型枠であって、以下の構成を採用したことを特徴とする四角いメロン栽培用型枠。
(9−1)六面を鉄板で構成した鉄製型枠であること。
(9−2)前記鉄製型枠は、底面板と、該底面板の四辺に回動可能に取り付けられた側面板と、該側面板の内の対面する二つの側面板のそれぞれに組立時の上端側の辺に回動可能に取り付けられた半割天板とを備え、前記各半割天板の側縁を上方に折り曲げた天板側縁部と、該半割天板を備えていない残り二つの側面板の上端とを締結部材で締結することによって、少なくとも側面板間に隙間を有する六面体に組み立てることができるものであること。
(9−3)前記各半割天板には、組立時に合わさる辺の中央に、前記ネット系メロンの果実の茎を通すことのできる孔を形成する半割孔が備えられていること。
(9−4)前記二つの半割天板の内の、一方の半割天板の前記天板側縁部には埋め込みボルトを外に向けて立設してあり、他方の半割天板の前記天板側縁部にはナットが固定してあること。
(9−5)前記天板側縁部と締結される側面板の上端部には、締結時に前記埋め込みボルトを挿通することのできる埋め込みボルト挿通孔と、前記ナットに螺合するボルト軸を挿通することのできるボルト軸挿通孔とが貫通されていること。
(9−6)前記六面を構成する鉄板の内面には、クッション部材が取り付けてあること。
【請求項10】
さらに、以下の構成を採用したことを特徴とする請求項9記載の四角いメロン栽培用型枠。
(10−1)前記締結部材として、前記埋め込みボルトに対しては蝶ナットを、前記ナットに対しては蝶ボルトを用いること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−325539(P2007−325539A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159123(P2006−159123)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【特許番号】特許第3908262号(P3908262)
【特許公報発行日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(504411410)
【出願人】(501169143)愛知みなみ農業協同組合 (1)
【出願人】(302031074)豊橋農業協同組合 (1)
【Fターム(参考)】