説明

多面鏡

【課題】顔の周辺や頭部全体を、上下左右の広い角度から自由に観察することができ、しかも形状がコンパクトで使い勝手のよい多面鏡を提供する。
【解決手段】主鏡26と、上記主鏡26の周縁部の上下左右の4個所に、それぞれ折り畳み自在に連結される側鏡16、17、22、23とを有し、各側鏡16等が、主鏡26に対し角度自在に位置決めできるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鏡と側鏡とを備えた多面鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、メイクアップ等を行う際に用いられる鏡としては、一面鏡か、左右に開く側鏡を備えた三面鏡が一般的である。
【0003】
しかしながら、従来の三面鏡では、左右の側鏡を利用して、一面鏡では見えなかった後姿が見えるという利点を有するものの、頭の上やあごの下といった、上下方向における視覚外の部分を見ることができず、自分の顔周辺や頭部を立体的に把握するには限界があった。
【0004】
これに対し、鏡による視野をより広げ、後頭部や側頭部を見やすくした五面鏡が提案されている(特許文献1参照)。このものは、図9に示すように、主鏡3と左右の袖鏡4とで構成される、いわゆる三面鏡において、上記左右の袖鏡4の開放端部に、回動可動な状態で、さらに内袖鏡5を連結した構成になっている。
【特許文献1】特開2000−70092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たしかに、この五面鏡によれば、鏡による視野が広がり、従来のものより見やすいという利点を有するが、袖鏡4と内袖鏡5が、左右方向に大きく張り出すため、場所をとり、設置が大がかりになってしまうという問題がある。また、後頭部や側頭部は見やすいが、上下方向の視野は依然として限られているため、顔の周辺や頭頂部まで含めた頭部全体を、好きな角度から自由に観察することはできないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、顔の周辺や頭部全体を、上下左右の広い角度から自由に観察することができ、しかも形状がコンパクトで使い勝手のよい多面鏡の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、主鏡と、上記主鏡の周縁部の少なくとも上下左右の4個所に、それぞれ折り畳み自在に連結される側鏡とを有し、各側鏡が、主鏡に対し角度自在に位置決めできるようになっている多面鏡を第1の要旨とする。
【0008】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記側鏡が全て、主鏡に対し略平行に折り畳み可能になっている多面鏡を第2の要旨とし、上記主鏡と側鏡からなる鏡部分が、基台から延びる支持アーム先端部に、角度自在かつ回転自在に取り付けられている多面鏡を第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
すなわち、本発明の多面鏡は、主鏡の周縁部の少なくとも上下左右の4個所に、それぞれ側鏡が連結され、角度自在に位置決めできるようになっているため、上下の側鏡を利用して、頭頂部やあごの下を容易に見ることができ、左右の側鏡を利用して、側頭部や後頭部を見ることができる。また、互いの鏡の角度を調整することにより、従来は見ることができない角度からの顔や頭部を観察することができるため、ふだん手入れが行き届きにくい部位の状態を把握して今後の手入れ等に役立てたり、意図的に行った手入れの効果を確認したりすることができる。
【0010】
また、本発明の多面鏡のなかでも、特に、上記側鏡が全て、主鏡に対し略平行に折り畳み可能になっている多面鏡は、側鏡の枚数が多くても、全体を平たく折り畳むことができるため、保管時に、小さなスペースに片づけることができ、便利である。そして、鏡同士を平行に折り重ねると、鏡同士が面接触することになるため、鏡面の特定の部分に荷重がかかって損傷を招いたり、鏡を保持する枠部分に歪みを生じたりすることがない、という利点を有する。
【0011】
さらに、本発明の多面鏡のなかでも、特に、上記主鏡と側鏡からなる鏡部分が、基台から延びる支持アーム先端部に、角度自在かつ回転自在に取り付けられている多面鏡は、顔や頭の特定の部位を観察するのに都合のよい位置に、主鏡を位置決めすることができ、より使い勝手がよい、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の最良の形態である多面鏡を示す斜視図であり、図2は、上記多面鏡を後方からみた斜視図である。これらの図において、11は、全体を支受するための基台で、平面視長方形の鉄製枠状体である。そして、この基台11の後方辺部11aから、やや前方に傾斜した状態で、同じく鉄製の支持アーム12が上方に延びており、その先端部に、主鏡26と4枚の側鏡16、17、22、23(側鏡22、23は隠れてみえない)からなる鏡部14が、ユニバーサルジョイント13を介して角度自在かつ回転自在に取り付けられている。そして、これらの主鏡26、側鏡16等は、全て、鏡の周囲および裏面が、鉄製の板金からなるフレームで覆われた構造になっている。
【0014】
上記鏡部14を、より詳しく説明すると、まず、主鏡26の左右側面に、鉄製蝶番15が設けられており、この蝶番15を介して、左右方向に開く2枚の側鏡16、17が取り付けられている。これらを開いた状態を図3に示す。なお、側鏡16、17において、フレーム内の鏡18、19の周囲には、衝撃を緩衝するために、プラスチック材、エラストマー等からなる緩衝部材20が設けられている。
【0015】
そして、上記左右に開く側鏡16、17の内側には、さらに、主鏡26の上下面に設けられた鉄製蝶番21を介して、上下に開く2枚の側鏡22、23が取り付けられている、これらを開いた状態を図4に示す。なお、側鏡22、23において、フレーム内の鏡24、25の周囲にも、衝撃を緩衝するために、上記鏡18、19の周囲と同様、緩衝部材20が設けられている。また、上記上下に開く側鏡22、23の奥には、正方形の主鏡26が設けられている。主鏡26の鏡27の周囲にも、緩衝部材20が設けられている。
【0016】
このように、各側鏡16、17、22、23は、主鏡26の左右側面および上下面の4個所に、蝶番15、21を介して折り畳み自在に連結されており、しかも、蝶番15の方が蝶番21よりも幅広で、側鏡16、17を、側鏡22、23の厚み分を考慮して折り畳めるようになっているため、いずれの側鏡16等も、主鏡26に対し平行に、すなわち最小限の薄さに折り畳むことができるようになっている。
【0017】
そして、上記蝶番15、21には、図5に示すように、左右の蝶番プレートのうち、ヒンジピン30を挿通する円筒部分31、32に、所定深さのダボ33が形成されている(円筒部分31に対するダボ33は、この図では裏側にあるので見えない)ため、ヒンジピン30に対する蝶番プレートの回動動作にブレーキがかかり、主鏡26に対し、側鏡16等を、任意の角度で位置決め保持することができるようになっている(いわゆる「フリーストップ機能」である)。
【0018】
したがって、この多面鏡によれば、主鏡26の周囲の、上下左右の4個所に、それぞれ側鏡16等が連結され、各側鏡16等が角度自在に位置決めできるようになっているため、上下の側鏡22、23を利用して、頭頂部やあごの下を容易に見ることができ、左右の側鏡16、17を利用して、側頭部や後頭部を見ることができる。また、主鏡26、側鏡16等の互いの鏡27等の角度を調整することにより、従来は見ることができない角度からの顔や頭部を観察することができるため、ふだん手入れが行き届きにくい部位の状態を把握して今後の手入れ等に役立てたり、意図的に行った手入れの効果を確認したりすることができる。
【0019】
そして、上記側鏡16等を全て、主鏡26に対し平行に折り畳むことができるようになっているため、全体を平たく折り畳むことができる。したがって、保管時に、小さなスペースに片づけることができ、便利である。しかも、主鏡26および側鏡16等を互いに平行に折り重ねると、それぞれの鏡同士、あるいは鏡とフレーム同士が面接触することになるため、鏡の特定の部分に荷重がかかって損傷を招いたり、鏡を保持するフレーム部分に歪みを生じたりすることがない、という利点を有する。
【0020】
さらに、上記主鏡26自身が、基台11から延びる支持アーム12の先端部に、ユニバーサルジョイント13を介して、角度自在かつ回転自在に取り付けられているため、主鏡26自身の位置を、顔や頭の特定の部位を観察するのに都合のよい位置に、位置決めすることができ、より使い勝手がよい、という利点を有する。
【0021】
なお、上記の例において、側鏡16等は、正方形の主鏡26に対し、上下左右4個所に連結させているが、側鏡16等の枚数や連結態様は、上記の例に限らず、任意に設定することができる。そして、主鏡26の形状も、任意に設定することができる。ただし、少なくとも主鏡26の上下左右4個所に、それぞれ側鏡16等を連結することが、鏡による視野を広げる上で、重要である。以下、側鏡の連結態様等の変形例をいくつか列挙する。ただし、連結部の構造は単純化して模式的に示している。
【0022】
例えば、図6(a)の例は、八角形の主鏡40に対し、その上下左右4個所に、4枚の側鏡41を、それぞれ連結したものである。また、同図(b)の例は、前記の例と同様、正方形の主鏡42に対し、上下左右の各辺に対し、部分的に、4枚の側鏡43を、それぞれ連結したものである。
【0023】
さらに、図7(a)の例は、六角形の主鏡44に対し、その六辺全てに、6枚の側鏡45、46を、それぞれ連結したものである。この場合、主鏡44に対し、左右に連結されるべき側鏡45、46が、角度を変えて上下2段に分かれて連結されている、といえる。このように、本発明において、「上下左右」とは、厳密なものではなく、多少方向がずれていても、少なくとも上方、下方、左方向、右方向の4方向に、側鏡が連結されていればよい。なお、この例の場合、側鏡45(または46)を畳み、ついで側鏡46(または45)を畳むことにより、全体をコンパクトに畳むことができる。
【0024】
また、図7(b)の例は、円形の主鏡47に対し、上下左右4個所に、4枚の半円状の側鏡48をそれぞれ連結したものである。もちろん、各側鏡48が、鎖線で示すように、円形の側鏡48′であっても差し支えない。
【0025】
また、図8(a)の例は、八角形の主鏡50に対し、全ての辺である8個所に、8枚の側鏡51、52をそれぞれ連結したものである。このものは、左右の側鏡51を閉じると、同図(b)に示すように、主鏡50およびその上に重ねた側鏡52を全て覆うことができるようになっており、側鏡51、52が多くても、見栄えがよい。
【0026】
さらに、上記の例では、基台11、支持アーム12、主鏡26および側鏡16等のフレームを、全て鉄製のもので構成しているが、これは、ユニバーサルジョイント13の取り付け部に一定の強度をもたせることと、鉄製蝶番15、21を取り付け、ダボ33を形成して簡単にフリーストップ機能を付与することを考慮したものである。ただし、全体を鉄製にする必要はなく、より軽量化の観点から、プラスチック製や木製の部材を組み合わせることができる。そして、鏡部14の支持構造や、フリーストップ機能をもたせる構造は、従来公知のどのような構造を用いても差し支えない。
【0027】
そして、全体を、上記の例のように、卓上型にする必要はなく、例えば壁掛け型、壁面組み込み型、洗面台組み込み型、鏡台組み込み型等、適宜の形態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例の斜視図である。
【図2】上記実施例を後方から見た斜視図である。
【図3】上記実施例の使用態様の説明図である。
【図4】上記実施例の使用態様の説明図である。
【図5】上記実施例の使用態様の説明図である。
【図6】(a)、(b)はともに上記実施例の変形例の説明図である。
【図7】(a)、(b)はともに上記実施例の変形例の説明図である。
【図8】(a)は上記実施例の変形例の説明図、(b)はその使用態様の説明図である。
【図9】従来の多面鏡の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
16、17、22、23 側鏡
26 主鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鏡と、上記主鏡の周縁部の少なくとも上下左右の4個所に、それぞれ折り畳み自在に連結される側鏡とを有し、各側鏡が、主鏡に対し角度自在に位置決めできるようになっていることを特徴とする多面鏡。
【請求項2】
上記側鏡が全て、主鏡に対し略平行に折り畳み可能になっている請求項1記載の多面鏡。
【請求項3】
主鏡と側鏡からなる鏡部分が、基台から延びる支持アーム先端部に、角度自在かつ回転自在に取り付けられている請求項1または2記載の多面鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−6457(P2006−6457A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185005(P2004−185005)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【出願人】(397073658)株式会社ソニーシーピーラボラトリーズ (14)
【Fターム(参考)】