説明

多領域/多電位試験センサ、方法およびシステム

測定装置と試験センサとを含むバイオセンサシステムであって、試験センサが、独立にアドレス指定可能な少なくとも3つの電極を含み、そのうち少なくとも2つの電極が実質的に化学的に隔離されているバイオセンサシステムを開示する。1つまたは複数の作用電極を、2つ以上の対電極と組み合わせることができる。この2つ以上の対電極は、異なる電位で動作することにより、多分析物電気化学分析を行うことができる。多分析物電気化学分析を実行する分析法と、2次分析領域間における化学的混合に対する抵抗性を有する試験センサが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2007年9月24日に出願された「Multi−Potential Biosensors,Systems,and Methods」という名称の米国特許仮出願第60/974,823号の恩典を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、全血、血清、血漿、尿、唾液、間質液、細胞内液などの生物流体(biological fluid)の分析を提供する。バイオセンサは一般に、試験センサ内に存在する試料を分析する測定装置を有する。試料は一般に液体であり、生物流体である他に、抽出液、希釈液、濾液、沈殿を再形成したものなど、生物流体の派生物であることもある。バイオセンサによって実行される分析は、アルコール、グルコース、尿酸、乳酸塩およびエステル、コレステロール、ビリルビン、遊離脂肪酸、トリグリセリド、タンパク質、ケトン、フェニルアラニン、酵素など、生物流体中の1種または数種の分析物の存在の有無を判定し、かつ/またはそれらの分析物の濃度を決定する。この分析は、生理的異常の診断および治療に役立つことがある。例えば、糖尿病の患者は、食事および/または投薬を調節するため、バイオセンサを使用して、全血中のグルコースレベルを決定することができる。
【0003】
単一の分析物に対して多くのバイオセンサがあり、分析の正確度および/または精度を向上させるために、多くのバイオセンサがさまざまな技法を使用する。正確度は、参照分析物の読みに対するセンサシステムの分析物の読みの偏りとして表すことができ、この偏りの値が大きいほど正確度は低い。一方、精度は、複数の測定間の散らばりすなわち分散として表すことができる。分析の正確度および/または精度を向上させるために、較正情報を使用することができ、較正情報は、分析の前に、試験センサから測定装置に読み込むことができる。測定装置は、この較正情報を使用して、生物流体のタイプ、具体的な分析物(1種または数種)、試験センサの製造時変動など1つまたは複数のパラメータに応じて、生物流体の分析を調節する。バイオセンサは、ベンチトップ型、携帯型などの測定装置を使用して実現することができる。携帯型測定装置はハンドヘルド型とすることができ、試料中の分析物を同定および/または定量することができる。携帯型測定システムの例には、Bayer HealthCare社(米ニューヨーク州Tarrytown)のAscensia Breeze(登録商標)およびElite(登録商標)メータなどがあり、ベンチトップ型測定システムの例には、CH Instruments社(米テキサス州Austin)から市販されているElectrochemical Workstationなどがある。
【0004】
測定装置が試験センサに入力する電気信号は、電位または電流とすることができ、また、一定または可変信号、あるいはDC信号オフセットを有するAC信号を印加するときなど、これらの組合せとすることができる。入力信号は、単一のパルスとして、あるいは複数のパルス、シーケンスまたはサイクルとして印加することができる。分析物または測定可能種に入力信号が印加されると、これらは酸化還元反応を受ける。この酸化還元反応によって出力信号が生成され、この信号を、過渡状態および/または定常状態出力の間、常にまたは定期的に測定することができる。変化する過渡状態出力信号とは違い、定常状態出力は、その独立入力変量(時間など)に対する信号の変化が、±10%以内、±5%以内など、実質的に一定であるときに観察される。
【0005】
クーロメトリ、アンペロメトリ、ボルタンメトリなど、さまざまな電気化学的方法を使用することができる。クーロメトリとは違い、アンペロメトリおよびボルタンメトリは一般に、分析物が酸化または還元される速度を測定して、試料中の分析物濃度を決定する。アンペロメトリでは、一定電位(電圧)の電気信号を試験センサの電気導体に印加し、測定する出力信号は電流である。ボルタンメトリでは、変動電位を生物流体試料に印加する。交番励起/緩和サイクルを含むゲート制御(gated)アンペロメトリおよびゲート制御ボルタンメトリ法を使用することもできる。
【0006】
「ヘマトクリット効果」は、全血試料中で実行される分析の正確度および/または精度を低下させることがある1つの因子である。全血試料は、水、グルコース、タンパク質、ケトンおよび他の生体分子の他に、赤血球を含む。ヘマトクリットは、全血試料の全体積に対する赤血球が占める体積であり、しばしば百分率で表現される。このヘマトクリット百分率が、全血試料に対するシステムのヘマトクリット較正値(%)からはずれるほど、バイオセンサから得られる分析物の読みの偏り(誤差)は大きくなる。例えば、一組の較正定数(例えば40%のヘマトクリットを含む全血試料に対する傾きおよび切片)を有する従来のバイオセンサシステムは、全く同じグルコース濃度を有するが、ヘマトクリット百分率が20%、40%、60%である全血試料に対して、3つの異なるグルコース濃度を報告するであろう。したがって、たとえ全血グルコース濃度が同じであっても、ヘマトクリットが20%の全血試料は、ヘマトクリットが40%の全血試料よりも多くのグルコースを含み、ヘマトクリットが60%の全血試料は、ヘマトクリットが40%の全血試料よりも少ないグルコースを含むと、そのシステムは報告するであろう。従来のバイオセンサは一般に、全血試料のヘマトクリット含量が40%であると仮定してグルコース濃度を報告するように構成されているため、40%未満または40%を超えるヘマトクリットを含む血液試料に対して実行したグルコース測定は、ヘマトクリット効果に起因するある偏り誤差を含む。
【0007】
ヘマトクリット偏りは、下式によって表すことができる。
ヘマトクリット偏り(%)=100×(G−Gref)/Gref
上式で、GおよびGrefはそれぞれ、任意のヘマトクリットレベルに対する、測定グルコースの読みおよび参照グルコースの読みである。ヘマトクリット偏り(%)の絶対値が大きいほど、ヘマトクリット効果も大きい。
【0008】
ヘマトクリット効果だけでなく、測定可能種の濃度が分析物の濃度と相関しないときにも、測定は不正確になることがある。例えば、バイオセンサが、分析物の酸化に対応して生成した還元された媒介物(mediator)の濃度を決定するとき、分析物の酸化によって生成したものでない還元された媒介物の存在は、媒介物バックグラウンドのため、正しい値よりも多くの分析物が試料中に存在するとの指示につながる。
【0009】
分析物の濃度に応答しない因子に起因する出力信号を知ることによって、出力信号の擬似部分を差し引くことができる。従来のシステムは、共通の試料リザーバ内に複数の作用電極/対電極対を配置することにより、出力信号の非応答部分を分離することを試みた。電極を形成するのに使用する試薬を変更することにより、これらのシステムは、2つの出力信号を差し引くことによって、分析物の応答部分と非応答部分とを分離することを試みた。
【0010】
例えば、従来のセンサシステムの中には、各作用電極が参照電極と向かい合った分割されていない試料室内に、複数の検出エリアを有するものがある。他の態様では、これらのシステムが、単一の参照電極を有することがある。これらのタイプのシステムは、既知の2つの標準を有する試験時センサ較正系を提供することができ、または、例えば分析物用、干渉物用およびヘマトクリット決定用の別々の電極系を提供することができる。これらのシステムに共通する欠点は、試料室が1つであり、隣接する電極系/検出エリアが、拡散および/または液体の移動によって、互いに化学的に汚染しあう可能性があることである。この欠点は、1つの試薬系が他の試薬系よりも長い検定時間を必要とするとき、および/または試料を充填した後に試験センサが機械的な外乱を受けるときに、特に問題となる可能性がある。
【0011】
診断には、生体試料中に存在する分析物に関する情報がますます多く必要となっているため、医療上重要な複数の生体種を日常的にモニタリングすることがよりいっそう求められている。したがって、改良型のバイオセンサ、特に、複数の分析物に対してよりいっそう正確度および/または精度の高い濃度測定を提供することができるバイオセンサが依然として求められている。本発明のシステム、装置および方法は、従来のバイオセンサに関連した欠点のうちの少なくとも1つの欠点を解決し、または改善する。
【発明の概要】
【0012】
実質的に化学的に隔離された少なくとも2つの2次分析領域を有するリザーバを形成する少なくとも2つの基材と、このリザーバ内に配置された第1の導体および試薬組成物を含む少なくとも1つの第1の作用電極と、第1の2次分析領域内に配置された第2の導体および少なくとも1つの第1の酸化還元種を含む少なくとも1つの第1の対電極と、第2の2次分析領域内に配置された第3の導体および少なくとも1つの第2の酸化還元種を含む少なくとも1つの第2の対電極とを備え、これらの作用電極、第1の対電極および第2の対電極が、独立にアドレス指定可能である、分析物試験センサを開示する。
【0013】
独立にアドレス指定可能な少なくとも3つの2次分析領域を含むリザーバを形成する少なくとも2つの基材を備え、これらの2次分析領域の各々が、実質的に化学的に隔離された、分析物試験センサを開示する。
【0014】
一態様では、作用電極から、第1の2次分析領域および1次エリアを通る直線を、第2の2次分析領域を通って対電極まで引くことができないように、試験センサを構成することができる。2つの基材間に導体が配置され、少なくとも前記2つの基材および前記導体の縁によって、試料ポートを含むリザーバの少なくとも一部分が画定されるように、試験センサを構成することもできる。この場合、導体の縁が、少なくとも第1の電極を画定する。
【0015】
他の態様では、少なくとも1つの試料ポートに入った流体試料が、第1、第2および第3の電極のうちの2つ以上の電極を横切って別の電極に到達しないように、試験センサを構成することができる。第1の酸化還元種と第2の酸化還元種との混合が、サイクリックボルタンメトリおよびケモアンペロメトリから選択された分析技術によって、試験センサが機械的外乱を受けない場合には12分以内、試験センサが機械的外乱を受ける場合には1.4分以内に観察されないように、試験センサを構成することもできる。
【0016】
試料中の少なくとも1つの分析物を測定する方法であって、試料中の少なくとも1つの分析物を化学的または生化学的に酸化または還元すること、少なくとも第1の作用電極および第1の対電極を用いて、試料に第1の入力信号を印加すること、少なくとも第1の作用電極および第2の対電極を用いて、試料に、第1の入力信号とは電位が異なる第2の入力信号を印加すること、第1の入力信号および第2の入力信号からの出力信号を分析して、第1の対電極の電位における試料中の第1の測定可能種の濃度と、第2の対電極の電位における試料中の第2の測定可能種の濃度とを決定すること、ならびに第1の測定可能種の濃度と第2の測定可能種の濃度の少なくとも一方の濃度を、試料中の少なくとも1つの分析物の濃度に変換することを含む方法を開示する。
【0017】
試料中の少なくとも1つの分析物を測定する方法であって、少なくとも2対の電極を含む試験センサに試料を導入することを含み、前記少なくとも2対の電極が、独立にアドレス指定可能な実質的に化学的に隔離された少なくとも4つの電極を含み、前記電極のうちの少なくとも2つの電極が作用電極であり、前記電極のうちの少なくとも2つの電極が対電極であり、さらに、試料中の分析物を化学的または生化学的に酸化または還元すること、前記少なくとも2対の電極を横切って、試料に、ゲート制御入力信号を印加して、少なくとも2つの出力信号を生成すること、前記少なくとも2つの出力信号を結合すること、およびこの結合した出力信号から、試料中の分析物の濃度を測定することを含む方法を開示する。開示したこれらの試験センサを、開示したこれらの方法で使用するシステムも開示する。
【0018】
以下の図および詳細な説明を検討した当業者には、本発明の他のデバイス、システム、方法、特徴および利点が明白であり、または明白となろう。このような追加のシステム、方法、特徴および利点は全て、本明細書および本発明の範囲に含まれ、下記の特許請求項によって保護されることが意図されている。
【0019】
以下の図面および説明を参照すると、本発明をよりいっそう理解することができる。図中の構成要素は必ずしも一様な尺度では描かれておらず、それよりもむしろ、本発明の原理を説明することに重点が置かれている。さらに、さまざまな図の全体を通じて、同じ参照符号は同じ部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】試料ポートを通して1次エリアの最上部に試料が導入され、実質的に対称に流れて、4つの2次分析領域を満たす、試験センサの一配置を示す図である。
【図1B】参照電極が追加された図1Aの試験センサを示す図である。
【図1C】別々の対電極を有する図1Aの試験センサを示す図である。
【図1D】参照電極が追加された図1Cの試験センサを示す図である。
【図2A】試験センサの一面の試料ポートから1次エリアへ試料が導入され、次いで非対称に流れて2つの2次分析領域を満たす、試験センサの一配置を示す図である。
【図2B】図2Aと同じ電極配置を有するが、2次分析領域の配置が異なる試験センサを示す図である。
【図3A】試料が、1次エリアから、第1の潜在的電極位置を横切って流れて、第2の潜在的電極位置に到達する、直線チャネル試験センサ設計を示す図である。
【図3B】試料が、2つ以上の潜在的電極位置を横切って流れない、2次分析領域に関する代替設計を示す図である。
【図3C】試料が、2つ以上の潜在的電極位置を横切って流れない、2次分析領域に関する代替設計を示す図である。
【図3D】試料が、2つ以上の潜在的電極位置を横切って流れない、2次分析領域に関する代替設計を示す図である。
【図3E】試料が、2つ以上の潜在的電極位置を横切って流れない、2次分析領域に関する代替設計を示す図である。
【図3F】試料が、2つ以上の潜在的電極位置を横切って流れない、2次分析領域に関する代替設計を示す図である。
【図3G】試料が、2つ以上の潜在的電極位置を横切って流れない、2次分析領域に関する代替設計を示す図である。
【図4A】図3Aに示したような直線チャネル試験センサ設計のサイクリックボルタンモグラムを示す図である。
【図4B】図3Eに示したようなYチャネル設計のサイクリックボルタンモグラムを示す図である。
【図5A】図4Aで使用したタイプの直線チャネル試験センサに関して、試料を導入してから約5秒以内に、作用電極においてフェロシアン化物のピークが観察されたことを立証する、ケモアンペロメトリ電流対時間プロットを示す図である。
【図5B】図4Bで使用したタイプのYチャネル試験センサに関して、試料を導入してから30秒後に、フェロシアン化物が作用電極に実質的に到達しなかったことを立証する、ケモアンペロメトリ電流対時間プロットを示す図である。
【図5C】Yチャネル設計が、Tチャネルが設計よりも優れた潜在的電極位置間の化学的隔離を提供することを立証する、ケモアンペロメトリ電流対時間プロットを示す図である。
【図5D】3つのYチャネル設計が、機械的外乱に起因するこのような混合に対して抵抗性であったことを立証する図である。
【図6A】試料が、試料ポートから、2つの2次分析領域がそこから枝分れしたチャネルの形態の1次エリアに入る、2次分析領域の食違い配置を有する試験センサを示す図である。
【図6B】試料が、試料ポートから、3つの2次分析領域がそこから枝分れしたチャネルの形態の1次エリアに入る試験センサ配置を示す図である。
【図7A】2次分析領域の食違い設計を有する試験センサを示す図である。
【図7B】2次分析領域の食違い設計を有する試験センサを示す図である。
【図8A】複数の作用電極が電気的に接続された、図7Aの試験センサの一変型を示す図である。
【図8B】複数の対電極が電気的に接続された、図7Aの試験センサの一変型を示す図である。
【図9A】1電子移動媒介物が1つの電子を移動させる過程を示す図である。
【図9B】多電子移動媒介物が2つの電子を移動させる過程を示す図である。
【図10A】それぞれが異なる電位で動作する独立にアドレス指定可能な3つの対電極と、異なる電位で動作する媒介物系をそれぞれが有する電気的に接続された3つの作用電極とを有するシステムを示す図である。
【図10B】ルテニウム(III)ヘキサアミン、フェリシアン化物および電気活性有機分子のサイクリックボルタンモグラムを示す図である。
【図10C】対電極の動作電位と酸化還元共役対比との関係を示すグラフである。
【図10D】独立にアドレス指定可能な複数の対電極の電荷移動系を示す図である。
【図10E】独立にアドレス指定可能な複数の対電極が1つまたは複数の作用電極に提供することができる異なる動作電位を立証するサイクリックボルタンモグラムを示す図である。
【図11A】図10Eの電荷移動系の代わりに複数の酸化還元共役対比を使用して、複数の電位をシステムに提供することができることを立証する図である。
【図11B】実質的に化学的に隔離された1つの作用電極の電位を、異なる電荷移動系によって提供される異なる電位をそれぞれが有する、実質的に化学的に隔離された独立にアドレス指定可能な3つの対電極によって、順番に繰返し制御したときに得られた電流プロファイルを示す図である。
【図12A】生体流体試料中の分析物の濃度を決定するバイオセンサシステムの概略図である。
【図12B】図12Aの信号発生器とともに使用することができるポテンシオスタットの複数の変型を示す図である。
【図12C】図12Aの信号発生器とともに使用することができるポテンシオスタットの複数の別の変型を示す図である。
【図12D】図12Aの信号発生器とともに使用することができるポテンシオスタットの複数のまた別の変型を示す図である。
【図12E】図12Aの信号発生器とともに使用することができるポテンシオスタットの複数のまた別の変型を示す図である。
【図12F】図12Aの信号発生器とともに使用することができるポテンシオスタットの複数のまた別の変型を示す図である。
【図13】試料中の少なくとも1つの分析物の存在の有無を判定し、かつ/またはそれらの分析物の濃度を決定する電気化学分析を示す図である。
【図14A】独立にアドレス指定可能な対電極および作用電極を有する試験センサと組み合わせて使用される順次ゲート制御アンペロメトリパルス列からの入力信号を示す図である。
【図14B】独立にアドレス指定可能な対電極および作用電極を有する試験センサと組み合わせて使用される同時ゲート制御アンペロメトリパルス列からの入力信号を示す図である。
【図15】試料中の分析物の濃度を決定するために、同じ分析物に対する最大4回の別個の分析の結果を平均した結果を示す図である。
【図16】信号の平均算出実験から得られた電流の減衰を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
独立にアドレス指定可能な少なくとも3つの分析領域を有する試験センサを含むバイオセンサシステムを開示する。各分析領域は導体または電極を含み、各分析領域を実質的に化学的に隔離することができる。したがって、電極対の作用電極と対電極は、実質的に化学的に隔離された環境の中に位置することができる。1つの作用電極を、実質的に化学的に隔離された環境の中にそれぞれが位置する2つ以上の対電極と組み合わせることができる。したがって、このシステムは、異なる電位で動作する少なくとも2つの対電極を含むことができる。実質的に化学的に隔離された分析領域を独立にアドレス指定できることにより、複数の電位で電気化学分析を実施することができる。
【0022】
2つ以上の電位で動作するため、複数の分析物を含む試料を分析することができる。同じ分析物を独立に複数回分析して、分析の正確度および/または精度を増大させることができる。この複数分析物および複数回分析特徴に加え、試料インターフェレント(interferent)、ヘマトクリット、媒介物バックグラウンド、温度、製造時変動、試薬失活などに起因する出力信号の部分を決定することができるため、このシステムのコンフィギュラビリティ(configurability)は、正確度および/または精度の増大を可能にする。分析物インターフェレントは、決定された分析物濃度に正または負の偏りを導入する化学、電気化学、生理または生体種である。これらの効果が分かれば、これらの効果を使用して、決定された分析物濃度を変更し、または決定された分析物濃度から、これらの効果を除去することができる。分析物に応答しない分析領域によって較正情報を提供することもできる。
【0023】
図1Aは、試料ポート115を通して1次エリア110の最上部に試料が導入され、実質的に対称に流れて、4つの2次分析領域150を満たす、試験センサ100の一配置を示す。各2次分析領域150は、試料の充填中に、試料が、2次分析領域150から空気を追い出すことを可能にするベント(vent)120を含む。ベント120は、円形、多角形など、2次分析領域150の形状と両立する任意の形状を有することができる。ベント120の最大径または最大幅は、2次分析領域150内へ試料を所望の流量で供給することができる任意のサイズとすることができ、約0.02mmから約1.5mmの値が好ましい。
【0024】
単一の対電極130が1次エリアを占有し、各2次分析領域150には作用電極141〜144が存在する。1次エリア110内に対電極130、2次分析領域150内に作用電極141〜144があるとして示したが、作用電極と対電極の配置を逆にして、複数の対電極が単一の作用電極を取り囲むようにすることもできる(図示せず)。他の態様では、これらの電極が同じ平面になくてもよい。例えば、一部の電極を水平に配置し、他の電極を垂直に配置することができる。他の例では、一部の電極を他の電極よりも高い位置に置き、生物流体が最初に低い方の電極に到達するようにすることができる。他の電極構成を使用することもできる。例えば、図1Bは、非変動電位を提供する参照電極170が追加された図1Aの試験センサを表す。
【0025】
図1Cは、中央の1次エリア110内に、単一の対電極130の代わりに、独立した4つの対電極131〜134が配置された試験センサ100を示す。1次エリア内に対電極、2次分析領域内に作用電極があるとして示したが、任意の作用電極および任意の対電極の配置を逆にすることができる(図示せず)。他の電極構成を使用することもできる。
【0026】
図1Dは、非変動電位を提供する参照電極170が各2次分析領域に追加された図1Cの試験センサを示す。参照電極170のうちの1つまたは複数の参照電極は、1つまたは複数の電位で動作して、それぞれの分析に対して非変動電位を提供することができる。対電極の動作電位は変動する可能性があるため、従来システムにおいて一般的な作用電極の電位の基準とすることに加えて、1つまたは複数の参照電極を使用して、対電極の電位の基準とすることができる。
【0027】
この図には示されていないが、生体に埋め込まれた電極、または別の形で生物流体と連続的に接触する電極など、連続モニタリング用途において実現される試験センサに関しては、複数の参照電極を使用することにより、決定される分析物濃度の正確度および/または精度を増大させることができる。この正確度および/または精度の増大は、生体に埋め込まれた作用電極または別の形で生物流体と連続的に接触する作用電極の電位の変化に関連した問題の軽減によって達成することができる。
【0028】
図1Aおよび図1Bでは、各電極から、試験センサ100の背部に向かって導体160が延びており、この背部において、各導体160を測定装置に接続することができ、これにより、各作用電極141〜144を独立にアドレス指定することが可能になる。このように、導体160が単一の電極に接続されているとき、この電極は独立にアドレス指定可能である。導体160を独立にアドレス指定可能な状態のままにすることもでき、または2つ以上の任意の導体160を電気的に接続することもできる(図示せず)。このように、2つ以上の電極が同じ導体に電気的に接続されているとき、これらの電極は、一緒に電気的にアドレス指定されるため、独立にアドレス指定可能ではない。例えば、作用電極141〜144のうちの2つの電極、例えば141と144を電気的に接続することにより、得られる試験センサ100は、独立にアドレス指定可能な3つの作用電極と1つの対電極130とを有することになる。
【0029】
単一の対電極130および独立にアドレス指定可能な4つの作用電極141〜144を有するように構成されているとき、図1Aおよび図1Bの試験センサ100は、潜在的に、各作用電極141〜144において異なる分析を実行することができる。単一の対電極130は、単一の電位で機能する電荷移動系を使用することにより、システムに単一の電位を提供することができる。測定装置に応じて、単一の対電極130は、2つ以上の電位をシステムに提供することができる。
【0030】
図1Aおよび図1Bの試験センサ100に関して電極のタイプを逆にし、独立にアドレス指定可能な4つの対電極および単一の作用電極があるようにした場合には、作用電極におけるエレクトロケミストリ(electrochemistry)を、潜在的に、4つの異なる電位で測定することができる。対電極を独立にアドレス指定できることにより、各対電極を、異なる電荷移動系を有するように形成することができ、したがって分析中に作用電極に提供する電位を変更することができる。作用電極が、4つの異なる電位で1種または数種の分析物と相互作用する試薬を含む場合、適当な対電極を電気的にアドレス指定することによって、それぞれの分析物相互作用を独立に測定することができる。独立にアドレス指定可能な対電極はそれぞれ、単一の電位または電位範囲で動作することが好ましい。
【0031】
図1Cおよび1Dでは、各電極から、試験センサ100の背部に向かって導体160が延びており、この背部において、各導体160を測定装置に接続することができる。この配置により、各作用電極141〜144および各対電極131〜134を独立にアドレス指定することが可能になる。導体160を電気的に隔離された状態のままにすることもでき、または2つ以上の導体160を電気的に接続することもできる(図示せず)。例えば、2つの対電極、例えば132と133を電気的に接続することにより、得られる試験センサは、独立にアドレス指定可能な4つの作用電極と独立にアドレス指定可能な3つの対電極とを有することになる。電極は、任意の組合せで電気的に接続することができる。
【0032】
独立にアドレス指定可能な作用電極は、潜在的に、各作用電極141〜144で異なる化学反応を測定することを可能にする。動作電位が異なる独立にアドレス指定可能な対電極131〜134を有することにより、1つの作用電極を、2つ以上の対電極電位に対して動作させることができる。したがって、同じ作用電極に存在する2種類の電荷移動ケミストリを、独立にアドレス指定可能な2つの対電極によって独立に測定することができ、この場合、第1の対電極が、第1の電荷移動ケミストリ(chemistry)の電位で動作し、第2の対電極が、第2の電荷移動ケミストリの電位で動作する。
【0033】
図1Cの試験センサ100では、4つの作用電極141〜144および4つの対電極131〜134を独立にアドレス指定することができる。各対電極131〜134が異なる電位を提供することができるため、潜在的に、16の異なる分析を実行することができる。したがって、単一の作用電極のエレクトロケミストリを4つの異なる電位で測定することができ、単一の対電極の電位を、4種類の異なる作用電極ケミストリに対して印加することができる。独立にアドレス指定可能な4つの参照電極170を有する図1Dの試験センサは、最大4つの異なる非変動電位をシステムに提供することができる。測定装置は、これらの非変動電位のうちの1つまたは複数の非変動電位を使用して、作用電極141〜144および対電極131〜134における動作電位を制御し、または決定することができる。
【0034】
図1Aから図1Dの試験センサ100に関して、2次分析領域150は、それぞれ約62nLの内容積を提供するため、約0.5mmの面積および約0.125mmの高さを有することができる。好ましい2次分析領域は100nLの内容積を有し、70nL以下の内容積がより好ましい。これよりも大きな2次分析領域およびこれよりも小さな2次分析領域を使用することもできる。
【0035】
図2Aは、試験センサ200の前縁214の試料ポート215から1次エリア210へ試料が導入され、次いで非対称に流れて、第1の2次分析領域251および第2の2次分析領域252を満たす、試験センサ200の一配置を示す。試料の流れが非対称なのは、第1の2次分析領域251よりも第2の2次分析領域252の方が長いためである。2次分析領域251、252は、試料の充填中に、試料が、この領域から空気を追い出すことを可能にするベント220を含むことができる。
【0036】
中に入ると、試料は、作用電極241と対電極231とによって画定された第1の電極対を横切る。この第1の電極対を横切って流れ続ける一方で、試料は、作用電極242と対電極232(第2の対)および作用電極243と対電極233(第3の対)によって画定された第2および第3の電極対に向かって流れる。第1および第3の電極対を横切って流れる試料は次いで、作用電極244と対電極234とによって画定された第4の電極対を横切るまで流れ続ける。したがって、試料は、第1および第3の電極の後に第4の電極対を横切る。試料が横切るとき、試薬組成物280が、作用電極/対電極対間に導電性を提供する。電極対を独立にアドレス指定することができることにより、2次分析領域251、252の充填を監視することができる。他の電極構成を使用することもでき、例えば、任意の作用電極および任意の対電極の配置を逆にすることができる(図示せず)。
【0037】
2次分析領域251、252の充填を監視することにより、試験センサ200は、試料の体積が不十分であることに関連した分析を防ぎまたは排除する充填不足検出システムを提供する。充填が不十分な試験センサから得られた濃度値は不正確である可能性があるため、そのような不正確な分析を防ぎまたは排除することができることにより、得られる濃度値の正確度を増大させることができる。従来の充填不足検出システムは、試験センサ内の試料リザーバの部分充填および/または完全充填を検出する、電極または導体などの1つまたは複数の指示器を有する。複数の2次分析領域間の充填を監視することができると、試験センサ200の充填状態をより正確に判定することができる。この電気信号を使用して、試料が存在するのかどうか、および試料が特定の分析領域を部分的に満たしているのか、または完全に満たしているのかを指示することができる。
【0038】
図2Bは、図2Aと同じ電極配置を有するが、2次分析領域の配置が異なる試験センサ200を示す。第1の電極対を含む1次エリア210は、対称に満たされる3つの2次分析領域253、254、255を備える。中に入ると、試料は第1の電極対を横切り、次いで独立に移動して、第2、第3および第4の電極対を横切る。第1の電極対が1次エリアを占有しており、したがって2次分析領域の前に満たされるため、全体として、流体の流れはこの場合も非対称である。各2次分析領域253、254、255は、試験センサ200への試料の充填中に試料が空気を追い出すことを可能にするベント220を含むことができる。
【0039】
4つの作用電極/対電極対のそれぞれの電極対間に、単一の試薬組成物280を延ばすことができる。各電極から、試験センサ200の背部に向かって導体260が延びており、この背部において、導体260を測定装置に接続することができ、これにより、各電極を独立にアドレス指定することが可能になる。各電極は独立にアドレス指定可能であり、各電極対の作用電極と対電極の両方に同じ試薬層が接触しているため、電極対はそれぞれ、同じ化学環境を共有する。電極を電気的に隔離された状態のままにすることもでき、または2つ以上の任意の電極を電気的に接続することもできる(図示せず)。非変動電位を提供する1つまたは複数の参照電極を追加することもできる(図示せず)。
【0040】
対電極が中央に集められ、作用電極が周囲を取り囲むとして示したが、任意の作用電極および対電極の配置を逆にすることができる。独立した4つの作用電極は、4種の異なる試薬組成物を提供して、潜在的に、4つの異なる分析を実行する。独立した4つの対電極がそれぞれ異なる電位で動作して、16の可能な分析を提供することもできるが、各電極対が90°分離されることによって、これが非実際的になることがある。
【0041】
図3Aは、試料が、1次エリア310から、第1の潜在的電極位置320を横切って流れて、第2の潜在的電極位置330に到達する、直線チャネル試験センサ設計を示す。図3Bから図3Gは、試料が2つ以上の潜在的電極位置を横切って流れない、2次分析領域に関する代替試験センサ設計を示す。図3Bは、従来の一部のセンサで使用されているTチャネル設計を示す。図3Cは、追加の潜在的電極位置340および350が存在する、多重Tチャネル設計を示す。潜在的電極位置をさらに追加したい場合には、追加の「T」部分を追加することができる。
【0042】
図3Hは、独立にアドレス指定可能な作用電極331と独立にアドレス指定可能な対電極332の両方を、4つの各2次分析領域333に有する、多重Tチャネル試験センサ300を示す。したがって、作用電極/対電極対はそれぞれ同じ化学環境を共有するが、各電極対は、他の全ての電極対から実質的に化学的に隔離されている。各電極対上には、組合せ試薬組成物電荷移動系336が付着されている。各作用電極331および各対電極332は、コンタクト335で終わる導体334から形成される。コンタクト335aおよびコンタクト335bはそれぞれ、2次分析領域333aの作用電極および対電極に対応する。各2次分析領域333の幅は1.2mm、1次エリア310の幅は1.5mmである。対向する2次分析領域内の電極対間の直線距離は3.46mmである。各電極対の作用電極の幅は0.50mmに指定され、対電極からの離隔距離は約0.05mmから約0.25mmである。各作用電極331上に描かれた円は、試薬組成物の計画カバーエリアである。他の2次分析領域の幅、電極の幅および離隔距離、ならびに試薬組成物カバーエリアを使用することもできる。
【0043】
図3Iは、実質的に化学的に隔離された4つの各2次分析領域に、独立にアドレス指定可能な作用電極331を有し、対向する4つの各2次分析領域333に、独立にアドレス指定可能な対電極332を有する、多重Tチャネル試験センサ300を示す。したがって、各電極は、他の全ての電極から実質的に化学的に隔離されている。各電極は、コンタクト335で終わる導体334から形成される。
【0044】
図3Dは、2次分析領域が食い違っており(staggered)、そのため、どの2つの潜在的電極位置間においても、2次分析領域および1次エリア内を通る直線370を引くことができない、Tチャネル設計からの逸脱を示す。このような食違い設計の潜在的利点は、試料を充填している間に試験センサが機械的外乱を受けた場合の対向する2次分析領域間の混合に対して抵抗性を有することである。「機械的外乱を受ける」は、流体試料の移動を引き起こす十分な力が試験センサに加わることを意味する。
【0045】
直線を引けないことに加えて、図3Eから図3GのYチャネル設計は、図3Bおよび3Cの設計よりも近い潜在的電極位置間の混合に抵抗する。これは、2次分析領域の分離が、実質的に化学的に隔離するための潜在的電極位置間の距離だけに依存するわけではないからである。Yチャネル内の化学的分離は、混合するためには試料が「Y」の「v」部分を回って流れなければならないことからも利益を得ることができる。電極を互いにより小さな間隔で配置することができ、しかも依然として試料の混合に抵抗することができるため、Yチャネル設計の試料リザーバの全容積を、同様の化学的分離を有するTチャネル設計に比べて小さくすることができる。
【0046】
好ましい試料リザーバ設計は、図3Fに示すように、1次エリア310から、90°未満の角度390で枝分れする2次分析領域を有する。このようにすると、流体は試験センサに入り、90°まで曲がることなく潜在的電極位置に到達することができる。これによって、試料は試験センサに迅速に入ることができ、振動による試料対流によって試薬が混合する可能性を低下させることができる。より好ましい設計は、図3Bおよび図3Cに示すような2次分析領域および1次エリア内を通過する電極間の直線370を欠き、1次エリアから90°未満の角度で枝分れする2次分析領域を有する。1次エリアおよび/または2次分析領域内に1つまたは複数の曲がりがある設計、2次分析領域が1次エリアから90°を超える角度で枝分れする設計など、他の設計を使用することもできるが、試料サイズを大きくする必要があることおよび試料充填速度がより遅くなることが、制限因子となる可能性がある。
【0047】
図3Jは、独立にアドレス指定可能な作用電極331と独立にアドレス指定可能な対電極332の両方を、2つの各2次分析領域333に有する、Yチャネル試験センサ300を示す。したがって、電極の作用電極/対電極対はそれぞれ同じ化学環境を共有するが、各電極対は、対向する電極対から実質的に化学的に隔離されている。作用電極331は2次分析領域333を横断し、対電極332は、2次分析領域333の周縁によって画定され、2次分析領域333は導体334から形成される。2次分析領域333は、1次エリア310から約45°の角度で枝分れする。各導体334はコンタクトエリア355で終わる。1つまたは複数の2次分析領域内に単一の電極を形成する設計など、他の電極設計を使用することもできる。2次分析領域に対して他の枝分れ角度を使用することもできる。
【0048】
試験センサ300の基材の幅は11.8mm、長さは30mmである。1次エリア310の幅は1.2mmである。2つの試薬組成物付着の計画外縁間距離は0.8mmである。各コンタクトエリア355の幅は2.9mm、2つの各2次分析領域333の試薬組成物付着の直径は1.8mmである。他の基材寸法、1次エリアおよびコンタクトエリアの幅、ならびに試薬組成物付着の直径を使用することもできる。
【0049】
電極の数およびタイプ、ならびに電極を独立に電気的にアドレス指定できる程度に加え、試料リザーバの2次分析領域が提供する化学的分離の程度も、試験センサを用いて実行することができる分析の数に影響を及ぼす。「実質的に化学的に隔離された」は、1回または数回の分析の間に、2次分析領域間で試薬の拡散混合または対流混合が実質的に起こらないことを意味する。
【0050】
作用電極/対電極対が、他の作用電極/対電極対から実質的に化学的に隔離されているが、互いには隔離されていない場合、その電極対は、その対に存在するケミストリと両立する分析を実行することができる。このような構成は、その対の作用電極および対電極に存在する試薬の急速な拡散混合を可能にすることがある。反対に、作用電極および対電極が、他の作用電極および対電極から実質的に化学的に隔離されており、互いからも隔離されている場合、各電極は、潜在的に、独立にアドレス指定可能である場合に、他の任意の電極とともに分析に関与することができる。したがって、実質的に化学的に隔離されている場合、異なる試薬組成物を使用して、電極に、他の電極とは異なる化学分析環境を提供することができる。これらを組み合わせると、分析領域間において実質的に化学的に隔離することにより、各作用電極および/または対電極で異なる試薬を使用することができ、独立に電気的にアドレス指定できることにより、各作用電極を独立に測定することができる。
【0051】
2次分析領域は、2次領域への入口の断面積、2次分析領域内の任意の2つの電極間の距離、2次分析領域の互いに対する物理的配置および1次エリアに対する物理的配置などに応じて、実質的に化学的に隔離することができる。これらの事項に加えて、試料が対電極(図1Aから図1D)または試験センサの入口および両側の電極対(図2Aおよび図2B)を横切って流れるときには、試薬の混合によって、実質的な化学的隔離が最初から失われることがある。このように、試薬組成物は、試料によって複数の電極対に運ばれることがある。反対に、試料が2つ以上の電極を横切って流れない(図3B〜図3J)ときには、このような流れによる混合を実質的に排除することができる。
【0052】
図4Aは、図3Aに示した直線チャネル設計のサイクリックボルタンメトリプロットを示す。試料ポートに最も近い第1の電極対は、0.5Mフェロシアン化カリウムを含む試薬組成物を使用し、チャネルの末端に最も近い第2の電極対は、後に示す構造Iによって表される電気的に活性の有機分子を含む試薬組成物を使用した。約7秒以内に2つのピークが観察された。左側のピークは、還元状態の構造I分子の酸化を表し、右側のピークは、第1の電極対に最初に配置されたフェロシアン化物の酸化を表す。約20回の完全サイクルのうちに、構造I分子のピークは消え、フェリシアン化物が構造I分子を酸化していることを示唆した。
【0053】
この分析の間に、第1の電極対のフェロシアン化物は、第2の電極で酸化されて、第2の電極対においてフェリシアン化物を形成したと考えられる。形成されたフェリシアン化物は次いで、第2の電極対において、構造I分子の還元種を化学的に酸化した。これらの結果は、直線チャネル設計では電極対間の化学汚染が迅速に起こることを立証した。この実験は、電極が実質的に化学的に隔離されていない場合、この場合のフェリシアン化物などのより強い酸化剤は、構造I分子などの他の媒介物から媒介を引き継ぐことを証明している。この汚染は、作用電極に到達する前に対電極を横切る試料、拡散および直線チャネルリザーバ内の対流の組合せに起因すると考えられる。
【0054】
対照的に、図4Bは、図3Eに示したYチャネル設計のサイクリックボルタンモグラムを示す。それぞれの2次分析領域の末端の近くに電極を置いた。20回の完全サイクル(20分超)の後、構造I分子の酸化だけが観察され、このことは、少なくとも10分の間、Yチャネル2次分析領域設計で実質的な化学的隔離が達成されたことを立証している。これらの実験は、バージョン2.05ソフトウェアを実行するCH Instruments社のElectrochemical Workstation、モデルCHI660Aを使用して、約22℃、相対湿度約45%で実行した。試料は、リン酸ナトリウム0.1Mと、重量平均分子量が約2000のPVPポリマー約16%(w/w)とを含むpH7.0リン酸緩衝液であった。
【0055】
時間の関数として電流を測定するケモアンペロメトリ(chemoamperometry)試験でも、同様の効果が観察された。図5Aでは、電流対時間プロットが、図4Aで使用したタイプの直線チャネルセンサに関して、試料を導入してから約5秒以内に、作用電極において、動作電位400mVで、第2のピークが観察されることを立証した。試料の導入はプロットの第1のピークを生成した。第2のピークは、図4Aのフェロシアン化物の第2のボルタンメトリ波と相関する。図5Bでは、30秒後に、フェロシアン化物が作用電極に実質的に到達していないことが示され、Yチャネル2次分析領域試験センサによって、実質的な化学的隔離が達成されることを立証した。これらの実験では、初期の鋭いピークが、最初の試料を表し、電極間の電気的連絡を立証する。このアンペロメトリ試験は、CH Instruments社のElectrochemical Workstationを使用し、約22℃、相対湿度約45%で実行した。試料は、リン酸ナトリウム0.1Mと、重量平均分子量が約2000のPVPポリマー約16%(w/w)とを含むpH7.0リン酸緩衝液であった。
【0056】
図5Cは、Yチャネル設計が、Tチャネル設計よりも優れた潜在的電極位置間の化学的隔離を提供することを立証するアンペロメトリ電流プロットである。Yチャネル線501によって示されているように、1000秒まで、図3Eの位置320および330によって表される潜在的電極位置間の実質的な化学的隔離が観察された。対照的に、Tチャネルピーク502、503によって示されているように、図3Bに示したものなどの2つのTチャネル試験センサに関して、約84秒後または約650秒後に、化学的隔離の失敗および構造I分子の酸化が観察された。時間変量84秒と650秒の間の大きな変動は、Tチャネル設計が、分析中の機械的外乱に起因する対流による混合を受けやすいことによると考えることができる。図5Dは、3つのYチャネル設計が、機械的外乱に起因するこのような混合に対して抵抗性であったことを立証している。約800秒後に観察されるゆっくりした電流上昇は、拡散によるゆっくりとした混合を指示している可能性がある。
【0057】
図6Aは、試料が、試料ポート615から、2つの2次分析領域651、652がそこから枝分れしたチャネルの形態の1次エリア610に入る、2次分析領域651、652の食違い配置を有する試験センサ600を示す。充填不足検出能力を試験センサ600に提供するため、1次エリア610内へ導体690を延ばすことができる。同様に、図6Bは、試料が、試料ポート615から、3つの2次領域651〜653がそこから枝分れしたチャネルの形態の1次エリア610に入る試験センサ配置を示す。各2次領域651〜653は、独立にアドレス指定可能な電極または導体を含む。
【0058】
図6Aでは、試料が、右側の第1の2次領域651を満たし、次いで左側の第2の2次領域652を満たす。図6Bでは、試料が、左側の第3の2次領域653を満たし、次いで右側の第1の2次領域651を満たし、次いで左側の第2の2次領域652を満たす。
【0059】
少なくとも2つまたは3つの2次分析領域を有する試験センサ600によって保持される全試料体積は、210nL以下とすることができる。各2次分析領域および試料ポート615とは反対側の1次エリア610の端部は、試料の充填中に試料が空気を追い出すことを可能にするベント620を含むことができる。1次エリア610および2次分析領域651〜653によって画定される試料リザーバを、複数の2次領域に充填する1つまたは複数の1次エリアに分割することによって、表面張力によって駆動される毛管作用の効果のため、同じまたは同様の体積の図3Aに示した直線チャネル設計などの実質的に分割されていない試料リザーバよりも速く、試験センサ600を満たすことができる。したがって、試料リザーバを、電極、電極対、1つまたは複数の導体、あるいはこれらの組合せをそれぞれが含むことができるより小さな2次分析領域に再分割することによって、試験センサ600の充填速度を増大させることができる。このようにして1次エリアから2次領域に充填することにより、充填中および分析中の2次領域間の実質的な化学的隔離を提供することができる。
【0060】
試料は主として最も近いベント620へと流れるため、2次領域651〜653は、1次エリア610から実質的に順番に満たされる。2次領域651〜653が順番に満たされるため、測定装置は、2次分析領域651〜653が満たされるときの試料の速度および流量を監視することができる。試料の流量は、試験センサ600の試料ポート615の近くおよび/または試験センサ600の1次エリア610のベント620の近くに、電極または導体を備え付けることによっても監視することができる。したがって、1つまたは複数の導体および/または電極を測定装置によって監視して、試験センサ600の充填状態を決定することができる。非順次充填設計の充填もこのようにして監視することができるが、システムによって、各2次分析領域の充填を独立に監視することができる場合、またはできない場合がある。
【0061】
この図には示されていないが、周囲、頂部位置などの2つ以上の位置から試料を導入できるように、1次エリア610は、複数の試料ポート615を備えることができる。同様に、試験センサ600は、複数の試料を分析できるように、1次エリアおよび2つ以上の2次領域をそれぞれが有する2つ以上の別個の試料リザーバを備えることができる。リザーバのベント構造を変更することによって、複数の試料ポートを通して異なる試料を同じリザーバに導入し、しかも、分析の間、実質的に化学的に隔離された状態を維持することができる。1つまたは複数の1次エリアと2次領域の間の他の関係を使用することもできる。
【0062】
1次エリア610および/あるいは1つまたは複数の2次領域651〜653は、試料が試料リザーバ内で分配されるときに、試料の流れを変更する流れ変更材料を含むことができる。例えば、親水性および/または疎水性処理、コーティングまたは材料を使用して、水性試料の流路および/または充填速度を好ましく誘導することができる。他の態様では、1次エリア610および/または2次領域651〜653が、試料の流路および/または充填速度を好ましく誘導する壁、溝、チャネルなどの構造特徴を含むことができる。他の態様では、1次エリア610および/または2次領域651〜653内に、試料の組成を化学的または物理的に変化させる材料を配置することができる。例えば、1次エリアの一部分に、試料から赤血球を濾別する材料を配置して、試料が2次領域に到達する前に赤血球を除去することができる。
【0063】
図7Aおよび図7Bは、以前に論じた2次分析領域の食違い設計を有する試験センサ700を示す。図7Aの設計は、1次エリア710に対して約90°の角度を有する8つの2次分析領域を含み、図7Bは、同様のYチャネル設計である。試験センサ700は、1次エリア710の端の領域を含め、合計9つの2次分析領域を含み、これらの2次分析領域はそれぞれ、電極または導体によって占有されている。この図は、それぞれ8つの2次領域のうちの1つの2次領域に存在する、独立にアドレス指定可能な4つの対電極731〜734および4つの作用電極741〜744を示す。対電極731〜734は1次エリア710の一方の側にあり、作用電極741〜744はもう一方の側にあるが、この配置を混合することもできる。例えば、試料が充填される最初の2つの2次分析領域を作用電極とし、試料が充填される次の2つの2次分析領域を対電極とすることができる。
【0064】
試料ポート715とは反対側の1次エリア710の端に、参照電極770などの任意選択の電極が存在する。参照電極770は、例えば最後に試料が導入される2次領域または試料ポート715の近くに配置することもできる。このように、1次エリア710および/または2次領域に1つまたは複数の参照電極を配置して、非変動電位をシステムに提供することができる。2次領域から実質的に化学的に隔離された環境中に存在するため、任意選択の電極は、充填情報または試料に関する情報を提供することができる。
【0065】
対電極731に電気的に接続された導体790は、試料ポート715に近い1次エリア710内へ延ばされる。独立にアドレス指定することはできないが、導体790は、測定装置に充填情報を提供することができる。電極および/または導体の他の構成も可能である。各2次領域および1次エリア710の端部はベント(図示せず)を含むことができる。
【0066】
8つの電極731〜734および741〜744を、測定装置によって独立にアドレス指定することができる。2次領域は実質的に化学的に隔離されているため、各2次領域は、試料の成分と相互作用する異なるケミストリを提供する試薬組成物を含むことができる。作用電極741〜744ごとに異なる試薬組成物を使用し、対電極731〜734ごとに異なる電荷移動系を使用し、各電極を独立にアドレス指定することができるため、各作用電極741〜744に単一の試薬組成物が存在するときには、4つの異なる分析が可能であることがある。このように、作用電極のそれぞれの試薬組成物を、専用の対電極とともに使用することができる。同様に、各作用電極741〜744が、異なる酸化還元電位を有する2種類の試薬組成物を含む場合には、合計8つの異なる分析が可能であることがある。最後に、各作用電極を、4つのそれぞれの対電極とともに独立にアドレス指定することができるため、異なる酸化還元電位を有する4種類の試薬組成物を各作用電極に提供することにより、最大16の異なる分析を提供することができる。作用電極にある2種類以上の試薬組成物間の不必要な相互作用など、考慮すべき実際的な問題が、このシステムによって実行することができる実際の分析数を制限することがある。他の試料リザーバ構造および電極構成を使用することもできる。
【0067】
図8Aは、複数の作用電極841〜844が電気的に接続された、図7Aの試験センサの一変型を示す。対電極は、独立にアドレス指定可能な状態を維持している。このようにすると、各対電極が、電気的に接続された作用電極に、異なる電位を提供することができる。これらの作用電極のうちの1つまたは複数の作用電極を電気的に接続することによって、選択された対電極の電位に最も近い酸化還元電位を有する作用電極が動作することができる。この動作モードでは、各作用電極が、異なる酸化還元電位をそれぞれが有する異なる媒介物系を有することができる。対電極の異なる電位を使用して、システムの動作電位を低電位から高電位へ階段状にすることによって、作用電極の異なる媒介物系を段階的にアドレス指定することができる。他の試料リザーバ構造および電極構成を使用することもできる。
【0068】
図8Bは、複数の対電極831〜834が電気的に接続された、図7Aの一変型を示す。作用電極は、独立にアドレス指定可能な状態を維持している。これらの対電極のうちの1つまたは複数の対電極を電気的に接続することによって、最も高い電位を有する電荷移動系を有する対電極が、システムにその電位を提供することができる。このようにすると、各作用電極において、分析物に応答するエレクトロケミストリを測定することができる。他の試料リザーバ構造および電極構成を使用することもできる。
【0069】
上述の試験センサに関しては、2次分析領域内に存在する作用電極と対電極を、1,000マイクロメートル以上離すことができる。1,000マイクロメートル未満の電極離隔距離を使用することもできる。電極のパターンは、図に示したパターンだけに限定されるわけではなく、試験センサの1次エリアおよび2次分析領域と両立する任意のパターンとすることができる。電極は、試薬組成物および/または電荷移動系を長方形に付着させることによって形成することが好ましい。この付着は、スクリーン印刷法、インクジェット法、マイクロピペット法、ピン付着法または他の方法によって実施することができる。
【0070】
試薬組成物を導体に塗布すると、試薬層が形成される。例えば、作用電極を形成する試薬層は、酵素、媒介物および結合剤を含むことができ、対電極を形成する試薬層は、媒介物および結合剤を含むことができる。作用電極では分析物が電気化学反応を受け、対電極では反対の電気化学反応が起こって、これらの電極間に電流が流れることが可能になる。例えば、作用電極で分析物が酸化を受ける場合、対電極では還元が起こる。
【0071】
作用電極および対電極に加え、試験センサは、非変動参照電位をシステムに提供する参照電極を含むことができる。複数の参照電極材料が知られているが、銀(Ag)と塩化銀(AgCl)の混合物が一般的である。これは、銀および塩化塩が試料の水性環境に不溶であるためである。銀金属とClの比は試料中であまり変化しないため、電極の電位もあまり変化しない。サイズを大きくし、および/または導電性金属で修飾した場合には、参照電極が電流を通すため、参照電極を対電極として使用することもできる。しかしながら、対電極は、基準電位を提供する半電池を試料溶液から隔離することができないため、参照電極の役目を果たすことはできない。
【0072】
電極を形成する導体は、電極の配置に応じて、1つまたは複数の基材上に存在することができる。基材は、バイオセンサの形成および動作と両立する任意の材料から製作することができる。基材の好ましい材料には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオキシメチレン(POM)、モノマーキャストナイロン(MC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメタクリル酸樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、ガラスなどがある。1つまたは複数の基材を形成するのにより好ましい材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)およびポリイミド(PI)などであり、現時点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。試験センサを形成するため、ベースとふたの形態の2つの基材を組み合わせて、少なくとも1つの試料ポートおよび少なくとも1つのベントを有する試料リザーバを形成することができる。基材間に、導体、スペーサおよび他の構成要素が存在してもよい。
【0073】
この1つまたは複数の基材上に導体を形成するのに使用する1種または数種の材料は、任意の電気導体を含むことができる。好ましい電気導体は、試料の分析中に正味の酸化または正味の還元を受けない非イオン化性材料である。導体は、固体金属、金属ペースト、導電性カーボン、導電性カーボンペースト、導電性ポリマーなどの材料から形成することができる。導体は、金、銀、白金、パラジウム、銅、タングステンなどの金属ペーストまたは金属の薄層を含むことが好ましい。導体の全面または一部分に、表面導体を付着させることができる。この表面導体の材料は、炭素、金、白金、パラジウムまたはこれらの組合せを含むことが好ましい。導体の表面に表面導体が存在しない場合、導体は、非イオン化性材料から形成することが好ましい。
【0074】
これらの導体および任意選択の表面導体材料は、箔付着、化学蒸着、スラリ付着、メタライゼーションなどを含む、試験センサの動作と両立する任意の手段によって、基材上に付着させることができる。他の態様では、レーザおよび/またはマスク技法を使用して導電層をパターンに加工することによって、導体を形成することができる。
【0075】
電極を形成するのに使用する1種または数種の試薬組成物は、固体、半固体、液体、ゲル、ゲル様、コロイドまたは他の形態で付着させることができ、試薬および任意選択の結合剤を含むことができる。試薬組成物の粘度は、約1cpから約100cpとすることができる。より好ましい試薬組成物は、約1cpから約20cp、または約4cpから約10cpの範囲の粘度を有する。他の粘度を有する試薬組成物を使用することもできる。粘度は、粘度が300cp未満の試薬組成物を測定するためのULAアセンブリを装着したBrookfield Model DV3粘度計を使用して決定した。粘度測定は、機器温度を25℃に設定して、室温で実行した。組成物が薄く剪断されたのか、または厚く剪断されたのかの指示を提供するため、測定は、50、100、200および300cps(cycle per second(サイクル毎秒))の剪断速度で実行した。100mMリン酸緩衝液を対照として使用した。この緩衝液は一般に、異なる剪断速度下で、約1cpから約1.3cpの範囲の粘度の読みを与えた。
【0076】
結合剤は、少なくとも部分的に水溶性であるポリマー材料であることが好ましい。結合剤は、水和したときにゲルまたはゲル状物質を形成することができる。結合剤として使用するのに適した部分的に水溶性のポリマー材料には、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシエチレンセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアミノ酸、例えばポリリジン、ポリスチレンスルホネート、ゼラチンおよびその誘導体、ポリアクリル酸ならびにその誘導体および塩、ポリメタクリル酸ならびにその誘導体および塩、デンプンおよびその誘導体、無水マレイン酸およびその塩、アガロースベースのゲルおよびその誘導体などがある。結合剤は、これらの材料のうちの1種または数種の材料の組合せを含むことができる。上記の結合剤材料の中では、PEO、PVA、CMCおよびHECが好ましく、バイオセンサ用としては、現時点ではCMCがより好ましい。他の結合剤を使用することもできる。
【0077】
分子量が10,000から900,000、好ましくは30,000から300,000(重量/平均)の結合剤が好ましい。他の分子量を有する結合剤を使用することもできる。分子量は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定することができ、一般に、重量平均または数平均として表される。
【0078】
作用電極を形成するのに使用する試薬組成物は、関心の分析物に応答する生体分子を含むことが好ましい。生体分子は、オキシドレダクターゼなどの活性酵素系を含むことができる。生体分子はさらに、核酸、タンパク質、ペプチドなどのバイオポリマーを含むことができる。他の生体分子を使用することもできる。
【0079】
オキシドレダクターゼは、電子の移動を触媒し、分析物の酸化または還元を促進する。オキシドレダクターゼは、分子状酸素が電子受容体である酸化反応を促進する「オキシダーゼ」、分析物が還元され、分子状酸素が分析物でない還元反応を促進する「レダクターゼ」、および分子状酸素が電子受容体でない酸化反応を促進する「デヒドロゲナーゼ」を含む。例えば、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology、改訂版、A.D.Smith編、ニューヨーク、Oxford University Press(1997年)、161、476、477および560ページを参照されたい。例えば、下表Iは、列挙した分析物の分析において有用なオキシドレダクターゼを示す。
【0080】
表1

【0081】
生体分子は、水素結合相互作用が可能なアミン官能基を含むことができる。付着後もその生物活性を維持する重量/平均分子量が10,000から500,000、好ましくは100,000から400,000の生体分子が好ましい。オキシドレダクターゼの場合、試験センサまたは分析あたり0.01から100単位(U)、好ましくは0.05から10U、より好ましくは0.1から5Uを使用することができる。他の態様では、最大1.3Uのオキシドレダクターゼが使用される。
【0082】
導体上に試薬組成物を付着させることによって形成される試薬層は、分析物の反応を促進し、分析物、特に複雑な生体試料中の分析物に対するセンサシステムの特異性を向上させる可能性がある、分析物に特異的な酵素系を含むことができる。この酵素系は、分析物との酸化還元反応に関与する1種または数種の酵素、補因子および/または他の部分を含むことができる。例えば、アルコールオキシダーゼを使用して、試料中のアルコールの存在を感知することができるバイオセンサを提供することができる。このようなシステムは、血中アルコール濃度を測定する際に有用となりうる。他の例では、グルコースデヒドロゲナーゼまたはグルコースオキシダーゼを使用して、試料中のグルコースの存在を感知することができるバイオセンサを提供することができる。このシステムは、例えば糖尿病であることが分かっている患者または糖尿病の疑いがある患者の血液グルコース濃度を測定する際に有用となりうる。
【0083】
好ましい酵素系は、酸素独立の酵素系、したがって酸素によって実質的に酸化されない酵素系である。このような酸素独立の1つの酵素群が、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)である。異なる補酵素または補因子を使用して、異なる媒介物が異なる方式でGDHを媒介することができる。それらとGDHとの関連性に応じて、ホスト酵素であるGDHが、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)などの補因子をしっかりと保持することができ(例えばFAD−GDHの場合)、またはこのホスト酵素に、ピロロキノリンキノン(PQQ)などの補因子を共有結合させることができる(例えばPQQ−GDHの場合)。ホスト酵素は、これらのそれぞれの酵素系中の補因子を恒久的に保持することができ、または、試薬組成物に酵素系を加える前に、補酵素およびアポ酵素を再形成することができる。試薬組成物中のホスト酵素部分に補酵素を独立に加えて、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD/NADH、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NADP/NADPHの場合などのように、ホスト酵素の触媒機能を助けることができる。他の有用なデヒドロゲナーゼ酵素系には、アルコールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、β−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、3−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼなどがある。
【0084】
試薬層はさらに、分析物の反応の結果を導体に伝える媒介物を含むことができる。媒介物は酸化または還元され、1つまたは複数の電子を移動させることができる。媒介物は、電気化学分析における試薬であり、関心の分析物ではないが、分析物の間接測定を提供する。単純な系では、分析物の酸化または還元に応答して、媒介物が酸化還元反応を受ける。酸化または還元された媒介物は次いで、試験センサの作用電極において反対の反応を受け、その元の酸化数に戻ることができる。このようにして、媒介物は、分析物から作用電極への電子の移動を促進することができる。
【0085】
媒介物は、その電気化学活性に基づいて2つのグループに分けられる。1電子移動媒介物は、電気化学反応条件中に、追加の1つの電子を受け取ることができる化学部分である。多電子移動媒介物は、反応条件中に、2つ以上の電子を受け取ることができる化学部分である。図9Aに示すように、1電子移動媒介物は、酵素から作用電極へ1つの電子を移動させることができ、一方、図9Bに示すように、多電子移動媒介物は、2つの電子を移動させることができる。
【0086】
1電子移動媒介物の例には、1,1’−ジメチルフェロセン、フェロシアン化物およびフェリシアン化物、ルテニウム(III)ヘキサアミン、ルテニウム(II)ヘキサアミンなどの化合物が含まれる。2電子媒介物には、フェナントロリンキノンなどの有機キノンおよびヒドロキノン;フェノチアジンおよびフェノキサジン誘導体;3−(フェニルアミノ)−3H−フェノキサジン;フェノチアジン;ならびに7−ヒドロキシ−9,9−ジメチル−9H−アクリジン−2−オンおよびその誘導体などがある。追加の2電子媒介物の例には、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,393,615号、第5,498,542号および第5,520,786号に記載されている電気活性有機分子が含まれる。
【0087】
好ましい2電子移動媒介物には、3−フェニルイミノ−3H−フェノチアジン(PIPT)および3−フェニルイミノ−3H−フェノキサジン(PIPO)が含まれる。より好ましい2電子媒介物には、カルボン酸またはアンモニウム塩などのフェノチアジン誘導体の塩が含まれる。現時点の特に好ましい2電子媒介物には、(E)−2−(3H−フェノチアジン−3−イリデンアミノ)ベンゼン−1,4−二スルホン酸(構造I)、(E)−5−(3H−フェノチアジン−3−イリデンアミノ)イソフタル酸(構造II)、アンモニウム(E)−3−(3H−フェノチアジン−3−イリデンアミノ)−5−カルボキシ安息香酸アンモニウム(構造III)およびこれらの組合せが含まれる。これらの媒介物の構造式を下に示す。構造I媒介物の二酸形だけが示されているが、この酸の一および二アルカリ金属塩も含まれる。現時点では、構造I媒介物に対しては、この酸のナトリウム塩が好ましい。構造II媒介物のアルカリ金属塩を使用することもできる。
【0088】



【0089】
他の点では、好ましい2電子媒介物は、フェリシアン化物よりも少なくとも100mV低い、より好ましくは少なくとも150mV低い酸化還元電位を有する。
【0090】
電荷移動系は、対電極からまたは対電極へ1つまたは複数の電子を移動させることができる、電気化学的に活性な任意の1つの種または種の組合せである。例えば、システムの作用電極が、測定装置を通して対電極に電子を移動させる場合、対電極の電荷移動系は、対電極からの電子を受け入れて、システムを流れる電流の測定を可能にする。特定の電位または電位範囲の電子を受け入れることによって、電荷移動系は、測定のために作用電極が電子を移動させることができる電位に影響を与える。電荷移動系は、作用電極に存在する媒介物を含んでも、または含まなくてもよいが、それを含む場合には、対電極にある媒介物の少なくとも一部分は、作用電極にある媒介物の酸化状態とは異なる酸化状態を有することが好ましい。
【0091】
最も低い電位を有する電気化学反応が最初に起こるため、オキシドレダクターゼなどの分析物に応答する1種または数種の生体分子および/あるいは増大する複数の電位で電荷を輸送する媒介物を作用電極に提供することにより、複数の作用電極のエレクトロケミストリを、最も低い動作電位から最も高い動作電位へと順番に分析することができる。作用電極および対電極を独立にアドレス指定することができる場合、分析物との特定の酸化還元電位を有する作用電極を、所望の電位を有する対電極と選択的に対にすることができる。独立にアドレス指定可能な複数の作用電極における分析物、分析物に応答する生体分子および/または媒介物の酸化還元電位が異なる場合、電気的に接続された対電極を使用すると、個々の分析に対する別個の出力信号を測定することができる。反対に、独立にアドレス指定可能な複数の対電極における電荷移動種の酸化還元電位が異なる場合、電気的に接続された作用電極を使用すると、個々の分析に対する別個の出力信号を測定することができる。複数の対電極が、異なる電荷移動種を有するが、電気的に接続されているときには、システムの電位が2番目に高い電位を有する対電極の電位まで下がるまで、最も高い電位を有する対電極が作用電極に動作電位を提供する。
【0092】
図10Aは、それぞれが異なる電位で動作する独立にアドレス指定可能な3つの対電極(CE〜CE)と、異なる電位で動作する媒介物系をそれぞれが有する電気的に接続された3つの作用電極とを有するシステムを示す。このシステムの動作電位を対電極CEからCEへ増大させると、電気的に接続された作用電極の媒介物(Med〜Med)の酸化還元特性を独立に測定することができる。例えば、CEを作用電極に結合したときには、Medがその電極で反応する。CEを作用電極に結合すると、MedおよびMedがその電極で反応する。最後に、CEを作用電極に結合すると、3つの全ての媒介物系がその作用電極で反応することができる。
【0093】
対電極を形成するために異なる導体上に付着させる電荷移動系を変えることによって、複数の動作電位をシステムに提供することができる。特定の対電極が提供する電位は、異なる酸化還元種(酸化および/または還元される可能性がある部分)、および/またはフェロシアン化物/フェリシアン化物などの酸化還元種の異なる酸化還元共役対(同じ酸化還元種の還元部分と酸化部分)比を含む電荷移動系を用いて変更することができる。電荷移動系で使用する異なる酸化還元種の例には、可溶性または不溶性の酸化還元種が含まれ、可溶性酸化還元種は、少なくとも1.0グラム/リットルの濃度で水(pH7、25℃)に可溶であり、水に不溶またはわずかに可溶の元素金属および孤立金属イオンは除外される。有用な酸化還元種には、電気活性有機分子、有機遷移金属錯体および遷移金属配位錯体が含まれる。有機遷移金属錯体および配位錯体を含む金属とは違い、電気活性有機分子は、酸化または還元を受けることができる金属を含まない。電荷移動系で使用する好ましい酸化還元種には、ルテニウム(III)ヘキサアミン、フェリシアン化物、およびPIPT、PIPOなどの電気活性有機分子などがある。図10Bは、ルテニウム(III)ヘキサアミン、フェリシアン化物、および構造I/II/IIIとして上に示した電気活性有機分子のサイクリックボルタンモグラムを示す。このグラフに示すように、それぞれの酸化還元種の相対電位位置は約200mV離隔している。
【0094】
異なる酸化還元共役対比の例は、電荷移動系中のフェロシアン化物とフェリシアン化物の比である。例えば、最も低い電位を有する対電極に対して9.5:0.5の比を使用することができ、段階的に増大する動作電位を有する対電極を提供するために、8:2、5:5、2:8および0.5:9.5の比を使用することができる。6つの対電極に対しては、純粋なフェリシアン化物を使用して、最も高い動作電位を有する対電極を提供することができる。このようにすると、それぞれが異なる電位をシステムに提供する異なる酸化還元共役対比を使用して、独立にアドレス指定可能な6つの対電極を形成することができる。このように、酸化還元種の異なる共役対比を使用すると、少なくとも50mV、少なくとも100mVなど、異なる酸化還元種を用いて得られる電位差よりも小さな電位差を得ることができる。
【0095】
対電極の動作電位と酸化還元共役対比との関係は、ネルンスト式によって特徴づけられる。これを図10Cに示す。分析中に、対電極で酸化が起こっているのか、または還元が起こっているのかに応じ、付着させる電荷移動系に対して適当な酸化還元共役対比を選択することによって、対電極に所望の電位を提供することができる。電荷移動系に対して異なる酸化還元共役対比を選択することによって、異なるフェロシアン化物/フェリシアン化物比に関しては、電荷移動系の電位を約±150mV変化させることができる。したがって、異なる酸化還元種を使用する他に、酸化還元種の異なる共役比を使用することによっても、複数の対電極に異なる動作電位を提供することができる。2次領域間の物理的な分離によって提供することができる実質的な化学的隔離は、各対電極の異なる電荷移動系が、分析中に、異なる動作電位をシステムに提供することを可能にする。
【0096】
図10Dは、独立にアドレス指定可能な複数の対電極(CE〜CE)の電荷移動系が、−200mV、0mV、+200mVなどの異なる絶対動作電位を提供し、同時に、対電極と作用電極の間の同じ0.4Vの相対動作電位を実質的に維持する状況を示す。中央の酸化還元対には、任意に、標準水素電極、飽和カロメル電極などに対してゼロの固定電位を割り当てることができる。したがって、ルテニウムヘキサアミンは、構造I/II/III分子の酸化還元電位よりも約200mV低い酸化還元電位を有し、フェリシアン化物は、約200mV高い酸化還元電位を有する。既知の電位に対して異なる絶対動作電位で対電極を動作させることによって、システムは、電気的に接続された作用電極WE〜WEの異なる媒介物系(Med〜Med)を独立に分析することができる。
【0097】
図10Eは、独立にアドレス指定可能な複数の対電極が1つまたは複数の作用電極に提供することができる異なる動作電位を立証するサイクリックボルタンモグラムを示す。8つの2次分析領域を有する、前に図3Iに示したものなどの多重T設計を有する試験センサを製造した。8つの2次分析領域のうちの4つの2次分析領域は、独立にアドレス指定可能な作用電極を備え、8つの2次分析領域のうちの4つの2次分析領域は、独立にアドレス指定可能な対電極を備える。各作用電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%重量/重量(w/w)、構造I分子50mMおよびPQQ−GDH酵素系2U/μLを含む試薬組成物を有するように形成した。第1の対電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%(w/w)およびルテニウムヘキサアミン100mMを含む電荷移動系を有するように形成した。第2の対電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%(w/w)および構造I分子100mMを含む電荷移動系を有するように形成した。第3および第4の対電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%(w/w)およびフェリシアン化物100mMを含む電荷移動系を有するように形成した。
【0098】
グルコース300mg/dLを含む試料を導入した後、作用電極の1つおよび第1、第2および第3の各対電極に対して、前記CH Instrument社の機器を25mV/秒の速度で走査した。図10Bに示すように、ルテニウムヘキサアミン対電極の電位(線1010)は、フェリシアン化物(線1030)よりも約400mV高い電位でピークに達し、構造I分子は、そのほぼ中間でピークに達した(線1020)。このように、図10Bのサイクリックボルタンモグラムにおいて観察された結果は、複数の2次分析領域を有する多重T試験センサ設計においても再現された。したがって、異なる電荷移動系を有する複数の対電極を使用することによって、試験センサが複数の電位で動作することができることが証明された。
【0099】
図11Aは、図10Eの電荷移動系の代わりに複数の酸化還元共役対比を使用して、複数の電位をシステムに提供することができることを立証する。図10Eの場合と同様に試験センサを準備したが、第1の対電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%(w/w)および比1:9のフェリシアン化物:フェロシアン化物200mMを含む電荷移動系を有するように形成し、第2の対電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%(w/w)および比1:1のフェリシアン化物:フェロシアン化物200mMを含む電荷移動系を有するように形成し、第3の対電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%(w/w)および比9:1のフェリシアン化物:フェロシアン化物200mMを含む電荷移動系を有するように形成し、第4の対電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%(w/w)および実質的に純粋はフェリシアン化物200mMを含む電荷移動系を有するように形成した。
【0100】
グルコース300mg/dLを含む試料を導入した後、作用電極の1つおよび第1、第2、第3および第4の各対電極に対して、前記機器を25mV/秒の速度で走査した。図11Aは、第1の対電極が約0.149Vのピーク電位を有し(W1−C1)、第2の対電極が約0.060Vのピーク電位を有し(W2−C2)、第3の対電極が約−0.007Vのピーク電位を有し(W3−C3)、第4の対電極が約−0.047Vのピーク電位を有する(W4−C4)ことを示した。したがって、異なる酸化還元共役対比に依存する電荷移動系を有する複数の対電極を使用することによって、試験センサが複数の電位で動作することができることが証明された。
【0101】
図11Bは、実質的に化学的に隔離された1つの作用電極の電位を、異なる電荷移動系によって提供される異なる電位をそれぞれが有する、実質的に化学的に隔離された独立にアドレス指定可能な3つの対電極によって、順番に繰返し制御したときに得られた電流プロファイルを示す。図10Eと同様に試験センサを準備したが、複数の作用電極の代わりに単一の作用電極を使用した。3つのピークからなる6つのそれぞれのピーク系列の第1のピーク1110は、第1の対電極から得られ、3つのピークからなる6つのそれぞれのピーク系列の第2のピーク1120は、第2の対電極から得られ、3つのピークからなる6つのそれぞれのピーク系列の第3のピーク1130は、第3の対電極から得られたものである。第1のピーク1110は、ルテニウムヘキサミンを第1の対電極の電荷移動系として使用することによって得られた電流レベルを示す。第2のピーク1120は、構造I分子を第2の対電極の電荷移動系として使用することによって得られた電流レベルを示す。第3のピーク1130は、フェリシアン化物を第3の対電極の電荷移動系として使用することによって得られた電流レベルを示す。このように、同じ電位に対して、異なる対電極電位が、同じ酸化波の異なる酸化点をアドレス指定する。したがって、複数の対電極が、作用電極における動作電位を制御することができることの証明に加えて、このシステムが、ゲート制御入力信号を有する作用電極において、3つの別個の分析を実施することができることが立証された。
【0102】
図12Aは、生物流体試料中の分析物の濃度を、入力信号を使用して決定するバイオセンサシステム1200の概略図を示す。バイオセンサシステム1200は、測定装置1202および試験センサ1204を含み、これらは、ベンチトップ型装置、携帯型またはハンドヘルド型装置などを含む分析機器内に実装することができる。バイオセンサシステム1200を利用して、グルコース、尿酸、乳酸塩、コレステロール、ビリルビンの濃度などを含む、分析物の濃度を決定することができる。
【0103】
特定の1つの構成が示したが、バイオセンサシステム1200は、追加の構成要素を有する構成を含む、他の構成を有することもできる。例えば、試験センサ1204を、生体の外側、内側または部分的に内側で使用するように適合させることができる。生体の外側で使用するときには、試験センサ1204の試料リザーバに生物流体試料を導入する。試験センサ1204は、分析用試料を導入する前、導入した後または導入している最中に、測定装置内に配置することができる。生体の内側または部分的に内側で使用するときには、試料中に試験センサを連続的に浸しておくことができ、または試料をセンサに断続的に導入することができる。
【0104】
試験センサ1204は、開口1212を有するリザーバ1208を形成するベース1206を有する。リザーバ1208は、ベントを有するふたによって形成することができる。リザーバ1208は、部分的に囲われた容積を画定するが、試料(図示せず)に対して開放することができる。したがって、試料は、試験センサ内を連続的に流れることができ、または、分析のため、試料を遮断することができる。
【0105】
リザーバ1208は、液体試料の保持を助ける、水膨潤性ポリマー、多孔質ポリマーマトリックスなどの組成物を含むことができる。リザーバ1208内に試薬を付着させることできる。試薬は、1種または数種の酵素、酵素系、媒介物、結合剤などの種を含むことができる。結合剤は、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)、CMC(カルボキシルメチルセルロース)および/またはPEO(ポリエチレンオキシド)など、さまざまなタイプおよびさまざまな分子量のポリマーを含むことができる。試薬を一緒に結合することに加えて、結合剤は、赤血球を濾別するのを助け、赤血球が電極表面1211を覆うことを防ぐことができる。試験センサ1204はさらに、リザーバ1208に隣接して配置された試料インタフェース1214を有することができる。試料インタフェース1214は、リザーバ1208を部分的にまたは完全に取り囲むことができる。試験センサ1204は他の構成を有することもできる。例えば、多孔質材料からリザーバ1208を形成し、または試料が保持される多孔質材料の後ろにリザーバ1208を形成することによって、試験センサ1204を、経皮的に使用するように適合させることができる。
【0106】
試料インタフェース1214は、少なくとも1つの作用電極および少なくとも2つの対電極に接続された導体1290を有する。これらの電極は実質的に同じ平面に配置することができ、または、向い合せに配置するときなど、2つ以上の平面に配置することができる。電極は、リザーバ1208を形成するベース1206の表面に配置することができる。電極は、リザーバ1208内へ延出しまたは突き出すことができる。電極によって提供されない機能を提供するため、導体1290のうちの1つまたは複数の導体も、リザーバ1208内へ延出することができる。誘電体層が、これらの導体および/または電極を部分的に覆ってもよい。対電極を使用して、分析の間、1つまたは複数の作用電極における電位を平衡させることができる。この平衡電位は、炭素などの不活性材料から対電極を形成し、フェリシアン化物などの可溶性酸化還元種をリザーバ1208内に含めることによって、提供することができる。あるいは、この平衡電位を、Ag/AgClなどの参照酸化還元対から対電極を形成して、組合せ参照電極−対電極を提供することによって達成される参照電位とすることもできる。試料インタフェース1214は他の電極および導体を有することもできる。
【0107】
測定装置1202は、センサインタフェース1218とディスプレイ1220とに接続された電気回路1216を含む。電気回路1216は、信号発生器1224と、任意選択の温度センサ1226と、記憶媒体1228とに接続されたプロセッサ1222を含む。
【0108】
信号発生器1224は、プロセッサ1222に応答してセンサインタフェース1218に電気入力信号を送る。生物流体試料に印加するため、この電気入力信号を、センサインタフェース1218によって試料インタフェース1214に送信することができる。この電気入力信号は、試料インタフェース1214の全部または一部の導体1290を通して伝送することができる。この電気入力信号は電位または電流とすることができ、また、一定または可変信号、あるいはDC信号オフセットを有するAC信号を印加するときなど、これらの組合せとすることができる。この電気入力信号は、単一のパルスとして、あるいは複数のパルス、シーケンスまたはサイクルとして印加することができる。信号発生器1224はさらに、発生器−記録器として、センサインタフェースからの出力信号を記録することができる。
【0109】
信号発生器1224は、独立にアドレス指定可能な複数の作用電極と独立にアドレス指定可能な複数の対電極との間でスイッチングすることができる図12Bのポテンシオスタットを含むことができ、または、図12Cの複数のポテンシオスタットシステムを含むことができる。図12Dは、4つの対電極と電気的に接続された作用電極との間でスイッチングするように信号発生器内に実装することができるポテンシオスタットを示す。図12Eは、4つの作用電極と電気的に接続された対電極との間でスイッチングするように実装されたポテンシオスタットを示す。図12Fは、4つの参照電極と電気的に接続された作用電極との間でスイッチングするように実装されたポテンシオスタットを示す。この1つまたは複数のポテンシオスタットは、試料インタフェース1214に異なる動作電位を提供することができる。関数発生器が、ポテンシオスタットへのゲート制御波入力をトリガするように、信号発生器1224を構成することができる。信号発生器1224は他の構成を有することもできる。
【0110】
任意選択の温度センサ1226は、試験センサ1204のリザーバ内の試料の温度を決定する。試料の温度は、測定し、出力信号から計算し、あるいは周囲温度またはバイオセンサシステムを実装した装置の温度の測定値と同じまたは同様と仮定することができる。この温度は、サーミスタ、温度計または他の温度感知装置を使用して測定することができる。他の技法を使用して試料温度を決定することもできる。
【0111】
記憶媒体1228は、磁気、光または半導体メモリ、あるいは他の記憶装置等とすることができる。記憶媒体1228は、固定記憶装置もしくはメモリカードなどの取外し可能な記憶装置とすることができ、または遠隔アクセスすることができ、あるいは他の記憶媒体とすることができる。
【0112】
プロセッサ1222は、記憶媒体1228に記憶されたコンピュータ可読ソフトウェアコードおよびデータを使用して、分析物の分析およびデータ処理を実現する。プロセッサ1222は、センサインタフェース1218に試験センサ1204が存在すること、試験センサ1204に試料が導入されたこと、ユーザ入力などに応答して、分析物の分析を開始することができる。プロセッサ1222は、センサインタフェース1218に電気入力信号を供給するよう、信号発生器1224に指示する。プロセッサ1222は、任意選択の温度センサ1226から試料温度を受け取ることができる。
【0113】
プロセッサ1222は、センサインタフェース1218から出力信号を受け取る。この出力信号は、試料中の測定可能種の酸化還元反応に応答して生成されたものである。試験センサからのこの電気出力信号は、(アンペロメトリまたはボルタンメトリによって生成された)電流、(電位差測定/電流測定法によって生成された)電位、または(クーロメトリによって生成された)蓄積電荷とすることができる。この出力信号を、プロセッサ1222内の1つまたは複数の相関方程式を使用して、試料中の1種または数種の分析物の濃度と相関させる。この分析物分析の結果をディスプレイ1220に出力し、記憶媒体1228に記憶することができる。
【0114】
分析物濃度と出力信号との間の相関方程式は、グラフ、数式、グラフと数式の組合せなどで表すことができる。相関方程式は、記憶媒体1228に記憶されたプログラム番号(PNA)テーブル、他のルックアップテーブルなどによって表すことができる。記憶媒体1228に記憶されたコンピュータ可読ソフトウェアコードによって、分析物分析の実現に関する命令を提供することができる。このコードは、本明細書に記載された機能を記述または制御するオブジェクトコードまたは他の任意のコードとすることができる。プロセッサ1222において、分析物分析のデータを、減衰率、K定数、比などの決定を含む、1つまたは複数のデータ処理にかけることができる。
【0115】
センサインタフェース1218は、試験センサ1204の試料インタフェース1214内の導体1290に接続し、またはこれと電気的に連絡するコンタクト1295を有する。センサインタフェース1218は、信号発生器1224からの電気入力信号を、センサインタフェース1218内のコネクタを通して、試料インタフェース1214内のコンタクト1295に送信する。センサインタフェース1218はさらに、試料からの出力信号を、コンタクト1295を通して、プロセッサ1222および/または信号発生器1224に送信する。
【0116】
ディスプレイ1220は、アナログまたはディジタルディスプレイとすることができる。このディスプレイを、読みを数字で表示するように適合されたLCDディスプレイとすることができる。
【0117】
使用時、試料ポート1212に液体を導入することによって、分析用の液体試料がリザーバ1208内へ移される。この液体試料は、試料ポート1212を通って流れ、リザーバ1208を満たし、同時に、それまで含まれていた空気を追い出す。この液体試料は、リザーバ1208の2次分析領域内に付着した試薬と化学反応する。
【0118】
試験センサ1202は、測定装置1202に隣接して配置される。「隣接」は、試料インタフェース1214がセンサインタフェース1208と電気的に連絡する位置を含む。電気的連絡は、センサインタフェース1218内のコンタクトと試料インタフェース1214内の導体1290との間の入力信号および/または出力信号の転送を含む。
【0119】
図13は、試料中の少なくとも1つの分析物の存在の有無を判定し、かつ/またはそれらの分析物の濃度を決定する電気化学的分析1300を示す。試料導入1310では、試験センサに試料を導入する。酸化還元反応1320では、試料中の分析物の一部が酸化還元反応を受ける。電子移動1330では、任意選択で、分析物から媒介物に電子を移動させる。第1の入力信号の印加1340では、作用電極と第1の対電極との間に入力信号を印加する。第2の入力信号の印加1350では、作用電極と第2の対電極との間に、異なる電位の入力信号を印加する。試料決定1360では、1つまたは複数の出力信号から、試料中の1種または数種の測定可能種の存在の有無を判定し、かつ/またはそれらの測定可能種の濃度を決定し、試料濃度送信1370では、決定された測定可能種の濃度を表示し、記憶し、さらに処理することなどができる。
【0120】
試料導入1310では、試験センサなどのシステムのセンサ部分に試料を導入する。試験センサは、少なくとも1つの作用電極と少なくとも2つの対電極とを含む。これらの電極は、1層または数層の試薬組成物層を含むことができる。作用電極は、試薬組成物層と一体の拡散障壁層または試薬組成物層とは別個の拡散障壁層を含むことができる。この拡散障壁層は、測定可能種が存在することができる内部容積を有する多孔質空間を提供する。拡散障壁層の細孔は、測定可能種が拡散障壁層内へ拡散することができ、同時に、赤血球などの物理的により大きな試料成分が実質的に排除されるように選択することができる。作用電極が別個の拡散障壁層を含むとき、試薬層は、拡散障壁層上に配置されても、または配置されなくてもよい。分析1300の性質によっては、導体が電極の役目を果たすことができる。この態様では、電極に隣接して試薬を付着させた場合など、試薬が試料中に存在することができる。
【0121】
図13の酸化還元反応1320では、試料中に存在する分析物の一部が、オキシドレダクターゼまたは同種の種などによって、化学的または生化学的に酸化または還元される。この酸化還元反応は、試料が試薬を水和させたときに起こる。酸化または還元の後、任意選択で、電子移動1330において、分析物と媒介物の間で電子を移動させることができる。こうすると、分析物、媒介物などから、分析物に応答した試料濃度を有するイオン化した測定可能種が形成される。試薬を分析物と反応させるため、初期時間遅れすなわち「インキュベーション期間」を設けると有利なことがある。
【0122】
図13の第1の入力信号の印加1340では、システムが、第1の対電極を使用して試料に入力信号を印加する。入力信号は、電流、電位などの電気信号であり、緩和によって分離された励起パルス列とすることができる。システムは、分析物の存在の有無を判定し、かつ/または分析物の濃度を決定するために使用する入力信号、ならびに試料のヘマトクリット含量、試験センサの充填状態などの他の因子を決定するために使用する入力信号を含む、1つまたは複数の入力信号を試料に印加することができる。
【0123】
第1の入力信号の印加1340に加えて、第1の入力信号の印加1340の前に、初期ポーリング電位を入力して、試料の存在の有無を判定することができる。任意の電極および/または導体対間に電位を印加して、電極および/または導体表面から材料を除去し、電極のケミストリを変更し、あるいは電荷移動系の一部を酸化または還元することもできる。このような電位は分析の前に印加することができる。
【0124】
図13の第2の入力信号の印加1350では、システムが、第2の対電極を使用して、試料に、異なる電位の第2の入力信号を印加する。複数の作用電極の作用電位を選択することができること、および/または複数の対電極の動作電位を選択することができることによって、複数のタイプの分析を実行することができるバイオセンサシステムが得られる。分析中に、複数の作用電極、対電極および/または参照電極のうちの任意の電極対間の電位を測定して、有用な情報を得ることができる。順番に満たされる複数の2次分析領域を有する試料リザーバを提供することにより、2回以上の入力信号の印加1340、1350を使用して、試料によるリザーバ充填の進捗を監視することができる。
【0125】
試料決定1360では、測定装置が、これらの2つの入力信号に対する応答である出力信号を分析して、それぞれの電位における試料中の少なくとも1種の測定可能種の存在の有無を判定し、かつ/またはそれらの測定可能種の濃度を決定する。酸化還元反応1320で使用するオキシドレダクターゼまたは同種の種が、単一の分析物と反応する場合、生成される電気信号の一部分に特異性を与えることができる。入力信号の異なる部分によって、2つ以上の測定可能種をイオン化することができるため、複数の分析物、媒介物、インターフェレントなどの存在の有無を判定し、かつ/またはそれらの濃度を決定することができる。追加の電流、時間および/または他の値を分析することもできる。例えば、1つの分析物、媒介物またはインターフェレントに対して決定された電流を、他の分析物、媒介物またはインターフェレントに対して決定された電流によって修正して、システムの測定性能を増大させることができる。
【0126】
ゲート制御アンペロメトリ信号、ゲート制御ボルタンメトリ信号および/またはこれらの組合せなどのゲート制御入力信号を使用して、特定の媒介物の電位をアドレス指定し、一組の線形方程式を解くことができる。例えば、電気的に独立した対電極と電気的に接続された作用電極とを有する試験センサを使用するときには、式(1)から(3)を解くことによって、異なる3つの測定可能種の濃度を決定することができる。
ilow=A1・S1+Int1 (1)
imedium=ilow+i2=k1・(A1・S1+Int1)+k2・(A2・S2+Int2) (2)
ihigh=imedium+i3=k1・(A1・S1+Int1)+k2・(A2・S2+Int2)+k3・(A3・S3+Int3) (3)
上式で、ilow、imediumおよびihighは、低、中および高電位の対電極との結合からの電流、A、AおよびAは、異なる3つの測定可能種の濃度、k、kおよびkは、2つの動作電位間の電流の差を表現する比例定数、SおよびIntはそれぞれ、各分析物較正系の傾きおよび切片である。
【0127】
図14Aは、独立にアドレス指定可能な対電極および作用電極(WE〜WE)を有する試験センサと組み合わせて使用される順次ゲート制御アンペロメトリパルス列からの入力信号を示す。この場合、一度に1つの作用電極が動作し、各電極対に入力信号が順番に入力される。このようにすると、複数の電極対からの出力信号を決定するのに、多電位ポテンシオスタットは必要ない。図14Bは、独立にアドレス指定可能な対電極および作用電極(WE〜WE)を有する試験センサと組み合わせて使用される同時ゲート制御アンペロメトリパルス列からの入力信号を示す。この場合、それぞれの励起に対して、4つの全ての電極対が同じ電位で同時に動作する。この図には示されていないが、2つ以上の電極に入力信号を同時に印加し、その一方で、他の電極には入力信号を順番に印加することもできる。
【0128】
独立にアドレス指定可能な複数の対電極を電流/電圧コンバータに接続することによって、その分析に由来する出力電流を別々に測定することができる。この動作を、1つの対電極がオフであり、第2の対電極がオンであるゲート制御入力信号と組み合わせることができる。その結果得られる独立した対電極からの測定電流のカスケードは、試料の複数の分析物および他の成分を分析する方法を提供する。式の線形結合を解いて、個々の分析物の濃度および/または他のパラメータを決定することができる。
【0129】
印加入力信号は、0.05から1.0V、好ましくは0.1から0.8V、より多く好ましくは0.2から0.5Vの電圧を有することができる。入力信号は、関心の1種または数種の分析物に応じて、0.01秒から3分間の持続時間にわたって印加することができる。例えば、グルコースの分析は5秒未満で完了することがあり、他の分析物は、それよりも持続時間が長い入力信号の方が有利なことがある。入力信号が複数の励起および緩和を含む場合、それぞれの励起の持続時間は、例えばグルコースに関しては、0.01から7秒、好ましくは0.5から3秒、より好ましくは0.1から2秒とすることができる。他の入力信号持続時間および励起持続時間を使用することもできる。
【0130】
図13の試料濃度送信1370では、測定装置が、少なくとも1つの測定可能種の濃度を試料分析物濃度に変換し、測定装置は、決定された測定可能種濃度のうちの1つまたは複数の濃度を表示し、将来の参照のために記憶し、さらに処理し、かつ/または追加の計算に使用することができる。例えば、1つの分析物、媒介物またはインターフェレントに対して決定された値を、他の分析物、媒介物またはインターフェレントに対して決定された値によって修正して、システムの測定性能を増大させることができる。
【0131】
電荷移動系中に存在する酸化可能種を有する対電極を、オキシドレダクターゼを含まない作用電極として使用し、これにより、ヘマトクリットを決定するために分析し、出力信号のバックグラウンド成分を決定する能力を提供することもできる。分析物濃度を、この情報および他の情報によって修正して、正確度および/または精度を増大させることができる。対電極を、開回路の間、作用電極として使用して、1つまたは複数のヘマトクリットパラメータを測定することができる。他の態様では、1つまたは複数の出力信号を、較正曲線またはルックアップテーブルと相関させて、ヘマトクリット偏りまたはインターフェレントに起因する偏りを決定することができる。
【0132】
分析物の性質によっては、1つの分析物の濃度を使用して、他の分析物の読みを変更することができる。例えば、第1の分析物の濃度が、第2の分析物の濃度に対して正の干渉を引き起こすとき、第1の分析物の濃度を第2の分析物の濃度から差し引いて、決定される第2の分析物の濃度値の正確度および/または精度を増大させることができる。
【0133】
図15は、試料中の分析物の濃度を決定するために、同じ分析物に対する最大4回の別個の分析の結果を平均した結果を示す。このグラフに示されているように、実行する別個の分析の回数を1回から3回に増やすことによって、参照YSI機器と比較したときに、得られる濃度値の98%は、±15%の偏り範囲内に収まった。このグラフの基礎データは、別々の試験センサから得られたものだが、2つ以上の2次分析領域を有する試験センサを、異なる分析物を分析することに加えて、2つ以上の2次領域において同じ分析を実行するように構成することができる。したがって、実質的に化学的に隔離された複数の2次分析領域は、単一の試験センサによる信号の平均値算出という利点を提供することができる。
【0134】
単一の試験センサ上で同じ分析を複数回実行できることによって、決定される分析物濃度の正確度および/または精度を相当に増大させることができる。したがって、同じ試験センサ上で同じ分析を複数回実行することによって可能となる信号の平均値算出は、(標準偏差sd値によって特徴づけられる)不規則雑音を、従来のセンサシステムに比べて1/√nに低減することにより、その試験センサの信号対雑音比を向上させることができる。
【0135】
図16は、個別にアドレス指定可能な実質的に化学的に隔離された8つの電極に、ゲート制御アンペロメトリ入力信号を同時に印加したときに得られた電流の減衰を示す。これらの電極は、1次チャネルを挟んで4つの作用電極と4つの対電極が対向する、前に図3Iに示したものなどの多重T設計として構成した。各作用電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%(w/w)、構造I分子50mLおよびPQQ−GDH酵素系2U/μLを含む試薬組成物を有するように形成した。各対電極は、pH7のリン酸緩衝液中にHEC結合剤0.5%(w/w)および実質的に純粋はフェリシアン化物100mMを含む電荷移動系を有するように形成した。
【0136】
実験を実施するため、pH7のリン酸緩衝液中にグルコース100mg/dLを含む試料を試験センサに導入し、4つの対向するそれぞれの電極対間に、ゲート制御アンプロメトリ入力信号を同時に印加した。ゲート制御入力信号は、可変パルス幅を有する2回の初期励起と、それに続くパルス幅0.375秒の7回の励起とを含む。後者の7回の励起は、1秒の緩和期間によって分離した。2秒の時間点で印加した励起の終わり近くに、各電極対(W1−C1、W2−C2、W3−C3およびW4−C4)に対応する4つの電流値を平均する。この4つの電流値の平均値から、1つまたは複数の相関方程式あるいは同様の方法を使用して、試料の分析物濃度を決定することができる。このようにすると、複数回の分析を平均することによって得られる前に論じた正確度および/または精度の利点を、単一の試験センサによって得ることができる。
【0137】
本発明のさまざまな実施形態を説明したが、本発明の範囲内において、他の実施形態および実施態様が可能であることは、当業者には明白である。したがって、添付の特許請求項およびそれらの等価物を考慮したときを除き、本発明は限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に化学的に隔離された少なくとも2つの2次分析領域を有するリザーバを形成する少なくとも2つの基材と、
前記リザーバ内に配置された第1の導体および試薬組成物を含む少なくとも1つの第1の作用電極と、
第1の2次分析領域内に配置された第2の導体および少なくとも1つの第1の酸化還元種を含む少なくとも1つの第1の対電極と、
第2の2次分析領域内に配置された第3の導体および少なくとも1つの第2の酸化還元種を含む少なくとも1つの第2の対電極と
を備え、
前記作用電極、前記第1の対電極および前記第2の対電極が、独立にアドレス指定可能である、分析物試験センサ。
【請求項2】
前記第1の2次分析領域が、1次エリアを挟んで前記第2の2次分析領域と対向する、請求項1に記載の試験センサ。
【請求項3】
前記第1の2次分析領域と前記第2の2次分析領域が、1次エリアを挟んで食い違っている、請求項1または2に記載の試験センサ。
【請求項4】
前記2次分析領域のうち少なくとも1つの2次分析領域が、前記1次エリアから90°以外の角度で枝分れしている、請求項2または3に記載の試験センサ。
【請求項5】
前記2次分析領域のうち少なくとも1つの2次分析領域が、前記1次エリアから90°未満の角度で枝分れしている、請求項2または3に記載の試験センサ。
【請求項6】
実質的に化学的に隔離された第3の2次分析領域を備え、前記第1の作用電極が前記第3の2次分析領域内に配置され、前記第1の対電極と前記第2の対電極の少なくとも一方から実質的に化学的に隔離されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項7】
前記リザーバが多重Tチャネル設計である、請求項6に記載の試験センサ。
【請求項8】
前記リザーバが多重Yチャネル設計である、請求項6に記載の試験センサ。
【請求項9】
前記第1の作用電極が、前記第1の対電極および前記第2の対電極から実質的に化学的に隔離されている、請求項6に記載の試験センサ。
【請求項10】
各2次分析領域が1つの電極を含む、請求項6に記載の試験センサ。
【請求項11】
実質的に化学的に隔離された少なくとも4つの2次分析領域を備え、各領域が1つの電極を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項12】
前記電極のうち、2つの電極が作用電極であり、2つの電極が対電極である、請求項11に記載の試験センサ。
【請求項13】
前記電極のうち、1つの電極が作用電極であり、3つの電極が対電極である、請求項11に記載の試験センサ。
【請求項14】
第2の作用電極を含む、実質的に化学的に隔離された第4の2次分析領域をさらに備え、前記第1の作用電極と前記第2の作用電極とが一緒に電気的にアドレス指定される、請求項11に記載の試験センサ。
【請求項15】
前記実質的に化学的に隔離された2次分析領域が、生物流体が前記リザーバに入り、前記2次分析領域へ流れるときに、前記生物流体が、2つ以上の電極を横切って別の電極に到達することがないように配置されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項16】
どの2つの電極間においても、前記実質的に化学的に隔離された2次分析領域内を通る直線を引くことができない、請求項1から15のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項17】
前記第1の対電極と前記第2の対電極が、異なる電位で動作するように構成されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項18】
前記異なる電位が少なくとも50mV離隔している、請求項17に記載の試験センサ。
【請求項19】
前記第1の酸化還元種と前記第2の酸化還元種とが異なり、この違いが、金属と電気活性有機分子との違い、および金属の元素識別の違いからなるグループより選択される、請求項17に記載の試験センサ。
【請求項20】
前記異なる電位で動作する構成が、第1の酸化還元種と第2の酸化還元種の酸化還元対の共役の比の違いによって提供される、請求項17に記載の試験センサ。
【請求項21】
少なくとも1つの参照電極をさらに備える、請求項1から20のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項22】
独立にアドレス指定可能な少なくとも3つの2次分析領域を含むリザーバを形成する少なくとも2つの基材
を備え、前記2次分析領域の各々が、実質的に化学的に隔離されている、分析物試験センサ。
【請求項23】
前記2次分析領域の各々が少なくとも1つの電極を含む、請求項22に記載の試験センサ。
【請求項24】
前記2次分析領域のうちの第1の2次分析領域が作用電極を有し、前記2次分析領域のうちの第2の2次分析領域が第1の対電極を有し、前記2次分析領域のうちの第3の2次分析領域が第2の対電極を有する、請求項22または23に記載の試験センサ。
【請求項25】
電気的に接続された少なくとも2つの作用電極と、電気的に独立にアドレス指定可能な少なくとも2つの対電極とを含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項26】
前記第1の対電極および前記第2の対電極が、前記システムに異なる動作電位を提供するように構成されている、請求項22または25に記載の試験センサ。
【請求項27】
前記異なる動作電位が少なくとも50mV離隔している、請求項26に記載の試験センサ。
【請求項28】
前記異なる動作電位が、前記第1の対電極および前記第2の対電極上に配置された異なる電荷移動系によって提供され、前記電荷移動系間の違いが、金属と電気活性有機分子との違い、および金属の元素識別の違いからなるグループより選択される、請求項26に記載の試験センサ。
【請求項29】
前記動作電位間の違いが、酸化還元対の共役の比が異なることによって提供される、請求項26に記載の試験センサ。
【請求項30】
前記2次分析領域のうちの少なくとも2つの2次分析領域が、1次エリアから導入される試料によって実質的に順番に満たされるように構成されている、請求項22から29のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項31】
少なくとも1つの参照電極を備える、請求項22から30のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項32】
少なくとも1つの1次エリア、第1の2次分析領域および第2の2次分析領域を含むリザーバを形成する少なくとも2つの基材であって、
前記第1の2次分析領域が作用電極を含み、前記作用電極が、試薬組成物および第1の導体から形成され、
前記第2の2次分析領域が1つの対電極を含み、前記対電極が、電荷移動系および第2の導体から形成される、
少なくとも2つの基材と、
前記リザーバと流体連通した少なくとも1つの試料ポートと、
前記第1の2次分析領域と流体連通した第1のベントと、
前記第2の2次分析領域と流体連通した第2のベントと
を備え、
前記作用電極から、前記第1の2次分析領域および前記1次エリアを通る直線を、前記第2の2次分析領域を通って前記対電極まで引くことができない、分析物試験センサ。
【請求項33】
前記第1の2次分析領域と前記第2の2次分析領域とが実質的に化学的に隔離されている、請求項32に記載の試験センサ。
【請求項34】
前記2次分析領域のうち少なくとも1つの2次分析領域が、前記1次エリアから90°未満の角度で枝分れしている、請求項32または33に記載の試験センサ。
【請求項35】
前記第1の2次分析領域および前記第2の2次分析領域が、前記1次エリアから90°未満の角度で枝分れしている、請求項32から34のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項36】
前記リザーバがYチャネル設計である、請求項35に記載の試験センサ。
【請求項37】
前記リザーバが多重Yチャネル設計である、請求項32から35のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項38】
2つ以上のリザーバを備える、請求項32から37のいずれか一項に記載の試験センサ。
【請求項39】
2つの基材間に配置された導体と、
少なくとも前記2つの基材および前記導体の縁によって画定された試料ポートを含むリザーバであって、前記導体の前記縁が少なくとも第1の電極を画定するリザーバの少なくとも一部分と
を備える分析物試験センサ。
【請求項40】
リザーバを形成する少なくとも2つの基材であって、前記試料リザーバが、少なくとも1つの1次エリア、少なくとも1つの試料ポート、少なくとも1つのベント、ならびに実質的に化学的に隔離された少なくとも第1、第2および第3の2次分析領域を含み、
前記第1の2次分析領域が、第1の導体と電気的に連絡する少なくとも1つの第1の電極を含み、
前記第2の2次分析領域が、第2の導体と電気的に連絡する少なくとも1つの第2の電極を含み、
前記第3の2次分析領域が、第3の導体と電気的に連絡する少なくとも1つの第3の電極を含む
少なくとも2つの基材を備え、
前記少なくとも1つの試料ポートに入った流体試料が、前記第1、前記第2および前記第3の電極のうちの2つ以上の電極を横切って別の電極に到達することがない、分析物試験センサ。
【請求項41】
リザーバを形成する少なくとも2つの基材であって、前記試料リザーバが、少なくとも1つの1次エリア、ならびに実質的に化学的に隔離された少なくとも1つの第1の2次分析領域および少なくとも1つの第2の2次分析領域を含み、
前記第1の2次分析領域が、第1の導体と電気的に連絡する、第1の酸化還元種を有する少なくとも1つの第1の電極を含み、
前記第2の2次分析領域が、第2の導体と電気的に連絡する、第2の酸化還元種を有する少なくとも1つの第2の電極を含み、前記第2の酸化還元種が前記第1の酸化還元種とは異なる
少なくとも2つの基材を備え、
実質上、pH7のリン酸緩衝液と、リン酸ナトリウム0.1Mと、重量平均分子量が2000のポリビニルピロリドンポリマー16%(w/w)とからなる試料を、大気相対湿度45%および温度22℃で、前記第1の2次分析領域および前記第2の2次分析領域に導入したときに、試験センサが機械的外乱を受けない場合、前記第1の酸化還元種と前記第2の酸化還元種との混合が、サイクリックボルタンメトリおよびケモアンペロメトリからなるグループから選択された分析技術によって12分以内に観察されない、分析物試験センサ。
【請求項42】
前記試験センサが機械的外乱を受けない場合、前記第1の酸化還元種と前記第2の酸化還元種との混合が16分以内に観察されない、請求項41に記載の試験センサ。
【請求項43】
前記試験センサが機械的外乱を受ける場合、前記第1の酸化還元種と前記第2の酸化還元種との混合が1.4分以内に観察されない、請求項41または42に記載の試験センサ。
【請求項44】
試料中の少なくとも1つの分析物を測定する方法であって、
試料中の少なくとも1つの分析物を化学的または生化学的に酸化または還元すること、
少なくとも第1の作用電極および第1の対電極を用いて、前記試料に第1の入力信号を印加すること、
少なくとも前記第1の作用電極および第2の対電極を用いて、前記試料に、前記第1の入力信号とは電位が異なる第2の入力信号を印加すること、
前記第1の入力信号および前記第2の入力信号からの出力信号を分析して、
前記第1の対電極の電位における前記試料中の第1の測定可能種の濃度と、
前記第2の対電極の電位における前記試料中の第2の測定可能種の濃度と
を決定すること、ならびに
前記第1の測定可能種の濃度と前記第2の測定可能種の濃度の少なくとも一方を、前記試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度に変換すること
を含む方法。
【請求項45】
少なくとも前記作用電極および第3の対電極を用いて、前記試料に、前記第1の入力信号および前記第2の入力信号とは電位が異なる第3の入力信号を印加すること、
前記第3の入力信号からの出力信号を分析して、前記試料中の第3の測定可能種の濃度を決定すること、ならびに
前記第1、前記第2および前記第3の測定可能種の濃度のうちの少なくとも1つの濃度を、前記試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度に変換すること
をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の測定可能種の濃度を、前記試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度に変換すること、および
前記第2の測定可能種の前記濃度を用いて、
前記試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度値と、
前記試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度値を決定する相関式と
の少なくとも一方を変更すること
を含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の測定可能種の前記濃度を用いて、
前記試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度値と、
前記試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度値を決定する相関式と
の少なくとも一方を変更すること
を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
試料中の少なくとも1つの分析物を測定する方法であって、
少なくとも2対の電極を含む試験センサに前記試料を導入することであって、前記少なくとも2対の電極が、独立にアドレス指定可能な、実質的に化学的に隔離された少なくとも4つの電極を含み、前記電極のうち、少なくとも2つの電極が作用電極であり、少なくとも2つの電極が対電極である、前記試料の導入、
前記試料中の前記分析物を化学的または生化学的に酸化または還元すること、
前記少なくとも2対の電極を横切って、前記試料にゲート制御入力信号を印加することにより、少なくとも2つの出力信号を生成すること、
前記少なくとも2つの出力信号を結合すること、および
前記結合した出力信号から、前記試料中の前記分析物の濃度を測定すること
を含む方法。
【請求項49】
前記少なくとも2対の電極を横切って、前記試料に、前記ゲート制御入力信号を同時に印加することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも2対の電極のうちの第1の電極対を、次いで第2の電極対を横切って、前記試料に、前記ゲート制御入力信号を順番に印加することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記結合することが、前記出力信号から記録された出力値を平均することを含む、請求項48から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも2つの対電極が異なる電位で動作し、
前記結合することが、一組の線形方程式を解くことを含む、
請求項50に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも1つの1次エリア、少なくとも1つの試料ポート、少なくとも2つのベント、ならびに実質的に化学的に隔離された少なくとも第1および第2の2次分析領域を含むリザーバを形成する少なくとも2つの基材であって、
前記第1の2次分析領域が、第1の導体と電気的に連絡する少なくとも1つの第1の電極を含み、
前記第2の2次分析領域が、第2の導体と電気的に連絡する少なくとも1つの第2の電極を含む
少なくとも2つの基材と、
前記リザーバ内の前記第1の導体、前記第2の導体および第3の導体と電気的に連絡する試料インタフェースと、
前記試料インフェースと電気的に連絡するセンサインタフェースと、
前記センサインタフェースと電気的に連絡するプロセッサであって、前記リザーバに入った流体試料が前記第1の電極と接触した時刻、および前記試料リザーバに入った流体試料が前記第2の電極と接触した時刻を決定するように動作可能なプロセッサと
を備える分析物バイオセンサシステム。
【請求項54】
実質的に化学的に隔離され、前記リザーバと流体連通する第3の2次分析領域をさらに備え、
前記第2の2次分析領域が、前記第3の導体と電気的に連絡する少なくとも1つの第3の電極を含む、
請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記プロセッサが、前記リザーバに入った前記流体試料が前記第3の電極と接触した時刻を決定するように動作可能である、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
第1の基材上に配置された試料インタフェースを含む試験センサであって、前記試料インタフェースが、前記第1の基材および第2の基材によって形成されたリザーバと電気的に連絡し、
前記リザーバが、少なくとも1つの試料ポートと、実質的に化学的に隔離された少なくとも第1および第2の2次分析領域とを有し、
前記試験センサが、
前記リザーバ内に配置され、第3の導体を有する少なくとも1つの第1の作用電極と、
前記実質的に化学的に隔離された第1の領域内に配置され、第1の導体と、少なくとも1つの第1の酸化還元種とを有する少なくとも1つの第1の対電極と、
前記実質的に化学的に隔離された第2の領域内に配置され、第2の導体と、少なくとも1つの第2の酸化還元種とを有する少なくとも1つの第2の対電極と
を備え、前記作用電極、前記第1の対電極および前記第2の対電極が独立にアドレス指定可能である
試験センサと、
前記第1の導体、前記第2の導体および前記第3の導体と電気的に連絡する試料インタフェースと、
コンピュータ可読記憶媒体と、プロセッサと、信号発生器とを含む測定装置であって、前記信号発生器が、前記センサインタフェースと電気的に連絡し、前記センサインタフェースが前記試料インタフェースと電気的に連絡する測定装置と
を備え、
前記プロセッサが、
前記信号発生器からの第1の電位の第1の入力信号を、前記少なくとも1つの作用電極および前記少なくとも1つの第1の対電極に印加し、
前記信号発生器からの第2の電位の第2の入力信号を、前記少なくとも1つの作用電極および前記少なくとも1つの第2の対電極に印加する
ように動作可能であり、
前記プロセッサが、
前記第1の入力信号に対する応答である、前記少なくとも1つの作用電極および前記少なくとも1つの第1の対電極からの第1の出力信号を測定し、
前記第2の入力信号に対する応答である、前記少なくとも1つの作用電極および前記少なくとも1つの第2の対電極からの第2の出力信号を測定する
ように動作可能であり、
前記プロセッサが、前記第1の出力信号および前記第2の出力信号を分析するように動作可能であり、
前記プロセッサが、
前記第1の入力信号の前記電位にある前記リザーバ内に配置された生体試料中の少なくとも1つの第1の測定可能種の第1の濃度を決定し、
前記第2の入力信号の前記電位にある前記リザーバ内に配置された前記生体試料中の少なくとも1つの第2の測定可能種の第2の濃度を決定する
ように動作可能であり、かつ
前記プロセッサが、前記第1の濃度と前記第2の濃度の少なくとも一方を、前記リザーバ内に配置された前記生体試料中の前記分析物の濃度に変換するように動作可能である、
分析物バイオセンサシステム。
【請求項57】
前記リザーバがさらに、実質的に化学的に隔離された第3の2次分析領域と、第4の導体および第3の酸化還元種を含む少なくとも第3の対電極とを備え、前記第3の対電極が独立にアドレス指定可能であり、前記第4の導体が前記試料インタフェースと電気的に連絡し、
前記プロセッサが、
前記信号発生器からの第3の電位の第3の入力信号を、前記少なくとも1つの作用電極および前記第3の対電極に印加する
ように動作可能であり、
前記プロセッサが、
前記第3の入力信号に対する応答である、前記少なくとも1つの作用電極および前記第3の対電極からの第3の出力信号を測定する
ように動作可能であり、
前記プロセッサが、前記第3の出力信号を分析して、前記試料中の少なくとも第3の測定可能種の濃度を決定するように動作可能であり、
前記プロセッサが、前記第3の入力信号の前記電位において、前記リザーバ内に配置された前記生体試料中の少なくとも1つの第3の測定可能種の第3の濃度を決定するように動作可能であり、かつ
前記プロセッサが、前記第1、前記第2および前記第3の濃度のうちの少なくとも1つの濃度を、前記リザーバ内に配置された前記生体試料中の前記分析物の前記濃度に変換するように動作可能である、
請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記プロセッサが、少なくとも1つの第1の測定可能種の前記第1の濃度を、前記リザーバ内に配置された前記生体試料中の前記分析物の前記濃度に変換するように動作可能であり、
前記プロセッサが、前記少なくとも1つの第2の測定可能種の前記第2の濃度を用いて、
前記生体試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度値と、
前記プロセッサが、前記生体試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度値を決定する相関式と
の少なくとも一方を変更するように動作可能である、
請求項56または57に記載のシステム。
【請求項59】
前記プロセッサが、前記第1の測定可能種の前記第1の濃度を、前記リザーバ内に配置された前記生体試料中の前記分析物の前記濃度に変換するように動作可能であり、かつ
前記プロセッサが、前記少なくとも1つの第3の測定可能種の前記第3の濃度を用いて、
前記生体試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度値と、
前記プロセッサが、前記生体試料中の前記少なくとも1つの分析物の濃度値を決定する相関式と
の少なくとも一方を変更するように動作可能である、
請求項57に記載のシステム。
【請求項60】
本明細書に開示された全ての新規の特徴の各々。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−540934(P2010−540934A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527096(P2010−527096)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/077434
【国際公開番号】WO2009/042631
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)