説明

夜間低血糖症の治療にて用いるためのテルブタリンなどのベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニスト

本願発明は、対象の起床時における高血糖症の発生を減少させる一方で、該対象の夜間低血糖症を治療するための、硫酸テルブタリンなどのベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを利用する、方法、治療計画および剤形に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は夜間低血糖症を治療するための組成物、治療計画および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低血糖症は多くの原因より発症し、どの年齢でも起こりうる。中程度および重度の最も一般的な形態の低血糖症が、インスリンまたは特定の経口薬を用いる真性糖尿病の治療の合併症として生じる。
【0003】
低血糖症は糖尿病の血糖管理における制限因子である。糖尿病患者はインスリンまたは他の薬剤を服用しているため、該患者は低血糖症を発症する。糖尿病の管理において対象がインスリンまたは他の薬剤を使用することにより低血糖症を惹起するため、その症状は医原性低血糖症と言われることもある。低血糖症は、I型糖尿病患者の大部分にて、およびII型糖尿病患者の多くにて再発的な病的状態を引き起こす。
【0004】
低血糖症は糖尿病の人では共通するのに対して、それは糖尿病またはその治療と関連付けられない原因からも起こりうる。他の型の低血糖症は、食事をした約4時間後に生じうる食後低血糖症;ダンピング症候群の結果として起こる、および胃を手術した患者にて生じる食事性低血糖症;ホルモン欠如により引き起こされるホルモン性低血糖症、すなわち甲状腺機能低下症;ヘリコバクター・ピロリ誘発の胃炎により惹起される低血糖症;ガラクトース血症、遺伝性フルクトース不耐症などの先天性酵素欠損により惹起される低血糖症;突発性反応性低血糖症;および後期低血糖症(膵臓B細胞からの初期インスリンの放出の遅れにより特徴付けられる潜在性糖尿病)を包含する。
【0005】
低血糖症は血中グルコース濃度が通常レベルよりも低いことで生じる症状に対する医学用語である。一のグルコース値それだけを用いてすべての人の症状および目的を定めることはできず、低血糖症として定めるのに十分に低いと考えられるレベルは、測定方法、対象年齢、効果の有無などの種々の要因に依存するであろう。健康な人では、所定の24時間で、グルコース濃度は一般に70−150mg/dlの範囲内で維持される。集団、治療目的または環境が異なる場合に違う値(典型的には、40、50、60または70mg/dl未満)が下限として定義されるが、通常、60または70mg/dlが正常なグルコースの下限であると考えられる。
【0006】
糖尿病は、消化の間に、グルコースに変換される糖および澱粉を体が使用する様式に悪影響を及ぼす。膵臓により産生されるホルモン、インスリンは、グルコースをエネルギーとして細胞で利用できるようにする。筋肉、脂肪および結合組織にて、インスリンは、細胞膜で作用することでグルコースの細胞へのエントリーを容易にする。インスリンの本当の作用は炭水化物、蛋白および脂肪の貯蔵および使用を促進することである。インスリン欠損はヒトで日常的かつ重大な病態である。I型糖尿病では、膵臓はインスリンをほとんどまたは全く産生せず、糖尿病患者の生存には、インスリンが毎日注射されなければならない。II型糖尿病では、膵臓はインスリンを産生するが、インスリンの量は不十分であるか、または細胞耐性のため十分に効果的である量よりも少なく、あるいはその両方である。
【0007】
低血糖症の徴候は多種多様であり、その症状の重篤度および他の要因に依存するであろう。徴候は、震え、不安、緊張感、振戦、動悸、頻脈、発汗、熱感、蒼白、冷感、湿感、瞳孔散大(散瞳)、指の無感覚(錯覚感)、空腹感、吐き気、嘔吐、腹部不快感、頭痛、異常な知的活動、判断力の低下、非特異的不快、不安、イライラ感、鬱、号泣、拒絶症、易刺激、好戦、闘争、激怒、人格変化、情緒不安定、疲れ、衰弱、無気力、倦怠感、空想、困惑、健忘、眩暈、幻覚、凝視、「生気のない」表情、ぼけ視、複視、発話困難、不明瞭な発話、運動失調、協調不足、局所性または全身性運動障害、まひ、片側不全まひ、知覚まひ、昏睡、異常呼吸、および全般性局所発作を包含する。
【0008】
上記した徴候のすべてがすべて低血糖症の場合に現れるわけではない。仮に徴候が現れたとしても、その出現に一貫した順序はない。具体的な徴候は年齢、低血糖症の重篤度および衰えの速度によっても変化しうる。
【0009】
低血糖症は、一般に、デキストロースまたはすばやくグルコースに消化される食べ物を摂取することでごく簡単に処置される。しかしながら、糖尿病を患っている患者がよく直面する問題が、血中グルコース濃度が夜間に低下すること、すなわち夜間低血糖症である。軽度の場合、これは朝方に眩暈または場合によっては嘔吐をもたらすにすぎない。しかしながら、時に、血中グルコース濃度は、夜間にまたは早朝に、低血糖状態が昏睡または痙攣をもたらす程度に深刻なほど低下する。重要なことは、患者が低血糖状態の始まりを感じ、炭水化物、例えば、ショ糖または糖尿病患者のために市販されている特定のグルコース錠、エネルギーゲルまたはバーを摂取することで低血糖を防止しうる日中よりも、患者が睡眠している夜に、重度の低血糖症を発症する可能性が高いことである。さらには、軽度および重度の低血糖症では共に、患者は低血糖症無自覚として知られる状態になり易く、それは、結局は、血中グルコース濃度の低下を示す典型的な警告としての徴候、例えば空腹、発汗あるいは上記した他の徴候が希釈化されるため、低血糖症がより頻繁に、日中のいかなる時でも生じ得ることを意味する。
【0010】
夜間低血糖症は、食事の間隔が最も長い、および血中グルコースを自己モニター観察する間が最も長い時間に起こるため、特に、深刻である。
【0011】
現在の治療法は限定されており、一部においてのみ効果的である。その方法は就寝時にコーンスターチを含むスナックを摂取し、グルコースを一晩中より持続的に外因的にデリバリーすることを包含する。夕食の際の炭水化物の消化を遅らせるためのアルファ−グリコシダーゼ阻害剤の投与、または皮下、筋肉内または経鼻的に投与されるグルカゴンは、グリコーゲン分解を活性化し、グルコース新生をある程度まで活性化し、グルコース産生を増加させる。
【0012】
内因的なグルコース産生を持続する現在の方法では正常な血糖値が2時間未満で得られるに過ぎない。投与されたグルカゴンは60ないし120分間存在するだけで、II型糖尿病患者においては、内因的インスリン分泌を刺激しうるため、回避されるべきである。これらの方法は睡眠の早い時間での低血糖症の発症を防止する助けとなるが、睡眠時間全体にわたってこの症状を治療するには相対的に効果的ではない。
【0013】
最近の研究は、インスリン治療が行われている真性糖尿病患者において、夜間低血糖症を制御する手段として経口テルブタリンを用いる可能性を検討している。
【0014】
テルブタリンは、硫酸塩の形態にて、2.5mg(遊離塩基として2.05mg)および5mg(遊離塩基として4.1mg)にて利用可能である。慢性閉塞性肺疾患に付随する気管支痙攣の緩和について、気管支炎および肺気腫に付随する喘息および可逆性気管支痙攣の12歳以上の患者での気管支痙攣の防止および好転について、および早期陣痛の管理について指示されている。テルブタリンはベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストと称される一のクラスの物質のメンバーである。該クラスの代表的な他のメンバーとして、サルブタモール(米国でのアルブテロール)、ビトルテロール・メシレート、ホルモテロール、イソプレナリン、レバルブテロール、メタプロテレノール、サルメテロール、ドブタミン、ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびリトドリンが挙げられる。
【0015】
The Journal of Endocrinology and Metabolism 91(6): 2087-2092 2006にて報告されている実験において、5mgの硫酸テルブタリン錠(「Brethine」、ノバルティス、即効性剤形)を、I型糖尿病の患者にて、夜間低血糖症の推定治療薬として研究した。該錠剤を他の一般的な処置、例えばスナック処置等を行うことなく投与した。該錠剤は睡眠時間全体にわたって夜間低血糖症を防止するのに対して、残念ながら、起床の際に対象は高血糖症を発症すると結論付けられた。心拍数および血中乳酸濃度も上昇させた。
【0016】
その後のDiabetes Care Vol 31, No. 12 , 2271-2272 December 2008にて報告されている研究は、同じような速効錠であるが、低用量(2.5mg「Brethine」ノバルティス)の錠剤を検討した。低用量の効果は低血糖症に対するインパクトとして用量に比例した効果を示唆し、5mg用量と全く含まれない間の中間にあった。しかしながら、低用量が起床時の対象にて高血糖症を防止するかどうかについて、研究者はその実験から確認できなかった。
【0017】
夜間低血糖症の潜在的療法としての硫酸テルブタリンの使用は未だに明らかではない。就寝時に投与されたより多量の5mg用量の即時放出性形態では、起床時に対象にて高血糖症を惹起した。しかしながら、これら高血糖症を治療しようとする試みに置いて、同じ即時放出性剤形の投与量を下げても低血糖症の治療における有効性が減少するだけで、最終的に起床時の朝方の高血糖症が回避され得ることを明らかにしていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
残念なことに、現在、睡眠周期にわたって夜間低血糖症の発症を防止するのに利用可能な薬理学的治療法はない。そのようなものとして、この状態を処理し、同時に起床時に対象にて高血糖症を発症させない、治療法を提供することに対する要求が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者らは、硫酸テルブタリンまたは他のベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストの修飾放出製剤が夜間低血糖症の治療にて有用であり、さらに報告されている副作用を克服し、夜間でさらに顕著な正常な血糖作用をもたらし、起床時の高血糖症を回避しうることを見出した。かかる治療法の利点は、その原因が何であってもよい夜間低血糖症を治療するのに有用であるが、特に低血糖症を再発する問題を抱えており、深刻な安全性リスクを示す、I型およびII型糖尿病患者に有用であるのは明らかである。また、インスリン処理の糖尿病のより大きな集団について、低血糖症の危険を拡大することなく、さらに積極的に血中グルコースを制御するのに有用である。より積極的なグルコース制御療法は、通常、食事の前後で血糖値が特定の範囲内に維持されるように具体的な目標を定め、3ヶ月毎に約7%未満のヘモグロビンA1c(3ヶ月の期間にわたって平均グルコースを測定する試験)が達成されるようにすることを含む。グルコース制御療法は、インスリンの頻繁な注射、食生活の緊密なモニターリング、定期的な使用および頻繁な血糖試験を必要とする。
【0020】
本願発明は、朝起床時の高血糖症および/またはグルコース制御の悪化などの副作用を引き起こすことなく、あるいは最小限とし、患者にて夜間低血糖症の治療を提供する剤形、計画および方法を提供する。
【0021】
本願発明の第一の態様において、硫酸テルブタリンを含有する修飾放出性経口剤形で夜間低血糖症を治療し、同時に起床の際の対象における高血糖症の発生を防止または減少させる方法が提供される。
【0022】
本願発明のもう一つ別の態様において、硫酸テルブタリンを含有する経口剤形を用いて夜間低血糖症を治療する方法であって、ヒト対象の群で試験した場合に、該経口剤形がその投与した1時間と6時間の間に平均ピーク血漿中濃度(Cmax)に至る時間(Tmax)を付与する、方法が提供される。
【0023】
本願発明のもう一つ別の態様において、硫酸テルブタリンを含有する経口剤形を用いて夜間低血糖症を治療する方法であって、ヒト対象の群で試験した場合に、5mgの用量で、約3−9ng/mlの、そのテルブタリンの平均ピーク血漿中濃度(Cmax)を、および約14−68時間・ng/mlの平均AUC0−48を達成する、方法が提供される。
【0024】
硫酸テルブタリンが経口剤形にて利用されるが、硫酸テルブタリンの活性成分は実際には遊離塩基のテルブタリンである。硫酸テルブタリンまたは他のベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストに関連して用いられる「活性成分」なる語は、経口剤形に充填される形態のベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストそのものを意味し、これが医薬上活性な成分であるか、あるいは該剤形にて投与されるベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストが変換される、例えばインビボにて代謝される場合には、この活性な成分または代謝産物にも言及する。
【0025】
経口硫酸テルブタリンは、AUCおよびCmaxについて、実質的な用量比例性を示す。例えば、2.5mg用量の硫酸テルブタリンは、約7−34時間・ng/mlの平均AUC0−48を提供するであろう。さらには、実質的な用量比例性があるため、上記した数値から外挿法または内挿法により他の用量についてのCmaxおよびAUCを当業者は得ることができる。さらなる例として、1.0mgの用量の硫酸テルブタリンは約3−14時間・ng/mlの平均AUC0−48を提供するであろう。0.1mgの用量の硫酸テルブタリンは約0.3−1.4時間・ng/mlの平均AUC0−48を提供するであろう。
【0026】
薬物動態パラメーター、Tmax、CmaxおよびAUCは当該分野にて周知の用語である。Tmax、CmaxおよびAUCは薬物の血漿中濃度(Y軸)を時間(X軸)に対してプロットすることで得ることができる。Cmaxはこのプロットにて観察される最大値であり、Tmaxは観察されるCmaxに対する時間である。AUCは特定のサンプル点(ある場合には外挿される)までの曲線下の面積に相当し、薬物の所定の投与経路についての生物学的利用能を反映する。これらの値は典型的には平均値として測定される。
【0027】
これらの薬物動態パラメーターに関して本願明細書にて用いられる「平均」なる語は、患者母体(通常、少なくとも10の患者)の算術平均を示す。
【0028】
本願発明のもう一つ別の態様において、硫酸テルブタリン含有の経口剤形を用いて夜間低血糖を治療する方法であって、インビトロにおいて擬似腸液中で試験した場合、その経口剤形は、インビトロ溶解特性により定められた期間にわたって、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを放出する;すなわち、1または2時間後には、硫酸テルブタリンの用量の10%だけが放出され、6時間後には少なくとも80%が放出され、10時間後には少なくとも100%が放出される。
【0029】
子供および大人の睡眠パターンは実質的に区別しうる。子供は大人よりも早く就寝するのが一般的であり、その睡眠時間は大人よりも長い傾向にある。したがって、上記した放出特性は種々の患者母体に対して調整されてもよい。
【0030】
特に子供に適する特定の実施態様において、硫酸テルブタリンを含有する経口剤形を用いて夜間低血糖症を治療する方法であって、インビトロにおいて擬似腸液中で試験した場合、その経口剤形は、インビトロ溶解特性により定められた期間にわたって、硫酸テルブタリンを放出する;すなわち、1または2時間後には、硫酸テルブタリンの用量の10%だけが放出され、4時間後には少なくとも50%が放出され、8時間後には少なくとも80%が放出される。
【0031】
もう一つ別の実施態様において、硫酸テルブタリンを含有する経口剤形を用いて夜間低血糖症を治療する方法であって、インビトロにおいて擬似腸液中で試験した場合、その経口剤形は、インビトロ溶解特性により定められた期間にわたって、硫酸テルブタリンを放出する;すなわち、1または2時間後には、硫酸テルブタリンの用量の10%だけが放出され、4時間後には少なくとも80%が放出され、6時間後には少なくとも100%が放出される。
【0032】
擬似腸液(SIF)はpHが6.8の水性リン酸緩衝液である。この目的に適する擬似液体は、68.05gのリン酸二水素カリウムと、8.96gの水酸化ナトリウムとからなり、10リットルの脱イオン水に溶解されている。SIFの代わりとして、溶解媒体として精製水を用いてもよい。該インビトロ試験は、USP Apparatus IIに従って、100rpmでパドルを回転させて実施されてもよい。
【0033】
USPモノグラフは硫酸テルブタリンに対してUSP装置Iを提言する。しかし、該剤形は下部消化管で放出されることを意図とし、放出前の移動の間に相対的に高い機械ストレスに供されるであろうから、USP Apparatus IIが本願発明の目的にとって好ましい方法である。USPII装置は100rpmで特に大きな乱流力を創り出し、それはインビボでの経口剤形に対する力をより反映するものである。固定バスケットを用いてパドル下に位置する高乱流ゾーンに剤形を維持することができた。
【0034】
インビトロ溶解試験を実施するための操作は当該分野にて周知である。典型的には、溶解装置は、温度、回転および稼働時間を、37℃、100rpmおよび12時間にプログラムすることでセットされてもよい。900mlの溶媒媒体を該溶解装置の6個の容器に入れる。該装置を組み立て、溶解媒体を37℃で平衡化し、温度計を取り外す。1個の単位剤形を6個の各容器に入れる。100rpmの速度で12時間のパドルの回転を開始する。各6個の容器から所望の間隔で、アリコート(各6ml)を取り出し、等容量の新たな溶解媒体と連続して置き換える。
【0035】
溶解した硫酸テルブタリンの量は、通常、HPLCにより測定され得る。検出は235nmの波長でのUV吸収により実施され得る。定量は、HPLCピーク高(または面積)を、既知の濃度の標体について濃度対ピーク高(または面積)の標準プロットから得られたピーク高(または面積)と比較することで行われうる。
【0036】
0.45μmの膜フィルターを介して濾過した後に試験製剤は別々にクロマトグラフィーに注射される。クロマトグラムを記録し、試験ピークのピーク応答を面積について標体と比較する。ついで、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストの放出量がパーセント(%)で算定され得る。
【0037】
本願発明のもう一つ別の態様において、硫酸テルブタリンを含有する修飾放出剤形を用いる夜間低血糖症の治療法であって、就寝時の前に一日に一回0.1−10mgの硫酸テルブタリンを対象に投与する投与計画に従って、経口剤形が経口投与に適合される方法が提供される。
【0038】
上記した投与計画に関連する場合の「就寝時」なる語は、対象が床につく直前の時間を意味する。この時間は対象で一定ではなく、実質的に子供の睡眠習慣と大人の習慣とを比べた場合、異なってもよい。より詳細には、就寝時は午後約7時から真夜中の間であり、さらにより詳細には、子供では午後約7時ないし午後約9時の間で、大人では午後10時と真夜中の間である。
【0039】
本願発明のもう一つ別の態様において、硫酸テルブタリンを含有する修飾放出剤形を用いる夜間低血糖症の治療法であって、就寝時の前に、および食事と共にあるいは食後に、0.1−10mgの用量の硫酸テルブタリンを服用する投与計画に従って、経口投与に適合される方法が提供される。
【0040】
好ましくは食べ物と一緒ではなく、より好ましくは食べ物を摂取する少なくとも15分前に剤形を服用し、薬物の生物学的利用能に悪影響を及ぼしうる、食品の存在下での薬物の放出を出来るだけ防止する。この方法での投与は、薬物の全身アベイラビリティの低下、遅延または上昇をもたらしうる、食品−薬物の相互作用を回避することが可能である。この食品−薬物の相互作用は、「食品作用」と称されることも多い。食品作用を示さない薬品はCmax、TmaxまたはAUCが異ならない薬品であるか、または当該分野にて一般に既知のFDAなどの保健機関により許容される範囲内で違いがあるにすぎない。
【0041】
本願発明のもう一つ別の態様において、硫酸テルブタリンを含有する経口剤形を用いる夜間低血糖症の治療法であって、該剤形が、治療を必要とする対象に投与されると、少なくとも1時間、より具体的には2時間のラグタイムの後に、硫酸テルブタリンを放出し、そのタイムラグの間に、硫酸テルブタリンが全く、あるいは実質的に放出されない、方法が提供される。
【0042】
本願明細書に記載の方法は夜間低血糖症の治療に有用であるが、その症状はいずれの患者でも惹起される。特に、本願明細書に記載の方法は、I型またはII型糖尿病が治療されるべき患者にて夜間低血糖症を治療するのに有用である。その上さらに、反応性低血糖症(食後2ないし3時間内の低血糖症)、空腹時低血糖症(胃を空にした状態での低血糖症)、経口糖尿病薬、ベータ−ブロッカーまたは他の薬物の相互作用により引き起こされる低血糖症、インスリン分泌膵臓腫瘍により引き起こされる低血糖症、アルコール誘発性低血糖症、食物低血糖症(インスリン応答の増大に伴う腔腸の迅速な排泄)、胃切除術後の低血糖症、腫瘍低血糖症、ホルモン低血糖症(例えば、後天性副腎不全または後天性下垂体機能低下症)、免疫病理学的低血糖症、またはガラクトース血症および遺伝性フルクトース不耐症などの先天性酵素機能不全により引き起こされる低血糖症を包含する。
【0043】
本願明細書に記載の方法は、糖尿病を治療するのに服用しているか、あるいはそうでない、その病因が他の薬剤の使用である、夜間低血糖症の治療に有用である。かかる薬剤の例が、限定されるものではないが、インスリンあるいは経口高血糖症薬を含む他の抗糖尿病剤、エタノール、ベータブロッカー、例えばプロプラノロール、サリチレート、アセトアミノフェン、アセタゾールアミド、水酸化アルミニウム、クロロキン、クロルプロマジン、シメチジン、ラニチジン、ジフェンヒドラミン、プロポキシフェン、ジイソピラミド、ドキセピン、イソクスプリン、インスリン様成長因子1、リドカイン、リチウム、ペンタミジン、プロプラノロール、ナドロール、ラベタロール、メトプロロール、オルフェナドリン、オキシテロラサイクリン、キニン、キニジン、ペルヘキシリン、リトドリン、ハロペリドール、キレート剤、コルヒチン、パラアミノ安息香酸、パラアミノサリチル酸、グルココルチコイド療法の間に投与されるコレスチルアミン(吸収を減少させる)、上記した糖尿病にてグルコースを低下させる薬物、エナラプリルおよびカプトプリル、クマリン、フェニルブタゾン、アンチヒスタミン、サルファ系抗生物質、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、アザプロパゾン、ブフルミン、カルブタミド、シベンゾリン、シクロヘプトアミド、グリボルヌリド、グリクラジド、メバナジン、メタヘキサミド、ペルヘキシリン、スルファジミジンおよびスルファフェナゾールを包含する。
【0044】
本願発明の目的には、上記した医薬が「第一の医薬」であると考えられる。
【0045】
本願発明のもう一つ別の態様において、その必要とする患者の夜間低血糖症を治療する方法であって、(a)該患者が一または複数の第一の医薬での治療を受けているがどうかを決定し、(b)硫酸テルブタリンを含む経口剤形を、その患者の一または複数の第一の医薬での治療に基づいて、該患者に投与することを含む方法が提供される。
【0046】
第一の医薬は糖尿病の治療に用いられる医薬とすることができ、その場合、硫酸テルブタリンはこの第一の医薬に対する補助治療薬として用いられてもよく、あるいは第一の医薬が糖尿病以外の症状の治療に投与され得る。
【0047】
本願発明のさらにもう一つ別の態様において、上記した方法は、1または複数の第一の医薬について対象に通知するか、または該1または複数の第一の医薬に使用に関する用量を通知する、パッケージングまたはラベリングを含む、キット中の剤形を使用する。
【0048】
本願発明はまた、上記した方法にて用いるための当該明細書に記載の剤形をさらなる態様として提供する。
【0049】
その上さらなる態様において、本願発明は上記した方法での当該明細書に記載の剤形の使用を提供する。
【0050】
その上さらに、本願発明は上記した夜間低血糖症の治療法で用いるための本願明細書に記載の剤形の製造における硫酸テルブタリンの使用を提供する。
【0051】
当該明細書に記載の態様は、本願発明だけの態様として単独で解釈されてもよく、あるいは他と組み合わせて解釈され、本願発明のさらなる特定の態様を形成してもよい。
【0052】
本願発明にて利用される剤形は、放出特性の修飾に従って硫酸テルブタリンを放出するように適合される。放出修飾の剤形とは、経時変化および/または場所の薬物放出特性が通常の即時放出剤形により提供されない治療的または利便的目的を達成するのに選択される、剤形としてUSPにより定義されている。
【0053】
特に、本願発明の剤形は、所定のラグタイムの間に硫酸テルブタリンがまったく放出されず、あるいは実質的に放出されず、その後で硫酸テルブタリンが放出されるように適合される。
【0054】
特定の実施態様において、該剤形は時間依存的に薬物を放出する;すなわち、薬物放出は、pHまたは温度の変化、あるいは酵素または食物条件などの該剤形を取り巻く生理学的環境の変化から独立している。
【0055】
ラグタイムは1ないし6時間、より具体的には2ないし3時間であってもよい。
【0056】
ラグタイムの間に、一の用量の硫酸テルブタリンは全くまたは実質的に放出されない。当該明細書に記載の薬物の剤形からの放出に関して、「全くまたは実質的に…ない」なる語は、薬物が放出されるとしても、その放出は、硫酸テルブタリンまたはその活性剤の治療的に有効な血漿中濃度が達成されないような、少量であることを意味する。特に、いくらかの用量が放出されようと、それは多くて約10%に、さらには多くて約5%に、さらに言えば多くて約1%にすぎない。
【0057】
ラグタイムを終えると、薬物は剤形から放出され始める。薬物は例えば迅速に放出されても、または一定期間にわたってゆっくりと放出されてもよく(制御放出)、あるいは迅速な放出の後に、遅延放出されるか、遅延放出の後に迅速に放出されるように、二元的に放出されてもよい。
【0058】
本願発明は経口剤形に含有される薬物として硫酸テルブタリンについて記載される。しかしながら、硫酸テルブタリンはベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストの種類の一の構成員であり、サルブタモール(USにおけるアルブテロール)、ビトルテロール・メシレート、ホルモテロール、イソプレナリン、レバルブテロール、メタプロテレノール、サルメテロール、ドブタミン、ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびリトドリンを含む、この薬物の種類の他の構成員も本願発明にて用いられてもよい。
【0059】
これら他のベータ−2−アドレナリン作動性受容体アゴニストが本願発明にて使用される場合の用量は、使用される個々の化合物、対象の条件、治療される病態の特性および重度に大きく依存するであろう。典型的には、約0.1ないし500mgの経口剤形にて使用されるであろう。
【0060】
ラグタイム後に医薬剤形を放出するのに適合される剤形の例は当該分野にて知られている。それらは関節炎、高血圧および喘息などの朝方の症状、疾患または病気、患者が睡眠から目覚める朝方にて一般的に急性である徴候の治療に使用するものとして提案される。これらの剤形は、就寝前に服用でき、起床の際に生じる徴候を防止するため、潜在的に極めて便利である。この型の薬理学的介入がない場合、患者はいつもの起床時間の前に通常の剤形を服用するためにその睡眠が妨げられるか、または薬物を服用せず、朝方の徴候を我慢するかのいずれかを強いられるであろう。
【0061】
夜間低血糖症は、このような朝方の症状、疾患または病気ではない。それは患者が寝ている間に起こる症状である。それは実質的に死亡および罹患を伴う症状であり、適切に認識し、診断し、治療することが重要である。ある環境で、その徴候が患者に気付かれないと、該患者は該徴候の進行に気付かず、制御されないままである。そのような場合、治療の有効性またはその欠如は、患者が眠りから醒めた際に一度測定され得るだけで、該徴候を防止するには遅すぎ、かつ重度の場合には、急性徴候を治療するのに緊急治療が求められる。
【0062】
本願発明にて有用な剤形は経口投与用に適合され、当該分野にて慣用されているいずれの形態であってもよい。すなわち、該剤形は錠剤、カプセル、サッシェまたはカプセル化形態に入れる複数の微粒子、シロップ等の形態であってもよい。
【0063】
本願発明の剤形は、ラグタイムを経過した後、放出速度特性が即時放出から制御放出に、あるいは即時放出と制御放出の混合特性に変化してもよい。放出は持続型であってもパルス型であってもよい。
【0064】
賦形剤は経口剤形にて利用され、該剤形のバルク特性を最適化し、所望の放出性に影響を与える。これらの賦形剤は、典型的には、多量に製剤に添加されて所望の大きさの製剤が調製されるようにし、製剤における粒子を付着させ易くして剤形の一体性を維持する希釈剤または充填剤;摂取した後の剤形の分解を容易にし、成分をより容易に利用できるようにする崩壊剤または崩壊物質;例えば、錠剤化材料の錠剤用ダイへの流動を強化し、製剤の錠剤製造機との粘着を防止する粘着防止剤、流動促進剤または滑沢剤;および着色剤および矯味矯臭剤などの各種アジュバントを包含する。
【0065】
適当な希釈剤は、微結晶セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム、単糖類、および/または上記した材料の混合物などの医薬上許容される不活性な充填剤を包含する。
希釈剤の例として、アビセル(Avicel)グレード、PH101、PH102、PH112、PH113、PH200、PH300、PH301、PHxxx HFE、PHxxx CEなどの微結晶セルロース;ラクトース一水和物、無水ラクトースおよびファルマトーゼ(Pharmatose)DCL 21などのラクトース;エムコムプレス(Emcompress)などの二塩基性リン酸カルシウム;マンニトール;澱粉;ソルビトール;フルクトース;シュークロース;およびグルコースが挙げられる。製剤の特定の要求に合致するように希釈剤は注意して選択される。希釈剤は、剤形の、好ましくは10重量%−90重量%、特には50重量%の量で使用される。
【0066】
適当な流動促進剤および滑沢剤は、圧縮される粉末の流動性に作用する活剤を含め、例えば、アビセル200、カーボジルなどのコロイド状二酸化ケイ素;タルク;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコールおよびラウリル硫酸ナトリウムである。滑沢剤は、好ましくは、剤形の0.5−2重量%、特に1重量%の量で用いられる。
【0067】
適当な結合剤は、PEG6000などのポリエチレングリコール;セトステアリルアルコール;セチルアルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンステアラート;ポロキサマー;ロウ、アルギン酸およびその塩;HPC;HPMC;メチルセルロース;マルトデキストリンおよびデキストリン;ポビドン;ガム;澱粉および修飾澱粉を包含する。結合剤は、剤形の、好ましくは2−10重量%、より好ましくは5重量%の量で使用されてもよい。
【0068】
適当な崩壊剤は、エクスプロタブ(Explotab)などの澱粉グリコール酸ナトリウム、コリドン(Kolidon)CLなどのクロスポビドン、ポリプラスドンXL、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、AcDiSolなどのナトリウムクロスカルメロース、および澱粉を包含する。崩壊剤は、好ましくは、剤形の2−10重量%、より具体的には5重量%の量で用いられ得る。
【0069】
一の用量のベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストの即時破裂が、ラグタイムの満了後に要求されるならば、該剤形は界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、モノグリセリン酸ナトリウム、モノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノ酪酸グリセリル、界面活性ポリマーのプルロニックライン(Pluronic line)の一つ、または界面活性を有する他の適当な物質、あるいは上記した物質の組み合わせを含んでもよい。
【0070】
界面活性剤は0.1−10重量%の量で剤形中に配合されてもよい。
使用される賦形剤は合計で10−99.99重量%の量で剤形中に配合されてもよい。
【0071】
経口剤形を処方するのに用いることのできる、医薬上許容される担体および賦形剤の付加的な例が、the Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Associationに記載されている。
【0072】
本願発明の剤形に関連する「制御放出」なる語は、特定の時間内に一の用量のベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを放出するように適合されている相を含み、通常の即時放出相を用いることで達成され得ない治療目的を果たす、剤形またはその一部に言及する。
【0073】
制御放出相またはマトリックスは、上記した賦形剤のいずれかを既に記載の量で含有してもよい。しかしながら、該制御放出相は、付加的に、放出速度制御物質(複数も可)を含有すべきである。
【0074】
「放出速度制御物質」なる語は、通常の即時放出製剤では可能でない治療作用を得るのに、持続時間の観点から、単独で、または所望により他の賦形剤と組み合わせて、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストの放出速度を制御する物質(複数も可)を包含し、親水性ポリマー、疎水性ポリマーまたはその混合物、またはそのコポリマー、あるいはこれらポリマーおよびコポリマーの混合物を包含する。
【0075】
放出制御物質は、その中にベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストが溶解または分散されているマトリックス中に配合されていてもよい。また別に、放出制御物質はベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを含有するマトリックスを覆う層またはコーティング中に配合されていてもよい。その上さらに、マトリックスおよび被膜に用いられてもよい。放出制御物質が層または被膜に配合されている場合、該マトリックスも放出制御物質を含有してもよく、また即時放出用に適合されてもよく、あるいはその両方が混合したものであってもよい。
【0076】
適当なマトリックスおよび/またはコーティング材料を選択することで、ラグタイムを正確に制御するだけでなく、ラグタイムの終了後に、すべての、または実質的にすべての用量のベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを所望の速度で放出させ、所望の治療作用を得ることができる。
【0077】
本願発明にて使用される放出速度制御物質の例として、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリ(エチレン)オキシド;エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース;親水性セルロース誘導体;ポリエチレングリコール;酢酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;酢酸フタル酸セルロース;酢酸トリメリト酸セルロース;フタル酸酢酸ポリビニル;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリ(メタクリル酸アルキル);およびポリ(酢酸ビニル)が挙げられる。他の適当な疎水性歩チマーとして、アクリル酸またはメタクリル酸エステルより誘導されるポリマーまたはコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのコポリマー、ゼイン、ロウ、セラックおよび硬化植物油が挙げられる。
【0078】
放出速度制御物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリ(酸化エチレン)、エチルセルロースまたはその組み合わせを包含し、特に剤形の重量に基づいて5−90%の量で存在する。
【0079】
本願発明で使用される好ましい型のHPMCは登録商標メトセル(Methocel)(Dow Chemical Co.)の下で販売されているものである。適当なメトセルは、メトセルK 15M、メトセルK 100M、メトセルK 100LVおよびメトセルK 4MなどのKグレードを包含する。他の適当なメトセルは、E、FおよびJグレードを包含する。
【0080】
HPCとして、登録商標クルセル(Klucel)(Hercules, Inc.)の下で販売されているものまたはその均等物が利用され得る。適当なクルセルは、クルセルLF、クルセルJF、クルセルGF、クルセルMFおよびクルセルHFを包含する。
【0081】
ポリ(酸化エチレン)として、登録商標セントリー・ポリオックス(Sentry Polyox)(Union Carbide Corp.)の下で販売されているもの又はその均等物に言及されてもよい。適当なポリオックスは、ポリオックスWSRコアグラント(Coagulant)、ポリオックスWSR−301、ポリオックスWSR−303、ポリオックスWSR N−12K、ポリオックスWSR N−60K、ポリオックスWSR−1105、ポリオックスWSR−205およびポリオックスWSR N−3000などのポリオックスWSRグレードを包含する。
【0082】
本願発明にて使用されるエチルセルロースとして、登録商標エトセル(Ethocel)(Dow Chemical Co.)の下で販売されているものまたはその均等物に言及することができる。
【0083】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは約5−100000mPa.s、好ましくは4000−100000mPa.sの粘度(2重量%溶液、20℃)を有することが好ましい。メトセルK型またはその均等物が特に適している。本願発明に従って使用されるヒドロキシプロピルセルロースは約80000−1150000、より好ましくは80000−600000の数平均分子量を有することが好ましい。
【0084】
ポリ(酸化エチレン)は約100000−7000000、より好ましくは900000−7000000の数平均分子量を有する。分子量が5000000のポリオックスWSRコアグラントが特に適している。本願発明に従って使用されるエチルセルロースは約3−10mPa.s、より好ましくは7−100mPa.sの粘度を有することが好ましい。
【0085】
制御放出マトリックスの一部を形成する材料または賦形剤のさらなる例が、この目的のために本願明細書の一部とする、Remingtons Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990, p. 1684-1685)に含まれている。
【0086】
剤形は、要求される特定の放出性を考慮して、いずれか適当な様式にて構成されていてもよい。例えば、該剤形は、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを即時放出マトリックスにて含有し、上記した即時放出相にて有用な材料または賦形剤を利用するモノリスであってもよく、あるいは該相が制御放出について適合されていてもよい。あるいはまた、該剤形は多層構造であってもよく、該層はサンドイッチ様に配置されていても、同心配置であってもよく、該層は即時放出で、または制御放出でベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを送達するように適合されていてもよい。その上さらに、コアは、その中に制御放出に適合した1または複数の別個の相が分散されている、即時放出マトリックを含んでもよい。さらにその上、該剤形は複数の粒子を含み、そのいくつかが即時放出に適合し、いくつかが制御放出に適合する形態であってもよい。当業者は剤形について多種多様な構成の可能性があり、その個々の構成が所望の放出性に依存することを認識するであろう。
【0087】
本願発明の剤形は、被覆されていない処方の剤形のラグタイムまたは放出速度に影響を及ぼさない被膜である、非機能性被膜(複数でも可)で被覆されていてもよい。かかる被膜は美的作用(例えば、魅力的な色または爽快な風味)または情報作用(例えば、患者による医薬の識別のために、該被膜は視覚的な指示として機能するように着色されていてもよい)を達成するために利用されるものを包含する。また、被膜は服用に関連する情報で過剰に書かれていてもよく、あるいは取り扱い作用、例えば、嚥下を容易にするための滑らかなコーティング、または安定性の作用、例えば貯蔵の間の防湿または遮光を発揮してもよい。
【0088】
上記した剤形の調製を容易にするために、本願発明は、さらなる態様において、該発明にて有用な剤形の製法を提供する。
【0089】
剤形は、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを1または複数の医薬上許容される賦形剤で処理し、得られた混合物を当該分野にて周知の技法を用いて所望の剤形に処方することで調製されてもよい。
【0090】
錠剤(圧縮および成型)、カプセル(ハードおよびソフトゼラチン)およびピルを製造する技法および組成もまた、この目的のためにその内容を本願明細書の一部とする、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Arthur Osol, 1553-93(1990)に記載されている。
【0091】
技法は溶融造粒法、湿式造粒法、乾式ブレンド法、乾式造粒法、共沈殿法、押出法および溶融押出法を包含する。
【0092】
剤形が錠剤の形態である場合、該錠剤は、直接圧縮、乾式造粒(スラグ注入、ローラー圧縮に付す)のいずれか、あるいは湿式造粒により調製され得る。湿式造粒法は水性または非水性のいずれであってもよい。非水性溶媒はエタノール、イソプロピルアルコール、アセトンまたは塩化メチレンからなる群より選択され得る。
【0093】
錠剤の形態の剤形は、金属製のパンチおよびダイを利用して粉末または顆粒に高圧を加える圧縮法により製造され得る。この方法においては、使用するパンチおよびダイの大きさおよび構造に応じて、多種多様な形状、大きさおよび表面の模様が形成され得る。工業的規模では、それらはロータリープレス、例えばManesty press、リバプール、英国、またはKorsch and Killian press、ベルリン、ドイツを用いて製造され得る。プレスは、一般に、約1000〜約5000kg/cmの圧力で操作される。
【0094】
乾式造粒(スラグ注入またはローラー圧縮により形成される)は、粉末を高圧で圧縮して大きな錠剤圧縮物とする操作を含む。顆粒はまた、粉末をチルソネーター(chilsonator)のローラー間で圧縮/押し込めて、薄型で高密度のリボンを形成することで製造されてもよい。ついで、これらの圧縮物をミル化し、スクリーニングに付し、所望の粒径の顆粒を形成する。
【0095】
湿式造粒法は当該分野で広く利用される技法であり、i)医薬成分および賦形剤を秤量してブレンドし;ii)その成分および賦形剤から湿った塊を調製し;その塊をペレットまたは顆粒にスクリーニングし;iv)該顆粒を乾燥させ;v)該顆粒をスクリーニングにより区分し;vi)適宜、滑沢剤を添加してブレンドし;vii)打錠する、工程を含む。
【0096】
組成物のコーティングが必要な場合、この操作は当該分野にて一般に知られたプレスコーティング、スプレーコーティング、パンコーティングまたは空気サスペンジョンコーティング技法等の通常のコーティング技法を用いて行われうる。上記した技法はすべて、この目的のために出典明示により本願明細書の一部とされる、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7章、第7版、1999(Lippincott Williams & Wilkins)に詳細に記載されている。
【0097】
記載のいずれの剤形も本願発明にて利用されてもよい。しかし、本願発明にて有用な特定の剤形は、コートされた錠剤、より具体的にはプレスコートされた錠剤の形態にて提供される。
【0098】
特定の剤形は、全量のベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを含有する単位剤形の形態であってもよく、あるいは複数のミニ錠剤または粒子からなり、それらが一緒になって全量のベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを含有するものであってもよい。ミニ錠剤または粒子はカプセルまたはサッシェなどの他の都合のよい形態に配合されてもよい。
【0099】
コートされた錠剤はベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを含有するコア、および該コアを囲む被膜を含む。
【0100】
ラグタイムの後に要求される特定の放出特性を考慮して、コアはいずれか適当な様式にて構成されていてもよい。例えば、該コアは、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを即時放出相にて含有し、上記したそれらの賦形剤を利用するモノリスであってもよく、あるいは該相が制御放出について適合されていてもよい。あるいはまた、該コアは多層構造であってもよく、該層はサンドイッチ様に配置されていても、同心配置であってもよく、該層は即時放出で、または制御放出で、あるいは即時および制御放出を連続した様式にて、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを送達するように適合されていてもよい。その上さらに、コアは、その中に制御放出に適合した1または複数の別個の相が分散されている、即時放出マトリックを含んでもよい。当業者はコアについて多種多様な構成の可能性があり、その個々の構成が所望の放出性に依存することを認識するであろう。
【0101】
ラグタイムが終了するまで、コアに含まれるベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストの放出に対する障壁を提供するように該被膜を適合させる。
【0102】
該被膜は1または複数の水不溶性または難溶性の疎水性賦形剤を含むことが好ましい。これらの賦形剤は、脂肪酸またはそのエステルまたは塩;長鎖脂肪アルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンステアラート;糖エステル;ラウリルマクロゴール−32グリセリル、ステアロイルマクロゴール−32グリセリル等より選択されることが好ましい。
【0103】
被膜に疎水性を付与する他の賦形剤は、錠剤用賦形剤として知られている油性材料より選択されてもよい。好ましくは、5未満のHLB値を有し、より好ましくは約2のHLB値を有する。適当な疎水性物質は、カルナバロウ、パラフィン、微結晶ワックス、蜜ロウ、セチルエステルロウ等などの油性材料;またはリン酸カルシウム塩、例えば二塩基性リン酸カルシウムなどの非油性疎水性材料を包含する。
【0104】
上記した材料を含む被膜は、生理的媒体の侵入に対する障壁として作用することでラグタイムを提供する。媒体が被膜を通り、コアに入ると、マトリックスは、例えば膨張、ゲル化または発泡化することで、水和かつ膨張し、それにより被膜が破壊されて、コアが曝露され、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストがコアから放出されることとなる。このように、被膜はラグタイムの終了後は放出速度に何ら、または実質的に影響を及ぼさない。好ましくは、被膜成分は、リン酸カルシウム塩、ベヘン酸グリセリルおよびポリビニルピロリドンまたはその混合物、および1または複数の上記したアジュバント、希釈剤、滑沢剤または充填剤を包含する。
【0105】
被膜の好ましい成分は、以下のように、一般に適する割合の量で、被膜の重量パーセントとして表される。
【0106】
ポリビニルピロリドン(ポビドン)は、被膜の好ましくは約1−25重量%の量で、より好ましくは4−12重量%、例えば6−8重量%の量で存在する。
【0107】
ベヘン酸グリセリルは、グリセロールとベヘン酸(C22脂肪酸)のエステルである。ベヘン酸グリセリルはそのモノ−、ジ−またはトリ−エステルの形態、またはその混合物として存在してもよい。好ましくは5未満の、より好ましくは約2のHLB値を有する。それは被膜の約5〜85重量%の、より具体的には10〜70重量%の量にて、有る好ましい実施態様においては30〜55重量%の量にて存在してもよい。
【0108】
リン酸カルシウム塩は二塩基性リン酸カルシウム・二水和物であってもよく、被膜の約10〜90重量%、好ましくは20〜80%、例えば40〜75%の量で存在してもよい。
【0109】
被膜は、上記した賦形剤などの、固形経口剤形を形成するのに一般に使用される、充填剤、結合剤等などの他の一般的な錠剤用賦形剤を含有してもよい。
【0110】
コアを囲む被膜厚はラグタイムに影響を及ぼし、選択されるコーティング材料の特性に応じて、その後の薬物の放出速度にも影響を及ぼしうる。
プレスコート化法は、被膜厚を制御するのに、したがってラグタイムを制御するのに特に有効な手段である。
【0111】
プレスコート化法は、コーティング重量、ダイの直径およびコアの大きさを調節し、剤形上の選択された部位の正確に規定された最小被膜厚を達成しうる手段として特に有利である。生理的媒体がその選択された部位で被膜を通って侵入することで、該媒体がコアに達して水和する時間が決定され、ラグタイムはこの方法で調節されてもよい。
【0112】
剤形の圧縮方向に対して直交する面の被膜厚は、ラグタイムを、この面で被膜が優先的に生理的媒体により侵入され、かつ錠剤がいずれは崩壊することで測定し、その後でコアの含有物が放出されるように注意して選択される。
【0113】
装置はこの面のコアの厚みに影響を及ぼし、それによりラグタイムを調節することが可能である。被膜厚はこの面において同じまたは実質的に同じであることが重要である。
【0114】
この面の被膜厚は約0.5〜5mm、より具体的には1〜3mmである。
【0115】
プレスコートされた剤形は、一般に、コーティング材料の粉末の一部をダイに入れ、該粉末をパンチを用いてコンパクトな形態に押さえつけることで形成される。ついで、予備成形されたコアを圧縮されたコーティング材料の上にのせ、残りのコーティング材料をダイに入れ、圧縮力を加えて被覆された剤形を形成する。コアを押さえつけられたコーティング材料の上に確実に置き、被膜厚が直交面について均一であるように、それを正確に位置付けるために、コアをダイにてコーティング材料に関連して位置付けるための手段を用いることが好ましい。典型的には、かかる手段はピン型パンチまたはダブル式パンチで提供され得る。ピン型パンチは、コーティング材料と接触して、押しつけられるコーティング材料に小さな窪みまたはへこみを残す、凸面を有するパンチである。このように、コアが、ダイ中で、押しつけられた材料上に置かれると、そのコアは窪みまたはへこみに位置し、その正確な形状が確実に最終剤形に担保される。
【0116】
一の実施態様において、ピン型またはダブル式パンチにより形成されるカップを薬物含有のブレンドで充填し、その後でプレスコートされた錠剤が形成される。
コーティング材料を選択する場合、膨潤またはゲル化する材料を用いないことが好ましい。かかる材料の典型例は、セルロースエステルまたはヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシアルキルセルロース等などのセルロース誘導体である。かかる材料は、侵食可能な障壁を形成し、薬物がそこを通って拡散しうることで、放出制御作用を発揮する、ゲルを形成する傾向にある。そのような材料はラグタイムを信頼できなくする傾向にあり、放出制御作用を発揮する量の使用は避けるべきである。その放出制御性は、通常、約10%以上の量で使用されると明らかである。したがって、上記した材料をコーティング材料として用いる場合は、少量で、例えば10%未満で、より具体的には5%未満で、さらにより具体的には1%未満でのみ使用されるべきである。
【0117】
上記した剤形は、美的作用を目的として(例、着色剤を含む)、安定性を目的として(例、湿気障壁材で被覆する)、味マスキングを目的として、または例えば、腸溶性コーティングのように活性な媒体から不安定な薬物を保護する目的として、医薬上許容されるフィルムコーティングで上塗りされていてもよい。
【0118】
プレスコートされた錠剤は当該分野にて公知の技法により調製され得る。プレスコーティングは当該分野にて公知のプレスコート化装置を用いて圧縮することで形成され得る。また、剤形は造粒または凝集技法により調製されてもよく、あるいは噴霧乾燥法を用い、つづいて乾燥させて構築されてもよい。
【0119】
コアの周りに被膜を圧縮する間、コアの周りのコーティング材料は圧縮方向に相対的に強く圧縮されて高密度である。他方で、圧縮方向と直交する面に置かれたコーティング材料は相対的に低い圧縮力に供され、その結果として、相対的にあまり高密度ではない。したがって、この面にある材料は相対的に浸透性であり、生理的媒体が侵入しやすい。この面にあるコーティング材料は密度が若干低く、考案者は被膜厚の影響に対して一の許容度を有するため、この面の被膜を通る水性媒体の侵入速度は緊密に制御され得る。
【0120】
生理的媒体がコアと接触すると、コアは水和かつ膨潤することで反応し、および/またはそれによりゲル化または発泡化し、水性媒体の侵入方向に略沿って該被膜を破壊し、繋がったままであってもよい、コーティング材料の必然的に2つの半球体を形成する。この開放された形態の剤形において、一旦破壊されると、開放された殻の外観または被膜の2つの半球体は相互に完全に離れてしまう。コア材料の水性媒体の存在に対する反応も同様にベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストのコアからの放出を制御するのに一部関与している。
【0121】
剤形の硬度は少なくとも40ニュートン、例えば40−80ニュートン、より具体的には60−75ニュートンであることが好ましい。硬度はThe European Pharmacopoeia 4、201頁の2.9.8に記載の方法に従って測定されてもよい。
【0122】
この範囲の硬度を有する剤形は、特に食物が存在する胃で生成される力に拮抗して機械的に強固である。さらには、該剤形は圧縮方向に対して直交する面の周りで十分に浸透性であり、生理的媒体をコアへ適当な速度で侵入させ、本願明細書に記載のラグタイムを達成することを可能とする。
【0123】
本願発明は、もう一つ別の態様において、上記したように、プレスコートされた剤形の形成方法を提供する。それらは通常のプレスコート装置で形成されてもよい。典型的には、かかる装置は回転台に配置された一連のダイで構成される。大きさの異なるダイが適宜使用され得るように、ダイは回転台に着脱式に固定される。ダイは、各々、下パンチを受け入れるように中空である。パンチはその上面およびダイの内面が、コーティング材料の正確な量を収容するための容量を規定するように、ダイの中に配置される。充填されると、ダイが上パンチの下に位置するまで、回転台を回転させる。ついで、上パンチを規定した圧縮力でコーティング材料を下方に押し、そのコーティング材料を上パンチと下パンチの間で予め圧縮または押さえつける。予め形成されたコアをついでダイに供給し、押さえつけられた被膜上に置く。通常のプレスコート装置はコアが垂直方向および半径方向の両方に位置付けられるようにセンタリング装置を備え付けられている。このことは押さえ付け工程により達成されてもよく、それによりコーティング材料の初期量がダイに入れられ、コーティング材料を押し込み、その中にコアを収容する、ピン型パンチなどの一定形状のパンチで押さえつけられる。その後の第2の充填操作にて、正確な量のコーティング材料を該ダイに供給し、コアを覆い、パンチの上部がコーティング材料を所定の圧縮力で圧縮し、プレスコートされた剤形を形成する。押さえつけ工程の間に加えられる圧縮力は相対的に小さく、コーティング材料のベッドを提供し、コアを収容し、遠心力の結果としてコーティング材料の移動を防止するのに丁度十分な程度にすぎない。その後で剤形を形成するための圧力を調整し、必要とする硬度を得ることができる。
【0124】
圧縮力は400kgであることが好ましいが、要求される硬度の錠剤を得るためにこの力は±30%まで調節されてもよい。
【0125】
ダイの寸法により、圧縮した後に、特に圧縮方向に対して直交する面について必要とされる被膜厚を有する剤形が確実に形成されるため、ダイに供給されるコーティング材料の量は、コーティング材料の密度を考慮して正確に限定され得る。被膜厚を変える必要がある場合、適当な内寸のダイを回転台に設置し、そうしてダイに供給されるコーティング材料の量を調整してもよい。
【0126】
高処理能の適当なロータリー式打錠機は当該分野にて既知であり、ここでさらに論じる必要はない。
【0127】
通常のロータリー式打錠機を用いてコアも同様に形成され得る。コアは、約60ニュートン、例えば約50−70ニュートンの硬度を有するコアを提供するのに十分な圧縮力の下で圧縮されるのが好ましい。この範囲の硬度を有するコアは所望の放出特性を付与する。所望により、コアは、プレスコートされる錠剤を生成するのと同じ時間で形成され得る。かかる場合、Manesty Dry Cotaを利用してもよい。かかるプレスは並列して相互に連結した2つのプレスからなり、1台のプレスでコアを製造し、その後で機械的にプレスコート用の別のプレスに移される。このような装置および該装置を用いる剤形の製造方法は当該分野にて知られており、ここでさらに論じる必要はない。
【0128】
コアは当該分野にて一般に知られている湿式造粒技法に従って形成されるのが好ましい。典型的な操作において、コア材料を篩にかけてブレンドする。ついで、造粒化流体、典型的には水を該ブレンドに加え、該混合物を均質化して顆粒を形成し、ついでそれを噴霧乾燥させるか、流動床乾燥器で乾燥させ、必要不可欠な残留水分を有する顆粒を得る。残留水分量は約0.4〜2.0重量%であることが好ましい。ついで、該顆粒を所望のアパーチャーのスクリーンを通してその大きさを分別する。この段階で、いずれかのアジュバントを分別して該顆粒に添加し、圧縮に適するコア組成物を形成する。当業者であれば、同じ方法で皮膜組成物が形成され得ることは明らかであろう。
【0129】
本願発明のプレスコートされた錠剤はまた、ダブル式パンチ金型で、例えば、日本国、京都、菊水製作所のプレスを用いて、一工程の乾燥コートされた錠剤として製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0130】
原文に記載なし
【発明を実施するための形態】
【0131】
実施例1
コア含有の薬物はプレスコート化システムについて次のとおり調製される。
コアの組成を表1にて詳説する。ラクトース・一水和物(Lactose Pulvis[Eta]2O(登録商標)、Danone、FranceおよびLactose Fast Flo(登録商標)NF 316、Foremost Ing. Group、USA)が関心の高い技術的および機能的な特性を有する充填剤である。Lactose PuIViS-H2Oは湿式顆粒により調製されるブレンドにて使用され、Lactose Fast Floは直接圧縮用に調製されるブレンドにて使用される。微結晶セルロース(Avicel(登録商標)PH 101、FMC International、Ireland)は、Avicel PH 102グレードが直接圧縮に使用される、湿式顆粒のための不溶性希釈剤として使用される。ポリビニルピロリドン(Kollidon(登録商標)30、BASF Ludwigshafen、Germany)は、水可溶性の造粒剤であり、粉末粒子との結合能を有する。クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol(登録商標)、FMC Corporation、USA)はスーパー崩壊剤として製剤中に使用される。外部相として、ステアリン酸マグネシウム(Merck、Switzerland)が滑沢剤として、そしてコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200、Evonik AG、Germany)が顆粒状の粉末の流動性を改善するために加えられる。
【0132】
表1:コアの組成

【0133】
コーティング材料は疎水性の水不溶性の材料である。このコーティング材料は二塩基性リン酸カルシウム・二水和物(Calipharm, Innophos USA)およびベヘン酸グリセリル(Compritol(登録商標)888ATO、Gattefosse、France)からなる。ポリビニルピロリドン(Kollidon 30)は造粒剤であり、水に可溶性であって、粉末粒子との結合能を有する。黄色酸化鉄(Sicovit" Yellow 10、BASF、Germany)を色素として添加した。この障壁ブレンドの詳細な組成を表2に示す。
【0134】
表2:被膜剤の組成

【0135】
薬物A、Ac-Di-Sol(登録商標)、Lactose Pulvis H2O(登録商標)、Plasdone(登録商標)K29-32の必要な量を秤量し、0.710mmのアパーチャーを有するスクリーンにて手で篩にかける。成分をNiro-Fielder PMA 25-リットル混合造粒器を用い、チョッパー速度ではなく、インペラー速度250rpmで6分間にわたり均質に混合する。その後、ノズルH1/4W−95015(250g/分の噴霧速度)を用い、造粒溶液(精製水、乾燥ブレンドの重量の25.47%)をインペラー速度250rpmおよびチョッパー速度1500rpmで4分以内に加える。湿った塊を均質化し、一塊とするのに、インペラー速度500rpmおよびチョッパー速度3000rpmで混合を3分間続ける。ついで、混合した湿った顆粒をGlatt WSG5流動化エアー乾燥機で乾燥させる。入口温度を乾燥の間45℃に維持する。残留水分が2.5%未満の顆粒を得るための乾燥時間は20分である。得られた乾燥顆粒を0.8mmのアパーチャーを有するスクリーンを用い、Frewitt MGI 205造粒装置で244osc/分の速度で3分間キャリブレートする(グラジュエーション7)。適量のAerosil(登録商標)200およびステアリン酸マグネシウムを1.0mmのアパーチャーのスクリーンを用いて手で篩にかける。乾燥顆粒の半分をIBC 25リットルに入れ、つづいてAerosil 200を、ついで残り半分の乾燥顆粒を入れる。成分をBohle拡散ミキサーで20rpmで10分間混合する。最後にステアリン酸マグネシウムを加え、混合を20rpmで10分間続ける。
【0136】
被膜ブレンドを以下の方法に従って調製する。障壁ブレンドのためのバッチサイズは13kgである。秤量した量のEmcompress(登録商標)、Compritol(登録商標)888 ATO、Plasdone(登録商標)K29-32およびSicovit(登録商標)Yellow 10 E 172を0.710mmのアパーチャーのスクリーンを用いて手で篩にかける。それらをNiro-Fielder PMA 65-リットル混合造粒器に入れる。ついで、チョッパー速度ではなく、インペラー速度200rpmで6分間にわたり該成分を均質に混合する。その後、ノズル4.9(520g/分の噴霧速度)を用い、造粒溶液(精製水、乾燥ブレンドの重量の8.12%)をインペラー速度200rpmおよびチョッパー速度1500rpmで2分以内に加える。均質化し、一塊とするのに、インペラー速度400rpmおよびチョッパー速度3000rpmで混合を3分間続ける。
【0137】
ついで、混合した湿った顆粒をNiro-Fielder TSG-2流動化エアー床乾燥機で乾燥させる。入口温度を乾燥の間45℃に維持する。残留水分を2.5%未満とするのに乾燥を33分間続ける。得られた乾燥顆粒を0.8mmのアパーチャーを有するスクリーンを用い、Frewitt MGI 205造粒装置で244osc/分の速度で4分間キャリブレートする(グラジュエーション7)。適量のAerosil 200およびステアリン酸マグネシウムを1.0mmのアパーチャーのスクリーンを用いて手で篩にかける。乾燥顆粒の半分をIBC 25リットルに入れ、つづいてAerosil 200を、ついで残り半分の乾燥顆粒を入れる。成分をBohle拡散ミキサーで20rpmで10分間混合する。最後にステアリン酸マグネシウムを加え、混合を20rpmで10分間続ける。
【0138】
440mgの被膜ブレンドをコアにプレスコート化されたし、プレスコートされた錠剤(9mm径)を得る。305mgの被膜ブレンドをコアにプレスコート化されたし、プレスコートされた錠剤(8mm径)を得る。これらの異なるプレスコート化をKilian RUD打錠装置を用いて行う。第一および第二のローディングホッパーにコーティング顆粒を充填する。該装置は、2つのローディングホッパーの間に、コアを供給するのに適合した移送システムを備えている。各錠剤で、第一のローディングホッパーはコアに塗布される量の約半分を供給する。ついで、供給システムはコアを供給し、それをダイの中心に固定する。その後で、第二のローディングホッパーはコアに塗布される量の残りの半分を供給する。ついで、圧縮行程を行う。
【0139】
実施例2
実施例1の方法に従って調製した、薬物Aを5mgのローディング量で含有する錠剤のインビトロ溶解特性を、固定バスケットを用い、かつ100rpmの攪拌速度を適用する、USP溶解装置No.II(パドル)を用いて測定する。溶解媒体は容量が900mlの擬似腸液(SIF)である。
【0140】
図1は、上記した処方および方法に従って形成される数種の錠剤の放出特性を示す。該図がラグタイムを非常に高い精度で得ることが可能であることを示すのは明らかである。
【0141】
実施例3
工程1:表1に対応するコアを通常の有孔パンコーターにロードし、ヒドロキシプロピルメチルセルロース型2910(Pharmacoat 603)およびポリエチレングリコール400(10:1の重量比)の7%w/wの水溶液を噴霧した。錠剤の総重量の3%重量増が得られるまでコーティングを続けた。
【0142】
工程2:ついで、結合溶液として工程1と同様の溶液を用い、ヒドロキシプロピルメチルセルロース型2910、(メトセルE150)、タルクおよび二酸化ケイ素を含有する粉末混合物を塗る、粉末積層技法によりコアをコーティングした。錠剤の総重量の45%重量増が得られるまでコーティングを続けた。
【0143】
実施例4
実施例3の方法に従って調製した薬物Aを2.5mgのローディング量で含有する錠剤のインビトロ溶解特性を、USP溶解装置No.2(パドル)および固定バスケットを用い、かつ100rpmの攪拌速度を適用して測定する。溶解媒体は容量が900mlの擬似腸液(SIF)である。
【0144】
図2は、上記した処方および方法に従って形成される数種の錠剤の放出特性を示す。該図がラグタイムを非常に高い精度で得ることが可能であることを示すのは明らかである。
【0145】
実施例5
表1に対応するコアを通常の有孔パンコーターにロードし、エチルセルロースおよびクエン酸トリエチル(TEC)(5:1の重量比)の5%w/wのヒドロアルコール溶液を噴霧した。錠剤の総重量の20%重量増が得られるまでコーティングを続けた。
【0146】
実施例6
実施例5の方法に従って調製した薬物Aを2.5mgのローディング量で含有する錠剤のインビトロ溶解特性を、USP溶解装置No.2(パドル)および固定バスケットを用い、かつ100rpmの攪拌速度を適用して測定する。溶解媒体は容量が900mlの擬似腸液(SIF)である。
【0147】
図3は、上記した処方および方法に従って形成される数種の錠剤の放出特性を示す。該図がラグタイムを非常に高い精度で得ることが可能であることを示すのは明らかである。
【0148】
実施例7
a)ラクトースのノンパレイルビーズをボトムスプレー型流動床乾燥機(Glatt AG Pratteln Switzerland)にロードし、第一に硫酸テルブタリンの5%水溶液を、次にエチルセルロースおよびクエン酸トリエチル(TEC)(重量比 10:1)の5%w/wのヒドロアルコール性溶液を噴霧する。30%の重量増が得られるまでコーティングを続ける。
【0149】
b)ラクトースのノンパレイルビーズをボトムスプレー型流動床乾燥機(Glatt AG Pratteln Switzerland)にロードし、第一に硫酸テルブタリンの5%水溶液を、次にエチルセルロースおよびクエン酸トリエチル(TEC)(重量比 5:1)の5%w/wのヒドロアルコール性溶液を噴霧する。30%の重量増が得られるまでコーティングを続ける。
【0150】
c)ついで、ハードシェルカプセル(Capsugel Colmar France)に、MG Futura(Bologna Italy)カプセル充填装置を用いて、5mgの硫酸テルブタリンに相当する量のコーティングされたビーズ(50%工程a−50%工程b)を充填する。
【0151】
実施例8
実施例7の方法に従って調製した薬物Aを5mgのローディング量で含有するカプセルのインビトロ溶解特性を、固定バスケットを用いるUSP溶解装置No.II(パドル)を用い、かつ100rpmの攪拌速度を適用して測定する。溶解媒体は容量が900mlの擬似腸液(SIF)である。
【0152】
図4は、上記した処方および方法に従って形成される数種のカプセルの放出特性を示す。該図がラグタイムを非常に高い精度で得ることが可能であることを示すのは明らかである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを含有する放出調節された経口用剤形の夜間低血糖症の治療における使用。
【請求項2】
一群のヒト対象において試験された場合に、該剤形がその投与から1時間と6時間の間に平均ピーク血漿中濃度(Cmax)に達する時間(Tmax)を提供する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
インビトロの擬似腸液にて試験された場合に、該剤形がインビトロ溶解特性により規定される時間にわたってベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを放出する使用であって、1または2時間後に用量の多くて10%が放出され、6時間後に少なくとも80%が放出され、10時間後に少なくとも100%が放出される、請求項1または請求項2記載の使用。
【請求項4】
インビトロの擬似腸液がpH6.8のリン酸塩緩衝液であり、溶解特性が100rpmのパドル回転速度のUSP装置IIを用いて得られる、請求項3記載の使用。
【請求項5】
治療を必要とする対象に投与した際に、該剤形が少なくとも1時間、より具体的には2時間のラグタイムの後に、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを放出し、そのラグタイムの間に、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストが全く、または実質的に放出されない、上記した請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストの多くて約10%がそのラグタイムの間に放出される、請求項5記載の使用。
【請求項7】
ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストが、就寝前および食事中または食後に、一日に一回、0.1ないし10mgの投与量にて投与される、上記した請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストが硫酸テルブタリンである、上記した請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
一群のヒト対象において試験された場合に、5mgの用量の硫酸テルブタリンで、該剤形がテルブタリンの約3−9ng/mlの平均ピーク血漿中濃度(Cmax)、および約14−68時間・ng/mlの平均AUC0−48を達成する、請求項8記載の使用。
【請求項10】
夜間低血糖症の治療にて用いるための、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを含有する放出調節された経口用剤形。
【請求項11】
一群のヒト対象において試験された場合に、該剤形がその投与から1時間と6時間の間に平均ピーク血漿中濃度(Cmax)に達する時間(Tmax)を提供する、請求項10記載の剤形。
【請求項12】
インビトロの擬似腸液にて試験された場合に、インビトロ溶解特性により規定される時間にわたってベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを放出する剤形であって、1または2時間後に用量の多くて10%が放出され、6時間後に少なくとも80%が放出され、10時間後に少なくとも100%が放出される、請求項10または請求項11記載の剤形。
【請求項13】
インビトロの擬似腸液がpH6.8のリン酸塩緩衝液であり、溶解特性が100rpmのパドル回転速度のUSP装置IIを用いて得られる、請求項12記載の剤形。
【請求項14】
治療を必要とする対象に投与した際に、少なくとも1時間、より具体的には2時間のラグタイムの後に、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストを放出し、そのラグタイムの間に、ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストが全く、または実質的に放出されない、請求項10−13のいずれかに記載の剤形。
【請求項15】
ベータ2アドレナリン作動性受容体アゴニストが硫酸テルブタリンである、請求項10−14のいずれかに記載の剤形。
【請求項16】
一群のヒト対象において試験された場合に、5mgの用量の硫酸テルブタリンで、テルブタリンの約3−9ng/mlの平均ピーク血漿中濃度(Cmax)、および約14−68時間・ng/mlの平均AUC0−48を達成する、請求項15記載の剤形。

【公表番号】特表2012−533595(P2012−533595A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521008(P2012−521008)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060326
【国際公開番号】WO2011/009818
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(500322826)ヤゴテック アーゲー (16)
【Fターム(参考)】