説明

大口径ゴムホース

【課題】500〜1000分間もの長時間の加硫後においても、ゴム層と補強材層との接着力が保持され、使用中にゴム層と補強材層とが剥離することなく、かつ流体輸送時においても流体の圧力によるホース口径の変化が小さい、耐久性及び寸法安定性に優れる大口径ゴムホースを提供する。
【解決手段】繊維織物及び/又は繊維コードを複合することにより補強された加硫ゴムを用いて形成された大口径ゴムホースにおいて、該繊維織物及び/又は繊維コードがアラミド繊維とナイロン繊維との複合繊維で構成されることを特徴とする大口径ゴムホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維織物及び/又は繊維コードを複合することにより補強された大口径ゴムホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多量の液体をホースを用いて輸送する際、例えば、沖合に係船するタンカーと陸上の施設とをホースで直接結んで原油等の荷役作業を行う際には、該液体を効率よく輸送するため、その輸送規模に応じて内径が300〜1000mm程度の大口径のホースが用いられている。このような大口径ホースは、一般的に原油等の液体輸送時に高い圧力がかかるため、内周側に内面ゴム層、外周側に外面ゴム層を具備し、前記内面ゴム層及び外面ゴム層の間に合成繊維又はワイヤ等からなる補強材層を積層した構造を有しており、内外ゴム層及び補強材層を含めた肉厚は50〜100mmと非常に厚いものとなっている。
【0003】
この大口径ゴムホースは、通常の生産においては、未加硫の内面及び外面ゴム層と、補強材層とからなる上記積層構造を形成した後、上記内面及び外面ゴム層と上記補強材層とを加硫接着させることにより製造されることが多い。この場合、上記のように、ゴム層及び補強材層を含めたホースの肉厚は50〜100mmと非常に厚いものであることから、内部まで完全に加硫硬化させるために500〜1000分間もの長時間に亘る加熱加硫が行われる。
【0004】
一方、ゴムホースの補強材層に使用される補強材としては、最近では高強度、高弾性率、低伸度で寸法安定性に優れることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を複数本撚り合わせた繊維コードや、前記繊維コードを繊維織物としたものを用いることが多い。しかしながら、このPET繊維は耐熱性が必ずしも充分ではなく、上記大口径ホースに用いた場合には、500〜1000分間もの長時間をかけてゴムを加硫硬化させる間に熱劣化を起こし、上記ゴム層と上記補強材層との接着性が著しく低下してしまう問題が顕在化した。加硫後にゴム層と補強材層との接着性が低下した場合には、使用中のホースに加わる屈曲運動や振動等によりゴム層と補強材層とが剥離してしまい、ホースの早期の破損を招くおそれがある。また、上記のPET繊維の耐熱性の問題から、加硫温度を高くして加硫時間を短縮し、生産性を向上させることも困難であった。
【0005】
また、その他の補強材としては、強度や耐熱性等の観点から、ケブラー繊維に代表されるアラミド繊維やナイロン繊維等が挙げられるが、アラミド繊維を上記大口径ホースの補強材として使用した場合には、繊維の伸びが小さく、疲労耐久性が充分でないため、ホースが座屈に弱いものとなってしまい、ナイロン繊維を用いた場合には、伸びが大きすぎるため、ホース内に流体を通した際のホース口径の変化が大きくなってしまうといった問題が懸念される。
【0006】
これに対し、出願人は特開2004−108555号公報(特許文献1)において、PET繊維にナイロン繊維を複合した複合繊維織物を補強材層に用いることにより、PET繊維に不足する耐熱性等をナイロン繊維により補い、PET繊維による補強効果を維持した上で長時間の加硫による熱劣化を防止して、補強材とゴムとの接着力の低下を大幅に抑制したゴムホースを提案した。しかしながら、ナイロン繊維の複合により、複合繊維全体のモジュラスが低下し、ホース内に流体を通した際の圧力により、ホース口径が大きく拡大してしまうという問題が顕在化した。使用時において、ホース口径が大きく拡大した場合には、流体の輸送圧力が低下して輸送効率を低下させてしまうおそれがある。
【0007】
従って、長時間加硫後においてもゴム層と補強材層との接着力が保持され、使用中にゴム層と補強材層とに剥離を生じず、かつ流体輸送時においても流体の圧力によるホース口径の変化が小さい、耐久性及び寸法安定性に優れる大口径ゴムホースの開発が望まれる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−108555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、長時間の加硫後においてもゴム層と補強材層との接着力が保持され、使用中にゴム層と補強材層とが剥離することなく、かつ流体輸送時においても流体の圧力によるホース口径の変化が小さい、耐久性及び寸法安定性に優れる大口径ゴムホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、上記のアラミド繊維とナイロン繊維とを複合させることによってアラミド繊維の疲労耐久性を補うことができ、補強材として、これらの繊維を含む複合繊維を用いた繊維織物及び/又は繊維コードを使用することにより、500〜1000分間という長時間の加硫後においても上記補強材が熱劣化を起こさず、ゴム層との接着力が低下しないこと、更に、該複合繊維が低伸度かつ高強度であるため、補強材として該複合繊維を用いて製造したホースに流体を通した際、該流体の圧力によるホース口径の変化が小さくなることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、繊維織物及び/又は繊維コードを複合することにより補強された加硫ゴムを用いて形成された大口径ゴムホースにおいて、該繊維織物及び/又は繊維コードがアラミド繊維とナイロン繊維との複合繊維で構成されることを特徴とする大口径ゴムホースを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の大口径ゴムホースは、長時間の加硫硬化後においてゴム層と補強材層との間に充分な接着力が保持されることから、使用中にゴム層と補強材層が剥離することを効果的に防止し得、更にホース内に流体を通した際、該流体の圧力によるホース口径の変化が小さいことから、口径拡大に伴う輸送圧力の低下及び変動を抑制し得るものである。
また、本発明で用いる複合繊維は耐熱性が高いため、加硫温度を高く設定することにより、加硫時間を短縮して、生産効率を向上させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の大口径ゴムホースについて詳述する。
本発明の大口径ゴムホースは、ホースの内周側に内面ゴム層、外周側に外面ゴム層を有し、前記内面ゴム層及び外面ゴム層の間に繊維織物及び/又は繊維コードからなる補強材層を介在させた積層構造を有するものである。
【0014】
そして、上記補強材層として、アラミド繊維とナイロン繊維とからなる複合繊維(以下、アラミド/ナイロン複合繊維と表記する場合がある)コード及び/又は該複合繊維を織って得られる複合繊維織物を用いる。
【0015】
上記アラミド繊維は、上記ナイロン繊維と同様のポリアミド繊維の一種であり、全ての分子骨格が芳香族からなるポリアミド繊維である。このアラミド繊維は、その骨格となるベンゼン核が直線的に並んだパラ系アラミド繊維と、ジグザグ状に並んだメタ系アラミド繊維の2種類に大別される。パラ系アラミド繊維は剛直な分子構造を有するため、高強度で高弾性、低伸縮等の力学的性質において優れた特性を示し、メタ系アラミド繊維は耐熱性や難燃性に優れるといった特徴がある。本発明において、このアラミド繊維は従来公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、強度や弾性率等の力学的性質でより優れているパラ系アラミド繊維を好適に用いることができる。
【0016】
上記パラ系アラミド繊維としては、テレフタル酸ジクロライドとパラフェニレンジアミンの重縮合体であるポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)を乾式紡糸法によって繊維化したものや、上記テレフタル酸ジクロライドとパラフェニレンジアミンに第3成分として3,4−ジアミノジフェニルエーテル(3,4−DDA)加えて共重合させ、湿式紡糸法で繊維化したもの等を挙げることができ、1種単独又は2種以上を適宜選択使用すればよい。また、これらは市販品を用いることができ、デュポン社製「ケブラー」、帝人(株)製「テクノーラ」、アクゾ社製「トワロン」等を挙げることができる。本発明においては、ケブラー繊維を好適に用いることができる。
【0017】
上記ナイロン繊維としては、従来公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、具体的には6,6−ナイロン、6−ナイロン、4,6−ナイロン、MXD6ナイロン等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明においては6,6−ナイロンを好適に用いることができる。
【0018】
本発明では、上記のアラミド繊維及びナイロン繊維を複合化して、アラミド/ナイロン複合繊維コード及び複合繊維織物を形成する。上記複合繊維コードは、各々個別に複数本を下撚りしたアラミド繊維とナイロン繊維とを所定本数あわせて上撚りすることで得られるものであり、上記複合繊維織物は上記複合繊維コードを用いて常法に従って織物とすることにより得られるものである。
【0019】
上記アラミド/ナイロン複合繊維コードを構成するアラミド繊維とナイロン繊維との合計の繊度D(デシテックス:dtex)は、該複合繊維コードの必要強力により決定されるが、通常2000〜11000dt、特に3000〜5500dtであることが好ましい。2000dt未満の場合、複合繊維コードの強力が小さくなり充分な耐圧力を得られないおそれがあり、11000dtを超えると、集合効力が低下して、太さの割に充分なコード強力が得にくくなり経済的に好ましくない。更に、織物が厚手なものとなってしまい、補強材層の積層作業性の低下を招くおそれもある。
【0020】
また、上記アラミド/ナイロン複合繊維コード全体の繊度に対するアラミド繊維の繊度の割合(アラミド繊維の繊度/複合繊維全体の合計繊度×100(%))を、通常35〜80%、特に44〜71%とすることが好ましい。上記繊度比が35%未満となった場合には、強度の低下やクリープの増大を招くおそれがあり、80%を超えた場合には、ホースの耐屈曲疲労性の低下を招くおそれがある。
【0021】
上記アラミド/ナイロン複合繊維コードの上撚り係数は、通常1440〜2400、特に1600〜1950とすることが好ましい。上撚り係数が1440未満になると、耐屈曲疲労性が低下するおそれがあり、2400を超えると充分な強度を得られないおそれがあり、伸度及びクリープが大きくなるおそれもある。
【0022】
なお、上記の上撚り係数とは、当該繊維コードを構成する繊維の合計の繊度D(dt)と上撚り数G(回/10cm)とから次式により算出される数値であり、この数値が大きいほど繊維コード全体としての伸びが大きくなる傾向にある。
【数1】

【0023】
また、下撚り数は、通常は上撚り数と同じ回数にすることが多いが、必ずしも同じにする必要はなく、複合繊維の要求特性に応じて適宜決定し得る。例えば、ナイロン繊維の下撚り数を上撚り数に対して減らすことにより、複合繊維全体の伸びを大きくすることができる。本発明において、下撚り数は上撚り数の0.5〜1倍の範囲とすることが好ましい。
【0024】
アラミド/ナイロン複合繊維織物は、上記のアラミド/ナイロン複合繊維の繊維コードを常法に従って織ることにより製造することができる。この時、該複合繊維織物は、上記のアラミド/ナイロン複合繊維コードのみで構成されるものとしてもよく、上記複合繊維コードを主構成コードとし、アラミド繊維コード及び/又はナイロン繊維コードを含むものとしてもよい。
【0025】
この複合繊維織物の織り方には特に制限はなく、平織、ストレートワープ織、綾織、すだれ織等の公知の織り方を採用すればよい。また、複合繊維織物を構成するコードの打ち込み本数等にも特に制限はなく、得られる大口径ゴムホースの要求特性に応じて適宜決定される。
【0026】
通常の場合、この複合繊維織物は大口径ゴムホースの長さ方向に対し、所定角度で縦糸としてのアラミド/ナイロン複合繊維コードを並列配置して横糸で束ねたすだれ織とされ、この場合横糸としては、一般に綿糸、レーヨン、PET、PET/綿混紡糸等が用いられる。また、縦糸としてのアラミド/ナイロン複合繊維コードの打ち込み本数は、その繊度や得られる大口径ゴムホースの要求特性に応じて適宜決定されるが、通常30〜70本/5cmである。
【0027】
なお、上記アラミド/ナイロン複合繊維コードは、常法に従ってアラミド繊維の外周にナイロンの被覆層を形成したアラミド/ナイロン芯鞘繊維コードとしてもよく、大口径ゴムホースの要求特性に応じて適宜選択し得る。
【0028】
一方、本発明の大口径ゴムホースのゴム本体を構成するゴム組成物としては、この分野において通常用いられるものであれば特に制限されるものではないが、具体的には、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(ACN、ANM)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、エチレンアクリルゴム(AEM)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)等を1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。本発明においては、NR、SBR、BR等を好適に用いることができる。なお、内面ゴム層及び外面ゴム層で用いるゴム組成物は、それぞれ輸送する流体の種類や温度、ホースの使用環境や要求特性等に応じて適宜選定し得る。
【0029】
また、上記ゴム成分に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、ゴム工業で通常使用されている加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、カーボン、亜鉛華(ZnO)、ワックス類、酸化防止剤、充填剤、発泡剤、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、石油系樹脂、紫外線吸収剤、分散剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0030】
本発明の大口径ゴムホースでは、この種のゴムホースにおける通常の製造方法を適用することができ、例えば、上記のゴム成分及び添加剤を適宜配合した未加硫のゴム組成物よりなる内面ゴム層及び外面ゴム層の間に、補強材層としてアラミド繊維及びナイロン繊維より構成される繊維織物及び/又は繊維コードを接着ゴムで両面被覆したものを必要枚数積層して配置し、常法に従って加硫成形することにより容易に製造することができる。この時、上記補強材の両面を被覆する接着ゴムとしては、NR、SBR、BR等を好適に用いることができる。また、加硫条件は、補強材の熱劣化が実質的に生じないため、特に制限はなく、120〜160℃、300〜1000分間といった幅広い条件範囲から選択することができる。特に500〜1000分間もの長時間加硫であっても、補強繊維の熱劣化及び熱劣化に伴う接着性の低下が問題となることはなく、良好な耐屈曲疲労性を有し、寸法安定性に優れる大口径ゴムホースを容易かつ確実に製造することができる。
【0031】
上記のように複合繊維織物及び/又は複合繊維コードを接着ゴムで両面被覆する前に、その方法は特に制限されるものではないが、本発明においては、上記複合繊維織物及び/又は複合繊維コードを接着剤に浸漬し、乾燥し、熱処理する方法を採用できる。例えば、接着・熱処理加工として1浴目にエポキシ化合物(長瀬産業(株)製のデナコールEX313,EX314,EX421など)の水溶液で常法に従って浸漬−乾燥−熱処理した後、2浴目にRFL液(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス液)で同様に浸漬−乾燥−熱処理して接着剤を付着させる方法を好適に用いることができる。これにより、複合繊維織物及び/又は複合繊維コードを未加硫ゴム層間に配置して加硫成形を行った際の複合繊維織物(コード)と接着ゴム層との接着力を向上させることができる。
なお、その際の固形分付着量は、複合繊維織物及び/又は複合繊維コードに対して、通常5〜12質量%である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0033】
[実施例1〜9、比較例1〜6]
表1に示す繊維コードを縦糸とし、表1に示す打込数のすだれ織(横糸として、ポリノジック300dt/1(1本撚り、300dt)を用い、打込数4本/5cmとした)の補強繊維織物を用いて以下の方法で評価体を作製し、その特性の評価を行った。評価結果は表2に示した。
【0034】
・接着熱処理反の特性
補強繊維織物を接着剤液(エポキシ化合物水溶液及びRFL液)に浸漬して乾燥−熱処理し接着剤液を8質量%付着させた接着熱処理反を作製し、下記の(1)〜(4)の方法で評価した。
(1)強力(N/本)及び伸度(%)
JIS L1017に準拠し、繊維コード1本について、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/minの条件で試験を行い、切断時の強力及び伸度を測定した。
(2)乾熱収縮率(%)
JIS L1017(B法)に準拠し、糸長を正確に測定した繊維コードを設定温度180℃の乾燥機中に30分間放置した後、乾燥機から取り出し30分間放置した後の糸長を測定し、その乾熱収縮率を算出した。
(3)強度(g/d)
(1)項で測定した強力値をN単位からg単位に換算し、繊維コードのトータルデニール数(0.9d(デニール)=1.0dt(デシテックス))で割って算出した。
(4)クリープ(%)
JIS L1017に準拠し、繊維コードの糸長を正確に測定した後、荷重0.88cN/dt(例えば、1670dtの糸を2本撚り合わせた構造の場合、1670×2×0.88/100=29.4N)をかけ、常温で30分間放置後の糸長を測定し、そのクリープ率を算出した。
【0035】
・加硫後の特性
本発明の加硫後の特性として、屈曲後強度保持率、強力保持率及び接着性について、下記の(1)〜(3)の方法で評価した。
(1)屈曲後強度保持率(%)
2枚のNR/SBR系未加硫ゴムシート(厚さ4.5mm)の間に、厚さ0.6mmのNR/SBR系未加硫ゴムで両面被覆した上記接着熱処理反を3枚積層し、1.5MPa、145℃の条件で30分間加熱加圧することにより加硫接着一体化したものを評価体とした。
上記評価体をプーリーにかけて、下記条件で屈曲テストを行った後、屈曲時の最内層の補強繊維織物を取り出し、上記接着熱処理反の強力測定方法と同様にして強力を測定し、その保持率(屈曲後強度÷屈曲前強度×100)を算出した。
プーリー直径:100mm
荷重 :破断時強力の5%
屈曲回数 :20万回
(2)強力保持率(%)
2枚のNR/SBR系未加硫ゴムシート(厚さ4.5mm)の間に、厚さ0.6mmのNR/SBR系未加硫ゴムで両面被覆した上記接着熱処理反を3枚積層し、1.5MPa、145℃の条件で1440分間加熱加圧することにより加硫接着一体化したものを評価体とした。
上記評価体から補強繊維織物を取り出し、上記の接着熱処理反の強力測定方法と同様にして強力を測定し、加硫前の接着熱処理反の強力に対する加硫後の強力の割合として算出した。
(3)接着性(剥離試験)
2枚の短冊状(厚さ2mm、幅25mm±0.5mm、長さ100mm)のNR/SBR系未加硫ゴムシートの間に、厚さ0.6mmのNR/SBR系未加硫ゴムで両面被覆した上記接着熱処理反を2枚積層し、145℃で30分間又は1440分間加熱加圧することにより加硫接着一体化したものを評価体とし、JIS K6256−1999に準拠して、50mm/分の速度で2枚の補強繊維織物間の剥離試験を実施した。この時、剥離に要した力から接着力(N/25mm幅)を求め、加硫時間30分間の評価体の接着力に対する加硫時間1440分間の評価体の接着力の割合を接着力保持率(%)として算出した。
【0036】
【表1】

アラミド繊維:デュポン社製ケブラー繊維
N66:6,6−ナイロン繊維
PET:ポリエチレンテレフタレート繊維
【0037】
【表2】

【0038】
表1及び表2の結果から、本発明のアラミド/ナイロン複合繊維を補強材として用いた大口径ホースにおいて、1440分間の長時間加硫においても該複合繊維が熱劣化を起こさず、この熱劣化に起因する接着力の低下が防止されていること、また、接着熱処理反の伸度が低く、ホース口径の拡大を抑制できることが確認された。従って、長時間加硫を行った場合においても、ゴム層と補強材層との接着力が充分に確保されると共に、寸法安定性に優れていることから、補強効果及び耐久性に優れることがわかる。
【0039】
次に、表1に記載の複合繊維織物について、所定の荷重負荷時における伸度(中間伸度)を上記の方法に従い測定した結果を表3に示す。また、強力及び切断時伸度の結果も併記する。
【表3】

【0040】
上記表3の結果から、比較例2のPET繊維コードは本発明の複合繊維と同等の中間伸度を有するが、切断時の強力及び伸度においては本発明の複合繊維コードのほうが優れている。また、比較例6のナイロン/PET複合繊維コードでは、PET繊維のみの繊維コードを用いた比較例2に比較して耐熱性が改善されている(表1、表2参照)が、中間伸度が高く、複合繊維全体としてのモジュラスが低下している。従って、耐熱性は改善されているものの、流体輸送時にホース口径が大きく拡大し、輸送圧力の低下を招くおそれがあることがわかる。
以上より、本発明のアラミド/ナイロン複合繊維を用いた補強材は補強効果及び寸法安定性に優れることが確認された。
【0041】
表1に記載の複合繊維織物を用い、加硫温度を155℃に変更して作製した評価体における接着力の評価結果を表4に示す。
【表4】

【0042】
上記表4の結果から、本発明のアラミド/ナイロン複合繊維を用いた場合、加硫温度を155℃に上げても、長時間加硫後の接着力は低下せず、高い状態で保持されていることが確認された。従って、加硫温度を高くすることにより、加硫時間を短縮して、大口径ホースの生産性を向上させることも可能であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維織物及び/又は繊維コードを複合することにより補強された加硫ゴムを用いて形成された大口径ゴムホースにおいて、該繊維織物及び/又は繊維コードがアラミド繊維とナイロン繊維との複合繊維で構成されることを特徴とする大口径ゴムホース。
【請求項2】
上記複合繊維において、アラミド繊維とナイロン繊維の合計繊度が2000〜11000dtである請求項1記載の大口径ゴムホース。
【請求項3】
上記複合繊維において、アラミド繊維とナイロン繊維の合計繊度に占めるアラミド繊維の繊度の割合が35〜80%である請求項1又は2記載の大口径ゴムホース。
【請求項4】
上記アラミド繊維が、パラ系アラミド繊維である請求項1〜3のいずれか1項記載の大口径ゴムホース。
【請求項5】
上記アラミド繊維が、ケブラー繊維である請求項4記載の大口径ゴムホース。
【請求項6】
上記複合繊維が、各々下撚りされたアラミド繊維とナイロン繊維とを上撚りしてなり、上撚り係数が1440〜2400である請求項1〜5のいずれか1項記載の大口径ゴムホース。
【請求項7】
上記複合繊維が、各々下撚りされたアラミド繊維とナイロン繊維とを上撚りしてなり、下撚り数が、上撚り数の0.5〜1倍である請求項1〜6のいずれか1項記載の大口径ゴムホース。

【公開番号】特開2009−68549(P2009−68549A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235472(P2007−235472)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】